説明

半発酵飲食品の製造方法、及び半発酵飲食品

【課題】 重合ポリフェノール含有量に優れた半発酵茶及び重合ポリフェノール含有量に優れた食べる半発酵茶を製造する。
【解決手段】 生の茶葉を切断して水分を噴霧、所定温度に加温し、空気を導入しつつ攪拌して半発酵させる。空気の導入速度は1.0〜15L/分の範囲内とし、攪拌の速度は20〜40回転/分、導入する空気の湿度は80〜100%の範囲内とする。また、pHは4〜5の範囲内とする。さらに、半発酵を45〜55℃の範囲内で0.5〜3時間行った後、酵素を不活性化し、得られた半発酵物から重合ポリフェノールを抽出する。抽出された重合ポリフェノールに、半発酵茶の抽出残渣の乾燥粉末を混合して固形化する。このとき、半発酵茶の抽出残渣の乾燥粉末に対する重合ポリフェノールの配合割合は、10〜40重量%とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半発酵飲食品の製造方法に関し、特に茶葉を切断して水分をスプレー状で噴霧し、所定温度に加温して、空気を導入しつつ攪拌し、生葉中の酵素(ポリフェノールオキシダーゼ)を活用して、酵素反応を行うことにより、重合ポリフェノールの含有率の高い半発酵飲食品を製造する方法及び半発酵飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
烏龍茶などの半発酵茶は、青茶(チンチャ)と呼ばれ、15%から70%くらいの発酵度の茶である。発酵は、茶葉の表面や維管束系に含まれる酸化酵素の働きにより、カテキン類を含むタンニンなどを分解して行われるが、半発酵茶の製造工程においては、発酵途中で火入れを行い、その発酵を途中で留めてしまう。これは、茶葉の主な香り成分であるテンペン類が半発酵状態において良く引き出されるためである。
【0003】
また、烏龍茶には、烏龍茶ポリフェノールとよばれる重合ポリフェノール(重合カテキン)が含まれている。この重合ポリフェノールは、茶葉に含まれるカテキン類が半発酵によって重合したものであり、脂肪の吸収を抑制し、体重の増加や中性脂肪の上昇を妨げるといったダイエット効果の高い成分として注目されている。
しかしながら、従来の烏龍茶における重合ポリフェノールの含有割合は比較的低く、2〜3重量%程度しか含まれていなかった。
【0004】
また、従来の烏龍茶の製造方法では、発酵度を高めても、含有する重合ポリフェノール量を大きく増加させることは困難であり、重合ポリフェノール含有量を豊富に含む烏龍茶を製造することはできなかった。
【0005】
また、このような健康効果の高い重合ポリフェノールを、烏龍茶のような飲料ではなく、食品としてすることができれば、消費者の重合ポリフェノールの摂取機会を一層増加させることが可能となる。
【0006】
ここで、半発酵茶の製造方法に関連する先行技術としては、例えば特許文献1〜3に記載の半発酵茶又は半発酵茶抽出液の製造方法を挙げることができる。
これらの製造方法によれば、苦味、渋味が少なく、雑味のない良好な風味の半発酵茶を得ることが可能とされている。
【0007】
【特許文献1】特開2007−174979号公報
【特許文献2】特開2007−174980号公報
【特許文献3】特開2007−174981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来の半発酵茶の製造方法は、半発酵茶の味覚を向上させるためのものであり、半発酵茶における重合ポリフェノールの含有量を増加させることのできるものではなかった。
また、従来の技術において、このような重合ポリフェノールを含有する半発酵茶を食品として提供することのできるものは見あたらない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、茶葉を切断して水分をスプレー状に噴霧し、所定温度に加温して、空気を導入しつつ攪拌し、生葉中の酵素(ポリフェノールオキシダーゼ)を活用して、酵素反応を行うことにより、重合ポリフェノールの含有率の高い半発酵飲食品を製造する方法及び半発酵飲食品を提供することを目的とする。また、このようにして製造された半発酵茶を飲料のみならず食品として提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の半発酵飲食品の製造方法は、茶葉を切断して水分をスプレー状に噴霧し、所定温度に加温し、空気を導入し茶葉中の酵素(ポリフェノールオキシダーゼ)を活用して、酵素反応を行う方法としてある。
半発酵飲食品の製造方法をこのようにすれば、重合ポリフェノールの含有率の高い半発酵茶を製造することができる。
【0011】
すなわち、このように茶葉を切断して細分化することで、茶葉の表面積を増加させ、茶葉に含まれる酵素(ポリフェノールオキシダーゼ)によってカテキン類の酸化重合反応を促進させることができ、重合ポリフェノールをより効率的に生成させることが可能となる。
【0012】
このとき、茶葉のサイズを小さくすることにより、茶葉の表面積を大きくして空気にふれやすくすることができ、酸化重合反応を促進させることができる。
一方、経験上、あまり細かくすると空隙が小さくなり、空気の通りが悪くなって、酸化重合反応の効率が低下する。
このような観点から、切断する茶葉のサイズとしては、5mm〜15mmとすることが好ましい。
【0013】
また、半発酵における温度をポリフェノールオキシダーゼの活性に適する温度に調整するとともに、空気を導入しつつ攪拌することでカテキン類の酸化重合反応を一層促進させることが可能となる。
さらに、水を霧状にすることで、細かな茶葉の表面に十分に水分を行き渡らせつつ、かつ、茶葉と空気との接触をできるだけ妨げないようにすることが可能となる。
【0014】
また、本発明の半発酵飲食品の製造方法は、茶葉として生の茶葉を用いることが好ましい。
これにより、半発酵飲食品を効率的に製造できるのみならず、生葉中に含まれる酵素(ポリフェノールオキシダーゼ)を利用して半発酵を行うことができ、重合ポリフェノール高含有の半発酵飲食品を得ることが可能となる。
【0015】
また、本発明の半発酵飲食品の製造方法は、半発酵工程において、1.0〜15L/分の速度で空気を導入する方法としてある。
また、本発明の半発酵飲食品の製造方法は、半発酵工程において、茶葉を20〜40回転/分の速度で攪拌する方法としてある。
さらに、本発明の半発酵飲食品の製造方法は、半発酵工程において、導入する空気の湿度を80〜100%の範囲内とする方法としてある。
これらの方法を用いることで、茶葉に含まれるカテキン類の酸化重合反応をより促進させることができ、重合ポリフェノールを一層効率的に生成させることが可能となる。
【0016】
また、本発明の半発酵飲食品の製造方法は、散布する水のpHを、4〜5の範囲内とする方法としてある。
また、本発明の半発酵飲食品の製造方法は、半発酵が、45〜55℃の範囲内で行われるように加温する方法としてある。
これらの方法により、茶葉に含まれるポリフェノールオキシダーゼを活性化させることができ、重合ポリフェノールをより効率的に生成させることが可能となる。
【0017】
また、本発明の半発酵飲食品の製造方法は、上記の手順で半発酵を0.5〜3時間行った後、過熱して酵素を不活性化させ、抽出水を添加して重合ポリフェノールを抽出する方法としてある。
半発酵飲食品の製造方法をこのようにすれば、重合ポリフェノール含有量の高い重合ポリフェノール含有エキスを生成することが可能となる。
【0018】
また、本発明の半発酵飲食品の製造方法は、抽出された重合ポリフェノールに、半発酵茶の抽出残渣の乾燥粉末を混合して固形化する方法としてある。また、半発酵茶の抽出残渣の乾燥粉末に対する重合ポリフェノールの配合割合を、10〜40重量%とする方法としてある。
半発酵飲食品の製造方法をこのようにすれば、重合ポリフェノール含有率の高い半発酵茶を食品として提供することが可能となる。
【0019】
また、本発明の半発酵飲食品は、以上のいずれかの方法により製造されたものとしてある。
このようにして製造された半発酵飲食品は、重合ポリフェノールの含有量に優れ、高い健康効果を奏するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、重合ポリフェノールの含有量を従来に比較して大きく増加させることのできる半発酵茶の製造方法を提供することができる。
また、このような重合ポリフェノールの含有量に優れた半発酵茶を食品として提供することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、茶葉を切断して水を加え、所定温度に加温し、空気を導入しつつ攪拌して発酵させることを特徴とする。
以下、本発明の製造方法により、烏龍茶を製造する実施形態とその実施例について詳細に説明する。
【0022】
(茶葉)
発酵茶、半発酵茶、不発酵茶の共通の原料であるツバキ科の常緑樹、カメリアシネンシスの木の葉を使用する。
すなわち、このカメリアシネンシスの木の葉を発酵させずに乾燥したものが緑茶、発酵させてから乾燥したものが紅茶、その中間の半発酵状態で乾燥したものが半発酵茶である。
【0023】
特に、本実施形態は半発酵茶である烏龍茶を製造するものであるが、従来のように乾燥させながら葉を発酵させるのではなく、摘み採られた生葉をそのまま使用して発酵させる。これにより製造工程を省略して、製造コストと時間を低減できるのみならず、生葉に含まれるポリフェノールオキシダーゼにより効率よく重合ポリフェノールを得ることが可能となる。
【0024】
茶葉の成分としては、食物繊維を含む炭水化物が44.5%、タンパク質が24.5%、カテキン類が14.0%、ミネラルが5.4%、カフェインが2.6%、その他脂質や水分、ビタミンなどが9.0%含まれており、カテキン類が豊富に含有されている。また、カテキン類の種類としては、エピガロカテキンガレート(EGCg)が53.9%、エピガロカテキン(EGC)が17.6%、エピカテキンガレート(ECg)が12.5%、エピカテキン(EC)が5.8%の割合で含まれている。
【0025】
また、茶葉には、自然の状態でカテキン類を酸化重合するポリフェノールオキシダーゼが含まれており、茶葉の発酵工程において、このポリフェノールオキシダーゼにより茶葉に含まれるカテキン類が酸化重合することで、健康効果の高い重合ポリフェノールが生成する。
本実施形態の製造方法では、このカテキン類の重合を促進することで、従来に比較して重合ポリフェノールの含有割合が高い烏龍茶を製造ことが可能となっている。
【0026】
次に、本実施形態の烏龍茶の製造方法について、図1を参照して説明する。同図は、本実施形態の烏龍茶の製造工程を示している。
(A)摘採工程
円熟した香りを得るために、茶樹の先端部分の新芽と若葉からなる「一芯三葉」を丹念に手で摘み採って、茶の生葉を得る。
【0027】
(B)破砕工程
得られた生葉をカッターミキサーで破砕して細かくする。これにより、茶葉が空気と接する表面積を増加させることができ、カテキン類の酸化重合反応を促進させることが可能となる。
【0028】
(C)加湿工程
粉砕した茶葉を回転ドラムに入れて、水分を噴霧する。これによって、半発酵をカテキン類の酸化重合反応に適切な湿度で効率的に行わせることが可能であり、湿度を80〜100%程度とすることが好ましく、90%程度とすることが特に好ましい。
【0029】
このとき、破砕した生葉10kgに対して、1〜5Lの水、例えば4Lの水をスプレーにて霧状に散布することが好ましい。このようにすれば、細かな茶葉の表面に十分に水分を行き渡らせつつ、かつ、茶葉と空気との接触をできるだけ妨げないようにすることが可能となる。
【0030】
また、添加する水のpHは、4〜5の範囲内のものとすることが好ましく、pH4.5程度とすることが特に好ましい。ポリフェノールオキシダーゼは、このようなpHにおいて活性化するためである。
【0031】
(D)半発酵工程
回転ドラムを回転させ、茶葉を攪拌しながら、半発酵させる。攪拌するのは、茶葉と空気との接触を効率的に行うためであり、20〜40回転/分とすることが好ましく、25回転/分とすることが特に好ましい。
【0032】
また、このときの発酵温度は、45〜55℃とすることが好ましく、50℃程度とすることが特に好ましい。茶葉に含まれるカテキン類の酸化重合は、このような温度で最も効率的に行われるためである。
【0033】
さらに、この半発酵工程において、回転ドラム内に空気を導入することが好ましい。これにより、茶葉に含まれるカテキン類の酸化重合が促進されるためである。導入速度は、生葉10kgに対し、1.0〜15L/分とすることが好ましく、10L/分とすることが特に好ましい。
【0034】
また、導入する空気の湿度は、80〜100%とすることが好ましく、90%程度とすることが特に好ましい。導入する空気の湿度をこのようにすれば、カテキン類の酸化重合が効率的に行われるためである。
半発酵工程の時間は、十分に酸化重合反応を行わせる観点から、0.3〜3時間とすることが好ましく、1.5時間程度とすることが特に好ましい。
【0035】
(E)不活性化工程
次に、半発酵を行った茶葉を乾燥後、抽出槽に移して水を加えて混合し、混合液の温度を90℃まで昇温する。これにより、混合液に含まれる酵素を失活させ、半発酵を留め、ポリフェノールを抽出する。このときに加える水の量は100L程度とすることが好ましい。
【0036】
(F)抽出工程
次に、抽出槽における混合液を攪拌しながら、抽出機を使用して重合ポリフェノールを抽出する。このとき使用する抽出機としては、例えば二重缶効用抽出槽を用いることができる。また、抽出液をリサイクルするシステムを導入して、抽出効率を高めることも好ましい。
【0037】
(G)粉末化工程
抽出して得られた重合ポリフェノール含有エキスを、減圧濃縮してスプレードライ又は減圧乾燥機により乾燥し、粉砕機を用いて粉末化する。
これによって、重合ポリフェノール含有エキス末を得ることができる。
本実施形態により製造される烏龍茶飲食品の製品形態としては、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉末、顆粒、液状、ペースト状、ゼリー状等の各種形態とすることが可能である。
【0038】
すなわち、本実施形態において、この重合ポリフェノール含有エキス末をそのまま製品とすることもできる。また、造粒、打錠成形、カプセル化などの手段で成形し、製品とすることもできる。さらに、パン、水産練製品、畜肉練製品、乳製品等の食品や、清涼飲料、乳飲料、蛋白質補給飲料等の飲料に、栄養補強等の目的で添加することもできる。
【0039】
(H)固形化工程
さらに、本実施形態において、別個に製造した従来の粉末状の烏龍茶に、重合ポリフェノール含有エキス末をブレンドして固形化し、重合ポリフェノールを豊富に含有する「食べる烏龍茶」を製造することもできる。
これにより、消費者に対し、高濃度の重合ポリフェノールの新たな摂取機会を提供することが可能となる。
ブレンドに使用する粉末状の烏龍茶としては、例えば重合ポリフェノール抽出残渣の乾燥粉末などを用いることができる。
【0040】
また、この固形化工程において、デンプンなどのその他の成分を添加することも好ましい。これは、本実施形態の「食べる烏龍茶」を、安定的に丸剤などに形成しやすくするためである。
また、蜂蜜などの糖を添加することも好ましい。これは、重合ポリフェノール含有物には苦味があることから、甘味を加えて食べやすくするためである。
【実施例】
【0041】
(実施例1)
摘み採った茶葉の生葉10kgをカッターミキサーで細かく破砕し、回転ドラム(製品名:BTJ-1000型クログワイ式糖衣機、中国江蘇瑰集団有限公司社製)に入れて、2N−塩酸水溶液を用いてpHを4.5に調整した水4Lをスプレーで散布した。25回転/分で回転ドラムを回転させて、50℃に加温して、茶葉を攪拌しながら、1.5時間、半発酵させた。また、この半発酵工程において、湿度90%の空気を10L/分の速度で導入した。
【0042】
次に、半発酵させた茶葉を乾燥後、抽出槽に移し、100Lの水を加えて混合し、90℃まで昇温して、酵素を失活させた。抽出槽における混合液を攪拌しながら、抽出機(温州利宏軽工機械有限会社製)を使用して重合ポリフェノールを抽出し、100Lの重合ポリフェノール含有エキスを得た。なお、本実施例で使用した抽出機は、一式の原料前処理設備の一部であり、この原料前処理設備には、エキス抽出タンク、発酵タンク、ろ過設備、濃縮タンク、及びスプレードライの各設備が備えられている。
【0043】
この重合ポリフェノール含有エキスを、減圧濃縮してスプレードライにより乾燥し、粉砕機を用いて粉末化して、500gのポリフェノール含有エキス末(サンプルA)を得た。ポリフェノール抽出烏龍茶残渣の一部(乾燥品)600gにこの重合ポリフェノール含有エキス末500gをブレンドし、さらにその他成分及び糖を加えて固形化し、「食べる烏龍茶」1200gを得た。このとき、その他成分としてデンプンを50g、糖として蜂蜜を50g添加した。
【0044】
(実施例2)
半発酵工程における空気の導入速度を5L/分とした点以外は、実施例1と同様に行って、400gの重合ポリフェノール含有エキス末(サンプルB)を得た。
【0045】
(実施例3)
半発酵工程における空気の温度が40℃となるように加温した点以外は、実施例1と同様に行って、350gの重合ポリフェノール含有エキス末(サンプルC)を得た。
【0046】
(比較例1)
摘み採った茶葉の生葉1kgを乾燥させ、粉砕することなく回転ドラム(製品名:BTJ-1000型クログワイ式糖衣機、中国江蘇瑰集団有限公司社製)に入れて、水100mlを添加した。
室温(37℃)にて、空気導入を行うことなく、25回転/分で回転ドラムを回転させて、2時間、半発酵させた。次に、半発酵させた茶葉の乾燥品を抽出槽に移し、100Lの水を加えて混合し、90℃まで昇温して、酵素を失活させた。抽出槽における混合液を攪拌しながら、抽出機(温州利宏軽工機械有限会社製)を使用して重合ポリフェノール末を抽出し、150gの重合ポリフェノール含有エキス末(サンプルD)を得た。
【0047】
(比較例2)
半発酵の時間を4時間とした点以外は、比較例1と同様に行って、100gの重合ポリフェノール含有エキス末(サンプルE)を得た。
【0048】
(試験例1)
実施例1〜3及び比較例1,2により得られた重合ポリフェノール含有エキスの各サンプルについて、HPLC(High Performance Liquid Chromatography 高速液体クロマトグラフィー)により重合ポリフェノール含有量を測定した。図2は、実施例1のHPLC分析結果を、図3は、各サンプルの重合ポリフェノール含有量を示している。
HPLC分析方法による重合ポリフェノール含有量は、文献「肥満研究」vol.11,No.1,2005,p.88-90に記載の方法を参考に、エピガロカテキンガレートを標準物質として算出した。
【0049】
図3に示されるように、各サンプルに含まれる重合ポリフェノールは、実施例1のサンプルAが21.1%、実施例2のサンプルBが18.0%、実施例3のサンプルCが16.0%、比較例1のサンプルDが3.6%、比較例2のサンプルEが2.5%となっている。
【0050】
このように、本実施形態の烏龍茶の製造方法に係るサンプルA〜Cの重合ポリフェノール含有量は、比較例のサンプルD,Eのものに比較して、著しく高いことがわかる。
これにより、本実施形態の烏龍茶の製造方法によれば、烏龍茶における重合ポリフェノールの含有量を従来に比較して大きく増加できることが明らかとなった。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の烏龍茶の製造方法によれば、烏龍茶における重合ポリフェノールの含有量を従来に比較して大きく増加させることができる。また、このような重合ポリフェノールの含有量に優れた烏龍茶を固形の食品として提供することも可能となる。
【0052】
本発明は、以上の実施形態や実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記の実施形態及び実施例では、半発酵茶として烏龍茶を製造する例を示したが、これに限定されるものではなく、白茶や黄茶、包種茶(ほうしゅちゃ)など他の半発酵茶の製造に適用することが可能である。また、半発酵工程の時間をより長くしたり、重合反応の程度を比色計を用いてスペクトル分析により判定し、不活性化工程に進むか否かを判断するなど適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、重合ポリフェノール含有率の高い半発酵茶や、重合ポリフェノール含有率の高い食品を提供する場合に好適に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係る烏龍茶の製造工程を示す図である。
【図2】本発明の実施例1により得られた重合ポリフェノール含有エキスのHPLC分析結果を示す図である。
【図3】本発明の実施例1〜3及び比較例4,5により得られた重合ポリフェノール含有エキスにおける重合ポリフェノール含有量を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
(A)摘採工程
(B)破砕工程
(C)加湿工程
(D)半発酵工程
(E)不活性化工程
(F)抽出工程
(G)粉末化工程
(H)固形化工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶葉をカッターミキサーなどで切断して水分を噴霧し、所定温度に加温、空気を導入しつつ攪拌して半発酵させることを特徴とする半発酵飲食品の製造方法。
【請求項2】
前記茶葉が生の茶葉〔酵素(ポリフェノールオキシダーゼ)を含有〕であることを特徴とする請求項1記載の半発酵飲食品の製造方法。
【請求項3】
前記空気の導入速度が、1.0〜15L/分の範囲内であることを特徴とする請求項1又は2記載の半発酵飲食品の製造方法。
【請求項4】
前記攪拌の速度が、20〜40回転/分であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半発酵飲食品の製造方法。
【請求項5】
前記空気の湿度が、80〜100%の範囲内であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の半発酵飲食品の製造方法。
【請求項6】
前記水のpHが、4〜5の範囲内であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の半発酵飲食品の製造方法。
【請求項7】
前記加温により、半発酵が、45〜55℃の範囲内で行われることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の半発酵飲食品の製造方法。
【請求項8】
前記半発酵を0.5〜3時間を行った後、続いて熱風乾燥後、加水及び加熱によって酵素を不活性化し、得られた半発酵物から重合ポリフェノールを抽出することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の半発酵飲食品の製造方法。
【請求項9】
前記抽出された重合ポリフェノールに、半発酵茶の抽出残渣の乾燥粉末を混合して固形化することを特徴とする請求項8記載の半発酵飲食品の製造方法。
【請求項10】
前記半発酵茶の抽出残渣の乾燥粉末に対する前記重合ポリフェノールの配合割合が、10〜40重量%であることを特徴とする請求項9記載の半発酵飲食品の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10に記載の半発酵飲食品の製造方法により製造された半発酵飲食品。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−247232(P2009−247232A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−96174(P2008−96174)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(399080490)株式会社シンギー (7)
【Fターム(参考)】