印刷版の製造方法および製造装置
【課題】印刷版の現像処理時に当該印刷版の表面に不純物が付着するのをさらに抑制することを可能とする。
【解決手段】感光性樹脂版Aに活性光線を照射して露光部と未露光部とを形成する露光工程と、露光された感光性樹脂版Aを載置台20に固定して現像液を供給し、かつ、感光性樹脂版Aと未露光部除去装置21とを接触させ、感光性樹脂版Aに該未露光部除去装置21を相対的に動作させて未露光部を除去する現像工程と、相対的な動作を継続させたまま未露光部除去装置21と当該感光性樹脂版Aとを引き離して非接触状態とする工程と、を含んでいる。
【解決手段】感光性樹脂版Aに活性光線を照射して露光部と未露光部とを形成する露光工程と、露光された感光性樹脂版Aを載置台20に固定して現像液を供給し、かつ、感光性樹脂版Aと未露光部除去装置21とを接触させ、感光性樹脂版Aに該未露光部除去装置21を相対的に動作させて未露光部を除去する現像工程と、相対的な動作を継続させたまま未露光部除去装置21と当該感光性樹脂版Aとを引き離して非接触状態とする工程と、を含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷版の製造方法および製造装置に関する。さらに詳述すると、本発明は、印刷版の現像処理の際における不純物処理技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性樹脂からなる印刷版を製版する際には、所定のパターンに露光された印刷版を現像液によって現像する現像処理が行われている。この現像処理は、現像装置で行われ、現像液貯留タンクの現像液を印刷版に供給しながら、例えばブラシで印刷版表面を擦り、未硬化(未露光)の部分の感光性樹脂組成物を掻き落とすようにして除去することにより行われる。また、このようにして未硬化の感光性樹脂組成物を除去した後は、現像液あるいは界面活性剤を含む水などを供給しながら洗浄ブラシ等を使い印刷版の表面を洗浄することが行われる(例えば特許文献1〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−220773号公報
【特許文献2】特開平6−83072号公報
【特許文献3】特開平11−133625号公報
【特許文献4】特開平11−133626号公報
【特許文献5】特開平9−114102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記現像処理過程においてブラシを使い印刷版の表面から未硬化部分を除去し尚かつその後に洗浄しても、当該印刷版の表面になお不純物が付着している場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、印刷版の現像処理時に当該印刷版の表面に不純物が付着するのをさらに抑制することが可能な印刷版の製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するべく本発明者は種々の検討を行った。現像処理過程において印刷版の表面から未硬化(未露光)の感光性樹脂組成物を除去する際、現状では、例えばブラシを降下させ、ブラシを印刷版の表面に接触させた後に、垂直軸周りに回転させながら印刷版の表面に接触させて擦り、未硬化部分の感光性樹脂組成物を掻き落とすようにして除去しているのは上述したとおりである。ところが、現像処理後、印刷版からブラシを離してみると、当該ブラシが接触していた部分に、樹脂製の不純物(樹脂スカム等と呼ばれることがある)や、カーボン製の不純物(カーボンスカム等と呼ばれることがある)、あるいはこれらが一体化したような不純物が残存していることがある。このことに着目し、これまでの現像装置におけるブラシの動作(動かし方)について検討を重ねた本発明者は、従来、不純物の付着を少なくするためのブラシの動作については多くの技術が提案されてきたが、ブラシの移動(印刷版に対し近づけたり遠ざけたりする際の移動のさせ方)についての提案は皆無といえるような状況であることに気づき、さらに検討を重ねた結果、上述した課題の解決に結び付く新たな知見を得るに至った。
【0007】
本発明にかかる印刷版の製造方法はこのような知見に基づくもので、感光性樹脂版に活性光線を照射して露光部と未露光部とを形成する露光工程と、露光された感光性樹脂版を載置台に固定して現像液を供給し、かつ、感光性樹脂版と未露光部除去装置とを接触させ、感光性樹脂版に該未露光部除去装置を相対的に動作させて未露光部を除去する現像工程と、相対的な動作を継続させたまま未露光部除去装置と当該感光性樹脂版とを引き離して非接触状態とする工程と、を含んでいる。
【0008】
また、本発明にかかる印刷版の製造装置は、露光されて露光部と未露光部とが形成された感光性樹脂版に現像液を供給する現像液供給装置と、露光された感光性樹脂版に接触し、当該感光性樹脂版に対して相対的な動作をして未露光部を除去する未露光部除去装置と、を備え、感光性樹脂版に対する未露光部除去装置の相対的な動作を継続させたまま未露光部除去装置と当該感光性樹脂版とを引き離して非接触状態とする、というものである。
【0009】
印刷版の製造過程における現像処理後、印刷版に未露光部除去装置(一例として、ブラシ)を接触させたままでいると、例えばブラシの先端が曲がった状態で接触している等、何らかの圧力が作用したままであり、そうすると、現像処理工程の際に除去しきれなかった不純物、あるいは除去されたもののブラシ等に付いたままになっている不純物が印刷版の表面に押さえ付けられた状態となってしまう。このように印刷版の表面に押さえ付けられた不純物は、その後の洗浄工程においても除去されず、そのまま残存してしまうことがある。この点、本発明では、未露光部を除去する工程を終えてから感光性樹脂版と未露光部除去装置とを引き離すのではなく、未露光部を除去する工程の最中に感光性樹脂版と未露光部除去装置とを引き離し、それから感光性樹脂版と未露光部除去装置との相対的な動作(一例として、ブラシの回転動作)を停止させる。これによれば、当該印刷版の表面に残存する不純物を減少させることができる。
【0010】
上述のようにして印刷版を製造する際、感光性樹脂版として、マスク層を有するものを用いることが好ましい。
【0011】
また、上述した印刷版の製造方法が、未露光部除去装置と感光性樹脂版とを引き離して非接触状態とする工程のあとに更に現像液を版面に供給する洗浄工程を含むことも好ましい。
【0012】
また、印刷版を製造する際、現像工程で用いる現像液が、感光性樹脂版を構成する感光性樹脂組成物が分散している分散物フィルタに通し、現像液中に分散している感光性樹脂組成物を分散物フィルタで凝集させることと、分散物フィルタを通過した現像液から、凝集された感光性樹脂組成物を除去することによって得られた現像液であることも好ましい。さらに、この場合、感光性樹脂版を構成する感光性樹脂組成物が分散している現像液が、別の現像工程で使用された現像液であることがより好ましい。
【0013】
また、未露光部除去装置が、ブラシ状であることも好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、印刷版の現像処理時に当該印刷版の表面に不純物が付着するのをさらに抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】印刷版の製造装置の構成の概略を示す模式図である。
【図2】第1のフィルタ装置の構成の概略を示す縦断面の説明図である。
【図3】バスケットの斜視図である。
【図4】分散物フィルタを収容したバスケットの平面図である。
【図5】分散物フィルタの側面図である。
【図6】凝集物フィルタの平面図である。
【図7】現像液が分散物フィルタとバスケットを通過する際に凝集物が生成される様子を示す第1のフィルタ装置の一部の横断面の説明図である。
【図8】現像液が分散物フィルタとバスケットを通過する際に凝集物が生成される様子を示す第1のフィルタ装置の一部の縦断面の説明図である。
【図9】現像ブラシを「回転持ち上げ動作」させて印刷版の現像処理を行う場合の手順例を示す図である。
【図10】現像ブラシを用いた従来の現像処理の手順例を参考として示す図である。
【図11】製造装置の第2の形態に係る現像装置を示す模式図である。
【図12】製造装置の第2の形態に係る分散物フィルタを示す側面図である。
【図13】製造装置の第2の形態に係る現像液中に分散する感光性樹脂組成物の凝集過程を示す模式図である。
【図14】製造装置の第3の形態に係る現像装置を示す模式図である。
【図15】製造装置の第4の形態に係る現像装置を示す模式図である。
【図16】製造装置の第4の形態に係るバスケットを示す側面図である。
【図17】製造装置の第4の形態に係るバスケットを示す平面図である。
【図18】製造装置の第4の形態に係る分散物フィルタとバスケットを示す第1の模式図である。
【図19】製造装置の第4の形態に係る分散物フィルタとバスケットを示す第2の模式図である。
【図20】製造装置の第4の形態に係る分散物フィルタ、バスケット、及びハウジングを示す第1の模式図である。
【図21】製造装置の第4の形態に係る分散物フィルタ、バスケット、及びハウジングを示す第2の模式図である。
【図22】製造装置の第4の形態に係る現像液中に分散する感光性樹脂組成物の凝集過程を示す模式図である。
【図23】製造装置の第4の形態に係る分散物フィルタ及びバスケットを示す平面図である。
【図24】製造装置の第5の形態に係る現像装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる印刷版の製造装置1の構成の概略を示す模式図である。
【0017】
印刷版の製造装置1は、例えば印刷版Aに現像液を供給する現像液供給装置10、現像処理に使用された現像液を処理する現像液処理装置11等を有している。
【0018】
現像液供給装置10は、例えば印刷版Aを載置する載置台20と、載置台20上に載置された印刷版Aに現像液を供給しながら印刷版Aの表面を擦る現像ブラシ21と、印刷版Aに供給された現像液を回収するドレインパン22等を有している。
【0019】
現像ブラシ21には、例えばポンプ31を介して後述する現像液貯留タンク50に通じる現像液供給管30が接続されている。ドレインパン22には、現像液貯留タンク50に通じる現像液排出管32が接続されている。
【0020】
また、現像液供給装置10は、例えば現像ブラシ21による現像後に第1の洗浄液としての現像液を印刷版Aに供給しつつ、印刷版Aの表面を洗浄する第1の洗浄ユニット40と、第1の洗浄ユニット40による洗浄後に第2の洗浄液としての水を印刷版Aに供給しつつ、印刷版Aの表面を洗浄する第2の洗浄ユニット41を有している。第1の洗浄ユニット40は、現像液供給源42に通じる現像液供給管43が接続されている。現像液供給管43には、ポンプ44が接続されている。第2の洗浄ユニット41は、水供給源45に通じる水供給管46が接続されている。水供給源46には、ポンプ47が接続されている。第1の洗浄液としての現像液はまだ現像工程に供されていない新液を使うことが洗浄効率の観点から好ましい。第1の洗浄ユニット40および第2の洗浄ユニット41の形態は印刷版Aを洗浄することが出来れば特に制限されず、例えば平面状またはロール状のブラシの形態であってもよいし、各洗浄液を印刷版Aに噴きつける形態であってもよい。
【0021】
例えば載置台20は、図示しない移動機構によって、現像ブラシ21の下方から第1の洗浄ユニット40と第2の洗浄ユニット41の下方に移動できる。よって、印刷版Aは、現像ブラシ21により現像された後、第1の洗浄ユニット40の下方と第2の洗浄ユニット41の下方に順次移動し、それぞれで洗浄できる。
【0022】
現像液処理装置11は、例えば現像処理に使用された現像液を貯留する現像液貯留タンク50と、この現像液貯留タンク50から例えば吸引されて送られた現像液を濾過する現像液濾過装置52と、現像液濾過装置52により濾過された現像液を現像液貯留タンク50に戻す現像液循環装置53等を有している。
【0023】
現像液貯留タンク50の上部には、上記現像液排出管32が通じている。現像液貯留タンク50の例えば下部近傍には、上記現像液供給管30が接続されている。
【0024】
現像液濾過装置52は、例えば第1のフィルタ装置80と、第2のフィルタ装置81を有している。第1のフィルタ装置80は、現像液吸引管70、ポンプ71、送液管72を介して現像液貯留タンク50と接続されている。
【0025】
第1のフィルタ装置80は、例えば図2に示すように略円筒状のハウジング90と、ハウジング90内に収容されるバスケット91と、バスケット91の内面に装着される分散物フィルタ92を有している。
【0026】
ハウジング90は、側壁の上部の内面に内側に突出した係止部100を有し、上方から挿入されたバスケット91を係止部100に係止することができる。ハウジング90の係止部100よりも上部の側壁には、上記現像液貯留タンク50側に通じる送液管72が接続されている。ハウジング90の底部は、中央が低い傾斜面となっており、中央に第2のフィルタ装置81に通じる送液管101が接続されている。ハウジング90の天井部には、開閉自在な蓋部102が形成されている。
【0027】
バスケット91は、例えば図3に示すように上面が開口した略円筒状に形成されている。バスケット91は、例えば格子状に形成されており、上下方向に平行に並べて配置された複数のリング110と、リング110同士の内周を接続する短冊状の複数のスペーサ111と、底面を覆う格子部112を有している。
【0028】
リング110は、例えば軸方向(上下方向)の高さよりも径方向の幅が広い平板形状を有している。リング110は、上下方向に互いに間隔をおいて配置されている。図2に示すように最上部のリング110は、他のリング110より外径が大きく形成されており、ハウジング90の係止部100に係止できる。最上部以外のリング110の外周とハウジング90の内壁との間には、隙間Dが形成されている。
【0029】
スペーサ111は、一方向に長い略直方体の細板形状を有しており、リング110に対し垂直に配置され、リング110の内周に沿って並べて配置されている。スペーサ111は、図3及び図4に示すように幅の広い面がバスケット91の周方向に向いて、幅の狭い面がバスケット91の径方向に向くように配置されている。これにより、図4に示すように平面から見ると、径方向に長いスペーサ111が、放射状に配置されている。スペーサ111の外側面はリング110の内周面に接着されている。
【0030】
分散物フィルタ92は、図5に示すようにバックフィルタであり、図4に示すようにバスケット91の内面、つまりスペーサ111の内周面に装着できる。なお、分散物フィルタ92の材質として、例えばポリエステル、ビスコース、ポリプロピレン、ナイロン、ノーメックス、ウール、又はフッ素樹脂等の高分子が用いられる。また、分散物フィルタ92は、各繊維の直径が例えば50μm程度のものが好ましく、また、厚みは、0.01mm〜10mmのものが好ましく、密度は、0.05g/cm3〜1g/cm3のものが好ましい。
【0031】
分散物フィルタ92は、図2に示すように上部の鍔部92aを最上部のリング110上に広げ、その上に固定リング113を嵌めることにより固定することができる。
【0032】
第2のフィルタ装置81は、例えば、図1に示すようにフィルタタンク120と、凝集物フィルタ121を有している。凝集物フィルタ121の形状は、例えば図6に示すように平板状に形成されている。凝集物フィルタ121は、例えばナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、PET等から製造されるネット、目開き0.3mmのステンレスメッシュフィルター、布、及び不織布等により形成されている。凝集物フィルタ121は、例えばフィルタタンク120の上部に配置されている。第1のフィルタ装置80に通じる送液管101は、凝集物フィルタ121の上方に開口している。第1のフィルタ装置80から供給された現像液は、凝集物フィルタ121を通って、凝集物が除去された後、フィルタタンク120に貯留される。
【0033】
現像液循環装置53は、例えばフィルタタンク120の下部から現像液貯留タンク50に通じる送液管122と、送液管122に接続されたポンプ123を有している。
【0034】
また、この印刷版の製造装置1は、現像ブラシ21を相対動作させるためのアクチュエータを備えている。アクチュエータは、露光された後の印刷版Aに対して現像ブラシ21を接触させ、相対動作をさせて当該印刷版A上の未露光部を除去させうるものであれば特に限定されるものではない。例えば本実施の形態では、モータやシリンダなどを組み合わせ、現像ブラシ21を昇降させる昇降装置23および回転させる回転装置24を構成している(図1参照)。もちろん、現像ブラシ21を細かいストロークにて往復動させることにより振動させる構成、現像ブラシ21に対して載置台20を回転等させる構成、現像ブラシ21が複数の現像ブラシからなり、該複数の現像ブラシが各々独立して相対動作をする構成などとすることも可能である。
【0035】
<印刷版Aの製造方法>
次に、以上のように構成された印刷版の製造装置1を用いた印刷版の製造方法等について説明する。
【0036】
印刷版Aの製造処理においては、まず、所定のパターンに露光された印刷版Aが図1に示すように載置台20に載置され、次に、予め現像液貯留タンク50に貯留されていた現像液が現像液供給管30を通じて現像ブラシ21に供給される。なお、この現像液には、現像により印刷版Aから生じる分散物を凝集させる凝集剤を含まないものが用いられることが好ましい。
【0037】
そして、現像ブラシ21から印刷版Aに現像液が供給されながら、当該現像ブラシ21により印刷版Aの表面が擦られて、印刷版Aが現像される。このとき、印刷版Aからは、例えば現像液よりも比重が小さい感光性樹脂組成物等の不純物としての樹脂成分が生成され、当該樹脂成分が現像液中に分散或いは溶解される。或いは現像液よりも比重の大きい感光性樹脂組成物等の不純物としての樹脂成分が生成され、当該樹脂成分が現像液中に分散或いは溶解される。この現像液は、ドレインパン22及び現像液排出管32を通じて現像液貯留タンク50に戻される。なお、本実施形態での現像ブラシ21による印刷版Aの現像処理の詳細については後述する。
【0038】
次に印刷版Aは、洗浄工程として、載置台20により第1の洗浄ユニット40の下方まで水平移動され、第1の洗浄ユニット40から新しい現像液が供給された状態で、第1の洗浄ユニット40により洗浄される。例えばこの現像液もドレインパン22、現像液排出管32を通じて現像液貯留タンク50に排出される。続いて、印刷版Aは、載置台20により第2の洗浄ユニット41の下方まで水平移動され、水が供給された状態で、第2の洗浄ユニット41により洗浄される。こうして、印刷版Aが洗浄される。その後、乾燥処理等が行われ、一連の現像処理が終了して印刷版Aが出来上がる。
【0039】
上記印刷版の製造処理中、現像液処理装置11が稼働する。このとき、現像液に分散或いは溶解した感光性樹脂組成物等の不純物が現像液よりも比重が小さい場合は、ポンプ71が稼働し、現像液貯留タンク50の上層の現像液が吸引され、第1のフィルタ装置80のハウジング90内に供給されることが好ましい。現像液に分散或いは溶解した感光性樹脂組成物等の不純物が現像液よりも比重が大きい場合は、ポンプ71が稼働し、現像液貯留タンク50の下層の現像液が吸引され、第1のフィルタ装置80のハウジング90内に供給されることが好ましい。現像液は、ハウジング90の上部から分散物フィルタ92内に供給され、分散物フィルタ92とバスケット91を通過する。
【0040】
この際、例えば図7に示すように現像液中に分散している分散物としての樹脂成分Bが分散物フィルタ92内に蓄積する。分散物フィルタ92内の樹脂成分Bは、例えば分散物フィルタ92との摩擦により、表面の界面活性剤が除去され、凝集剤を添加しなくとも互いに凝集して、凝集物Cを形成する。凝集物Cは、分散物フィルタ92の入口圧と出口圧との圧力差(水圧)によって、分散物フィルタ92内から押し出される。
【0041】
なお、このときの分散物フィルタ92の入口圧Pinと出口圧Poutの圧力差ΔP(Pin−Pout)は、例えば0.02MPa≦ΔP≦2MPa、より好ましくは0.04MPa≦ΔP≦1MPa、さらに好ましくは0.06MPa≦ΔP≦0.5MPaに設定される。この圧力差ΔPの範囲では、圧力差による分散物フィルタ92自体や現像液処理装置11の他の構成要素への負担を軽減しつつ、樹脂成分Bの高い凝集効率を実現できる。
【0042】
圧力差ΔPの設定は、例えばポンプ71の出力の設定により行ってもよいし、分散物フィルタ92の入口面に別途所定のエアー圧を加えることにより行ってもよい。また、分散物フィルタ92の出口側の圧力を、ポンプやアスピレータ等を用いて減圧することによって行ってもよい。また、これらを併用してもよい。
【0043】
分散物フィルタ92を通過した凝集物Cは、バスケット91のスペーサ111同士の間をスペーサ111に沿って外側に押し出される。スペーサ111を通過した凝集物Cは、例えば図8に示すようにリング110上に堆積され、その後、現像液と共に、リング110とハウジング90との間の隙間Dからハウジング90の底部に落下する。
【0044】
その後、現像液は、第2のフィルタ装置81に送られ、凝集物フィルタ121を通過する。このとき、現像液から凝集物Cが除去される。凝集物Cが除去された現像液はフィルタタンク120に貯留される。
【0045】
フィルタタンク120の現像液は、ポンプ123によって送液管122を通じて現像液貯留タンク50に戻される。例えば印刷版の製造処理中、この現像液処理装置11による現像液の循環が継続して行われ、現像液貯留タンク50内の樹脂成分Bが除去される。なお、この現像液処理装置11による現像液の処理は、印刷版の製造処理中に常時行われてもよいし、断続的に行われてもよい。
【0046】
現像液濾過装置52は、分散物フィルタ92と、凝集物フィルタ121を有しているので、分散物フィルタ92で分散物である樹脂成分Bを凝集させ、凝集物フィルタ121で凝集物Cを除去することにより、各フィルタへの負担を軽減し、フィルタの取り換え寿命を延ばすことができる。
【0047】
現像液濾過装置52のバスケット91が、複数のリング110と、複数のスペーサ111を備えているので、例えば分散物フィルタ92の出口側で凝集物Cが詰まることがなく、分散物フィルタ92から凝集物Cを好適に押し出すことができる。
【0048】
スペーサ111が、放射状に配置されているので、任意の方向から凝集物Cを押し出すことができ、凝集物Cの押し出しを好適に行うことができる。
【0049】
複数のリング110の外周とハウジング90の内壁との間に、隙間Dが設けられているので、凝集物Cを滞ることなく適正に排出できる。
【0050】
現像液処理装置11は、現像液循環装置53を有しているので、濾過した現像液を現像液貯留タンク50に戻して再利用することができる。
【0051】
現像液が、分散物を凝集させる凝集剤を含まないので、コストを低減できる。また、凝集剤を除去する設備や作業が必要なく、現像液を濾過するだけで再利用できる。
【0052】
<現像ブラシ21の「回転持ち上げ動作」による印刷版Aの現像処理方法>
ここで、本実施形態での現像ブラシ21による印刷版Aの現像処理の詳細について以下に説明する。
【0053】
上述したように、本実施形態では、印刷版(感光性樹脂版)Aに活性光線を照射して露光部と未露光部とを形成した後、露光された印刷版Aを載置台20に固定して現像液(例えば、界面活性剤を含む水系の現像液)を供給しながら、当該印刷版Aと現像ブラシ(未露光部除去装置)21とを接触させ、印刷版Aに対して現像ブラシ21を動作させ、印刷版Aの表面を擦ることによって未露光部を除去する。ここでの動作は、印刷版Aと現像ブラシ21との間における相対的な動作であればよく、好ましくは印刷版Aの平面方向に対する相対的な動作である。例えば本実施形態では、載置台20を移動させながら、または停止させた状態で、上述したアクチュエータ(回転装置24)により現像ブラシ21を回転させ、印刷物Aの表面を擦るようにしている(図9(A)等参照)。
【0054】
さらに、本実施形態では、印刷版Aと現像ブラシ21との間における相対的な動作(本実施形態の場合、載置台20を移動させながら、または停止させた状態下で現像ブラシ21を回転させる動作)を継続させたまま、当該現像ブラシ21と印刷版Aとを引き離して非接触状態とするようにしている(「回転持ち上げ動作」)。こうした場合、樹脂スカム等とも呼ばれる樹脂製の不純物が印刷版Aの表面に付着するのを有効に防止することが可能になるという点で好適である。
【0055】
すなわち、印刷版Aの製造過程における現像処理後、印刷版Aにブラシを接触させたままでいると、例えば当該ブラシの先端が曲がった状態で接触している等、何らかの圧力が作用したままであり、現像処理工程の際に除去しきれなかった不純物、あるいは除去されたもののブラシ等に付いたままになっている不純物が当該印刷版Aの表面に押さえ付けられた状態となって残存してしまうことがある(図10参照)。つまり、ブラシ圧が加わったままの状態で当該ブラシの動作、現像液の供給をともに停止させ(図10(B)に示す洗浄終了動作(1))、その後にブラシを持ち上げる等して印刷版Aから引き離すと(図10(C)に示す洗浄終了動作(2))、不純物が印刷版Aの表面に不純物が付着したままとなってしまうことがある。
【0056】
この点、未露光部を除去する工程を終えてから印刷版Aと現像ブラシ21とを引き離すのではなく、未露光部を除去する工程の最中に印刷版Aと現像ブラシ21とを引き離し、それから当該印刷版Aと現像ブラシ21との相対的な動作(本実施形態の場合、現像ブラシ21の回転動作)を停止させる本実施形態によれば、当該印刷版Aの表面に残存する不純物を減少させることができる(図9参照)。具体的には、本実施形態では現像ブラシ21を回転させたまま現像液の供給を止め(図9(B)に示す洗浄終了動作(1))、その後、現像ブラシ21を回転させたまま、昇降装置23を動作させて当該現像ブラシ21を回転装置24とともに持ち上げ(図9(C)に示す洗浄終了動作(2))、印刷版Aから引き離すという「回転持ち上げ動作」を行うようにしている。なお、現像液の供給を止めてから現像ブラシ21を持ち上げるという動作手順は、現像液の飛び散りを防ぐという点において特に好ましい。
【0057】
<現像ブラシ21の「回転持ち上げ動作」による印刷版Aの現像処理の実施例>
デジタル版のサンプル印刷版Aを用い、現像ブラシ21の「回転持ち上げ動作」による現像処理の効果を確認するための実験を行った。なお、デジタル版の印刷版Aとは、感光性樹脂層の表面にカーボン層からなる赤外線アブレージョン層(ブラックレイヤー、BLと称することがある)があり、所定部分をレーザーで焼き飛ばしてから、紫外線による露光で硬化させ、洗浄を実施するというものである。一方、アナログ版の印刷版Aとは、感光性樹脂の表面に、赤外線アブレージョン層ではない透明の保護層があり、ネガフィルムを版の上において真空密着させて露光を実施するというものである。アナログ版の場合、赤外線アブレージョン層が無いため、印刷版Aの表面へのBL(ブラックレイヤー)の付着は生じない。
【0058】
本実施例においては、フィルタ(上述した分散物フィルタ92、凝集物フィルタ121)の有無、現像ブラシの「回転持ち上げ動作」の有無、載置台(以下、版セッターともいう)20の移動速度(戻り速度)の条件の違いにより、サンプル印刷版Aの表面への樹脂およびBLの各不純物の付着度合いを調べた(表1参照)。なお、版セッター20の戻り速度4500mm/minは印刷版Aの製造装置1における通常的な速度であり、2250mm/minはその半分の速度である。
【表1】
【0059】
実施例(a)の場合(フィルタ無し、ブラシ回転持ち上げ不実施の場合)、版セッター20の戻り速度の高低にかかわらず、樹脂、BLそれぞれの付着数に変化はなかった。
【0060】
実施例(b)の場合(フィルタ無し、ブラシ回転持ち上げ実施の場合)、上記実施例(a)と比べ、樹脂、BLの付着数がそれぞれ減少した。
【0061】
実施例(c)の場合(フィルタ有り、ブラシ回転持ち上げ不実施の場合)、上記実施例(a)と比べ、樹脂、BLの付着数がそれぞれ大幅に減少した。この結果から、フィルタ(分散物フィルタ92、凝集物フィルタ121)を取り付けると不純物の付着が大幅に抑制されることを確認した。
【0062】
実施例(d)の場合(フィルタ有り、ブラシ回転持ち上げ不実施の場合)、上記実施例(c)と比べ、樹脂、BLの付着数がそれぞれさらに減少した。この結果から、「ブラシ回転持ち上げ」による不純物付着抑制のための対策を講じると付着数が減少することを確認した。
【0063】
以上の結果から明らかなように、印刷版Aの現像処理時、「ブラシ回転持ち上げ」を実施することにより、当該印刷版Aの表面に不純物が付着するのを抑制することが可能となることが確認された。また、版セッター20の移動速度(戻り速度)を適宜遅くすることにより、当該印刷版Aの表面に不純物が付着するのをさらに抑制することが可能となることも確認された。
【0064】
なお、アナログ版・デジタル版の印刷版Aの樹脂成分は殆ど同じであるため、樹脂の付着しやすさは同じと考えられる。本実施例はデジタル版のサンプル印刷版Aを用いたものであるが、このことからすれば、アナログ版の印刷版Aを用いた場合には、仮にフィルタがなくても樹脂の付着を20個(版セッター20の移動速度を遅くすると15個)程度にまで減少させることができると予想される。
【0065】
<製造装置1の第2の形態>
続いて、フィルタ等の構成が異なる別形態の製造装置1について以下に説明する(図11等参照)。
【0066】
図11に示すように、現像液205は、現像液貯留タンク50に一時的に貯められている。現像液貯留タンク50には、ポンプ等の供給装置231が接続されている。現像液貯留タンク50中の現像液205は、供給装置231を介して、印刷版Aに連続的に供給され、現像ブラシ21を用いて、印刷版Aから感光性樹脂組成物層の未露光部分の感光性樹脂組成物が除去される。現像液205中に分散又は溶解した感光性樹脂組成物は、現像液205に含まれる界面活性剤によって覆われるため、現像液205中で凝集せずに分散された状態を維持する傾向にある。ただし、一部の分散状態の感光性樹脂組成物は現像液205中にて凝集し、現像液タンクの液表面に浮遊することもある。分散している感光性樹脂組成物のそれぞれの大きさは、例えば10〜70μmである。
【0067】
ここで、凝集した感光性樹脂組成物は親水性ポリマーを主成分とするものであり、使用する感光性樹脂版によっては熱可塑性エラストマーや、可塑剤、赤外線アブレージョン層成分を含むが、光重合性不飽和単量体や光重合開始剤等は現像液に溶解するため、凝集物の中には実質的に含まれない。これは、後述の分散物フィルタで凝集された感光性樹脂組成物に共通して言える。
【0068】
分散した感光性樹脂組成物を含む現像液205は、ドレインパン22を経て現像液貯留タンク50に再び戻される。現像液貯留タンク50には、ポンプ等の供給装置232がさらに接続されている。現像液貯留タンク50に貯められ、分散した感光性樹脂組成物を含む現像液205は、供給装置232を介して、少なくとも一部が筒状の分散物フィルタ213の筒状部分の内部に送られる。側面図である図12に示すように、分散物フィルタ213は、例えば袋状のバッグフィルタであり、ポリエステル、ビスコース、ポリプロピレン、ナイロン、ノーメックス、ウール、又はフッ素樹脂等の高分子からなるが、これらに限定されない。分散物フィルタ213が高分子からなる場合、各繊維の直径は、例えば50μmである。また、図11に示すように、分散物フィルタ213は、略円筒形でメッシュ状のバスケット207に収納されており、バスケット207は円筒状のハウジング211に格納されている。また、分散物フィルタ213は、固定リング216によって、ハウジング211の内部に固定されている。ハウジング211は、アルミニウム、及びステンレス等の金属からなるが、これに限定されない。
【0069】
分散した感光性樹脂組成物を含む現像液205を、袋状の分散物フィルタ213の内部から外部に通すと、図13に示すように、感光性樹脂組成物261a,261b,261c・・・が分散物フィルタ213の膜内に蓄積する。膜内に蓄積した感光性樹脂組成物261a,261b,261c・・・は、例えば分散物フィルタ213との摩擦により、表面を覆っていた界面活性剤が除去され、凝集剤を添加しなくとも互いに凝集し、凝集物262を形成する。凝集物262は、水圧によって、分散物フィルタ213の膜内から外部に押し出され、分散物フィルタ213の外側と、バスケット207の内側との間等に堆積する。
【0070】
また、現像液205は、現像で剥離した赤外線アブレージョン層の成分を含みうる。現像液205が赤外線アブレージョン層の成分を含んでいる場合、赤外線アブレージョン層の成分は、分散物フィルタ213で形成される凝集物262中に取り込まれる。したがって、分散物フィルタ213によって、現像液205中に分散する感光性樹脂組成物の凝集と、赤外線アブレージョン層の成分の捕捉とを、同時に、かつ好適に行うことが可能である。なお、現像液205に含まれる赤外線アブレージョン層の成分が、図11に示す印刷版Aが現像される前から現像液に含まれている場合も同様である。
【0071】
ここで、図11に示す現像液205の流れの上流側に対向する分散物フィルタ213の面側の空間の圧力、具体的には、袋状の分散物フィルタ213の内面側の空間の圧力をP1とし、現像液205の流れの下流側に対向する分散物フィルタ213の面側の空間の圧力、具体的には、袋状の分散物フィルタ213の外面側の空間の圧力をP2とする。この場合、圧力P1と圧力P2との関係は、好ましくは0.02MPa≦P1−P2≦2MPaであり、より好ましくは0.04MPa≦P1−P2≦1MPaであり、よりさらに好ましくは0.06MPa≦P1−P2≦0.5MPaである。圧力P1と圧力P2との差が0.02MPa未満である場合、図13に示す感光性樹脂組成物261a,261b,261c・・・が凝集しにくくなる傾向にある。また、圧力P1と圧力P2との差が2MPaより大きい場合、分散物フィルタ213や現像装置の他の構成要素への負担が大きくなる傾向にある。
【0072】
圧力P1と圧力P2との差は、例えばP2が大気圧の場合、図11に示すポンプ等の供給装置232によって分散物フィルタ213の内面側の空間の圧力P1を加圧することで設定可能である。なお、袋状の分散物フィルタ213の内側の面にエアー圧を加えてもよい。これら分散物フィルタ213の内面側の空間の圧力P1を加圧する場合、分散物フィルタ213の内面側の空間は、分散物フィルタ213も外壁であると考えた場合、実質的に閉空間になっていることが好ましい。あるいは、袋状の分散物フィルタ213の外側面の空間の圧力を、ポンプ及びアスピレータ等で減圧してもよい。分散物フィルタ213の外面側の空間の圧力P2を減圧する場合、分散物フィルタ213の外面側の空間は、分散物フィルタ213も外壁であると考えた場合、実質的に閉空間になっていることが好ましいし、これらを併用してもよい。
【0073】
図13に示す分散物フィルタ213の厚みは、凝集効率の観点から、好ましくは0.01mm以上、10mm以下であり、より好ましくは0.5mm以上、5mm以下である。厚みが0.01mm未満である場合、分散している感光性樹脂組成物の凝集効率が低下する傾向にある。また、厚みが10mmより大きい場合、分散物フィルタ213に加わる圧力が上昇する傾向にある。なお、厚みは、ミツトヨ製の厚み計ID−F125をBIEFFEBI Spessimetor2に取り付け、直径1cmの接触面に1.0kgの荷重がかかるように設定して、測定可能である。
【0074】
また、分散物フィルタ213が合成高分子樹脂からなる場合、分散物フィルタ213の密度は、好ましくは0.05g/cm3以上、1g/cm3以下であり、より好ましくは0.07g/cm3以上、0.5g/cm3以下である。密度が0.05g/cm3未満である場合、分散している感光性樹脂組成物の凝集効率が低下する傾向にある。また、密度が1g/cm3より高い場合、分散物フィルタ213に加わる圧力が上昇する傾向にある。なお、密度は、分散物フィルタ213を10cm×10cmに切断し、重量を計ることにより算出可能である。また、分散物フィルタ213が金属からなる場合、目開きが1種類のフィルタを用いてもよいし、同じ又は異なる目開きのフィルタを複層に配置してもよい。
【0075】
例えば、現像液100質量部に対して、分散状態の感光性樹脂組成物が0.16質量部以上、6質量部以下、限定すれば、0.6質量部以上、3質量部以下であれば、分散物フィルタ213によって、分散状態の感光性樹脂組成物が好適に凝集される。
【0076】
図11に示すように、分散物フィルタ213を通過した現像液205は、凝集物フィルタ215に供給される。分散物フィルタ213を通過した現像液205は、分散物フィルタ213で凝集された凝集物を含みうる。凝集物フィルタ215は、現像液205に含まれる凝集物262を捕捉する。凝集物フィルタ215の形状及び材質は、現像液205に含まれる凝集物262を補足可能である限り、限定されない。ただし、凝集物262を捕捉する凝集物フィルタ215は、捕捉された凝集物262の量が凝集物フィルタ215の容量に近づいたところで、次の凝集物フィルタ215に交換する必要があるため、定期的に交換及び搬出可能な形状及び材質を用いることが好ましい。例えば、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、PET等から製造されるネット、目開き0.3mmのステンレスメッシュフィルター、布、及び不拭布等が凝集物フィルタ215に使用可能であるが、これらに限定されない。また、凝集物フィルタ215を設置形態は特に制限されず、図11に示すように凝集物フィルタ215を通過した現像液205が直接現像液貯留タンク50に入るように設置する形態であっても良いし、凝集物フィルタ215をドレインパン22の内部に設置して、凝集物フィルタ215を通過した現像液205がドレインパン22を介して現像液貯留タンク50に入る形態であっても良い。
【0077】
凝集物フィルタ215を通過した現像液205は、現像液貯留タンク50に再び戻される。以上説明した、第2の実施の形態にかかる現像装置によれば、分散物フィルタ213によって現像液205中に分散する感光性樹脂組成物を凝集し、凝集物フィルタ215によって現像液205から凝集物を効率的に除去することが可能となる。また、界面活性剤を弱める凝集剤を用いることなく、分散物フィルタ213によって感光性樹脂組成物を凝集するため、凝集物フィルタ215を通過した現像液205を再度現像工程に使用することが可能となる。
【0078】
従来、現像液を再利用する技術はあるが、従来技術では、現像液中に分散する感光性樹脂組成物を捕捉出来る目の細かいフィルタを使用すると、短時間で目詰まりを起こし頻繁にフィルタ交換を行う必要がある。そのため、目の粗いフィルタでろ過した現像液を再利用すると、現像液中に分散する感光性樹脂組成物が印刷版の表面に付着及び凝集し、製造される印刷版の品質が低下する。また、凝集剤を使用することで分散している樹脂成分を凝集する方法もあるが、凝集剤を添加された現像液を再利用すると、感光性樹脂組成物層の未露光部分における感光性樹脂組成物が現像液中に分散した後、凝集剤によって直ちに凝集されて感光性樹脂組成物層に付着し、製造される印刷版の品質がやはり低下する。あるいは、従来技術では、pHを制御したり、温度を制御したりして界面活性剤を弱め、現像液中に分散する感光性樹脂組成物を凝集させるが、操作が煩雑である。
【0079】
これに対し、第2の実施の形態に係る現像装置によれば、現像液205中に分散する感光性樹脂組成物を、凝集剤を用いることもなく、目の細かいフィルタを使用しても効果的に除去可能である。また、pHや温度等の制御も不要である。そのため、現像液205中に分散する感光性樹脂組成物を、短時間で、簡易に、低いコストで除去することが可能である。したがって、製造される印刷版の品質を、低いコストで向上させることが可能となる。なお、第2の実施の形態に係る現像装置においては、現像液205に凝集剤を添加すると、分散物フィルタ213に目詰まりが生じうる。したがって、凝集剤は、むしろ用いないことが好ましい。
【0080】
さらに、現像液貯留タンク50中の現像液205の表面に自然に発生して浮遊した凝集物や、現像液貯留タンク50の底部に沈降した凝集物を、選択的に吸引して分散物フィルタ213に供給して除去してもよい。現像液貯留タンク50中で凝集した凝集物を選択的に吸引して分散物フィルタ213に供給することにより、凝集物が過度に大きくなる前に回収することが可能であり、作業者が現像液貯留タンク50を清掃する頻度を減らすことが出来る。なお、凝集物が現像液貯留タンク50中の現像液205表面に浮遊する傾向にある場合は、凝集物の成長の観点から、現像液貯留タンク50の上部近傍から現像液205を吸引し、分散物フィルタ213に供給することが好ましい。また、凝集物が現像液貯留タンク50中の底面に沈殿する傾向にある場合は、現像液貯留タンク50の底面近傍から現像液205を吸引し、分散物フィルタ213に供給することが好ましい。
【0081】
<製造装置1の第3の形態>
第2の実施の形態においては、図11に示す分散物フィルタ213が袋状のバッグフィルタであり、高分子からなる例を示した。これに対し、図14に示す第3の実施の形態に係る現像装置において、袋状の分散物フィルタ208は、アルミニウムやステンレス等の金属からなり、例えば目開き10μmのメッシュが設けられている。分散物フィルタ208が金属からなる場合、分散物フィルタ208を収納するバスケットはなくてもよい。第3の実施の形態に係る現像装置のその他の構成要素は、第2の実施の形態と同様である。なお、図14においては、便宜的に、分散物フィルタ208を側面図で示し、ハウジング211を断面図で示している。第3の実施の形態に係る現像装置においても、現像液205に分散する感光性樹脂組成物を、分散物フィルタ208で効果的に凝集させることが可能となる。
【0082】
<製造装置1の第4の形態>
図15に示す第4の実施の形態に係る現像装置において、分散物フィルタ213は、第2の実施の形態と同様に、袋状のバッグフィルタであり、例えば高分子からなる。また、分散物フィルタ213を収納するバスケット212は、側面図である図16、及び平面図である図17に示すように、略円筒形であり、それぞれの中心が同一線上に並ぶよう、平行に配置された複数のリング211a、211b,211c,211d,211e,211fと、複数のリング211a−211fのそれぞれの内周を接続する短冊状の複数のスペーサ212a,212b,212c,212d,212e,212f,212g,212h,212i・・・と、を備える。
【0083】
複数のリング211a−211fの形状は、例えば、合同である。また、複数のスペーサ212a−212iの形状も、例えば、合同である。複数のスペーサ212a−212iは、複数のリング211a−211fのそれぞれの内周に接するように、放射状に配置されている。具体的には、複数のスペーサ212a−212iは、複数のリング211a−211fのそれぞれの内周の接線に対して、垂直に配置されている。複数のリング211a−211f、及び複数のスペーサ212a−212iは、アルミニウム、及びステンレス等の金属からなるが、これに限定されない。
【0084】
図18及び図19に示すように、複数のスペーサ212a−212iの内側に、分散物フィルタ213が収納される。分散物フィルタ213が収納されたバスケット212は、図20に示すように、円筒状のハウジング211に格納され、図21に示すように蓋214をされる。なお、図15、図20、及び図21においては、便宜的に、分散物フィルタ213及びバスケット212を側面図で示し、ハウジング211を断面図で示している。ハウジング211にバスケット212が格納された際、バスケット212の複数のスペーサ212a−212iのそれぞれと、ハウジング211の内壁との間には、すき間が設けられる。また、バスケット212の複数のリング211a−211fと、ハウジング211の内壁との間にも、すき間が設けられる。
【0085】
図22に示すように、分散物フィルタ213を通過することによって、感光性樹脂組成物261a,261b,261c・・・が凝集し、分散物フィルタ213の外側と、バスケット212の複数のリング211a−211dとの間に凝集物262が堆積する。また、バスケット212のリング211a−211dと、ハウジング211の内壁との間には、すき間が設けられているため、リング211a−211d上から遊離した凝集物262は、下流に流される。なお、すき間が設けられていない場合、図21に示すバスケット212の複数のスペーサ212a−212iのそれぞれと、ハウジング211の内壁との間、あるいはバスケット212のリング211a−211dと、ハウジング211の内壁との間が凝集物で密閉され、現像液205の流動性が低下し、分散物フィルタ213に過剰な圧力がかかる場合が生じうる。そのため、複数のスペーサ212a−212iのそれぞれと、ハウジング211の内壁との間、並びにリング211a−211dと、ハウジング211の内壁との間にすき間を設け、複数のスペーサ212a−212i及びリング211a−211dが、分散物フィルタ213、現像液205、及び凝集物以外のものとは接触しないことが好ましい。すき間の幅は、例えば8mmである。
【0086】
図23に示す複数のスペーサ212a−212iが配置される間隔Dは、5mm以上、50mm以下が好ましい。間隔Dが5mm未満の場合、袋状の分散物フィルタ213の外側において、凝集物が堆積する空間を確保することが困難となる傾向にある。また、袋状の分散物フィルタ213の内側には、外側よりも0.02MPa以上高い圧力がかかるため、間隔Dが50mmより大きい場合、袋状の分散物フィルタ213が撓みやすくなる傾向にある。間隔Dを5mm以上、50mm以下とすることにより、分散物フィルタ213の撓みが防止され、分散物フィルタ213に加わる圧力の偏りが低減される。これにより、現像液205中に分散する感光性樹脂組成物を効率的に凝集し、かつ図15に示す凝集物フィルタ215に凝集物262を効率的に押し流すことが可能となる。
【0087】
図23に示す複数のスペーサ212a−212iのそれぞれの幅Lは、好ましくは3mm以上、30mm以下であるが、これに限定されない。また、複数のスペーサ212a−212iのそれぞれの厚みWは、複数のスペーサ212a−212iが配置される間隔Dより短い。厚みWは、好ましくは間隔Dの1/1000以上、1/2以下であり、より好ましくは1/100以上、1/5以下であり、よりさらに好ましくは1/70以上、1/10以下であるが、これらに限定されない。
【0088】
また、分散物フィルタ213の外側や、バスケット212上に堆積した凝集物は、水圧により、凝集物フィルタ215に押し流されるが、ヘラやブラシ等で堆積した凝集物を掻き落としたり、液体や気体を利用して堆積した凝集物を剥離したりしてもよい。これにより、製造される印刷版の品質を、より向上させることが可能となる。
【0089】
図15に示す第4の実施の形態に係る現像装置のその他の構成要素は、第2の実施の形態と同様である。第4の実施の形態に係る現像装置においても、現像液205に分散する感光性樹脂組成物を、分散物フィルタ213で効果的に凝集させることが可能となり、さらに、分散物フィルタ213で形成された凝集物262を凝集物フィルタ215に効率的に運搬することが可能となる。
【0090】
<製造装置1の第5の形態>
第5の実施の形態に係る現像装置は、図24に示すように、洗浄ユニット251をさらに備える。また、図15に示した現像装置と異なり、図24に示す現像装置において、凝集物フィルタ215を通過した現像液205は、ポンプ等の供給装置233によって、洗浄ユニット251の近傍に供給される。また、供給装置231で供給された現像液205及び現像ブラシ21を用いて、未露光部分の感光性樹脂組成物が選択的に除去された印刷版Aは、載置台20によって、洗浄ユニット251の下方に搬送される。
【0091】
洗浄ユニット251の下方に印刷版Aが搬送された場合、供給装置231は、凝集物フィルタ215を通過した現像液205を印刷版Aに噴射してもよいし、表面が現像液で覆われる様に供給してもよい。なお、凝集物フィルタ215を通過した現像液205中に印刷版Aを浸漬させてもよい。さらに、洗浄ユニット251で印刷版A表面を磨くことにより、印刷版Aの表面に残存しうる分散した感光性樹脂組成物を含む現像液205や、凝集した感光性樹脂組成物が除去される。
【0092】
従来技術では、感光性樹脂版の現像に使用した現像液を感光性樹脂版の洗浄に再利用すると、現像液中に分散した感光性樹脂組成物が感光性樹脂版に再び付着するおそれがある。そのため、従来技術では、未使用の新しい現像液を用いて感光性樹脂版を洗浄している。これに対し、第5の実施の形態に係る現像装置においては、分散物フィルタ213によって、現像液205中に分散した感光性樹脂組成物が凝集され、凝集物フィルタ215によって、凝集した感光性樹脂組成物が捕捉される。そのため、凝集物フィルタ215を通過した現像液205において、分散した感光性樹脂組成物の濃度は極めて低い。また、凝集物フィルタ215を通過した現像液205には、凝集剤等が添加されていない。したがって、凝集物フィルタ215を通過した現像液205を、現像後の印刷版Aの洗浄に再利用することが可能となる。また、凝集物フィルタ215を通過した現像液205を再利用することにより、現像液205の使用量を低減させ、現像工程のコストを低減することも可能となる。
【0093】
第5の実施の形態に係る現像装置は、洗浄ユニット252、水洗ブラシ253をさらに複数本、備えていてもよい。洗浄後の印刷版Aが、載置台20によって、洗浄ユニット252及び水洗ブラシ253の下方に搬送された場合、印刷版Aは洗浄ユニット252からは樹脂成分を含まない現像液、水洗ブラシ253からは純水等を噴射され、洗浄ユニット252及び水洗ブラシ253で磨かれる。これにより、印刷版A表面に残存する樹脂成分と現像液をより洗い流すことが可能となる。なお、洗浄ユニット252から噴射される現像液に、凝集物フィルタ215を通過した現像液205を使用してもよい。凝集物フィルタ215を通過した現像液205を使用することにより、新しく用意する現像液の量を少なくすることが可能となる。
【0094】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0095】
例えば、以上の実施形態では未露光部除去装置として現像ブラシ21を用いる場合について説明したが、かかる現像ブラシ21は好適な一例に過ぎない。このような現像ブラシ以外にも、ゴムヘラ等、現像処理時に印刷版Aの未露光部を除去しうる装置であれば未露光部除去装置として用いることが可能である。
【0096】
また、以上の実施形態においては現像ブラシ21の持ち上げ方(樹脂版Aからの引き離し方)については言及していないが、その態様は特に限定されるものではなく、例えば一定速度で引き離したり、あるいは段階的に動作させて徐々に引き離したりするなど、適宜変更して構わない。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、印刷版の現像処理時に当該印刷版の表面に不純物が付着するのを抑制するという要請・要望のある製造方法および製造装置に適用して好適である。
【符号の説明】
【0098】
1…印刷版の製造装置、10…現像液供給装置、20…版セッター(載置台)、21…現像ブラシ(未露光部除去装置)、92(213)…分散物フィルタ、205…現像液、241…ステージ(載置台),A…印刷版(感光性樹脂版)
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷版の製造方法および製造装置に関する。さらに詳述すると、本発明は、印刷版の現像処理の際における不純物処理技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性樹脂からなる印刷版を製版する際には、所定のパターンに露光された印刷版を現像液によって現像する現像処理が行われている。この現像処理は、現像装置で行われ、現像液貯留タンクの現像液を印刷版に供給しながら、例えばブラシで印刷版表面を擦り、未硬化(未露光)の部分の感光性樹脂組成物を掻き落とすようにして除去することにより行われる。また、このようにして未硬化の感光性樹脂組成物を除去した後は、現像液あるいは界面活性剤を含む水などを供給しながら洗浄ブラシ等を使い印刷版の表面を洗浄することが行われる(例えば特許文献1〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−220773号公報
【特許文献2】特開平6−83072号公報
【特許文献3】特開平11−133625号公報
【特許文献4】特開平11−133626号公報
【特許文献5】特開平9−114102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記現像処理過程においてブラシを使い印刷版の表面から未硬化部分を除去し尚かつその後に洗浄しても、当該印刷版の表面になお不純物が付着している場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、印刷版の現像処理時に当該印刷版の表面に不純物が付着するのをさらに抑制することが可能な印刷版の製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するべく本発明者は種々の検討を行った。現像処理過程において印刷版の表面から未硬化(未露光)の感光性樹脂組成物を除去する際、現状では、例えばブラシを降下させ、ブラシを印刷版の表面に接触させた後に、垂直軸周りに回転させながら印刷版の表面に接触させて擦り、未硬化部分の感光性樹脂組成物を掻き落とすようにして除去しているのは上述したとおりである。ところが、現像処理後、印刷版からブラシを離してみると、当該ブラシが接触していた部分に、樹脂製の不純物(樹脂スカム等と呼ばれることがある)や、カーボン製の不純物(カーボンスカム等と呼ばれることがある)、あるいはこれらが一体化したような不純物が残存していることがある。このことに着目し、これまでの現像装置におけるブラシの動作(動かし方)について検討を重ねた本発明者は、従来、不純物の付着を少なくするためのブラシの動作については多くの技術が提案されてきたが、ブラシの移動(印刷版に対し近づけたり遠ざけたりする際の移動のさせ方)についての提案は皆無といえるような状況であることに気づき、さらに検討を重ねた結果、上述した課題の解決に結び付く新たな知見を得るに至った。
【0007】
本発明にかかる印刷版の製造方法はこのような知見に基づくもので、感光性樹脂版に活性光線を照射して露光部と未露光部とを形成する露光工程と、露光された感光性樹脂版を載置台に固定して現像液を供給し、かつ、感光性樹脂版と未露光部除去装置とを接触させ、感光性樹脂版に該未露光部除去装置を相対的に動作させて未露光部を除去する現像工程と、相対的な動作を継続させたまま未露光部除去装置と当該感光性樹脂版とを引き離して非接触状態とする工程と、を含んでいる。
【0008】
また、本発明にかかる印刷版の製造装置は、露光されて露光部と未露光部とが形成された感光性樹脂版に現像液を供給する現像液供給装置と、露光された感光性樹脂版に接触し、当該感光性樹脂版に対して相対的な動作をして未露光部を除去する未露光部除去装置と、を備え、感光性樹脂版に対する未露光部除去装置の相対的な動作を継続させたまま未露光部除去装置と当該感光性樹脂版とを引き離して非接触状態とする、というものである。
【0009】
印刷版の製造過程における現像処理後、印刷版に未露光部除去装置(一例として、ブラシ)を接触させたままでいると、例えばブラシの先端が曲がった状態で接触している等、何らかの圧力が作用したままであり、そうすると、現像処理工程の際に除去しきれなかった不純物、あるいは除去されたもののブラシ等に付いたままになっている不純物が印刷版の表面に押さえ付けられた状態となってしまう。このように印刷版の表面に押さえ付けられた不純物は、その後の洗浄工程においても除去されず、そのまま残存してしまうことがある。この点、本発明では、未露光部を除去する工程を終えてから感光性樹脂版と未露光部除去装置とを引き離すのではなく、未露光部を除去する工程の最中に感光性樹脂版と未露光部除去装置とを引き離し、それから感光性樹脂版と未露光部除去装置との相対的な動作(一例として、ブラシの回転動作)を停止させる。これによれば、当該印刷版の表面に残存する不純物を減少させることができる。
【0010】
上述のようにして印刷版を製造する際、感光性樹脂版として、マスク層を有するものを用いることが好ましい。
【0011】
また、上述した印刷版の製造方法が、未露光部除去装置と感光性樹脂版とを引き離して非接触状態とする工程のあとに更に現像液を版面に供給する洗浄工程を含むことも好ましい。
【0012】
また、印刷版を製造する際、現像工程で用いる現像液が、感光性樹脂版を構成する感光性樹脂組成物が分散している分散物フィルタに通し、現像液中に分散している感光性樹脂組成物を分散物フィルタで凝集させることと、分散物フィルタを通過した現像液から、凝集された感光性樹脂組成物を除去することによって得られた現像液であることも好ましい。さらに、この場合、感光性樹脂版を構成する感光性樹脂組成物が分散している現像液が、別の現像工程で使用された現像液であることがより好ましい。
【0013】
また、未露光部除去装置が、ブラシ状であることも好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、印刷版の現像処理時に当該印刷版の表面に不純物が付着するのをさらに抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】印刷版の製造装置の構成の概略を示す模式図である。
【図2】第1のフィルタ装置の構成の概略を示す縦断面の説明図である。
【図3】バスケットの斜視図である。
【図4】分散物フィルタを収容したバスケットの平面図である。
【図5】分散物フィルタの側面図である。
【図6】凝集物フィルタの平面図である。
【図7】現像液が分散物フィルタとバスケットを通過する際に凝集物が生成される様子を示す第1のフィルタ装置の一部の横断面の説明図である。
【図8】現像液が分散物フィルタとバスケットを通過する際に凝集物が生成される様子を示す第1のフィルタ装置の一部の縦断面の説明図である。
【図9】現像ブラシを「回転持ち上げ動作」させて印刷版の現像処理を行う場合の手順例を示す図である。
【図10】現像ブラシを用いた従来の現像処理の手順例を参考として示す図である。
【図11】製造装置の第2の形態に係る現像装置を示す模式図である。
【図12】製造装置の第2の形態に係る分散物フィルタを示す側面図である。
【図13】製造装置の第2の形態に係る現像液中に分散する感光性樹脂組成物の凝集過程を示す模式図である。
【図14】製造装置の第3の形態に係る現像装置を示す模式図である。
【図15】製造装置の第4の形態に係る現像装置を示す模式図である。
【図16】製造装置の第4の形態に係るバスケットを示す側面図である。
【図17】製造装置の第4の形態に係るバスケットを示す平面図である。
【図18】製造装置の第4の形態に係る分散物フィルタとバスケットを示す第1の模式図である。
【図19】製造装置の第4の形態に係る分散物フィルタとバスケットを示す第2の模式図である。
【図20】製造装置の第4の形態に係る分散物フィルタ、バスケット、及びハウジングを示す第1の模式図である。
【図21】製造装置の第4の形態に係る分散物フィルタ、バスケット、及びハウジングを示す第2の模式図である。
【図22】製造装置の第4の形態に係る現像液中に分散する感光性樹脂組成物の凝集過程を示す模式図である。
【図23】製造装置の第4の形態に係る分散物フィルタ及びバスケットを示す平面図である。
【図24】製造装置の第5の形態に係る現像装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる印刷版の製造装置1の構成の概略を示す模式図である。
【0017】
印刷版の製造装置1は、例えば印刷版Aに現像液を供給する現像液供給装置10、現像処理に使用された現像液を処理する現像液処理装置11等を有している。
【0018】
現像液供給装置10は、例えば印刷版Aを載置する載置台20と、載置台20上に載置された印刷版Aに現像液を供給しながら印刷版Aの表面を擦る現像ブラシ21と、印刷版Aに供給された現像液を回収するドレインパン22等を有している。
【0019】
現像ブラシ21には、例えばポンプ31を介して後述する現像液貯留タンク50に通じる現像液供給管30が接続されている。ドレインパン22には、現像液貯留タンク50に通じる現像液排出管32が接続されている。
【0020】
また、現像液供給装置10は、例えば現像ブラシ21による現像後に第1の洗浄液としての現像液を印刷版Aに供給しつつ、印刷版Aの表面を洗浄する第1の洗浄ユニット40と、第1の洗浄ユニット40による洗浄後に第2の洗浄液としての水を印刷版Aに供給しつつ、印刷版Aの表面を洗浄する第2の洗浄ユニット41を有している。第1の洗浄ユニット40は、現像液供給源42に通じる現像液供給管43が接続されている。現像液供給管43には、ポンプ44が接続されている。第2の洗浄ユニット41は、水供給源45に通じる水供給管46が接続されている。水供給源46には、ポンプ47が接続されている。第1の洗浄液としての現像液はまだ現像工程に供されていない新液を使うことが洗浄効率の観点から好ましい。第1の洗浄ユニット40および第2の洗浄ユニット41の形態は印刷版Aを洗浄することが出来れば特に制限されず、例えば平面状またはロール状のブラシの形態であってもよいし、各洗浄液を印刷版Aに噴きつける形態であってもよい。
【0021】
例えば載置台20は、図示しない移動機構によって、現像ブラシ21の下方から第1の洗浄ユニット40と第2の洗浄ユニット41の下方に移動できる。よって、印刷版Aは、現像ブラシ21により現像された後、第1の洗浄ユニット40の下方と第2の洗浄ユニット41の下方に順次移動し、それぞれで洗浄できる。
【0022】
現像液処理装置11は、例えば現像処理に使用された現像液を貯留する現像液貯留タンク50と、この現像液貯留タンク50から例えば吸引されて送られた現像液を濾過する現像液濾過装置52と、現像液濾過装置52により濾過された現像液を現像液貯留タンク50に戻す現像液循環装置53等を有している。
【0023】
現像液貯留タンク50の上部には、上記現像液排出管32が通じている。現像液貯留タンク50の例えば下部近傍には、上記現像液供給管30が接続されている。
【0024】
現像液濾過装置52は、例えば第1のフィルタ装置80と、第2のフィルタ装置81を有している。第1のフィルタ装置80は、現像液吸引管70、ポンプ71、送液管72を介して現像液貯留タンク50と接続されている。
【0025】
第1のフィルタ装置80は、例えば図2に示すように略円筒状のハウジング90と、ハウジング90内に収容されるバスケット91と、バスケット91の内面に装着される分散物フィルタ92を有している。
【0026】
ハウジング90は、側壁の上部の内面に内側に突出した係止部100を有し、上方から挿入されたバスケット91を係止部100に係止することができる。ハウジング90の係止部100よりも上部の側壁には、上記現像液貯留タンク50側に通じる送液管72が接続されている。ハウジング90の底部は、中央が低い傾斜面となっており、中央に第2のフィルタ装置81に通じる送液管101が接続されている。ハウジング90の天井部には、開閉自在な蓋部102が形成されている。
【0027】
バスケット91は、例えば図3に示すように上面が開口した略円筒状に形成されている。バスケット91は、例えば格子状に形成されており、上下方向に平行に並べて配置された複数のリング110と、リング110同士の内周を接続する短冊状の複数のスペーサ111と、底面を覆う格子部112を有している。
【0028】
リング110は、例えば軸方向(上下方向)の高さよりも径方向の幅が広い平板形状を有している。リング110は、上下方向に互いに間隔をおいて配置されている。図2に示すように最上部のリング110は、他のリング110より外径が大きく形成されており、ハウジング90の係止部100に係止できる。最上部以外のリング110の外周とハウジング90の内壁との間には、隙間Dが形成されている。
【0029】
スペーサ111は、一方向に長い略直方体の細板形状を有しており、リング110に対し垂直に配置され、リング110の内周に沿って並べて配置されている。スペーサ111は、図3及び図4に示すように幅の広い面がバスケット91の周方向に向いて、幅の狭い面がバスケット91の径方向に向くように配置されている。これにより、図4に示すように平面から見ると、径方向に長いスペーサ111が、放射状に配置されている。スペーサ111の外側面はリング110の内周面に接着されている。
【0030】
分散物フィルタ92は、図5に示すようにバックフィルタであり、図4に示すようにバスケット91の内面、つまりスペーサ111の内周面に装着できる。なお、分散物フィルタ92の材質として、例えばポリエステル、ビスコース、ポリプロピレン、ナイロン、ノーメックス、ウール、又はフッ素樹脂等の高分子が用いられる。また、分散物フィルタ92は、各繊維の直径が例えば50μm程度のものが好ましく、また、厚みは、0.01mm〜10mmのものが好ましく、密度は、0.05g/cm3〜1g/cm3のものが好ましい。
【0031】
分散物フィルタ92は、図2に示すように上部の鍔部92aを最上部のリング110上に広げ、その上に固定リング113を嵌めることにより固定することができる。
【0032】
第2のフィルタ装置81は、例えば、図1に示すようにフィルタタンク120と、凝集物フィルタ121を有している。凝集物フィルタ121の形状は、例えば図6に示すように平板状に形成されている。凝集物フィルタ121は、例えばナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、PET等から製造されるネット、目開き0.3mmのステンレスメッシュフィルター、布、及び不織布等により形成されている。凝集物フィルタ121は、例えばフィルタタンク120の上部に配置されている。第1のフィルタ装置80に通じる送液管101は、凝集物フィルタ121の上方に開口している。第1のフィルタ装置80から供給された現像液は、凝集物フィルタ121を通って、凝集物が除去された後、フィルタタンク120に貯留される。
【0033】
現像液循環装置53は、例えばフィルタタンク120の下部から現像液貯留タンク50に通じる送液管122と、送液管122に接続されたポンプ123を有している。
【0034】
また、この印刷版の製造装置1は、現像ブラシ21を相対動作させるためのアクチュエータを備えている。アクチュエータは、露光された後の印刷版Aに対して現像ブラシ21を接触させ、相対動作をさせて当該印刷版A上の未露光部を除去させうるものであれば特に限定されるものではない。例えば本実施の形態では、モータやシリンダなどを組み合わせ、現像ブラシ21を昇降させる昇降装置23および回転させる回転装置24を構成している(図1参照)。もちろん、現像ブラシ21を細かいストロークにて往復動させることにより振動させる構成、現像ブラシ21に対して載置台20を回転等させる構成、現像ブラシ21が複数の現像ブラシからなり、該複数の現像ブラシが各々独立して相対動作をする構成などとすることも可能である。
【0035】
<印刷版Aの製造方法>
次に、以上のように構成された印刷版の製造装置1を用いた印刷版の製造方法等について説明する。
【0036】
印刷版Aの製造処理においては、まず、所定のパターンに露光された印刷版Aが図1に示すように載置台20に載置され、次に、予め現像液貯留タンク50に貯留されていた現像液が現像液供給管30を通じて現像ブラシ21に供給される。なお、この現像液には、現像により印刷版Aから生じる分散物を凝集させる凝集剤を含まないものが用いられることが好ましい。
【0037】
そして、現像ブラシ21から印刷版Aに現像液が供給されながら、当該現像ブラシ21により印刷版Aの表面が擦られて、印刷版Aが現像される。このとき、印刷版Aからは、例えば現像液よりも比重が小さい感光性樹脂組成物等の不純物としての樹脂成分が生成され、当該樹脂成分が現像液中に分散或いは溶解される。或いは現像液よりも比重の大きい感光性樹脂組成物等の不純物としての樹脂成分が生成され、当該樹脂成分が現像液中に分散或いは溶解される。この現像液は、ドレインパン22及び現像液排出管32を通じて現像液貯留タンク50に戻される。なお、本実施形態での現像ブラシ21による印刷版Aの現像処理の詳細については後述する。
【0038】
次に印刷版Aは、洗浄工程として、載置台20により第1の洗浄ユニット40の下方まで水平移動され、第1の洗浄ユニット40から新しい現像液が供給された状態で、第1の洗浄ユニット40により洗浄される。例えばこの現像液もドレインパン22、現像液排出管32を通じて現像液貯留タンク50に排出される。続いて、印刷版Aは、載置台20により第2の洗浄ユニット41の下方まで水平移動され、水が供給された状態で、第2の洗浄ユニット41により洗浄される。こうして、印刷版Aが洗浄される。その後、乾燥処理等が行われ、一連の現像処理が終了して印刷版Aが出来上がる。
【0039】
上記印刷版の製造処理中、現像液処理装置11が稼働する。このとき、現像液に分散或いは溶解した感光性樹脂組成物等の不純物が現像液よりも比重が小さい場合は、ポンプ71が稼働し、現像液貯留タンク50の上層の現像液が吸引され、第1のフィルタ装置80のハウジング90内に供給されることが好ましい。現像液に分散或いは溶解した感光性樹脂組成物等の不純物が現像液よりも比重が大きい場合は、ポンプ71が稼働し、現像液貯留タンク50の下層の現像液が吸引され、第1のフィルタ装置80のハウジング90内に供給されることが好ましい。現像液は、ハウジング90の上部から分散物フィルタ92内に供給され、分散物フィルタ92とバスケット91を通過する。
【0040】
この際、例えば図7に示すように現像液中に分散している分散物としての樹脂成分Bが分散物フィルタ92内に蓄積する。分散物フィルタ92内の樹脂成分Bは、例えば分散物フィルタ92との摩擦により、表面の界面活性剤が除去され、凝集剤を添加しなくとも互いに凝集して、凝集物Cを形成する。凝集物Cは、分散物フィルタ92の入口圧と出口圧との圧力差(水圧)によって、分散物フィルタ92内から押し出される。
【0041】
なお、このときの分散物フィルタ92の入口圧Pinと出口圧Poutの圧力差ΔP(Pin−Pout)は、例えば0.02MPa≦ΔP≦2MPa、より好ましくは0.04MPa≦ΔP≦1MPa、さらに好ましくは0.06MPa≦ΔP≦0.5MPaに設定される。この圧力差ΔPの範囲では、圧力差による分散物フィルタ92自体や現像液処理装置11の他の構成要素への負担を軽減しつつ、樹脂成分Bの高い凝集効率を実現できる。
【0042】
圧力差ΔPの設定は、例えばポンプ71の出力の設定により行ってもよいし、分散物フィルタ92の入口面に別途所定のエアー圧を加えることにより行ってもよい。また、分散物フィルタ92の出口側の圧力を、ポンプやアスピレータ等を用いて減圧することによって行ってもよい。また、これらを併用してもよい。
【0043】
分散物フィルタ92を通過した凝集物Cは、バスケット91のスペーサ111同士の間をスペーサ111に沿って外側に押し出される。スペーサ111を通過した凝集物Cは、例えば図8に示すようにリング110上に堆積され、その後、現像液と共に、リング110とハウジング90との間の隙間Dからハウジング90の底部に落下する。
【0044】
その後、現像液は、第2のフィルタ装置81に送られ、凝集物フィルタ121を通過する。このとき、現像液から凝集物Cが除去される。凝集物Cが除去された現像液はフィルタタンク120に貯留される。
【0045】
フィルタタンク120の現像液は、ポンプ123によって送液管122を通じて現像液貯留タンク50に戻される。例えば印刷版の製造処理中、この現像液処理装置11による現像液の循環が継続して行われ、現像液貯留タンク50内の樹脂成分Bが除去される。なお、この現像液処理装置11による現像液の処理は、印刷版の製造処理中に常時行われてもよいし、断続的に行われてもよい。
【0046】
現像液濾過装置52は、分散物フィルタ92と、凝集物フィルタ121を有しているので、分散物フィルタ92で分散物である樹脂成分Bを凝集させ、凝集物フィルタ121で凝集物Cを除去することにより、各フィルタへの負担を軽減し、フィルタの取り換え寿命を延ばすことができる。
【0047】
現像液濾過装置52のバスケット91が、複数のリング110と、複数のスペーサ111を備えているので、例えば分散物フィルタ92の出口側で凝集物Cが詰まることがなく、分散物フィルタ92から凝集物Cを好適に押し出すことができる。
【0048】
スペーサ111が、放射状に配置されているので、任意の方向から凝集物Cを押し出すことができ、凝集物Cの押し出しを好適に行うことができる。
【0049】
複数のリング110の外周とハウジング90の内壁との間に、隙間Dが設けられているので、凝集物Cを滞ることなく適正に排出できる。
【0050】
現像液処理装置11は、現像液循環装置53を有しているので、濾過した現像液を現像液貯留タンク50に戻して再利用することができる。
【0051】
現像液が、分散物を凝集させる凝集剤を含まないので、コストを低減できる。また、凝集剤を除去する設備や作業が必要なく、現像液を濾過するだけで再利用できる。
【0052】
<現像ブラシ21の「回転持ち上げ動作」による印刷版Aの現像処理方法>
ここで、本実施形態での現像ブラシ21による印刷版Aの現像処理の詳細について以下に説明する。
【0053】
上述したように、本実施形態では、印刷版(感光性樹脂版)Aに活性光線を照射して露光部と未露光部とを形成した後、露光された印刷版Aを載置台20に固定して現像液(例えば、界面活性剤を含む水系の現像液)を供給しながら、当該印刷版Aと現像ブラシ(未露光部除去装置)21とを接触させ、印刷版Aに対して現像ブラシ21を動作させ、印刷版Aの表面を擦ることによって未露光部を除去する。ここでの動作は、印刷版Aと現像ブラシ21との間における相対的な動作であればよく、好ましくは印刷版Aの平面方向に対する相対的な動作である。例えば本実施形態では、載置台20を移動させながら、または停止させた状態で、上述したアクチュエータ(回転装置24)により現像ブラシ21を回転させ、印刷物Aの表面を擦るようにしている(図9(A)等参照)。
【0054】
さらに、本実施形態では、印刷版Aと現像ブラシ21との間における相対的な動作(本実施形態の場合、載置台20を移動させながら、または停止させた状態下で現像ブラシ21を回転させる動作)を継続させたまま、当該現像ブラシ21と印刷版Aとを引き離して非接触状態とするようにしている(「回転持ち上げ動作」)。こうした場合、樹脂スカム等とも呼ばれる樹脂製の不純物が印刷版Aの表面に付着するのを有効に防止することが可能になるという点で好適である。
【0055】
すなわち、印刷版Aの製造過程における現像処理後、印刷版Aにブラシを接触させたままでいると、例えば当該ブラシの先端が曲がった状態で接触している等、何らかの圧力が作用したままであり、現像処理工程の際に除去しきれなかった不純物、あるいは除去されたもののブラシ等に付いたままになっている不純物が当該印刷版Aの表面に押さえ付けられた状態となって残存してしまうことがある(図10参照)。つまり、ブラシ圧が加わったままの状態で当該ブラシの動作、現像液の供給をともに停止させ(図10(B)に示す洗浄終了動作(1))、その後にブラシを持ち上げる等して印刷版Aから引き離すと(図10(C)に示す洗浄終了動作(2))、不純物が印刷版Aの表面に不純物が付着したままとなってしまうことがある。
【0056】
この点、未露光部を除去する工程を終えてから印刷版Aと現像ブラシ21とを引き離すのではなく、未露光部を除去する工程の最中に印刷版Aと現像ブラシ21とを引き離し、それから当該印刷版Aと現像ブラシ21との相対的な動作(本実施形態の場合、現像ブラシ21の回転動作)を停止させる本実施形態によれば、当該印刷版Aの表面に残存する不純物を減少させることができる(図9参照)。具体的には、本実施形態では現像ブラシ21を回転させたまま現像液の供給を止め(図9(B)に示す洗浄終了動作(1))、その後、現像ブラシ21を回転させたまま、昇降装置23を動作させて当該現像ブラシ21を回転装置24とともに持ち上げ(図9(C)に示す洗浄終了動作(2))、印刷版Aから引き離すという「回転持ち上げ動作」を行うようにしている。なお、現像液の供給を止めてから現像ブラシ21を持ち上げるという動作手順は、現像液の飛び散りを防ぐという点において特に好ましい。
【0057】
<現像ブラシ21の「回転持ち上げ動作」による印刷版Aの現像処理の実施例>
デジタル版のサンプル印刷版Aを用い、現像ブラシ21の「回転持ち上げ動作」による現像処理の効果を確認するための実験を行った。なお、デジタル版の印刷版Aとは、感光性樹脂層の表面にカーボン層からなる赤外線アブレージョン層(ブラックレイヤー、BLと称することがある)があり、所定部分をレーザーで焼き飛ばしてから、紫外線による露光で硬化させ、洗浄を実施するというものである。一方、アナログ版の印刷版Aとは、感光性樹脂の表面に、赤外線アブレージョン層ではない透明の保護層があり、ネガフィルムを版の上において真空密着させて露光を実施するというものである。アナログ版の場合、赤外線アブレージョン層が無いため、印刷版Aの表面へのBL(ブラックレイヤー)の付着は生じない。
【0058】
本実施例においては、フィルタ(上述した分散物フィルタ92、凝集物フィルタ121)の有無、現像ブラシの「回転持ち上げ動作」の有無、載置台(以下、版セッターともいう)20の移動速度(戻り速度)の条件の違いにより、サンプル印刷版Aの表面への樹脂およびBLの各不純物の付着度合いを調べた(表1参照)。なお、版セッター20の戻り速度4500mm/minは印刷版Aの製造装置1における通常的な速度であり、2250mm/minはその半分の速度である。
【表1】
【0059】
実施例(a)の場合(フィルタ無し、ブラシ回転持ち上げ不実施の場合)、版セッター20の戻り速度の高低にかかわらず、樹脂、BLそれぞれの付着数に変化はなかった。
【0060】
実施例(b)の場合(フィルタ無し、ブラシ回転持ち上げ実施の場合)、上記実施例(a)と比べ、樹脂、BLの付着数がそれぞれ減少した。
【0061】
実施例(c)の場合(フィルタ有り、ブラシ回転持ち上げ不実施の場合)、上記実施例(a)と比べ、樹脂、BLの付着数がそれぞれ大幅に減少した。この結果から、フィルタ(分散物フィルタ92、凝集物フィルタ121)を取り付けると不純物の付着が大幅に抑制されることを確認した。
【0062】
実施例(d)の場合(フィルタ有り、ブラシ回転持ち上げ不実施の場合)、上記実施例(c)と比べ、樹脂、BLの付着数がそれぞれさらに減少した。この結果から、「ブラシ回転持ち上げ」による不純物付着抑制のための対策を講じると付着数が減少することを確認した。
【0063】
以上の結果から明らかなように、印刷版Aの現像処理時、「ブラシ回転持ち上げ」を実施することにより、当該印刷版Aの表面に不純物が付着するのを抑制することが可能となることが確認された。また、版セッター20の移動速度(戻り速度)を適宜遅くすることにより、当該印刷版Aの表面に不純物が付着するのをさらに抑制することが可能となることも確認された。
【0064】
なお、アナログ版・デジタル版の印刷版Aの樹脂成分は殆ど同じであるため、樹脂の付着しやすさは同じと考えられる。本実施例はデジタル版のサンプル印刷版Aを用いたものであるが、このことからすれば、アナログ版の印刷版Aを用いた場合には、仮にフィルタがなくても樹脂の付着を20個(版セッター20の移動速度を遅くすると15個)程度にまで減少させることができると予想される。
【0065】
<製造装置1の第2の形態>
続いて、フィルタ等の構成が異なる別形態の製造装置1について以下に説明する(図11等参照)。
【0066】
図11に示すように、現像液205は、現像液貯留タンク50に一時的に貯められている。現像液貯留タンク50には、ポンプ等の供給装置231が接続されている。現像液貯留タンク50中の現像液205は、供給装置231を介して、印刷版Aに連続的に供給され、現像ブラシ21を用いて、印刷版Aから感光性樹脂組成物層の未露光部分の感光性樹脂組成物が除去される。現像液205中に分散又は溶解した感光性樹脂組成物は、現像液205に含まれる界面活性剤によって覆われるため、現像液205中で凝集せずに分散された状態を維持する傾向にある。ただし、一部の分散状態の感光性樹脂組成物は現像液205中にて凝集し、現像液タンクの液表面に浮遊することもある。分散している感光性樹脂組成物のそれぞれの大きさは、例えば10〜70μmである。
【0067】
ここで、凝集した感光性樹脂組成物は親水性ポリマーを主成分とするものであり、使用する感光性樹脂版によっては熱可塑性エラストマーや、可塑剤、赤外線アブレージョン層成分を含むが、光重合性不飽和単量体や光重合開始剤等は現像液に溶解するため、凝集物の中には実質的に含まれない。これは、後述の分散物フィルタで凝集された感光性樹脂組成物に共通して言える。
【0068】
分散した感光性樹脂組成物を含む現像液205は、ドレインパン22を経て現像液貯留タンク50に再び戻される。現像液貯留タンク50には、ポンプ等の供給装置232がさらに接続されている。現像液貯留タンク50に貯められ、分散した感光性樹脂組成物を含む現像液205は、供給装置232を介して、少なくとも一部が筒状の分散物フィルタ213の筒状部分の内部に送られる。側面図である図12に示すように、分散物フィルタ213は、例えば袋状のバッグフィルタであり、ポリエステル、ビスコース、ポリプロピレン、ナイロン、ノーメックス、ウール、又はフッ素樹脂等の高分子からなるが、これらに限定されない。分散物フィルタ213が高分子からなる場合、各繊維の直径は、例えば50μmである。また、図11に示すように、分散物フィルタ213は、略円筒形でメッシュ状のバスケット207に収納されており、バスケット207は円筒状のハウジング211に格納されている。また、分散物フィルタ213は、固定リング216によって、ハウジング211の内部に固定されている。ハウジング211は、アルミニウム、及びステンレス等の金属からなるが、これに限定されない。
【0069】
分散した感光性樹脂組成物を含む現像液205を、袋状の分散物フィルタ213の内部から外部に通すと、図13に示すように、感光性樹脂組成物261a,261b,261c・・・が分散物フィルタ213の膜内に蓄積する。膜内に蓄積した感光性樹脂組成物261a,261b,261c・・・は、例えば分散物フィルタ213との摩擦により、表面を覆っていた界面活性剤が除去され、凝集剤を添加しなくとも互いに凝集し、凝集物262を形成する。凝集物262は、水圧によって、分散物フィルタ213の膜内から外部に押し出され、分散物フィルタ213の外側と、バスケット207の内側との間等に堆積する。
【0070】
また、現像液205は、現像で剥離した赤外線アブレージョン層の成分を含みうる。現像液205が赤外線アブレージョン層の成分を含んでいる場合、赤外線アブレージョン層の成分は、分散物フィルタ213で形成される凝集物262中に取り込まれる。したがって、分散物フィルタ213によって、現像液205中に分散する感光性樹脂組成物の凝集と、赤外線アブレージョン層の成分の捕捉とを、同時に、かつ好適に行うことが可能である。なお、現像液205に含まれる赤外線アブレージョン層の成分が、図11に示す印刷版Aが現像される前から現像液に含まれている場合も同様である。
【0071】
ここで、図11に示す現像液205の流れの上流側に対向する分散物フィルタ213の面側の空間の圧力、具体的には、袋状の分散物フィルタ213の内面側の空間の圧力をP1とし、現像液205の流れの下流側に対向する分散物フィルタ213の面側の空間の圧力、具体的には、袋状の分散物フィルタ213の外面側の空間の圧力をP2とする。この場合、圧力P1と圧力P2との関係は、好ましくは0.02MPa≦P1−P2≦2MPaであり、より好ましくは0.04MPa≦P1−P2≦1MPaであり、よりさらに好ましくは0.06MPa≦P1−P2≦0.5MPaである。圧力P1と圧力P2との差が0.02MPa未満である場合、図13に示す感光性樹脂組成物261a,261b,261c・・・が凝集しにくくなる傾向にある。また、圧力P1と圧力P2との差が2MPaより大きい場合、分散物フィルタ213や現像装置の他の構成要素への負担が大きくなる傾向にある。
【0072】
圧力P1と圧力P2との差は、例えばP2が大気圧の場合、図11に示すポンプ等の供給装置232によって分散物フィルタ213の内面側の空間の圧力P1を加圧することで設定可能である。なお、袋状の分散物フィルタ213の内側の面にエアー圧を加えてもよい。これら分散物フィルタ213の内面側の空間の圧力P1を加圧する場合、分散物フィルタ213の内面側の空間は、分散物フィルタ213も外壁であると考えた場合、実質的に閉空間になっていることが好ましい。あるいは、袋状の分散物フィルタ213の外側面の空間の圧力を、ポンプ及びアスピレータ等で減圧してもよい。分散物フィルタ213の外面側の空間の圧力P2を減圧する場合、分散物フィルタ213の外面側の空間は、分散物フィルタ213も外壁であると考えた場合、実質的に閉空間になっていることが好ましいし、これらを併用してもよい。
【0073】
図13に示す分散物フィルタ213の厚みは、凝集効率の観点から、好ましくは0.01mm以上、10mm以下であり、より好ましくは0.5mm以上、5mm以下である。厚みが0.01mm未満である場合、分散している感光性樹脂組成物の凝集効率が低下する傾向にある。また、厚みが10mmより大きい場合、分散物フィルタ213に加わる圧力が上昇する傾向にある。なお、厚みは、ミツトヨ製の厚み計ID−F125をBIEFFEBI Spessimetor2に取り付け、直径1cmの接触面に1.0kgの荷重がかかるように設定して、測定可能である。
【0074】
また、分散物フィルタ213が合成高分子樹脂からなる場合、分散物フィルタ213の密度は、好ましくは0.05g/cm3以上、1g/cm3以下であり、より好ましくは0.07g/cm3以上、0.5g/cm3以下である。密度が0.05g/cm3未満である場合、分散している感光性樹脂組成物の凝集効率が低下する傾向にある。また、密度が1g/cm3より高い場合、分散物フィルタ213に加わる圧力が上昇する傾向にある。なお、密度は、分散物フィルタ213を10cm×10cmに切断し、重量を計ることにより算出可能である。また、分散物フィルタ213が金属からなる場合、目開きが1種類のフィルタを用いてもよいし、同じ又は異なる目開きのフィルタを複層に配置してもよい。
【0075】
例えば、現像液100質量部に対して、分散状態の感光性樹脂組成物が0.16質量部以上、6質量部以下、限定すれば、0.6質量部以上、3質量部以下であれば、分散物フィルタ213によって、分散状態の感光性樹脂組成物が好適に凝集される。
【0076】
図11に示すように、分散物フィルタ213を通過した現像液205は、凝集物フィルタ215に供給される。分散物フィルタ213を通過した現像液205は、分散物フィルタ213で凝集された凝集物を含みうる。凝集物フィルタ215は、現像液205に含まれる凝集物262を捕捉する。凝集物フィルタ215の形状及び材質は、現像液205に含まれる凝集物262を補足可能である限り、限定されない。ただし、凝集物262を捕捉する凝集物フィルタ215は、捕捉された凝集物262の量が凝集物フィルタ215の容量に近づいたところで、次の凝集物フィルタ215に交換する必要があるため、定期的に交換及び搬出可能な形状及び材質を用いることが好ましい。例えば、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、PET等から製造されるネット、目開き0.3mmのステンレスメッシュフィルター、布、及び不拭布等が凝集物フィルタ215に使用可能であるが、これらに限定されない。また、凝集物フィルタ215を設置形態は特に制限されず、図11に示すように凝集物フィルタ215を通過した現像液205が直接現像液貯留タンク50に入るように設置する形態であっても良いし、凝集物フィルタ215をドレインパン22の内部に設置して、凝集物フィルタ215を通過した現像液205がドレインパン22を介して現像液貯留タンク50に入る形態であっても良い。
【0077】
凝集物フィルタ215を通過した現像液205は、現像液貯留タンク50に再び戻される。以上説明した、第2の実施の形態にかかる現像装置によれば、分散物フィルタ213によって現像液205中に分散する感光性樹脂組成物を凝集し、凝集物フィルタ215によって現像液205から凝集物を効率的に除去することが可能となる。また、界面活性剤を弱める凝集剤を用いることなく、分散物フィルタ213によって感光性樹脂組成物を凝集するため、凝集物フィルタ215を通過した現像液205を再度現像工程に使用することが可能となる。
【0078】
従来、現像液を再利用する技術はあるが、従来技術では、現像液中に分散する感光性樹脂組成物を捕捉出来る目の細かいフィルタを使用すると、短時間で目詰まりを起こし頻繁にフィルタ交換を行う必要がある。そのため、目の粗いフィルタでろ過した現像液を再利用すると、現像液中に分散する感光性樹脂組成物が印刷版の表面に付着及び凝集し、製造される印刷版の品質が低下する。また、凝集剤を使用することで分散している樹脂成分を凝集する方法もあるが、凝集剤を添加された現像液を再利用すると、感光性樹脂組成物層の未露光部分における感光性樹脂組成物が現像液中に分散した後、凝集剤によって直ちに凝集されて感光性樹脂組成物層に付着し、製造される印刷版の品質がやはり低下する。あるいは、従来技術では、pHを制御したり、温度を制御したりして界面活性剤を弱め、現像液中に分散する感光性樹脂組成物を凝集させるが、操作が煩雑である。
【0079】
これに対し、第2の実施の形態に係る現像装置によれば、現像液205中に分散する感光性樹脂組成物を、凝集剤を用いることもなく、目の細かいフィルタを使用しても効果的に除去可能である。また、pHや温度等の制御も不要である。そのため、現像液205中に分散する感光性樹脂組成物を、短時間で、簡易に、低いコストで除去することが可能である。したがって、製造される印刷版の品質を、低いコストで向上させることが可能となる。なお、第2の実施の形態に係る現像装置においては、現像液205に凝集剤を添加すると、分散物フィルタ213に目詰まりが生じうる。したがって、凝集剤は、むしろ用いないことが好ましい。
【0080】
さらに、現像液貯留タンク50中の現像液205の表面に自然に発生して浮遊した凝集物や、現像液貯留タンク50の底部に沈降した凝集物を、選択的に吸引して分散物フィルタ213に供給して除去してもよい。現像液貯留タンク50中で凝集した凝集物を選択的に吸引して分散物フィルタ213に供給することにより、凝集物が過度に大きくなる前に回収することが可能であり、作業者が現像液貯留タンク50を清掃する頻度を減らすことが出来る。なお、凝集物が現像液貯留タンク50中の現像液205表面に浮遊する傾向にある場合は、凝集物の成長の観点から、現像液貯留タンク50の上部近傍から現像液205を吸引し、分散物フィルタ213に供給することが好ましい。また、凝集物が現像液貯留タンク50中の底面に沈殿する傾向にある場合は、現像液貯留タンク50の底面近傍から現像液205を吸引し、分散物フィルタ213に供給することが好ましい。
【0081】
<製造装置1の第3の形態>
第2の実施の形態においては、図11に示す分散物フィルタ213が袋状のバッグフィルタであり、高分子からなる例を示した。これに対し、図14に示す第3の実施の形態に係る現像装置において、袋状の分散物フィルタ208は、アルミニウムやステンレス等の金属からなり、例えば目開き10μmのメッシュが設けられている。分散物フィルタ208が金属からなる場合、分散物フィルタ208を収納するバスケットはなくてもよい。第3の実施の形態に係る現像装置のその他の構成要素は、第2の実施の形態と同様である。なお、図14においては、便宜的に、分散物フィルタ208を側面図で示し、ハウジング211を断面図で示している。第3の実施の形態に係る現像装置においても、現像液205に分散する感光性樹脂組成物を、分散物フィルタ208で効果的に凝集させることが可能となる。
【0082】
<製造装置1の第4の形態>
図15に示す第4の実施の形態に係る現像装置において、分散物フィルタ213は、第2の実施の形態と同様に、袋状のバッグフィルタであり、例えば高分子からなる。また、分散物フィルタ213を収納するバスケット212は、側面図である図16、及び平面図である図17に示すように、略円筒形であり、それぞれの中心が同一線上に並ぶよう、平行に配置された複数のリング211a、211b,211c,211d,211e,211fと、複数のリング211a−211fのそれぞれの内周を接続する短冊状の複数のスペーサ212a,212b,212c,212d,212e,212f,212g,212h,212i・・・と、を備える。
【0083】
複数のリング211a−211fの形状は、例えば、合同である。また、複数のスペーサ212a−212iの形状も、例えば、合同である。複数のスペーサ212a−212iは、複数のリング211a−211fのそれぞれの内周に接するように、放射状に配置されている。具体的には、複数のスペーサ212a−212iは、複数のリング211a−211fのそれぞれの内周の接線に対して、垂直に配置されている。複数のリング211a−211f、及び複数のスペーサ212a−212iは、アルミニウム、及びステンレス等の金属からなるが、これに限定されない。
【0084】
図18及び図19に示すように、複数のスペーサ212a−212iの内側に、分散物フィルタ213が収納される。分散物フィルタ213が収納されたバスケット212は、図20に示すように、円筒状のハウジング211に格納され、図21に示すように蓋214をされる。なお、図15、図20、及び図21においては、便宜的に、分散物フィルタ213及びバスケット212を側面図で示し、ハウジング211を断面図で示している。ハウジング211にバスケット212が格納された際、バスケット212の複数のスペーサ212a−212iのそれぞれと、ハウジング211の内壁との間には、すき間が設けられる。また、バスケット212の複数のリング211a−211fと、ハウジング211の内壁との間にも、すき間が設けられる。
【0085】
図22に示すように、分散物フィルタ213を通過することによって、感光性樹脂組成物261a,261b,261c・・・が凝集し、分散物フィルタ213の外側と、バスケット212の複数のリング211a−211dとの間に凝集物262が堆積する。また、バスケット212のリング211a−211dと、ハウジング211の内壁との間には、すき間が設けられているため、リング211a−211d上から遊離した凝集物262は、下流に流される。なお、すき間が設けられていない場合、図21に示すバスケット212の複数のスペーサ212a−212iのそれぞれと、ハウジング211の内壁との間、あるいはバスケット212のリング211a−211dと、ハウジング211の内壁との間が凝集物で密閉され、現像液205の流動性が低下し、分散物フィルタ213に過剰な圧力がかかる場合が生じうる。そのため、複数のスペーサ212a−212iのそれぞれと、ハウジング211の内壁との間、並びにリング211a−211dと、ハウジング211の内壁との間にすき間を設け、複数のスペーサ212a−212i及びリング211a−211dが、分散物フィルタ213、現像液205、及び凝集物以外のものとは接触しないことが好ましい。すき間の幅は、例えば8mmである。
【0086】
図23に示す複数のスペーサ212a−212iが配置される間隔Dは、5mm以上、50mm以下が好ましい。間隔Dが5mm未満の場合、袋状の分散物フィルタ213の外側において、凝集物が堆積する空間を確保することが困難となる傾向にある。また、袋状の分散物フィルタ213の内側には、外側よりも0.02MPa以上高い圧力がかかるため、間隔Dが50mmより大きい場合、袋状の分散物フィルタ213が撓みやすくなる傾向にある。間隔Dを5mm以上、50mm以下とすることにより、分散物フィルタ213の撓みが防止され、分散物フィルタ213に加わる圧力の偏りが低減される。これにより、現像液205中に分散する感光性樹脂組成物を効率的に凝集し、かつ図15に示す凝集物フィルタ215に凝集物262を効率的に押し流すことが可能となる。
【0087】
図23に示す複数のスペーサ212a−212iのそれぞれの幅Lは、好ましくは3mm以上、30mm以下であるが、これに限定されない。また、複数のスペーサ212a−212iのそれぞれの厚みWは、複数のスペーサ212a−212iが配置される間隔Dより短い。厚みWは、好ましくは間隔Dの1/1000以上、1/2以下であり、より好ましくは1/100以上、1/5以下であり、よりさらに好ましくは1/70以上、1/10以下であるが、これらに限定されない。
【0088】
また、分散物フィルタ213の外側や、バスケット212上に堆積した凝集物は、水圧により、凝集物フィルタ215に押し流されるが、ヘラやブラシ等で堆積した凝集物を掻き落としたり、液体や気体を利用して堆積した凝集物を剥離したりしてもよい。これにより、製造される印刷版の品質を、より向上させることが可能となる。
【0089】
図15に示す第4の実施の形態に係る現像装置のその他の構成要素は、第2の実施の形態と同様である。第4の実施の形態に係る現像装置においても、現像液205に分散する感光性樹脂組成物を、分散物フィルタ213で効果的に凝集させることが可能となり、さらに、分散物フィルタ213で形成された凝集物262を凝集物フィルタ215に効率的に運搬することが可能となる。
【0090】
<製造装置1の第5の形態>
第5の実施の形態に係る現像装置は、図24に示すように、洗浄ユニット251をさらに備える。また、図15に示した現像装置と異なり、図24に示す現像装置において、凝集物フィルタ215を通過した現像液205は、ポンプ等の供給装置233によって、洗浄ユニット251の近傍に供給される。また、供給装置231で供給された現像液205及び現像ブラシ21を用いて、未露光部分の感光性樹脂組成物が選択的に除去された印刷版Aは、載置台20によって、洗浄ユニット251の下方に搬送される。
【0091】
洗浄ユニット251の下方に印刷版Aが搬送された場合、供給装置231は、凝集物フィルタ215を通過した現像液205を印刷版Aに噴射してもよいし、表面が現像液で覆われる様に供給してもよい。なお、凝集物フィルタ215を通過した現像液205中に印刷版Aを浸漬させてもよい。さらに、洗浄ユニット251で印刷版A表面を磨くことにより、印刷版Aの表面に残存しうる分散した感光性樹脂組成物を含む現像液205や、凝集した感光性樹脂組成物が除去される。
【0092】
従来技術では、感光性樹脂版の現像に使用した現像液を感光性樹脂版の洗浄に再利用すると、現像液中に分散した感光性樹脂組成物が感光性樹脂版に再び付着するおそれがある。そのため、従来技術では、未使用の新しい現像液を用いて感光性樹脂版を洗浄している。これに対し、第5の実施の形態に係る現像装置においては、分散物フィルタ213によって、現像液205中に分散した感光性樹脂組成物が凝集され、凝集物フィルタ215によって、凝集した感光性樹脂組成物が捕捉される。そのため、凝集物フィルタ215を通過した現像液205において、分散した感光性樹脂組成物の濃度は極めて低い。また、凝集物フィルタ215を通過した現像液205には、凝集剤等が添加されていない。したがって、凝集物フィルタ215を通過した現像液205を、現像後の印刷版Aの洗浄に再利用することが可能となる。また、凝集物フィルタ215を通過した現像液205を再利用することにより、現像液205の使用量を低減させ、現像工程のコストを低減することも可能となる。
【0093】
第5の実施の形態に係る現像装置は、洗浄ユニット252、水洗ブラシ253をさらに複数本、備えていてもよい。洗浄後の印刷版Aが、載置台20によって、洗浄ユニット252及び水洗ブラシ253の下方に搬送された場合、印刷版Aは洗浄ユニット252からは樹脂成分を含まない現像液、水洗ブラシ253からは純水等を噴射され、洗浄ユニット252及び水洗ブラシ253で磨かれる。これにより、印刷版A表面に残存する樹脂成分と現像液をより洗い流すことが可能となる。なお、洗浄ユニット252から噴射される現像液に、凝集物フィルタ215を通過した現像液205を使用してもよい。凝集物フィルタ215を通過した現像液205を使用することにより、新しく用意する現像液の量を少なくすることが可能となる。
【0094】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0095】
例えば、以上の実施形態では未露光部除去装置として現像ブラシ21を用いる場合について説明したが、かかる現像ブラシ21は好適な一例に過ぎない。このような現像ブラシ以外にも、ゴムヘラ等、現像処理時に印刷版Aの未露光部を除去しうる装置であれば未露光部除去装置として用いることが可能である。
【0096】
また、以上の実施形態においては現像ブラシ21の持ち上げ方(樹脂版Aからの引き離し方)については言及していないが、その態様は特に限定されるものではなく、例えば一定速度で引き離したり、あるいは段階的に動作させて徐々に引き離したりするなど、適宜変更して構わない。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、印刷版の現像処理時に当該印刷版の表面に不純物が付着するのを抑制するという要請・要望のある製造方法および製造装置に適用して好適である。
【符号の説明】
【0098】
1…印刷版の製造装置、10…現像液供給装置、20…版セッター(載置台)、21…現像ブラシ(未露光部除去装置)、92(213)…分散物フィルタ、205…現像液、241…ステージ(載置台),A…印刷版(感光性樹脂版)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性樹脂版に活性光線を照射して露光部と未露光部とを形成する露光工程と、
露光された感光性樹脂版を載置台に固定して現像液を供給し、かつ、前記感光性樹脂版と未露光部除去装置とを接触させ、前記感光性樹脂版に該未露光部除去装置を相対的に動作させて未露光部を除去する現像工程と、
前記相対的な動作を継続させたまま前記未露光部除去装置と当該感光性樹脂版とを引き離して非接触状態とする工程と、
を含む、印刷版の製造方法。
【請求項2】
前記感光性樹脂版として、マスク層を有するものを用いる、請求項1に記載の印刷版の製造方法。
【請求項3】
前記未露光部除去装置と前記感光性樹脂版とを引き離して非接触状態とする工程のあとに更に前記現像液を版面に供給する洗浄工程を含む、請求項1または2に記載の印刷版の製造方法。
【請求項4】
前記現像工程で用いる現像液が、
前記感光性樹脂版を構成する感光性樹脂組成物が分散している分散物フィルタに通し、前記現像液中に分散している感光性樹脂組成物を前記分散物フィルタで凝集させることと、
前記分散物フィルタを通過した現像液から、前記凝集された感光性樹脂組成物を除去することによって得られた現像液である、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の印刷版の製造方法。
【請求項5】
前記感光性樹脂版を構成する感光性樹脂組成物が分散している現像液が、別の現像工程で使用された現像液である、請求項4に記載の印刷版の製造方法。
【請求項6】
前記未露光部除去装置が、ブラシ状である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の印刷版の製造方法。
【請求項7】
露光されて露光部と未露光部とが形成された感光性樹脂版に現像液を供給する現像液供給装置と、
露光された前記感光性樹脂版に接触し、当該感光性樹脂版に対して相対的な動作をして前記未露光部を除去する未露光部除去装置と、
を備え、
前記感光性樹脂版に対する前記未露光部除去装置の相対的な動作を継続させたまま前記未露光部除去装置と当該感光性樹脂版とを引き離して非接触状態とする、印刷版の製造装置。
【請求項1】
感光性樹脂版に活性光線を照射して露光部と未露光部とを形成する露光工程と、
露光された感光性樹脂版を載置台に固定して現像液を供給し、かつ、前記感光性樹脂版と未露光部除去装置とを接触させ、前記感光性樹脂版に該未露光部除去装置を相対的に動作させて未露光部を除去する現像工程と、
前記相対的な動作を継続させたまま前記未露光部除去装置と当該感光性樹脂版とを引き離して非接触状態とする工程と、
を含む、印刷版の製造方法。
【請求項2】
前記感光性樹脂版として、マスク層を有するものを用いる、請求項1に記載の印刷版の製造方法。
【請求項3】
前記未露光部除去装置と前記感光性樹脂版とを引き離して非接触状態とする工程のあとに更に前記現像液を版面に供給する洗浄工程を含む、請求項1または2に記載の印刷版の製造方法。
【請求項4】
前記現像工程で用いる現像液が、
前記感光性樹脂版を構成する感光性樹脂組成物が分散している分散物フィルタに通し、前記現像液中に分散している感光性樹脂組成物を前記分散物フィルタで凝集させることと、
前記分散物フィルタを通過した現像液から、前記凝集された感光性樹脂組成物を除去することによって得られた現像液である、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の印刷版の製造方法。
【請求項5】
前記感光性樹脂版を構成する感光性樹脂組成物が分散している現像液が、別の現像工程で使用された現像液である、請求項4に記載の印刷版の製造方法。
【請求項6】
前記未露光部除去装置が、ブラシ状である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の印刷版の製造方法。
【請求項7】
露光されて露光部と未露光部とが形成された感光性樹脂版に現像液を供給する現像液供給装置と、
露光された前記感光性樹脂版に接触し、当該感光性樹脂版に対して相対的な動作をして前記未露光部を除去する未露光部除去装置と、
を備え、
前記感光性樹脂版に対する前記未露光部除去装置の相対的な動作を継続させたまま前記未露光部除去装置と当該感光性樹脂版とを引き離して非接触状態とする、印刷版の製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図23】
【図24】
【図13】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図23】
【図24】
【図13】
【図22】
【公開番号】特開2011−64796(P2011−64796A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213402(P2009−213402)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】
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