説明

単板積層材

【課題】裁断面からの吸水が少なく、製造も容易な単板積層材を提供すること。
【解決手段】本発明の単板積層材1は、繊維方向を互いに平行にして積層された2層〜4層の単板からなるコア部2、該コア部の上下両面それぞれに、繊維方向をコア部の単板の繊維方向と直交させて積層された単板からなる中間層3,3、及び、該中間層それぞれの更に外側に、繊維方向をコア部の単板の繊維方向と平行にして積層された単板からなる表面層4,4を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単板積層材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、汎用されている合板は、木材を、ロータリーレースやスライサーにより切削して得られる厚さ1〜4mm程度の単板を、隣接する層どうしの繊維方向を互いに直交させて積層し、層間に接着剤を介在させて一体化してなるものである。
また、単板を、繊維方向を互いに平行にして多層に積層してなるLVLと呼ばれる単板積層材として使用することも知られている。
更に、近年では、LVLに改良を施した積層材も提案されており、例えば、特許文献1には、繊維方向が長手方向と平行する単板と繊維方向が長手方向と直交する単板からなり、長手方向の裁断面に現出する全ての単板層の繊維方向が長手方向と平行する単板積層材やその効率的な製法が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−71608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の一般的な合板は、裁断面に実加工等の加工を施したときに、加工部にバリや欠け等の欠点が生じやすく、その欠点の補修に時間を要する等の問題があった。また、合板は、その裁断面から吸水し易いという問題もある。
更に、従来のLVL、特に特許文献1のように改良を施したものは、合板の製造設備に、かなりの改変を加えなければ効率的に製造できないという問題がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、裁断面からの吸水が少なく、製造も容易な単板積層材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、繊維方向を互いに平行にして積層された2層〜4層の単板からなるコア部、該コア部の上下両面それぞれに、繊維方向をコア部の単板の繊維方向と直交させて積層された単板からなる中間層、及び、該中間層それぞれの更に外側に、繊維方向をコア部の単板の繊維方向と平行にして積層された単板からなる表面層を有することを特徴とする、単板積層材を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の単板積層材は、裁断面からの吸水が少なく、製造も容易である。また、実加工を施したときにバリや欠け等の欠点が生じにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の単板積層材の一実施形態を示す図である。。
本実施形態の単板積層材1は、面材を裁断して、一方向(図中X方向)に長い形状に加工したものであり、単板が合計8層積層された構造を有している。
【0009】
より具体的には、本実施形態の単板積層材1は、図1に示すように、繊維方向を互いに平行にして積層された4層の単板21〜24からなるコア部2、該コア部2の上下両面それぞれに、繊維方向をコア部2の単板の繊維方向と直交させて積層された単板31からなる中間層3,3、及び、該中間層3,3それぞれの更に外側に、繊維方向をコア部2の単板21〜24の繊維方向と平行にして積層された単板41からなる表面層4,4からなる。
【0010】
コア部2を構成する単板21〜24は、何れも、繊維方向が図中X方向に配向しており、繊維方向が互いに平行である。繊維方向が互いに平行な複数枚の単板からなるコア部2を設けることにより、単板の端面が露出する面、特にコア部2の単板の繊維方向が面と平行な2つの側端面11,12からの吸水量を抑制することができる。また、実加工等を施す場合に、該コア部2に実加工を施すことで、加工部にバリや欠け等の欠点が生じることを抑制することもできる。また、フロア用の台板として使用する場合、フロアネイルを打ち込むこともあるが、その場合にも実部分に対するインパクトが小さく、実部分に、割れや欠け等の欠点が生じる率を低く抑えることもできる。
【0011】
コア部2を構成する、繊維方向が互いに平行な単板の積層数は、図1に示す4層に代えて、2層又は3層とすることもできる。図2には、2層の単板からなるコア部2を有する単板積層材の例を示し、図3には、3層の単板からなるコア部2を有する単板積層材の例を示した。
コア部2を構成する単板21〜24は、それぞれの厚みが、2〜4mmであること、特に3〜4mmであることが、コア部2全体の厚み確保の点から好ましい。また、コア部2全体の厚みT2(図1参照)は、単板積層材1の厚みT1に対して30〜80%であることが好ましく、より好ましくは35〜65%であり、更に好ましくは50〜65%である。また、コア部2の厚みT2は、少なくとも4mm以上あることが好ましく、より好ましくは5〜16mm、特に好ましくは6〜16mmである。
【0012】
コア部2を構成する単板21〜24は、低比重材から得られた低比重のものが好ましい。低比重材は、例えば比重が0.45以下であることが好ましく、比重が0.05〜0.4であることがより好ましく、更に比重が0.05〜0.35であることが好ましい。低比重材としては、ファルカータ(比重0.37)、バルサ(比重0.27)、ドロノキ(ポプラ)(比重0.42)、グメリナ(比重0.44)、スギ(比重0.38)、カメレレ(ユーカリ)(比重0.37〜0.64)等が好ましく用いられ、これらの中でも、早生樹で植林木であるファルカータや、バルサが好ましい。比重の値は、(財)日本木材総合情報センターから入手した。コア部2を構成する複数の単板は、同一樹種から得られたものが好ましいが、異なる樹種から得られた単板を組み合わせて用いることもできる。
【0013】
中間層3,3は、コア部2の上下両面それぞれに設けられている。中間層3を構成する単板31は、何れも、その繊維方向が、コア部の単板21〜24の繊維方向と直交している。即ち、中間層3を構成する単板31は、繊維が、図1中Y方向に配向している。
コア部2と表面層4,4との間に、繊維の配向方向が異なる中間層3を介在させることで、材料のY方向における反り(いわゆる巾反り)を低減させることが可能となる。中間層3を構成する単板の好ましい厚みは、コア部2を構成する単板21〜24の好ましい厚みと同様である。また、中間層3を構成する単板は、コア部2を構成する単板21〜24と同様に低比重材から得られたものが好ましいが、雄実加工あるいは雌実加工を実施することを考慮すると、特にファルカータを用いたものが好ましい。
【0014】
表面層4,4は、2層の中間層3,3それぞれの更に外側に設けられる。表面層4を構成する単板41は、何れも、その繊維方向が、コア部2を構成する単板21〜24の繊維方向と平行である。即ち、表面層4を構成する単板41は、繊維が、図1中X方向に配向している。
表面層4,4の単板の繊維の配向方向を、コア部2を構成する単板の繊維方向と平行とすることで、X方向に対しての曲げ強さ・曲げヤング率の低減を最小限度に防ぐことが可能となる。
【0015】
表面層4を構成する単板41の厚みT4は、コア部2を構成する単板21〜24の厚みよりも薄いことが、反りを低減するために、全体の単板方向比率(並行:直行)を50:50に近づける観点から好ましく、例えば、表面層4を構成する単板41の厚みは、コア部2を構成する単板21〜24の平均厚みの10〜30%、特に10〜20%とすることが好ましく、単板21〜24の個々の厚みの全てに対して、この範囲内であることがより好ましい。
コア部2を構成する単板21〜24の平均厚みは、コア部2を構成する個々の単板21〜24の厚みの合計値を、コア部2を構成する単板の層数で除して求める。
【0016】
また、表面層4を構成する単板41は、コア部2を構成する単板21〜24よりも高比重であることが好ましい。例えば、コア部2を構成する単板の比重aに対する、表面層4を構成する単板41の比重bの比(b/a)は、2〜4、特に3〜4とすることが好ましい。また、表面層4を構成する単板41としては、比較的高比重材から得られたものを好ましく用いることができ、例えば、メランティ(Meranti,比重0.47)、ラジアタパイン(比重0.45)、チーク(比重0.63)、アカシアマンギウム(比重0.63)、カメレレ(ユーカリ)(比重0.37〜0.64)等が好ましく用いられる。特に好ましいのは、より比重が高い点でチークである。
【0017】
コア部、中間層及び表面層を構成する単板は、それぞれ、木材を、ロータリーレースやスライサー等の各種公知の切削装置で切削することにより得られる。
また、層間の接合には、合板やLVL等の製造に従来使用されている各種公知の接着剤を特に制限なく用いることができる。好ましい接着剤としては、ユリア樹脂系接着剤、ユリア−メラミン樹脂系接着剤あるいはフェノール樹脂系接着剤、フェノール−メラミン樹脂系接着剤等が挙げられる。単板積層材1は、所要数の単板を層間に接着剤を介在させて積層したものを、ホットプレス又はコールドプレスすることにより得られる。
【0018】
本実施形態の単板積層材1は、多様な用途に好ましく用いることができ、例えば、天井、床、建具等の造作材、机(天板等)、箱棚、タンス、ベッド等の家具、床材、化粧フローリング材、階段の踏み板、間仕切り壁等の基材等として用いることができる。また、軽量であることが必要とされる船舶、自動車の内装等に使用することもできる。家具や床材等に用いる場合には、表裏両面の表面層4上、あるいは人の目に触れる側の表面層4上に、樹脂フィルムや化粧紙、突板等からなる化粧シートを貼着することも好ましい。
【0019】
本実施形態の単板積層材1は、上述した通り、単板の端面が露出する面、特に上述した2つの側端面11,12からの吸水量が抑制されている。そのため、それらの面に、接着剤を介して化粧材や保護材(例えば、テーブルの天板の周囲に固定するエッジテープ、建具の側面に接着剤を介して接着する大手材、大手テープ等)を貼着する場合、少ない接着剤量で、それらの化粧材等を固定することができる。
また、単板の端面が露出する面、特に上述した2つの側端面11,12からの吸水量が抑制されているため、該側端面11,12等に実加工を施した場合においても、吸水等による寸法にくるいが生じにくい。
【0020】
本発明の単板積層材は、単板の端面が露出する面に、単板積層材同士を連結するための実加工を施すことも好ましい。実加工としては、例えば、図4に示すように、互いに平行な一対の側面の一方に凸部(凸条部等,雄実)5を形成し、他方に該凸部5と対応する凹部(溝等,雌実)を形成する。雄実及び雌実の断面形状は、各種公知のものを特に制限なく採用することができる。実加工は、一本の単板積層材に、雄実及び雌実の何れか一方のみを設けることもできる。
【実施例】
【0021】
次に、実施例及び比較例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、斯かる実施例によって何ら制限されるものではない。
〔実施例〕
コア部2を構成する4枚の単板として、ファルカータ由来の厚み3.0mmの単板、中間層3,3を構成する2枚の単板として、ファルカータ由来の厚み3.0mmの単板、表面層4,4を構成する2枚の単板として、メランティ由来の厚み0.7mmの単板を用い、これらを、コア部2及び表面層4,4の単板の繊維方向が互いに平行となり、中間層3,3の単板の繊維方向がそれら直交するように積層した。積層させる単板間にはユリア樹脂系接着剤を介在させ、これらの積層体をホットプレスで熱圧して一体化させた。
得られた単板積層材は、厚みが18mm、縦横の長さが244cm×122cmであった。
【0022】
〔比較例〕
ファルカータ由来の厚み3.55mmの単板を、隣接する単板の繊維方向が互いに直交するように合計5枚積層した。更にその積層体の上下両面に、メランティ由来の厚み0.9mmの単板を積層した。メランティ由来の単板は、それぞれの繊維方向が、それぞれを重ねる単板の繊維方向と直交するように積層した。積層させる単板間にはユリア樹脂系接着剤を介在させ、これらの積層体をホットプレスで熱圧して一体化させた。得られた合板は、厚みが18mm、縦横の長さが244cm×122cmであった。
【0023】
〔吸水量の評価〕
実施例で得られた単板積層材及び比較例で得られた合板について吸水量の評価を行った。
実施例の単板積層材については、縦横10cmの寸法(厚みは18mm)に切断し、その表面層4,4からなる表裏2面及びコア部2を構成する単板の繊維方向と直交する2面をパラフィンでコーティングしたものを試験用サンプルとし、比較例の合板についても、縦横10cmの寸法(厚みは18mm)に切断し、メランティ由来の単板からなる表裏2面及び他の互いに平行な2面をパラフィンでコーティングしたものを試験用サンプルとした。
そして、それらの試験用サンプルについて、ASTM C−272に準拠して吸水率を測定した。具体的には、試験用サンプルを、20℃の水中に24時間浸漬積し、浸積前の重量W1と24時間浸積後(吸水後)の重量W2とから、次式に従って吸水率(%)を算出した。吸水率(%)=〔(W2−W1)/W1〕×100
実施例及び比較例それぞれについて、試験用サンプルを10点作製し、それぞれの吸水率を求めた。表1には、10点のサンプルの吸水率の平均値を示した。
【0024】
【表1】

【0025】
表1に示す結果から、実施例の単板積層材は、比較例の合板に比して吸水率が低いことが判る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の単板積層材の一実施形態を示す図であり、(a)は概略斜視図、(b)は、側端面の一部を拡大して示す図である。
【図2】図2は、本発明の単板積層材の他の実施形態を示す図である。
【図3】図3は、本発明の単板積層材の更に他の実施形態を示す図である。
【図4】図4は、本発明の単板積層材に実加工を施した例を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 単板積層材
2 コア部
21〜24 コア部を構成する単板
3 中間層
31 中間層を構成する単板
4 表面層
41 表面層を構成する単板
5 雄実
6 雌実

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維方向を互いに平行にして積層された2層〜4層の単板からなるコア部、該コア部の上下両面それぞれに、繊維方向をコア部の単板の繊維方向と直交させて積層された単板からなる中間層、及び、該中間層それぞれの更に外側に、繊維方向をコア部の単板の繊維方向と平行にして積層された単板からなる表面層を有することを特徴とする、単板積層材。
【請求項2】
一方向に長い形状を有し、前記コア部の単板の繊維方向が、単板積層材の長手方向と平行であることを特徴とする、請求項1記載の単板積層材。
【請求項3】
前記コア部の単板が、比重0.1〜0.4の植林木由来の単板であることを特徴とする、請求項1又は2記載の単板積層材。
【請求項4】
実加工が施されている請求項1〜3の何れかに記載の単板積層材。
【請求項5】
前記コア部の厚みが、単板積層材の厚みの30〜80%である請求項1〜4の何れかに記載の単板積層材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−99942(P2010−99942A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273870(P2008−273870)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【出願人】(508318742)
【氏名又は名称原語表記】PT.KUTAI TIMBER INDONESIA
【住所又は居所原語表記】GD.SUMMITMAS II LT.8, JL.JEND SUDIRMAN KAV.61−62, SENAYAN, KEBAYORAN BARU, JAKARTA SELATAN, INDONESIA
【Fターム(参考)】