説明

印刷枚数管理方法及びこれに使用されるチェック用紙

【課題】事前に通し番号などが印刷された後に、追加印刷を行なう必要が発生したときに、本紙を抜き取ることなく印刷色の濃度チェックや、印刷図柄の印刷見当のチェックを行なうことができる印刷枚数管理方法及びこれに使用されるチェック用紙を提供する。
【解決手段】前記課題の目的を達成するために、枚葉印刷の際にチェック用紙と本紙との違いを光センサーによって判別し、印刷枚数管理回路に本紙のみの信号を送ることにより印刷枚数を管理する方法であって、光センサーを給紙部の前当部分に設置し、印刷用紙の咥え領域を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷枚数管理方法及び、この方法に使用される印刷管理用のチェック用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
紙の印刷媒体としてロール状に巻かれたロール紙や予めシート状にカットされた枚葉紙が使用される。
枚葉紙として、市販されているような通常のコート紙や上質紙の他に、顧客の要求仕様によって作製された特殊紙が使用される。特殊紙としては、例えば、用紙の色を特殊な色とする色上質紙や、紙に会社のロゴなどを透かしとして漉き込んだ透かし入り用紙がある。
特に、透かし入り用紙は印刷の前及び後の用紙の管理が厳しく要求され、発注元から枚数管理状況の報告の義務を負う場合もある。
【0003】
一方、枚葉印刷では、印刷を行なう際に印刷色の濃度チェックや、印刷図柄の重ね合わせ精度(以下、印刷見当ともいう)のチェックのため、所定の枚数ごとに抜き取りを行なう。抜き取られた用紙は、チェックの後、正規用紙(以下、本紙ともいう)に戻される場合と、戻されない場合がある。用紙に通し番号が印刷されている場合は、元の位置に戻す作業が煩雑となる。
このように、事前に通し番号などが印刷された後に、追加印刷を行なう必要が発生したときにチェック用紙を本紙の間に挟んで、前述の印刷色の濃度チェックや、印刷図柄の印刷見当のチェックを所定の枚数毎に行なう。
【0004】
従来、枚葉印刷の際に枚葉紙が複数枚重なって、かつ、ずれた状態で給紙トレイからバックアップローラに送られる場合があるが、このときに、バックアップローラの咥え爪は枚葉紙の咥え部分を咥えることができず転写ドラムを破損する。このようなトラブルを解決するために「印刷機および印刷方法」が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−114555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、例えば、事前に通し番号などが印刷された後に、追加印刷を行なう必要が発生したときに、本紙を抜き取ることなく印刷色の濃度チェックや、印刷図柄の印刷見当のチェックを行なうことができる印刷枚数管理方法及びこれに使用されるチェック用紙を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題の目的を達成するために、本発明の印刷枚数管理方法の第一の態様は、枚葉印刷の際にチェック用紙と本紙との違いを光センサーによって判別し、印刷枚数管理回路に本紙のみの信号を送ることにより印刷枚数を管理する方法であって、光センサーを給紙部の前当部分に設置し、印刷用紙の咥え領域を判別することを特徴とするものである。
【0008】
また、第二の態様は、第一の態様において、光センサーは、チェック用紙の咥え領域の紙の色、または、咥え領域の光センサー対応部に印刷されたインキの色によって判別することを特徴とするものである。
【0009】
また、第三の態様は、第一の態様または第二の態様の印刷枚数管理方法に使用される印刷管理用のチェック用紙であって、チェック用紙の咥え領域に光センサーによるチェックのために所定の波長領域にピークを有する印刷インキにより印刷を施したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、
1)枚葉印刷の際にチェック用紙と本紙との違いを光センサーによって判別し、印刷枚数管理回路に本紙のみの信号を送ることにより、本紙のみの印刷数をカウントすることが可能となる。
2)チェック用紙を逆カウントし、抜き取ったチェック用紙枚数と逆カウントされた枚数とを照合することによりチェック用紙の「抜き取り忘れ(抜き損じ)」を防止することができる。
3)光センサーによる判別部を用紙の咥え領域とすることによって、咥え領域には印刷濃度チェックや印刷見当チェックのための印刷が成されないため、すでに印刷されている用紙を複数回使用することができる。
4)用紙の色で判別を行なう場合、検査用紙への事前加工が不要になる。
5)上記1)、2)により、本紙にチェック用紙が混入することを防ぐことができる。
6)上記3)、4)によりコスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の印刷枚数管理方法に使用される枚葉印刷機の概略構造について説明するための図である。
【図2】図1のセンサー部の拡大図である。
【図3】本実施形態の印刷管理用のチェック用紙の一例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照して、本実施形態の印刷枚数管理方法に使用される枚葉印刷機の概略構造について説明する。説明し易いように、オフセット枚葉印刷機の一色機の例で示している。本実施形態では、印刷方式はオフセット印刷機の例で説明するが、この印刷方式に拘るものではない。
枚葉印刷の多色機の場合は、フルカラー印刷を行なう印刷機の場合が多く、印刷部13と排紙部14の間に更に3乃至5の印刷部が組み入れられる。
多色印刷機の場合は、黄、赤、藍、黒の4色、更に必要な場合は、特色2〜7色、合わせて6〜11色で印刷される。
【0013】
印刷するための用紙(以下、印刷用紙ともいう)は、印刷機1の給紙部11に積み上げられる。図示しないが、給紙部11は、印刷用紙を積み上げる時間を節約するために二段になっている場合もある。
給紙部11の最上部には、印刷用紙の終端部を吸い上げるための吸引装置110が複数取り付けられており、印刷用紙を一枚一枚吸い上げては、図示しないフィーダーボードの方向に押しやる。
【0014】
印刷用紙21は、図示しないが、フィーダーボードのベルトで駆動されてフィーダーボードの先端のセンサー部15が設けられている用紙の前当部(以下、単に前当部という)に到達する。
センサー部15の光センサー(図示せず)は、用紙21の咥え領域の所定の場所を検知する。
光センサーは、用紙の加え領域を検知して、用紙が本紙であるか、印刷管理用のチェック用紙(以下、単にチェック用紙という)であるかを判別して、本紙のみをカウント(員数)する。本紙と判別した場合は印刷枚数管理回路(図示せず)にカウント信号を送る。
【0015】
次の瞬間、カム(図示せず)によって前当部が外れて、紙受け渡し部12に用紙21が受け渡される。
紙受け渡し部12の咥え爪(図示せず)に咥えられた用紙21は給紙胴131の咥え爪(図示せず)に用紙21を受け渡す。紙受け渡し部12は、前述の用紙前当部に戻って同様な動作を繰り返し、順次用紙21を印刷部13に送り込む。
【0016】
給紙胴131に咥えられた用紙21は、圧胴132に受け渡され圧胴132の咥え爪(図示せず)に咥え替えされてブランケット胴(以下、ブラン胴という)133と接触する。
用紙21は、ブラン胴133に転写された印刷インキを受け取り印刷が完了する。
印刷済みの印刷用紙22は、排紙部14のコンベヤベルト(図示せず)に咥え替えされて排紙部14に積載される。
【0017】
印刷部13について説明する。
印刷部13では、インキローラ135によって均一の厚さにされた印刷インキが版胴134に接触し、画線部にインキを付着させる。
版胴134は、ブラン胴133と接触し、印刷版の画線部に付着したインキをブラン胴133のゴムの表面に転写する。
ブラン胴133のゴムに転写された印刷インキは、圧胴の爪によって咥えられた用紙21に転写される。
【0018】
図3を参照して、本実施形態の印刷枚数管理方法に使用されるチェック用紙の一例について説明する。
チェック用紙4は、通常、前述の印刷用紙(この場合は、チェック用紙に対して本紙)21と同一寸法に裁断されて、本紙の間に挿入されて印刷される。
チェック用紙4には、前述の本紙と似通った紙質で、厚さが同一の用紙が選択される。
また、チェック用紙4には、紙漉きの時点から所定の色に染色された紙、または、咥え領域41の光センサー対応部に所定の「着色インキ」が印刷された紙が使用される。
【0019】
チェック用紙4の咥え領域41の幅L(本紙の咥え領域も同一)は、印刷機にもよるが、8〜15mm程度である。前述のチェック用紙、本紙の何れにもこの咥え領域41には印刷が行なわれず、また、印刷インキや汚れも付着せず、印刷前の表面状態が保たれている。
このように咥え領域は印刷前の表面状態が常に保たれているため、一度使用したチェック用紙も複数回チェックに使用することができる。
チェック用紙は本紙の間に挟まれて通常の印刷領域42に本紙と同一条件で印刷が行なわれ、印刷色の濃度チェックや、印刷図柄の印刷見当のチェックが行なわれる。
【0020】
図1の一部と図2を参照して、本実施形態の印刷枚数管理方法について説明する。
給紙部11の吸引装置110で吸い上げられた印刷用紙21(または、チェック用紙)は、印刷部の方向に押しやられ、フィーダーボードのベルト(図示せず)で駆動されてフィーダーボードの先端のセンサー部15が設けられている前当部112に到達する。
センサー部15の光センサー3は、用紙21の、図3で説明した咥え領域41の所定の場所をチェックする。
【0021】
印刷用紙21は、フィーダーボードのベルト(図示せず)で駆動され、自重で印刷用紙を押さえる押さえコロ111とフィーダーボードの先端の前当部112で極めて短時間印刷用紙21を停止させる。
このときに、センサー部15の光センサー3は、用紙21の、図3で説明した咥え領域41の所定の場所をチェックし、印刷用紙が「本紙」の場合は「カウントした」という信号を、「チェック用紙」の場合は「カウントしなかった」というカウント信号を印刷枚数管理回路に送信する。
【0022】
前当部112は、「極めて短時間の停止」の後下方に移動(斜線で示した状態)し、この時点で印刷用紙は、紙受け渡し部12に受け渡される。
紙受け渡し部12は、スイング運動によって咥えた印刷用紙21を給紙胴131に受け渡す。給紙胴131は、印刷部の圧胴132に印刷用紙を受け渡す。
これら、「紙受け渡し部12から給紙胴131」、「給紙胴131から圧胴132」への印刷用紙21の受け渡しはすべて、それぞれに設けられた「咥え爪」の「加え替え」によって行なわれる。
紙受け渡し部12に印刷用紙が咥えられた直後に前当部112は元の位置に戻り次の印刷用紙を待つ。
【0023】
前述の圧胴132の咥え部は、紙受け渡しのために圧胴132のシリンダー面の内側に形成されているために、印刷用紙の咥え領域41には印刷が成されない。
【0024】
光センサー3について説明する。
光センサー3は、まず、印刷用紙21の先端を検知し、印刷用紙がセンサー部15に到達したという到達信号を生成する。次に、光センサー3は一瞬停止した印刷用紙の表面が所定の「色」になっているか、否かを検知し、前記印刷用紙の到達信号と合成して印刷用紙21が「本紙」であるか、「チェック用紙」であるかを判別し、印刷枚数管理回路に判別結果を送信する。
【0025】
前述のチェック用紙は、光センサーによってカウントされないが、逆カウントすることによって、抜き取られたチェック用紙枚数と照合し、チェック用紙の「抜き取り忘れ(抜き損じ)」の防止に利用することもできる。
【0026】
印刷用紙21が「本紙」であるか、「チェック用紙」であるかの判別方法の一例について説明する。
光センサー3の投光部からは400〜700nmの波長の光を発生させる。
本実施形態の受光部には第一の受光部と第二の受光部が組み込まれている。
光センサー3の第一の受光部には400〜700nmの波長領域の反射光を感知するセンサーが組み込まれており印刷用紙21が光センサー3の下を通過したことを検知する。
第一の受光部はマイクロスイッチのようなものであってもよい。
【0027】
次いで、第一の受光部に隣接して組み込まれた第二の受光部で印刷用紙21が「本紙」であるか、「チェック用紙」であるかの判別を行なう。
第二の受光部に、例えば、400〜500nmの波長領域にピークを有するフィルタが組み込まれている場合は、チェック用紙の咥え領域の光センサー対応部に赤系の印刷インキで印刷部を形成したチェック用紙を使用するか、赤系の色紙を使用する。
【0028】
第二の受光部に、例えば、600〜700nmの波長領域にピークを有するフィルタが組み込まれている場合は、チェック用紙の加え領域の光センサー対応部に青系の印刷インキで印刷部を形成したチェック用紙を使用するか、青系の色紙を使用する。
【産業上の利用可能性】
【0029】
事前に通し番号などが印刷された後に、追加印刷を行なう必要が生じたときのチェック用紙として利用でき、カウントされない印刷用紙として印刷色の濃度チェックや、印刷図柄の印刷見当のチェックを行なうことができる。
【符号の説明】
【0030】
1 枚葉印刷機
3 光センサー
4 チェック用紙
11 給紙部
12 紙受け渡し部
13 印刷部
14 排紙部
15 センサー部
21、22 印刷用紙
41 咥え領域
42 通常の印刷領域
110 吸引装置
111 押さえコロ
112 前当部
131 給紙胴
132 圧胴
133 ブラン胴
134 版胴
135 インキローラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
枚葉印刷の際にチェック用紙と本紙との違いを光センサーによって判別し、印刷枚数管理回路に本紙のみの信号を送ることにより印刷枚数を管理する方法であって、
光センサーを給紙部の前当部分に設置し、印刷用紙の咥え領域を判別することを特徴とする印刷枚数管理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷枚数管理方法において、
光センサーは、チェック用紙の咥え領域の紙の色、または、咥え領域の光センサー対応部に印刷されたインキの色によって判別することを特徴とする印刷枚数管理方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の印刷枚数管理方法に使用されるチェック用紙であって、
チェック用紙の咥え領域に光センサーによるチェックのために所定の波長領域にピークを有する印刷インキにより印刷を施したことを特徴とする印刷管理用のチェック用紙。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−111104(P2012−111104A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261175(P2010−261175)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】