説明

印刷用塗工紙およびその製造方法

【課題】優れた表面平滑性を有し、かつ印刷平滑性やインキ着肉性等の印刷適性に優れた印刷用塗工紙およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ギャップタイプのツインワイヤーフォーマー、次いで2基以上のシュープレスで脱水後、乾燥して抄紙された原紙上に、顔料と接着剤を主成分とする顔料塗工層を片面あたり2層有する印刷用塗工紙において、該原紙に隣接する下塗り塗工層が、水溶性接着剤を顔料100質量部あたり15〜50質量部含有し、かつ顔料として平均粒子径が1.0〜3.5μm、粒度分布測定曲線の75質量%に該当する粒子径(D75)と25質量%に該当する粒子径(D25)との比、D75/D25が1.5〜4.0の範囲にある軽質炭酸カルシウムを50質量部以上含有する印刷用塗工紙で、下塗り顔料塗工液をフィルムトランスファー方式により塗工し、さらに上塗り塗工層を設けた後、熱ソフトカレンダーで平滑化仕上げ処理して製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用塗工紙およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に印刷用塗工紙は、原紙上に顔料と接着剤を主成分とする塗工液を塗工、乾燥して製造され、塗工液の塗工量や塗工紙の仕上げ方法によって、キャストコート紙、アート紙、コート紙、微塗工紙等に分類される。これらの塗工紙は、これに多色印刷又は単色印刷を施して、チラシ、パンフレット、ポスター等の商業用印刷物として、あるいは書籍、雑誌等の出版物として広く使用されている。近年、印刷物のビジュアル化、カラー化の進展と共に、印刷用塗工紙の高品質化の要求が高まっており、白紙光沢度、平滑度、白色度等の白紙品質、および印刷平滑性等の印刷仕上り等の品質が重要視されている。また、特に商業用印刷物のうちでもチラシやパンフレット等は、宣伝媒体としての目的から、低コストで印刷仕上がりのよいものが求められてきている。従って、使用される紙も薄物、軽量化に向かっている。
【0003】
印刷用塗工紙の製造方法としては、抄紙と塗工を別々の工程で行うオフマシン方式と、一台のマシンで抄紙と塗工を同時に行うオンマシン方式があり、オンマシン方式の方がより効率的な生産が可能である。このため、軽量塗工紙を生産する設備としては、一般にオンマシン方式が採用されており、抄紙後に顔料塗工液を塗工する方式として、フィルムトランスファー方式であるゲートロールコータやロッドあるいはブレードメタリングサイズプレスコータ、ファウンテン方式であるショートドウェルブレードコータなどが使用されている。
【0004】
一方、より高品質の塗工紙を得る目的で、安価な顔料を含む下塗り塗工液を塗工し、白紙品質や印刷品質を考慮した上塗り塗工液を塗工する多層塗工が従来から行われている。従来、顔料塗工液を塗工する面には、澱粉を主体とする表面サイズが行われ、原紙中に顔料塗工液が染み込まないようにされている。しかし、オンマシン方式で多層塗工を行う場合は、下塗り顔料塗工液の塗工が澱粉表面サイズを兼ねることになるため、下塗り顔料塗工液が原紙内に浸透してしまい、下塗り塗工後の表面に十分な平滑性を得ようとすると下塗り顔料塗工液の塗工量を多くする必要があった。
【0005】
また、下塗り塗工層と上塗り塗工層を共にブレード塗工方式にすると、高い表面平滑性と品質を有する塗工紙を得ることができるが、軽量塗工紙を製造する場合、塗工時の操業性を考慮すると、原紙米坪を減らすには限度があり、ある程度の原紙米坪が必要なため、その分塗工量が制限される。このため、ブレード塗工方式の場合、6g/m2未満の塗工量では十分な表面平滑性を維持することが難しい。
【0006】
そこで、従来から顔料塗工層をフィルムトランスファー方式により塗工する手法が種々提案され、主に、塗工速度1100m/分以上で発生するミストや塗料のガムアップを解決するための手段が開示されている(特許文献1、2、3、4、5参照)。また、ブレード塗工に匹敵する優れた光沢性、平滑性を発揮するフィルムトランスファー塗工用塗料も紹介されている(特許文献6参照)。ここには、低粘度の澱粉系接着剤を使用して、顔料塗工液の濃度を58%以上という高濃度にすることで特徴を持たせているが、使用している澱粉系接着剤が低粘度のため、フィルムトランスファー方式で塗工後、塗工層中で澱粉系接着剤がマイグレーションを起こし、印刷ムラを発生させる恐れがある。
【0007】
また、印刷用塗工紙の顔料としてトリスルホアルミン酸カルシウム(以下、「サチンホワイト」と称する)を使用することは従来から知られている。例えば、上塗り塗工層にサチンホワイトを配合し、塗工層に一定の空隙容積を保持することで、吸収着肉性やインキ乾燥性などを改善する方法が提案されている(特許文献7参照)。また、サチンホワイトにカオリンやプラスチックピグメント等の顔料を組み合わせて使用し、塗工紙に高い表面平滑性や高い白紙光沢を付与する方法も紹介されている(特許文献8、9、10参照)。
【0008】
また、緊度が0.7g/cm以下である原紙上に下塗り塗工層を形成し、下塗り層を設けた後の透気度が8〜80秒である下塗り塗工層上に沈降性炭酸カルシウムと重質炭酸カルシウムを併用した上塗り層を設けた嵩高艶消し塗工紙が提案されている(特許文献11参照)。さらに同文献には、下塗り塗工層用顔料としてサチンホワイトも例示されているが、特定の透気度を得るために好適な顔料の一例として記載されているに過ぎない。また、サチンホワイトおよび特定量の水溶性接着剤を含有する下塗り塗工層を、フィルムトランスファー方式により形成する方法が提案されている(特許文献12)。同文献には、特定の平均粒子径を有するデラミネーテッドカオリンを併用することにより、更なる品質の向上を図っているが、特定のデラミネーテッドカオリンを使用すると製造コストが高くなる問題がある。
【0009】
【特許文献1】特許第3143892号公報
【特許文献2】特許第2967723号公報
【特許文献3】特許第2910030号公報
【特許文献4】特許第3328554号公報
【特許文献5】特許第3328922号公報
【特許文献6】特許第2737897号公報
【特許文献7】特開平11−247097号公報
【特許文献8】特開平09−256295号公報
【特許文献9】特開平09−67794号公報
【特許文献10】特開平02−14098号公報
【特許文献11】特開平07−238495号公報
【特許文献12】特開2007−63737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、優れた表面平滑性を有し、かつ印刷平滑性やインキ着肉性等の印刷適性に優れた印刷用塗工紙およびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記の課題について鋭意研究を重ねた結果、ギャップタイプのツインワイヤーフォーマー、次いで2基以上のシュープレスで脱水後、乾燥して抄紙された原紙上に、顔料と接着剤を主成分とする顔料塗工層を片面あたり2層有する印刷用塗工紙において、該原紙に隣接する下塗り塗工層が水溶性接着剤を顔料100質量部あたり15〜50質量部含有し、かつ顔料として平均粒子径が1.0〜3.5μmの範囲にあり、粒度分布測定曲線の75質量%に該当する粒子径(D75)と25質量%に該当する粒子径(D25)との比、D75/D25が1.5〜4.0の範囲にある軽質炭酸カルシウムを50質量部以上含有することで、優れた表面平滑性を有し、かつ印刷平滑性やインキ着肉性等の印刷適性に優れた印刷用塗工紙を得ることができ、また、ギャップタイプのツインワイヤーフォーマー、次いで2基以上のシュープレスで脱水後、乾燥して抄紙された原紙に隣接する下塗り塗工層が、平均粒子径が1.0〜3.5μmの範囲にあり、粒度分布測定曲線の75質量%に該当する粒子径(D75)と25質量%に該当する粒子径(D25)との比、D75/D25が1.5〜4.0の範囲にある軽質炭酸カルシウムを50質量部以上含有する顔料塗工液をフィルムトランスファー方式により塗工し、さらに上塗り塗工層を設けた後、熱ソフトカレンダーに通紙して平滑化仕上げ処理を行うことにより優れた表面平滑性を有し、かつ印刷平滑性やインキ着肉性等の印刷適性に優れた印刷用塗工紙を製造できることから本発明を完成するに至った。
【0012】
特に、下塗り塗工層に顔料として、トリスルホアルミン酸カルシウムを2〜30質量部含有することが好ましい。
また、下塗り塗工層用の水溶性接着剤が澱粉誘導体であることが好ましい。
また、下塗り塗工層に表面サイズ剤を顔料100質量部あたり0.1〜8質量部含有し、その表面サイズ剤が、スチレン・アクリル系、オレフィン系、またはスチレン・マレイン酸系の共重合体の少なくとも一つから選択されたものであることが好ましい。
【0013】
また、下塗り塗工層を形成するフィルムトランスファー方式の塗工装置が、ロッドメタリングサイズプレスであり、さらにフィルムトランスファー方式の塗工装置が、抄紙から塗工工程までを連続して行うオンマシンコーターであり、塗工速度が1400m/分以上で効率のよい生産を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係わる印刷用塗工紙は、優れた表面平滑性を有し、かつ印刷平滑性やインキ着肉性等の印刷適性に優れたものが得られるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の詳細について述べる。
本発明において、原紙に使用するパルプとしては、特に限定されるものではなく、例えば、一般に使用されている晒広葉樹パルプ(LBKP)や晒針葉樹パルプ(NBKP)等の漂白化学パルプ、砕木パルプ(GP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、リファイナ砕木パルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ、脱墨古紙パルプ(DIP)、損紙などが適宜混合使用される。近年、環境問題の観点から、DIPの配合が要望されるが、本発明においては、DIPを配合した場合も、効率良く、高品質な印刷用塗工紙を得ることができる。また、ケナフ等の非木材繊維原料から得られるパルプ繊維、合成パルプ、無機繊維等の1種又は2種以上を原紙に配合することもできる。機械パルプや脱墨古紙パルプは、必要に応じて漂白して使用することもでき、漂白の程度も任意に行うことができる。なお、パルプの漂白には、塩素ガスのような分子状塩素や二酸化塩素のような塩素化合物を使用しない漂白工程を採用することが、環境保全の観点から好ましく、このような漂白工程を経たパルプとしては、ECFパルプやTCFパルプを挙げることができる。
【0016】
さらに原紙に内添される填料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、石膏、タルク、クレー、焼成カオリン、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、デラミネーテッドカオリン、珪藻土、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等の無機顔料や尿素・ホルマリン樹脂微粒子、微小中空粒子等の有機顔料等が例示でき、古紙や損紙等に含まれる填料も再使用できる。填料は2種以上の混合使用も可能である。填料の配合量は、一般に紙(原紙)灰分が3〜20質量%の範囲になるように添加される。
【0017】
また、原紙中にはパルプや填料の他に、内添サイズ剤、アニオン性、ノニオン性、カチオン性あるいは両性の歩留り向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤等の抄紙用内添助剤を、必要に応じて添加することができる。内添サイズ剤の具体例としては、例えば、アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、スチレン−アクリル系、高級脂肪酸系、石油樹脂系、ロジン系などのサイズ剤が挙げられる。また、歩留り向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤の具体例としては、例えば、アルミニウム等の多価金属化合物(具体的には、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、塩基性アルミニウム化合物等)、各種澱粉類、ポリアクリルアミド、尿素樹脂、ポリアミド・ポリアミン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミイン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド等が例示できる。また、本発明の所望する効果を妨げない範囲で、パルプ繊維間結合の阻害機能を有する嵩高剤、柔軟剤を使用することも可能である。嵩高剤、柔軟剤の具体例としては、例えば、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物、多価アルコールと脂肪酸エステル化合物のポリオキシアルキレン化合物、脂肪酸ポリアミドアミン、多価アルコール系界面活性剤、油脂系非イオン界面活性剤等が例示できる。かかる嵩高剤、柔軟剤の添加量は、一般に、パルプに対して0.05〜2.0質量%程度である。
【0018】
本発明は、上記の原材料で調成した紙料を、ギャップタイプのツインワイヤーを用いて、ヘッドボックスから2つのワイヤー間に吐出して紙層を形成させた後、2基のシュープレスで脱水後、乾燥して、原紙を抄造する。このギャップタイプのツインワイヤーフォーマーは、2枚のワイヤーで形成されるギャップにヘッドポックスから紙料を吐出することにより、当初より紙料が2枚のワイヤーに挟まれた状態で脱水、紙層が形成されていくので、長網抄紙機やオントップ型のハイブリッドフォーマーと比べて、ワイヤーパートにおける紙料の乱れが小さく、均一な紙層を高速で形成することができる。抄速については、特に限定されるものではないが、一般的に1400m/分以上であり、塗工紙の生産性を考えると、1500m/分以上であることが好ましい。
【0019】
ギャップフォーマーを有する抄紙機に付設されて使用されるウェットプレス装置としては、高速抄紙条件に適合するような装置であることが好ましい。即ち、従来のロール/ロール間に形成される狭いニップ部にフェルトと共に湿紙を通過させて脱水するウェットプレス装置では、湿紙の固形分濃度を高めるためには線圧を高くすることから、ニップ内ではロール表面付近の水圧が急速に増加し、紙層間での砕けが発生する。このため、高速抄紙条件に適合したシュータイプの幅広ニップを有するウェットプレス装置が好ましい。1基のシュープレスで脱水する場合、例えば1400m/分以上の高速抄紙では脱水能力が不十分であり、フェルトの型付き、所謂フェルトマークが問題となることから、2基以上のシュープレスで脱水することが好ましい。なお、脱水能力的には、2基のシュープレスで十分であり、抄紙機のスペースやコストの問題から、2基のシュープレスとすることが好ましい。
【0020】
原紙の抄紙条件については、ギャップタイプのツインワイヤーフォーマーで抄紙して、次いで2基のシュープレスで脱水することを除いて特に限定は無く、例えば、酸性抄紙、中性抄紙、弱アルカリ抄紙等のいずれの方式でも良い。ただ近年、紙の保存性が要求されることから、中性抄紙により抄紙された原紙が好ましい。原紙には、澱粉誘導体、ポリビニルアルコールあるいはポリアクリルアミド等の接着剤を用いて、通常のサイズプレス処理を施すこともでき、また、ソフトカレンダー等による平滑化仕上げ処理を施すこともできるが、工程が増えることから、サイズプレス処理は行わずに下塗り塗工層を形成させることが好ましい。これらの抄紙条件で抄紙された原紙の米坪としては、30〜70g/m2が好ましい。
【0021】
上記で抄紙した原紙上に、顔料と接着剤を主成分とする下塗り塗工層を形成するが、原紙上に顔料を接着し、塗工紙の表面強度を発現させるため、下塗り塗工層に水溶性接着剤や水分散性接着剤が使用される。本発明においては、水溶性接着剤が顔料100質量部あたり15〜50質量部含有することが必要で、より好ましくは18〜40質量部である。ここで水溶性接着剤を多く配合することの理由としては、下塗り塗工層中への上塗り塗工液の浸透を抑制することができるためである。因みに、水溶性接着剤が15質量部未満の場合は、上塗り塗工液の浸透性を抑制することが難しく、50質量部を超える場合は、下
塗り用顔料塗工液の流動性が悪化して塗工ムラが発生し易い。また、何れの場合も下塗り
塗工後および上塗り塗工後の平滑性が低下してしまう。
【0022】
本発明の下塗り塗工層用の水溶性接着剤としては、例えば、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、デキストリン、冷水可溶性澱粉などの澱粉誘導体、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白などの蛋白質類、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコールやその変性品などが使用できるが、その中でも、下塗り用顔料塗工液の流動性が良好であり、かつ原材料が安価である澱粉誘導体が好ましい。
【0023】
また、顔料塗工層用の接着剤として、水溶性接着剤の他に本発明の効果を妨げない範囲において、水分散性接着剤を使用することができる。水分散性接着剤としては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、スチレンーメチルメタクリレートーブタジエン共重合体ラテックス等の共役ジエン系共重合体ラテックス、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルの重合体または共重合体ラテックス等のアクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル重合体ラテックス等のビニル系重合体ラテックス、あるいはこれらの各種重合体ラテックスをカルボキシル基等の官能基含有単量体で変性した重合体または共重合体ラテックス等が挙げられ、顔料100質量部あたり1〜15質量部、好ましくは3〜10質量部配合する。
【0024】
本発明においては、下塗り塗工層用の顔料として、平均粒子径が1.0〜3.5μmの範囲にあり、粒度分布測定曲線の75質量%に該当する粒子径(D75)と25質量%に該当する粒子径(D25)との比、D75/D25が1.5〜4.0の範囲にある軽質炭酸カルシウムを含有する塗工液を、塗工することによって、下塗り塗工層の被覆性を向上させて、優れた表面平滑性を有し、かつ印刷平滑性やインキ着肉性等の印刷適性に優れた印刷用塗工紙を得るところに特徴がある。
【0025】
本発明に使用される軽質炭酸カルシウムは、一般的に塗工用に使用される軽質炭酸カルシウムと比べて、平均粒子径が大きくかつ粒度分布がシャープであることに特徴があり、このため接着剤要求量も少なく、高平滑な下塗り塗工層が得られる。また、一般的に塗工用に使用される重質炭酸カルシウムと比べて平均粒子径で比較した場合に接着剤要求量が少ないとともに、より大きな粒子径の比率が少ないことから、高平滑な下塗り塗工層が得られる。本発明においては、平均粒子径を1.0〜3.5μm、より好ましくは1.2〜3.0μm、D75/D25が1.5〜4.0、より好ましく1.6〜3.8μmで、高平滑な下塗り塗工層を形成することができる。ちなみに、平均粒子径が1.0μm未満、あるいはD75/D25が1.5未満のシャープな粒度分布を有する場合は、原紙への浸透が大きくなり、被覆性が低下して高平滑な下塗り層を形成することができず、平均粒子径が3.5μmを超えると、粗い顔料粒子が多く、またD75/D25が4.0を超えると粒度分布がブロードになる過ぎて、いずれも高平滑な下塗り層を形成することができず好ましくない。また、前記軽質炭酸カルシウムの配合部数が50質量部未満の場合、表面平滑性及び印刷平滑性等の所望する品質が得られ難い。より好ましくは60質量部以上である。ここで、本発明で使用する軽質炭酸カルシウムは、炭酸ガス法(消石灰スラリーに炭酸ガスを吹き込んで製造)や特願2003−125824号公報に記載された方法によって製造されたものを粉砕して使用する。この時の粉砕機としては製紙用顔料の湿式粉砕にごく一般に使用されるアトライター、振動ミル、ボールミル、竪型サンドミル、横型サンドミル、ジェットミル等が挙げられる。また、粉砕メディアとしてはガラス、セラミック、アルミナ、ジルコニア等の硬質原料で製造された球状のボールが挙げられ、粒子径としては0.1〜10mmで、粉砕効率を考慮してメディアの充填率は使用する粉砕機に応じて適宜調節する。
【0026】
本発明では、さらに下塗り塗工層の塗料被覆性を向上させて品質の良好な塗工紙を得るために、水酸化カルシウムと硫酸アルミニウムとの反応によって得られる無機錯体化合物であり、針状の粒子形状を有する顔料であるサチンホワイトを2〜30質量部含有することが好ましい態様である。
【0027】
サチンホワイトについては、特に限定するものではないが、平均粒子径が0.1〜1.3μmの範囲にあると、平滑性がより向上し、しかも印刷強度を維持するために必要な接着剤量が過大にならないため好ましい。ここで言う平均粒子径は、セディグラフ5100(沈降方式、マイクロメリティクス社製)で測定した値である。また分散液pHの高いサチンホワイトを使用すると、ドライヤーによる乾燥或いは熱スーパーカレンダー等の熱処理による色戻り現象を助長したり、塗工紙を長期間保存した際に白色度の低下を来たしたりする虞があるので、8.5〜11.0であるサチンホワイトを使用するのがより好ましい。なお、サチンホワイトは、特願2005−292065号公報に記載の製造方法によって自製されたものを使用することもできる。
【0028】
なお、サチンホワイトを添加する場合は塗工液の保水性が低くなる傾向にあるため、塗工時に塗工液の水分が速やかに原紙に吸収されためにロール上の塗工液が固形化してロールから剥がれにくくなり、ロール汚れが発生する恐れがある。これを防止するために、下塗り塗工層用の顔料塗工液中には、増粘剤または保水剤の少なくとも1種を含有させることが好ましい。かかる増粘剤または保水剤としては、ポリカルボン酸、アクリル系共重合体などのアルカリ増粘タイプ、アクリル系高分子、ポリエチレンオキサイドなどの親顔料ベースポリマーの両末端に親油基を配した会合タイプ、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどの天然由来タイプが挙げられ、特に作業性、コストの面からアクリル系共重合体エマルジョンが好ましく用いられる。増粘剤または保水剤の配合量としては顔料100質量部に対して、0.01〜1.0質量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.05〜0.8質量部の範囲である。
【0029】
本発明の下塗り塗工層に使用する顔料は、前記の軽質炭酸カルシウム、サチンホワイトの他に、本発明の効果を妨げない範囲において、例えば、カオリン、タルク、クレー、焼成カオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、亜硫酸カルシウム、石膏、硫酸バリウム、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、ケイソウ土、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ベントナイト、セリサイト等の無機顔料のほか、尿素ホルマリン樹脂微粒子、微小中空粒子等の有機顔料等、一般の塗工紙用として知られている顔料を併用することができる。
【0030】
また、本発明の下塗り塗工層に、表面サイズ剤を顔料100質量部あたり0.1〜8質量部含有させることにより、表面サイズ剤の効果の観点から下塗り塗工層中への上塗り塗工液の浸透をさらに抑制することができ、より好ましい。
【0031】
ここで、表面サイズ剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、スチレン・アクリル系、オレフィン系、スチレン・マレイン酸系、スチレン・アクリル酸エステル系、スチレン・マレイン酸エステル系の共重合体等、公知公用のものを単独あるいは併用して使用することができる。中でも、スチレン・アクリル系、オレフィン系、スチレン・マレイン酸系の共重合体が好ましく使用され、エマルジョンタイプ、溶液タイプのいずれも使用することができる。
【0032】
また、下塗り塗工層用の顔料塗工液には、必要に応じて、青系統あるいは紫系統の染料や有色顔料、蛍光染料、酸化防止剤、老化防止剤、導電剤、消泡剤、紫外線吸収剤、分散剤、pH調整剤、離型剤、耐水化剤、撥水剤等の各種助剤を適宜配合することができる。
【0033】
本発明における下塗り塗工層用の顔料塗工液の固形分濃度は、25〜65質量%の範囲で選択できる。塗工量の調整や操業性を考慮すると、35〜55質量%の範囲であることが好ましい。
【0034】
本発明の製造方法において、前述の下塗り塗工層を形成するための顔料塗工液は、フィルムトランスファー方式の塗工装置で塗工することが好ましい。フィルムトランスファー方式の塗工装置としては、ゲートロール、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレスがあり、これらの塗工装置のうち、塗工量の調整や高速塗工適性に優れるロッドメタリングサイズプレスを使用することがより好ましい。なお、下塗り塗工層を乾燥する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、蒸気乾燥、ガスヒーター乾燥、電気ヒーター乾燥、赤外線ヒーター乾燥等の各種方式が採用できる。
【0035】
本発明の下塗り塗工層の乾燥塗工量としては、片面当たり1〜10g/m2であり、好ましくは2〜8g/m2である。因みに塗工量が1g/m2未満の場合、塗料の表面被覆性が劣り、所望する品質が得がたい。また、10g/m2を超えると、ミスティング等塗工操業上の問題が発生する場合があり、塗工ムラも発生し易い。
【0036】
次に、前記の形成した下塗り塗工層上に上塗り塗工層用の顔料塗工液を塗工するが、上塗り塗工層用の顔料塗工液を塗工する前に、ソフトカレンダー等による平滑化仕上げ処理を施すと、上塗り塗工層形成後も高い平滑性を得ることができ好ましい。
【0037】
本発明の上塗り塗工層に使用する顔料としては、特に限定されるものではなく、所望とする品質に合わせて適宜選択される。例えば、カオリン、タルク、クレー、焼成カオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、サチンホワイト、亜硫酸カルシウム、石膏、硫酸バリウム、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、ケイソウ土、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ベントナイト、セリサイト等の無機顔料のほか、尿素ホルマリン樹脂微粒子、微小中空粒子等の有機顔料等、一般の塗工紙用として知られている顔料を1種類または2種類以上選択して使用することができる。
【0038】
本発明の上塗り塗工層には、塗工紙の表面強度を発現させるため、前記下塗り塗工層と同様、水溶性接着剤や水分散性接着剤が使用される。水溶性接着剤としては、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、デキストリン、冷水可溶性澱粉などの澱粉類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白などの蛋白質類、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコールやその変性品などが使用できる。本発明の上塗り塗工層に含有する水溶性接着剤は、特に限定されるものではないが、顔料100質量部あたり1〜15質量部、好ましくは3〜8質量部配合する。上塗り塗工層においては、水溶性接着剤を下塗り塗工層と同様に多く配合すると、塗工紙の光沢および平滑発現性が低下する傾向にあるため注意が必要である。
【0039】
また、本発明の上塗り塗工層に使用される水分散性接着剤としては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、スチレンーメチルメタクリレートーブタジエン共重合体ラテックス等の共役ジエン系共重合体ラテックス、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルの重合体または共重合体ラテックス等のアクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル重合体ラテックス等のビニル系重合体ラテックス、あるいはこれらの各種重合体ラテックスをカルボキシル基等の官能基含有単量体で変性した重合体または共重合体ラテックス等が挙げられ、これらの中から、最終塗工紙品質に応じて、1種あるいは2種以上を適宜選択して使用する。配合量については、特に限定されるものではないが、顔料100質量部あたり5〜20質量部、好ましくは8〜12質量部配合する。
【0040】
また、上塗り塗工層用の顔料塗工液には、増粘剤や保水剤のほかに、必要に応じて、青系統あるいは紫系統の染料や有色顔料、蛍光染料、酸化防止剤、老化防止剤、導電剤、消泡剤、紫外線吸収剤、分散剤、pH調整剤、離型剤、耐水化剤、撥水剤等の各種助剤を適宜配合することができる。
【0041】
本発明における上塗り塗工層用の顔料塗工液の顔料、接着剤、さらには必要に応じて使
用される各種助剤を含む塗工液の固形分濃度は、25〜70質量%の範囲で選択できる。塗工量の調整や操業性を考慮すると、50〜65質量%の範囲であることが望ましい。
【0042】
本発明の上塗り塗工層を形成するための塗工装置は、特に限定されるものではなく、当業界で一般的に使用されているトレーリング、フレキシブル、ロールアプリケーション、ファウンテンアプリケーション、ショートドゥエル等のベベルタイプやベントタイプのブレードコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ロッドブレードコーター、チャンプフレックスコーター、ロッドメタリングサイズプレス、ゲートロールサイズプレス、グラビアコーター、カーテンコーター、ダイコーター、スプレーコーター等の塗工装置が適宜使用できるが、高速塗工適性、生産性、品質等を考慮すると、ロッドメタリングサイズプレスやゲートロールサイズプレス等のフィルムトランスファー方式の塗工装置やファウンテンアプリケーションタイプのブレードコーターが好ましい。
【0043】
また、フィルムトランスファー方式の塗工装置で塗工する場合は、一般的に両面同時に塗工されるが、アプリケーターロール出口において、紙離れが安定せず、片面あるいは両面とも紙表面に塗工ムラが発生し易い。この塗工ムラが発生した場合は、塗工紙品質を著しく低下させるが、特に上塗り塗工層での塗工ムラについては、塗工紙品質を更に低下させる。そこで、両面とも安定した紙離れをさせるように、上塗り塗工層を形成させる塗工方法として、上塗り塗工層用顔料塗工液を、一方の面に塗工、乾燥後、他方の面に塗工、乾燥することが好ましい。なお、上塗り塗工層を乾燥する方法は特に限定されるものではなく、例えば、蒸気乾燥、ガスヒーター乾燥、電気ヒーター乾燥、赤外線ヒーター乾燥等の各種方式が採用できる。
【0044】
本発明の上塗り塗工層の乾燥塗工量としては、片面当たり2〜12g/m2であり、好ましくは4〜10g/m2である。因みに塗工量が2g/m2未満の場合、光沢や平滑等、所望する品質が得られない。また、12g/m2を超えると、塗工操業上の問題が発生する場合があり、塗工ムラも発生し易く好ましくない。
【0045】
本発明は、上記の下塗り塗工層をフィルムトランスファー方式、上塗り塗工層をフィルムトランスファー方式またはブレード方式により形成した後、加熱した金属ロールと弾性ロールの組み合わせからなる熱ソフトカレンダーに通紙して平滑化仕上げ処理を必須とする。金属ロールの温度については、特に限定されるものではなく、所望の品質に合わせるため、100〜380℃の範囲で適宜調整される。カレンダーのニップ圧、ニップ数等についても、特に限定されるのではなく、ニップ圧としては200〜450kN/m、ニップ数としては1〜10ニップの範囲で、所望とする品質に合わせて適宜調整する。熱ソフトカレンダーにおけるニップの構成方法としては、金属ロールと弾性ロールの組み合わせからなる1ニップのみを有するカレンダー装置を所望数となる複数で直列に配置する方法、あるいは複数の金属ロールと弾性ロールからなるロール群が鉛直方向、あるいは斜め方向に少なくともロール群の一部が接して配置され、2ニップ以上のニップ数を有する装置を所望数配置する方法、単一のニップを有するカレンダー装置と複数のニップを有するカレンダー装置を組み合わせる方法が例示できる。中でも、複数のニップを有するカレンダー装置のうち、全段が独立してニップ圧を調整可能である多段式カレンダーが最も好ましい形態である。また、金属ロールについては、特に表面を硬質クロムメッキ等で鏡面仕上げされたものを使用すると、より一層効果的である。また、熱ソフトカレンダーの金属ロールと対をなして使用される弾性ロールの材質については特に限定されるものではないが、一般にウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリレート樹脂等の高温高圧で耐久性を示す樹脂ロールが好ましく利用される。また、樹脂ロールの硬度としては、ショアD硬度で85度以上のものを使用すると優れた表面平滑性が得られる。なお、本発明においては、抄紙から塗工工程までをオンラインで行う所謂オンマシンコーターである
ことが、生産性に優れるため好ましいが、抄紙から熱カレンダーまでをオンラインで行うことがより好ましい。
【実施例】
【0046】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、勿論、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、特に断らない限り、例中の部および%はそれぞれ質量部、および質量%を示す。また、使用した薬剤の添加量は、固形分換算の質量部を示す。
【0047】
実施例1
(下塗り塗工層用顔料塗工液Aの調製)
平均粒子径1.7μm、D75/D25が2.7の軽質炭酸カルシウムA70部、1級カオリン(商品名:ウルトラホワイト90、BASF社製)30部からなる顔料スラリーに、接着剤として澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製)25部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:OJ−1000H、JSR社製)5部を添加し、さらに助剤として消泡剤および染料を順次加えて、更に水を加えて固形分濃度30%の下塗り塗工層用の顔料塗工液Aを得た。
【0048】
(上塗り塗工層用顔料塗工液Aの調製)
分散剤としてポリアクリル酸ナトリウムを分散するカオリン100部に対して0.1部添加した水溶液に、カオリン(商品名:ハイドラグロス90、ヒューバー社製)85部、軽質炭酸カルシウムA15部を添加し、コーレス分散機で分散して顔料スラリーを調製した。この顔料スラリーに、顔料100部に対して、酸化澱粉(商品名:王子エースA、前出)5部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:OJ1000H、前出)10部、および消泡剤、染料などの助剤を添加して、最終的に固形分濃度が58%の上塗り塗工層用の顔料塗工液Aを調製した。
【0049】
(印刷用塗工紙の作製)
酸素−オゾン−水酸化ナトリウム−過酸化水素−二酸化塩素からなる工程で多段漂白されたLBKP55%(CSF500ml)と、酸素−オゾン−水酸化ナトリウム−過酸化水素−二酸化塩素からなる工程で多段漂白されたNBKP35%(CSF500ml)と、新聞古紙から製造したDIP(CSF180ml)10%からなるパルプスラリー100%に、填料として軽質炭酸カルシウム(商品名:タマパールTP−121、奥多摩工業社製)を原紙灰分が10%となるように添加した後、パルプスラリーの全固形分に対して硫酸アルミニウム0.5%、カチオン澱粉(商品名:エースK−100、王子コーンスターチ社製)0.5%、アルキルケテンダイマーサイズ剤(商品名:サイズパインK−287、荒川化学工業社製)0.1%、ポリアクリルアミド(商品名:ポリストロン851、荒川化学工業社製)0.02%を順次添加し、紙料を調製した。この紙料を運転抄速1500m/分でギャップフォーマーによる抄紙を行った後、2基のシュープレスで脱水、乾燥し、40g/mの原紙を得た。この原紙上に、下塗り塗工層用顔料塗工液Aを、ロッドメタリングサイズプレスを用いて、片面塗工量が3g/m(固形分)となるように両面同時に塗工後、ソフトカレンダーで平滑化処理を施した。このようにして得られた下塗り塗工層上に、上塗り塗工層用顔料塗工液Aを、ロッドメタリングサイズプレスを用いて、片面塗工量が6g/m(固形分)となるように、一方の面に塗工、乾燥後、他方の面に塗工、乾燥を行った。このようにして得られた両面塗工紙を、180℃に加熱した金属ロールと樹脂ロールよりなる熱ソフトカレンダーに、線圧200kN/cmの加圧条件で、片面が金属ロールと樹脂ロールにそれぞれ4回ずつ接触するように合計8ニップの通紙を行い、米坪58g/mの印刷用塗工紙を得た。
【0050】
実施例2
実施例1の下塗り塗工層用顔料塗工液Aの調製において、軽質炭酸カルシウムAを95部、カオリンを5部、澱粉の配合部数を20部に変更した以外は、実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0051】
実施例3
実施例1の下塗り塗工層用顔料塗工液Aの調製において、軽質炭酸カルシウムAを平均粒子径2.5μm、D75/D25が1.7である軽質炭酸カルシウムBとした以外は、実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0052】
実施例4
実施例2の下塗り塗工層用顔料塗工液の調製において、カオリンに変えて平均粒子径0.44μmの自製サチンホワイトとした以外は実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0053】
実施例5
(下塗り塗工層用顔料塗工液Bの調製)
実施例4の自製サチンホワイト20部と軽質炭酸カルシウムA80部からなる顔料スラリーに、顔料100部に対して、接着剤として澱粉(商品名:エースA、前出)25部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:OJ−1000H、前出)5部を添加し、さらに表面サイズ剤(商品名:ポリマロン1308S、荒川化学工業社製)0.5部を添加し、助剤として消泡剤および染料を順次加えて、更に水を加えて固形分濃度30%の下塗り塗工層用の顔料塗工液Bを得た。
【0054】
(上塗り塗工層用顔料塗工液Bの調製)
分散剤としてポリアクリル酸ナトリウムを分散するカオリンに対して0.1部添加した水溶液に、カオリン(商品名:ハイドラグロス90、前出)60部、軽質炭酸カルシウムA40部を添加し、コーレス分散機で分散して顔料スラリーを調製した。この顔料スラリーに、顔料100部に対して、酸化澱粉(商品名:王子エースA、前出)2部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:OJ1000H、前出)11部、および消泡剤、染料などの助剤を添加して、最終的に固形分濃度が63%の上塗り塗工層用の顔料塗工液Bを調製した。
【0055】
(印刷用塗工紙の作製)
酸素−オゾン−水酸化ナトリウム−過酸化水素−二酸化塩素からなる工程で多段漂白されたLBKP35%(CSF500ml)と、酸素−オゾン−水酸化ナトリウム−過酸化水素−二酸化塩素からなる工程で多段漂白されたNBKP35%(CSF500ml)と、新聞古紙から製造したDIP(CSF180ml)30%からなるパルプスラリー100%に、填料として軽質炭酸カルシウム(商品名:タマパールTP−121、前出)を原紙灰分が10%となるように添加した後、パルプスラリーの全固形分に対して硫酸アルミニウム0.5%、カチオン澱粉(商品名:エースK−100、前出)0.5%、アルキルケテンダイマーサイズ剤(商品名:サイズパインK−287、前出)0.1%、ポリアクリルアミド(商品名:ポリストロン851、前出)0.02%を順次添加し、紙料を調製した。この紙料を運転抄速1500m/分でギャップフォーマーによる抄紙を行った後、2基のシュープレスで脱水、乾燥し、40g/mの原紙を得た。この原紙上に、下塗り塗工層用顔料塗工液Bを、ロッドメタリングサイズプレスを用いて、片面塗工量が4g/m(固形分)となるように両面同時に塗工後、ソフトカレンダーで平滑化処理を施した。このようにして得られた下塗り塗工層上に、上塗り塗工層用顔料塗工液Bを、ファウンテンアプリケーションタイプのブレードコーターを用いて、片面塗工量が8g/m(固形分)となるように、一方の面に塗工、乾燥後、他方の面に塗工、乾燥を行った。このようにして得られた両面塗工紙を、180℃に加熱した金属ロールと樹脂ロールよりなる熱ソフトカレンダーに、線圧200kN/cmの加圧条件で、片面が金属ロールと樹脂ロールにそれぞれ4回ずつ接触するように合計8ニップの通紙を行い、米坪64g/mの印刷用塗工紙を得た。
【0056】
比較例1
実施例1の下塗り塗工層用顔料塗工液の調製において、軽質炭酸カルシウムA40部、カオリン60部に変更した以外は、実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0057】
比較例2
実施例1の下塗り塗工層用顔料塗工液の調製において、軽質炭酸カルシウムAを重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ−60、備北粉化工業社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0058】
比較例3
実施例1の下塗り塗工層用顔料塗工液の調製において、平均粒子径が0.5μm、D75/D25が2.0である軽質炭酸カルシウムCに変更した以外は、実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0059】
比較例4
実施例1の下塗り塗工層用顔料塗工液の調製において、平均粒子径が6.9μm、D75/D25が3.8の軽質炭酸カルシウムDに変更した以外は、実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0060】
比較例5
実施例1の下塗り塗工層用顔料塗工液の調製において、接着剤としての澱粉を10部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス7部に変更した以外は、実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0061】
実施例および比較例で得た印刷用塗工紙は、以下の方法で評価し、その結果を表1に示した。なお、以下の評価試験は、23℃,相対湿度50%の環境下で行った。
【0062】
(白紙光沢)
ISO 8254−1(1999)に準じた75度光沢度計を用いて5箇所の測定を行い、その平均を求めた。
【0063】
(PPS平滑度)
パーカープリントサーフ(PPS)表面平滑度試験機(機種名:MODEL M−569型、MESSMER BUCHEL社製、英国)を用い、バッキングディスク:ソフトラバー、クランプ圧力:0.98MPaで5箇所の平滑度測定を行ない、その平均を求めた。
【0064】
(印刷光沢度)
RI印刷試験機(明製作所製)で、印刷インキ(商品名:FUSION−G墨Sタイプ、大日本インキ化学工業社製)を0.6ml使用して印刷を行い、23℃、50%RHの雰囲気下で48時間放置してインキを乾燥させ、光沢度計(型式:GM−26D、村上色彩技術研究所製)を用いて60°光沢度を測定した。
【0065】
(印刷平滑性)
印刷光沢度測定用サンプルを用いて、印刷平滑性を目視評価した。評価は次の5段階評価で行った。5(優)−1(劣)であり、評価が2以下のものは、実用上問題がある。
【0066】
(インキ着肉性)
RI印刷試験機で、1色目に印刷インキ(商品名:TOYOKING TKU CC藍、東洋インキ製造社製)を0.5ml使用して印刷を行い、その後2色目に印刷インキ(紙試験用インキ紅、東洋インキ製造社製)を0.3ml使用して15秒、30秒、60秒、90秒、120秒、180秒と時間を変えて重ね刷りした時の2色目紅インキの着肉ムラを目視評価した。なお、インキ着肉ムラの最も劣るところを評価し、評価は5段階評価で行った。5(優)−1(劣)であり、評価が2以下のものは、実用上問題がある。
【0067】
【表1】

【0068】
表1から明らかなように、実施例における下塗り層に平均粒子径が1.0〜3.5μm、粒度分布測定曲線の75質量%に該当する粒子径(D75)と25質量%に該当する粒子径(D25)との比、D75/D25が1.5〜4.0の範囲にある軽質炭酸カルシウムを50質量部以上含有すると、優れた表面平滑性を有し、かつ印刷平滑性やインキ着肉性の良好な印刷適性が得られている。さらにサチンホワイトを配合した実施例4、5では、より平滑性、光沢度の向上が得られている。またさらに、表面サイズ剤を配合した実施例5はさらに平滑性の向上が認められている。これに対して、平均粒子径、D75/D25、あるいは澱粉配合量が規定範囲以外である比較例1〜5においては、いずれも平滑度、光沢度が劣り、印刷適性(インキ平滑性、インキ光沢度)も低下している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギャップタイプのツインワイヤーフォーマー、次いで2基以上のシュープレスで脱水後、乾燥して抄紙された原紙上に、顔料と接着剤を主成分とする顔料塗工層を片面あたり2層有する印刷用塗工紙において、該原紙に隣接する下塗り塗工層が水溶性接着剤を顔料100質量部あたり15〜50質量部含有し、かつ顔料として平均粒子径が1.0〜3.5μmの範囲にあり、粒度分布測定曲線の75質量%に該当する粒子径(D75)と25質量%に該当する粒子径(D25)との比、D75/D25が1.5〜4.0の範囲にある軽質炭酸カルシウムを50質量部以上含有することを特徴とする印刷用塗工紙。
【請求項2】
前記下塗り塗工層の顔料として、トリスルホアルミン酸カルシウムを2〜30質量部含有することを特徴とする請求項1に記載の印刷用塗工紙。
【請求項3】
前記下塗り塗工層の水溶性接着剤が澱粉誘導体であることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷用塗工紙。
【請求項4】
前記下塗り塗工層が、表面サイズ剤を顔料100質量部あたり0.1〜8質量部含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の印刷用塗工紙。
【請求項5】
前記下塗り塗工層に含有する表面サイズ剤が、スチレン・アクリル系、オレフィン系、またはスチレン・マレイン酸系の共重合体の少なくとも一つから選択されたものであることを特徴とする請求項4に記載の印刷用塗工紙。
【請求項6】
ギャップタイプのツインワイヤーフォーマー、次いで2基以上のシュープレスで脱水後、乾燥して抄紙された原紙上に、顔料と接着剤を主成分とする顔料塗工層を片面あたり2層有する印刷用塗工紙において、該原紙に隣接する下塗り塗工層が水溶性接着剤を顔料100質量部あたり15〜50質量部含有し、かつ平均粒子径が1.0〜3.5μmの範囲にあり、粒度分布測定曲線の75質量%に該当する粒子径(D75)と25質量%に該当する粒子径(D25)との比、D75/D25が1.5〜4.0の範囲にある軽質炭酸カルシウムを50質量部以上含有する顔料塗工液をフィルムトランスファー方式で塗工し、さらに上塗り塗工層を設けた後、熱ソフトカレンダーに通紙して平滑化仕上げ処理を行うことを特徴とする印刷用塗工紙の製造方法。
【請求項7】
前記下塗り塗工層を形成するフィルムトランスファー方式の塗工装置が、ロッドメタリングサイズプレスであることを特徴とする請求項6に記載の印刷用塗工紙の製造方法。
【請求項8】
前記上塗り塗工層を形成する塗工方式が、フィルムトランスファー方式またはブレード方式であることを特徴とする請求項6または7に記載の印刷用塗工紙の製造方法。
【請求項9】
前記顔料塗工層を形成する塗工装置が、抄紙から塗工工程までを連続して行うオンマシンコーターであり、塗工速度が1400m/分以上であることを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載の印刷用塗工紙の製造方法。

【公開番号】特開2009−221613(P2009−221613A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63929(P2008−63929)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】