説明

印刷方法

【課題】印刷形状の精度高い制御が可能な印刷方法の提供。
【解決手段】複数のテスト印刷版10〜10の中の一つと複数のテストインク11〜11の中の一つとからなる組み合わせを複数設定し、設定した組み合わせ14〜14それぞれを用いてテスト印刷面12〜12に複数のテスト印刷パターン13〜13を形成し、テスト印刷パターン13〜13それぞれの印刷膜厚tの測定結果に基づいて版厚aと添加物添加量と印刷膜厚tとの間の相互関係kを調べたうえで、所望する印刷膜厚tを相互関係kに照合することで、所望膜厚tに対応する版厚aと添加物添加量とを取得する。取得した版厚aを有する印刷版1と、取得した添加物添加量で添加物が添加されたインク3とを用いて、印刷面1に印刷パターン4を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂、金属、ガラス等からなる成形品もしくは板状の部材に印刷する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の各種工業製品の表面(金属面/樹脂面/ガラス面)には、高級感を高めるために、濃い色調の色彩(例えば、ピアノブラック)が施されることがあるが、そのような色彩が施された製品表面には使用者の指紋が付き易いという特徴がある。指紋の附着は工業製品の美観を損ねる要因となるため、従来から、製品表面に凸状印刷パターンを形成して指紋の附着を緩和することが行われている。一般の印刷のインクの厚みは10〜12ミクロンと薄く、その厚み(高さ寸法)の凸状印刷パターンでは、指紋の附着を防止する効果が十分とはいえない。そのため、指紋附着防止用の凸状印刷パターンは、ステンレスメッシュ判等と紫外線硬化インク(以下、UVインクという)を用いた厚膜印刷法により形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−119678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、指紋附着防止用の凸状印刷パターンでは、その高さ寸法が大きくなり過ぎると、製品表面において凸状印刷パターンが目立ってしまって、美観を損ねてしまう。そのため、美観を損ねることなく指紋の附着を防止するうえでは、数十ミクロン〜100ミクロン程度の厚み(高さ寸法)を有する凸状印刷パターンを、その断面形状を含めて精度高く形成する必要があるが、従来の厚膜印刷方法では、厚み(高さ)や断面の形状を精度高く制御することは困難であった。
【0005】
本発明は、指紋附着防止用の凸状印刷パターンを形成する厚膜による印刷方法において、仕上がりの印刷パターンの厚みを容易かつ精度高く制御することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の印刷方法は、
印刷版を介して印刷面にインクを塗布して硬化させることで前記印刷面に印刷パターンを形成する印刷方法であって、
版厚の異なる複数のテスト印刷版と、前記インクと同等成分を有するもののインク粘度に影響を与える添加物の添加量を種々設定された複数のテストインクとを用意したうえで、前記複数のテスト印刷版の中の一つと前記複数のテストインクの中の一つとからなる組み合わせを複数設定し、設定した組み合わせそれぞれを用いてテスト印刷面に複数のテスト印刷パターンを形成する第1のステップと、
前記複数のテスト印刷パターンそれぞれの印刷膜厚を測定し、その測定結果に基づいて前記版厚と前記添加物添加量と前記印刷膜厚との間の相互関係を調べる第2のステップと、
所望する印刷膜厚を前記相互関係に照合することで、当該所望膜厚に対応する前記版厚と前記添加物添加量とを取得する第3のステップと、
前記第3のステップで取得した版厚を有する前記印刷版と、前記第3のステップで取得した添加物添加量で前記添加物が添加された前記インクとを用意したうええで、これら印刷版とインクとを用いて、前記印刷面に前記印刷パターンを形成する第4のステップと、
を含む。
【0007】
本発明では、テスト印刷の形状測定結果に基づいて予め上記相互関係を作成したうえで作成した相互関係に所望する印刷膜厚を照合することで当該所望膜厚に対応する版厚と添加物添加量とを取得して実際の印刷を行うので、その印刷結果(印刷形状)を精度高く制御することが可能となる。
【0008】
本発明には、
前記第2のステップでは、前記相互関係を示すデータベースを作成し、
前記第3ステップでは、所望する印刷膜厚を前記データベースに照合することで、当該所望膜厚に対応する前記版厚と前記添加物添加量とを取得する、
という態様がある。前記相互関係を示すデータベースを作成することで、第2、第3のステップをコンピュータを用いて迅速かつ正確に実施することが可能となる。
【0009】
本発明には、
前記第2のステップでは、前記相互関係として、前記版厚と前記添加物添加量と前記印刷膜厚と前記印刷パターンの断面形状との間の相互関係を調べ、
前記第3のステップでは、それぞれ所望する前記印刷膜厚と前記断面形状とを前記相互関係に照合することで、当該所望膜厚と所望断面形状とに対応する前記版厚と前記添加物添加量とを取得する、
という態様がある。
【0010】
この態様によれば、断面形状を含んでその印刷結果(印刷形状)を、精度高く制御することが可能となる。
【0011】
本発明を実施するうえでは、前記インクを、特定波長の光線で硬化する光線硬化インクから構成するのが好ましい。このような光線硬化インクとしては、UVインクを好適に挙げることができる。
【0012】
また、インク粘度に影響を与える添加物としては、増粘剤または希釈剤を好適に挙げることができる。
【0013】
なお、前記第2のステップでは、前記印刷膜厚を、印刷硬化前の印刷膜厚に対する印刷硬化後の印刷膜厚の膜厚減少率として測定するのが好ましく、そうすれば、本発明を容易に実施することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来の厚膜印刷方法で困難であった厚み(高さ)や断面の形状を精度高く制御すること可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)、(b)は本発明の一実施形態の印刷方法を示す要部拡大断面図である。
【図2】(a)、(b)は本発明の一実施形態におけるテスト印刷を示す要部拡大断面図である。
【図3】実施の形態の印刷方法で印刷された印刷パターンの断面形状を示す要部拡大断面図である。
【図4】実施の形態のテスト印刷の印刷結果を示すグラフである。
【図5】実施の形態の印刷方法を実施するのに用いられるコンピュータシステムの構成図である。
【図6】(a)、(b)、(c)は、実施の形態のテスト印刷により算定される相互関係を示す第1のグラフである。
【図7】実施の形態のテスト印刷により算定される相互関係を示す第2のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
特定波長の光線で硬化する光線硬化インクの一つであるUVインクを用いて各種工業製品の表面に膜厚100ミクロン程度の厚膜印刷を行う(以下、このような印刷をUV印刷という)際には、成形後の紫外線硬化に伴って形状収縮が生じるために、印刷成形後(硬化後)の印刷形状が減少変動する。このような形状変動が生じる印刷方法では、印刷版の厚みを調整することで印刷膜厚をある程度制御することができる。しかしながら、印刷版の厚み調整で印刷形状を調整することには限度があり、印刷版の厚み調整だけでは、印刷形状を精度高く調整することはできない。
【0017】
紫外線硬化樹脂を含むUVインクでは、溶剤系インクで使用される希釈剤(シンナ等)を使用しないのが通例であり、インクメーカは、工場製造時においてUVインクに添加する増粘剤の量を調整することで、一般的な印刷に適した粘度をUVインクに付与している。印刷時には、その粘度を調整することなく、すなわち添加剤量を調整することなく出荷状態のUVインクを使用して印刷したうえで、印刷後、その印刷パターンにUVランプ(メタルハイドロランプ等)で紫外線を照射することで、UVインクを硬化させる。
【0018】
本発明は、印刷版の厚みとともに、UVインクの添加物(希釈剤または増粘剤であって、以下、単に添加物という)の添加量を調整することで、印刷形状を精度高く調整することに第1の特徴を有している。
【0019】
ここで、添加物の添加量と印刷版の厚みとは相互に関係し合いながら、印刷形状に影響を与えている。そのため、添加物の添加量並びに印刷版の厚みと、印刷形状とは複雑に関係し合っており、単に添加物の添加量と印刷版の厚みとを増減調整するだけでは、印刷形状を精度高く制御することができない。
【0020】
そこで、本発明では、
第1のステップにおいて、
版厚の異なる複数のテスト印刷版と、前記インクと同等成分を有するもののインク粘度に影響を与える添加物の添加量が異なる複数のテストインクとを用意したうえで、前記複数のテスト印刷版の中の一つと前記複数のテストインクの中の一つとからなる組み合わせを複数設定し、設定した組み合わせそれぞれを用いてテスト印刷面にテスト印刷パターンを形成したうえで、
第2のステップにおいて、
前記テスト印刷パターンの印刷膜厚を測定し、その測定結果に基づいて前記版厚と前記添加物添加量と前記印刷膜厚との間の相互関係を調べている。
【0021】
本発明は、このような相互関係を調べることに第2の特徴を有している。これにより、本発明は、印刷形状を精度高く制御することが可能となる。
【0022】
さらには、本発明は、前記相互関係を示すデータベースを作成することに第3の特徴を有している。これにより、相互関係の構築処理と相互関係の照合処理とをコンピュータを用いて迅速かつ正確に実施することが可能となる。
【0023】
さらには、
添加物の添加量を調整することでインク粘度が変動すると、印刷結果(印刷パターン)においてその断面形状が微妙に変化する。本発明は、このことに着目し、版の厚みと添加剤の配合割合と断面形状との間の相互関係を構築することに、第4の特徴を有している。これにより、断面形状を含んでその印刷結果(印刷形状)を、精度高く制御することが可能となり、形成する断面形状のバリエーションが増す。
【0024】
次に本発明の具体的な実施の形態を説明する。本実施形態は、図1(a)、(b)に示すように、印刷版1を介して印刷面2にインク3を塗布して硬化させることで印刷面2に印刷パターン4を形成する印刷方法であって、第1〜第4のステップを含む。
【0025】
(第1のステップ)
版厚(紗厚)aの異なる複数のテスト印刷版10〜10と、インク3と同等成分を有するもののインク粘度に影響を与える添加物(本実施の形態では、希釈剤と増粘剤)の添加量が異なる複数のテストインク11〜11とを用意する。用意したテスト印刷版10〜10の中の一つ10と同じく用意したテストインク11〜11の中の一つ11とからなる複数の組み合わせ12〜12(P=n×m)を設定する。そして、設定した組み合わせ12〜12それぞれを用いてテスト印刷面12〜12それぞれにテスト印刷パターン13〜13を形成する。
【0026】
具体的には、以下のテスト印刷版10〜10と、テストインク11〜1111を用意する。なお、テスト印刷版10〜10には、直径2mmの円(数個のパターン)と線幅2mmで長さ5mmの長方形(数個のパターン)の印刷パターンを形成する。
・テスト印刷版10
版厚a=64ミクロンのステンレスメッシュ
(ステンレスメッシュ325:開口率41%)
・テスト印刷版10
版厚a=100ミクロンのステンレスメッシュ
(ステンレスメッシュ180:開口率42%)
・テスト印刷版10
版厚a=210ミクロンのステンレスメッシュ
(ステンレスメッシュ100:開口率38%)
・テスト印刷版10
版厚a=400ミクロンのメタルマスク
(開口率100%)
・テストインク11
用意したUVインクの標準品(以下、標準インクという)
・テストインク11
標準インクに重量比1%で希釈剤(アクリル樹脂溶液)を追加している
・テストインク11
標準インクに重量比2%で希釈剤(アクリル樹脂溶液)を追加している
・テストインク11
標準インクに重量比3%で希釈剤(アクリル樹脂溶液)を追加している
・テストインク11
標準インクに重量比4%で希釈剤(アクリル樹脂溶液)を追加している
・テストインク11
標準インクに重量比5%で希釈剤(アクリル樹脂溶液)を追加している
・テストインク11
標準インクに重量比1%で増粘剤(アクリルモノマ)を追加している
・テストインク11
標準インクに重量比2%で増粘剤(アクリルモノマ)を追加している
・テストインク11
標準インクに重量比3%で増粘剤(アクリルモノマ)を追加している
・テストインク1110
標準インクに重量比4%で増粘剤(アクリルモノマ)を追加している
・テストインク1111
標準インクに重量比5%で増粘剤(アクリルモノマ)を追加している
なお、標準インクとは、特に限定されるものではなく、この印刷方法の実施者がその印刷において標準に用いるUVインクであればどのようなものであってもよい。
【0027】
以上のようにして用意したテスト印刷版10〜10とテストインク11〜1111との組み合わせ14〜1444を次のように設定する。
・組み合わせ14〜1411
(テスト印刷版10とテストインク111〜11それぞれとの組み合わせ)
・組み合わせ1412〜1422
(テスト印刷版10とテストインク111〜11それぞれとの組み合わせ)
・組み合わせ1423〜1433
(テスト印刷版10とテストインク111〜11それぞれとの組み合わせ)
・組み合わせ1434〜1444
(テスト印刷版10とテストインク111〜11それぞれとの組み合わせ)
以上の組み合わせ1〜44を設定したうえで、各組み合わせ1〜44を用いて、図2(a)、(b)に示すように、テスト印刷面12〜1244にテスト印刷パターン13〜1344を形成する。そのうえで、形成したテスト印刷パターン13〜1344それぞれの印刷膜厚tと、断面形状dとを測定する。実施の形態では、断面形状dとして、テスト印刷パターン13〜1344の表面平坦度を測定した。すなわち、図3に示すように、表面が平坦であれば平坦度0とし(図3(a)参照)、表面が凹状変形しておればマイナス変形とし(図3(b)参照)、凸状変形しておればプラス変形とした(図3(c)参照)、さらには、凸状/凹状変形において、その変形の度合に比例した点数を付与した。
【0028】
測定結果を図4に示す。図4は、テスト印刷版10〜10を用いた印刷結果(印刷膜厚t)を示し、図中、縦軸は印刷膜厚tを示し、横軸は添加物の添加量を示す。
【0029】
(第2のステップ)
図5に示すように、第1のステップで得られた測定結果に基づいてテスト印刷版10〜10の版厚aとテストインク11〜11(具体的にはテストインク11〜11における添加物添加量)と印刷膜厚tと断面形状dとの間の相互関係kをコンピュータCを用いて作成し、その相互関係をデータベースBに格納する。以下、データベースBに格納された相互関係kを、図6を参照して説明する。
【0030】
図6(a)は、増粘剤を重量比5%で追加したUVインクを用いた印刷における版厚aと印刷膜厚tとの間の相互関係kをグラフ化したものである。相互関係kは、組み合わせ1411、1422、1433、1444(テストインク1111(増粘剤を重量比5%で追加)とテスト印刷版101〜4とからなる組み合わせ)における印刷結果に基づいて作成される。
【0031】
図6(b)は、標準インクを用いた印刷における版厚aと印刷膜厚tとの間の相互関係kをグラフ化したものである。相互関係kは、組み合わせ14、1412、1423、1434(テストインク11(標準インク)とテスト印刷版101〜4とからなる組み合わせ)における印刷結果に基づいて作成される。
【0032】
図6(c)は、希釈剤を重量比4%で追加したUVインクを用いた印刷における版厚aと印刷膜厚tとの間の相互関係kをグラフ化したものである。相互関係kは、組み合わせ14、1417、1428、1439(テストインク11(希釈剤を重量比4%で追加)とテスト印刷版101〜4とからなる組み合わせ)における印刷結果に基づいて作成される。
【0033】
なお、図6の各図において、横軸は版厚aを示し、縦軸は印刷膜厚tを示す。また、図6を含めて、本実施の形態では、印刷膜厚tは、印刷硬化前の印刷膜厚t’(版厚aと同等)に対する印刷硬化後の印刷膜厚tの膜厚減少率(以下、ヒケ率という)として規定されることもある。図6の各図において実際の印刷膜厚tを算定するためには、版厚aに、その版厚aにおけるヒケ率を乗算すればよい。
【0034】
図6に示すように、希釈剤の増加に伴って、印刷膜厚の減少率が増加し(ヒケ率が高まり)、結果としての印刷膜厚tが薄くなるのが分かる。この特徴は、版厚aの増加に比例して顕著になる。一方、増粘剤の増加に伴って、印刷膜厚の減少率(ヒケ率)が減少し、結果としての印刷膜厚tが薄くなりにくくなるのが分かる。
【0035】
なお、希釈剤を重量比5%を超えてUVインクに添加すると、UVインクが柔らかくなり過ぎて印刷時ににじみが見られる。その為、希釈剤の添加量限界値は5%と判断できる。また、増粘剤を重量比5%を超えてUVインクに添加すると、印刷パターン4の版のヌケが悪くなる。そのため、増粘剤の添加量限界値は5%と判断できる。
【0036】
また、標準インク(テストインク11)で印刷した場合、印刷パターン4のパターン表面において凹部変形が生じる。これに対して、標準インクに増粘剤を添加しさらにはその添加量を増やしていくと、凹部変形が減少する。そして、任意の増粘剤添加量で、パターン表面が平坦になる。任意の添加量を超えて増粘剤の添加量をさらに増やすと、パターン表面に凸部変形が生じる。一方、標準インクに希釈剤を加えると、インクの表面張力が増すことになって、パターン中央部から周辺に向かってなだらかに下り傾斜する形状変化が生じる。このような形状変化は希釈剤の添加量を増やすと顕著になる。また、以上説明した増粘剤/希釈剤の添加に起因する印刷パターン4の形状変化は、印刷パターン4の表面面積が大きくなるほど顕著になる。
【0037】
図6(a)〜(c)に示す相互関係k〜kから明らかなように、全ての版厚のテスト印刷版10を用意していなくとも、任意の複数種のテスト印刷版101〜4を用意して、それらのテスト印刷版101〜4でテスト印刷を行って印刷膜厚tのデータを採取してそのデータに基づいて相互関係k〜kを作成しておけば、作成した相互関係k〜kを照合することで、テスト印刷データが未知の印刷版10を使用した印刷結果(印刷膜厚t)を推定することが可能となる。図7では、図6の各図に示す相互関係k〜kに基づいて、テスト印刷データが未知の版厚a=240ミクロンの印刷版10と、テスト印刷データが未知の版厚a=170ミクロンの印刷版10とをそれぞれ使用した印刷結果(印刷膜厚t)を推定している。
【0038】
(第3のステップ)
コンピュータCを用いて第2のステップで作成されてデータベースBに格納された相互関係kに、所望する印刷膜厚tを照合することで、所望する膜厚tに対応する版厚aと添加物添加量との組み合わせを取得する。ここで、所望する印刷結果(印刷膜厚t)に対して、版厚aと添加物添加量との組み合わせを複数抽出することが可能となる。前述したように添加物の添加量は、印刷パターン4の断面形状に大きな影響を与えるファクタであるため、添加物の添加量が異なる複数の組み合わせの中から、所望する印刷パターン4の断面形状に最も近似する断面形状を有する印刷パターンを作成可能な組み合わせを選出することが可能となる。
【0039】
(第4のステップ)
第3のステップで取得した版厚aを有する印刷版1と、第3のステップで取得した添加物添加量で添加物(増粘剤または希釈剤)が添加されたインク3とを用意したうええで、これら印刷版1とインク3とを用いて、印刷面2に印刷パターン4を形成する。形成される印刷パターン4の膜厚tと断面形状とは、所望する値に限りなく近づいたものとなる。
【0040】
上述した実施形態では、処理精度の向上と処理速度の迅速化を図るために相互関係をデータベースBに格納していたが、本発明のおける相互関係はデータベースBに格納しなくてもよいのはいうまでもない。
【0041】
また、上述した実施形態では、相互関係のファクタとして断面形状を加えていたが、本発明では、相互関係のファクタから断面形状を除くことできるのはいうまでもない。
【0042】
本発明を実施するうえでは、前記インクを、特定波長の光線で硬化する光線硬化インク(特にUVインク)から構成するのが好ましいが、光線硬化インク以外においても本発明を実施できるのはいうまでもない。また、インク粘度に影響を与える添加物としては増粘剤または希釈剤以外のものであってもいいのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0043】
1 印刷版
2 印刷面
3 インク
4 印刷パターン
10〜10 テスト印刷版
11〜11 テストインク
12〜12 テスト印刷面
13〜13 テスト印刷パターン
14〜14 組み合わせ
B データベース
C コンピュータ
a 版厚
t 印刷膜厚
d 断面形状
k 相互関係

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷版を介して印刷面にインクを塗布して硬化させることで前記印刷面に印刷パターンを形成する印刷方法であって、
版厚の異なる複数のテスト印刷版と、前記インクと同等成分を有するもののインク粘度に影響を与える添加物の添加量を種々設定された複数のテストインクとを用意したうえで、前記複数のテスト印刷版の中の一つと前記複数のテストインクの中の一つとからなる組み合わせを複数設定し、設定した組み合わせそれぞれを用いてテスト印刷面に複数のテスト印刷パターンを形成する第1のステップと、
前記複数のテスト印刷パターンそれぞれの印刷膜厚を測定し、その測定結果に基づいて前記版厚と前記添加物添加量と前記印刷膜厚との間の相互関係を調べる第2のステップと、
所望する印刷膜厚を前記相互関係に照合することで、当該所望膜厚に対応する前記版厚と前記添加物添加量とを取得する第3のステップと、
前記第3のステップで取得した版厚を有する前記印刷版と、前記第3のステップで取得した添加物添加量で前記添加物が添加された前記インクとを用意したうええで、これら印刷版とインクとを用いて、前記印刷面に前記印刷パターンを形成する第4のステップと、
を含む、
印刷方法。
【請求項2】
前記第2のステップでは、前記相互関係を示すデータベースを作成し、
前記第3ステップでは、所望する印刷膜厚を前記データベースに照合することで、当該所望膜厚に対応する前記版厚と前記添加物添加量とを取得する、
請求項1の印刷方法。
【請求項3】
前記第2のステップでは、前記相互関係として、前記版厚と前記添加物添加量と前記印刷膜厚と前記印刷パターンの断面形状との間の相互関係を調べ、
前記第3のステップでは、それぞれ所望する前記印刷膜厚と前記断面形状とを前記相互関係に照合することで、当該所望膜厚と所望断面形状とに対応する前記版厚と前記添加物添加量とを取得する、
請求項1または2に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記インクは、特定波長の光線で硬化する光線硬化インクである、
請求項1ないし4のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項5】
前記添加物は、増粘剤または希釈剤である、
請求項1ないし4のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項6】
前記第2のステップでは、前記印刷膜厚を、印刷硬化前の印刷膜厚に対する印刷硬化後の印刷膜厚の膜厚減少率として測定する、
請求項1ないし5のいずれかに記載の印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−178025(P2011−178025A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44390(P2010−44390)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】