説明

単結晶製造装置およびリチャージ方法

【課題】チョクラルスキー法によるシリコン等の単結晶の製造において、1回のリチャージで供給できる固形状多結晶原料の総量を増やし、高い生産性を実現することが可能な単結晶製造装置およびリチャージ方法を提供する。
【解決手段】ルツボ101内面側に配置された輻射シールド125と、輻射シールド125内面側および上面側を覆う輻射シールドカバー301を有する単結晶製造装置100において、リチャージ管201に充填された固形状多結晶原料155は、リチャージ管201下端外縁部とリチャージ管201下端に配置される底蓋203との隙間から、自重により輻射シールドカバー301上に落下し、輻射シールド301表面の傾斜を滑ることにより落下エネルギーが低下した状態で、結晶融液105を貯留する石英ルツボ101内に落下する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形状原料のリチャージ機構を有するチョクラルスキー法(CZ法)単結晶製造装置およびリチャージ方法に関し、特に、リチャージ管リチャージ法により固形状原料を供給するリチャージ機構を有するチョクラルスキー法(CZ法)単結晶製造装置およびリチャージ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶、例えばシリコン単結晶の製造方法として、いわゆるチョクラルスキー法(CZ法)が知られている。この方法では、育成炉内に設置されたルツボに固形状のシリコン原料を収容し、ヒータを高温加熱してルツボ内の原料を融液とする。そして、原料融液面に種結晶を着液させ、種結晶の下方に所望の直径と品質とを有する単結晶を育成する。
もっとも、シリコン単結晶育成前にルツボに固形状のシリコン原料を隙間なく収容した場合でも、シリコン原料は溶融することで隙間がなくなり、必ずルツボの容積に若干の余裕が生ずる。一般にCZ法による結晶育成時に使用されるルツボは使い捨てであるため、ひとつのルツボで育成する結晶重量を増加させるほど、全体的なコスト削減につながることは以前からよく知られている。しかしながら、ルツボへ最初に固形状のシリコン原料を収容する際のシリコン原料を増加させることは既に限界に達している。そこで、最初に固形状のシリコン原料を一度溶融した後、シリコン融液に固形状のシリコン原料を追加供給することでルツボの容積を有効利用し、よって、育成する結晶重量を増加させる方法が提案されてきた。この技術はリチャージ技術と呼ばれる。
【0003】
また、従来は、1回の操業で1本の単結晶を引上げる1本引き操業が広く用いられているが、複数の単結晶を引上げるマルチ引き操業も、上記のリチャージ技術の応用により次第に増える傾向にある。すなわち、例えば、1本のシリコン単結晶を引き上げた後、減少したシリコン融液に固形状のシリコン原料を追加供給して、2本目以降のシリコン単結晶を引き上げるのである。このようなマルチ引き操業も、一度しか使用できないルツボから複数本の単結晶を製造し、単結晶の生産性を向上させるとともに、高価なルツボを有効に活用して、単結晶製造コスト削減を図ることを目的としている。
【0004】
これらの、シリコン融液上に固形状のシリコン原料を追加供給するリチャージ技術の中で、実用性の観点から注目されている技術の一つとして、リチャージ管リチャージ法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
図8は従来技術のリチャージ管リチャージ法で用いられるシリコン単結晶製造装置を説明する模式的縦断面図である。図8に示すように、シリコン単結晶製造装置100にはリチャージ装置が設けられている。そして、このリチャージ装置は、固形状シリコン多結晶原料155が充填されるリチャージ管201を構成要素とする筒状の原料容器200、この筒状の原料容器200を吊り下げるワイヤ129、ワイヤ129を巻き上げる引上げモータ141で構成されている。そして、ワイヤ129は原料容器200の中心を通り、原料容器200の底蓋203の中心で固定されている。原料容器200全体は、この底蓋203がリチャージ管201の下端を支えることによって、保持されている。
そして、リチャージ管201に充填された固形状シリコン多結晶原料155は、原料容器200が石英ルツボ101にむけて下降し、図9に示すようにストッパ205がサブチャンバ127の内壁に設けられたフリンジ128に掛け止めされた後、さらに底蓋203のみが降下し、隙間210が生ずることによって、石英ルツボ101のシリコン融液105面へと供給される構成になっている。
【0005】
近年、単結晶の大口径化が進み、特にシリコン単結晶では、Φ300mm(12インチ)結晶製造が主流になりつつある。そして、このような大口径シリコン単結晶において高い生産性を実現するためには、リチャージ管201に充填する固形状多結晶原料155の重量を増やしリチャージ回数をできるだけ少なくする必要がある。このため、リチャージ管201の口径も大口径化することが図られている。
もっとも、引上げ単結晶の温度コントロールにより高品質結晶を得るために、単結晶製造装置100内には輻射シールド125が、引上げ単結晶周囲を取り巻く形で設置されている。そこで、通常、リチャージ管201の最大径は図8、図9に示されるように輻射シールド125の内径より十分小さく抑えられている。このように、リチャージ管201の最大径を制限する理由は以下の通りである。
【0006】
固形状多結晶シリコン原料155の供給は、リチャージ管201の先端が、輻射シールド125の下端より低い位置で行なわれる必要があった。これは固形状多結晶シリコン原料155の供給の際、固形状多結晶シリコン原料155が直接輻射シールド125に衝突することを回避する為であった。このように、衝突を回避するのは、石英ルツボ101やシリコン融液105の輻射熱を遮断するために、輻射シールド125は、断熱性の高い物質、すなわち、例えば、モリブデン、タングステン、タンタル等の金属や、カーボン、カーボンの表面を炭化ケイ素で被覆したもの等が使われる。そして、これらの金属元素や、カーボンが落下してくる固形状シリコン多結晶原料155の衝撃により不純物としてシリコン融液105中に取り込まれると、シリコン単結晶に転位が発生する要因となるからである。
また、リチャージ管201の内径を輻射シールド125の内径より大きくすると、図9に示すようにリチャージ管201を輻射シールド下端まで挿入することが不可能になり、必然的に固形状多結晶シリコン155供給時のリチャージ管201下端のシリコン融液面あるいは固化面106からの位置が高くなる。そうすると、供給される固形状多結晶シリコン原料155の落下エネルギーが大きくなり、シリコン融液飛び跳ねや、固形面から跳ね返った固形状多結晶シリコン原料155による石英ルツボ損壊等の問題が生ずる恐れも有る。
【特許文献1】特再2002−068732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の理由から、リチャージ管201の内径には、輻射シールドの内径に起因する制約があった。したがって、さらに、リチャージ管に充填する固形状原料の重量を増やすためには、リチャージ管の長さを長くするというアプローチが取られていた。
しかしながら、リチャージ管の長さを長くすることは、リチャージ管最上部に充填される固形状多結晶シリコン原料の落下エネルギーを増大させる。したがって、リチャージ管の下部にクラック、カケ等の破損が生ずるという問題が顕在化してきた。
【0008】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その目的とするところは、1回のリチャージで供給できる固形状原料の総量を増やし、高い生産性を実現することが可能な単結晶製造装置およびリチャージ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の単結晶製造装置は、
結晶融液を貯留するルツボに、リチャージ管に充填された固形状原料を、前記リチャージ管下端外縁部と前記リチャージ管下端に配置される底蓋との隙間から供給するリチャージ機構を有する単結晶製造装置であって、
前記ルツボ内面側に配置された輻射シールドと、
前記輻射シールド内面側および上面側を覆う輻射シールドカバーを有することを特徴とする単結晶製造装置である。
【0010】
ここで、前記リチャージ管下端の内径が、前記輻射シールドの最小内径よりも大きいことが望ましい。
【0011】
ここで、前記輻射シールドカバーが透明石英により形成されていることが望ましい。
【0012】
本発明の一態様のリチャージ方法は、
結晶融液を貯留するルツボに、リチャージ管に充填された固形状原料を供給するリチャージ方法であって、
前記リチャージ管から前記固形状原料を、輻射シールド内面側および上面側を覆う輻射シールドカバー上に落下させることによって前記ルツボに前記固形状原料を供給するステップを有することを特徴とするリチャージ方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、リチャージ管の内径を増大させることにより、1回のリチャージで供給できる固形状原料の総量を増やし、高い生産性を実現することが可能な単結晶製造装置およびリチャージ方法を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る単結晶製造装置およびリチャージ方法についての実施の形態につき、添付図面に基づき説明する。なお、ここでは単結晶として、シリコン単結晶を製造する場合を例として記載する。
【0015】
[実施の形態]
(単結晶製造装置)
最初に、実施の形態で用いられるシリコン単結晶製造装置の構成について説明する。
図1は、本実施の形態で用いられるシリコン単結晶製造装置の模式的縦断面図である。
図1に示すシリコン単結晶製造装置は、原料となる多結晶シリコンが充填されるルツボ101、103、多結晶シリコンを加熱、溶融しシリコン融液105とするための主ヒータ107および、下部ヒータ109がチャンバ111内に格納されている。
【0016】
なお、上記ルツボ101、103は、内側にシリコン融液105を直接収容する石英ルツボ101と、石英ルツボ101を外側で支持するためのカーボンルツボ103とから構成されている。ルツボ101、103は、シリコン単結晶製造装置の下部に取り付けられた回転駆動機能(図示せず)によって回転昇降自在なルツボシャフト113によって支持されている。
ルツボ101、103を取り囲むように主ヒータ107および、下部ヒータ109が配置されており、主ヒータ107の外側には、主ヒータ107からの熱がチャンバ111に直接輻射されるのを防止するための第1の保温材115、第2の保温材117が主ヒータ107の周囲を取り囲むように設けられている。加えて、シリコン融液105やルツボ101、103からの熱がチャンバ111に直接輻射されるのを防止するための第3の保温材119、第4の保温材121が設けられている。そして、シリコン融液105やルツボ101、103からの熱が引上げシリコン単結晶の冷却を阻害しないように輻射シールド125が、シリコン融液105、ルツボ101、103とシリコン単結晶間に設けられている。なお、保温材115、117の材質については、特に保温性に優れているものを使用することが望ましく、通常成形断熱材が用いられている。保温材119、121の材質については、例えば、成形断熱材、カーボン、あるいはカーボンの表面を炭化ケイ素で被覆したものが用いられている。輻射シールド125については、輻射熱を調整する役目を果たしているので、断熱性の高い材質、例えば、モリブデン、タングステン、タンタル等の金属や、カーボン、カーボンの表面を炭化ケイ素で被覆したもの及びこれらの内側に成形断熱材を設置したものが用いられる。
【0017】
本実施の形態の単結晶製造装置は、輻射シールド125の内面側および上面側を覆うように輻射シールドカバー301が設けられていることを特徴とする。この輻射シールドカバー301は、原料容器200から供給される固形状多結晶シリコン原料155が輻射シールド125に衝突することを防止している。
【0018】
なお、この輻射シールドカバー301はシリコン融液105中に入っても比較的シリコン単結晶の品質に影響を与えない物質、すなわち、例えば、シリコン、石英等で形成されていることが望ましい。
そして、熱透過性が高くチャンバ111内の熱環境を変化させないため、既存の単結晶製造装置に容易に取り付けられるという観点からは透明石英で形成されていることが望ましい。
【0019】
さらに、輻射シールドカバー301の水平面に対する最大傾斜角は、図1に示すように、輻射シールドの水平面に対する最大傾斜角よりも小さいことが望ましい。なぜなら、このようにテーパを持たせることにより、供給される固形状シリコン多結晶原料155の落下エネルギーを低下させ、シリコン融液105の飛び跳ねや衝撃による石英ルツボ損壊の問題等を抑制することが可能になるからである。
また、輻射シールドカバー301下端からシリコン融液105までの距離は、飛び跳ねや衝撃による石英ルツボ損壊を防止するため十分短くするよう設計されることが望ましく、400mm以下であることが特に望ましい。
【0020】
なお、チャンバ111は、ステンレス等の耐熱性、熱伝導性に優れた金属により形成されており、冷却管(図示せず)を通して水冷されている。
さらに、チャンバ111上部にはゲートバルブ135を介して、シリコン融液105から引上げられたシリコン単結晶や後述する原料容器200を保持して取り出すためのサブチャンバ127が設けられている。また、サブチャンバ127上端は天板147により封鎖されている。そして、引上げられたシリコン単結晶の取り出しや後述する原料容器200を取り出し可能にするサブチャンバの蓋(図示せず)がサブチャンバ上方側面に設けられている。
そして、サブチャンバ127上部には、引上げモータ141を設けている。引上げモータ141は、ワイヤ129を上下動自在に保持しており、ワイヤ129は天板147を通して、サブチャンバ127の中心軸に沿って吊り下げられている。ワイヤ129の下端には、シリコン単結晶引上げ工程の際には図2に示すように種結晶131が吊り下げられ、リチャージ工程の際には図1に示すように、原料容器200が吊り下げられる。
【0021】
次に、リチャージ装置について説明する。まず、本発明で用いられうるリチャージ装置においては、図1に示すように、原料容器200がワイヤ129により吊り下げられる。原料容器200は、リチャージ管201と底蓋203およびリチャージ管201をサブチャンバ127の中心軸に安定させるためにワイヤ129を通すリング204から構成されている。ワイヤ129は底蓋203の中心部に固定されており、リチャージ管201は、底蓋203によって保持されている。また、リチャージ管201上部外周には、リチャージ管201をサブチャンバ127に設けられたフランジ128で掛け止めするためのストッパ205が設けられている。
【0022】
そして、本実施の形態において、リチャージ管201下端の内径は、輻射シールド125の最小内径と略同一あるいは同一以上であることを特徴とする。これにより、原料容器200に充填される固形状シリコン多結晶原料の量を従来に比較して増加させることが可能となる。特に、リチャージ管201下端の内径は、輻射シールド125の最小内径より大きくすること望ましい。これにより、従来に比べ大幅にリチャージ管201に充填できる固形状シリコン多結晶原料155を増加させることが可能となるからである。
また、リチャージ管201下端の内径は、輻射シールドカバー301の傾斜部の外径よりも小さいことが望ましい。なぜなら、落下する固形状多結晶シリコン原料151が、石英ルツボ内に供給されない恐れが高いからである。
ここで、リチャージ管201および底蓋203は、シリコン融液105と接近するため、耐熱性に優れるほか、ウェーハを汚染しないものとすることが好ましく、加工性に優れ比較的安価な点から石英が好ましいが、炭化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることが出来る。
【0023】
(リチャージ方法)
次に、上記のように構成されたシリコン単結晶製造装置を用いたリチャージ方法について図1乃至図7を用いて説明する。
【0024】
まず、シリコン単結晶製造装置100は、ゲートバルブ135を開き、サブチャンバ127の上方側面に設けられた蓋(図示せず)を閉じた状態にしておく。
次に、チャンバ111およびサブチャンバ127の内部を不活性ガスで置換した後、Ar等の不活性ガスを流した状態で低圧に保つ。その後、ヒータ107,109を加熱することにより、予め石英ルツボ101の内部に投入されている固形状多結晶シリコン原料(図示せず)を溶融し、シリコン融液105とする。
次に、図2に示すように、ゲートバルブ135を閉め、チャンバ111とサブチャンバ127と遮断する。これにより、チャンバ111内を不活性雰囲気に保持しシリコン融液105の酸化を防止した状態で、サブチャンバ127を常圧に戻す。その後、サブチャンバ127の蓋(図示せず)を開き、ワイヤ129の下端に種結晶131を吊り下げる。そして、ワイヤ129の下端に種結晶131を吊り下げた後、サブチャンバ127の蓋(図示せず)を閉じ、サブチャンバ127を密閉する。
【0025】
その後、サブチャンバ127を減圧し、サブチャンバ127内部をAr等の不活性雰囲気で満たす。次に、ゲートバルブ135を開き、チャンバ111とサブチャンバ127を連通する。この状態で、種結晶131はシリコン融液105の真上に位置するため、シリコン融液105の輻射熱により予熱される。
次に、引上げモータ141を駆動し、ワイヤ129下端に吊り下げられた種結晶131を降下させ、種結晶131の少なくとも一部をシリコン融液105に浸す。種結晶131がシリコン融液105に浸されると、図3に示すように種結晶131下方に徐々にシリコン単結晶123が成長する。そして、シリコン単結晶123が成長するに従い、所定速度で種結晶131を引上げることにより、所望の直径および長さを有するシリコン単結晶インゴット150を引上げることが可能となる。
その後、成長したシリコン単結晶インゴット150を、図4に示すようにサブチャンバ127まで上昇させる。そして、ゲートバルブ135を閉じ、チャンバ111とサブチャンバ127とを遮断する。これにより、チャンバ111内を不活性雰囲気に保持し、シリコン融液105の酸化を防止した状態で、サブチャンバ127を常圧に戻す。その後、サブチャンバ127の蓋を開き、シリコン単結晶インゴット150を取り出す。このようにして、1本目のシリコン単結晶インゴット150の製造工程が終了する。
【0026】
次に、単結晶製造装置外で、リチャージする原料となる固形状多結晶シリコン原料155を原料容器200に充填した後に、サブチャンバ127の蓋を開き、図5に示すように原料容器200をワイヤ129に吊り下げる。
次に、サブチャンバ127の蓋を閉じサブチャンバ127を密閉する。その後、サブチャンバ127を減圧し、サブチャンバ127内部を不活性雰囲気で満たす。
次に、ゲートバルブ135を開き、チャンバ111とサブチャンバ127内を連通させる。この状態で引上げモータ141を駆動させ、ワイヤ129と共に原料容器200を下降させる。
原料容器200が下降していくと、図1に示すように、ストッパ205がフランジ128に接触する。これから更にワイヤ129を下降させると、フランジ128によりリチャージ管201の下降が阻止され、図6に示すように、底蓋203のみが更に下降する。そうすると、リチャージ管201下端外縁部と底蓋203との間に、隙間210が生じ、この隙間210から、固形状多結晶シリコン原料155が、自重により輻射シールドカバー301上に落下し、輻射シールド301表面の傾斜を滑って、石英ルツボ101内に落下する。
【0027】
このように、固形状多結晶シリコン原料155が、輻射シールドカバー301上に落下し、輻射シールド301表面の傾斜を滑ることにより、上述したように固形状多結晶シリコン原料155の落下エネルギーが低下する。したがって、従来技術に比べ、固形状多結晶シリコン155供給時のリチャージ管201下端のシリコン融液面あるいは固化面106からの位置が高くなったとしても、シリコン融液飛び跳ねや、石英ルツボ損壊等の問題を抑制することが可能になる。
【0028】
ここで、固形状多結晶シリコン原料155の石英ルツボ101内への落下は、ヒータ107,109を制御してチャンバ内温度を低下させ、石英ルツボ内の残余シリコン融液105の表面が固化した状態で行なわれることが望ましい。なぜなら、表面を固化させることにより、シリコン融液105の飛び跳ねによる飛沫がチャンバ内の部品に付着し部品寿命を短くするという問題を回避できるからである。
【0029】
リチャージ管127内部に装填されたすべての固形状多結晶シリコン原料155が、石英ルツボ101内に投入された後、ワイヤ129を上昇させる。すると、ワイヤ127と底蓋203が上昇する。そして、更にワイヤ129を上昇させることにより、底蓋203に保持されたリチャージ管201が、底蓋203と一体となって上昇する。
なお、リチャージ管127内部に装填されたすべての固形状多結晶シリコン原料155が、石英ルツボ101内に投入された後、シリコン融液105の表面固化のために、下げていたチャンバ111内温度を、ヒータ107,109を制御することによって上昇させ、石英ルツボ101内に投入した固形状多結晶シリコン原料155を溶融する。
そして、図7に示すように原料容器200が、サブチャンバ127まで完全に上昇した後に、ゲートバルブ135を閉め、チャンバ111とサブチャンバ127を遮断する。これにより、チャンバ111内を不活性雰囲気に保持し、シリコン融液105の酸化を防止した状態で、サブチャンバ127の蓋を開き、サブチャンバ127内を常圧に戻す。その後、原料容器200を単結晶製造装置100外部に取り出しリチャージ工程が完了する。
【0030】
上記のシリコン単結晶インゴット150の製造工程とリチャージ工程を繰り返すことにより、石英ルツボ101を交換することなく2本目以降のシリコン単結晶インゴットを連続して製造することが可能となる。
【0031】
ここで、上記記載した実施の形態においては、単結晶としてシリコン単結晶を例として記載したが、本発明の適用は、必ずしもシリコン単結晶に限られず、チョクラルスキー(CZ)法を用いて引上げられる単結晶であれば、例えば、GaAs単結晶、InP単結晶等の単結晶についても適用することが可能である。
【0032】
なお、ここではリチャージ管に充填される固形状原料として、シリコン多結晶原料を例として記載したが、固形状原料は必ずしも多結晶に限られず、単結晶であっても両方であっても構わない。また、シリコン以外の単結晶を引上げる場合であっても、多結晶、単結晶あるいは両方を固形状原料として用いることができるのは同様である。
【0033】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。実施の形態の説明においては、単結晶製造装置、リチャージ装置、リチャージ方法等で、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる単結晶製造装置、リチャージ装置、リチャージ方法等に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての単結晶製造装置およびリチャージ方法は、本発明の範囲に包含される。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しつつ説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
【0035】
本実施例においては、図1に示した構成を有するシリコン単結晶製造装置およびリチャージ装置を用いた。
まず、内径600mm(24インチ)の石英ルツボ101を使用した。そして、205mm(8インチ)単結晶用のカーボンから形成される、最小内径240mmの輻射シールド125がこの石英ルツボ101に設けられた。この輻射シールド125内面側および上面側を覆う厚さ5.0mmの透明石英で形成される輻射シールドカバー301が設けられた。
【0036】
そして、原料容器200のリチャージ管201は、内径φ270mm、長さ1400mmのサイズを用いた。このリチャージ管201により、従来、輻射シールド125の内径からくる制約のため、内径φ200mm、長さ1400mmであったリチャージ管に比べ、1.5倍すなわち重量60kgの固形状多結晶シリコン原料を充填することが可能となった。
そして、輻射シールドカバー301下端からシリコン融液105までの距離は、300mmとした。
【0037】
以上の構成により、リチャージ作業を行った。シリコン飛沫のチャンバ内の部品への付着、石英ルツボの衝撃による破損、リチャージ後の引上げシリコン単結晶の転位等の問題は顕在化しなかった。
そして、従来の内径φ200mmリチャージ管の場合は、60kgの固形状シリコン多結晶原料をリチャージするためには、2度のリチャージ作業が必要であった。しかし、本実施例の内径φ270mmリチャージ管の使用により1度のリチャージ作業に短縮でき、時間にして90分の作業時間短縮が実現された。
【0038】
このように、実施例において、従来より大口径のリチャージ管を有する本発明の単結晶製造装置およびリチャージ方法において、高い生産性を実現できることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施の形態1および実施例のシリコン単結晶製造装置の模式的縦断面図である。
【図2】実施の形態1および実施例のシリコン単結晶製造装置の模式的縦断面図である。
【図3】実施の形態1および実施例のシリコン単結晶製造装置の模式的縦断面図である。
【図4】実施の形態1および実施例のシリコン単結晶製造装置の模式的縦断面図である。
【図5】実施の形態1および実施例のシリコン単結晶製造装置の模式的縦断面図である。
【図6】実施の形態1および実施例のシリコン単結晶製造装置の模式的縦断面図である。
【図7】実施の形態1および実施例のシリコン単結晶製造装置の模式的縦断面図である。
【図8】従来技術のシリコン単結晶製造装置の模式的縦断面図である。
【図9】従来技術のシリコン単結晶製造装置の模式的縦断面図である。
【符号の説明】
【0040】
101 石英ルツボ
105 シリコン融液
106 固化面
111 チャンバ
125 輻射シールド
127 サブチャンバ
129 ワイヤ
135 ゲートバルブ
141 引上げモータ
155 固形状多結晶シリコン原料
200 原料容器
201 リチャージ管
203 底蓋
210 隙間
301 輻射シールドカバー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶融液を貯留するルツボに、リチャージ管に充填された固形状原料を、前記リチャージ管下端外縁部と前記リチャージ管下端に配置される底蓋との隙間から供給するリチャージ機構を有する単結晶製造装置であって、
前記ルツボ内面側に配置された輻射シールドと、
前記輻射シールド内面側および上面側を覆う輻射シールドカバーを有することを特徴とする単結晶製造装置。
【請求項2】
前記リチャージ管下端の内径が、前記輻射シールドの最小内径よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の単結晶製造装置。
【請求項3】
前記輻射シールドカバーが透明石英により形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の単結晶製造装置。
【請求項4】
結晶融液を貯留するルツボに、リチャージ管に充填された固形状原料を供給するリチャージ方法であって、
前記リチャージ管から前記固形状原料を、輻射シールド内面側および上面側を覆う輻射シールドカバー上に落下させることによって前記ルツボに前記固形状原料を供給するステップを有することを特徴とするリチャージ方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−254162(P2007−254162A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76585(P2006−76585)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000221122)東芝セラミックス株式会社 (294)
【Fターム(参考)】