説明

単結晶製造装置及び単結晶製造方法

【課題】 不慮の事故等でルツボ内の原料融液がルツボ外に流出し、ペデスタルに沿って流れ落ちた場合であっても、ペデスタル下方の金属部に融液が達するのを確実に防ぎ、装置の損傷や事故の発生を未然に抑制できる単結晶製造装置及び単結晶製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 原料融液を保持するためのルツボと、該ルツボを支持し、昇降可能であるペデスタルと、該ペデスタルを介して前記ルツボを回転させるためのルツボ回転軸と、前記ルツボの下方に配置され、前記ペデスタルを囲繞するようにセンタースリーブが設けられた湯漏れ受けを具備するCZ法による単結晶製造装置であって、前記ペデスタルの外周部に、前記ルツボから漏れ出した前記原料融液が滴り落ちることを抑止するための溝が2以上設けられたものであることを特徴とする単結晶製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CZ法(チョクラルスキー法)による単結晶製造装置において、ルツボから原料融液が漏れ出し、ペデスタルに沿って融液が流れ落ちた際に、ルツボ回転軸等の金属部に融液が到達するのを抑止できる単結晶製造装置及び単結晶製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
まず、CZ法による単結晶の製造方法について説明する。図3に、従来の単結晶製造装置の概略断面図を示す。
【0003】
図3に示される単結晶製造装置101は、単結晶の原料である原料融液104を収容するルツボ102が配置されるメインチャンバー109aと、メインチャンバー109aに連接して原料融液104から引き上げられた単結晶105を保持し取り出すためのプルチャンバー109bを具備する。
【0004】
メインチャンバー109aの内部中心付近に、原料融液104を収容したルツボ102が配置され、該ルツボ102の周りに備えられた加熱ヒーター103を発熱させることで原料を融解し、高温の原料融液104として保持している。また、加熱ヒーター103の外周には、加熱ヒーターによる熱を外へ逃がさないようにするとともにメインチャンバー109aを保護するために保温筒107が設けられている。
【0005】
引上げ軸106によって引き上げられて成長する単結晶105の種結晶108がシリコン単結晶である場合は、原料融液104を直接保持するルツボは石英ルツボ102aであり、この石英ルツボ102aは高温で軟化し、また脆く壊れやすいため石英ルツボ102aの外側は黒鉛ルツボ102bで支持されている。
【0006】
そして、CZ法による単結晶の育成では、ルツボ102と種結晶108を互いに反対方向に回転させながら結晶を成長させることから、この黒鉛ルツボ102bの下部には、ルツボ102を支持するためのペデスタル110及び該ペデスタル110を介してルツボ102を回転させるためのルツボ回転軸111が取り付けられている。
【0007】
このような装置を用いて単結晶を製造する際に、ルツボ内に保持されている高温の原料融液が不慮の事故等によりルツボ外に流出し、通常ペデスタルの下方に配置され、金属表面がむき出しになっているルツボ回転軸やルツボ駆動装置、冷却水配管等(以下、金属部ということもある)を侵食し、劣化させるという問題があった。特に、冷却水配管が侵食された場合に、装置に損傷が生じ、事故につながる危険性もあった。
そこで、従来より原料融液を保持するルツボが破損して、融液が炉内に漏れ出た場合に備え、様々な湯漏れ防止構造が製造装置内に施されている。
【0008】
例えば、原料融液104を収容するルツボ102より下方の部位に、湯切り溝、フィン、及びフランジ等の湯切り手段(不図示)を設けると共に、メインチャンバー109a底部に、センタースリーブ112が設けられた黒鉛製の湯漏れ受け113を設けている(特許文献1)。この様な構造とすることで、ルツボに亀裂が生じて、亀裂から融液が流出しても湯切り手段でメインチャンバー109a底部の湯漏れ受け113に融液を落下させ、融液が湯漏れ受け113内に収容され、ペデスタル下方の金属部が高温の融液で侵食されないものとしている。
【0009】
また、ペデスタル110の軸が摺動可能に貫通する受け皿(不図示)をペデスタル110の任意高さに設け、この受け皿でルツボ102から漏れ出た融液を受け止める構造としている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公平6−43276号公報
【特許文献2】実用新案登録第2504550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし近年、直径300mm以上の大口径の単結晶を育成するようになると、必然的にルツボ内に多量に原料融液を充填するようになり、ルツボに亀裂が生じた場合に漏れ出る融液の量も増えてきている。このため、特許文献1の湯漏れ防止構造の湯切り手段を越えて融液が流れ出て、ペデスタルまで到達してしまうことが増え、融液がペデスタルに沿って、センタースリーブとペデスタルとの隙間を通って、ペデスタル下方の金属部まで達してしまうことがあった。
【0012】
また、特許文献2の単結晶製造装置では、ペデスタルに受け皿が設けられているが、受け皿に対しペデスタルが摺動可能である為、ペデスタルと受け皿との隙間より、前述同様に融液がペデスタルに沿って流れ落ち、ペデスタル下方の金属部まで達してしまうことがあった。
【0013】
本発明は、前述の問題に鑑みてなされたもので、不慮の事故等でルツボ内の原料融液がルツボ外に流出し、ペデスタルに沿って流れ落ちた場合であっても、ペデスタル下方の金属部に融液が達するのを確実に防ぎ、装置の損傷や事故の発生を未然に防止できる単結晶製造装置及び単結晶製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明では、原料融液を保持するためのルツボと、該ルツボを支持し、昇降可能であるペデスタルと、該ペデスタルを介して前記ルツボを回転させるためのルツボ回転軸と、前記ルツボの下方に配置され、前記ペデスタルを囲繞するようにセンタースリーブが設けられた湯漏れ受けを具備するCZ法による単結晶製造装置であって、前記ペデスタルの外周部に、前記ルツボから漏れ出した前記原料融液が滴り落ちることを抑止するための溝が2以上設けられたものであることを特徴とする単結晶製造装置を提供する。
【0015】
このような溝が設けられた単結晶製造装置であれば、ルツボに亀裂が生じてルツボ外部に漏れ出した原料融液がペデスタルに沿って流れ落ちる際に、ペデスタル外周部に設けられた溝に沿って、時間をかけて流れていくことで、ペデスタルから下方の他の部位に伝い流れる前に、ほとんどの漏れ出た融液が凝固する。これによってペデスタル下方の金属部、特にはルツボ回転軸や冷却水配管等が高温の原料融液によって侵食されることを抑制することができ、これによって装置の損傷や事故の発生を防止することができる。
また、ペデスタルに2以上の溝を設けるという非常に簡単な構成であるため、容易に且つ低コストで本発明の効果を得ることができる。
【0016】
またこのとき、前記ペデスタルの溝は、前記ペデスタルの鉛直方向の全長の15%〜50%の範囲に設けられることが好ましい。
【0017】
このような範囲で溝が形成されていれば、十分に本発明の効果を得ることができる。
【0018】
またこのとき、前記センタースリーブの内周部に2以上の溝を設けることができる。
【0019】
このようにすれば、ペデスタル外周部に沿って流れる原料融液がセンタースリーブ側に伝い流れた場合であっても、ペデスタルの場合と同様に、ペデスタル下方の金属部に到達する前に前記漏れ出した原料融液をセンタースリーブ側でも凝固させることができる。
また、ペデスタルの場合と同様にこちらも非常に簡単な構成であるため、容易に且つ低コストで本発明のより良い効果を得ることができる。
【0020】
またこのとき、前記センタースリーブの溝は、前記センタースリーブの鉛直方向の全長の50%〜100%の範囲に設けられることが好ましい。
【0021】
このような範囲で溝が形成されていれば、十分に本発明の効果を得ることができる。
【0022】
またこのとき、前記ペデスタル及び/またはセンタースリーブの溝は、深さが2mm以上10mm以下であり、幅が5mm以上20mm以下であり、溝同士の間隔が5mm以上20mm以下であることが好ましい。
【0023】
このような溝であれば、ペデスタル及び/またはセンタースリーブの強度に影響を与えることなく、漏れ出した原料融液をより効果的に溝内に滞留させることができる。
【0024】
またこのとき、前記ペデスタル及び/またはセンタースリーブの溝は、漏れ出した原料融液の一部を貯めるための貯留部を有することが好ましい。
【0025】
このような溝であれば、漏れ出した原料融液をより効果的に溝内に滞留させることができ、ペデスタル下方の金属部に到達する前に確実に凝固させることができる。
【0026】
またこのとき、前記ペデスタルと前記センタースリーブとの間隙は2mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0027】
このようにすれば、ペデスタルとセンタースリーブとの間隙に酸化物等が堆積してしまい、ペデスタルの上下動に支障をきたしてしまうことがない。また、ルツボから漏れ出した原料融液が垂れ落ちて、ペデスタルに沿って流れ落ちてきたとき、ペデスタルとセンタースリーブの間で原料融液の流れを止め、凝固させることで直接ルツボ回転軸に達してしまうことも抑止できるため、より安全かつ確実に単結晶を製造することができる。
【0028】
また、本発明では、チャンバー内において、ルツボ内の原料融液を加熱ヒーターで加熱しつつ、原料融液から単結晶を引上げて製造するCZ法による単結晶製造方法であって、本発明の単結晶製造装置を用いて単結晶を製造することを特徴とする単結晶製造方法を提供する。
【0029】
このような単結晶製造方法であれば、ペデスタル下方の金属部がルツボから漏れ出した高温の原料融液によって侵食されることや、さらには装置の損傷や事故の発生を防止することができるため、安全に且つ製造装置の金属部の劣化を抑制しながら単結晶を製造することができる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、ルツボに亀裂が生じてルツボ外部に漏れ出した原料融液がペデスタルに沿って流れ落ちる際に、時間をかけて落ちるようにすることによって前記漏れ出した原料融液を凝固させることができる。したがって、ペデスタル下方の金属部、特にはルツボ回転軸や冷却水配管が高温の原料融液によって侵食されることを抑制することができ、これによって装置の損傷や事故の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の単結晶製造装置の概略断面図の一例を示した図である。
【図2】本発明における溝の概略断面図の一例を示した図である。
【図3】従来の単結晶製造装置の概略断面図の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について、シリコン単結晶の製造を例に挙げて図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0033】
先ず、図1に本発明の単結晶製造装置の概略断面図の一例を示す。本発明の単結晶製造装置1は、中空円筒状のチャンバーで外観を構成し、そのチャンバーは下部円筒をなすメインチャンバー9aと、メインチャンバー9aに連接固定された上部円筒をなすプルチャンバー9bとから構成される。
その中心部にはルツボ2が配設され、このルツボは二重構造であり、石英ルツボ2aと、その石英ルツボ2aの外側を保持すべく適合された黒鉛ルツボ2bとから構成されている。
【0034】
二重構造からなるルツボ2の外側には加熱ヒーター3が配設され、加熱ヒーター3の外側周辺には保温筒7が同心円状に配設される。
そして、前記ルツボ2内に投入された所定重量のシリコン原料が溶融され、原料融液4が形成される。形成された原料融液4の表面に種結晶8を浸漬し、引上げ軸6を上方に引き上げて種結晶8の下端面にシリコン単結晶5を成長させる。
【0035】
また、ルツボ2の下方にルツボ2を支持するためのペデスタル10及びルツボ2を回転させるためのルツボ回転軸11が設けられる。
さらにメインチャンバー9aの底部には、ルツボ2より不慮の事故等により漏れ出した原料融液4を受けとめるための湯漏れ受け13が設けられる。また湯漏れ受け13には、ペデスタル10を囲繞するようにセンタースリーブ12が設けられる。このとき、ペデスタル10、センタースリーブ12及び湯漏れ受け13の材質を等方性黒鉛材とすれば、原料融液4と接触しても変形しにくいものとすることができる。
【0036】
ここで、ペデスタル10とセンタースリーブ12は、それらの間隙が2mm以上5mm以下となるように配置される。間隙の幅がこの範囲にあれば、酸化物等がこの間隙に堆積し、ルツボ2の上下動に支障をきたしてしまうようなことはなく、またルツボ2から漏れ出した原料融液4が、直接ルツボ回転軸11等の金属部に到達してしまうことを抑止できるため好ましい。
【0037】
ここで、ペデスタル10の外周部には、ペデスタル10の鉛直方向の全長の15%〜50%の範囲に、溝14aが2以上設けられる。また、センタースリーブ12の内周部にも同様に、センタースリーブ12の鉛直方向の全長の50%〜100%の範囲に、溝14bが2以上設けられることが好ましい。
【0038】
これらペデスタル及びセンタースリーブの溝14は、ルツボ2から不慮の事故等により漏れ出した原料融液4が、ペデスタル10の外周部またはセンタースリーブ12の内周部に沿って滴り落ちることを抑止する。
【0039】
このとき、溝14は深さを2mm以上10mm以下、幅を5mm以上20mm以下、溝同士の間隔を5mm以上20mm以下とすることが好ましい。例えば、これらに限定されるわけではないが、図2(a)に示すように、深さを2.5mm、幅を5mm、間隔を5mmとすることができる。また図2(b)に示すように、深さを5mm、幅を10mm、間隔を10mmとすることができる。
【0040】
また、溝14の形状としては、例えば図2(c)に示すような等脚台形状や、図2(d)に示すような半楕円状とすることができるが、好ましくは図2(a)または図2(b)に示すような台形状、さらに好ましくは図2(e)に示すような、突起部16を形成することによって、貯留部15が形成された形状とすることができる。
【0041】
図2(a)または図2(b)に示したように、上側が45°以下の角度で傾斜している台形状の溝14であれば、原料融液4が溝14に入りやすく、溝14に入った後に減速しやすいため好ましい。
さらに貯留部15を備えた形状とすることによって、ルツボ2から漏れ出した原料融液4を溝14内の貯留部15に効率的に滞留させることができ、漏れ出した原料融液4がルツボ回転軸11等の金属部に到達する前により確実に凝固させることができる。
【0042】
また、溝14の配置方法としては、例えば等間隔に配置するか、または螺旋状に配置することが好ましいが、これらに限定されず、非等間隔に配置しても本発明の効果を得ることができる。さらに、溝14を、ペデスタル10またはセンタースリーブ12の、相対的に下部に設ければ、ルツボ2付近の高温部から比較的離れた位置となるので、漏れ出した融液が冷えやすくなり、凝固しやすくなるため好ましい。
【0043】
ここで、本発明の単結晶製造方法では、このような装置を用いて以下のようにして単結晶の製造が行われる。もちろん本発明は以下に説明する製造方法に限定されるわけではない。
先ず、図1に示すような単結晶製造装置において、ルツボ2によって保持される原料融液4に種結晶8を浸漬する。その後、引上げ軸6で種結晶8を回転させながら引き上げる。その際、加熱ヒーター3で熱し、ルツボ回転軸11によってルツボ2を種結晶8とは逆方向に回転させ、単結晶5を製造する。
【0044】
その際、ルツボ2を支持するためのペデスタル10及び、ルツボ2から漏れ出した原料融液4を受けとめるための湯漏れ受け13に配置されたセンタースリーブ12には、深さが2mm以上10mm以下、幅が5mm以上20mm以下、溝同士の間隔が5mm以上20mm以下であって、図2(e)に示すような貯留部15が形成された溝14が、螺旋状となるように配置される。
このとき、溝14はペデスタル10の下部であって、鉛直方向の全長の15%〜50%の範囲、またセンタースリーブの鉛直方向の50%〜100%の範囲に配置される。また、ペデスタル10とセンタースリーブ12は、それらの間隙を2mm以上5mm以下としてそれぞれ配置される。
【0045】
このような溝14がペデスタル10及びセンタースリーブ12に形成されているため、単結晶を製造する過程において、不慮の事故等によってルツボ2から原料融液4が漏れ出したとしても、ペデスタル10またはセンタースリーブ12の溝14に沿って時間をかけて流れていく。
このため、漏れ出した原料融液4は、ペデスタル10下方の金属部に到達する前に凝固するので、これら金属部を侵食し、劣化させることなく、装置の損傷や事故の発生を未然に防ぐことができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
(実施例)
図1に示す本発明の単結晶製造装置において、ペデスタルとセンタースリーブに、図2(b)に示すような深さを5mm、幅を10mm、溝同士の間隔を10mmとした溝を、図2(e)に示すような貯留部が形成された形状として、螺旋状に配置した。溝を配置した範囲は、ペデスタル下部であって、鉛直方向の全長の50%の範囲、またセンタースリーブの鉛直方向の全長全体の範囲とした。このとき、直径800mmの石英ルツボに150kgのシリコン多結晶原料をチャージし、直径300mmの単結晶を製造した。成長が終了した単結晶を取出し、シリコン多結晶原料をリチャージしたところ、リチャージ終了と同時に湯漏れが発生したバッチにおいて、安全を確保する為、直ちに切電した。放冷後にチャンバーを開放して、炉内を確認したところ、ルツボより漏れ出た融液の一部がペデスタルに達していたが、ペデスタルの溝が形成された範囲の1/3程度の位置で原料融液が凝固して止まっており、ルツボ回転軸には到達していなかった。
【0048】
(比較例)
図3に示す従来の単結晶製造装置において、ペデスタル及びセンタースリーブに溝を一切設けないこと以外は実施例と同様に単結晶を製造した。成長が終了した単結晶を取出し、シリコン多結晶原料をリチャージしたところ、リチャージ終了と同時に湯漏れが発生したバッチにおいて、安全を確保する為、直ちに切電した。放冷後にチャンバーを開放して、炉内を確認したところ、ルツボより漏れ出た融液の一部がペデスタルに達しており、ペデスタルを伝ってルツボ回転軸に向かって流れ落ちていた。
【0049】
上記の結果、比較例においては、漏れ出した原料融液の一部がルツボ回転軸に達しており、ルツボ回転軸の表面が損傷していた。ルツボより漏れ出した原料融液の量が10kg程度と少なかったため、ルツボ回転軸に達した融液の量は30g程度しかなく、ルツボ回転軸の損傷も表面が焼けた程度で済んだ。
しかし、ルツボから漏れ出た融液の量が10kgより数倍多い場合を想定すると、ルツボ回転軸に達する融液の量も数倍となることが考えられ、装置の損傷や事故が発生する可能性も考えられた。
【0050】
実施例においては、ルツボより漏れ出た原料融液の量は、前記比較例よりも多く、50kg近くあり、ペデスタルに伝わった融液の量も比較例の5倍近いものだったが、溝に沿って原料融液がペデスタルまたはセンタースリーブの全周に拡がり、各溝部に融液が少しずつ滞留して凝固し、溝が形成された範囲の約1/3程度まで達したところで伝い流れた原料融液の全量が凝固していた。
以上の検証の結果、本発明の単結晶製造装置であれば、原料融液の全量が漏れ出した場合を想定しても、ルツボ回転軸やその他金属部に融液が達することはほとんど無いと考えられた。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載した技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0052】
1、101…単結晶製造装置、
2、102…ルツボ、 2a、102a…石英ルツボ、 2b、102b…黒鉛ルツボ、
3、103…加熱ヒーター、 4、104…原料融液、 5、105…単結晶、
6、106…引上げ軸、 7、107…保温筒、 8、108…種結晶、
9a、109a…メインチャンバー、 9b、109b…プルチャンバー、
10、110…ペデスタル、 11、111…ルツボ回転軸、
12、112…センタースリーブ、 13、113…湯漏れ受け、
14、14a、14b…溝、 15…貯留部、 16…突起部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料融液を保持するためのルツボと、該ルツボを支持し、昇降可能であるペデスタルと、該ペデスタルを介して前記ルツボを回転させるためのルツボ回転軸と、前記ルツボの下方に配置され、前記ペデスタルを囲繞するようにセンタースリーブが設けられた湯漏れ受けを具備するCZ法による単結晶製造装置であって、前記ペデスタルの外周部に、前記ルツボから漏れ出した前記原料融液が滴り落ちることを抑止するための溝が2以上設けられたものであることを特徴とする単結晶製造装置。
【請求項2】
前記ペデスタルの溝は、前記ペデスタルの鉛直方向の全長の15%〜50%の範囲に設けられることを特徴とする請求項1に記載の単結晶製造装置。
【請求項3】
前記センタースリーブの内周部に2以上の溝が設けられたものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の単結晶製造装置。
【請求項4】
前記センタースリーブの溝は、前記センタースリーブの鉛直方向の全長の50%〜100%の範囲に設けられることを特徴とする請求項3に記載の単結晶製造装置。
【請求項5】
前記ペデスタル及び/またはセンタースリーブの溝は、深さが2mm以上10mm以下であり、幅が5mm以上20mm以下であり、溝同士の間隔が5mm以上20mm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の単結晶製造装置。
【請求項6】
前記ペデスタル及び/またはセンタースリーブの溝は、漏れ出した原料融液の一部を貯めるための貯留部を有するものであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の単結晶製造装置。
【請求項7】
前記ペデスタルと前記センタースリーブとの間隙が2mm以上5mm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の単結晶製造装置。
【請求項8】
チャンバー内において、ルツボ内の原料融液を加熱ヒーターで加熱しつつ、原料融液から単結晶を引上げて製造するCZ法による単結晶製造方法であって、前記請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の単結晶製造装置を用いて単結晶を製造することを特徴とする単結晶製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−162421(P2012−162421A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23687(P2011−23687)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】