説明

単結晶シリコン製造装置

【課題】水冷チャンバ内の冷却に要する時間を短縮し、生産効率を向上させること。
【解決手段】上方に向けて開口すると共に、内部に原料多結晶シリコンMが貯留される坩堝2と、坩堝内に貯留された原料多結晶シリコンを加熱するヒータ部3と、坩堝及びヒータ部が径方向の内側に配置された保温筒部4と、坩堝、ヒータ部及び保温筒部を内部に収容する水冷チャンバ5と、を備え、チョクラルスキー法によって原料多結晶シリコンから単結晶シリコンを製造する装置であって、保温筒部の少なくとも一部を保温筒部の軸O方向に沿って移動させる移動機構12を備えている単結晶シリコン製造装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶シリコン製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板等に用いられる単結晶シリコンは、一般的にチョクラルスキー法(以下、CZ法と称する)により製造されている。
CZ法によって単結晶シリコンを製造する装置として、例えば下記特許文献1に示されるように、水冷チャンバと、原料多結晶シリコンを収容する坩堝(るつぼ)と、原料多結晶シリコンを溶融するヒータ部と、を備える構成が知られている。更に、下記特許文献1に示される単結晶シリコン製造装置では、ヒータ部の外側周囲に配置されたヒータ断熱材(保温筒部)と、シリコンの種結晶(シード)を保持するシードチャックと、を備えている。
【0003】
この製造装置で単結晶シリコンを製造する際には、坩堝内に原料多結晶シリコンを入れた後、坩堝内の原料多結晶シリコンをヒータ部によって加熱してシリコン融液とし、坩堝の上方に配置されたシードチャックにシードを保持させると共にこのシードを坩堝内のシリコン融液に浸漬する。そして、シード及び坩堝を回転させながらシードを引き上げて単結晶シリコンを成長させることで、単結晶シリコンを製造する。
【0004】
この過程において、原料多結晶シリコンを溶融してシリコン融液とするために、ヒータ部は、坩堝を介して原料多結晶シリコンを例えば約1400〜1500℃に加熱する必要がある。この際、前述の単結晶シリコン製造装置では、ヒータ断熱材を備えているので、ヒータ部による原料多結晶シリコンの加熱効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−2093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述のように単結晶シリコン製造の一連の工程が終了した後、再度この単結晶シリコン製造装置において単結晶シリコンを製造する際には、原料多結晶シリコンを坩堝内に再充填する必要がある。そしてこの際には、シリコン充填作業が可能なように、水冷チャンバ内の温度が例えば約200℃まで冷却されている必要がある。
しかしながら、前記従来の単結晶シリコン製造装置は、ヒータ断熱材を備えているので、このヒータ断熱材によって囲われている領域内部の熱(例えば、坩堝及びヒータの輻射熱)が外部に放射されにくかった。そのため、水冷チャンバ内の冷却に時間がかかり、生産効率が悪いという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、水冷チャンバ内の冷却に要する時間を短縮し、生産効率を向上させることができる単結晶シリコン製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る単結晶シリコン製造装置は、上方に向けて開口すると共に、内部に原料多結晶シリコンが貯留される坩堝と、前記坩堝内に貯留された前記原料多結晶シリコンを加熱するヒータ部と、前記坩堝及び前記ヒータ部が径方向の内側に配置された保温筒部と、前記坩堝、前記ヒータ部及び前記保温筒部を内部に収容する水冷チャンバと、を備え、チョクラルスキー法によって前記原料多結晶シリコンから単結晶シリコンを製造する単結晶シリコン製造装置であって、前記保温筒部の少なくとも一部を前記保温筒部の軸方向に沿って移動させる移動機構を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係る単結晶シリコン製造装置によれば、移動機構によって保温筒部の少なくとも一部を前記軸方向に沿って移動させることができる。これにより、移動前の保温筒部に囲われていた領域に対して水冷チャンバの内面を露出させることが可能となり、前記領域内部の熱を水冷チャンバに吸収させることができる。従って、水冷チャンバ内の冷却に要する時間を短縮し、生産効率を向上させることができる。
【0010】
また、前記移動機構は、前記坩堝及び前記ヒータ部のうちの少なくとも一方が前記水冷チャンバと前記径方向で対向するように前記保温筒部の少なくとも一部を移動させても良い。
【0011】
この場合、移動機構によって保温筒部の少なくとも一部を前記軸方向に沿って移動させることで、坩堝及びヒータ部のうちの少なくとも一方を水冷チャンバと前記径方向で対向させることができる。従って、坩堝及びヒータ部のうちの少なくとも一方の輻射熱を水冷チャンバによって効率良く吸収することが可能となり、水冷チャンバ内の冷却に要する時間をより一層短縮し、生産効率を更に向上させることができる。
【0012】
また、前記移動機構は、前記保温筒部の下端部を前記軸方向に沿って押し上げる複数のシャフト部を備えていても良い。
【0013】
この場合、移動機構が保温筒部の下端部を前記軸方向に沿って押し上げるシャフト部を備えているので、単にシャフト部を進退させるという簡単な構成によって保温筒部を前記軸方向に沿って移動させることができる。
【0014】
また、前記複数のシャフト部は、前記保温筒部の周方向に沿って配置されていても良い。
【0015】
この場合、複数のシャフト部が、保温筒部の周方向に沿って配置されているので、各シャフト部にかかる保温筒部の荷重を一部のシャフト部に集中させ難くすることができる。これにより、保温筒部を安定した姿勢で確実に移動させることができると共に、保温筒部の荷重が集中することに起因してシャフト部が破損してしまうのを抑制することができる。
なお、複数のシャフト部のうち、周方向に隣接するもの同士が互いに等しい間隔をあけて配置されている場合、前記荷重が一部のシャフト部に集中するのを効果的に抑制することができる。
【0016】
また、前記シャフト部と前記保温筒部との間には、前記保温筒部を構成する材質の融点と略同等の融点を具備する仲介部材が介在していても良い。
【0017】
この場合、シャフト部と保温筒部との間には、保温筒部を構成する材質の融点と略同等の融点を具備する仲介部材が介在している。このため、シャフト部が仲介部材を介さずに保温筒部と連結されている場合と比べて、保温筒部を移動させる際に水冷チャンバ内にシャフト部が進入する量である進入量を小さく抑えることができる。従って、シャフト部が水冷チャンバ内の構成要素から放射される輻射熱等によって加熱されるのを抑制することが可能となり、シャフト部を安定して進退させることができる。
【0018】
また、前記シャフト部は、シャフト本体と、前記シャフト本体を冷却する冷却手段と、を備えていても良い。
【0019】
この場合、シャフト部がシャフト本体を冷却する冷却手段を備えているので、仮にシャフト部が高温状況下の水冷チャンバ内に進入してシャフト本体が加熱されたとしても、シャフト本体を冷却手段によって冷却することができる。従って、シャフト本体が高温に加熱されるのを抑制することが可能となり、シャフト部を安定して進退させることができる。
【0020】
また、前記保温筒部の少なくとも一部は、前記軸方向に沿った移動が前記水冷チャンバの内周面によって案内されるように形成されていても良い。
【0021】
この場合、保温筒部の少なくとも一部は、前記軸方向に沿った移動が水冷チャンバの内周面によって案内されるので、移動機構による保温筒部の移動を円滑且つ確実なものとすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る単結晶シリコン製造装置によれば、水冷チャンバ内の冷却に要する時間を短縮し、生産効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る単結晶シリコン製造装置の一実施形態の概略を模式的に示す縦断面図である。
【図2】図1に示す単結晶シリコン製造装置の模式的な下面図である。
【図3】図1に示す単結晶シリコン製造装置において移動機構を動作させた状態を示す一工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る単結晶シリコン製造装置の一実施形態を、図1から図3を参照して説明する。図1は、本発明に係る単結晶シリコン製造装置の一実施形態の概略を模式的に示す縦断面図である。図2は、図1に示す単結晶シリコン製造装置の模式的な下面図である。
本実施形態の単結晶シリコン製造装置1は、チョクラルスキー法によって原料多結晶シリコンMから単結晶シリコンを製造するものである。
【0025】
図1に示すように、単結晶シリコン製造装置1は、上方に向けて開口すると共に、内部に原料多結晶シリコンMが貯留される坩堝2と、坩堝2内に貯留された原料多結晶シリコンMを加熱するヒータ部3と、坩堝2及びヒータ部3が径方向の内側に配置された保温筒部4と、坩堝2、ヒータ部3及び保温筒部4を内部に収容する水冷チャンバ5と、を備えている。なお、図示の例では、坩堝2内の原料多結晶シリコンMが、溶融されたシリコン融液である状態を示している。
【0026】
また、図示の例では、坩堝2及び保温筒部4は、それぞれの中心軸線が共通軸上に位置するように配設され、この共通軸は、鉛直方向と略一致するようになっている。以下、この共通軸を単に軸線Oと称し、図1に示す軸線Oに沿って紙面上側、つまり鉛直上側を単に上側、図1に示す軸線Oに沿って紙面下側、つまり鉛直下側を単に下側とそれぞれ称する。
【0027】
水冷チャンバ5は、軸線O方向の両側に向けて開口する筒状のメインチャンバ6aと、メインチャンバ6aを下方から支持する有底筒状のベースチャンバ6bと、メインチャンバ6aの上方にメインチャンバ6aに着脱可能に連結されたトップチャンバ7と、トップチャンバ7の上方に連結された図示しないプルチャンバと、を備えている。メインチャンバ6a、ベースチャンバ6b、トップチャンバ7及びプルチャンバは、いずれも例えばステンレス製の水冷ジャケット構造とされており、図示しない水路内に冷却水を流通させることで水冷可能とされている。
【0028】
メインチャンバ6aおよびベースチャンバ6bは、軸線Oと同軸に配置され、ベースチャンバ6b内には、例えばカーボン(より具体的には黒鉛)からなるカップ状のスピルトレイ8が嵌合されている。このスピルトレイ8は、坩堝2が破損して原料多結晶シリコンMが流出した場合であっても、この原料多結晶シリコンMがベースチャンバ6bと接触することを防止するものであり、このスピルトレイ8により、坩堝2破損時の原料多結晶シリコンM流出を起因としたベースチャンバ6bの破損を防止することができる。図示の例では、スピルトレイ8は、軸線Oと同軸に配設されている。
【0029】
また、図2に示すように、ベースチャンバ6b及びスピルトレイ8には、水冷チャンバ5の内部と外部とを連通する排気孔6cが軸線O方向に貫設されており、この排気孔6cには、図示しない真空ポンプが接続されている。水冷チャンバ5は、前記真空ポンプにより内部が減圧され、真空状態とされることが可能となっている。
また、図1に示すように、トップチャンバ7は、メインチャンバ6a上に同軸に載置されており、図示しない搬送機構によりメインチャンバ6aから離脱可能とされている。
【0030】
また、トップチャンバ7の上部には、トップチャンバ7の内部とプルチャンバの内部とを連通させる連通筒部7aが形成されている。
プルチャンバ内には、シード(種結晶)を把持する図示しないシードチャックと、このシードチャックに把持されたシードをメインチャンバ6aに対して相対的に回転及び昇降可能とする図示しないシードチャック駆動機構と、が設けられている。
【0031】
坩堝2は、原料多結晶シリコンMが貯留される石英坩堝2aと、石英坩堝2aを収納する黒鉛坩堝2bと、を備えている。図示の例では、石英坩堝2aの上端は、黒鉛坩堝2bの上端より上側に位置している。
そして、坩堝2は、軸線O方向に沿って延在すると共にベースチャンバ6b及びスピルトレイ8に貫設された坩堝支持部9に下側から支持されている。図示の例では、坩堝2は、黒鉛坩堝2bの下面が坩堝支持部9の上面に設けられたペディスタル9aに保持されることにより支持されている。
【0032】
坩堝支持部9は、ベースチャンバ6b及びスピルトレイ8を軸線O方向に貫通するように形成された貫通孔に挿通され、軸線Oと同軸に配設されている。坩堝支持部9には、図示しない駆動機構が設けられており、坩堝支持部9は、この駆動機構により軸線O方向に沿った移動及び軸線O回り方向の回転がそれぞれ可能とされている。これにより、坩堝2は、軸線O方向に沿った移動及び軸線O回り方向の回転がそれぞれ可能とされている。
【0033】
また、ベースチャンバ6b及びスピルトレイ8には、軸線O方向に沿って黒鉛電極10が貫設されている。図2に示すように、黒鉛電極10は、複数(図示の例では4つ)設けられており、4つの黒鉛電極10は、軸線O回りに沿って且つ隣接するもの同士が互いに等しい間隔をあけて配置されている。また、各黒鉛電極10には、図示しない電源が電気的に接続されている。そして、図1に示すように、これら黒鉛電極10の上端には、前記ヒータ部3が電気的に接続されている。
【0034】
ヒータ部3は、筒状に形成されると共に坩堝2を囲繞するヒータ本体3aと、ヒータ本体3aと黒鉛電極10とを電気的且つ機械的に接続する電極継手3bと、を備えている。ヒータ部3及び電極継手3bと、黒鉛電極10及び電極継手3bとはそれぞれボルト等の図示しない固定部材で固定されている。また、図示の例では、ヒータ部3の上端の軸線O方向に沿った位置は、黒鉛坩堝2bの上端の軸線O方向に沿った位置と同等とされている。
【0035】
また、図示の例では、スピルトレイ8の周壁部8aの上端面には、軸線O方向に沿った平面視形状が前記周壁部8aと同形同大に形成されたロアリング11が載置されている。このロアリング11は、軸線Oと同軸に配設され、例えば材質がカーボン(より具体的には黒鉛)で形成されている。そして、このロアリング11の上面には、前記保温筒部4が載置されている。
【0036】
保温筒部4は、例えば材質がカーボン(より具体的には黒鉛)で形成されている。また、図示の例では、保温筒部4の径方向に沿った大きさ(肉厚)は、スピルトレイ8の周壁部8aにおける前記径方向に沿った大きさ(肉厚)と同等とされている。また、保温筒部4の上端は、メインチャンバ6aの上端よりも下側に位置している。
【0037】
そして、本実施形態では、単結晶シリコン製造装置1は、保温筒部4の少なくとも一部を軸線O方向に沿って移動させる移動機構12を備えている。
図1及び図2に示すように、本実施形態では、移動機構12は、保温筒部4の下端部を、ロアリング11を介して軸線O方向に沿って押し上げる複数(図示の例では3つ)のシャフト部13を備えている。図2に示すように、3つのシャフト部13は、軸線O回り方向に沿って且つ隣接するもの同士が互いに等しい間隔をあけて配置されている。更に図1に示すように、本実施形態では、移動機構12は、複数のシャフト部13それぞれを軸線O方向に進退させる複数の進退手段14と、各進退手段14を制御する制御部15とを備えている。
【0038】
図示の例では、進退手段14は、モータ16と、モータ16の駆動により回転するネジ軸17a及びネジ軸17aの回転に伴い軸線O方向に沿って移動するナット17bを有するボールネジ17と、ボールネジ17のネジ軸17aを回転自在に支持する支持部材18と、を備えている。モータ16は、その駆動時にボールネジ17のネジ軸17aが駆動されるように図示しない固定部材により固定され(空回りが規制され)、支持部材18は、水冷チャンバ5の底面に固定されている。
また、制御部15は、例えば汎用コンピュータ等で構成されると共に、各進退手段14のボールネジ17のナット17bの軸線O方向に沿った移動量を制御するようにモータ16を駆動させることが可能な構成とされている。
【0039】
また、本実施形態では、シャフト部13は、シャフト本体20と、シャフト本体20を冷却する冷却水路(冷却手段)21と、を備えている。
シャフト本体20は、例えばステンレスで形成され、軸線O方向に沿って延在されている。シャフト本体20は、その下端部が、ボールネジ17のナット17bに連結されていると共に、その上端部が、ベースチャンバ6bの底壁部に軸線O方向に沿って形成された貫通孔6d、及びスピルトレイ8の周壁部8aに軸線O方向に沿って形成された貫通孔8bそれぞれに挿通されている。図示の例では、シャフト本体20の上端は、ベースチャンバ6bの底壁部より上側に位置し、スピルトレイ8の周壁部8aの上端より下側に位置し、つまりスピルトレイ8の周壁部8aの前記貫通孔8b内に位置しているが、これに限られない。
【0040】
冷却水路21には、チューブ21bを介して冷却水供給機構21aが接続されており、冷却水路21は、冷却水供給機構21aから供給される冷却水が、シャフト本体20の内部をシャフト本体20の延在方向に沿って流通するように形成されている。更に、冷却水路21は、チューブ21bを介して冷却水がシャフト本体20内と冷却水供給機構21a内とを循環するように形成されている。以上により、冷却水路21はシャフト本体20を冷却可能とされている。
なお、シャフト本体20とベースチャンバ6bの前記貫通孔6dとの間には、シール部材22が介在している。
【0041】
また、本実施形態では、シャフト部13と保温筒部4との間には、保温筒部4を構成する材質の融点と略同等の融点を具備する仲介部材23が介在している。
図示の例では、仲介部材23は、前記ロアリング11と、スピルトレイ8の周壁部8aの前記貫通孔8bに挿通された挿通部材24と、を備えている。
【0042】
挿通部材24は、例えばカーボン(より具体的には黒鉛)で、軸線O方向に沿って延びる棒状に形成されている。また、挿通部材24の下端部は、シャフト部13の上端部と図示しない固定部材により固定されている。また、挿通部材24の上端面は、軸線O方向に垂直に交わる平坦面に形成されていると共に、スピルトレイ8の周壁部8aの上端面と面一になっており、ロアリング11の下面に当接している。
仲介部材23は、前述のように材質がいずれも保温筒部4を構成する材質(カーボン、より具体的には黒鉛)により形成されており、これにより保温筒部4を構成する材質の融点と略同等の融点を具備している。また、仲介部材23は、シャフト部13と保温筒部4との間に軸線O方向に沿って介在している。
【0043】
次に、単結晶シリコン製造装置1の作用について説明する。
始めに、単結晶シリコン製造装置1を用いた単結晶シリコン製造方法の一例を説明する。なおここでは、水冷チャンバ5内が予め所定の温度(例えば、約200℃)以下に冷却されており、更に、原料多結晶シリコンMが坩堝2内に充填されていない状態から説明を始める。
【0044】
まず、トップチャンバ7をメインチャンバ6aから離脱させた後、塊状の原料多結晶シリコンMを石英坩堝2aに充填し、離脱したトップチャンバ7をメインチャンバ6aに装着させる。
次いで、ヒータ部3により原料多結晶シリコンMを例えば1420℃に加熱してシリコン融液とし、シードを浸漬する部分近傍の原料多結晶シリコンMを過冷却状態とする。
【0045】
次いで、プルチャンバのシードチャックにシードを把持させた後、水冷チャンバ5内を真空状態とし、シードをシードチャック駆動機構により連通筒部7aを通して下方に向けて移動させ、シリコン融液(原料多結晶シリコンM)に浸漬する。
そして、浸漬されたシードにシリコン融液をなじませた後、シードチャック及び坩堝2を、それぞれ適宜、回転及び昇降させつつシードをシリコン融液から引き上げて単結晶シリコンを成長させる。
以上により、単結晶シリコンが製造される。
【0046】
図3は、図1に示す単結晶シリコン製造装置において移動機構を動作させた状態を示す一工程図である。
次に、前述のように単結晶シリコン製造の一連の工程が終了した後、再度この製造装置において単結晶シリコンを製造するために水冷チャンバ5内を冷却する方法の一例について説明する。
【0047】
本実施形態では、まず、シャフト部13の冷却水路21に、冷却水供給機構21aから冷却水を供給する。
次いで、図3に示すように、制御部15が、各進退手段14のモータ16を同期をとりながら駆動させ、全てのシャフト部13を軸線O方向に沿って上側に同じ移動量だけ進出させる。これにより、シャフト部13は、仲介部材23を介して保温筒部4の下端部を軸線O方向に沿って押し上げることが可能となり、移動機構12は、保温筒部4を軸線O方向に沿って上側に移動させることができる。
【0048】
このとき制御部15は、図3に示すように、進退手段14に、坩堝2及びヒータ部3のうちの少なくとも一方が水冷チャンバ5と保温筒部4の径方向で対向するように保温筒部4を移動させる。図示の例では、移動機構12によって、ヒータ部3、つまりヒータ本体3a及び電極継手3bが水冷チャンバ5と前記径方向で対向するように保温筒部4が移動されている。
【0049】
そして、水冷チャンバ5内が所定の温度、例えば約200℃まで冷却された後に、保温筒部4が初期位置、つまり仲介部材23であるロアリング11がスピルトレイ8の周壁部8aに載置される位置まで軸線O方向に沿って移動されるように、制御部15は、進退手段14によりシャフト部13を下側に後退させる。なお、この保温筒部4の移動の前に、前記単結晶シリコン製造方法で説明した原料多結晶シリコンMの石英坩堝2aへの充填を行っても構わない。
【0050】
以上に示した単結晶シリコン製造装置1によれば、移動機構12によって保温筒部4の少なくとも一部を軸線O方向に沿って移動させることができる。これにより、保温筒部4がロアリング11に載置されている状態において、保温筒部4の内側に位置する領域H(図1および図3に示す2点鎖線内)に対して水冷チャンバ5の内面を露出させることが可能となり、前記領域H内部の熱を水冷チャンバ5に吸収させることができる。従って、水冷チャンバ5内の冷却に要する時間を短縮し、生産効率を向上させることができる。
しかも、本実施形態では、ヒータ部3を水冷チャンバ5と前記径方向で対向させることができる。従って、ヒータ部3の輻射熱を水冷チャンバ5によって効率良く吸収することが可能となり、水冷チャンバ5内の冷却に要する時間をより一層短縮し、生産効率を更に向上させることができる。
【0051】
また、移動機構12が保温筒部4の下端部を軸線O方向に沿って押し上げるシャフト部13を備えているので、単にシャフト部13を進退させるという簡単な構成によって保温筒部4を軸線O方向に沿って移動させることができる。
また、複数のシャフト部13が、軸線O回り方向に沿って配置されているので、各シャフト部13にかかる保温筒部4の荷重を一部のシャフト部13に集中させ難くすることができる。これにより、保温筒部4を安定した姿勢で確実に移動させることができると共に、保温筒部4の荷重が集中することに起因してシャフト部13が破損してしまうのを抑制することができる。
なお、複数のシャフト部13のうち、軸線O回り方向に隣接するもの同士が互いに等しい間隔をあけて配置されている場合、前記荷重が一部のシャフト部13に集中するのを効果的に抑制することができる。
【0052】
また、シャフト部13と保温筒部4との間には、保温筒部4を構成する材質の融点と略同等の融点を具備する仲介部材23が介在している。このため、シャフト部13が仲介部材23を介さずに保温筒部4と連結されている場合と比べて、保温筒部4を移動させる際に水冷チャンバ5内にシャフト部13が進入する量である進入量を小さく抑えることができる。従って、シャフト部13が水冷チャンバ5内の構成要素から放射される輻射熱等によって加熱されるのを抑制することが可能となり、シャフト部13を安定して進退させることができる。
【0053】
また、シャフト部13がシャフト本体20を冷却する冷却水路21を備えているので、仮にシャフト部13が高温状況下の水冷チャンバ5内に進入してシャフト本体20が加熱されたとしても、シャフト本体20を冷却水路21を流通する冷却水によって冷却することができる。従って、シャフト本体20が高温に加熱されるのを抑制することが可能となり、シャフト部13を安定して進退させることができる。
【0054】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、ヒータ部3は、坩堝2内の原料多結晶シリコンMを加熱できれば、形状、構成及び配置位置等は、前記実施形態に示したものに限られない。
【0055】
また、前記実施形態では、保温筒部4の全体を軸線O方向に沿って移動させるものとしたが、これに限られるものではない。例えば、保温筒部が、上側の上側保温筒部と、下側の下側保温筒部と、から構成され、移動機構が、上側保温筒部のみを下側保温筒部に対して軸線O方向に沿って引き上げる等しても良い。この場合であっても、前記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0056】
また、前記実施形態では、移動機構12は、ヒータ部3が水冷チャンバ5と前記径方向で対向するように保温筒部4を移動させたが、保温筒部4を軸線O方向に沿って移動させればこれに限られるものではない。例えば、移動機構は、坩堝が水冷チャンバと前記径方向で対向するように保温筒部を移動させても良いし、坩堝及びヒータ部のいずれもが水冷チャンバと前記径方向で対向するように保温筒部を移動させても良い。更にまた、保温筒部を移動させた後にヒータ部及び坩堝のいずれもが水冷チャンバと前記径方向で対向しなくても良い。
【0057】
また、前記実施形態では、移動機構12は、保温筒部4の下端部を軸線O方向に沿って押し上げる複数のシャフト部13を備えるものとしたが、これに限られるものではない。例えば、移動機構は、保温筒部を引き上げる引き上げ機構を備えていても良い。
また、移動機構12がシャフト部13を備える場合であっても、シャフト部13は軸線O回り方向に沿って互いに等しい間隔をあけて配置されていなくても良い。
【0058】
また、移動機構12がシャフト部13を備える場合であっても、シャフト部13と保温筒部4との間に仲介部材23が介在していなくても良い。
また、移動機構12がシャフト部13を備える場合であっても、シャフト部13は冷却水路(冷却手段)21を有していなくても構わない。
また、移動機構12がシャフト部13を備える場合であっても、進退手段14は前述の構成に限られず、例えば油圧シリンダやエアシリンダ等を採用しても良い。また、制御部15は無くても構わない。
【0059】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 単結晶シリコン製造装置
2 坩堝
3 ヒータ部
4 保温筒部
5 水冷チャンバ
12 移動機構
13 シャフト部
20 シャフト本体
21 冷却水路(冷却手段)
23 仲介部材
M 原料多結晶シリコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に向けて開口すると共に、内部に原料多結晶シリコンが貯留される坩堝と、
前記坩堝内に貯留された前記原料多結晶シリコンを加熱するヒータ部と、
前記坩堝及び前記ヒータ部が径方向の内側に配置された保温筒部と、
前記坩堝、前記ヒータ部及び前記保温筒部を内部に収容する水冷チャンバと、を備え、
チョクラルスキー法によって前記原料多結晶シリコンから単結晶シリコンを製造する単結晶シリコン製造装置であって、
前記保温筒部の少なくとも一部を前記保温筒部の軸方向に沿って移動させる移動機構を備えていることを特徴とする単結晶シリコン製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の単結晶シリコン製造装置であって、
前記移動機構は、前記坩堝及び前記ヒータ部のうちの少なくとも一方が前記水冷チャンバと前記径方向で対向するように前記保温筒部の少なくとも一部を移動させることを特徴とする単結晶シリコン製造装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の単結晶シリコン製造装置であって、
前記移動機構は、前記保温筒部の下端部を前記軸方向に沿って押し上げる複数のシャフト部を備えていることを特徴とする単結晶シリコン製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載の単結晶シリコン製造装置であって、
前記複数のシャフト部は、前記保温筒部の周方向に沿って配置されていることを特徴とする単結晶シリコン製造装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の単結晶シリコン製造装置であって、
前記シャフト部と前記保温筒部との間には、前記保温筒部を構成する材質の融点と略同等の融点を具備する仲介部材が介在していることを特徴とする単結晶シリコン製造装置。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか1項に記載の単結晶シリコン製造装置であって、
前記シャフト部は、シャフト本体と、前記シャフト本体を冷却する冷却手段と、を備えていることを特徴とする単結晶シリコン製造装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の単結晶シリコン製造装置であって、
前記保温筒部の少なくとも一部は、前記軸方向に沿った移動が前記水冷チャンバの内周面によって案内されるように形成されていることを特徴とする単結晶シリコン製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−240861(P2012−240861A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109832(P2011−109832)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(390004879)三菱マテリアルテクノ株式会社 (201)
【Fターム(参考)】