説明

単相流もしくは混相流の分配装置

【課題】流入管から旋回室内に流入する搬送流体(ガスまたは液体)の流量が変動する条件下でも、外筒と内筒間の旋回室内で旋回流同士の干渉・衝突を低減する効果が十分にあり、従来装置に比べて、一段と均分性に優れる単相流もしくは混相流の分配装置を提供する。
【解決手段】外筒開口部の下端から内筒の上端開口に至るまでの高さ範囲で、外筒開口部から導入された単相流もしくは混相流の流入流が、外筒の側壁の内周を螺旋状に1周以上するように、外筒と内筒間に上昇流を形成させる螺旋状のフインを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流入管から旋回室に導入された単相流(複数の液体、複数の気体が混合された流体を1相とする)もしくは前記単相流に一種以上の固体もしくは液滴、ミスト等が混合された二相流(以下、混相流という)を、最終的に流入管と連通する複数の分配管へ均分する構造の分配装置にかかり、好適には転炉底に設置して、底吹きガスあるいは底吹きガスに生石灰や蛍石等の粉粒体が混合された混相流を均分することができる転炉底吹きガスの分配装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前述した単相流もしく混相流の分配装置は、様々な産業分野のプラント等に必要不可欠な装置として設置されている。たとえば製鉄分野の製鋼プロセスにおいては、溶鋼Mの成分調整を行うため、図6に示すように、転炉底吹きガスの分配装置1が転炉2の転炉底に設けてある。
一般に転炉底には羽口3が複数個所に形成され、この複数個所の羽口3からは純酸素、不活性ガスあるいは両者を混合した底吹きガスF、もしくは底吹きガスFに生石灰や蛍石等の粉粒体を混合した混相流が分配装置1を経て吹き込まれる。この複数の羽口3から吹き込む生石灰や蛍石等の粉粒体には、粒径40μm以上のものが50mass%以上も含まれる場合がある。
【0003】
そこで、転炉底の複数の羽口3から生石灰や蛍石等の粉粒体を吹き込む場合、粉粒体の分配も含め、底吹きガスFの分配に偏りが大きいと、溶鋼Mに対して所望の精錬性能が得られないばかりでなく、ガス流量の多い羽口3においては、火点反応の過剰な促進や粉粒体による磨耗の増大により、羽口損耗が早く進行する。羽口損耗が早く進行すると、当該羽口のみならず、転炉底全体の補修がより早まる。このため、特に混相流を転炉底の複数の羽口3から吹き込む場合、羽口間で粉粒体の分配も含め、底吹きガスFの分配に偏りが小さいことが望まれる。図6中、1aは分配装置1と羽口3を結ぶ分配管であり、分配装置1の流入管と連通する最終的な部分である。転炉底吹きガスの分配装置1の構造について以下に説明しておく(図7、図8参照)。
【0004】
図7は転炉底吹きガスの分配装置1の外観を示す斜視図、図8は同分配装置1の内部を示す斜視図である。図7中、5は、単相流もしくは混相流が流入される流入管、1aは、分配装置1の流入管5と連通する複数の分配管を示す。図8に示したように、分配装置1は、基本構造として上部に外筒4と内筒6を具備し、外筒4と内筒6間の空間が旋回室9とされ、流入流Iによって旋回流Rを形成する。また、下部に複数の隔室7を有し、各隔室7に分配管1aが接続され、隔壁で隔てられた各隔室7の中央部が内筒6の下端開口と連通している。さらに、内筒6の上端が外筒4内に開口し外筒4の側壁に流入管5を接続する外筒開口部8が形成され、外筒開口部8には外筒4の内周面に沿う方向に傾けて流入管5が接続される。このように流入管5を外筒開口部8に接続するのは流入流Iによって旋回流Rを効果的に形成するためである。
【0005】
上記構造をもつ転炉底吹きガスの分配装置1によれば、底吹きガスに生石灰や蛍石等の粉粒体を混合した混相流が流入管5から旋回室9内へ導入されると、旋回室9内に旋回流Rが形成され、外筒4と内筒6間の空間を粉粒体が底吹きガスを搬送気体として旋回しつつ上昇する。次いで内筒6の上端開口まで上昇した旋回流Rは、旋回しながら内筒6内を下降して内筒6の下端開口に至り、最終的に複数の分配管1aを経て羽口3から転炉2内に噴出する。
【0006】
したがって、粉粒体の分配も含め、底吹きガスの分配に偏りが大きいと、前述したように、転炉精錬性能や羽口異常損耗により、転炉底寿命に問題が生じる。
ところで、粉体を単体であるいは混合して搬送気体とともに精錬炉・溶解炉等に吹き込む際、羽口損耗を防止するために粉体磨耗に十分耐久性があるオリフィスを羽口ごとに取付けた装置が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−304773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1には、粉体を搬送気体とともに精錬炉・溶解炉等に吹き込む際、装置自体の構造によって、粉体を含む、搬送気体を均分する構造はなんら開示されていない。このため、先願(特願2007-234922)にて、外筒開口部から旋回室内へ導入される流入流Iと、旋回室内で形成される旋回流Rとの干渉を低減するため、外筒開口部8の上端から内筒6の上端までの最小軸方向距離aと、外筒開口8の軸方向寸法bに注目し、a/b≧0.25を満たすようにした転炉底吹きガスの分配装置を提案した(図1(a)参照)。
【0009】
この先願に関し、本発明者らがさらに検討した結果、外筒4と内筒6間の旋回室内には旋回流Rを鉛直方向に制約する構造がないため、たとえば流入管から旋回室内に流入する底吹きガスの流量が変化した場合、旋回室内で旋回流R同士の干渉・衝突等が発生するが、これを低減する効果が不十分であり、所望の均分性を達成できないことが分かった。
このようなことは、製鉄分野に限らず、様々な産業分野のプラント、例えばガスに代わり、水や石油精製物などの流体を分配する化学プラント用の分配装置、流体中に混合したセメント原料や肥料原料などの粉粒体を分配する粉粒体プラント用の分配装置等においても起こり得る。
【0010】
そこで、本発明は、流入管から旋回室内に流入する搬送流体(ガスまたは液体)の流量が変動する条件下でも、外筒と内筒間の旋回室内で旋回流同士の干渉・衝突を低減する効果が十分にあり、従来装置に比べて、一段と均分性に優れる単相流もしくは混相流の分配装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、様々な検討を行った結果、外筒と内筒間の旋回室内で旋回流同士の干渉・衝突を効果的に低減すればよいことを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
1.外筒と内筒を具備し、内筒の上端が外筒内に開口し外筒の側壁に流入管を接続する外筒開口部が形成され、外筒開口部に外筒の内周面に沿う方向に傾けて流入管が接続される基本構造を有し、前記流入管から導入される単相流もしくは混相流の流入流によって前記外筒と内筒間の空間を旋回室として旋回流を形成するとともに、最終的に前記流入管と連通する複数の分配配管に分配する構造の分配装置において、
前記外筒開口部の下端から内筒の上端開口に至るまでの高さ範囲で、前記外筒開口部から導入された単相流もしくは混相流の流入流が、前記外筒の側壁の内周を螺旋状に1周以上するように、前記外筒と内筒間に上昇流を形成させる螺旋状のフインを設けたことを特徴とする単相流もしくは混相流の分配装置。
2.前記外筒と内筒間に設けた螺旋状のフインに加え、前記内筒の上端開口から下端開口に至るまでの高さ範囲で、前記内筒の上端から導入された旋回流が、前記内筒の側壁の内周を螺旋状に1周以上するように、前記内筒の内側に下降流を形成させる螺旋状のフインを設けたことを特徴とする上記1.に記載の単相流もしくは混相流の分配装置。
3.前記螺旋状のフインに加えて、前記旋回流の流れ方向上流側よりも下流側の方が内側に突出した斜面を有する突起を前記外筒の側壁の内周面にあるいはさらに前記内筒の側壁の内周面に設けたことを特徴とする上記1.または2.に記載の単相流もしくは混相流の分配装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外筒と内筒間に設けた螺旋状のフインは旋回流同士の干渉・衝突を低減する効果が十分にあり、流入管から旋回室内に流入する搬送流体(ガスまたは液体)の流量が変動する条件下でも、外筒開口部から導入された単相流もしくは混相流の流入流を螺旋状のフインに沿わせて1周以上旋回させつつ上昇させて内筒の上端開口に導くことができ、先願(特願2007-234922)に記載の分配装置に比べて、より均分性に優れる。
【0013】
このため、所望の精錬性能の安定した達成、さらには羽口損耗の偏りが抑制されることにより、転炉底寿命を延ばすことも可能となる。このような本発明は、転炉底吹きガスの分配装置に限らず、様々な産業分野のプラント、例えば化学プラント用の分配装置、また流体中に混合したセメント原料や肥料原料などの粉粒体を分配する粉粒体プラント用の分配装置等にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は本発明適用前の転炉底吹きガスの分配装置の内部を示す図8におけるY−Y断面図、(b)は本発明適用後の同部の断面図である。
【図2】図1(b)と異なる幅のフインの設置箇所を示す水平断面図である。
【図3】(a)は外筒の側壁の内面に突起を設けていない場合、(b)は外筒の側壁の内面に突起を設けた場合の効果を比較して示す水平断面図である。
【図4】本発明にかかる螺旋状のフインの作用を示す断面図である。
【図5】本発明の効果を先の発明と比較して示す特性図ある。
【図6】本発明を適用した転炉底吹きガスの分配装置の配置を示す断面図である。
【図7】本発明を適用した転炉底吹きガスの分配装置の斜視図である。
【図8】本発明を適用前の転炉底吹きガスの分配装置の内部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を転炉底吹きガスの分配装置に適用した場合について説明する。本発明にかかる分配装置は、特願2007-234922に記載の分配装置1の基本構造と同様、円筒状の2重管で構成される旋回室9を有する。すなわち、上部に外筒4と内筒6を具備し、外筒4と内筒6間の空間が、旋回室9とされ、流入流Iによって旋回流Rを形成する。また、下部に複数の隔室7を有し、各隔室7に分配管1aが接続される(図7、8参照)。
【0016】
この隔室7の構造は、隔室7同士が、中央部を除き放射上に延びる隔壁で隔てられ、隔壁で隔てられた各隔室7の中央部で、内筒6の下端開口と連通している(図8参照)。そこで、単相流もしくは混相流の流入流Iは、最終的に複数の分配配管1aに分配される。
先願(特願2007-234922)は、図1(a)に示したように、外筒4と内筒6間の空間には何も設けず、外筒開口部8の上端から内筒6の上端開口までの最小軸方向距離aと、流入管が接続される外筒開口部8の軸方向寸法bに注目し、a/b≧0.25の関係を満たす分配装置とした。
【0017】
これに対し、本発明の特徴は、図1(b)、図2に示したように、螺旋状のフイン10又は11を外筒4と内筒6間に設けたことである。
(外筒4と内筒6間に設けた螺旋状のフイン10、11について)
板状のフイン部材で構成された螺旋状のフイン10は、図1(b)に示したように、外筒開口部8の下端から内筒6の上端に至るまでの高さ(a+b)範囲で、外筒4の側壁の内周を螺旋状に1周以上するように設けられている。すなわち、螺旋状のフイン10は、軸方向断面が板状のフイン部材で構成され、高さ(a+b)範囲で巻数1以上に形成されている。
【0018】
螺旋状のフイン10を高さ(a+b)範囲で巻数1以上と限定する理由は以下である。
先願(特願2007-234922)はa/b≧0.25の関係を満たすように規定しているが、本願は、螺旋状のフイン10を高さ(a+b)範囲で巻数1以上、たとえば、図1(b)に示したように、外筒開口部8の下端から内筒6の上端に至るまでの高さ(=a+b)範囲で、螺旋状のフイン10の巻数=2である。つまり、螺旋状のフイン10を高さ(a+b)範囲で巻数1以上とすることで、流入管から旋回室内に流入する搬送ガスの流量が変動する条件下でも、外筒開口部8から導入された単相流もしくは混相流の流入流を、螺旋状に1周以上するように、旋回させつつ上昇させて内筒6の上端開口に導くことができ、旋回流同士の干渉・衝突を低減する効果が十分となる。
【0019】
一方、螺旋状のフイン10を高さ(a+b)範囲で、外筒4の側壁の内周を螺旋状に1周以上するように設けていない場合、すなわち、巻数1未満であると、流入管から旋回室内に流入する搬送ガスの流量が変動する条件下で、外筒開口部8から導入された単相流もしくは混相流の流入流が、旋回室9内で旋回しつつ上昇することができないことが起り、旋回流同士の干渉・衝突を低減する効果が不十分となる。
【0020】
そこで、本発明にかかる分配装置においては、旋回室内で旋回流を鉛直方向に制約する構造として、螺旋状のフイン10を上記のように高さ(a+b)範囲で巻数1以上と限定した。
ここで、螺旋状のフイン10は、その半径方向の幅W1が外筒4と内筒6間の幅の100%を満たす。本発明において、外筒4と内筒6間に設けるフインの半径方向の幅W1は、単相流もしく混相流の種類にもよるが、外筒4と内筒6間の幅の50%以上とするのが好ましく、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは全幅(100%)である。この理由は、外筒4と内筒6間に設けるフインの半径方向の幅W1が広いほど、流入管から旋回室内に流入する搬送ガスの流量が変動する条件下で、旋回しつつ上昇する旋回流同士の干渉・衝突を低減する効果が大きいからである。
【0021】
螺旋状のフイン10のように半径方向の幅W1が、外筒4と内筒6間の幅の100%を満たし、外筒4と内筒6間に跨って配置できる場合、板状の部材で形成したフイン10は、外筒4の側壁の内周面あるいは内筒6の側壁の外周面に取り付けることができる。なお、図2には、外筒4の側壁の内周面に取り付けた、半径方向の幅W1が外筒4と内筒6間の幅の100%に満たない螺旋状のフイン11を示した。このように半径方向の幅W1が外筒4と内筒6間の幅の100%に満たないフインの場合、外筒4の側壁の内周面に取り付けるのが、流入管から旋回室内に流入する搬送ガスの流量が変動する条件下で、旋回しつつ上昇する旋回流同士の干渉・衝突を低減する効果が大きいから好ましい。
(内筒6の内側に設ける螺旋状のフイン12について)
外筒と内筒間に設けた螺旋状のフイン10、11に加え、内筒6の上端開口から下端開口に至るまでの高さ範囲で、内筒6の上端開口から導入された旋回流が、内筒6の側壁の内周を1周以上するように、内筒6の内側に下降流を形成させる螺旋状のフイン12を設けることが好ましい(図2参照)。この理由は、内筒6の内側に螺旋状のフイン12を設けない場合、上述した螺旋状のフイン10あるいは11を外筒4と内筒6間に設けても、流入管から旋回室内に流入する搬送ガスの流量が変動する条件下で、内筒6内で旋回しつつ下降する旋回流同士の干渉・衝突が生じてしまい、内筒6内で均分性の悪化が起こり得るからである。
【0022】
なお、内筒6の内側に設ける螺旋状のフイン12の幅W2は、内筒6の中心と内筒6の内面間の半径方向距離の50%以上とするのが好ましく、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは100%である。この理由は、内筒6の内側に設ける螺旋状のフイン12の幅W2が広いほど、流入管から旋回室内に流入する搬送ガスの流量が変動する条件下で、内筒6内で旋回しつつ下降する旋回流同士の干渉・衝突を低減する効果が大きいからである。
(突起14について)
混相流に含まれる粉粒体の密度が大きいと、図3(a)に示したように、粉粒体13はその遠心力によって外筒4の側壁の内周面近くに集まり、そのままでは、粉粒体13の均分性が悪化する場合がある。そこで、この場合、旋回流の流れ方向上流側よりも下流側の方が内側(内筒6の側)に突出した斜面を有する突起14を外筒4の側壁の内周面に設けることが好ましい。
【0023】
この理由は、外筒4の側壁の内周面に集まりやすい粉粒体13を、図3(b)に示したように、突起14の斜面に沿わせて内側の方(内筒6の方)に押しやり、また同時に突起14によって乱流15を発生させることにより、混相流に含まれる粉粒体13を旋回流中に均一に分散させることができるので好ましい。
同様なことは、内筒6内でも起り得るから、旋回流の流れ方向上流側よりも下流側の方が内側(中心側)に突出した斜面を有する突起を内筒6の側壁の内周面に設けることが好ましい。この理由は、内筒6内に突起14を設けない場合、上流の外筒4と内筒6間で、粉粒体13を旋回流中に均一に分散させることができても、混相流に含まれる粉粒体の密度が大きいと、内筒6内で、粉粒体13はその遠心力によって内筒6の側壁の内周面近くに集まってしまい、粉粒体13を最終的に流入管と連通する複数の分配配管に均分することができない場合があるからである。
【0024】
なお、上述した螺旋状のフイン10、11、12と、突起14との相違点は、突起14の方は、図3(b)に示したように、外筒4あるいは内筒6の側壁の内周面を1周するほど長くなく、旋回流の流れ方向上流側よりも下流側の方が内側に突出した斜面を有するように形成されており、螺旋状のフイン10、11、12の方は、外筒4あるいは内筒6の側壁の内周を螺旋状に1周以上するように形成されていることが異なる(図1(b)、図2参照)。
【0025】
以上説明した本発明にかかる分配装置によれば、流入管から旋回室内に流入する搬送ガスの流量が変動する条件下でも、外筒開口部8から導入された単相流もしくは混相流の流入流Iを、外筒4と内筒6間に設けた螺旋状のフインに沿わせて螺旋状に1周以上するように旋回させつつ上昇させて内筒6の上端開口に導くことができる。次いで、好ましくは、内筒6の上端開口に導いた旋回流R1を、内筒6の内側に設けた螺旋状のフインに沿わせて螺旋状に1周以上するように旋回させつつ下降させて内筒の下端開口に導くことができる。このため、最終的に流入管5と連通する複数の分配配管1aに単相流もしくは混相流の流入流Iを均分することができる(図4参照)。なお、図4中、R1は外筒4と内筒6間で形成した螺旋状に1周以上する旋回流を、R2は内筒6内で形成した螺旋状に1周以上する旋回流を示す。
【実施例1】
【0026】
本発明の効果を先の発明と比較するため、転炉底吹きガスの分配装置1の流動シミュレーション、および縮尺モデル実験を行った。流動シミュレーションは、分配装置1自体の各部の寸法を変えて行った。
先願の条件:螺旋状のフインなし、突起14なし、図1(a)参照
外筒4の内径d=800〜1000mm、分配装置1の全高さh=600〜900mm、外筒開口部8の上端から内筒6の上端までの最小軸方向距離a=−60〜240mm、外筒開口8の軸方向寸法b=240〜360mm(a/bを−0.2 ≦a/b ≦0.8で変更)とした螺旋状のフインなしの10パターン(グループA)。ただし、隔室7の数=18、流入流Iの圧力=5kg/cm2G、流入流Iの流量:670Nm/min。
本発明の条件:螺旋状のフイン10あり、突起14なし、図1(b)参照
外筒と内筒間に設けた螺旋状のフイン10は、外筒の側壁の内周を螺旋状に2周するように、外筒開口部8の下端から内筒6の上端に至るまでの高さ(a+b)範囲で巻数=2とし、フインピッチ(フインの同士の間隔=(a+b)/2)とした。螺旋状のフイン10の高さ方向開始位置:外筒開口8の下端、螺旋状のフイン10の高さ方向終わり位置。また、フインの半径方向の幅=外筒と内筒間の幅とした。その他の条件は、先願の条件であるグループAと同じとした(グループB)。
(転炉底吹きガスの分配装置1の均分性の評価)
各隔室7をそれぞれ通過するガス流量を測定し、その平均流量に対する各隔室7のガス流量の差を残差(=各隔室7のガス流量−18室の平均流量)とし、この残差を18室の平均流量で除した絶対値のうち最大値(=Max(abs(残差/平均))が小さいほど、均分性に優れるとした。
【0027】
図5には、横軸に分配装置自体の寸法a/bを、縦軸に底吹きガス分配の均分性を示すパラメータ(Max(abs(残差/平均))を取って、本発明(螺旋状のフイン10あり、突起14なし)の効果を先の発明(螺旋状のフイン10なし、突起14なし)と比較して示した。
図5に示した結果から明らかなように、螺旋状のフインありとした本発明は、分配装置自体の寸法a/bによらず、螺旋状のフインなしとした先の発明よりも、均分性が良好であることが分かる。
【実施例2】
【0028】
底吹きガスに混合される粉粒体の分配ばらつきをさらに小さくでき、均分性に優れることは、次のようにして評価した。転炉底吹きガスの分配装置1の縮尺モデルを製作しモデル実験を行った。縮尺モデルにて、サンプル粒子を1000個、流入管5の上流から投入し、各隔室7に分配された粒子の個数を測定し、その平均個数に対する各隔室7に分配された粒子の個数の差を残差(=各隔室7に分配された粒子の個数−18室の平均個数)とし、この残差を18室の平均個数で除した絶対値のうち最大値(=Max(abs(残差/平均))が小さいほど、均分性に優れるとした。この結果は図示していないが、図5と同様な結果を示した。
【0029】
実際の転炉底の各羽口3から底吹きガスを吹き込む場合には、ガスホルダから減圧弁および流量調整弁を経て所定の圧力、所定の流量とされた底吹きガスが流入管5に供給される。また、底吹きガスに粉粒体を混合した混相流を転炉底の各羽口3から吹き込む場合、定量切り出し装置により、粉粒体が所定量切り出され、流入管5に供給される。
【符号の説明】
【0030】
F 底吹きガス
M 溶鋼
R 旋回流
R1、R2 螺旋状に1周以上する旋回流
I 流入流
a 外筒開口部の上端から内筒の上端開口までの最小軸方向距離
b 外筒開口部の軸方向寸法
c 内筒の高さ(内筒の下端開口から内筒の上端開口までの高さ)
d 外筒の内径
h 分配装置の全高さ
W1、W2 半径方向の幅
1 分配装置
1a 分配管
2 転炉
3 羽口
4 外筒
5 流入管
6 内筒
7 隔室
8 外筒開口部
9 旋回室
10、11、12 螺旋状のフイン
13 粉粒体
14 突起
15 乱流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と内筒を具備し、内筒の上端が外筒内に開口し外筒の側壁に流入管を接続する外筒開口部が形成され、外筒開口部に外筒の内周面に沿う方向に傾けて流入管が接続される基本構造を有し、前記流入管から導入される単相流もしくは混相流の流入流によって前記外筒と内筒間の空間を旋回室として旋回流を形成するとともに、最終的に前記流入管と連通する複数の分配配管に分配する構造の分配装置において、
前記外筒開口部の下端から内筒の上端開口に至るまでの高さ範囲で、前記外筒開口部から導入された単相流もしくは混相流の流入流が、前記外筒の側壁の内周を螺旋状に1周以上するように、前記外筒と内筒間に上昇流を形成させる螺旋状のフインを設けたことを特徴とする単相流もしくは混相流の分配装置。
【請求項2】
前記外筒と内筒間に設けた螺旋状のフインに加え、前記内筒の上端開口から下端開口に至るまでの高さ範囲で、前記内筒の上端開口から導入された旋回流が、前記内筒の側壁の内周を螺旋状に1周以上するように、前記内筒の内側に下降流を形成させる螺旋状のフインを設けたことを特徴とする請求項1に記載の単相流もしくは混相流の分配装置。
【請求項3】
前記螺旋状のフインに加えて、前記旋回流の流れ方向上流側よりも下流側の方が内側に突出した斜面を有する突起を前記外筒の側壁の内周面にあるいはさらに前記内筒の側壁の内周面に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の単相流もしくは混相流の分配装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−230201(P2010−230201A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75862(P2009−75862)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】