説明

印刷方法、オーバープリントの作製方法、ラミネート加工方法、発光ダイオード硬化性コーティング組成物、及び、発光ダイオード硬化性インク組成物

【課題】375〜395nmに発光ピーク波長を有する発光ダイオードによる照射により実用的な硬化感度を有し、非タック性に優れる硬化物を与え、かつ可視域に不要吸収を有さず色相に優れる、発光ダイオード硬化性のインク組成物又はコーティング組成物を提供する。
【解決手段】(成分A)DETX(ジエチルチオキサントン)、(成分B)光重合開始剤、及び、(成分C)エチレン性不飽和化合物、を含有する375〜395nmにピーク波長を有する発光ダイオード硬化性コーティング組成物、並びに、(成分A)DETX、(成分B)光重合開始剤、(成分C)エチレン性不飽和化合物、及び、(成分D)着色剤、を含有する375〜395nmにピーク波長を有する発光ダイオード硬化性インク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷方法、オーバープリントの作製方法、ラミネート加工方法、発光ダイオード硬化性コーティング組成物、及び、発光ダイオード硬化性インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紫外線硬化型インク組成物を用いて印刷する印刷機が用いられており、被印刷体上の紫外線硬化型インク組成物を硬化させる紫外線を照射させるものとして、被印刷体を搬送する胴の幅よりも少し長い寸法を有する一本の紫外線ランプ(例えば、水銀灯など)を用いたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
前記のようなランプは、寿命が短いだけでなく、発熱量及び消費電力が多いため、近年において紫外線を照射することができる発光ダイオードを用いたものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−297690号公報
【特許文献2】特開2009−208463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたような水銀灯により照射される紫外光の波長は200〜500nmと広域であるのに対して、特許文献2に記載されたような発光ダイオードより照射される紫外光の波長は、非常に狭い波長を有する。
【0005】
本発明の目的は、375〜395nmに発光ピーク波長を有する発光ダイオードによる照射により実用的な硬化感度を有し、非タック性に優れる硬化物を与え、かつ可視域に不要吸収を有さず色相に優れる、発光ダイオード硬化性のインク組成物又はコーティング組成物を提供することである。
本発明の他の目的は、上記のインク組成物又はコーティング組成物を使用する印刷方法、オーバープリントの作製方法及びラミネート加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は以下の<1>、<8>、<9>、<10>及び<13>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<7>、<11>、<12>、<14>及び<15>と共に以下に記載する。
<1>(成分A)下記式(I)で示される化合物、(成分B)光重合開始剤、(成分C)エチレン性不飽和化合物、及び、(成分D)着色剤、を含有するインク組成物を、被印刷体上に印刷する印刷工程、並びに、発光ダイオードにより375〜395nmにピーク波長を有する紫外光を照射し、印刷された前記インク組成物を硬化させる硬化工程、を含むことを特徴とする印刷方法、
【0007】
【化1】

(式(I)中、XはO、S、又は、NRを表し、nは0〜4の整数を表し、Rは水素原子、アルキル基、又は、アシル基を表し、R1〜R8はそれぞれ独立に水素原子、又は、一価の置換基を表し、R1〜R4は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成してもよく、また、R5〜R8は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して脂肪族環を形成してもよい。)
<2>前記印刷工程における印刷が、オフセット印刷である、上記<1>に記載の印刷方法、
<3>前記式(I)におけるR1〜R8の少なくとも1つが、ハロゲン原子である、上記<1>又は<2>に記載の印刷方法、
<4>前記成分Aが、下記式(I-C)で示される化合物である、上記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の印刷方法、
【0008】
【化2】

(式(I-C)中、R1C〜R4Cはそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、R5C〜R8Cはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R1C〜R4Cのうちの少なくとも1つはハロゲン原子であり、R5C〜R8Cのうちの少なくとも1つはアルキル基である。)
<5>前記成分Bが、α−アミノケトン系化合物及び/又はアシルフォスフィンオキシド系化合物である、上記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の印刷方法、
<6>前記成分Bが、α−アミノケトン系化合物及びアシルフォスフィンオキシド系化合物である、上記<5>に記載の印刷方法、
<7>前記印刷工程が、前記インク組成物を少なくとも用い、被印刷体上にフルカラー印刷する印刷工程である、上記<1>〜<6>のいずれか1つに記載の印刷方法、
<8>(成分A)下記式(I)で示される化合物、(成分B)光重合開始剤、及び、(成分C)エチレン性不飽和化合物、を含有するコーティング組成物を、印刷物上に塗布する塗布工程、並びに、発光ダイオードにより375〜395nmにピーク波長を有する紫外光を照射し、塗布された前記コーティング組成物を硬化させる硬化工程、を含むことを特徴とするオーバープリントの作製方法、
【0009】
【化3】

(式(I)中、XはO、S、又は、NRを表し、nは0〜4の整数を表し、Rは水素原子、アルキル基、又は、アシル基を表し、R1〜R8はそれぞれ独立に水素原子、又は、一価の置換基を表し、R1〜R4は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成してもよく、また、R5〜R8は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して脂肪族環を形成してもよい。)
<9>(成分A)下記式(I)で示される化合物、(成分B)光重合開始剤、及び、(成分C)エチレン性不飽和化合物、を含有するコーティング組成物を、印刷物上に塗布する塗布工程、前記コーティング組成物を塗布した前記印刷物にラミネートフィルムを積層する積層工程、並びに、発光ダイオードにより375〜395nmにピーク波長を有する紫外光を照射し、塗布された前記コーティング組成物を硬化させる硬化工程、を含むことを特徴とするラミネート加工方法、
【0010】
【化4】

(式(I)中、XはO、S、又は、NRを表し、nは0〜4の整数を表し、Rは水素原子、アルキル基、又は、アシル基を表し、R1〜R8はそれぞれ独立に水素原子、又は、一価の置換基を表し、R1〜R4は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成してもよく、また、R5〜R8は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して脂肪族環を形成してもよい。)
<10>(成分A)下記式(I)で表される化合物、(成分B)光重合開始剤、及び、(成分C)エチレン性不飽和化合物、を含有することを特徴とする375〜395nmにピーク波長を有する発光ダイオード硬化性コーティング組成物、
【0011】
【化5】

(式(I)中、XはO、S、又は、NRを表し、nは0〜4の整数を表し、Rは水素原子、アルキル基、又は、アシル基を表し、R1〜R8はそれぞれ独立に水素原子、又は、一価の置換基を表し、R1〜R4は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成してもよく、また、R5〜R8は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して脂肪族環を形成してもよい。)
<11>前記成分Aが、下記式(I-C)で示される化合物である、上記<10>に記載の発光ダイオード硬化性コーティング組成物、
【0012】
【化6】

(式(I-C)中、R1C〜R4Cはそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、R5C〜R8Cはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R1C〜R4Cのうちの少なくとも1つはハロゲン原子であり、R5C〜R8Cのうちの少なくとも1つはアルキル基である。)
<12>オフセット印刷用硬化性コーティング組成物である、上記<10>又は<11>に記載の発光ダイオード硬化性コーティング組成物、
<13>(成分A)下記式(I)で表される化合物、(成分B)光重合開始剤、(成分C)エチレン性不飽和化合物、及び、(成分D)着色剤、を含有することを特徴とする375〜395nmにピーク波長を有する発光ダイオード硬化性インク組成物、
【0013】
【化7】

(式(I)中、XはO、S、又は、NRを表し、nは0〜4の整数を表し、Rは水素原子、アルキル基、又は、アシル基を表し、R1〜R8はそれぞれ独立に水素原子、又は、一価の置換基を表し、R1〜R4は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成してもよく、また、R5〜R8は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して脂肪族環を形成してもよい。)
<14>前記成分Aが、下記式(I-C)で示される化合物である、上記<13>に記載の発光ダイオード硬化性インク組成物、
【0014】
【化8】

(式(I-C)中、R1C〜R4Cはそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、R5C〜R8Cはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R1C〜R4Cのうちの少なくとも1つはハロゲン原子であり、R5C〜R8Cのうちの少なくとも1つはアルキル基である。)
<15>オフセット印刷用硬化性インク組成物である、上記<13>又は<14>に記載の発光ダイオード硬化性インク組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、非タック性及び色相に優れる硬化物を与える発光ダイオード硬化性インク組成物を提供することができた。
また、本発明によれば、非タック性及び透明性に優れる硬化物を与える発光ダイオード硬化性コーティング組成物を提供することができた。
更に、本発明によれば、上記のインク組成物又はコーティング組成物を使用する印刷方法、オーバープリントの作製方法及びラミネート加工方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】化合物(I−14)、ジエチルチオキサントン(DETX)、及び、IRGACURE 907の吸収スペクトルを示した図である。
【図2】本発明の印刷方法の一実施態様に用いることができる印刷機の概略構成図である。
【図3】(a)は紫外線照射部Tにおける圧胴と発光ダイオードとの配置関係を示す斜視図、(b)は紫外線照射部Tにおける発光ダイオードを備えた基板の正面図である。
【図4】本発明のラミネート加工方法の一実施態様に用いるコーティング装置の全体構成図である。
【図5】本発明のラミネート加工方法の一実施態様に用いる他のコーティング装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の発光ダイオード硬化性コーティング組成物(以下、単に「コーティング組成物」ともいう。)は、(成分A)下記式(I)で表される化合物、(成分B)光重合開始剤、及び、(成分C)エチレン性不飽和化合物、を含有することを特徴とする。
【0018】
【化9】

(式(I)中、XはO、S、又は、NRを表し、nは0〜4の整数を表し、Rは水素原子、アルキル基、又は、アシル基を表し、R1〜R8はそれぞれ独立に水素原子、又は、一価の置換基を表し、R1〜R4は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成してもよく、また、R5〜R8は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して脂肪族環を形成してもよい。)
【0019】
本発明の発光ダイオード硬化性インク組成物(以下、単に「インク組成物」ともいう。)は、(成分A)前記式(I)で表される化合物、(成分B)光重合開始剤、(成分C)エチレン性不飽和化合物、及び、(成分D)着色剤、を含有することを特徴とする。
また、本発明のコーティング組成物及び本発明のインク組成物の両方を単に「硬化性組成物」ともいう。
ここで、「発光ダイオード硬化性」又は「硬化性」とは、375〜395nmに発光ピーク波長を有する発光ダイオードの照射により硬化すること、好ましくは、0.1〜10秒の照射により硬化することをいう。
【0020】
本発明の印刷方法は、(成分A)式(I)で示される化合物、(成分B)光重合開始剤、(成分C)エチレン性不飽和化合物、及び、(成分D)着色剤、を含有するインク組成物(本発明のインク組成物)を、被印刷体上に印刷する印刷工程、並びに、発光ダイオードにより375〜395nmにピーク波長を有する紫外光を照射し、印刷された前記インク組成物を硬化させる硬化工程、を含むことを特徴とする。
本発明のオーバープリントの作製方法は、(成分A)下記式(I)で示される化合物、(成分B)光重合開始剤、及び、(成分C)エチレン性不飽和化合物、を含有するコーティング組成物(本発明のコーティング組成物)を、印刷物上に塗布する塗布工程、並びに、発光ダイオードにより375〜395nmにピーク波長を有する紫外光を照射し、塗布された前記コーティング組成物を硬化させる硬化工程、を含むことを特徴とする。
本発明のラミネート加工方法は、(成分A)下記式(I)で示される化合物、(成分B)光重合開始剤、及び、(成分C)エチレン性不飽和化合物、を含有するコーティング組成物(本発明のコーティング組成物)を、印刷物上に塗布する塗布工程、コーティング組成物を塗布した前記印刷物にラミネートフィルムを積層する積層工程、並びに、発光ダイオードにより375〜395nmにピーク波長を有する紫外光を照射し、塗布された前記コーティング組成物を硬化させる硬化工程、を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明の発光ダイオード硬化性コーティング組成物は、UVインクあるいはオーバープリント用や三次元構造体用などのUVニス、ラミネート加工に使用する組成物等に使用することができる。硬化した組成物は、可視域の不要な光吸収(黄ばみ)を実質的に有しないので優れている。
また、本発明の発光ダイオード硬化性コーティング組成物は、着色剤を含有していないことが好ましく、また、可視域に実質的に吸収を有しない組成物であることが好ましい。「可視域に実質的に吸収を有しない」とは、400〜700nmの可視域に吸収を有しないか、又は、光硬化性コーティング組成物として支障のない程度の吸収しか可視域に吸収を有しないことを意味する。具体的には、コーティング組成物の5μm光路長の透過率が、400〜700nmの波長範囲において、平均70%以上、好ましくは平均80%以上、特に好ましくは平均90%以上であることを意味する。
【0022】
本発明の発光ダイオード硬化性インク組成物は、着色インク組成物であり、着色剤を含有する。
本発明の発光ダイオード硬化性インク組成物は、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷及びスクリーン印刷などの凸版、平版、凹版及び孔版印刷用インク組成物として好適に用いることができる。
【0023】
(成分A)式(I)で示される化合物(増感剤)
本発明の硬化性組成物は、375〜395nmに発光ピーク波長を有する発光ダイオードによる照射による光重合開始剤の重合開始能を促進させるために、下記式(I)で示される化合物を含有することを特徴とする。
式(I)で示される化合物は、本発明の硬化性組成物において、増感剤として作用する。
【0024】
【化10】

(式(I)中、XはO、S、又は、NRを表し、nは0〜4の整数を表し、Rは水素原子、アルキル基、又は、アシル基を表し、R1〜R8はそれぞれ独立に水素原子、又は、一価の置換基を表し、R1〜R4は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成してもよく、また、R5〜R8は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して脂肪族環を形成してもよい。)
【0025】
前記式(I)において、XはO、S、又は、NRを表し、Rは水素原子、アルキル基、又は、アシル基を表す。nは0〜4の整数を表す。
Xとしては、O又はSであることが好ましく、Sであることがより好ましい。
ここで、nが0の場合、R7及びR8が結合した炭素原子は存在せず、ヘテロ原子を含むXと、R5及びR6が結合した炭素原子とが直接結合して、Xを含む5員のヘテロ環を構成することになる。
【0026】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8はそれぞれ独立に水素原子、又は、一価の置換基を表す。なお、本発明における置換基には、原子及び原子団が含まれる。
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が一価の置換基を表す場合の、一価の置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、モノ若しくはジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、スルフィニル基、ホスホリル基、アシル基、カルボキシル基又はスルホ基などが挙げられる。中でも、好ましくは、アルキル基、又は、ハロゲン原子であり、より好ましくは、低級アルキル基(炭素数1〜5のアルキル基)、又は、ハロゲン原子である。
【0027】
式(I)におけるR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が1価の置換基を表す場合のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基のような炭素数1〜4個のものが好ましく挙げられる。
同様に、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基のような炭素数1〜4個のものが好ましく挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。
【0028】
1、R2、R3、及び、R4は、それぞれ隣接する2つが互いに連結、例えば、縮合、して環を形成していてもよい。
これらが環を形成する場合の環構造としては、5又は6員環の脂肪族環、芳香族環などが挙げられ、炭素原子以外の元素を含む複素環であってもよい。
また、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して脂肪族環を形成してもよいが、芳香族環を形成することはない。また、前記脂肪族環を形成する場合、R5とR7とが互いに連結して脂肪族環を形成することが好ましい。
また、形成された環同士が更に組み合わさって多環縮合環やスピロ環を形成していてもよい。更にこれらの環構造は、前記式(I)において、R1乃至R8が1価の置換基を表す場合に例示した置換基を更に有していてもよい。形成された環構造が複素環である場合のヘテロ原子の例としては、N、O、及びSを挙げることができる。
【0029】
式(I)で示される化合物は、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8のうちの少なくとも1つが、1価の置換基であることが好ましい。
【0030】
式(I)で示される化合物は、下記式(I-A)で示される化合物であることが好ましい。
【0031】
【化11】

【0032】
前記式(I-A)において、XはO又はSを表す。nは0〜4の整数を表す。R1A、R2A、R3A、R4A、R5A、R6A、R7A及びR8Aはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、モノ若しくはジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシル基又はスルホ基を表す。また、R1A、R2A、R3A、及び、R4Aのうち、隣接する2つが互いに連結(縮合)して環を形成していてもよい。
1A、R2A、R3A、及び、R4Aのうち、それぞれ隣接する2つが互いに連結(縮合)する場合、5又は6員環の脂肪族環、芳香族環を形成していてもよく、これらの環は、炭素原子以外の元素を含む複素環であってもよく、また、形成された環同士が更に組み合わさって多環縮合環やスピロ環を形成していてもよい。更にこれらの環構造は、前記式(I)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が1価の置換基を表す場合に例示した各置換基を更に有していてもよい。環構造が複素環の場合、ヘテロ原子の例としては、N、O、及びSを挙げることができる。
【0033】
式(I)で示される化合物は、下記式(I-B)で示される化合物であることがより好ましい。
【0034】
【化12】

【0035】
前記式(I-B)において、XはO又はSを表す。R1B、R2B、R3B、R4B、R5B、R6B、R7B及びR8Bはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、モノ若しくはジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシル基又はスルホ基を表す。また、R1B、R2B、R3B、及び、R4Bのうち、それぞれ隣接する2つが互いに連結(縮合)して環を形成していてもよい。
1B、R2B、R3B、及び、R4Bのうち、それぞれ隣接する2つが互いに連結(縮合)する場合、5又は6員環の脂肪族環、芳香族環を形成していてもよく、これらの環は、炭素原子以外の元素を含む複素環であってもよく、また、形成された環同士が更に組み合わさって多環縮合環やスピロ環を形成していてもよい。更にこれらの環構造は、前記式(I)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が1価の置換基を表す場合に例示した各置換基を更に有していてもよい。環構造が複素環の場合、ヘテロ原子の例としては、N、O、及びSを挙げることができる。
【0036】
式(I)で示される化合物は、下記式(I-C)で示される化合物であることが更に好ましい。
【0037】
【化13】

【0038】
前記式(I-C)において、R1C〜R4Cはそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、R5C〜R8Cはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R1C〜R4Cのうちの少なくとも1つはハロゲン原子であり、R5C〜R8Cのうちの少なくとも1つはアルキル基である。
アルキル基の炭素数としては、1〜8が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が更に好ましく、1が特に好ましい。
また、ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。
【0039】
本発明に好適に用いることのできる式(I)で示される化合物の具体例〔例示化合物(I−1)〜(I−138)〕を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記の具体例中、Meはメチル基を表し、Butはt−ブチル基を表し、Priはイソプロピル基を表す。また、本発明では、化学式において、炭化水素鎖を炭素(C)及び水素(H)の記号を省略した簡略構造式で記載する場合もある。本発明において、例示化合物(I−14)又は(I−132)が特に好ましい。
【0040】
【化14】

【0041】
【化15】

【0042】
【化16】

【0043】
【化17】

【0044】
【化18】

【0045】
【化19】

【0046】
【化20】

【0047】
【化21】

【0048】
【化22】

【0049】
【化23】

【0050】
一例として、例示化合物(I−14)、並びに、従来の増感剤であるジエチルチオキサントン(DETX)及びIRGACURE 907(Irg−907、チバスペシャルティケミカルズ社製)に関し、吸収スペクトルを以下に示す方法で測定した。測定結果を図1に示す。なお、図1の縦軸はモル吸光係数ε(mol-1・L・cm-1)、横軸は波長(nm)である。
また、例示化合物(I−14)、並びに、従来の増感剤であるジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン及びN−エチルカルバゾールに関し、365nm及び400nmでのモル吸光係数ε(mol-1・L・cm-1)を算出した。測定結果を以下に示す。
化合物のモル吸光係数は、測定する化合物の0.01g/Lのメタノール溶液を調製し、Varian社製cary-5uv-vis-NIRSPECTROPHOTMETERSを用いて、吸光度を測定した。また、365nm及び400nmでのモル吸光係数ε(mol-1・L・cm-1)を算出した。
【0051】
【化24】

【0052】
式(I)で示される化合物の合成方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができ、例えば、特開2004−189695号公報、「Tetrahedron」第49巻,p939(1993年)、「Journal of Organic Chemistry」 p893(1945年)、及び、「Journal of Organic Chemistry」 p4939(1965年)などに記載の公知の方法によって合成することができる。
【0053】
本発明の硬化性組成物における式(I)で示される化合物の含有量は、コーティング組成物に対して固形分で、0.05〜40重量%程度が好ましく、0.1〜30重量%であることがより好ましく、0.2〜25重量%であることが更に好ましい。
なお、この式(I)で示される化合物は、可視光領域における吸収がほとんどないため、効果を発現しうる量を添加しても硬化性組成物の色相に影響を与える懸念がないという利点をも有するものである。
本発明の硬化性組成物における含有量について、後述する光重合開始剤との関連において述べれば、光重合開始剤:式(I)で示される化合物の重量比で、好ましくは200:1〜1:200、より好ましくは50:1〜1:50、更に好ましくは20:1〜1:5の量である。
【0054】
一般に、増感剤は、特定の活性放射線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感剤は、光重合開始剤に対して、電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用を生じ、これにより光重合開始剤の化学変化、すなわち、分解、ラジカル、酸又は塩基等の活性種の生成を促進させ、ここで発生した活性種が後述する重合性化合物の重合、硬化反応を生起、促進させるものである。
【0055】
〔その他の増感剤〕
本発明においては、前記した式(I)で示される化合物に加え、公知の増感剤を本発明の効果を損なわない限りにおいて併用することができる。
その他の増感剤を使用する場合、その他の増感剤の使用量は、式(I)で示される化合物に対して、式(I)で示される化合物:他の増感剤の重量比で、好ましくは1:5〜100:1、より好ましくは1:1〜100:1、更に好ましくは2:1〜100:1の量である。
【0056】
併用しうる公知の増感剤の例としては、ベンゾフェノン、チオキサントン、イソプロピルチオキサントン、アントラキノン、3−アシルクマリン、ターフェニル、スチリルケトン、2−(アロイルメチレン)チアゾリン、アントラセン、ショウノウキノン、エオシン、ローダミン及びエリスロシンなどが挙げられる。
併用可能な増感剤のさらなる例は、下記のとおりである。
【0057】
(1)チオキサントン
チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−ドデシルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−メトキシカルボニルチオキサントン、2−エトキシカルボニルチオキサントン、3−(2−メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4−ブトキシカルボニルチオキサントン、3−ブトキシカルボニル−7−メチルチオキサントン、1−シアノ−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−エトキシチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−アミノチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−フェニルスルフリルチオキサントン、3,4−ジ−〔2−(2−メトキシエトキシ)エトキシカルボニル〕チオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−(1−メチル−1−モルホリノエチル)チオキサントン、2−メチル−6−ジメトキシメチルチオキサントン、2−メチル−6−(1,1−ジメトキシベンジル)チオキサントン、2−モルホリノメチルチオキサントン、2−メチル−6−モルホリノメチルチオキサントン、n−アリルチオキサントン−3,4−ジカルボキシミド、n−オクチルチオキサントン−3,4−ジカルボキシミド、N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)チオキサントン−3,4−ジカルボキシミド、1−フェノキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メトキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メチルチオキサントン、チオキサントン−2−ポリエチレングリコールエステル、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリド;
【0058】
(2)ベンゾフェノン
ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジメチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−(4−メチルチオフェニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチル−2−ベンゾイルベンゾアート、4−(2−ヒドロキシエチルチオ)ベンゾフェノン、4−(4−トリルチオ)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N,N−トリメチルベンゼンメタンアミニウムクロリド、2−ヒドロキシ−3−(4−ベンゾイルフェノキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリド一水和物、4−(13−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキサトリデシル)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−〔2−(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ〕エチルベンゼンメタンアミニウムクロリド;
【0059】
(3)3−アシルクマリン
3−ベンゾイルクマリン、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジ(プロポキシ)クマリン、3−ベンゾイル−6,8−ジクロロクマリン、3−ベンゾイル−6−クロロクマリン、3,3’−カルボニルビス〔5,7−ジ(プロポキシ)クマリン〕、3,3’−カルボニルビス(7−メトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−イソブチロイルクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジエトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジブトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジ(メトキシエトキシ)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジ(アリルオキシ)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−イソブチロイル−7−ジメチルアミノクマリン、5,7−ジメトキシ−3−(1−ナフトイル)クマリン、5,7−ジメトキシ−3−(1−ナフトイル)クマリン、3−ベンゾイルベンゾ〔f〕クマリン、7−ジエチルアミノ−3−チエノイルクマリン、3−(4−シアノベンゾイル)−5,7−ジメトキシクマリン;
【0060】
(4)2−(アロイルメチレン)チアゾリン
3−メチル−2−ベンゾイルメチレン−β−ナフトチアゾリン、3−メチル−2−ベンゾイルメチレンベンゾチアゾリン、3−エチル−2−プロピオニルメチレン−β−ナフトチアゾリン;
【0061】
(5)アントラセン
9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジメトキシ−2−エチルアントラセン;
【0062】
(6)他のカルボニル化合物
アセトフェノン、3−メトキシアセトフェノン、4−フェニルアセトフェノン、ベンジル、2−アセチルナフタレン、2−ナフトアルデヒド、9,10−ナフトキノン、9−フルオレノン、ジベンゾスベロン、キサントン、2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン、α−(パラ−ジメチルアミノベンジリデン)ケトン、例えば、2−(4−ジメチルアミノベンジリデン)インダン−1−オン又は3−(4−ジメチルアミノフェニル)−1−インダン−5−イルプロペノン、3−フェニルチオフタルイミド、N−メチル−3,5−ジ(エチルチオ)フタルイミド。
【0063】
更に、前記において挙げた増感剤以外にも、特開2009−221441号、特開2005−36152号等の各公報に記載されている光重合性組成物に用いられる増感剤も、本発明の硬化性組成物に併用することができる。
【0064】
(成分B)光重合開始剤
本発明の硬化性組成物は、光重合開始剤を含有する。
光重合開始剤としては、公知の重合開始剤を使用することができる。本発明においては、ラジカル光重合開始剤を使用することが好ましい。
本発明の硬化性組成物に使用する光重合開始剤は、活性放射線を吸収して重合開始種を生成する化合物である。重合を開始するために使用される活性放射線には、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線が例示できる。使用する波長は特に限定されないが、好ましくは200〜500nmの波長領域であり、より好ましくは200〜450nmの波長領域である。
【0065】
<ラジカル光重合開始剤>
本発明で使用され得る好ましいラジカル光重合開始剤(単に「ラジカル開始剤」ともいう。)としては、(a)芳香族ケトン類、(b)アシルフォスフィン化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物、(d)有機過酸化物、(e)チオ化合物、(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(g)ケトオキシムエステル化合物、(h)ボレート化合物、(i)アジニウム化合物、(j)メタロセン化合物、(k)活性エステル化合物、(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物、並びに(m)アゾ系化合物等が挙げられる。
【0066】
(a)芳香族ケトン類及び(b)アシルフォスフィン化合物
本発明に用いられるラジカル開始剤として好ましい(a)芳香族ケトン類には、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」J.P.Fouassier,J.F.Rabek(1993),p77−117記載のベンゾフェノン骨格あるいはチオキサントン骨格を有する化合物が挙げられる。例えば、以下に示す化合物が挙げられる。
【0067】
【化25】

【0068】
中でも、特に好ましい(a)芳香族ケトン類の例としては、以下に示す化合物が挙げられる。
特公昭47−6416号公報に記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号公報に記載のベンゾインエーテル化合物、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0069】
【化26】

【0070】
特公昭47−22326号公報に記載のα−置換ベンゾイン化合物、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0071】
【化27】

【0072】
特公昭47−23664号公報に記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報に記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号公報に記載のジアルコキシベンゾフェノン、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0073】
【化28】

【0074】
特公昭60−26403号公報、及び、特開昭62−81345号公報に記載のベンゾインエーテル類、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0075】
【化29】

【0076】
特公平1−34242号公報、米国特許第4,318,791号明細書、及び、ヨーロッパ特許第0284561号明細書に記載のα−アミノベンゾフェノン類、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0077】
【化30】

【0078】
特開平2−211452号公報に記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0079】
【化31】

【0080】
特開昭61−194062号公報に記載のチオ置換芳香族ケトン、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0081】
【化32】

【0082】
特に、α−アミノケトン系化合物、及び/又は、アシルフォスフィンオキシド系化合物であることが好ましい。
α−アミノケトン系化合物は、以下の式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0083】
【化33】

【0084】
前記式(1)中、Arは、−SR13又は−N(R7)(R8)で置換されているフェニル基であり、ここで、R13は水素原子、又は、アルキル基を表す。
1及びR2はそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基である。R1とR2は互いに結合して炭素数2〜9のアルキレン基を構成してもよい。
3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ置換された炭素数2〜4のアルキル基、又は、炭素数3〜5のアルケニル基を表す。ここで、R3とR4とは互いに結合して炭素数3〜7のアルキレン基を形成してもよく、そのアルキレン基は、アルキレン鎖中に、−O−又は−N(R12)−を含むものであってもよく、ここでR12は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。
7及びR8はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ置換された炭素数2〜4のアルキル基、又は、炭素数3〜5のアルケニル基を表す。ここで、R7とR8とは互いに結合して炭素数3〜7のアルキレン基を形成してもよく、そのアルキレン基は、アルキレン鎖中に、−O−又は−N(R12)−を含むものであってもよい。ここで、R12は前記したものと同義である。
【0085】
前記α−アミノケトン類に包含される化合物の例としては、2−メチル−1−フェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−ヘキシルフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−エチル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等が挙げられる。また、チバガイギー社製のイルガキュアシリーズ、例えば、イルガキュア907、イルガキュア379等の如き市販品としても入手可能であり、これらもα−アミノケトン類に包含される化合物であり、本発明に好適に使用しうる。
【0086】
アシルフォスフィンオキシド系化合物としては、下記式(2)、又は、式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0087】
【化34】

【0088】
前記式(2)中、R5及びR6はそれぞれ独立に、脂肪族基、芳香族基、脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基、複素環基を表し、R7は、脂肪族基、芳香族基、複素環基を表す。
前記R5、R6又はR7における脂肪族基は、例えば、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アラルキル基、又は置換アラルキル基等が挙げられ、中でも、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アラルキル基、又は置換アラルキル基が好ましく、アルキル基、置換アルキル基が特に好ましい。また、前記脂肪族基は、環状脂肪族基でも鎖状脂肪族基でもよい。鎖状脂肪族基は分岐を有していてもよい。
【0089】
前記アルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルキル基が挙げられ、該アルキル基の炭素原子数としては、1〜30が好ましく、1〜20がより好ましい。置換アルキル基のアルキル部分の炭素原子数の好ましい範囲については、アルキル基の場合と同様である。また、前記アルキル基は、置換基を有するアルキル基、無置換のアルキル基のいずれであってもよい。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、ネオペンチル基、イソプロピル基、イソブチル基等が挙げられる。
【0090】
前記置換アルキル基の置換基としては、カルボキシル基、スルホ基、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、ヒドロキシ基、炭素数30以下のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基)、炭素数30以下のアルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、炭素数30以下のアシルアミノスルホニル基、炭素数30以下のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基、フェノキシエトキシ基、フェネチルオキシ基等)、炭素数30以下のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、メチルチオエチルチオエチル基等)、炭素数30以下のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、p−トリルオキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基等)、ニトロ基、炭素数30以下のアルキル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、炭素数30以下のアシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等)、炭素数30以下のアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基、ピペリジノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、モルホリノスルホニル基、ピペリジノスルホニル基等)、置換アミノ基(例えば、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アシルアミノ基等)、置換ウレイド基、置換ホスホノ基、複素環基等が挙げられる。ここで、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシ基、ホスホノ基は、塩の状態であってもよい。その際、塩を形成するカチオンとしては、有機カチオン(例えば、第一級〜第四級アンモニウム)、遷移金属配位錯体カチオン(特許第2791143号公報に記載の化合物等)、又は、金属カチオン(例えば、Na+、K+、Li+、Ag+、Fe2+、Fe3+、Cu+、Cu2+、Zn2+、Al3+等)が好ましく例示できる。
【0091】
前記アルケニル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルケニル基が挙げられ、該アルケニル基の炭素原子数としては、2〜30が好ましく、2〜20がより好ましい。また、該アルケニル基は、置換基を有する置換アルケニル基、無置換のアルケニル基のいずれであってもよく、置換アルケニル基のアルケニル部分の炭素原子数の好ましい範囲はアルケニル基の場合と同様である。前記置換アルケニル基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基、及び、炭素数30以下のアリール基(例えば、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、α−ナフチル基等)が挙げられる。
【0092】
前記アルキニル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルキニル基が挙げられ、該アルキニル基の炭素原子数としては、2〜30が好ましく、2〜20がより好ましい。また、該アルキニル基は、置換基を有する置換アルキニル基、無置換のアルキニル基のいずれであってもよく、置換アルキニル基のアルキニル部分の炭素原子数の好ましい範囲はアルキニル基の場合と同様である。置換アルキニル基の置換基としては、前記アルケニル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
【0093】
前記アラルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアラルキル基が挙げられ、該アラルキル基の炭素原子数としては、7〜35が好ましく、7〜25がより好ましい。また、該アラルキル基は、置換基を有する置換アラルキル基、無置換のアラルキル基のいずれであってもよく、置換アラルキル基のアラルキル部分の炭素原子数の好ましい範囲はアラルキル基の場合と同様である。置換アラルキル基の置換基としては、前記アルケニル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
【0094】
前記R5、R6又はR7で表される芳香族基としては、例えば、アリール基、置換アリール基が挙げられる。アリール基の炭素原子数としては、6〜30が好ましく、6〜20がより好ましい。置換アリール基のアリール部分の好ましい炭素原子数の範囲としては、アリール基と同様である。前記アリール基としては、例えば、フェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基等が挙げられる。置換アリール基の置換基としては、前記アルケニル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
【0095】
前記R5又はR6で表される脂肪族オキシ基としては、置換若しくは無置換の、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、又は、アラルキルオキシ基等が例示でき、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、フェノキシエトキシ基等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
【0096】
前記R5又はR6で表される芳香族オキシ基としては、置換又は無置換のアリールオキシ基が例示でき、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールオキシ基が好ましく、例えば、フェノキシ基、メチルフェニルオキシ基、クロロフェニルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基、オクチルオキシフェニルオキシ基等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
【0097】
前記R5、R6又はR7で表される複素環基としては、N、O又はS原子を含む複素環基が好ましく、例えば、ピリジル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピロリル基等が挙げられる。
【0098】
また、式(2)で表される化合物は、R5、R6又はR7において、他の式(2)で表される化合物と結合してアシルフォスフィン構造を2以上有する多量体を形成してもよい。
【0099】
【化35】

【0100】
前記式(3)中のR8及びR10は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、複素環基を表し、R9は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環基を表す。前記R8、R9又はR10で表される、アルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基及びアリールオキシ基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記式(2)における場合と同様の置換基が挙げられる。
前記式(3)におけるアルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基及びアリールオキシ基としては、前記式(2)における場合と同義である。
また、式(3)で表される化合物は、R8、R9又はR10において、他の式(3)で表される化合物と結合してアシルフォスフィン構造を2以上有する多量体を形成してもよい。
【0101】
また、前記式(2)又は式(3)で表されるアシルフォスフィンオキシド系化合物としては、例えば、特公昭63−40799号公報、特公平5−29234号公報、特開平10−95788号公報、特開平10−29997号公報等に記載の化合物を挙げることができる。
【0102】
具体的なアシルフォスフィンオキシド系化合物の例としては、以下に示す化合物(例示化合物(P−1)〜(P−26))が挙げられるが、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0103】
【化36】

【0104】
【化37】

【0105】
【化38】

【0106】
なお、前記例示化合物中、例えば、(P−2):2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドは、DAROCUR TPO(チバスペシャルティケミカルズ社製)の商品名で入手可能であり、(P−19):ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシドは、IRGACURE 819(チバスペシャルティケミカルズ社製)の商品名で入手可能である。
【0107】
(c)芳香族オニウム塩化合物
本発明に用いられるラジカル開始剤として好ましい(c)芳香族オニウム塩化合物には、下記式(1)〜(3)で表される化合物が挙げられる。
【0108】
【化39】

【0109】
式(1)中、Ar1とAr2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は、炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。(Z2-はハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、カルボン酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及び、スルホン酸イオンからなる群より選択される対イオンを表し、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及び、アリールスルホン酸イオンが好ましく挙げられる。
【0110】
式(2)中、Ar3は、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリールオキシ基、炭素原子数12個以下のアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のジアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のアリールアミノ基又は、炭素原子数12個以下のジアリールアミノ基が挙げられる。(Z3-は(Z2-と同義の対イオンを表す。
【0111】
式(3)中、R23、R24及びR25は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。(Z4-は(Z2-と同義の対イオンを表す。
【0112】
本発明において、好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落0030〜0033に記載されたものや特開2001−343742号公報の段落0015〜0046に記載されたもの、また、特開2002−148790号、特開2001−343742号、特開2002−6482号、特開2002−116539号、特開2004−102031号の各公報に記載の特定の芳香族スルホニウム塩化合物などを挙げることができる。
【0113】
本発明において用いられるオニウム塩は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましく、更に360nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、取り扱いを白灯下で実施することができる。
【0114】
(d)有機過酸化物
本発明に用いられるラジカル開始剤として好ましい(d)有機過酸化物には、分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、その例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)ブタン、ターシャリイブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド、ターシャリーブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(ターシャリーブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−キサノイルパーオキサイド、過酸化コハク酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、メタ−トルオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ターシャリーブチルパーオキシアセテート、ターシャリーブチルパーオキシピバレート、ターシャリーブチルパーオキシネオデカノエート、ターシャリーブチルパーオキシオクタノエート、ターシャリーブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ターシャリーブチルパーオキシラウレート、ターシャリーカーボネート、3,3’4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等がある。
【0115】
中でも、3,3’4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましい。
【0116】
(e)チオ化合物
本発明で用いられるラジカル開始剤として好ましい(e)チオ化合物には、下記式(4)で示される構造を有する化合物が挙げられる。
【0117】
【化40】

(ここで、R26はアルキル基、アリール基又は置換アリール基を示し、R27は水素原子又はアルキル基を示す。また、R26とR27は、互いに結合して酸素、硫黄及び窒素原子から選ばれたヘテロ原子を含んでもよい5員乃至7員環を形成するのに必要な非金属原子群を示す。)
【0118】
上記式(4)におけるアルキル基としては炭素原子数1〜4個のものが好ましい。またアリール基としてはフェニル基、ナフチル基のような炭素原子数6〜10個のものが好ましく、置換アリール基としては、上記のようなアリール基に塩素原子のようなハロゲン原子、メチル基のようなアルキル基、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基で置換されたものが含まれる。R27は、好ましくは炭素原子数1〜4個のアルキル基である。式(4)で示されるチオ化合物の具体例としては、下記に示すような化合物が挙げられる。
【0119】
【化41】

【0120】
(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物
本発明に用いられるラジカル開始剤として好ましい(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物には、特公昭45−37377号公報、特公昭44−86516号公報記載のロフィンダイマー類、例えば2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0121】
(g)ケトオキシムエステル化合物
本発明に用いられるラジカル開始剤として好ましい(g)ケトオキシムエステル化合物には、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0122】
(h)ボレート化合物
本発明に用いられるラジカル開始剤として好ましい(h)ボレート化合物の例には、下記式(5)で表される化合物を挙げることができる。
【0123】
【化42】

(ここで、R28、R29、R30及びR31は互いに同一でも異なっていてもよく、各々置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルケニル基、置換若しくは非置換のアルキニル基、又は、置換若しくは非置換の複素環基を示し、R28、R29、R30及びR31はその2個以上の基が結合して環状構造を形成してもよい。ただし、R28、R29、R30及びR31のうち、少なくとも1つは置換若しくは非置換のアルキル基である。(Z5+はアルカリ金属カチオン又は第四級アンモニウムカチオンを示す。)
【0124】
上記R28〜R31のアルキル基としては、直鎖、分枝、環状のものが含まれ、炭素原子数1〜18のものが好ましい。具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ステアリル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが含まれる。また、置換アルキル基としては、上記のようなアルキル基に、ハロゲン原子(例えば−Cl、−Brなど)、シアノ基、ニトロ基、アリール基(好ましくはフェニル基)、ヒドロキシ基、−COOR32(ここでR32は水素原子、炭素数1〜14のアルキル基、又はアリール基を示す。)、−OCOR33又は−OR34(ここでR33、R34は炭素数1〜14のアルキル基、又は、アリール基を示す。)、及び下記式で表されるものを置換基として有するものが含まれる。
【0125】
【化43】

(ここでR35、R36はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜14のアルキル基、又はアリール基を示す。)
【0126】
上記R28〜R31のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などの1〜3環のアリール基が含まれ、置換アリール基としては、上記のようなアリール基に前述の置換アルキル基の置換基又は炭素数1〜14のアルキル基を有するものが含まれる。上記R28〜R31のアルケニル基としては、炭素数2〜18の直鎖、分枝、環状のものが含まれる。置換アルケニル基の置換基としては、前記の置換アルキル基の置換基として挙げたものが含まれる。上記R28〜R31のアルキニル基としては、炭素数2〜28の直鎖又は分枝のものが含まれ、置換アルキニル基の置換基としては、前記置換アルキル基の置換基として挙げたものが含まれる。また、上記R28〜R31の複素環基としてはN、S及びOの少なくとも1つを含む5員環以上、好ましくは5〜7員環の複素環基が挙げられ、この複素環基には縮合環が含まれていてもよい。更に置換基として前述の置換アリール基の置換基として挙げたものを有していてもよい。式(5)で示される化合物例としては具体的には米国特許第3,567,453号、同4,343,891号、ヨーロッパ特許第109,772号、同109,773号の各明細書に記載されている化合物及び以下に示すものが挙げられる。
【0127】
【化44】

【0128】
(i)アジニウム化合物
本発明に用いられるラジカル開始剤として好ましい(i)アジニウム化合物には、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号、及び、特公昭46−42363号の各公報に記載のN−O結合を有する化合物群を挙げることができる。
【0129】
(j)メタロセン化合物
本発明に用いられるラジカル開始剤として好ましい(j)メタロセン化合物には、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号、特開昭63−41484号、特開平2−249号、特開平2−4705号の各公報に記載のチタノセン化合物、並びに特開平1−304453号、特開平1−152109号の各公報に記載の鉄−アレーン錯体を挙げることができる。
【0130】
上記チタノセン化合物の具体例としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(メチルスルホンアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチルビアロイルアミノ)フェニル〕チタン、
【0131】
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチル−(4−クロロベンゾイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ベンジル−2,2−ジメチルペンタノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(2−エチルヘキシル)−4−トリルスルホニル)アミノ〕フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3−オキサヘプチル)ベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3,6−ジオキサデシル)ベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(トリフルオロメチルスルホニル)アミノ〕フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(トリフルオロアセチルアミノ)フェニル〕チタン、
【0132】
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(2−クロロベンゾイル)アミノ〕フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(4−クロロベンゾイル)アミノ〕フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3,6−ジオキサデシル)−2,2−ジメチルペンタノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3,7−ジメチル−7−メトキシオクチル)ベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−シクロヘキシルベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン等を挙げることができる。
【0133】
(k)活性エステル化合物
本発明に用いられるラジカル開始剤として好ましい(k)活性エステル化合物には、特公昭62−6223号公報に記載のイミドスルホネート化合物、特公昭63−14340号公報、特開昭59−174831号公報に記載の活性スルホネート類を挙げることができる。
【0134】
(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物
本発明に用いられるラジカル開始剤として好ましい(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物には、下記式(6)〜(12)で表される化合物を挙げることができる。
【0135】
【化45】

(式中、X2はハロゲン原子を表し、Y1は−C(X23、−NH2、−NHR38、−NR38、−OR38を表す。ここでR38はアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基を表す。またR37は−C(X23、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、置換アルケニル基、を表す。)
【0136】
【化46】

(ただし、R39は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アリール基、置換アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、置換アルコキシル基、ニトロ基又はシアノ基であり、X3はハロゲン原子であり、nは1〜3の整数である。)
【0137】
【化47】

(ただし、R40は、アリール基又は置換アリール基であり、R41は、以下に示す基又はハロゲンであり、Z6は−C(=O)−、−C(=S)−又は−SO2−であり、X3はハロゲン原子であり、mは1又は2である。)
【0138】
【化48】

(R42、R43はアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アリール基又は置換アリール基であり、R44は前記式(6)中のR38と同じである。)
【0139】
【化49】

(ただし、式中、R45は置換されていてもよいアリール基又は複素環式基であり、R46は炭素原子1〜3個を有するトリハロアルキル基又はトリハロアルケニル基であり、pは1、2又は3である。)
【0140】
【化50】

(式(10)は、トリハロゲノメチル基を有するカルボニルメチレン複素環式化合物を表す。L7は水素原子又は式:CO−(R47)q(C(X43rの置換基であり、Q2はイオウ、セレン又は酸素原子、ジアルキルメチレン基、アルケン−1,2−イレン基、1,2−フェニレン基又は−N−R−基であり、M4は置換又は非置換のアルキレン基又はアルケニレン基であるか、又は1,2−アリーレン基であり、R48はアルキル基、アラルキル基又はアルコキシアルキル基であり、R47は、炭素環式又は複素環式の2価の芳香族基であり、X4は塩素、臭素又はヨウ素原子であり、q=0及びr=1であるか又はq=1及びr=1又は2である。)
【0141】
【化51】

(式(11)は、4−ハロゲノ−5−(ハロゲノメチルフェニル)オキサゾール誘導体を表す。X5はハロゲン原子であり、tは1〜3の整数であり、sは1〜4の整数であり、R49は水素原子又はCH(3-t)5t基であり、R50はs価の置換されていてもよい不飽和有機基である。)
【0142】
【化52】

(式(12)は、2−(ハロゲノメチルフェニル)−4−ハロゲノオキサゾール誘導体を表す。X6はハロゲン原子であり、vは1〜3の整数であり、uは1〜4の整数であり、R51は水素原子又はCH(3-v)6v基であり、R52はu価の置換されていてもよい不飽和有機基である。)
【0143】
このような炭素−ハロゲン結合を有する化合物の具体例としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42,2924(1969)記載の化合物、例えば、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’,4’−ジクロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−n−ノニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。その他、英国特許第1388492号明細書記載の化合物、例えば、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メチルスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4−アミノ−6−トリクロロメチル−s−トリアジン等、特開昭53−133428号公報記載の化合物、例えば、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−〔4−(2−エトキシエチル)−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4,7−ジメトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン)、2−(アセナフト−5−イル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン等、独国特許第3337024号明細書記載の化合物、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
【0144】
【化53】

【0145】
また、F.C.Schaefer等によるJ.Org.Chem.,29,1527(1964)記載の化合物、例えば2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロモメチル)−s−トリアジン、2−アミノ−4−メチル−6−トリブロモメチル−s−トリアジン、2−メトキシ−4−メチル−6−トリクロロメチル−s−トリアジン等を挙げることができる。更に特開昭62−58241号公報記載の、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
【0146】
【化54】

【0147】
更に特開平5−281728号公報に記載の、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
【0148】
【化55】

【0149】
あるいは更にM.P.Hutt、E.F.Elslager及びL.M.Herbel著「Journal of Heterocyclic Chemistry」第7巻(No.3)、第511頁以降(1970年)に記載されている合成方法に準じて、当業者が容易に合成することができる次のような化合物群、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
【0150】
【化56】

【0151】
(m)アゾ系化合物
本発明に用いられるラジカル開始剤として好ましい(m)アゾ系化合物には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスプロピオニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等を挙げることができる。
【0152】
本発明におけるラジカル開始剤のより好ましい例としては、上述の(a)芳香族ケトン類、(b)アシルフォスフィン化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物、(d)有機過酸化物、(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(j)メタロセン化合物、(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物、を挙げることができ、更に好ましい例としては、(a)芳香族ケトン類、(b)アシルフォスフィン化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物、(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物、を挙げることができ、特に好ましい例としては(a)芳香族ケトン類の前記式(1)で表されるα−アミノケトン類、(b)アシルフォスフィン化合物の前記式(2)又は(3)で表される化合物を挙げることができる。
【0153】
硬化性組成物におけるこれらのラジカル開始剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対し、0.1〜50重量%であることが好ましく、0.5〜30重量%であることがより好ましく、5〜20重量%であることが特に好ましい。
本発明におけるラジカル開始剤は、単独若しくは2種以上の併用によって好適に用いられる。
透明性の観点から好ましい光重合開始剤としては、光重合開始剤を3g/cm2の厚みで製膜した際に、400nmの波長の吸光度が0.3以下の化合物が好ましく、0.2以下の化合物がより好ましく、0.1以下の化合物が更に好ましい。
上記の中で、本発明で用いる式(I)で示される化合物との関係、及び、透明性の観点から、光重合開始剤としては、α−アミノケトン系化合物及び/又はアシルフォスフィンオキシド系化合物を用いることが好ましく、α−アミノケトン系化合物及びアシルフォスフィンオキシド系化合物を併用することが特に好ましい。
【0154】
本発明の硬化性組成物における前記光重合開始剤の含有量は、固形分換算で、0.1〜30重量%の範囲であることが好ましく、0.2〜20重量%の範囲であることがより好ましい。
【0155】
本発明において、カチオン重合開始剤(光酸発生剤)としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(例えば、有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページを参照することができる。)。
本発明に好適なカチオン重合開始剤の例を以下に挙げる。
すなわち、第1に、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C654-、PF6-、AsF6-、SbF6-、CF3SO3-塩を挙げることができる。第2に、スルホン酸を発生するスルホン化物を挙げることができる。第3に、ハロゲン化水素を光により発生するハロゲン化物も用いることができる。第4に、鉄アレーン錯体を挙げることができる。
カチオン重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0156】
(成分C)エチレン性不飽和化合物
本発明の硬化性組成物は、エチレン性不飽和化合物を含有する。
本発明に用いることができるエチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和基を有する化合物であれば、特に制限はないが、ラジカル重合又はカチオン重合可能な化合物であることが好ましい。
【0157】
本発明におけるラジカル重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であれば、どのようなものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等が含まれる。
ラジカル重合性化合物は、1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよい。反応性、物性などの性能を制御する点から、2種以上のラジカル重合性化合物を併用することが好ましい。
【0158】
ラジカル重合性化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エチレン性不飽和結合を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、更に種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。
【0159】
具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート等のアクリル酸誘導体、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリル誘導体、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のN−ビニル化合物類、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられ、更に具体的には、山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年、大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79頁、(1989年、シーエムシー社);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品若しくは業界で公知のラジカル重合性又は架橋性のモノマー、オリゴマー、及び、ポリマーを用いることができる。
【0160】
また、ラジカル重合性化合物としては、例えば、特開平7−159983号、特公平7−31399号、特開平8−224982号、特開平10−863号、特開平9−134011号等の各公報に記載されている光重合性組成物に用いられる光硬化型の重合性化合物材料が知られており、これらも本発明の硬化性組成物に適用することができる。
【0161】
更に、ラジカル重合性化合物として、ビニルエーテル化合物を用いることも好ましい。
好適に用いられるビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度の観点から、ジビニルエーテル化合物又はトリビニルエーテル化合物が好ましく、ジビニルエーテル化合物が特に好ましい。ビニルエーテル化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0162】
本発明に用いることができる他の重合性化合物としては、(メタ)アクリル系モノマー若しくはプレポリマー、エポキシ系モノマー若しくはプレポリマー、又は、ウレタン系モノマー若しくはプレポリマー等の(メタ)アクリル酸エステル(以下、適宜、「アクリレート化合物」ともいう。)が好ましく用いられる。更に好ましくは、下記化合物である。
すなわち、2−エチルヘキシルジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、メトキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、エトキシ化フェニルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、ノニルフェノールエチレンオキサイド(EO)付加物アクリレート、変性グリセリントリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、変性ビスフェノールAジアクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド(PO)付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートトリレンジイソシアナートウレタンプレポリマー、ラクトン変性可撓性アクリレート、ブトキシエチルアクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアナートウレタンプレポリマー、2−ヒドロキシエチルアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアナートウレタンプレポリマー、ステアリルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ラクトン変性アクリレートなどのアクリレート化合物、及び、これらのアクリレート化合物のアクリロキシ基をメタクリロキシ基に変更したメタクリレート化合物が挙げられる。
【0163】
また、ここに列挙されているモノマーは、反応性が高く、かつ粘度が低く、被印刷体等への密着性に優れる。
【0164】
更に、前記において挙げたモノマー以外にも、特開2003−26711号、特開平4−31467号、特開平4−41563号、特開平4−41564号、特開平5−263012号、特開平5−263013号、及び、特許第4277936号等の各公報に記載されている光重合性組成物に用いられる重合性化合物も、本発明におけるエチレン性不飽和化合物として用いることができる。
【0165】
本発明において、非タック性(表面ベトツキ)、表面平滑性を改善するためには、式(I)で示される化合物と、前述のエチレン性不飽和化合物に記載の中でも、多官能アクリレート化合物とを併用することが好ましい。
また、多官能エチレン性不飽和化合物を使用する場合、多官能エチレン性不飽和化合物の含有量としては、硬化性組成物の全重量に対し、5〜80重量%であることが好ましく、40〜70重量%であることがより好ましい。上記範囲であると、非タック性に優れる。
なお、本発明において、種々の目的に応じて、ラジカル重合性化合物とラジカル光重合開始剤との組み合わせの他、これらと共に、下記に示すようなカチオン重合性化合物とカチオン重合開始剤とを併用した、ラジカル・カチオンのハイブリッド型コーティング組成物としてもよい。
【0166】
本発明においては、ラジカル重合性化合物が好ましいが、カチオン重合性化合物も使用可能である。用いることができるカチオン重合性化合物としては、光酸発生剤から発生する酸により重合反応を開始し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、光カチオン重合性モノマーとして知られる各種公知のカチオン重合性のモノマーを使用することができる。
使用するカチオン重合性化合物が、エチレン性不飽和結合を有しない場合は、エチレン性不飽和化合物とエチレン性不飽和結合を有しないカチオン重合性化合物とを併用する。
カチオン重合性モノマーとしては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、同2001−40068号、同2001−55507号、同2001−310938号、同2001−310937号、同2001−220526号などの各公報に記載されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0167】
また、カチオン重合性化合物としては、例えば、カチオン重合系の光硬化性樹脂に適用される重合性化合物が知られており、最近では400nm以上の可視光波長域に増感された光カチオン重合系の光硬化性樹脂に適用される重合性化合物として、例えば、特開平6−43633号、特開平8−324137号の各公報等に公開されている。これらも本発明の硬化性組成物に適用することができる。
【0168】
本発明の硬化性組成物におけるエチレン性不飽和化合物の含有量は、硬化性と表面平滑性の観点から、硬化性組成物全体の重量に対して、10〜97重量%の範囲であることが好ましく、30〜95重量%の範囲がより好ましく、50〜90重量%の範囲であることが特に好ましい。
また、エチレン性不飽和化合物は、1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0169】
(成分D)着色剤
本発明のインク組成物は、着色剤を含有することが好ましい。
本発明に用いることができる着色剤としては、特に制限はなく、顔料や染料等の公知の着色剤から任意に選択して使用することができるが、顔料であることが好ましい。
有機顔料としては、例えば、マダーレーキ、ロッグウッドレーキ、コチニールレーキ等の天然染料系顔料、ナフトールグリーンB、ナフトールグリーンY等のニトロソ系顔料、ナフトールS、リソールファストイエロー2G等のニトロ系顔料、パーマネントレッド4R、ブリリアントファストスカーレット、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー等の不溶性アゾ系顔料、リソールレッド、レーキレッドC、レーキレッドD等の難溶性アゾ系顔料、ブリリアントカーミン6B、パーマネントレッドF5R、ピグメントスカーレット3B、ボルドー10B等の可溶性アゾ系顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スカイブルー等のフタロシアニン系顔料、ローダミンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、メチルバイオレットレーキ等の塩基性染料系顔料、ピーコックブルーレーキ、エオシンレーキ、キノリンイエローレーキ等の酸性染料系顔料、インダンスレンブルー、チオインジゴマルーン等の建染染料系顔料、アリザリンレーキ等の媒染料系顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンバイオレット、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット、イソインドリノンイエロー、ジオキサジンバイオレット、アニリンブラック、有機蛍光顔料などが挙げられる。
【0170】
無機顔料としては、例えば、クレー、バライト、雲母、黄土等の天然物、黄鉛、亜鉛黄、バリウム黄等のクロム酸塩、紺青等のフェロシアン化物、銀朱、カドミウム黄、硫化亜鉛、アンチモン白、カドミウムレッド等の硫化物、硫酸バリウム、硫酸鉛、硫酸ストロンチウム等の硫酸塩、亜鉛華、チタン白、ベンカラ、鉄黒、酸化クロム等の酸化物、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ケイ酸カルシウム、グンジョウ等のケイ酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、カーボンブラック、松煙、ボーンブラック、グラファイト等の炭素、アルミニウム粉、ブロンズ粉、亜鉛末等の金属粉、ヒ酸塩、燐酸塩などが挙げられる。
【0171】
本発明に用いることができる着色剤は、本発明のインク組成物に添加された後、適度に当該インク組成物内で分散することが好ましい。着色剤の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各分散装置を用いることができる。
【0172】
着色剤は、本発明のインク組成物の調製に際して、各成分とともに直接添加により配合してもよいが、分散性向上のため、あらかじめ溶剤又は本発明に使用するラジカル重合性化合物のような分散媒体に添加し、均一分散又は溶解させた後、配合することもできる。
本発明において、溶剤が硬化画像に残留する場合の耐溶剤性の劣化、及び、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)の問題を避けるためにも、着色剤は、ラジカル重合性化合物のような分散媒体に予め添加して、配合することが好ましい。なお、分散適性の観点のみを考慮した場合、着色剤の添加に使用する重合性化合物は、最も粘度の低いモノマーを選択することが好ましい。
【0173】
これらの着色剤は、インク組成物の使用目的に応じて、1種又は2種以上を適宜選択して用いればよい。
【0174】
なお、本発明のインク組成物中において固体のまま存在する顔料などの着色剤を使用する際には、着色剤粒子の平均粒径は、好ましくは0.005〜0.5μm、より好ましくは0.01〜0.45μm、更に好ましくは0.015〜0.4μmとなるよう、着色剤、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定することが好ましい。この粒径管理によって、インク組成物の保存安定性、透明性及び硬化感度を維持することができるので好ましい。
本発明のインク組成物中における着色剤の含有量は、色及び使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の重量に対し、0.01〜30重量%であることが好ましい。
【0175】
<共増感剤>
本発明の硬化性組成物は、共増感剤を含有することもできる。
本発明において共増感剤は、増感剤の活性放射線に対する感度を一層向上させる、又は、酸素による重合性化合物の重合阻害を抑制する等の作用を有する。
このような共増感剤の例としては、アミン類、例えばM.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられる。
具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が例示できる。
【0176】
共増感剤の別の例としてはチオール及びスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特表昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられる。
具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が例示できる。
【0177】
また別の例としては、アミノ酸化合物(例えば、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例えば、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例えば、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(例えば、ジエチルホスファイト等)、特開平8−54735号公報記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
【0178】
<界面活性剤>
本発明の硬化性組成物は、界面活性剤を含有していてもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。また、前記界面活性剤として有機フルオロ化合物やポリシロキサン化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。これらの中でも、界面活性剤としては、ポリジメチルシロキサンが好ましく例示できる。
これらの界面活性剤は、単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0179】
<その他の成分>
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて、他の成分を添加することができる。その他の成分としては、例えば、重合禁止剤、溶剤、無機粒子、有機粒子等が挙げられる。
重合禁止剤は、保存性を高める観点から添加され得る。重合禁止剤は、本発明の硬化性組成物全量に対し、200〜20,000ppm添加することが好ましい。
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl等が挙げられる。
また、例えば、アエロジルのような無機粒子や、架橋したポリメチルメタクリレート(PMMA)のような有機粒子を本発明の硬化性組成物に添加して、意図的に表面光沢を下げた画像や、オーバープリント層、オーバープリントを形成することができる。
【0180】
本発明の硬化性組成物が塗布後に速やかに反応しかつ硬化し得るよう、本発明の硬化性組成物は溶剤を含まないことが好ましい。しかし、硬化性組成物の硬化速度等に大きな影響がない限り、所定の溶剤を含めることができる。
本発明において、溶剤としては、有機溶剤が使用でき、硬化速度の観点から水は実質的に添加しないことが好ましい。有機溶剤は、印刷基材(紙などの受像基材)との密着性を改良するために添加され得る。
有機溶剤を使用する場合も、その量は少ないほど好ましく、本発明の硬化性組成物全体の重量に対し、0.1〜5重量%であることが好ましく、0.1〜3重量%であることがより好ましい。
【0181】
この他に、必要に応じて公知の化合物を本発明の硬化性組成物に添加することができる。
例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類等を適宜選択して添加することができる。
【0182】
ポリウレタン系樹脂としては、例えば、エチレン性不飽和結合を有さないウレタン化合物が好ましく例示できる。
エチレン性不飽和結合を有さないウレタン化合物としては、多価アルコール成分と芳香族環状構造を有しないポリイソシアネート成分との反応生成物が例示できる。
【0183】
多価アルコール成分としては、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ジテトラメチレングリコール、トリテトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネートなどの芳香族環状構造を含まない多価アルコール;上記多価アルコールとカプロラクトンとの反応生成物や、上記多価アルコールと無水コハク酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ハイミック酸、無水ハイミック酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの芳香族環状構造を含まない多塩基酸との反応生成物である芳香族環状構造を含まないポリエステルポリオール;ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコールなどの芳香族環状構造を含まないポリエーテルポリオール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加物、ポリカーボネートジオールなどの芳香族環状構造を含む多価アルコールが例示できる。これらのうち、黄変を更に抑制するためには、芳香族環状構造を含まない多価アルコールを使用することが好ましい。
【0184】
ポリイソシアネート成分は芳香族環状構造を含まないものを使用することが好ましい。具体例としては、例えば、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートジメルカプトエート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、1,3−(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,4−(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの1種又は2種以上の混合物が挙げられる。これらのうち、黄変性が少ないなどの点で優れていることから、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートの1種又は2種以上の混合物が好ましい。
【0185】
具体的な多価アルコール成分とポリイソシアネート成分との組み合わせとしては、例えば、以下に示す組み合わせが好ましい。
【0186】
〔多価アルコール成分〕
(1)ペンタエリスリトール2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネート
(2)アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールとのポリエステルポリオール(平均分子量300〜5,000)
(3)ポリプロピレングリコール(平均分子量300〜5,000)
(4)ポリテトラメチレングリコール(平均分子量300〜4,000)
【0187】
〔ポリイソシアネート成分〕
(1)メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネートとメチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネートの混合物
(2)イソホロンジイソシアネート
(3)4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)
【0188】
エチレン性不飽和結合を有さないウレタン化合物としては、市販品も使用できるが、溶剤を含む市販品の場合は溶剤を除去して使用することが好ましい。
【0189】
また、ポリウレタン系樹脂としては、例えば、エチレン性不飽和結合を有するウレタン化合物が好ましく例示できる。
エチレン性不飽和結合を有するウレタン化合物としては、例えば、前記エチレン性不飽和結合を有しないウレタン化合物をヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートで変性した化合物が例示できる。
【0190】
また、活性エネルギー線硬化性材料として公知のウレタンアクリレート系プレポリマーのうち、ポリイソシアネート成分として芳香族環状構造を含まない成分を使用したプレポリマーも使用できる。汎用されるウレタンアクリレートプレポリマーとしては、ポリエーテルポリオールと芳香族環状構造を含まないポリイソシアネートとヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとの反応生成物が挙げられ、このものは末端にヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート由来のエチレン性不飽和結合を有している。
【0191】
具体的なウレタンアクリレート系プレポリマーとしては、例えば、特開平5−9247号公報、特開平10−30012号公報などに記載されているポリエーテルポリオールとポリイソシアネートとヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの反応生成物などが挙げられる。また、本発明ではウレタンアクリレート系プレポリマーとして市販品も使用できる。
【0192】
また、ポリエステル系樹脂としては、多塩基酸と多価アルコールとのポリエステル樹脂が好ましく挙げられ、更に油脂類、脂肪酸類を反応させたポリエステル樹脂も使用できる。
また、ポリエステル系樹脂は、エチレン性不飽和結合を有していても、有していなくともよいが、エチレン性不飽和結合を有しているものが好ましい。
【0193】
エチレン性不飽和結合を有しないポリエステル樹脂の合成には、以下に示す多塩基酸及び多価アルコールを好ましく用いることができる。
多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水ハイミック酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸などが例示できる。また、多塩基酸は、1種単独又は2種以上併用してもよい。
【0194】
多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ジテトラメチレングリコール、トリテトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネート、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどが例示できる。また、多価アルコールは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0195】
このポリエステル樹脂の合成時に、必要に応じて油、油脂類、一価の飽和有機酸、一価の飽和アルコールなどを共存させてもよい。
油としては、アマニ油、キリ油、脱水ヒマシ油、大豆油、サフラワー油、ヌカ油、トール油、ヒマシ油、パーム油、ヤシ油などが例示できる。
油脂類としては、アマニ油脂肪酸、キリ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、ヌカ油脂肪酸、トール油脂肪酸、パーム油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸などが例示できる。
一価の飽和有機酸としては、ノナン酸、オクタン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸などが例示できる。
一価の飽和アルコールとしては、オクチルアルコール、デカノール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、グルコールエステル類、フェニルグリコールなどが例示できる。
【0196】
これらのうち、強度と柔軟性とのバランスが良好な点から、特に無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸などの多塩基酸と、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ノナンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールF、トリメチロールプロパンなどの多価アルコールとを反応させて得られるポリエステル樹脂が好ましい。
【0197】
エチレン性不飽和結合を有するポリエステル樹脂としては、前記エチレン性不飽和結合を有しないポリエステル樹脂に不飽和有機酸を反応させることによってエチレン性不飽和結合を導入することにより得られるポリエステル樹脂が好ましい。
このようなポリエステル樹脂としては、例えば、エチレン性不飽和結合を有しないポリエステル樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステルアクリレート系プレポリマーが例示できる。具体的には、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸などの多塩基酸と、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ノナンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールF、トリメチロールプロパンなどの多価アルコールとを反応させて得られるポリエステルに(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステルアクリレート系プレポリマーが好ましい。ポリエステルアクリレート系プレポリマーとしては、市販品も使用できる。
【0198】
また、ポリエステル樹脂は、カルボキシル基だけでなく、リン酸基、スルホン酸基などの酸性基を有していてもよい。カルボキシル基などの酸性基の導入は、例えば、エステル化反応における多塩基酸、多価アルコール、(メタ)アクリル酸の添加量を調整することにより行うことができる。ポリエステル樹脂の酸価としては、5〜100mgKOH/gであることが好ましい。上記範囲であると、機械的強度や耐水性に優れる。
【0199】
また、ポリオレフィンやポリエチレンテレフタレート(PET)等の印刷基材への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤー(粘着付与剤)を含有させることも好ましい。具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6頁に記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などが挙げられる。
【0200】
この他、特開2000−313850号公報に記載されているゲルワニス、特開2003−26711号公報に記載されているアミノ基を含有する高分子化合物、特開2005−314511号及び特開2005−314832号の各公報に記載されているアルキッド樹脂なども、本発明の硬化性組成物に使用することができる。
【0201】
<硬化性組成物の性質>
本発明の硬化性組成物における好ましい物性について説明する。
光硬化性コーティング組成物として使用する場合には、塗布性を考慮し、25〜30℃における粘度が、5〜100mPa・sであることが好ましく、7〜75mPa・sであることがより好ましい。25〜30℃における粘度を上記の値に設定することにより、得られる画像やオーバープリントが、非タック性(表面ベトツキがなく)、及び、表面平滑性に優れる。
本発明の硬化性組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。
本発明の硬化性組成物の表面張力は、16〜40mN/mであることが好ましく、18〜35mN/mであることがより好ましい。
【0202】
<硬化性組成物の製造方法>
本発明の硬化性組成物の製造方法について述べる。ただし該方法は下記の方法に限定されるものではない。本発明の硬化性組成物は常法により製造される。すなわち紫外線硬化型樹脂又はプレポリマー、モノマー、重合開始剤、重合禁止剤等を溶解釜にいれて加熱溶解する。次に顔料を加えて混合機中で混合した後又は直ちに二本ロールミル、三本ロールミル、ジェットミル、Σ羽根型混練機、バンバリーミキサー、高速二軸連続ミキサー、押出し機型混練機等を用いて分散させる。このとき前記のように顔料をサンドミル、二本ロールミル等の混練機を用いて例えばスチレン−マレイン酸共重合体樹脂等の熱可塑性樹脂に予め分散させておいてもよい。
【0203】
(印刷方法)
本発明の印刷方法は、(成分A)前記式(I)で示される化合物、(成分B)光重合開始剤、(成分C)エチレン性不飽和化合物、及び、(成分D)着色剤、を含有するインク組成物を、被印刷体上に印刷する印刷工程、並びに、発光ダイオードにより375〜395nmにピーク波長を有する紫外光を照射し、印刷された前記インク組成物を硬化させる硬化工程、を含むことを特徴とする。
【0204】
〔印刷工程〕
本発明の印刷方法は、(成分A)前記式(I)で示される化合物、(成分B)光重合開始剤、(成分C)エチレン性不飽和化合物、及び、(成分D)着色剤、を含有するインク組成物(本発明のインク組成物)を、被印刷体上に印刷する印刷工程を含む。
前記印刷工程におけるインク組成物の各成分としては、前述した本発明のインク組成物の各成分が好適に例示できる。
被印刷体としては、特に制限はなく、公知の被印刷体を用いることができ、例えば、コート紙、上質紙、中質紙などの印刷紙、プラスチック、金属、繊維類などが挙げられる。
前記印刷工程は、本発明のインク組成物を、印刷版により被印刷体上に印刷する印刷工程であることが好ましく、本発明のインク組成物を、印刷機に取り付けられた印刷版により被印刷体上に印刷する印刷工程であることがより好ましい。
印刷版を用いる印刷方法としては、特に制限はないが、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷及びスクリーン印刷などの凸版、平版、凹版及び孔版印刷が例示できる。これらの中でも、オフセット印刷が特に好ましい。
例えば、オフセット印刷においては、原版からオフセット印刷機を用いて被印刷体にインク組成物を転写する。原版としては、PS版、多層金属版、平凹版、ワイポン版、合成樹脂版、非画線部にシリコーン化合物が塗布された水なし平版等が用いられる。オフセット印刷機としては特に制限はないが、例えば、金属板印刷機、オフセット印刷校正機等が用いられる。
印刷工程は、単色印刷のように1回のみであっても、フルカラー印刷等のため2回以上であってもよい。
【0205】
〔硬化工程〕
本発明の印刷方法は、発光ダイオードにより375〜395nmにピーク波長を有する紫外光を照射し、印刷された前記インク組成物を硬化させる硬化工程を含む。
被印刷体上に印刷されたインク組成物は、発光ダイオードにより375〜395nmにピーク波長を有する紫外光を照射することによって硬化する。これは、本発明のインク組成物に含まれる光重合開始剤が前記紫外光の照射により直接又は間接的に励起され、ラジカル、酸、塩基などの開始種を発生し、その開始種の機能により、特定の単官能(メタ)アクリル酸誘導体や所望により併用される他の重合性化合物の重合反応が、生起、促進されてインク組成物が硬化するためである。このとき、インク組成物において光重合開始剤とともに式(I)で示される化合物が存在すると、系中の式(I)で示される化合物が発光ダイオードにより375〜395nmにピーク波長を有する紫外光を吸収して励起状態となり、重合開始剤と接触することによって重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させると推定される。
【0206】
<UV−LEDの照射>
UV−LED(紫外線発光ダイオード)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化性インク組成物及び光硬化性コーティング組成物を硬化させるための光源として期待されている。ここで、本発明において、光硬化性インク組成物又は光硬化性コーティング組成物を硬化するためにUV−LEDにより照射する紫外線は、は、375〜395nmに発光ピーク波長を有するものである。上述した光硬化性インク組成物又は光硬化性コーティング組成物に照射するピーク波長を375〜395nmの範囲とすると、硬化に有利な増感剤として可視光領域にほとんど吸収を持たない増感剤を選択することができることから、非タック性に優れ、かつ、可視域に不要吸収を有さず色相に優れる硬化物が得られる。すなわち、UV−LEDにより照射する紫外線のピーク波長が395nmを超えると、硬化に有利な増感剤の吸収波長は可視光領域に吸収を持つようになり光硬化性インク組成物及び光硬化性コーティング組成物は黄色化し、その結果、色相が悪くなってしまう。
一方、ピーク波長が375nm未満であり本発明の目的に適う高出力UV−LEDはコストが高く、実用適性が低いという問題がある。
【0207】
UV−LEDは、以下に述べるように、光硬化性インク組成物又は光硬化性コーティング組成物を硬化するための光源として使用した場合に、紫外線ランプと比較して種々の利点を有する。
まず、UV−LEDは、紫外線ランプと比較して、消費電力が低いという利点を有する。このため、UV−LEDを硬化用の光源とする印刷装置、オーバープリント装置、ラミネート加工装置等を構成した場合に、その消費電力を削減することができる。
また、紫外線ランプにより発生する紫外線には、オゾンの発生原因となる波長242nm以下の紫外線が含まれるため、空気中でオゾンが発生することになる。このため、紫外線ランプを使用する場合には、オゾンによる臭気を排出するための排出手段を設置する必要がある。これに対し、UV−LEDにより発生する紫外線には、かかる波長の紫外線が含まれないため、空気中でオゾンが発生することはなく、オゾンによる臭気を排出するための排出手段を設置する必要もない。加えて、UV−LEDを用いて光源を構成する場合には、紫外線ランプとは異なり水銀が不要である。このように、UV−LEDを用いた光源は、水銀ランプと比較して環境適合性に優れた光源である。
また、UV−LEDにより発生する光には赤外線が含まれておらず、発熱量が少ないため、印刷資材や印刷機に対する熱による影響を低減することができる。
また、UV−LEDを用いて光源を構成する場合には、その付帯設備を小型化することができ、印刷装置、オーバープリント装置、ラミネート加工装置等の省スペース化を図ることができる。
また、UV−LEDは、紫外線ランプと比較して長寿命であるため、メンテナンスの負担を軽減することができる。
更に、紫外線ランプは点灯及び消灯に待機時間を必要とするのに対し、UV−LEDは待機時間を必要とすることなく瞬時に点灯、消灯することができる。したがって、UV−LEDによれば、作業待機時間を低減することができる。
【0208】
本発明においては、種々の公知のUV−LEDを紫外線の照射に使用することができる。
また、UV−LEDにより照射される紫外線の被印刷体又は印刷物等の照射対象物上での照度は1,000mW/cm2以上であることが好ましく、2,000mW/cm2以上であることがより好ましい。なお、照度は、照射距離を10mmとして計測したものであり、ウシオ UVメーター 405(ウシオ電機(株)製)により、照射距離を10mmとして計測したものであることが好ましい。
また、本発明の光硬化性インク組成物及び光硬化性コーティング組成物は、低出力のUV−LEDであっても充分な感度を有するものである。例えば、印刷送り速度が5m〜300mの範囲においては、UV−LEDの照射量は、10〜4,000mJ/cm2であることが好ましく、20〜4,000mJ/cm2であることがより好ましい。
【0209】
本発明に使用し得るUV−LEDを光源として用いた紫外線硬化装置としては、特に限定されるものではないが、例えば、パナソニック電工(株)製のAicure UD80シリーズが挙げられる。Aicure UD80シリーズのうちの照射幅750mmタイプは、波長385nm±10nmの紫外線を発生するUV−LEDを光源とするものである。
【0210】
以下、本発明の印刷方法の一例を、図面を参照しながら説明する。
図2は、本発明の印刷方法の一実施態様に用いることができる印刷機の概略構成図である。
【0211】
図2に示すように、印刷機100は、5色刷りが行えるように構成されており、互いに異なる複数の基本色の印刷インキであるシアン色(C)、マゼンタ色(M)、イエロー色(Y)、ブラック色(Bk)の4色の基本色のインク組成物の他に、例えば金・銀・蛍光・パール色のインク組成物等のうちの特別な1色(特別色という)を用いて特色刷りや補色刷りが行えるようになっている。また、印刷機100は、給紙部20、印刷部30及び排紙部40を備えている。給紙部20は、被印刷体(図示せず)を印刷部30に供給することができる。印刷部30は、給紙部20から供給される被印刷体を印刷することができ、複数の印刷ユニット(ここではC、M、Y、Bkの基本色画像と特色刷りや補色刷りを行う特別色画像がそれぞれ形成される5台の印刷ユニット30a〜30e)を備えている。また、排紙部40は、印刷部30にて印刷された被印刷体を排紙して上下方向に積み重ねておくことができる。
【0212】
前記インク組成物としては、紫外線硬化型インク組成物を用いており、前記印刷ユニット30a〜30eを通過して印刷された被印刷体のインク組成物を硬化させるための乾燥ユニット30fを終端に位置する印刷ユニット30eの終端に連結している。
前記印刷機100では、給紙部20から被印刷体が印刷部30に供給され、該供給された被印刷体が印刷部30における各印刷ユニット30a〜30eにて印刷された後、乾燥ユニット30fにてインク組成物を硬化させてから、被印刷体が排紙部40にて排紙されるようになっている。なお、前記給紙部20から被印刷体が印刷部30に供給される前に、搬送方向及び左右幅方向における被印刷体の位置が所定位置になるように位置合わせ(見当合わせという。)され、この位置合わせされた後は、その位置合わせ状態を維持しながら排紙部40まで被印刷体を搬送することになる。
【0213】
印刷部30の各印刷ユニット30a〜30eは、それぞれ版胴1、ゴム胴2及び圧胴3を主要構成要素の一組として構成されるものである。印刷ユニット30aにおける符号9a、及び印刷ユニット30b〜30dにおける符号9b,9cは、いずれも渡し胴であり、それぞれの大きさが異なっている。これら渡し胴及び前記圧胴3には、被印刷体を挟持しながら搬送し、搬送方向で隣り合う次の胴に受け渡すためのグリッパ(図示せず)を備えている。
【0214】
各印刷ユニット30a〜30eに備える版胴1には、印刷用の版が配設される。この版にはインキ及び水が供給され、版に従ってインク組成物がゴム胴2に転写される。そしてゴム胴2に転写されたインク組成物が、ゴム胴2とこれに対向位置する圧胴3とで挟持されつつ搬送されてくる被印刷体に更に転写される。これにより、給紙部20から供給される被印刷体に対して、5つの版胴1にそれぞれ設けられた版にて印刷を順次行うことができるようになっている。
【0215】
前記乾燥ユニット30fの内部には、印刷されて搬送されてくる被印刷体のインク組成物に紫外線を照射して該インク組成物を硬化させるための紫外線照射部Tを備えている。
図3は、(a)は紫外線照射部Tにおける圧胴と発光ダイオードとの配置関係を示す斜視図、(b)は紫外線照射部Tにおける発光ダイオードを備えた基板の正面図である。
前記紫外線照射部Tは、図3(a),(b)にも示すように、前記圧胴3の表面にほぼ直交する方向に照射軸を有する44個の発光ダイオード4を備え、それら発光ダイオード4が圧胴3の上方に配置されている。なお、発光ダイオード4と圧胴3との間隔は、できる限り接近させた方が硬化効率の点で好ましいが、搬送される被印刷体に接触することがないような間隔が好ましい。
【0216】
前記44個の発光ダイオード4は、被印刷体(圧胴3)の幅方向に沿って一直線上に所定間隔(等間隔)をおいて配置され、圧胴3の幅方向全域に渡って紫外線を照射できるようになっている。
【0217】
前記44個のうちの11個の発光ダイオード4を、横長状の1つの基板5に備えさせ、4台の基板5を被印刷体(圧胴3)の幅方向に連結するとともに、両側に位置する基板5の端それぞれに支持部材6(図3(b)では一端のみを図示している。)を取り付けて、4台の基板5を圧胴3の表面に対して所定距離(所定高さ)隔てて左右の支持部材6,6にて支持させている。
【0218】
(オーバープリントの作製方法)
本発明のオーバープリントの作製方法は、(成分A)前記式(I)で示される化合物、(成分B)光重合開始剤、及び、(成分C)エチレン性不飽和化合物、を含有するコーティング組成物を、印刷物上に塗布する塗布工程、並びに、発光ダイオードにより375〜395nmにピーク波長を有する紫外光を照射し、塗布された前記コーティング組成物を硬化させる硬化工程、を含むことを特徴とする。
また、本発明のオーバープリントは、印刷物上に本発明のコーティング組成物を、発光ダイオードにより375〜395nmにピーク波長を有する紫外光を照射し硬化したオーバープリント層を有する。
前記オーバープリントとは、電子写真印刷、インクジェット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、平版印刷、凹版印刷又は凸版印刷等の印刷方法により得られた印刷物の表面上に、少なくとも1層のオーバープリント層を形成したものである。
前記印刷方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
本発明のオーバープリントにおけるオーバープリント層は、印刷物の一部に形成しても、印刷物の表面全体に形成してもよく、また、両面印刷物の場合には印刷基材の両方側全面に形成することが好ましい。また、前記オーバープリント層は、印刷物における印刷されていない部分に形成してもよいことは言うまでもない。
本発明のオーバープリントにおけるオーバープリント層の厚みは、1〜10μmであることが好ましく、3〜6μmであることがより好ましい。
オーバープリント層の厚みの測定方法としては、特に制限はないが、オーバープリントの断面を光学顕微鏡などにて観察し測定する方法が好ましく例示できる。
また、前記塗布工程は、コーティング組成物を、三次元構造体の表面に塗布する工程であってもよい。三次元構造体としては、特に制限はなく、公知の物体に対して、所望に応じて、本発明のコーティング組成物を塗布することができる。また、所望に応じて、本発明のコーティング組成物に代えて、本発明のインク組成物を塗布してもよい。
【0219】
〔塗布工程〕
本発明のオーバープリントの作製方法は、(成分A)前記式(I)で示される化合物、(成分B)光重合開始剤、及び、(成分C)エチレン性不飽和化合物、を含有するコーティング組成物を、印刷物上に塗布する塗布工程を含む。
前記塗布工程において、コーティング組成物を塗布するためには、通常使用される液膜コーティング装置(liquid film coating device)を使用することができる。具体的には、ロールコーター、ロッドコーター、ブレード、ワイヤバー、浸漬(dips)、エアナイフ、カーテンコーター、スライドコーター、ドクターナイフ、スクリーンコーター、グラビアコーター、例えば、オフセットグラビアコーター、スロットコーター、及び、押出しコーターなどが例示できる。それらの装置は、通常と同じようにして使用することができるが、例えば、ダイレクトロールコーティング及びリバースロールコーティング(direct and reverse roll coating)、ブランケットコーティング(blanket coating)、ダンプナーコーティング(dampner coating)、カーテンコーティング、平版コーティング、スクリーンコーティング、及び、グラビアコーティングなどがある。好ましい実施の態様においては、本発明のコーティング組成物の塗布及び硬化は、2台又は3台のロールコーターとUV硬化ステーションを使用して実施する。
また、本発明のコーティング組成物の塗設時や硬化時においては、必要に応じ、加熱を行ってもよい。
前記塗布工程における本発明のコーティング組成物の塗布量は、単位面積当たりの重量で表して、1〜10g/m2の範囲であることが好ましく、3〜6g/m2であることがより好ましい。
また、本発明のオーバープリントの作製方法により得られるオーバープリントにおけるオーバープリント層の形成量は、単位面積当たり、1〜10g/m2の範囲であることが好ましく、3〜6g/m2であることがより好ましい。
前記印刷基材としては、特に制限はなく、公知のものを使用することができるが、受像用紙であることが好ましく、普通紙又はコート紙であることがより好ましく、コート紙であることが更に好ましい。コート紙としては、両面コート紙が、フルカラー画像を美しく両面印刷できるので好ましい。印刷基材が紙又は両面コート紙である場合、好ましい坪量は20〜200g/m2であり、より好ましい坪量は40〜160g/m2である。
【0220】
〔硬化工程〕
本発明のオーバープリントの作製方法は、発光ダイオードにより375〜395nmにピーク波長を有する紫外光を照射し、塗布された前記コーティング組成物を硬化させる硬化工程を含む。
前記硬化工程における発光ダイオードにより375〜395nmにピーク波長を有する紫外光の照射は、前記本発明の印刷方法における硬化工程の態様が好ましく例示できる。
【0221】
(ラミネート加工方法)
本発明のラミネート加工方法は、(成分A)前記式(I)で示される化合物、(成分B)光重合開始剤、及び、(成分C)エチレン性不飽和化合物、を含有するコーティング組成物を、印刷物上に塗布する塗布工程、コーティング組成物を塗布した前記印刷物にラミネートフィルムを積層する積層工程、並びに、発光ダイオードにより375〜395nmにピーク波長を有する紫外光を照射し、塗布された前記コーティング組成物を硬化させる硬化工程、を含むことを特徴とする。
本発明のラミネート加工方法における塗布工程、及び、硬化工程における発光ダイオードにより375〜395nmにピーク波長を有する紫外光の照射は、前記本発明のオーバープリントの作製方法における塗布工程、及び、硬化工程における発光ダイオードにより375〜395nmにピーク波長を有する紫外光の照射と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0222】
〔積層工程〕
本発明のラミネート加工方法は、コーティング組成物を塗布した前記印刷物にラミネートフィルムを積層する積層工程を含む。
本発明のラミネート加工方法においては、コーティング組成物が、印刷物とラミネートフィルムとの接着剤として作用することが好ましい。
前記積層工程に用いることができるラミネートフィルムとしては、特に制限はなく、樹脂フィルム等の公知のラミネートフィルムを用いることができる。また、前記ラミネートフィルムは、所望に応じ、平滑なフィルムであっても、表面に凹凸状の模様を有するフィルムであってもよい。
【0223】
〔硬化工程〕
本発明のラミネート加工方法は、発光ダイオードにより375〜395nmにピーク波長を有する紫外光を照射し、塗布された前記コーティング組成物を硬化させる硬化工程を含む。
前記紫外光の照射は、ラミネートフィルムを貼り付けた側から照射を行っても、印刷物の基材が透明基材であれば、その反対側から照射を行っても、両側から照射を行ってもよいが、ラミネートフィルムを貼り付けた側から照射を行うことが好ましい。
【0224】
また、前記ラミネートフィルムは、コーティング組成物と重なり合う表面に凹凸を形成した版であることが好ましい。この版の凹凸を塗布膜に転写することにより、コーティング表面の光沢(マット、グロス)が調整される。また、任意の凹凸パターンやホログラムを形成してもよい。
また、コーティング組成物の塗布膜に凹凸等の形状、又は、平滑な表面を形成するためにラミネートフィルムを積層する場合、本発明のラミネート加工方法は、積層した印刷物からラミネートフィルムを剥離する剥離工程を含むことが好ましい。
前記剥離工程は、前記硬化工程の前であっても、後であってもよいが、ラミネートフィルムとコーティング組成物とが接触して硬化した際に接着性を有する場合は、前記剥離工程を前記硬化工程の前に行うことが好ましい。
本発明のラミネート加工方法に用いることができるラミネート加工装置としては、特に制限はなく、例えば、特開平11−350398号公報、特開平6−8400号公報、特開昭56−37398号公報、特開昭63−278847号公報及び特開平8−325991号公報に記載の装置が挙げられる。
【0225】
図4は、本発明のラミネート加工方法に用いることができるコーティング装置200の構成の概略を示す図である。
紙材202はロール203として紙材巻出し装置204に保持されており、巻き戻された紙材202はガイドローラ205で案内されて紙材巻取り装置206にロールとして巻き取られる。これら紙材巻出し装置204、ガイドローラ205、紙材巻取り装置206は全体として紙材搬送装置を構成しており、紙材202のガイドローラ205による搬送途中にはコーティング組成物を塗布する塗布装置、硬化装置及び剥離装置が順次設けられている。
【0226】
一方、特定光線透過性、すなわち本実施形態では発光ダイオードにより発生する375〜395nmにピーク波長を有する紫外光を透過する長尺なラミネートフィルム210がロール211としてラミネートフィルム巻出し装置212に保持されている。巻戻されたラミネートフィルム210はガイドローラ213で案内されてラミネートフィルム巻取り装置214にロールとして巻取られる。これらラミネートフィルム巻出し装置212、ガイドローラ213、ラミネートフィルム巻取り装置214は全体としてラミネートフィルム搬送装置を構成しており、ラミネートフィルム210のガイドローラ213による搬送途中には硬化装置及び剥離装置が順次設けられている。
【0227】
上記した塗布装置は、コーティング組成物を貯留する貯留槽215と、貯留槽215内のコーティング組成物を塗布ローラ216の表面に均一に塗布するローラ217と、紙材202の搬送方向に対応して回転駆動される塗布ローラ216とを備えており、硬化装置の上流側近傍に設けられている。
【0228】
また、上記した硬化装置は、ラミネートフィルム210に接して当該ラミネートフィルム210の搬送方向に対応して回転駆動される特定光線透過性の加圧ローラ220と、回転自在に設けられて加圧ローラ220との間で搬送されてきたラミネートフィルム210と紙材202を重ね合わせて挟圧する受け側の加圧ローラ221と、加圧ローラ220に内蔵された第1の発光ダイオード222と、搬送方向の下流側であって加圧ローラ220,221の近傍に設けられた第2の発光ダイオード223とを備えている。
【0229】
また、上記した剥離装置は、ラミネートフィルム210を紙材202上に形成された硬化した塗布膜から離隔する方向へ案内するセパレートローラ224と、剥離されるラミネートフィルム210に対向して紙材202を挟持案内する一対の保持ローラ225とを備えている。
【0230】
ここで、上記ラミネートフィルム210は平滑な表面を有してコーティング組成物が浸透及び密着しない素材であることが好ましい。素材としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレン複合材等といった紫外線透過性材料からなるフィルムが用いられる。なお、このラミネートフィルム210はコロナ処理などの処理を施さない未処理フィルムであることが望ましい。
【0231】
また、ラミネートフィルム210は、表面が平滑なものに限定されるものではなく、樹脂膜の表面をどのように処理するかにより適宜に選択することができる。例えば、樹脂膜を光沢のある艶出し表面とする場合には、表面が平滑なラミネートフィルム210を選択して使用する。樹脂膜を艶消しにしたい場合には表面がマット状に処理されたラミネートフィルム210を選択する。細かな凹凸からなる模様や図柄を樹脂膜に形成したい場合には表面に小さな凹凸、例えばエンボスからなる模様や図柄を形成したラミネートフィルムを版として使用する。樹脂膜に超微細な凹凸からなるホログラムを形成する場合には、形成するホログラムとは逆の超微細凹凸を表面に形成したラミネートフィルムを反転転写版として使用する。
このように、表面に凹凸を形成した反転転写版(ラミネートフィルム)を作成する場合には、印刷等の手段により凹凸を形成した原版上に剥離剤を塗布してから熱溶融樹脂、例えば溶融ポリエチレンを塗布する。そして、この溶融樹脂が硬化した後に剥離し、この剥離した硬化塗布膜を、原版の凹凸を転写した反転転写版(ラミネートフィルム210)として使用する。このようにして反転転写版を作成すると、印刷用の版は一般に安価で容易にできるので、これを反転転写してもコーティング用の版を容易に且つ安価に作成することができ、ホログラムのように超微細な凹凸からなる版であっても十分な精密度を維持しつつ容易に且つ安価に作成できる。
なお、原版を印刷で作成する場合には、グラビア、フレキソ、オフセット、スクリーンなど公知の印刷により作成でき、印刷したインクの部分が凸になる。また、ラミネートフィルムの表面に図柄などを直接印刷して、この印刷により、インクの凹凸を形成し、この凹凸を樹脂塗布膜に転写するように構成してもよい。この場合、印刷したラミネートフィルムの表面に剥離剤を塗布することが望ましい。
【0232】
上記加圧ローラ220は、例えば透明なガラスチューブで構成されるが、加圧に耐える強度及び必要な紫外線透過性を有すれば特にその材質に限定はない。
【0233】
次に、上記構成のコーティング装置200の作用を説明して本発明に係るラミネート加工方法を具体的に説明する。まず、紙材202は紙材搬送装置により紙材巻出し装置204から紙材巻取り装置206へとガイドローラ205で案内されながら搬送される。そして、硬化装置の上流側近傍に設けられている塗布ローラ216はリバース回転駆動され、その外周面にローラ217を介して貯留槽215内のコーティング組成物を付着させてこれを搬送される紙材202の一方の表面に塗布する。
【0234】
上記のようにしてコーティング組成物の塗布膜が形成された紙材202は、その塗布膜が形成されていない側の表面を加圧ローラ221に接して、回転駆動されている一対の加圧ローラ220,221間に巻き込まれる。
【0235】
一方、ラミネートフィルム210はラミネートフィルム搬送装置によりラミネートフィルム巻出し装置212からラミネートフィルム巻取り装置214へとガイドローラ213で案内されて搬送される。この搬送経路において、ラミネートフィルム210は上記紙材202と共に加圧ローラ220,221間に巻き込まれ、紙材202と塗布膜を介して重ね合わされる。そして、第1の発光ダイオード222からの紫外線が加圧ローラ220及びラミネートフィルム210を通して紙材202の表面に圧着された状態にある塗布膜に照射される。このように紙材202とラミネートフィルム210が加圧ローラ220,221間で挟圧されて塗布膜がラミネートフィルム210に圧着されたと同時に、塗布膜をある程度硬化させる。
【0236】
また、紙材202上に塗布された塗布膜は、加圧ローラ220,221によりラミネートフィルム210と圧着される直前から塗布膜表面に第1の発光ダイオード222からの紫外線が照射されている。このため、塗布膜表面が硬化を開始した後に加圧ローラ220,221によるラミネートフィルム210との圧着が行われ、この圧着により塗布膜が平滑に形成される。そして、硬化した塗布膜とラミネートフィルム210との接合力は、塗布膜表面が硬化を開始する前からラミネートフィルム210に圧着していた場合と比較すると弱く、したがって、後述するラミネートフィルム剥離工程におけるラミネートフィルム210の剥離を容易にすることができる。
【0237】
なお、フィルム側にコーティング組成物を塗布して塗布膜を形成し、このフィルムと紙材とを加圧ローラにより圧着させるとともに、紫外線を照射して塗布膜を硬化させ、硬化した後に外力を加えて紙材からラミネートフィルムを剥離させて紙材の表面に塗布膜を転写する方法も考えられる。
【0238】
上述の半硬化された塗布膜によって重ね合わされたラミネートフィルム210と紙材202とはその後、加圧ローラ220,221から第2の発光ダイオード223へと搬送され、ここで再び紫外線がラミネートフィルム210を通して塗布膜に照射されて、塗布膜が完全に硬化される。なお、紙材202上に形成された塗布膜は薄いものであり、且つ、搬送途中で外気に晒されることから化学反応における酸素疎外を生じないため、塗布膜の硬化は迅速に完結され、硬化の戻りが生ずることはない。
【0239】
塗布膜が完全に硬化されると紙材202とラミネートフィルム210は剥離装置へと搬送され、セパレートローラ224でラミネートフィルム210を紙材202から離隔する方向へ案内して引き剥すと共に、引き剥されるラミネートフィルム210に抗して紙材202を一対の保持ローラ225で挟持する。
【0240】
上記のようにして硬化された塗布膜で表面をコーティングされた紙材202は紙材巻取り装置206でロールに巻き取られ、一方、ラミネートフィルム210はラミネートフィルム巻取り装置214でロールに巻取られる。
【0241】
また、ラミネートフィルム210は、加圧ローラ220,221等による圧着・硬化工程から剥離工程間のみ塗布膜と接しているので、コーティング組成物と接する時間を短くできるとともに、半硬状態の塗布膜と接するので、塗布膜と接するラミネートフィルム210表面の劣化(圧着・剥離による平滑性の低下)を抑制できる。したがって、塗布膜を平滑化する機能を維持した状態でラミネートフィルム210を繰り返し使用できる。
【0242】
図5は、上記とは別の実施形態に係るコーティング装置201を示す図である。この実施形態は、枚葉紙230の表面を紫外線硬化型樹脂の膜でコーティングするものである。なお、上記の実施の形態と同一部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。
【0243】
この実施の形態では、所定の大きさにカットされた枚葉紙230をコーティング対象としている。従って、紙材搬送装置として、枚葉紙230を1枚ずつ供給するフィード装置231と、コーティングされた枚葉紙230を順次重ねて収容するストック装置232とを備えている。ここで、枚葉紙230は連続した長尺なものではないため、フィード装置231は各枚葉紙230を隙間なく連続して順次樹脂塗布装置、加圧ローラ220,221間に供給するようになっており、枚葉紙230上に形成された塗布膜を平滑かつ強い接合力でコーティングすることができる。
【0244】
また、この実施の形態では、ラミネートフィルム210はエンドレス式のものであり、このエンドレスのラミネートフィルム210を搬送駆動するためにフィルム駆動ローラ233が設けられている。すなわち、この駆動ローラ233が駆動手段(図示せず)によって回転駆動されると、エンドレスのラミネートフィルム210は硬化装置、剥離装置、再び硬化装置へと順次循環搬送される。
【0245】
この実施の形態によっても、枚葉紙230上に形成されたコーティング組成物の塗布膜に加圧ローラ220,221でラミネートフィルム210を重ね合わせて塗布膜とラミネートフィルム210の表面とを圧着させ、これと同時に第1の発光ダイオード222から紫外線を照射して塗布膜を半硬化させ、更に第2の発光ダイオード223からの紫外線照射でこの塗布膜を本硬化させた後、セパレートローラ224で枚葉紙230からラミネートフィルム210のみを剥離させて、枚葉紙230の表面に上記実施形態と同様な樹脂膜を形成してコーティングすることができる。
なお、塗布装置は紙材202の表面にコーティング組成物を塗布できればよく、例えば、スプレーで吹き付けて塗布する形式、グラビア、フレキソ、バーコーターなどでもよい。
【0246】
また、上記した実施の形態では、塗布膜を本硬化させる第2の発光ダイオード223を用いた例を示したが、コーティング組成物中の成分や第1の発光ダイオード222の照射量によっては、第2の発光ダイオード223を省略して第1の発光ダイオード222のみで塗布膜を本硬化させるようにすることもできる。また、第1の発光ダイオード222を省略して、第2の発光ダイオード223のみであってもよい。
【0247】
また、本発明の印刷方法、本発明のオーバープリントの作製方法、及び、本発明のラミネート加工方法は、前記した各工程以外の公知の工程を含んでいてもよい。
【実施例】
【0248】
以下に示す実施例により、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例における形態に限定されるものではない。なお、以下の記載における「部」とは、特に断りのない限り「重量部」を示すものとする。
【0249】
<コーティング組成物実施例>
(実施例1)
以下の成分を撹拌機により撹拌し、コーティング組成物を得た。
・Ebecryl 605(ビスフェノールAエポキシジアクリレート、CYTEC SURFACE SPECIALTIES社製) 40重量%
・トリプロピレングリコールジアクリレート(アルドリッチ社製) 20重量%
・アクリル酸ドデシル 20重量%
・重合開始剤1(IRGACURE 907、チバスペシャルティケミカルズ社製)
10重量%
・式(I)で示される化合物(前記化合物(I−1)) 8重量%
・ポリジメチルシロキサン(アルドリッチ社製) 2重量%
【0250】
【化57】

【0251】
<非タック性(表面ベトツキ抑制)評価>
富士ゼロックス(株)製デジタルプリンター(DC8000)で両面コート紙に出力した電子写真印刷物に対して、コーティング組成物が膜厚5g/m2となるよう片面にバーコートで塗布を行った。得られた塗布膜に対して、電子写真印刷物から10mm間隔をあけ設置したAicureUD80(波長385nm±10nmの紫外線を発生、パナソニック電工(株)製)を用いて、4.0W/cm2の照度で、0.3秒間露光を行い、オーバープリントのサンプルを作製した。露光後の非タック性を触感で評価した。評価基準を以下に示す。
◎:ベトツキなし
○:ほぼベトツキなし
×:ベトツキあり
【0252】
<透明性(色相)>
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの上に、膜厚5g/m2となるようにバーコートで塗布を行い、得られた塗布膜に対して、被印刷体から10mm間隔をあけ設置したAicureUD80(パナソニック電工(株)製)を用いて、4.0W/cm2の照度で、0.3秒間露光を行い、オーバープリントのサンプルを作製した。得られたPETフィルムを目視評価し、色相(透明性)の感覚評価を行い、コニカミノルタセンシング(株)製色彩色差計CR−100を使用して、知覚色度指数a及びbを測定結果と合わせて、下記基準により評価した。結果を下記表1に示す。
○:良好な透明であった(−2.0≦a≦0、かつ、−6≦b≦−2の範囲であった。)。
△:白色紙の上にPETを置くことによって始めて黄色が識別できるレベルであった(−4.0≦a<−2.0、かつ、−4<b≦0の範囲であった。)。
×:黄味の強い透明であった(a、bの値が上記の範囲外であった。)。
【0253】
上記の方法にて評価した結果、実施例1のコーティング組成物は、非タック性は◎、透明性は○であった。
【0254】
(比較例1)
式(I)で示される化合物の代わりに重合開始剤1を8重量%(全体としては、18重量%)使用した以外は、実施例1と同様の方法でコーティング組成物を作製した。また、実施例1と同様に性能評価を行った。
【0255】
(実施例2〜66、比較例2及び3)
式(I)で示される化合物及び重合開始剤を表1又は表2に記載の化合物に変更した以外は、実施例1と同様の方法で各コーティング組成物をそれぞれ作製した。なお、光重合開始剤を2種類使用している場合は、それぞれを5重量%ずつ用いた。また、実施例1と同様に性能評価を行った。
【0256】
(比較例4)
式(I)で示される化合物(I−1)の代わりにアクリル酸ドデシルを8重量%使用した以外は、実施例1と同様の方法でコーティング組成物を作製した。また、実施例1と同様に性能評価を行った。
【0257】
【表1】

【0258】
【表2】

【0259】
【化58】

【0260】
【化59】

【0261】
【化60】

【0262】
<インク組成物実施例>
(ラジカル重合性二重結合を有しないポリウレタンの調製)
ポリウレタン520(荒川化学工業(株)製、脂肪族ポリイソシアネート成分と芳香族環状構造を含まない多価アルコール成分からなるポリウレタン)を100℃にて15〜40kPaの減圧下に溶剤を留去して、ウレタン化合物(A1a)を得た。このウレタン化合物(A1a)60部に反応性希釈剤として、表面張力(20℃)が39mN/mであるトリメチロールプロパンプロポキシトリアクリレート(東亞合成(株)製アロニックスM−310)40部を加えて液状の成分(A1a)を調製した。
【0263】
(エチレン性不飽和結合を有するポリエステルの調製)
無水フタル酸42部、ビスフェノールA36部及び1,6−ヘキサンジオール19部を230℃にて生成水が出なくなるまでエステル化反応を進行させ、ついで、100〜130℃にて空気を吹き込みながらアクリル酸を3部反応系に加え、生成水が出なくなるまでエステル化反応を行い、ポリエステルアクリレート(B2a)を合成した。
得られたポリエステルアクリレートはアクリル酸由来のエチレン性不飽和結合とカルボキシル基とを有しており、酸価は10mgKOH/gであった。このポリエステルアクリレート(B2a)60部に反応性希釈剤としてアロニックスM−310を40部加えて液状の成分(B2a)を調製した。
【0264】
(実施例67)
以下に示す処方の成分を混合し、3本ロールミルにより練肉撹拌して、タック値が15の白色インク組成物を調製した。
【0265】
(処方)
・ウレタン化合物(A1a) 25部
・樹脂(B2a) 25部
・酸化チタン(白色顔料) 40部
・式(I)で示される化合物(I−1) 3部
・重合開始剤1 3部
・ハイドロキノン(重合禁止剤) 0.5部
・アロニックスM−310 タック値が15になる量
なお、酸化チタンは石原産業(株)製のタイペークCR−58を使用した。
【0266】
また、上記タック値における「タック」とは、2つの回転するローラの表面上のインク組成物層が剪断されることによって生じる、予め決められた幅のローラ間の復元力をいい、タック値とはこのタックを測定するために設計されたロータリータックメータで測定される値である(JIS K5700参照)。
【0267】
この白色インク組成物を、ポリエステルがプレコートされたスチール板(厚さ200μm)に膜厚が1.5μmとなるように、オフセット印刷法により印刷し、未硬化パネルを作製した。ついで、この未硬化パネルを用いて次の試験を行った。結果を表3に示す。
【0268】
<非タック性(表面ベトツキ抑制)評価>
未硬化パネルに対して10mm間隔をあけ設置したAicureUD80(パナソニック電工(株)製)を用いて、4.0W/cm2の照度で1秒間露光を行い、露光後の非タック性を触感で評価した。評価基準を以下に示す。
◎:ベトツキなし
○:ほぼベトツキなし
×:ベトツキあり
【0269】
(色相試験)
未硬化パネルに対して10mm間隔をあけ設置したAicureUD80(パナソニック電工(株)製)を用いて、4.0W/cm2の照度で0.5秒間露光を行い、得られたパネルを目視評価し、色相の感覚評価を行った。評価基準を以下に示す。
○:良好な白色であった。
△:若干の黄色が識別できるレベルであった。
×:黄味の強い白色であった。
【0270】
上記の方法にて評価した結果、実施例67の光硬化性コーティング組成物は、非タック性は◎、色相は○であった。
【0271】
(比較例5)
式(I)で示される化合物(I−1)の代わりに重合開始剤1を3部(全体としては6部)使用した以外は、実施例67と同様の方法で未硬化パネルを作製した。また、実施例67と同様に性能評価を行った。
【0272】
(実施例68〜132、比較例6及び7)
式(I)で示される化合物及び光重合開始剤を表3又は表4に記載の化合物に変更した以外は、実施例67と同様の方法で未硬化パネルを作製した。なお、光重合開始剤を2種類使用している場合は、それぞれを1.5部ずつ用いた。また、実施例67と同様に性能評価を行った。
【0273】
【表3】

【0274】
【表4】

【0275】
(実施例133)
表5に示した処方とした以外は、実施例67のインク組成物と同様にして白色、黄色、赤色、青色、緑色、黒色のインク組成物をそれぞれ調製した。なお、表5における「部」は重量部を表す。
白色、黄色、赤色、青色、緑色、黒色の順に、普通紙(富士ゼロックス(株)製、フルカラー普通紙JV649)に膜厚が1.5μmとなるように、各色ごとに、オフセット印刷法により印刷した。インク組成物の硬化は、各色ごとに前記AicureUD80(パナソニック電工(株)製)を用いて、4.0W/cm2の照度で0.5秒間露光することにより行った。各色ごとに、露光後の非タック性を触感で評価した結果、非タック性は◎、色相は○であった。印刷された6色の模様は人物を含む風景写真画像であり、鮮明な印刷物が得られた。6色印刷及び露光後の非タック性を触感で評価した結果、非タック性は◎であり、良好な色相の印刷物が得られた。
【0276】
【表5】

【符号の説明】
【0277】
1:版胴、2:ゴム胴、3:圧胴、4:発光ダイオード、5:基板、6:支持部材、9a,9b,9c:渡し胴、20:給紙部、30:印刷部、30a〜30e:印刷ユニット、30f:乾燥ユニット、40:排紙部、100:印刷機、S:制御部、T:紫外線照射部、
200,201:コーティング装置、202:紙材、203:ロール、204:紙材巻出し装置、205:ガイドローラ、206:紙材巻取り装置、210:ラミネートフィルム、211:ロール、212:ラミネートフィルム巻出し装置、213:ガイドローラ、214:ラミネートフィルム巻取り装置、215:貯留槽、216:塗布ローラ、217:ローラ、220,221:加圧ローラ、222:第1の発光ダイオード、223:第2の発光ダイオード、224:セパレートローラ、225:保持ローラ、230:枚葉紙、231:フィード装置、232:ストック装置、233:駆動ローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(成分A)下記式(I)で示される化合物、(成分B)光重合開始剤、(成分C)エチレン性不飽和化合物、及び、(成分D)着色剤、を含有するインク組成物を、被印刷体上に印刷する印刷工程、並びに、
発光ダイオードにより375〜395nmにピーク波長を有する紫外光を照射し、印刷された前記インク組成物を硬化させる硬化工程、を含むことを特徴とする
印刷方法。
【化1】

(式(I)中、XはO、S、又は、NRを表し、nは0〜4の整数を表し、Rは水素原子、アルキル基、又は、アシル基を表し、R1〜R8はそれぞれ独立に水素原子、又は、一価の置換基を表し、R1〜R4は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成してもよく、また、R5〜R8は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して脂肪族環を形成してもよい。)
【請求項2】
前記印刷工程における印刷が、オフセット印刷である、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記式(I)におけるR1〜R8の少なくとも1つが、ハロゲン原子である、請求項1又は2に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記成分Aが、下記式(I-C)で示される化合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の印刷方法。
【化2】

(式(I-C)中、R1C〜R4Cはそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、R5C〜R8Cはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R1C〜R4Cのうちの少なくとも1つはハロゲン原子であり、R5C〜R8Cのうちの少なくとも1つはアルキル基である。)
【請求項5】
前記成分Bが、α−アミノケトン系化合物及び/又はアシルフォスフィンオキシド系化合物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項6】
前記成分Bが、α−アミノケトン系化合物及びアシルフォスフィンオキシド系化合物である、請求項5に記載の印刷方法。
【請求項7】
前記印刷工程が、前記インク組成物を少なくとも用い、被印刷体上にフルカラー印刷する印刷工程である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項8】
(成分A)下記式(I)で示される化合物、(成分B)光重合開始剤、及び、(成分C)エチレン性不飽和化合物、を含有するコーティング組成物を、印刷物上に塗布する塗布工程、並びに、
発光ダイオードにより375〜395nmにピーク波長を有する紫外光を照射し、塗布された前記コーティング組成物を硬化させる硬化工程、を含むことを特徴とする
オーバープリントの作製方法。
【化3】

(式(I)中、XはO、S、又は、NRを表し、nは0〜4の整数を表し、Rは水素原子、アルキル基、又は、アシル基を表し、R1〜R8はそれぞれ独立に水素原子、又は、一価の置換基を表し、R1〜R4は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成してもよく、また、R5〜R8は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して脂肪族環を形成してもよい。)
【請求項9】
(成分A)下記式(I)で示される化合物、(成分B)光重合開始剤、及び、(成分C)エチレン性不飽和化合物、を含有するコーティング組成物を、印刷物上に塗布する塗布工程、
前記コーティング組成物を塗布した前記印刷物にラミネートフィルムを積層する積層工程、並びに、
発光ダイオードにより375〜395nmにピーク波長を有する紫外光を照射し、塗布された前記コーティング組成物を硬化させる硬化工程、を含むことを特徴とする
ラミネート加工方法。
【化4】

(式(I)中、XはO、S、又は、NRを表し、nは0〜4の整数を表し、Rは水素原子、アルキル基、又は、アシル基を表し、R1〜R8はそれぞれ独立に水素原子、又は、一価の置換基を表し、R1〜R4は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成してもよく、また、R5〜R8は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して脂肪族環を形成してもよい。)
【請求項10】
(成分A)下記式(I)で表される化合物、
(成分B)光重合開始剤、及び、
(成分C)エチレン性不飽和化合物、を含有することを特徴とする
375〜395nmにピーク波長を有する発光ダイオード硬化性コーティング組成物。
【化5】

(式(I)中、XはO、S、又は、NRを表し、nは0〜4の整数を表し、Rは水素原子、アルキル基、又は、アシル基を表し、R1〜R8はそれぞれ独立に水素原子、又は、一価の置換基を表し、R1〜R4は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成してもよく、また、R5〜R8は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して脂肪族環を形成してもよい。)
【請求項11】
前記成分Aが、下記式(I-C)で示される化合物である、請求項10に記載の発光ダイオード硬化性コーティング組成物。
【化6】

(式(I-C)中、R1C〜R4Cはそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、R5C〜R8Cはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R1C〜R4Cのうちの少なくとも1つはハロゲン原子であり、R5C〜R8Cのうちの少なくとも1つはアルキル基である。)
【請求項12】
オフセット印刷用硬化性コーティング組成物である、請求項10又は11に記載の発光ダイオード硬化性コーティング組成物。
【請求項13】
(成分A)下記式(I)で表される化合物、
(成分B)光重合開始剤、
(成分C)エチレン性不飽和化合物、及び、
(成分D)着色剤、を含有することを特徴とする
375〜395nmにピーク波長を有する発光ダイオード硬化性インク組成物。
【化7】

(式(I)中、XはO、S、又は、NRを表し、nは0〜4の整数を表し、Rは水素原子、アルキル基、又は、アシル基を表し、R1〜R8はそれぞれ独立に水素原子、又は、一価の置換基を表し、R1〜R4は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成してもよく、また、R5〜R8は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して脂肪族環を形成してもよい。)
【請求項14】
前記成分Aが、下記式(I-C)で示される化合物である、請求項13に記載の発光ダイオード硬化性インク組成物。
【化8】

(式(I-C)中、R1C〜R4Cはそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、R5C〜R8Cはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R1C〜R4Cのうちの少なくとも1つはハロゲン原子であり、R5C〜R8Cのうちの少なくとも1つはアルキル基である。)
【請求項15】
オフセット印刷用硬化性インク組成物である、請求項13又は14に記載の発光ダイオード硬化性インク組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−31388(P2012−31388A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110136(P2011−110136)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】