説明

印刷物の製造方法

【課題】グラビアオフセット印刷等を用いて、短形あるいは円形等の大面積のベタパターンを形成することが出来る印刷物の製造方法を提供する。
【解決手段】平版である第1の凹版301にドクター303−1で導電性インキをドクタリングする。次に、平版である第1の凹版301の導電性インキをブランケット305に転写する。次に、シリンダーである第2の凹版302にドクター303‐2で導電性インキをドクタリングする。最後に、シリンダーである第2の凹版302の導電性インキをブランケット305に転写し、ブランケット胴304に取り付けられたブランケット305に転写された導電性インキを基材306に印刷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷対象物の表面に各種インキ、樹脂、導電インキなどの各種の粘度の高い塗布材料等を用い、広範囲に高解像力、高寸法精度のある優れた配線パターンを安定的に印刷するのに好適な印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ICカードアンテナ(コイル状のパターン)や太陽電池バックシート導配線、電磁シールド、タッチパネルITO配線等を印刷目的として、PET、PEN、アクリル、ガラス等の上に、導電性インキ等により広範囲の面積で細線や太線の印刷する技術が知られている。近年、建材分野、パッケージ分野、出版分野、エレクトロニクス分野など生活系、電気系、情報系等、さまざまな分野における工業製品の製造方法として以下の技術がある。
【0003】
すなわち、グラビアオフセット印刷法により、表面にシリコーンもしくはフツ素化合物あるいはその混合体よりなるインキ剥離性の転写層を有する転写体上に該転写体を予めドクターもしくはスクレーパー等で所望の凹部パターン内にインキを充填および擦切りし、その凹部パターン内にインキが満たされた版上に接触させ、転写体上にインキ皮膜を転移させることにより、転写体上のインキ皮膜をパターン化する工程と適当な膜厚分布に応じたインキ皮膜を形成する工程と、該転写体を被印刷体に圧着し転写体上に残るインキ皮膜のパターンを被印刷体に転写する工程と、を備える転写印刷法を用いて、印刷対象物の表面に各種インキ、樹脂、導電インキなどの粘度の高い塗布材料を高解像、高寸法精度で、広範囲に印刷するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭59‐17555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図10〜図15は本発明の課題を説明する印刷方法の工程手順の一例を説明する斜視図である。説明を簡略するため、印刷パターンはベタ画像のみを図示するものとする。以下、グラビアオフセット印刷による配線パターンの一般的製造方法を各工程図により説明する。
まず、図10に示すように、平版である第1の凹版201にドクター203で導電性インキをドクタリングする。次に、図11に示すように、平版である第1の凹版201の導電性インキをブランケット胴204に取り付けられたブランケット205に転写する。次に、図12に示すように、ブランケット205に転写された導電性インキを基材206に印刷する。
【0006】
次に、図13に示すように、平版である第1の凹版201から平版である第2の凹版202に交換し、平版である第2の凹版202にドクター203で導電性インキをドクタリングする。次に、図14に示すように、平版である第2の凹版202の導電性インキをブランケット205に転写する。最後に、図15に示すように、ブランケット205に転写された導電性インキを基材206に印刷する。これによって基材206上に配線パターンが形成され、この後、ベークによって硬化され製品として完成する。
【0007】
しかしながら、かかる方式によるグラビアオフセット印刷を用いた印刷方法では、平版である第1の凹版201、第2の凹版202から導電性インキをブランケット205に転写させる際に、大面積のベタパターンだと、中央部付近にブランケット205の圧力がかからないため、導電性インキを転写することが出来ないゆえ、短形あるいは円形等の大面積のベタパターンを形成することが困難であった。さらに、パターンの面積によっては3回以上マスク交換必要とすることもあり、タクトタイムも大幅にかかっていた。
本発明の目的は、グラビアオフセット印刷等を用いて、短形あるいは円形等の大面積のベタパターンを形成することが出来る印刷物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、基材上にインキパターンを形成する印刷物の製造方法であって、凹部にインキが充填された第1の凹版から転写版にインキを転写して前記転写版上に細線からなる第1のインキパターンを形成する工程と、前記転写版上の前記第1のインキパターンを前記基材に転写する工程と、前記基材に転写する工程後に、凹部にインキが充填された第2の凹版から前記転写版にインキを転写して当該転写版上に前記細線より太線からなる第2のインキパターンを形成する工程と、前記第2のインキパターンを形成する工程後に前記転写版上の第2のインキパターンを前記基材に転写する工程と、を備えていることを特徴とする印刷物の製造方法である。
【0009】
(2) (1)の発明において、前記インキが導電性インキであることを特徴とするようにしてもよい。
(3) (1)又は(2)の発明において、前記第1の凹版と前記第2の凹版とのうちの一方が平版であり、もう一方がシリンダー版であることを特徴とするようにしてもよい。
【0010】
(4) (1)又は(2)の発明において、前記第1の凹版と前記第2の凹版のいずれもがシリンダー版であることを特徴とするようにしてもよい。
(5)別の本発明は、基材上にインキパターンを形成する印刷物の製造方法であって、凹部にインキが充填された第1の凹版から転写版にインキを転写して前記転写版上に細線からなる第1のインキパターンを形成する工程と、凹部にインキが充填された第2の凹版から前記転写版にインキを転写して前記転写版上に前記細線より太線からなる第2のインキパターンを形成する工程と、前記転写版上の第1のインキパターン及び第2のインキパターンを前記基材に転写する工程と、を備えていることを特徴とする印刷物の製造方法である。
【0011】
(6) (5)の発明において、前記インキが導電性インキであることを特徴とするようにしてもよい。
(7) (5)又は(6)の発明において、前記第1の凹版と前記第2の凹版とのうちの一方が平版であり、もう一方がシリンダー版であることを特徴とするようにしてもよい。
【0012】
(8) (5)又は(6)の発明において、前記第1の凹版と前記第2の凹版のいずれもがシリンダー版であることを特徴とするようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
(1)(5)の発明によれば、第1のインキパターンと第2のインキパターンの重ね合わせにより、短形あるいは円形等の大面積ベタパターンの形成を効率的に行うことができる。
(2)(6)の発明によれば、導電性インキを用いた配線パターンの形成に好適な印刷物の製造方法を提供できる。
【0014】
(3)(7)の発明によれば、第1の凹版と第2の凹版の一方を平版、もう一方をシリンダー版とすることにより、平版によって細線部分を形成し、シリンダー版によって太線部分を効率的に形成して、細線と太線を効率的に形成することができる。
(4)(8)の発明によれば、第1の凹版と第2の凹版の両方をシリンダー版とすることにより、製造タクトを短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態1にかかる印刷物の製造方法の工程手順について説明する斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1にかかる印刷物の製造方法の工程手順について説明する斜視図である。
【図3】本発明の実施形態1にかかる印刷物の製造方法の工程手順について説明する斜視図である。
【図4】本発明の実施形態1にかかる印刷物の製造方法の工程手順について説明する斜視図である。
【図5】本発明の実施形態1にかかる印刷物の製造方法の工程手順について説明する斜視図である。
【図6】基材上での大面積ベタパターン形成を拡大した図である。
【図7】本発明の実施形態2にかかる印刷物の製造方法の工程手順について説明する斜視図である。
【図8】本発明の実施形態2にかかる印刷物の製造方法の工程手順について説明する斜視図である。
【図9】本発明の実施形態2にかかる印刷物の製造方法の工程手順について説明する斜視図である。
【図10】本発明の課題を説明する印刷方法の工程手順の一例を説明する斜視図である。
【図11】本発明の課題を説明する印刷方法の工程手順の一例を説明する斜視図である。
【図12】本発明の課題を説明する印刷方法の工程手順の一例を説明する斜視図である。
【図13】本発明の課題を説明する印刷方法の工程手順の一例を説明する斜視図である。
【図14】本発明の課題を説明する印刷方法の工程手順の一例を説明する斜視図である。
【図15】本発明の課題を説明する印刷方法の工程手順の一例を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
[実施の形態1]
この実施の形態は、グラビアオフセット印刷機300を用いて印刷を行う印刷物の製造方法である。図1〜図5は、この印刷物の製造方法の工程手順について説明する斜視図である。以下では、印刷パターンはベタのみを図示するものとする。
【0017】
(1)工程1
まず、図1に示すように、アライメントカメラ307によって、基材306の位置を合わせた後、平版である第1の凹版301にドクター303−1で導電性インキをドクタリングする。平版である第1の凹版301には細線パターンが刻まれており、細線パターンのみに導電性インキが充填されることになる。
【0018】
(2)工程2
次に、図2に示すように、平版である第1の凹版301の導電性インキをブランケット305に転写する。図3は、ブランケット305に転写された導電性インキを基材306に印刷した図である。
(3)工程3
次に、図4に示すように、シリンダーである第2の凹版302にドクター303‐2で導電性インキをドクタリングする。シリンダーである第2の凹版302は前述の細線より太い太線パターンが刻まれており、太線パターンのみに導電性インキが充填される。
【0019】
(4)工程4
最後に、図5に示すように、シリンダーである第2の凹版302の導電性インキをブランケット305に転写し、ブランケット胴304に取り付けられたブランケット305に転写された導電性インキを基材306に印刷する。平版である第1の凹版301の細線パターンとシリンダーである第2の凹版302の太線パターンが基材306上で組み合わさって、細線と太線や大面積のベタパターンが形成され、この後、ベークによって硬化され完成する。
【0020】
図6は、基材306上での大面積ベタパターン形成を拡大した図である。平版である第1の凹版301から出来る細線で大面積の枠や配線等である第1のパターンを形成し、シリンダーである第2の凹版302から出来る太線で大面積の内側や電極等である第2のパターンを形成することで、基材306上に大面積ベタパターン310が形成出来る。なお、細線とは例えば5〜50μmの線、太線とは例えば50〜500μmの線のことをいう。
【0021】
この実施の形態1によれば、平版である第1の凹版301で形成した配線パターンとシリンダーである第2の凹版302で形成した配線パターンを基材上で重ね合わせることで、300μm以上の短形あるいは円形等の大面積ベタパターンの形成を効率的に形成することが出来る。さらに、配線等の細線部分と電極等のベタ部分の両方を効率的に形成できることが出来る。
【0022】
また、平版である第1の凹版301をブランケット305に導電性インキを転写した後にシリンダーである第2の平版302からブランケット305に導電性インキを転写してから、基材306に印刷しても同様の効果が得られる。
[第2の実施形態]
この実施の形態も、グラビアオフセット印刷機300を用いて印刷を行う印刷物の製造方法である。図7〜図9は、この印刷物の製造方法の工程手順について説明する斜視図である。以下では、印刷パターンはベタのみを図示するものとする。
【0023】
(1)工程1
まず、図7に示すように、アライメントカメラ407で基材406の位置を合わせた後、シリンダーである第1の凹版401にドクター403‐1で導電性インキをドクタリングする。シリンダーである第1の凹版401には細線パターンが刻まれており、細線パターンのみに導電性インキが充填される。
【0024】
(2)工程2
次に、図8に示すように、シリンダーである第1の凹版401から導電性インキをブランケット胴404に取り付けられたブランケット405に転写し、基材406に印刷する。
(3)工程3
次に、図9に示すように、シリンダーである第2の凹版402にドクター403‐2で導電性インキをドクタリングし、シリンダーである第2の凹版402から導電性インキをブランケット405に転写し、基材406に印刷する。シリンダーである第2の凹版402は前述の細線より太い太線パターンが刻まれており、太線パターンのみに導電性インキが充填される。シリンダーである第1の凹版401の細線パターンとシリンダーである第2の凹版402の太線パターンが基材406上で組み合わさって、細線と太線や大面積のベタパターンが形成され、この後、ベークによって硬化され完成する。
【0025】
また、シリンダーである第1の凹版401をブランケット405に導電性インキを転写した後に、シリンダーである第2の平版402からブランケット405に導電性インキを転写してから、基材406に印刷しても同様の効果が得られる。
このようにシリンダー同士で行っても、実施形態1と同様の作用及び効果を奏することが出来る。
【符号の説明】
【0026】
301 第1の凹版
302 第2の凹版
304 ブランケット胴
305 ブランケット
306 基材
401 第1の凹版
402 第2の凹版
404 ブランケット胴
405 ブランケット
406 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上にインキパターンを形成する印刷物の製造方法であって、
凹部にインキが充填された第1の凹版から転写版にインキを転写して前記転写版上に細線からなる第1のインキパターンを形成する工程と、
前記転写版上の前記第1のインキパターンを前記基材に転写する工程と、
前記基材に転写する工程後に、凹部にインキが充填された第2の凹版から前記転写版にインキを転写して当該転写版上に前記細線より太線からなる第2のインキパターンを形成する工程と、
前記第2のインキパターンを形成する工程後に前記転写版上の第2のインキパターンを前記基材に転写する工程と、
を備えていることを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項2】
前記インキが導電性インキであることを特徴とする請求項1に記載の印刷物の製造方法。
【請求項3】
前記第1の凹版と前記第2の凹版とのうちの一方が平版であり、もう一方がシリンダー版であることを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷物の製造方法。
【請求項4】
前記第1の凹版と前記第2の凹版のいずれもがシリンダー版であることを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷物の製造方法。
【請求項5】
基材上にインキパターンを形成する印刷物の製造方法であって、
凹部にインキが充填された第1の凹版から転写版にインキを転写して前記転写版上に細線からなる第1のインキパターンを形成する工程と、
凹部にインキが充填された第2の凹版から前記転写版にインキを転写して前記転写版上に前記細線より太線からなる第2のインキパターンを形成する工程と、
前記転写版上の第1のインキパターン及び第2のインキパターンを前記基材に転写する工程と、
を備えていることを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項6】
前記インキが導電性インキであることを特徴とする請求項5に記載の印刷物の製造方法。
【請求項7】
前記第1の凹版と前記第2の凹版とのうちの一方が平版であり、もう一方がシリンダー版であることを特徴とする請求項5又は6記載の印刷物の製造方法。
【請求項8】
前記第1の凹版と前記第2の凹版のいずれもがシリンダー版であることを特徴とする請求項5又は6記載の印刷物の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2013−70005(P2013−70005A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209346(P2011−209346)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】