説明

印刷物の真偽判別方法及びその印刷物

【課題】 本発明は、銀行券、パスポート、有価証券、カード、印紙類、商品タグ、有料道路等の回数券、各種チケット等の貴重品に適用可能な印刷物の真偽判別方法及びその印刷物に関するものである。
【解決手段】 基材上に印刷模様を形成し、前記印刷模様は背景画像部を形成する第1の印刷領域と、潜像画像部を形成する第2の印刷領域を有し、前記第1の印刷領域及び前記第2の印刷領域のいずれか一方を金属光沢インキで形成し、他方を赤外線吸収インキ又は赤外線透過インキで形成して成る印刷物において、前記印刷物を赤外線表示装置で正反射光領域を観察した場合に、前記第1の印刷領域及び前記第2の印刷領域の濃度が変化して、潜像画像が視認されて成る印刷物の真偽判別方法及びその印刷物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行券、パスポート、有価証券、カード、印紙類、商品タグ、有料道路等の回数券、各種チケット等の貴重品に適用可能な印刷物の真偽判別方法及びその印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銀行券、パスポート、有価証券、カード、印紙類、商品タグ、有料道路等の回数券、各種チケット等の貴重品は、その価値を保証・維持するために、偽造防止技術が施されている。そのため、このような貴重品には、材料コストが高く、複写機での再現が困難な銀インキ、金インキ等の金属光沢インキで印刷が施され、複写防止、真偽判別が行われている。さらに、紫外線を照射時に可視光を発光する蛍光インキや、赤外線を吸収する材料を含有した赤外線吸収インキを用いることで、通常、可視光下では上記インキで印刷した領域は視認できず、紫外線や赤外線を照射することにより上記インキで印刷した領域が顕在化する技術が利用されている。
【0003】
例えば、銀インキ、金インキ等の金属光沢インキを用いる技術としては、シート状又は帯状の支持体の凹凸表面に金属光沢領域が設けられるとともに、その金属光沢領域の少なくとも一部に、前記金属光沢領域と同一・同質及び/又は異質の他の金属光沢領域がインキにより積層して形成された偽造防止用表示体であって、支持体の凹凸表面に形成された金属光沢領域が支持体表面の凹凸によって入射光に対して乱反射を示し、その金属光沢領域の上面に積層した他の金属光沢領域が平坦面によって入射光に対して正反射を示すことを特徴とする偽造防止用表示体とその製法が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
例えば、金属薄膜を用いる技術としては、第1の金属薄膜層と第1の下地層とから成る第1の光反射部と、第2の金属薄膜層と第2の下地層とから成る第2の光反射部とを有する複写防止媒体であって、前記第1の下地層と前記第2の下地層とが異なり、前記第1の金属薄膜層の表面粗さと前記第2の金属薄膜層の表面粗さとが異なることを特徴とする複写防止媒体が開示されている(特許文献2参照)。
【0005】
例えば、少なくとも、第1の印刷領域と第2の印刷領域の二つの印刷領域から成る印刷物において、前記第1の印刷領域が、観察する角度によって異なる色で印刷され、前記第2の印刷領域が、前記第1の印刷領域の印刷色の拡散反射色と同一となる色で印刷されたことを特徴とする印刷物が開示されている(特許文献3参照)。
【0006】
例えば、印刷領域が赤外線吸収特性を有する印刷インキにより印刷された第1の印刷領域と、一般の印刷インキにより印刷された第2の印刷領域とから構成され、第1の印刷領域と第2の印刷領域の色調とが視覚的に判別困難である印刷物であり、第1の印刷領域の印刷インキが赤外線吸収顔料を含有する印刷インキで印刷し、赤外線の吸収により第1の印刷領域が顕像化することを特徴とした赤外線吸収印刷物が開示されている(特許文献4参照)。
【特許文献1】特許第3449690号公報(第1−13頁、第1−12図)
【特許文献2】特開平10−81056号公報(第1−9頁、第1−4図)
【特許文献3】特開2005−14300号公報(第1−8頁、第1図)
【特許文献4】特開昭63−307996号公報(第1頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許第3449690号公報、特開2005−14300号公報、特開2005−14300号公報及び特許第3449690号公報は、いずれにおいても可視光下で基材を傾けた場合、複写した複写物を肉眼で観察した場合に真偽判別できるものであり、機械読み取りでの真偽判別手段については一切記載されていない。特開平10−81056号公報は、貴重品が本物か否か判別することは複写しなければ判断がつかない問題があった。また、金属薄膜は真空蒸着やスパッタリングで形成するため、コストが高かった。また、紙基材に金属薄膜を形成する場合、紙基材上に樹脂をコーティングしなければ金属薄膜が定着し難い問題があった。
【0008】
特開昭63−307996号公報は、赤外線下で観察した場合に真偽判別可能となる印刷物であって、可視光下での真偽判別は不可能であった。
【0009】
以上のことから、本発明は、このような従来の問題を解決することを目的としたもので、限られた条件下のみで潜像画像が視認できるものではなく、第1の印刷領域と第2の印刷領域のいずれか一方を金属光沢インキで形成し、他方を赤外線吸収インキ又は赤外線透過インキ(プロセスインキ又は特色インキ)で形成することによって、第1の印刷領域及び第2の印刷領域は、可視光下で肉眼で観察した場合に拡散光領域では等色で視認され、正反射光領域では異なった色(濃度)で視認され、さらに、印刷物を赤外線表示装置で拡散光領域及び/又は正反射光領域を観察した場合に、第1の印刷領域及び第2の印刷領域の赤外線表示画像に濃度差が生じて潜像画像が視認されてなる印刷物の真偽判別方法及びその印刷物を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基材上に印刷模様を形成し、前記印刷模様は背景画像部を形成する第1の印刷領域と、潜像画像部を形成する第2の印刷領域を有し、前記第1の印刷領域及び前記第2の印刷領域のいずれか一方を金属光沢インキで形成し、他方を赤外線吸収インキで形成して成る印刷物の真偽判別方法において、前記印刷物を赤外線表示装置によって正反射光領域で観察した場合に、前記第1の印刷領域及び前記第2の印刷領域の赤外線表示画像の濃度が変化して、潜像画像が視認されて成る印刷物の真偽判別方法である。
【0011】
また、本発明は、基材上に印刷模様を形成し、前記印刷模様は背景画像部を形成する第1の印刷領域と、潜像画像部を形成する第2の印刷領域を有し、前記第1の印刷領域及び前記第2の印刷領域のいずれか一方を金属光沢インキで形成し、他方を赤外線透過インキで形成して成る印刷物の真偽判別方法において、前記印刷物を赤外線表示装置によって拡散光領域及び正反射光領域で観察した場合に、前記第1の印刷領域及び前記第2の印刷領域の赤外線表示画像の濃度が変化して、潜像画像が視認されて成る印刷物の真偽判別方法である。
【0012】
また、本発明は、基材上に印刷模様を形成し、前記印刷模様は背景画像部を形成する第1の印刷領域と、潜像画像部を形成する第2の印刷領域を有し、前記第1の印刷領域及び前記第2の印刷領域のいずれか一方を金属光沢インキによって形成し、他方を赤外線吸収インキによって形成して成る印刷物であって、前記印刷物は、前記第1の印刷領域及び前記第2の印刷領域は、可視光下で肉眼で観察した場合に拡散光領域では等色で視認され、正反射光領域では異なった色で視認され、前記印刷物を赤外線表示装置によって正反射光領域で観察した場合に、前記第1の印刷領域及び前記第2の印刷領域の赤外線表示画像の濃度が変化して、潜像画像が視認されて成る印刷物である。
【0013】
また、本発明は、基材上に印刷模様を形成し、前記印刷模様は背景画像部を形成する第1の印刷領域と、潜像画像部を形成する第2の印刷領域を有し、前記第1の印刷領域及び前記第2の印刷領域のいずれか一方を金属光沢インキによって形成し、他方を赤外線透過インキによって形成して成る印刷物であって、前記印刷物は、前記第1の印刷領域及び前記第2の印刷領域は、可視光下で肉眼で観察した場合に拡散光領域では等色で視認され、正反射光領域では異なった色で視認され、前記印刷物を赤外線表示装置によって拡散光領域及び正反射光領域を観察した場合に、前記第1の印刷領域及び前記第2の印刷領域の赤外線表示画像の濃度が変化して、潜像画像が視認されて成る印刷物である。
【0014】
また、本発明は、前記第1の印刷領域及び前記第2の印刷領域のうち、前記金属光沢インキで形成した領域の60°鏡面光沢値が5.0以上であり、前記金属光沢インキで形成した領域と、前記赤外線吸収インキで形成した領域の60°鏡面光沢値の差が1.0以上から成る印刷物である。
【0015】
また、本発明は、前記第1の印刷領域及び前記第2の印刷領域のうち、前記金属光沢インキで形成した領域の60°鏡面光沢値が5.0以上であり、前記金属光沢インキで形成した領域と、前記赤外線透過インキで形成した領域の60°鏡面光沢値の差が1.0以上から成る印刷物である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の印刷物の真偽判別方法及びその印刷物は、可視光下及び赤外線下の複数の条件下で潜像画像が視認されるものであり、第1の印刷領域及び第2の印刷領域のいずれか一方を金属光沢インキで形成し、他方を赤外線吸収インキ又は赤外線透過インキ(プロセスインキ又は特色インキ)で形成することによって、第1の印刷領域及び第2の印刷領域は、肉眼で可視光下で観察した場合に拡散光領域では等色で視認され、正反射光領域では異なった色(濃度)で潜像画像が視認され、さらに、印刷物を赤外線表示装置で拡散光領域及び/又は正反射光領域を観察した場合に、第1の印刷領域及び第2の印刷領域の赤外線表示画像に濃度差が生じて潜像画像が視認されるため、潜像画像の視認性の有無、複数の条件下での潜像画像の視認性の有無によって真偽判別が可能となる。
【0017】
当然、第1の印刷領域及び第2の印刷領域のいずれか一方を金属光沢インキで印刷しているため、複写防止効果を有する。また、第1の印刷領域及び第2の印刷領域のいずれか一方のみを金属光沢インキで印刷しているため、低コストで作製可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は以下に述べる実施するための最良の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0019】
図1に本発明の印刷物A1の模式図を示す。基材1上に印刷模様2を形成し、印刷模様2は背景画像部を形成する第1の領域3と、潜像画像部を形成する第2の領域4を有する。背景画像部を形成する第1の領域3は、金属光沢インキによって印刷され、潜像画像部を形成する第2の領域4は、赤外線吸収インキによって印刷されて印刷物A1を得る。なお、背景画像部を形成する第1の領域3は、赤外線吸収インキによって印刷され、潜像画像部を形成する第2の領域4は、金属光沢インキによって印刷しても良い。
【0020】
背景画像部を形成する第1の領域3は、金属光沢インキによって印刷されて60°鏡面光沢値が5.0以上であることが好ましく、金属光沢インキで形成した第1の領域3と、赤外線吸収インキで形成した潜像画像部を形成する第2の領域4の60°鏡面光沢値の差が1.0以上からなることが好ましい。さらに、金属光沢インキによって印刷される第1の領域3と、赤外線吸収インキによって印刷される第2の領域4は、可視光下の拡散光領域及び赤外線下の拡散光領域で等色となるように色合わせを行う。
【0021】
図2(a)に示すように可視光下の拡散光領域で肉眼で観察した場合に印刷物A1は、背景画像部である第1の領域3と潜像画像部である第2の領域4の濃度がほぼ同一であるため、潜像画像が確認し難い。背景画像部である第1の領域3の60°鏡面光沢値が5.0以上であり、潜像画像部である第2の領域4の60°鏡面光沢値が前記領域より1.0以上低く、また可視光を吸収するため、図2(b)に示すように入射光V1は拡散光領域で背景画像部を形成する第1の領域3は正反射光V3’が生じ、背景画像部を形成する第1の領域3の拡散反射光V2’が得られる。潜像画像部を形成する第2の領域4では入射光V1に対して正反射光V3”と可視光の吸収が生じ、潜像画像部を形成する第2の領域4の拡散反射光V2”が得られる。第1の領域3の拡散反射光V2’と第2の領域4の拡散反射光V2”の差異は肉眼で確認し難い状況にある。よって、可視光下の拡散光領域で肉眼で観察した場合に印刷物A1は、背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4の濃度がほぼ同一であるため、潜像画像を確認し難い。
【0022】
図3(a)に示すように可視光下の正反射光領域で肉眼で観察した場合に印刷物A1は、背景画像部である第1の領域3と潜像画像部である第2の領域4に濃度差(光沢差)が生じて潜像画像を確認することができる。背景画像部である第1の領域3の60°鏡面光沢値が5.0以上であり、潜像画像部である第2の領域4の60°鏡面光沢値が前記領域より1.0以上低く、また、可視光を吸収するため、図3(b)に示すように入射光V1は正反射光領域で背景画像部を形成する第1の領域3は正反射光V3’が得られる。潜像画像部を形成する第2の領域4では表面での乱反射と可視光の吸収により、正反射光V3”が得られる。よって、第1の領域3の正反射光V3’は、第2の領域4の正反射光V3”よりも高くなり、その光沢値の差異によって背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4に濃度差(光沢差)が生じて潜像画像を確認することができる。
【0023】
図4(a)に示すように赤外線表示装置で拡散光領域を観察した場合に印刷物A1は、背景画像部である第1の領域3と潜像画像部である第2の領域4の赤外線表示画像の濃度がほぼ同一であるため、潜像画像が確認し難い。潜像画像部である第2の領域4は赤外線吸収インキによって印刷されているため、赤外線下では赤外線を吸収し、拡散光R2”が得られ、図4(b)に示すように背景画像部である第1の領域3は60°鏡面光沢値が5.0以上の場合に、入射光R1は正反射光R3’を生じ、拡散光領域では拡散光R2’が得られる。赤外線表示装置で拡散光領域を観察した場合に、背景画像部である第1の領域3の拡散光R2’と、潜像画像部である第2の領域4の拡散光R2”は、等しくなり黒く視認される。よって、赤外線表示装置で拡散光領域を観察した場合に印刷物A1は、背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4の赤外線表示画像の濃度がほぼ同一であるため、潜像画像を確認し難い。
【0024】
図5(a)に示すように赤外線表示装置で正反射光領域を観察した場合に印刷物A1は、背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4の赤外線表示画像に濃度差が生じて潜像画像を確認することができる。潜像画像部である第2の領域4は赤外線吸収インキによって印刷されているため赤外線領域では赤外線を吸収し黒く確認され、図5(b)に示すように背景画像部である第1の領域3の反射率は60°鏡面光沢値が5.0以上の場合に、入射光R1により正反射光R3’が得られる。背景画像部である第1の領域3は、潜像画像部である第2の領域4より60°鏡面光沢値が1.0以上高いことから、正反射光R3’は正反射光R3”より高くなり、赤外線下では白く視認される。よって、赤外線表示装置で正反射光領域を観察した場合に印刷物A1は、背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4の赤外線表示画像に濃度差が生じて潜像画像が確認することができる。
【0025】
図2、図3に示すように可視光下の拡散光領域で肉眼で観察した場合に印刷物A1は、背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4の濃度がほぼ同一であるため、潜像画像が確認し難い。正反射光領域で肉眼で観察した場合に背景画像部である第1の領域3と潜像画像部である第2の領域4に濃度差(光沢差)が生じて潜像画像が確認することができるか否かによる第1の真偽判別手段と、図4、図5に示すように赤外線表示装置で拡散光領域を観察した場合に印刷物A1は、背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4の濃度がほぼ同一であるため、潜像画像を確認し難いが、赤外線表示装置で正反射光領域を観察した場合に背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4に濃度差が生じて潜像画像が確認することができるか否かによる第2の真偽判別手段を備える。
【0026】
背景画像部を形成する第1の領域3は、金属光沢インキによって印刷されて60°鏡面光沢値が5.0以上であることが好ましく、潜像画像部を形成する第2の領域4は、赤外線吸収インキによって印刷されて前記領域より60°鏡面光沢値が1.0以上低いことが好ましい。第1の領域3は、金属光沢インキによって印刷されて60°鏡面光沢値が5.0より低いと、可視光及び/又は赤外線下での正反射光が少なく、第1の領域3と第2の領域4からなる潜像画像が視認でき、更に、赤外線表示装置で正反射光領域を観察した場合に第1の領域3が白く視認されないおそれが生じ、赤外線表示装置で拡散光領域を観察した場合に第1の領域3が黒く視認されないおそれが生じる。赤外線吸収インキによって印刷された第2の領域4の60°鏡面光沢値が、第1の領域3の60°鏡面光沢値より差が1.0より小さいと、可視光下の正反射光領域及び赤外線下での拡散光領域で肉眼で観察した場合に印刷物A1は、背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4に濃度差が生じて潜像画像が確認されるおそれがある。
【0027】
図6に本発明の印刷物A2の模式図を示す。基材1上に印刷模様2を形成し、印刷模様2は背景画像部を形成する第1の領域3と、潜像画像部を形成する第2の領域4を有する。背景画像部を形成する第1の領域3は、金属光沢インキによって印刷され、潜像画像部を形成する第2の領域4は、赤外線透過インキ〔プロセスインキ(Y、M、Cのいずれか一つ又は混色)又は特色インキ〕によって印刷されて印刷物A2を得る。なお、背景画像部を形成する第1の領域3は、プロセスインキ又は特色インキによって印刷され、潜像画像部を形成する第2の領域4は、金属光沢インキによって印刷しても良い。
【0028】
背景画像部を形成する第1の領域3は、金属光沢インキによって印刷されて60°鏡面光沢値が5.0以上であることが好ましく、金属光沢インキで形成した第1の領域3と、赤外線透過インキで形成した潜像画像部を形成する第2の領域4の60°鏡面光沢値の差が1.0以上から成ることが好ましい。さらに、金属光沢インキによって印刷される第1の領域3と、赤外線透過インキによって印刷される第2の領域4は、可視光下の拡散光領域で等色となるように色合わせを行う。
【0029】
図7(a)に示すように可視光下の拡散光領域で肉眼で観察した場合に印刷物A2は、背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4の濃度がほぼ同一であるため、潜像画像を確認し難い。背景画像部である第1の領域3の60°鏡面光沢値が5.0以上であり、潜像画像部である第2の領域4の60°鏡面光沢値が前記領域より1.0以上低く、また、可視光を吸収するため、図7(b)に示すように入射光V1は拡散光領域で背景画像部を形成する第1の領域3は正反射光V3’が生じ、背景画像部を形成する第1の領域3の拡散反射光V2’が得られる。潜像画像部を形成する第2の領域4では正反射光V3”と可視光の吸収が生じ、潜像画像部を形成する第2の領域4の拡散反射光V2”が得られる。第1の領域3の拡散反射光V2’と第2の領域4の拡散反射光V2”の差異は肉眼で確認し難い状況にある。よって、可視光下の拡散光領域で肉眼で観察した場合に印刷物A2は、背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4の濃度がほぼ同一であるため、潜像画像が確認し難い。
【0030】
図8(a)に示すように可視光下の正反射光領域で肉眼で観察した場合に印刷物A2は、背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4に濃度差(光沢差)が生じて潜像画像を確認することができる。背景画像部である第1の領域3の60°鏡面光沢値が5.0以上であり、潜像画像部である第2の領域4の60°鏡面光沢値が前記の領域より1.0以上低く、また、可視光を吸収するため、図8(b)に示すように入射光V1は正反射光領域で背景画像部を形成する第1の領域3は正反射光V3’が得られる。潜像画像部を形成する第2の領域4では表面での乱反射と可視光の吸収により、正反射光V3”が得られる。よって、第1の領域3の正反射光V3’は、第2の領域4の正反射光V3”よりも高くなり、その光沢値の差異によって背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4に濃度差(光沢差)が生じて潜像画像を確認することができる。
【0031】
図9(a)に示すように赤外線表示装置で拡散光領域を観察した場合に印刷物A2は、背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4の赤外線表示画像に濃度差が生じて潜像画像が確認することができる。図9(b)に示すように、潜像画像部である第2の領域4は赤外線透過インキによって印刷されているため、赤外線下(入射光R1)では赤外線を透過し、基材からの乱反射R4”により拡散光R2”は白く確認され、一方、背景画像部である第1の領域3は60°鏡面光沢値が5.0以上の場合に、入射光R1は正反射光R3’を生じ、拡散光領域では拡散光R2’が得られる。赤外線表示装置で拡散光領域を観察した場合に、背景画像部である第1の領域3は60°鏡面光沢値が5.0以上により拡散光R2’が低くなり黒く視認され、潜像画像部である第2の領域4は基材からの乱反射R4”により拡散光R2”が高くなり白く視認される。よって、赤外線表示装置で拡散光領域を観察した場合に印刷物A2は、背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4の赤外線表示画像に濃度差が生じて潜像画像が確認することができる。
【0032】
図10(a)に示すように赤外線表示装置で正反射光領域を観察した場合に印刷物A2は、背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4の赤外線表示画像に濃度差が生じて潜像画像が確認することができる。図10(b)に示すように、潜像画像部である第2の領域4は赤外線透過インキによって印刷されているため、基材からの乱反射R4”により拡散光R3”が確認され、一方、背景画像部である第1の領域3は60°鏡面光沢値が5.0以上の場合に、入射光R1は正反射光R3’が得られる。背景画像部である第1の領域3は、潜像画像部である第2の領域4より60°鏡面光沢値が1.0以上高いことから、正反射光R3’は正反射光R3”より高くなり、赤外線下の正反射光領域ではより白く視認されため、潜像画像部である第2の領域4は暗く視認される。よって、赤外線表示装置で正反射光領域を観察した場合に印刷物A2は、背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4の赤外線表示画像に濃度差が生じて潜像画像を確認することができる。
【0033】
図7、図8に示すように可視光下の拡散光領域で肉眼で観察した場合に印刷物A2は、背景画像部である第1の領域3と潜像画像部である第2の領域4の濃度がほぼ同一であるため、潜像画像が確認し難い。正反射光状態で肉眼で観察した場合に背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4に濃度差が生じて潜像画像が確認することができるか否かによる第1の真偽判別手段と、図9、10に示すように外線表示装置で観察した場合に印刷物A2は、背景画像部である第1の領域3と潜像画像部である第2の領域4は、拡散光領域及び正反射光領域の赤外線表示画像に濃度差が生じて潜像画像が確認され、画像の明暗が変化するか否かによる第2の真偽判別手段を備える。
【0034】
背景画像部を形成する第1の領域3は、金属光沢インキによって印刷されて60°鏡面光沢値が5.0以上であることが好ましく、潜像画像部を形成する第2の領域4は、赤外線透過インキによって印刷されて前記領域より60°鏡面光沢値が1.0以上低いことが好ましい。第1の領域3は、金属光沢インキによって印刷されて60°鏡面光沢値が5.0より低いと、可視光下及び/又は赤外線下での正反射光が少なく、第1の領域3と第2の領域4からなる潜像画像が視認でき、更に、赤外線表示装置で正反射光領域を観察した場合に第1の領域3がより白く視認されないおそれが生じ、赤外線表示装置で拡散光領域を観察した場合に第1の領域3が黒く視認されないおそれが生じる。赤外線透過インキによって印刷された第2の領域4の60°鏡面光沢値が、第1の領域3の60°鏡面光沢値より差が1.0より小さいと、可視光下の正反射光領域及び赤外線下での拡散光領域で観察した場合に印刷物A2は、背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4に濃度差が生じて潜像画像が確認されるおそれがある。
【0035】
本発明の印刷物は、上記記載の印刷物A1及び印刷物A2を組み合わせても良い。第1の領域を金属光沢インキによって印刷し、第2の領域を赤外線透過インキによって印刷し、第3の領域を赤外線吸収インキによって印刷して印刷物A1及び印刷物A2の両方の効果を得ることができる。例えば、図11に示すように基材1上に印刷模様2を形成し、印刷模様2は背景画像部を形成する第1の領域3と、第1の潜像画像部を形成する第2の領域4及び第2の潜像画像部を形成する第3の領域5を有する。背景画像部を形成する第1の領域3は、金属光沢インキによって印刷され、第1の潜像画像部を形成する第2の領域4は、赤外線透過インキよって印刷され、第2の潜像画像部を形成する第3の領域5は、赤外線吸収インキによって印刷されて印刷物A3を得る。背景画像部を形成する第1の領域3は、金属光沢インキによって印刷され60°鏡面光沢値が5.0以上であり、第1の潜像画像部を形成する第2の領域4は、赤外線透過インキによって印刷され第1の領域3より60°鏡面光沢値が1.0以上低く、第2の潜像画像部を形成する第3の領域5は、赤外線吸収インキによって印刷され第1の領域3より60°鏡面光沢値が1.0以上低いことが好ましい。
【0036】
図12に示すように印刷物A3は、可視光下の拡散光領域で肉眼で観察した場合に印刷物は、背景画像部である第1の領域3と、第1の潜像画像部である第2の領域4及び第2の潜像画像部である第3の領域5の濃度がほぼ同一であるため、潜像画像を確認し難い。図13に示すように印刷物A3は、可視光下の正反射光領域で肉眼で観察した場合に印刷物は、背景画像部である第1の領域3と、第1の潜像画像部である第2の領域4に濃度差(光沢差)が生じて潜像画像を確認することができる。さらに、背景画像部である第1の領域3と、第2の潜像画像部である第3の領域5に濃度差(光沢差)が生じて潜像画像を確認することができる。図14に示すように印刷物A3は、赤外線表示装置で拡散光領域を観察に印刷物は、背景画像部である第1の領域3と、第1の潜像画像部である第2の領域4の赤外線表示画像に濃度差が生じて潜像画像が確認することができる。赤外線表示装置で拡散光領域を観察した場合に印刷物は、背景画像部である第1の領域3と、第2の潜像画像部である第3の領域5の赤外線表示画像に濃度がほぼ同一であるため、潜像画像を確認し難い。図15に示すように印刷物A3は、赤外線表示装置で正反射光領域を観察した場合に印刷物は、背景画像部である第1の領域3と、第2の潜像画像部である第3の領域5の赤外線表示画像に濃度差が生じて潜像画像を確認することができる。赤外線表示装置で正反射光領域を観察した場合に印刷物は、背景画像部である第1の領域3と、第1の潜像画像部である第2の領域4の赤外線表示画像に濃度差が生じて潜像画像を確認することができる。
【0037】
金属光沢インキは、金インキ、銀インキ、パールインキ、コレステリック液晶インキ又は、アルミ粉が含有させたインキ、ブロンズ粉が含有されたインキ又はガラスフレークを含有させたインキである。赤外線吸収インキは、カーボンブラック等の赤外線吸収材料をプロセスインキ又は特色インキに含有させたインキである。プロセスインキは、イエローインキ、マゼンタインキ、シアンインキのいずれか一つの赤外線透過インキ又はイエローインキ、マゼンタインキ及びシアンインキの混色の赤外線透過インキである。特色インキは、イエローインキ、マゼンタインキ及びシアンインキ以外の赤外線透過インキである。
【0038】
本発明の印刷物に用いる基材は、特に限定されることがなく、上質紙、コート紙、アート紙等の紙葉類、フィルム等を用いることができる。好ましくは基材の平滑度が1000秒以上2,000秒未満であることが好ましい。
【0039】
本発明を実施するための最良の形態について、印刷物の60°鏡面光沢値の測定にはBYK-Gardner製光沢計micro-TRI-glossを使用した。
【0040】
本発明の印刷物の印刷方式は、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式、スクリーン印刷方式、フレキソ印刷方式、インクジェットプリンタ、レーザプリンタ等、特に限定されるものではないが、特にオフセット印刷、インクジェットプリンタ方式が好ましい。
【0041】
印刷模様の構成は、ベタ、網点、線画、網目スクリーン、白線スクリーン又はコンタクトスクリーンで形成することができる。
【0042】
印刷模様又は潜像画像部は、文字、数字、記号及び絵柄の少なくとも一つで構成することができるため、デザインは、特に限定されるものではない。彩紋等によって形成することによって、偽造防止効果、デザイン性が向上する。
【0043】
また、本発明の印刷物の真偽判別方法としてコンピュータでの真偽判別が可能であり、本発明の印刷物の赤外線表示装置で視認される潜像画像を予め基準画像としてコンピュータの記憶手段に記憶し、本発明の印刷物である被判別体の赤外線表示装置で視認される潜像画像の画像データを読み取り、読み取られた画像データとあらかじめ記憶された基準画像をパターンマッチング等の演算手段で比較し、あらかじめ定められた基準の範囲内であれば本物、基準範囲外であれば偽物とし、真偽判別することができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の内容は、これらの実施例の範囲に限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
インクジェットプリンタ(EPSON製 PX-G900)を使用して、写真用紙(EPSON製)上に印刷模様2を形成し、印刷模様2は背景画像部を形成する第1の領域3と、潜像画像部を形成する第2の領域4を有する。背景画像部を形成する第1の領域3は、金コロイドインキ(日本ペイント(株)製)によって印刷され、潜像画像部を形成する第2の領域4は、赤外線吸収材料が含有されたブラックインキ(EPSON製 マットブラック)によって印刷されて実施例1の印刷物を得た。背景画像部を形成する第1の領域3は、金コロイドインキによって印刷された画線部の60°鏡面光沢値が444であり、潜像画像部を形成する第2の領域4は、赤外線吸収インキによって印刷された画線部の60°鏡面光沢値が95.5であった。
【0046】
実施例1の印刷物は、可視光下の拡散光領域で肉眼で観察した場合に背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4の濃度がほぼ同一であるため、潜像画像を確認し難かった。可視光下の正反射光領域で肉眼で観察した場合に印刷物は、背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4に濃度差(光沢差)が生じて潜像画像が確認することができた。赤外線表示装置で拡散光領域を観察した場合に印刷物は、背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4の赤外線表示画像の濃度がほぼ同一であるため、潜像画像が確認し難かった。赤外線表示装置で正反射光領域を観察した場合に印刷物は、背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4の赤外線表示画像に濃度差が生じて潜像画像を確認することができた。
【0047】
(実施例2)
インクジェットプリンタ(EPSON製 PX-G900)を使用して、写真用紙(EPSON製)上に印刷模様2を形成し、印刷模様2は背景画像部を形成する第1の領域3と、潜像画像部を形成する第2の領域4を有する。背景画像部を形成する第1の領域3は、金コロイドインキ(日本ペイント(株)製)によって印刷され、潜像画像部を形成する第2の領域4は、プロセスインキ(シアン、マゼンタ及びイエロー EPSON製)によって印刷されて実施例2の印刷物を得た。背景画像部を形成する第1の領域3は、金コロイドインキによって印刷された画線部の60°鏡面光沢値が444であり、潜像画像部を形成する第2の領域4は、赤外線吸収インキによって印刷された画線部の60°鏡面光沢値が94であった。
【0048】
実施例2の印刷物は、可視光下の拡散光領域で肉眼で観察した場合に背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4の濃度がほぼ同一であるため、潜像画像が確認し難かった。可視光下の正反射光領域で肉眼で観察した場合に印刷物は、背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4に濃度差(光沢差)が生じて潜像画像が確認することができた。赤外線表示装置で拡散光領域を観察した場合に印刷物は、背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4の赤外線表示画像に濃度差が生じて潜像画像が確認することができた。赤外線表示装置で正反射光領域を観察した場合に印刷物は、背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4の赤外線表示画像に濃度差が生じて潜像画像が確認することができた。
【0049】
(実施例3)
オフセット印刷機を使用して、アート紙(王子製紙(株)製 OK金藤Nグロス)上に印刷模様2を形成し、印刷模様2は背景画像部を形成する第1の領域3と、第1の潜像画像部を形成する第2の領域4及び第2の潜像画像部を形成する第3の領域5を有する。背景画像部を形成する第1の領域3は、銀インキ(ECKART社製TOPSTAR UVシルバー)によって印刷され、第1の潜像画像部を形成する第2の領域4は、赤外透過型特色インキによって印刷され、第2の潜像画像部を形成する第3の領域5は、ブラックインキ(T&K TOKA(株)製UV VECTA カートン墨)/メジウム(T&K TOKA(株)製UV VECTA カートンメジウム)が15/85の割合で混ぜ合わせて作製したインキによって印刷されて実施例3の印刷物を得た。背景画像部を形成する第1の領域3は、銀インキによって印刷された画線部の60°鏡面光沢値が90であり、第1の潜像画像部を形成する第2の領域4は、赤外透過型特色インキによって印刷された画線部の60°鏡面光沢値が35であり、第2の潜像画像部を形成する第3の領域5は、赤外線吸収インキによって印刷された画線部の60°鏡面光沢値が32であった。
【0050】
実施例3の印刷物は、可視光下の拡散光領域で肉眼で観察した場合に背景画像部である第1の領域3と、第1の潜像画像部である第2の領域4及び第2の潜像画像部である第3の領域5の濃度がほぼ同一であるため、潜像画像が確認し難かった。可視光下の正反射光領域で肉眼で観察した場合に印刷物は、背景画像部である第1の領域3と、第1の潜像画像部である第2の領域4に濃度差(光沢差)が生じて潜像画像が確認することができた。さらに、背景画像部である第1の領域3と、第2の潜像画像部である第3の領域5に濃度差(光沢差)が生じて潜像画像を確認することができた。赤外線表示装置で拡散光領域を観察した場合に印刷物は、背景画像部である第1の領域3と、第1の潜像画像部である第2の領域4の赤外線表示画像に濃度差が生じて潜像画像を確認することができた。さらに、赤外線表示装置で拡散光領域を観察した場合に印刷物は、背景画像部である第1の領域3と、第2の潜像画像部である第3の領域5の赤外線表示画像の濃度がほぼ同一であるため、潜像画像を確認し難かった。赤外線表示装置で正反射光領域を観察した場合に印刷物は、背景画像部である第1の領域3と、第2の潜像画像部である第3の領域5の赤外線表示画像に濃度差が生じて潜像画像を確認することができた。さらに、赤外線表示装置で正反射光領域を観察した場合に印刷物は、背景画像部である第1の領域3と、第1の潜像画像部である第2の領域4の赤外線表示画像に濃度差が生じて潜像画像を確認することができた。
【0051】
(実施例4)
赤外線吸収インキAを次の割合で作製した。
赤外線吸収インキA
ITO 13.0%
酸化チタン 16.0%
カーボンブラック 0.2%
メジウム 70.8%

ITO:三井金属(株)製 ITO-A
酸化チタン:チタン工業(株)製 KR-380
カーボンブラック:三菱化学(株)製 MA-100
メジウム:T&K TOKA(株)製UV VECTA カートンメジウム

次に、オフセット印刷機を使用して、図16に示すように基材1〔マット紙(王子製紙(株)製 サテン金藤Nダルマット)〕上に印刷模様2を形成し、印刷模様2は背景画像部を形成する第1の領域3と、潜像画像部を形成する第2の領域4を有する。背景画像部を形成する第1の領域3(網点面積率40%)は、赤外線吸収インキAによって印刷され、潜像画像部を形成する第2の領域4(網点面積率40%)はパールインキ(T&K TOKA(株)製UVパール)によって印刷されて実施例4の印刷物を得た。
【0052】
(実施例5)
オフセット印刷機を使用して、図16に示すように基材1〔グロス紙(王子製紙(株)製 OK金藤Nグロス)〕上に印刷模様2を形成し、印刷模様2は背景画像部を形成する第1の領域3と、潜像画像部を形成する第2の領域4を有する。背景画像部を形成する第1の領域3(網点面積率40%)は、実施例4で作製した赤外線吸収インキAによって印刷され、潜像画像部を形成する第2の領域4(網点面積率40%)はパールインキ(T&K TOKA(株)製UVパール)によって印刷されて実施例5の印刷物を得た。
【0053】
(実施例6)
赤外線吸収インキBを次の割合で作製した。
赤外線吸収インキB
ITO 13.0%
酸化チタン 16.0%
カーボンブラック 0.4%
メジウム 70.6%

ITO:三井金属(株)製 ITO-A
酸化チタン:チタン工業(株)製 KR-380
カーボンブラック:三菱化学(株)製 MA-100
メジウム:T&K TOKA(株)製UV VECTA カートンメジウム

次に、オフセット印刷機を使用して、図16に示すように基材1〔上質紙(日本製紙(株)製 ニューNPi上質紙)〕上に印刷模様2を形成し、印刷模様2は背景画像部を形成する第1の領域3と、潜像画像部を形成する第2の領域4を有する。背景画像部を形成する第1の領域3(網点面積率80%)は、赤外線吸収インキBによって印刷され、潜像画像部を形成する第2の領域4(網点面積率80%)は銀インキ(T&K TOKA(株)製UVシルバー)によって印刷されて実施例6の印刷物を得た。
【0054】
(比較例1)
オフセット印刷機を使用して、図16に示すように基材1〔上質紙(日本製紙(株)製 ニューNPi上質紙)〕上に印刷模様2を形成し、印刷模様2は背景画像部を形成する第1の領域3と、潜像画像部を形成する第2の領域4を有する。背景画像部を形成する第1の領域3(網点面積率60%)は、実施例6で作製した赤外線吸収インキBによって印刷され、潜像画像部を形成する第2の領域4(網点面積率60%)は銀インキ(T&K TOKA(株)製UVシルバー)によって印刷されて比較例1の印刷物を得た。
【0055】
実施例4から6及び比較例1で作製した印刷物の背景画像部を形成する第1の領域3と潜像画像部を形成する第2の領域4の60°鏡面光沢値を表1に示す。測定はBYK-Gardner製光沢計micro-TRI-glossを使用した。
【0056】
【表1】

【0057】
実施例4から6までの印刷物は、可視光下の拡散光領域で肉眼で観察した場合に背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4は、図17に示すように濃度がほぼ同一であるため、潜像画像が確認し難かった。可視光下の正反射光領域で肉眼で観察した場合に印刷物は、背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4は、図18に示すように濃度差(光沢差)が生じて潜像画像が確認することができた。赤外線表示装置で拡散光領域を観察した場合に印刷物は、背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4は、図17に示すように赤外線表示画像の濃度がほぼ同一であるため、潜像画像が確認し難かった。赤外線表示装置で正反射光領域を観察した場合に印刷物は、背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第3の領域4は、図18に示すように赤外線表示画像に濃度差が生じて潜像画像が確認することができた。
【0058】
比較例1の印刷物は、可視光下の拡散光領域及び正反射光領域のいずれの状態でも肉眼で観察した場合に、背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4の濃度がほぼ同一であるため、潜像画像が確認し難かった。さらに、赤外線表示装置で拡散光領域及び正反射光領域を観察した場合に、背景画像部である第1の領域3と、潜像画像部である第2の領域4の赤外線表示画像の濃度がほぼ同一であるため、潜像画像が確認し難かった。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の印刷物A1を示す図である。
【図2】本発明の印刷物A1を可視光下の拡散光領域で肉眼で観察した場合の図である。
【図3】本発明の印刷物A1を可視光下の正反射光領域で肉眼で観察した場合の図である。
【図4】本発明の印刷物A1を赤外線表示装置で拡散光領域を観察した場合の図である。
【図5】本発明の印刷物A1を赤外線表示装置で正反射光領域を観察した場合の図である。
【図6】本発明の印刷物A2を示す図である。
【図7】本発明の印刷物A2を可視光下の拡散光領域で肉眼で観察した場合の図である。
【図8】本発明の印刷物A2を可視光下の正反射光領域で肉眼で観察した場合の図である。
【図9】本発明の印刷物A2を赤外線表示装置で拡散光領域を観察した場合の図である。
【図10】本発明の印刷物A2を赤外線表示装置で正反射光領域を観察した場合の図である。
【図11】本発明の印刷物A3を示す図である。
【図12】本発明の印刷物A3を可視光下の拡散光領域で肉眼で観察した場合の図である。
【図13】本発明の印刷物A3を可視光下の正反射光領域で肉眼で観察した場合の図である。
【図14】本発明の印刷物A3を赤外線表示装置で拡散光領域を観察した場合の図である。
【図15】本発明の印刷物A3を赤外線表示装置で正反射光領域を観察した場合の図である。
【図16】本発明の印刷物A4を示す図である。
【図17】本発明の印刷物A4を可視光下の拡散光領域又は赤外線表示装置の拡散光領域で観察した場合の図である。
【図18】本発明の印刷物A4を可視光下の正反射光領域又は赤外線表示装置の正反射光領域で観察した場合の図である。
【符号の説明】
【0060】
A1、A2、A3、A4 印刷物
1 用紙
2 印刷模様
3 第1の領域
4 第2の領域
5 第3の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に印刷模様を形成し、前記印刷模様は背景画像部を形成する第1の印刷領域と、潜像画像部を形成する第2の印刷領域を有し、
前記第1の印刷領域及び前記第2の印刷領域のいずれか一方を金属光沢インキで形成し、他方を赤外線吸収インキで形成して成る印刷物の真偽判別方法において、
前記印刷物を赤外線表示装置によって正反射光領域で観察した場合に、前記第1の印刷領域及び前記第2の印刷領域の赤外線表示画像の濃度が変化して、潜像画像が視認されて成る印刷物の真偽判別方法。
【請求項2】
基材上に印刷模様を形成し、前記印刷模様は背景画像部を形成する第1の印刷領域と、潜像画像部を形成する第2の印刷領域を有し、
前記第1の印刷領域及び前記第2の印刷領域のいずれか一方を金属光沢インキで形成し、他方を赤外線透過インキで形成して成る印刷物の真偽判別方法において、
前記印刷物を赤外線表示装置によって拡散光領域及び正反射光領域で観察した場合に、前記第1の印刷領域及び前記第2の印刷領域の赤外線表示画像の濃度が変化して、潜像画像が視認されて成る印刷物の真偽判別方法。
【請求項3】
基材上に印刷模様を形成し、前記印刷模様は背景画像部を形成する第1の印刷領域と、潜像画像部を形成する第2の印刷領域を有し、
前記第1の印刷領域及び前記第2の印刷領域のいずれか一方を金属光沢インキによって形成し、他方を赤外線吸収インキによって形成して成る印刷物であって、
前記印刷物は、前記第1の印刷領域及び前記第2の印刷領域は、可視光下で肉眼で観察した場合に拡散光領域では等色で視認され、正反射光領域では異なった色で視認され、前記印刷物を赤外線表示装置によって正反射光領域で観察した場合に、前記第1の印刷領域及び前記第2の印刷領域の赤外線表示画像の濃度が変化して、潜像画像が視認されて成る印刷物。
【請求項4】
基材上に印刷模様を形成し、前記印刷模様は背景画像部を形成する第1の印刷領域と、潜像画像部を形成する第2の印刷領域を有し、
前記第1の印刷領域及び前記第2の印刷領域のいずれか一方を金属光沢インキによって形成し、他方を赤外線透過インキによって形成して成る印刷物であって、
前記印刷物は、前記第1の印刷領域及び前記第2の印刷領域は、可視光下で肉眼で観察した場合に拡散光領域では等色で視認され、正反射光領域では異なった色で視認され、前記印刷物を赤外線表示装置によって拡散光領域及び正反射光領域を観察した場合に、前記第1の印刷領域及び前記第2の印刷領域の赤外線表示画像の濃度が変化して、潜像画像が視認されて成る印刷物。
【請求項5】
前記第1の印刷領域及び前記第2の印刷領域のうち、前記金属光沢インキで形成した領域の60°鏡面光沢値が5.0以上であり、前記金属光沢インキで形成した領域と、前記赤外線吸収インキで形成した領域の60°鏡面光沢値の差が1.0以上からなる請求項3記載の印刷物。
【請求項6】
前記第1の印刷領域及び前記第2の印刷領域のうち、前記金属光沢インキで形成した領域の60°鏡面光沢値が5.0以上であり、前記金属光沢インキで形成した領域と、前記赤外線透過インキで形成した領域の60°鏡面光沢値の差が1.0以上から成る請求項4記載の印刷物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−152805(P2007−152805A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−352922(P2005−352922)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】