説明

印刷用凸版及びエレクトロルミネセンス素子の製造方法

【課題】有機EL素子等の高精細な有機薄膜のパターニングが必要とされる印刷物において、インキの混色や、パターンずれなどの印刷不良のない印刷物の製造方法、及びこれを可能とする版及び版の製造方法。
【解決手段】基材上の凸状金属ストライプ103のパターンと、前記凸状金属ストライプ103の頭頂部の転写領域を覆う樹脂層101のパターンと有し、前記頭頂部の樹脂層101以外の部分が撥インキ層102で覆われ、さらには凸状金属パターン103の側面部を撥インキ性の層102で覆った印刷用凸版を用いて印刷物の製造を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凸版印刷法に用いられる高精細印刷用凸版及び高精細印刷用凸版を用いて製造される印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子とする)は、二つの対向する電極の間に有機発光材料からなる有機発光層を形成し、有機発光層に電流を流すことで発光させるものであるが、効率良く発光させるには発光層の膜厚が重要であり、100nm程度の薄膜にする必要がある。さらに、これをカラー表示可能なディスプレイとするには有機EL素子を高精細にパターニングする必要がある。
【0003】
有機発光材料には、低分子材料と高分子材料があり、一般に低分子材料は抵抗加熱蒸着法等により薄膜形成し、このときに微細パターンのマスクを用いてパターニングするが、この方法では基板が大型化すればするほどパターニング精度が出にくいという問題がある。
【0004】
そこで、最近では有機発光材料に高分子材料を用い、有機発光材料を溶媒に溶かして塗工液にし、これをウェットコーティング法や印刷法にて薄膜形成する方法が試みられるようになってきている。薄膜形成するためのウェットコーティング法としては、スピンコート法、バーコート法、吐出コート法、ディップコート法等があるが、高精細にパターニングしたりRGB3色に塗り分けしたりするためには、これらのウェットコーティング法では難しい。よって、塗り分けパターニングを得意とする印刷法による薄膜形成が有効である。
【0005】
さらに各種印刷法の中でも、有機EL素子などのディスプレイでは、基板としてガラス基板を用いることが多いため、グラビア印刷法等のように金属製の印刷版等の硬い版を用いる方法は不向きであり、弾性を有するゴム版を用いたオフセット印刷法や、ゴムやその他の樹脂を主成分とした感光性樹脂版を用いる凸版印刷法が最適である。これらの印刷法の試みとして、オフセット印刷による方法(特許文献1)、凸版印刷による方法(特許文献2)などが提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−93668号公報
【特許文献2】特開2001−155858号公報
【0007】
有機EL素子における有機発光層のパターンは、テレビ用途の大型ディスプレイの場合、例えば体格40インチのワイドディスプレイではライン幅が100μm、画素ピッチが500μmとなる。また、携帯電話などの小型ディスプレイの場合、例えば対角2インチで主流のQVGA(320×240画素)では画素ピッチは120μm、各色要素のサブピクセルの幅は40μmとなる。このような高精細なディスプレイの素子を凸版印刷法により形成しようとした場合、5μm以下という非常に高い印刷パターンの精度が要求される。
【0008】
しかし例えば上記QVGAの画素サイズのディスプレイを製作するためには、サブピクセルあたり約40μmピッチのラインとスペースが必要となるために、パターン精度が悪いと電極層および正孔輸送層もしくは電子輸送層の接触による短絡や、隣り合う有機発光層が混じり混色が発生してしまう。このような問題のために、従来の樹脂凸版では十分な品質の高精細印刷パターンは形成できなかった。
【0009】
一般に樹脂凸版の基材にはPETやPE等が使用されているが、印刷法による有機ELディスプレイデバイスの製造では、大気中で作製を行っているため、前記樹脂凸版の基材が水分を吸収し、膨潤してしまうため、トータルピッチで数十μmの精度を要求される高精細なパターン膜が得られないためである。
【0010】
さらに、印刷の再現性を得るうえで、印刷用凸版の凸部の線幅とレリーフ深さとのアスペクト比が高いことが望ましいが、樹脂凸版を高精細パターンのマスクで露光を行う場合、凸部の線幅が変化しない範囲では、露光量が足りずに深いレリーフが得られずアスペクト比が低下してしまう。また、露光により硬化された感光材料の表面は粗いため、転写後のパターン膜の再現性が低下してしまう。
【0011】
また、有機ELディスプレイの大型化、高精細化により、ディスプレイの駆動方式としては、パッシブマトリクス駆動から、1画素毎に駆動するアクティブマトリクス駆動方式が主流となり、印刷用凸版をドット状に形成するためには、従来の樹脂凸版では凸の強度不足や、x−y方向両方のアライメントが必要となるため精度不足がより問題となる。またこのようなドット状画素にストライプ状凸版でインクを印刷すると画素分離用隔壁上にインクが形成されてしまうため、画素間での短絡や混色の問題がより顕著となる。さらには、RGB3原色の色配列手法として文字表示等に適したストライプ配列ではなく、映像表示に適したデルタ配列やモザイク配列などの非直線的な色配列になると、高強度でアライメント精度に優れたドット状の印刷用凸版の開発が必須となる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた請求項1に係る発明は、基材上の凸状金属ストライプのパターンと、前記凸状金属ストライプの頭頂部の転写領域を覆う樹脂層のパターンと、を有し、前記樹脂層のパターンがドットパターンであることを特徴とする印刷用凸版である。上記転写領域は、印刷用凸版を用いて形成するインキパターンに対応する領域を意味する。
【0013】
請求項2に係る発明は、前記凸状金属ストライプの頭頂部の転写領域以外の部分に撥インキ層を有することを特徴とする請求項1に記載の印刷用凸版である。
【0014】
請求項3に係る発明は、前記凸状金属ストライプの側面部が撥インキ層によって覆われていることを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷用凸版である。
【0015】
請求項4に係る発明は、前記基材表面の露出部が撥インキ層で覆われていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の印刷用凸版である。
【0016】
また印刷物の製造方法として、請求項5に係る発明は、インキ供給体から請求項1乃至4いずれかに記載の印刷用凸版の前記転写領域にインキを供給する工程と、該インキを被印刷体に転写し、インキパターンを形成する工程とを少なくとも含むことを特徴とする印刷物の製造方法である。
【0017】
請求項6に係る発明は、平行に並んだ第一隔壁のラインと、該第一隔壁に直交し平行に並んだ第二隔壁のラインとからなる隔壁のパターンを有する被印刷体に、前記樹脂層のパターンと前記隔壁パターンの開口部とを対応させてインキパターンを形成することを特徴とする請求項5に記載の印刷物の製造方法である。
【0018】
請求項7に係る発明は、前記第一隔壁の高さが前記第二隔壁の高さよりも高く、前記凸状金属ストライプのパターンが、第一隔壁のパターンと並行するようにインキパターンを転写することを特徴とする請求項6に記載の印刷物の製造方法である。
【0019】
請求項8に係る発明は、少なくとも第一電極、一層以上の有機発光媒体層、第二電極からなる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、有機発光媒体層のうち少なくとも一層を請求項5乃至7のいずれかに記載の印刷物の製造方法を用いて印刷形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法である。
【0020】
また印刷用凸版の製造方法として、請求項9に係る発明は、前記基材上に凸状金属ストライプのパターンを形成する工程と、前記凸状金属ストライプの頭頂部の転写領域に樹脂層のパターンを形成する工程と、を少なくとも有することを特徴とする印刷用凸版の製造方法である。
【0021】
請求項10に係る発明は、前記凸状金属ストライプのパターンが、電鋳法を用いて形成することを特徴とする請求項9に記載の印刷用凸版の製造方法である。
【0022】
請求項11に係る発明は、前記凸状金属ストライプのパターンが、エッチング法を用いて形成することを特徴とする請求項9に記載の印刷用凸版の製造方法である。
【0023】
請求項12に係る発明は、前記樹脂層をフォトリソ法により形成することを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の印刷用凸版の製造方法である。
【0024】
請求項13に係る発明は、前記樹脂層を電着法により形成することを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の印刷用凸版の製造方法である。
【0025】
請求項14に係る発明は、前記凸状金属ストライプの頭頂部の転写領域以外の部分に撥インキ層を形成する工程を有することを特徴とする請求項9乃至13のいずれかに印刷用凸版の製造方法である。
【0026】
請求項15に係る発明は、撥インキ層が、電着法を用いて形成されていることを特徴とする請求項14に記載の印刷用凸版の製造方法である。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に係る発明の凸版によって、凸版の凸部が金属からなることによって、版の変形が抑えられる。特に、高精細なドット状のパターンを形成する場合にも、ストライプ状の金属の上に転写領域が設けられているために、金属凸部が独立している場合と比較して耐久性を保ったまま版深を深くすることができる。結果として、印刷時の圧力によって版が変形してパターンがつぶれることがないため、パターンの解像度を低下させることがなく、また熱膨張によるパターン変形が少ないため、パターン精度よく印刷が可能となる。また凸部の頭頂部が樹脂層で覆われていることによって、樹脂版と同様の印刷時の柔軟性を示すことで、ガラス基板のような硬い基板に対しても損傷することない。さらに、版深が深くすることができるので、余剰なインキの流出による印刷パターンのずれやインキの混色などによる印刷不良の少ない印刷が可能となった。
【0028】
請求項2に係る発明の凸版によって、凸版頭頂部の転写領域以外の部分に撥水層があることによって、インキング時に隣接パターン同士でインキがつながることがなく、結果として、印刷パターンのずれやインキの混色などによる印刷不良の少ない印刷が可能となった。
【0029】
請求項3に係る発明の凸版によって、さらに凸部側面の露出面に撥水層を供えることによって、インキング時に隣接パターン同士でインキがつながり凹部にインキが流れ込むことをより効果的に防ぐことできるために、結果として、印刷パターンのずれやインキの混色などによる印刷不良の少ない印刷が可能となった。また請求項4に係る発明の凸版によって、インキによる版の腐食等を防ぐことが可能となった。
【0030】
請求項5に係る発明によって、変形の少ない金属版と、その頭頂部に樹脂層を有し、さらに請求項2の版を用いた場合には周辺領域に撥インキ層を備えた版を用いて印刷を行うことにより、版の変形がなく、またインキの流出が抑えられるために、印刷パターンのずれやインキの混色などによる印刷不良の少ない高精細な印刷物の製造が可能となった。
【0031】
請求項6に係る発明によって、格子状の隔壁内にインキパターンを形成することにより、隣り合うパターン間でのインキの混色等のない印刷物の製造が可能となった。
【0032】
請求項7に係る発明によって、第一隔壁と凸状金属ストライプのパターンとを並行して印刷を行うことにより、第一隔壁に平行な軸での位置あわせが容易となり、高精細なパターンの形成であってもパターンずれや混色の少ない印刷物の製造が可能となった。
【0033】
請求項8に係る発明によって、変形の少ない金属版と、その頭頂部に樹脂層と、周辺領域に撥インキ層を備えた版を用いて有機発光媒体層の形成を行うことにより、版の変形がなく、またインキの流出が抑えられるために、発光ムラや、短絡のない、高品質な有機EL素子の製造できた。
【0034】
請求項9に係る発明の凸版によって、凸版の凸部が金属からなることによって、版の変形が抑えられ、印刷時の圧力によってパターンがつぶれることがないため、パターンの解像度を低下させることがなく、また凸部の頭頂部が樹脂層で覆われていることによって、樹脂版と同様の印刷時の柔軟性を示すことで、ガラス基板のような硬い基板に対しても損傷することなく印刷でき、高性能な版の製造が可能となった。
【0035】
請求項10に係る発明によって、電鋳法を用いて版の金属パターンを形成することにより、パターン精度のよい、高精細な版の製造が可能となった。
【0036】
請求項11に係る発明によって、エッチング法を用いて金属パターンを形成することにより、転写面の平坦性に優れた版の製造が可能となった。
【0037】
請求項12に係る発明によって、フォトリソ法を用いて樹脂層を形成することにより、精密な転写領域を持つ版が製造可能となり、高精細な印刷物の製造ができた。
【0038】
請求項13に係る発明によって、電着法を用いて樹脂層を形成することにより、精密な転写領域を持つ版が製造可能になり、高精細な印刷物の製造ができた。
【0039】
請求項14及び15に係る発明によって、撥インキ性の層を電着法で形成することにより、金属表面に容易に撥インキ性の層を形成することが可能となり、金属の腐食のない、耐久性に優れた版の製造が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
<凸版>
図1に本発明の印刷用凸版の一例を図1に示す。
【0041】
図1(a)は本発明の印刷用凸版版面のパターン形状の例である。有機EL素子等の有機機能性素子やカラーフィルター等のディスプレイ用素子の製造に用いられる版のパターンとしては、ライン形状や、ドット形状のものが用いられる。図示されているようにこの版面凸部のライン幅あるいはパターン幅をaとし、隣り合う凸状パターンの間隔をbとする。
【0042】
図1(b)は図1(a)をPのラインで切った時の断面図である。基材100の材料としては製造方法の説明で述べるように種々の材料を用いることができる。また後述のように版の製造に電鋳法を用いる場合には、基材に金属を用いるか、基材上に金属膜を設ける必要がある。また版の製造にエッチング法を用いる場合には、版の製造方法の項で後述するように基材上に樹脂層を形成し、樹脂層以外の部分をエッチングすることにより、基材100からなる金属凸部103を形成することができる。
【0043】
凸状パターンの頭頂部から底部までの版深をdとすると、従来は高精細な印刷パターンを印刷する場合には、印刷時に頭頂部から溢れ出たインキが凹部に浸出し、隣り合う凸部からのインキと混色したインキが、被印刷体に転移してしまい、印刷不良となる場合があった。よって、版の幅と版深のアスペクト比a/dは1以上とすることが、凹部に浸出したインキが溢れ出ることを防ぐことができ好ましい。しかし、このような高アスペクト比の凸状パターンを樹脂により形成すると、高精細版においては感光性樹脂の解像度の問題や、強度不足により版が変形したり、損傷したりして印刷不良が生じてしまう。
【0044】
そこで、上記のように金属凸部103を形成し、凸状金属パターンとし、この金属パターンの頭頂部を樹脂層で覆うことによって、上記のような問題を解決することができ、さらにはガラス基板のように硬質で損傷しやすい基板上にもインキパターンを転写することが可能となった。この樹脂層は印刷時に被印刷体を損傷させないために1μm以上であることが好ましい。また、樹脂層が厚くなりすぎると印刷時に樹脂層の変形や膨潤などが起こり、印刷ムラ等が発生する恐れがあるので、10μm以下であることが望ましい。
【0045】
さらに、隣り合う凸状パターンとの間隔bが狭くなってくると、凸部頭頂部に供給されたインキが隣り合う凸部同士で接触し、つながってしまう場合がある。この場合、版から被印刷体に転写されたインキは、印刷不良となり、有機EL素子の場合には短絡、あるいは混色発光といった問題を生じさせることとなる。
【0046】
そこで本発明では、凸状パターンの凸部頭頂部の周辺領域又は転写領域以外の部分を撥インキ性の層(撥インキ層)とすることで、確実にインキを阻害できる領域を形成し、隣り合う頭頂部のインキ同士がつながらないようにすることが可能となった。さらに、撥インキ層が凸状パターンの凸部の側面さらには露出している基材表面を覆うことによって、金属部分の腐食や影響を防ぐことができ、さらには凹部へのインキの進入を抑制することができるために好ましい。
【0047】
凸部頭頂部の樹脂層は、転写する印刷パターンにムラを生じないためにできるだけ平坦性をもつことが望ましい。また、この樹脂層は、金属凸部表面との接触面(底面部)にたいして、頭頂部表面の樹脂層の面積が広いこと、例えば逆テーパー形状であることが好ましい(図1(c))。逆テーパーのような形状であることによって、金属凸部直上部に位置する頭頂部の面積を効率よく利用できる。このことは、高精細な印刷の場合には、凸状パターンの間隔bが狭くなり、課題に掲げたような問題を生じるため、できるだけ転写領域を広げ、間隔bを狭めないために重要である。また、順テーパー形状の場合と比較すると、樹脂層の端部が沈下して、撥インキ層の下にもぐりこむなどの変形が少ない。さらには、後述する版の製造工程において、電着法で撥インキ層を形成する場合には、金属表面に撥インキ層を構成する材料が積層していくため、金属表面の領域が広いほうが好ましい。このためにも、樹脂層の底面部の面積より樹脂層の表面領域の面積が大きい、逆テーパー状のような形状が好ましい。
【0048】
また樹脂層と、頭頂部周辺領域の撥インキ層の段差は、少なくとも5μm以下、より好ましくは3μm以下であることが、とくに有機ELのような高精細な印刷のためには好ましい。これよりも撥インキ層の高さが低ければ、頭頂部のインキが凹部へ流出してしまう場合があり、逆に撥インキ層の高さが高いと、樹脂層に供給されたインキが撥インキ層に遮られて完全に転写することができない場合があるからである。さらには、0.1〜3μmの範囲で撥インキ層の高さが転写領域である樹脂層よりも高い凸版とすることによって(図1(c))、転写時においても転写領域にインキを固定しておくことができるために、精細なパターンの形成が可能となる。3μm以上では上述のように撥インキ層が障害となって転写領域のインキがうまく転写されない場合があり、0.1μm以下では効果が不十分である。
【0049】
有機ELのように精細な有機薄膜の印刷パターンを印刷するためには、インキの混色を防ぐために前述のように版の幅と版深のアスペクト比a/dは1以上とし、インキの種類にも依るが60μm以下の凸部のパターン幅にたいして版深は30μm以上、より好ましくは50μm以上の版深があることが好ましい。凸状パターンが60μm以下と微細になってくると、凸部表面にインキを塗布した際に表面張力によって、平面上に塗布した場合よりもインキ膜厚が高くなり、このインキが印刷時に版の凹部に流れ込む場合があり、30μm以下の版深では流入したインキが溢れ混色や、印刷のパターンずれを起こす可能性があるためである。
【0050】
さらに本発明によれば、図1(a)の左上あるいは左下のように、ドット状の転写領域を必要とする場合、つまり形成するパターンがドット状の場合には、(e)の版のようにベースとなる金属凸部部分をストライプパターンとし、その上にドット状の樹脂層を有する版とすることができる。版深を深くなると、特にドットパターンのように個々のパターンの面積が小さい場合には、版の強度が低下し、転写時に版の変形や損傷が生じる可能性がある。そこで金属部分はストライプ状にしておくことによって、樹脂層と対応して金属部分を独立させた場合よりも版凸部の強度を保つことが可能となる。
【0051】
この版には、余剰なインキを版の凸部頭頂部に吸着させないために、撥インキ層を金属凸部頭頂部の樹脂層以外の部分、つまり転写領域以外の部分に有することが好ましい。また、印刷形成するパターンが高精細となり、ストライプパターン同士の幅が狭まってくるとインキが接触する恐れがあるために、撥インキ層を設けることが好ましいことも前述の通りである。
【0052】
上記のような金属凸部のストライプパターンと、その上にドット状の樹脂層を有する版では、後述のように隔壁内にパターンを形成しようとする際、金属凸部のストライプ部分が隔壁を跨ぐことになるので、隔壁の高さによっては樹脂層を金属凸部頭頂部の撥インキ層よりも高くする必要がある。
【0053】
<凸版の製造>
次に本発明の凸版の製造方法を図2及び図3に基づいて説明する。
【0054】
本発明における印刷用凸版の基材200としては、ガラスや石英、ポリプロピレン、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルムやシート、シリコンウェハや、ステンレス、インバー材などのニッケル鉄合金、スーパーインバーなどのニッケルコバルト鉄合金の板を用いることができる。
【0055】
また、後述する金属凸部の形成に、例えば電鋳法を用いる場合には形成部分にクロムやアルミニウムといった金属膜を形成しておいてもよい。あるいは、金属基材上の非形成部分に金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化膜、高分子樹脂膜などの絶縁膜を形成してもよい。さらには金属板の裏面にプラスチックフィルムをラミネートするなどしてもよい。またエッチング法を用いる場合にも同様に、除去したくない部分を保護するために金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化膜、高分子樹脂膜などの絶縁膜や、金属膜、プラスチック膜を形成してもよい。
【0056】
上記基材において、特に大型基板に高精細のパターンを位置精度良く形成するためは、熱膨張係数が50×10−7/℃以下、より好ましくは、20×10−7/℃以下の基材を選択することが良い。さらには、印刷ロールに巻きつけ可能な可とう性を有することがより好ましい。このような基材101の例としては、インバー材やスーパーインバー材といった低熱膨張係数を有する金属シートを用いることが好ましい。金属シートの厚みとしては、印刷の版銅に巻きつけるのに十分な可とう性を有し、熱や衝撃により変形しない強度を有していれば良く、0.5mm以下、より好ましくは0.3mm以下が好適に用いることができる。
【0057】
まず始めに、図2(1d)及び(2d)に図示されているように、金属凸部からなる凸状金属パターン204を形成する。凸状金属パターンを形成する方法として、基材上に金属膜を堆積させる方法、あるいは、エッチングにより基材表面を削り、パターンを形成する方法がある。
【0058】
基材上に金属膜を堆積させる方法での凸状金属パターン204の形成方法としては、電鋳法、ウェットコーティング法、CVD法、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法を必要に応じて使用することができる。金属の堆積には、凹部に隙間なく均一に埋め込み可能である電鋳法を用いることが好ましい。その他の方法でも、マスクを用いてパターン状に金属を堆積させて凸状パターンを形成することが可能であるが、特に本発明の課題とする高精細な版の作製においては、パターンの精度が求められるため、上記のような電鋳法の特性が適しているからである。電鋳法を用いる場合には、前述したように金属の基材あるいは金属膜を表面に形成した基材を用いる。金属としては、特に制限はなく、例えば、ニッケル、クロム、銅、金、アルミ、銀、鉄などを用いることができる。
【0059】
図2に従って、まず基材上に金属膜を堆積させる方法での凸状金属パターン204の形成工程を説明する。まず、基材200上に、感光性樹脂層201を積層する(図2(1a))。次にフォトリソグラフィー法を用いて、不要部を除去して複数の凸状パターン202を形成する(図2(1b))。このとき形成する感光性樹脂の凸状パターンは最終的に製造する凸版の凸状パターンに対して反転したパターンである。次に、感光性樹脂の凸状パターン202の間隙凹部に金属203を堆積する(図2(1c))。最後に、感光性樹脂の凸状パターン202を除去することにより、凸状金属パターン204を形成することができる。
【0060】
エッチング法で版を作製する場合は、基材200上に、同じく感光性樹脂層201を積層した後に、フォトリソグラフィー法を用いて、不要部を除去して複数の凸状パターン202を形成する(図3(2b))。この時、形成する感光性樹脂の凸状パターンは、電鋳法とは異なり、最終的に製造する凸版の凸状パターンと同じ箇所に形成する。次に、ウェットエッチング法やドライエッチング法を用いて、基材200のうち、感光性樹脂の凸状パターンが形成されていない部分をエッチングし、凹部205を形成する(図3(2c))。次に、感光性樹脂の凸状パターン202を除去することにより、凸状金属パターン204を形成することができる(図3(2d))。エッチング法によれば、凸状金属パターン204の頭頂部が基材表面に当たるため、凸部の高さの均一性及び平坦性に優れている。
【0061】
上記感光性樹脂層201の材料としては、特に制限はないが、めっき液やエッチング液に対して耐性があることが好ましい。さらには、有機溶媒やアルカリ水溶液などで容易に除去できるものを選択することが好ましい。アクリル、エポキシ、ナイロン、ポリエステル、ウレタン、シリコーン、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ノボラックなどの樹脂を用途に応じて用いることができる。厚みとしては、特に制限はないが、電鋳法で金属版を作製する場合には、この感光性樹脂層201により、金属版のパターンが決まるために、少なくとも印刷用凸版の版深として必要な30μm以上であることが好ましく、より好ましくは50μm以上である。このような厚膜の樹脂を大面積基板に形成する好適な手段として、ネガ型のアクリルやエポキシ系の市販ドライフィルムレジストを使用することができる。一方、エッチング法で金属版を作製する場合には、レジストの厚みには特に制限はなく、エッチング液に対する耐性が求められる。
【0062】
次に、上述の図2の工程により作製した凸状金属パターン上に、樹脂層及び撥インキ層を形成する方法を図3に基づいて説明する。
【0063】
樹脂層303は、特に形成方法に制限はないが、たとえば図3の工程のようにフォトリソ法あるいは電着法を用いて形成することができる。このとき形成する樹脂層のパターンは、転写領域に対応する。つまり、版によって形成するパターンがドットパターンである場合には、樹脂層のパターンもドットパターンとなる。
【0064】
フォトリソ法の場合、スピンコート法やスリットコート法、ラミネート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法などの塗工法により、凸状パターン301が形成された基材300上に、感光性樹脂膜302を形成し(図3(1b))、フォトリソ法により凸状パターン上の転写領域のみに樹脂層303を形成する(図3(1c))。樹脂層303は、凸状金属パターン301の中心領域に形成され、また、この樹脂層303の上部が印刷ラインの幅や直線性などを左右するため、正常な印刷ラインパターンを得るためには、樹脂層303の上辺は平坦であることが好ましい。また、樹脂層303上辺の幅は凸状金属パターン301上辺の幅よりも狭いと、後述する撥インキ層304を樹脂層303とほぼ同程度の膜厚で形成可能であるためより好ましい。
【0065】
また、電着法にて樹脂層303を得る方法としては、例えば、図3(b)のように感光性樹脂膜302を形成した後に、樹脂層303を形成する領域をフォトリソ法で除去し(図3(2d)、電着法にて樹脂層303を形成し(図3(2d))、最後に、感光性樹脂層302を除去する(図3(2e))。このとき電着する領域、つまりフォトリソ法で除去する樹脂膜302の領域は、最終的な版の頭頂部の周辺領域に形成する撥インキ層のために、凸状金属パターン凸部の幅よりも小さいことが好ましい。
【0066】
上記の樹脂層形成に用いられる樹脂層の材料としては、アクリル、エポキシ、ナイロン、ポリエステル、ウレタン、シリコーン、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ノボラックなどの樹脂を用いることができ、上辺形状をできるだけ平坦にするために、ネガ型の感光性樹脂を用いることが好ましい。ネガ型の感光性樹脂を用いることによって、高精細な樹脂層のパターンが形成でき、さらに容易に樹脂層を逆テーパー状に形成することができる。
【0067】
最後に、図3(1c)や(2e)の凸状金属パターン301の頭頂部周縁領域や側面、基材300の露出面に撥インキ層304を形成する(図3(1d)、(2f))。この時、頭頂部周縁部の膜厚が樹脂層303の膜厚と同程度であることが好ましい。これにより、印刷パターンを高精細化しても隣接ラインとのインク混色を防ぐことができ、また、後述する正孔輸送インク(PEDOT)のアルコール含有酸性水溶液によって、凸状金属パターン301や基材300が腐食するのを防ぐ効果がある。撥インキ層の形成方法としては、電着法や、塗工法、ドライコーティング法などを用いることができるが、金属部のみに選択的に成膜可能である電着法を使用することが好ましい。
【0068】
<印刷物の製造>
次に、本発明の印刷用凸版を用い、凸版印刷法により被印刷体表面にインキパターンを形成する印刷物の製造方法について示す。図5に本発明の印刷物の製造に用いられる凸版印刷装置の概略図を示した。ステージ400には被印刷体401が固定されており、印刷用凸版402は版胴403に固定され、印刷用凸版はインキ供給体であるアニロックスロール404と接しており、アニロックスロールはインキ補充装置405とドクター406を備えている。
【0069】
まず、インキ補充装置405からアニロックスロール404へインキを補充し、アニロックスロールに供給されたインキ407のうち余分なインキは、ドクター406により除去される。インキ補充装置には、滴下型のインキ補充装置、ファウンテンロール、スリットコータ、ダイコータ、キャップコータなどのコータやそれらを組み合わせたものなどを用いることもできる。ドクターにはドクターブレードの他にドクターロールといった公知の物を用いることもできる。また、アニロックスロールは、クロム製やセラミックス製のものを用いることができる。また、印刷用凸版へのインキ供給体としてシリンダー状のアニロックスロールではなく、平版のアニロックス版を用いることも可能である。平版のアニロックス版は、例えば、被印刷体401の位置に配置され、インキ補充装置によりアニロックス版全面にインキを補充した後、版胴を回転させることにより被印刷体へのインキの供給をおこなうことができる。
【0070】
印刷用凸版へのインキ供給体であるアニロックスロール404表面にドクター406によって均一に保持されたインキは、版胴403に取り付けられた印刷用凸版402の凸状パターンに転移、供給される。本発明の印刷用凸版においては、凸部周辺領域に撥インキ層を有するために、樹脂層に対応する転写領域インキが流出することがなく、さらには隣り合う凸状パターンのインキとつながってしまうこともない。
【0071】
次に、版胴の回転に合わせて印刷用凸版の凸部パターンと被印刷体401は接しながら相対的に移動し、インキ407はステージ400上にある被印刷体の所定位置に転移し、被印刷体上にインキパターン408を形成する。被印刷体にインキパターンが設けられた後は、必要に応じてオーブンなどによる乾燥工程を設けることができる。
【0072】
なお、印刷用凸版402上にあるインキを被印刷体401に印刷するときにおいては、版胴403の回転にあわせ被印刷体が固定されたステージ400を移動させる方式であってもよいし、図5上部の版胴405、印刷用凸版、アニロックスロール404、インキ補充装置405からなる印刷ユニットを版胴の回転に合わせ移動させる方式であってもよい。また、本発明の印刷用凸版は版胴403上に樹脂層を形成し、直接製版し、凸部パターンを形成してもよい。
【0073】
なお、図5は1枚毎に被印刷体にインキパターンを形成する枚葉式の凸版印刷装置であるが、本発明の印刷物の製造方法にあって被印刷体がウェブ状で巻き取り可能である場合には、ロール・ツゥー・ロール方式の凸版印刷装置を用いることもできる。ロール・ツゥー・ロール方式の凸版印刷装置を用いた場合には連続してインキパターンを形成することが可能となり、製造コストを低くすることが可能となる。
【0074】
本発明の印刷用凸版によれば、金属部分を備えていることで形成時に版の凸部が破損、あるいは変形してしまうことがなく、インキ接触面には樹脂層が設けられていることでガラス基板のような硬質な基板においても損傷することなく印刷することが可能である。そして、凸部周辺領域が撥インキ性であることにより、版表面の転写領域からインキが流出せず、精細な印刷パターンを形成することが可能である。
【0075】
隣り合うパターンのインキが流出してショート・混色等が生じることを防ぐためにパターンの画素ごとに被印刷体に隔壁を設ける場合にも、上記印刷法を用いることによって、パターン形成時にインクの飛散等を生じないために隔壁の高さを低くすることができる。
【0076】
また、図1(e)に記載される本発明の凸版を用いた場合には、図6の(a)に示されるような格子状に形成された隔壁であって、この隔壁が一方向(図のy方向)に平行な高い隔壁部分(第一隔壁:503a)と、それと垂直な方向(x方向)に平行な、より低い隔壁部分(第二隔壁:503b)とを持つような隔壁であればより好ましい。つまり、図6の(b)に示すように、第一隔壁のラインと版の凸状金属ストライプのパターンとを一致させることができるために、第一隔壁によって容易に形成するパターンのy方向の位置あわせが可能となる。
【0077】
<有機EL素子の製造>
次に、本発明での凸版を用いた印刷物の製造方法の一例として、有機EL素子の製造方法について説明する。
【0078】
図6に有機EL素子の一例を示した。有機EL素子の駆動方法としては、パッシブマトリックス方式とアクティブマトリックス方式があるが、本発明の製造方法はパッシブマトリックス方式の有機EL素子、アクティブマトリックス方式の有機EL素子のどちらにも適用可能である。
【0079】
パッシブマトリックス方式とはストライプ状の電極を直交させるように対向させ、その交点を発光させる方式であるのに対し、アクティブマトリックス方式は画素毎にトランジスタを形成した、いわゆる薄膜トランジスタ(TFT)基板を用いることにより、画素毎に独立して発光する方式である。
【0080】
図4に示すように、本発明の有機EL素子は、基板501の上に、陽極としてストライプ状に第一電極502を有している。隔壁503は第一電極間に設けられ、第一電極端部のバリ等よるショートを防ぐことを目的として第一電極端部を覆うことがましい。
【0081】
そして、本発明の有機EL素子は、第一電極502上であって、隔壁503で区画された領域に有機発光層及び発光補助層からなる有機発光媒体層を有している。電極間に挟まれる有機発光媒体層は、有機発光層単独から構成されたものであってもよいし、有機発光層と発光補助層との積層構造から構成されたものでもよい。発光補助層としては正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層が挙げられる。図6では発光補助層である正孔輸送層604と有機発光層605との積層構造からなる構成を示している。ディスプレイを製造する場合には、第一電極上に正孔輸送層604が設けられ、正孔輸送層上に赤色(R)有機発光層、緑色(G)有機発光層、青色(B)有機発光層を各画素にそれぞれ設ければよい。
【0082】
次に、有機発光媒体層上に陽極である第一電極602と対向するように陰極として第二電極606が配置される。パッシブマトリックス方式の場合、ストライプ状を有する第一電極と直交する形で第二電極はストライプ状に設けられる。アクティブマトリックス方式の場合、第二電極は、有機EL素子全面に形成される。更に、図示していないが、環境中の水分、酸素の第一電極、有機発光層、発光補助層、第二電極への侵入を防ぐために有効画素全面に対してガラスキャップ等による封止体が設けられ、接着剤を介して基板と貼りあわされる。
【0083】
本発明製造方法による有機EL素子は、少なくとも基板と、当該基板に支持されたパターン状の第一電極と、有機発光層と、第二電極を具備する。本発明の有機EL素子は、図6とは逆に、第一電極を陰極、第二電極を陽極とする構造であっても良い。また、ガラスキャップ等の封止体の代わりに有機発光媒体層や電極を外部の酸素や水分の浸入から保護するためにパッシベーション層や外部応力から保護する保護層、あるいはその両方の機能備えた封止基材を備えてもよい。
【0084】
次に、素子の製造方法について説明する。本発明にかかる基板としては、絶縁性を有する基板であればいかなる基板も使用することができる。この基板側から光を取り出すボトムエミッション方式の有機EL素子とする場合には、基板として透明なものを使用する必要がある。例えば、基板としてはガラス基板や石英基板が使用できる。また、ポリプロピレン、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルムやシートであっても良い。これらプラスチックフィルムあるいはシートに、有機発光媒体層への水分の侵入を防ぐことを目的として、金属酸化物薄膜、金属弗化物薄膜、金属窒化物薄膜、金属酸窒化膜薄膜、あるいは高分子樹脂膜を積層したものを基板として利用してもよい。また、これらの基板は、あらかじめ加熱処理を行うことにより、基板内部や表面に吸着した水分を極力低減することがより好ましい。また、基板上に積層される材料に応じて、密着性を向上させるために、超音波洗浄処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、UVオゾン処理などの表面処理を施してから使用することが好ましい。
【0085】
また、これらに薄膜トランジスタ(TFT)を形成して、アクティブマトリックス方式の有機EL素子用の基板とすることが可能である。本発明の有機EL素子基板とする場合には、TFT上に、平坦化層が形成してあるとともに、平坦化層上に有機EL素子の下部電極が設けられており、かつ、TFTと下部電極とが平坦化層に設けたコンタクトホールを介して電気接続してあることが好ましい。このように構成することにより、TFTと、有機EL素子との間で、優れた電気絶縁性を得ることができる。TFTや、その上方に構成される有機EL素子は支持体で支持される。支持体としては機械的強度や、寸法安定性に優れていることが好ましく、具体的には先に基板として述べた材料を用いることができる。
【0086】
第一電極を陽極とした場合、その材料としては、ITO(インジウムスズ複合酸化物)、IZO(インジウム亜鉛複合酸化物)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、亜鉛アルミニウム複合酸化物等の金属複合酸化物や金、白金、クロムなどの金属材料を単層または積層したものをいずれも使用できる。第一電極の形成方法は、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等の乾式成膜法を用いることができる。なお、低抵抗であること、溶剤耐性があること、また、ボトムミッション方式としたときには透明性が高いことなどからITOが好ましく使用できる。ITOはスパッタ法によりガラス基板上に形成され、フォトリソ法によりパターニングされて第一電極2となる。
【0087】
第一電極502を形成後、第一電極縁部を覆うようにして隔壁503が形成される。隔壁503は絶縁性を有する必要があり、感光性材料等を用いることができる。感光性材料としては、ポジ型であってもネガ型であってもよく、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、ポリイミド樹脂、およびシアノエチルプルラン等を用いることができる。また、隔壁形成材料として、SiO2、TiO2等を用いることもできる。隔壁形成材料が感光性材料の場合、形成材料溶液をスリットコート法やスピンコート法により全面コーティングしたあと、露光、現像といったフォトリソ法によりパターニングがおこなわれる。スピンコート法の場合、隔壁の高さは、スピンコートするときの回転数等の条件でコントロールできるが、1回のコーティングでは限界の高さがあり、それ以上高くするときは複数回スピンコートを繰り返す手法を用いる。感光性材料を用いてフォトリソ法により隔壁を形成する場合、その形状は露光条件や現像条件により制御可能である。例えば、ネガ型の感光性樹脂を塗布し、露光・現像した後、ポストベークして、隔壁を得るときに、隔壁端部の形状を順テーパー形状としたい場合には、この現像条件である現像液の種類、濃度、温度、あるいは現像時間を制御すればよい。現像条件を穏やかなものとすれば、隔壁端部は順テーパー形状となり、現像条件を過酷にすれば、隔壁端部は逆テーパー形状となる。また、隔壁形成材料がSiO2、TiO2の場合、スパッタリング法、CVD法といった乾式成膜法で形成可能である。この場合、隔壁のパターニングはマスクやフォトリソ法により行うことができる。
【0088】
第一電極502を形成後、第一電極縁部を覆うようにして隔壁503が形成される。隔壁503は絶縁性を有する必要があり、感光性材料等を用いることができる。隔壁503は、前述した金属状凸版のストライプラインに平行な第一隔壁503aと、それに垂直な第二隔壁503bから構成され、それぞれが交わることで格子形状となっている(図6(a))。
【0089】
格子状の隔壁の形成方法としては、従来と同様、基体上に無機膜を一様に形成し、レジストでマスキングした後、ドライエッチングを行う方法や、基体上に感光性樹脂を積層し、フォトリソ法により所定のパターンとする方法が挙げられる。必要に応じて撥水剤を添加したり、プラズマやUVを照射して形成後にインクに対する撥液性を付与することもできる。また、第一隔壁と第二隔壁の高さを変えて形成する場合には、例えば基体上にSiOなどの無機膜をCVD法で例えば0.5μm積層した後に、ドライエッチング法を用いて発光領域に対応して開口部を形成し、第二隔壁及び第一隔壁下部となる格子状の無機隔壁を形成し、次に、スリットコート法により感光性樹脂を例えば0.8μm積層し、露光・現像工程を経て第一隔壁下部の上方にストライプ状の第一隔壁上部を形成し、これを第一隔壁下部と合わせて第一隔壁とする方法がある。感光性樹脂に撥液性を付与してもよい。隔壁の好ましい高さは0.1μm〜10μmであり、第二隔壁が第一隔壁よりも低い方がより好ましく、この場合の第二隔壁の高さは0.1μm〜2μmの範囲が好ましい。また、第一隔壁の幅は、印刷用凸版の幅に応じて調整することが好ましく、印刷用金属凸版302の幅が第一隔壁間以下であることがより好ましい。
【0090】
感光性材料としては、ポジ型であってもネガ型であってもよく、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、ポリイミド樹脂、およびシアノエチルプルラン等を用いることができる。また、隔壁形成材料として、SiO2、TiO2等を用いることもできる。隔壁形成材料が感光性材料の場合、形成材料溶液をスリットコート法やスピンコート法により全面コーティングしたあと、露光、現像といったフォトリソ法によりパターニングがおこなわれる。スピンコート法の場合、隔壁の高さは、スピンコートするときの回転数等の条件でコントロールできるが、1回のコーティングでは限界の高さがあり、それ以上高くするときは複数回スピンコートを繰り返す手法を用いる。感光性材料を用いてフォトリソ法により隔壁を形成する場合、その形状は露光条件や現像条件により制御可能である。例えば、ネガ型の感光性樹脂を塗布し、露光・現像した後、ポストベークして、隔壁を得るときに、隔壁端部の形状を順テーパー形状としたい場合には、この現像条件である現像液の種類、濃度、温度、あるいは現像時間を制御すればよい。現像条件を穏やかなものとすれば、隔壁端部は順テーパー形状となり、現像条件を過酷にすれば、隔壁端部は逆テーパー形状となる。また、隔壁形成材料がSiO2、TiO2の場合、スパッタリング法、CVD法といった乾式成膜法で形成可能である。この場合、隔壁のパターニングはマスクやフォトリソ法により行うことができる。
【0091】
次に、有機発光層及び発光補助層からなる有機発光媒体層を形成する。電極間に挟まれる有機発光媒体層としては、有機発光層単独から構成されたものでもよいし、有機発光層と正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層といった発光を補助するための発光補助層との積層構造としてもよい。なお、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層は必要に応じて適宜選択される。
【0092】
そして、本発明は有機発光層や正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層といった発光補助層からなる有機発光媒体層のうち少なくとも1層を、有機発光媒体層材料を溶媒に溶解または分散させたインキを用い、本発明の印刷用凸版を用いた凸版印刷法により、前記第一電極の上方に印刷して形成する際に適用することができる。以降、本発明において、有機発光材料を溶媒に溶解、または分散させた有機発光インキを用いた場合について示す。
【0093】
有機発光層は電流を流すことにより発光する層である。有機発光層の形成する有機発光材料としては、9,10−ジアリールアントラセン誘導体、ピレン、コロネン、ペリレン、ルブレン、1,1,4,4−テトラフェニルブタジエン、トリス(8−キノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノラート)アルミニウム錯体、ビス(8−キノラート)亜鉛錯体、トリス(4−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−5−シアノ−8−キノラート)アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、トリス(8−キノリノラート)スカンジウム錯体、ビス[8−(パラ−トシル)アミノキノリン]亜鉛錯体及びカドミウム錯体、1,2,3,4−テトラフェニルシクロペンタジエン、ポリ−2,5−ジヘプチルオキシ−パラ−フェニレンビニレンなどの低分子系発光材料が使用できる。
【0094】
また、クマリン系蛍光体、ペリレン系蛍光体、ピラン系蛍光体、アンスロン系蛍光体、ポリフィリン系蛍光体、キナクリドン系蛍光体、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系蛍光体、ナフタルイミド系蛍光体、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系蛍光体等、Ir錯体等の燐光性発光体などの低分子系発光材料を、高分子中に分散させたものが使用できる。高分子としてはポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等が使用できる。
【0095】
また、ポリ(2−デシルオキシ−1,4−フェニレン)(DO−PPP)やポリ[2,5−ビス−[2−(N,N,N−トリエチルアンモニウム)エトキシ]−1,4−フェニル−アルト−1,4−フェニルレン]ジブロマイドなどのPPP誘導体、ポリ[2−(2’−エチルヘキシルオキシ)−5−メトキシ−1,4−フェニレンビニレン](MEH−PPV)、ポリ[5−メトキシ−(2−プロパノキシサルフォニド)−1,4−フェニレンビニレン](MPS−PPV)、ポリ[2,5−ビス−(ヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン−(1−シアノビニレン)](CN−PPV)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)(PDAF)、ポリスピロフルオレンなどの高分子発光材料であってもよい。PPV前駆体、PPP前駆体などの高分子前駆体が挙げられる。また、その他既存の発光材料を用いることもできる。
【0096】
正孔輸送層を形成する正孔輸送材料としては、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン等の金属フタロシアニン類及び無金属フタロシアニン類、キナクリドン化合物、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン等の芳香族アミン系低分子正孔注入輸送材料や、ポリアニ
リン、ポリチオフェン、ポリビニルカルバゾール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物などの高分子正孔輸送材料、チオフェンオリゴマー材料、その他既存の正孔輸送材料の中から選ぶことができる。
【0097】
また、電子輸送層を形成する電子輸送材料としては、2−(4−ビフィニルイル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、オキサジアゾール誘導体やビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリノラート)ベリリウム錯体、トリアゾール化合物等を用いることができる。
【0098】
有機発光材料を溶解または分散する溶媒としては、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、2−メチル−(t−ブチル)ベンゼン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、ペンチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、1,3,5−トリ−イソプロピルベンゼン等を単独又は混合して用いることができる。また、有機発光インキには、必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤等が添加されてもよい。
【0099】
正孔輸送材料、電子輸送材料を溶解または分散させる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、水等の単独またはこれらの混合溶剤などが挙げられる。特に、正孔輸送材料をインキ化する場合には水またはアルコール類が好適である。
【0100】
有機発光媒体層は湿式成膜法により形成される。なお、これらの層が積層構造から構成される場合には、その各層の全てを湿式成膜法により形成する必要はない。湿式成膜法としては、スピンコート法、ダイコート法、ディップコート法、吐出コート法、プレコート法、ロールコート法、バーコート法等の塗布法と、凸版印刷法、インクジェット印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法等の印刷法が挙げられる。特に、RGB三色の有機発光層をパターン形成する場合、印刷法によって画素部に選択的に形成することができ、カラー表示のできる有機EL素子を製造することが可能となる。有機発光媒体層の膜厚は、単層又は積層により形成する場合においても1000nm以下であり、好ましくは50nm〜150nmである。
【0101】
次に、第二電極を形成する。第二電極を陰極とした場合その材料としては電子注入効率の高い物質を用いる。具体的にはMg、Al、Yb等の金属単体を用いたり、発光媒体と接する界面にLiや酸化Li、LiF等の化合物を1nm程度挟んで、安定性・導電性の高いAlやCuを積層して用いる。または電子注入効率と安定性を両立させるため、低仕事関数なLi、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb等の金属1種以上と、安定なAg、Al、Cu等の金属元素との合金系が用いられる。具体的にはMgAg、AlLi,CuLi等の合金が使用できる。また、トップエミッション方式の有機EL素子とする場合は、陰極は透明性を有する必要があり、例えば、これら金属とITO等の透明導電層の組み合わせによる透明化が可能となる。
【0102】
第二電極の形成方法は、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等の乾式成膜法を用いることができる。また、第二電極をパターンとする必要がある場合には、マスク等によりパターニングすることができる。第二電極の厚さは10nm〜1000nmが好ましい。なお、本発明では第一の電極を陰極、第二の電極を陽極とすることも可能である。
【0103】
有機EL素子としては電極間に有機発光層を挟み、電流を流すことで発光させることが可能であるが、有機発光材料や発光補助層形成材料、電極形成材料の一部は大気中の水分や酸素によって容易に劣化してしまうため通常は外部と遮断するための封止体を設ける。
【0104】
封止体は、例えば第一電極、有機発光層、発光補助層、第二電極が形成された基板に対して、凹部を有するガラスキャップ、金属キャップを用いて、第一電極、有機発光媒体層、第二電極上空に凹部があたるようにして、その周辺部についてキャップと基板を接着剤を介して接着させることにより封止がおこなわれる。
【0105】
また、封止体は、例えば第一電極、有機発光層、発光補助層、第二電極が形成された基板に対して、封止材上に樹脂層を設け、該樹脂層により封止材と基板を貼りあわせることによりおこなうことも可能である。
【0106】
このとき封止材としては、水分や酸素の透過性が低い基材である必要がある。また、材料の一例として、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素等のセラミックス、無アルカリガラス、アルカリガラス等のガラス、石英、アルミニウムやステンレスなどの金属箔、耐湿性フィルムなどを挙げることができる。耐湿性フィルムの例として、プラスチック基材の両面にSiOxをCVD法で形成したフィルムや、透過性の小さいフィルムと吸水性のあるフィルムまたは吸水剤を塗布した重合体フィルムなどがあり、耐湿性フィルムの水蒸気透
過率は、10−6g/m2/day以下であることが好ましい。
【0107】
樹脂層としては、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂などからなる光硬化型接着性樹脂、熱硬化型接着性樹脂、2液硬化型接着性樹脂や、エチレンエチルアクリレート(EEA)ポリマー等のアクリル系樹脂、エチレンビニルアセテート(EVA)等のビニル系樹脂、ポリアミド、合成ゴム等の熱可塑性樹脂や、ポリエチレンやポリプロピレンの酸変性物などの熱可塑性接着性樹脂を挙げることができる。樹脂層を封止材の上に形成する方法の一例として、溶剤溶液法、押出ラミ法、溶融・ホットメルト法、カレンダー法、ノズル塗布法、スクリーン印刷法、真空ラミネート法、熱ロールラミネート法などを挙げることができる。必要に応じて吸湿性や吸酸素性を有する材料を含有させることもできる。封止材上に形成する樹脂層の厚みは、封止する有機EL素子の大きさや形状により任意に決定されるが、5〜500μm程度が望ましい。
【0108】
第一電極、有機発光層、発光補助層、第二電極が形成された基板と封止体の貼り合わせは封止室でおこなわれる。封止体を、封止材と樹脂層の2層構造とし、樹脂層に熱可塑性樹脂を使用した場合は、加熱したロールで圧着のみ行うことが好ましい。熱硬化型接着樹脂を使用した場合は、加熱したロールで圧着した後、さらに硬化温度で加熱硬化を行うことが好ましい。光硬化性接着樹脂を使用した場合は、ロールで圧着した後、さらに光を照射することで硬化を行うことができる。なお、ここでは封止材上に樹脂層を形成したが、基板上に樹脂層を形成して封止材と貼りあわせることも可能である。
【0109】
封止体を用いて封止を行う前やその代わりに、例えばパッシベーション膜として、CVD法を用いて、窒化珪素膜を150nm成膜するなど、無機薄膜による封止体とすることも可能であり、また、これらを組み合わせることも可能である。
【0110】
前述したように、有機発光媒体層のうち、任意のものを本発明の印刷用凸版を用いて形成することができる。また、形成方法としては印刷物の製造方法の項で述べた工程を用いることができる。本発明の印刷用凸版を用いることで、版面の凹部からインキが溢れたり、隣り合う頭頂部に供給されたインキがつながったりなどして有機発光媒体層各層のインキが混色してしまい短絡したり、発光ムラが発生したりするようなことがなく、印刷不良のない精細な有機発光媒体層の形成が可能であり、ひいては高精細な有機EL素子の製造が可能となる。
【実施例】
【0111】
以下に、実施例および比較例について示す。
【0112】
<実施例1>
(被印刷体の作製)
ガラス基板上に、スパッタ法を用いてITO膜を形成し、フォトリソ法と酸溶液によるエッチングでITO膜をストライプ状にパターニングした。陽極であるITOのラインパターンは、線幅25μm、スペース25μmで、ラインが192ラインで形成されるパターンした。
【0113】
次に、スリットコート法を用いて感光性ポリイミド樹脂を塗工した後にフォトリソグラフィー法を用いて、陽極ラインの端部を被覆するようにパターニングし、第一隔壁(3μm)と第二隔壁(1μm)からなる格子状隔壁を形成し、被印刷体を作製した。
【0114】
(印刷用凸版の作製)
基材として0.3mm厚のインバー材を用い、一方の面に感光性樹脂としてアクリル系ネガ型のドライフィルムをラミネートした(図2(1a))。次に、フォトリソ法を用いて、被印刷体のITOラインパターンのネガパターンとなる凸状ストライプパターンを形成した(図2(1b))。次にこの感光性樹脂の凸状パターンの凹部に、電鋳法を用いてニッケルを50μmの高さまで形成した(図2(1c))。次に、水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、感光性樹脂パターンを剥離することにより、凸状金属ストライプのパターンを作製した(図2(1d))。
【0115】
次に、図3(b)のように凸状金属パターンを覆うように、ロールコート法を用いて、ポリイミド樹脂を塗布し、フォトリソ法を用いて、凸状金属パターンの頭頂部に、ポリイミドのパターンを形成した(図3(1c))。図3(b)〜(1c)に示される工程で、凸状金属ストライプの頭頂部にドット状にポリイミド樹脂を形成した後に、ポリイミド樹脂が形成されていない金属が露出した部分に、電着法を用いて、撥水層としてPTFE粒子が分散したアクリル樹脂を形成し、本発明の高精細印刷用凸版とした(図3(1d))。
【0116】
(有機EL素子の作製)
上記高精細印刷用凸版を枚葉式の印刷機のシリンダーに固定した。正孔輸送層の材料として、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物を水系の溶媒に分散させたインキを、印刷用凸版の樹脂層の表面にインキングし、これを被印刷体に転写させ、192ライン一括でストライプ状(転写される領域はドット状の樹脂層の部分である)に印刷した。印刷後に200℃で30分乾燥させた。この時形成した正孔輸送パターンの乾燥後の膜厚は50nmであった。次に、ポリフルオレン系のRGB発光インキを、RGB3色それぞれ別の印刷版の所定位置にインキングし、これを正孔輸送層の上に転写させ、印刷した。窒素雰囲気下で130℃15分加熱を行った。この時形成した発光層の膜厚は80nmであった。次に、発光層上に第二電極として、第一電極と垂直方向にラインを形成した。陰極材料ついては、バリウム(5nm)とアルミニウム(150nm)の積層膜を真空蒸着法で形成し、最後にガラスキャップを用い封止をおこない本発明の有機EL素子を作製した。
【0117】
この有機EL素子の発光特性を見たところ、パターン箇所内全面においてRGBラインそれぞれに5〜7Vの電流電圧を印加することにより1000cd/mの均一な白発光が得られた。また、凸版印刷法で形成した印刷ラインが、隣接ラインと接することがなかったため、ライン間のリークや色の混色が生じず、良好な192×192ドットマトリクスディスプレイを作製できた。
【0118】
<実施例2>
実施例2として、エッチング法を用いて印刷用凸版の作製を行った。
基材として0.3mm厚のインバー材を用い、一方の面に感光性樹脂としてアクリル系ネガ型のドライフィルムをラミネートした(図2(2a)。次に、フォトリソ法を用いて、被印刷体のITOラインパターンのポジパターンとなるストライプ凸状パターンを形成した(図2(2b))。次にこの感光性樹脂の凸状パターンの凹部であるインバー材を、エッチング法を用いて除去し凹部205を形成した(図2(2c))。次に、水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、感光性樹脂パターンを剥離することにより、凸状金属パターンを作製した(図2(2d))。
【0119】
次に、図3(b)のように凸状金属パターンを覆うように、ロールコート法を用いて、ポリイミド樹脂を塗布し、フォトリソ法を用いて、凸状金属パターンの頭頂部に、ポリイミドのパターンを形成した(図3(1c))。最後に、ポリイミド樹脂が形成されていない金属が露出した部分に、電着法を用いて、撥インキ層として、PTFE粒子が分散したアクリル樹脂を形成し、本発明の高精細印刷用凸版とした(図3(1d))。
【0120】
この印刷用凸版を用いて、実施例1と同様の有機EL素子を作製した。
その有機EL素子の発光特性を見たところ、パターン箇所内全面において5Vで1000cd/m2の均一な発光が得られた。また、凸版印刷法で形成した正孔輸送層が隣接ラインと接することがなかったため、ライン間のリークが生じず、良好な192×192ドットマトリクスディスプレイを作製できた。
【0121】
<比較例1>
比較例1として、水系インキの印刷に用いることができる市販のフレキソ版(旭化成AWP版)を用いて、L/S=25/25μmの印刷用凸版を形成した。その結果、凸版の版深の深さは5μm程度であった。この版を用いた以外は実施例1と同様の製造工程で、有機EL素子を作製した。その結果、正孔輸送インキのほとんどが印刷凸版上ではなく凹版内に流れこんでしまいこのインキが被印刷体に転写されたために、パターン形成ができず、さらに192ライン全てにおいて短絡箇所が生じていた。また正孔輸送層の膜厚均一性は±30%と不均一であった。5Vで100〜500cd/m2程度であり、発光は不均一で発光ムラは±30%以上であった。
【0122】
<比較例2>
比較例2として、基材上にアクリル系ネガ型感光性樹脂をスリットコート法を用いて塗布し、第一感光性樹脂膜とした以外は実施例1と同様の工程で印刷用凸版を作製した。これにより金属基材上に、凸状金属パターンとその頭頂部の樹脂層からなり、版深が20μm、パターン幅が25μmの印刷用凸版を作製できた。
【0123】
有機EL素子についても実施例1と同様の工程で作製した。その結果、正孔輸送インキが凹版内に流れこんでしまい、このインキが被印刷体に転写されたためにラインの所々で印刷のパターンずれ及び短絡箇所が生じていた。5Vで300〜600cd/m2程度であり、発光は不均一で発光ムラは±30%以上であった。
【0124】
<比較例3>
比較例3として、0.3mm厚のインバー材上に第一感光性樹脂としてアクリル系ネガ型のドライフィルム(日立化成HM4056:56μm厚)をラミネートした。フォトリソ法を用いて、被印刷体のITOラインパターンと同じパターンの凸状ストライプパターンを形成し、版深56μm、パターン幅が25μmの印刷用凸版を作製した。実施例1と同様の工程で有機ELを作製したところ、版の著しい変形及び損傷によって、全てのラインが印刷不良となり、ほとんどのパターンは有機EL素子として形成することができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】は本発明の印刷用凸版の一例の断面図である。
【図2】は本発明の印刷用凸版の製造方法の説明断面図である。
【図3】は本発明の印刷用凸版の製造方法の説明断面図である。
【図4】は本発明の印刷物の製造に用いられる凸版印刷装置の概略図である。
【図5】は本発明により製造される有機EL素子の一例の断面図である。
【図6】は被印刷体上の隔壁概略図及び本発明の印刷物の製造方法の説明図である。
【符号の説明】
【0126】
100:基材
101:樹脂層
102:撥インキ層
103:金属凸部
104:版上のインキ
200:基材
201:感光性樹脂層
202:感光性樹脂パターン
203:金属
204:金属パターン
205:金属凹部
300:基材
301:金属パターン
302:感光性樹脂膜
303:樹脂層
304:撥インキ層
400:ステージ
401:被印刷体
402:印刷用凸版
403:版銅
404:アニロックスロール
405:インキ補充装置
406:ドクター
407:インキ
408:インキパターン
501:基板
502:第一電極
503:隔壁
503a:第一隔壁
503b:第二隔壁
504:正孔輸送層
505:有機発光層
506:第二電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の凸状金属ストライプのパターンと、
前記凸状金属ストライプの頭頂部の転写領域を覆う樹脂層のパターンと、
を有し、前記樹脂層のパターンがドットパターンであることを特徴とする印刷用凸版。
【請求項2】
前記凸状金属ストライプの頭頂部の転写領域以外の部分に撥インキ層を有することを特徴とする請求項1に記載の印刷用凸版。
【請求項3】
前記凸状金属ストライプの側面部が撥インキ層によって覆われていることを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷用凸版。
【請求項4】
前記基材表面の露出部が撥インキ層で覆われていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の印刷用凸版。
【請求項5】
インキ供給体から請求項1乃至4いずれかに記載の印刷用凸版の前記転写領域にインキを供給する工程と、該インキを被印刷体に転写し、インキパターンを形成する工程とを少なくとも含むことを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項6】
平行に並んだ第一隔壁のラインと、該第一隔壁に直交し平行に並んだ第二隔壁のラインとからなる隔壁のパターンを有する被印刷体に、前記樹脂層のパターンと前記隔壁パターンの開口部とを対応させてインキパターンを形成することを特徴とする請求項5に記載の印刷物の製造方法。
【請求項7】
前記第一隔壁の高さが前記第二隔壁の高さよりも高く、前記凸状金属ストライプのパターンが、第一隔壁のパターンと並行するようにインキパターンを転写することを特徴とする請求項6に記載の印刷物の製造方法。
【請求項8】
少なくとも第一電極、一層以上の有機発光媒体層、第二電極からなる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、
有機発光媒体層のうち少なくとも一層を請求項5乃至7のいずれかに記載の印刷物の製造方法を用いて印刷形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項9】
前記基材上に凸状金属ストライプのパターンを形成する工程と、
前記凸状金属ストライプの頭頂部の転写領域に樹脂層のドットパターンを形成する工程と、
を少なくとも有することを特徴とする印刷用凸版の製造方法。
【請求項10】
前記凸状金属ストライプのパターンが、電鋳法を用いて形成することを特徴とする請求項9に記載の印刷用凸版の製造方法。
【請求項11】
前記凸状金属ストライプのパターンが、エッチング法を用いて形成することを特徴とする請求項9に記載の印刷用凸版の製造方法
【請求項12】
前記樹脂層をフォトリソ法により形成することを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の印刷用凸版の製造方法。
【請求項13】
前記樹脂層を電着法により形成することを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の印刷用凸版の製造方法。
【請求項14】
前記凸状金属ストライプの頭頂部の転写領域以外の部分に撥インキ層を形成する工程を有することを特徴とする請求項9乃至13のいずれかに印刷用凸版の製造方法。
【請求項15】
撥インキ層が、電着法を用いて形成されていることを特徴とする請求項14に記載の印刷用凸版の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−198519(P2008−198519A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33371(P2007−33371)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】