説明

半田濡れ性判定装置及び実装装置

【課題】
本発明の目的は、簡易な構成で、半田の濡れ性を判定することができる、半田濡れ性判定装置を提供することである。
【解決手段】
本発明の半田濡れ性判定装置は、部品を保持する部品搭載部と、部品搭載部を駆動する駆動部と、部品搭載部の駆動方向に位置し、半田を搭載するステージと、部品の位置を検出する位置センサと、位置センサによる検出結果に基づいて、部品の加速度または部品に働く反力を算出する算出部と、算出部による算出結果に基づいて、半田の濡れ性を判定する判定部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田の濡れ性を判定する装置及び半田付けによる実装を行う実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体部品などの電子部品の実装方法においては、半田バンプを介して電子部品を実装基板に搭載した後、電子部品と実装基板とをそれぞれ加熱する。この加熱により、半田バンプが溶融し、電子部品と実装基板とが接合する。
【0003】
このように半田バンプを用いた実装を行う電子部品の実装装置が、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の実装装置を図1に示す。図1に記載の実装装置は、BGA(Ball Grid Array)実装機構1と、アーム2と、本加熱用遮蔽3と、実装基板4と、加熱部5とを有する。加熱部5は、BGA実装機構1に実装されたBGAの本加熱処理を行い、BGAに配設された半田バンプを溶融させる。そして、実装基板4の実装部に形成されている電極に、半田バンプを接合する。
【0004】
しかしながら、図1に記載の実装装置では、電子部品と半田との濡れ性が適切であるかどうかが判断できない。そのため、接合に必要以上の時間をかけてしまい、実装工程に無駄な時間をかけてしまう可能性がある。一方で、半田バンプと電子部品との濡れ性が十分でない状態で接合させてしまうと、電子部品が剥がれ易くなる等、製品の品質に問題が生じてしまう可能性がある。
【0005】
そのため、半田の濡れ性を判定する必要がある。
【0006】
半田の濡れ性の試験方法が例えば特許文献2に記載されている。特許文献2に記載の半田の濡れ性の試験方法においては、半田ペーストを実装部品に合わせた大きさの溶融半田球にした状態で、実装部品に作用する反力を測定する。そして、測定した反力に基づいて、表面実装部品の半田の濡れ性の判定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−068847号公報
【特許文献2】特開2005−033149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載の方法で濡れ性を判定する場合、実装部品に作用する反力を直接測定する構成が必要となる。この反力を測定するための構成は大掛かりであるため、実際の実装装置に適用することが難しい。
【0009】
本発明の目的は、このような問題に鑑み、反力を直接測定する場合よりもより簡易な構成で、半田の濡れ性を判定することができる、半田濡れ性判定装置を提供することである。
【0010】
また、本発明の目的は、実装時に半田の濡れが適切であることを検出することが可能な、実装装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の半田濡れ性判定装置は、部品を保持する部品搭載部と、部品搭載部を駆動する駆動部と、部品搭載部の駆動方向に位置し、半田を搭載するステージと、部品の位置を検出する位置センサと、位置センサによる検出結果に基づいて、部品の加速度または部品に働く反力を算出する算出部と、算出部による算出結果に基づいて、半田の濡れ性を判定する判定部と、を有する。
【0012】
また、本発明の実装装置は、本発明の半田濡れ性判定装置を備え、ステージは、半田を搭載した基板を搭載するステージである。
【0013】
また、本発明の半田濡れ性判定方法は、部品を保持した部品搭載部を、ステージに搭載された半田の方向へ駆動する駆動工程と、部品の位置を検出する位置検出工程と、位置検出工程による検出結果に基づいて、部品の加速度または部品に働く反力を算出する算出工程と、算出工程による算出結果に基づいて、半田の濡れ性を判定する判定工程と、を有する。
【0014】
また、本発明の実装方法は、本発明の半田濡れ性判定方法を有し、ステージは、前記半田を搭載した基板を搭載するステージである。
【0015】
また、本発明のプログラムは、部品を保持した部品搭載部を、ステージに搭載された半田の方向へ駆動する駆動工程と、部品の位置を検出する位置検出工程と、位置検出工程による検出結果に基づいて、部品の加速度または部品に働く反力を算出する算出工程と、算出工程による算出結果に基づいて、前記半田の濡れ性を判定する判定工程と、を実行させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の半田濡れ性判定装置は、簡易な構成で、半田の濡れ性を判定することができる。また、本発明の実装装置は、実装時に半田の濡れが適切であることを検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に関連する電子部品の実装装置である。
【図2】本発明の第1の実施形態における半田濡れ性判定装置の構成の一例を示す。
【図3】液面に接触した固体に働く力を示す。
【図4】液面に対して垂直方向に降下する実装部品に働く反力の時間変化の概略図を示す。
【図5】本発明の第1の実施形態における実装部品の位置、及び加速度の時間変化を示す。
【図6】本発明の第1の実施形態における半田濡れ性判定装置の構成の他の例を示す。
【図7】本発明の第2の実施形態における実装装置の構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。しかしながら、係る形態は本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0019】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態における半田濡れ性判定装置の構成について、図2を用いて説明する。
【0020】
図2に記載の半田濡れ性判定装置は、ステージ10と、部品搭載部11と、駆動部12と、位置センサ13と、算出部14と、判定部15と、を有する。
【0021】
ステージ10は、半田を搭載する。ステージ10の形状は、上面が平坦なものに限らず、半田を搭載できる形状であればよい。例えば、上面に半田を入れるための開口部を有するものであっても良い。
【0022】
部品搭載部11は、実装部品を保持する。駆動部12は、部品搭載部11に保持された実装部品が、ステージ10の上部から、ステージ10に搭載された半田に向かって鉛直方向下向きに駆動するように、駆動する。図2に示すように、駆動部12が実装部品の位置の鉛直方向線上に位置する場合には、駆動部12は、鉛直方向下向きに駆動する。
【0023】
位置センサ13は、実装部品の位置を検出する。位置センサ13は、例えば、リニアエンコーダによって構成されても良い。算出部14は、位置センサ13の検出結果に基づいて、実装部品の加速度を算出する。判定部15は、算出部14の算出結果に基づいて、ステージ10に搭載された半田の濡れ性を判定する。
【0024】
次に、本実施形態における半田濡れ性判定装置の動作について説明する。
【0025】
始めに、部品搭載部11に実装部品を保持させる。また、ステージ10に、加熱された液体半田を搭載する。なお、半田は、部品搭載部11を鉛直方向下向きに駆動させた場合に実装部品と接触するよう、ステージ10に搭載される。
【0026】
次に、駆動部12が駆動を開始する。すなわち、駆動部12は、部品搭載部11に保持された実装部品が、半田に接触するように、降下する。この時、駆動部12の駆動電流に制限値を設けることにより、駆動部12の鉛直方向の推力は制御される。これにより、駆動部12は、部品搭載部11が保持する実装部品が、半田に接触するまで、一定の速度で降下する。
【0027】
位置センサ13は、駆動部12が駆動を開始すると、実装部品の位置の検出を開始する。そして、その検出結果を位置信号として算出部14へ送信する。なお、実装部品の位置の検出の仕方としては、位置センサ13が直接、実装部品の位置を検出することとしても良い。あるいは、位置センサ13は、部品搭載部11の位置を検出し、間接的に実装部品の位置を検出することとしても良い。すなわち、位置センサ13は、検出した部品搭載部11の位置に基づいて、実装部品の位置を検出することとしても良い。
【0028】
部品搭載部11がある程度降下すると、部品搭載部11に保持された実装部品が、ステージ10に搭載された液体状態の半田に接触する。この時、実装部品に対して、半田の液面からの反力が働く。
【0029】
ここで、固体が自重によって液面に接触した際に、固体に働く力を図3に示す。
【0030】
固体には、液面に対して垂直な方向に、重力mg及び浮力fが働く。また、固体の液面に対する接触角θの向きに、表面張力rが働く。浮力fと表面張力の鉛直方向の成分の合力をFとする。そして、合力Fと重力mgとが釣り合うと、固体は図3のように液面で浮いた状態で静止する。
【0031】
すなわち、実装部品が液体状態の半田の液面に接触すると、図3に示したような合力Fが液面の垂直方向上向きに働くことになる。ここで、半田の濡れ性の開始前は、表面張力rは浮力fと比較して小さい。そのため、合力Fは、液面に対して垂直方向上向きに作用する。すなわち、実装部品が半田の液面に接触すると、実装部品に対して鉛直方向上向きの反力が働く。
【0032】
また、図4に、実装部品を液体の半田に向かって下降させた場合の、実装部品に働く反力の時間変化の概略図を示す。なお、図4における反力は、浮力と表面張力の鉛直方向の成分の合力であり、鉛直方向上向きを正の向きとする。
【0033】
ここでは、Wilhelmy法といわれる一般的な表面張力測定法を利用して、実装部品を液体の半田に浸した時に生じる、浮力と表面張力の鉛直方向の成分の合力の測定値を記している。実験工程として、実装部品は液体の半田に侵食するまで下降し、全て浸る前に下降を止め、位置をキープしている。
【0034】
状態Aは、実装部品が鉛直方向下向きに降下していく状態である。状態Bは、実装部品が半田の液面に接触した状態である。状態Cは、F(反力)=f−rcosθjにより計算されるように、液体反力が効き始めた状態である。なお、実装部品の、液面に対する接触長(実装部品の周長)をjとする。但し、半田の濡れが開始するまでは、表面張力よりも浮力の変化が優位に働く。そのため、状態Cの間は、浮力の増加に伴い、反力が正の向き、すなわち鉛直方向上向きに増加する。その後、半田の濡れが開始すると、表面張力rが増加し出すため、反力は負の向き、すなわち鉛直方向下向きに増加し出す。すなわち、状態Dは、半田の濡れが開始したことを示す。状態Eは、半田の濡れが進み、表面張力が増加していく状態である。状態Fは、浮力が表面張力に打ち消され、反力が0となった状態である。
【0035】
状態H及び状態Iは、半田の濡れが最大となり、浮力と表面張力との合力が安定している状態である。状態Gは、反力が0となる状態Fと、半田の濡れが最大となる状態Hの間の任意の状態を示す。
【0036】
特許文献2においては、以上のような反力変化を直接測定することにより、半田の濡れ性を判定している。しかしながら、上述したように、反力を直接測定する構成は大掛かりであり、実際の実装装置に適用することが難しい。
【0037】
本実施形態においては、反力を直接測定するのではなく、実装部品の位置を検出することで、半田の濡れ性を判定する。具体的には、位置センサ13によって実装部品の位置を検出し、その検出結果を位置信号として算出部14に送信する。そして、算出部14は、受信した位置信号に基づいて、実装部品の加速度を算出する。なお、算出部14は実装部品の加速度と併せて、速度を算出することとしても良い。
【0038】
図5に、位置センサ13が検出する実装部品の位置の時間変化、及び、算出部14が算出する実装部品の加速度の時間変化を示す。
【0039】
なお、図4では、実装部品に働く反力の変化を示したが、実装部品に働く力としては他に、重力や部品摩擦力等がある。
【0040】
ここで、本実施形態においては、駆動部12は、駆動している間、実装部品に反力が働かない場合には実装部品が一定の速度で降下するよう、駆動電流が制御されている。すなわち、駆動部12が駆動している間、駆動部12の推力によって、実装部品に働く反力以外の力は打ち消されている。すなわち、実装部品に働く反力Fと加速度aとの間には、a=F/mの関係が成立することになる。そのため、実装部品に働く反力が0の場合には、実装部品の加速度も0となり、実装部品は一定の速度で降下する。
【0041】
図5(a)は、位置センサ13によって検出された実装部品の位置の時間変化を表したグラフである。図5(b)には、算出部14が位置センサ13から送出された位置信号に基づいて、実装部品の加速度を算出した結果を示す。すなわち、図5(b)は、図5(a)に示す位置変化に対応する加速度の時間変化を表したグラフである。
【0042】
ここで、図5(b)における状態Jは、図4の状態Aに対応する状態であり、実装部品が半田に接触する前の状態である。すなわち、実装部品には反力がかかっておらず、実装部品の加速度は0となる。
【0043】
状態Kは、図4の状態Bに対応する状態であり、実装部品が半田の液面に接触した状態を示す。実装部品が半田の液面に接触すると、実装部品に対して浮力及び表面張力の合力である反力が働く。そのため、実装部品に加速度が働き始める。
【0044】
状態Lは、図4の状態Cに対応する状態であり、実装部品に対する表面張力よりも、浮力の増加が優位に働いている状態を示す。そのため、加速度が正の向きに増加する。なお、加速度が正の向きに増加するとは、鉛直方向上向きに加速度が増加することをいう。
【0045】
状態Mは、図4の状態Dに対応する状態であり、半田の濡れが開始して、表面張力の増加が優位に働き出す状態である。そのため、それまで正の向きに増加していた加速度が、負の向き、すなわち鉛直方向下向きに増加し出す。
【0046】
状態Nは、図4の状態Eに対応する。すなわち、半田の濡れが進むことにより、表面張力が増加し続けている状態を示す。
【0047】
状態Oは、図4の状態Fに対応する。すなわち、実装部品に働く浮力が表面張力に打ち消され、反力が0となった状態である。
【0048】
状態Q及び状態Rはそれぞれ、図4の状態Hと状態Iに対応する。すなわち、半田の濡れが最大となった状態である。
【0049】
以上のように、算出部14が算出した加速度の時間変化は、実装部品に働く反力の時間変化に対応付けることができる。
【0050】
次に、判定部15の動作について説明する。判定部15は、算出部14が算出した加速度の算出結果を受信する。
【0051】
判定部15は、加速度の算出結果を受信すると、その加速度の時間変化を監視する。そして、加速度の時間変化に基づいて、半田の濡れ性を判定する。判定部15による具体的な判定方法について以下で述べる。
【0052】
判定部15は、実装部品の加速度が状態M、すなわち加速度が鉛直方向下向きに増加し出した時点を検出し、半田の濡れが開始した時点を判定する。
【0053】
また、判定部15は、実装部品の加速度が状態Q及びR、すなわち、加速度が鉛直方向下向きに増加し続けた後、一定となった時点を検出し、状態Qの時点で半田の濡れが最大となったと判定する。
【0054】
更に、判定部15は、半田が実装に適した濡れとなるタイミングに到達した時点も検出する。半田が実装に適した濡れとなるタイミングとは、実際の実装時において、半田が実装に必要な程度の濡れに達しており、実装工程を完了させてよいタイミングをいう。
【0055】
半田の濡れは、上述したように、図5における状態Q、Rにおいて最大となる。しかしながら、濡れが最大となる前であっても、実際の実装時における半田の濡れとしては十分な状態に達している場合がある。そのため、状態Oを経過してから状態Qに達するまでの間の任意の状態Pに達した時間で、半田が実装に適した濡れとなるタイミングに到達したと判定することとしても良い。なお、どの時点を状態Pとするかは、あらかじめ設定しておいても良い。例えば、状態Oを経過してから状態Qとなるまでに掛かる時間をtとすると、状態Pは、状態OとなってからXt(0≦X≦1)経過した時点としても良い。あるいは、状態Pとなる時点は、半田や実装部品の材料や状態に応じて、測定毎に決めることとしても良い。
【0056】
この判定結果を用いることにより、実際に実装を行う際、無駄な時間をかけることなく効率的に実装を行うためには、どのタイミングで実装工程を完了させるべきなのかが分かる。例えば、実装部品が半田と接触してから、どれ位の時間が経過した時点で実装工程を完了させると、最も効率的であるのかが分かる。
【0057】
以上のように、本実施形態においては、実装部品の位置を検出することによって、半田の濡れ性を判定する。具体的には、検出した実装部品位置から算出した実装部品の加速度に基づいて、半田の濡れ性を判定する。
【0058】
これにより、反力を直接測定する場合と比較して簡易な構成で、半田の濡れ性を判定することが可能となる。
【0059】
また、半田が、実装に必要な程度に濡れるまでに掛かる時間が分かるため、実際に実装する際、どのタイミングで実装工程を完了させてよいかが分かる。
【0060】
また、反力の測定と異なり、位置の検出には大掛かりな構成を必要としないため、本実施形態の構成を実装装置に組み込むことも可能となる。すなわち、本実施形態に記載の半田濡れ性判定方法は、本実施形態のように半田濡れ性判定装置に適用することも可能であり、後述する第2の実施形態のように、実装装置に適用することも可能である。
【0061】
また、本実施形態においては、算出部14は、位置信号に基づいて加速度を算出することとしたが、これに限らない。すなわち、算出部14は、反力Fと加速度aとの間にa=F/mの関係が成立していることを利用し、位置信号に基づいて、実装部品に働く反力を算出することとしても良い。この場合には、判定部15は図4の状態A〜Iに基づいた判定を行う。
【0062】
算出部14が、位置信号に基づいて実装部品に働く反力を算出する場合の、判定部15の動作について以下で説明する。
【0063】
判定部15は、実装部品に働く反力が状態C、すなわち加速度が鉛直方向下向きに増加し出したことを検出すると、半田の濡れが開始したと判定する。
【0064】
また、判定部15は、実装部品に働く反力が状態H及びI、すなわち、反力が鉛直方向下向きに増加し続けた後、一定となったことを検出すると、状態Hの時点で半田の濡れが最大となったと判定する。
【0065】
更に、判定部15は、実装部品に働く反力が状態Fに達してから状態Hに達するまでの任意の状態Gとなった時点で、半田の濡れが実装に適切な状態となるタイミングであると判定する。なお、状態Fと状態Hの間のどの時点を状態Gとするかは、上述した状態Pの設定の仕方と同様で、予め設定しても良いし、測定毎に決めることとしても良い。
【0066】
以上のように、算出部14が反力を算出するとしても、加速度を算出した場合と同様の判定を行うことが可能である。
【0067】
また、本実施形態においては、駆動部12は鉛直方向下向きに駆動することとしたが、これに限らない。すなわち、実装部品が鉛直方向下向きに降下するのであれば、駆動部12自体が鉛直方向下向きに降下する必要はない。また、実装部品の降下方向に関しても、加速度あるいは反力の算出結果が図4や図5(b)の形状から大きく外れない程度であれば、鉛直方向から多少斜め方向に降下するようになっていても良い。
【0068】
また、本実施形態においては、加熱された液体半田をステージ10に搭載されることとしたが、これに限らない。すなわち、ステージ10に搭載する半田は固体の半田バンプとしても良い。この場合、図6に示すように、ステージ10の両脇に加熱部16を設ける。そして、駆動部12の駆動が開始すると同時に、あるいはその前後で、加熱部16は、ステージ10に搭載された半田バンプを加熱する。あるいは、実装部品が半田に接触した時点で、加熱を開始することとしても良い。これにより、半田バンプは溶融し、液体状態となる。
【0069】
なお、加熱部16の位置は、ステージ10の両脇に限定されない。例えば、ステージ10自体を、加熱の機能を有するステージとしても良い。あるいは、加熱部16を、部品搭載部11の先端付近に搭載しても良い。
【0070】
更に、図6に示すように、本実施形態の半田濡れ性判定装置は、制御部17を備えることとしても良い。そして、制御部17が、駆動部12の駆動の制御や加熱部16の加熱の制御を行うこととしても良い。この場合、制御部17は、駆動部12の駆動電流に制限値を設けることで、荷重制御も行うこととしても良い。
【0071】
更に制御部17は、位置センサ13と算出部14、判定部15とに接続され、位置信号や算出結果の送受信の中継点としての機能や、記録を行うこととしても良い。
【0072】
なお、制御部17は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ等を含み、プログラムによってこれらの制御を行うとしても良い。
【0073】
[第2の実施形態]
次に本発明の第2の実施形態における実装装置について述べる。
【0074】
特許文献2に記載の濡れ性試験方法を用いた場合、濡れ性試験時の試料温度と半田との温度差や、試験装置の設定温度と実測温度との差による影響によって、試験条件と実使用条件との間には少なからず違いが生じる。
【0075】
そのため、このような試験データに基づいて実際の実装を行った場合、半田の濡れが十分であるか否かの判断を誤ってしまう可能性がある。
【0076】
従って、実装装置に半田の濡れ性を判定する機能を設け、実際に実装しながら半田の濡れを判定すると、より良好な半田付けが可能となる。
【0077】
しかしながら、特許文献2のように反力を測定する方法の場合、装置が大掛かりとなってしまい、実装装置に適用することは困難であった。
【0078】
そこで、本実施形態における実装装置は、第1の実施形態における半田濡れ性判定装置の機能を搭載した実装装置とする。
【0079】
本実施形態における実装装置の構成について、図7を用いて説明する。図7に記載の実装装置は、ステージ20と、部品搭載部21と、駆動部22と、加熱部23と、制御部24と、位置センサ25と、算出部26と、判定部27と、を有する。
【0080】
ステージ20には、実装基板を搭載する。部品搭載部21は、実装基板に実装する実装部品を保持する。なお、実装部品としては、例えば、半導体部品や電子部品などが挙げられるが、これに限らない。
【0081】
駆動部22は、実装部品が実装基板の実装領域に向かって降下するよう、駆動する。
【0082】
加熱部23は、実装基板の上に搭載される半田を加熱する。
【0083】
制御部24は、駆動部22の駆動を制御する。また、制御部24は、部品搭載部21に保持された実装部品の直下に実装基板の実装領域が位置するよう、ステージ20の位置を制御する。更に、制御部24は、駆動部22の駆動電流に制限値を設けることで、荷重制御を行う。なお、制御部24は、CPUやメモリ等を含み、プログラムによってこれらの制御を行うとしても良い。
【0084】
位置センサ25は、部品搭載部21に保持された実装部品の位置を検出する。また、検出した位置を、位置信号として制御部24へ送信する。なお、本実施形態においては、位置センサ25による制御部24への位置信号の送信は無線で行うこととする。
【0085】
算出部26は、位置センサ25による検出結果に基づいて、実装部品の加速度を算出する。
【0086】
判定部27は、算出部26による実装部品の加速度の算出結果に基づいて、半田の濡れ性を判定する。
【0087】
次に、本実施形態における実装装置の動作について説明する。
【0088】
始めに、部品搭載部21に実装部品を保持させる。また、ステージ20には実装基板を搭載する。更に、実装基板上の、実装部品を実装する領域である実装領域に、半田バンプを搭載する。
【0089】
位置センサ25は、実装部品の位置を検出し、その検出結果を位置信号として制御部24へ送信する。なお、実装部品の位置の検出の仕方としては、位置センサ25が直接、実装部品の位置を検出することとしても良い。あるいは、位置センサ25は、部品搭載部21の位置を検出し、間接的に実装部品の位置を検出することとしても良い。すなわち、位置センサ25は、検出した部品搭載部21の位置に基づいて、実装部品の位置を検出することとしても良い。
【0090】
次に、制御部24は、位置センサ25から送出された位置信号に基づいて、ステージ20の位置を調整する。すなわち、部品搭載部21を鉛直方向下向きに降下させた場合に、実装部品が実装基板の実装領域に実装されるように、ステージ20の位置を調整する。
【0091】
制御部24は、ステージ20の位置調整を完了させた後、駆動部22の駆動を開始する。すなわち、実装部品が鉛直方向下向きに駆動するよう、駆動部22を駆動する。この時、制御部24は、駆動部22の駆動電流に制限値を設けることにより、駆動部22の鉛直方向の推力を制御する。
【0092】
そして、駆動部22の駆動が開始されると同時に、あるいはその前後で、加熱部23による半田バンプの加熱が開始される。加熱部23による加熱が開始されると、半田バンプは溶融し、液体状態となる。
【0093】
なお、駆動部22が駆動を開始した後も、位置センサ25は、実装部品の位置の検出及び位置信号の送出を続けている。
【0094】
算出部26は、位置信号に基づいて、実装部品の加速度を算出する。なお、算出部26は実装部品の速度も算出することとしても良い。
【0095】
ここで、駆動部22が駆動を開始してから、位置センサ25による検出結果に基づいて算出された実装部品の加速度の時間変化は、第1の実施形態と同様、図5(b)のようになる。
【0096】
次に、判定部27による、判定の仕方について説明する。
【0097】
判定部27は、算出部26が算出した加速度の算出結果を受信する。ここで、算出部26による加速度の算出結果は、制御部24を介して、判定部27に送信されることとしても良い。あるいは、算出部26から判定部27へ直接送信されることとしてもよい。
【0098】
判定部27は加速度の算出結果を受信すると、その加速度の変化を監視する。
【0099】
そして、判定部27は、実装部品の加速度が、状態Mとなった時点、すなわち、加速度が鉛直方向下向きに増加し出した時点を検出する。判定部27は、加速度が状態Mとなった時点を検出すると、この時点で半田の濡れが正常に開始したと判定する。
【0100】
次に判定部27は、実装部品の加速度が状態Qとなった時点、すなわち、加速度が鉛直方向下向きに増加した後、一定となった時点を検出する。判定部27は、加速度が状態Qとなった時点を検出すると、この時点で半田の濡れが最大となったと判定する。
【0101】
判定部27が、半田の濡れが最大となったと判定すると、その判定結果を制御部24に送信する。
【0102】
制御部24は、半田の濡れが最大となったという判定結果を受信すると、実行工程を完了させる。すなわち、部品搭載部21は実装部品を解放する。また、駆動部22の駆動及び加熱部23による加熱を停止する。
【0103】
なお、連続して他の実装工程を行う場合には、部品搭載部21は実装部品を解放した後、次の実装工程で用いる実装部品を保持し、次の実装工程を再開する。
【0104】
以上のように、本実施形態における実装装置を用いることにより、実際の実装工程において、半田の濡れ性を判定することが可能となる。
【0105】
すなわち、実際の実装時において、半田の濡れが最大となったことを確認することができるので、良好な半田付けが可能となる。
【0106】
また、半田の濡れが最大となったと判定した時点で、実装工程を完了させるため、実装工程に無駄な時間をかけることがない。同様の理由で、半田の濡れが十分でないにも関わらず、実装工程を完了させてしまうこともない。
【0107】
なお、第1の実施形態と同様、算出部26は、位置信号に基づいて反力を算出することとしても良い。
【0108】
また、実装に用いる半田は、始めから液体状態の半田としても良い。
【0109】
また、加熱部23についても、第1の実施形態と同様、ステージ20の両脇に搭載される必要はない。すなわち、ステージ20自体を、加熱の機能を有するステージとしても良い。あるいは、加熱部23を、部品搭載部21の先端付近に搭載しても良い。
【0110】
[第3の実施形態]
次に、本発明における実装装置の他の実施形態について述べる。
【0111】
本実施形態における実装装置の構成は、第2の実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0112】
本実施形態における実装装置の動作と、第2の実施形態における実装装置の動作とでは、判定部27の動作と、実装工程を完了させるタイミングが異なる。その他の動作に関しては、第2の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0113】
本実施形態における判定部27の動作について以下で説明する。
【0114】
判定部27は、第2の実施形態と同様、算出部26による実装部品の加速度の算出結果を監視する。
【0115】
判定部27は、実装部品の加速度が、状態Mとなった時点、すなわち、加速度が鉛直方向下向きに増加し出した時点を検出する。判定部27は、加速度が状態Mとなった時点を検出すると、半田の濡れが正常に開始したと判定する。
【0116】
次に判定部27は、実装部品の加速度が状態Oとなった時点、すなわち、加速度が0となった時点を検出する。判定部27は、加速度が状態Oとなった時点を検出すると、半田の濡れが進行し、反力が0となったと判定する。
【0117】
そして、判定部27は実装部品の加速度が状態Oを経過した後、状態Pに到達した時点を検出する。そして、判定部27は、状態Pに到達した時点を検出すると、半田が実装に適した濡れとなったと判定する。状態Pとは、半田の濡れが、実装に必要な濡れに達した状態である。
【0118】
以下、状態Pの設定の仕方について、詳細に説明する。
【0119】
半田の濡れは、状態Qの時点で最大となる。しかしながら、第1の実施形態において説明したように、半田の濡れが最大となる前であっても、半田は実装に必要な濡れとしては十分な状態に達している場合がある。
【0120】
そのため、過去の実装工程や試験における算出結果を参照し、予め、状態Oと状態Qとの間の任意の状態Pとなるタイミングを、実装に必要な濡れに達するタイミングとして、判定部27に設定する。なお、状態Pとなるタイミングの設定は、あらかじめ決められた基準で設定しておいても良い。例えば、状態Oを経過してから状態Qとなるまでに掛かる時間をtとすると、状態OとなってからXt(0≦X≦1)経過した時点を状態Pと設定しても良い。もしくは、そのような決められた基準を設けず、半田や実装部品、あるいは実装基板の材料等に応じて、状態Pとなるタイミングを設定しても良い。そして、判定部27は、実装部品の加速度が状態Oとなったことを検出した後、状態Pとなったことを検出した時点で、半田の濡れが適切であると判定するように設定する。
【0121】
一方、過去の実装工程や試験における算出結果がなく、実装に必要な濡れに達するタイミングが分からない場合には、状態Qとなった時点を、半田の濡れが適切であると判定するようにしても良い。
【0122】
判定部27は、半田の濡れが適切であると判定すると、その判定結果を制御部24に送信する。
【0123】
制御部24は、半田の濡れが適切であるという判定結果を受信すると、実装工程を完了させる。すなわち、部品搭載部21は実装部品を解放する。また、駆動部22の駆動及び加熱部23による加熱を停止する。
【0124】
以上のように、本実施形態においては、半田の濡れが適切であると判定されると、実装工程が完了されることとなる。そのため第2の実施形態と比較して、より効率的に、実装工程を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0125】
1 BGA実装機構
2 アーム
3 本加熱用遮蔽
4 実装基板
5 加熱部
10、20 ステージ
11、21 部品搭載部
12、22 駆動部
16、23 加熱部
17、24 制御部
13、25 位置センサ
14、26 算出部
15、27 判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を保持する部品搭載部と、
前記部品搭載部を駆動する駆動部と、
前記部品搭載部の駆動方向に位置し、半田を搭載するステージと、
前記部品の位置を検出する位置センサと、
前記位置センサによる検出結果に基づいて、前記部品の加速度または前記部品に働く反力を算出する算出部と、
前記算出部による算出結果に基づいて、前記半田の濡れ性を判定する判定部と、を有することを特徴とする半田濡れ性判定装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記加速度あるいは前記反力が鉛直方向下向きに増加し出した時点を検出することを特徴とする、請求項1に記載の半田濡れ性判定装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記加速度あるいは前記反力が鉛直方向下向きに増加した後、一定になった時点を検出することを特徴とする、請求項1または2に記載の半田濡れ性判定装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記加速度あるいは前記反力が鉛直方向下向きに増加して0となった時点から、一定になる時点までの間の任意のタイミングを検出することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の半田濡れ性判定装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の半田濡れ性判定装置を備え、
前記ステージは、前記半田を搭載した基板を搭載するステージであることを特徴とする実装装置。
【請求項6】
前記判定部が、前記加速度あるいは前記反力が鉛直方向下向きに増加した後、一定になった時点を検出すると、
前記部品搭載部は、前記部品を解放することを特徴とする請求項5に記載の実装装置。
【請求項7】
前記判定部が、前記加速度あるいは前記反力が鉛直方向下向きに増加して0となった時点から、前記加速度が一定になる時点までの間の任意のタイミングに到達したことを検出すると、
前記部品搭載部は、前記部品を解放することを特徴とする請求項5に記載の実装装置。
【請求項8】
部品を保持した部品搭載部を、ステージに搭載された半田の方向へ駆動する駆動工程と、
前記部品の位置を検出する位置検出工程と、
前記位置検出工程による検出結果に基づいて、前記部品の加速度または前記部品に働く反力を算出する算出工程と、
前記算出工程による算出結果に基づいて、前記半田の濡れ性を判定する判定工程と、を有することを特徴とする半田濡れ性判定方法。
【請求項9】
前記判定工程は、前記加速度あるいは前記反力が鉛直方向下向きに増加し出した時点を検出することを特徴とする、請求項8に記載の半田濡れ性判定方法。
【請求項10】
前記判定工程は、前記加速度あるいは前記反力が鉛直方向下向きに増加した後、一定になった時点を検出することを特徴とする、請求項8または9に記載の半田濡れ性判定方法。
【請求項11】
前記判定工程は、前記加速度あるいは前記反力が鉛直方向下向きに増加して0となった時点から、一定になる時点までの間の任意のタイミングを検出することを特徴とする、請求項8乃至10のいずれか一項に記載の半田濡れ性判定方法。
【請求項12】
請求項8乃至11のいずれか一項に記載の半田濡れ性判定方法を有し、
前記ステージは、前記半田を搭載した基板を搭載するステージであることを特徴とする実装方法。
【請求項13】
前記判定工程により、前記加速度あるいは前記反力が鉛直方向下向きに増加した後、一定になった時点が検出されると、
前記部品搭載部から前記部品を解放する完了工程を行うことを特徴とする請求項12に記載の実装方法。
【請求項14】
前記判定工程により、前記加速度あるいは前記反力が鉛直方向下向きに増加して0となった時点から、前記加速度が一定になる時点までの間の任意のタイミングに到達したことが検出されると、
前記部品搭載部から前記部品を解放する完了工程を行うことを特徴とする請求項12に記載の実装方法。
【請求項15】
部品を保持した部品搭載部を、ステージに搭載された半田の方向へ駆動する駆動工程と、
前記部品の位置を検出する位置検出工程と、
前記位置検出工程による検出結果に基づいて、前記部品の加速度または前記部品に働く反力を算出する算出工程と、
前記算出工程による算出結果に基づいて、前記半田の濡れ性を判定する判定工程と、を実行させるためのプログラム。
【請求項16】
前記判定工程において、前記加速度あるいは前記反力が鉛直方向下向きに増加し出した時点を検出することを特徴とする請求項15に記載のプログラム。
【請求項17】
前記判定工程において、前記加速度あるいは前記反力が鉛直方向下向きに増加した後、一定になった時点を検出することを特徴とする請求項15または16に記載のプログラム。
【請求項18】
前記判定工程において、前記加速度あるいは前記反力が鉛直方向下向きに増加して0となった時点から、一定になる時点までの間の任意のタイミングを検出することを特徴とする請求項15乃至17のいずれか一項に記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−29445(P2011−29445A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174351(P2009−174351)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】