説明

印刷版における新規な層、印刷版、および印刷版の使用方法

放射線感受性媒体が親水性ポリマー粒子を含み、その粒子には、加熱により軟化させることが可能な疎水性ポリマー、親水性ポリマー、ならびに化学的に疎水性ポリマーに対しておよび親水性ポリマーに対して結合することが可能な結合性化合物が含まれる。その放射線感受性媒体にはさらに、照射線を熱に変換させることが可能な物質が含まれていてもよい。その放射線感受性媒体は、塗布、乾燥させたときには水不溶出性で、熱の作用を受けて疎水性となる。そのポリマー粒子は、親水性ポリマーの存在下に、少なくとも1種の疎水性モノマーと少なくとも1種の結合性化合物を重合させることにより製造する。その放射線感受性媒体は、プロセスレスで放射線による画像形成可能な平版印刷前駆体を形成させるために、基材に塗布してコーティングすることが可能な組成物として、供給することができる。そのようにして作製した、プロセスレスで放射線による画像形成可能な平版印刷前駆体は、像様に熱に変換される吸収放射線を用いて画像形成され、その結果疎水性を有する領域が形成され、その一方で、画像形成されない領域は親水性のままで残る。これによって、潜像を形成することが可能となり、それを用いて、ネガ作動性の平版印刷マスター版が作製される。そのようにして作製したネガ作動性の平版印刷マスター版は、元に戻ることはなく、親水性を調節した基材を必要とせず、その露光された領域では優れた靱性を備えている。その放射線感受性媒体は、印刷機のドラムも含めて、適切な基材の上に、プレートセッター上または印刷機上でコーティングすることができる。それはさらに、適切な基材の上に印刷機外でコーティングして、プレコートされたプロセスレスで放射線による画像形成可能な平版印刷前駆体を形成させることも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、米国仮出願特許第60/436,182号明細書(2003年4月14日出願)および米国特許出願第10/647,913号明細書(2003年8月25日出願)の利益を主張するものである。
本発明は、印刷版(printing plate)および印刷版前駆体(printing plate precursor)における画像形成、ならびに、洗い流し(wash−off)現像を必要とせず、電子的に構成されたデジタルソースから直接的に画像を形成することに関する。
【背景技術】
【0002】
電子的に構成されたデジタルデータベースから直接的に印刷画像を形成させることは、印刷業界における永年の目標の1つであって、そのようなものとしてはたとえば、いわゆる「コンピューター・トゥ・プレート(computer−to−plate)」システムがある。印刷版を作製する従来の方法に比較して、そのようなシステムが有利なのは、中間に使用する高価な銀含有フィルムや処理用化学薬品が不要であり;時間が節約でき;システムの自動化が可能で、その結果労務費を削減することができる点にある。
【0003】
レーザー技術の導入は、印刷版前駆体の複数の領域に連続的にレーザービームを直射し、またビームを変調することによりその強度を変化させて、印刷版前駆体の上に直接的に画像を形成させる、一つの契機となった。その方法では、高感度光架橋性ポリマーコーティングを含む放射線感受性印刷版を、各種のレーザー光源からの像様分布を有する放射線に露光させたり、可視スペクトル領域から近赤外領域までの範囲にわたる感度(感熱感度を含む)を有する電子写真の印刷版前駆体を、低出力の空冷アルゴンイオンレーザーおよび半導体レーザー装置を使用して満足のいくレベルに露光させたりしてきた。
【0004】
水性媒体、好ましくはアルカリ性の水性媒体を使用して露光後現像することが可能な平版(lithographic、リソグラフィック)印刷前駆体は周知であり、印刷業界において広く使用されているが、湿式オフセット印刷の際に使用される湿し水の作用によって印刷機上で現像することが可能な、より特殊な前駆体のサブセットが存在する。より新しいタイプの平版印刷媒体は、状況によっては親水性バインダーでもあるポリマー粒子を、多くの場合光を熱に変換する物質と共に使用するという、一般的な概念をベースにしている。この種の媒体の例は、米国特許第6,001,536号明細書に挙げられている。このタイプの媒体をベースとした平版印刷前駆体の非照射領域は、印刷機の上で湿し水(fountin solution)を用いた処理により除去することができる。したがってこの種の前駆体は、擬似プロセスレス(pseudo−processless)であって、この場合、マスター版を得るためには、特定の現像剤を用いる特定な個別の現像工程自体を必要としない。照射を受けた領域は疎水性となるので、そのため、そのマスター版は本質的にはネガ作動性(negative−working)である。それらの前駆体によって、平版印刷のマスター版を印刷機上で比較的容易に作成することが可能となるが、可使時間(run length)が短いという難点がある。得られる印刷画像の品質は、使用する親水性基材(substrate、基板、担体、被印刷物、下地)の選択と品質に直接依存するが、その理由は、湿式オフセット印刷工程の際に、その基材が湿し水に暴露され、それを保持しなければならないからである。
【0005】
さらに特定のカテゴリーの平版印刷前駆体においては、基材上の感受性層を親水性と疎水性との間で転換させられるようにした、メカニズムと組成物を使用して、現像工程で除去する必要がある物質を一切含まない。すなわち、湿し水によるものも含めて、物質の除去が一切ない。それらが、真のプロセスレス前駆体である。
【0006】
例を挙げれば、米国特許第6,410,202号明細書には、ポリマー骨格の内部またはポリマー骨格に化学的に結合された繰り返しイオン性基を有する、親水性感熱性ポリマーを含む、感熱画像形成のための組成物が記載されている。上述のこの発明の画像形成部材では、画像形成後の湿式加工を必要とせず、一般には本質的にネガ作動性である。場合によってはそのポリマーを露光により架橋させて、その画像形成部材の耐久性を向上させる。また別で好ましいケースとしては、ポリマーを支持体に塗布し、硬化する際に、架橋させる。このタイプの前駆体のさらなる例は、米国特許第5,985,514号明細書にも見ることができる。その特許には、加熱により活性化させることが可能なチオスルフェート基を含む親水性感熱性ポリマーを有する親水性画像形成層と、場合によっては光熱変換物質とからなる、画像形成部材が記載されている。たとえばIR照射のような、熱を発生させるようなエネルギーを与えることによって、そのポリマーが架橋して、より疎水性となる。露光された画像形成部材は、画像形成後の湿式加工をしてもしなくてもよいが、平版印刷インキと湿し水とに接触させ、印刷に使用することができる。米国特許第4,081,572号明細書には、親水性印刷マスター版の作製についての記載があり、それには、カルボン酸官能基を含む特定の親水性ポリマーを用いて自立性のマスター版基材をコーティングする工程と、加熱によりこのポリマーを、画像の形状に合わせて疎水性条件へと選択的に変換させる工程とが含まれる。そのポリマーが、画像の形状に合わせて疎水性条件へと選択的に変換されるのは、加熱により誘導される脱水環化反応による。また別な例においては、その前駆体が本質的にポジ作動性である場合で、たとえば米国特許第4,634,659号明細書に記載がある。上述の特許には、加工を必要としない平版印刷版を作製する方法が記載されていて、それには、放射線に暴露させることにより疎水性から親水性へと変換することが可能な疎水性有機化合物を含む印刷版表面に照射する工程と、像様に露光を実施してそれにより、前記表面を像様に、疎水性から親水性へと選択的に変換を起こさせて、それによりその前駆体をポジ作動性とする工程とが含まれる。
【0007】
真のプロセスレス平版印刷前駆体のさらに特殊なカテゴリーとしては、ポリマーをベースとした粒子またはマイクロカプセルを含む媒体をベースとするものがある。
【0008】
米国特許第6,550,237号明細書には、ネガ作動性、非アブレーション性の平版印刷版を作製するための感熱性物質の記載があり、それには、親水性の金属支持体の表面上で、感熱層の中に、熱可塑性ポリマービーズと光を熱に変換することが可能な化合物とを含んでいる。その層にはバインダーは含まれず、熱可塑性ポリマービーズの直径が0.2μm〜1.4μmの間であることを特徴としている。その熱可塑性プラスチック粒子が特定の粒径範囲を有していなければならないという点に、議論の余地がある。ポリマー粒子をコアギュレーション温度よりも高い温度にすると、それらがコアギュレートして疎水性のアグロメレートを形成し、そのために、その部分で金属支持体が疎水性かつ親油性になる、と説明されている。そのポリマー粒子は、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルカルバゾールなど、コポリマーまたはそれらの混合物からなる群より選択されるのが好ましい。使用するのに最も好ましいのは、ポリスチレン、ポリアクリレートまたはそれらのコポリマー、およびポリエステルまたはフェノール樹脂である。そのポリマー粒子が親水性であるべきであるとか、その粒子の中には2種以上のポリマーが存在していてもよいとかについては、何の示唆も与えられていない。
【0009】
欧州特許出願第01057622号明細書には、現像工程を必要としない平版印刷版前駆体が記載されている。それに含まれるのは、親水性媒体を含む層をその上に備えた支持体であって、ここで親水性媒体を含むその層には、親水性表面を有する疎水化前駆体と、光/熱変換剤とを含み、その光/熱変換剤はそれ自体、あるいは少なくともその表面が親水性である。親水性表面を有する疎水化前駆体が、コア部分に疎水性物質を含み特別に表面親水性の表面層を有する複合材料構成の粒子分散体であるような、その発明の各種の実施態様が提示されている。開示されている粒子の形態はすべて、1種または2種のいずれかの異なった材料からなっている。コアは、疎水性のポリマー材料や架橋性物質を含め、各種の物質であってよい。特に親水性になるように選択された光熱変換物質も添加されている。
【0010】
米国特許第5,569,573号明細書には、感熱性平版印刷原版が記載されていて、それに含まれるのは、基材、親水性バインダーポリマーを含む親水性層、および加熱により画像領域を形成するマイクロカプセル化した親油性物質であって;その親水性バインダーポリマーは、三次元架橋を有し、またマイクロカプセルが破裂したときに、マイクロカプセルの中の親油性物質と化学的に結合する官能基とを有し、また、そのマイクロカプセル化した親油性物質は、マイクロカプセルが破裂したときに、親水性バインダーポリマーと化学的に結合する官能基を有している。多くの親水性バインダーポリマーの中で、多糖類がリストアップされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ネガ作動性(negative−working)であって、真のプロセスレスである平版印刷前駆体で、長い可使時間とレーザーダイオード系の画像形成放射線に対する好適な感度とを有し、調製が容易で、好ましくは水性媒体から調製できるようなものが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
放射線感受性媒体が親水性ポリマー粒子を含み、その粒子には、加熱により軟化させることが可能な疎水性ポリマー、親水性ポリマー、ならびに化学的に疎水性ポリマーに対しておよび親水性ポリマーに対して結合することが可能な結合性化合物が含まれる。
【0013】
その放射線感受性媒体にはさらに、照射線を熱に変換させることが可能な物質が含まれていてもよい。その放射線感受性媒体は、塗布、乾燥させたときには水不溶出性(aqueous−ineluable)で、熱をかけることにより疎水性となる。そのポリマー粒子は、親水性ポリマーの存在下に、少なくとも1種の疎水性モノマーと少なくとも1種の結合性化合物を重合させることにより作る。その放射線感受性媒体は、プロセスレスで放射線による画像形成可能な平版印刷前駆体を形成させるために、基材に塗布してコーティングすることが可能な組成物として、供給することができる。そのようにして作製した、プロセスレスで放射線による画像形成可能な平版印刷前駆体は、像様に熱に変換される吸収放射線を用いて画像形成され、その結果疎水性を有する領域が形成され、その一方で、画像形成されない領域は親水性のままで残る。これによって、潜像を形成することが可能となり、それを用いて、ネガ作動性の平版印刷マスター版を作製する。そのようにして作製したネガ作動性の平版印刷マスター版は、元に戻ることはなく、親水性を調節した基材を必要とせず、その露光された領域では優れた靱性を備えている。その放射線感受性媒体は、印刷機のドラムも含めて、適切な基材の上に、プレートセッター上(on−platesetter)または印刷機上(on−press)でコーティングすることができる。本発明の放射線感受性媒体は、適切な基材の上に、印刷機外(off−press)でコーティングして、プレコートされたプロセスレスで放射線による画像形成可能な平版印刷前駆体を作製することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の第一の態様においては、親水性ポリマー粒子を含む放射線感受性媒体(radiation sensitive medium)が提供され、その粒子には、加熱により軟化させることが可能な疎水性ポリマー、親水性ポリマー、ならびに化学的に疎水性ポリマーに対しておよび親水性ポリマーに対して結合することが可能な結合性化合物が含まれる。その放射線感受性媒体にはさらに、照射線を熱に変換させることが可能な物質が含まれていてもよい。その放射線感受性媒体は、塗布、乾燥させたときには水不溶出性で、熱をかけることにより疎水性となる。
【0015】
本発明のさらなる態様においては、親水性ポリマーの存在下に、少なくとも1種の疎水性モノマーと少なくとも1種の結合性化合物とを重合させることにより、本発明の放射線感受性媒体を作るための方法が提供される。
【0016】
本発明のさらなる態様においては、プロセスレスで放射線による画像形成可能な平版印刷前駆体を作るための方法が提供され、それには、基材の上に本発明の放射線感受性媒体をコーティングする工程と、前記コーティングされた放射線感受性媒体を乾燥させる工程とが含まれる。
【0017】
本発明のさらなる態様においては、プレコートされた、プロセスレスで放射線による画像形成可能な平版印刷前駆体が提供され、それには、本発明の放射線感受性媒体を基材の上にプレコートし、乾燥させることが含まれる。
【0018】
本発明のまたさらなる態様においては、プレコートされたプロセスレスで放射線による画像形成可能な平版印刷前駆体を用いて、ネガ作動性の平版印刷マスター版を作製する方法が提供される。プレコートされたプロセスレスで放射線による画像形成可能な平版印刷前駆体は、像様に熱に変換される吸収放射線を用いて画像形成させ、その結果親水性領域を疎水性領域へと転換させ、親水性の領域と疎水性の領域を得ることができる。これによって、潜像を形成することが可能となり、それを用いて、ネガ作動性の平版印刷マスター版を作製する。この画像形成方法は、一旦実施すれば、元には戻らない。すなわち、塗布、乾燥させた放射線感受性媒体は、画像形成放射線に対して像様に露光させた後でも、疎水性を維持する。この方法は、印刷版硬化装置上でも、あるいは完全に印刷機上でも、実施することができる。
【0019】
定義:
本明細書で使用する場合、「ネガ作動性の平版印刷マスター版(negative−working lithographic printing master)」という用語は、版上では、マスター版から印刷インキを受け取るための印刷媒体へと印刷インキを転写させる過程の間に、その印刷インキが、照射されたり、いかなる方法であれ画像形成ヘッドにより書き込まれた領域には付着し、それとは逆に、照射されなかったり、いかなる方法であり画像形成ヘッドで書き込みをされていない領域には印刷インキが付着しないような、平版印刷マスター版を表している。したがって、そのマスター版がネガ作動性とみなされるかあるいはポジ作動性とみなされるかは、マスター版の上にインキ担持およびインキ非担持領域を作製する手段によって決まるのではなく、むしろ、画像形成ヘッドからマスター版に転写されるのが、印刷インキを受け取るために印刷媒体の上に作製されるポジ画像であるかまたはそのネガ画像であるか、それぞれによって決まるのである。簡単に言えば、「ネガ作動性の平版印刷マスター版」の上では、画像形成ヘッドによって書き込まれた領域が印刷インキを保持する。
【0020】
本明細書で使用する場合、「プロセスレスで放射線による画像形成可能な平版印刷前駆体(processless radiation−imageable lithographic printing precursor)」という表現は、平版印刷マスター版を形成させるために前駆体を放射線に像様に露光させた後で、その前駆体のいかなる部分からも像様を除去したり、その部分に像様を追加したりする必要のない、放射線による画像形成可能な平版印刷前駆体を表している。
【0021】
本明細書で使用する場合、「プレコートされたプロセスレスで放射線による画像形成可能な平版印刷前駆体(precoated processless radiation−imageable lithographic printing precursor)」という表現は、基材の上にコーティングされた放射線感受性媒体を含むプロセスレスな平版印刷前駆体を表している。
【0022】
その基材には具体的には印刷機のドラムまたはスリーブも含まれていてもよく、そのドラムまたはスリーブが、放射線感受性媒体でプレコートされるか、または放射線感受性媒体と粘着促進層とでプレコートされる。
【0023】
「溶出剤(eluent)」という用語は、放射線感受性媒体を溶解させるか、または別な方法としてはパターン化されていないコーティングを分散形態とすることが可能な、各種流体(液体であっても気体であってもよい)を指す。
【0024】
「分散可能な(dispersible)」という用語は、ある物質の層に関して、その物質が流体の物理的または化学的な作用によって、置きかえ、除去(剥離を含む)されることが可能であることを意味している。
【0025】
「水不溶出性(aqueous−ineluable)」という用語は、基材の上にコーティングした放射線感受性媒体の性質を表すのに用い、その場合、その放射線感受性媒体は水性溶出剤によって溶解されず、それとは別に、分散されることもない。忘れてはならないのは、どの物質であっても、ほとんどの場合エッチングされたり溶解されたりすることで、そのため、この用語は、層を処理する際に使用することを目的とした流体(たとえば、水、低アルカリ含有水溶液、酸性溶液、少量の有機化合物たとえば10%イソプロパノールまたはメトキシプロパノールを含む水溶液、およびその他、印刷機に使用する湿し水など)に関してのみ適用することとする。
【0026】
本明細書で使用する場合「糖類(saccharide)」という用語は、IUPACで定義されているように、単糖類、二糖類、オリゴ糖類および多糖類を含み、その二糖類、オリゴ糖類および多糖類は、互いにグルコシド結合で結合された複数の単糖単位から形成されている。
【0027】
放射線感受性媒体の組成
本発明の第一の実施態様においては、放射線感受性媒体には連続相と親水性ポリマー粒子が含まれる。その親水性ポリマー粒子には、加熱により軟化させることが可能な疎水性ポリマー、親水性ポリマー、および化学的に疎水性ポリマーと結合および親水性ポリマーと結合することが可能な結合性化合物が含まれる。そのポリマー粒子は、親水性ポリマーの存在下に、少なくとも1種の疎水性モノマーと少なくとも1種の結合性化合物を重合させることにより作る。本発明の放射線感受性媒体は、コーティングし、そして乾燥させた場合、水不溶出性であり、放射線感受性媒体の層は、像様に熱に変換される吸収放射線を用いて画像形成された場合には、疎水性となる。放射線を熱に変換することが可能な物質をその組成物に添加して、好適な放射線感受性媒体を形成するのが好ましい。
【0028】
親水性ポリマー粒子は実質的な深さまで親水性で、その粒子のコア部分のみが疎水性である。「実質的な深さ(substantial depth)」という用語は、本発明によるコーティングした前駆体から作製した平版印刷マスター版を印刷に使用した場合に、そのコーティングの親水性領域がその粒子の疎水性コアを露出させ、それによって、印刷品質に重大な程度までの悪影響を与える程には侵食されることがないほどに、充分に深い深さを意味する。実質的な深さにまで親水性であるということは、欧州特許出願第01057622号明細書に記載されている各種の粒子のタイプ(それらは、全体が親水性であるか、またはほんの表面的な親水性表面領域またはコーティングを有している)とは対照的な立場にある。米国特許第6,550,237号明細書に開示されている疎水性粒子に比較して、本発明のポリマー粒子は明らかに親水性である。いかなる点においても本発明が限定されることを望むものではないが、その粒子のコアは疎水性モノマーから誘導された疎水性ポリマーが支配的であるのに対して、どの粒子もその大部分では親水性ポリマーが支配的であると、本願発明者らは考えている。結合性化合物(それ自体は、ポリマーとして親水性であるのが好ましい)を用いた、疎水性モノマーと親水性ポリマーの両方のコポリマーとなっている転移領域が存在していて、それによって、3つの領域、すなわち、内側の疎水性コア、好適な結合性化合物の性質のためにほとんど親水性である転移領域、および親水性ポリマーが支配的である粒子の本体部分、を有する粒子が形成されていると考えられる。
【0029】
本発明の疎水性モノマーは、電子的に中性なエチレン性不飽和モノマー、たとえばエチレン、プロピレン、スチレン、その他のビニルモノマー(たとえば、メタクリル酸メチル)、およびそれらエチレン性不飽和モノマーの電子的に中性な誘導体から選択する。「電子的に中性な」という用語は当業者には周知のものであって、主として非極性の化合物を含むが、ただし、内部的には電荷の分布を有するが全体としては中性(たとえば双生イオン)なモノマーもこれに含める。
【0030】
本発明の結合性化合物は、水溶性/水分散性エチレン性不飽和モノマーのタイプ、特にアクリロイルまたはメタクリロイルモノマーおよびアニオン置換したスチレンモノマー、特にアクリル系の酸(すなわち、アクリル酸、ならびにメタクリル酸およびその他の置換アクリル酸)およびスルホン化またはホスホン化スチレン(たとえば、アルカリもしくはアルカリ金属またはアンモニウム対イオン、たとえばNa、Li、Kなどを持つもの)から選択するのが好ましい。
【0031】
本発明の親水性ポリマーは、キトサンポリマー(本明細書に記載するような誘導化キトサンを含む)、ポリエチレンイミン樹脂、ポリアミン樹脂(たとえばポリビニルアミンポリマー、ポリアリルアミンポリマー、ポリジアリルアミン樹脂およびアミノ(メタ)アクリレートポリマー)、ポリアミド樹脂、ポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂、ポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂、ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂、さらにはジシアンジアミド−重縮合生成物(たとえば、ポリアルキレンポリアミン−ジシアンジアミドコポリマー)から選択するのが好ましい。それらのポリマーは単独で使用してもよいし、あるいは混合物や2種以上のそれらのコポリマーとして使用してもよい。ポリマーの分子量は、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは5,000〜200,000である。親水性ポリマーの含量は、画像形成層の全重量を基準にして5〜65重量%とするのが好ましい。
【0032】
本発明の親水性ポリマーには、糖類、たとえばセルロースもしくはデンプン、またはそれらのと糖類の混合物を含んでいてもよい。本発明では、親水性ポリマーが、親水性カチオン性樹脂と糖類の混合物からなっていてもよい。さらに、本発明の親水性ポリマーは、糖類の誘導体、およびそれらと1種または複数のその他の親水性カチオン性樹脂と糖類との混合物であってもよい。
【0033】
本発明の1つの実施態様においては、コーティング可能な組成物には、水性キャリヤー中のラテックスを含み、そのラテックスには、溶解させたキトサン、および粒子が含まれ、その粒子には加熱により軟化させることが可能な疎水性ポリマー、親水性ポリマー、およびその疎水性ポリマーと親水性ポリマーとを結合させる結合性化合物を含む。したがって、この実施態様においては、親水性ポリマー粒子の親水性ポリマーとして存在しうるキトサンに加えて、溶解されたキトサンも存在する。この組成物にはさらに、画像形成工程および/またはコーティング工程に役立たせるための、添加剤が含まれていてもよい。たとえば、画像形成放射線を熱に変換させることが可能な物質はこの組成物にとって特に望ましいものであって、それによって、画像形成放射線が効果的に吸収され、熱に変換されて、ポリマー粒子の軟化と合着(coalescing)が促進される。この組成物には、放射線を熱に変換することが可能な物質を、固形分の少なくとも0.05〜10重量%の量で含んでいるのが好ましい。放射線を熱に変換することが可能な物質は、顔料たとえばカーボンブラックであってもよいし、染料であってもよいが、これに限定される訳ではない。赤外(IR)レーザーと共に使用するには、赤外および近赤外(NIR)染料が特に適している。
【0034】
本発明の好ましい実施態様においては、その放射線を熱に変換することが可能な物質は、700nm〜1200nmの範囲、より好ましくは800nm〜1100nmの範囲、最も好ましくは800nm〜850nmの範囲の放射線を吸収し、それを熱に変換する。そのような物質の例は、マツオカ・ケン(Matsuoka,Ken)『JOEMハンドブック(JOEM Handbook)2、アブソープション・スペクトラ・オブ・ダイズ・フォア・ダイオード・レーザーズ(Absorption Spectra of Dyes for Diode Lasers)』(ブンシン・シュッパン(bunshin Shuppan)、1990)、およびCMC・エディトリアル・デパートメント(CMC Editorial Department)『ディベロップメント・アンド・マーケット・トレンド・オブ・フアンクショナル・カラーリング・マテリアルズ・イン・1990ズ(Development and Market Trend of Functional Colouring Materials in 1990’s)』第2章2.3(CMC、1990)に開示があり、たとえば、ポリメチンタイプの着色物質、フタロシアニンタイプの着色物質、ジチオール金属錯体塩タイプの着色物質、アントラキノンタイプの着色物質、トリフェニルメタンタイプの着色物質、アゾタイプの分散染料、および分子間CT着色物質などが挙げられる。代表例としては、N−[4−[5−(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)−2,4−ペンタジエニリデン]−3−メチル−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−N,N−ジメチルアンモニウムアセテート、N−[4−[5−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−フェニル−2−ペンテン−4−イン−1−イリデン]−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−N,N’−ジメチルアンモニウムペルクロレート、ビス(ジクロロベンゼン−1,2−ジチオール)ニッケル(2:1)テトラブチルアンモニウム、およびポリビニルカルバゾール−2,3−ジシアノ−5−ニトロ−1,4−ナフトキノン錯体などが挙げられる。放射線を熱に変換することが可能な物質として用いることが可能な商品の具体的な例をいくつか挙げると、英国ランカシャー・ブラックレー(Blackley,Lancashire,U.K.)のアベシア(Avecia)からのプロ−ジェット(Pro−jet)830NP(変性銅フタロシアニン)や、カナダ国ケベック・モントリオール(Montreal,Quebec,Canada)のアメリカン・ダイ・ソース・インコーポレーテッド(American Dye Source Inc.)からのADS830A(赤外吸収性染料)などがある。これらの染料の疎水性の形態が特に好ましいが、その理由は、その性質によって、それらの染料が粒子の疎水性の態様に、よりなじみやすくなり、それによって、平版基板の上にコーティングされた媒体を照射して、放射線が吸収されて熱に変換されたときに、熱が、加熱により軟化させることが可能な疎水性ポリマーへと転移しやすくなる。
【0035】
共溶媒(cosolvent)(たとえば、アルコール、ケトン、およびその他の有機溶媒)、界面活性剤、発泡剤、およびフィラー(たとえば、シリカ、チタニア、酸化亜鉛、ジルコニアなど)もまた有用な添加剤であって、非限定的に例を挙げれば、全固形分の25重量%までの量で存在させることができる。体積平均粒径が0.01〜0.5マイクロメートルの間であるフィラー粒子を使用するのが好ましく、ポリマー粒子の体積平均サイズの50%未満であるのが特に望ましい。特に、金属もしくは半金属酸化物またはシリカのような無機フィラー粒子を使用する場合には、そのような粒子は、本発明の放射線感受性媒体から調製された平版印刷マスター版に、印刷機上における驚くべきほど高レベルの耐久性を与えることができる。
【0036】
好ましくは、粒子の加熱により軟化させることが可能な疎水性ポリマー成分を構成する1種または複数のポリマーは、周囲温度(たとえば、20℃)より高い成膜温度を有し、加熱により軟化させることが可能または加熱により溶融させることが可能なポリマーを含んでいるのがよく、そして、非限定的に例を挙げれば、スチレン、置換スチレン、(メタ)アクリル酸のエステル、ハロゲン化ビニル、(メタ)アクリロニトリル、ビニルエステル、ケイ素含有重合性モノマー、またはポリエーテルの1種または複数から誘導される残基を含む付加ポリマーであってもよい。さらに、それはポリエステル、ポリアミドまたはポリウレタンであってもよいし、あるいは、1種または複数のアニオン性モノマーを用いて重合することにより、疎水性中心/親水性外側層の構造を形成することが可能な、加熱により溶融させることが可能な親油性物質または組成物であってもよい。好ましい物質は、50重量%以上のスチレンまたは置換スチレンを含む付加ポリマーである。最も好ましい物質は、50重量%以上の(メタ)アクリル酸のエステルを含むポリマーである。ポリマー粒子の疎水性中心は、好ましくはたとえば30℃〜300℃、より好ましくは50℃〜200℃の温度で軟化して、それにより、粒子の内部または粒子の間で、合着(coalescence)、流動、相変化あるいは各種のその他の現象が起きることが可能となり、その層の表面における親水性を低下させる効果を発揮する。好適な(メタ)アクリル酸のエステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、および(メタ)アクリル酸ラウリルなどが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。好適な置換スチレンの例としては、アルファメチルスチレンおよびビニルトルエンなどが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。好適な置換ビニルエステルの例としては、酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニルなどが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。好適なハロゲン化ビニルの例としては、塩化ビニルおよび塩化ビニリデンなどが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0037】
それらのモノマーと共に使用されるコモノマー(co―monomers)としては、50重量%までの炭素−炭素二重結合を有する重合性モノマーを含むことができるが、そのようなモノマーを非限定的に挙げれば、たとえば各種のタイプのカルボキシル基を有するモノマー、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸およびそれらの塩;各種のタイプのヒドロキシル基を有するモノマー、たとえば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、フマル酸モノブチルヒドロキシルおよびイタコン酸モノブチルヒドロキシル;各種のタイプの窒素含有ビニルモノマー、たとえば(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド;スルホンアミド−またはリン−含有ビニルモノマー;各種のタイプの共役ジエン、たとえばブタジエン;ヒドロキシル基含有ポリマーのジカルボン酸ハーフエステル、たとえばポリビニルアセタール、特にポリビニルブチラールのフタル酸、コハク酸またはマレイン酸ハーフエステル;およびスチレン−またはアルキルビニルエーテル−無水マレイン酸コポリマーのアルキルまたはアラルキルハーフエステル、特にスチレン−無水マレイン酸コポリマーのアルキルハーフエステルなどがある。
【0038】
本発明の1つの好ましい実施態様においては、その親水性ポリマーがキトサンであって、キトサンは通常、キチンから調製される。キトサン、アミノポリ糖類は生体適合性がある。自然界には豊富に存在しているにも関わらず、キチンは、水溶液への溶解性が低いために、効果的に使用されることがこれまでなかった。その問題のために、キチンを繊維やフィルムに成形することが困難で、そのために用途が限られていた。この問題を解決するための努力の中で、キチンをキトサンに変換することがしばしば行われる。キチンをキトサンに変換させるためには、脱アセチル化技術が一般に使用される。米国特許第3,533,940号明細書には、キチンからキトサンを調製する方法とともに、繊維およびフィルムへの利用が開示されている。応用できるようにするためには、調製したキトサンを水性有機溶液の中に溶解させる。
【0039】
本発明の実施において、キトサンには、その親水性表面の性質が維持される限りにおいて、広い範囲の各種性質を与えることができる。本発明を実施するのに特に有用なキトサンのタイプの例を、非限定的に挙げれば、分子量が5,000〜500,000、より好ましくは5,000〜200,000の範囲で、その脱アセチル化度が60〜99%、より好ましくは70〜95%の範囲のキトサンである。キトサンはさらに、コーティング組成物において、加熱により軟化または溶融させることが可能なポリマー粒子のための乳化剤としても役立つ。
【0040】
放射線感受性媒体の合成
本発明の放射線感受性媒体を合成するための好ましい方法は、以下の工程を経て実施する。親水性ポリマーとしてキトサンを用いて説明するが、これに限定される訳ではない。親水性ポリマーを適切な溶媒に溶解させて、疎水性モノマーを添加する。重合開始剤はそれらの工程のいずれにおいて添加してもよい。得られた混合物を加熱して重合させる。結合性化合物は、疎水性モノマーの重合の間に加えても、重合後に加えてもよい。放射線を熱に変換することが可能な物質を添加してからコーティングする。合成の各種の工程で、少量の共溶媒、発泡剤、フィラーおよび界面活性剤を加えることができる。
【0041】
キトサンを溶解させるが疎水性モノマーは溶解しない溶媒であって、水性の酸性溶液、無機塩水溶液および有機溶媒から選択されるいかなる溶媒を用いてもよい。本発明を実施するのには望ましい方法である、水性の酸性溶液を得るために、有機酸たとえば酢酸および乳酸、ならびに無機酸たとえば塩酸からなる群より選択される0.1〜20重量%の酸を含む水を添加する。キトサンを溶解させるのに役立つ、使用可能な無機塩溶液としては、非限定的に例を挙げれば、水中に10〜70重量%の無機塩を含むものがある。その無機塩は、アルカリ金属(たとえば、ナトリウム)チオシアネート、金属塩化物(たとえば、塩化亜鉛、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、およびそれらの混合物)からなる群より選択するのが特に望ましい。本発明において溶解されたキトサンを搬送するのに有用な有機溶媒は極性のものであって、その例としては、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジエチルアセトアミド、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、およびそれらの混合物などが挙げられる。極性を高くするために、上述の無機金属塩から選択される1種または複数を、0.1〜10重量%の量で有機溶媒に添加することができる。
【0042】
重合はウェン−エン・チュー(Wen−Yen Chiu)ら、ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス・A(ポリマー・ケミストリー)(Journal of Polymer Science A(Polymer Chemistry))第39巻、2001、p.1646〜1655の記載に従った方法で実施することができる。コモノマー、たとえば(メタ)アクリル酸を、疎水性ポリマー組成物の主成分、たとえば、スチレンまたはメタクリル酸メチルと共に共重合させることができる。その重合方法においては、重合開始剤(たとえば、過硫酸塩−メタ重亜硫酸塩)は存在させなければならない。ラジカル重合のためのその他一般的に公知の重合開始剤を使用しても満足のいくポリマーを得ることが可能であるが、それについては、オディアン(Odian)『プリンシプルズ・オブ・ポリメリゼーション(Principles of Polymerization)第3版』(ジョン・ワイリー・アンド・ソンズ(John Wiley & Sons)、ニューヨーク(NY)、1991)のp.212〜215、219〜225および229〜232に記載がある。
【0043】
重合後の混合物には通常、以下のものが含まれる:
*溶媒(全混合物中40〜97%(重量/重量))
*過剰に溶解されている親水性可溶性(hydrophilic solubilizable)ポリマー(全混合物中0.01〜50%(重量/重量))
*電子的に中性の疎水性ポリマーを含む粒子(全混合物中10〜59%(重量/重量))。
重合後の混合物には、連続相と分散相が含まれ、その分散相には、50〜100%(重量/重量)の重合された電子的に中性の疎水性モノマーと、0〜50%(重量/重量)の重合されたアニオン性モノマーとが含まれる。その重合後の混合物には、0.01〜5ミクロンの粒径の、懸濁固形分が含まれていてよい。
【0044】
少量の添加剤を、重合または粒子形成プロセスの各種工程で添加することができる。界面活性剤(たとえば、シリコーン−ポリオール)を添加して、その組成物を表面上にコーティングする際の成膜品質を改良することができる。可塑剤を加えることもでき、添加のタイミングは、その組成物をコーティングする前ならいつでもよいが、ただしコーティングする前に存在させておくのが好ましく、それによって、ポリマーと混合できるようになる。
【0045】
さらなる工程において、放射線を熱に変換することが可能な固形物質を、0.05〜10%(重量/重量)加える。その他の添加剤、たとえば共溶媒、界面活性剤、発泡剤およびフィラーを固形分の0〜25%(重量/重量)の量で添加することができる。
【0046】
プレコートされたプロセスレスで放射線による画像形成可能な平版印刷前駆体の調製
印刷版前駆体およびその他の金属、プラスチック、セラミックおよび紙製品を製造する際に使用される、標準的なコーティングおよび乾燥方法によって、放射線感受性媒体を基材に塗布し乾燥させて、放射線による画像形成可能な層を形成させる。使用する基材物質は、その画像を使用する目的によって異なるが、たとえば、金属、ポリマー物質(たとえば、PETであるが、これに限らない)、紙、セラミックまたは複合材料から形成されたものでよい。基材としてはアルミニウムが好ましく、より好ましくは化学処理アルミニウム、砂目をたてた(grained)アルミニウム、陽極処理アルミニウム、アルミニウムでコーティングした基材、またはそれらの組合せである。その基材は印刷機に容易に取り付けられるよう、充分な可撓性を有しているのが好ましい。本発明のプレコートされたプロセスレスで放射線による画像形成可能な平版印刷前駆体が、基材に対して、水保持性または水付着性をなんら要求しない範囲において、その基材が印刷の際に露出されることがなく、基材を構成する材料の選択の範囲は広くとることができる。
【0047】
本発明に関わる別な実施態様においては、その基材に、可撓性の支持体、たとえば、架橋ポリマーの粘着促進層をさらに有する紙またはプラスチックフィルムが含まれていてもよい。好適な架橋親水性層は、架橋剤たとえば、加水分解テトラアルキルオルトシリケート、ホルムアルデヒド、グリオキサールまたはポリイソシアネートを用いて硬化させた親水性(コ)ポリマーから得ることができる。特に好ましいのは、加水分解テトラアルキルオルトシリケートである。本発明の目的のためには、この層は、放射線感受性媒体によって濡らすことが可能で、良好な品質のコーティングが得られるようなものとしなければならず、したがって通常は親水性である。使用することが可能なその親水性(コ)ポリマーとしては、たとえば、ビニルアルコール、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メチロールアクリルアミドまたはメチロールメタクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマーを挙げることができる。使用する(コ)ポリマーまたは(コ)ポリマー混合物の親水性は、少なくとも60重量パーセント、好ましくは80重量パーセント程度に加水分解させたポリ酢酸ビニルの親水性よりも高いのが好ましい。
【0048】
本発明のさらなる実施態様においては、粘着促進層を基材の上にコーティングする。本発明において使用するのに好適な粘着促進層には、欧州特許第619524号明細書および欧州特許第619525号明細書に開示されているような、親水性の(コ)ポリマーバインダーとコロイダルシリカとが含まれる。粘着促進層の中のシリカの量は、0.2〜0.7mg/mとするのが好ましい。さらに、シリカの親水性(コ)ポリマーバインダーに対する比は、1より大きいのが好ましく、またコロイダルシリカの表面積は、少なくとも300m/グラムであるのが好ましい。
【0049】
ネガ作動性の平版印刷マスター版の調製
ネガ作動性の平版印刷マスター版の調製は、プレートセッター設備上または印刷機の上で直接実施することができる。いずれも場合においても、本発明のプレコートされたプロセスレスで放射線による画像形成可能な平版印刷前駆体をプレートセッターまたは印刷機の上に取り付ける。別な方法として、いずれの設備においても、基材を取り付けておいてから、その基材に放射線感受性媒体を塗布することもできる。基材を印刷機と一体になった部分としてもよいし、あるいは、印刷機の上に取り外し可能に取り付けてもよい。この実施態様においては、米国特許第5,713,287号明細書(ゲルバート(Gelbart))の記載にあるように、画像形成可能なコーティングを印刷機と一体となった硬化ユニットの手段を用いて乾燥させることも可能である。印刷機のシリンダーを、そのシリンダーを印刷機から分離した際に、放射線感受性媒体の層でコーティングすることもまた可能である。プレコートされていない実施態様のいずれにおいても、基材に画像形成可能なコーティングを塗布する前に、その画像形成可能なコーティングへの粘着性を向上させるような処理をその基材にしておくこともできる。
【0050】
本発明の好ましい実施態様においては、コーティングの放射線感受性媒体を、コーティング内で空間的に対応する像様に熱を発生させる手段によって像様に変換させ、それによって像様の照射を受けた領域に対応する疎水性領域を形成させる。その画像形成プロセスそのものは、米国特許第5,713,287号明細書に記載されているような、走査レーザー照射の手段によるものであってもよい。そのレーザー光の波長と、変換剤物質の吸収範囲は、それぞれ互いにマッチするように選択する。前駆体の照射された領域を親水性から疎水性へと変換させるプロセスを進めるための熱は、放射線を熱に変換させることが可能な物質を介して作る。本発明の放射線感受性媒体は、適切な基材の上に塗布、乾燥させると、それによって、熱の作用のもとでは疎水性となる。それに続く湿式平版オフセット印刷の際に、その画像形成可能なコーティングの露光された領域は疎水性となり、平版印刷インキはそれらの領域に優先的に付着し、それに対して水または湿し水は親水性の領域に付着することとなる。このことのために、本発明のプロセスレス印刷マスター版は、本来的にネガ作動性となる。この方法は、親水性を調節した基材を必要とせず、また前駆体の露光された領域に高い靱性を与えるので、それによって、ネガ作動性の平版印刷マスター版の可使時間を延ばすことができる。
【0051】
いかなる点においても本発明の範囲を限定するものではないが、層の照射された領域が疎水性となるメカニズムは、以下のようなものだと考えられる。放射線による画像形成可能な層に画像が形成されると、放射線を熱に変換させることが可能な物質が、像様に分布した熱を発生させる。この像様に分布した熱が、ポリマー粒子の親水性の部分を大部分が疎水性であるコアの物質のところへと浸透できるようにし、疎水性コアが熱的に軟化して親水性ポリマーに貫入して合着し(coalesce)、層の表面上に疎水性の領域を形成する。照射を受けなかった領域では、親水性ポリマーが崩れることはなく、コーティング層は親水性のままである。湿式オフセット印刷の間に、合着された粒子は層の表面上に親油性の領域を形成するのに対し、層の照射を受けなかった領域は親水性のままにとどまり、湿し水を受け入れる。
【0052】
この画像形成方法は、一旦実施すれば、元には戻らない。組成物の画像形成放射線に暴露された領域は、疎水性を維持したままであって、元に戻って、使用可能なプロセスレスで放射線による画像形成可能な平版印刷前駆体を形成して、熱処理(加熱または冷却)、放射線処理によって、放射線による同一であるかまたは別な画像形成領域とすることは不可能である。この組成物と放射線感受性媒体は、塗布、乾燥させると水不溶出性となるので、塗布、乾燥させた場合には、水または湿し水によって除去されることはないのは明かである。
【0053】
以上から判るように、本発明の放射線感受性媒体および平版印刷前駆体によって、新世代のポリマー粒子/合着タイプ感熱性媒体の利点と、基材に依存することのない、印刷版作製への変換可能ポリマー的アプローチの利点を合わせて有することが可能となる。単に表面的にだけではなく、実質的に親水性の性質を有する粒子を用いると、スカミングも減少するが、ここでスカミングとは、マスター版の水担持領域がその親水性の幾分かを失い、インキを受け入れるようになったときに起きる現象である。このことによって、水系の放射線感受性媒体から製造することが可能であるにも関わらず、長い可使時間を有するマスター版が得られる。
【実施例】
【0054】
以下の実施例において、キトサンは米国ワシントン州レドモンド(Redmond,WA,USA)のバンソン(Vanson)から入手した「ハイ・ビスコシティー・キトサン(High Viscosity Chitosan)」であり、また、赤外染料は独国ボルヘン(Wolfen,Germany)のFEWからのS0094である。濡れ剤は米国コネチカット州ウォリングフォード(Wallingford,CT,USA)のBYK−ヘミー(BYK−Chemie)からのBYK−345である。赤外線レーザー露光はすべて、クレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter,商標)印刷版硬化機を用い、波長830nmで実施した。
【0055】
実施例1
印刷版は、砂目をたてた陽極処理アルミニウム板の上にそのコーティング重量が1g/mとなるように下記の配合物をコーティングして製造した:30gのキトサン/PSコポリマー(13重量%キトサン、87%スチレン)水性分散体(固形分10%)、および9gのエタノール中2重量%の赤外染料。室温で5分間乾燥させてから、500mJ/cm、15ワットの赤外線レーザー露光を用いて、その印刷版に画像を形成させた。その画像形成させた印刷版を印刷機(リョービ(Ryobi))の上に取り付け、湿し水を用いて30秒間湿らせてから、その版にインキを塗布した。コート紙の上に1000部の印刷を行ったが、その印刷品質にはほとんど劣化が認められなかった。印刷の間、バックグラウンドの表面(the surface on background)は変化がないままである。
【0056】
実施例2
印刷版は、砂目なし、陽極処理なしのアルミニウム板の上にそのコーティング重量が1g/mとなるように下記の配合物をコーティングして製造した:30gのキトサン/PSコポリマー(13重量%キトサン、87%スチレン)水性分散体(固形分10%)、および9gのエタノール中2重量%の赤外染料。室温で5分間乾燥させてから、500mJ/cm、15ワットの赤外線レーザー露光を用いて、その印刷版に画像を形成させた。その画像形成させた印刷版を印刷機(リョービ(Ryobi))の上に取り付け、湿し水を用いて30秒間湿らせてから、その版にインキを塗布した。コート紙の上に1000部の印刷を行ったが、その印刷品質にはほとんど劣化が認められなかった。印刷の間、バックグラウンドの表面は変化がないままである。
【0057】
実施例3
印刷版は、セラミック・ペーパー(Ceramic Paper)の上にそのコーティング重量が1g/mとなるように下記の配合物をコーティングして製造した:30gのキトサン/PSコポリマー(13重量%キトサン、87%スチレン)水性分散体(固形分10%)、および9gのエタノール中2重量%の赤外染料。室温で5分間乾燥させてから、500mJ/cm、15ワットの赤外線レーザー露光を用いて、その印刷版に画像を形成させた。その画像形成させたサンプルを印刷機(リョービ(Ryobi))の上に取り付け、湿し水を用いて30秒間湿らせてから、その版にインキを塗布した。コート紙の上に3000部の印刷を行ったが、その印刷品質にはほとんど劣化が認められなかった。印刷の間、バックグラウンドの表面は変化がないままである。
【0058】
実施例4
印刷版は、砂目をたてた陽極処理アルミニウム板の上にそのコーティング重量が1g/mとなるように下記の配合物をコーティングして製造した:30gのキトサン/PS/ANコポリマー(13重量%キトサン、78%スチレン、9%アクリロニトリル)水性分散体(固形分10%)、および9gのエタノール中2重量%の赤外染料。60℃で2分間乾燥させてから、500mJ/cm、15ワットの赤外線レーザー露光を用いて、その印刷版に画像を形成させた。その画像形成させた印刷版を印刷機(マルチ(Multi))の上に取り付け、湿し水を用いて30秒間湿らせてから、その版にインキを塗布した。非コート紙(uncoated paper)の上に1000部の印刷を行った。印刷の間、バックグラウンドの表面は変化がないままである。
【0059】
実施例5
印刷版は、砂目をたてた陽極処理アルミニウム板の上にそのコーティング重量が1g/mとなるように下記の配合物をコーティングして製造した:30gのキトサン/PS/AAコポリマー(13重量%キトサン、78%スチレン、9%アクリル酸)水性分散体(固形分10%)、および9gのエタノール中2重量%の赤外染料。60℃で2分間乾燥させてから、500mJ/cm、15ワットの赤外線レーザー露光を用いて、その印刷版に画像を形成させた。その画像形成させた印刷版を印刷機(マルチ(Multi))の上に取り付け、湿し水を用いて30秒間湿らせてから、その版にインキを塗布した。非コート紙の上に5000部の印刷を行った。印刷の間、バックグラウンドの表面は変化がないままである。
【0060】
実施例6
印刷版は、砂目をたてた陽極処理アルミニウム板の上にそのコーティング重量が1g/mとなるように下記の配合物をコーティングして製造した:15gのゼラチン/PS/ANコポリマー(13重量%ゼラチン、78%スチレン、9%アクリロニトリル)水性分散体(固形分10%)および15gのキトサン/PMMA/AAコポリマー(13重量%キトサン、78%メタクリル酸メチル、9%アクリル酸)水性分散体(固形分10%)、および9gのエタノール中2重量%の赤外染料。60℃で2分間乾燥させてから、500mJ/cm、15ワットの赤外線レーザー露光を用いて、その印刷版に画像を形成させた。その画像形成させた印刷版を印刷機(マルチ(Multi))の上に取り付け、湿し水を用いて30秒間湿らせてから、その版にインキを塗布した。非コート紙の上に5000部の印刷を行った。印刷の間、バックグラウンドの表面は変化がないままである。
【0061】
実施例7
印刷版は、砂目をたてた陽極処理アルミニウム板の上にそのコーティング重量が1g/mとなるように下記の配合物をコーティングして製造した:15gのデンプン/PS/ANコポリマー(13重量%デンプン、78%スチレン、9%アクリロニトリル)水性分散体(固形分10%)および15gのキトサン/PMMA/AAコポリマー(13重量%キトサン、78%メタクリル酸メチル、9%アクリル酸)水性分散体(固形分10%)、および9gのエタノール中2重量%の赤外染料。60℃で2分間乾燥させてから、500mJ/cm、15ワットの赤外線レーザー露光を用いて、その印刷版に画像を形成させた。その画像形成させた印刷版を印刷機(マルチ(Multi))の上に取り付け、湿し水を用いて30秒間湿らせてから、その版にインキを塗布した。非コート紙の上に5000部の印刷を行った。印刷の間、バックグラウンドの表面は変化がないままである。
【0062】
実施例8
印刷版は、砂目をたてた陽極処理アルミニウム板の上にそのコーティング重量が1g/mとなるように下記の配合物をコーティングして製造した:24gのキトサン/PSコポリマー(13重量%キトサン、87%スチレン)水性分散体(固形分10%)および6gのキトサン/PMMA/AAコポリマー(13重量%キトサン、78%メタクリル酸メチル、9%アクリル酸)水性分散体(固形分10%)、および9gのエタノール中2重量%の赤外染料。60℃で2分間乾燥させてから、500mJ/cm、15ワットの赤外線レーザー露光を用いて、その印刷版に画像を形成させた。その画像形成させた印刷版を印刷機(マルチ(Multi))の上に取り付け、湿し水を用いて30秒間湿らせてから、その版にインキを塗布した。非コート紙の上に1000部の印刷を行った。印刷の間、バックグラウンドの表面は変化がないままである。
【0063】
実施例9
印刷版は、砂目をたてた陽極処理アルミニウム板の上にそのコーティング重量が1g/mとなるように下記の配合物をコーティングして製造した:24gのキトサン/PS/ANコポリマー(13重量%キトサン、78%スチレン、9%アクリロニトリル)水性分散体(固形分10%)および6gのキトサン/PMMA/AAコポリマー(13重量%キトサン、78%メタクリル酸メチル、9%アクリル酸)水性分散体(固形分10%)、および9gのエタノール中2重量%の赤外染料。60℃で2分間乾燥させてから、500mJ/cm、15ワットの赤外線レーザー露光を用いて、その印刷版に画像を形成させた。その画像形成させた印刷版を印刷機(マルチ(Multi))の上に取り付け、湿し水を用いて30秒間湿らせてから、その版にインキを塗布した。非コート紙の上に1000部の印刷を行った。印刷の間、バックグラウンドの表面は変化がないままである。
【0064】
実施例10
印刷版は、砂目をたてた陽極処理アルミニウム板の上にそのコーティング重量が1g/mとなるように下記の配合物をコーティングして製造した:30gのキトサン/PS/AAコポリマー(13重量%キトサン、78%スチレン、9%アクリル酸)水性分散体(固形分10%)、および9gの水中5重量%のカーボンブラック(キャブ−オ−ジェット(CAB−O−JET)200)。60℃で2分間乾燥させてから、800mJ/cm、15ワットの赤外線レーザー露光を用いて、その印刷版に画像を形成させた。その画像形成させた印刷版を印刷機(マルチ(Multi))の上に取り付け、湿し水を用いて30秒間湿らせてから、その版にインキを塗布した。非コート紙の上に1000部の印刷を行った。印刷の間、バックグラウンドの表面は変化がないままである。
【0065】
実施例11
印刷版は、砂目をたてた陽極処理アルミニウム板の上にそのコーティング重量が1g/mとなるように下記の配合物をコーティングして製造した:30gのデンプン/PS/AAコポリマー(13重量%デンプン、78%スチレン、9%アクリル酸)水性分散体(固形分10%)、および9gのエタノール中2重量%の赤外染料。60℃で2分間乾燥させてから、500mJ/cm、15ワットの赤外線レーザー露光を用いて、その印刷版に画像を形成させた。その画像形成させた印刷版を印刷機(マルチ(Multi))の上に取り付け、湿し水を用いて30秒間湿らせてから、その版にインキを塗布した。非コート紙の上に500部の印刷を行った。印刷の間、バックグラウンドの表面は変化がないままである。
【0066】
実施例12
印刷版は、砂目をたてた陽極処理アルミニウム板の上にそのコーティング重量が1g/mとなるように下記の配合物をコーティングして製造した:30gのゼラチン/PS/AAコポリマー(13重量%ゼラチン、78%スチレン、9%アクリル酸)水性分散体(固形分10%)、および9gのエタノール中2重量%の赤外染料。60℃で2分間乾燥させてから、500mJ/cm、15ワットの赤外線レーザー露光を用いて、その印刷版に画像を形成させた。その画像形成させた印刷版を印刷機(マルチ(Multi))の上に取り付け、湿し水を用いて30秒間湿らせてから、その版にインキを塗布した。非コート紙の上に500部の印刷を行った。印刷の間、バックグラウンドの表面は変化がないままである。
【0067】
実施例13
印刷版は、砂目をたてた陽極処理アルミニウム板の上にそのコーティング重量が1g/mとなるように下記の配合物をコーティングして製造した:30gのセルロース/PS/AAコポリマー(13重量%セルロース、78%スチレン、9%アクリル酸)水性分散体(固形分10%)、および9gのエタノール中2重量%の赤外染料。60℃で2分間乾燥させてから、500mJ/cm、15ワットの赤外線レーザー露光を用いて、その印刷版に画像を形成させた。その画像形成させた印刷版を印刷機(マルチ(Multi))の上に取り付け、湿し水を用いて30秒間湿らせてから、その版にインキを塗布した。非コート紙の上に500部の印刷を行った。印刷の間、バックグラウンドの表面は変化がないままである。
【0068】
実施例14
印刷版は、砂目をたてた陽極処理アルミニウム板の上にそのコーティング重量が1g/mとなるように下記の配合物をコーティングして製造した:30gのキトサン/PMMA/AAコポリマー(13重量%キトサン、78%メタクリル酸メチル、9%アクリル酸)水性分散体(固形分10%)、および9gのエタノール中2重量%の赤外染料。60℃で2分間乾燥させてから、500mJ/cm、15ワットの赤外線レーザー露光を用いて、その印刷版に画像を形成させた。その画像形成させた印刷版を印刷機(マルチ(Multi))の上に取り付け、湿し水を用いて30秒間湿らせてから、その版にインキを塗布した。非コート紙の上に1000部の印刷を行った。印刷の間、バックグラウンドの表面は変化がないままである。
【0069】
実施例15
印刷版は、砂目をたてた陽極処理アルミニウム板の上にそのコーティング重量が1g/mとなるように下記の配合物をコーティングして製造した:30gのキトサン/PS/PMMA/AAコポリマー(13重量%キトサン、39%スチレン、36%メタクリル酸メチル、9%アクリル酸)水性分散体(固形分10%)、および9gのエタノール中2重量%の赤外染料。60℃で2分間乾燥させてから、500mJ/cm、15ワットの赤外線レーザー露光を用いて、その印刷版に画像を形成させた。その画像形成させたサンプルを印刷機(マルチ(Multi))の上に取り付け、湿し水を用いて30秒間湿らせてから、その版にインキを塗布した。非コート紙の上に500部の印刷を行った。印刷の間、バックグラウンドの表面は変化がないままである。
【0070】
実施例16
印刷版は、砂目をたてた陽極処理アルミニウム板の上にそのコーティング重量が1g/mとなるように下記の配合物をコーティングして製造した:25gのキトサン/PS/AAコポリマー(13重量%キトサン、78%スチレン、9%アクリル酸)水性分散体(固形分10%)、5gのエタノール中10%の酸化亜鉛、および9gのエタノール中2重量%の赤外染料。60℃で2分間乾燥させてから、500mJ/cm、15ワットの赤外線レーザー露光を用いて、その印刷版に画像を形成させた。その画像形成させた印刷版を印刷機(マルチ(Multi))の上に取り付け、湿し水を用いて30秒間湿らせてから、その版にインキを塗布した。非コート紙の上に500部の印刷を行った。印刷の間、バックグラウンドの表面は変化がないままである。
【0071】
実施例17
印刷版は、砂目をたてた陽極処理アルミニウム板の上にそのコーティング重量が1g/mとなるように下記の配合物をコーティングして製造した:25gのキトサン/PS/AAコポリマー(13重量%キトサン、78%スチレン、9%アクリル酸)水性分散体(固形分10%)、5gのエタノール中10%のSiO、および9gのエタノール中2重量%の赤外染料。60℃で2分間乾燥させてから、500mJ/cm、15ワットの赤外線レーザー露光を用いて、その印刷版に画像を形成させた。その画像形成させた印刷版を印刷機(マルチ(Multi))の上に取り付け、湿し水を用いて30秒間湿らせてから、その版にインキを塗布した。非コート紙の上に5000部の印刷を行った。印刷の間、バックグラウンドの表面は変化がないままである。
【0072】
実施例18
印刷版は、砂目をたてた陽極処理アルミニウム板の上にそのコーティング重量が1g/mとなるように下記の配合物をコーティングして製造した:30gのキトサン/PnBMA/AAコポリマー(13重量%キトサン、78%メタクリル酸n−ブチル、9%アクリル酸)水性分散体(固形分10%)、および9gのエタノール中2重量%の赤外染料。60℃で2分間乾燥させてから、500mJ/cm、15ワットの赤外線レーザー露光を用いて、その印刷版に画像を形成させた。その画像形成させた印刷版を印刷機(マルチ(Multi))の上に取り付け、湿し水を用いて30秒間湿らせてから、その版にインキを塗布した。非コート紙の上に1000部の印刷を行った。印刷の間、バックグラウンドの表面は変化がないままである。
【0073】
実施例19
印刷版は、砂目をたてた陽極処理アルミニウム板の上にそのコーティング重量が1g/mとなるように下記の配合物をコーティングして製造した:30gのキトサン/PtBMA/AAコポリマー(13重量%キトサン、78%メタクリル酸t−ブチル、9%アクリル酸)水性分散体(固形分10%)、および9gのエタノール中2重量%の赤外染料。60℃で2分間乾燥させてから、500mJ/cm、15ワットの赤外線レーザー露光を用いて、その印刷版に画像を形成させた。その画像形成させた印刷版を印刷機(マルチ(Multi))の上に取り付け、湿し水を用いて30秒間湿らせてから、その版にインキを塗布した。非コート紙の上に1000部の印刷を行った。印刷の間、バックグラウンドの表面は変化がないままである。
【0074】
実施例20
印刷版は、砂目をたてた陽極処理アルミニウム板の上にそのコーティング重量が1g/mとなるように下記の配合物をコーティングして製造した:30gのキトサン/PEMA/AAコポリマー(13重量%キトサン、78%メタクリル酸エチル、9%アクリル酸)水性分散体(固形分10%)、および9gのエタノール中2重量%の赤外染料。60℃で2分間乾燥させてから、500mJ/cm、15ワットの赤外線レーザー露光を用いて、その印刷版に画像を形成させた。その画像形成させた印刷版を印刷機(マルチ(Multi))の上に取り付け、湿し水を用いて30秒間湿らせてから、その版にインキを塗布した。非コート紙の上に500部の印刷を行った。印刷の間、バックグラウンドの表面は変化がないままである。
【0075】
実施例21
印刷版は、砂目をたてた陽極処理アルミニウム板の上にそのコーティング重量が1g/mとなるように下記の配合物をコーティングして製造した:30gのキトサン/PtBS/AAコポリマー(13重量%キトサン、78%の4−t−ブチルスチレン、9%アクリル酸)水性分散体(固形分10%)、および9gのエタノール中2重量%の赤外染料。60℃で2分間乾燥させてから、500mJ/cm、15ワットの赤外線レーザー露光を用いて、その印刷版に画像を形成させた。その画像形成させた印刷版を印刷機(マルチ(Multi))の上に取り付け、湿し水を用いて30秒間湿らせてから、その版にインキを塗布した。非コート紙の上に10,000部の印刷を行った。印刷の間、バックグラウンドの表面は変化がないままである。
【0076】
実施例22
印刷版は、砂目をたてた陽極処理アルミニウム板の上にそのコーティング重量が1g/mとなるように下記の配合物をコーティングして製造した:30gのキトサン/PClS/AAコポリマー(13重量%キトサン、78%の4−クロロスチレン、9%アクリル酸)水性分散体(固形分10%)、および9gのエタノール中2重量%の赤外染料。60℃で2分間乾燥させてから、500mJ/cm、15ワットの赤外線レーザー露光を用いて、その印刷版に画像を形成させた。その画像形成させた印刷版を印刷機(マルチ(Multi))の上に取り付け、湿し水を用いて30秒間湿らせてから、その版にインキを塗布した。非コート紙の上に4000部の印刷を行った。印刷の間、バックグラウンドの表面は変化がないままである。
【0077】
実施例23
印刷版は、砂目をたてた陽極処理アルミニウム板の上にそのコーティング重量が1g/mとなるように下記の配合物をコーティングして製造した:30gのキトサン/PαMS/AAコポリマー(13重量%キトサン、78%のα−メチルスチレン、9%アクリル酸)水性分散体(固形分10%)、および9gのエタノール中2重量%の赤外染料。60℃で2分間乾燥させてから、500mJ/cm、15ワットの赤外線レーザー露光を用いて、その印刷版に画像を形成させた。その画像形成させた印刷版を印刷機(マルチ(Multi))の上に取り付け、湿し水を用いて30秒間湿らせてから、その版にインキを塗布した。非コート紙の上に4000部の印刷を行った。印刷の間、バックグラウンドの表面は変化がないままである。
【0078】
実施例24
印刷版は、砂目をたてた陽極処理アルミニウム板の上にそのコーティング重量が1g/mとなるように下記の配合物をコーティングして製造した:30gのキトサン/PMS/AAコポリマー(13重量%キトサン、78%の4−メチルスチレン、9%アクリル酸)水性分散体(固形分10%)、および9gのエタノール中2重量%の赤外染料。60℃で2分間乾燥させてから、500mJ/cm、15ワットの赤外線レーザー露光を用いて、その印刷版に画像を形成させた。その画像形成させた印刷版を印刷機(マルチ(Multi))の上に取り付け、湿し水を用いて30秒間湿らせてから、その版にインキを塗布した。非コート紙の上に1000部の印刷を行った。印刷の間、バックグラウンドの表面は変化がないままである。
【0079】
実施例25
温度計、機械的撹拌器、窒素入口および加熱浴を備えた10Lのガラス製反応器中の、120gのキトサン、8.52gの過硫酸カリウム、および8.53gのメタ重亜硫酸ナトリウムを159gの酢酸および7910gの水に溶解させた溶液を撹拌しながら60℃で窒素下に、712gのスチレンおよび80gのアクリル酸を添加した。6時間後に撹拌を停止し、その反応器の内容物を濾過すると、不透明な白色液状物が得られたので、その3gを、1gのエタノール中1%の赤外染料と、1gの水中0.2%の濡れ剤と混合した。アルミニウム基材上にコーティングし、乾燥させてから、830nmのレーザー照射を用い300mJ/cmの露光で画像形成させると、得られた印刷版で5,000ページを超える印刷をさせても、露光領域、非露光領域のいずれにおいてもコーティングが消失することは無かった。
【0080】
実施例26
温度計、機械的撹拌器、窒素入口および加熱浴を備えた10Lのガラス製反応器中の、120gのキトサン、8.52gの過硫酸カリウム、および8.53gのメタ重亜硫酸ナトリウムを159gの酢酸および7910gの水に溶解させた溶液を撹拌しながら60℃で窒素下に、633gのスチレン、次いで158gのアクリル酸を添加した。6時間後に撹拌を停止し、その反応器の内容物を濾過すると、不透明な白色液状物が得られたので、その3gを、1gのエタノール中1%の赤外染料と、1gの水中0.2%の濡れ剤と混合した。アルミニウム基材上にコーティングし、乾燥させてから、830nmのレーザー照射を用い300mJ/cmの露光で画像形成させると、得られた印刷版で5,000ページを超える印刷をさせても、露光領域、非露光領域のいずれにおいてもコーティングが消失することは無かった。
【0081】
以上、本発明をよりよく理解できるよう、また、本発明の業界への寄与をよりよく評価できるように、本発明の重要な特色を概観してきた。本発明の基本となる概念が、本発明のいくつかの目的を実施するための、その他の組成物、要素および方法の設計のための基礎として容易に利用することが可能であることは、当業者の認めるところであろう。したがって、最も重要なことは、本明細書の開示には、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、そのような等価な組成物、要素および方法を包含する、とみなされるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線感受性媒体(radiation−sensitive medium)であって、
i.少なくとも1種の加熱により軟化させることが可能な疎水性ポリマー、
ii.少なくとも1種の親水性ポリマー、および
iii.前記疎水性ポリマーに対しておよび前記親水性ポリマーに対して化学的に結合することが可能な少なくとも1種の結合性化合物(bonding compound)、
を含む親水性ポリマー粒子を含む放射線感受性媒体。
【請求項2】
前記放射線感受性媒体が、塗布及び乾燥させたときには親水性であり、熱の作用のもとで疎水性となる、請求項1に記載の放射線感受性媒体。
【請求項3】
前記放射線感受性媒体が、塗布及び乾燥させたときには水性媒体に不溶出性である、請求項2に記載の放射線感受性媒体。
【請求項4】
前記水性媒体が水および湿し水(fountain solution)の内の1つである、請求項3に記載の放射線感受性媒体。
【請求項5】
放射線を熱に変換させることが可能な物質をさらに含む、請求項4に記載の放射線感受性媒体。
【請求項6】
前記放射線を熱に変換させることが可能な物質が疎水性である、請求項5に記載の放射線感受性媒体。
【請求項7】
前記放射線が赤外線照射である、請求項5に記載の放射線感受性媒体。
【請求項8】
前記赤外線照射の波長が700nm〜1200nmの間である、請求項7に記載の放射線感受性媒体。
【請求項9】
前記親水性ポリマーが、一級アミン基(primary amine group)を有する、請求項4に記載の放射線感受性媒体。
【請求項10】
前記親水性ポリマーが、糖類、キトサンポリマー、ポリエチレンイミンポリマー、ポリアミンポリマー、ポリビニルアミンポリマー、ポリアリルアミンポリマー、ポリジアリルアミンポリマー、アミノ(メタ)アクリレートポリマー、ポリアミドポリマー、ポリアミド−エピクロロヒドリンポリマー、ポリアミン−エピクロロヒドリンポリマー、ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリンポリマー、ジシアンジアミド−重縮合反応生成物ポリマー(a dicyandiamide−polycondensation product polymer)、およびそれらのコポリマー(copolymer、共重合体)の少なくとも1種である、請求項4に記載の放射線感受性媒体。
【請求項11】
親水性ポリマーと、疎水性モノマーと結合性モノマーとの少なくとも1種のコポリマーとを含み、前記結合性モノマーが前記親水性ポリマーに対しておよび前記疎水性モノマーに対して化学的に結合することが可能である、放射線感受性媒体。
【請求項12】
前記放射線感受性媒体が、塗布及び乾燥させたときには親水性であり、熱の作用のもとで疎水性となる、請求項11に記載の放射線感受性媒体。
【請求項13】
前記放射線感受性媒体が、塗布及び乾燥させたときには水性媒体に不溶出性である、請求項12に記載の放射線感受性媒体。
【請求項14】
前記水性媒体が水および湿し水(fountain solution)の内の1つである、請求項13に記載の放射線感受性媒体。
【請求項15】
放射線を熱に変換させることが可能な物質をさらに含む、請求項14に記載の放射線感受性媒体。
【請求項16】
前記放射線を熱に変換させることが可能な物質が疎水性である、請求項15に記載の放射線感受性媒体。
【請求項17】
前記放射線が赤外線照射である、請求項15に記載の放射線感受性媒体。
【請求項18】
前記赤外線照射の波長が700nm〜1200nmの間である、請求項17に記載の放射線感受性媒体。
【請求項19】
前記親水性ポリマーが、一級アミン基(primary amine group)を有する、請求項14に記載の放射線感受性媒体。
【請求項20】
前記親水性ポリマーが、糖類、キトサンポリマー、ポリエチレンイミンポリマー、ポリアミンポリマー、ポリビニルアミンポリマー、ポリアリルアミンポリマー、ポリジアリルアミンポリマー、アミノ(メタ)アクリレートポリマー、ポリアミドポリマー、ポリアミド−エピクロロヒドリンポリマー、ポリアミン−エピクロロヒドリンポリマー、ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリンポリマー、ジシアンジアミド−重縮合反応生成物ポリマー(a dicyandiamide−polycondensation product polymer)、およびそれらのコポリマー(copolymer、共重合体)の少なくとも1種である、請求項14に記載の放射線感受性媒体。
【請求項21】
放射線感受性媒体であって、親水性ポリマーと、下記の
(i)親水性モノマー、
(ii)疎水性モノマー、および
(iii)カルボキシル基を有するモノマー、の内の少なくとも2種からの少なくとも1種のコポリマーと、
を含む放射線感受性媒体。
【請求項22】
前記放射線感受性媒体が、塗布及び乾燥させたときには親水性であり、熱の作用のもとで疎水性となる、請求項21に記載の放射線感受性媒体。
【請求項23】
前記放射線感受性媒体が、塗布及び乾燥させたときには水性媒体に不溶出性である、請求項22に記載の放射線感受性媒体。
【請求項24】
前記水性媒体が水および湿し水(fountain solution)の内の1つである、請求項23に記載の放射線感受性媒体。
【請求項25】
放射線を熱に変換させることが可能な物質をさらに含む、請求項24に記載の放射線感受性媒体。
【請求項26】
前記放射線を熱に変換させることが可能な物質が疎水性である、請求項25に記載の放射線感受性媒体。
【請求項27】
前記放射線が赤外線照射である、請求項25に記載の放射線感受性媒体。
【請求項28】
前記赤外線照射の波長が700nm〜1200nmの間である、請求項27に記載の放射線感受性媒体。
【請求項29】
前記親水性ポリマーが、一級アミン基(primary amine group)を有する、請求項24に記載の放射線感受性媒体。
【請求項30】
前記親水性ポリマーが、糖類、キトサンポリマー、ポリエチレンイミンポリマー、ポリアミンポリマー、ポリビニルアミンポリマー、ポリアリルアミンポリマー、ポリジアリルアミンポリマー、アミノ(メタ)アクリレートポリマー、ポリアミドポリマー、ポリアミド−エピクロロヒドリンポリマー、ポリアミン−エピクロロヒドリンポリマー、ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリンポリマー、ジシアンジアミド−重縮合反応生成物ポリマー(a dicyandiamide−polycondensation product polymer)、およびそれらのコポリマー(copolymer、共重合体)の少なくとも1種である、請求項24に記載の放射線感受性媒体。
【請求項31】
親水性ポリマー粒子を含む放射線感受性媒体であって、前記親水性粒子が、
a.実質的な深さにまで親水性であり、そして
b.親水性ポリマーと、疎水性モノマーおよびカルボキシル基を有するモノマーからの少なくとも1種のコポリマーとを含む、
放射線感受性媒体。
【請求項32】
前記放射線感受性媒体が、塗布及び乾燥させたときには親水性であり、熱の作用のもとで疎水性となる、請求項31に記載の放射線感受性媒体。
【請求項33】
前記放射線感受性媒体が、塗布及び乾燥させたときには水性媒体に不溶出性である、請求項32に記載の放射線感受性媒体。
【請求項34】
前記水性媒体が水および湿し水(fountain solution)の内の1つである、請求項33に記載の放射線感受性媒体。
【請求項35】
放射線を熱に変換させることが可能な物質をさらに含む、請求項34に記載の放射線感受性媒体。
【請求項36】
前記放射線を熱に変換させることが可能な物質が疎水性である、請求項32に記載の放射線感受性媒体。
【請求項37】
前記放射線が赤外線照射である、請求項32に記載の放射線感受性媒体。
【請求項38】
前記赤外線照射の波長が700nm〜1200nmの間である、請求項37に記載の放射線感受性媒体。
【請求項39】
前記親水性ポリマーが、一級アミン基(primary amine group)を有する、請求項34に記載の放射線感受性媒体。
【請求項40】
前記親水性ポリマーが、糖類、キトサンポリマー、ポリエチレンイミンポリマー、ポリアミンポリマー、ポリビニルアミンポリマー、ポリアリルアミンポリマー、ポリジアリルアミンポリマー、アミノ(メタ)アクリレートポリマー、ポリアミドポリマー、ポリアミド−エピクロロヒドリンポリマー、ポリアミン−エピクロロヒドリンポリマー、ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリンポリマー、ジシアンジアミド−重縮合反応生成物ポリマー(a dicyandiamide−polycondensation product polymer)、およびそれらのコポリマー(copolymer、共重合体)の少なくとも1種である、請求項34に記載の放射線感受性媒体。
【請求項41】
親水性ポリマー粒子を含む放射線感受性媒体であって、前記粒子が、キトサンおよび少なくとも1種の加熱により軟化させることが可能な疎水性ポリマーを含み、塗布及び乾燥させた放射線感受性媒体が、湿し水(fountain solution)に不溶出性(ineluable)であり、熱の作用のもとで疎水性となることが可能な、放射線感受性媒体。
【請求項42】
少なくとも1種の親水性ポリマーの存在下で、少なくとも1種の疎水性モノマーと、カルボキシル基を有する少なくとも1種のモノマーとを重合させることを含む、放射線感受性媒体を製造するための方法。
【請求項43】
前記少なくとも1種の親水性ポリマーが、糖類、キトサン、ポリエチレンイミンポリマー、ポリアミンポリマー、ポリビニルアミンポリマー、ポリアリルアミンポリマー、ポリジアリルアミンポリマー、アミノ(メタ)アクリレートポリマー、ポリアミドポリマー、ポリアミド−エピクロロヒドリンポリマー、ポリアミン−エピクロロヒドリンポリマー、ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリンポリマー、ジシアンジアミド−重縮合反応生成物ポリマー、およびそれらのコポリマー、の内の1種である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
放射線感受性媒体を製造するための方法であって、前記方法が、
a.スチレン化合物とアクリル酸とを、水に可溶性とした(aqueously solubilized)キトサンの存在下に重合させる工程、および
b.工程(a)の生成物に、放射線を熱に変換させることが可能な物質を添加する工程、
を含む、放射線感受性媒体を製造するための方法。
【請求項45】
プロセスレスで放射線による画像形成可能な(processless radiation−imageable)平版印刷前駆体(lithographic printing precursor)であって、基材(substrate)と、前記基材の上において放射線感受性媒体を乾燥させて水不溶出性(aqueous−ineluable)としたコーティングとを含み、前記放射線感受性媒体が、
a.放射線を熱に変換させることが可能な物質;および
b.親水性ポリマー粒子であって、
i.少なくとも1種の加熱により軟化させることが可能な疎水性ポリマー、
ii.少なくとも1種の親水性ポリマー、および
iii.前記疎水性ポリマーに対しておよび前記親水性ポリマーに対して化学的に結合することが可能な少なくとも1種の結合性化合物、を含む親水性ポリマー粒子、
を含む平版印刷前駆体。
【請求項46】
前記コーティングが熱の作用のもとで疎水性となることが可能な、請求項45に記載の前駆体。
【請求項47】
前記放射線を熱に変換させることが可能な物質が疎水性である、請求項46に記載の前駆体。
【請求項48】
前記放射線が赤外線照射である、請求項46に記載の前駆体。
【請求項49】
前記赤外線照射の波長が700nm〜1200nmの間である、請求項48に記載の前駆体。
【請求項50】
前記親水性ポリマーが、一級アミン基(primary amine group)を有する、請求項46に記載の前駆体。
【請求項51】
少なくともひとつの前記親水性ポリマーが、糖類、キトサンポリマー、ポリエチレンイミンポリマー、ポリアミンポリマー、ポリビニルアミンポリマー、ポリアリルアミンポリマー、ポリジアリルアミンポリマー、アミノ(メタ)アクリレートポリマー、ポリアミドポリマー、ポリアミド−エピクロロヒドリンポリマー、ポリアミン−エピクロロヒドリンポリマー、ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリンポリマー、ジシアンジアミド−重縮合反応生成物ポリマー(a dicyandiamide−polycondensation product polymer)、およびそれらのコポリマー(copolymer、共重合体)の少なくとも1種である、請求項46に記載の前駆体。
【請求項52】
ネガ作動性の(negative−working)平版印刷マスター版(lithographic printing master)を作製するための方法であって、前記方法が、画像形成放射線を用いて、請求項51のプロセスレスで放射線による画像形成可能な平版印刷前駆体(processless radiation−imageable lithographic printing precursor)を像様(imagewise)に照射することからなる、方法。
【請求項53】
プロセスレスで放射線による画像形成可能な平版印刷前駆体であって、基材と、前記基材の上において放射線感受性媒体を乾燥させて水不溶出性としたコーティングとを含み、前記放射線感受性媒体が、
a.放射線を熱に変換させることが可能な物質;および
b.親水性ポリマー;および
c.疎水性モノマーと結合性モノマーとの少なくとも1種のコポリマー
を含み、前記結合性モノマーが前記親水性ポリマーに対しておよび前記疎水性モノマーに対して化学的に結合することが可能である、
前駆体。
【請求項54】
前記コーティングが熱の作用のもとで疎水性となることが可能な、請求項53に記載の前駆体。
【請求項55】
前記放射線を熱に変換させることが可能な物質が疎水性である、請求項54に記載の前駆体。
【請求項56】
前記放射線が赤外線照射である、請求項55に記載の前駆体。
【請求項57】
前記赤外線照射の波長が700nm〜1200nmの間である、請求項56に記載の前駆体。
【請求項58】
前記親水性ポリマーが、一級アミン基(primary amine group)を有する、請求項54に記載の前駆体。
【請求項59】
少なくともひとつの前記親水性ポリマーが、糖類、キトサンポリマー、ポリエチレンイミンポリマー、ポリアミンポリマー、ポリビニルアミンポリマー、ポリアリルアミンポリマー、ポリジアリルアミンポリマー、アミノ(メタ)アクリレートポリマー、ポリアミドポリマー、ポリアミド−エピクロロヒドリンポリマー、ポリアミン−エピクロロヒドリンポリマー、ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリンポリマー、ジシアンジアミド−重縮合反応生成物ポリマー(a dicyandiamide−polycondensation product polymer)、およびそれらのコポリマー(copolymer、共重合体)の少なくとも1種である、請求項54に記載の前駆体。
【請求項60】
ネガ作動性の(negative−working)平版印刷マスター版(lithographic printing master)を作製するための方法であって、前記方法が、画像形成放射線を用いて、請求項59のプロセスレスで放射線による画像形成可能な平版印刷前駆体(processless radiation−imageable lithographic printing precursor)を像様(imagewise)に照射することからなる、方法。
【請求項61】
プロセスレスで放射線による画像形成可能な平版印刷前駆体であって、基材と、前記基材において放射線感受性媒体を乾燥させて水不溶出性としたコーティングとを含み、前記放射線感受性媒体が、親水性ポリマー、および疎水性モノマーとカルボキシル基を有するモノマーとの少なくとも1種のコポリマーを含む、前駆体。
【請求項62】
前記コーティングが熱の作用のもとで疎水性となることが可能な、請求項61に記載の前駆体。
【請求項63】
前記放射線を熱に変換させることが可能な物質が疎水性である、請求項62に記載の前駆体。
【請求項64】
前記放射線が赤外線照射である、請求項62に記載の前駆体。
【請求項65】
前記赤外線照射の波長が700nm〜1200nmの間である、請求項64に記載の前駆体。
【請求項66】
前記親水性ポリマーが、一級アミン基(primary amine group)を有する、請求項62に記載の前駆体。
【請求項67】
少なくともひとつの前記親水性ポリマーが、糖類、キトサンポリマー、ポリエチレンイミンポリマー、ポリアミンポリマー、ポリビニルアミンポリマー、ポリアリルアミンポリマー、ポリジアリルアミンポリマー、アミノ(メタ)アクリレートポリマー、ポリアミドポリマー、ポリアミド−エピクロロヒドリンポリマー、ポリアミン−エピクロロヒドリンポリマー、ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリンポリマー、ジシアンジアミド−重縮合反応生成物ポリマー(a dicyandiamide−polycondensation product polymer)、およびそれらのコポリマー(copolymer、共重合体)の少なくとも1種である、請求項62に記載の前駆体。
【請求項68】
ネガ作動性の(negative−working)平版印刷マスター版(lithographic printing master)を作製するための方法であって、前記方法が、画像形成放射線を用いて、請求項67のプロセスレスで放射線による画像形成可能な平版印刷前駆体(processless radiation−imageable lithographic printing precursor)を像様(imagewise)に照射することからなる、方法。
【請求項69】
プロセスレスで放射線による画像形成可能な平版印刷前駆体であって、基材と、前記基材の上において放射線感受性媒体を乾燥させて水不溶出性としたコーティングとを含み、前記放射線感受性媒体が親水性ポリマー粒子を含み、前記親水性粒子が、
a.実質的な深さにまで親水性であり、そして
b.親水性ポリマーと、疎水性モノマーおよびカルボキシル基を有するモノマーからの少なくとも1種のコポリマーとを含む、
前駆体。
【請求項70】
前記コーティングが熱の作用のもとで疎水性となることが可能な、請求項69に記載の前駆体。
【請求項71】
前記放射線を熱に変換させることが可能な物質が疎水性である、請求項70に記載の前駆体。
【請求項72】
前記放射線が赤外線照射である、請求項70に記載の前駆体。
【請求項73】
前記赤外線照射の波長が700nm〜1200nmの間である、請求項72に記載の前駆体。
【請求項74】
前記親水性ポリマーが、一級アミン基(primary amine group)を有する、請求項70に記載の前駆体。
【請求項75】
少なくともひとつの前記親水性ポリマーが、糖類、キトサンポリマー、ポリエチレンイミンポリマー、ポリアミンポリマー、ポリビニルアミンポリマー、ポリアリルアミンポリマー、ポリジアリルアミンポリマー、アミノ(メタ)アクリレートポリマー、ポリアミドポリマー、ポリアミド−エピクロロヒドリンポリマー、ポリアミン−エピクロロヒドリンポリマー、ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリンポリマー、ジシアンジアミド−重縮合反応生成物ポリマー(a dicyandiamide−polycondensation product polymer)、およびそれらのコポリマー(copolymer、共重合体)の少なくとも1種である、請求項70に記載の前駆体。
【請求項76】
ネガ作動性の(negative−working)平版印刷マスター版(lithographic printing master)を作製するための方法であって、前記方法が、画像形成放射線を用いて、請求項75のプロセスレスで放射線による画像形成可能な平版印刷前駆体(processless radiation−imageable lithographic printing precursor)を像様(imagewise)に照射することからなる、方法。
【請求項77】
プロセスレスで放射線による画像形成可能な平版印刷前駆体であって、基材と、前記基材の上において放射線感受性媒体を乾燥させて水不溶出性とした親水性コーティングとを含み、前記放射線感受性媒体が親水性ポリマー粒子を含み、前記粒子がキトサンおよび少なくとも1種の加熱により軟化させることが可能な疎水性ポリマーを含み、前記コーティングが熱の作用のもとで疎水性となることが可能な、前駆体。
【請求項78】
ネガ作動性(negative−working)のリソグラフ印刷マスターを作製するための方法であって、前記方法が、
a.基材の上において放射線感受性媒体を乾燥させて水不溶出性としたコーティングを含む前駆体を提供する工程であって、前記放射線感受性媒体には親水性ポリマー粒子を含み、前記粒子には、キトサンおよび少なくとも1種の加熱により軟化させることが可能な疎水性ポリマーを含み、前記コーティングが親水性であるが、熱の作用のもとで疎水性となることが可能である、前記工程;および
b.波長700nm〜1200nmの間の赤外線画像形成放射線を用いて、前記前駆体を像様に照射する工程、
を含む方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性ポリマー粒子を含む放射線感受性媒体(radiation−sensitive medium)であって、前記親水性粒子が、
(a)実質的な深さにまで親水性であり、及び、
(b)親水性ポリマー、および、疎水性モノマーと結合性モノマーとのコポリマーを含み、前記結合性モノマーが前記親水性ポリマーに対しておよび前記疎水性モノマーに対して化学的に結合することが可能である、
前記放射線感受性媒体。
【請求項2】
前記結合性モノマーがカルボキシル基を有している、請求項1に記載の放射線感受性媒体。
【請求項3】
放射線を熱に変換させることが可能な物質をさらに含む、請求項1又は2に記載の放射線感受性媒体。
【請求項4】
前記放射線感受性媒体が、塗布及び乾燥させたときには親水性であり、熱の作用のもとで疎水性となる、請求項1乃至3のいずれかに記載の放射線感受性媒体。
【請求項5】
前記放射線感受性媒体が、塗布及び乾燥させたときには水性媒体に不溶出性である、請求項1乃至4のいずれかに記載の放射線感受性媒体。
【請求項6】
前記親水性ポリマーが、糖類、キトサンポリマー、ポリエチレンイミンポリマー、ポリアミンポリマー、ポリビニルアミンポリマー、ポリアリルアミンポリマー、ポリジアリルアミンポリマー、アミノ(メタ)アクリレートポリマー、ポリアミドポリマー、ポリアミド−エピクロロヒドリンポリマー、ポリアミン−エピクロロヒドリンポリマー、ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリンポリマー、ジシアンジアミド−重縮合反応生成物ポリマー(a dicyandiamide−polycondensation product polymer)、およびそれらのコポリマー(copolymer、共重合体)の少なくとも1種である、請求項1乃至5のいずれかに記載の放射線感受性媒体。
【請求項7】
前記親水性ポリマーが、一級(primary)アミン基を有する、請求項1乃至5のいずれかに記載の放射線感受性媒体。
【請求項8】
前記親水性ポリマーがキトサンを含み、前記コポリマーが加熱により軟化させることが可能な疎水性ポリマーであり、前記コーティングして乾燥させた放射線感受性媒体が湿し水に不溶出性(ineluable in fountain solution)であり、熱の作用のもとで疎水性となることが可能である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の放射線感受性媒体。
【請求項9】
放射線感受性媒体であって、
(a)親水性ポリマーの存在下で、疎水性モノマー、および、カルボキシル基を有するモノマーを重合させる工程を含む方法により製造される、前記放射線感受性媒体。
【請求項10】
前記親水性ポリマーが水可溶化させた(aqueously solubilized)キトサンであり、前記疎水性モノマーがスチレン(styrene)であり、そして前記カルボキシル基を有するモノマーが、アクリル酸から誘導されたものであり、さらに、
(b)工程(a)の生成物に放射線を熱に変換させることが可能な物質を添加する工程、を含む、請求項9に記載の放射線感受性媒体。
【請求項11】
基材と、前記基材の上の、請求項1乃至10のいずれかに記載の放射線感受性媒体を乾燥させて水不溶出性としたコーティングとを含む、プロセスレスで放射線による画像形成可能な平版印刷前駆体(processless radiation−imageable lithographic printing precursor)。
【請求項12】
ネガ作動性(negative−working)の平版印刷マスター版(lithographic printing master)を作製するための方法であって、前記方法が、画像形成放射線(imaging radiation)を用いて、請求項11に記載のプロセスレスで放射線による画像形成可能な平版印刷前駆体を像様(imagewise)に照射する工程を含む、前記方法。

【公表番号】特表2006−524146(P2006−524146A)
【公表日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504063(P2006−504063)
【出願日】平成16年2月27日(2004.2.27)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000302
【国際公開番号】WO2004/089630
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(598088778)コダック グラフィック コミュニケーションズ カナダ カンパニー (34)
【Fターム(参考)】