説明

印刷に利用可能な装置

【課題】熱源の制御により印刷物を形成し、ユーザの快適度を向上させることができる装置および方法を提供することである。
【解決手段】少なくとも1つの第1の加熱要素とを含む第1のロールと、第2の外側表面を含む第2のロールと、第1の外側表面と第2の外側表面との間のニップ部と、ニップ前位置におけるニップ前温度を検出するための第1の温度センサと、各第1の加熱要素と前記第1の温度センサに接続された第1の電圧変調器とから構成される印刷に利用可能な装置であって、第1の電圧変調器は、第1の温度センサからニップ前温度を示す温度信号を受け取って、各第1の加熱要素が部分パワーからフルパワーまでの電力レベルにおいて常時オン状態に維持されるように各第1の加熱要素に供給される交流電圧を変調することによりニップ前温度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷に利用可能な装置に係り、特に、表面の温度を制御する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置の中には、マーキング材を使用して紙などの媒体上に画像を形成するものがある。このような印刷装置では、部材間にニップ部を形成した互いに向い合う対向部材を含ませることができる。媒体はニップ部に送られ、そのニップ部を上記部材が加圧して媒体に熱エネルギを供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0037069号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱源の制御により印刷物を形成し、ユーザの快適度を向上させることができる装置および方法を提供することは望ましいことであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る印刷に利用可能な装置は、第1の外側表面と前記第1の外側表面を加熱するための少なくとも1つの第1の加熱要素とを含む第1のロールと、第2の外側表面を含む第2のロールと、前記第1の外側表面と前記第2の外側表面との間のニップ部と、ニップ前位置におけるニップ前温度を検出するための第1の温度センサと、各第1の加熱要素と前記第1の温度センサに接続された第1の電圧変調器と、から構成される印刷に利用可能な装置であって、前記第1の電圧変調器は、前記第1の温度センサから前記ニップ前温度を示す温度信号を受け取って、各第1の加熱要素が部分パワーからフルパワーまでの電力レベルにおいて常時オン状態に維持されるように各第1の加熱要素に供給される交流電圧を変調することにより前記ニップ前温度を制御することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】印刷装置の例示的実施の形態を示す。
【図2】加熱されたベルトを含む定着機構の例示的実施の形態を示す。
【図3】定着ロールを含む定着機構の例示的実施の形態を示す。
【図4】電圧変調器の制御の概略の例示的実施の形態を示す。
【図5】ベルトおよび複数の電圧変調器を含む定着機構の例示的実施の形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
開示の実施の形態は印刷に利用可能な装置を含み、この装置は、第1の外側表面とその第1の外側表面を加熱するための少なくとも1つの第1の加熱要素とを含む第1のロールと、第2の外側表面を含む第2のロールと、前記第1の外側表面と前記第2の外側表面との間のニップ部と、ニップ前位置におけるニップ前温度を検出するための第1の温度センサと、各第1の加熱要素と第1の温度センサに接続された第1の電圧変調器とから構成される。前記第1の電圧変調器は、第1の温度センサからニップ前温度を示す温度信号を受け取って、各第1の加熱要素が部分パワーからフルパワーまでの電力レベルにおいて常時オン状態に維持されるように各第1の加熱要素に供給される交流電圧を変調することにより前記ニップ前温度を制御する。
【0008】
さらに、開示の実施の形態は印刷に利用可能な装置を含み、この装置は、第1の外側表面を含む第1のロールと、第2の外側表面を含む第2のロールと、前記第1の外側表面と前記第2の外側表面との間の継目なしベルトであって、前記第1の外側表面に接触する内側表面と前記第2の外側表面に接触する外側表面とを含んでニップ部を形成するベルトと、前記ベルトに接触する第3の外側表面とこの第3の外側表面を加熱するための少なくとも1つの第1の加熱要素とを含む第3のロールと、前記ベルトの外側表面上のニップ前位置におけるニップ前温度を検出するための第1の温度センサと、各第1の加熱要素と第1の温度センサに接続された第1の電圧変調器とから構成される。前記第1の電圧変調器は、第1の温度センサからニップ前温度を示す温度信号を受け取って、各第1の加熱要素が部分パワーからフルパワーまでの電力レベルにおいて常時オン状態に維持されるように各第1の加熱要素に供給される交流電圧を変調することにより前記ニップ前温度を制御する。
【0009】
本文書において使用している「印刷装置」という用語は、例えばデジタル複写機、製本機、複合機等、何らかの目的のために印刷物出力機能を実行するあらゆる装置を包含する。上記印刷装置は、各種タイプの固体および液体マーキング材料、例えば、トナーおよびインク(例えば、液体インク、ジェルインク、熱硬化性インクおよび放射線硬化性インク)等を使用することができる。上記印刷装置は、各種熱、圧力および他の条件で、マーキング材を用いて媒体上に画像を形成することができる。
【0010】
図1は、米国特許出願公開第2008/0037069号明細書に開示されている例示的印刷装置100を示す。印刷装置100を用いて、高速で媒体から印刷物を作成することができる。印刷装置100は、連続して配置される2つの媒体フィーダモジュール102、媒体フィーダモジュール102に隣接するプリンタモジュール106、プリンタモジュール106に隣接するインバータモジュール114、およびインバータモジュール114に隣接し連続して配置される2つのスタッカモジュール116を備える。
【0011】
媒体フィーダモジュール102は、媒体をプリンタモジュール106へ給送する。プリンタモジュール106では、マーキング材(例えば、トナー含有材)を、一連の現像ステーション110から、帯電した感光体ベルト108に移動させ、感光体ベルト108上にトナー画像を形成し、カラー印刷物を作成する。トナー画像を、用紙経路を通って給送されたそれぞれの媒体104に転写する。この媒体を、定着ロール113と加圧ロール115を含む定着機構112を通過させ、媒体上にトナー画像を定着させる。スタッカモジュール116では、印刷された媒体をスタッカカート118上に積重ね、スタック120を形成する。
【0012】
マーキング材をその上に載置した媒体に熱エネルギと圧力を供給するように構成した印刷に利用可能な装置を提供する。異なる媒体タイプを使用することができる。装置の実施の形態は、媒体に熱エネルギを供給する被加熱部材を含む。この被加熱部材は、安定した出力温度で動作する。ある実施の形態においては、被加熱部材は、2つまたはそれ以上のロールにより支えられた被加熱ベルトである。このベルトは媒体と接触して媒体上のマーキング材を処理する。他の実施の形態によっては、被加熱部材を、媒体上のマーキング材を処理するのに使用されるロールとする。装置の実施の形態には、ライン電圧フリッカを低減するように構成されるものもある。
【0013】
図2は、印刷に利用可能な装置の例示的実施の形態を示す。図示の装置は定着機構200である。定着機構200のいくつかの実施の形態は、印刷出力機能を備えた異なるタイプの装置と共に使用することができ、例えば、図1に示す印刷装置100の定着機構112と置き換えて使用することができる。
【0014】
図示の定着機構200は、定着ロール202、外部ロール208、内部ロール210、212およびアイドラロール214によって支えられた継目なし(連続)ベルト220を含んでいる。ベルト220は、内側表面222と外側表面224を含む。他の実施の形態では、定着機構200は、ロールが4個より少なくても(例えば2個でも)、または多くてもよい。定着機構200の少なくとも1つのロール、または各ロールを加熱することができる。
【0015】
定着ロール202、外部ロール208、内部ロール210、212およびアイドラロール214は、ベルト220と接触する外側表面203、209、211、213および215をそれぞれ含有する。ベルト220は加熱されたロールによって活発に加熱される。定着ロール202は加熱要素250、252を含有し、外部ロール208は加熱要素254、256を含有し、内部ロール210は加熱要素258、260を含有し、内部ロール212は加熱要素262、264を含有する。他の実施の形態において、定着ロール202は外側表面203を活発に加熱する加熱要素を含んでいない場合もある。
【0016】
加熱要素250、252、254、256、258、260、262、264は、タングステン−石英ランプなどの軸方向に延びるランプであり、ロール内部に配置される。加熱要素250、254、258および262は互いに(例えば長めの)同じ長さと出力定格とを有することができ、加熱要素252、256、260、264は互いに(例えば短かめの)同じ長さと出力定格を有することができる。他の実施の形態において、定着ロール202、外部ロール208および内部ロール210、212はそれぞれ、例えば1個の、または2個より多くの加熱要素を含有することができる。加熱要素250、252、254、256、258、260、262および264は、例えば、約1000ワットの定格出力を備えることができる。
【0017】
さらに、定着機構200は外部加圧ロール204を備え、これは外側表面205を有する。この外側表面205とベルト220の外側表面224とがニップ部206を形成する。加圧ロール204は、外側表面205を有する外側層を備えることができる。外側層はコアに上貼りされる。コアはアルミニウム等から成り、シリコーンなどの弾性変形可能な材料で覆われている。外側層は、例えばペルフルオロアルコキシ(PFA)共重合体樹脂などの弾性変形可能な材料から成るものとすることができる。
【0018】
ベルト220は、例えば、ベース層、ベース層上の中間層、および中間層上の外側層を含む多重層を備えることができる。この場合、ベース層はベルト220の内側表面222を形成し、外側層はベルト220の外側表面224を形成する。ベルト220の例示的実施の形態では、ベース層はポリマー状材料、例えば、ポリイミド等から成り、中間層はシリコーン等から成り、外側層はポリマー状材料、例えば、デュポン・パホーマンス・エラストマー(DuPont Performance Elastomers)、L.L.C.によって商品名ビトン(Viton(登録商標))で販売されているフルオロエラストマー、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))等から成る。
【0019】
実施の形態では、ベルト220は約0.1mm〜約0.6mmの厚さを有している。ベルト220は典型的に、約350mm〜約450mmの幅と、約500mm〜約1000mmまたはそれ以上の長さを有することができる。
【0020】
図2は、対向表面232、234を有する媒体230が処理方向Bにおいてニップ部206へと給送されるところを示す。マーキング材(例えば、トナー)が媒体230の表面232上に存在する。定着ロール202は反時計周りに回転し、加圧ロール204は時計周りに回転して、ニップ部206を処理方向に通過させるように媒体230を移送する。ベルト220は処理方向Aに回転する。媒体230は紙シート、トランスペアレンシー、包装材料などとすることができる。代表的なものとして、紙は、軽重量、中重量または大重量として分類することができ、またコーティング加工したものともしないものともすることができる。
【0021】
定着機構200はさらに、従来同様、加熱要素250、252、254、256、258、260、262、264に電気的に接続した電圧変調器270を含む。電圧変調器270は、暖機運転、待機状態および印刷運転中において上記加熱要素のパワー出力を制御してベルト220の加熱を制御する。定着ロール202が加熱要素250、252を含まないとき、電圧変調器270は加熱要素254、256、258、260、262、264だけに接続される。
【0022】
定着機構200は、ニップ前位置におけるニップ前温度を検出するための温度センサ280を含む。温度センサ280は、ベルト220の外側表面224の上に(例えば、(図示のように)近接して、または接触して)位置し、ニップ前位置における外側表面224の温度を検出する。ニップ前位置は、媒体230がニップ部206に入るニップ部206の入口端に近接している。例えば、温度センサ280は、ニップ部206の入口端から約25mm〜約50mm離れた位置としたり、あるいは温度センサ280はニップ部206の入口端に近くまたは遠くに位置させることができる。温度センサ280は、温度センサ280が電気的に接続された電圧変調器270に温度信号を送る。この温度信号は外側表面224の温度を示す。
【0023】
定着機構200はさらに、定着ロール202、外部ロール208および内部ロール210および212のそれぞれの過熱を監視するための装置を含む。定着機構200は、定着ロール202の外側表面203に面したサーミスタ253、外部ロール208の外側表面209に面したサーミスタ257、内部ロール210の外側表面211に面したサーミスタ259、および内部ロール212の外側表面213に面したサーミスタ263を含む。定着ロール202が加熱要素250、252を含まないとき、定着ロール202にはサーミスタは設けられない。サーミスタ253、257、259、263は、各外側表面203、209、211、213の上に(例えば、(例えば約5mm以下に)近接して、または接触して)位置する。サーミスタ253、257、259、263は、定着ロール202、外部ロール208、内部ロール210および/または内部ロール212の温度が限界温度を超えたときに加熱要素250、252;254、256;258、260;262、264の対への電圧供給をそれぞれ停止してこれらのロールの過熱を避けるようにした安全機能を提供する。例えば、定着ロール202、内部ロール210および内部ロール212はそれぞれの限界温度を超えないが、外部ロール208が限界温度を超えるとき、外部ロール208の加熱要素254、256への電圧供給は停止される一方、加熱要素250、252;258、260;262、264へは電圧が供給され続ける。外部ロール208が限界温度以下に冷却されると、加熱要素254、256への電圧供給は再開される。
【0024】
図3は、印刷に利用可能な装置の他の例示的実施の形態を示す。この装置は定着機構300である。定着機構300の実施の形態は、例えば、印刷出力機能を提供する様々なタイプの装置において、図1に示す印刷装置100の定着機構112の代わりに使用することができる。
【0025】
図示の定着機構300は、外側表面303を有する定着ロール302、および外側表面305を有する加圧ロール304を含む。一実施の形態においては、定着ロール302は、金属から成るコアと、弾性変形可能な材料から成り、コア上に貼り付けられて外側表面305を形成する少なくとも1つの層とを含む。加圧ロール304は、例えば定着機構200の加圧ロール204と同じ構成とすることができる。定着ロール302の外側表面303と加圧ロール304の外側表面305とでニップ部306が形成される。外側表面303、305は、互いに係合する位置とすることができる。
【0026】
定着ロール302は、内部加熱要素350、352を含む。加熱要素350、352は、異なる長さを有して軸方向に延びるランプとすることができる。他の実施の形態においては、定着ロール302は、単一の加熱要素、または2個より多くの加熱要素を含むことができる。加熱要素350、352は、例えば、約1000ワットの定格出力を備えることができる。
【0027】
図3は、対向表面332、334を有する媒体330が処理方向Bにおいてニップ部306へと給送されるところを示す。マーキング材(例えば、トナー)が媒体330の表面332上に存在する。定着ロール302は反時計周りに回転し、加圧ロール304は時計周りに回転して、ニップ部306を処理方向Bに通過させるように媒体330を移送する。媒体330は例えば紙、トランスペアレンシーまたは包装材料とすることができ、またコーティング加工したものともしないものともすることができる。
【0028】
定着機構300はさらに、加熱要素350、352に接続した電圧変調器370を含む。電圧変調器370は、暖機運転、待機状態および印刷運転中において上記加熱要素350、352を制御して定着ロール302の加熱を制御する。
【0029】
定着機構300は、ニップ前位置におけるニップ前温度を検出するための温度センサ380を含む。温度センサ380は、定着ロール302の外側表面303の上に(例えば、(図示のように)近接して、または接触して)位置し、ニップ前位置における外側表面303の温度を検出する。ニップ前位置は、媒体330がニップ部306に入るニップ部306の入口端に近接している。例えば、温度センサ380は、ニップ部306の入口端から約25mm〜約50mm離れた位置としたり、あるいは温度センサ380はニップ部306の入口端に近くまたは遠くに位置させることができる。温度センサ380は、温度センサ380が電気的に接続された電圧変調器370に温度信号を送る。この温度信号は定着ロール302の外側表面303のニップ前温度を示す。
【0030】
図示するように、定着機構300は、定着ロール302の外側表面303を加熱するために、オプションの第1の外部ヒータロール390とオプションの第2の外部ヒータロール396を含むことができる。第1の外部ヒータロール390は1つまたはそれ以上の内部加熱要素392(2個が図示されている)を含み、第2の外部ヒータロール396は1つまたはそれ以上の内部加熱要素398(2個が図示されている)を含む。加熱要素392、398は、軸方向に延びるランプなどとすることができる。加熱要素392は、例えば、長いランプ1個と短いランプ1個を含むことができ、加熱要素398は、例えば、長いランプ1個と短いランプ1個を含むことができる。加熱要素392、398は、例えば、約2000ワット〜約2500ワットの定格出力を備えることができる。
【0031】
サーミスタ394は、第1の外部ヒータロール390の上に(例えば、(図示のように)近接して、または接触して)位置し、サーミスタ399は、第2の外部ヒータロール396の外側表面の上に(例えば、(図示のように)近接して、または接触して)位置する。サーミスタ394、399は、第1の外部ヒータロール390および第2の外部ヒータロール396それぞれの過熱を制限するために定着機構300において使用される。サーミスタ394、399は、第1の外部ヒータロール390および/または第2の外部ヒータロール396の温度が限界温度を超えたときに加熱要素392、398それぞれへの電圧供給を停止するようになっている。第1の外部ヒータロール390および/または第2の外部ヒータロール396の温度がそれぞれの限界温度以下に下がったときには、加熱要素392および/または398への電圧供給を再開する。
【0032】
図4は、フィードバック制御を用いた図2に示す電圧変調器270の例示的制御の概略図を示す。273において、ベルト設定点温度(Tベルト設定点)およびベルト220の温度を示す温度センサ280からの出力が加算接合点272に入力される。加算接合点272は、コントローラ274に接続されている。コントローラ274は、変調された交流電圧出力を加熱要素250、252、254、256、258、260、262、264の各々に供給する装置276に接続されている。
【0033】
電圧変調器270の実施の形態において、装置276は可変変圧器である。図4に示す例示的制御概略図において、装置276は、VARIAC(登録商標)である。可変変圧器はモータ駆動で、出力電圧を5、15、30または60秒単位でゼロ〜フルレンジまでの範囲で変化させて運転できる。こうした可変変圧器は、その電気的設計に依存して50Hzまたは60Hzでゼロ〜全定格交流電圧において運転可能である。このような可変変圧器は、オハイオ州デイトン、スタコエナジー社(Staco Energy Products Co.)から入手することができる。可変変圧器の実施の形態は、約1秒単位のフルレンジにおける補正を提供することができる。このような可変変圧器は、マサチューセッツ州、ナティック、エレクトロニック・スペシャリスツ社(Electronic Specialists, Inc.)から入手することができる。
【0034】
コントローラ274は装置276の動作を制御して、加熱要素250、252、254、256、258、260、262、264に変調交流電圧を供給する。加熱要素250、252;254、256;258、260;および262、264の各対は、ベルト220に概ね同一の合計量の電力を供給することができる。通常の電力変動は合計で約1500ワット〜約7000ワットの範囲で起こり得、その低消費電力が待機電力に対応し、その高消費電力が暖機運転電力に対応する。
【0035】
コントローラ274は、制御ループフィードバック機構である。コントローラ274は比例積分微分(PID)制御とすることができる。温度センサ280で測定したベルト220の外側表面224の温度が、ベルト設定点温度と比較される。コントローラ274は、装置276の動作を調整して加熱要素250、252、254、256、258、260、262、264へ供給される交流電圧を制御するための補正作用を計算して出力することにより、部分パワーからフルパワーまで上記加熱要素の作動パワーレベルを制御することでベルト220の測定温度と設定点温度との間の誤差を補正する。
【0036】
装置276は、加熱要素250、252、254、256、258、260、262、264を部分パワーまたはフルパワーのいずれかで常時オン状態に維持するための交流電圧を供給することができる。本文書において、用語「常時」は、印刷装置の電源を入れたとき定着機構200の通常動作条件下であることを意味する。該当する定着ロール202、外部ロール208および内部ロール210、212がそれぞれの限界温度より低い温度であるとき、加熱要素250、252、254、256、258、260、262、264は部分またはフルパワーにおいてオン状態が維持される。定着ロール202、外部ロール208および内部ロール210、212の少なくとも1つが限界温度を超えるとき、他のロールの加熱要素はオン状態に維持される。1つまたはそれ以上のロールがそれぞれの限界温度以下の温度に冷却されたら、その1つまたはそれ以上のロールへの電力供給が再開され、連続的に供給される。
【0037】
コントローラ274は、ベルト220の加熱において、加熱のための所望の応答時間、最大温度行過ぎ量(すなわち、温度限界)、および所望の定常状態温度変動(すなわち、所望の温度における温度帯)を与えるように構成、調整されている。応答時間は、装置276により加熱要素250、252、254、256、258、260、262、264に供給される交流電圧を増大させることにより減少する。いったんベルト220が所望の温度(例えば、待機状態温度)に到達したら、装置276により加熱要素250、252、254、256、258、260、262、264に供給される交流電圧レベルは減少させ、かつ連続的に供給することができる。
【0038】
装置276により加熱要素250、252、254、256、258、260、262、264に供給される交流電圧レベルをフルパワーまで徐々に上昇させて電圧および照明フリッカを最小化することができる。この加熱スケジュールは、応答時間の微小増分によりピーク電流を大きく低減させる。
【0039】
図4に示すように、装置276は240Vの交流電圧(VAC IN)で作動させることができる。作動された装置276(ACTUATED VARIAC)は、交流電圧(VAC OUT)を図面では加熱ロールシステムブロック282、286でも表される加熱要素250、252、254、256、258、260、262、264に供給する。図4では、加熱ロールシステムブロック282、286だけが示されている。供給される交流電圧は、AC0Vからこれらの加熱要素の定格電圧、例えばAC200Vまでとすることができる。
【0040】
サーミスタ253、257、259、263の各々はリレーを介してスイッチに接続されている。288において、TROLL1、TROLL2、TROLL3およびTROLL4は、それぞれ、定着ロール202、外部ロール208および内部ロール210、212の温度を表している。図4には、ROLL1(定着ロール202)に接続された加熱ロールシステムブロック282、リレー284(TLIM1)およびスイッチ278(SWITCH1)、およびROLL4(内部ロール212)に接続された加熱ロールシステムブロック286、リレー287(TLIM4)およびスイッチ285(SWITCH4)だけが示されている。例えば、サーミスタ263が、内部ロール212の温度が限界温度を超えたことを示すときには、スイッチ285が作動して、加熱要素262、264への交流電圧の供給を停止して(すなわち、これらの加熱要素をオフに切り替えて)、内部ロール212の過熱を制限する。過熱は、低温スタートの暖機運転間において、ベルト220の温度が例えばおおよそ周囲温度から上昇温度(待機状態温度または設定点など)にまで上げられた場合に起こることがある。定着機構200のニップ部206へ媒体が送られると、媒体はベルト220からの熱エネルギの放熱器として働く。過熱は、大重量の媒体またはコーティングを施した媒体を用いた印刷ジョブが終了したときにも起こることがあり、媒体がそれ以上ニップ部206へ給送されず、ベルト220から熱を吸収しないためにベルト温度が上昇する。サーミスタ263に示すように内部ロール212の温度が限界温度以下に低下すると、スイッチ285が作動して加熱要素262、264への電流供給を再開する(すなわち、これらの加熱要素をオン状態にする)。
【0041】
定着機構200が画像を定着させている間に、定着ロール202、外部ロール208および内部ロール210、212は、それらの限界温度以下で動作し、それぞれの加熱要素は部分またはフルパワーで動作する。この動作は、定着機構200の実施の形態を、最も厚い媒体には最高速度で定着を行いながら加熱されたロールの温度限界以下で動作するように構成することによって達成される。被加熱ロールのランプの加熱要素は印刷ジョブの間にはオンオフ切替えは行われず、部分またはフルパワーでオン状態が維持される。定着機構200は連続作動型の制御を備えてフリッカ問題を最小化または排除することができる。
【0042】
温度センサ280によって測定されたベルト220の外側表面224における温度は、コントローラ274で制御された装置276により変調交流電圧を供給することによりほぼ一定に維持され、加熱要素250、252;254、256;258、260;262、264の各対がそれぞれベルト220に対して供給するパワーの全量がほぼ同じになるようにする。温度センサ280によって測定されるニップ前温度は、温度センサ280の信頼性に依存して、例えば所望温度の約1℃〜約2℃以内などで概ね一定に維持することができる。
【0043】
印刷に利用可能な装置の他の実施の形態は、1つ以上の電圧変調器を含むことができる。図5は定着機構500を示しており、この定着機構は、共通の参照番号で示す通り、図2に示す定着機構200の特徴を含んでいる。定着機構500は、第1の温度センサ280と定着ロール202の加熱要素250、252とに電気的に接続された第1の電圧変調器281と、第2の温度センサ292と外部ロール208の加熱要素254、256とに電気的に接続された第2の電圧変調器299と、第3の温度センサ294と内部ロール210の加熱要素258、260とに電気的に接続された第3の電圧変調器295と、第4の温度センサ296と内部ロール212の加熱要素262、264とに電気的に接続された第4の電圧変調器297とを含む。他の実施の形態においては、定着ロール202は、ベルト220を加熱するための加熱要素を含まない。電圧変調器281、299、295、297は、該当するロールの加熱要素の動作を個々に制御することにより、暖機運転、待機状態および印刷運転の期間中のベルト220の加熱を制御する。
【0044】
第1の温度センサ280、第2の温度センサ292、第3の温度センサ294および第4の温度センサ296は、それぞれ、定着ロール202、外部ロール208、内部ロール210および内部ロール212の各々の上に載置されたベルト220の外側表面224の温度を測定する。第1の温度センサ280、第2の温度センサ292、第3の温度センサ294および第4の温度センサ296は、それぞれ、温度信号を第1の電圧変調器281、第2の電圧変調器299、第3の電圧変調器295および第4の電圧変調器297に送る。各電圧変調器は、関連する加熱要素250、252;254、256;258、260および262、264に連続的に電力を供給することができる。加熱要素250、252;254、256;258、260および262、264は、例えば、概ね同じ温度で作動する定着ロール202、外部ロール208および内部ロール210、212のそれぞれに異なる量の電力を供給することができる。
【0045】
第1の電圧変調器281、第2の電圧変調器299、第3の電圧変調器295および第4の電圧変調器297は、それぞれ、コントローラと可変変圧器(例えば、図4に示すコントローラ274と装置276)を含み、各ロールの加熱におけるフィードバック制御を提供する。スイッチ(図示せず)が各サーミスタ253、257、259、263に接続される。定着ロール202、外部ロール208および内部ロール210、212においては、定着ロール202、外部ロール208および内部ロール210、212のうちの1つまたはそれ以上の温度がその限界温度を超えたときには、該当するサーミスタ253、257、259、263およびスイッチが作動して第1の電圧変調器281、第2の電圧変調器299、第3の電圧変調器295および第4の電圧変調器297それぞれからの関連する各加熱要素への交流電圧の供給を停止する。定着ロールが加熱要素250、252を含まないときは、定着ロール202に隣接する定着機構にサーミスタ253が含まれない。
【実施例1】
【0046】
表1は、図2に示す定着機構200の変形例の構成を有する定着機構のための1次熱モデルを用いて計算した数値を示している。このモデルにおいて、定着ロール202は加熱要素とサーミスタを含まず、ロール212、210および208の各々が同定格の被加熱要素を含み、定着機構に給送される媒体はコーティングが施され、350gsmの重量を有し、印刷速度は165枚/分である。ベルト220は、Viton(登録商標)の内側層、シリコーンの中間層、およびポリアミドの外側層を含む。
【0047】
表1に示す通り、交流電圧変調および同定格加熱要素と組み合わせたベルト温度フィードバック制御を用いて、ロール212、210および208の各々は、ベルト220に同量のパワーを供給する。ベルト220は、ニップ前位置において195℃の温度に維持される。
【0048】
【表1】

【実施例2】
【0049】
表2は、図2に示す定着機構200に比して変形例の構成を有する定着機構のための1次熱モデルを用いて計算した数値を示している。このモデルにおいて、定着ロール202は加熱要素とサーミスタを含まず、ロール212、210および208の各々における加熱要素に別体の電圧変調器が接続され、各ロール212、210および208における加熱要素は同定格の加熱要素を備え、定着機構に給送される媒体はコーティングが施され、350gsmの重量を有し、印刷速度は165枚/分である。ベルト220は、Viton(登録商標)の内側層、シリコーンの中間層、およびポリアミドの外側層を含む。
【0050】
表2に示す値で示される通り、交流電圧変調および同定格加熱要素と組み合わせたベルト温度フィードバック制御を用いて、ロール212、210および208の各々は、ベルト220に同量のパワーを供給してベルト220はニップ前位置において195℃の温度に維持される。実施例2における各ロールによって供給される合計電力量は、実施例1の各ロールにより供給される合計電力量と概ね等しい。
【0051】
【表2】

【0052】
実施例1および2に例証される通り、交流電圧変調および各ロールにおける同定格加熱要素と組み合わせた温度フィードバック制御を用いて、定着機構はさらに一定の温度において媒体を定着させることができる。定着機構200において、加熱要素を常時オンに維持することにより、ニップ前位置におけるベルト220に対するより滑らかな温度−時間プロファイル(すなわち、さらに一定度を増した温度)を得ることができる。さらに、定着機構200を含む装置の運転中において、ライン電圧および照明フリッカを低減、望ましくは最小化することができる。
【符号の説明】
【0053】
200 定着機構、202 定着ロール、204 加圧ロール、206 ニップ部、220 ベルト、222 内側表面、224 外側表面、230 媒体、250、252、254、256、258、260、262、264 加熱要素、270 電圧変調器、280 温度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の外側表面と前記第1の外側表面を加熱するための少なくとも1つの第1の加熱要素とを含む第1のロールと、
第2の外側表面を含む第2のロールと、
前記第1の外側表面と前記第2の外側表面との間のニップ部と、
ニップ前位置におけるニップ前温度を検出するための第1の温度センサと、
各第1の加熱要素と前記第1の温度センサに接続された第1の電圧変調器と、から構成される印刷に利用可能な装置であって、
前記第1の電圧変調器は、前記第1の温度センサから前記ニップ前温度を示す温度信号を受け取って、各第1の加熱要素が部分パワーからフルパワーまでの電力レベルにおいて常時オン状態に維持されるように各第1の加熱要素に供給される交流電圧を変調することにより前記ニップ前温度を制御することを特徴とする印刷に利用可能な装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
前記ニップ前位置が、前記ニップ部に近接した前記第1のロールの前記第1の外側表面上にあり、
前記第1の電圧変調器が、
前記第1の温度センサに接続されたコントローラと、
前記コントローラと各第1の加熱要素とに接続された可変変圧器とを備え、
前記コントローラは、前記第1の温度センサから前記ニップ前温度を示す温度信号を受け取って、前記ニップ前温度を前記第1のロールにおける設定点温度と比較し、前記ニップ前温度と前記設定点温度との間の差異に基づき、各第1の加熱要素が部分パワーからフルパワーまでの電力レベルにおいて常時オン状態に維持されるように各第1の加熱要素に交流電圧を供給するよう前記可変変圧器を制御することを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置において、
前記第1の外側表面と接触する内側表面と、前記第2の外側表面と接触する外側表面とを含んで前記ニップ部を形成する継目なしベルトであって、前記ニップ前位置が前記ニップ部と近接した前記ベルトの前記外側表面上にある継目なしベルトと、
前記ベルトに接触する第3の外側表面と、前記第3の外側表面を加熱するための少なくとも1つの第2の加熱要素とを含む第3のロールと、
前記第1の外側表面上に配置され、第1のスイッチに接続された第1のサーミスタであって、前記第1のサーミスタと第1のスイッチは、前記第1のロールの温度が第1の限界温度を超えたときに作動して、前記第1の電圧変調器から各第1の加熱要素への交流電圧の供給を停止するようにした第1のサーミスタと、
前記第3の外側表面上に配置され、第2のスイッチに接続された第2のサーミスタであって、前記第2のサーミスタと第2のスイッチは、前記第3のロールの温度が第2の限界温度を超えたときに作動して、前記第1の電圧変調器から各第2の加熱要素への交流電圧の供給を停止するようにした第2のサーミスタとをさらに備え、
前記第1の電圧変調器は、(i)各第2の加熱要素に接続され、(ii)各第1の加熱要素に供給される前記交流電圧を変調し、前記第1のロールの温度が前記第1の限界温度を超えないときは、各第1の加熱要素を常時オンに維持するように前記第1の外側表面の温度を制御し、(iii)各第2の加熱要素に供給される前記交流電圧を変調し、前記第3のロールの温度が前記第2の限界温度を超えないときは、各第2の加熱要素を常時オンに維持するように前記第3の外側表面の温度を制御することを特徴とする装置。
【請求項4】
第1の外側表面を含む第1のロールと、
第2の外側表面を含む第2のロールと、
前記第1の外側表面と前記第2の外側表面との間の継目なしベルトであって、前記第1の外側表面に接触する内側表面と、前記第2の外側表面に接触する外側表面とを含んでニップ部を形成するようにしたベルトと、
前記ベルトと接触する第3の外側表面と、前記第3の外側表面を加熱するための少なくとも1つの第1の加熱要素とを含む第3のロールと、
前記ベルトの前記外側表面上のニップ前位置におけるニップ前温度を検出するための第1の温度センサと、
各第1の加熱要素と前記第1の温度センサに接続された第1の電圧変調器と、から構成される印刷に利用可能な装置であって、
前記第1の電圧変調器は、前記第1の温度センサから前記ニップ前温度を示す温度信号を受け取って、各第1の加熱要素が部分パワーからフルパワーまでの電力レベルにおいて常時オン状態に維持されるように各第1の加熱要素に供給される交流電圧を変調することにより前記ニップ前温度を制御することを特徴とする印刷に利用可能な装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−160487(P2010−160487A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2181(P2010−2181)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】