説明

印刷方法および薄膜トランジスタの製造方法

【課題】
本発明では、反転印刷方式により基材上に画像パターンを形成し印刷物を製造する場合において、微小な孤立パターンであっても画像パターンが変形したり、印刷抜けが生じないインキからなる正確な画像パターンを有する印刷方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
基材上にインキからなる画像パターンを形成した印刷物の製造方法であって、ブランケット上にインキを設ける工程と、第一の凸版をブランケットに接触させることにより、第一の凸版の凸部パターンと接触した部分のブランケット上のインキを除去する工程と、第二の凸版をブランケットに接触させることにより、第二の凸版の凸部パターンと接触した部分のブランケット上のインキを除去する工程と、ブランケット上に残ったインキを基材と接触させることにより、基材上にインキからなる画像パターンを形成する工程を備えることを特徴とする印刷方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキからなる画像パターンを基材上に形成した印刷物の製造方法に関するものであり、特に、微小な孤立パターンである画像パターンを基材上に形成する場合に適している。なお、本発明の印刷物としては、薄膜トランジスタ、液晶表示装置用カラーフィルタ、有機EL素子、回路基材、マイクロレンズ、バイオチップ等を例示することができる。
【背景技術】
【0002】
印刷は、紙に文字や画像を書く出版の分野から、配線や抵抗体などを形成するエレクトロニクス分野へと応用が広がり、微細化、高品質化が求められている。微細なパターニングを実現する方法として、反転印刷法が開発されている(特許文献1)。
【0003】
従来の反転印刷法による印刷装置の一例の模式図を図1に示した。シリコーンからなるブランケットが固定されたシリンダー1とブランケット上にインキを供給するインキ塗布ユニット2を有しており、ステージ6上には凸部パターンを有する除去版4と基材5が固定されている。
【0004】
図1を用いて従来の反転印刷法による基材上へのインキパターンの印刷方法について示す。まず、シリンダー1を回転させ、インキ塗布装置2からインキを供給することにより、シリンダー1に固定されたブランケット表面にインキ3層を形成する。次に、シリンダー1を除去版4の凸部パターンとを接触させ、シリンダー1を回転させることにより、ブランケット上にあるインキ3のうち凸部パターンと接触したインキはブランケットから除去版4の凸部パターンに転移し、ブランケット上にはインキパターンが形成される。最後に、ブランケットと基材5を接触させシリンダー1を回転させることにより、ブランケット上にあるインキパターンを基材5に転写させ、基材5上にインキパターンが形成される。すなわち、除去版4の凸部パターンは、基材5に形成される所望のインキパターンのネガパターンとなっている。なお、図1では、シリンダー1を除去版4及び基材5に接触、回転させるにあたって、シリンダー1が移動する様子を矢印により示してある。
【0005】
【特許文献1】特公昭60−29358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、基材上に形成される所望の画像パターンが微小な孤立パターンである場合、1つの除去版のみを用いると、除去版は微小な孤立凹パターンの外周部を全て囲んだ閉ループ状の凸部パターンを有することになり、ブランケットを除去版に押し付けた際に凹部に閉じ込められた空気が漏れてインキパターンを変形させたり、ブランケットから除去版を引き離す際に凹部内が減圧状態になり、ブランケットに残すべきインキも除去してしまうという問題があった。ブランケットは弾性体なので除去版との接触部は一定の面積を有するが、微小な孤立パターンの大きさが該パターンの周囲に閉ループ状にある接触部に対して小さい場合に起こりやすい。
【0007】
具体的には、ブランケットと除去版の接触部は、ブランケットもしくは除去版の少なくとも一方が円筒状である場合、円筒の軸に平行な方向については全長、接線方向については弾性体の変形により接触する長さ(ブランケットの厚さや硬度、シリンダーの径、凸版の押圧などによるが、1mm〜10mm程度)の長方形で表される。この内部に孤立パターンを囲む閉ループが入っていると、前記の問題が発生する。
【0008】
そこで、本発明では、反転印刷方式により基材上に画像パターンを形成し印刷物を製造する場合において、微小な孤立パターンであっても画像パターンが変形したり、印刷抜けが生じないインキからなる正確な画像パターンを有する印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を課題を解決するために請求項1に係る発明としては、基材上にインキからなる画像パターンを形成した印刷物の製造方法であって、ブランケット上にインキを設ける工程と、第一の凸版をブランケットに接触させることにより、第一の凸版の凸部パターンと接触した部分のブランケット上のインキを除去する工程と、第二の凸版をブランケットに接触させることにより、第二の凸版の凸部パターンと接触した部分のブランケット上のインキを除去する工程と、ブランケット上に残ったインキを基材と接触させることにより、基材上にインキからなる画像パターンを形成する工程を備えることを特徴とする印刷方法とした。
【0010】
また、請求項2に係る発明としては、前記画像パターンが孤立したパターンであって、ブランケット上のインキ層に対して、第一の凸版の凸部パターンをブランケットに接触させることにより、該画像パターンに対応したインキの周辺部の一部を除去し、第二の凸版の凸部パターンをブランケットに接触させることにより、該画像パターンに対応したインキの周辺部の残りの部分を除去することを特徴とする請求項1記載の印刷物の製造方法であって、第一の凸版及び第二の凸版の凸部が閉ループを有さないことを特徴とする請求項1記載の印刷方法とした。
【0011】
また、請求項3に係る発明としては、前記第一の凸版及び前記第二の凸版のうち、一方が高精度の凸部パターンを有し、他方が高精度を必要としない凸部パターンを有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の印刷方法とした。
【0012】
また、請求項4に係る発明としては、前記ブランケットがシリンダー上に固定されているか、あるいはシリンダー状であり、前記第一の凸版と前記第二の凸版が回転可能な円筒上に設けられており、且つ、基材がウェブ状であり、該基材上にインキからなる画像パターンがロール・ツー・ロール方式で連続して形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の印刷方法とした。
【0013】
また、請求項5に係る発明としては、前記凸部パターンが円筒上に設けられた第一の凸版と第二の凸版において、ブランケットから転写、除去された凸部パターン上にあるインキを連続して除去する工程を有することを特徴とする請求項4記載の印刷方法とした。
【0014】
また、請求項6に係る発明としては、絶縁基板上に、ゲート電極を形成する工程と、ゲート絶縁層を形成する工程と、ソース・ドレイン電極を形成する工程と、該ソース・ドレイン間に半導体層を形成する工程とを少なくとも備える薄膜トランジスタの製造方法であって、ソース・ドレイン電極を形成する工程が、前記請求項1乃至5のいずれかに記載の印刷方法により形成されることを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法とした。
【発明の効果】
【0015】
本発明の印刷方法を用いることにより、インキを除去する凸版の形状を適切に選択することができた。また、画像パターンが孤立パターンを有する場合でも、良好なパターンを形成できた。特に、薄膜トランジスタを製造するにあたって、本発明の印刷方法を用いてソース・ドレイン電極を形成することにより、良好なパターン形状を有するソース・ドレイン電極を得ることができ、優れたトランジスタ特性を有する薄膜トランジスタを得ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明では、ブランケット上にインキ層を形成する工程の後に、第一の凸版の凸部パターンをブランケットに接触させブランケット上の不要部分のインキを除去する工程と、第二の凸版の凸部パターンを接触させ、ブランケット上の残りの不要部分のインキを除去する工程を有することを特徴とする。
【0017】
図2に従来の反転印刷法におけるブランケット上のインキパターンの除去工程の説明図を示した。図2(a1)、(a2)はブランケット表面のインキパターン図であり、(b)は除去版である凸版の凸部パターン図であり、(c)は基材への転写パターン図である。図2(a1)において、ブランケット10上にインキ11は全面に塗布されている。図2(b)において、凸版12は所望の画像パターンのネガパターンである凸部パターン13を有しており、図2(a1)にあるブランケットと図2(b)にある凸部パターンを接触することにより、図2(a2)のブランケット11には所望のパターンを有するインキが形成されるべきであるが、前述したとおり、所望の画像パターンが孤立パターンである場合、インキパターンが変形したり、ブランケットに残すべきインキがパターンの周辺部と共に除去されてしまうという問題が発生する。そのため、図2(c)のように基材に転写されたパターンは設計とは異なる。
【0018】
図3に本発明の反転印刷法におけるブランケット上のインキパターンの除去工程の説明図を示した。図3(a1)、(a2)、(a3)はブランケット表面のインキパターン図であり、図3(b1)は除去版である第一の凸版の凸部パターン図であり、(b2)は第二の凸版の凸部パターン図であり、(c)は基材への転写パターン図である。
【0019】
図3(a1)では、図2(a)と同様にブランケット10上にインキ11は全面に塗布されている。図3(a1)に示したブランケット10上のインキ11は、図3(b1)に示した第一の凸版121の凸部パターン13と接触し、接触した箇所のインキがブランケットから第一の凸版121に転移するため、ブランケット10上のインキ11は図3(a2)のようになる。次に、図3(a2)に示したブランケット10上のインキ11は、図3(b2)に示した第二の凸版122の凸部パターン13と接触し、接触した箇所のインキがブランケット10から第二の凸版122に転移するため、ブランケット10上のインキ11は図3(a3)のようになる。
【0020】
図3に示したとおり、本発明において、第一の凸版121と第二の凸版122は、孤立パターンの周辺部の不要なインキ部分を分割して2回にわたって除去している。本発明は、図3に示したような孤立パターンからなる画像パターンを形成する際に好適に使用することができ、孤立パターンの周辺のインキの除去を、第一の凸版及び第二の凸版が閉ループ状の凸部パターンを有さないように、第一の凸版と第二の凸版に分割することにより、孤立パターンが凸版に除去されることなく、ブランケット上にインキパターンを形成することができる。ここで第一の凸版と第二の凸版は一部重なりを有していても良い。位置ずれによる余裕を持たせるためには重なりを持つ方が好ましい。また、本発明にあっては、前記接触部の長方形に内包されるの孤立パターンを基材上に形成する場合において、閉ループ状の凸部パターンを有さない第一の凸版および第二の凸版を用いて、ブランケット上にあるインキの孤立パターンのループ状の不要部を分割し、2回にわたって除去することが好ましい。そして、それを転写した基材5には図3(c)のように設計どおりのインキパターンを形成することができる。
【0021】
また、図3にあっては、第一の凸版にパターン精度を要する凸部パターンを形成し、第二の凸版においてパターン精度を要しない凸部パターンを形成している。第一の凸版ではパターン間隔Lやパターン長さWを決定し、第二の凸版においてはインキパターンを孤立させるだけの役割を担っている。なお、第一の凸版と第二の凸版の役割は逆であっても良い。
【0022】
なお、本願発明にあっては、ブランケット上のインキをパターニングするための凸版は2つ以上であれば良く、除去版である凸版の数を2つに限定するものではない。
【0023】
次に、本発明の印刷物の製造方法に用いられる印刷装置について示す。図4に本発明の印刷物の製造方法における印刷装置の模式図を示した。図4において、シリンダー21上にはブランケット20が固定されており、インキ塗布装置22が設けてある。また、インキ23をパターニングするための第一の凸版24aと第二の凸版24bが備えられている。また、基材25は巻きだしロール28から引き出され、圧胴26を通過して、巻き取りロール29で巻き取られる。また、第一の凸版、第二の凸版にはそれぞれ、クリーニングユニット27a、27bが備えられている。
【0024】
図4を用いて、本発明の印刷方法について示す。まず、インキ塗布装置22からシリンダー21に固定されたブランケット20にインキ23が供給され、該シリンダー上にインキ23層が形成される。ブランケット20上のインキは第一の凸版24aと接触させることにより不要な部分が取り除かれ、第一の凸版24aに続いて第二の凸版24bと接触されることにより不要な部分が再度取り除かれ、ブランケット20上に画像パターンからなるインキ23パターンが形成される。そして、ブランケット20上のインキ23パターンは基材25に転写される。このとき、基材25はウェブ状であり、巻きだしロール28から引き出され、巻き取りロール29で巻き取られ、圧胴26で基材25とブランケット20を接触させている。
【0025】
第一の凸版24a及び第二の凸版24bにあっては、ブランケットから転写されたインキを除去する機構を有する必要があり、クリーニングユニット27a及び27bが設けられている。
【0026】
図4に示した本発明の印刷装置にあっては、基材25がウェブ状であり、ブランケット20がシリンダー21上に固定され、第一の凸版24aと第二の凸版24bが回転可能な円筒形状であり、ロール・ツー・ロール方式により、基材25上にインキからなる画像パターンが連続して形成される。本発明にあっては、ブランケットが平版状であり、第一の凸版と第二の凸版が円筒状であっても構わないし、ブランケットがシリンダー上に固定されており、第一の凸版と第二の凸版が平版状であっても構わない。
【0027】
しかしながら、ウェブ状の基材に対しロール・ツー・ロール方式で印刷物を製造し、基材上にインキからなる画像パターンを連続して形成することにより、生産性が向上し、製造コストを抑えることが可能となる。
【0028】
以下、図4に従い、各機構について説明する。ブランケット20としては弾性ブランケットと剛性ブランケットのいずれかを用いることができる。ブランケットという言葉は本来、毛布もしくは毛布のようにくるむものを意味しており、シリンダー上に形成されたゴム状の部分を意味する。しかし本発明では、反転印刷法において、インキ層を形成し、凸版で不要部を除去し、できたパターンを基材に転写するための、一時的な保持体をブランケットと呼ぶ。
【0029】
ブランケット20はシリンダー21上に固定される。弾性ブランケットを用いる場合、ブランケット20とシリンダー21の間に弾性ブランケットよりやわらかいクッション層を有してもよい。弾性ブランケット形成材料としてはシリコーンゴムを好適に用いることができる。弾性ブランケットのシリンダーへの固定化の方法としては、金属製のシリンダー21に対しシリコーンゴムを塗布し、硬化させる方法や、シリコーンゴムシートをシリンダー上に貼り付ける方法を用いることができる。
【0030】
一方、剛性ブランケット形成材料として金属やガラスを使用することができる。また、シランカップリング剤を用いて、金属やガラス表面を表面処理したものを用いることもできる。シランカップリング剤の例としては、トリメトキシシラン類、トリエトキシシラン類などが挙げられる。シランカップリング剤の一部位としては、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基などの有機化合物との反応性基を選ぶことができる。また、アルキル基や、その一部にフッ素原子が置換された基や、シロキサンが結合して、表面エネルギーの小さな表面を形成できる置換基を選ぶことができる。反応性基を有するシランカップリング剤を用いる場合には、シランカップリング剤でガラス基板の表面を処理した後、所定の表面自由エネルギーになるように他のモノマー成分を塗工し結合させても良い。反応性基を有するシランカップリング剤としては、ビニルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどを用いることができ、モノマーとしては、スチレン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチルプロパントリグリシジルエーテル、ラウリルアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどを用いることができる。また、反応性基を有さないシランカップリング剤としてはメチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシランなどを用いることができる。但し、アルキル基に限定されるものではない。
【0031】
シランカップリング剤は、金属製のシリンダー上に塗布する方法や、金属製のシリンダーの表面にガラス膜を形成し、さらにシランカップリング剤を塗布する方法により、シリンダー表面に固定化することができる。具体的には、シランカップリング剤を水、酢酸水、水−アルコール混合液、或いは、アルコール溶液に希釈させた溶液を、アプリケータ法などを用いて表面に塗工し乾燥する方法を用いることができる。
【0032】
ブランケット20上へインキ23を塗布するインキ塗布装置22としては、公知のものが使用できるが、具体的には、ダイコート方式、キャップコート方式、ロールコート方式、アプリケータ方式、スプレーコート方式などを用いることができる。
【0033】
また、ブランケット20上のインキ23が第一の凸版24aと接触する前に乾燥工程が入ることが望ましい。乾燥工程の目的はインキ23の粘度、チキソトロピー性、脆性を上げることである。ブランケット20上のインキ23を第一の凸版24aと接触する前に半乾燥状態とすることにより、第一の凸版24aおよび第二の凸版24bによって、正確にインキをパターニングすることが可能となる。しかしながら、ブランケット20上でインキ3が完全に乾燥した場合には第一の凸版24a、第二の凸版24bでの不要なインキの除去、及びインキパターンのブランケットから基材への転写の際に、ブランケットにインキが残ってしまうことがあるため、インキは半乾燥状態である必要がある。乾燥工程としては、自然乾燥法、冷風乾燥法・温風乾燥法、マイクロ波乾燥法、減圧乾燥法、および、紫外線や電子線などの放射線乾燥法などの公知の方法を用いることができる。
【0034】
第一の凸版24a及び第二の凸版24bにあっては、剛性凸版、弾性凸版のいずれかを用いることができる。剛性凸版としては金属板や金属ロールの表面を加工したものや、金属表面にガラス膜を形成し、該ガラス膜を加工して凸部パターンを形成したものを用いることができる。
また、弾性凸版としては、樹脂凸版を用いることができ、ナイロン、アクリル、シリコーン樹脂、スチレン−ジエン共重合体といった樹脂材料、および、エチレンプロピレン系、ブチル系、ウレタン系のゴム等のゴム材料から成る凸版印刷やフレキソ印刷用の樹脂製の凸版を用いることができる。
【0035】
樹脂凸版の製造方法としては、型に樹脂を流し込む方法、彫刻する方法等を用いることができる。また感光性樹脂を用い、フォトリソグラフィー法により凸部を形成することにより高精度のものが作製できる。
【0036】
第一の凸版、第二の凸版は、円筒状の版胴22に装着することにより、円筒状の凸版として使用されるが、凸版と円筒状の版胴22の間に、凸版より柔かいクッション層を有しても良い。あるいは、版胴上に直接凸部パターンを形成したものを用いても良い。
【0037】
本発明においては、ブランケットとして剛性ブランケット、弾性ブランケットのいずれかを用いることができ、第一の凸版、第二の凸版として、剛性凸版、弾性凸版のいずれかを用いることができる。弾性ブランケットを用いた場合には、第一の凸版、第二の凸版としては剛性凸版を用いることが好ましく、一方、剛性ブランケットを用いた場合には、弾性凸版を用いることが好ましい。
【0038】
図5に本発明の第一の凸版と第二の凸版の駆動機構の模式図を示した。図5において、第一の凸版24aと第二の凸版24bは、紙面と垂直方向に円筒形状を有している。第一の凸版24a、第二の凸版24bの動きはラック33とピニオン32a、32bによって行われる。第一の凸版24aと第二の凸版24bは同じ歯数のギアで同じ回転数に制御されている。そして、補助歯車35、36の位置を図5の紙面の上下方向に調整することによって、第一の凸版24aと第二の凸版24bの位相を調整することができる。また、紙面と垂直方向である、第一の凸版と第二の凸版の円筒形状の軸方向に可動させることにより、軸方向の位置を微調整できる。さらに、軸を平行からわずかにずらすことができ、斜め方向の位置合わせもできる。ただし、駆動機構はラックとピニオンに限定するものではなく同様の機能を有する他の方法でもよい。
【0039】
第一の凸版、第二の凸版の凸部パターン上にあるインキを除去するクリーニングユニット27a、27bとしては、クリーニングシート30a、30bを用い、該クリーニングシートを凸部パターンと接触させることにより、除去する方式を用いることができる。このとき、図4にあるように、クリーニングシートをロール・ツー・ロール方式とすることにより、連続してインキを除去することが可能となる。
【0040】
クリーニングシート30a、30bとしては、粘着性フィルムを用いることができ、具体的にはアクリル系、オレフィン系、ポリウレタン系、シリコーン系、合成ゴム系等からなる粘着フィルムを用いることができる。また、クリーニングシートとして、粘着性フィルムの他に、溶剤を含有した布を用いることもできる。
【0041】
また、本発明において、ウェブ状の基材25に対する巻き出しロール28、巻き取りロール29、圧胴26に関しては公知のものを使用することができる。また、基材25上にインキからなる画像パターンが形成された後は、巻き取りロール29にて巻き取られる前に、必要に応じて乾燥工程が設けられる。乾燥工程としては、自然乾燥法、冷風乾燥法・温風乾燥法、マイクロ波乾燥法、減圧乾燥法、および、紫外線や電子線などの放射線乾燥法などの公知の方法を用いることができる。
【0042】
本発明に用いられるインキの材料としては、一般に有機系等のインキ材料は勿論、その他に金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、ロジウムなどの金属微粒子分散液に、必要に応じ各種添加物を加えたものを用いることができる。分散媒としては、水やアルコール、有機溶媒等を用いることができる。
【0043】
本発明に用いられる基材としては、巻き取り可能なウェブ状のフィルム基材を好適に用いることができ、その材料としてはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ナイロン、アラミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、トリアセチルセルロース等を用いることができる。中でも、耐熱性を有するポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、シクロオレフィンポリマー、ポリイミドなどが好適である。また、無機フィラーを上記樹脂に添加して耐熱性を向上させたものでも良い。また、フィルムは、延伸でも未延伸でも良い。また、基材フィルムには必要に応じてガスバリア層、平滑化層、すべり層が積層されていても良い。なお、本発明において、基材としてはガラスや金属板を用いることも可能であるが、このときは印刷装置を枚葉方式とする必要がある。
【0044】
次に、本発明の薄膜トランジスタの製造方法について述べる。本発明の薄膜トランジスタの製造方法は、絶縁基板上に、ゲート電極を形成する工程と、ゲート絶縁層を形成する工程と、ソース・ドレイン電極を形成する工程と、少なくとも該ソース・ドレイン間に半導体層を形成する工程と、を有する薄膜トランジスタの製造方法であって、ソース・ドレイン電極を形成する工程が、前記請求項1乃至5のいずれかに記載の印刷方法によることを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法である。
【0045】
図6に本発明の薄膜トランジスタの製造方法の一例の説明図を示した。図6において、(a1)、(b1)、(c1)、(d1)は説明平面図であり、(a2)、(b2)、(c2)、(d2)はそれぞれ、(a1)〜(d1)のL−L’で示した点線における説明断面図である。図6(a1)、(a2)においては、絶縁基板41上にゲート電極42が形成されている。次に、図6(b1)、(b2)にあっては、ゲート電極42が形成された絶縁基板41上にゲート絶縁層43が形成されている。そして、図6(c1)、(c2)にあっては、ゲート電極42、ゲート絶縁層42が形成された絶縁基板41上にソース電極44とドレイン電極45がパターン形成されている。さらに、図6(d1)、(d2)にあっては、ソース電極44とドレイン電極45間に半導体層46が形成されている。
【0046】
特に、ソース電極44とドレイン電極45を形成する工程において、本発明の印刷方法を好適に使用することができる。図7に、本発明の薄膜トランジスタのソース・ドレイン電極を形成する工程の一例を示す説明図を示した。図7(a1)に示したブランケット10上のインキ11は、図7(b1)に示した第一の凸版121の凸部パターン13と接触し、接触した箇所のインキがブランケットから第一の凸版121に転移するため、ブランケット10上のインキ11は図7(a2)のようになる。次に、図7(a2)に示したブランケット10上のインキ11は、図7(b2)に示した第二の凸版122の凸パターン13と接触し、接触した箇所のインキがブランケット10から第二の凸版122に転移するため、ブランケット10上のインキ11は図7(a3)のようになる。そして、それを転移した基材5には図7(c)のように設計どおりのインキパターンを形成することができる。
【0047】
図7にあっては、第一の凸版および第二の凸版に、閉ループ状の凸部パターンは含まれていない。また、第一の凸版にパターン精度を要するチャネル部分(ソース電極44とドレイン電極45が近接し、半導体層46が形成される部分)を形成する凸部パターンが含まれており、第二の凸版にはパターン精度を要するチャネル部分は含まれていない。
【0048】
本発明の薄膜トランジスタにおいて、絶縁基板41としては絶縁体であれば前述の各種基材を用いることができる。特に、巻き取り可能なウェブ状のフィルム基材を好適に用いることができる。ゲート電極42としては、Al、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、ロジウム、ITOなどの導体を用いることができ、形成方法としては、蒸着かスパッタ成膜後にフォトリソ・エッチングでパターニングする方法や、成膜後にレジスト印刷・エッチングする方法、導体インキを印刷する方法(フレキソ印刷、オフセット印刷、反転印刷、インクジェット印刷等)などを用いることができる。ゲート絶縁層43としては、SiO、Al、SiON、Taなど、各種の酸化物、酸窒化物などの無機絶縁膜や、ポリビニルフェノール、ポリイミド、エポキシ等の有機絶縁膜を用いることができる。
【0049】
ソース電極44およびドレイン電極45としては、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、ロジウム等の金属ナノ粒子を水またはアルコール等の溶媒に溶解または分散させたインキを好適に用いることができる。半導体層46としては、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリアリルアミン誘導体、ポリアセチレン誘導体、アセン誘導体、オリゴチオフェン誘導体等の有機半導体や、InGaZnO系、InZnO系、ZnGaO系、InGaO系、ZnO系、SnO系、あるいはこれらの混合物等を好適に使用できる。有機半導体は、溶媒に溶かした状態でスピンコート、ダイコート、インクジェット等の方法で塗布・焼成することや、真空蒸着によって形成できる。酸化物半導体は、スパッタ、レーザーアブレーション、CVD法などによって形成できる。また、半導体層46は、ソース・ドレイン電極間近傍のみに形成されていてもよいし、全面に形成されていてもよい。
【0050】
なお、本発明の薄膜トランジスタの製造方法において、その形成順序としては、絶縁基板41上に、ゲート電極42を形成する工程、ゲート絶縁層43を形成する工程、ソース電極44とドレイン電極45を形成する工程、半導体層46を形成する工程の順でもよいし、絶縁基板41上に、ゲート電極42を形成する工程、ゲート絶縁層43を形成する工程、半導体層46を形成する工程、ソース電極44とドレイン電極45を形成する工程の順でもよい。あるいは、絶縁基板41上に、ソース電極44とドレイン電極45を形成する工程、半導体層46を形成する工程、ゲート絶縁層43を形成する工程、ゲート電極42を形成する工程の順でもよいし、絶縁基板41上に、半導体層46を形成する工程、ソース電極44とドレイン電極45を形成する工程、ゲート絶縁層43を形成する工程、ゲート電極42を形成する工程の順でもよい。
【0051】
また、本発明の薄膜トランジスタは複数個をマトリクスアレイ状に並べてもよいし、さらに電位を保持するためのキャパシタを併設していてもよい。
【実施例1】
【0052】
以下に、実施例について述べる。使用した印刷装置としては、図4に模式図として示したものと同一であり、ブランケット20は、鉄製シリンダーに銅めっきし、表面研磨し、液状のシリコーンゴムを塗布し、回転させながらブレードで平坦化し、回転させたまま徐々に硬化させてシリンダー上に形成した。第一の凸版24a、第二の凸版24bは、鉄製シリンダーに銅めっきし、ドライフィルムレジストを貼り、フィルムマスクを巻いた状態で露光・現像することによってレジストパターンを形成し、エッチングによって凹凸を形成した。インキ塗布装置22としては、ブレード方式のものを用いた。圧胴26、巻き出しロール28、巻き取りロール29、クリーニングユニットの圧胴、巻き出しロール、巻き取りロールには、市販品を使用した。クリーニングシート30a、30bには、微量のエタノールを含ませた不織布を使用した。
【0053】
インキについては、体積平均粒径Dvが20nmである銀粒子水分散液からなる導電性インキを用いた。
【0054】
基材25にはポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを使用した。インキはインキ塗布装置22によってブランケット上に塗布され、赤外線ユニット(図示せず)によって約60℃で予備乾燥した。こうして形成されたインキ層23が、まず第一の凸版24aの凸部パターンと接触し、除去すべき部分の一部を除去した。次に第二の凸版24bの凸部パターンと接触し、除去すべき部分はすべて除去された。そして、圧胴26によって基材25に接触・転写され、乾燥ユニット(図示せず)によって乾燥後、巻き取りロール29で巻き取られた。
【0055】
使用した第一の凸版24aと第二の凸版24bには、組み合せると50μm角の2つの電極が5μmの間隔で並ぶパターンであり、図3で示したように第一の凸版と第二の凸版に凸部パターンを分割した。電極間隔L=10μm、電極長さW=100μmであり、また、電極幅は100μm角の所望の電極パターンを形成することができた。
【実施例2】
【0056】
図6のように、絶縁基板41としてポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用い、ゲート電極42としてAlを30nm蒸着、フォトリソ・エッチングによって幅100μmのパターンとした。さらに有機のゲート絶縁膜としてポリビニルフェノールのイソプロピルアルコール溶液をダイコートし、180℃で焼成して1μm厚とした。次に、図7のように本発明の反転印刷法を用いてソース電極44およびドレイン電極45を形成した。用いたインキは体積平均粒径Dvが20nmである銀粒子水分散液からなる導電性インキであり、チャネル長は10μm、チャネル幅は100μmとした。チャネルを形成する部分は、図7のようにすべて第一の凸版121に含めた。最後に、チャネル部に半導体層としてポリチオフェン(具体的にはポリ3ヘキシルチオフェン)のトルエン溶液をインクジェットによって形成した。
【0057】
作製した薄膜トランジスタのVg−Id特性を測定し、移動度7×10−4cm/Vsのトランジスタ特性が得られた。
【0058】
(比較例1)
実施例1の印刷装置において、第二の凸版を取り外し、第一の凸版には100μm角の電極が10μmの間隔で並ぶパターンを形成しておいた。通常の反転印刷を行ったところ、図2のように、100μm角の電極パターンの1つは欠損してしまい、もう1つにも変形がみられた。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は従来の反転印刷法による印刷装置の一例の模式図である。
【図2】図2は従来の反転印刷法におけるの説明図である。
【図3】図3は本発明の反転印刷法の説明図である。
【図4】図4は本発明の印刷物の製造方法における印刷装置の模式図である。
【図5】図5は本発明の第一の凸版と第二の凸版の駆動機構の模式図である。
【図6】図6は本発明の薄膜トランジスタ製造方法の一例の説明図である。
【図7】図7は本発明の薄膜トランジスタのソース・ドレイン電極を形成する工程の一例の説明図である。
【符号の説明】
【0060】
1…シリンダー
2…インキ塗布装置
3…インキ
4…除去版
5…基材
6…ステージ
10…ブランケット
11…インキ
12…凸版
121…第一の凸版
122…第二の凸版
13…凸部パターン
20…ブランケット
21…シリンダー
22…インキ塗布装置
23…インキ
24a…第一の凸版
24b…第二の凸版
25…基材
26…圧胴
27a…クリーニングユニット
27b…クリーニングユニット
28…巻き出しロール
29…巻き取りロール
30a…クリーニングシート
30b…クリーニングシート
32a…ピニオン
32b…ピニオン
33…ラック
35…調整ギア
36…調整ギア
41…絶縁基板
42…ゲート電極
43…ゲート絶縁層
44…ソース電極
45…ドレイン電極
46…半導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上にインキからなる画像パターンを形成した印刷物の製造方法であって、
ブランケット上にインキを設ける工程と、
第一の凸版をブランケットに接触させることにより、第一の凸版の凸部パターンと接触した部分のブランケット上のインキを除去する工程と、
第二の凸版をブランケットに接触させることにより、第二の凸版の凸部パターンと接触した部分のブランケット上のインキを除去する工程と、
ブランケット上に残ったインキを基材と接触させることにより、基材上にインキからなる画像パターンを形成する工程を
備えることを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
前記画像パターンが孤立したパターンであって、ブランケット上のインキ層に対して、
第一の凸版の凸部パターンをブランケットに接触させることにより、該画像パターンに対応したインキの周辺部の一部を除去し、第二の凸版の凸部パターンをブランケットに接触させることにより、該画像パターンに対応したインキの周辺部の残りの部分を除去することを特徴とする請求項1記載の印刷物の製造方法であって、第一の凸版及び第二の凸版の凸部が閉ループを有さないことを特徴とする請求項1記載の印刷方法。
【請求項3】
前記第一の凸版及び前記第二の凸版のうち、一方が高精度の凸部パターンを有し、他方が高精度を必要としない凸部パターンを有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の印刷方法。
【請求項4】
前記ブランケットがシリンダー上に固定されているか、あるいはシリンダー状であり、前記第一の凸版と前記第二の凸版が回転可能な円筒上に設けられており、且つ、基材がウェブ状であり、該基材上にインキからなる画像パターンがロール・ツー・ロール方式で連続して形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項5】
前記凸部パターンが円筒上に設けられた第一の凸版と第二の凸版において、ブランケットから転写、除去された凸部パターン上にあるインキを連続して除去する工程を有することを特徴とする請求項4記載の印刷方法。
【請求項6】
絶縁基板上に、ゲート電極を形成する工程と、ゲート絶縁層を形成する工程と、ソース・ドレイン電極を形成する工程と、該ソース・ドレイン間に半導体層を形成する工程とを少なくとも備える薄膜トランジスタの製造方法であって、
ソース・ドレイン電極を形成する工程が、前記請求項1乃至5のいずれかに記載の印刷方法により形成されることを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−268713(P2007−268713A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−93473(P2006−93473)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】