説明

半田供給装置および半田供給方法

【課題】装置全体のコンパクト化を図ることができ、しかも、調整部位を少なくできてコストの低減を図ることが可能な半田供給装置および半田供給方法を提供する。
【解決手段】非酸化性雰囲気中の半田ワイヤWをルツボ1に供給する半田供給装置である。ルツボ1の上流側に、半田ワイヤWを切断してその切断部位よりも下流側の半田ワイヤWをルツボ1に供給する切断機構10を備える。切断機構10は、シールした状態で非酸化性雰囲気中とルツボ1とを連通する通路12と、通路12内に配置される回動体13とを有する。回動体13を介してルツボ1に供給されている半田ワイヤWを回動体13の回動によって切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田供給装置および半田供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造設備であるダイボンダなどには半田供給装置が使用される。リードフレームを使用して半導体装置を製造する設備のダイボンダは、リードフレームのアイランドに定量の半田を供給し、供給した半田上に半導体チップをマウントしている。このダイボンダにおけるリードフレームへの半田供給には、固体半田を溶融させた液体半田をリードフレーム上に供給するものがある。
【0003】
液体半田をリードフレーム上に供給する半田供給装置には、半田ポット(ルツボ)を用いるもるものがある(特許文献1および特許文献2)。この場合、ルツボには半田ワイヤが供給される。すなわち、このような半田供給装置は、図6に示すようなワイヤ送り機構を備える。ワイヤ送り機構は、長尺な半田ワイヤ51が巻回されたスプール52と、一対の送りローラ54、55を備える。送りローラ54、55はゴムローラと金属ローラの一対で、両ローラが半田ワイヤ51を挟持して回転することで、半田ワイヤ51がルツボ56に送り込まれる。ルツボ56内が気密な不活性・還元ガス雰囲気(非酸化性雰囲気)に保持される。ワイヤ送り機構も非酸化性雰囲気に保持される非酸化性雰囲気室57内に配置される。ところで、半田が存在する雰囲気において、非酸化性雰囲気でなければ、半田が大気雰囲気に晒されることになる。長期にわたって溶融された半田では、その表面にSnO(酸化第1錫)、PbO(一酸化鉛)等の酸化物(半田酸化物)が発生して、酸化層が形成されることになる。このように半田酸化物が発生すれば、半田付けされた部品への半田による汚染やはんだ不良等を起こすおそれがある。このため、ルツボ56内等を気密な不活性・還元ガス雰囲気(非酸化性雰囲気)に保持するのが好ましい。
【0004】
非酸化性雰囲気室57とルツボ56との間に気密分離機構58が配置される。気密分離機構58は、非酸化性雰囲気室57とルツボ56との間の通路Rの開閉を行うシャッタ59を備え、半田ワイヤ51をルツボ56に供給する際には、このシャッタ59が開状態となる。また、この半田供給装置は半田ワイヤ51を切断するカッタ機構60を備えている。カッタ機構60は、カッタ(刃部)61と、このカッタ61を駆動する駆動機構62とを備える。
【0005】
次に、この図6に示す半田供給装置を用いた半田供給方法を説明する。送りローラ54、55の矢印B1、B2方向の駆動によって、半田ワイヤ51を矢印E方向にスプール52から送出されて気密分離機構58を介してルツボ56に供給する。そして、ルツボ56内でその供給された半田ワイヤ51が溶融され、その溶融半田が所定量に達したら、半田ワイヤ51の供給を停止する。その停止状態で、カッタ機構60にて半田ワイヤ51を切断する。この切断時には送りローラ54、55の矢印B1a、B2a方向に回転させて半田ワイヤ51を矢印F方向に僅かに巻き上げて半田ワイヤ51に張力を付与する。
【0006】
カッタ機構60は、図6(a)に示すよう状態、つまりカッタ61は引っ込んだ状態から駆動機構62を駆動して、図6(b)に示すようにカッタ61を送出させる。これによって、カッタ61にて半田ワイヤ51が切断される。そして、切断後は、気密分離機構58のシャッタ59にて通路Rが遮断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−149784号公報
【特許文献2】特開2008−93690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記図6に示すような装置を用いる場合、カッタ機構60と気密分離機構58とを必要とし、装置全体が大型化していた。特に、各機構毎に往復動機構としてのアクチュエータを必要として、大型化および高コスト化を招いていた。また、図6に示す装置では、カッタ機構60にて半田ワイヤ51を切断した後、気密分離機構58にて通路Rを遮断する必要がある。このため、そのタイミング調整が必要であり、制御の複雑化を招いていた。
【0009】
そこで、本発明は斯かる実情に鑑み、装置全体のコンパクト化を図ることができ、しかも、調整部位を少なくできてコストの低減を図ることが可能な半田供給装置および半田供給方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の半田供給装置は、非酸化性雰囲気中の半田ワイヤをルツボに供給する半田供給装置であって、前記ルツボの上流側に、半田ワイヤを切断してその切断部位よりも下流側の半田ワイヤを前記ルツボに供給する切断機構を備え、切断機構は、シールした状態で非酸化性雰囲気中のルツボとを連通する通路と、この通路内に配置される回動体とを有し、回動体を介してルツボに供給されている半田ワイヤを前記回動体の回動によって切断するものである。
【0011】
本発明の第1の半田供給装置によれば、半田ワイヤが回動体を介してルツボに供給されている状態で、回動体の回動をさせることによって、半田ワイヤを切断することができる。回動体を回動させて半田ワイヤを切断する際、半田ワイヤの供給を停止するのが好ましいが、供給しながら切断することも可能である。また、回動体が配置される通路はシール状態が維持され、ワイヤが酸化性雰囲気に晒されることが防止できる。
【0012】
前記回動体は円柱体からなり、前記半田ワイヤが通過する切欠部が設けられ、この切欠部の切欠端部に半田ワイヤを切断するための刃部を備えているのが好ましい。回動体をこのように構成とすることによって、切断機構のコンパクト化を図ることができる。
【0013】
本発明の第2の半田供給装置は、半田ワイヤを所定寸のワイヤ切断片に切断してこのワイヤ切断片をルツボに供給する半田供給装置であって、半田ワイヤを切断してワイヤ切断片を形成する切断機構と、ガス置換機構とを備え、この切断機構は、シールした状態でルツボに連通する通路と、この通路内に配置されて半田ワイヤが供給されるポケットを形成した回動体とを有し、このポケットにワイヤが供給された状態での回動体の回動によってワイヤを切断し、形成されたワイヤ切断片を前記ポケットに収納した状態で、前記ガス置換機構にてこのポケット内を非酸化性雰囲気とするガス置換して、ポケット内をこの置換ガス雰囲気に維持しつつこのワイヤ切断片をルツボに供給するものである。
【0014】
第2の半田供給装置によれば、ポケットにワイヤが供給された状態で、回動体を回動させれば、ワイヤを切断してワイヤ切断片をこのポケットに収納することができる。そして、ワイヤ切断片が収納されたポケットに対して、非酸化性雰囲気とするガス置換ができる。すなわち、ポケット内を非酸化性雰囲気とでき、この状態のまま、ポケット内のワイヤ切断片をルツボに供給することができる。
【0015】
第1の半田供給方法は、非酸化性雰囲気中の半田ワイヤをルツボに供給する半田供給方法であって、非酸化性雰囲気中の半田ワイヤを、シールした状態でルツボに連通する通路を介してルツボに供給し、所定量の半田ワイヤがルツボに供給された状態で、半田ワイヤのルツボへの供給を停止し、その停止状態で半田ワイヤを前記通路内に配置される回動体の回動によって切断した後、上流の半田ワイヤを切断位置よりも僅かに上流側へ引っ張り、その切断部位よりも下流の半田ワイヤを前記ルツボに供給するものである。
【0016】
第1の半田供給方法によれば、所定量の半田ワイヤがルツボに供給された時点で、半田ワイヤのルツボへの供給を停止し、その停止状態で回動体の回動によって半田ワイヤを切断することができる。この切断後においては、半田ワイヤは僅かに巻き上げられた状態で行われる。このため、切断された半田ワイヤが回動体の回動に影響を与えないようにでき、安定した切断が可能となる。しかも、非酸化性雰囲気中の半田ワイヤをシールした状態でルツボに連通する通路を介してルツボに供給されるものであるので、半田ワイヤはワイヤが酸化性雰囲気に晒されることが防止できる。
【0017】
第2の半田供給方法は、半田ワイヤを所定寸のワイヤ切断片に切断してこのワイヤ切断片をルツボに供給する半田供給方法であって、シールされた状態でルツボに連通する通路内に、ワイヤ収納用のポケットを有する回動体を配置し、この回動体のポケットに半田ワイヤを供給した後、回動体を回転させて半田ワイヤを切断してワイヤ切断片を形成し、この切断片をポケットに収納した状態として、回動体を所定角度位置となるまで回動してその位置で一旦停止し、その停止状態で、ポケット内を非酸化性雰囲気となるガス置換した後、ポケット内をこの置換ガス雰囲気に維持しつつ回動体をさらに回動させて、このポケットからワイヤ切断片をルツボに供給するものである。
【0018】
第2の半田供給方法によれば、回動体のポケットに半田ワイヤを供給した状態で、回動体を回転させれば、半田ワイヤを切断してワイヤ切断片を形成することができ、しかも、このワイヤ切断片がこの回動体のポケットに収納された状態となる。そして、このように、ポケットにワイヤ切断片が収納された状態から回動体を所定角度位置になるまで回動させれば、ポケット内を非酸化性雰囲気となるガス置換することができる。その後は、ポケット内がガス置換雰囲気に維持されながら回動体がさらに回動して、この回動体のポケットに収納されたワイヤ切断片がルツボに供給される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1の半田供給装置および第1の半田供給方法では、回動体の回動をさせることによって、半田ワイヤを切断することができ、しかも、ワイヤが酸化性雰囲気に晒されることが防止できる。このため、従来のようなカッタ機構や気密分離機構等を必要とせず、装置の小型化および低コスト化を図ることができるとともに、複数個のアクチュエータを必要とせず、制御の簡略化を図ることができる。
【0020】
また、第1の半田供給装置において、回動体を円柱体から構成することによって、切断機構のコンパクト化を図ることができ、装置全体の小型化に寄与するとともに、大幅なコスト低減を発揮することができる。
【0021】
本発明の第2の半田供給装置および第2の半田供給方法では、回動体の回動をさせることによって、半田ワイヤを切断してワイヤ切断片を形成することができ、しかも、ワイヤ切断片は、非酸化性雰囲気とされる回動体のポケットに収納され、ワイヤ切断片を酸化性雰囲気に晒されることなくルツボに供給することができる。このため、従来のようなカッタ機構や気密分離機構等を必要とせず、装置の小型化および低コスト化を図ることができるとともに、複数個のアクチュエータを必要とせず、制御の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態の半田供給装置を示し、(a)は半田ワイヤをルツボに供給している状態の要部簡略図であり、(b)は半田ワイヤを切断した状態の要部簡略図である。
【図2】前記半田供給装置の切断機構に用いる回動体の簡略図である。
【図3】図2に示す回動体の要部斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の半田供給装置を示し、(a)は半田ワイヤ切断前の要部簡略断面図であり、(b)はガス置換状態の要部簡略断面図であり、(c)はワイヤ切断片をルツボに供給する状態の要部簡略断面図である。
【図5】図4に示す半田供給装置の切断機構に用いる回動体を示し、(a)は前記図4(a)に対応する状態での簡略図であり、(b)は前記図4(b)に対応する状態での簡略図であり、(c)は前記図4(c)に対応する状態での簡略図である。
【図6】従来の半田供給装置を示し、(a)は半田ワイヤのルツボ供給状態の簡略図であり、(b)は半田ワイヤの切断状態の簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明の実施の形態を図1〜図5に基づいて説明する。
【0024】
図1は本発明に係る半田供給装置の要部簡略図を示す。この半田供給装置は、非酸化性雰囲気中の半田ワイヤWをルツボ1に供給するためのものである。このため、ワイヤ送り手段を備える。ワイヤ送り手段は、長尺な半田ワイヤWが巻回されたスプール2と、一対の送りローラ4、5を有する送り機構3とを備える。ワイヤ送り手段は、気密な不活性・還元ガス雰囲気(非酸化性雰囲気)を構成する非酸化性雰囲気室7内に配置されている。送りローラ4、5はゴムローラと金属ローラの一対で、両ローラが半田ワイヤWを挟持して回転することで、半田ワイヤWがルツボ1に送り込まれる。なお、不活性ガスとは、化学反応を起こしにくい気体であり、狭義にはヘリウムなどの希ガス族元素をいい、広義には化学反応性の低い窒素などを含めることができる。このため、本発明では、不活性ガスをこの広義のものとする。
【0025】
ルツボ1は、その内部が気密な不活性・還元ガス雰囲気(非酸化性雰囲気)に保持され、この上流側、つまりルツボ1と非酸化性雰囲気室7との間に、切断機構10が設けられている。この切断機構10は、仕切板11に設けられた通路12と、この通路12内に配置される円柱状の回動体13とを備える。
【0026】
通路12は、前記回動体13がその軸心廻りに回動可能として収納される本体12aと、この本体12aと非酸化性雰囲気室7とを連通する連通部12bと、この本体12aとルツボ1とを連通する連通部12cとからなる。
【0027】
回動体13には、図2と図3に示すように、切欠部15が設けられている。この切欠部15は、半円弧状の切欠本体15aと、切欠本体15aと連続する四半円弧状の副部15bとを備える。すなわち、この切欠部15は、切欠本体15aの幅寸法A1と、副部15bの幅寸法A2とが同一に設定されたスリット状の切欠である。この場合、切欠本体15aは回動体13の外周面に開口しているが、副部15bは回動体13の外周面に開口していない。そして、切欠部15の切欠端部、つまり副部15bの周方向端部に半田ワイヤを切断するための刃部16が形成される。切欠本体15aを形成することによって、径方向に延びる平坦面からなる切欠端面17が構成される。
【0028】
また、回動体13の切欠部15の回動体軸方向の両側にOリング等のシール部材18、19が外嵌配置され、切欠部15の近傍の外周面にOリング等のシール部材20が配置されている。図1に示すように、切欠本体15aの切欠端面17が非酸化性雰囲気室7側に位置するとともに、刃部16がルツボ1側に位置している状態で、前記シール部材20が鉛直方向に沿って配設される。この図1(a)に示す状態では、切欠端面17が鉛直方向に沿って配設され、スプール2から送出された半田ワイヤWが通路12の連通部12bを介して回動体13の切欠部15に進入し、切欠部15の切欠端面17にガイドされて刃部16の近傍を通過して、通路12の連通部12cを介してルツボ1に進入する。
【0029】
ところで、回動体13はその軸心廻りに回動する必要がある。このため、回動体13は、駆動機構(図示省略)が連設されている。駆動機構として、モータ等の駆動源と、この駆動源からの駆動力(回転力)を回動体に伝達するギア等の伝達機構等からなる。この際、回動角の制御を行う制御手段を備えるのが好ましい。制御手段としてはマイクロコンピュータ等にて構成できる。
【0030】
次に前記のように構成された半田供給装置を用いた半田供給方法を説明する。まず、切断機構10の回動体13を、切欠本体15aの切欠端面17が非酸化性雰囲気室7側に位置するとともに、刃部16がルツボ1側に位置している状態とする。この状態では、回動体13の軸方向端部がシール部材18,19でシールされている。
【0031】
この状態で、送り機構3の一対の送りローラ4、5を矢印B1、B2方向に回転駆動することによって、スプール2の半田ワイヤWを矢印E方向に送出する。そして、スプール2から送出された半田ワイヤWを通路12の連通部12bを介して回動体13の切欠部15に進入させ、切欠部15の切欠端面17にガイドさせて刃部16の近傍を通過させて、通路12の連通部12cを介してルツボ1に進入させる。
【0032】
このようにルツボ1に進入した半田ワイヤWは溶融される。そのため、そのルツボ1内の液体半田(溶融半田)の量が所定量に達すれば、その供給が停止される。このように、半田ワイヤの供給が停止した状態では、回動体13が矢印C方向に所定角度(約90°)だけ回動させる。これによって、回動体13の刃部16によって半田ワイヤWを切断することができる。このように、半田ワイヤWを切断した後は、送りローラ4、5を矢印B1a、B2a方向に反転させて半田ワイヤWを矢印F方向に僅かに巻き上げる。
【0033】
切断すれば、図1(b)に示すように、切断部位よりも下流側(ルツボ1側)の半田ワイヤWはルツボ1に落下する。また、上流側の半田ワイヤWは、その切断端Weが回動体13の切欠部15の四半弧状の副部15b内に位置するとともに、切断端部W1が副部15bの切欠端面21に当接した状態となる。この状態では、シール部材20が本体部12a側の連通部12cの開口部外周縁に配置され、通路12とルツボ1との間がシールされる。このように、通路12はシール部材18、19、20にて外部と遮断された状態でシールされている。なお、切断後は、図1(b)に示す状態から回動体13を矢印C方向とは逆の矢印D方向に回動して図1(a)に示す状態とする。
【0034】
ところで、ルツボ1には図示省略の半田量検出手段が付設される。半田量検出手段は、ルツボ1内の液体半田の液面高さを検出して液体半田の容積増減を検知し、容積が規定の範囲内に維持されるように制御する。すなわち、半田量検出手段は、ルツボ1内に設置した2本の電極棒と、電極棒の通電の有無を検出する検流計と、電源等を備えた通電式液面センサ等にて構成することができる。この半田量検出手段では、一対の電極棒は、ルツボ1内の上端部から下方に延び、下端位置が相違している。この場合、一方の電極棒の下端が他方の電極棒の下端よりも高位置にある。
【0035】
液体半田の液面が一方の電極棒の下端より下がると、この電極棒の通電が停止し、これを検流計が検出して、液体半田の容積が規定値(上限値)より減少したことを検知する。液体半田の液面が他方の電極棒の下端より下がると、この電極棒の通電が停止し、これを検流計が検出して、液体半田の容積が規定値(下限値)より減少したことを検知する。
【0036】
両電極棒は、その下端が液体半田に浸漬されると、電極棒に液体半田を通じた通電が発生し、これを検流計が検出して液体半田の容積が規定値まで収容されていることが検知される。このため、検流計の検知信号が制御手段(制御回路)(この制御手段は、回動体を制御する制御手段であっても、他のマイクロコンピュータ等の制御手段であってもよい。)に送られて、ルツボ1内の液体半田がほぼ定量(液面が両電極棒の下端間に配置される量)になるよう制御される。また、ルツボ1は、圧力制御手段による内圧制御にて図示省略のノズルから液体半田を吐出する。
【0037】
このため、液体半田の容積が規定値(下限値)より減少したことを検知すると、送り機構3の一対の送りローラ4、5を矢印B1、B2方向に回転駆動することによって、スプール2の半田ワイヤWを送出することができ、再度半田ワイヤWをルツボ1に供給することができる。また、ルツボ1内の半田溶融量が所定量に達すれば、その供給が停止されて、半田ワイヤWが切断されることになる。
【0038】
本発明では、回動体13の回動をさせることによって、半田ワイヤWを切断することができ、しかも、ワイヤWが酸化性雰囲気に晒されることが防止できる。このため、従来のようなカッタ機構や気密分離機構等を必要とせず、装置の小型化および低コスト化を図ることができるとともに、複数個のアクチュエータを必要とせず、制御の簡略化を図ることができる。
【0039】
また、第1の半田供給装置において、回動体13を円柱体から構成することによって、切断機構10のコンパクト化を図ることができ、装置全体の小型化に寄与するとともに、大幅なコスト低減を発揮することができる。
【0040】
次に、図4は第2の実施形態を示し、この場合、半田ワイヤWを所定寸のワイヤ切断片Waを形成し、このワイヤ切断片Waをルツボ1に供給するものである。この場合も切断機構10の回動体13には、径方向に延びるスリット状のポケット30が設けられている。また、この装置においては、ガス置換機構31を備えている。
【0041】
ガス置換機構31は、仕切板(基板)11の通路12に連通される連通部32と、この連通部32を介して回動体13のポケット30内を非酸化性雰囲気とするガス置換して、ポケット内をこの置換ガス雰囲気とする。すなわち、ポケット30内を真空引きした後、例えば窒素などの不活性ガスを供給する。
【0042】
また、回動体13には、回動体軸方向の両側の一対のシール部材18、19に加えさらに3つのシール部材35、36、37が装着されている。シール部材35、36、37は、周方向に沿って所定ピッチでずれた状態で配置されている。
【0043】
次に、図4に示す半田供給装置を用いた半田供給方法を説明する。まず、図4(a)に示すように、ポケット30の開口部を連通部12bに対応させた状態とする。この状態で、図1に示すように、送り機構3の一対の送りローラ4、5を矢印B1、B2方向に回転駆動することによって、スプール2の半田ワイヤWを送出する。そして、図4(a)に示すように、ポケット30に半田ワイヤWが収納された状態で、半田ワイヤWの送りを停止する。図4(a)に示す状態では、シール部材35によって、連通部12bおよび連通部32と、連通部12cとの間がシールされ、シール部材36によって、連通部12cと、連通部32および連通部12bとの間がシールされる。
【0044】
この状態から、図4(b)に示すように、ポケット30の軸心と、連通部32の軸心とがほぼ一致する状態となるまで、回動体13を矢印D方向に所定角だけ回動させる。この回動によって、ポケット30の開口縁(反回転方向側の開口縁)30aがカッタ部となって、半田ワイヤWを切断する。これによって、ワイヤ切断片Waが形成され、このワイヤ切断片Waがポケット30に収納された状態となる。
【0045】
そして、回動体13が矢印D方向に所定角だけ回動させた状態では、ポケット30が連通部32と連通状となる。この連通状態において、ポケット30内を非酸化性雰囲気とするガス置換が行われる。これによって、ポケット30内が非酸化性雰囲気となる。この図4(b)に示す状態では、シール部材35によって、連通部32と、連通部12cおよび連通部12bとの間がシールされ、シール部材36によって、連通部12cと、連通部32および連通部12bとの間がシールされる。シール部材37によって、連通部12bと、連通部32および連通部12cとの間がシールされる。
【0046】
その後、図4(b)に示す状態から図4(c)に示す状態となるまで、回動体13を回動させる。すなわち、ポケット30の開口部が下方、つまりルツボ1側に向く位置となるように回動させて、その位置で停止する。これによって、ワイヤ切断片Waがルツボ1に供給される(落下する)。この図4(c)に示す状態では、シール部材35によって、連通部12cと、連通部32および連通部12bとの間がシールされ、シール部材36によって、連通部12bと、連通部32および連通部12cとの間がシールされ、シール部材37によって、連通部32と、連通部12bおよび連通部12cとの間がシールされる。
【0047】
次に図4(c)に示す状態となって、ワイヤ切断片Waがルツボ1に供給された後は、さらに矢印D方向に回動させて、図4(a)に示す基本姿勢に戻す。そして、前記の工程が繰り返されて、順次ワイヤ切断片Waがルツボ1に供給される。なお、この図4に示す装置であっても、回動体13及び半田ワイヤWの供給量を制御する制御手段にて制御される。
【0048】
この図4に示す半田供給装置であっても、半田量検出手段が付設され、ルツボ1の溶融半田が所定量に達したか否かを判断でき、この溶融量に応じてワイヤ切断片Waの供給を停止することができる。
【0049】
図4に示す半田供給装置では、回動体13の回動をさせることによって、半田ワイヤWを切断してワイヤ切断片Waを形成することができ、しかも、ワイヤ切断片Waは、非酸化性雰囲気とされる回動体13のポケット30に収納され、しかも通路12はシール状態が維持され、ワイヤ切断片Waが酸化性雰囲気に晒されることなくルツボ1に供給することができる。このため、従来のようなカッタ機構や気密分離機構等を必要とせず、装置の小型化および低コスト化を図ることができるとともに、複数個のアクチュエータを必要とせず、制御の簡略化を図ることができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、前記各実施形態では、切断機構10を介して半田が供給されるルツボ1から、リードフレームの半田供給部等に塗布されるものであるが、このルツボ1を溶融槽として、このルツボ1の下方に、リードフレームの半田供給部等に塗布するものである他のルツボを配置したものであってもよい。また、図4に示す半田供給装置として、供給される半田ワイヤWが図1に示すように、非酸化性雰囲気中に配置されているものであっても、大気雰囲気中に配置されているものであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 ルツボ
10 切断機構
12 通路
13 回動体
15 切欠部
16 刃部
30 ポケット
31 ガス置換機構
W 半田ワイヤ
Wa ワイヤ切断片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非酸化性雰囲気中の半田ワイヤをルツボに供給する半田供給装置であって、
前記ルツボの上流側に、半田ワイヤを切断してその切断部位よりも下流側の半田ワイヤを前記ルツボに供給する切断機構を備え、切断機構は、シールした状態で非酸化性雰囲気中のルツボとを連通する通路と、この通路内に配置される回動体とを有し、回動体を介してルツボに供給されている半田ワイヤを前記回動体の回動によって切断することを特徴とする半田供給装置。
【請求項2】
前記回動体は円柱体からなり、前記半田ワイヤが通過する切欠部が設けられ、この切欠部の切欠端部に半田ワイヤを切断するための刃部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の半田供給装置。
【請求項3】
半田ワイヤを所定寸のワイヤ切断片に切断してこのワイヤ切断片をルツボに供給する半田供給装置であって、
半田ワイヤを切断してワイヤ切断片を形成する切断機構と、ガス置換機構とを備え、切断機構は、シールした状態でルツボに連通する通路と、この通路内に配置されて半田ワイヤが供給されるポケットを形成した回動体とを有し、このポケットにワイヤが供給された状態での回動体の回動によってワイヤを切断し、この形成されたワイヤ切断片を前記ポケットに収納した状態とし、前記ガス置換機構にてこのポケット内をガス置換して、ポケット内をこの置換ガス雰囲気に維持しつつこのワイヤ切断片をルツボに供給することを特徴とする半田供給装置。
【請求項4】
非酸化性雰囲気中の半田ワイヤをルツボに供給する半田供給方法であって、
非酸化性雰囲気中の半田ワイヤを、シールした状態でルツボに連通する通路を介してルツボに供給し、所定量の半田ワイヤがルツボに供給された状態で、半田ワイヤのルツボへの供給を停止し、その停止状態で半田ワイヤを前記通路内に配置される回動体の回動によって切断した後、上流の半田ワイヤを切断位置よりも僅かに上流側へ引っ張り、その切断部位よりも下流の半田ワイヤを前記ルツボに供給することを特徴とする半田供給方法。
【請求項5】
半田ワイヤを所定寸のワイヤ切断片に切断してこのワイヤ切断片をルツボに供給する半田供給方法であって、
シールされた状態でルツボに連通する通路内に、ワイヤ収納用のポケットを有する回動体を配置し、この回動体のポケットに半田ワイヤを供給した後、回動体を回転させて半田ワイヤを切断してワイヤ切断片を形成し、このワイヤ切断片をポケットに収納した状態として、回動体を所定角度位置となるまで回動してその位置で一旦停止し、その停止状態で、ポケット内を非酸化性雰囲気とするガス置換した後、ポケット内をこの置換ガス雰囲気に維持しつつ回動体をさらに回動させて、このポケットからワイヤ切断片をルツボに供給することを特徴とする半田供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−83780(P2011−83780A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236215(P2009−236215)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【出願人】(000110859)キヤノンマシナリー株式会社 (179)
【Fターム(参考)】