説明

単層カーボンナノチューブの製造方法およびその製造装置

【課題】
本発明は、単層カーボンナノチューブのみを比較的低温で、効率よく高純度に製造でき、生成速度が速く、量産性に優れた単層カーボンナノチューブの製造方法および製造装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
基板の表面をクリーニングする工程と、クリーニングされた基板の表面に、触媒材料を形成する工程と、続いてカーボンナノチューブを形成する工程と、その後、形成された不純物を削減する工程とを含むカーボンナノチューブの製造方法において、触媒材料を形成する工程で、触媒材料を形成する前に、前記クリーニングされた基板の表面に、基板の表面と触媒材料との反応を防止するための反応防止層を形成し、触媒材料形成後、その上に分散材料を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ(以下CNTと略す)の中の特に単層カーボンナノチューブ(以下SWCNTと略す)の製造方法と製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CNTは炭素原子からなる網目型チューブ構造を持つ素材で、同じ炭素原子からなるダイヤモンドやグラファイト或いは非晶質炭素とは全く異なる特性を有し、新規な電子材料や電気化学材料などとして応用され始めている。
【0003】
CNTにはチューブ構造が単層のもの(SWCNT)と、2層、3層、・・・と一般に多層のもの(以下MWCNTと略す)とが存在し、それぞれ特性が異なることが知られている。そして、従来の製造装置で作られるCNTは、SWCNTとMWCNTが混在していたり、CNTと同時にアモルファスカーボンやグラファイトが混在形成されたり、CNTの中のMWCNTでも層数がバラバラであったりするなど、均一性または純度に決定的な問題があることのほかに、これにより得られたCNTの特性が一定しないばかりか、製造における単位時間あたりの収率が悪いことのため、実用面での大きな難点になっていた。
【0004】
CNTの製造方法では、特に気相化学反応法(以下CVDと略す)が量産性に優れているが、
その中でもマイクロ波プラズマを使ったCVDが特に優れている。しかし従来のこの種のCNT製造法(例えば、特許文献1)では、プラズマが基板と接しているか極めて近接しているため、プラズマのエネルギーが成長しつつあるCNTをアタックし、SWCNTだけでなくMWCNTやアモルファスカーボンなどを生成し、かつ成長速度も遅くなり実用的ではなかった。また、ダイヤモンド薄膜製造装置としてマイクロ波プラズマから基板を離した例(例えば、特許文献2)が開示されているが、この方法ではダイヤモンドができてしまいSWCNTが成長できなかった。
【0005】
また、SWCNTを純度よく作成するには、CNT成長前の触媒材料を含む基板の処理(以下触媒材料形成工程と略す)が最も重要な工程である。従来は基板と触媒材料との高温時における反応を防止する反応防止材を兼ねた、主としてアルミナやシリカの多孔質膜のような多孔質材料(例えば、特許文献3)を基板表面に形成し触媒材料をその多孔質材料中に埋め込ませるか、別途表面にナノサイズの微粒子化処理を施す形のもの(例えば、特許文献4)、或いは、平坦な基板上に触媒材料を均一に膜状に形成し次いでそれをアニールによって凝集させナノメートルサイズに微粒子化処理を施し、さらにCNT成長時の加熱やプラズマエッチングに耐えるため保護層を形成するもの(例えば、特許文献3)が報告されている。しかし、前者は多孔質材料の形成及びその後の触媒材料の埋め込みまたは微粒子化処理はオフラインのバッチ処理であり、後者はアニール処理による触媒材料の凝集サイズが一定せずMWCNTの混入率が高くなるなど、量産には不向きであった。
【0006】
また、一般にCNTを製造するには、清浄な基板表面を得るための基板表面クリーニング工程、前記基板表面に触媒材料形成工程、前記基板へ炭素原子を供給するCNT形成工程、それに、得られたCNTの純度を高める不純物削減工程が必要であるが、前述のように触媒材料形成工程だけでもオフライン処理になるなど、従来の製造装置ではこれらの四工程が一つの製造装置に組み込まれていなかったため、再現性と量産性に問題があった。
【0007】
以下前記触媒材料形成工程以外の各工程について述べると、CNT製造装置における前記基板表面クリーニング工程としては、基板表面を水素ガス中で高温処理もしくはプラズマ処理するなどの方法(例えば、特許文献6)等が提案されている。これらは触媒材料形成工程やCNT形成工程とは別の装置となっている。
【0008】
さらに、前記不純物削減工程では、酸素、水、二酸化炭素などの酸化剤中で加熱処理する方法(例えば、特許文献7)、水素ガス、酸素ガス等のガス流中で高温加熱する方法(例えば、特許文献8)や酸性ガス中で高温加熱する方法(例えば、特許文献8)等が提案されている。
【0009】
従来技術としては、オフラインで形成された基板上の絶縁膜(反応阻止層)と触媒金属膜(触媒材料)を形成後に、前記触媒金属膜のガスエッチングにより前記触媒金属のナノサイズ微粒子を形成する工程、CNTを形成する工程、および不純物削減工程を一つの装置内で行う例があるが、前記基板表面クリーニング工程、前記触媒材料形成工程、及び前記CNT形成工程とは別の装置もしくは高々2工程を含む装置として提案されているに過ぎず、一貫した装置内で形成するものではないため、量産性および再現性に難点があった。
【特許文献1】特開2000−57934
【特許文献2】特開平9−301795
【特許文献3】特開2001−20071
【特許文献4】特開2002−255519
【特許文献5】特開2004−51432
【特許文献6】特開2001−64775
【特許文献7】特開平7−48110
【特許文献8】特開2001−20072
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、比較的特性の制御できるSWCNTに着目し、SWCNTのみを比較的低温で、効率よく高純度に製造でき、生成速度が速く、量産性に優れたSWCNTの製造方法および製造装置を提供することを目的とするもので、これにより実用化の難点を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1によると、基板の表面に単層カーボンナノチューブを形成する工程において、
前記カーボンナノチューブの原料となる原料ガスおよびキャリアガスなどを、減圧下でマイクロ波電力(900MHz〜5GHz)を印加し、それによって生じたプラズマ発光部から前記基板を離し、かつ前記プラズマ発光部内もしくはその近傍で生じたラジカルがラジカル状態で前記基板に到達できる位置に設置することにより、原料ガスがマイクロ波プラズマ中もしくはその近傍でラジカル状態になり、それが基板に達するため基板上で効率的にCNT(SWCNT)が成長する。また、基板上に成長したCNT(SWCNT)はマイクロ波プラズマのエネルギーに攻撃されないため、SWCNTの形を保持しやすくかつエッチングなどされる確率も少ないので、比較的低温で(400〜800℃望ましくは500〜700℃)効率的(投入電力では従来比1桁小)にSWCNTが成長する。またSWCNTの成長速度は従来の方法の1桁以上高く、CNTの純度(MWCNTやアモルファスカーボンの混入率)も飛躍的に高くなる。
【0012】
請求項2によると、触媒材料を形成する工程と、続いてカーボンナノチューブを形成する工程とを含むカーボンナノチューブの製造方法において、前記触媒材料を形成する工程で、触媒材料形成後、その上に分散材料を形成することにより、前記カーボンナノチューブを形成する工程での基板加熱時に前記触媒材料の適切なナノスケール表面露出がなされ、SWCNTのみを比較的低温で、生成速度が速くて効率よく高純度に製造できる。
【0013】
この方法によれば、クリーニングされた基板の表面に、触媒材料形成後、その上に極薄の分散材料を形成することで、触媒材料の上に分散層の微粒子ができる。それが触媒材料に対して、適度な大きさの一種の窓を形成することになり、SWCNT形成の核となって、高純度のSWCNTが効率よく得られる。
【0014】
請求項3によると、触媒材料を形成する工程で、触媒材料を形成する前に、基板の表面と触媒材料との反応を防止するための反応防止層を形成することにより、基板材料が触媒材料との反応し易い材料の場合、触媒材料が基板に吸収されるのを防止する。したがって、その上に極薄の分散材料を形成することで、適度な大きさのSWCNT形成の核が形成されて、SWCNTのみを比較的低温で、生成速度が速くて効率よく高純度に製造できる。
【0015】
請求項4によると、前記触媒材料を形成する工程と、続いてカーボンナノチューブを形成する工程とを含む工程で、カーボンナノチューブを形成する基板を、外気に曝さないようにして、各工程を連続的に行う単層カーボンナノチューブの製造方法である。基板の表面に触媒材料を形成し、前記のようにSWCNT形成の核を形成した後で、外気に曝せば、水蒸気、酸素、窒素、ごみなどが付着し、SWCNTの効率的生成を妨げることになる。したがって、触媒材料を形成する工程と、続いてカーボンナノチューブを形成する工程とで、基板を外気に曝さないようにして、両工程を連続的に行うことにより、単層カーボンナノチューブを効率よく高純度に製造できる。
【0016】
請求項5によると、カーボンナノチューブを生成するための原料ガスなどを導入するのに必要なガス導入手段と、ガスを排気するための排気手段と、マイクロ波電力を印加してプラズマを発生させるためのマイクロ波発生および印加手段と、前記基板を前記プラズマから離してかつ前記プラズマ内もしくは近傍にて生じたラジカルがラジカル状態で前記基板表面に到達できる位置に保持調整する基板保持手段、前記基板を加熱する基板加熱手段とを有するので、原料ガスがマイクロ波プラズマ中もしくはその近傍でラジカル状態になり、それが基板に達するため基板上で効率的にCNT(SWCNT)が成長する。また、基板加熱手段により基板上のCNT(SWCNT)は成長に必要な適切なエネルギーを基板からもらうとともに、マイクロ波プラズマのエネルギーには攻撃されないため、SWCNTの形を保持しやすくかつエッチングなどされる確率も少ないので、比較的低温で(400〜800℃望ましくは500〜700℃)効率的(投入電力では従来比1桁小)にSWCNTが成長する。またSWCNTの成長速度は従来の方法の1桁以上高く、CNTの純度(MWCNTやアモルファスカーボンの混入率)も飛躍的に高くなる。
【0017】
請求項6によると、カーボンナノチューブを形成する基板を加熱する基板加熱手段と、触媒材料形成のためのガス、カーボンナノチューブを生成するための原料ガス、ガスを排気するための排気手段と、マイクロ波電力を印加してプラズマを発生させるためのマイクロ波発生および印加手段と、前記基板を前記プラズマから離してかつ前記プラズマ内もしくは近傍にて生じたラジカルがラジカル状態で前記基板表面に到達できる位置に保持調整する基板保持手段、触媒材料形成のためのスパッタを行うためのイオン発生源およびターゲットの保持装置とを、1つのチャンバーに備え、前記基板を、外気に曝さないようにして、前記カーボンナノチューブの製造工程を連続的に行うことができるように構成している。これにより、基板の各工程での表面状態が完全な制御下に置かれるので、再現性が向上する。
【0018】
請求項7によると、カーボンナノチューブを形成する基板を加熱する基板加熱手段と、該基板の表面をクリーニングするためのガス、触媒材料形成のためのガス、カーボンナノチューブを生成するための原料ガスなどを導入するガス導入手段と、ガスを排気するための排気手段と、マイクロ波電力を印加してプラズマを発生させるためのマイクロ波発生および印加手段と、前記基板を前記プラズマから離してかつ前記プラズマ内もしくは近傍にて生じたラジカルがラジカル状態で前記基板表面に到達できる位置に保持調整する基板保持手段、触媒材料形成のためのスパッタを行うためのイオン発生源およびターゲットの保持装置とを、1つのチャンバーに備え、前記基板を、外気に曝さないようにして、前記カーボンナノチューブの製造工程を連続的に行うことができるように構成している。これによりスタートとなる基板表面も完全に制御下におかれるので、再現性が一段と向上する。
【0019】
請求項8によると、カーボンナノチューブを形成する基板を加熱する基板加熱手段と、該基板の表面をクリーニングするためのガス、触媒材料形成のためのガス、カーボンナノチューブを生成するための原料ガス、不純物を削減するためのガスなどを導入するのに必要なガス導入手段と、ガスを排気するための排気手段と、マイクロ波電力を印加してプラズマを発生させるためのマイクロ波発生および印加手段と、前記基板を前記プラズマから離してかつ前記プラズマ内もしくは近傍にて生じたラジカルがラジカル状態で前記基板表面に到達できる位置に保持調整する基板保持手段、触媒材料形成のためのスパッタを行うためのイオン発生源およびターゲットの保持装置とを、1つのチャンバーに備え、前記基板を、外気に曝さないようにして、前記カーボンナノチューブの製造工程を連続的に行うことができるように構成している。これによって、周辺にできやすい不純物(グラファイトやアモルファスカーボンなど)を削減できる。
【0020】
請求項9によると、カーボンナノチューブの製造工程で、基板を外気に曝すことなく、連続的にカーボンナノチューブを製造する装置であって、少なくとも5つのチャンバーがあり、前記基板の表面をクリーニングする工程を行う第1のチャンバーと、前記触媒材料を形成する工程を行う第2のチャンバーと、前記カーボンナノチューブを形成する工程を行う第3のチャンバーと、前記の形成された不純物を削減する工程を行うための第4のチャンバーと、カーボンナノチューブが形成された基板を取り出すための第5のチャンバーを、その工程順に連結して、それぞれのチャンバーには排気手段を備え、第1のチャンバーには、前記基板を搬送するための気密可能な窓と、該基板の加熱手段と、クリーニングのためのガスを導入する手段を備え、第2のチャンバーには、前記基板を搬送するための気密可能な窓と、該基板の加熱手段と、スパッタを行うためのイオン発生源およびターゲットの保持装置とを備え、第3のチャンバーには、前記基板を搬送するための気密可能な窓と、該基板の加熱手段と、カーボンナノチューブ形成のための原料ガスを導入する手段と、マイクロ波電力を印加してプラズマを発生させるためのマイクロ波発生および印加手段と前記基板を前記プラズマから離してかつ前記プラズマ内もしくは近傍にて生じたラジカルがラジカル状態で前記基板表面に到達できる位置に保持調整する基板保持手段とを備え、第4のチャンバーには、前記基板を搬送するための気密可能な窓と、該基板の加熱手段と、不純物削減のためのガスを導入する手段と、マイクロ波電力を印加してプラズマを発生させるためのマイクロ波発生および印加手段とを備え、第5のチャンバーには、前記基板を搬送するための気密可能な窓と、不活性ガスを導入する手段とを備え、それぞれの気密可能な窓を通して、それぞれのチャンバーに、前記基板を搬送する手段を備えている。これにより、量産型の装置を構成できる。
【0021】
請求項10によると、前記ターゲットの保持装置は、2種類以上のターゲット材料を保持できる装置であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の単層カーボンナノチューブの製造装置であり、触媒材料形成工程を一貫して同一装置内で形成出来る。
【0022】
また、触媒材料を形成する工程では、基板の表面に触媒材料を形成した後に、極薄の分散材料を形成することが重要で、触媒材料と分散材料とは異なった材料を使い、少なくとも2種類のターゲットを設けることによって、触媒材料の上に分散層の微粒子作ることができる。それが触媒材料に対して、適度な大きさの一種の窓を形成することになり、SWCNT形成の核となって、高純度のSWCNTが効率よく得られる。また、触媒材料と基板とは反応し易い材料の場合には、基板と触媒材料との間に反応防止層を形成することが重要であり、反応防止層の材料は分散材料と同じでもよいが、異なった材料を使うこともできるので、3種類のターゲットを設けるのが望ましい。
【0023】
請求項11によると、前記マイクロ波電力の印加手段は、アレイアンテナであることを特徴とする請求項5から請求項9のいずれかの請求項に記載の単層カーボンナノチューブの製造装置であり、アンテナをアレイ状に多数配置することにより、基板面の等エネルギー面が広い範囲にわたって平坦になるので、広い面積の基板上に均一な単層カーボンナノチューブを大量に効率よく製造できるという効果がある。これによってSWCNTの形成面積を順次拡大できる。大面積の基板を扱う際に不可欠の装置である。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明による単層カーボンナノチューブの製造方法および製造装置によれば、単層カーボンナノチューブのみを比較的低温で、効率よく高純度に製造でき、生成速度が速く、量産性に優れた単層カーボンナノチューブを製造できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明による単層カーボンナノチューブの製造方法および製造装置について、図を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
単層カーボンナノチューブの製造方法において、単層カーボンナノチューブを形成する基板としては、シリコン、ガラス、溶融石英、耐熱セラミックスなどがあるが、本実施例では、シリコンを基板とした。
【0027】
まず、基板の表面をクリーニングする工程では、チャンバーに基板を加熱板の上に置き、チャンバーを真空にしてから、水素とアルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを混合した表面クリーニングガスを導入し、減圧した状態で基板を加熱し、100~500℃の温度にする。これにより、基板の表面に付着した有機物などを分解して除去する。基板が溶融石英やセラミックスのような酸化物の場合には、クリーニングガスとして、酸素や窒素なども使用できる。
【0028】
第2のクリーニング方法としては、イオンビームを照射することにより、基板の表面をエッチングして正常な表面とする方法がある。さらに、第3のクリーニング方法としては、酸素などのクリーニングガスを導入して、高周波放電によりプラズマを発生させてプラズマエッチングを行う方法もある。本実施例では、アルゴンのイオンビームを照射して表面をクリーニングした。
【0029】
次の触媒材料形成工程は、基板上に単層カーボンナノチューブを生成するための核を形成する工程である。本実施例では、図1に示すように、まず第1段階で、シリコンウエハである基板1の表面に、酸化アルミニウムをターゲットとして、スパッタ法により反応防止層2としての酸化アルミニウム層を70nmの厚さで形成した。続いて第2段階で、鉄をターゲットとして、0.5nmの厚さの触媒材料層3をスパッタ法で形成した。さらに続いて、その上に分散層4として、酸化アルミニウム層を0.7nmの厚さで形成した。
【0030】
本実施例では、シリコンを基板としたので、触媒材料である鉄がシリコンと反応するのを防止するために、酸化アルミニウムを反応防止層2として形成した。反応防止層としては、酸化アルミニウムだけでなく、酸化シリコン、窒化シリコン、あるいはそれらの複合物などを使用しても良い。また、触媒材料としては、ニッケル、コバルト、パラジウム、白金、イットリウム、ランタン、モリブデン、マンガン、あるいはこれらを含む合金などを使用しても良い。分散層4の材料としては、酸化アルミニウムのほかに、酸化シリコン、窒化シリコンなどの酸化物や窒化物、あるいはそれらの複合物などを使用しても良い。
【0031】
なお、触媒材料形成工程は、本実施例で行ったスパッタ法だけでなく、反応防止層形成ガス、触媒材料形成ガス、分散層形成ガスなどを順次導入して、高周波放電でプアズマ化して各々の層を形成することもできる。例えば、触媒材料形成ガスとして、鉄ペンタボニル、コバルトオクタカルボニル、メチルリチウム、アジ化リチウム、モリブデニルアセチルアセトナートなどのガスを用いることができる。
【0032】
触媒材料形成工程に引き続いて、単層カーボンナノチューブを形成する工程を行う。この工程は、原料ガスを高周波放電でプアズマ化し、触媒の作用で単層カーボンナノチューブを成長させる工程である。
【0033】
そのチャンバーの主要部分を示した図2によって説明する。触媒材料形成工程を完了した基板1はチャンバー10の中にある加熱板11の上に置かれている。チャンバー10は真空ポンプで排気されて減圧状態になっている。本実施例では、基板の温度は600℃で、誘導加熱方式で加熱した。加熱方法は、赤外線を照射する方法、通常の電熱ヒーターを使って加熱する方法でも良い。
【0034】
この状態で、ガス導入口12から原料ガスであるメタンガスを5sccm、キャリヤーガスとして水素ガスを45sccm流し、チャンバーの中の圧力を20Tollに保持して、2.45GHzのマイクロ波を出力60Wでエッジアンテナ13から印可した。アンテナ13の先端には直径約10mmのプラズマ発光部14が生じ、このプラズマ発光部14から基板保持手段15によってプラズマ発光部から離し、かつプラズマ発光部14内もしくは近傍で生じた原料ガスのラジカルがラジカル状態で基板位置に到達できる距離(アンテナの先端と基板との距離dは約50mm)に調整した。このようにして、原料ガスであるメタンガスをプラズマ化して、単層カーボンナノチューブを触媒の作用と相俟って基板の上に40分間成長させた。
【0035】
必要に応じ、原料ガスを止めたあと、周辺に生じたアモルファスカーボンやグラファイトなどの不純物を削減する工程するため、酸素ガスを5sccm導入して10分間プラズマ放電を行った。
【0036】
本実施例による、以上の工程で得られた単層カーボンナノチューブは、基板温度を600℃という低温で、マイクロ波電力をわずか60Wという小電力で成長させたにもかかわらず、膜厚が180μm、成長速度にすると、270μm/hという、従来技術による方法に比較して10倍以上の高速で、高品質のSWCNTを成長させることができた。
【0037】
以上のように、本発明による単層カーボンナノチューブ製造方法では、プラズマから基板を離してかつプラズマ中で生じたラジカルがそのまま基板に到達する位置に設置しているため、単層カーボンナノチューブのみを比較的低温(400〜800℃、望ましくは500〜700℃)で、効率よく高純度に製造でき、生成速度が速く、量産性に優れた単層カーボンナノチューブを製造できる効果がある。
【0038】
また、本発明による単層カーボンナノチューブ製造方法では、触媒材料形成工程と単層カーボンナノチューブを形成する工程が第二に重要なポイントであり、この2つの工程では、基板を外気に曝すことなく連続して行うことが最適である。
【0039】
また、触媒材料形成工程における分散層の厚さが数nm程度に厚くなると単層カーボンナノチューブが少なく、アモルファスカーボンなどの不純物が増加するので、分散層の厚さを制御することが重要である。
【0040】
このようにして形成したカーボンナノチューブをラマンスペクトラムで評価した結果を図3に示す。図3によれば、単層カーボンナノチューブを示す1585cm―1のGピークに対して、欠陥を示す1332cm―1のDピークは8%程度と低く良好な単層カーボンナノチューブが得られている。また、図4に示す走査型電子顕微鏡(SEM)による観察でも、単層カーボンナノチューブが基板に垂直に、殆ど捻れることなく成長していることが確認された。
【0041】
また、図3での波数が小さい領域でのラマンスペクトラムで、単層カーボンナノチューブの直径を評価すると、1.3nmから3nmの結果が得られ、図5に示すように、断面の電子顕微鏡写真でも確認された。
【0042】
図6に、本実施例での単層カーボンナノチューブの成長速度を示す。図6からわかるように、本発明による単層カーボンナノチューブの製造方法では、単層カーボンナノチューブの成長速度はほぼ一定で、成長層の厚さは時間とともにほぼ直線的に増加する。
【0043】
なお、本実施例では、単層カーボンナノチューブの原料ガスとしてメタンガスを用いたが、その他の炭化水素でもよい。また、キャリヤガスとしては、水素のほかに、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノンなどの不活性ガスを用いても良い。
【0044】
次に、以上のような本発明による製造方法を実施するための製造装置について詳細に説明する。
【0045】
図7に、本発明による単層カーボンナノチューブの製造装置に関する第1の実施例を示す。図7に示すように、チャンバー100の中に、基板1を保持し加熱する装置110を設けている。さらに、チャンバー100には、その中のガスを排気する排気装置120、基板の表面をクリーニングするためのガス、触媒材料形成のためのガス、カーボンナノチューブを生成するための原料ガス、不純物を削減するためのガスなどを導入するのに必要なガス導入口130が設置されている。さらに、マイクロ波電力を印加してプラズマを発生させるためのマイクロ波発生装置140とマイクロ波電力調整装置141とマイクロ波電力を印加するアンテナ142が基板1と対向して設置されている。また、スパッタを行うためのイオン発生源150およびターゲットの保持装置151があり、ターゲット152が保持される。イオン発生源150の近傍には、スパッタするためのイオンとなる不活性ガスなどの導入口153が設けられている。
【0046】
この装置によれば、まず、基板1をチャンバー100内に保持して、排気装置120でチャンバー内を真空にして、基板の表面をクリーニングするためのガスを、導入口130から導入して加熱装置110で基板を加熱すると基板の表面がクリーニングされる。そのほか、スパッタのための不活性ガスイオンを基板に照射してクリーニングをしてもよい。また、クリーニングするためのガスを導入して、アンテナ142からマイクロ波電力を印加してプラズマを発生させ、基板の表面をエッチングしてもよい。このようにして、基板の表面のクリーニング工程を行う。
【0047】
続いて、触媒材料形成工程を行う。イオン発生源150によりイオン化された不活性ガスイオンをターゲットに照射することにより、ターゲットがスパッタされてターゲットの材料が基板1に堆積する。ターゲットには、例えば、酸化アルミニウムと鉄の2種類を用意する。まず、酸化アルミニウムをスパッタし、次に鉄をスパッタし、最後に酸化アルミニウムをスパッタすることにより、単層カーボンナノチューブを成長させるための適切な核を形成することができる。
【0048】
このほか、触媒材料形成工程では、鉄ペンタボニルなどの触媒材料形成ガスを導入して、アンテナ142から高周波電力を印加してプラズマを発生させ、基板の上に触媒材料を堆積させる方法も可能である。
【0049】
引き続いて、メタンガスなどのカーボンナノチューブの原料ガスを導入口130から導入してアンテナ142から高周波電力を印加してプラズマを発生させ、単層カーボンナノチューブを成長させる。
【0050】
その後、酸素などの不純物削減ガスを導入し、アンテナ142からマイクロ波電力を印加してプラズマを発生させ、アモルファスカーボンやグラファイトなどの不純物を削減する。
【0051】
以上に説明したように、本発明による単層カーボンナノチューブの製造装置は、先に説明した単層カーボンナノチューブの製造方法を十分に実施できる装置であり、この装置によれば、単層カーボンナノチューブのみを比較的低温で、効率よく高純度に製造でき、生成速度が速く、量産性に優れた単層カーボンナノチューブを製造できる効果がある。
【0052】
次に、本発明による単層カーボンナノチューブの製造装置に関する第2の実施例を示す。図8に示すように、本発明による単層カーボンナノチューブの製造装置は、基板を外気に曝すことなく、連続的にカーボンナノチューブを製造する装置であって、5つのチャンバーがあり、前記基板の表面をクリーニングする工程を行う第1のチャンバー211と、前記触媒材料を形成する工程を行う第2のチャンバー212と、前記カーボンナノチューブを形成する工程を行う第3のチャンバー213と、前記の形成された不純物を削減する工程を行うための第4のチャンバー214と、カーボンナノチューブが形成された基板を取り出すための第5のチャンバー215を、その工程順に連結して構成されている。
【0053】
それぞれのチャンバーには図示しない真空ポンプなどの排気手段を備え、第1のチャンバー211には、基板1を外部から搬入するための気密可能な窓291、基板1を第2のチャンバー212に搬送するための気密可能な窓292と、該基板の加熱装置271と、クリーニングのためのガスを導入するガス導入口231を備えている。
【0054】
第2のチャンバー212には、基板1を第3のチャンバー213に搬送するための気密可能な窓293と、該基板の加熱装置272と、スパッタを行うためのイオン発生源250、ガス導入口232およびターゲットの保持装置251とを備えている。
【0055】
第3のチャンバー213には、基板1を第4のチャンバー214に搬送するための気密可能な窓294と、該基板の加熱装置273と、カーボンナノチューブ形成のための原料ガスを導入するガス導入口233と、マイクロ波電力を印加してプラズマを発生させるための高周波発生装置(図示しない)および印加するためのアンテナ221とを備えている。
【0056】
第4のチャンバー214には、基板1を第5のチャンバー215に搬送するための気密可能な窓295と、該基板の加熱装置274と、不純物削減のためのガスを導入するガス導入口234と、マイクロ波電力を印加してプラズマを発生させるためのマイクロ波発生および印加手段としてのアンテナ222を備えている。
【0057】
第5のチャンバー215には、基板1を外部に搬出するための気密可能な窓296と、不活性ガスを導入するガス導入口235とを備えている。各チャンバーには、それぞれの気密可能な窓を通して、それぞれのチャンバーに、基板を搬送する装置290を備えている。
【0058】
次に、このような単層カーボンナノチューブの製造装置の機能を説明する。
【0059】
まず、基板は、外部の基板挿入装置298を使って、窓291から第1のチャンバー211に挿入される。続いて排気装置により、第1のチャンバー211をほぼ真空にした後に、基板の表面をクリーニングするためのガスをガス導入口231から導入し、加熱装置271で基板を加熱することにより、基板表面のクリーニング工程を行うことができる。
【0060】
基板表面のクリーニング工程を終了した基板は、搬送装置290により、窓292を通じて第2のチャンバー212に搬送される。第1のチャンバー211と第2のチャンバー212の中は排気されており、ほぼ真空状態になっている。したがって、基板は外気に曝されることなく、次の工程に送られる。
【0061】
第2のチャンバー212では、触媒材料形成工程を行う。イオン発生源250によりガス導入口232から導入され、イオン化された不活性ガスイオンをターゲット251に照射することにより、ターゲット251がスパッタされてターゲットの材料が基板1に堆積する。ターゲットには、例えば、酸化アルミニウムと鉄の2種類を用意する。まず、酸化アルミニウムをスパッタし、次に鉄をスパッタし、最後に酸化アルミニウムをスパッタすることにより、単層カーボンナノチューブを成長させるための適切な核を形成することができる。基板1は加熱装置272で加熱された状態が保持されている。
【0062】
第2のチャンバー212で、触媒材料形成工程を終了した基板は、真空状態を維持しながら次の第3のチャンバー213に、窓293を通して送られる。また、加熱装置273も温度が上がっているので、第2のチャンバー212での温度を維持したままの状態なので、次の工程を直ちに開始できる。
【0063】
第3のチャンバー213では、メタンガスなどのカーボンナノチューブの原料ガスをガス導入口233から導入してアンテナ221から高周波電力を印加してプラズマを発生させ、単層カーボンナノチューブを基板の上に成長させる。
【0064】
第3のチャンバー213で、カーボンナノチューブ形成工程を終了した基板は、真空状態と温度を維持しながら次の第4のチャンバー214に、窓294を通して送られる。
【0065】
第4のチャンバー214では、酸素などの不純物削減ガスを、ガス導入口234から導入し、アンテナ222から高周波電力を印加してプラズマを発生させ、アモルファスカーボンやグラファイトなどの不純物を削減する。
【0066】
このようにして、単層カーボンナノチューブの製造工程を終了した基板は、窓295を通して、真空状態を維持しながら第5のチャンバー215に送られる。
【0067】
第5のチャンバー215では、窓295を閉じて第4のチャンバー214との間の気密を確保してから、ガス導入口235から不活性ガスや窒素などを導入して基板を冷却する。温度が室温に近くなると、窓296を開いて、基板回収装置299で単層カーボンナノチューブが形成された基板を搬出する。
【0068】
以上に説明したように、本発明による単層カーボンナノチューブの製造装置は、先に説明した単層カーボンナノチューブの製造方法を十分に実施できる装置であり、この装置によれば、単層カーボンナノチューブのみを比較的低温で、効率よく高純度に製造でき、生成速度が速く、量産性に優れた単層カーボンナノチューブを製造できる効果がある。特に、各工程を同時進行で行うことができるので、量産に適している。
【0069】
なお、単層カーボンナノチューブ形成を行う第3のチャンバー213のアンテナ221は、図9に示すように、多数のアンテナをアレイ状に並べたアレイアンテナ300にすることによって、等エネルギー面が平面状になるので、大きな面積の基板に均一に単層カーボンナノチューブを形成し、より効率的に、大量に製造できる効果がある。
【0070】
なお、以上の実施例は、本発明を限定するものではなく、本発明の要旨と精神に基づき、当業者がなし得る変更や置き換えは本発明の範囲に属するものである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明による基板表面への触媒材料形成を説明する図である。
【図2】本発明による単層カーボンナノチューブ形成工程を説明する図である。
【図3】本発明により形成した単層カーボンナノチューブのラマンスペクトラムを示す特性図である。
【図4】本発明により形成した単層カーボンナノチューブの走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】本発明により形成した単層カーボンナノチューブ断面の電子顕微鏡写真である。
【図6】本発明により形成した単層カーボンナノチューブの成長速度を示すデータである。
【図7】本発明による単層カーボンナノチューブ製造装置の第1の実施例を説明する図である。
【図8】本発明による単層カーボンナノチューブ製造装置の第2の実施例を説明する図である。
【図9】本発明による単層カーボンナノチューブ製造装置に適用するアレイアンテナを説明する図である。
【符号の説明】
【0072】
1 基板
2 反応防止層
3 触媒材料層
4 分散層
10、100、211、212、213、214、215 チャンバー
11加熱板
12、130、153、231、232、233、234、235 ガス導入口
13、142、221、222 アンテナ
14、プラズマ発光部
15、基板保持手段
110、271、272、273、274 加熱装置
120 排気装置
140 高周波発生装置
150、250、イオン発生源
151、251 ターゲット保持装置
152 ターゲット
160、240紫外線照射装置
290 基板搬送装置
291、292、293、294、295、296 気密可能な窓
300 アレイアンテナ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に単層カーボンナノチューブを形成する工程において、
前記カーボンナノチューブの原料となる原料ガスおよびキャリアガスなどを、減圧下でマイクロ波電力を印加し、それによって生じたプラズマ発光部から前記基板を離し、かつ前記プラズマ発光部内もしくはその近傍で生じたラジカルがラジカル状態で前記基板に到達できる位置に設置することを特徴とする単層カーボンナノチューブの製造方法。
【請求項2】
基板の表面に、触媒材料を形成する工程と、続いてカーボンナノチューブを形成する工程を含む単層カーボンナノチューブの製造方法において、
前記触媒材料を形成する工程が、触媒材料形成後、その上に分散材料を形成する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の単層カーボンナノチューブの製造方法。
【請求項3】
前記触媒材料を形成する工程で、触媒材料を形成する前に、基板の表面と触媒材料との反応を防止するための反応防止層を形成することを特徴とする請求項2に記載の単層カーボンナノチューブの製造方法。
【請求項4】
前記触媒材料を形成する工程と、続いてカーボンナノチューブを形成する工程とを含む工程で、カーボンナノチューブを形成する基板を、外気に曝さないようにして、各工程を連続的に行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかの請求項に記載の単層カーボンナノチューブの製造方法。
【請求項5】
カーボンナノチューブを生成するための原料ガスなどを導入するのに必要なガス導入手段と、ガスを排気するための排気手段と、マイクロ波電力を印加してプラズマを発生させるためのマイクロ波発生および印加手段と、前記基板を前記プラズマから離してかつ前記プラズマ内もしくは近傍にて生じたラジカルがラジカル状態で前記基板表面に到達できる位置に保持調整する基板保持手段、前記基板を加熱する基板加熱手段とを有することを特徴とする単層カーボンナノチューブの製造装置。
【請求項6】
カーボンナノチューブを形成する基板を加熱する基板加熱手段と、触媒材料形成のためのガス、カーボンナノチューブを生成するための原料ガス、ガスを排気するための排気手段と、マイクロ波電力を印加してプラズマを発生させるためのマイクロ波発生および印加手段と、前記基板を前記プラズマから離してかつ前記プラズマ内もしくは近傍にて生じたラジカルがラジカル状態で前記基板表面に到達できる位置に保持調整する基板保持手段、触媒材料形成のためのスパッタを行うためのイオン発生源およびターゲットの保持装置とを、1つのチャンバーに備え、前記基板を、外気に曝さないようにして、前記カーボンナノチューブの製造工程を連続的に行うことができるように構成したことを特徴とする単層カーボンナノチューブの製造装置。
【請求項7】
カーボンナノチューブを形成する基板を加熱する基板加熱手段と、該基板の表面をクリーニングするためのガス、触媒材料形成のためのガス、カーボンナノチューブを生成するための原料ガスなどを導入するガス導入手段と、ガスを排気するための排気手段と、マイクロ波電力を印加してプラズマを発生させるためのマイクロ波発生および印加手段と、前記基板を前記プラズマから離してかつ前記プラズマ内もしくは近傍にて生じたラジカルがラジカル状態で前記基板表面に到達できる位置に保持調整する基板保持手段、触媒材料形成のためのスパッタを行うためのイオン発生源およびターゲットの保持装置とを、1つのチャンバーに備え、前記基板を、外気に曝さないようにして、前記カーボンナノチューブの製造工程を連続的に行うことができるように構成したことを特徴とする単層カーボンナノチューブの製造装置。
【請求項8】
カーボンナノチューブを形成する基板を加熱する基板加熱手段と、該基板の表面をクリーニングするためのガス、触媒材料形成のためのガス、カーボンナノチューブを生成するための原料ガス、不純物を削減するためのガスなどを導入するのに必要なガス導入手段と、ガスを排気するための排気手段と、マイクロ波電力を印加してプラズマを発生させるためのマイクロ波発生および印加手段と、前記基板を前記プラズマから離してかつ前記プラズマ内もしくは近傍にて生じたラジカルがラジカル状態で前記基板表面に到達できる位置に保持調整する基板保持手段、触媒材料形成のためのスパッタを行うためのイオン発生源およびターゲットの保持装置とを、1つのチャンバーに備え、前記基板を、外気に曝さないようにして、前記カーボンナノチューブの製造工程を連続的に行うことができるように構成したことを特徴とする単層カーボンナノチューブの製造装置。
【請求項9】
カーボンナノチューブの製造工程で、基板を外気に曝すことなく、連続的にカーボンナノチューブを製造する装置であって、少なくとも5つのチャンバーがあり、前記基板の表面をクリーニングする工程を行う第1のチャンバーと、前記触媒材料を形成する工程を行う第2のチャンバーと、前記カーボンナノチューブを形成する工程を行う第3のチャンバーと、前記の形成された不純物を削減する工程を行うための第4のチャンバーと、カーボンナノチューブが形成された基板を取り出すための第5のチャンバーを、その工程順に連結して、それぞれのチャンバーには排気手段を備え、第1のチャンバーには、前記基板を搬送するための気密可能な窓と、該基板の加熱手段と、クリーニングのためのガスを導入する手段を備え、第2のチャンバーには、前記基板を搬送するための気密可能な窓と、該基板の加熱手段と、スパッタを行うためのイオン発生源およびターゲットの保持装置とを備え、第3のチャンバーには、前記基板を搬送するための気密可能な窓と、該基板の加熱手段と、カーボンナノチューブ形成のための原料ガスを導入する手段と、マイクロ波電力を印加してプラズマを発生させるためのマイクロ波発生および印加手段と前記基板を前記プラズマから離してかつ前記プラズマ内もしくは近傍にて生じたラジカルがラジカル状態で前記基板表面に到達できる位置に保持調整する基板保持手段とを備え、第4のチャンバーには、前記基板を搬送するための気密可能な窓と、該基板の加熱手段と、不純物削減のためのガスを導入する手段と、マイクロ波電力を印加してプラズマを発生させるためのマイクロ波発生および印加手段とを備え、第5のチャンバーには、前記基板を搬送するための気密可能な窓と、不活性ガスを導入する手段とを備え、それぞれの気密可能な窓を通して、それぞれのチャンバーに、前記基板を搬送する手段を備えたことを特徴とする単層カーボンナノチューブの製造装置。
【請求項10】
前記ターゲットの保持装置は、2種類以上のターゲット材料を保持できる装置であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の単層カーボンナノチューブの製造装置。
【請求項11】
前記マイクロ波電力の印加手段は、アレイアンテナであることを特徴とする請求項5から請求項9のいずれかの請求項に記載の単層カーボンナノチューブの製造装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−36593(P2006−36593A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219344(P2004−219344)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】