説明

印刷用凸版作成装置、システム、方法及びプログラム

【課題】平網画像領域や小点画像領域を含む各種画像に対して安定した印刷濃度を得ることができる印刷用凸版を作成するための印刷用凸版作成装置、システム、方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】ラスタ画像データIrに基づいて2値画像データIbを生成し、各網点突起部204の高さを決定するための高さ変換マトリクスMhをラスタ画像データIrに基づいて生成し、生成された2値画像データIbに基づき形成される平網部Aで網点突起部204の高さが複数の高さレベルからなる印刷用凸版Cを作成するため、生成された高さ変換マトリクスMhと2値画像データIbとに基づいて露光量データDeを生成し、生成された露光量データDeに基づいて版材Fを露光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、版材の表面に設けられ、被印刷体にインキを転移させてそれぞれ網点を印刷するための網点印刷用の網点突起部が複数個形成された印刷用凸版を作成する印刷用凸版作成装置、システム、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、印刷用凸版は、例えばフレキソ印刷に採用される。周知のように、フレキソ印刷では、柔軟な弾力性のある版材が使用され、インキとしては水性インキやUVインキが使用される。版材に弾力性があるので、表面に多少の凹凸のある段ボール等の印刷にも適している。
【0003】
このフレキソ印刷では、版材に弾力性がある等の理由により、印刷される点(ドット)が太ってドットゲインが大きくなることや粒状性(画像のざらつきを表す濃度の揺らぎ)が問題となる。
【0004】
特許文献1には、缶の胴(缶胴)への印刷のための印刷用凸版が開示され、この印刷用凸版は、べた部の高さに対して突起部の高さが低くされている。そのため、突起部がブランケットに押圧される際の潰れによる変形が少なくなり、ドットゲインの増加を抑えることができると記載されている。
【0005】
特許文献2には、缶胴への印刷のための印刷用凸版が開示され、この印刷用凸版は、網点面積率が所定の値以下の網点を印刷する突起部の高さを、網点面積率の減少に従い低くなるようにしている。これにより、網点面積率の小さな網点に対応する突起部がブランケットに食い込む量が減少し、小さな網点の太りを低減することができると記載されている。
【0006】
特許文献3には、印刷画像における網点面積率5[%]以上40[%]以下の網点面積率を境として、網点部の高さをべた部高さに対して0[μm]〜500[μm]低下させたフレキソ用印刷版が開示され、ドットゲイン品質に優れた印刷用凸版が作成できると記載されている。
【0007】
特許文献4には、第1及び第2ビーム径のレーザビームを利用して、一般的に、フレキソ印刷用等の印刷用凸版を製作するための製版時間を短縮する製版方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−230195号公報(段落[0008]、図3)
【特許文献2】特開2008−183888号公報(段落[0026]、図7)
【特許文献3】特開2007−185917号公報(段落[0017]、[0018]、図1)
【特許文献4】特開2006−95931号公報(段落[0017]、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1〜4に係る印刷用凸版において、同一の網点面積率で、全ての網点について一律に突起部の高さ(彫刻低層化量)をあるレベルに切り替えるようにすると、彫刻精度や印字再現性の観点から、以下の問題がある。
【0010】
第1に、特にハイライト部の平網画像領域において、突起部の高さを一定に設けているため、目標とする彫刻量に対して僅かな誤差があっても印刷濃度がずれるおそれがある。したがって、安定した印刷濃度を得るためには、目標通りの高さが得られるような彫刻精度を要するという問題がある。
【0011】
第2に、例えば、図22Aに示すように、彫刻版のべた部2に対して、彫刻版の低層化網点部4、4a、4bを一律に高さhcだけ低く形成すると、彫刻版のべた部2と彫刻版の低層化網点部4、4a、4bとの境界近傍にある彫刻版の低層化網点部4a、4bでは、印圧がほとんどかからないため、印刷用紙6の該当部分8では、印刷用紙6に網点が印字されないか、かすれてしまうという問題がある。
【0012】
すなわち、図22Bの印刷物6pにおいて、ダブルハッチングで描いたべた部2p近傍の網点部4pにおいて、印字がされないか濃度が薄くなる部分8pが発生する不具合が発生する。
【0013】
第3に、印刷時において、例えば、網点面積率の異なる領域が隣り合う網点領域同士において、印圧のかかり方が不安定になるため、印字の場所により濃度のばらつきが発生し、繰り返し印字される際の印字再現性が不安定になるという問題がある。
【0014】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、平網画像領域や小点画像領域を含む各種画像に対して安定した印刷濃度を得ることができる印刷用凸版を作成する印刷用凸版作成装置、システム、方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、版材の表面に設けられ、被印刷体にインキを転移させてそれぞれ網点を印刷するための網点印刷用の網点突起部が複数個形成された印刷用凸版を作成する印刷用凸版作成装置に関する。
【0016】
そして、印刷画像を表す多値画像データに基づいて2値画像データを生成する2値画像データ生成部と、各前記網点突起部の高さを決定するための高さデータを前記多値画像データに基づいて生成する高さデータ生成部と、前記2値画像データ生成部により生成された前記2値画像データに基づき形成される平網部で前記網点突起部の高さが複数の高さレベルからなる印刷用凸版を作成するため、前記高さデータ生成部により生成された前記高さデータと前記2値画像データとに基づいて露光量データを生成する露光量データ生成部と、前記露光量データ生成部により生成された前記露光量データに基づいて前記版材を露光する露光部とを有することを特徴とする。
【0017】
このように、各網点突起部の高さを決定するための高さデータを前記多値画像データに基づいて生成する高さデータ生成部と、生成された2値画像データに基づき形成される平網部で前記網点突起部の高さが複数の高さレベルからなる印刷用凸版を作成するため、前記高さデータと前記2値画像データとに基づいて露光量データを生成する露光量データ生成部とを設けたので、複数の高さレベルを有する網点突起部が適切に配置された印刷用凸版を作成可能であり、被印刷体に対してインキを目論見通りに転移することができる。これにより、平網画像領域を含む各種画像に対して安定した印刷濃度を得ることができる。
【0018】
また、前記平網部を形成する一定の網点面積率の画像領域での、前記被印刷体に印刷された各前記網点の平均面積率と前記一定の網点面積率との面積率差が、各前記網点突起部の高さを同一にする場合における前記面積率差と比べて小さくなるように、前記網点突起部の高さを決定する突起部高さ決定部を有することが好ましい。これにより、網点面積率の設計値と実測値との乖離を是正可能であり、階調変換処理に伴うトーンジャンプの発生を低減できる。
【0019】
さらに、前記露光量データ生成部は、前記2値画像データの各画素に応じた網点面積率と、該網点面積率と予め対応付けられた前記高さデータとに基づいて、前記2値画像データの各画素値を各前記網点突起部の高さに変換する突起部高さ変換部を備えることが好ましい。
【0020】
さらに、前記高さデータは、各前記高さレベルとの位置関係が予め対応付けられた、前記2値画像データのサイズを超えないマトリクス状の配列データであり、前記突起部高さ変換部は、前記2値画像データの画像領域上に前記マトリクスを周期的に配置することで、該2値画像データの各画素値と前記高さデータとを周期的に対応付けることが好ましい。これにより、複数の高さレベルである網点突起部が周期的に配置されるので、印圧のかかり方が安定し、印字の場所による濃度のばらつきを低減することができる。
【0021】
さらに、前記マトリクスは、前記複数の高さレベルのうち最高レベルの高さを有する網点主突起部が互いに隣接しない位置関係に配置されるように設けられていることが好ましい。これにより、被印刷体への印加圧力が最も大きい網点主突起部の配置分布が分散されるので、印圧のかかり方がさらに安定し、印字の場所による濃度のばらつきを低減することができる。
【0022】
さらに、前記高さデータは、所定の網点面積率以上では一定であるとともに、前記所定の網点面積率未満では網点面積率の減少に対して減少するように設けられていることが好ましい。
【0023】
さらに、前記マトリクスのサイズは、前記多値画像データを前記2値画像データに変換する際の閾値マトリクスのサイズの整数倍に等しいことが好ましい。
【0024】
本発明に係る印刷用凸版作成装置は、2値画像データに基づいて露光量データを生成する露光量データ生成部と、各前記網点突起部の高さを変更するための変更データを前記2値画像データに基づいて生成する変更データ生成部と、前記露光量データ生成部により生成された前記露光量データに基づき形成される平網部で前記網点突起部の高さが複数の高さレベルからなる印刷用凸版を作成するため、前記変更データ生成部により生成された前記変更データを用いて前記露光量データを変更する露光量データ変更部と、前記露光量データ変更部により変更された前記露光量データに基づいて前記版材を露光する露光部とを有することを特徴とする。
【0025】
このように、各網点突起部の高さを変更するための変更データを2値画像データに基づいて生成する変更データ生成部と、生成された露光量データに基づき形成される平網部で前記網点突起部の高さが複数の高さレベルからなる印刷用凸版を作成するため、生成された前記変更データを用いて前記露光量データを変更する露光量データ変更部とを設けたので、複数の高さレベルを有する網点突起部が適切に配置された印刷用凸版を作成可能であり、被印刷体に対してインキを目論見通りに転移することができる。これにより、小点画像領域を含む各種画像に対して安定した印刷濃度を得ることができる。
【0026】
また、前記変更データ生成部は、前記平網部を形成する前記2値画像データの画像領域内から、隣接するオン状態値の画素数が所定数以下である画像領域を小点画像領域として抽出する特徴領域抽出部と、前記特徴領域抽出部により抽出された前記小点画像領域に所定のテンプレート画像を配置して前記小点の変更データを生成するテンプレート配置部とを有することが好ましい。
【0027】
さらに、前記変更データ生成部は、前記小点の形状又は属性に応じた前記テンプレート画像を格納するテンプレート格納部を備えることが好ましい。
【0028】
さらに、前記露光量データ変更部は、前記小点画像領域内の画素数に応じた重み付け係数を用いて、前記露光量データ生成部からの前記露光量データと前記変更データ生成部からの前記変更データとを重み付け加算して得られた値を新たな露光量データとすることが好ましい。
【0029】
さらに、前記複数の高さレベルは、少なくとも3つのレベルであることが好ましい。
【0030】
本発明は、版材の表面に設けられ、被印刷体にインキを転移させてそれぞれ網点を印刷するための網点印刷用の網点突起部が複数個形成された印刷用凸版を作成する印刷用凸版作成システムに関する。そして、印刷画像を表す多値画像データに基づいて2値画像データを生成するRIP装置と、前記RIP装置により生成された前記2値画像データに基づいて前記版材を露光して前記印刷用凸版を作成する印刷用凸版作成装置とを有し、前記印刷用凸版作成装置は、各前記網点突起部の高さを変更するための変更データを前記2値画像データに基づいて生成する変更データ生成部と、前記露光量データ生成部により生成された前記露光量データに基づき形成される平網部で前記網点突起部の高さが複数の高さレベルからなる印刷用凸版を作成するため、前記変更データ生成部により生成された前記変更データを用いて前記露光量データを変更する露光量データ変更部と、前記露光量データ変更部により変更された前記露光量データに基づいて前記版材を露光する露光部とを備えることを特徴とする。
【0031】
本発明は、版材の表面に設けられ、被印刷体にインキを転移させてそれぞれ網点を印刷するための網点印刷用の網点突起部が複数個形成された印刷用凸版を作成する印刷用凸版作成方法に関する。
【0032】
そして、印刷画像を表す多値画像データに基づいて2値画像データを生成するステップと、各前記網点突起部の高さを決定するための高さデータを前記多値画像データに基づいて生成するステップと、生成された前記2値画像データに基づき形成される平網部で前記網点突起部の高さが複数の高さレベルからなる印刷用凸版を作成するため、生成された前記高さデータと前記2値画像データとに基づいて露光量データを生成するステップと、生成された前記露光量データに基づいて前記版材を露光するステップとを備えることを特徴とする。
【0033】
また、2値画像データに基づいて露光量データを生成するステップと、各前記網点突起部の高さを変更するための変更データを前記2値画像データに基づいて生成するステップと、生成された前記露光量データに基づき形成される平網部で前記網点突起部の高さが複数の高さレベルからなる印刷用凸版を作成するため、生成された前記変更データを用いて前記露光量データを変更するステップと、変更された前記露光量データに基づいて前記版材を露光するステップとを備えることを特徴とする。
【0034】
本発明は、版材の表面に設けられ、被印刷体にインキを転移させてそれぞれ網点を印刷するための網点印刷用の網点突起部が複数個形成された印刷用凸版を作成するためのプログラムに関する。
【0035】
そして、コンピュータを、印刷画像を表す多値画像データに基づいて2値画像データを生成する手段、各前記網点突起部の高さを決定するための高さデータを前記多値画像データに基づいて生成する手段、生成された前記2値画像データに基づき形成される平網部で前記網点突起部の高さが複数の高さレベルからなる印刷用凸版を作成するため、生成された前記高さデータと前記2値画像データとに基づいて露光量データを生成する手段、生成された前記露光量データに基づいて前記版材を露光させる手段として機能させることを特徴とする。
【0036】
また、2値画像データに基づいて露光量データを生成する手段、各前記網点突起部の高さを変更するための変更データを前記2値画像データに基づいて生成する手段、生成された前記露光量データに基づき形成される平網部で前記網点突起部の高さが複数の高さレベルからなる印刷用凸版を作成するため、生成された前記変更データを用いて前記露光量データを変更する手段、変更された前記露光量データに基づいて前記版材を露光させる手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
本発明に係る印刷用凸版作成装置、方法及びプログラムによれば、印刷画像を表す多値画像データに基づいて2値画像データを生成し、各網点突起部の高さを決定するための高さデータを前記多値画像データに基づいて生成し、生成された前記2値画像データに基づき形成される平網部で前記網点突起部の高さが複数の高さレベルからなる印刷用凸版を作成するため、生成された前記高さデータと前記2値画像データとに基づいて露光量データを生成し、生成された前記露光量データに基づいて前記版材を露光するようにした。
【0038】
本発明に係る印刷用凸版作成装置、システム、方法及びプログラムによれば、2値画像データに基づいて露光量データを生成し、各網点突起部の高さを変更するための変更データを前記2値画像データに基づいて生成し、生成された前記露光量データに基づき形成される平網部で前記網点突起部の高さが複数の高さレベルからなる印刷用凸版を作成するため、生成された前記変更データを用いて前記露光量データを変更し、変更された前記露光量データに基づいて前記版材を露光するようにした。
【0039】
このように、各網点突起部の高さを決定(又は変更)するための高さデータ(又は変更データ)を多値画像データ(又は2値画像データ)に基づいて生成する高さデータ生成部(又は変更データ生成部)と、形成される平網部で前記網点突起部の高さが複数の高さレベルからなる印刷用凸版を作成するため、生成された前記高さデータ(又は前記変更データ)に基づいて露光量データを生成(又は変更)する露光量データ生成部(又は露光量データ変更部)とを設けたので、複数の高さレベルを有する網点突起部が適切に配置された印刷用凸版を作成可能であり、被印刷体に対してインキを目論見通りに転移することができる。これにより、平網画像領域や小点画像領域を含む各種画像に対して安定した印刷濃度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態に係る印刷用凸版作成システムの概略構成図である。
【図2】印刷用凸版が装着されるフレキソ印刷機例の基本的な構成図である。
【図3】印刷用凸版の例の模式的断面図である。
【図4】図1のスクリーニング処理部、変更データ生成部及び露光量データ生成部の機能ブロック図である。
【図5】図5A〜図5Cは、高さ変換マトリクスの具体的数値を示す説明図である。
【図6】網点面積率から突起部高さへの変換特性の一例を示すグラフである。
【図7】図7Aは、網点ブロックの概略説明図である。図7Bは、網点ブロックの繰り返し配列パターンを示す説明図である。図7Cは、ラスタ画像データの画像領域と網点ブロックとの対応関係を示す説明図である。
【図8】図4の突起部高さ変換部の動作説明に供される説明図である。
【図9】突起部高さデータから三次元彫刻形状データに変換する説明図である。
【図10】図10Aは、露光量データと突起部高さとの関係を表すグラフである。図10Bは、所望の突起部高さを得るために必要な露光量データを表すグラフである。
【図11】図3の印刷用凸版を作成するためのレーザ彫刻機例の概略構成を示す平面図である。
【図12】図12A〜図12Dは、網点突起部の高さが補正されていない印刷用凸版を用いて、フレキソ印刷を行った結果を示す概略説明図である。
【図13】図13A〜図13Dは、網点突起部の高さが補正されている印刷用凸版を用いて、フレキソ印刷を行った結果を示す概略説明図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係る印刷用凸版作成システムの概略構成図である。
【図15】図14の露光量データ生成部、変更データ生成部及び露光量データ変更部の機能ブロック図である。
【図16】図16Aは孤立小点画像の概略説明図である。図16Bはべた近傍小点画像の概略説明図である。図16Cは文字内小点画像の概略説明図である。
【図17】図15の特徴領域抽出部により行われる画像処理例を示す表である。
【図18】図18Aは、1個の小点に対して割り当てられる露光量データの一例を示す説明図である。図18Bは、孤立小点画像のテンプレートの具体的数値を示す説明図である。図18Cは、変更された露光量データの一例を示す説明図である。
【図19】図15の露光量データ変更部による重み付け演算の際、用いられる重み付け係数の数値例を示すグラフである。
【図20】本発明の第2実施形態に係る印刷用凸版作成方法により作成された印刷用凸版を用いて、印刷物上に形成した画像の模式図である。
【図21】網角度が45度の場合の閾値データと網点セルの大きさの関係説明図である。
【図22】図22Aは、従来技術に係る印刷用凸版の説明図である。図22Bは、従来技術に係る印刷用凸版を用いて印刷形成された画像の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明に係る印刷用凸版作成方法について、この方法を実施するための印刷用凸版作成装置及び印刷用凸版作成システムとの関係において好適な実施形態を挙げ、添付図面を参照しながら説明する。
【0042】
先ず、本発明の第1実施形態に係る印刷用凸版作成システムについて、図1〜図13を参照しながら詳細に説明する。
【0043】
図1は、第1実施形態に係る製版作成システム10(印刷用凸版作成システム)の構成を示している。製版作成システム10は、基本的には、RIP(Raster Image Processor)装置12と、印刷用凸版作成装置14とから構成される。
【0044】
RIP装置12は、RIP処理部16と、スクリーニング処理部18(2値画像データ生成部)と、露光量データ生成部20と、突起部高さ決定部22と、高さデータ生成部24とを備える。
【0045】
RIP処理部16は、コンピュータ等を用いて編集された印刷原稿のベクトル画像を表現するPDF(Portable Document Format)データやPS(PostScript;登録商標)データ等のページ記述言語(Page Description Language)データをラスタ画像データIrに展開する。
【0046】
ラスタ画像データIrを構成する各画像データIi(各画素データ)は、階調値として、通常、例えば、CMYKの4チャンネルで各8ビット、すなわち256(0〜255)階調等を採るが、この第1実施形態では、理解の便宜のために、256(0〜255)階調は、対応する網点面積率Harで0〜100[%]に変換されているものとする。すなわち、画像データIiは、0〜100の値を採るものとする。画像データIiがIi=100の場合、ベた部200(図3参照)が形成される。画像データIiがIi=0の場合、網点突起部(網点印刷用突起部、又は、単に突起部)204(図3参照)は、形成されない。
【0047】
スクリーニング処理部18は、前記ラスタ画像データIrを、予め指定された網(AM網点、又はFM網点、網点の形状)、角度、スクリーン線数等の条件下にスクリーニング処理して2値画像データIbに変換する。
【0048】
露光量データ生成部20は、前記2値画像データIbを露光量データDeに変換する。露光量データDeの各値として、例えば16ビット(65536階調)等を採るが、この第1実施形態では、理解の便宜のために、65536階調(0〜65535)は、対応する露光量で0〜1に、そして等間隔に(線形的に)変換されているものとする。
【0049】
突起部高さ決定部22は、後述する方法に従って網点突起部204(図3参照)の高さを決定し、各種情報を露光量データ生成部20又は高さデータ生成部24に供給する。網点突起部204の高さに関する各種情報には、例えば、後述する最大高低差、網点ブロックの配列形状、突起部高さのレベル数、網点セルの変換特性等が含まれる。
【0050】
高さデータ生成部24は、スクリーニング処理部18から供給される2値画像データIbに基づいて高さデータを生成し、該高さデータを露光量データ生成部20に供給する。
【0051】
この高さデータは、後述するように、インキの転移量を調整するために網点突起部204(図3参照)の高さを決定するためのデータである。前記高さデータには、高さ変換マトリクスMhや、マトリクス選択情報Imが含まれる。
【0052】
印刷用凸版作成装置14は、後述するレーザ彫刻機110(露光部:図11参照)を備える彫刻型CTP(Computer To Plate)描画機26を有する。そして、前記露光量データ生成部20から供給される露光量データDeに基づき、フレキソ版材(合成樹脂製又はゴム製等の弾性材)に対して、彫刻型のCTP描画機26によるレーザ彫刻処理を施して、複数の網点突起部204(図3参照:例えば、網点主突起部204m及び網点突起部204s、又は網点主突起部204m、網点突起部204s、及び網点突起部204t等)が形成された印刷用凸版Cを作成する。
【0053】
図2は、フレキソ印刷機140の基本的な構成を示している。フレキソ印刷機140は、上述のようにして作成された印刷用凸版(フレキソ印刷版)Cと、この印刷用凸版Cが両面テープ等のクッションテープ144を介して取り付けられる版胴146と、ドクターチャンバ148によりインキが供給されるアニロックスローラ150と、圧胴152とから構成される。
【0054】
印刷用凸版Cの表面に形成された網点突起部204の頂部(印刷面)には、アニロックスローラ150からインキが転移され、このインキは、印刷用凸版Cが取り付けられた版胴146と圧胴152との間に挟持されて搬送される段ボール等の被印刷体154に転移され、網点により画像が形成された印刷物Pが作成される。
【0055】
図3は、印刷用凸版Cの例の模式的断面図である。印刷用凸版Cは、印刷用凸版Cが版胴146の外周面に配設された状態において、径方向の最も外方に位置するべた部200と、このベた部200からレーザ彫刻により径方向内方に向けて最も凹まされた基底部202と、レーザ彫刻により基底部202から径方向外方に向けて突出するように彫刻されて略円錐台状にされた網点突起部204とから構成されている。網点突起部204中、同一の網点面積率Harの平網部Aのなかで、Z軸方向に対して最も高い網点突起部204の高さ(以下、第1レベルの突起部高さLh1という。)を有する網点突起部204を、網点主突起部204mという。
【0056】
なお、図3で示すX軸及びY軸は、所定の座標を基準とした絶対座標軸である。これに対し、Z軸座標は、説明の便宜のため、基底部202の位置を0とする相対座標軸である。
【0057】
網点面積率HarがHar=100[%]のベた部200の基底部202からの最大高低差Lh0の実際値は、フレキソ版材等に依存するが、概ね100〜200[μm]の間の値になっている。
【0058】
図3に描いた網点突起部204は、同一の網点面積率Harで印刷面(網点突起部204の頂部)の高さが複数のレベル(図3では、第1、第2、第3レベルの突起部高さLh1、Lh2、Lh3;Lh1>Lh2>Lh3)にされている点に留意する。
【0059】
同一の網点面積率Harの平網部Aを構成する網点突起部204のうち、第1レベルの突起部高さLh1を有する網点突起部204を、この明細書では、上述したように、網点主突起部204mという。図3例の印刷用凸版Cでは、3個の網点主突起部204mが描かれている。
【0060】
さらに、図3例の印刷用凸版Cでは、第2レベルの突起部高さLh2(Lh2<Lh1)の網点突起部204sと、第3レベルの突起部高さLh3(Lh3<Lh2<Lh1)の網点突起部204tを描いている。
【0061】
再び図1を参照すると、製版作成システム10の構成要素中、この発明に係る主要な構成要素は、コンピュータによる処理(CPUがプログラムを実行してデータ処理を行う処理)が行われるスクリーニング処理部18、露光量データ生成部20及び高さデータ生成部24であり、以下、このスクリーニング処理部18、露光量データ生成部20及び高さデータ生成部24の構成並びに処理を中心に説明する。残余の構成要素の大部分は、特許文献1〜4等により周知であり、この発明の理解の便宜のために、その詳細な説明を基本的に省略する。
【0062】
図4は、図1のスクリーニング処理部18、露光量データ生成部20及び高さデータ生成部24の機能ブロック図である。
【0063】
図5A〜図5Cは、高さ変換マトリクスMhの数値例の説明図である。
【0064】
図6は、網点面積率Harから突起部高さへの変換特性の一例を示すグラフである。
【0065】
図7Aは網点ブロックHbrの概略説明図であり、図7Bは網点ブロックHbrの繰り返し配列パターンの説明図であり、図7Cは、ラスタ画像データIrの画像領域と網点ブロックHbrとの対応関係を示す説明図である。
【0066】
図8は、図4の突起部高さ変換部32の動作説明に供される説明図である。
【0067】
図9は、突起部高さデータDhから彫刻形状データDsに変換する説明図である。
【0068】
図10Aは露光量データDeと突起部高さとの関係を表すグラフであり、図10Bは所望の突起部高さを得るために必要な露光量データDeを表すグラフである。
【0069】
図4に示すように、スクリーニング処理部18は、ラスタ画像データIrを2値画像データIbに変換する2値化処理部28と、閾値マトリクスTdのデータを格納する閾値データ格納部30とを備える。
【0070】
露光量データ生成部20は、スクリーニング処理部18側から供給された2値画像データIbを突起部高さデータDhに変換する突起部高さ変換部32と、前記突起部高さデータDhを彫刻形状データDsに変換する彫刻形状変換部34と、前記彫刻形状データDsを露光量データDeに変換する露光量データ変換部36を備える。
【0071】
ここで、突起部高さデータDhとは、網点突起部204の高さのX−Y座標上の二次元分布を表すデータである。また、彫刻形状データDsとは、網点突起部204の三次元形状を再現するために、突起部高さデータDhを二次元補間して得られるデータである。
【0072】
高さデータ生成部24は、ラスタ画像データIrに基づいてマトリクス選択情報Imを生成するマトリクス選択情報生成部38と、網点突起部204(図3参照)の高さを適切に調整するための高さ変換マトリクスMhを生成する高さ変換マトリクス生成部40とを備える。
【0073】
先ずは、本発明の特徴である高さ変換マトリクスMhのデータ定義及び作成方法について、図5A〜図7Aを参照しながら説明する。
【0074】
図5A〜図5Cに示すように、高さ変換マトリクスMhは、縦横ともに8画素の正方形状のマトリクスデータである。各画素が有する値は、網点突起部204の高さを決定する量(単位:μm)を表す。この高さ変換マトリクスMhは、網点面積率1〜100%に応じた100個の高さ変換マトリクスMh1〜Mh100から構成されている。例えば、網点面積率1%、5%、100%における高さ変換マトリクスMh1、Mh5、及びMh100の数値例を図5A、図5B、及び図5Cにそれぞれ示している。
【0075】
次いで、この高さ変換マトリクスMhの作成方法について、図6〜図7Bを参照しながら説明する。
【0076】
図6に示すように、網点突起部204の高さとして、2つのレベル、すなわち第1レベル及び第2レベルの突起部高さLh1、Lh2を設けている。
【0077】
網点面積率Harに対する第1レベルの突起部高さLh1は、第1変換特性100Iのように表される。理解の容易のため、グラフの縦軸として、突起部高さ(変数をLhとする。)ではなく、最大高低差Lh0との相対値を表している。具体的には、第1レベルの突起部高さLh1は、網点面積率Harが100〜10[%]の間では0[μm]を保持し、網点面積率Harが10〜0[%]に変化するのに応じて0〜−40[μm]まで比例して減少するように決定される。
【0078】
網点面積率Harに対する第2レベルの突起部高さLh2は、第2変換特性100IIのように表される。具体的には、第2レベルの突起部高さLh2は、網点面積率Harが100〜7[%]の間では0[μm]を保持し、7〜0[%]に変化するのに応じて0〜−40[μm]まで比例して減少するように決定される。
【0079】
このように、所定の網点面積率Har未満で、網点面積率Harの減少に対して網点突起部204の高さ(変数Lh)が減少するように設けることにより、インキの転写量を適切に制御できる。特に、版材に弾力性があるフレキソ印刷では有効である。
【0080】
図7Aに示すように、網点ブロックHbrは、前記第1変換特性100Iを有する第1網点セルHcIと、前記第2変換特性100IIを有する第2網点セルHcIIとの組み合わせにより構成される。なお、網点セルHc(第1網点セルHcI及び第2網点セルHcII)は、例えばAMスクリーン方式において、1個の網点(網点突起部204)を形成するための単位画像領域である。
【0081】
また、網点セルHcは、後述する閾値データTdのマトリクスサイズと一致する。例えば、図8に示すように、前記閾値データTdは4×4の画素数で構成されるとする。
【0082】
したがって、図5A〜図5Cの高さ変換マトリクスMhは、8×8の画素数で構成されている。そして、各々の網点面積率Harに応じた高さ変換マトリクスMhの数値が決定される。ここで、高さ変換マトリクスMhの各配列データは、網点突起部204の高さの減少量(低層化量)を示している。
【0083】
続いて、突起部高さ変換部32が突起部高さ変換データDhに変換する演算方法について、図4及び図8を参照しながら詳細に説明する。
【0084】
図4及び図8に示すように、スクリーニング処理部18の閾値データ格納部30には、0〜99の値を採る閾値Tiの配列である閾値データ(閾値マトリクス)Tdが格納されている。
【0085】
スクリーニング処理部18を構成する2値化処理部28は、ラスタ画像データIrを構成する各画像データ(画素データ)Ii(0≦Ii≦100)と、閾値データ格納部30に格納されて読み出された閾値データTdの各閾値Ti(0≦Ti≦99)とを比較し、次の(1)式に基づき、値0又は値1をとる2値画像データIbを構成する各2値画像データIbiを作成する。
Ii≦Ti→0、Ii>Ti→1 …(1)
【0086】
なお、第1実施形態において、上記のように、画像データIiは、0〜100[%]の網点面積率Harで表しており、0〜100[%]の網点面積率Harの中、網点面積率HarがHar=0〜10[%]程度が、画像中のハイライト階調部に対応し、網点面積率HarがHar=10〜99[%]が、画像中の中間調階調部に対応し、網点面積率HarがHar=100[%]が、画像中のべた部に対応する。一般に画像中のハイライト階調部に対応して形成される前記網点突起部204を小点(あるいは網の小点)という場合がある。
【0087】
図8に示すように、突起部高さ変換部32は、2値画像データIbに対して以下の演算処理を施す。乗算器42は、各2値画像データIbに対して、突起部高さ決定部22から供給された最大高低差Lh0を乗算する。これによって、突起部高さ変換部32は、同じ高さ(最大高低差Lh0)の網点突起部204を形成するための突起部高さデータDh0を取得する。
【0088】
ところで、図4に戻って、突起部高さ決定部22は、印刷用凸版Cの版材、インキの種類等を含む印刷条件に基づいて、最大高低差Lh0、網点ブロックHcの配列形状、突起部高さのレベル数、網点セルHcの変換特性100等の、網点突起部204の高さに関する各種情報を決定する。そして、高さ変換マトリクス生成部40は、前記各種情報に基づいて網点面積率Har毎の高さ変換マトリクスMhを生成する。
【0089】
ここで、網点突起部204の高さに関する前記各種情報と前記印刷条件とを対応付けるデータは、図示しない記憶部に予め記憶しておくことが好ましい。例えば、網点突起部204の高さやレベルの数を種々組み合わせた複数の平網部Aを有する印刷用凸版Cを作成し、該印刷用凸版Cを用いて被印刷体154にインキを付着させ、印刷物Pを形成しその印刷色を測色することで、適切なデータを取得できる。
【0090】
一方、マトリクス選択情報生成部38は、ラスタ画像データIrを用いてマトリクス選択情報Imを生成する。具体的には、単位網点ブロックHbrが1画素になるように、ラスタ画像データIrをダウンサイジングする処理を行う。このとき、マトリクス選択情報Imとしての新たな画素値は、網点ブロックHbr領域内の画素値(網点面積率Har)の平均値を用いる。すなわち、各網点ブロックHbr領域内の典型的な画素値であればよく、種々の統計的手法、例えばメジアンやモードであってもよい。
【0091】
図8に戻って、突起部高さ変換部32は、突起部高さデータDh0のうち、演算しようとする画像領域(網点ブロックHbrのサイズの領域)を特定し、該画像領域に応じた適切な高さ変換マトリクスMh(図8例ではMh5)を選択する。そして、減算器44は、突起部高さデータDh0のうち、前記画像領域の各値から、選択された高さ変換マトリクスMhの各値を減算する。そして、すべての画像領域に対してこのような減算処理を行うことで、突起部高さデータDhを得る。
【0092】
ここで、図7Bに示すように、ラスタ画像データIrの画像領域に対し、網点ブロックHbrを横方向及び縦方向に繰り返し並べるように配置することで、網点突起部204の高さに配置周期性をもたせることができる。これにより、複数の高さレベルである網点突起部204が周期的に配置されるので、被印刷体154(図2参照)に対しての印圧のかかり方が安定し、印字の場所による濃度のばらつきを低減することができる。
【0093】
また、図7Bのように、被印刷体154への印加圧力が最も大きい網点主突起部204mが互いに隣接しない位置関係に配置されるように設けてもよい。これにより、網点主突起部204mの配置分布が適度に分散されるので、印圧のかかり方をさらに安定させることができる。
【0094】
さらに、図7Cに示すように、破線矢印方向に沿って画像領域の特定順を予め定めておけば、マトリクス選択情報Imが有する網点面積率Harの値を順次読み出すことで、高さ変換マトリクスMhを適切に選択できる。
【0095】
さらに、高さ変換マトリクスMhのサイズは、閾値マトリクスのサイズの整数倍であれば、どの画像領域であっても高さの異なる網点突起部204の配置が周期的となり、局所的なモアレの発生を低減できる。
【0096】
図4に戻って、彫刻形状変換部34は、突起部高さ変換部32から供給された突起部高さデータDhを、より高解像度である彫刻形状データDsに変換する。
【0097】
図9に示すように、仮想上の基底面50上(Z軸の正方向)に、仮想上の網点突起部52が表示されている。仮想上の網点突起部52は、台形錐体状の台座54、円柱状の頂上凸部56と、環状の肩部58を備えている。このとき、台座54の傾斜角SP1、頂上凸部56の高さSP2、頂上凸部56の直径SP3、肩部58のリング幅SP4が、図9に示す形状を決定するためのパラメータである。このようなパラメータに基づいて、網点突起部204を形成するための三次元形状(すなわち彫刻形状)を決定する。
【0098】
具体的には、彫刻形状変換部34は、画素値が1(ON)の各画素について最も近い画素値が0(OFF)の画素との距離を求めた後、予め決定されたパラメータSP1〜SP4に応じて彫刻形状を確定する。前記距離を求めるために、ユークリッド距離変換を含む公知の距離変換アルゴリズムを用いることができる。
【0099】
図4に戻って、露光量データ変換部36は、彫刻形状変換部34から供給された彫刻形状データDsを、印刷用凸版Cの版材にFを露光する光量に応じた露光量データDeに変換する。
【0100】
例えば、露光量データDeと、突起部高さ(最大高低差Lh0と彫刻深さとの差)との関係が図10Aのグラフで表されるものとする。なお、最大高低差Lh0の彫刻量を得るための露光量データDeの値をDe0とする。そうすると、図10Bに示すように、所定の突起部高さ(彫刻形状データDsの各値)を得るために必要な露光量データDeを推定することができる。
【0101】
このようにして、露光量データ生成部20は、2値画像データIbから露光量データDeを生成する。
【0102】
図1に戻って、RIP装置12により決定された露光量データDeが印刷用凸版作成装置14に送信され受信されると、CTP描画機26は、この露光量データDeに基づき、フレキソ版材Fに対して、レーザ彫刻処理を施し、複数の網点突起部204及びべた部200が形成された印刷用凸版Cを作成する。
【0103】
図11は、印刷用凸版Cを作成するためのCTP描画機26を構成するレーザ彫刻機110の概略構成を示す平面図である。
【0104】
レーザ彫刻機110は、露光ヘッド112を有し、露光ヘッド112は、ピント位置変更機構114と、副走査方向ASへの間欠送り機構116を備えている。
【0105】
ピント位置変更機構114は、露光ヘッド112を版材(フレキソ版材)Fが取り付けられたドラム118面に対して前後移動させるモータ120とボールネジ122を有し、モータ120の制御によりピント位置を移動させることができる。
【0106】
間欠送り機構116は、露光ヘッド112が搭載されたステージ124を副走査方向ASに移動させるもので、ボールネジ126とこれを回転させる副走査モータ128を有し、この副走査モータ128の制御により、露光ヘッド112をドラム118の軸線130方向に間欠送りできる。
【0107】
ドラム118上でフレキソ版材Fは、チャック部材132によりチャックされる。このチャック部材132の位置は、露光ヘッド112による露光を行わない領域である。ドラム118を回転させながら、この回転するドラム118上の版材Fに対し、露光ヘッド112からレーザビームLを照射することにより、版材Fの表面に網点突起部204を形成するためのレーザ彫刻を行う。そして、ドラム118の回転により、露光ヘッド112の前をチャック部材132が通過するときに、副走査方向MSに間欠送りを行い、次のライン分のレーザ彫刻を行う。
【0108】
このように、ドラム118の回転による版材Fの主走査方向MSへの送りと、露光ヘッド112の副走査方向ASの間欠送りを繰り返すことにより、露光操作位置が制御されるとともに、各露光走査での各位置における露光量データDeによりレーザビームLの強度やオンオフが制御され、フレキソ版材Fの主面に所望の形状のレリーフである網点突起部204がレーザ彫刻される。
【0109】
以上のようにして、インキが付けられる網点突起部204の印刷面高さが、同一の網点面積率Harの領域Aで複数の高さレベル(この第1実施形態では第1及び第2レベルの突起部高さLh1、Lh2)にされている印刷用凸版Cを作成することができる。
【0110】
次いで、網点突起部204が形成された版材Fは、印刷用凸版Cとされ、上述したフレキソ印刷機140に装着される。
【0111】
フレキソ印刷機140では、図2に示したように、印刷用凸版Cの表面に形成された網点突起部(網点印刷用突起部)204の頂部(印刷面)に、アニロックスローラ150からインキが転移され、このインキは、印刷用凸版Cが取り付けられた版胴146と圧胴152との間に挟持されて、矢印方向に搬送される段ボール等の被印刷体154に転移され、網点により画像が形成された印刷物Pが作成される。
【0112】
このようにして得られた印刷物Pの印刷結果について、図12A〜図13Dを参照しながら説明する。先ず、仮に、露光量データ生成部20(図1等参照)により露光量の調整を行わなかった場合における印刷結果の概略を説明する。
【0113】
図12Aに示す凸版210には、複数の網点突起部212が形成されている。その断面形状は、図12Bに示すように、5個の網点突起部212がいずれも同じ高さを有している。この凸版210を用いて、被印刷体214にインキを転移させて印刷した結果例を図12Cに示す。
【0114】
すると、平面視した各網点突起部212の印刷面の面積と比べて、網点216の面積が大きくなっている。その結果、被印刷体214の印刷濃度は、目論見と比べて濃度が高くなる。特に、網点216が小さい場合、特にハイライト部において、設計値と実測値との乖離が大きい。
【0115】
これにより、図12Dに示すように、理想的な階調特性218と比べて、実際の階調特性220はハイライト部で下方に突出する特性を有する。したがって、これを補正するためには、実際の階調特性220の逆変換に相当する変換特性222を別途作用させる必要がある。すなわち、階調変換処理に伴うトーンジャンプ(階調の滑らかさ阻害や階調レベルの逆転)を発生させる一因となる。
【0116】
そして、露光量データ生成部20により露光量の調整を行った場合における印刷結果の概略を説明する。
【0117】
図13Aに示す凸版230には、図12Aと同様に、複数の網点突起部232が形成されている。その断面形状は、図13Bに示すように、3個の網点主突起部232mと、2個の網点突起部232sが交互に配置されている。この凸版230を用いて、被印刷体234にインキを転移させて印刷した結果例を図13Cに示す。
【0118】
すると、主網点236mと網点236sとの面積和は、網点216(図12C参照)2個の面積和よりも小さくなっている。つまり、被印刷体234の実際の網点面積率の値は、網点面積率Harの設計値に近づいている。その結果、被印刷体214は目論見に近い印刷濃度が得られる。
【0119】
これにより、図13Dに示すように、理想的な階調特性238と比べて、実際の階調特性240はハイライト部でも近似した特性を有する。したがって、これを補正するための変換特性242の影響は少なく、階調変換処理に伴うトーンジャンプの発生を抑止することができる。
【0120】
以上のように、印刷画像を表すラスタ画像データIrに基づいて2値画像データIbを生成し、各網点突起部204の高さを決定するための高さ変換マトリクスMhをラスタ画像データIrに基づいて生成し、生成された2値画像データIbに基づき形成される平網部Aで網点突起部204の高さが複数の高さレベルからなる印刷用凸版Cを作成するため、生成された高さ変換マトリクスMhと2値画像データIbとに基づいて露光量データDeを生成し、生成された露光量データDeに基づいて版材Fを露光するようにしたので、複数の高さレベルを有する網点突起部204が適切に配置された印刷用凸版Cを作成可能であり、被印刷体に対してインキを目論見通りに転移することができる。これにより、平網画像領域を含む各種画像に対して安定した印刷濃度を得ることができる。
【0121】
次いで、本発明の第2実施形態に係る印刷用凸版作成システムについて、図14〜図20を参照しながら詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一の構成要素については参照符号を同一とし、その説明を省略する。
【0122】
図14は、本発明の第2実施形態に係る製版作成システム310の概略構成図である。製版作成システム310は、基本的には、RIP装置312と、印刷用凸版作成装置314とから構成される。
【0123】
RIP装置312は、RIP処理部16と、スクリーニング処理部18とを備える。印刷用凸版作成装置314は、露光量データ生成部320と、突起高さ決定部322と、変更データ生成部324と、露光量データ変更部325と、CTP描画機26とを備える。
【0124】
このように、第1実施形態に係るRIP装置12(図1参照)の出力データが露光量データDeであるのに対し、第2実施形態に係るRIP装置312の出力データが2値画像データIbである点が異なる。
【0125】
図15は、図14の露光量データ生成部320及び変更データ生成部324の機能ブロック図である。
【0126】
露光量データ生成部320は、RIP装置312側から供給された2値画像データIbを突起部高さデータDhに変換する突起部高さ変換部332と、前記突起部高さデータDhを彫刻形状データDsに変換する彫刻形状変換部34と、前記彫刻形状データDsを露光量データDeに変換する露光量データ変換部36を備える。
【0127】
ここで、突起部高さ変換部332は、高さ変換マトリクスMh(図5A〜図5C参照)を用いて網点突起部204の高さを決定しない点が第1実施形態(突起部高さ変換部32)と異なる。
【0128】
変更データ生成部324は、RIP装置312側から供給された2値画像データIbから所定の特徴領域、例えば平網部A(図3参照)を形成する小点画像を表す画像領域を抽出する特徴領域抽出部338と、突起部高さ決定部322から供給された最大高低差Lh0に応じたテンプレート画像(例えば、小点画像)を格納するテンプレート格納部340と、各種テンプレート画像の配置位置を決定し、露光量データDeを変更するための変更データDcを作成するテンプレート配置部342とを備える。
【0129】
テンプレート配置部342は、孤立小点画像配置部344と、べた近傍小点画像配置部346と、文字内小点画像配置部348とを備える。
【0130】
特徴領域抽出部338は、2値画像データIb内から、予め定めた特徴を有する画像領域を抽出する。例えば、図16A〜図16Cに示すような小点が配置された画像領域を抽出する。ここで、小点とは、ON状態値を有する画素が相互に連結された集合体(以下、クラスタという。)のうち、その大きさが少数個であるものをいう。本明細書では、構成される画素数が1〜10個程度であるクラスタを小点という。そして、配置された小点の周辺の画像領域の特徴に応じて、小点の種類(属性)を予め定義付けておく。
【0131】
図16Aのように、画像250内の小点のうち、その周辺に他のクラスタが存在しない場合、この小点252を「孤立小点」という。図16Bのように、画像254内の小点のうち、その小点の近傍に大きなクラスタ(高濃度のべた画像256)が存在する場合、この小点258を「べた近傍小点」という。図16Cのように、画像260内の小点のうち、上記した「孤立小点」や「べた近傍小点」に該当しないが、文字の構成要素としての小点262を「文字内小点」という。
【0132】
特徴領域抽出部338は、2値画像データIbの画素毎に、図17に示すような画像判定1〜3を行い、その結果に従って画像領域をそれぞれ抽出する。
【0133】
画像判定1の演算範囲は、判定の対象画素(以下、単に対象画素という。)を中心とする9画素(縦3画素、横3画素の小サイズ)の範囲内とする。具体的には、特徴領域抽出部338は、前記小サイズの範囲内での平均画素値を算出し、前記対象画素の画素値と前記平均画素値との差分が所定の第1閾値以上であるか否かに基づいて判定する。
【0134】
画像判定2の演算範囲は、対象画素を中心とする49画素(縦7画素、横7画素の中サイズ)の範囲内とする。具体的には、特徴領域抽出部338は、前記中サイズの範囲内での各画素値を計数し、画素値が1(ON)である画素数が所定の第2閾値以下であるか否かに基づいて判定する。
【0135】
画像判定3の演算範囲は、対象画素を中心とする225画素(縦15画素、横15画素の大サイズ)の範囲内とする。具体的には、特徴領域抽出部338は、前記大サイズの範囲内での各画素値を計数し、画素値が1(ON)である画素数が所定の第3閾値以下であるか否かに基づいて判定する。
【0136】
先ず、画像判定1の結果が「YES」の場合は、特徴領域抽出部338は、判定対象画素が小点の構成画素であると判定し、次の画像判定に進む。一方、画像判定1の結果が「NO」の場合は、特徴領域抽出部338は、判定対象画素が小点の構成画素でない(図17では「その他」に分類する。)とし、画像判定を終了する。
【0137】
次いで、画像判定2の結果が「YES」の場合は、特徴領域抽出部338は、対象画素が孤立小点の構成画素である可能性があるとして、次の画像判定に進む。一方、画像判定1の結果が「NO」の場合は、特徴領域抽出部338は、小点の属性を確定するために次の画像判定に進む。
【0138】
最後に、画像判定2の結果が「YES」であり、且つ画像判定3の結果が「YES」である場合は、特徴領域抽出部338は、対象画素が孤立小点の構成画素である可能性があると判定する。一方、画像判定2の結果が「YES」であり、且つ画像判定3の結果が「NO」である場合は、特徴領域抽出部338は、判定対象画素が小点の構成画素でない「その他」と判定する。
【0139】
あるいは、画像判定2の結果が「NO」であり、且つ画像判定3の結果が「YES」である場合は、特徴領域抽出部338は、対象画素が文字内小点の構成画素である可能性があると判定する。一方、画像判定2の結果が「NO」であり、且つ画像判定3の結果が「NO」である場合は、特徴領域抽出部338は、対象画素がべた近傍小点の構成画素である可能性があると判定する。
【0140】
このような画像判定1〜3の判定結果により、孤立小点、べた近傍小点、文字内小点、又はその他のいずれか1つに分類した上で、小点(孤立小点、べた近傍小点、又は文字内小点)の画像領域をそれぞれ抽出する。
【0141】
なお、「孤立小点」の位置の二次元分布を求め、その分布に基づいて、単独に配置された小点であるのか、ハイライト部の平網画像領域を形成する小点であるのか、さらに詳細に判別できるようにしてもよい。もし、平網画像領域を形成する小点であると判別された場合は、高さ変換マトリクスMh(図5参照)と同様の演算方法により、複数の高さレベルに応じた露光量データを周期的に割り当ててもよい。
【0142】
そして、テンプレート配置部342は、露光量データDeと同じデータ定義(アドレス及び画素値の定義)に従って、変更データDcを生成する。ここで、テンプレート格納部340は、小点のテンプレート画像を種々記憶している。テンプレート配置部342は、抽出された小点の形状又は属性に応じたテンプレートを選択した上で、画像領域の位置に応じた各アドレスに変更データDcを配置する。
【0143】
次いで、露光量データ変更部325は、変更データDcに基づいて露光量データDeを露光量データDe’に変更する。以下、変更方法の一例について、図18A〜図19を参照しながら説明する。
【0144】
第1の方法は、露光データを置換する方法である。例えば、露光量データ生成部320により、1個の孤立小点を形成する2値画像データIbから、図18Aに示す露光量データDeが得られたとする。一方、変更データ生成部324により、図18Bに示す変更データDcが得られたとする。この小点のテンプレート画像は5画素からなり、図18Aに示す25画素のうちの中央位置に配置されるものとする。
【0145】
このとき、露光量データ変更部325は、図18Aに示す5画素の各値を図18Bのテンプレート画像に置換することで、新たな露光量データDe’に変更する。すなわち、領域264に囲まれたデータがそれぞれ置換されている(図18C参照)。
【0146】
第2の方法は、露光データを合成する方法である。第1の方法(置換)と比較して、テンプレート画像を置換した後のデータの不連続性、いわゆるアーチファクト(擬似輪郭)の発生を抑止できる。
【0147】
露光量データDe’を得るために、露光量データDe及び変更データDcを択一的に選択するのでなく、両方の値を用いて算出してもよい。例えば、図19に示すように、クラスタ内の画素数に応じた重み付け係数We、Wcを予め決定しておき、小点領域内の各画素に対して次の(2)式に基づいて新たな露光量データDe’を算出してもよい。
De’=We・De+Wc・Dc …(2)
【0148】
このようにすれば、例えばグラデーションのように網点面積率Harが近接した画像であっても、階調の不連続性を緩和でき、アーチファクトの発生を抑制できる。
【0149】
図20は、印刷物Pa上に実現した例としての画像の模式図を示している。この画像は、ベた部200(図3参照)により印刷形成されたダブルハッチングで示すベた部200sの画像と、網点面積率Harが10[%]以下の同一パーセントの領域Aaの画像とから構成されている。
【0150】
この図20例では、網点面積率Harが同一パーセントの領域Aaの画像は、図3で印刷用凸版Cを参照して説明したように、第1レベルの網点高さLh1を有する網点主突起部204mにより印刷形成された主網点270mと、第2レベルの網点高さLh2を有する網点突起部204sにより印刷形成された網点270sとからなる規則的な配列により構成されている。
【0151】
このようにして印刷形成された印刷物Paは、画像のハイライト階調に対応する領域Aaにおいて、主網点270m、網点270sの局所太りを回避し、且つ、ベた部200s近傍での非印字欠陥の発生を、主網点270mの配置により解消することができる。
【0152】
以上のように、2値画像データIbに基づいて露光量データDeを生成し、各網点突起部204の高さを変更するための変更データDcを2値画像データIbに基づいて生成し、生成された露光量データDeに基づき形成される平網部Aで網点突起部204の高さが複数の高さレベルからなる印刷用凸版Cを作成するため、生成された変更データDcを用いて露光量データDeを変更し、変更された露光量データDe’に基づいて版材Fを露光するようにしたので、複数の高さレベルを有する網点突起部204が適切に配置された印刷用凸版Cを作成可能であり、被印刷体に対してインキを目論見通りに転移することができる。これにより、小点画像領域を含む各種画像に対して安定した印刷濃度を得ることができる。
【0153】
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0154】
図12A及び図13Aに示す例では、網点突起部204の平面視形状は、同一の形状(例えば、円形)としているが、これに限られない。例えば、網点突起部204の高さレベルに応じて半径を異ならせたり、楕円形等のように形状自体を異ならせたりしてもよい。
【0155】
また、図2に示す例では、網点突起部204の高さレベルを3つに設定しているが、必要に応じてその数を増減してもよい。各網点セルHcの変換特性100に関しても種々変更してもよい。
【0156】
さらに、図5に示す例では、高さ変換マトリクスMhのサイズは8×8画素であるが、必要に応じてそのサイズを拡大・縮小してもよい。
【0157】
さらに、上述した実施形態においては、網点セルHc毎に階調値の増加に応じて大きさ(径)が大きくなる1個の網点が形成されるAM網点(AMスクリーニングによる網点)である、いわゆるディザ法におけるドット集中型の網点について説明したが、これに限らず、網点セルHcに形成される大きさ(径)が一定で階調値の増加に応じて網点セルHcの中の網点密度が大きくなるFM網点(FMスクリーニングによる網点)である、いわゆるドット分散型の網点を用いてもよい。
【0158】
FM網点を用いる場合、閾値データTdとして低周波成分をできるだけ取り除き、ドットの分散を均一にさせた、256×256程度の閾値からなるブルーノイズ型マスク閾値データを格納しておく。これにより、粒状性が目立たず、周期パターンの発生を抑制することができる。
【0159】
さらに、上述した実施形態においては、網角度が0度網点の場合を例として示してきたが、フレキソ印刷などの凸版のカラー印刷においては、CMYKの網角度を0度、15度、45度、75度の0度系列網点、又は7.5度、22.5度、52.5度、82.5度などの7.5度シフト系列網点にすることなどが知られている。このように0度以外の網角度を持つ網点に対しても、本発明の適用により良好な階調性を持ち、むらなどの欠陥のない印刷物品質を実現できることはいうまでもない。
【0160】
そして、網角度が0度網点ではなく、上例のように、15度、45度、75度、7.5度、22.5度、52.5度、82.5度などの角度のついた網点の場合には、網点セルHcの大きさと閾値データTdの大きさを同一にするのではなく、閾値データTdを、図21に、網角度45度の例で示すように、複数の網点セルHc(図21例では2個)の大きさに対応する大きな1個のスーパーセル閾値データTdsで構成することで対応することもこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0161】
10、310…製版作成システム 12、312…RIP装置
14、314…印刷用凸版作成装置 16…RIP処理部
18…スクリーニング処理部 20、320…露光量データ生成部
22、322…突起部高さ決定部 24…高さデータ生成部
26…CTP描画機 28…2値化処理部
30…閾値データ格納部 32、332…突起部高さ変換部
34…彫刻形状変換部 36…露光量データ変換部
38…マトリクス選択情報生成部 40…高さ変換マトリクス生成部
42…乗算器 44…減算器
100I…第1変換特性 100II…第2変換特性
110…レーザ彫刻機 112…露光ヘッド
200、200s…ベた部 202…基底部
204、204s、204t、212、232、232s…網点突起部
204m、232m…網点主突起部 324…変更データ生成部
Mh、Mh1〜Mh100…高さ変換マトリクス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
版材の表面に設けられ、被印刷体にインキを転移させてそれぞれ網点を印刷するための網点印刷用の網点突起部が複数個形成された印刷用凸版を作成する装置であって、
印刷画像を表す多値画像データに基づいて2値画像データを生成する2値画像データ生成部と、
各前記網点突起部の高さを決定するための高さデータを前記多値画像データに基づいて生成する高さデータ生成部と、
前記2値画像データ生成部により生成された前記2値画像データに基づき形成される平網部で前記網点突起部の高さが複数の高さレベルからなる印刷用凸版を作成するため、前記高さデータ生成部により生成された前記高さデータと前記2値画像データとに基づいて露光量データを生成する露光量データ生成部と、
前記露光量データ生成部により生成された前記露光量データに基づいて前記版材を露光する露光部と
を有することを特徴とする印刷用凸版作成装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記平網部を形成する一定の網点面積率の画像領域での、前記被印刷体に印刷された各前記網点の平均面積率と前記一定の網点面積率との面積率差が、各前記網点突起部の高さを同一にする場合における前記面積率差と比べて小さくなるように、前記網点突起部の高さを決定する突起部高さ決定部を有する
ことを特徴とする印刷用凸版作成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置において、
前記露光量データ生成部は、前記2値画像データの各画素に応じた網点面積率と、該網点面積率と予め対応付けられた前記高さデータとに基づいて、前記2値画像データの各画素値を各前記網点突起部の高さに変換する突起部高さ変換部を備える
ことを特徴とする印刷用凸版作成装置。
【請求項4】
請求項3記載の装置において、
前記高さデータは、各前記高さレベルとの位置関係が予め対応付けられた、前記2値画像データのサイズを超えないマトリクス状の配列データであり、
前記突起部高さ変換部は、前記2値画像データの画像領域上に前記マトリクスを周期的に配置することで、該2値画像データの各画素値と前記高さデータとを周期的に対応付ける
ことを特徴とする印刷用凸版作成装置。
【請求項5】
請求項4記載の装置において、
前記マトリクスは、前記複数の高さレベルのうち最高レベルの高さを有する網点主突起部が互いに隣接しない位置関係に配置されるように設けられている
ことを特徴とする印刷用凸版作成装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1項に記載の装置において、
前記高さデータは、所定の網点面積率以上では一定であるとともに、前記所定の網点面積率未満では網点面積率の減少に対して減少するように設けられている
ことを特徴とする印刷用凸版作成装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載の装置において、
前記マトリクスのサイズは、前記多値画像データを前記2値画像データに変換する際の閾値マトリクスのサイズの整数倍に等しい
ことを特徴とする印刷用凸版作成装置。
【請求項8】
版材の表面に設けられ、被印刷体にインキを転移させてそれぞれ網点を印刷するための網点印刷用の網点突起部が複数個形成された印刷用凸版を作成する装置であって、
2値画像データに基づいて露光量データを生成する露光量データ生成部と、
各前記網点突起部の高さを変更するための変更データを前記2値画像データに基づいて生成する変更データ生成部と、
前記露光量データ生成部により生成された前記露光量データに基づき形成される平網部で前記網点突起部の高さが複数の高さレベルからなる印刷用凸版を作成するため、前記変更データ生成部により生成された前記変更データを用いて前記露光量データを変更する露光量データ変更部と、
前記露光量データ変更部により変更された前記露光量データに基づいて前記版材を露光する露光部と
を有することを特徴とする印刷用凸版作成装置。
【請求項9】
請求項8記載の装置において、
前記変更データ生成部は、
前記平網部を形成する前記2値画像データの画像領域内から、隣接するオン状態値の画素数が所定数以下である画像領域を小点画像領域として抽出する特徴領域抽出部と、
前記特徴領域抽出部により抽出された前記小点画像領域に所定のテンプレート画像を配置して前記小点の変更データを生成するテンプレート配置部と
を有することを特徴とする印刷用凸版作成装置。
【請求項10】
請求項9記載の装置において、
前記変更データ生成部は、前記小点の形状又は属性に応じた前記テンプレート画像を格納するテンプレート格納部を備える
ことを特徴とする印刷用凸版作成装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の装置において、
前記露光量データ変更部は、前記小点画像領域内の画素数に応じた重み付け係数を用いて、前記露光量データ生成部からの前記露光量データと前記変更データ生成部からの前記変更データとを重み付け加算して得られた値を新たな露光量データとする
ことを特徴とする印刷用凸版作成装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の装置において、
前記複数の高さレベルは、少なくとも3つのレベルである
ことを特徴とする印刷用凸版作成装置。
【請求項13】
版材の表面に設けられ、被印刷体にインキを転移させてそれぞれ網点を印刷するための網点印刷用の網点突起部が複数個形成された印刷用凸版を作成するシステムであって、
印刷画像を表す多値画像データに基づいて2値画像データを生成するRIP装置と、
前記RIP装置により生成された前記2値画像データに基づいて前記版材を露光して前記印刷用凸版を作成する印刷用凸版作成装置と
を有し、前記印刷用凸版作成装置は、
各前記網点突起部の高さを変更するための変更データを前記2値画像データに基づいて生成する変更データ生成部と、
前記露光量データ生成部により生成された前記露光量データに基づき形成される平網部で前記網点突起部の高さが複数の高さレベルからなる印刷用凸版を作成するため、前記変更データ生成部により生成された前記変更データを用いて前記露光量データを変更する露光量データ変更部と、
前記露光量データ変更部により変更された前記露光量データに基づいて前記版材を露光する露光部と
を備えることを特徴とする印刷用凸版作成システム。
【請求項14】
版材の表面に設けられ、被印刷体にインキを転移させてそれぞれ網点を印刷するための網点印刷用の網点突起部が複数個形成された印刷用凸版を作成する方法であって、
印刷画像を表す多値画像データに基づいて2値画像データを生成するステップと、
各前記網点突起部の高さを決定するための高さデータを前記多値画像データに基づいて生成するステップと、
生成された前記2値画像データに基づき形成される平網部で前記網点突起部の高さが複数の高さレベルからなる印刷用凸版を作成するため、生成された前記高さデータと前記2値画像データとに基づいて露光量データを生成するステップと、
生成された前記露光量データに基づいて前記版材を露光するステップと
を備えることを特徴とする印刷用凸版作成方法。
【請求項15】
版材の表面に設けられ、被印刷体にインキを転移させてそれぞれ網点を印刷するための網点印刷用の網点突起部が複数個形成された印刷用凸版を作成する方法であって、
2値画像データに基づいて露光量データを生成するステップと、
各前記網点突起部の高さを変更するための変更データを前記2値画像データに基づいて生成するステップと、
生成された前記露光量データに基づき形成される平網部で前記網点突起部の高さが複数の高さレベルからなる印刷用凸版を作成するため、生成された前記変更データを用いて前記露光量データを変更するステップと、
変更された前記露光量データに基づいて前記版材を露光するステップと
を備えることを特徴とする印刷用凸版作成方法。
【請求項16】
版材の表面に設けられ、被印刷体にインキを転移させてそれぞれ網点を印刷するための網点印刷用の網点突起部が複数個形成された印刷用凸版を作成するためコンピュータを、
印刷画像を表す多値画像データに基づいて2値画像データを生成する手段、
各前記網点突起部の高さを決定するための高さデータを前記多値画像データに基づいて生成する手段、
生成された前記2値画像データに基づき形成される平網部で前記網点突起部の高さが複数の高さレベルからなる印刷用凸版を作成するため、生成された前記高さデータと前記2値画像データとに基づいて露光量データを生成する手段、
生成された前記露光量データに基づいて前記版材を露光させる手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項17】
版材の表面に設けられ、被印刷体にインキを転移させてそれぞれ網点を印刷するための網点印刷用の網点突起部が複数個形成された印刷用凸版を作成するためコンピュータに、
2値画像データに基づいて露光量データを生成する手段、
各前記網点突起部の高さを変更するための変更データを前記2値画像データに基づいて生成する手段、
生成された前記露光量データに基づき形成される平網部で前記網点突起部の高さが複数の高さレベルからなる印刷用凸版を作成するため、生成された前記変更データを用いて前記露光量データを変更する手段、
変更された前記露光量データに基づいて前記版材を露光させる手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2011−227304(P2011−227304A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97199(P2010−97199)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】