説明

半田噴流装置

【課題】噴流高さの調整を容易にして、常に半田品質を高品位にさせ、かつ、製造コストを安価に済ませる半田噴流装置を提供する
【解決手段】波形成板に形成された複数の噴出口から溶融半田を噴出させて、溶融半田を供給する半田噴流装置であって、波形成板は、噴流ノズルの先端を覆っている平面部と、噴出口の周壁部分で平面部から上方に突起した突起部とを備え、突起部は、溶融半田の噴出方向に対して15°〜60°の傾斜角度を有していることにより、噴出口における半田噴流の圧力を高く、安定した圧力を得ることができ、半田噴流高さの調整が容易で、常に半田品質を高品位に維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融半田を安定して噴出口からプリント配線基板に供給する噴流ノズルの波形成板を用いた半田噴流装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
面実装部品やディスクリート部品(リード足がある部品)を混載したプリント配線基板を搬送させながら、この基板に、噴流ノズルから噴出させた溶融半田を供給して、半田付けを行う半田噴流装置がある。
【0003】
従来の半田噴流装置の断面図を図4に示す。図4に示すように電子部品を載せたプリント配線基板500に対して半田面全面に良好に溶融半田400を供給するための1次噴流ノズル700と、半田供給済みのプリント配線基板500から、余分な溶融半田400を除去するための2次噴流ノズル200とを備えたものがある。1次噴流ノズル700、2次噴流ノズル200は溶融半田が溜められている半田槽300内に浸けられている。1次噴流ノズル700および2次噴流ノズル200から溶融半田400をプリント配線基板500の搬送経路に向けて噴出させるようになっている。
【0004】
1次噴流ノズル700の先端は、溶融半田400を荒れた状態で噴流させるため、複数個の噴出口が開いた波形成板710を備えている。
【0005】
次に、波形成板について説明する。図5は、従来の波形成板の概要図で、図5(a)はプリント配線基板側から見た平面図で、図5(b)は図5(a)のA−A断面図で、図5(c)は図5(b)のB部拡大図である。図5に示すように、波形成板710は、複数に配列した噴出口711と、噴出口711を形成する平面部712とから構成されている。これらの噴出口711は、同じ口径の丸形形状とされ、プリント配線基板500の搬送方向510に対して例えば、上流列の噴出口と、中間列の噴出口と、下流列の噴出口との3列設けられ、全ての噴出口711はプリント配線基板500の搬送方向510に対して異なる位置となるように形成されている。
【0006】
この波形成板710の噴出口711から噴出した溶融半田400がプリント配線基板500に半田付けされるとき、波形成板710とプリント配線基板500の間は溶融半田400で充満されているので、ガスが抜ける場所がなく赤目不良などが発生し、半田品質が低下してしまう。
【0007】
また、他の従来の波形成板を説明する。図6は、他の従来の波形成板の概要図で、図6(a)はプリント配線基板側から見た平面図で、図6(b)は図6(a)のA−A断面図で、図6(c)は図6(b)のB部拡大図である。図6に示すように、波形成板720は、平面部722に噴出口721が図5と同様に配置されている。異なる点として、図6(c)に示すように、平面部722の板厚t2.0mmに対して、突起部723が所定の高さで突起している(例えば、特許文献1)。そして、平面部722と突起部723の中に、φ5.0mmの噴出口721が開いた状態となっている。更に、突起部723が突起することにより、隣接する突起部723との間に空間を持つこととなる。噴出口721の直上を通過するプリント配線基板500が溶融半田400の噴流を受けたとき、この空間がガスの抜け道となるので、ガス抜けが悪いために生じる赤目不良などを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−356161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来の構成では、波形成板720の噴出口721から溶融半田400を噴出させるとき、噴出口721の先端が平面部722より高くなっているため、半田噴流の圧力が低下して半田噴流の高さを調整することが難しくなり、噴流高さの調整に時間がかかったり、調整不足で半田付けをしたとき半田品質を低下させてしまったりするという課題を有していた。
【0010】
更に、波形成板720は、平面部722に突起部723を溶接したり、一つの金属塊から、平面部722に突起部723を切削加工したりして製造するなど、製造コストが非常に高いという課題も有していた。
【0011】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、噴流高さの調整を容易にして、常に半田品質を高品位にさせ、かつ、製造コストを安価に済ませる半田噴流装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記従来の課題を解決するために、本発明の半田噴流装置は、波形成板に形成された複数の噴出口から溶融半田を噴出させて、溶融半田を供給する半田噴流装置であって、波形成板は、噴流ノズルの先端を覆っている平面部と、噴出口の周壁部分で平面部から上方に突起した突起部とを備え、突起部は、溶融半田の噴出方向に対して15°〜60°の傾斜角度を有している。
【0013】
本構成によって、噴出口における半田噴流の圧力を高く、安定した圧力を得ることができ、半田噴流の高さ調整を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、波形成板における噴出口の周壁の突起部の所定の形状により、半田噴流高さの調整が容易で、常に半田品質を高品位に維持できる半田噴流装置を提供することができる。
【0015】
また、噴出口の周壁の突起部をプレス加工により形成することにより、容易に突起形状に形成することができて製造コストを安価に済ませることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1における半田噴流装置の断面図
【図2】本発明の実施の形態1における波形成板の概要図
【図3】本発明の実施の形態1における波形成板の突起部と半田品質との関係図
【図4】従来の半田噴流装置の断面図
【図5】従来の波形成板の概要図
【図6】他の従来の波形成板の概要図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0018】
まず、半田噴流装置の概要について説明する。図1は本発明の実施の形態1における半田噴流装置の断面図である。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態1の半田噴流装置1は、プリント配線基板500の搬送方向510の順に、1次噴流ノズル100と2次噴流ノズル200が半田槽300の内部に配置されている。そして、半田槽300にはSn−Ag−Cu系の溶融半田400が1次噴流ノズル100と2次噴流ノズル200の先端近傍まで貯留している。
【0020】
半田噴流装置1がプリント配線基板200に溶融半田400を半田付けするとき、1次噴流ノズル100は未半田不良をなくす目的で、溶融半田400を荒れた状態で噴流させ、2次噴流ノズル200はブリッジ不良をなくす目的で、溶融半田400を穏やかな状態で噴流させる。そして、1次噴流ノズル100および2次噴流ノズル200から噴流した溶融半田400は、半田槽300の溶融半田400の液面に流れ落ちる。
【0021】
このとき、1次噴流ノズル100の先端は、溶融半田400を荒れた状態で噴流させるため、複数個の噴出口が開いた波形成板110を備えている。
【0022】
次に、波形成板について説明する。図2は、本発明の実施の形態1における波形成板の概要図で、図2(a)はプリント配線基板側から見た平面図で、図2(b)は図2(a)のA−A断面図で、図2(c)は図2(b)のB部拡大図である。図2に示すように、波形成板110は、複数に配列した噴出口111と、噴出口111を形成して1次噴流ノズル100の先端を覆っている平面部112と、平面部112と繋がって噴出口111の周りに突起した突起部113とから構成されている。これらの噴出口111は、同じ口径の丸形形状とされ、プリント配線基板500の搬送方向510に対して例えば、上流列の噴出口と、中間列の噴出口と、下流列の噴出口との3列設けられ、全ての噴出口111はプリント配線基板500の搬送方向510に対して異なる位置となるように形成されている。
【0023】
特に、図2(c)に示すように、平面部112の板厚t2.0mmに対して、突起部113は高さ2.6mm突起している。更に、突起部112は、プリント配線基板500側の噴出口φ5.0mmに対して、半田槽300側の噴出口φ9.0mmになるように、溶融半田400の噴出方向に対して30°の傾斜角度になっている。突起部112が30°の傾斜角度を持つことにより、噴出口111においてφ9.0mmの面積64mmで押し上げられてきた溶融半田400がφ5.0mmの面積20mm、つまり、3.2分の1の面積で噴出することになるので、圧力が高くなる。そのため、溶融半田400の噴流の高さが安定し、半田噴流装置1を稼動させるときの噴流高さの調整が容易になる。
【0024】
また、突起部113が2.6mm突起することにより、隣接する突起部113との間に空間を持つこととなる。噴出口111の直上を通過するプリント配線基板500が溶融半田400の噴流を受けたとき、この空間がガスの抜け道となるので、ガス抜けが悪いために生じる半田付け不良を抑制することができ、半田付け品質の向上につながる。
【0025】
最後に、突起部113による半田付け品質について検討してみた。図3は、本発明の実施の形態1における波形成板の突起部と半田品質との関係図で、図3(a)は突起の傾斜角度と半田品質との関係で、図3(b)は突起部の高さと半田品質との関係である。
【0026】
図3(a)は、横軸に突起部113の半田噴流の方向との傾斜角度をとり、縦軸にそのときの半田付け品質を定性的にグラフ化している。図3(a)に示すように、突起部113の傾斜角度が15°〜60°の間は良好な半田付け品質を得ることができた。特に、突起部113の傾斜角度が30°〜45°の間がもっとも良好な半田付け品質を得ることができた。しかし、傾斜角度が15°未満のときは、噴流口111の半田槽300側がφ7.0mmの面積38mm以下、つまり、φ5.0mmの面積20mmの2倍以下となり、溶融半田400を押上げる圧力が低下し、半田品質が低下した。また、傾斜角度が60°を超えたときは、突起部113間の隙間が少なくなり、ガスの抜け道がなくなったため、半田品質が低下した。
【0027】
また、図3(b)は、横軸に突起部113の平面部112からの高さをとり、縦軸にそのときの半田付け品質を定性的にグラフ化している。図3(b)に示すように、突起部113の高さが1.0mm〜3.5mmの間は良好な半田付け品質を得ることができた。しかし、高さが1.0mm未満のときは、噴流口111の半田槽300側がφ7.0mmの面積38mm以下、つまり、φ5.0mmの面積20mmの2倍以下となり、溶融半田400を押上げる圧力が低下し、半田品質が低下した。また、高さが3.5mmを超えたときは、平面部112から噴出口111の先端部までの距離により溶融半田400を押上げる圧力が低下し、半田品質が低下した。
【0028】
これらより、突起部113の傾斜角度が15°〜60°のとき、良好な半田品質を得ることができる。更に、突起部113の高さも1.0mm〜3.5mmにすると、より良好な半田品質を得ることができる。
【0029】
また、突起部113が15°〜60°の傾斜角度で、かつ、高さが1.0mm〜3.5mmであることから、噴出口の周壁の突起部113をプレス加工により形成することにより、容易に突起形状に形成することができて製造コストを安価に済ませることができる。
【0030】
かかる構成によれば、波形成板の噴出口の周壁に15°〜60°の傾斜角度で、更に、高さが1.0mm〜3.5mmの突起部を設けることにより、溶融半田を押上げる圧力を高めて安定した噴流を生じさせ、噴流高さの調整が容易で、常に半田品質を高品位に維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明にかかる半田噴流装置は、噴流高さの調整が容易で、常に半田品質を高品位に維持することが可能になるので、プリント配線基板に供給する噴流ノズルを用いた半田噴流装置の等として有用である。
【符号の説明】
【0032】
1 半田噴流装置
100 1次噴流ノズル
110 波形成板
111 噴出口
112 平面部
113 突起部
200 2次噴流ノズル
300 半田槽
400 溶融半田
500 プリント配線基板
510 搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波形成板に形成された複数の噴出口から溶融半田を噴出させて、溶融半田を供給する半田噴流装置であって、
前記波形成板は、噴流ノズルの先端を覆っている平面部と、
前記噴出口の周壁部分で平面部から上方に突起した突起部とを備え、
前記突起部は、溶融半田の噴出方向に対して15°〜60°の傾斜角度を有することを特徴とする半田噴流装置。
【請求項2】
前記突起部は、前記平面部から1.0mm〜3.5mmの高さを有することを特徴とする請求項1に記載の半田噴流装置。
【請求項3】
前記突起部は、1次噴流ノズルの波形成板に設けられてなる請求項1または2に記載の半田噴流装置。
【請求項4】
前記突起部は、プレス加工により形成されている請求項1または請求項2に記載の半田噴流装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−245310(P2010−245310A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92622(P2009−92622)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】