説明

印刷制御装置および印刷装置

【課題】割り込み印刷における割り込まれる側と割り込む側の損益バランスが適正となるように印刷制御を行うことができる印刷制御装置および印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置は、印刷ジョブが投入されたときに先行の印刷ジョブによる印刷を実行中である場合には(S101;Yes)、先行の印刷ジョブを一時中断して投入された印刷ジョブの割り込み印刷を許可するか否かの割り込み可否判断を、先行ジョブの残りの印刷時間と、投入ジョブの印刷時間と、先行ジョブの優先度と、投入ジョブの優先度とに基づいて行う(S103〜S106)。割り込みを許可しないと判断した場合は(S106;No)、投入ジョブを予約待機とし(S107)、割り込みを許可すると判断した場合は(S106;Yes)、先行ジョブを一時中断して投入ジョブを割り込み印刷する割り込み制御を行う(S108)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷制御装置および印刷装置に係り、特に、実行中の印刷を一時中断して他の印刷を実行する割り込み印刷の可否判断や制御を行う印刷制御装置および印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コピー機能やプリンタ機能などを備えた印刷装置においては、実行中の印刷の途中で他の印刷を至急行いたい場合があるなどのユーザニーズに応えるための割り込み印刷機能が知られている。この機能では、「割り込みボタン」が押下されると実行中の印刷を強制中断して他の印刷の割り込みを受け付け、その割り込み印刷を完了すると中断していた印刷を再開するなどの動作を行う。
【0003】
印刷を割り込む側と割り込まれる側のユーザが異なる場合には、割り込む側にとっては自分の印刷を優先的に実行できるため有益であるが、割り込まれる側にとっては先行していた自分の印刷が後回しにされて完了時間が延びてしまうといった不利益を蒙りやすくなる。特に、時間の掛かる印刷が割り込まれると、自分の印刷が完了するまでの待ち時間が長くなって受ける不利益(損失時間)が大きくなるようなこともある。しかし、長時間の印刷の途中で比較的時間が短く緊急度(優先度)の高い印刷などを割り込ませるような場合には、割り込まれる側に与える不利益を小さくしつつ、割り込む側がこの機能の恩恵に授かれるといった利点がある。
【0004】
そのため、割り込み印刷の可否判断や制御は、割り込まれる側と割り込む側の損益バランスが適正化(最適化)されるように行うことが望ましい。この適正化を図る上では、割り込まれる側の印刷があとどの位時間が掛かるのかといった残りの印刷時間と、割り込まれる側の不利益(損失時間)に直接関係する割り込む側の印刷時間と、どちらをより優先させるかといった優先度合い(どちらがより重要かといった重要度合い)とを考慮する必要があり、これらの要素から総合的に判断することが望ましい。
【0005】
たとえば、特許文献1には、割り込まれる側の不利益を改善するために、印刷ジョブの実行中に新たにユーザ端末から入力された印刷ジョブが緊急ジョブに設定されているか否かを判別し、緊急ジョブである場合はその緊急ジョブの印刷枚数と先行ジョブの残りの印刷枚数とを比較して緊急ジョブの割り込み禁止制御を行う技術が開示されている。
【0006】
特許文献2には、ファクシミリやプリント指示でメモリ受信した画像データの印刷において、大量印刷中でも優先度の高い文書を効率よく印刷するために、先行ジョブ(印刷実行中の画像データ)に対する割り込み条件(ユーザ設定による先行ジョブの上限規定ページ数/上限規定データ量/上限規定時間)を満足した場合に、待機ジョブ(印刷待ちの画像データ)の優先度を規定した優先度属性情報(ユーザ設定による待機ジョブの印刷総ページ数、印刷総データ量、ユーザ情報など)に基づいて割り込み印刷の可否判断(先行ジョブと待機ジョブの優先度判断)を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−197053号公報
【特許文献2】特開平11−224168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1の技術は、割り込み印刷の可否を印刷枚数のみで判断している。このような単一要素による判断では、割り込まれる側と割り込む側の損益バランスを適正化する上では十分でない。
【0009】
特許文献2の技術は、割り込み印刷の可否判断に待機ジョブのページ数やデータ量などを使用している。しかし、この技術も結局は個々の要素で判断しているため、割り込み印刷における損益バランスの適正化を図る上では不十分である。
【0010】
この損益バランスの適正化を実現する上では、上述したように、割り込まれる側と割り込む側の双方の印刷時間といった量的要素と優先度合い(重要度合い)といった質的要素を考慮する必要があり、これらの複合要素を用いて判断することが望ましい。
【0011】
また、従来の手動操作による割り込み印刷機能は、専用の割り込みボタンを押下することで作動するようになっており、この機能自体や操作の認知度が上がらないと利用されない傾向にあるため、使い勝手の点でも改善の余地がある。
【0012】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、割り込み印刷における割り込まれる側と割り込む側の損益バランスが適正となるように印刷制御を行うことができる印刷制御装置および印刷装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0014】
[1]印刷部による印刷を実行中の第1の印刷ジョブを一時中断して第2の印刷ジョブの割り込み印刷を許可するか否かの割り込み可否判断を、前記第1の印刷ジョブの残りの印刷時間と、前記第2の印刷ジョブの印刷時間と、前記第1の印刷ジョブの優先度および前記第2の印刷ジョブの優先度のうちの少なくともいずれか一方とに基づいて行う制御部を備えた印刷制御装置。
【0015】
上記発明では、先行する第1の印刷ジョブの途中で第2の印刷ジョブの割り込み印刷を許可するか否かの判断(割り込み可否判断)は、第1の印刷ジョブの残りの印刷時間および第2の印刷ジョブの印刷時間といった量的要素と、第1および第2の印刷ジョブの少なくとも一方の優先度といった質的要素とによる複合要素に基づいて行う。これにより、割り込まれる側の第1の印刷ジョブと割り込む側の第2の印刷ジョブの損益バランスが適正となるような割り込み可否判断が行えるようになり、その判断結果から損益バランスの適正化を図った印刷制御が行えるようになる。
【0016】
[2]前記制御部は、印刷ジョブの実行中に、前記印刷部の待機時に印刷ジョブを実行開始する操作と同一操作を受け付けると前記割り込み可否判断を行う
ことを特徴とする[1]に記載の印刷制御装置。
【0017】
上記発明では、印刷部が待機している非印刷動作状態から印刷ジョブを実行開始する通常の操作(ジョブ実行開始操作)と同じ操作で割り込み印刷を利用できるようになる。このように、特別な操作が要らないことで割り込み印刷の使い勝手が向上する。
【0018】
また、割り込み印刷における損益バランスの適正化が図られることで、このような操作兼用による弊害を抑えた簡単な操作方法を実現することができる。すなわち、損益バランスの適正化が図られていない構成、たとえば、従来の専用操作(割り込みボタンの押下操作)による割り込み印刷機能のように、割り込まれる側が不利益を蒙りやすい構成などにおいて、上記の操作兼用を取り入れると、割り込ませる必要がなくても通常操作によって割り込み印刷が行われてしまうような弊害を生じることになるが、このような弊害を起こさずに、簡単な操作による使い勝手のよい割り込み印刷を実現することができる。
【0019】
[3]前記制御部は、前記割り込み可否判断で前記第2の印刷ジョブの割り込み印刷を許可すると判断した場合に、前記印刷部に前記第1の印刷ジョブの印刷を一時中断させて前記第2の印刷ジョブの印刷を実行させる割り込み制御を行う
ことを特徴とする[1]または[2]に記載の印刷制御装置。
【0020】
上記発明では、割り込み印刷が許可されると自動的に実行されるため、利便性が向上する。
【0021】
[4]印刷ジョブの実行を指示するユーザのユーザ識別情報を取得する取得部と、
ユーザの端末装置と通信する通信部とを備え、
前記制御部は、前記取得部が取得したユーザ識別情報に基づいて前記第1の印刷ジョブの実行を指示したユーザを識別し、前記割り込み制御を行う場合は実行中の前記第1の印刷ジョブが前記割り込み印刷によって一時中断されたことを前記識別したユーザの端末装置に通知する
ことを特徴とする[3]に記載の印刷制御装置。
【0022】
上記発明では、割り込み印刷を受けたユーザは、自身の端末装置に通知された内容からそのことを認識することができ、自分の印刷ジョブの完了が予想よりも遅れることを事前に把握できるようになる。
【0023】
[5]前記制御部は、前記割り込み可否判断で前記第2の印刷ジョブの割り込み印刷を許可しないと判断した場合に、前記第2の印刷ジョブをキャンセルするか否かを問い合わせてその指示を受け付ける制御を行う
ことを特徴とする[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の印刷制御装置。
【0024】
上記発明では、割り込み印刷が許可されなかったユーザは、自分の指示した印刷ジョブ(第2の印刷ジョブ)をキャンセルするか否かの問い合わせを受け、その指示が行えるようになる。これにより、割り込み不許可となった印刷ジョブをキャンセルするか、または、通常の予約待機状態にするかなどの選択が行えるようになり、利便性が向上する。
【0025】
[6]前記制御部は、前記割り込み可否判断で前記第2の印刷ジョブの割り込み印刷を許可しないと判断した場合に、前記第1の印刷ジョブの前記残りの印刷時間を報知する制御を行う
ことを特徴とする[1]乃至[5]のいずれか1つに記載の印刷制御装置。
【0026】
上記発明では、割り込み印刷が許可されなかったユーザは、現在実行中の印刷ジョブ(第1の印刷ジョブ)の残りの印刷時間の報知を受け、自分の指示した印刷ジョブ(第2の印刷ジョブ)の凡その実行開始時刻を把握することができる。またこれにより、その割り込み不許可となった印刷ジョブをキャンセルするか否かが判断しやすくなる。
【0027】
[7]前記制御部は、前記第1の印刷ジョブが前記割り込み印刷を実行中の印刷ジョブである場合は、前記第2の印刷ジョブの割り込み印刷を受け付けない制御を行う
ことを特徴とする[1]乃至[6]のいずれか1つに記載の印刷制御装置。
【0028】
上記発明では、割り込み印刷を実行中の印刷ジョブの途中に更に他の印刷ジョブを割り込み印刷する多重割り込みは、制御が複雑になったり、排出を一時中断される印刷物が複数発生して印刷物の混在や紛失などが起こりやすくなったりするため、受け付けないようにする。これにより、多重割り込みによる不具合を回避することができる。
【0029】
[8]請求項1乃至7のいずれか1つに記載の印刷制御装置と、
前記印刷部とを備え、
前記制御部は、前記印刷部に対して画像データに基づく画像を記録紙に印刷する制御を行う
ことを特徴とする印刷装置。
【0030】
上記発明では、画像データに基づく画像を記録紙に印刷する印刷装置において、[1]乃至[7]のいずれか1つに記載した作用・効果が得られる。
【0031】
[9]原稿を読み取って画像データを取得する読取部と、
前記読取部にセットされた前記原稿の厚さと重さのうちの少なくとも一方を測定してその測定情報を取得する測定部とを備え、
前記制御部は、前記測定部によって取得された前記測定情報から推定した前記原稿の枚数に基づいて、前記読取部によって取得される前記原稿の画像データに基づく画像を前記印刷部により前記記録紙に印刷する前記第2の印刷ジョブの前記印刷時間を算出する
ことを特徴とする[8]に記載の印刷装置。
【0032】
上記発明では、原稿を読み取ってその複製画像を記録紙に印刷する印刷ジョブの場合には、読取部にセットされた原稿の厚さと重さのうちの少なくとも一方を測定し、この測定情報から推定した原稿の枚数(推定枚数)に基づいて、その割り込む側の印刷ジョブ(第2の印刷ジョブ)の印刷時間を算出し、割り込みの可否を判断する。これにより、原稿を読み取る前に割り込みの可否を迅速に判断できるようになる。ユーザは、割り込み不許可の場合はその迅速な判断結果を受けて、印刷ジョブをキャンセルし、他の印刷装置でこの印刷ジョブを実行するなどの対応を素早く取れるようになる。したがって、ユーザの利便性が向上する。
【0033】
[10]前記制御部は、前記原稿の枚数に加えて、前記第2の印刷ジョブに設定された印刷条件に基づいて前記印刷時間を算出する
ことを特徴とする[9]に記載の印刷装置。
【0034】
上記発明では、原稿の読み取りを伴う印刷ジョブの印刷時間を、原稿の枚数に加えて、その印刷ジョブに設定された印刷条件に基づいて算出する。印刷条件は、たとえば、印刷サイズ(記録紙サイズ)、片面印刷/両面印刷、複数ページを1ページに集約して印刷する集約印刷、印刷部数などである。この印刷条件と原稿の枚数によって印刷枚数が規定される。さらに、印刷サイズや片面印刷/両面印刷などによって印刷速度(1分間当たりの印刷枚数[枚/分])が変化する。このような印刷枚数や印刷速度に影響する印刷条件を加味することで、より正確な印刷時間を算出することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、割り込み印刷における割り込まれる側と割り込む側の損益バランスが適正となるような印刷制御が可能となる。したがって、双方のユーザにとって利便性の高い印刷制御を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るネットワーク印刷システムのシステム構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る端末の制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る印刷装置の機構系の構成を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る自動原稿搬送装置の原稿の厚さや重さを測定する構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る自動原稿搬送装置の原稿の厚さや重さを測定する構成を示す正面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る印刷装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る第2の印刷ジョブの優先度が中の場合の第1の印刷ジョブの残時間と割り込み許可時間の関係を示すグラフ図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る第2の印刷ジョブの優先度が高の場合の第1の印刷ジョブの残時間と割り込み許可時間の関係を示すグラフ図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る第2の印刷ジョブの優先度が低の場合の第1の印刷ジョブの残時間と割り込み許可時間の関係を示すグラフ図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る割り込み可否判断および割り込み制御動作のメインルーチンを示す流れ図である。
【図11】図10のメインルーチンにおける割り込み制御処理のサブルーチンを示す流れ図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る割り込み可否判断および割り込み制御動作のメインルーチンを示す流れ図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る割り込み制御処理のサブルーチンを示す流れ図である。
【図14】本発明の第4の実施形態に係る割り込み可否判断および割り込み制御動作のメインルーチンを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を説明する。
【0038】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る印刷装置20と、印刷装置20にアクセスする任意台数の端末10とをLAN(Local Area Network)などのネットワーク2に接続して構成されたネットワーク印刷システム5のシステム構成例を示している。
【0039】
印刷装置20は、原稿を光学的に読み取って画像データを取得し、その画像データを保存したり端末10へ送信したりするスキャン機能、原稿を読み取り、かつその読み取りで得た画像データに基づいて原稿の複製画像を記録紙に印刷して出力するコピー機能、端末10から受信した印刷データをラスタライズして得た画像を記録紙に印刷して出力するプリンタ機能、公衆回線網を通じて外部機器と画像(画像データ)をファクシミリで送受信するファクシミリ機能(FAX機能)、電子メールサーバを経由して端末10に電子メールを送信する電子メール機能などを備えた複合機(Multi Function Peripheral/Multi Function Printer;MFP)として構成されている。
【0040】
印刷装置20がユーザから指示されて実行するジョブには、上記のコピー機能を用いて印刷を実行するコピージョブやプリンタ機能を用いて印刷を実行するプリントジョブなどがある。ユーザは、コピージョブの場合は印刷装置20を操作して実行を指示し、プリントジョブの場合は端末10を操作して印刷装置20に実行を指示する。なお、これらの印刷を伴うジョブは総称して「印刷ジョブ」と呼ぶ。
【0041】
また印刷装置20は、先に指示された実行中の印刷ジョブ(第1の印刷ジョブ)の途中で後から指示された印刷ジョブ(第2の印刷ジョブ)の割り込み印刷を許可するか否かの割り込み可否判断や、割り込み印刷を許可すると判断した場合の割り込み制御などを自動で行う印刷制御装置としての機能を備えている。
【0042】
端末10は、印刷装置20に対してネットワーク2を通じてアクセスし、ドキュメントのプリントなど各種作業の指示や操作の依頼などを行う装置であり、たとえば、パーソナルコンピュータ(Personal Computer;PC)に印刷装置20のドライバプログラム(印刷ドライバ)などを組み込んで構成される。
【0043】
図2は、端末10における制御系の構成をブロック図で示している。端末10は、オペレーティングシステム(Operating System;OS)とそのOS上で動作する各種のアプリケーションプログラムを搭載しており、ユーザID(Identification)およびパスワードの入力を受け付けてユーザを認証するユーザ認証機能(ログイン機能)、アプリケーションプログラムによってドキュメントなどを作成する機能、ドキュメントなどの印刷を行う際にドライバプログラムによって印刷モード(印刷条件)の設定を受け付け、その印刷モードを設定した印刷ジョブを生成しネットワーク2を通じて印刷装置20に送信する機能などを備えている。
【0044】
端末10は、制御部としてのCPU(Central Processing Unit)11に、バス12を介してROM(Read Only Memory)13と、RAM(Random Access Memory)14と、ハードディスク装置(Hard Disk Drive;HDD)15と、表示部16と、操作部17と、ネットワーク通信部18とを接続して構成される。
【0045】
CPU11は、ROM13に格納されているプログラムに基づいて端末10の動作を制御する。RAM14はCPU11がプログラムを実行する際に各種データを一時的に格納するワークメモリなどとして使用される。ハードディスク装置15は、OSやアプリケーションプログラムのほか、印刷装置20のドライバプログラム70、ユーザの認証情報となるユーザIDおよびパスワード、ドキュメントや各種の保存データなどを格納する。
【0046】
表示部16は液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display;LCD)などの表示装置で構成されており、OS、アプリケーションプログラム、ドライバプログラム70、ユーザ認証(ログイン)の操作や設定などを行うための画面、および画像や映像などを表示する。操作部17はキーボードやマウスなどの入力装置で構成されており、ユーザが端末10に対して行う操作や入力を受け付ける。ネットワーク通信部18は、ネットワーク2を通じて印刷装置20と通信する機能を果たす。
【0047】
ユーザが端末10から印刷装置20へ印刷(プリント)を指示する場合は、端末10にログインし、表示部16および操作部17を通して所望のドキュメントなどの印刷指示操作を行う。この印刷指示操作では、必要に応じて印刷モードの設定を行う。
【0048】
ユーザにより印刷モードの設定を含む印刷指示操作が行われると、端末10のドライバプログラム70は、対象となるドキュメントなどの印刷データを含む印刷ジョブ(プリントジョブ)を生成する。印刷ジョブのヘッダには、端末10に関する情報(端末情報)と、ユーザIDと、上記ドキュメントなどの属性情報と、設定された印刷モードを示す印刷モード情報などを付加する。ドライバプログラム70は、この印刷ジョブを印刷装置20に送信して印刷を指示する。
【0049】
印刷ジョブに付加される端末情報は、たとえば、端末10のID(Identification)やネットワーク2上におけるIP(Internet Protocol)アドレスなどの情報である。属性情報は、印刷を指示するドキュメントの名称(ファイル名)を示すファイル名情報、ページ数を示すページ数情報、印刷データのサイズを示すデータサイズ情報などである。
【0050】
印刷モード情報は、印刷を行う記録紙のサイズ(A4/A3など)、印刷方向(縦方向/横方向)、片面印刷/両面印刷、複数ページを1ページに集約して印刷する集約印刷(Nin1(1in1/2in1/4in1など))、モノクロ/カラー、解像度、印刷ページ指定、印刷部数などの印刷モードを示す情報である。
【0051】
図3は、印刷装置20の機構系の構成を示している。印刷装置20は、操作表示部27と、原稿給紙トレイ28aにセットされた原稿(原稿M)を1枚ずつ送り出して搬送し、読取位置Sを通過させて原稿排紙トレイ28bに排出する自動原稿搬送装置(Auto Document Feeder;ADF)28と、この自動搬送される原稿を読取位置Sで光学的に読み取って画像データを取得したり、プラテンガラス29aの上に載置された原稿を光学的に読み取って画像データを取得したりするスキャナ部29と、入力された画像データに基づく画像(印刷ジョブに係る画像)を記録紙(記録紙P)に印刷して排出するプリンタ部30とを備えている。
【0052】
印刷装置20では、原稿を読み取って画像データを取得する読取部は、自動原稿搬送装置28とスキャナ部29によって構成されており、印刷部はプリンタ部30によって構成されている。
【0053】
自動原稿搬送装置28は、原稿給紙トレイ28aにセットされた原稿の枚数を算出するために原稿(原稿束)の厚さや重さを測定する機能を備えている。スキャナ部29は、たとえば、原稿を照射する光源と、原稿をその幅方向に1ライン分読み取るラインイメージセンサと、ライン単位の読取位置を原稿の長さ方向に移動させる移動機構と、原稿からの反射光をラインイメージセンサに導いて結像させるレンズやミラーからなる光学経路などを備えている。ラインイメージセンサはCCD(Charge Coupled Device)で構成される。ラインイメージセンサが出力するアナログ画像信号はA/D(Analog to
Digital)変換され、デジタルの画像データとして出力される。
【0054】
プリンタ部30は、給紙ユニット(給紙装置)41、搬送装置42、感光体ドラム43、帯電装置44、レーザーユニット45、現像装置46、転写装置47、分離装置48、クリーニング装置49、定着装置50、排紙トレイ51などを備え、給紙ユニット41から記録紙Pを供給して搬送装置42により搬送し、入力された画像データに対応する画像を感光体ドラム43〜定着装置50の動作による電子写真プロセスによって記録紙Pに形成して排紙トレイ51に排出するレーザープリンタなどとして構成されている。レーザ光に代えてLED(Light Emitting Diode)で感光体ドラムを照射するLEDプリンタなどの他の方式のプリンタであってもかまわない。
【0055】
図4および図5は、自動原稿搬送装置28における原稿の厚さや重さを測定する構成を示している。
【0056】
自動原稿搬送装置28は、原稿給紙トレイ28aにセットされた原稿の厚さを測定する原稿厚さ測定機構60と、同原稿の重さを測定する原稿重さセンサ65と、原稿給紙トレイ28a上の原稿の有無、およびセットされている原稿のサイズを検出する複数の原稿センサ(図示省略)とを備えている。
【0057】
原稿厚さ測定機構60は、原稿給紙トレイ28aの先端側の上方に配置されたアクチュエータ61と、アクチュエータ61を介して原稿給紙トレイ28a上の原稿の厚さを測定する原稿厚さセンサ64とで構成されている。アクチュエータ61は、上下方向へ回動して原稿給紙トレイ28a上の原稿の上面先端部に接触および離間するアーム状の接触子62と、接触子62の基部に接続されて接触子62を回動可能に支持する回動軸63と、回動軸63を正逆方向へ回動させるモータなどの駆動源(図示省略)とを備えている。原稿厚さセンサ64は、回動軸63の回動角度(回転角度)を検出するセンサであり、たとえば、回転角度の大きさに応じて出力電圧を変化させる回転角度センサ(ポテンショメータ)などで構成されている。
【0058】
原稿厚さ測定機構60は、図5の二点鎖線で示すように、接触子62の先端を原稿給紙トレイ28aに接触させたリセット状態で、原稿厚さセンサ64が回動軸63の角度に応じて出力した電圧がリセット電圧とされる。アクチュエータ61は、通常時は図5の破線で示すように、接触子62を上昇させて原稿給紙トレイ28aから離間させている。原稿給紙トレイ28aにセットされた原稿Mが原稿センサによって検出された原稿検出時に、アクチュエータ61は駆動して接触子62を下降方向へ回動させ、図5の実線で示すように、接触子62の先端を原稿Mの上面先端部に接触させる。この接触状態で原稿厚さセンサ64が回動軸63の角度に応じて出力した電圧とリセット電圧との差分が測定電圧となり、原稿M(原稿束)の厚さはこの測定電圧から算出される。原稿Mの厚さ測定が終了すると、アクチュエータ61は逆方向へ駆動して接触子62を図5の破線で示す上昇位置へ退避させる。
【0059】
この原稿厚さ測定機構は、上記のような原稿の先端部の厚さを測定する構成に限らず、接触子を原稿上面の側端部に接触させてその側端部の厚さを測定する構成などとしてもよい。
【0060】
図4および図5に示すように、原稿重さセンサ65は、原稿給紙トレイ28aの上面における原稿Mが載置される領域に埋設されている。原稿重さセンサ65は、たとえば、外力によるひずみ量に応じて電気抵抗値を変化させる(出力電圧を変化させる)ひずみゲージ(ストレインゲージ)を用いたひずみゲージ方式、入力荷重の大きさに応じて出力電圧を変化させる圧電素子(ピエゾ素子)を用いた圧電素子方式などの荷重センサで構成されている。
【0061】
原稿重さセンサ65は、原稿給紙トレイ28aに原稿Mがセットされず荷重が加えられていない無荷重状態で出力した電圧がリセット電圧とされる。原稿給紙トレイ28aに原稿Mがセットされて荷重が加えられたときにその荷重に応じて出力した電圧とリセット電圧との差分が測定電圧となり、原稿M(原稿束)の重さはこの測定電圧から算出される。
【0062】
この原稿重さセンサは、単一のセンサによって構成されるものに限らず、適宜箇所に分割配置された複数のセンサによって構成されるものでもよい。
【0063】
図6は、印刷装置20における制御系の構成をブロック図で示している。印刷装置20は、制御部としてのCPU21に、バス22を介してROM23と、RAM24と、不揮発メモリ25と、ハードディスク装置(HDD)26と、操作表示部27と、自動原稿搬送装置28と、スキャナ部29と、プリンタ部30と、画像処理部31と、ファクシミリ通信部32と、ネットワーク通信部33と、ユーザ認証部34と、I/O(Input/Output)ポート部35とを接続して構成される。
【0064】
CPU21は、ROM23に格納されているプログラムに基づいて印刷装置20の動作を制御する。RAM24はCPU21がプログラムを実行する際に各種データを一時的に格納するワークメモリとして使用されるほか、画像データを一時的に保存するための画像メモリなどにも使用される。
【0065】
不揮発メモリ25は、電源がオフされても記憶が保持されるメモリであり、装置固有の情報や各種の設定情報、ユーザデータベース71、印刷履歴テーブル72などが記憶される。
【0066】
ユーザデータベース71には、印刷装置20の使用を許可されたユーザの情報が記憶されている。たとえば、ユーザ毎に、ユーザIDと、認証情報と、設定情報と、ユーザの使用する端末10(ユーザ端末)のIPアドレスと、電子メールアドレスなどが対応付けられて記憶されている。
【0067】
印刷履歴テーブル72は、印刷装置20がユーザから指示されて実行したコピージョブやユーザの端末10から受信して実行したプリントジョブの履歴に関する情報をユーザ毎に記憶管理するテーブルである。
【0068】
プリントジョブの場合は、ジョブに付加されている端末情報、ユーザID、ドキュメントなどの属性情報、印刷モード、ジョブの受信時にCPU21が発行したジョブID、受信日時、状態(実行待ち/実行済/エラー終了など)、実行日時などが対応付けられて印刷履歴テーブル72に記憶される。
【0069】
コピージョブの場合は、ジョブを指示したユーザ(認証ユーザ)のユーザID、ジョブの実行指示を受け付けてCPU21が発行したジョブID、受付日時、状態(実行待ち/実行済/エラー終了など)、実行日時、ユーザの設定した印刷モードなどが対応付けられて印刷履歴テーブル72に記憶される。コピージョブの印刷モードは、たとえば、印刷を行う記録紙のサイズ(A4/A3など)、片面読み取り片面印刷/片面読み取り両面印刷/両面読み取り片面印刷/両面読み取り両面印刷、集約印刷(Nin1)、モノクロ/カラー、解像度、印刷部数などである。
【0070】
ハードディスク装置26は、各種の保存データなどを格納するほか、原稿のスキャンやコピーにおいて原稿を読み取って取得された画像データ、端末10から指示された印刷ジョブに含まれている印刷データ(画像データ)なども保存する。
【0071】
操作表示部27は、操作画面、設定画面、選択画面、入力画面、案内画面などの各種の画面を表示する表示部としての機能と、印刷装置20の機能に係る操作、設定、選択、情報の入力などの各種の手動操作を受け付ける操作部としての機能とを果たす。ここでは、図3に示すように、表示機能を担う液晶ディスプレイ27aと、該液晶ディスプレイ27aの表面に形成され、押下された座標位置を検出するタッチパネルや、スタートボタン27b、ストップボタン27c、キャンセルボタン27d、図示しないテンキーや各種操作スイッチなどで構成される。
【0072】
画像処理部31は、端末10から受信した印刷データ(ベクタ形式の印刷データ)に対してラスタライズ処理を施す機能や、画像データに対して、画像補正、回転、拡大/縮小、圧縮/伸張など各種の画像処理を施す機能を果たす。
【0073】
ファクシミリ通信部32は、ファクシミリ機能を備えた外部機器と公衆回線網を通じて通信する機能を果たす。ネットワーク通信部33は、ネットワーク2を通じて端末10やサーバなどと通信する機能を果たす。
【0074】
ユーザ認証部34は、ユーザ認証を行うための認証用データ(認証情報)を取得する機能を果たす。ユーザ認証としては、たとえば、ユーザの所持するID(Identification)カードなどに記憶されている認証用データを接触式または非接触式のカードリーダなどで読み取って、予め登録されている認証情報と照合し個人認証を行うカード認証技術、ユーザの指紋や指静脈などの生体情報を認証用データとして生体認証ユニットなどで読み取って、予め登録されている認証情報と照合し個人認証を行う生体認証技術、ユーザが認証用データとしてのパスワードを操作表示部27から入力して、予め登録されている認証情報と照合し個人認証を行うパスワード認証技術などの汎用の各種の認証技術を単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0075】
I/Oポート部35は、CPU21が周辺機器などとデータを送受信するための入出力部としての機能を果たす。I/Oポート部35には、自動原稿搬送装置28に装備された原稿厚さセンサ64と原稿重さセンサ65が接続されている。
【0076】
次に、印刷装置20の動作について説明する。まず、プリンタ部30による印刷を実行中の第1の印刷ジョブを一時中断して第2の印刷ジョブの割り込み印刷を許可するか否かの判断方法(アルゴリズム)について説明し、続いて、その割り込み可否判断と割り込み制御の動作について説明する。
【0077】
(割り込み可否判断方法)
割り込み印刷を許可するか否かの割り込み可否判断は、割り込まれる側の第1の印刷ジョブと割り込む側の第2の印刷ジョブの損益バランスの適正化を図るために、以下の4つのパラメータを用いて行う。なお、先に投入(指示)されて印刷を実行中の「第1の印刷ジョブ」は「先行ジョブ」、後から投入された「第2の印刷ジョブ」は「投入ジョブ」とも呼ぶ。
【0078】
・第1の印刷ジョブ(先行ジョブ)の残りの印刷時間:T1
・第2の印刷ジョブ(投入ジョブ)の印刷時間:T2
・第1の印刷ジョブ(先行ジョブ)の優先度:P1
・第2の印刷ジョブ(投入ジョブ)の優先度:P2
【0079】
第1の印刷ジョブの残りの印刷時間(残時間):T1は、第2の印刷ジョブの投入時点での残りの印刷枚数(残枚数):N1を印刷速度:V1(枚/分)で除算して算出される時間(予測値)である。
T1=N1/V1
【0080】
第1の印刷ジョブの元の印刷枚数は、コピージョブの場合は原稿の枚数(読み取り枚数)と印刷モードによって規定され、プリントジョブの場合はドキュメントのページ数と印刷モードによって規定される。印刷速度(1分間当たりの印刷枚数[枚/分])については、たとえば、A4・片面・モノクロなどの印刷モードを基準にした基準値の印刷速度が機種の仕様・性能で決まっており、印刷ジョブの設定印刷モードが基準設定と異なる場合には、その印刷ジョブの印刷速度は基準値に対して変化する場合がある。この印刷枚数や印刷速度に影響する印刷モードは、前述した記録紙サイズ、片面印刷/両面印刷、集約印刷、モノクロ/カラー、印刷部数、(プリントジョブの場合は印刷ページ指定も含む)などである。
【0081】
第2の印刷ジョブの印刷時間:T2は、該ジョブの印刷枚数:N2を印刷速度:V2(枚/分)で除算して算出される時間(予測値)である。
T2=N2/V2
【0082】
この場合も第1の印刷ジョブと同様に、印刷枚数は原稿の枚数またはドキュメントのページ数と印刷モードによって規定され、印刷速度は基準値に対し印刷モードに応じて変化する場合がある。ただし、原稿の枚数については、原稿を実際に読み取ってカウントした読み取り枚数(カウント値)ではなく、自動原稿搬送装置28にセットされた原稿の厚さや重さを測定し、その測定結果(原稿厚さセンサ64/原稿重さセンサ65による測定電圧)から算出した推定枚数(推定値)である。この原稿の枚数は、原稿の厚さと重さのうちの少なくとも一方を測定することで算出できる。さらに、原稿センサによって検出された原稿のサイズも加味して算出するようにしてもよい。
【0083】
印刷ジョブの優先度(Priority)は、たとえば、低(Low)<中(Mid)<高(High)の3段階などであり、ユーザ単位やジョブ単位で設定される。
【0084】
ユーザ単位の場合は、予めユーザ毎に優先度を設定してユーザデータベース71に登録しおき、印刷ジョブを投入したユーザを識別してそのユーザに対応する優先度を割り込み可否判断のパラメータとして使用する。ユーザの識別は、コピージョブの場合はユーザ認証によって行い、プリントジョブの場合はジョブに付加されているユーザIDに基づいて行う。
【0085】
ジョブ単位の場合は、印刷ジョブの投入時にユーザが設定する該ジョブのみに有効なワンタイムの優先度であり、この優先度を割り込み可否判断のパラメータとして使用する。ジョブ投入時の優先度設定は、コピージョブの場合は印刷装置20の操作表示部27に表示されるコピージョブ設定画面(印刷モード設定画面)を通して行い、プリントジョブの場合は端末10の表示部16に表示されるプリントジョブ設定画面(印刷モード設定画面)を通して行う。またプリントジョブの場合は、設定された優先度を示す優先度情報がジョブに付加されて印刷装置20に送信される。印刷装置20では、CPU21はコピーおよびプリントのいずれの印刷ジョブの場合も、このジョブ単位の優先度を該ジョブの履歴情報として印刷履歴テーブル72に記憶する。
【0086】
そして、CPU21は、上記の4つのパラメータに基づいて割り込み可否判断を行う。詳細には、第1の印刷ジョブの残時間(T1)に応じて割り込みを許可する時間(割り込み許可時間:T)を求め、第2の印刷ジョブの印刷時間がこの割り込み許可時間以下であれば割り込み許可と判断し、超過であれば割り込み不許可と判断する。
【0087】
割り込み許可時間は、第1の印刷ジョブの残時間が長いほど長くなるようにしている(第1の印刷ジョブの残時間が長いほど第2の印刷ジョブに有利)。また、第1の印刷ジョブの優先度と第2の印刷ジョブの優先度に基づいて(第1の印刷ジョブと第2の印刷ジョブの優先度合いに基づいて)割り込み許可時間の長さを変更するようにしている。ここでは、第2の印刷ジョブに対して第1の印刷ジョブの優先度が高いほど割り込み許可時間が短くなるようにし(第1の印刷ジョブに有利)、第1の印刷ジョブに対して第2の印刷ジョブの優先度が高いほど割り込み許可時間が長くなるようにしている(第2の印刷ジョブに有利)。
【0088】
また、第1の印刷ジョブの残時間が短い場合は割り込みを行わずに該ジョブを完了させてしまった方が好ましいとの考えにより、第1の印刷ジョブの残時間が所定時間以下になると割り込みを禁止するようにしている。この所定時間は、割り込み禁止時間として設けている。
【0089】
CPU21は、上記の事項を反映した下記の演算式1を用いて割り込み許可時間(T)を算出し、第2の印刷ジョブの印刷時間(T2)がその算出時間以下であれば割り込み許可と判断し、超過であれば割り込み不許可と判断する。
【0090】
T=(T1−TN)×p2/p1 ・・・(1)
T≧T2 ⇒ 割り込み許可
T<T2 ⇒ 割り込み不許可
T:割り込み許可時間
TN:割り込み禁止時間
p1:第1の印刷ジョブの優先度P1のレベルに応じて設定される変数
p2:第2の印刷ジョブの優先度P2のレベルに応じて設定される変数
(T1、T2は前出。)
【0091】
上記の演算式1におけるp1とp2は、優先度の低(Low)<中(Mid)<高(High)のレベルに応じた大きさの変数である。この変数は、第1と第2の印刷ジョブの同一レベルの優先度同士で同じ数値を割り当てるようにしてもよく、異なる数値を割り当てるようにしてもよい。たとえば、下記のように第2の印刷ジョブよりも第1の印刷ジョブの方に大きな数値を割り当てるなどしてもよい。
【0092】
優先度:Low ⇒ p1Low>p2Low
優先度:Mid ⇒ p1Mid>p2Mid
優先度:High ⇒ p1High>p2High
【0093】
この演算式1における「p2/p1」は、第1の印刷ジョブと第2の印刷ジョブの優先度合いを表している。
【0094】
割り込み禁止時間は、設定変更できるようにしてもよく、設けないようにしてもよい(割り込み禁止時間=0)。また、固定時間ではなく、優先度のレベルに応じて可変させるなどしてもよい。たとえば、第1の印刷ジョブの優先度レベルが高くなるに連れて割り込み禁止時間が長くなるようにする、あるいは、第2の印刷ジョブの優先度レベルが高くなるに連れて割り込み禁止時間が短くなるようにしてもよい。
【0095】
なお、T1がTNよりも短い場合には(T1<TN)、Tはマイナス値となるが、この場合は割り込み不許可となる。
【0096】
上記の演算式1によって導き出した割り込み許可時間と、割り込む側の印刷ジョブの印刷時間とを比較することで、割り込み印刷の可否を判断する本実施形態の割り込み可否判断方法は、割り込まれる側の印刷ジョブ(第1の印刷ジョブ)と割り込む側の印刷ジョブ(第2の印刷ジョブ)における、双方の印刷に要する時間といった量的パラメータ(量的要素)と、双方の優先度といった質的パラメータ(質的要素)とによる複合要素に基づいた判断方法となっている。
【0097】
図7〜図9は、演算式1による第1の印刷ジョブの残時間と割り込み許可時間の関係の一例をグラフで示している。図7は第2の印刷ジョブ(投入ジョブ)の優先度が中(Mid)の場合であり、図8は同優先度が高(High)の場合であり、図9は同優先度が低(Low)の場合である。
【0098】
本グラフでは、横軸が第1の印刷ジョブ(先行ジョブ)の残時間を示し、縦軸が割り込み許可時間を示す。3本のグラフ線は、第1の印刷ジョブの3段階の優先度に対応しており、優先度の高いグラフ線ほど残時間の増加に対する割り込み許可時間の増加幅(傾斜)が大きくなっている。また、横軸の「0」から所定時間までが割り込み禁止時間として設けられており、3本のグラフ線はいずれもこの割り込み禁止時間の終点を起点として、残時間が増加するのに伴い割り込み許可時間を増加させる傾斜直線となっている。
【0099】
図7に示すように、第2の印刷ジョブの優先度が「Mid」で、たとえば、第1の印刷ジョブの残時間が「10分」である場合には、第1の印刷ジョブの優先度が「Mid」であれば割り込み許可時間は「2分」となる。また、同優先度が「High」であれば割り込み許可時間は「3分」となり、同優先度が「Low」であれば割り込み許可時間は「1分」となる。
【0100】
図8および図9も同様の見方によって、第1の印刷ジョブの残時間が「10分」の場合の割り込み許可時間が求められる。
【0101】
第2の印刷ジョブの優先度:High(図8)
・第1の印刷ジョブの優先度:High ⇒ 割り込み許可時間:6分
・第1の印刷ジョブの優先度:Mid ⇒ 割り込み許可時間:4分
・第1の印刷ジョブの優先度:Low ⇒ 割り込み許可時間:2分
【0102】
第2の印刷ジョブの優先度:Low(図9)
・第1の印刷ジョブの優先度:High ⇒ 割り込み許可時間:75秒
・第1の印刷ジョブの優先度:Mid ⇒ 割り込み許可時間:50秒
・第1の印刷ジョブの優先度:Low ⇒ 割り込み許可時間:25秒
【0103】
第2の印刷ジョブは、印刷時間が上記の割り込み許可時間以下であれば割り込み許可となり、超過であれば割り込み不許可となる。また、第1の印刷ジョブの残時間が割り込み禁止時間以下の場合には、第2の印刷ジョブは割り込み不許可となる。
【0104】
(割り込み可否判断・制御動作)
図10および図11は、印刷装置20による割り込み可否判断および割り込み制御動作の流れを示している。
【0105】
印刷装置20で原稿のコピーを行う場合には、ユーザは原稿を自動原稿搬送装置28にセットし、印刷モードの設定を行い、操作表示部27のスタートボタン27bを押下する。このコピージョブに対するジョブ単位の優先度を設定する場合には、希望する優先度(低/中/高)の選択・設定も行ってからスタートボタン27bを押下する。印刷装置20でドキュメントのプリントを行う場合には、ユーザは端末10を操作して所望のドキュメントを指定し、印刷モードの設定を行い、印刷実行指示の操作(OKボタンのクリックなど)を行う。このプリントジョブに対するジョブ単位の優先度を設定する場合には、希望する優先度(低/中/高)の選択・設定も行ってから印刷実行指示の操作を行う。
【0106】
印刷装置20では、印刷ジョブ(コピージョブ/プリントジョブ)が投入されると(Start)、CPU21は、先行の印刷ジョブの印刷を実行中(プリンタ部30による印刷中)でない場合には(ステップS101;No)、その投入された印刷ジョブの印刷を実行し(ステップS102)、本動作を終了する(End)。先行ジョブの印刷を実行中である場合には(ステップS101;Yes)、投入ジョブの印刷枚数を算出する(ステップS103)。
【0107】
コピージョブの場合は、自動原稿搬送装置28にセットされた原稿の厚さや重さを測定して原稿の枚数を算出(推定)し、その推定原稿枚数と該ジョブに対して設定された印刷モードとに基づいて印刷枚数を算出する。プリントジョブの場合は、該ジョブに付加されているドキュメントなどのページ数と印刷モードとに基づいて印刷枚数を算出する。
【0108】
続いてCPU21は、上記の印刷枚数を投入ジョブの印刷モードから判明する印刷速度で除算して投入ジョブの印刷時間を算出(予測)し(ステップS104)、この投入ジョブの投入時点での先行ジョブの残りの印刷枚数を先行ジョブの印刷モードから判明する印刷速度で除算して先行ジョブの残りの印刷時間を算出(予測)し(ステップS105)、先行ジョブを一時中断して投入ジョブの割り込み印刷を許可するか否かを判断する(ステップS106)。この割り込み可否判断の詳細は、前述した通りであり、先行ジョブの残時間(T1)、割り込み禁止時間(TN)、先行ジョブの優先度(P1)に応じた変数(p1)、投入ジョブの優先度(P2)に応じた変数(p2)を用いた演算式1によって割り込み許可時間(T)を算出し、投入ジョブの印刷時間(T2)がその算出時間以下であれば割り込み許可と判断し、超過であれば割り込み不許可と判断する。
【0109】
割り込み不許可と判断した場合は(ステップS106;No)、投入ジョブを予約待機とし(ステップS107)、先行ジョブの印刷を実行完了した後に投入ジョブの印刷を実行し(ステップS102)、本動作を終了する(End)。割り込み許可と判断した場合は(ステップS106;Yes)、サブルーチンで図11に示す割り込み制御処理を行い(ステップS108)、その後、本動作を終了する(End)。
【0110】
割り込み制御処理では(図11参照)、CPU21は、投入ジョブがコピージョブである場合には(ステップS111;Yes)、自動原稿搬送装置28にセットされている原稿の読み取りを開始し(ステップS112)、ステップS113へ移行する。投入ジョブがプリントジョブである場合には(ステップS111;No)、そのままステップS113へ移行する。
【0111】
ステップS113では、実行中の先行ジョブの印刷を中断する。続いてCPU21は、投入ジョブの印刷を開始し(ステップS114)、この投入ジョブの印刷終了(ジョブ実行完了)を監視する(ステップS115;No〜ステップS115のループ)。投入ジョブの印刷が終了すると(ステップS115;Yes)、CPU21は投入ジョブの終了処理を行い(ステップS116)、中断していた先行ジョブの印刷を再開して(ステップS117)、メインルーチンに戻る(Return)。
【0112】
このように、本実施形態に係る印刷装置20では、先行する第1の印刷ジョブの途中で第2の印刷ジョブの割り込み印刷を許可するか否かの判断(割り込み可否判断)は、第1および第2の印刷ジョブにおける印刷時間(量的要素)と優先度(質的要素)とによる複合要素に基づいて行う。これにより、割り込まれる側の第1の印刷ジョブと割り込む側の第2の印刷ジョブの損益バランスが適正となるような割り込み可否判断が行えるようになり、その判断結果から損益バランスの適正化を図った印刷制御が行えるようになる。したがって、双方のユーザにとって利便性の高い印刷制御を提供することができる。
【0113】
また、印刷時間の算出では、印刷枚数や印刷速度に影響する印刷モードを加味することで、より正確な時間を算出することができる。これにより、損益バランスがより適正となる、あるいは最適となるような割り込み可否判断および印刷制御が行えるようになる。
【0114】
また、非印刷動作状態から印刷ジョブを実行開始する通常の操作、すなわち、コピージョブを実行開始する際の印刷装置20のスタートボタン27bの押下操作やプリントジョブを実行開始する際の端末10に表示されたOKボタンのクリック操作など、通常のジョブ実行開始操作と同じ操作で割り込み印刷を利用できるようになる。このように、特別な操作が要らないことで割り込み印刷の使い勝手が向上する。
【0115】
また、損益バランスの適正化が図られていない従来の割り込み印刷機能などの場合は、上記のような操作兼用を取り入れると、割り込ませる必要がなくても通常操作によって割り込み印刷が行われてしまうような弊害を生じることになるが、本実施形態では損益バランスの適正化を図っていることで、そのような弊害を起こさずに、簡単な操作による使い勝手のよい割り込み印刷を実現することができる。さらに、割り込み印刷が許可されると自動的に実行されるため、利便性が向上する。
【0116】
また、コピージョブの場合は、原稿を自動原稿搬送装置28にセットし、印刷モードなどを設定してスタートボタン27bを押下するだけで、その原稿の厚さや重さが自動測定されて原稿の枚数が算出され、原稿の枚数と設定した印刷モードに基づいて、投入しようとするコピージョブの印刷時間が算出され割り込みの可否が判断される。このように、原稿を読み取る前に割り込みの可否を迅速に判断できることで、ユーザは、割り込み不許可の場合はその迅速な判断結果を受けて、印刷ジョブをキャンセルし、他の印刷装置でこの印刷ジョブを実行するなどの対応を素早く取れるようになる。したがって、ユーザの利便性が向上する。
【0117】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態の図10で説明した割り込み可否判断動作の変形例である。図12は、第2の実施形態に係る割り込み可否判断動作の流れを示している。本実施形態は、割り込み不許可と判断した場合にその旨を表示してユーザからジョブのキャンセルを受け付ける点が第1の実施形態と異なり、他は基本的に同じ動作である。
【0118】
その相違点について説明すると、印刷装置20のCPU21は、図10のステップS101〜S106と同様のステップS121〜S126を行い、割り込み不許可と判断した場合は(ステップS126;No)、その割り込み不許可の判断結果と先行ジョブの残時間を表示して投入ジョブをキャンセルするか否かをユーザに問い合わせ(ステップS127)、ユーザの指示入力を受け付ける(ステップS128)。
【0119】
コピージョブの場合は、印刷装置20の操作表示部27に表示し、操作表示部27を通じてユーザの指示入力を受け付ける。プリントジョブの場合は、判断結果(割り込み不許可)および先行ジョブの残時間の情報をジョブ送信元の端末10に送信して端末10の表示部16に表示させ、表示部16および操作部17を通じてユーザの指示入力を受け付ける。
【0120】
ここで、ユーザから投入ジョブのキャンセル操作を受け付けた場合は(ステップS129;Yes)、CPU21はその投入ジョブのキャンセル処理を行い(ステップS130)、本動作を終了する(End)。キャンセル操作は、たとえば、コピージョブの場合は操作表示部27のキャンセルボタン27dの押下操作などであり、プリントジョブの場合は表示部16に表示されたキャンセルボタンのクリック操作などである。
【0121】
キャンセル操作を受け付けなかった場合は(ステップS129;No)、CPU21は、投入ジョブを予約待機とし(ステップS131)、第1の実施形態と同様に、先行ジョブの印刷を実行完了した後に投入ジョブの印刷を実行し(ステップS122)、本動作を終了する(End)。割り込み許可と判断した場合は(ステップS126;Yes)、第1の実施形態と同様に、サブルーチンで割り込み制御処理を行い(ステップS132(図11参照))、その後、本動作を終了する(End)。
【0122】
このように、本実施形態では、割り込み印刷が許可されなかったユーザは、自分の指示した印刷ジョブ(第2の印刷ジョブ)をキャンセルするか否かの問い合わせを受け、その指示が行えるようになる。これにより、割り込み不許可となった印刷ジョブをキャンセルするか、または、通常の予約待機状態にするかなどの選択が行えるようになり、利便性が向上する。さらに、現在実行中の印刷ジョブ(第1の印刷ジョブ)の残時間の報知を受け、自分の指示した印刷ジョブ(第2の印刷ジョブ)の凡その実行開始時刻を把握することができ、その割り込み不許可となった印刷ジョブをキャンセルするか否かが判断しやすくなる。
【0123】
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、第1の実施形態の図11で説明した割り込み制御処理動作の変形例である。図13は、第3の実施形態に係る割り込み制御処理動作の流れを示している。本実施形態は、印刷ジョブの割り込みを受けたユーザにその旨を通知する点が第1の実施形態と異なり、他は基本的に同じ動作である。
【0124】
その相違点について説明すると、印刷装置20のCPU21は、図11のステップS111〜S114と同様のステップS141〜S144を行い、ステップS145では、先行ジョブを指示したユーザの端末10に、そのユーザから指示されて実行していた印刷ジョブによる印刷を、投入された他の印刷ジョブの割り込み印刷によって一時中断した旨を記載した電子メールを送信して通知する。さらにこの電子メールに、割り込み印刷を開始したジョブの印刷時間(予測値)を記載するようにしてもよい。その後は、図11のステップS115〜S117と同様のステップS146〜S148を行う。
【0125】
このように、本実施形態では、割り込み印刷を受けたユーザは、自身の端末10に通知された電子メールの内容からそのことを認識することができ、自分の印刷ジョブ(第1の印刷ジョブ)の完了が予想よりも遅れることを事前に把握できるようになる。また、電子メールに割り込みジョブの印刷時間を記載した場合には、中断された印刷ジョブの凡その再開時刻を把握することができ、排出された印刷物を取得するために印刷装置20に向かう時間調整などが行いやすくなる。
【0126】
[第4の実施形態]
第4の実施形態は、第1の実施形態の図10で説明した割り込み可否判断動作の変形例である。図14は、第4の実施形態に係る割り込み可否判断動作の流れを示している。本実施形態は、実行中の先行ジョブが割り込みジョブである場合は投入ジョブの割り込み印刷を受け付けない点が第1の実施形態と異なり、他は基本的に同じ動作である。
【0127】
その相違点について説明すると、印刷装置20のCPU21は、印刷ジョブが投入されたときに(Start)、先行ジョブの印刷を実行中である場合には(ステップS151;Yes)、その先行ジョブが割り込みジョブであるか否かを判断する(ステップS153)。割り込みジョブでない場合は(ステップS153;No)、図10のステップS103〜S106、S108と同様のステップS154〜S157、S159を行う。
【0128】
割り込みジョブである場合は(ステップS153;Yes)、今回投入された印刷ジョブの割り込み印刷を受け付けず、その投入ジョブを予約待機とする(ステップS158)。そして、割り込みジョブである先行ジョブの印刷を完了し、その割り込みによって中断されていたもう一つの先行ジョブの印刷を再開して完了した後に、この予約待機とした投入ジョブの印刷を実行し(ステップS152)、本動作を終了する(End)。
【0129】
このように、本実施形態では、割り込み印刷を実行中の印刷ジョブ(割り込みジョブ)の途中に更に他の印刷ジョブを割り込み印刷する多重割り込みは受け付けないようにする。これにより、割り込み制御が複雑になったり、排出を一時中断される印刷物が複数発生して印刷物の混在や紛失などが起こりやすくなったりするようなことを回避することができる。
【0130】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0131】
たとえば、割り込み可否判断では第1の印刷ジョブ(先行ジョブ)の残りの印刷時間と優先度、および、第2の印刷ジョブ(投入ジョブ)の印刷時間と優先度の4つのパラメータを用いているが、優先度については第1および第2の印刷ジョブのうちのいずれか一方を用いるようにしてもよい。
【0132】
第2の印刷ジョブがコピージョブの場合には、印刷時間を算出するために原稿の厚さや重さを測定して枚数を推定するようにしているが、このような測定を行わずに原稿を読み取って枚数をカウントするようにしてもよい。
【0133】
また、コピージョブの割り込み印刷で原稿の枚数を推定する場合には、原稿の読み取りに伴う時間を加味した割り込み印刷の可否判断および制御を行うようにしてもよい。
【0134】
たとえば、全原稿の読み取りを終えてから印刷を開始するような場合には、原稿の推定枚数から読み取り時間を算出し、割り込む側のコピージョブ(第2の印刷ジョブ)の印刷時間にその読み取り時間を加算した合計時間を該ジョブの印刷時間(合計印刷時間)と見做して、割り込み印刷の可否判断および制御を行うようにしてもよい。あるいは、割り込まれる側の第1の印刷ジョブの残時間から割り込む側のコピージョブ(第2の印刷ジョブ)の読み取り時間を減算した時間を第1の印刷ジョブの残時間と見做して、割り込み印刷の可否判断および制御を行うようにしてもよい。また、原稿の読み取り途中で(たとえば、1枚目の原稿の両面読み取り後に)印刷を開始するような場合には、原稿の読み取り開始から印刷を開始するまでの印刷開始時間を算出し、割り込む側のコピージョブ(第2の印刷ジョブ)の印刷時間にその印刷開始時間を加算した合計時間を該ジョブの印刷時間(合計印刷時間)と見做して、割り込み印刷の可否判断および制御を行うようにしてもよい。
【0135】
また、上述した実施の形態では、印刷ジョブの割り込み可否判断および割り込み制御を自動的に行う印刷制御装置としての機能を印刷装置20が備えた構成で説明したが、この印刷制御装置は印刷装置単体に備えた構成に限らない。図1に例示するネットワーク2に接続されたサーバ80などと印刷装置20とが連携(分担)してその印刷制御装置の機能を果たすように構成してもよい。たとえば、印刷装置20がプリンタ部30による印刷や自動原稿搬送装置28およびスキャナ部29による原稿の読み取りなどを担い、サーバ80が割り込み印刷の可否判断および制御を担うなどの構成としてもよい。
【0136】
また、本発明に係る印刷装置は実施の形態で説明した複合機に限らず、複写機やプリンタ機など他の印刷装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0137】
2…ネットワーク
5…ネットワーク印刷システム
10…端末(PC)
11…CPU
12…バス
13…ROM
14…RAM
15…ハードディスク装置(HDD)
16…表示部
17…操作部
18…ネットワーク通信部
20…印刷装置(MFP)
21…CPU
22…バス
23…ROM
24…RAM
25…不揮発メモリ
26…ハードディスク装置(HDD)
27…操作表示部
27a…液晶ディスプレイ
27b…スタートボタン
27c…ストップボタン
27d…キャンセルボタン
28…自動原稿搬送装置
28a…原稿給紙トレイ
28b…原稿排紙トレイ
29…スキャナ部
29a…プラテンガラス
30…プリンタ部
31…画像処理部
32…ファクシミリ通信部
33…ネットワーク通信部
34…ユーザ認証部
35…I/Oポート部
41…給紙ユニット
42…搬送装置
43…感光体ドラム
44…帯電装置
45…レーザーユニット
46…現像装置
47…転写装置
48…分離装置
49…クリーニング装置
50…定着装置
51…排紙トレイ
60…原稿厚さ測定機構
61…アクチュエータ
62…接触子
63…回動軸
64…原稿厚さセンサ
65…原稿重さセンサ
70…ドライバプログラム
71…ユーザデータベース
72…印刷履歴テーブル
80…サーバ
M…原稿
P…記録紙
S…読取位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷部による印刷を実行中の第1の印刷ジョブを一時中断して第2の印刷ジョブの割り込み印刷を許可するか否かの割り込み可否判断を、前記第1の印刷ジョブの残りの印刷時間と、前記第2の印刷ジョブの印刷時間と、前記第1の印刷ジョブの優先度および前記第2の印刷ジョブの優先度のうちの少なくともいずれか一方とに基づいて行う制御部を備えた印刷制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、印刷ジョブの実行中に、前記印刷部の待機時に印刷ジョブを実行開始する操作と同一操作を受け付けると前記割り込み可否判断を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記割り込み可否判断で前記第2の印刷ジョブの割り込み印刷を許可すると判断した場合に、前記印刷部に前記第1の印刷ジョブの印刷を一時中断させて前記第2の印刷ジョブの印刷を実行させる割り込み制御を行う
ことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷制御装置。
【請求項4】
印刷ジョブの実行を指示するユーザのユーザ識別情報を取得する取得部と、
ユーザの端末装置と通信する通信部とを備え、
前記制御部は、前記取得部が取得したユーザ識別情報に基づいて前記第1の印刷ジョブの実行を指示したユーザを識別し、前記割り込み制御を行う場合は実行中の前記第1の印刷ジョブが前記割り込み印刷によって一時中断されたことを前記識別したユーザの端末装置に通知する
ことを特徴とする請求項3に記載の印刷制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記割り込み可否判断で前記第2の印刷ジョブの割り込み印刷を許可しないと判断した場合に、前記第2の印刷ジョブをキャンセルするか否かを問い合わせてその指示を受け付ける制御を行う
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の印刷制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記割り込み可否判断で前記第2の印刷ジョブの割り込み印刷を許可しないと判断した場合に、前記第1の印刷ジョブの前記残りの印刷時間を報知する制御を行う
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の印刷制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1の印刷ジョブが前記割り込み印刷を実行中の印刷ジョブである場合は、前記第2の印刷ジョブの割り込み印刷を受け付けない制御を行う
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の印刷制御装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1つに記載の印刷制御装置と、
前記印刷部とを備え、
前記制御部は、前記印刷部に対して画像データに基づく画像を記録紙に印刷する制御を行う
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
原稿を読み取って画像データを取得する読取部と、
前記読取部にセットされた前記原稿の厚さと重さのうちの少なくとも一方を測定してその測定情報を取得する測定部とを備え、
前記制御部は、前記測定部によって取得された前記測定情報から推定した前記原稿の枚数に基づいて、前記読取部によって取得される前記原稿の画像データに基づく画像を前記印刷部により前記記録紙に印刷する前記第2の印刷ジョブの前記印刷時間を算出する
ことを特徴とする請求項8に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記原稿の枚数に加えて、前記第2の印刷ジョブに設定された印刷条件に基づいて前記印刷時間を算出する
ことを特徴とする請求項9に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−219718(P2010−219718A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62374(P2009−62374)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】