説明

単相流もしくは混相流の分配装置

【課題】従来装置に比べてシンプルな構造を有しかつ一段と均分性に優れる単相流もしくは混相流の分配装置を提供する。
【解決手段】流入管が接続される内筒の下部から内筒の上端開口に至るまでの高さ範囲で、流入管から導入された単相流もしくは混相流の流入流が、内筒の側壁の内周を螺旋状に1周以上するように、内筒内に上昇流を形成させる螺旋状のフィンを設けた分配装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流入管から旋回室に導入された単相流(複数の液体、複数の気体が混合された流体を1相とする)もしくは前記単相流に一種以上の固体もしくは液滴、ミスト等が混合された二相流(以下、混相流という)を、最終的に流入管と連通する複数の分配管へ均分する構造の分配装置にかかり、好適には転炉底に設置して、底吹きガスあるいは底吹きガスに生石灰や蛍石等の粉粒体が混合された混相流を均分することができる転炉底吹きガスの分配装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前述した単相流もしく混相流の分配装置は、様々な産業分野のプラント等に必要不可欠な装置として設置されている。たとえば製鉄分野の製鋼プロセスにおいては、溶鋼Mの成分調整を行うため、図6に示すように、転炉底吹きガスの分配装置1が転炉2の転炉底に設けてある。
一般に転炉底には羽口3が複数個所に形成され、この複数個所の羽口3からは純酸素、不活性ガスあるいは両者を混合した底吹きガスF、もしくは底吹きガスFに生石灰や蛍石等の粉粒体を混合した混相流が分配装置1を経て吹き込まれる。この複数の羽口3から吹き込む生石灰や蛍石等の粉粒体には、粒径40μm以上のものが50mass%以上も含まれる場合がある。
【0003】
そこで、転炉底の複数の羽口3から生石灰や蛍石等の粉粒体を吹き込む場合、粉粒体の分配も含め、底吹きガスFの分配に偏りが大きいと、溶鋼Mに対して所望の精錬性能が得られないばかりでなく、ガス流量の多い羽口3においては、火点反応の過剰な促進や粉粒体による磨耗の増大により、羽口損耗が早く進行する。羽口損耗が早く進行すると、当該羽口のみならず、転炉底全体の補修がより早まる。このため、特に混相流を転炉底の複数の羽口3から吹き込む場合、羽口間で粉粒体の分配も含め、底吹きガスFの分配に偏りが小さいことが望まれる。図6中、1aは分配装置1と羽口3を結ぶ分配管であり、分配装置1の流入管と連通する最終的な部分である。転炉底吹きガスの分配装置1の構造について以下に説明しておく(図7、図8参照)。
【0004】
図7は転炉底吹きガスの分配装置1の外観を示す斜視図、図8(a)は同分配装置1の内部を示す斜視図、図8(b)はそのY1−Y1断面図である。図7中、5は、単相流もしくは混相流が流入される流入管、1aは、分配装置1の流入管5と連通する複数の分配管を示す。分配装置1は、図8(a)、(b)に示したように、基本構造として上部に外筒4と内筒6を具備し、外筒4と内筒6間の空間が旋回室9とされ、流入流Iによって旋回流Rを形成する。また、下部に複数の隔室7を有し、各隔室7に分配管1aが接続され、隔壁で隔てられた各隔室7の中央部が内筒6の下端開口と連通している。さらに、内筒6の上端が外筒4内に開口し外筒4の側壁に流入管5を接続する外筒開口部8が形成され、外筒開口部8には外筒4の内周面に沿う方向に傾けて流入管5が接続される。このように流入管5を外筒開口部8に接続するのは流入流Iによって旋回流Rを効果的に形成するためである。
【0005】
上記構造をもつ転炉底吹きガスの分配装置1によれば、底吹きガスに生石灰や蛍石等の粉粒体を混合した混相流が流入管5から旋回室9内へ導入されると、旋回室9内に旋回流Rが形成され、外筒4と内筒6間の空間を粉粒体が底吹きガスを搬送気体として旋回しつつ上昇する。次いで内筒6の上端開口まで上昇した旋回流Rは、旋回しながら内筒6内を下降して内筒6の下端開口に至り、最終的に複数の分配管1aを経て羽口3から転炉2内に噴出する。
【0006】
したがって、粉粒体の分配も含め、底吹きガスの分配に偏りが大きいと、前述したように、転炉精錬性能や羽口異常損耗により、転炉底寿命に問題が生じる。
ところで、粉体を単体であるいは混合して搬送気体とともに精錬炉・溶解炉等に吹き込む際、羽口損耗を防止するために粉体磨耗に十分耐久性があるオリフィスを羽口ごとに取付けた装置が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−304773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1には、粉体を搬送気体とともに精錬炉・溶解炉等に吹き込む際、装置自体の構造によって、粉体を含む、搬送気体を均分する構造はなんら開示されていない。このため、先願(特願2007-234922)にて、外筒開口部から旋回室内へ導入される流入流Iと、旋回室内で形成される旋回流Rとの干渉を低減するため、外筒開口部8の上端から内筒6の上端までの最小軸方向距離aと、外筒開口8の軸方向寸法bに注目し、a/b≧0.25を満たすようにした転炉底吹きガスの分配装置を提案した(図8(b)参照)。
【0009】
この先願に関し、本発明者らがさらに検討した結果、たとえば流入管から旋回室内に導入する底吹きガスの流量が変化した場合、旋回室9内で旋回流R同士の干渉・衝突等が発生するが、これを低減する効果が不十分であり、所望の均分性を達成できないことが分かった。このようなことは、製鉄分野に限らず、様々な産業分野のプラント、例えばガスに代わり、水や石油精製物などの流体を分配する化学プラント用の分配装置、流体中に混合したセメント原料や肥料原料などの粉粒体を分配する粉粒体プラント用の分配装置等においても起こり得る。
【0010】
また、製鉄分野に限らず、様々な産業分野のプラントに用いる分配装置に対しては、構造がシンプルであることが要求されるが、従来の分配装置の基本構造は、上部に外筒と内筒を具備し、下部に中央部が内筒の下端開口と連通している複数の隔室を有するため、構造が複雑となる欠点があった。
そこで、本発明は、従来装置に比べてシンプルな構造を有しかつ一段と均分性に優れる単相流もしくは混相流の分配装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、従来装置に設けた複数の隔室をなくすため、様々な検討を行った結果、従来の分配装置の基本構造を変更し、外筒と内筒間の空間を旋回室兼分配室とし、しかも内筒は底板および側壁を有し該側壁の下部に流入管が接続され、上端開口が外筒内に位置するよう、外筒の底板を貫通させて設け、内筒内で旋回流同士の干渉・衝突を効果的に低減すればよいことを見出し、本発明をなすに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
1.基本構造として外筒と内筒を具備し、前記外筒は天板、底板および側壁を有し該側壁の下部に複数の分配配管が接続され、しかも前記内筒は底板および側壁を有し該側壁の下部に流入管が接続され該流入管からの流入流によって、空間内に旋回流が形成されかつ上端開口が外筒内に位置するよう、前記外筒の底板を貫通させて設け、前記流入管から導入される単相流もしくは混相流を、最終的に前記流入管と連通する複数の分配配管に分配する構造の分配装置とし、前記流入管が接続される内筒の下部から内筒の上端開口に至るまでの高さ範囲で、前記流入管から導入された単相流もしくは混相流の流入流が、前記内筒の側壁の内周を螺旋状に1周以上するように、内筒内に上昇流を形成させる螺旋状のフィンを設けたことを特徴とする単相流もしくは混相流の分配装置。
2.内筒内に設けた螺旋状のフィンに加え、前記内筒の上端開口から前記外筒の下部に至るまでの高さ範囲で、前記内筒の上端開口から導入された旋回流が、前記外筒の側壁の内周を螺旋状に1周以上するように、前記外筒と内筒間に下降流を形成させる螺旋状のフィンを設けたことを特徴とする請求項1に記載の単相流もしくは混相流の分配装置。
3.前記螺旋状のフィンに加えて、前記旋回流の流れ方向上流側よりも下流側の方が内側に突出した斜面を有する突起を前記内筒の側壁の内周面にあるいはさらに前記外筒の側壁の内周面に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の単相流もしくは混相流の分配装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来装置に設けた複数の隔室をなくすことができ、しかも流入管から導入する搬送流体(ガスまたは液体)の流量が変動する条件下でも、内筒内に設けた螺旋状のフィンによる、旋回流同士の干渉・衝突を低減する効果が十分にあり、流入管から導入する単相流もしくは混相流を螺旋状のフィンに沿わせて1周以上旋回させつつ上昇させて内筒の上端開口に導くことができ、従来装置に比べてシンプルな構造を有しかつ一段と均分性に優れる分配装置を実現できる。
【0014】
このため、所望の精錬性能の安定した達成、さらには羽口損耗の偏りが抑制されることにより、転炉底寿命を延ばすことも可能となる。このような本発明は、転炉底吹きガスの分配装置に限らず、様々な産業分野のプラント、例えば化学プラント用の分配装置、流体中に混合したセメント原料や肥料原料などの粉粒体を分配する粉粒体プラント用の分配装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は本発明にかかる転炉底吹きガスの分配装置の内部を示す斜視図、(b)はそのY2−Y2断面図である。
【図2】図1と異なる幅のフィンの設置箇所を示す水平断面図である。
【図3】(a)は内筒の側壁の内面に突起を設けていない場合、(b)は内筒の側壁の内面に突起を設けた場合の効果を比較して示す水平断面図である。
【図4】本発明にかかる螺旋状のフィンの作用を示す断面図である。
【図5】本発明の効果を先の発明と比較して示す特性図ある。
【図6】本発明を適用した転炉底吹きガスの分配装置の配置を示す断面図である。
【図7】従来の転炉底吹きガスの分配装置の斜視図である。
【図8】(a)は従来の転炉底吹きガスの分配装置の内部を示す斜視図、(b)はそのY1−Y1断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を転炉底吹きガスの分配装置に適用した場合について説明する。本発明にかかる分配装置は、図1(a)、(b)に示したように、従来装置(特願2007-234922)の基本構造と異なる。図1(a)は本発明にかかる転炉底吹きガスの分配装置20の内部を示す斜視図、図1(b)はそのY2−Y2断面図である。
本発明にかかる分配装置20は、基本構造として外筒4と内筒6を具備し、外筒4は天板、底板および側壁を有し側壁の下部に複数の分配配管1aが接続され、しかも内筒6は底板および側壁を有し側壁の下部に流入管5が接続され、流入管5からの流入流によって、空間内に旋回流が形成されかつ上端開口が外筒4内に位置するよう、外筒6の底板を貫通させて設けられている。すなわち、本発明は、内筒6の下部に流入管5が内周面に沿う方向に傾けて接続され、流入管5から導入する単相流もしくは混相流の流入流によって、内筒6内に旋回流が形成される構造とし、この内筒6内に螺旋状のフィン11を設けた。
【0017】
これに対し、従来の分配装置1は、上部に外筒4と内筒6を具備し、外筒4と内筒6間の空間が旋回室9とされ、下部に複数の隔室7を有し、各隔室7に分配管1aが接続され、隔壁で隔てられた各隔室7の中央部が内筒6の下端開口と連通している構造を有する(図8参照)。
つまり、従来の分配装置1は、旋回室9内に旋回流Rを鉛直方向に制約する構造がなく、中央部が内筒6の下端開口と連通している複数の隔室7を有し、一方、本発明にかかる分配装置20は、従来のような複数の隔室7がない代わり、外筒4と内筒6間の空間を旋回室兼分配室10とし、内筒6内に螺旋状のフィン11を設けた(図1(a)、(b)参照)。
(内筒6内に設けた螺旋状のフィン11について)
フィン11は、図1(a)、(b)に示したように、内筒6の高さc範囲、すなわち流入管5が接続される内筒6の下部から内筒の上端開口に至るまでの高さ範囲で、内筒6の側壁の内周を螺旋状に1周以上するように、内筒6内に設けられている。
【0018】
このように限定する理由は以下である。
たとえば、図1(b)に示した場合、内筒6の高さc範囲で、内筒6内に螺旋状に1周以上形成されているフィン11は、軸方向断面が板状のフィン部材で構成され、フィン11の巻数=7である。このフィンピッチ(フィン同士の上下間隔)pは内筒6の高さcに対してp=c/7とする。つまり、螺旋状のフィン11により、流入管5から導入された単相流もしくは混相流の流入流を、内筒6内で螺旋状に1周以上するように、旋回させつつ上昇させて内筒6の上端開口に導くことができるから、流入管5から流入する搬送ガスの流量が変動する条件下でも、内筒6内において旋回流同士の干渉・衝突を低減する効果が十分となる。
【0019】
一方、フィン11を、内筒6の高さc範囲で、内筒6内に螺旋状に1周以上するように、設けていない場合、つまり巻数が1未満であると、流入管5から導入された単相流もしくは混相流の流入流を、内筒6内で螺旋状に1周以上するように、旋回しつつ上昇させることができないことが起り、流入管5から導入する搬送ガスの流量が変動する条件下で、内筒6内において旋回流同士の干渉・衝突を低減する効果が不十分となる。
【0020】
そこで、本発明にかかる分配装置20においては、内筒6内で旋回流を鉛直方向に制約する構造として、フィン11を内筒6内に螺旋状に1周以上するように設けた。
なお、図2に示すように、内筒6内に設ける螺旋状のフィン11の幅W1は、内筒6の中心と内筒6の内面間の半径方向距離の50%以上とするのが好ましく、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは100%である。この理由は、内筒6内に設ける螺旋状のフィン11の幅W1が広いほど、流入管から導入する搬送ガスの流量が変動する条件下で、内筒6内において旋回しつつ上昇する旋回流同士の干渉・衝突を低減する効果が大きいからである。
(外筒と内筒間に設けた螺旋状のフィン12について)
本発明にかかる分配装置20は、基本構造として、外筒4の側壁の下部に複数の分配配管1aが接続され、外筒4と内筒6間の空間を旋回室兼分配室10としている(図1参照)。そこで、内筒6内に設けた螺旋状のフィン11 に加え、内筒6の上端開口から外筒4の下部に至るまでの高さ範囲で、外筒4の側壁の内周を螺旋状に1周以上するように、外筒4と内筒6間に下降流を形成させる螺旋状のフィン12を設けることが好ましい(図2参照)。
【0021】
この理由は、上述した螺旋状のフィン11を上流側の内筒6内に設けても、下流側の旋回室兼分配室10に螺旋状のフィン12を設けない場合、流入管から導入する搬送ガスの流量が変動する条件下で、下流側の旋回室兼分配室10において旋回しつつ下降する旋回流同士の干渉・衝突が生じてしまい、下流側の旋回室兼分配室10で均分性の悪化が起こり得るからである。
【0022】
また、外筒4と内筒6間に設けるフィン12の半径方向の幅W2は、単相流もしく混相流の種類にもよるが、外筒4と内筒6間の幅の50%以上とするのが好ましく、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは全幅(100%)である。この理由は、外筒4と内筒6間に設けるフィン12の半径方向の幅W2が広いほど、流入管から導入する搬送ガスの流量が変動する条件下で、下流側の旋回室兼分配室10において旋回しつつ下降する旋回流同士の干渉・衝突を低減する効果が大きいからである。
【0023】
なお、螺旋状のフィン12は、その半径方向の幅W2が外筒4と内筒6間の幅の100%を満たす場合を図2に示した。半径方向の幅W2が、外筒4と内筒6間の幅の100%を満たし、外筒4と内筒6間に跨って配置できるフィン12は、外筒4の側壁の内周面あるいは内筒6の側壁の外周面に取り付けることができる。なお、半径方向の幅W2が外筒4と内筒6間の幅の100%に満たないフィンの場合、外筒4の側壁の内周面に取り付ける方が、流入管から旋回室内に流入する搬送ガスの流量が変動する条件下で、旋回しつつ下降する旋回流同士の干渉・衝突を低減する効果が大きいから好ましい。
(突起14について)
混相流に含まれる粉粒体の密度が大きいと、図3(a)に示したように、粉粒体13はその遠心力によって、内筒6の側壁の内周面近くに集まり、そのままでは、粉粒体13の均分性が悪化する場合がある。そこで、この場合、旋回流の流れ方向上流側よりも下流側の方が中心側(内側)に突出した斜面を有する突起14を、内筒6の側壁の内周面に設けることが好ましい(図3(b)参照)。
【0024】
この理由は、内筒6の側壁の内周面に集まりやすい粉粒体13を、図3(b)に示したように、突起14の斜面に沿わせて中心側の方(内側の方)に押しやり、また同時に突起14によって乱流15を発生させることにより、混相流に含まれる粉粒体13を旋回流中に均一に分散させることができるからである。
同様なことは、その下流の外筒4と内筒6間の空間(旋回室兼分配室)でも起り得るから、旋回流の流れ方向上流側よりも下流側の方が内側に突出した斜面を有する突起を、外筒4の側壁の内周面に設けることが好ましい(図示せず)。この理由は、上流の内筒6内で粉粒体13を旋回流中に均一に分散させることができても、外筒4の側壁の内周面に突起を設けない場合、混相流に含まれる粉粒体の密度が大きいと、その下流の外筒4と内筒6間の空間で、粉粒体13はその遠心力によって、外筒4の側壁の内周面近くに集まってしまい、外筒4の下部に接続した分配配管に粒体13を均分することができない場合があるからである。
【0025】
なお、上述した突起14と螺旋状のフィンの相違点は、突起14の方は、外筒4あるいは内筒6の側壁の内周面を1周するほど長くなく(図3(b)、ただし、外筒4の側壁に設けた突起は図示せず)、これに対して、螺旋状のフィン11、12の方は、所定の高さ範囲で、外筒4あるいは内筒6の側壁の内周を螺旋状に1周以上するように設けられていることが異なる(図1(a)、(b)、図2参照)。
【0026】
以上説明した本発明にかかる分配装置20によれば、流入管5から導入する搬送ガスの流量が変動する条件下でも、流入管5から導入した単相流もしくは混相流の流入流Iを、内筒6内に設けた螺旋状のフィン11に沿わせて螺旋状に1周以上するように旋回させつつ上昇させて内筒6の上端開口に導くことができる(図4参照)。図4中、R1は内筒6の上端開口に達した流れを、R2は外筒4の下部に達した流れを示す。
【0027】
次いで、この内筒6の上端開口に達した流れR1を、好ましくは、その下流の外筒4と内筒6間の空間の外筒4の側壁に設けた螺旋状のフィンに沿わせて螺旋状に1周以上するように旋回させつつ下降させて外筒4の下部に導くことができる。このため、最終的に流入管5と連通する複数の分配配管1aを介して単相流もしくは混相流を均分することができる。
【実施例1】
【0028】
本発明の効果を先の発明(特願2007-234922)と比較するため、転炉底吹きガスの分配装置1の流動シミュレーション、および縮尺モデル実験を行った。流動シミュレーションは、分配装置1自体の各部の寸法を変えて行った。
先願の条件:螺旋状のフィンなし、突起14なし、図8参照
外筒4の内径d=800〜1000mm、分配装置1の全高さh=600〜900mm、外筒開口部8の上端から内筒6の上端までの最小軸方向距離a=−60〜240mm、外筒開口8の軸方向寸法b=240〜360mm(a/bを−0.2 ≦a/b ≦0.8で変更)とした螺旋状のフィンなしの10パターン(グループA)。ただし、隔室7の数=18、流入流Iの圧力=5kg/cm2G、流入流Iの流量:670Nm/min。
【0029】
本発明例の条件:螺旋状のフィン11あり、突起14なし、図1(a)、(b)参照
内筒内に設けたフィン11は、内筒6の高さ範囲cで7周(巻数=7)するように、フィンピッチ(フィン同士の上下方向間隔=c/7とした。また、フィン11の半径方向の幅W1=内筒6の中心と内筒6の内面間の半径方向距離の75%とした。なお、全高さhは、先願の600〜900mmと同じとし、分配管1aの数は、従来装置の隔室7の数に対応させ、18とした。その他装置条件以外は先願の条件であるグループAと同じとした(グループB)。
(分配装置の均分性の評価)
従来の分配装置1の場合、各隔室7をそれぞれ通過するガス流量を測定し、その平均流量に対する各隔室7のガス流量の差を残差(=各隔室7のガス流量−18室の平均流量)とし、この残差を18室の平均流量で除した絶対値のうち最大値(=Max(abs(残差/平均))が小さいほど、均分性に優れるとした。本発明例の分配装置20の場合、外筒4の下部に接続した分配管1aでガス流量を測定した。
【0030】
図5には、従来の分配装置1の場合には、横軸に分配装置自体の寸法a/bを、縦軸に底吹きガス分配の均分性を示すパラメータ(Max(abs(残差/平均))を取って、本発明例の分配装置20の場合と比較して示した。
図5に示した結果から明らかなように、螺旋状のフィンありとした本発明の分配装置20は、螺旋状のフィンなしとした先の発明よりも、均分性が良好であることが分かる。
【実施例2】
【0031】
底吹きガスに混合される粉粒体の分配ばらつきをさらに小さくでき、均分性に優れることは、次のようにして評価した。転炉底吹きガスの分配装置1の縮尺モデルを製作しモデル実験を行った。縮尺モデルにて、サンプル粒子を1000個、流入管5の上流から投入し、従来の分配装置1の場合、各隔室7に分配された粒子の個数を測定し、その平均個数に対する各隔室7に分配された粒子の個数の差を残差(=各隔室7に分配された粒子の個数−18室の平均個数)とし、この残差を18室の平均個数で除した絶対値のうち最大値(=Max(abs(残差/平均))が小さいほど、均分性に優れるとした。これに対し、本発明例の分配装置20の場合、外筒4の下部に接続した分配管1aで分配された粒子の個数を測定した。この結果は図示していないが、図5と同様な結果を示した。
【0032】
実際の転炉底の各羽口3から底吹きガスを吹き込む場合には、ガスホルダから減圧弁および流量調整弁を経て所定の圧力、所定の流量とされた底吹きガスが流入管5に供給される。また、底吹きガスに粉粒体を混合した混相流を転炉底の各羽口3から吹き込む場合、定量切り出し装置により、粉粒体が所定量切り出され、流入管5に供給される。
【符号の説明】
【0033】
F 底吹きガス
M 溶鋼
R 旋回流
R1 内筒の上端開口に達した流れ
R2 外筒の下部に達した流れ
p フィンピッチ(フィン同士の上下方向間隔)
I 流入流
a 外筒開口部の上端から内筒の上端開口までの最小軸方向距離
b 外筒開口部の軸方向寸法
c 内筒の高さ
d 外筒の内径
h 分配装置の全高さ
W1、W2 フィンの半径方向の幅
1、20 分配装置
1a 分配管
2 転炉
3 羽口
4 外筒
5 流入管
6 内筒
7 隔室
8 外筒開口部
9 旋回室
10 旋回室兼分配室
11、12 螺旋状のフィン
13 粉粒体
14 突起
15 乱流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本構造として外筒と内筒を具備し、前記外筒は天板、底板および側壁を有し該側壁の下部に複数の分配配管が接続され、しかも前記内筒は底板および側壁を有し該側壁の下部に流入管が接続され該流入管からの流入流によって、空間内に旋回流が形成されかつ上端開口が外筒内に位置するよう、前記外筒の底板を貫通させて設け、前記流入管から導入される単相流もしくは混相流を、最終的に前記流入管と連通する複数の分配配管に分配する構造の分配装置とし、前記流入管が接続される内筒の下部から内筒の上端開口に至るまでの高さ範囲で、前記流入管から導入された単相流もしくは混相流の流入流が、前記内筒の側壁の内周を螺旋状に1周以上するように、内筒内に上昇流を形成させる螺旋状のフインを設けたことを特徴とする単相流もしくは混相流の分配装置。
【請求項2】
内筒内に設けた螺旋状のフィンに加え、前記内筒の上端開口から前記外筒の下部に至るまでの高さ範囲で、前記内筒の上端開口から導入された旋回流が、前記外筒の側壁の内周を螺旋状に1周以上するように、前記外筒と内筒間に下降流を形成させる螺旋状のフィンを設けたことを特徴とする請求項1に記載の単相流もしくは混相流の分配装置。
【請求項3】
前記螺旋状のフィンに加えて、前記旋回流の流れ方向上流側よりも下流側の方が内側に突出した斜面を有する突起を前記内筒の側壁の内周面にあるいはさらに前記外筒の側壁の内周面に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の単相流もしくは混相流の分配装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−230202(P2010−230202A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75867(P2009−75867)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】