説明

単結晶の製造方法および種結晶固定剤

【課題】高品質の単結晶を成長させることができる単結晶の製造方法と、それに用いる種結晶固定剤とを提供する。
【解決手段】種結晶固定剤31を用いて台座41に種結晶11の裏面が固定される。種結晶11の裏面が固定される際、加熱により種結晶固定剤31が硬化させられる。種結晶固定剤31は、加熱されることによって難黒鉛化炭素となる樹脂と、ダイヤモンド微粒子とを含む。台座41に固定された種結晶上に単結晶が成長させられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は単結晶の製造方法および種結晶固定剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の製造に用いられる単結晶基板として炭化珪素からなるものが用いられつつある。炭化珪素は、半導体分野において一般的に用いられているシリコンに比べて大きなバンドギャップを有する。そのため炭化珪素を用いた半導体装置は、耐圧が高く、オン抵抗が低く、また高温環境下での特性の低下が小さい、といった利点を有する。
【0003】
炭化珪素からなる基板は、炭化珪素単結晶から切り出されることによって製造される。炭化珪素単結晶は、昇華再結晶法を用いて製造される。この方法においては、炭化珪素単結晶が、台座上に固定された種結晶の表面上に成長させられる。このとき種結晶が台座に均一に固定されていないと、種結晶上に成長させられる単結晶の品質が低下し得る。このため、種結晶を台座に均一に固定するための種結晶固定剤についての検討がなされている。
【0004】
たとえば特開2001−139394号公報(特許文献1)によれば、難黒鉛化炭素となる樹脂と黒鉛微粒子と溶剤とからなる種結晶固定剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−139394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
加熱により上記の種結晶固定剤が硬化される際、種結晶固定剤中の樹脂が難黒鉛化炭素に変化する。この変化において体積の減少が生じることから、硬化後の種結晶固定剤が、多数の細孔を有する多孔質物質になりやすい。この場合、多数の細孔により熱伝導率が低下するので、種結晶固定剤の温度が不均一になりやすく、その結果、種結晶固定剤によって固定された種結晶の温度も不均一となりやすい。よって種結晶上に高品質の結晶を成長させることが困難であった。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高品質の単結晶を成長させることができる単結晶の製造方法と、それに用いる種結晶固定剤とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の単結晶の製造方法は次の工程を有する。種結晶固定剤を用いて台座に種結晶の裏面が固定される。種結晶の裏面が固定される際、加熱により種結晶固定剤が硬化させられる。種結晶固定剤は、加熱されることによって難黒鉛化炭素となる樹脂と、ダイヤモンド微粒子とを含む。台座に固定された種結晶上に単結晶が成長させられる。
【0009】
本発明の単結晶の製造方法によれば、種結晶固定剤の硬化時に、ダイヤモンドから黒鉛への変化による体積増大によって、樹脂から難黒鉛化炭素への変化による体積減少を相殺することができる。よってこの体積減少に起因した種結晶固定剤中における細孔の発生を抑制することができる。これにより、細孔の存在による種結晶固定剤の熱伝導率の低下を抑制することができるので、種結晶固定剤によって固定された種結晶の温度をより均一にすることができる。よって種結晶上に高品質の結晶を成長させることができる。
【0010】
好ましくは、種結晶の裏面を固定する工程は、次の工程を有する。種結晶の裏面上に、炭素を含有する被覆膜が形成される。種結晶固定剤を挟んで被覆膜と台座とが互いに接触させられる。単結晶が成長させられる前に、被覆膜が炭化されることによって炭素膜が形成される。
【0011】
これにより台座が接着される対象が、炭素膜、すなわち炭素から作られた物体となる。よって、種結晶の材料に依存せず、接着強度を確保することができる。
【0012】
種結晶の裏面が固定される前に、種結晶の裏面の表面粗さが大きくされてもよい。これにより接着強度をより高めることができる。
【0013】
種結晶の裏面は、ワイヤソーによるスライスによって形成されたアズスライス面であってもよい。これにより接着強度をより高めることができる。
【0014】
種結晶は炭化珪素からなってもよい。これにより、炭化珪素種結晶の温度分布の均一性を高めることができる。
【0015】
種結晶固定剤は黒鉛微粒子を含んでもよい。これにより、硬化時に体積増大を伴うダイヤモンド微粒子の量と、体積が変わらない黒鉛微粒子の量との比を調整することができる。この調整により、種結晶固定剤の硬化時における微粒子の体積増大の程度を調整することができる。
【0016】
好ましくは種結晶の平面形状は直径100mmの円を包含している。これにより、この種結晶上に成長した単結晶から、直径100mmの円を包含する平面形状を有する基板を容易に得ることができる。
【0017】
本発明の種結晶固定剤は、単結晶成長用の種結晶を台座に固定するためのものである。種結晶固定剤は、加熱されることによって難黒鉛化炭素となる樹脂と、ダイヤモンド微粒子とを含む。
【0018】
本発明の種結晶固定剤によれば、硬化時に、樹脂の体積減少に起因して種結晶固定剤が多孔質となることを、ダイヤモンド微粒子の黒鉛化による体積増大によって抑制することができる。これにより、より緻密な種結晶固定剤を介して台座と種結晶とが接着される。よって種結晶の温度分布の均一性が高まるので、種結晶上に成長する単結晶の品質を高めることができる。
【0019】
種結晶固定剤は黒鉛微粒子を含んでもよい。これにより、硬化時に体積増大を伴うダイヤモンド微粒子の量と、体積が変わらない黒鉛微粒子の量との比を調整することができる。この調整により、種結晶固定剤の硬化時における微粒子の体積増大の程度を調整することができる。
【発明の効果】
【0020】
上述したように本発明によれば、種結晶の温度分布の均一性が高まるので、種結晶上に成長する単結晶の品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態における単結晶の製造方法の第1工程を概略的に示す断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態における単結晶の製造方法の第2工程を概略的に示す断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態における単結晶の製造方法の第3工程を概略的に示す断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態における単結晶の製造方法の第4工程を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
なお結晶学的な記載に関して、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また、負の指数については、”−”(バー)を数字の上に付けることになっているが、本明細書中では、数字の前に負の符号を付けている。
【0023】
はじめに本実施の形態において用いられる種結晶固定剤(以下、接着剤と称する)の組成について、以下に説明する。
【0024】
接着剤31(図2)は、加熱されることによって難黒鉛化炭素となる樹脂と、ダイヤモンド微粒子と、溶媒とを含む。
【0025】
難黒鉛化炭素とは、不活性ガス中で加熱された場合に黒鉛構造が発達することが抑制さるような不規則な構造を有する炭素である。加熱されることによって難黒鉛化炭素となる樹脂としては、たとえば、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、またはフルフリルアルコール樹脂がある。
【0026】
ダイヤモンド微粒子の量は、炭素原子のモル数を基準として、樹脂の量よりも少なくされることが好ましい。ダイヤモンド微粒子の粒径は、たとえば0.1〜10μmである。また接着剤31は、ダイヤモンド微粒子に加えてさらに黒鉛微粒子を含んでもよい。
【0027】
溶媒としては、上記の樹脂および炭水化物を溶解・分散させることができるものが適宜選択される。またこの溶媒は、単一の種類の液体からなるものに限られず、複数の種類の液体の混合液であってもよい。たとえば、炭水化物を溶解させるアルコールと、樹脂を溶解させるセロソルブアセテートとを含む溶媒が用いられてもよい。
【0028】
好ましくは接着剤31は炭水化物を含む。炭水化物としては、糖類またはその誘導体を用いることができる。この糖類は、グルコースのような単糖類であっても、セルロースのような多糖類であってもよい。
【0029】
また接着剤31の成分は、上述した成分以外の成分を含んでもよい。たとえば、界面活性剤および安定剤などの添加材が含まれてもよい。
【0030】
また接着剤31の塗布量は、好ましくは、10mg/cm2以上100mg/cm2以下である。 また接着剤31の厚さは、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは50μm以下である。
【0031】
次に接着剤31を用いた単結晶の製造方法について、以下に説明する。
図1を参照して、種結晶11が準備される。種結晶11は、その上に単結晶が成長することになる面である表面(図中、下面)と、台座に取り付けられることになる面である裏面(図中、上面)とを有する。種結晶11は、単結晶構造を有する炭化珪素(SiC)からなる。種結晶11の厚さ(図中、縦方向の寸法)は、たとえば0.5mm以上10mm以下である。また種結晶11の平面形状は、直径100mmの円を包含していることが好ましい。また種結晶の面方位の{0001}面からのオフ角度(傾き)、すなわち(0001)面または(000−1)面からのオフ角度は、15°以下が好ましく、5°以下がより好ましい。
【0032】
好ましくは、種結晶11の裏面の表面粗さをより大きくする加工が行われる。この加工は、十分に大きな粒径を有する砥粒を用いて裏面を研磨することによって行われ得る。砥粒の粒度分布は、好ましくは16μm以上の成分を有する。砥粒の平均粒径は、好ましくは5μm以上50μm以下であり、より好ましくは10μm以上30μm以下であり、さらに好ましくは12〜25μmである。
【0033】
より好ましくは、上記の砥粒はダイヤモンドから作られている。また好ましくは、上記の砥粒はスラリー中に分散されて用いられる。よって上記の研磨は、たとえば、ダイヤモンドスラリーを用いて行われ得る。
【0034】
なお種結晶11の裏面の表面粗さをより大きくする工程を行う代わりに、最初から十分に大きな表面粗さを有する裏面を形成し、この裏面を研磨することなく用いてもよい。具体的には、ワイヤソーによるスライスによって形成された種結晶11の裏面を、研磨することなく用いてもよい。すなわち裏面として、スライスによって形成されかつその後に研磨されていない面であるアズスライス面を用いてもよい。好ましくはワイヤソーによるスライスにおいて、上述した砥粒が用いられる。
【0035】
次に種結晶11の裏面上に、炭素を含有する被覆膜21、言い換えれば、炭素原子を含む被覆膜21が形成される。好ましくは、被覆膜21の表面粗さは、被覆膜21が形成される種結晶11の裏面の表面粗さに比して小さくされる。
【0036】
好ましくは、この形成は液体材料の塗布によって行われ、より好ましくは、この液体材料は微粒子のような固体物を含有しない。これにより薄い被覆膜21を容易かつ均一に形成することができる。
【0037】
被覆膜21は、本実施の形態においては有機膜である。この有機膜は、好ましくは有機樹脂から形成される。有機樹脂としては、たとえば、アクリル樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂などの各種樹脂を用いることができ、また光の作用で架橋または分解される感光性樹脂として組成されたものを用いることもできる。この感光性樹脂としては、半導体装置の製造用に用いられているポジ型またはネガ型フォトレジストを用いることができ、これらについてはスピンコート法による塗布技術が確立されているので、被覆膜21の厚さを容易に制御することができる。スピンコート法は、たとえば、以下のように行われる。
【0038】
まず種結晶11がホルダーに吸着される。このホルダーが所定の回転速度で回転することで、種結晶11が回転させられる。回転している種結晶11上にフォトレジストが滴下された後、所定時間回転が継続されることで、薄く均一にフォトレジストが塗布される。種結晶11全面に渡る均一性を確保するためには、たとえば、回転速度は1000〜10000回転/分、時間は10〜100秒、塗布厚は0.1μm以上とされる。
【0039】
次に塗布されたフォトレジストが乾燥されることで固化される。乾燥温度および時間は、フォトレジストの材料および塗布厚によって適宜選択され得る。好ましくは、乾燥温度は100℃以上400℃以下であり、乾燥時間は5分以上60分以下である。たとえば乾燥温度が120℃の場合、揮発に要する時間は、たとえば、厚さ5μmで15分間、厚さ2μmで8分間、厚さ1μmで3分間である。
【0040】
なお、上記の塗布および乾燥からなる工程を1回行えば被覆膜21を形成することができるが、この工程が繰り返されることで、より厚い被覆膜21が形成されてもよい。繰り返しの回数が多すぎるとこの工程に必要以上に時間を要してしまう点で好ましくなく、通常、2〜3回程度の繰り返しに留めることが好ましい。
【0041】
図2を参照して、種結晶11が取り付けられることになる取付面を有する台座41が準備される。この取付面は、好ましくは炭素からなる面を含み、より好ましくは黒鉛からなる面を含む。このために、台座41は黒鉛によって形成され得る。好ましくは取付面の平坦性を向上させるために取付面が研磨される。
【0042】
次に接着剤31(種結晶固定剤)を挟んで被覆膜21と台座41とが互いに接触させられる。好ましくはこの接触は、50℃以上120℃以下の温度で、また0.01Pa以上1MPa以下の圧力で両者が互いを押し付け合うように行われる。また接着剤31が種結晶11および台座41に挟まれた領域からはみ出さないにようにされると、後述する、種結晶11を用いた単結晶の成長工程において、接着剤31による悪影響を抑制することができる。
【0043】
次に、好ましくは接着剤31のプリベークが行われる。プリベークの温度は、好ましくは150℃以上である。
【0044】
さらに図3を参照して、被覆膜21および接着剤31(図2)が加熱される。この加熱によって炭化されることで被覆膜21は炭素膜22となる。すなわち種結晶11上に炭素膜22が設けられる。またこの加熱によって、炭素膜22および台座41の間において接着剤31が硬化されることで固定層32となる。これにより種結晶11の裏面が台座41に固定される。
【0045】
接着剤31を硬化するための加熱の温度は、好ましくは1000℃以上であり、より好ましくは2000℃以上である。またこの加熱は、不活性ガス中で行われることが好ましい。
【0046】
図4を参照して、坩堝42内に原料51が収められる。炭化珪素の単結晶が成長させられる場合、たとえば、炭化珪素粉末が黒鉛製坩堝に収められる。次に坩堝42の内部へ種結晶11が面するように、台座41が取り付けられる。なお図4に示すように、台座41が坩堝42の蓋として機能してもよい。
【0047】
次に、種結晶11上に単結晶52が成長させられる。炭化珪素の種結晶11を用いて炭化珪素の単結晶52が製造される場合、この形成方法として昇華再結晶法を用いることができる。すなわち、図中矢印で示すように原料51を昇華させることで種結晶11上に昇華物を堆積させることで、単結晶52を成長させることができる。この昇華再結晶法における温度は、たとえば、2100℃以上2500℃以下とされる。またこの昇華再結晶法における圧力は、好ましくは1.3kPa以上大気圧以下とされ、より好ましくは、成長速度を高めるために13kPa以下とされる。
【0048】
なおこの成長が行われる際には、図2および図3を用いて既に説明したように、被覆膜21(図2)は既に炭素膜22(図3)となっている。
【0049】
本実施の形態によれば、接着剤31の硬化時に、ダイヤモンド微粒子から黒鉛微粒子への変化による体積増大によって、樹脂から難黒鉛化炭素への変化による体積減少を相殺することができる。よって接着剤31が硬化されることで形成された固定層32中において、この体積減少に起因して細孔が発生することを抑制することができる。これにより、細孔の存在による固定層32の熱伝導率の低下を抑制することができるので、固定層32によって固定された種結晶11の温度をより均一にすることができる。よって種結晶11上に高品質の単結晶52を成長させることができる。
【0050】
また接着剤31が固定層32へと変化する際に、ダイヤモンド微粒子、またはこのダイヤモンド微粒子が変化することで形成された黒鉛微粒子が存在する。この微粒子は、接着剤31中の樹脂が高温加熱されることで形成される難黒鉛化炭素を均一に分布させる機能を有し、これにより固定層32の充填率を高めることができる。これにより、固定層32の熱伝導率を高めることができる。
【0051】
また接着剤31は、ダイヤモンド微粒子に加えて黒鉛微粒子を当初から含んでもよい。これにより、硬化時に黒鉛に変化することでその体積が増大するダイヤモンド微粒子の量と、最初から黒鉛であることから体積が変わらない黒鉛微粒子の量との比を調整することができる。この調整により、接着剤31の硬化時における微粒子の体積増大の程度を調整することができる。
【0052】
また種結晶11上に炭素膜22が設けられ、固定層32は、この炭素膜22と台座41との間を固定する。つまり固定層32は、種結晶11ではなく炭素膜22に接合されている。よって種結晶11の材料に直接的には依存せずに接着が行われるので、種結晶11と台座41とをより強固に固定し得る。特に台座41が黒鉛などの炭素から形成される場合、台座41および炭素膜22が共に炭素から形成されるので、炭素系の接着剤を用いて両者を強固に接着することができる。
【0053】
また、種結晶11の裏面上に被覆膜21が形成される前に種結晶11の裏面の表面粗さが大きくされる場合、または種結晶の裏面がアズスライス面である場合、接着強度をより高めることができる。
【0054】
また好ましくは、被覆膜21の表面粗さは、被覆膜21が形成される種結晶11の裏面の表面粗さに比して小さくされる。これにより台座41に接着される面の凹凸が小さくなるので、台座との接着が局所的に不十分となる部分が生じることを防止することができる。
【0055】
好ましくは種結晶11の平面形状は直径100mmの円を包含している。これにより、この種結晶11上に成長した単結晶52から、直径100mmの円を包含する平面形状を有する基板を容易に得ることができる。
【0056】
好ましくは、ダイヤモンド微粒子の量は、炭素原子のモル数を基準として、樹脂の量よりも少なくされる。これにより、接着強度を高めることができる。
【0057】
なお上記において、種結晶11としてSiCから形成されたものを例示したが、他の材料から形成されたものが用いられてもよい。この材料としては、たとえば、GaN、ZnSe、ZnS、CdS、CdTe、AlN、またはBNを用いることができる。
【0058】
また本実施の形態においては接着剤31が硬化される際に被覆膜21が炭化されるが、接着剤31が形成される前に被覆膜21が炭化されてもよい。また被覆膜21の形成が省略されてもよい。この場合、炭素膜22が形成されないので、固定層32は炭素膜22ではなく種結晶11に接する。
【0059】
また単結晶52を用いて基板が製造されてもよい。このような基板は、たとえば、単結晶52をスライスすることによって得られる。
【0060】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
11 種結晶、21 被覆膜、22 炭素膜、31 接着剤(種結晶固定剤)、32 固定層、41 台座、42 坩堝、51 原料、52 単結晶。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種結晶固定剤を用いて台座に種結晶の裏面を固定する工程を備え、
前記種結晶の裏面を固定する工程は、加熱により前記種結晶固定剤を硬化させる工程を含み、前記種結晶固定剤は、加熱されることによって難黒鉛化炭素となる樹脂と、ダイヤモンド微粒子とを含み、さらに
前記台座に固定された前記種結晶上に単結晶を成長させる工程とを備える、単結晶の製造方法。
【請求項2】
前記種結晶の裏面を固定する工程は、前記種結晶の前記裏面上に、炭素を含有する被覆膜を形成する工程と、前記種結晶固定剤を挟んで前記被覆膜と前記台座とを互いに接触させる工程とを含み、
前記単結晶を成長させる工程の前に、前記被覆膜が炭化されることによって炭素膜が形成される、請求項1に記載の単結晶の製造方法。
【請求項3】
前記種結晶の裏面を固定する工程の前に、前記種結晶の裏面の表面粗さを大きくする工程をさらに備える、請求項1または2に記載の単結晶の製造方法。
【請求項4】
前記種結晶の裏面は、ワイヤソーによるスライスによって形成されたアズスライス面である、請求項1または2に記載の単結晶の製造方法。
【請求項5】
前記種結晶は炭化珪素からなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の単結晶の製造方法。
【請求項6】
前記種結晶固定剤は黒鉛微粒子を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の単結晶の製造方法。
【請求項7】
前記種結晶の平面形状は直径100mmの円を包含している、請求項1〜6のいずれか1項に記載の単結晶の製造方法。
【請求項8】
単結晶成長用の種結晶を台座に固定するための種結晶固定剤であって、
加熱されることによって難黒鉛化炭素となる樹脂と、
ダイヤモンド微粒子とを備える、種結晶固定剤。
【請求項9】
黒鉛微粒子をさらに備える、請求項8に記載の種結晶固定剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−250865(P2012−250865A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123042(P2011−123042)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】