印刷用前処理装置
【課題】枚葉用紙の両面に処理液を塗布する際の塗布均一性を確保し、片面印刷時に不要な部分への処理液の塗布を防いで処理液の無駄を無くす。
【解決手段】印刷用前処理装置1は、所定の間隔をおいて配置され、ソレノイド12で移動して間に用紙13を挟んで回動する一対の塗布ローラ2,2と、塗布ローラに処理液を供給する供給手段7と、一対の塗布ローラの間に供給される被印刷体を検出するセンサA,Bと、センサによる用紙の検出に応じて塗布ローラを移動して用紙を挟んで回動させることにより用紙に処理液を塗布する制御を行なう制御手段25とを有している。搬送される用紙と用紙の間では塗布ローラが接触せず、用紙にのみ処理液が塗布される。
【解決手段】印刷用前処理装置1は、所定の間隔をおいて配置され、ソレノイド12で移動して間に用紙13を挟んで回動する一対の塗布ローラ2,2と、塗布ローラに処理液を供給する供給手段7と、一対の塗布ローラの間に供給される被印刷体を検出するセンサA,Bと、センサによる用紙の検出に応じて塗布ローラを移動して用紙を挟んで回動させることにより用紙に処理液を塗布する制御を行なう制御手段25とを有している。搬送される用紙と用紙の間では塗布ローラが接触せず、用紙にのみ処理液が塗布される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用紙等の枚葉状の被印刷体に印刷用前処理液をローラで塗布する印刷用前処理装置に係り、特に両面塗布にも片面塗布にも対応でき、塗布が均一であるとともに、処理液の無駄がない印刷用前処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷用紙等に印刷用前処理液を塗布する印刷用前処理装置では、ロール紙から供給される連続帯状の用紙に印刷用前処理液(以下、単に処理液とも呼ぶ)を塗布するタイプのものが多く提案されているが、個人ユースとしては、市販の規格サイズの用紙のような枚葉状(シート状)の印刷用紙に処理液を塗布するタイプのものが適している。このような枚葉状の印刷用紙を対象とする印刷用前処理装置としては、例えば下記特許文献1に示すような発明が知られている。
【0003】
特許文献1に開示された液体塗布装置は、液体保持部材に接触して処理液の供給を受ける塗布ローラと、塗布ローラに対向して設けられて塗布ローラに対して付勢されたカウンターローラとが常時接触しており、両ローラの間に供給された記録媒体を挟持搬送しながら記録媒体の片面に処理液を塗布する装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】再表2007−018274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に記載の発明によれば、塗布ローラとカウンターローラが常時接触しているため、塗布ローラからカウンターローラに処理液が転移してしまい、塗布ローラから用紙の表側に塗布される処理液が不足し又は不均一になったり、また処理液を塗布する必要のない用紙の裏面にまで処理液が塗布されてしまう等の不都合が生じる場合があった。
【0006】
このように、用紙搬送を兼ねた対向する一対のローラを塗布ローラとして利用し、枚葉用紙の表面に印刷用前処理液を塗布するタイプの装置において、一対の塗布ローラを常時接触させた状態で動作させることにより塗布を行なう場合には、用紙の両面に塗布を行なう構成をとる場合でも、また片面だけに塗布を行なう構成をとる場合でも、いずれも塗布時の均一性等に何らかの問題が生じていた。
【0007】
すなわち、用紙両面の塗布を行なう場合には、排出した用紙を揃えやすいようにタイミングを図る等の排紙処理上の都合を考慮し、枚葉用紙の搬送にあたっては用紙間に一定の休止間隔乃至時間をとる必要があり、従って一対の塗布ローラを通過していく用紙と用紙の間にも間隔ができる。
【0008】
従って、両面塗布の場合には、用紙を挟持していない状態では両塗布ローラの各処理液が混じってしまう。両塗布ローラの処理液が異なるものであれば、両液の混合は当然問題である。また、両液が同一種類の処理液であったとしても、各塗布ローラの処理液供給手段における処理液の保管・管理状態は必ずしも同一であるとは限らず、各塗布ローラにおける処理液の状態(粘度、各成分の濃度等)が同一でない場合もありうる。従って、両塗布ローラが一旦接触して処理液が混じり合うと、用紙の両面に同一の状態で処理液が塗布されるとは限らず、用紙の両面の塗布の均一性が損なわれる場合があった。
【0009】
また、片面塗布の場合には、両塗布ローラの一方に処理液を塗布し、他方には塗布しない状態で用紙を挟持搬送するが、搬送される前後の用紙と用紙の隙間で処理液が塗布された一方の塗布ローラから、処理液を塗布されていない他方の塗布ローラに処理液が転写してしまうため、本来処理液を塗布しない用紙の片方の面に処理液が不均一に塗布されてしまうという不都合が生じる。
【0010】
本発明は、以上説明したような従来の技術における課題に鑑みてなされたものであり、枚葉用紙に対する処理液の塗布において、両面塗布時の処理液の塗布均一性を確保するとともに、片面印刷時に不要な部分へ処理液が塗布されることを防いで処理液の無駄を無くすことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載された印刷用前処理装置は、
枚葉状の被印刷体に印刷用前処理液を塗布する印刷用前処理装置において、
所定の間隔をおいて配置され、少なくとも一方が移動することにより他方との間に被印刷体を挟んで回動する一対の塗布ローラと、
前記一対の塗布ローラの少なくとも一方に印刷用前処理液を供給する供給手段と、
前記一対の塗布ローラの間に供給される被印刷体を検出するセンサと、
前記センサが被印刷体を検出した場合に前記一対の塗布ローラの少なくとも一方を移動させて他方との間に被印刷体を挟んだ状態で回動させることにより被印刷体に印刷用前処理液を塗布するように制御する制御手段と、
を有することを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載された印刷用前処理装置は、請求項1記載の印刷用前処理装置において、
前記一対の塗布ローラの回動軸方向についての幅が、被印刷体の幅よりも小さいことを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載された印刷用前処理装置は、請求項2記載の印刷用前処理装置において、
被印刷体の搬送方向について前記一対の塗布ローラの上流及び下流にそれぞれ第1の搬送ローラ及び第2の搬送ローラが設けられており、
前記第1の搬送ローラの搬送速度は前記一対の塗布ローラの搬送速度以下であり、前記第2の搬送ローラの搬送速度は前記一対の塗布ローラの搬送速度以上であり、
かつ前記第2の搬送ローラの搬送力は前記一対の塗布ローラの搬送力よりも小さいことを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載された印刷用前処理装置は、請求項3に記載の印刷用前処理装置において、
前記第1の搬送ローラの上流側において、被印刷体の搬送方向に沿って一対の搬送ローラと一対の重ねローラが並んで配置されており、
前記一対の搬送ローラによる被印刷体の挟持位置での接線方向と前記一対の重ねローラによる被印刷体の挟持位置での接線方向が所定角度で交差しており、
前記一対の重ねローラで挟持されている先行の被印刷体の後端に対して一対の搬送ローラで搬送された後行の被印刷体の前端を重ねて搬送することを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載された印刷用前処理装置は、請求項4記載の印刷用前処理装置において、
前記供給手段が、印刷用前処理液を収納する収納部と、回転する前記塗布ローラに接触して印刷用前処理液を塗布する塗布部と、前記収納部に収納されている印刷用前処理液を前記塗布部に供給する供給部と、回転する前記塗布ローラに接触して清掃を行う清掃部とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載された印刷用前処理装置によれば、一対の塗布ローラは所定の間隔だけ離れて配置されており、一対の塗布ローラの間に被印刷体が入ってくることをセンサが検出した時に、制御手段が塗布ローラの少なくとも一方を適当なタイミングで移動させることにより、他方の塗布ローラとの間に被印刷体を挟む。この状態で塗布ローラを回動させることにより被印刷体を搬送し、その表面に印刷用前処理液を塗布する。このように、一対の塗布ローラは互いに直接接触することがないので、印刷用前処理液が互いに混じり合ったり、一方から他方に不必要に転移したりすることが防止される。
【0017】
請求項2に記載された印刷用前処理装置によれば、一対の塗布ローラの回動軸方向についての幅が被印刷体の幅よりも小さいので、一対の塗布ローラが被印刷体の幅方向の両縁よりも内側に来るように配置すれば、一対の塗布ローラで被印刷体を挟んだ時に、一対の塗布ローラが互いに接触することがない。請求項1の発明による効果がより確実に達成される。
【0018】
請求項3に記載された印刷用前処理装置によれば、被印刷体の搬送方向に沿って順に配置された第1の搬送ローラ、一対の塗布ローラ及び第2の搬送ローラの各速度は、順に大きくなるように設定されており、さらに第2の搬送ローラの搬送力は一対の塗布ローラの搬送力よりも小さいので、被印刷体を搬送しながら印刷用前処理液を塗布する工程で被印刷体は過剰に上流に向けて引っ張られることなく、弛むこともないので、塗布を適正に行なうことができる。
【0019】
請求項4に記載された印刷用前処理装置によれば、先行の被印刷体を一対の重ねローラで挟持した状態で搬送しつつ、後行の被印刷体を搬送ローラでより速く搬送し、重ねローラで搬送されている先行の被印刷体の後端に対して後行の被印刷体の前端を重ねた状態として一対の塗布ローラに送り込むことができる。従って、被印刷体を間に挟んで一対の塗布ローラを当接させた状態を保持しながら、連続して搬送されてくる複数枚の被印刷体に印刷用前処理液を連続的に塗布することができるので、枚葉状の被印刷体であっても、ロール紙に印刷用前処理液を連続的に塗布するのと同様に塗布作業を連続的に実行することができる。
【0020】
請求項5に記載された印刷用前処理装置によれば、印刷用前処理液を被印刷体に塗布する供給手段を、収納部と塗布部と供給部と清掃部からなるユニット構造としたので、構成が単純化でき製造コストを低減化できる。また、液の漏れや変質が少なく、保管、交換その他のメンテナンス作業が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態の全体斜視図である。
【図2】第1実施形態の一部を断面として示した正面図である。
【図3】第1実施形態の制御ブロック図である。
【図4】第1実施形態における制御タイミング図である。
【図5】第1実施形態における変形例の制御タイミング図である。
【図6】第2実施形態の全体斜視図である。
【図7】第2実施形態の一部を断面として示した正面図である。
【図8】第2実施形態の作用を示す第1の連続動作図である。
【図9】第2実施形態の作用を示す第2の連続動作図である。
【図10】第2実施形態の作用を示す第3の連続動作図である。
【図11】第3実施形態の要部を示す正面図において、キャッピング状態にある供給手段を断面で示した図である。
【図12】第3実施形態における供給手段のリンク機構を示す図である。
【図13】第3実施形態における供給手段等を図11とは直交する面で切断して示す断面図である。
【図14】第3実施形態において用紙塗布状態にある供給手段を図11と同様の切断面で示す断面図である。
【図15】第3実施形態においてクリーニング状態にある供給手段を図11と同様の切断面で示す断面図である。
【図16】第3実施形態においてキャッピング保管時にある供給手段を図11と同様の切断面で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施形態1乃至3を説明する。
これらの実施形態は、枚葉状の被印刷体である用紙に印刷用前処理液(以下、単に処理液とも称する。)を塗布する印刷用前処理装置に関するものである。本実施形態で使用される処理液は、例えばインク等の色材を不溶化又は凝集させる成分を含んだ処理液であって、用紙にこれを塗布すると、滲み、濃度、色調や裏写り等といった画像形成品位が向上し、又は耐水性、耐候性といった画像堅牢性が向上する等の効果が得られる。
【0023】
1.第1実施形態(図1〜図5)
図1又は図2に示すように、この印刷用前処理装置1は、ユニット化された一対の塗布ローラ2,2を備えている。ユニットの本体であるフレーム3には、弾性部材4を介して支持アーム5が取り付けられている。この支持アーム5には、ラジアルモータ6と塗布ローラ2が取り付けられており、両者はベルトを介して連動連結されている。また、フレーム3内には処理液の供給手段77が設けられている。この供給手段7は、処理液を収納する箱型の収納部8と、収納部8の処理液10と塗布ローラ2に回動自在に接触している前塗布ローラ9を備えている。塗布ローラ2がラジアルモータ6によって駆動されれば、前塗布ローラ9は塗布ローラ2に連動して回転し、収納部8の処理液10を汲み上げて塗布ローラ2に塗布する。
【0024】
図示はしないが、収納部8に処理液有無センサを設けて処理液10の量を検知できるようにしておき、図1中に示すようにユニット外に設置した処理液供給機構11から収納部8に処理液10を補充できるようにしておいてもよい。このようにすれば、処理液有無センサが収納部8内の処理液10が規定量以下になったことを検出した場合に、後述する制御手段25の制御により、処理液供給機構から収納部8に処理液10を補充することができる。
【0025】
塗布ローラ2は、その周面に付着している処理液10を用紙の表面に転移させる手段であり、その回動軸方向についての幅は用紙の幅よりも小さくなっている。従って、用紙を一対の塗布ローラ2,2で挟んで搬送する際に、両者の相対的な配置を調整すれば、塗布ローラ2の両端が用紙の両端よりも内側にきて、用紙の外に突出しないようにすることができる。このようにすれば、塗布時に一対の塗布ローラ2,2同士が接触せず、両塗布ローラ2,2の処理液10が互いに混じり合うことを避けることができる。
【0026】
図2に示すように、このような構造を有する塗布ローラ2の各ユニットは、所定のホームポジションにおいて、一対の塗布ローラ2,2が所定の間隔をおいて互いに平行な姿勢で対峙するように配置されている。一対の塗布ローラ2,2のホームポジションにおける間隔は、応答性を考慮して例えば数ミリ程度以下とする。各ユニットは、塗布ローラ2の平行状態を保持しながら水平方向に移動可能に支持されており、それぞれ駆動手段としてのソレノイド12によって他方に対して接近し、又は離れる方向に移動することができる。
【0027】
用紙13の両面に処理液10を塗布する場合には、両塗布ローラ2,2を回動させながら、両塗布ローラ2,2の間に用紙13が供給されたタイミングでソレノイド12,12を駆動し、両塗布ローラ2,2を互いに接近する方向に移動させて用紙13を挟持する。用紙13は一対の塗布ローラ2,2で挟まれて搬送される。各塗布ローラ2の表面にある処理液10は用紙13の両面にそれぞれ塗布される。又は、一方の塗布ローラ2の位置を用紙13が搬入されてくる位置に近接して固定しておき、両塗布ローラ2,2を回動させながら、用紙13の供給にタイミングを合わせて他方の塗布ローラ2だけをソレノイド12で駆動し、固定された一方の塗布ローラ2との協働によって用紙13を挟持搬送しても、用紙13の両面に処理液10を塗布できる。
【0028】
また、用紙13の片面に処理液10を塗布する場合には、一方のユニットの塗布ローラ2の位置を固定し、その供給手段7を除去するか又はその供給手段7の前塗布ローラ9を移動させて塗布ローラ2から離す等、処理液10の供給機能を一時的に解除しておく。両塗布ローラ2,2を回動させながら、用紙13の供給にタイミングを合わせて他方の塗布ローラ2だけをソレノイド12で駆動し、固定された一方の塗布ローラ2との協働で用紙13を挟持搬送すれば、用紙13の片面だけに処理液10を塗布できる。
なお、ユニット化された塗布ローラ22のフレーム3にはクリーニングローラ14が回動可能に設けられている。図示しない移動手段によって塗布ローラ2を移動させ、クリーニングローラ14に接触させて回動させれば、塗布ローラ2の周面に付着した汚れ・異物等を除去することができる。
【0029】
図1及び図2に示すように、塗布ローラ2の上流側には、給紙手段15が設けられている。給紙手段15は、用紙13が積載された給紙台16と、給紙台16上の用紙13を一枚ずつ取り出すピックアップローラ17を備えている。給紙台16には、図示しない用紙センサが設けられ、用紙13の有無を検知して後述する制御手段25に信号を送ることができる。ピックアップローラ17と塗布ローラ2の間には、用紙13の搬送経路18が設けられている。搬送経路18は、給紙台16から水平方向に延設され、その後カーブを経て垂直方向に延設されて塗布ローラ2に至っている。この搬送経路18には、上流から順に、用紙13を搬送する搬送ローラとして、水平部分に第1タイミングローラR1が対で設けられ、垂直部分に第2タイミングローラR2が対で設けられている。
【0030】
図1及び図2に示すように、塗布ローラ2の下流側には、排紙手段としての排紙台21が設けられている。排紙台21は、処理液10が塗布された処理済みの用紙13を受け入れて積載させる手段である。排紙台21には、図示しない排紙センサが設けられ、排紙台21上に排出された用紙13を検知して後述する制御手段25に信号を送ることができる。塗布ローラ2と排紙台21の間には、用紙13の搬送経路18が設けられている。搬送経路18は、塗布ローラ2から垂直方向に延設され、その後カーブを経て水平方向に向けられて排紙台21に至っている。この搬送経路18には、上流から順に、用紙13を搬送する搬送ローラとして、垂直部分に第3タイミングローラR3が対で設けられ、水平部分に第4タイミングローラR4が対で設けられている。
【0031】
図2において、塗布ローラ2の上流側の直近にある第2タイミングローラR2と、塗布ローラ2の下流側の直近にある第3タイミングローラR3との距離は、用紙13の搬送方向(用紙13の幅方向と直交する縦方向)の長さより短い。従って、用紙13が一対の塗布ローラ2,2によって処理液10を塗布されている間は、この用紙13は、塗布ローラ2と、第2及び第3タイミングローラ20,22の少なくとも一つとによって、2箇所以上で挟まれた状態で搬送されることとなる。
【0032】
本実施形態では、塗布ローラ2の上流側の直近にある第2タイミングローラR2の搬送速度V1は、一対の塗布ローラ2,2の搬送速度VC以下であり、塗布ローラ2の下流側の直近にある第3タイミングローラR3の搬送速度V2は、一対の塗布ローラ2,2の搬送速度VC以上であるように設定されている。すなわち、V1≦VC≦V2である。従って、一対の塗布ローラ2,2と、その上流及び下流にある第2及び第3タイミングローラ20,22による用紙13の搬送時には、用紙13が弛むことはなく、用紙13を平坦な状態で搬送しながら皺のない表面に処理液10を均一に塗布することができる。また、本実施形態では、塗布ローラ2の下流側の直近にある第3タイミングローラR3よりも、塗布ローラ2の方が搬送力が大きくなるように設定されている。従って、塗布に伴う搬送時に用紙13に過度の引張力が加わることはなく、用紙13が損傷したり、上流への引張により皺が生じて処理液10の塗布に支障が生じる等の不具合は起きにくい。
【0033】
図2に示すように、塗布ローラ2と、その上流側の直近の第2タイミングローラR2との間には、塗布ローラ2が用紙13へ処理液10を塗布するタイミングを図るため、用紙13を検出する塗布タイミングセンサBが設けられている。また、塗布ローラ2と、その下流側の直近の第3タイミングローラR3との間には、塗布ローラ2が用紙13へ処理液10を塗布するタイミングを図るため、用紙13を検出する他の塗布タイミングセンサAが設けられている。これら各塗布タイミングセンサA,Bは、当該位置に用紙13があることを検出して検知信号を出力し、前述した各タイミングローラ19,20,22,23及び塗布ローラ2等を制御するために後述する制御手段25に送ることができる。
【0034】
図3に示すように、本実施形態の印刷用前処理装置1は、本装置の全体を統括して制御するための制御手段25を有している。制御手段25は、データの処理を行なうCPU26と、制御に必要なプログラム等を格納したROM27と、データを読み書きするためのRAM28と、制御のタイミングを図るタイミング信号を生成するタイマー29と、始動・停止その他の操作入力を与えるための入力パネル30と、センサ系及び駆動系の各周辺機器との入出力を行うPIO31とを備えている。制御手段25には、図示しない用紙センサ、排紙センサ及び処理液有無センサと、前記塗布タイミングセンサA,Bからの信号が、PIO31を介して入力される。また制御手段25からは、給紙台16を昇降させるモータ、ピックアップローラ17と各タイミングローラ19,20,22,23を駆動するモータ、塗布ローラ2を駆動するラジアルモータ6、塗布ローラ2を移動させるソレノイド12その他の駆動手段に対し、PIO31を介して操作信号が与えられる。
【0035】
次に、本実施形態の印刷用前処理装置1の作用において、塗布ローラ2によって用紙13に処理液10を塗布する際の制御手段25による制御を中心として説明する。
図4は、前述した2個の塗布タイミングセンサA,Bを両方とも利用して制御手段25が制御を行なう例を示している。入力パネル30から動作開始の入力があると、給紙台16上の用紙13を搬送経路18に送り込むためにピックアップローラ17が所定の期間だけ駆動される。ピックアップローラ17の駆動開始の直後、所定のタイミングで3個のタイミングローラR1,2,3及び図4中には示さない第4のタイミングローラR4が駆動を始め、用紙13が搬送経路18に沿って送られる。まず塗布ローラ2の上流にある塗布タイミングセンサBが用紙13を検出して検知信号をONとし、一枚の用紙13の処理期間が開始される。次に下流にある塗布タイミングセンサAが用紙13を検出して検知信号をONとする。下流にある塗布タイミングセンサAの検知信号がONになると、これに応じた所定のタイミングで塗布ローラ2のソレノイド12が作動し、用紙13は塗布ローラ2に挟持される。用紙13は、塗布ローラ2及びタイミングローラR2,3の駆動により搬送され、その両面に処理液10が塗布される。用紙13への処理液10の塗布が進み、塗布ローラ2の上流側にある塗布タイミングセンサBを用紙13の後端が抜けて検出信号がOFFになると、これに応じた所定のタイミングで塗布ローラ2のソレノイド12が逆方向に作動し、用紙13を挟持していた一対の塗布ローラ2,2が離れる方向に移動して用紙13の挟持を解除する。処理液10の塗布が完了した用紙13が、塗布ローラ2の下流側にある塗布タイミングセンサAを通過して検出信号がOFFになると、一枚の用紙13の処理期間が終了する。用紙13は、第4のタイミングローラR4によって排紙台21に排出される。
【0036】
図5は、前述した2個の塗布タイミングセンサA,Bのうち、塗布ローラ2の上流側にある方の塗布タイミングセンサBだけを利用したより簡易な構成で制御手段25が制御を行なう例を示している。入力パネル30から動作開始の入力があると、給紙台16上の用紙13を搬送経路18に送り込むためにピックアップローラ17が所定の期間だけ駆動される。ピックアップローラ17の駆動開始の直後、所定のタイミングで3個のタイミングローラR1,2,3及び図5中には示さない第4のタイミングローラR4が駆動を始め、用紙13が搬送経路18に沿って送られる。まず塗布ローラ2の上流にある塗布タイミングセンサBが用紙13を検出して検知信号をONとし、一枚の用紙13の処理期間が開始される。上流にある塗布タイミングセンサBの検知信号がONになると、これに応じた所定のタイミングで塗布ローラ2のソレノイド12が作動し、用紙13は塗布ローラ2に挟持される。用紙13は、塗布ローラ2及びタイミングローラR2,3の駆動により搬送され、その両面に処理液10が塗布される。用紙13への処理液10の塗布が進み、塗布ローラ2の上流側にある塗布タイミングセンサBを用紙13の後端が抜けて検出信号がOFFになると、これに応じた所定のタイミングで塗布ローラ2のソレノイド12が逆方向に作動し、用紙13を挟持していた一対の塗布ローラ2,2が離れる方向に移動して用紙13の挟持を解除し、一枚の用紙13の処理期間が終了する。用紙13は、第4のタイミングローラR4によって排紙台21に排出される。
【0037】
2.第2実施形態(図6〜図10)
図6又は図7に示す本実施形態の印刷用前処理装置1’は、第1実施形態の印刷用前処理装置1と共通の構成を備えており、当該共通部分については第1実施形態と同一の符号を付してその説明を援用する。以下において、主として第1実施形態とは異なる本実施形態に特有の構成及びその作用効果等について説明する。
【0038】
第1実施形態の印刷用前処理装置1は、間隔をおいて搬送されてくる枚葉状の用紙13に対し、対向する一対の塗布ローラ2,2を適当なタイミングで当接し又は離すことにより処理液10を用紙13にのみ塗布し、搬入される用紙13と用紙13の間において塗布ローラ2同士が直接接することがないようにしたものであった。これに対し、本実施形態の印刷用前処理装置1は、枚葉状の用紙13を前後に一部重ねて連続的に搬送することにより、複数枚の枚葉状の用紙13を擬似的にロール紙のような帯状に連続した状態とし、一対の塗布ローラ2,2で挟持搬送して連続的に処理液10を塗布するものである。
【0039】
図6乃至図7に示すように、塗布ローラ2と給紙台16の間において、上流の第1タイミングローラR1と下流の第2タイミングローラR2の間には、一対の重ねローラ40が配置されている。上流の第1タイミングローラR1による用紙13の挟持位置での接線方向は水平であって、従って第1タイミングローラR1は用紙13を搬送経路18に沿って水平方向に搬送する。その下流、第2タイミングローラR2の手前にある前記重ねローラ40の挟持位置での接線方向は水平方向に対して45度傾斜しており(図7中、角度θ=約45°)、従って重ねローラ40は用紙13を搬送経路18のカーブに沿って斜め上方に搬送する。このように、上流にある第1タイミングローラR1の挟持位置での接線方向と、その下流にある一対の重ねローラ40の挟持位置での接線方向は、角度θ=約45度で交差している。
【0040】
図7に示すように、第1タイミングローラR1の挟持位置のやや下流側には、ペーパーセンサS1が設けられており、用紙13がこの位置を通過するタイミングを捉えて検知信号を出力するようになっている。このペーパーセンサS1の検知信号は、前記制御手段25に入力され、後述するように各ローラ等の制御に利用される。
【0041】
図7に示すように、第1タイミングローラR1と重ねローラ40の間の搬送経路18において、下側案内板35は、重ねローラ40の挟持位置での接線方向に沿って形成されている。すなわち、下側案内板35は水平方向に対して上流側が下がるように45度で傾斜している。そして、この下側案内板35に近接して後端センサS2が設けられている。後端センサS2は、重ねローラ40で挟持された用紙13の後端が下側案内板35に接する位置にきた場合に、これを検知して検知信号を出力する。この後端センサS2の検知信号は、前記制御手段25に入力され、後述するように各ローラ等の制御に利用される。
【0042】
すなわち、本実施形態における制御によれば、先行する枚葉状の用紙13を重ねローラ40の部分で挟持して搬送しながら、第1タイミングローラR1によって適当なタイミングと速度で枚葉状の次の用紙13を重ねローラ40に送り込めば、後の用紙13の先端を、先行する用紙13の後端に重ねた状態にすることができ、その結果2枚の用紙13を一部が重なった状態で塗布ローラ2に送り込むことができる。3枚以上の用紙13についても連続的に前後を一部重ね、模擬的に連続帯状の用紙13として搬送することが可能なので、これに対して塗布ローラ2で連続的に処理液10を塗布していくことができる。
【0043】
次に、上述した作用を図8乃至図10を参照して詳細に説明する。図8乃至図10は、図示の便宜上、3つの図に分けて示しているが、その内容は用紙13の搬送を連続的に示す図であるため、各図中の分図には連続番号(1)乃至(9)を付し、異なる図番の図における図示動作の順番を明示することとした。
【0044】
図8(1)に示すように、給紙台16にある用紙13の一枚目(一番上の用紙13)をピックアップローラ17で取り出し、第1タイミングローラR1に送り込む。
図8(2)に示すように、一枚目の用紙13を第1タイミングローラR1によって搬送経路18内に送り込む。
図8(3)に示すように、一枚目の用紙13を重ねローラ40が搬送経路18の内部に送り込む。一枚目の用紙13がペーパーセンサS1を通過したタイミングで、給紙台16にある用紙13の一枚目を次の用紙13としてピックアップローラ17で取り出す。
【0045】
図9(4)に示すように、一枚目の用紙13の後端が第1タイミングローラR1から離れると、搬送経路18に沿って曲線状に曲がっていた一枚目の用紙13の後端は、その張力によって平坦な形状(図示の正面図では直線状)に回復し、下側案内板35に近接するので後端センサS2によって検出される。この時、二枚目の用紙13は、ピックアップローラ17で送り出されて第1タイミングローラR1に送り込まれている。
図9(5)に示すように、一枚目の用紙13の後端が後端センサS2で検出されると、第1タイミングローラR1に送り込まれた二枚目の用紙13を、先行する一枚目の用紙13の線速度v2よりも十分に早い速度v1で送り出す(v1≫v2)。
図9(6)に示すように、一枚目の用紙13(先の用紙13)の後端部と、二枚目の用紙13(後の用紙13)の先端部が重ねローラ40において重ねられる。ここで第1タイミングローラR1及び重ねローラ40による用紙13の搬送速度を等しくする(v1=v2)。また、前後の両用紙13の重なりは、印字領域以外の部分の寸法程度とし、例えば上端及び下端の各5mm程度の部分で重ねるものとする。
【0046】
図10(7)に示すように、一枚目の用紙13(先の用紙13)の後端部と、二枚目の用紙13(後の用紙13)の先端部が重なった状態で、両用紙13は重ねローラ40によって送されていく。
図10(8)に示すように、給紙台16にある用紙13(三枚目の用紙13)をピックアップローラ17が取り出し、第1タイミングローラR1に送り込む。これは、図8(1)の一枚目の用紙13や、図9(4)の二枚目の用紙13と同じ状態である。
図10(9)に示すように、二枚目の用紙13の後端が第1タイミングローラR1から離れると、搬送経路18に沿って曲線状に曲がっていた二枚目の用紙13の後端は、その張力によって平坦な形状(図示の正面図では直線状)に回復し、下側案内板35に近接するので後端センサS2によって検出される。この時、三枚目の用紙13は、ピックアップローラ17で送り出されて第1タイミングローラR1に送り込まれている。
【0047】
以後、図9(5)以降と同様の動作が繰り返され、三枚目以降の用紙13についても、二枚目までの用紙13と同様、連続的に前後を一部重ね、模擬的に連続帯状の用紙13として搬送することができる。このように連続した状態で搬送される各用紙13は、第2タイミングローラR2によって搬送され、一対の塗布ローラ2,2の間に送り込まれて連続的に処理液10が塗布されていく。この間、一対の塗布ローラ2,2は用紙13を挟んだ状態で連続的に回転しており、接触・離脱を繰り返す必要はない。
【0048】
このように本実施形態によれば、連続して送り込まれる複数枚の枚葉状の用紙13を、その前端と後端を重ね合わせた状態で搬送することにより疑似ロール紙として取り扱うことができる。従って、処理液10の塗布工程では一対の塗布ローラ2,2を常時ニップ位置に配置して連続的に動作させることができるので、機械の振動や騒音が低減する。また、塗布ローラ2が移動しないために塗布むらが発生しにくくなり、塗布の安定性が向上する。さらに、塗布時の塗布ローラ2の制御が簡単乃至不要になるという効果も得られる。
【0049】
3.第3実施形態(図11〜図16)
第3実施形態は、以上説明した第1及び第2実施形態に係る印刷用前処理装置1,1’において、塗布ローラ2のユニットに設けられた処理液10の供給手段7の変形例に関するものである。以下においては、供給手段50の構成を中心として説明する。図11に示すように、第3実施形態では、塗布ローラ2が1個であり、これと所定間隔をおいて対向ローラ51が設けられており、塗布ローラ2が上昇して対向ローラ51との間に用紙13を挟み、この状態で塗布ローラ2が回動することによって用紙13の片面に塗布ローラ2から処理液10が転移して塗布が行なわれる。その他の構成部分については第1乃至第2実施形態の印刷用前処理装置1,1’と同等の構成を備えているものとし、当該同等の部分については図面中に第1乃至第2実施形態と同一の符号を付してその説明を援用する。
【0050】
図11及び図13に示す本実施形態の供給手段50は、取り扱い及び交換が容易なカートリッジ状の構成とされており、カートリッジの本体となる処理液10の収納部52を備えている。収納部52は、塗布ローラ2の軸方向の長さに相当する細長い箱体であり、内部に処理液10を溜めることができる。収納部52の上面は蓋部材53で閉止されているが、その中央部には長手方向に沿って開放溝があり、この開放溝には塗布ローラ2に接する塗布部54が出没自在に設けられている。塗布部54は処理液10を含浸保持しうる部材であり、収納部52内にある塗布部54の下端には処理液10の供給部55が取り付けられている。塗布部54の材料としては、例えばフェルト等の不織布やスポンジのような弾性多孔質体が利用できる。なお、フェルトを用いれば処理液10の漏れが少なくて済む。供給部55は収納部52内の処理液10に浸漬されており、処理液10を吸い上げて塗布部54に供給する。また塗布部54は、蓋部材53の裏面側に設けられた弾性手段56によって蓋部材53の上面側に突出する方向に付勢されており、一定以上の外力を受けない状態では突出して塗布ローラ2に接触し、塗布ローラ2の回転に伴って処理液10を塗布ローラ2に転移させるが、一定以上の力で押された場合には収納部52の内部に引っ込むようになっている。さらに、収納部52の上面には、塗布部54を挟む両側の位置に清掃部57が設けられている。清掃部57は、上面が塗布部54に向いた傾斜面となっており、2つの傾斜面で構成される凹部の中に塗布ローラ2を配置して回動させることにより、塗布ローラ2の表面を清掃することができる。清掃部57の材料は塗布部54と同様のものを採用できる。
【0051】
図11に示すように、供給手段50は、中空箱型のカートリッジホルダー60の内部に、底面との間に弾性体61を配置して収納されている。このカートリッジホルダー60の下部には、ラック62が鉛直方向に平行に取り付けられている。また、本装置のフレーム、例えば図11には示さない塗布ローラ2のユニットのフレームには、昇降モータ63が設けられており、その駆動軸に設けられたピニオン64が前記ラック62に係合している。従って、昇降モータ63を駆動すればカートリッジホルダー60を昇降させることができる。また、前記ラック62には検出片65が設けられており、図示しないセンサによって検出片65の位置が検出できるようになっている。
【0052】
図11及び図12に示すように、カートリッジホルダー60の短辺側の面には支持軸66が突出して設けられている。一方、カートリッジホルダー60の短辺側の面に近接した位置には、上下方向に長い矩形のリンク部材67が上下移動可能に設けられている。このリンク部材67には上下方向に長い案内溝68が形成されている。そして、カートリッジホルダー60の支持軸66は、リンク部材67の案内溝68に移動可能に係合している。従って、カートリッジホルダー60が昇降すれば、カートリッジホルダー60の位置に応じてリンク部材67もカートリッジホルダー60と共に昇降することとなる。このリンク機構の昇降範囲の上限位置には、上限センサS3が配置されており、リンク部材67が上限位置に来たことを検出することができる。
【0053】
図11及び図13に示すように、本装置のフレーム3、例えば図11には示さない塗布ローラ2のユニットのフレームには、キャッピング部69と、これを駆動するキャッピングモータ70が設けられている。キャッピング部69は、キャッピングモータ70の駆動軸に連結された湾曲したアーム71の先端に設けられたローラ状の部材である。
【0054】
次に、本実施形態におけるカートリッジ化された処理液10の供給手段50が有する各種機能の作用効果について説明する。図12中には、リンク部材67の長手方向及び案内溝68の形成方向に沿って、カートリッジホルダー60及び支持軸66の移動範囲を供給手段50の機能別に示してある。以下に説明するように、支持軸66が最も下にある位置から案内溝68の長さの範囲が、図11で示すように、供給手段50がキャッピング状態の位置からその他の機能に至る領域まで移動するための範囲である。その上の範囲が、供給手段50が図14で示す用紙塗布機能を発揮する範囲である。そのさらに上の範囲が、供給手段50が図15で示すクリーニング機能を発揮する範囲である。
図11はキャッピング状態を示す。カートリッジホルダー60は最低位置に設定されており、塗布ローラ2と供給手段50は離れている。キャッピングモータ70がキャッピング部69をカートリッジホルダー60に向けて回動させ、キャッピング部69が供給手段50の塗布部54を押し下げて収納部52内に押し込んでいる。従って、塗布部54が乾燥してしまうことはない。
【0055】
図14は塗布状態を示す。図11に示すキャッピング状態において、キャッピングモータ70を駆動してキャッピング部69をカートリッジホルダー60から退避させた後、昇降モータ63を必要量だけ駆動してカートリッジホルダー60を上昇させ、所定の塗布位置に設定する。この位置決めは、カートリッジホルダー60の検出片65とこれを検出するセンサによって行なうことができる。この時、供給手段50の塗布部54は上方に突出した状態で塗布ローラ2に接触しており、塗布ローラ2を回動させれば塗布ローラ2の表面に処理液10を塗布することができる。用紙13が供給された場合には、所定のタイミングで塗布ローラ2をさらに必要量だけ上昇させ、又は対向ローラ651を下降させることにより、塗布ローラ2と対向ローラ51との間に用紙13を挟んで挟持搬送することにより、用紙13の片面に処理液10を塗布することができる。
【0056】
図15はクリーニング状態を示す。図14に示す塗布状態から、昇降モータ63をさらに上昇方向に駆動し、リンク部材67が上限センサS3によって検知されるまでカートリッジホルダー60を上昇させる。この時、塗布ローラ2は供給手段50の清掃部57の傾斜面に所定の圧力で接した状態にある。また、供給手段50の塗布部54は、塗布ローラ2に押されて収納部52内に押し込まれた状態にある。この状態で塗布ローラ2を回動させれば、塗布ローラ2の周面に付着した汚れを清掃部57によって除去することができる。なお、清掃前に、塗布状態で塗布ローラ2に処理液10を塗布し、一定の時間を経過した後に清掃することとすれば、増粘して塗布ローラ2に付着・固化した処理液10が清掃時までに軟化して除去しやすくなる。
【0057】
図16はカートリッジホルダー60から外した供給手段50をキャップ72で密閉して保管する状態を示している。供給手段50の上面側に被せたキャップ72は、清掃部57を覆うサイズの箱型であって、その内下面には、塗布部54だけを隔離して密封する密閉溝部73が設けられている。このキャップ72によれば、清掃部57の乾燥が防止され、また塗布部54を二重に密閉するので処理液10の蒸発乾燥が確実に防止できるという効果が得られる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態によれば、処理液10を保持し、その処理液10を供給し、供給した処理液10を塗布ローラ2に塗布し、また塗布ローラ2を清掃するという各機能を、一つのカートリッジに集約したので、単純化された安価な構成となり、特に処理液関係のメンテナンスが容易な使い勝手のよい供給手段50を実現することができる。
【0059】
また、本実施形態の処理液10の供給手段50によれば、密閉構造であるため、処理液10の濃度変化等の変質が少ない。また、密閉されたカートリッジ状であることから、印刷用前処理装置1,1’の設置にあたって、処理液10の漏れその他の不具合の発生防止のために装置の水平設置に気を配る必要性が少ない。
【符号の説明】
【0060】
1,1’…印刷用前処理装置
2…塗布ローラ
7…処理液の塗布ローラへの供給手段
10…印刷用前処理液(処理液)
15…給紙手段
18…搬送経路
21…排紙手段としての排紙台
25…制御手段
35…下側案内板
40…重ねローラ
50…処理液の塗布ローラへの供給手段
52…収納部
54…塗布部
57…清掃部
60…カートリッジホルダー
69…キャッピング部
A…塗布タイミングセンサ
B…塗布タイミングセンサ
S1…ペーパーセンサ
S2…後端センサ
S3…上限センサ
R1…搬送ローラとしての第1タイミングローラ
R2…請求項における第1の搬送ローラとしての第2タイミングローラ
R3…請求項における第2の搬送ローラとしての第3タイミングローラ
R4…搬送ローラとしての第4タイミングローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用紙等の枚葉状の被印刷体に印刷用前処理液をローラで塗布する印刷用前処理装置に係り、特に両面塗布にも片面塗布にも対応でき、塗布が均一であるとともに、処理液の無駄がない印刷用前処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷用紙等に印刷用前処理液を塗布する印刷用前処理装置では、ロール紙から供給される連続帯状の用紙に印刷用前処理液(以下、単に処理液とも呼ぶ)を塗布するタイプのものが多く提案されているが、個人ユースとしては、市販の規格サイズの用紙のような枚葉状(シート状)の印刷用紙に処理液を塗布するタイプのものが適している。このような枚葉状の印刷用紙を対象とする印刷用前処理装置としては、例えば下記特許文献1に示すような発明が知られている。
【0003】
特許文献1に開示された液体塗布装置は、液体保持部材に接触して処理液の供給を受ける塗布ローラと、塗布ローラに対向して設けられて塗布ローラに対して付勢されたカウンターローラとが常時接触しており、両ローラの間に供給された記録媒体を挟持搬送しながら記録媒体の片面に処理液を塗布する装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】再表2007−018274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に記載の発明によれば、塗布ローラとカウンターローラが常時接触しているため、塗布ローラからカウンターローラに処理液が転移してしまい、塗布ローラから用紙の表側に塗布される処理液が不足し又は不均一になったり、また処理液を塗布する必要のない用紙の裏面にまで処理液が塗布されてしまう等の不都合が生じる場合があった。
【0006】
このように、用紙搬送を兼ねた対向する一対のローラを塗布ローラとして利用し、枚葉用紙の表面に印刷用前処理液を塗布するタイプの装置において、一対の塗布ローラを常時接触させた状態で動作させることにより塗布を行なう場合には、用紙の両面に塗布を行なう構成をとる場合でも、また片面だけに塗布を行なう構成をとる場合でも、いずれも塗布時の均一性等に何らかの問題が生じていた。
【0007】
すなわち、用紙両面の塗布を行なう場合には、排出した用紙を揃えやすいようにタイミングを図る等の排紙処理上の都合を考慮し、枚葉用紙の搬送にあたっては用紙間に一定の休止間隔乃至時間をとる必要があり、従って一対の塗布ローラを通過していく用紙と用紙の間にも間隔ができる。
【0008】
従って、両面塗布の場合には、用紙を挟持していない状態では両塗布ローラの各処理液が混じってしまう。両塗布ローラの処理液が異なるものであれば、両液の混合は当然問題である。また、両液が同一種類の処理液であったとしても、各塗布ローラの処理液供給手段における処理液の保管・管理状態は必ずしも同一であるとは限らず、各塗布ローラにおける処理液の状態(粘度、各成分の濃度等)が同一でない場合もありうる。従って、両塗布ローラが一旦接触して処理液が混じり合うと、用紙の両面に同一の状態で処理液が塗布されるとは限らず、用紙の両面の塗布の均一性が損なわれる場合があった。
【0009】
また、片面塗布の場合には、両塗布ローラの一方に処理液を塗布し、他方には塗布しない状態で用紙を挟持搬送するが、搬送される前後の用紙と用紙の隙間で処理液が塗布された一方の塗布ローラから、処理液を塗布されていない他方の塗布ローラに処理液が転写してしまうため、本来処理液を塗布しない用紙の片方の面に処理液が不均一に塗布されてしまうという不都合が生じる。
【0010】
本発明は、以上説明したような従来の技術における課題に鑑みてなされたものであり、枚葉用紙に対する処理液の塗布において、両面塗布時の処理液の塗布均一性を確保するとともに、片面印刷時に不要な部分へ処理液が塗布されることを防いで処理液の無駄を無くすことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載された印刷用前処理装置は、
枚葉状の被印刷体に印刷用前処理液を塗布する印刷用前処理装置において、
所定の間隔をおいて配置され、少なくとも一方が移動することにより他方との間に被印刷体を挟んで回動する一対の塗布ローラと、
前記一対の塗布ローラの少なくとも一方に印刷用前処理液を供給する供給手段と、
前記一対の塗布ローラの間に供給される被印刷体を検出するセンサと、
前記センサが被印刷体を検出した場合に前記一対の塗布ローラの少なくとも一方を移動させて他方との間に被印刷体を挟んだ状態で回動させることにより被印刷体に印刷用前処理液を塗布するように制御する制御手段と、
を有することを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載された印刷用前処理装置は、請求項1記載の印刷用前処理装置において、
前記一対の塗布ローラの回動軸方向についての幅が、被印刷体の幅よりも小さいことを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載された印刷用前処理装置は、請求項2記載の印刷用前処理装置において、
被印刷体の搬送方向について前記一対の塗布ローラの上流及び下流にそれぞれ第1の搬送ローラ及び第2の搬送ローラが設けられており、
前記第1の搬送ローラの搬送速度は前記一対の塗布ローラの搬送速度以下であり、前記第2の搬送ローラの搬送速度は前記一対の塗布ローラの搬送速度以上であり、
かつ前記第2の搬送ローラの搬送力は前記一対の塗布ローラの搬送力よりも小さいことを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載された印刷用前処理装置は、請求項3に記載の印刷用前処理装置において、
前記第1の搬送ローラの上流側において、被印刷体の搬送方向に沿って一対の搬送ローラと一対の重ねローラが並んで配置されており、
前記一対の搬送ローラによる被印刷体の挟持位置での接線方向と前記一対の重ねローラによる被印刷体の挟持位置での接線方向が所定角度で交差しており、
前記一対の重ねローラで挟持されている先行の被印刷体の後端に対して一対の搬送ローラで搬送された後行の被印刷体の前端を重ねて搬送することを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載された印刷用前処理装置は、請求項4記載の印刷用前処理装置において、
前記供給手段が、印刷用前処理液を収納する収納部と、回転する前記塗布ローラに接触して印刷用前処理液を塗布する塗布部と、前記収納部に収納されている印刷用前処理液を前記塗布部に供給する供給部と、回転する前記塗布ローラに接触して清掃を行う清掃部とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載された印刷用前処理装置によれば、一対の塗布ローラは所定の間隔だけ離れて配置されており、一対の塗布ローラの間に被印刷体が入ってくることをセンサが検出した時に、制御手段が塗布ローラの少なくとも一方を適当なタイミングで移動させることにより、他方の塗布ローラとの間に被印刷体を挟む。この状態で塗布ローラを回動させることにより被印刷体を搬送し、その表面に印刷用前処理液を塗布する。このように、一対の塗布ローラは互いに直接接触することがないので、印刷用前処理液が互いに混じり合ったり、一方から他方に不必要に転移したりすることが防止される。
【0017】
請求項2に記載された印刷用前処理装置によれば、一対の塗布ローラの回動軸方向についての幅が被印刷体の幅よりも小さいので、一対の塗布ローラが被印刷体の幅方向の両縁よりも内側に来るように配置すれば、一対の塗布ローラで被印刷体を挟んだ時に、一対の塗布ローラが互いに接触することがない。請求項1の発明による効果がより確実に達成される。
【0018】
請求項3に記載された印刷用前処理装置によれば、被印刷体の搬送方向に沿って順に配置された第1の搬送ローラ、一対の塗布ローラ及び第2の搬送ローラの各速度は、順に大きくなるように設定されており、さらに第2の搬送ローラの搬送力は一対の塗布ローラの搬送力よりも小さいので、被印刷体を搬送しながら印刷用前処理液を塗布する工程で被印刷体は過剰に上流に向けて引っ張られることなく、弛むこともないので、塗布を適正に行なうことができる。
【0019】
請求項4に記載された印刷用前処理装置によれば、先行の被印刷体を一対の重ねローラで挟持した状態で搬送しつつ、後行の被印刷体を搬送ローラでより速く搬送し、重ねローラで搬送されている先行の被印刷体の後端に対して後行の被印刷体の前端を重ねた状態として一対の塗布ローラに送り込むことができる。従って、被印刷体を間に挟んで一対の塗布ローラを当接させた状態を保持しながら、連続して搬送されてくる複数枚の被印刷体に印刷用前処理液を連続的に塗布することができるので、枚葉状の被印刷体であっても、ロール紙に印刷用前処理液を連続的に塗布するのと同様に塗布作業を連続的に実行することができる。
【0020】
請求項5に記載された印刷用前処理装置によれば、印刷用前処理液を被印刷体に塗布する供給手段を、収納部と塗布部と供給部と清掃部からなるユニット構造としたので、構成が単純化でき製造コストを低減化できる。また、液の漏れや変質が少なく、保管、交換その他のメンテナンス作業が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態の全体斜視図である。
【図2】第1実施形態の一部を断面として示した正面図である。
【図3】第1実施形態の制御ブロック図である。
【図4】第1実施形態における制御タイミング図である。
【図5】第1実施形態における変形例の制御タイミング図である。
【図6】第2実施形態の全体斜視図である。
【図7】第2実施形態の一部を断面として示した正面図である。
【図8】第2実施形態の作用を示す第1の連続動作図である。
【図9】第2実施形態の作用を示す第2の連続動作図である。
【図10】第2実施形態の作用を示す第3の連続動作図である。
【図11】第3実施形態の要部を示す正面図において、キャッピング状態にある供給手段を断面で示した図である。
【図12】第3実施形態における供給手段のリンク機構を示す図である。
【図13】第3実施形態における供給手段等を図11とは直交する面で切断して示す断面図である。
【図14】第3実施形態において用紙塗布状態にある供給手段を図11と同様の切断面で示す断面図である。
【図15】第3実施形態においてクリーニング状態にある供給手段を図11と同様の切断面で示す断面図である。
【図16】第3実施形態においてキャッピング保管時にある供給手段を図11と同様の切断面で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施形態1乃至3を説明する。
これらの実施形態は、枚葉状の被印刷体である用紙に印刷用前処理液(以下、単に処理液とも称する。)を塗布する印刷用前処理装置に関するものである。本実施形態で使用される処理液は、例えばインク等の色材を不溶化又は凝集させる成分を含んだ処理液であって、用紙にこれを塗布すると、滲み、濃度、色調や裏写り等といった画像形成品位が向上し、又は耐水性、耐候性といった画像堅牢性が向上する等の効果が得られる。
【0023】
1.第1実施形態(図1〜図5)
図1又は図2に示すように、この印刷用前処理装置1は、ユニット化された一対の塗布ローラ2,2を備えている。ユニットの本体であるフレーム3には、弾性部材4を介して支持アーム5が取り付けられている。この支持アーム5には、ラジアルモータ6と塗布ローラ2が取り付けられており、両者はベルトを介して連動連結されている。また、フレーム3内には処理液の供給手段77が設けられている。この供給手段7は、処理液を収納する箱型の収納部8と、収納部8の処理液10と塗布ローラ2に回動自在に接触している前塗布ローラ9を備えている。塗布ローラ2がラジアルモータ6によって駆動されれば、前塗布ローラ9は塗布ローラ2に連動して回転し、収納部8の処理液10を汲み上げて塗布ローラ2に塗布する。
【0024】
図示はしないが、収納部8に処理液有無センサを設けて処理液10の量を検知できるようにしておき、図1中に示すようにユニット外に設置した処理液供給機構11から収納部8に処理液10を補充できるようにしておいてもよい。このようにすれば、処理液有無センサが収納部8内の処理液10が規定量以下になったことを検出した場合に、後述する制御手段25の制御により、処理液供給機構から収納部8に処理液10を補充することができる。
【0025】
塗布ローラ2は、その周面に付着している処理液10を用紙の表面に転移させる手段であり、その回動軸方向についての幅は用紙の幅よりも小さくなっている。従って、用紙を一対の塗布ローラ2,2で挟んで搬送する際に、両者の相対的な配置を調整すれば、塗布ローラ2の両端が用紙の両端よりも内側にきて、用紙の外に突出しないようにすることができる。このようにすれば、塗布時に一対の塗布ローラ2,2同士が接触せず、両塗布ローラ2,2の処理液10が互いに混じり合うことを避けることができる。
【0026】
図2に示すように、このような構造を有する塗布ローラ2の各ユニットは、所定のホームポジションにおいて、一対の塗布ローラ2,2が所定の間隔をおいて互いに平行な姿勢で対峙するように配置されている。一対の塗布ローラ2,2のホームポジションにおける間隔は、応答性を考慮して例えば数ミリ程度以下とする。各ユニットは、塗布ローラ2の平行状態を保持しながら水平方向に移動可能に支持されており、それぞれ駆動手段としてのソレノイド12によって他方に対して接近し、又は離れる方向に移動することができる。
【0027】
用紙13の両面に処理液10を塗布する場合には、両塗布ローラ2,2を回動させながら、両塗布ローラ2,2の間に用紙13が供給されたタイミングでソレノイド12,12を駆動し、両塗布ローラ2,2を互いに接近する方向に移動させて用紙13を挟持する。用紙13は一対の塗布ローラ2,2で挟まれて搬送される。各塗布ローラ2の表面にある処理液10は用紙13の両面にそれぞれ塗布される。又は、一方の塗布ローラ2の位置を用紙13が搬入されてくる位置に近接して固定しておき、両塗布ローラ2,2を回動させながら、用紙13の供給にタイミングを合わせて他方の塗布ローラ2だけをソレノイド12で駆動し、固定された一方の塗布ローラ2との協働によって用紙13を挟持搬送しても、用紙13の両面に処理液10を塗布できる。
【0028】
また、用紙13の片面に処理液10を塗布する場合には、一方のユニットの塗布ローラ2の位置を固定し、その供給手段7を除去するか又はその供給手段7の前塗布ローラ9を移動させて塗布ローラ2から離す等、処理液10の供給機能を一時的に解除しておく。両塗布ローラ2,2を回動させながら、用紙13の供給にタイミングを合わせて他方の塗布ローラ2だけをソレノイド12で駆動し、固定された一方の塗布ローラ2との協働で用紙13を挟持搬送すれば、用紙13の片面だけに処理液10を塗布できる。
なお、ユニット化された塗布ローラ22のフレーム3にはクリーニングローラ14が回動可能に設けられている。図示しない移動手段によって塗布ローラ2を移動させ、クリーニングローラ14に接触させて回動させれば、塗布ローラ2の周面に付着した汚れ・異物等を除去することができる。
【0029】
図1及び図2に示すように、塗布ローラ2の上流側には、給紙手段15が設けられている。給紙手段15は、用紙13が積載された給紙台16と、給紙台16上の用紙13を一枚ずつ取り出すピックアップローラ17を備えている。給紙台16には、図示しない用紙センサが設けられ、用紙13の有無を検知して後述する制御手段25に信号を送ることができる。ピックアップローラ17と塗布ローラ2の間には、用紙13の搬送経路18が設けられている。搬送経路18は、給紙台16から水平方向に延設され、その後カーブを経て垂直方向に延設されて塗布ローラ2に至っている。この搬送経路18には、上流から順に、用紙13を搬送する搬送ローラとして、水平部分に第1タイミングローラR1が対で設けられ、垂直部分に第2タイミングローラR2が対で設けられている。
【0030】
図1及び図2に示すように、塗布ローラ2の下流側には、排紙手段としての排紙台21が設けられている。排紙台21は、処理液10が塗布された処理済みの用紙13を受け入れて積載させる手段である。排紙台21には、図示しない排紙センサが設けられ、排紙台21上に排出された用紙13を検知して後述する制御手段25に信号を送ることができる。塗布ローラ2と排紙台21の間には、用紙13の搬送経路18が設けられている。搬送経路18は、塗布ローラ2から垂直方向に延設され、その後カーブを経て水平方向に向けられて排紙台21に至っている。この搬送経路18には、上流から順に、用紙13を搬送する搬送ローラとして、垂直部分に第3タイミングローラR3が対で設けられ、水平部分に第4タイミングローラR4が対で設けられている。
【0031】
図2において、塗布ローラ2の上流側の直近にある第2タイミングローラR2と、塗布ローラ2の下流側の直近にある第3タイミングローラR3との距離は、用紙13の搬送方向(用紙13の幅方向と直交する縦方向)の長さより短い。従って、用紙13が一対の塗布ローラ2,2によって処理液10を塗布されている間は、この用紙13は、塗布ローラ2と、第2及び第3タイミングローラ20,22の少なくとも一つとによって、2箇所以上で挟まれた状態で搬送されることとなる。
【0032】
本実施形態では、塗布ローラ2の上流側の直近にある第2タイミングローラR2の搬送速度V1は、一対の塗布ローラ2,2の搬送速度VC以下であり、塗布ローラ2の下流側の直近にある第3タイミングローラR3の搬送速度V2は、一対の塗布ローラ2,2の搬送速度VC以上であるように設定されている。すなわち、V1≦VC≦V2である。従って、一対の塗布ローラ2,2と、その上流及び下流にある第2及び第3タイミングローラ20,22による用紙13の搬送時には、用紙13が弛むことはなく、用紙13を平坦な状態で搬送しながら皺のない表面に処理液10を均一に塗布することができる。また、本実施形態では、塗布ローラ2の下流側の直近にある第3タイミングローラR3よりも、塗布ローラ2の方が搬送力が大きくなるように設定されている。従って、塗布に伴う搬送時に用紙13に過度の引張力が加わることはなく、用紙13が損傷したり、上流への引張により皺が生じて処理液10の塗布に支障が生じる等の不具合は起きにくい。
【0033】
図2に示すように、塗布ローラ2と、その上流側の直近の第2タイミングローラR2との間には、塗布ローラ2が用紙13へ処理液10を塗布するタイミングを図るため、用紙13を検出する塗布タイミングセンサBが設けられている。また、塗布ローラ2と、その下流側の直近の第3タイミングローラR3との間には、塗布ローラ2が用紙13へ処理液10を塗布するタイミングを図るため、用紙13を検出する他の塗布タイミングセンサAが設けられている。これら各塗布タイミングセンサA,Bは、当該位置に用紙13があることを検出して検知信号を出力し、前述した各タイミングローラ19,20,22,23及び塗布ローラ2等を制御するために後述する制御手段25に送ることができる。
【0034】
図3に示すように、本実施形態の印刷用前処理装置1は、本装置の全体を統括して制御するための制御手段25を有している。制御手段25は、データの処理を行なうCPU26と、制御に必要なプログラム等を格納したROM27と、データを読み書きするためのRAM28と、制御のタイミングを図るタイミング信号を生成するタイマー29と、始動・停止その他の操作入力を与えるための入力パネル30と、センサ系及び駆動系の各周辺機器との入出力を行うPIO31とを備えている。制御手段25には、図示しない用紙センサ、排紙センサ及び処理液有無センサと、前記塗布タイミングセンサA,Bからの信号が、PIO31を介して入力される。また制御手段25からは、給紙台16を昇降させるモータ、ピックアップローラ17と各タイミングローラ19,20,22,23を駆動するモータ、塗布ローラ2を駆動するラジアルモータ6、塗布ローラ2を移動させるソレノイド12その他の駆動手段に対し、PIO31を介して操作信号が与えられる。
【0035】
次に、本実施形態の印刷用前処理装置1の作用において、塗布ローラ2によって用紙13に処理液10を塗布する際の制御手段25による制御を中心として説明する。
図4は、前述した2個の塗布タイミングセンサA,Bを両方とも利用して制御手段25が制御を行なう例を示している。入力パネル30から動作開始の入力があると、給紙台16上の用紙13を搬送経路18に送り込むためにピックアップローラ17が所定の期間だけ駆動される。ピックアップローラ17の駆動開始の直後、所定のタイミングで3個のタイミングローラR1,2,3及び図4中には示さない第4のタイミングローラR4が駆動を始め、用紙13が搬送経路18に沿って送られる。まず塗布ローラ2の上流にある塗布タイミングセンサBが用紙13を検出して検知信号をONとし、一枚の用紙13の処理期間が開始される。次に下流にある塗布タイミングセンサAが用紙13を検出して検知信号をONとする。下流にある塗布タイミングセンサAの検知信号がONになると、これに応じた所定のタイミングで塗布ローラ2のソレノイド12が作動し、用紙13は塗布ローラ2に挟持される。用紙13は、塗布ローラ2及びタイミングローラR2,3の駆動により搬送され、その両面に処理液10が塗布される。用紙13への処理液10の塗布が進み、塗布ローラ2の上流側にある塗布タイミングセンサBを用紙13の後端が抜けて検出信号がOFFになると、これに応じた所定のタイミングで塗布ローラ2のソレノイド12が逆方向に作動し、用紙13を挟持していた一対の塗布ローラ2,2が離れる方向に移動して用紙13の挟持を解除する。処理液10の塗布が完了した用紙13が、塗布ローラ2の下流側にある塗布タイミングセンサAを通過して検出信号がOFFになると、一枚の用紙13の処理期間が終了する。用紙13は、第4のタイミングローラR4によって排紙台21に排出される。
【0036】
図5は、前述した2個の塗布タイミングセンサA,Bのうち、塗布ローラ2の上流側にある方の塗布タイミングセンサBだけを利用したより簡易な構成で制御手段25が制御を行なう例を示している。入力パネル30から動作開始の入力があると、給紙台16上の用紙13を搬送経路18に送り込むためにピックアップローラ17が所定の期間だけ駆動される。ピックアップローラ17の駆動開始の直後、所定のタイミングで3個のタイミングローラR1,2,3及び図5中には示さない第4のタイミングローラR4が駆動を始め、用紙13が搬送経路18に沿って送られる。まず塗布ローラ2の上流にある塗布タイミングセンサBが用紙13を検出して検知信号をONとし、一枚の用紙13の処理期間が開始される。上流にある塗布タイミングセンサBの検知信号がONになると、これに応じた所定のタイミングで塗布ローラ2のソレノイド12が作動し、用紙13は塗布ローラ2に挟持される。用紙13は、塗布ローラ2及びタイミングローラR2,3の駆動により搬送され、その両面に処理液10が塗布される。用紙13への処理液10の塗布が進み、塗布ローラ2の上流側にある塗布タイミングセンサBを用紙13の後端が抜けて検出信号がOFFになると、これに応じた所定のタイミングで塗布ローラ2のソレノイド12が逆方向に作動し、用紙13を挟持していた一対の塗布ローラ2,2が離れる方向に移動して用紙13の挟持を解除し、一枚の用紙13の処理期間が終了する。用紙13は、第4のタイミングローラR4によって排紙台21に排出される。
【0037】
2.第2実施形態(図6〜図10)
図6又は図7に示す本実施形態の印刷用前処理装置1’は、第1実施形態の印刷用前処理装置1と共通の構成を備えており、当該共通部分については第1実施形態と同一の符号を付してその説明を援用する。以下において、主として第1実施形態とは異なる本実施形態に特有の構成及びその作用効果等について説明する。
【0038】
第1実施形態の印刷用前処理装置1は、間隔をおいて搬送されてくる枚葉状の用紙13に対し、対向する一対の塗布ローラ2,2を適当なタイミングで当接し又は離すことにより処理液10を用紙13にのみ塗布し、搬入される用紙13と用紙13の間において塗布ローラ2同士が直接接することがないようにしたものであった。これに対し、本実施形態の印刷用前処理装置1は、枚葉状の用紙13を前後に一部重ねて連続的に搬送することにより、複数枚の枚葉状の用紙13を擬似的にロール紙のような帯状に連続した状態とし、一対の塗布ローラ2,2で挟持搬送して連続的に処理液10を塗布するものである。
【0039】
図6乃至図7に示すように、塗布ローラ2と給紙台16の間において、上流の第1タイミングローラR1と下流の第2タイミングローラR2の間には、一対の重ねローラ40が配置されている。上流の第1タイミングローラR1による用紙13の挟持位置での接線方向は水平であって、従って第1タイミングローラR1は用紙13を搬送経路18に沿って水平方向に搬送する。その下流、第2タイミングローラR2の手前にある前記重ねローラ40の挟持位置での接線方向は水平方向に対して45度傾斜しており(図7中、角度θ=約45°)、従って重ねローラ40は用紙13を搬送経路18のカーブに沿って斜め上方に搬送する。このように、上流にある第1タイミングローラR1の挟持位置での接線方向と、その下流にある一対の重ねローラ40の挟持位置での接線方向は、角度θ=約45度で交差している。
【0040】
図7に示すように、第1タイミングローラR1の挟持位置のやや下流側には、ペーパーセンサS1が設けられており、用紙13がこの位置を通過するタイミングを捉えて検知信号を出力するようになっている。このペーパーセンサS1の検知信号は、前記制御手段25に入力され、後述するように各ローラ等の制御に利用される。
【0041】
図7に示すように、第1タイミングローラR1と重ねローラ40の間の搬送経路18において、下側案内板35は、重ねローラ40の挟持位置での接線方向に沿って形成されている。すなわち、下側案内板35は水平方向に対して上流側が下がるように45度で傾斜している。そして、この下側案内板35に近接して後端センサS2が設けられている。後端センサS2は、重ねローラ40で挟持された用紙13の後端が下側案内板35に接する位置にきた場合に、これを検知して検知信号を出力する。この後端センサS2の検知信号は、前記制御手段25に入力され、後述するように各ローラ等の制御に利用される。
【0042】
すなわち、本実施形態における制御によれば、先行する枚葉状の用紙13を重ねローラ40の部分で挟持して搬送しながら、第1タイミングローラR1によって適当なタイミングと速度で枚葉状の次の用紙13を重ねローラ40に送り込めば、後の用紙13の先端を、先行する用紙13の後端に重ねた状態にすることができ、その結果2枚の用紙13を一部が重なった状態で塗布ローラ2に送り込むことができる。3枚以上の用紙13についても連続的に前後を一部重ね、模擬的に連続帯状の用紙13として搬送することが可能なので、これに対して塗布ローラ2で連続的に処理液10を塗布していくことができる。
【0043】
次に、上述した作用を図8乃至図10を参照して詳細に説明する。図8乃至図10は、図示の便宜上、3つの図に分けて示しているが、その内容は用紙13の搬送を連続的に示す図であるため、各図中の分図には連続番号(1)乃至(9)を付し、異なる図番の図における図示動作の順番を明示することとした。
【0044】
図8(1)に示すように、給紙台16にある用紙13の一枚目(一番上の用紙13)をピックアップローラ17で取り出し、第1タイミングローラR1に送り込む。
図8(2)に示すように、一枚目の用紙13を第1タイミングローラR1によって搬送経路18内に送り込む。
図8(3)に示すように、一枚目の用紙13を重ねローラ40が搬送経路18の内部に送り込む。一枚目の用紙13がペーパーセンサS1を通過したタイミングで、給紙台16にある用紙13の一枚目を次の用紙13としてピックアップローラ17で取り出す。
【0045】
図9(4)に示すように、一枚目の用紙13の後端が第1タイミングローラR1から離れると、搬送経路18に沿って曲線状に曲がっていた一枚目の用紙13の後端は、その張力によって平坦な形状(図示の正面図では直線状)に回復し、下側案内板35に近接するので後端センサS2によって検出される。この時、二枚目の用紙13は、ピックアップローラ17で送り出されて第1タイミングローラR1に送り込まれている。
図9(5)に示すように、一枚目の用紙13の後端が後端センサS2で検出されると、第1タイミングローラR1に送り込まれた二枚目の用紙13を、先行する一枚目の用紙13の線速度v2よりも十分に早い速度v1で送り出す(v1≫v2)。
図9(6)に示すように、一枚目の用紙13(先の用紙13)の後端部と、二枚目の用紙13(後の用紙13)の先端部が重ねローラ40において重ねられる。ここで第1タイミングローラR1及び重ねローラ40による用紙13の搬送速度を等しくする(v1=v2)。また、前後の両用紙13の重なりは、印字領域以外の部分の寸法程度とし、例えば上端及び下端の各5mm程度の部分で重ねるものとする。
【0046】
図10(7)に示すように、一枚目の用紙13(先の用紙13)の後端部と、二枚目の用紙13(後の用紙13)の先端部が重なった状態で、両用紙13は重ねローラ40によって送されていく。
図10(8)に示すように、給紙台16にある用紙13(三枚目の用紙13)をピックアップローラ17が取り出し、第1タイミングローラR1に送り込む。これは、図8(1)の一枚目の用紙13や、図9(4)の二枚目の用紙13と同じ状態である。
図10(9)に示すように、二枚目の用紙13の後端が第1タイミングローラR1から離れると、搬送経路18に沿って曲線状に曲がっていた二枚目の用紙13の後端は、その張力によって平坦な形状(図示の正面図では直線状)に回復し、下側案内板35に近接するので後端センサS2によって検出される。この時、三枚目の用紙13は、ピックアップローラ17で送り出されて第1タイミングローラR1に送り込まれている。
【0047】
以後、図9(5)以降と同様の動作が繰り返され、三枚目以降の用紙13についても、二枚目までの用紙13と同様、連続的に前後を一部重ね、模擬的に連続帯状の用紙13として搬送することができる。このように連続した状態で搬送される各用紙13は、第2タイミングローラR2によって搬送され、一対の塗布ローラ2,2の間に送り込まれて連続的に処理液10が塗布されていく。この間、一対の塗布ローラ2,2は用紙13を挟んだ状態で連続的に回転しており、接触・離脱を繰り返す必要はない。
【0048】
このように本実施形態によれば、連続して送り込まれる複数枚の枚葉状の用紙13を、その前端と後端を重ね合わせた状態で搬送することにより疑似ロール紙として取り扱うことができる。従って、処理液10の塗布工程では一対の塗布ローラ2,2を常時ニップ位置に配置して連続的に動作させることができるので、機械の振動や騒音が低減する。また、塗布ローラ2が移動しないために塗布むらが発生しにくくなり、塗布の安定性が向上する。さらに、塗布時の塗布ローラ2の制御が簡単乃至不要になるという効果も得られる。
【0049】
3.第3実施形態(図11〜図16)
第3実施形態は、以上説明した第1及び第2実施形態に係る印刷用前処理装置1,1’において、塗布ローラ2のユニットに設けられた処理液10の供給手段7の変形例に関するものである。以下においては、供給手段50の構成を中心として説明する。図11に示すように、第3実施形態では、塗布ローラ2が1個であり、これと所定間隔をおいて対向ローラ51が設けられており、塗布ローラ2が上昇して対向ローラ51との間に用紙13を挟み、この状態で塗布ローラ2が回動することによって用紙13の片面に塗布ローラ2から処理液10が転移して塗布が行なわれる。その他の構成部分については第1乃至第2実施形態の印刷用前処理装置1,1’と同等の構成を備えているものとし、当該同等の部分については図面中に第1乃至第2実施形態と同一の符号を付してその説明を援用する。
【0050】
図11及び図13に示す本実施形態の供給手段50は、取り扱い及び交換が容易なカートリッジ状の構成とされており、カートリッジの本体となる処理液10の収納部52を備えている。収納部52は、塗布ローラ2の軸方向の長さに相当する細長い箱体であり、内部に処理液10を溜めることができる。収納部52の上面は蓋部材53で閉止されているが、その中央部には長手方向に沿って開放溝があり、この開放溝には塗布ローラ2に接する塗布部54が出没自在に設けられている。塗布部54は処理液10を含浸保持しうる部材であり、収納部52内にある塗布部54の下端には処理液10の供給部55が取り付けられている。塗布部54の材料としては、例えばフェルト等の不織布やスポンジのような弾性多孔質体が利用できる。なお、フェルトを用いれば処理液10の漏れが少なくて済む。供給部55は収納部52内の処理液10に浸漬されており、処理液10を吸い上げて塗布部54に供給する。また塗布部54は、蓋部材53の裏面側に設けられた弾性手段56によって蓋部材53の上面側に突出する方向に付勢されており、一定以上の外力を受けない状態では突出して塗布ローラ2に接触し、塗布ローラ2の回転に伴って処理液10を塗布ローラ2に転移させるが、一定以上の力で押された場合には収納部52の内部に引っ込むようになっている。さらに、収納部52の上面には、塗布部54を挟む両側の位置に清掃部57が設けられている。清掃部57は、上面が塗布部54に向いた傾斜面となっており、2つの傾斜面で構成される凹部の中に塗布ローラ2を配置して回動させることにより、塗布ローラ2の表面を清掃することができる。清掃部57の材料は塗布部54と同様のものを採用できる。
【0051】
図11に示すように、供給手段50は、中空箱型のカートリッジホルダー60の内部に、底面との間に弾性体61を配置して収納されている。このカートリッジホルダー60の下部には、ラック62が鉛直方向に平行に取り付けられている。また、本装置のフレーム、例えば図11には示さない塗布ローラ2のユニットのフレームには、昇降モータ63が設けられており、その駆動軸に設けられたピニオン64が前記ラック62に係合している。従って、昇降モータ63を駆動すればカートリッジホルダー60を昇降させることができる。また、前記ラック62には検出片65が設けられており、図示しないセンサによって検出片65の位置が検出できるようになっている。
【0052】
図11及び図12に示すように、カートリッジホルダー60の短辺側の面には支持軸66が突出して設けられている。一方、カートリッジホルダー60の短辺側の面に近接した位置には、上下方向に長い矩形のリンク部材67が上下移動可能に設けられている。このリンク部材67には上下方向に長い案内溝68が形成されている。そして、カートリッジホルダー60の支持軸66は、リンク部材67の案内溝68に移動可能に係合している。従って、カートリッジホルダー60が昇降すれば、カートリッジホルダー60の位置に応じてリンク部材67もカートリッジホルダー60と共に昇降することとなる。このリンク機構の昇降範囲の上限位置には、上限センサS3が配置されており、リンク部材67が上限位置に来たことを検出することができる。
【0053】
図11及び図13に示すように、本装置のフレーム3、例えば図11には示さない塗布ローラ2のユニットのフレームには、キャッピング部69と、これを駆動するキャッピングモータ70が設けられている。キャッピング部69は、キャッピングモータ70の駆動軸に連結された湾曲したアーム71の先端に設けられたローラ状の部材である。
【0054】
次に、本実施形態におけるカートリッジ化された処理液10の供給手段50が有する各種機能の作用効果について説明する。図12中には、リンク部材67の長手方向及び案内溝68の形成方向に沿って、カートリッジホルダー60及び支持軸66の移動範囲を供給手段50の機能別に示してある。以下に説明するように、支持軸66が最も下にある位置から案内溝68の長さの範囲が、図11で示すように、供給手段50がキャッピング状態の位置からその他の機能に至る領域まで移動するための範囲である。その上の範囲が、供給手段50が図14で示す用紙塗布機能を発揮する範囲である。そのさらに上の範囲が、供給手段50が図15で示すクリーニング機能を発揮する範囲である。
図11はキャッピング状態を示す。カートリッジホルダー60は最低位置に設定されており、塗布ローラ2と供給手段50は離れている。キャッピングモータ70がキャッピング部69をカートリッジホルダー60に向けて回動させ、キャッピング部69が供給手段50の塗布部54を押し下げて収納部52内に押し込んでいる。従って、塗布部54が乾燥してしまうことはない。
【0055】
図14は塗布状態を示す。図11に示すキャッピング状態において、キャッピングモータ70を駆動してキャッピング部69をカートリッジホルダー60から退避させた後、昇降モータ63を必要量だけ駆動してカートリッジホルダー60を上昇させ、所定の塗布位置に設定する。この位置決めは、カートリッジホルダー60の検出片65とこれを検出するセンサによって行なうことができる。この時、供給手段50の塗布部54は上方に突出した状態で塗布ローラ2に接触しており、塗布ローラ2を回動させれば塗布ローラ2の表面に処理液10を塗布することができる。用紙13が供給された場合には、所定のタイミングで塗布ローラ2をさらに必要量だけ上昇させ、又は対向ローラ651を下降させることにより、塗布ローラ2と対向ローラ51との間に用紙13を挟んで挟持搬送することにより、用紙13の片面に処理液10を塗布することができる。
【0056】
図15はクリーニング状態を示す。図14に示す塗布状態から、昇降モータ63をさらに上昇方向に駆動し、リンク部材67が上限センサS3によって検知されるまでカートリッジホルダー60を上昇させる。この時、塗布ローラ2は供給手段50の清掃部57の傾斜面に所定の圧力で接した状態にある。また、供給手段50の塗布部54は、塗布ローラ2に押されて収納部52内に押し込まれた状態にある。この状態で塗布ローラ2を回動させれば、塗布ローラ2の周面に付着した汚れを清掃部57によって除去することができる。なお、清掃前に、塗布状態で塗布ローラ2に処理液10を塗布し、一定の時間を経過した後に清掃することとすれば、増粘して塗布ローラ2に付着・固化した処理液10が清掃時までに軟化して除去しやすくなる。
【0057】
図16はカートリッジホルダー60から外した供給手段50をキャップ72で密閉して保管する状態を示している。供給手段50の上面側に被せたキャップ72は、清掃部57を覆うサイズの箱型であって、その内下面には、塗布部54だけを隔離して密封する密閉溝部73が設けられている。このキャップ72によれば、清掃部57の乾燥が防止され、また塗布部54を二重に密閉するので処理液10の蒸発乾燥が確実に防止できるという効果が得られる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態によれば、処理液10を保持し、その処理液10を供給し、供給した処理液10を塗布ローラ2に塗布し、また塗布ローラ2を清掃するという各機能を、一つのカートリッジに集約したので、単純化された安価な構成となり、特に処理液関係のメンテナンスが容易な使い勝手のよい供給手段50を実現することができる。
【0059】
また、本実施形態の処理液10の供給手段50によれば、密閉構造であるため、処理液10の濃度変化等の変質が少ない。また、密閉されたカートリッジ状であることから、印刷用前処理装置1,1’の設置にあたって、処理液10の漏れその他の不具合の発生防止のために装置の水平設置に気を配る必要性が少ない。
【符号の説明】
【0060】
1,1’…印刷用前処理装置
2…塗布ローラ
7…処理液の塗布ローラへの供給手段
10…印刷用前処理液(処理液)
15…給紙手段
18…搬送経路
21…排紙手段としての排紙台
25…制御手段
35…下側案内板
40…重ねローラ
50…処理液の塗布ローラへの供給手段
52…収納部
54…塗布部
57…清掃部
60…カートリッジホルダー
69…キャッピング部
A…塗布タイミングセンサ
B…塗布タイミングセンサ
S1…ペーパーセンサ
S2…後端センサ
S3…上限センサ
R1…搬送ローラとしての第1タイミングローラ
R2…請求項における第1の搬送ローラとしての第2タイミングローラ
R3…請求項における第2の搬送ローラとしての第3タイミングローラ
R4…搬送ローラとしての第4タイミングローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枚葉状の被印刷体に印刷用前処理液を塗布する印刷用前処理装置において、
所定の間隔をおいて配置され、少なくとも一方が移動することにより他方との間に被印刷体を挟んで回動する一対の塗布ローラと、
前記一対の塗布ローラの少なくとも一方に印刷用前処理液を供給する供給手段と、
前記一対の塗布ローラの間に供給される被印刷体を検出するセンサと、
前記センサが被印刷体を検出した場合に前記一対の塗布ローラの少なくとも一方を移動させて他方との間に被印刷体を挟んだ状態で回動させることにより被印刷体に印刷用前処理液を塗布するように制御する制御手段と、
を有することを特徴とする印刷用前処理装置。
【請求項2】
前記一対の塗布ローラの回動軸方向についての幅が、被印刷体の幅よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の印刷用前処理装置。
【請求項3】
被印刷体の搬送方向について前記一対の塗布ローラの上流及び下流にそれぞれ第1の搬送ローラ及び第2の搬送ローラが設けられており、
前記第1の搬送ローラの搬送速度は前記一対の塗布ローラの搬送速度以下であり、前記第2の搬送ローラの搬送速度は前記一対の塗布ローラの搬送速度以上であり、
かつ前記第2の搬送ローラの搬送力は前記一対の塗布ローラの搬送力よりも小さいことを特徴とする請求項2記載の印刷用前処理装置。
【請求項4】
前記第1の搬送ローラの上流側において、被印刷体の搬送方向に沿って一対の搬送ローラと一対の重ねローラが並んで配置されており、
前記一対の搬送ローラによる被印刷体の挟持位置での接線方向と前記一対の重ねローラによる被印刷体の挟持位置での接線方向が所定角度で交差しており、
前記一対の重ねローラで挟持されている先行の被印刷体の後端に対して一対の搬送ローラで搬送された後行の被印刷体の前端を重ねて搬送することを特徴とする請求項3に記載の印刷用前処理装置。
【請求項5】
前記供給手段が、印刷用前処理液を収納する収納部と、回転する前記塗布ローラに接触して印刷用前処理液を塗布する塗布部と、前記収納部に収納されている印刷用前処理液を前記塗布部に供給する供給部と、回転する前記塗布ローラに接触して清掃を行う清掃部とを有することを特徴とする請求項4記載の印刷用前処理装置。
【請求項1】
枚葉状の被印刷体に印刷用前処理液を塗布する印刷用前処理装置において、
所定の間隔をおいて配置され、少なくとも一方が移動することにより他方との間に被印刷体を挟んで回動する一対の塗布ローラと、
前記一対の塗布ローラの少なくとも一方に印刷用前処理液を供給する供給手段と、
前記一対の塗布ローラの間に供給される被印刷体を検出するセンサと、
前記センサが被印刷体を検出した場合に前記一対の塗布ローラの少なくとも一方を移動させて他方との間に被印刷体を挟んだ状態で回動させることにより被印刷体に印刷用前処理液を塗布するように制御する制御手段と、
を有することを特徴とする印刷用前処理装置。
【請求項2】
前記一対の塗布ローラの回動軸方向についての幅が、被印刷体の幅よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の印刷用前処理装置。
【請求項3】
被印刷体の搬送方向について前記一対の塗布ローラの上流及び下流にそれぞれ第1の搬送ローラ及び第2の搬送ローラが設けられており、
前記第1の搬送ローラの搬送速度は前記一対の塗布ローラの搬送速度以下であり、前記第2の搬送ローラの搬送速度は前記一対の塗布ローラの搬送速度以上であり、
かつ前記第2の搬送ローラの搬送力は前記一対の塗布ローラの搬送力よりも小さいことを特徴とする請求項2記載の印刷用前処理装置。
【請求項4】
前記第1の搬送ローラの上流側において、被印刷体の搬送方向に沿って一対の搬送ローラと一対の重ねローラが並んで配置されており、
前記一対の搬送ローラによる被印刷体の挟持位置での接線方向と前記一対の重ねローラによる被印刷体の挟持位置での接線方向が所定角度で交差しており、
前記一対の重ねローラで挟持されている先行の被印刷体の後端に対して一対の搬送ローラで搬送された後行の被印刷体の前端を重ねて搬送することを特徴とする請求項3に記載の印刷用前処理装置。
【請求項5】
前記供給手段が、印刷用前処理液を収納する収納部と、回転する前記塗布ローラに接触して印刷用前処理液を塗布する塗布部と、前記収納部に収納されている印刷用前処理液を前記塗布部に供給する供給部と、回転する前記塗布ローラに接触して清掃を行う清掃部とを有することを特徴とする請求項4記載の印刷用前処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−130878(P2012−130878A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286060(P2010−286060)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】
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