説明

単結晶シリコン製造装置

【課題】発熱体からの汚染を防止し、さらに支持シャフトの温度上昇を抑制することで、支持シャフト材及び支持シャフトとハウジングとの間にあるシール材からの汚染を防止し、かつシール材の劣化を防ぎ、もって高品質な単結晶シリコンを製造する。
【解決手段】ハウジングの壁を貫通する回転可能な支持シャフト11の先端に、誘導加熱コイルによって誘導加熱可能な導電材を有する発熱リングが設けられるとともに、支持シャフト11に、これを回転させることにより、発熱リングを種結晶ホルダーと多結晶ホルダーとの間で誘導加熱コイルに接近させた加熱位置と、この加熱位置から離間した待機位置との間で往復移動させる操作手段が設けられ、ハウジングの壁と支持シャフト11との貫通部に、これらの気密を保持するシール材21Aが設けられ、支持シャフト11の内部には、冷却媒体を流通させる冷却流路14が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は単結晶シリコン製造装置に係り、特にFZ法により単結晶に成長させる単結晶シリコン製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のFZ(フロートゾーン)法を利用した単結晶シリコン製造装置として、特許文献1に示されるものが知られている。この単結晶シリコン製造装置は、内部が不活性ガス雰囲気とされるハウジングと、ハウジング内の上部駆動軸(位置決めロッド)に設置されてその下端部に試料となる多結晶シリコン棒が保持される多結晶ホルダーと、下部駆動軸(位置決めロッド)に設置されてその上端部にシリコン単結晶の種結晶が保持される種結晶ホルダーと、ハウジング内の中間部分に設けられた高周波誘導加熱コイルとを有するものであって、上側の多結晶ホルダーに原料となる多結晶シリコン棒を保持し、かつ種結晶ホルダーにシリコン単結晶の種結晶を保持した状態で、高周波誘導加熱コイルにより多結晶シリコンの一端を溶融して種結晶に融着した後、多結晶シリコン棒を高周波誘導加熱コイルに対して相対回転させながら軸線方向に相対移動させ、多結晶シリコン棒を軸方向に順次帯域溶融しながら、単結晶シリコンの棒を製造するものである。
【0003】
また、この単結晶シリコン製造装置では、多結晶シリコン棒を加熱するための加熱手段として高周波誘導加熱コイルが設けられている。多結晶シリコン棒は冷えているときは比抵抗が大きいため、初期段階で多結晶シリコンを輻射熱によって予熱するためのカーボン等からなる発熱リング(サセプタ)が設けられている。まず、この発熱リングを誘導加熱して高温状態とし、その輻射熱により多結晶シリコン棒を加熱する。そして、多結晶シリコン棒の温度が上昇して通電可能な状態になった後は、その誘導加熱により多結晶シリコンが自己発熱する。このような状態となった場合には、発熱リングが多結晶シリコン棒の周りから離間し、その後は、多結晶シリコン棒が直接誘導加熱され、下端部が溶融する。その溶融した下端部が種結晶に融着し、単結晶が成長する。
【特許文献1】特開平7−10681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した発熱リングは、多結晶シリコン棒に接近させたり、離間させたりするために、これを支持する支持シャフトがハウジングの壁に回転自在に支持されている。一方、FZ法による単結晶製造プロセスにおいては、装置を構成する部材からの汚染を抑えることが必要不可欠であり、上記発明に記載された金属材料もしくは焼結材料からなるサセプタ材質(SiCコートカーボン・タンタル・モリブデン等)はサセプタ材そのものが汚染源となる。またサセプタが発熱した際に、サセプタを支持している支持シャフトも高温に加熱されるため、支持体部材からの汚染が生じる。さらに支持シャフトとハウジングの間のシール材にも熱が伝わり、シール性が低下するとともに、シール材からの汚染が発生する。シール性低下に起因した外部ガスの混入による雰囲気品質の低下などにより単結晶シリコンの品質が低下するという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、発熱体からの汚染を防止し、さらに支持シャフトの温度上昇を抑制することで、支持シャフト材及び支持シャフトとハウジングとの間にあるシール材及び外部雰囲気からの汚染を防止し、もって高品質な単結晶シリコンを製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の単結晶シリコン製造装置は、 ハウジング内に、種結晶ホルダーに保持した種結晶が、多結晶ホルダーに保持した多結晶シリコン棒と対向して配置され、その多結晶シリコン棒の周囲に配置される誘導加熱コイルによって多結晶シリコン棒が溶融した後種結晶に融着して単結晶に成長させる単結晶シリコン製造装置であって、前記ハウジングの壁を貫通する回転可能な支持シャフトの先端に、前記誘導加熱コイルによって誘導加熱可能な導電材と、該導電材を被覆する石英被覆体とを有する発熱リングが設けられるとともに、前記支持シャフトに、これを回転させることにより、前記発熱リングを前記種結晶ホルダーと多結晶ホルダーとの間で前記誘導加熱コイルに接近させた加熱位置と、この加熱位置から離間した待機位置との間で往復移動させる操作手段が設けられ、前記ハウジングの壁と前記支持シャフトとの貫通部に、これらの気密を保持するシール材が設けられ、前記支持シャフトの内部には、冷却媒体を流通させる冷却流路が形成されていることを特徴とする。
【0007】
すなわち、発熱リングの導電材が石英被覆体で被覆され、該リングを保持する支持シャフト内に冷却媒体が流通するようにしたので、誘導加熱コイルによって発熱リングを誘導加熱した際、その熱が支持シャフト内の冷却媒体で冷却されることにより、汚染の極めて少ない高品質な単結晶シリコンを製造することが可能になる。
【0008】
本発明の単結晶シリコン製造装置において、前記支持シャフトは外管と内管とからなる二重管により形成され、前記冷却流路は、外管と内管のいずれか一方側に冷却媒体が供給され、その他方側から排出する構成とされていることを特徴とする。この二重管構造としたことにより、支持シャフト内部に連続的に冷却媒体を供給でき、支持シャフト及びシール材の効果的な冷却が可能となる。この場合、発熱リングに近い支持シャフトの先端部を有効に冷却するために、外管と内管との間から冷却媒体を供給し、支持シャフトの先端部で折り返すようにして内管内に流通させる構成とするとよい。
【0009】
また、本発明の単結晶シリコン製造装置において、前記発熱リングは、前記導電材がカーボンによって構成されていることが好ましい。
また、本発明の単結晶シリコン製造装置において、前記発熱リングは、その周方向の一部に、前記多結晶シリコン棒を通過可能な切欠き部が形成され、前記操作手段によって前記切欠き部が前記加熱位置の中心を通るように往復移動する構成とするとよい。発熱リングを加熱位置と待機位置との間で往復移動する際に、切欠き部が多結晶シリコン棒を通過するようにして発熱リングを移動することができ、多結晶シリコン棒と種結晶との相対位置関係を変えることなく、発熱リングのみ移動が可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の単結晶シリコン製造装置によれば、発熱リングの導電材が石英被覆体で被覆され、発熱リングを保持する支持シャフト内に冷却媒体が流通するので、発熱リングの熱が支持シャフト内の冷却媒体で冷却されることにより、発熱リング、支持シャフト及び該支持シャフトとハウジングとの間にあるシール材からの汚染が抑制される。その結果、高品質な単結晶シリコンを製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る単結晶シリコン製造装置の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は一実施形態の単結晶製造装置100の概略構成図であって、この図において符号1は、不活性ガス(アルゴンガス)が充填されるハウジングである。このハウジング1の上壁1Aの中心部には回転駆動かつ上下方向に昇降駆動される上部駆動軸2が設けられ、また、ハウジング1の底部1Bには、上部駆動軸2と軸線を同じくして対向するように、回転駆動かつ上下方向に昇降駆動される下部駆動軸3が設けられている。上部駆動軸2の下端部には、モリブデン線からなる吊り具4を介して試料となる多結晶シリコン棒S1が保持される多結晶ホルダー5が設けられ、また、下部駆動軸3の上端部には、シリコン単結晶の種結晶6が保持される種結晶ホルダー7が設けられている。
【0013】
ハウジング1内の多結晶ホルダー5と種結晶ホルダー7との間には、高周波誘導加熱コイル8及び石英によって被覆された発熱リング9が設けられている。高周波誘導加熱コイル8は全体としてリング盤状に形成されており、ハウジング1の側壁1Cに支持された支持棒10によって水平に保持されている。発熱リング9は、図2及び図3に示すように全体としてリング状に形成されており、カーボンからなる導電材9Aと、この導電材9Aを間隔をあけて覆う石英被覆体9Bとから構成されている。また、この石英被覆体9Bにより囲まれた内部空間9Cは例えば10−4〜10−6Paの真空状態に設定されている。
そして、この発熱リング9は、ハウジング1の上壁1Aから垂下された支持シャフト11によって高周波誘導加熱コイル8の上方位置に水平に保持されている。この支持シャフト11は、垂直部11Aと水平部11BとによりL字状に形成され、その垂直部11Aの上端部がハウジング1の上壁1Aを貫通し、該上壁1Aに回転可能及び昇降可能に支持されており、垂直部11Aの下端部と一体の水平部11Bの先端に、発熱リング9が固定されている。また、ハウジング1の上壁1Aから突出する垂直部11Aの上端部にレバー等の操作手段11Cが設けられており、この操作手段11Cを操作することにより、その下端部に保持した発熱リング9を若干上下移動可能であるとともに、多結晶ホルダー5と種結晶ホルダー7との間に配置される「加熱位置(図2に符号Eで示す位置)」と、その間から側方に離間した「待機位置(同図に符号Fで示す位置)」との間で往復移動させることができるようになっている。
【0014】
また、この支持シャフト11の少なくとも垂直部11Aは、図4に示すように外管12と内管13とからなる二重管構造とされて、内部に冷却流路14が形成されている。この場合、外管12の下端部は閉鎖されているが、内管13の下端部は開放状態とされて外管12の下端部から若干離れた位置に配置されていることにより、内管13の内部空間と両管12,13の間のリング状空間とが支持シャフト11の下端部で連通状態とされている。また、外管12の上部の取付孔12Aには、冷却媒体を外部から供給する外部配管15が接続され、内管13の上端部には冷却水等の冷却媒体が排出される外部配管16が接続される。つまり、二重管によって形成される冷却流路14は、外部配管15から外管12と内管13との間のリング状空間に供給された冷却媒体が支持シャフト11の下端部で折り返すようにして内管13内を経由し、外部配管16から外部に排出される構成である。このような冷却媒体の流通によって、支持シャフト11はその全体が冷却される。
【0015】
また、この支持シャフト11の上端部は、図5に示すようにハウジング1の上壁1Aの一部を構成するように設けられた支持ブロック17によって支持されている。この支持ブロック17は、ハウジング1の上壁1Aの上面に固定された第1ブロック体17Aと、該第1ブロック体17Aの上に固定された第2ブロック体17Bとからなり、支持シャフト11は、これらブロック体17A,17B及びハウジング1の上壁1Aを上下方向に貫通して配置されている。この場合、両ブロック体17A,17Bの貫通孔を形成するようにスリーブ18が両ブロック体17A,17Bと一体的に設けられており、このスリーブ18の貫通孔18a内に支持シャフト11が貫通状態に支持され、ブロック体17A及びハウジング1の上壁1Aの孔19,20を通ってハウジング1内に垂下している。また、支持シャフト11とスリーブ18の貫通孔18aの内周面との間、ハウジング1の上壁1Aの上面と支持ブロック17の第1ブロック体17Aの下面との間、及びスリーブ18と第2ブロック体17Bとの間には、ハウジング1の内部の気密を保つためのOリング等のシール材21A〜21Cが設けられている。図5中、符号22は第1ブロック体17Aとハウジング1の上壁1Aとを一体に固定するビスを示している。
【0016】
一方、種結晶ホルダー7は、タンタル(Ta)により、図6及び図7に示すように全体として筒状に形成され、その下端部を除く大部分に、上端の開口31に向けて漸次拡径する円錐形状の上部収納孔32が形成され、その下端部には、円柱状の下部収納孔33が形成されている。これら収納孔32,33は、同一軸線C1上に配置され、その上部収納孔
32に種結晶6が収納され、下部収納孔33には、下部駆動軸3の先端に固定された石英からなる棒状の支持部材34が取り付けられる。
【0017】
この種結晶ホルダー7に保持される種結晶6は、全体としては棒状に形成されるが、長さ方向の中央部から上部6aと下部6bとでそれぞれ端部を先細りとした円錐形状に形成されている。また、支持部材34は円柱状に形成されている。そして、この種結晶ホルダー7を支持部材34の上に取り付け、上部収納孔32に種結晶6の下部6bを収納した状態とすることにより、この種結晶6の軸線Cがその上方の多結晶ホルダー5によって保持される多結晶シリコン棒S1の軸線Cと同一線上に配置される。
【0018】
また、この種結晶ホルダー7の両端部には、半径方向に沿うネジ孔35が周方向に90°ずつ間隔をあけて4個ずつ設けられている。これらネジ孔35は、それぞれ種結晶ホルダー7の壁を貫通していることにより、内部の上部収納孔32及び下部収納孔33に連通している。そして、上部収納孔32に収納した種結晶6は上部のネジ孔35から止めネジ36をねじ込むことによって固定され、下部収納孔33に収納した支持部材34は下部のネジ孔35に止めネジ36をねじ込むことによって固定される構成である。
【0019】
そして、種結晶ホルダー7の上部収納孔32の内周面を形成しているテーパ面32aは、この上部収納孔32の軸線Cとなす角度θが10〜25°に設定されているとともに、その面粗さが、平均粗さ(Ra)で10〜200μmとされている。テーパ面32aの角度が25°より大きいと、種結晶6の姿勢が安定せずに、回転時に種結晶6が滑り易く、また、10°より小さいと、芯ずれが生じ易い。より好ましくはテーパ角32aの角度は17〜18°とされる。また、面粗さが10〜200μmとされていることにより、回転時に適度の摩擦力で種結晶6が保持され、その姿勢を正確に維持することができる。
【0020】
また、種結晶ホルダー7の長さ方向中央部の外周部には、周方向に180°離間する対称位置にそれぞれ凹部37が形成されている。これら凹部37は、種結晶ホルダー7を支持部材34に固定したり収納孔32内に種結晶6を保持したりする際に、ペンチ等の工具の先端部を配置させるものであり、断面が矩形の溝状に形成され、工具先端部が当接可能な平面37aが径方向と平行に形成されている。
【0021】
このように構成した単結晶製造装置100を使用して単結晶シリコンを製造する方法について、以下、その工程の順序に従って説明する。
(1)種結晶ホルダー7に種結晶6が取り付けられるとともに、吊り具4が試料となる多結晶シリコン棒S1に取り付けられることにより、該多結晶シリコン棒S1が多結晶ホルダー5に支持される。このとき、種結晶ホルダー7の上部収納孔32に種結晶6の下部6bを挿し込むことにより、この上部収納孔32のテーパ面32aが種結晶6の外周面に接触して、自動的に芯が合わせられる。その収納状態で止めネジ36によって固定することにより、その芯合わせ状態が保持される。
(2)同軸状に配置された種結晶6と多結晶シリコン棒S1との間の位置(加熱位置E)に発熱リング9を配置する。(3)上部駆動軸2を降下させて、試料となる多結晶シリコン棒S1を発熱リング9内に通し、試料の下端が、高周波誘導加熱コイル8の上方に近接するように多結晶シリコン棒S1を位置させる。
(4)ハウジング1のドア(図示略)を閉めて内部を密閉状態にし、真空引きを行った後に不活性ガスを充満させる。
【0022】
(5)高周波誘導加熱コイル8に通電することで、発熱リング9が発熱し、その輻射熱によって多結晶シリコン棒S1の予熱が行われる。この予熱は多結晶シリコン棒S1の先端部が赤熱するまで行う。
(6)上部駆動軸2が図2の矢印Aで示すように上昇して、多結晶シリコン棒S1が種結晶6から離間する。次に多結晶シリコン棒S1と種結晶6との間にできた隙間から発熱リング9が矢印Bで示すように移動し、ハウジング1の側壁1Cの近傍位置(待機位置F)に待機する。その後、上部駆動軸2を降下させることで、多結晶シリコン棒S1が高周波誘導加熱コイル8の付近まで降下する。
【0023】
(7) 多結晶シリコン棒S1の下端部が溶融する。
(8)下部駆動軸3を上昇することで、種結晶6が多結晶シリコン棒S1に近づく。多結晶シリコン棒S1の下端部が完全に溶けたら、種結晶6と多結晶シリコン棒S1とを接触させることにより、多結晶シリコン棒S1の熱が種結晶6に伝達して種結晶6の上端面が溶融する。
(9)下部駆動軸3を回転駆動して種結晶6を回転する。
(10)多結晶シリコン棒S1の下端の溶融部の形状を整えながら溶融部と種結晶6を十分なじませる。
(11)上部駆動軸2と下部駆動軸3とを軸線方向に沿って同期移動させることにより、多結晶シリコン棒S1の溶融部分が、高周波誘導加熱コイル8に対して上下方向に相対移動する。これにより下部駆動軸3上に単結晶シリコンS2を育成する。
(12)単結晶シリコンS2が十分に形成されたら、上部駆動軸2、下部駆動軸3の駆動、高周波誘導加熱コイル8の通電を停止する。その後、形成された単結晶シリコンを取り出し、急速冷却装置で冷却する。
【0024】
以上のような単結晶製造装置100によれば、両端部6a,6bを円錐形状とした種結晶6を種結晶ホルダー7の上部収納孔32に挿し込むことにより、種結晶6の円錐状外周面が収納孔32のテーパ面32aに全周にわたって接触する。従って両者の軸線C,Cが正確に一致する。これにより、種結晶6の軸線Cと、その上方に配置される多結晶シリコン棒の軸線Cとが正確に一致する。つまり、種結晶6を収納孔32に挿し込むだけで、これらの軸線C,Cが一致した状態に収納され、その上方の多結晶シリコン棒S1との軸線Cとも一致するようになり、結果として種結晶6を取り付ける際の作業時間が大幅に短縮される。そして、この収納状態で止めネジ36を固定することにより、種結晶6はテーパ面32aによって全周を保持され、さらに止めネジ36の押圧力によって確実に固定することができる。
上部収納孔がストレートであると、種結晶を収納して止めネジで止めた場合に、そのクリアランスの範囲で種結晶が左右方向に移動し易いが、収納孔をテーパ面としたことにより、種結晶の全周がテーパ面に接触して左右方向に移動し難く、したがって、多結晶シリコン棒との芯合わせ作業が容易になる。
【0025】
そして、この種結晶6と同軸状となるように多結晶シリコン棒S1を多結晶ホルダー7に支持する。次に、図1に示されるように多結晶ホルダー5と種結晶ホルダー7との間の「加熱位置E」に発熱リング9を配置し、この発熱リング9を高周波誘導加熱コイル8によって誘導加熱して高温状態とすることにより、この発熱リング9からの輻射熱によって多結晶シリコン棒S1が加熱される。そして、多結晶シリコン棒S1の温度が上昇して、下端部が赤熱した後は、多結晶シリコン棒S1を上方に引き上げた状態で、支持シャフト11を回転させて、多結晶ホルダー5と種結晶ホルダー7との間から「待機位置F」に発熱リング9を待機させ、多結晶シリコン棒S1は高周波誘導加熱コイル8からの誘導加熱のみによって加熱されて、単結晶シリコンに育成するのである。発熱リング9は石英にて被覆されている為、リング部材からの汚染が極めて少なく、良好な品質の単結晶シリコンを製造することができる。
この単結晶シリコンの育成作業中に種結晶6が回転することがあるが、その際も収納孔22のテーパ面32aにより種結晶6を全周で保持しているので、スリップを生じさせることなく、その芯合わせ状態が確実に維持される。この場合、テーパ面の面粗さは、平均粗さ(Ra)で10〜200μmとされており、面粗さをこの範囲に設定しておくことにより、収納孔のテーパ面と種結晶との摩擦力が大きくなり、回転時のスリップを確実に防止することができる。
【0026】
そして、この単結晶製造の間、二重管構造の支持シャフト11には、その内部の冷却流路14に冷却媒体が流通されることから、高周波誘導加熱コイル8によって発熱リング9が加熱されたとしても、その熱が、支持シャフト11とハウジング1との間をシールするシール材21Aに伝達されることを防止することができる。その結果、支持シャフト11からの汚染が防止されるとともに、シール材21Aが過熱されず、該シール材21Aの劣化、性能低下を防止することができ、該シール材21Aからの汚染も防止され、さらにシール材21Aの長寿命化を図ることができる。
【0027】
発熱リング9自体も、カーボンからなる導電材9Aが石英被覆体9Bによって覆われているため、作業雰囲気への汚染が防止される。また、これら導電材9Aと石英被覆体9Bとの間の空間9Cが真空状態とされることにより、空気雰囲気の場合の残留水分に起因する導電材の劣化も防止される。さらに、導電材9Aと石英被覆体9Bとが離間していることにより、両者の熱伸縮差に伴う応力発生も防止できる。
また、上記の単結晶製造装置100によれば、支持シャフト11を内管12と外管13とからなる二重管により形成し、これら内管12と外管13のいずれか一方側に冷却媒体を供給し、これら内管12、外管13の他方側を通じて冷却媒体を排出するようにしたので、支持シャフト11に対して連続的に冷却媒体を供給でき、シール材の効果的な冷却が可能となる。
これらの相乗効果により、単結晶製造装置としての健全性を長期にわたって維持することができる。
【0028】
図8は本発明の他の実施形態を示している。この実施形態では、発熱リング41が図1〜図3に示す一実施形態の発熱リング9と異なり、周方向の一部に切欠き部42が形成されている。この切欠き部42は、その間隔Wが多結晶シリコン棒S1の直径よりも大きく形成され、切欠き部42を多結晶シリコン棒S1が通過できる構造である。また、この切欠き部42の位置は、操作レバー11Cを操作して発熱リング41を往復移動したときに、切欠き部42が加熱位置Eの中心(種結晶ホルダー7の軸線C及び多結晶ホルダー5の支持中心に等しい)を通るように配置されている。
したがって、先の実施形態では製造工程の(6)において、加熱位置Eから待機位置Fに発熱リング9を移動する前に、多結晶シリコン棒S1が上昇して種結晶6から離間することにより、多結晶シリコン棒S1と種結晶6との間に発熱リングが通過可能な間隔を確保する必要があったが、本実施形態においては、多結晶シリコン棒S1を上昇させることなく、発熱リング41が図8の矢印Cに示すように移動するだけで、加熱位置Eから鎖線で示す待機位置Fに移動することができる。従って、多結晶シリコン棒S1の先端部が赤熱した状態を維持したまま次工程に移行できるため、作業性が良い。
【0029】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、一実施形態の支持シャフト11の冷却流路14では、まず外管12に外部から冷却媒体を供給した後、内管13から排出するようにしたが、逆に、外部から冷却媒体を内管13に供給した後、外管12から排出するようにしても良い。また、支持シャフト11の回転及び昇降の操作のためにレバー等の操作手段を設けたが、電動機、減速機等を組み合わせた駆動機構からなる操作手段としてもよい。さらに、発熱リングの導電材は、誘導加熱コイルによって誘導加熱可能かつその融点がシリコンよりも高温である導電材からなるものであれば、カーボン、モリブデン等を適用することができる。
また、一実施形態の種結晶ホルダー7では、上部収納孔32を開口まで連続するテーパ面32aに形成したが、種結晶の外周の全周に接触可能なテーパ面が少なくとも一部に形成されていればよく、開口付近は円筒状としてもよい。また、この収納孔に挿入した種結晶を4本の止めネジで固定する構造としたが、3本の止めネジによって固定するものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態における単結晶製造装置の全体を示す概略断面図である。
【図2】図1における発熱リングとその支持シャフトを示す斜視図である。
【図3】図1における発熱リングの縦断面図である。
【図4】図1の支持シャフトの内部構造を示す縦断面図である。
【図5】図1のハウジングに対する支持シャフトの取付状態を示す縦断面図である。
【図6】図1における種結晶ホルダーに種結晶を保持した状態を拡大して示す縦断面図である。
【図7】図6の種結晶ホルダーの外観を示す斜視図である。
【図8】本発明の他の実施形態における発熱リングとその支持シャフトを示す図2同様の斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 ハウジング
2 上部駆動軸
3 下部駆動軸
4 吊り具
5 多結晶ホルダー
6 種結晶
6a 上端部
6b 下端部
7 種結晶ホルダー
8 高周波誘導加熱コイル
9 発熱リング
9A 導電材
9B 石英被覆体
9C 空間
10 支持棒
11 支持シャフト
11C 操作手段
12 内管
13 外管
14 冷却流路
15 外部配管
16 外部配管 17 支持ブロック
18 スリーブ
21A〜21C シール材
31 開口
32 上部収納孔
32a テーパ面
33 下部収納孔
34 支持部材
35 ネジ孔
36 止めネジ
S1 多結晶シリコン棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に、種結晶ホルダーに保持した種結晶が、多結晶ホルダーに保持した多結晶シリコン棒と対向して配置され、その多結晶シリコン棒の周囲に配置される誘導加熱コイルによって多結晶シリコン棒が溶融した後種結晶に融着して単結晶に成長させる単結晶シリコン製造装置であって、
前記ハウジングの壁を貫通する回転可能な支持シャフトの先端に、前記誘導加熱コイルによって誘導加熱可能な導電材と、該導電材を被覆する石英被覆体とを有する発熱リングが設けられるとともに、前記支持シャフトに、これを回転させることにより、前記発熱リングを前記種結晶ホルダーと多結晶ホルダーとの間で前記誘導加熱コイルに接近させた加熱位置と、この加熱位置から離間した待機位置との間で往復移動させる操作手段が設けられ、前記ハウジングの壁と前記支持シャフトとの貫通部に、これらの気密を保持するシール材が設けられ、前記支持シャフトの内部には、冷却媒体を流通させる冷却流路が形成されていることを特徴とする単結晶シリコン製造装置。
【請求項2】
前記支持シャフトは外管と内管とからなる二重管により形成され、前記冷却流路は、外管と内管のいずれか一方側から冷却媒体が供給され、その他方側より排出される構成とされていることを特徴とする請求項1記載の単結晶シリコン製造装置。
【請求項3】
前記発熱リングは、前記導電材がカーボンによって構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の単結晶シリコン製造装置。
【請求項4】
前記発熱リングは、その周方向の一部に、前記多結晶シリコン棒を通過可能な切欠き部が形成され、前記操作手段によって前記切欠き部が前記加熱位置の中心を通るように往復移動することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の単結晶シリコン製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−10691(P2013−10691A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−232090(P2012−232090)
【出願日】平成24年10月19日(2012.10.19)
【分割の表示】特願2008−323584(P2008−323584)の分割
【原出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】