説明

単結晶育成装置および単結晶育成方法

【課題】 引上げ単結晶インゴットの径方向の温度勾配を簡便に低減し、融液面からの不純物ガスをルツボ外に効果的に排出して、引上げ単結晶の大口径化および高品質化を容易にする。
【解決手段】 単結晶育成装置10は、円筒形状の炉体11内に原料融液12を充填する石英ルツボ13aと黒鉛ルツボ13bから成る二重構造のルツボ13、黒鉛ルツボ13bを周囲から加熱するヒータ14を備える。そして、ヒータ14および原料融液12からの輻射熱を遮蔽する断熱部材15を有する。この断熱部材15は、例えば裁頭円筒形状をしており、リング形状の水平部15a、立上部15bおよび取付部15cから構成される。そして、非断熱材から成る補助部材16が、水平部15aと原料融液12液面の間に介在するように付設され、炉体11内に導入される不活性ガスの流れを整流する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CZ法(Czochralski Method)による単結晶育成装置および単結晶育成方法に係り、詳しくは引き上げ単結晶インゴットの大口径化および結晶の高品質化を容易にする単結晶育成装置および単結晶育成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、シリコン(Si)、ガリウムヒ素(GaAS)等の種々の半導体結晶の多くは、いわゆるCZ法といわれる引き上げ方法により育成される。このように育成された単結晶インゴットは、種々の加工を通してスライス状の半導体ウェーハにされ半導体デバイスの基板として用いられる。
【0003】
このCZ法では、図5に示す単結晶育成装置を用いて例えばシリコンの単結晶インゴットが引き上げられる。この単結晶育成装置は、円筒形状の炉体101内に原料融液102を充填する石英ルツボ103aおよび黒鉛ルツボ103bから成る二重構造のルツボ103、黒鉛ルツボ103bを周囲から加熱するヒータ104を備える。そして、ヒータ104あるいは原料融液102からの輻射熱を遮蔽する断熱部材105が取り付けられている。この断熱部材105は、引き上げる単結晶インゴット106への上記輻射熱を遮蔽する機能を持つと共に単結晶インゴット106が貫通する開口部を備え、リング形状の水平部105a、立上部105bおよび取付部105cから構成される。
【0004】
そして、その他に、ルツボ103の回転および昇降を行うための回転軸107が備えられ、ヒータ104の外側に位置し炉体101との間に保温部材108が備えられる。また、引上げ用ワイヤ109が、単結晶インゴット106のネック上部の種結晶110を保持するシードチャック111と連結しており、炉体101上方部から垂下して単結晶インゴット106を所定の速度で引き上げるようになっている。
【0005】
上記構成の単結晶育成装置を用いた単結晶育成方法では、先ず石英ルツボ103aに多結晶シリコンおよび添加不純物等を所定量に充填し、炉体101内部に不活性ガス例えばアルゴンガスを導入し、黒鉛ルツボ103bの周囲に設けたヒータ104により加熱溶融して原料融液102にする。そして、シードチャック111に取り付けた種結晶110を原料融液102に着液し、引上げ用ワイヤ109によりシードチャック111を所定の速度で引き上げて、所要の直径および長さの単結晶インゴット106を成長させる。ここで、シードチャック111およびルツボ103は互いに同方向または逆方向に回転する。
【0006】
従来、上記単結晶育成方法において、断熱部材105は、上述したようにヒータ104あるいは原料融液102からの輻射熱を遮蔽し、引上げられる単結晶インゴット106の冷却を速めて引上げ速度をできるだけ大きくする機能を有していた。また、この断熱部材105は、炉体101に導入される不純物ガスの原料融液102面上での流れを整流化する機能を備える。
【0007】
ところで、現在、上記半導体デバイスに使用される例えばシリコンウェーハはその口径が300mmφに達し、それと共に上記引き上げの単結晶インゴットは大口径化して、その体積増大が著しくなっている。このために、上記断熱部材105の輻射熱の遮蔽機能を用いた引上げにおいて、単結晶インゴット106の内部の冷却がその表面部の冷却に比べて遅くなり、内部と表面部の間での温度差が増大している。この温度差が大きくなり結晶径方向の温度勾配が大きくなると、単結晶インゴットの径方向の導電型不純物濃度の分布、固溶酸素の不純物濃度の分布が増大、および単結晶インゴット育成中に生成する結晶欠陥の分布が不均一化するという問題が生じる。
また、単結晶インゴットは高重量化しその引き上げの安全性に問題が生じる。このために、上記問題を解決する新たな単結晶育成方法が必要になってきている。そこで、輻射熱を遮蔽する機能を有する記断熱部材105の使用方法の見直しが進められている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
上記単結晶インゴットの大口径化に対応する簡便な方法は、断熱部材105による輻射熱の遮蔽機能を調節するものである。すなわち、図5に示した断熱部材105を単結晶インゴット106に沿って上方に配置させ、例えば水平部105aと原料融液102面との距離を大きくする。このようにすることにより、断熱部材105の輻射熱の遮蔽は抑えられ、ヒータ104および原料融液102から単結晶インゴット106表面に伝搬される熱放射線量が増加する。そして、この熱放射線による輻射熱が、単結晶インゴット106表面を加熱し、その内部と表面部の間での温度差を低減するようになる。ただし、断熱部材105を必要以上に上方に配置しすぎると、単結晶インゴットが冷却され難くなりすぎて育成速度の低下等を招き、新たな問題を引き起こしてしまうので、適正な位置に配置することが重要である。
【特許文献1】特開2005−281018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記断熱部材105の上方配置は、炉体101内に導入される上記アルゴンガスの流れが乱れて上記整流化が難しくなるという問題を引き起こす。これについて、図6を参照して説明する。図6はルツボ103の上部の拡大断面図であり、図6(a)が従来の断熱部材105の配置の場合を示し、図6(b)が断熱部材105の水平部105aと原料融液102面との距離を大きくして配置した場合を示す。
【0010】
図6(a)に示すように、例えば裁頭円筒形状の断熱部材105と単結晶インゴット106の間に炉体101に導入した不活性ガス112が流入する。そして、水平部105aと単結晶インゴット106表面の間隙、融液面102aと水平部105a下部の間隙が通気路となり、融液面102aから蒸発する不純物ガス例えばSiOxのような酸化物が、この通気路を流れる不活性ガス112により矢印に示す流れに沿ってルツボ103の外部に排出される。ここで、従来の場合においては、融液面102aと水平部105a下部の間隙は狭く設定されており、不活性ガス112は上記通気路において充分な層流をなしていた。このために、上記不純物ガスは略全て排出されていた。
【0011】
しかしながら、図6(b)に示すように、上述したように単結晶インゴット106表面への熱輻射を増加させるために、断熱部材105を単結晶インゴット106の引上げ方向に沿い上方配置させると、水平部105a下部と融液面102aの離間距離が大きくなる。そして、その間隙において不活性ガスの乱流が生じ不活性ガス112の逆流成分112aが発生するようになる。この逆流成分112aが発生すると、上記不純物ガスがこの領域に停滞しその一部が凝固し固化して融液面102aに落下する。そして、この凝固物が融液対流により固液界面に運ばれて単結晶インゴット106に取り込まれるようになる。この結果、単結晶インゴットの106の有転位化等が引き起こされて、結晶の高品質化が難しくなるという問題があった。
【0012】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、単結晶インゴットの引上げ育成において、単結晶インゴットの結晶径方向の温度勾配を簡便に低減させると共に、融液面から蒸発する不純物ガスをルツボ外に効果的に排出して、引上げ単結晶の大口径化および高品質化を容易にする単結晶育成装置および単結晶育成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明にかかる単結晶育成装置は、炉体内に配置された原料融液が充填されるルツボと、該ルツボを周囲から加熱するヒータと、前記ルツボから引き上げられる単結晶インゴットに対する前記原料融液あるいは前記ヒータからの輻射熱を遮蔽する断熱部材と、を備えたチョクラルスキー法による単結晶育成装置において、前記断熱部材の下部に、前記炉体内に導入され前記原料融液面と前記断熱部材との間を流れる不活性ガスを整流する非断熱材から成る補助部材が取り付けられている構成になっている。
【0014】
上記発明により、例えばシリコン単結晶のような大口径化した単結晶インゴットの引上げ育成において、上記補助部材が、原料融液面と前記断熱部材との間を流れる不活性ガスを整流化し、融液面から蒸発するSiOxのような不純物ガスの融液面上での停滞を抑制する。このために、上記不純物ガスの凝固物の単結晶インゴットへの混入が防止され大口径で高品質の単結晶シリコンが育成される。
【0015】
また、上記補助部材は非断熱材であることから、原料融液あるいはヒータからの輻射熱は補助部材により遮蔽されなくなり、この輻射熱が、引き上げられる単結晶インゴット表面を照射し加熱してその冷却を抑制する。このために、単結晶インゴットの内部と表面部の温度差が低減し、半導体結晶の導電型を決める有効不純物あるいは固溶酸素が均一に単結晶インゴットに導入される。そして、半導体デバイスが製造される半導体ウェーハ面内におけるこれら不純物分布の均一性が向上する。
【0016】
上記発明の好適な一態様では、前記補助部材は、中空構造になっている。あるいは、前記補助部材は、耐熱性を有し熱輻射吸収が小さい物質により構成されている。ここで、前記補助部材が透光性の石英ガラスにより構成されている。
【0017】
あるいは、前記補助部材は、耐熱性を有し比熱の小さい物質により構成され、熱容量が小さい構造になっている。
【0018】
上記発明により、原料融液あるいはヒータから伝搬する熱放射線が補助部材を透過し易くなる。そして、引き上げられる単結晶インゴットの表面に上記熱放射線による輻射熱が与えられ、その冷却が高い精度で抑制できるようになる。
【0019】
そして、本発明にかかる単結晶育成方法は、炉体内に配置された原料融液が充填されるルツボと、該ルツボを周囲から加熱するヒータと、前記ルツボから引き上げられる単結晶インゴットに対する前記原料融液あるいは前記ヒータからの輻射熱を遮蔽する断熱部材と、を備えた単結晶育成装置を用いたチョクラルスキー法の単結晶育成方法において、前記断熱部材の下部に非断熱材から成る補助部材を取り付けて、前記炉体内に導入され前記原料融液面と前記断熱部材との間を流れる不活性ガスを前記補助部材により整流化すると共に、前記原料融液あるいは前記ヒータからの輻射熱を前記補助部材を通して前記引き上げられる単結晶インゴットの表面に照射する、という構成になっている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の構成により、単結晶インゴットの引上げ育成において、単結晶インゴット内部と表面部の温度差を簡便に低減させると共に、融液面から蒸発する不純物ガスを効果的にルツボ外に排出して、引上げ単結晶の大口径化および高品質化を容易にする単結晶育成装置および単結晶育成方法を提供することできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略される。ここで、図1は本実施形態にかかる単結晶育成装置内の状態を概略的に示した模式的な縦断面図である。
【0022】
本実施形態に係る単結晶育成装置10は、図1に示すように、円筒形状の炉体11内に原料融液12を充填する石英ルツボ13aと黒鉛ルツボ13bから成る二重構造のルツボ13、黒鉛ルツボ13bを周囲から加熱するヒータ14を備えている。そして、ヒータ14および原料融液12からの輻射熱を遮蔽する断熱部材15を有する。この断熱部材15は、例えば裁頭円筒形状をしており、リング形状の水平部15a、立上部15bおよび取付部15cから構成される。この断熱部材15は、例えば熱伝導率が小さく断熱性に優れた黒鉛基材から成り、その表面は炭化珪素(SiC)等により被覆されている。
【0023】
そして、断熱部材15の水平部15aの下部に補助部材16が、水平部15aと原料融液12液面の間に介在するように付設される。この補助部材16は、ヒータ14および原料融液12からの輻射熱を遮蔽する機能がない非断熱材から成る。そして、その構成物質は、耐熱性があり熱輻射吸収の小さなもの、あるいは、比熱の小さなものがよい。熱輻射吸収の小さな物質は、熱放射線を透過し易い耐熱性のある石英ガラスのようなガラス類、あるいは吸収してもその二次放射が生じ易いもので例えばSiC膜のようなものである。また、熱容量が小さく蓄熱しにくい構造にすると好適である。
【0024】
上記断熱部材15と補助部材16について図2を参照して更に説明する。図2は断熱部材15を拡大し一部を切欠した斜視図である。リング形状の水平部15aの外周縁部に円筒状の立上部15bが取り付けられている。そして、図示していないが立上部15bの上面に取付部15cが固定して取り付けられる。この補助部材16は、単結晶インゴット17が貫通するための開口部を有したリング形状をしており、水平部15aの下部にそのリング幅が同一になるように取り付けられると好適である。この補助部材16は、その外表面が滑らかで不活性ガスの流れに乱れを生じさせない中空構造になっていると好適である。例えば、補助部材16は、中空部16aを有した例えばSiC膜により構成される。このような補助部材16は、水平部15aの下部に着脱自在に付設されるようになっていてもよい。
【0025】
そして、単結晶育成装置10内部の他の部位は従来の場合と同様である。回転軸18、保温部材19が備えられ、引上げ用ワイヤ20が、単結晶インゴット17のネック上部の種結晶21を保持するシードチャック22と連結し、炉体11上方部から垂下して単結晶インゴット17を所定の速度で引き上げるようになっている。
【0026】
単結晶育成装置10を用いた単結晶育成方法では、先ず石英ルツボ13aに多結晶シリコンおよび添加不純物等を所定量に充填し、炉体11内部に不活性ガス例えばアルゴンガスを導入し、黒鉛ルツボ13bの周囲に設けたヒータにより加熱溶融して原料融液12にする。そして、シードチャック22に取り付けた種結晶21を原料融液12に着液し、引上げ用ワイヤ20によりシードチャック22を所定の速度で引き上げて、所要の直径および長さの単結晶インゴット17を成長させる。ここで、断熱部材15の水平部15aの下部には非断熱材から成る補助部材16を取り付け、原料融液12の表面と水平部15aの間を流れる上記不活性ガスを補助部材16により整流化する。そして、原料融液12あるいはヒータ14からの輻射熱を補助部材16を通して、引き上げられる単結晶インゴット17表面に照射しその表面部を加熱させる。なお、上記単結晶インゴット17の引上げ育成では、シードチャック22およびルツボ13は互いに同方向または逆方向に回転させる。
【0027】
次に、図3を参照して、本実施形態の効果について説明する。図3は断熱部材15の水平部15aの下部に補助部材16を付設し、水平部15aと原料融液12面との距離を大きくしたところの拡大図である。
【0028】
図3に示すように、例えば裁頭円筒形状の断熱部材15と単結晶インゴット17の間に不活性ガス23が流入する。そして、水平部15aと単結晶インゴット17表面の間隙、融液面12aと補助部材16の間隙が通気路となり、融液面12aから蒸発する不純物ガス例えばSiOxのような酸化物が、この通気路を流れる不活性ガスにより矢印に示す流れに沿ってルツボ13の外部に排出される。ここで、融液面12aと補助部材16の間隙は狭く設定されており、不活性ガス23は上記通気路において充分な層流になる。このために、上述したSiOxのような不純物ガスは全て排出される。そして、従来の技術で説明したこの不純物ガスの凝固物に起因した単結晶インゴット17の有転位化の問題は解消される。
【0029】
また、補助部材16は非断熱材であり、水平部15aと融液面12aの間にあって、原料融液12およびヒータ14からの輻射熱の遮蔽が小さい。このために、原料融液12面およびヒータ14からの輻射熱の照射により、引上げ時の単結晶インゴット17表面が加熱され表面部の温度の冷却が抑制される。そして、単結晶インゴット径方向の温度勾配が小さくなり、半導体結晶の導電型を決める有効不純物や固溶酸素あるいは単結晶インゴット育成時に生成する結晶欠陥が均一に単結晶インゴットに導入できるようになる。
【0030】
なお、上記単結晶インゴット17の引上げ育成においては、その引き上げ速度を調節する。例えば、固液界面から1300℃程度までの温度範囲における引上げ軸方向の温度勾配を考慮した引上げ速度の調整、あるいは1100℃〜1000℃の温度範囲における引上げ速度の調整、等を行う。このようにして、格子空孔、格子間シリコン等の点欠陥あるいは格子間酸素に起因する結晶欠陥を低減させることにより、半導体結晶は更に高品質化する。
【0031】
図4に上記実施形態の一変形例を示す。図4では補助部材16の底面が傾斜する形状になり、融液面12aとの間隙Wはこの通気路の下流側に向かって広がっている。このような形状にすることにより、融液面12aで蒸発するSiOxのような不純物ガスの排出が促進される。このように、補助部材16の形状は種々のものが考えられる。いずれの形状であっても、補助部材16は、断熱部材15の水平部15aの下部にあり融液面12aとの間隙Wを適度に有し、この通気路を流れる不活性ガスを整流する。しかも、この補助部材16は非断熱材から成り、低い熱輻射吸収の特性を有し、原料融液12およびルツボ13からの輻射熱の遮蔽が小さく、引き上げ単結晶インゴット17の表面を輻射熱により加熱する機能を有する。このような機能を有するものであればどのようなものであっても構わない。
【0032】
以下、本発明を実施例について具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0033】
図1に示したような単結晶育成装置を用いて、直径300mmφのシリコン単結晶インゴットを育成した。ここで、補助部材16は、化学気相成長(CVD)法によるSiC膜の成膜を用いて中空構造に成形して形成し、断熱部材15の水平部15a下部に付設した。また、原料の多結晶シリコンの投入量を200kgとした。そして、断熱部材15の水平部15aの底面と融液面12aの離間距離を80mmとし、補助部材16の底面と融液面12aとの間隙Wを10mm〜30mmにした。そして、後は通常の引上げ方法により、シリコン単結晶インゴットは、いわゆるネック部、ショルダー部、ボディ部およびテール部の順に育成した。このようにして、直胴部の長さが830mm、口径300mmφになる無転位で高品質化したシリコン単結晶が得られた。
【0034】
(比較例)
比較例として、本発明の補助部材16を断熱部材15の水平部15aに付設しない状態にし、その他の条件は実施例の場合と全く同一にしてシリコン単結晶インゴットを引上げ育成した。この場合は、直胴部の長さが600mm、口径300mmφで有転位化したシリコン単結晶になった。
【0035】
上記実施例の場合と比較例の場合における不活性ガスの流れについて計算機シミュレーションを行った。その結果、本実施例の場合には、融液面12aと補助部材16の間隙における通気路における不活性ガスは整流され逆流はなかった。これに対して、比較例の場合には、融液面12aと断熱部材15の水平部15aの間隙における通気路で不活性ガスの逆流現象が生じることが確認できた。
【0036】
上記実施形態では、単結晶インゴットの引き上げ育成における単結晶インゴット径方向の温度勾配の低減も含めて、従来の技術で説明した問題は全て解消し、単結晶インゴットの大口径化および結晶の高品質化が極めて容易になる。
【0037】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上述した実施形態は本発明を限定するものでない。当業者にあっては、具体的な実施態様において本発明の技術思想および技術範囲から逸脱せずに種々の変形・変更を加えることが可能である。
【0038】
例えば、上記実施形態では、断熱部材15が裁頭円筒形状の場合について説明しているが、断熱部材15の形状は、逆円錐台形状、裁頭円錐形状等、種々のものがある。いずれの形状の断熱部材であってもその下端部に上述した補助部材を取り付ければよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態にかかる単結晶育成装置を概略的に示した縦断面図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる補助部材が付設された断熱部材の一部を切欠した斜視図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる補助部材が付設された断熱部材の効果を示す拡大断面図である。
【図4】本発明の実施形態の一変形例の補助部材が付設された断熱部材の効果を示す拡大断面図である。
【図5】従来の技術にかかる単結晶育成装置を概略的に示した縦断面図である。
【図6】従来の技術にかかる断熱部材の不活性ガスの流れを示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0040】
10 単結晶育成装置
11 炉体
12 原料融液
13 ルツボ
13a 石英ルツボ
13b 黒鉛ルツボ
14 ヒータ
15 断熱部材
15a 水平部
15b 立上部
15c 取付部
16 補助部材
16a 中空部
17 単結晶インゴット
18 回転軸
19 保温部材
20 引上げワイヤ
21 種結晶
22 シードチャック
23 不活性ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉体内に配置された原料融液が充填されるルツボと、該ルツボを周囲から加熱するヒータと、前記ルツボから引き上げられる単結晶インゴットに対する前記原料融液あるいは前記ヒータからの輻射熱を遮蔽する断熱部材と、を備えたチョクラルスキー法による単結晶育成装置において、
前記断熱部材の下部に、前記炉体内に導入され前記原料融液面と前記断熱部材との間を流れる不活性ガスを整流する非断熱材から成る補助部材が取り付けられていることを特徴とする単結晶育成装置。
【請求項2】
前記補助部材は、中空構造になっていることを特徴とする請求項1に記載の単結晶育成装置。
【請求項3】
前記補助部材は、耐熱性を有し熱輻射吸収が小さい物質により構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の単結晶育成装置。
【請求項4】
前記補助部材は、透光性の石英ガラスにより構成されていることを特徴とする請求項3に記載の単結晶育成装置。
【請求項5】
前記補助部材は、耐熱性を有し比熱の小さい物質により構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の単結晶育成装置。
【請求項6】
前記補助部材は、熱容量が小さい構造になっていることを特徴とする請求項2ないし5のいずれか一項に記載の単結晶育成装置。
【請求項7】
炉体内に配置された原料融液が充填されるルツボと、該ルツボを周囲から加熱するヒータと、前記ルツボから引き上げられる単結晶インゴットに対する前記原料融液あるいは前記ヒータからの輻射熱を遮蔽する断熱部材と、を備えた単結晶育成装置を用いたチョクラルスキー法の単結晶育成方法において、
前記断熱部材の下部に非断熱材から成る補助部材を取り付けて、前記炉体内に導入され前記原料融液面と前記断熱部材との間を流れる不活性ガスを前記補助部材により整流化すると共に、前記原料融液あるいは前記ヒータからの輻射熱を前記補助部材を通して前記引き上げられる単結晶インゴット表面に照射させることを特徴とする単結晶育成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−261868(P2007−261868A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88575(P2006−88575)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(507182807)コバレントマテリアル株式会社 (506)
【Fターム(参考)】