説明

半芳香族ポリアミド複合物品およびその調製方法

ポリアミド組成物と強化繊維とを含むとともに4mmの厚さを有する試験片上で5mm/分の速度でISO方法527−2:1993によって測定したときに少なくとも約16GPaの引張弾性率を有する第1の構成要素と、ポリアミド組成物を含む第2の構成要素と、第1の構成要素と第2の構成要素との間の任意の結合層とを含む半芳香族ポリアミド複合物品。第1の構成要素および/または第2の構成要素のポリアミド組成物は半芳香族ポリアミド組成物である。第1の構成要素上に半芳香族ポリアミド組成物を射出成形および/または射出圧縮成形することにより第2の構成要素は調製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド組成物を含む繊維強化材料を含む構成要素と、ポリアミド組成物を含むオーバーモールドされた構成要素と、それらの構成要素の間の任意の結合層とを含む半芳香族ポリアミド複合物品であって、ポリアミド組成物の少なくとも一方が半芳香族ポリアミド組成物である物品に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの熱可塑性組成物およびそれらの比較的軽い重量ならびに耐腐食性によってもたらされる設計の融通性は、多くの用途において金属構成要素の代替としての熱可塑性組成物を魅力的な材料にしている。しかし、熱可塑性組成物は、これらの用途の多くの要件を満たすために、剛性、強度、靱性および/または他の物理的特性の不十分な組み合わせを有することが多い。特に半芳香族ポリアミドは、自動車用途を含む多くの用途のために広くて有用な温度範囲にわたってほぼ一定の剛性を示すことが可能であるので、多くの金属代替用途において用いるために望ましい材料であろう。半芳香族ポリアミド組成物に繊維強化剤を添加すると良好な剛性を有する材料をもたらすことが可能であるが、この改善は、得られる材料の靱性を犠牲にしていることが多い。従って、半芳香族ポリアミド構造体を種々の用途における金属構成要素の代替品として用いるために適するようにする物理的特性を有する半芳香族ポリアミド構造体を製造することが望ましいであろう。
【0003】
米国特許公報(特許文献1)には、剛性中空熱可塑性部材が結合されている剛性支持体を有する成形品が開示されている。米国特許公報(特許文献2)には、繊維強化熱成形性結晶質ポリマー複合材と第2の熱成形性ポリマーの接着剤層の積層物を含む構造熱可塑性複合材料が開示されている。米国特許公報(特許文献3)には、結晶質ポリアミド組成物および結晶質ポリアミド組成物から製造された積層物が開示されている。(特許文献4)には、繊維強化プラスチック構成要素の製造の方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,644,722号明細書
【特許文献2】米国特許第5,219,642号明細書
【特許文献3】米国再発行特許第34,447号明細書
【特許文献4】欧州特許第第1,387,760号明細書
【特許文献5】米国特許第3,264,272号明細書
【特許文献6】米国特許第4,187,358号明細書
【特許文献7】米国特許第5,207,961号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(a)表面を有するとともにポリアミド組成物と強化繊維とを含む繊維強化材料を含む第1の構成要素であって、第1の構成要素は射出成形によって調製されず、繊維強化材料が4mmの厚さを有する試験片上で5mm/分の速度でISO方法527−2:1993によって測定したときに少なくとも約16GPaの引張弾性率を有する第1の構成要素と、
(b)任意の結合層が存在するとき、結合層の第1の表面が第1の構成要素の表面と接触しているように、相反する第1の表面と第2の表面とを有する任意の結合層と、
(c)ポリアミド組成物を含む第2の構成要素と
を含む半芳香族ポリアミド複合物品であって、
第1の構成要素のポリアミド組成物および/または第2の構成要素のポリアミド組成物が半芳香族ポリアミド組成物であり、任意の結合層が存在しないとき、第1の構成要素の表面上に組成物を射出成形および/または射出圧縮成形し、結合層が存在するとき、任意の結合層の第2の表面上に第2の構成要素の組成物を射出成形および/または射出圧縮成形する工程を含む方法によって物品が調製される物品が本明細書において開示され、権利請求されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の物品は、ポリアミド組成物と強化繊維とを含む繊維強化材料を含む第1の構成要素と、ポリアミド組成物を含む第2の構成要素とを含む複合構造体である。これらの構造体は、第1の構成要素の少なくとも1つの表面上に第2の構成要素のポリアミド組成物を射出成形および/または射出圧縮成形することにより形成される。本発明の1つの実施形態において、第2の構成要素は、第1の構成要素の表面に直接接触している。本発明の別の実施形態において、異なる材料を含む結合層は、第2の構成要素と第1の構成要素のオーバーモールドされた表面の全部または一部との間に存在してもよい。本発明の幾つかの実施形態において、第1の構成要素は、第2の構成要素によって全体的にまたは部分的に包まれていてもよい。
【0007】
第1の構成要素、第2の構成要素または両方の構成要素のポリアミド組成物は半芳香族ポリアミド組成物である。第1の構成要素および第2の構成要素のポリアミド組成物は同じかまたは異なってもよい。本発明の1つの実施形態において、第1の構成要素および第2の構成要素のポリアミド組成物は、両方共に半芳香族ポリアミド組成物である。半芳香族ポリアミド組成物は同じかまたは異なってもよい。
【0008】
第1の構成要素は、打抜き、スタンピング、熱成形、機械加工および圧縮成形などの1つまたは複数に限定されないが、それらなどのプロセスによって繊維強化材料から形成してもよい。第1の構成要素は射出成形によって調製されない。
【0009】
繊維強化材料は、4mmの厚さを有する試験片上で5mm/分の速度でISO方法527−2:1993によって決定したときに少なくとも約16GPa、または好ましくは少なくとも約20GPa、またはより好ましくは少なくとも約30GPaの引張弾性率を有する。
【0010】
繊維強化材料は、当業者に知られている好適な任意の方法を用いて形成してもよい。繊維強化材料は、例えば、強化繊維および少なくとも1種のポリアミド組成物の1つまたは複数の層を含む積層物であって、繊維層がポリマー組成物によって含浸されている積層物の形態をとってもよい。この積層物は、例えば熱プレスによってポリアミド組成物シートと繊維を例えば積層することにより形成させてもよい。繊維は、織マットまたは不織マット、一方向ストランドなどの当業者に知られている好適な任意の形態を取ってもよく、異なる層は繊維の異なる種類から形成させてもよく、および/または所定の任意の層は、繊維の2つ以上の種類から形成させてもよい。繊維は、一方向、二方向または多方向であってもよい。予め含浸させた一方向繊維および繊維束は、織マットまたは不織マットあるいは積層または繊維強化材料を形成させる他の方法のために好適な他の構造体に成形してもよい。繊維強化材料は、予め含浸させた一方向材料または予め含浸させた材料の多軸積層物の形態を取ってもよい。
【0011】
繊維強化材料中で用いられる繊維は公的な任意の繊維であってもよく、2つ以上の材料の混合物であってもよい。好ましい繊維には、ガラス繊維、炭素繊維およびアラミド繊維が挙げられる。
【0012】
本発明の1つの実施形態において、第2の構成要素の組成物は、第1の構成要素の少なくとも1つの表面上に射出成形および/または射出圧縮成形される。第1の構成要素は、第2の構成要素によって全体的にまたは部分的に包まれていてもよい。第1の構成要素は、第2の構成要素の組成物を溶融形態で注入するモールドに挿入してもよい。従って、第2の構成要素は第1の構成要素の表面に直接接触している。
【0013】
本発明の別の実施形態において、第2の構成要素の組成物は、第1の構成要素の少なくとも1つの表面に接触している反対表面を有する結合層の表面上に射出成形および/または射出圧縮成形される。本発明の構造において、結合層は、第1の構成要素および第2の構成要素に接着される。結合層は、第1の構成要素と第2の構成要素との間の接着を促進するように作用する場合があり、第1の構成要素および第2の構成要素中で用いられるポリアミド以外の1つまたは複数の高分子組成物を含んでもよい。結合層は、第2の構成要素の組成物を上に射出成形および/または射出圧縮成形する第1の構成要素の表面上に置かれた1つまたは複数のシートの形態をとってもよい。結合層は第1の構成要素の表面に接着させてもよい。結合層は、結合層材料を含む1つまたは複数のシートまたはフィルムを表面に積層するなどにより、当該技術分野で知られている任意の方法によって第1の構成要素の表面に付加してもよい。結合層は、浸漬被覆または噴霧によって第1の構成要素の表面に被着させてもよい。
【0014】
第2の構成要素は、結合層を含まない第1の構成要素の表面上に、および第1の構成要素の少なくとも1つの表面に接触している反対表面を有する結合層の表面上に射出成形および/または射出圧縮成形してもよい。
【0015】
任意の結合層の中で用いるために好適な材料の例には、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド12、ポリアミド11および非晶質ポリアミド(ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミドコポリアミド(6T/6I)など)などの1つまたは複数の脂肪族ポリアミドが挙げられる。結合層は1つまたは複数のイオノマーを含んでもよい。イオノマーは、亜鉛、マンガン、マグネシウム、カドミウム、錫(II)、コバルト(II)、アンチモン(II)、ナトリウムまたはリチウムなどの二価金属カチオンで中和または部分的に中和されているカルボキシル基含有ポリマーを意味する。イオノマーの例は、米国特許公報(特許文献5)および米国特許公報(特許文献6)に記載されている。好適なカルボキシル基含有ポリマーの例には、エチレン/アクリル酸コポリマーおよびエチレン/メタクリル酸コポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。カルボキシル基含有ポリマーは、ブチルアクリレートに限定されないが、それなどの1つまたは複数の追加のモノマーから誘導してもよい。亜鉛塩は好ましい中和剤である。イオノマーは、本願特許出願人から「サーリン(Surlyn)」(登録商標)の商品名で市販されている。結合層は、米国特許公報(特許文献7)に記載されたものなどの熱活性化ポリウレタンを含むポリウレタンを含んでもよい。この特許は本明細書に参照により援用する。
【0016】
第1の構成要素および第2の構成要素中で用いられるポリアミド組成物は少なくとも1種の好適なポリアミドを含む。好適なポリアミドは、ジカルボン酸またはそれらの誘導体とジアミンおよび/またはアミノカルボン酸の縮合生成物および/またはラクタムの開環重合生成物であることが可能である。好適なジカルボン酸には、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸およびテレフタル酸が挙げられる。好適なジアミンには、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、m−キシリレンジアミンおよびp−キシリレンジアミンが挙げられる。好適なアミノカルボン酸は11−アミノドデカン酸である。好適なラクタムには、カプロラクタムおよびラウロラクタムが挙げられる。
【0017】
好適なポリアミドには、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド4,6、ポリアミド6,9、ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド10,10、ポリアミド11、ポリアミド12などの脂肪族ポリアミド、ならびにこれらのポリマーのコポリマーおよび混合物が挙げられる。
【0018】
好適な脂肪族ポリアミドの例には、ポリアミド6,6/6コポリマー、ポリアミド6,6/6,8コポリマー、ポリアミド6,6/6,10コポリマー、ポリアミド6,6/6,12コポリマー、ポリアミド6,6/10コポリマー、ポリアミド6,6/12コポリマー、ポリアミド6/6,8コポリマー、ポリアミド6/6,10コポリマー、ポリアミド6/6,12コポリマー、ポリアミド6,10コポリマー、ポリアミド6/12コポリマー、ポリアミド6/6,6/6,10ターポリマー、ポリアミド6/6,6/6,9ターポリマー、ポリアミド6/6,6/11ターポリマー、ポリアミド6/6,6/12ターポリマー、ポリアミド6/6,10/11ターポリマー、ポリアミド6/6,10/12ターポリマーおよびポリアミド6/6,6/PACM(ビス−p−[アミノシクロヘキシル]メタン)ターポリマーが挙げられる。
【0019】
第2の構成要素および/または第1の構成要素の組成物を調製する際に用いるために好適な半芳香族ポリアミドは、芳香族基を含有するモノマーから誘導される1つまたは複数のホモポリマー、コポリマー、ターポリマーまたはより高次のポリマーを含んでもよい。半芳香族ポリアミドは、芳香族基を含有するモノマーから誘導される1つまたは複数のホモポリマー、コポリマー、ターポリマーまたはより高次のポリマーと1つまたは複数の脂肪族ポリアミドとのブレンドであってもよい。
【0020】
芳香族基を含有する好ましいモノマーは、テレフタル酸およびその誘導体、イソフタル酸およびその誘導体、ならびにm−キシリレンジアミンである。本発明において用いられる芳香族ポリアミドを製造するために用いられるモノマーの約5〜約75モル%が芳香族基を含有することが好ましく、モノマーの約10〜約55モル%が芳香族基を含有することがより好ましい。従って、本発明において用いられるすべてのポリアミドの反復単位の好ましくは約5〜約75モル%、より好ましくは10〜約55モル%は芳香族基を含有する。
【0021】
半芳香族ポリアミドは、任意選択的に、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、および6〜20個の炭素原子を有する他の脂肪族または脂環式のジカルボン酸モノマーなどの1つまたは複数の追加の脂肪族ジカルボン酸モノマーまたはそれらの誘導体から誘導された反復単位を含有してもよい。
【0022】
半芳香族ポリアミドは、任意選択的に、4〜20個の炭素原子を有する1つまたは複数の脂肪族または脂環式のジアミンモノマーから誘導された反復単位を含有してもよい。好ましい脂肪族ジアミンは直鎖状または分岐状であってもよく、ヘキサメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、メチル−1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカンおよび1,12−ジアミノドデカンが挙げられる。脂環式ジアミンの例には、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよびビス(p−アミノシクロヘキシル)メタンが挙げられる。
【0023】
半芳香族ポリアミドは、任意選択的に、カプロラクタム、11−アミノウンデカン酸およびラウロラクタムなどのラクタムおよびアミノカルボン酸(または酸誘導体)から誘導された反復単位を含有してもよい。
【0024】
好ましい半芳香族ポリアミドの例には、ポリ(m−キシリレンアジポアミド)(ポリアミドMXD,6);ヘキサメチレンアジポアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/6,6);ヘキサメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/D,T);ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド12,T);ポリ(デカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド10,T);デカメチレンテレフタルアミド/デカメチレンドデカノアミドコポリアミド(10,T/10,12);ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド9,T);ヘキサメチレンイソフタルアミドおよびヘキサメチレンアジポアミドのポリアミド(ポリアミド6,I/6,6);ヘキサメチレンテレフタルアミド、ヘキサメチレンイソフタルアミドおよびヘキサメチレンアジポアミドのポリアミド(ポリアミド6,T/6,I/6,6);ならびにこれらのポリマーのコポリマーおよび混合物が挙げられる。
【0025】
半芳香族ポリアミドは、好ましくは少なくとも約280℃、且つ好ましくは約340℃未満である融点を有する。半芳香族ポリアミドは、好ましくは少なくとも約90℃、またはより好ましくは少なくとも約110℃、またはなおより好ましくは少なくとも約120℃のガラス転移温度を有する。
【0026】
第1の構成要素および第2の構成要素のポリアミド組成物は、難燃剤、難燃相乗剤、耐衝撃性改良剤、安定剤(酸化安定剤、熱安定剤、紫外線安定剤などの安定剤など)、強化剤および充填剤(ガラス繊維、ガラスビーズ、鉱物繊維、マイカおよびタルクなど)、着色剤、可塑剤、伝熱性添加剤、導電性添加剤、潤滑剤および核剤などの追加の成分を含有してもよい。
【0027】
ポリアミド組成物は、一軸スクリュー押出機または二軸スクリュー押出機、ブレンダー、ニーダーまたはバンバリー(Banbury)ミキサーなどの溶融ミキサーを用いて成分材料を溶融ブレンドすることにより製造してもよい。
【0028】
本発明の構造物は多様な用途において用いてもよい。自動車用途の例には、シートフレーム部品、エンジンカバーブラケット、スペアタイヤウェル、フロントエンドモジュール、ステアリングカラムフレーム、インストルメントパネル、ドアシステム、ボディパネル(水平ボディパネルおよびドアパネルなど)、エンジンカバー、トランスミッション部品およびパワーデリバリ部品のためのハウジング、オイルパン、エアーバッグハウジングキャニスター、自動車内部衝撃構造体、エンジンサポートブラケット、クロスカービーム、バンパービーム、冷媒ボトルおよび消火器などの圧力容器、自動車サスペンションウィッシュボーンおよびコントロールアーム、サスペンションスタビライザーリンク、板バネ、車輪、レクリエーション車両およびモーターサイクルスイングアームが挙げられる。
【0029】
他の用途の例には、電気器具(洗濯機など)フレーム、およびインラインスケート部品、野球のバット、ホッケーのスティック、スキーおよびスノーボードのビンディングおよび自転車フレームなどのスポーツ装備品が挙げられる。
【実施例】
【0030】
「PPA」は、ヘキサメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド半芳香族ポリアミドを意味する。
【0031】
「PA6,6」はポリアミド6,6を意味し、「PA6」はポリアミド6を意味する。
【0032】
5mm/分の歪速度を用いてISO527に準拠して引張特性を測定した。ノッチなしのシャルピー衝撃強度をISO179に準拠して測定した。バーの面に衝撃を与えた。
【0033】
3点屈曲定荷重配置下で動的機械的アナライザ(TAインストルメンツ(TA Instruments)Q800DMA)を用いて25℃および125℃で貯蔵弾性率を測定した。2℃/分、周波数1Hzおよび10マイクロメートルの振幅で温度を上昇させた。25℃での貯蔵弾性率の%保持を基準として125℃での貯蔵弾性率の%保持を表2において報告している。
【0034】
(実施例1〜2および比較例1)
高分子フィルムの9層と織連続ガラス繊維シートの9層を交互にするスタックを厚さ2mmのシートに圧縮成形することにより積層物を調製した。実施例1の場合、高分子フィルムは半芳香族ポリアミドであり、実施例2の場合、高分子フィルムはポリアミド6,6であった。
【0035】
積層物を1.5インチ×6インチの矩形バーに切出し、射出成形機のキャビティに入れた。いずれの場合も、積層物を150℃に予熱した後、積層物を半芳香族ポリアミドでオーバーモールドし、得られた部品が約0.125インチの厚さを有するようにした。比較例1の場合、積層物を用いずに、積層物から調製された部品と同じ厚さを有する部品に半芳香族ポリアミドを射出成形した。
【0036】
引張特性およびノッチなしのシャルピー衝撃強度の決定のために必要な幾何形状に得られた成形部品を水ジェットにより切断し、対応する試験結果を表1に示している。実施例1および2の部品に積層面またはオーバーモールド面上に衝撃を与える衝撃試験を行った。それぞれの結果を表1において報告している。比較例1の場合、積層面がなかったので、「オーバーモールド面」の見出し下で1つの衝撃強度を報告している。
【0037】
【表1】

【0038】
(実施例3〜6および比較例2〜6)
実施例3〜6および比較例2および4において用いるために上記と同様にポリマーフィルムおよび織連続ガラス繊維シートから積層物を調製した。用いられた高分子フィルムは、「積層物」の見出し下で表2に示したフィルムである。挿入された積層物をオーバーモールドの前に200℃に加熱したことを除き、上述したように表2に示したポリマーにより積層物をオーバーモールドした。オーバーモールドされた部品の厚さを表2において示している。水ジェットを用いて、オーバーモールドされた試験片を13×60mmのバーに切出し、それらのバーを貯蔵弾性率試験のために用いた。
【0039】
【表2】

【0040】
(実施例7および8)
28mm二軸スクリュー内で固体ポリマーを溶融し、キャスティングドラム上にフィルムダイを通してポリマーを押し出すことによりPPAおよびイオノマー(本願特許出願人によって供給された「サーリン(Surlyn)」(登録商標)9320)の10ミルのフィルムを調製した。トッププラテンと底プラテンを180℃に加熱していたプレス内で8Kpsiの圧力下で8分間にわたりPPAフィルムと織連続炭素繊維のシートの交互シートを圧縮成形することにより10ミルの積層物を調製した。実施例8の場合、イオノマーフィルムをPPA/炭素繊維シート積層物の1つの表面に積層した。実施例7(イオノマー結合層がない)および実施例8の積層物を射出成形機のモールドキャビティに入れ、PPAによりオーバーモールドした。実施例8の場合、イオノマーフィルムを含む表面をオーバーモールドするようにサンプルを置いた。モールドキャビティ温度を100℃で設定した。バレル温度を310℃に設定した。PPAの溶融温度は約320〜330℃であった。積層物を予熱しなかった。
【0041】
実施例7の場合、積層物とオーバーモールドとの間に接着がなかった。それらは、触ってみるとばらばらになった。積層物とオーバーモールドされたPPA樹脂との間の接着は、実施例8の場合、インストロン(Instron)における剥離試験によって試験した。試験片は、15.6lbfのピーク荷重、10.4lbf/インチのピーク応力および4.9lbf/インチの剥離強度を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)表面を有するとともにポリアミド組成物と強化繊維とを含む繊維強化材料を含む第1の構成要素であって、前記第1の構成要素は射出成形によって調製されず、前記繊維強化材料が4mmの厚さを有する試験片上で5mm/分の速度でISO方法527−2:1993によって測定したときに少なくとも約16GPaの引張弾性率を有する第1の構成要素と、
(b)任意の結合層が存在するとき、前記結合層の第1の表面が前記第1の構成要素の表面と接触しているように、相反する第1の表面と第2の表面とを有する任意の結合層と、
(c)ポリアミド組成物を含む第2の構成要素と
を含む半芳香族ポリアミド複合物品であって、
前記第1の構成要素の前記ポリアミド組成物および/または前記第2の構成要素の前記ポリアミド組成物が半芳香族ポリアミド組成物であり、
前記任意の結合層が存在しないとき、前記第1の構成要素の表面上に前記第2の構成要素の組成物を射出成形および/または射出圧縮成形し、
前記結合層が存在するとき、任意の結合層の前記第2の表面上に前記第2の構成要素の組成物を射出成形および/または射出圧縮成形する工程を含む方法によって前記物品が調製されることを特徴とする物品。
【請求項2】
前記繊維強化材料が積層物であることを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記強化繊維が、ガラス繊維、炭素繊維およびアラミド繊維の1つまたは複数から選択されることを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記結合層が存在し、前記結合層が1つまたは複数のポリアミド、イオノマーおよび/またはポリウレタンを含むことを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記結合層が、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド12、ポリアミド11および非晶質ポリアミドの1つまたは複数を含むことを特徴とする請求項4に記載の物品。
【請求項6】
前記繊維強化材料が、4mmの厚さを有する試験片上で5mm/分の速度でISO方法527−2:1993によって測定したときに少なくとも約16GPaの引張弾性率を有することを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記第1の構成要素の前記ポリアミド組成物が少なくとも1種の半芳香族ポリアミドを含むことを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記第2の構成要素の前記ポリアミド組成物が、ポリ(m−キシリレンアジポアミド)(ポリアミドMXD,6);ヘキサメチレンアジポアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/6,6);ヘキサメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/D,T);ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド12,T);ポリ(デカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド10,T);デカメチレンテレフタルアミド/デカメチレンドデカノアミドコポリアミド(10,T/10,12);ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド9,T);ヘキサメチレンイソフタルアミドおよびヘキサメチレンアジポアミドのポリアミド(ポリアミド6,I/6,6);ならびに/またはヘキサメチレンテレフタルアミド、ヘキサメチレンイソフタルアミドおよびヘキサメチレンアジポアミドのポリアミド(ポリアミド6,T/6,I/6,6)の1つまたは複数を含む芳香族ポリアミド組成物であることを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項9】
前記第1の構成要素の前記ポリアミド組成物が、ポリ(m−キシリレンアジポアミド)(ポリアミドMXD,6);ヘキサメチレンアジポアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/6,6);ヘキサメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/D,T);ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド12,T);ポリ(デカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド10,T);デカメチレンテレフタルアミド/デカメチレンドデカノアミドコポリアミド(10,T/10,12);ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド9,T);ヘキサメチレンイソフタルアミドおよびヘキサメチレンアジポアミドのポリアミド(ポリアミド6,I/6,6);ならびに/またはヘキサメチレンテレフタルアミド、ヘキサメチレンイソフタルアミドおよびヘキサメチレンアジポアミドのポリアミド(ポリアミド6,T/6,I/6,6)の1つまたは複数を含むことを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項10】
自動車のシートフレーム部品、エンジンカバーブラケット、自動車スペアタイヤウェル、フロントエンドモジュール、ステアリングカラムフレーム、インストルメントパネル、自動車ボディパネルまたは電気器具フレーム、エンジンカバー、トランスミッション部品およびパワーデリバリ部品のためのハウジング、オイルパン、エアーバッグハウジングキャニスター、自動車内部衝撃構造体、エンジンサポートブラケット、クロスカービーム、バンパービーム、冷媒ボトルおよび消火器などの圧力容器、自動車サスペンションウィッシュボーンおよびコントロールアーム、サスペンションスタビライザーリンク、板バネ、車輪、レクリエーション車両およびモーターサイクルスイングアーム、野球のバット、ホッケーのスティック、スキーおよびスノーボードのビンディング、自転車フレームの形態を取ることを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項11】
(a)表面を有するとともにポリアミド組成物と強化繊維とを含む繊維強化材料を含む第1の構成要素であって、前記繊維強化材料が4mmの厚さを有する試験片上で5mm/分の速度でISO方法527−2:1993によって測定したときに少なくとも約16GPaの引張弾性率を有する第1の構成要素を非射出成形法によって調製する工程と、
(b)前記第1の構成要素の表面上にポリアミド組成物を射出成形および/または射出圧縮成形して、第2の構成要素を形成させる工程と
を含む半芳香族ポリアミド複合物品の調製方法であって、
前記第1の構成要素の前記ポリアミド組成物および/または前記第2の構成要素の前記ポリアミド組成物が半芳香族ポリアミド組成物であることを特徴とする方法。
【請求項12】
前記繊維強化材料が積層物であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
打抜き、スタンピング、熱成形、機械加工および/または圧縮成形の1つまたは複数によって前記第1の構成要素が前記繊維強化材料から調製されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記強化繊維が、ガラス繊維、炭素繊維およびアラミド繊維の1つまたは複数から選択されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記繊維強化材料が、4mmの厚さを有する試験片上で5mm/分の速度でISO方法527−2:1993によって測定したときに少なくとも約16GPaの引張弾性率を有することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の構成要素の前記ポリアミド組成物が、ポリ(m−キシリレンアジポアミド)(ポリアミドMXD,6);ヘキサメチレンアジポアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/6,6);ヘキサメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/D,T);ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド12,T);ポリ(デカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド10,T);デカメチレンテレフタルアミド/デカメチレンドデカノアミドコポリアミド(10,T/10,12);ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド9,T);ヘキサメチレンイソフタルアミドおよびヘキサメチレンアジポアミドのポリアミド(ポリアミド6,I/6,6);ならびに/またはヘキサメチレンテレフタルアミド、ヘキサメチレンイソフタルアミドおよびヘキサメチレンアジポアミドのポリアミド(ポリアミド6,T/6,I/6,6)の1つまたは複数を含む半芳香族ポリアミド組成物であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項17】
(a)表面を有するとともにポリアミド組成物と強化繊維とを含む繊維強化材料を含む第1の構成要素を非射出成形法によって調製する工程であって、前記繊維強化材料が4mmの厚さを有する試験片上で5mm/分の速度でISO方法527−2:1993によって測定したときに少なくとも約16GPaの引張弾性率を有する工程と、
(b)結合層の第1の表面を、前記第1の構成要素の表面に接着させるか、または前記第1の構成要素の表面に接触して配置する工程と、
(c)前記結合層の前記第1の表面とは反対の前記結合層の第2の表面上にポリアミド組成物を射出成形および/または射出圧縮成形して、第2の構成要素を形成させる工程と
を含む半芳香族ポリアミド複合物品の調製方法であって、
工程(a)の前記ポリアミド組成物および/または工程(c)の前記ポリアミド組成物が半芳香族ポリアミド組成物であることを特徴とする方法。
【請求項18】
前記繊維強化材料が積層物であることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
打抜き、スタンピング、熱成形、機械加工および/または圧縮成形の1つまたは複数によって前記第1の構成要素が前記繊維強化材料から調製されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記強化繊維が、ガラス繊維、炭素繊維およびアラミド繊維の1つまたは複数から選択されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記結合層が1つまたは複数のポリアミド、イオノマーおよび/またはポリウレタンを含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記結合層が、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド12、ポリアミド11および非晶質ポリアミドの1つまたは複数を含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
工程(a)の前記ポリアミド組成物が少なくとも1種の半芳香族ポリアミドを含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項24】
工程(b)の前記ポリアミド組成物が、ポリ(m−キシリレンアジポアミド)(ポリアミドMXD,6);ヘキサメチレンアジポアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/6,6);ヘキサメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/D,T);ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド12,T);ポリ(デカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド10,T);デカメチレンテレフタルアミド/デカメチレンドデカノアミドコポリアミド(10,T/10,12);ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド9,T);ヘキサメチレンイソフタルアミドおよびヘキサメチレンアジポアミドのポリアミド(ポリアミド6,I/6,6);ならびに/またはヘキサメチレンテレフタルアミド、ヘキサメチレンイソフタルアミドおよびヘキサメチレンアジポアミドのポリアミド(ポリアミド6,T/6,I/6,6)の1つまたは複数を含む半芳香族ポリアミド組成物であることを特徴とする請求項17に記載の方法。

【公表番号】特表2009−539659(P2009−539659A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515496(P2009−515496)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/013971
【国際公開番号】WO2007/149300
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】