説明

印刷検査装置

【課題】印刷検査位置における枚葉紙の浮き上がりやバタつきを防いだ状態で印刷検査を行うことができる印刷検査装置を提供する。
【解決手段】印刷欠陥を検査する検査装置であって、圧胴102上を移動する枚葉紙Pの表面を撮影する撮影手段2と、圧胴102上を移動する枚葉紙Pに対して、撮影手段2の撮影位置より枚葉紙Pの移動方向下流側に空気を吹き付けるエア吹付手段5とを備えており、エア吹付手段5は、枚葉紙Pに吹き付けた空気が、枚葉紙Pの表面に沿って、枚葉紙Pの移動方向上流側流れるようにエア吹付け角度が調整されている。エア吹付手段から枚葉紙に吹き付けられた空気が、枚葉紙の表面に沿って上流側に流れるから、枚葉紙は圧胴表面に密着するから、枚葉紙にしわができることを防ぐことができる。枚葉紙の後端まで空気が流れるから、後方部分のバタつきを防ぐこともできるし、撮影位置に余剰エアが溜まることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷検査装置に関する。さらに詳しくは、印刷された印刷物の汚れや色むら等の異常を検出する印刷検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図3に示すように、パッケージ印刷や出版印刷等の枚葉紙に対して印刷を行う印刷装置(オフセット印刷装置)では、枚葉紙Pが圧胴102とブラン胴102aとの間を通過するときに、両者に挟まれた状態において枚葉紙Pに印刷が行われる。そして、印刷された枚葉紙Pは、その先端がグリッパ112によって保持され、このグリッパ112に引っ張られて圧胴102上を移動し、次工程に搬送される。
【0003】
かかる印刷装置では、印刷された枚葉紙Pは、圧胴102上を移動する間に、印刷検査装置によって印刷の汚れや色むら等の異常の有無が検査される。具体的には、印刷検査装置は、枚葉紙Pの表面をカメラ104によって撮影し、その撮影された画像に基づいて印刷欠陥の有無が判断されるのである。
【0004】
ここで、枚葉紙Pの後端が圧胴102とブラン胴102aとの間に挟まれている状態では、枚葉紙Pの先端がグリッパ112に引っ張られているので、枚葉紙Pが圧胴102の平滑な表面に密着している。すると、枚葉紙Pの表面にしわ等ができないので、画像に基づいて印刷欠陥の有無を正確に判断できる。
しかし、枚葉紙Pの後端が圧胴102とブラン胴102aとの間から離脱すると、枚葉紙Pは、その先端はグリッパ112によって保持されていても、その後端部分は全くフリーの状態となるため、枚葉紙Pの後端部分がバタついてしまう。
すると、グリッパ112によって枚葉紙Pの先端が保持されていても、枚葉紙Pの後端部分のバタつきによって、枚葉紙Pの表面にしわ等が形成されてしまう。しかも、カメラ104と枚葉紙Pの位置関係も不安定な状態となるから、枚葉紙Pの印刷状態について正確に検査をすることができなくなるという問題が生じていた。
【0005】
かかる問題を防ぐ方法として、枚葉紙Pの表面にエアを吹き付けることにより、枚葉紙Pを圧胴102に密着させておく技術が開発されている(例えば、特許文献1、2)。
【0006】
特許文献1には、画像情報に基づいてインラインで印刷物の異常を検査する印刷物品質検査装置であって、印刷物を圧胴に押え付けるエア噴出手段を備えた装置が開示されている。この特許文献1の装置では、エアによって印刷物を圧胴に押え付けるエア押付位置が印刷物の撮影位置に合致し、かつ、印刷物に対してエアが略垂直に吹き付けられるように、エア噴出手段が配置されている。
そして、特許文献1には、かかる構成としたことにより、印刷物の撮影位置を圧胴上に強力に押え付けることができるので、印刷物の品質検査を高精度で行うことができる旨が記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、圧胴にエアを噴射するジェットエアノズルとして、圧胴の回転方向の反対側に噴射角度4〜8度に傾けた第1乃至第3のノズルと、圧胴の回転方向の反対側に噴射角度30〜60度に傾けた第4のノズルを設ける技術が開示されている。
そして、特許文献2には、かかる構成としたことにより、第1乃至第3ノズルによってカメラ焦点におけるシートの浮き上がりを抑制できるし、第4ノズルによってカメラ焦点近傍のシートフラッタリンクを抑制することができる旨が開示されている。
【0008】
しかるに、特許文献1の技術では、エアを印刷物に対して略垂直に吹き付けているので、エア押付位置に余剰エアが溜まり、この余剰エアが紙下に回り込んで浮きとうねりが生じる可能性がある。
【0009】
一方、特許文献2には、ランプハウジング内に、エアを吸引するエア吸引孔を設けた構成も開示されているので、第1乃至第3のノズルから吹き付けられた余剰エアはランプハウジング内に吸引され、エア吹付け位置(カメラ焦点)に余剰エアが溜まることを防ぐことができると考える。しかし、エア吹付け手段に加えて、エアを吸引する手段を別途設けなければならなくなるので、装置が大型化してしまう。
また、特許文献2では、第4ノズルから吹き付けられたエアは、第1乃至第3のノズルのエア吹付け位置に向かって流れる構成となっている。すると、第1乃至第3のノズルから吹き付けられたエアと第4ノズル吹き付けられたエアとが干渉してエアの流れが乱れる可能性があり、かかる乱れによりカメラ焦点近傍のシートがバタつく可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−136585号公報
【特許文献2】特開平8−142313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事情に鑑み、印刷検査位置における枚葉紙の浮き上がりやバタつきを防いだ状態で印刷検査を行うことができる印刷検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明の印刷検査装置は、圧胴と印刷胴との間に枚葉紙を通して該枚葉紙に印刷を行う印刷機に設けられる、印刷欠陥を検査する検査装置であって、前記圧胴上を移動する前記枚葉紙の表面を撮影する撮影手段と、前記圧胴上を移動する前記枚葉紙に対して空気を吹き付けるエア吹付手段とを備えており、該エア吹付手段は、前記撮影手段の撮影位置よりも前記枚葉紙の移動方向下流側に配設されており、前記枚葉紙に吹き付けた空気が、前記枚葉紙の表面に沿って、前記枚葉紙の移動方向上流側に流れるようにエア吹付け角度が調整されていることを特徴とする。
第2発明の印刷検査装置は、第1発明において、前記エア吹付手段から前記枚葉紙に吹き付ける空気の流量を調整する空気量調整手段を備えていることを特徴とする。
第3発明の印刷検査装置は、第1または第2発明において、前記エア吹付手段から前記枚葉紙に空気を吹き付ける位置が前記圧胴の表面に沿って移動するように、前記エア吹付手段を移動させる移動手段を備えていることを特徴とする。
第4発明の印刷検査装置は、第2または第3発明において、前記移動手段が、前記エア吹付手段を前記圧胴に対して接近離間させるものであり、前記圧胴上を移動する前記枚葉紙の情報に基づいて、該移動手段および前記空気量調整手段の作動を制御する制御手段を備えていることを特徴とする。
第5発明の印刷検査装置は、第4発明において、前記撮影手段の撮影位置と、前記印刷胴が設けられている位置との間において、前記圧胴表面から前記枚葉紙表面までの距離である跳ね量を検出する跳ね量検出手段を備えており、前記制御手段は、前記跳ね量検出手段が検出する前記跳ね量に基づいて、前記移動手段および前記空気量調整手段の作動を制御するものであることを特徴とする。
第6発明の印刷検査装置は、第1、第2、第3、第4または第5発明において、前記エア吹付手段と、前記圧胴上を移動する前記枚葉紙の表面に光を照射する光源とを収容したケースを備えており、前記光源は、該光源と前記エア吹付手段との間に前記撮影手段が前記枚葉紙の表面を撮影し得る隙間が形成されるように、前記エア吹付手段に対して前記印刷胴側に配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1発明によれば、エア吹付手段から枚葉紙に吹き付けられた空気が、枚葉紙の表面に沿って上流側に流れるから、枚葉紙は圧胴表面に沿うように配置され、圧胴表面に密着する。すると、圧胴表面は平滑な面であるから、撮影手段の撮影位置における枚葉紙にしわができることを防ぐことができる。しかも、枚葉紙の後端まで空気が流れるから、後方部分を押さえることができ、後方部分のバタつきを防ぐこともできる。また、吹き付けられた空気は、枚葉紙の表面に沿って流れるので、空気を吸引する手段を設けなくても、撮影位置に余剰エアが溜まることがない。
第2発明によれば、枚葉紙に応じた適切な流量の空気が枚葉紙に吹き付けられるので、枚葉紙にしわができたり浮き上がりが生じたりすることを防ぐことができる。
第3発明によれば、枚葉紙に応じた適切な位置に空気を吹き付けることができるので、枚葉紙にしわができたり浮き上がりが生じたりすることを防ぐことができる。
第4発明によれば、枚葉紙に応じた適切な高さにエア吹付手段を配置されるように、制御手段によって移動手段が制御される。よって、撮影手段の撮影位置を通過したあとに枚葉紙の後端部分が圧胴表面から離れる跳ねが生じても、枚葉紙とエア吹付手段とが干渉することを防ぐことができる。しかも、エア吹付手段の高さを変更すれば、枚葉紙の移動方向上流側に流れるようにエア吹付け角度が調整されているから、枚葉紙に空気を吹き付ける位置も変化させることができる。そして、エア吹付手段の高さを変更しても、枚葉紙に応じた適切な流量の空気が枚葉紙に吹き付けられるように、制御手段によって空気量調整手段が制御されるので、枚葉紙にしわができたり浮き上がりが生じたりすることを防ぐことができる。
第5発明によれば、跳ね量検出手段が検出する枚葉紙の跳ね量に応じて、制御手段が移動手段および空気量調整手段の作動を制御するので、個々の枚葉紙の状態に応じて、エア吹付手段の高さおよび空気流量を適切に設定することができる。よって、枚葉紙にしわができたり浮き上がりが生じたりすることをより確実に防ぐことができる。
第6発明によれば、光源とエア吹付手段が一つのケースに収容されているので、圧胴近傍に配置する機器をコンパクトにすることができる。よって、機器を配置する位置の自由度を高くできるから、印刷装置の構成の自由も高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態の印刷検査装置1の要部拡大概略説明図である。
【図2】本実施形態の印刷検査装置1を備えた印刷装置の概略説明図である。
【図3】従来の印刷検査装置の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の印刷検査装置は、出版物やパッケージ印刷等の枚葉紙を圧胴と印刷胴との間に挟んで印刷する印刷装置に設けられる検査装置であって、枚葉紙に対してエアを吹き付けて枚葉紙を圧胴に密着させて、印刷欠陥検査のミスを防ぐことができるものである。
【0016】
本発明の印刷検査装置は、枚葉紙を圧胴と印刷胴との間に挟んで印刷し、その後、印刷された枚葉紙を圧胴上を移動させる印刷装置であれば、オフセット印刷装置やフレキソ印刷装置等、どのような印刷装置にも設けることができる。
以下では、オフセット印刷装置に本発明の印刷検査装置を設けた場合を代表として説明する。
なお、本明細書において、印刷胴とは、枚葉紙に直接接触して印刷を行うロールを意味している。例えば、オフセット印刷装置ではブランケット胴(ブラン胴)、フレキソ印刷においては版胴が、本明細書の印刷胴に相当する、
【0017】
まず、本発明の印刷検査装置を説明する前に、この印刷検査装置が設けられるオフセット印刷装置(以下、単に印刷装置という)を説明する。
図2において、符号102、102aは、それぞれ、印刷装置の圧胴およびブランケット胴(特許請求の範囲における印刷胴に相当する、以下、ブラン胴という)を示しており、符号Pは印刷および検査の対象となる出版物やパッケージ印刷等の枚葉紙を示している。
図2に示すように、印刷装置では、枚葉紙Pが圧胴102とブラン胴102aとの間を通過するときに、両者に挟まれた状態において枚葉紙Pに印刷が行われる。
印刷された枚葉紙Pは、その後端が圧胴102とブラン胴102aとの間に挟まれている状態において、その先端がグリッパによって保持され、このグリッパに引っ張られて圧胴102上を移動し、次工程に搬送されるのである(図3参照)。
【0018】
つぎに、本発明の印刷検査装置1を説明する。
本発明の印刷検査装置1(以下、単に印刷検査装置1という)は、圧胴102上の枚葉紙Pの表面、つまり、ブラン胴102によって印刷された面を撮影し、その撮影画像に基づいて印刷欠陥の有無を判断するものである。
なお、撮影画像に基づいて印刷欠陥の有無を判断する方法は特に限定されないが、例えば、パターンマッチング等の方法を採用することができる。
【0019】
図1および図2に示すように、印刷検査装置1は、ラインCCD等の撮影手段2と、ケース3内に収容された光源4およびエア吹付手段5と、を備えている。
【0020】
図2に示すように、圧胴102とブラン胴102aで印刷された枚葉紙Pが搬送される圧胴102の上方には、撮影手段2が設けられている。
この撮影手段2は、枚葉紙Pの表面を撮影するものであり、圧胴102の軸方向(図1では紙面と直交する方向)に沿って伸びた撮影領域を有している。
そして、撮影手段2は、その光軸LAが枚葉紙Pの表面と直交するように配設されている。言い換えれば、撮影手段2の光軸LAが、圧胴102の中心を通過するように配設されているのである。
【0021】
図1に示すように、前記撮影手段2と圧胴102との間には、光源4およびエア吹付手段5を備えたケース3が設けられている。
【0022】
まず、ケース3は、その下端が開口された中空な箱状の部材であり、その内部に光源4およびエア吹付手段5が収容されている。
このケース3の上面には、その上下を貫通する切り欠き3hが設けられており、この切り欠き3hを通して撮影手段2が圧胴102上の枚葉紙Pの表面が撮影できるようになっている。具体的には、ケース3は、撮影手段2の光軸LAが切り欠き3hの幅方向の中心を通過するように配設されており、しかも、切り欠き3hは、その幅Dが撮影手段2の画角θよりも広くなるように形成されている。
【0023】
図1に示すように、ケース3内において、撮影手段2の光軸LAに対してブラン胴102a側には、光源4が配置されている。
この光源4は、例えば、枚葉紙Pの表面における撮影手段2の撮影位置、つまり、撮影手段2の光軸LAが枚葉紙Pの表面と交差する位置に光を照射するように配設されている。しかも、光源4から放出された光が、切り欠き3hを通って、直接撮影手段2に入射しないように配置されている。
【0024】
また、ケース3内において、撮影手段2の光軸LAに対してブラン胴102aと反対側、つまり、光源4との間に光軸LAを挟む位置には、エア吹付手段5が配置されている。言い換えれば、エア吹付手段5は、撮影手段2の撮影位置に対して、圧胴102上を移動する枚葉紙Pの移動方向下流側に配置されているのである。
このエア吹付手段5は、前記圧胴102上を移動する枚葉紙Pに対して空気を吹き付けて、圧胴102の表面に枚葉紙Pを密着させるものであるが、詳細は後述する。
【0025】
以上のごとき構成であるから、印刷検査装置1を使用すれば、エア吹付手段5から吹き付けられる空気によって圧胴102の表面に枚葉紙Pを密着させることができる。しかも、かかる枚葉紙Pの表面を光軸LAが圧胴102の中心を通過するように配設された撮影手段2によって撮影するので、枚葉紙Pの表面を正確に撮影することができる。
【0026】
また、光源4とエア吹付手段5を一つのケース3に収容するので、印刷検査装置1において圧胴102近傍に配置する機器をコンパクトにすることができる。すると、印刷装置において、かかる機器を配置する位置の自由度を高くできるから、印刷検査装置1を設ける印刷装置の構成の自由も高くできる。
【0027】
(エア吹付手段5の説明)
つぎに、エア吹付手段5について説明する。
図2に示すように、エア吹付手段5は、圧胴102の軸方向に沿って伸びた中空な箱状の部材であり、配管dを介して、ブロワー等の送風手段10が接続されている。
図1に示すように、このエア吹付手段5には、その圧胴102側に、圧胴102の軸方向に沿って伸びたエア吹出口5h(または、圧胴102の軸方向に沿って複数のエア吹出口5h)が形成されている。
このエア吹出口5hは、枚葉紙Pの移動方向上流側に向かって開口しており、そこから吹き出されるエアの流れる方向(図1における矢印の方向)が圧胴102の表面の法線方向と交差するように形成されている。しかも、エア吹出口5hは、枚葉紙Pに吹き付けた空気が、枚葉紙Pの表面に沿って、枚葉紙Pの移動方向上流側に流れるように、空気を吹き付ける角度α(エア吹付け角度α)が調整されている。
【0028】
かかる構成とすれば、エア吹付手段5から枚葉紙Pに吹き付けられた空気によって枚葉紙Pは圧胴102の表面に沿うように配置されるので、枚葉紙Pを圧胴102の表面に密着させることができる。すると、圧胴102の表面は平滑な面に形成されているから、撮影手段2の撮影位置における枚葉紙Pにしわができることを防ぐことができる。
【0029】
しかも、枚葉紙Pの後端まで空気が流れるから、枚葉紙Pの後方部分も空気によって押さえることができるので、枚葉紙Pの後方部分がバタつくことも防ぐことができる。
【0030】
また、枚葉紙Pに吹き付けられた空気は枚葉紙Pの表面に沿って流れるので、ケース3と枚葉紙Pとの間から自然に空気が外方に排出される。
よって、ケース3と枚葉紙Pとの間、つまり、撮影位置に余剰エアが溜まることがないので、空気を吸引するなどして溜まった空気を排出する手段を特別に設けなくても、余剰エアが枚葉紙Pの下に回り込むことに起因する枚葉紙Pの浮きやうねりの発生を防ぐことができる。
【0031】
なお、エア吹付け角度αは、枚葉紙Pに吹き付けた空気を枚葉紙Pの表面に沿って枚葉紙Pの移動方向上流側に流すことができ、この空気の流れによって圧胴102の表面に枚葉紙Pを密着させることができる角度であればとくに限定されない。しかし、エア吹付け角度αが小さ過ぎると、余剰エアが滞留する可能性があるので、エア吹付け角度αは、少なくとも45度以上であることが好ましい。
そして、吹き付けられる空気の影響を受け易い薄い枚葉紙Pの場合には、エア吹付け角度αは大きいほうが好ましく、エア吹付け角度αが60度以上であればより好ましい。なぜなら、エア吹付け角度αを大きくすると、エア吹付け角度αを小さくした場合に比べて、圧胴102の表面に枚葉紙Pを密着させるために必要な空気流量を少なくできるという利点が得られるからである。
【0032】
(枚葉紙Pに吹き付ける空気流量について)
ここで、送風手段10からエア吹付手段5に供給する流量、つまり、枚葉紙Pに吹き付ける空気流量は一定でもよいが、枚葉紙Pに吹き付ける空気流量は調整できるようになっていることが好ましい。空気流量が調整できれば、枚葉紙Pの性質に応じて、より適切な流量の空気を枚葉紙P吹き付けることができるので、より確実に枚葉紙Pを圧胴102の表面に密着させておくことができる。
かかる空気流量を調整可能とする方法はとくに限定されず、例えば、送風手段10の出力を変化させて調整してもよいし、送風手段10とエア吹付手段5との間(例えば配管d)に、流量を調整する手段、例えば、流量調整弁などを設けて調整してもよい。
【0033】
なお、上記の送風手段10、または、送風手段10と流量を調整する手段が、特許請求の範囲にいう空気量調整手段に相当する。
また、エア吹付手段5には、圧胴102の軸方向の両端部から空気が供給されるようになっているが、空気はエア吹付手段5の一方の端部のみから供給してもよい。しかし、エア吹付手段5の両端から供給した場合には、圧胴102の軸方向位置により(つまり、空気が供給される端部からの距離により)、エア吹出口5hから吹き出す空気の流量が変化することを抑えることができる。
【0034】
(枚葉紙Pに対する空気吹き付け位置調整について)
また、エア吹付手段5は、枚葉紙Pに対して空気を吹き付ける位置を変化させることができるようにしてもよい。すると、検査する枚葉紙Pが変化した場合に、枚葉紙Pの性質に応じて空気を吹き付ける位置をより適切な位置に変えることによって、より確実に枚葉紙Pを圧胴102の表面に密着させておくことができる。
【0035】
枚葉紙Pに空気を吹き付ける位置を変化させる方法はとくに限定されないが、例えば、エア吹付手段5を圧胴102の表面に沿って移動させる方法や、エア吹付手段5と圧胴102の表面との距離を変化させる方法などを採用することができる。
【0036】
とくに、エア吹付手段5を圧胴102の表面に対して接近離間させる移動手段を設けて、エア吹付手段5と圧胴102の表面との距離を変化させるようにした場合には、枚葉紙Pとエア吹付手段5との干渉を防ぐことができるという効果も得ることができる。
【0037】
例えば、厚い枚葉紙P等のように、枚葉紙Pが硬い場合には、枚葉紙Pの後端が圧胴102とブラン胴102aとの間から離脱した直後に、枚葉紙Pの後端部分が圧胴102の表面から離れる跳ねが生じて、跳ねあがった枚葉紙Pの後端部分がエア吹付手段5と干渉する可能性がある。
しかし、移動手段によってエア吹付手段5と圧胴102の表面との距離を変化させれば、跳ねが生じても枚葉紙Pの後端部分がケース3等に干渉することを防ぐことができる。つまり、移動手段によって、エア吹付手段5と圧胴102の表面との距離を適切に調整すれば、枚葉紙Pを圧胴102の表面に密着させることができるとともに、跳ねが生じた場合における枚葉紙Pとエア吹付手段5との干渉も防ぐことができるのである。
【0038】
なお、より確実に枚葉紙Pを圧胴102の表面に密着させておくのであれば、枚葉紙Pに空気を吹き付ける位置と、枚葉紙Pに吹き付ける空気流量の両方を、枚葉紙Pの性質に応じて適切に調整することが望ましいのは、言うまでもない。
【0039】
例えば、枚葉紙Pの厚さが0.04〜0.08mm程度(坪量:50〜105g/m2程度)の場合において、上記角度αを45度、エア吹付手段5から圧胴102までの距離を15mmとして、撮影手段2の撮影位置の周囲に空気が吹付けられる状態とする。この状態で、エア吹出口5hから吹き出す空気流量を約4m/minとすれば、厚さが0.04〜0.08mm程度の枚葉紙Pを圧胴102の表面に密着させることができる。
また、枚葉紙Pの厚さが0.14〜0.25mm程度(坪量:150〜230g/m2程度)の場合において、上記角度αを45度、エア吹付手段5から圧胴102までの距離を30mmとして、撮影手段2の撮影位置よりも上流側に空気が吹付けられる状態とする。この状態で、エア吹出口5hから吹き出す空気流量を約5m/minとすれば、厚さが0.14〜0.25mm程度の枚葉紙Pを圧胴102の表面に密着させることができる。
さらに、上記2種類の枚葉紙Pの中間の厚さを有する枚葉紙P、つまり、枚葉紙Pの厚さが0.08〜0.14mm程度(坪量:105〜150g/m2程度)の場合には、上記角度αを45度、エア吹付手段5から圧胴102までの距離を30mmとして、撮影手段2の撮影位置よりも上流側に空気が吹付けられる状態とする。この状態で、エア吹出口5hから吹き出す空気流量を約4m/minとすれば、厚さが0.08〜0.14mm程度の枚葉紙Pを圧胴102の表面に密着させることができる。
【0040】
なお、移動手段は、エア吹付手段5だけを移動させるものでもよいし、ケース3ごと(つまり、光源4も一緒に)エア吹付手段5を移動させるものとしてもよい。ケース3ごと移動させた場合には、エア吹付手段5だけでなく、ケース3や光源4が枚葉紙Pと干渉することも防ぐことができるという利点が得られる。
【0041】
上述したエア吹付手段5やケース3の高さを調整する移動手段は、エア吹付手段5等の高さを調整できるものであればとくに限定されない。例えば、エア吹付手段5等を、予め定めた所定の高さ(例えば、高位置、中位置、低位置等)に保持できる保持部材を設け、作業者が適宜エア吹付手段5等を設置する位置を代えてもよい。
また、ボールネジ機構や、シリンダ機構によってエア吹付手段5等を移動させるようにしてもよい。
【0042】
(入力情報に基づくエア吹付手段5高さ、空気流量の自動調整)
上述したようなエア吹付手段5等の高さ調整や空気流量調整は、印刷する枚葉紙Pが変更されるたびに、その枚葉紙Pの性質に応じて、作業者が移動手段を作動させてエア吹付手段5等の高さを調整し、送風手段10等を操作して空気の流量を調整してもよい。
しかし、ボールネジ機構やシリンダ機構等の移動手段を設け、この移動手段および送風手段10等の作動を制御する制御手段を設ければ、印刷する枚葉紙Pを変更したときに、エア吹付手段5等の高さや空気流量の調整を簡単にすることができる。
【0043】
例えば、図2に示すように、制御手段20として、枚葉紙Pの情報を入力する入力部21と、移動手段および送風手段10等の作動を指示する作動指示部22と、入力部21から入力された入力情報に基づいて、作動指示部22が移動手段および送風手段10等の作動を指示するための作動指示情報を作成する指示情報作成部23とを有するものを使用することができる。
かかる制御手段20を設ければ、入力部21から枚葉紙Pの情報が制御手段20に入力されれば、指示情報作成部23によって作成された適切な作動指示情報に基づいて、作動指示部22の指示により、移動手段および送風手段10等の作動が調整される。すると、作業者が移動手段等を操作しなくても、エア吹付手段5等を適切な高さに配置することができるし、送風手段10等によって空気の流量も適切な流量に調整することができる。よって、印刷する枚葉紙Pの変更に伴う作業者の作業を軽減できるし、印刷する枚葉紙Pを変更する時間を短くでき、作業効率を高くすることができる。
【0044】
(測定情報に基づくケース3高さ、空気流量の自動調整)
さらに、上記例では、枚葉紙Pの情報が入力されると、制御手段20が移動手段および送風手段10等の作動を制御する場合を説明したが、印刷された枚葉紙Pを測定して、その測定情報に基づいて制御手段20が移動手段および送風手段10等の作動を制御するようにしてもよい。
【0045】
例えば、撮影手段2の撮影位置とブラン胴102が設けられている位置との間において、圧胴102の表面から枚葉紙Pの表面までの距離である跳ね量を検出する跳ね量検出手段を設け、この跳ね量検出手段が検出する跳ね量に基づいて、エア吹付手段5等の高さや空気の流量を制御するようにしてもよい。
この場合、実際に圧胴102上で発生した枚葉紙Pの跳ね量に応じて、エア吹付手段5等の高さや空気の流量を調整できる。すると、個々の枚葉紙Pの状態に適したエア吹付手段5の高さや空気流量とすることができるから、枚葉紙Pにしわができたり浮き上がりが生じたりすることをより確実に防ぐことができる。
【0046】
なお、跳ね量検出手段は、圧胴102の表面から枚葉紙Pの表面までの距離を測定できるものであればよい。例えば、レーザ距離計や超音波距離計等を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の印刷検査装置は、出版物やパッケージ等の枚葉紙を印刷する装置において、印刷の汚れや色むら等の異常を検出する装置に適している。
【符号の説明】
【0048】
1 印刷検査装置
2 撮影手段
3 ケース
4 光源
5 エア吹付手段
5h エア吹出口
10 送風手段
20 制御手段
21 入力部
22 作動指示部
23 指示情報作成部
102 圧胴
102a ブラン胴
P 枚葉紙
LA 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧胴と印刷胴との間に枚葉紙を通して該枚葉紙に印刷を行う印刷機に設けられる、印刷欠陥を検査する検査装置であって、
前記圧胴上を移動する前記枚葉紙の表面を撮影する撮影手段と、
前記圧胴上を移動する前記枚葉紙に対して空気を吹き付けるエア吹付手段とを備えており、
該エア吹付手段は、
前記撮影手段の撮影位置よりも前記枚葉紙の移動方向下流側に配設されており、
前記枚葉紙に吹き付けた空気が、前記枚葉紙の表面に沿って、前記枚葉紙の移動方向上流側に流れるようにエア吹付け角度が調整されている
ことを特徴とする印刷検査装置。
【請求項2】
前記エア吹付手段から前記枚葉紙に吹き付ける空気の流量を調整する空気量調整手段を備えている
ことを特徴とする請求項1記載の印刷検査装置。
【請求項3】
前記エア吹付手段から前記枚葉紙に空気を吹き付ける位置が前記圧胴の表面に沿って移動するように、前記エア吹付手段を移動させる移動手段を備えている
ことを特徴とする請求項1または2記載の印刷検査装置。
【請求項4】
前記移動手段が、前記エア吹付手段を前記圧胴に対して接近離間させるものであり、
前記圧胴上を移動する前記枚葉紙の情報に基づいて、該移動手段および前記空気量調整手段の作動を制御する制御手段を備えている
ことを特徴とする請求項2または3記載の印刷検査装置。
【請求項5】
前記撮影手段の撮影位置と、前記印刷胴が設けられている位置との間において、前記圧胴表面から前記枚葉紙表面までの距離である跳ね量を検出する跳ね量検出手段を備えており、
前記制御手段は、
前記跳ね量検出手段が検出する前記跳ね量に基づいて、前記移動手段および前記空気量調整手段の作動を制御するものである
ことを特徴とする請求項4記載の印刷検査装置。
【請求項6】
前記エア吹付手段と、前記圧胴上を移動する前記枚葉紙の表面に光を照射する光源とを収容したケースを備えており、
前記光源は、
該光源と前記エア吹付手段との間に前記撮影手段が前記枚葉紙の表面を撮影し得る隙間が形成されるように、前記エア吹付手段に対して前記印刷胴側に配設されている
ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の印刷検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−73421(P2011−73421A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230428(P2009−230428)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(591114641)株式会社ヒューテック (19)
【Fターム(参考)】