説明

印刷装置、印刷装置の制御方法、プログラム

【課題】特殊なパターンを印刷物に付与することなく、装置の印刷動作に対して影響を与えることなく濃度調整動作を行うタイミングを判定し、適確なタイミングで装置の濃度調整動作を行うようにすること。
【解決手段】検査部CPU5001は、プリンタ部300で印刷する印刷データから濃度測定を行う領域を抽出し、抽出された領域における期待濃度を決定しておく。そして、プリンタ部300で印刷処理された印刷媒体が搬送されてくると、検査部CPU5001は、該印刷媒体から画像データを読み取り、読み取った画像データにおける前記濃度測定領域に対応する領域の実測濃度を算出し、前記濃度測定領域に対応する領域の前記期待濃度と前記濃度測定領域に対応する領域の前記実測濃度との濃度差を算出し、該算出された濃度差に基づき、プリンタ部300の印刷濃度を調整する調整動作を実行するか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷装置の制御方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷物において印刷が適正に行われたか否かを検査する装置が従来より知られている。
特許文献1には、紙面などに印刷された画像をカラーセンサにより読み込み、印刷の際にプリンタ装置に入力された元の画像と読み込んだ画像とを比較し、印刷された画像が適切か否かを検査できるようにすることが記載されている。
【0003】
ところで、電子写真方式のような画像形成装置では、環境の変化や長時間の使用による装置各部の変動があると、得られる画像濃度が変動することが一般的に知られている。特にカラー画像形成装置の場合、わずかな環境変動でも画像濃度の変動が生じ、カラーバランスを崩す恐れがあるため、一定の画像濃度を保つための調整機能を持つのが一般的である。
【0004】
特許文献2では、画像形成装置の装置各部の変動が起こっても一定の画像濃度、階調特性が得られるように、感光体上あるいは中間転写体上に濃度検知用の基準トナー画像のパターンを形成し、そのパターンの濃度を光学センサで検知する方法が開示されている。
【0005】
なお、特許文献1のように印刷物の画像検査を行うような場合、装置各部の変動が生じることで検査を通らなくなる(検査結果が常にNG(印刷不良)となってしまう)ことが考えられるため、その画像濃度を調整するタイミングが重要となる。
【0006】
特許文献3では、記録材上に検査用パターンを形成し、光学的に濃度を検出することにより、濃度差を検出するとともに、前記濃度差に基づいて画像形成条件の調整を行うかの判断をする画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−39492号公報
【特許文献2】特開平11−231584号公報
【特許文献3】特開2006−201613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3に記載の画像形成装置では、記録材上に検査用のパターンを設ける必要があるため、最終的な印刷物に検査パターンが印刷されるか、余白領域を設定し、裁断するなどの制限が必要となってしまう。
【0009】
なお、特許文献2に記載の画像形成装置のように、転写材担持体若しくは中間転写体上に検査パターンを形成して、装置の調整を行うか否かの判断をすることも考えられるが、この場合、装置が行う印刷動作を一時的に中断する必要がある。
【0010】
このため、装置が行う印刷動作に影響を与えることなく、また最終的な印刷物に特殊な検査パターンを付加することなく、装置の調整を行うタイミングを判断可能な装置の開発が望まれていた。
【0011】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものである。本発明の目的は、特殊なパターンを印刷物に付与することなく、装置の印刷動作に対して影響を与えることなく濃度調整動作を行うタイミングを判断可能にする仕組みを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、印刷データに基づいて印刷媒体に印刷処理を行う印刷手段と、前記印刷手段が印刷する印刷データから濃度測定を行う領域を抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出された領域において印刷されることが期待される濃度を示す期待濃度を決定する決定手段と、前記印刷手段により印刷処理された印刷媒体の印刷面から画像データを読み取る読取手段と、前記読取手段により読み取られた画像データにおける前記濃度測定領域に対応する領域の実測濃度を算出する実測濃度算出手段と、前記濃度測定領域に対応する領域の前記期待濃度と前記濃度測定領域に対応する領域の前記実測濃度との濃度差を算出する濃度差算出手段と、前記濃度差算出手段により算出された濃度差に基づき、前記印刷手段の印刷濃度を調整する調整動作を実行するか否かを判定する判定手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、特殊なパターンを印刷物に付与することなく、装置の印刷動作に対して影響を与えることなく濃度調整動作を行うタイミングを判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例を示す印刷装置を適用した印刷システムの構成を示す断面図である。
【図2】コントローラ部400の内部構成を示すブロック図である。
【図3】検査部500の内部構成を示すブロック図である。
【図4】検査部500内の読取部の配置を示すイメージ図である。
【図5】検査部500における濃度測定領域抽出制御の一例を示すフローチャートである。
【図6】塗りつぶし領域と測定領域の関係を示すイメージ図である。
【図7】濃度測定領域管理テーブルの一例を示すイメージ図である。
【図8】コントローラ部400における印刷制御の一例を示すフローチャートである。
【図9】ガンマ補正を示すイメージ図である。
【図10】検査部500における濃度測定制御の一例を示すフローチャートである。
【図11】濃度測定領域における平均値算出処理を説明するためのイメージ図である。
【図12】濃度測定結果テーブルを示すイメージ図である。
【図13】濃度差の推移を示すイメージ図である。
【図14】コントローラ部400における調整制御(図8のS305)の一例を示すフローチャートである。
【図15】調整パターンの一例を示すイメージ図である。
【図16】特定色調整パターンの一例を示すイメージ図である。
【図17】差分調整パターンの一例を示すイメージ図である。
【図18】実施例2に係る検査部500における検査部初期化制御の一例を示すフローチャートである。
【図19】実施例2に係る検査設定メニューを示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0016】
まず、本実施形態におけるシステム構成、コントローラ部構成および検査部構成を図を用いて説明する。
〔システム構成〕
図1は、本発明の一実施例を示す印刷装置を適用した印刷システムの構成を示す断面図である。
【0017】
図1において、100は本発明の印刷装置を適用した印刷システムである。印刷システム100は、操作部200、プリンタ部300、コントローラ部400、検査部500、排紙トレイ部600を有する。
【0018】
画像形成を行う際は、コントローラ部400よりカラー画像形成装置のトナー色剤であるYMCKの色信号が、それぞれ露光制御部(303Y、303M、303C、303K)に送出される。
【0019】
露光制御部(303Y、303M、303C、303K)は、上記YMCKの色信号に応じ、レーザ光を点灯出力する。4個の帯電器(302Y、302M、302C、302K)により帯電した感光ドラム(301Y、301M、301C、301K)に前記レーザ光が照射されることで、感光ドラム(301Y、301M、301C、301K)上に画像信号に応じた静電潜像が形成される。
【0020】
なお、感光ドラム(301Y、301M、301C、301K)は、不図示のモータにより反時計回りに回転している。感光ドラム(301Y、301M、301C、301K)に形成された静電潜像は現像器(305Y、305M、305C、305K)により現像される。また、前記現像器(305Y、305M、305C、305K)はトナーカートリッジ(304Y、304M、304C、304K)と接続されており、常時トナーが補給される構成となっている。
【0021】
中間転写体306は、感光ドラム(301Y、301M、301C、301K)と接触しており、感光ドラム(301Y、301M、301C、301K)の回転に伴って時計回りに回転し、現像されたトナー像が感光ドラムから転写される。中間転写体306上に転写されたトナー像は、転写ローラ307によって、カセット311、312のいずれかから搬送されてきた印刷媒体(以下、記録材)に転写される。なお、中間転写体306上に残ったトナーをクリーニングするために、クリーニング手段309が、転写ローラ307の後に設けられている。また、中間転写体306上のトナー像の濃度を観測するため濃度センサ310が配置されている。
【0022】
トナー像が転写された記録材は、その後、定着部308に搬送される。定着部308においては、内部のヒータと加圧ローラにより、熱と圧力により転写されたトナー像を溶解定着させる。
【0023】
定着部308を通過した記録材を、図示しないフラッパにより、一旦、パス313からパス314に導き、記録材の後端がパス313を抜けた後、記録材をスイッチバックさせてパス315から排出ローラ317に導く。これにより、現像剤が転写された面を下向きの状態(フェイスダウン)にして排出ローラ317によりプリンタ部300から排出することが可能である。
【0024】
また、記録材の両面に画像形成を行う場合、記録材を定着部308からパス313、パス314に導き、記録材の後端がパス313を抜けた直後に記録材をスイッチバックさせ、図示しないフラッパにより両面搬送パス316に導く。両面搬送パス316に導かれた記録材に対し、再度、転写部307で静電潜像が転写され、定着部308で定着処理が施される。排出ローラ317から排出された印刷出力物(記録材)は検査部500に送り込まれる。
【0025】
検査部500では、センサ530により、プリンタ部300から送り込まれ記録材を検知すると、該記録材の印刷面から画像データを、読取部505(読取部A5051a及び読取部B5051b)で読取る。読取った画像データは、検査装置制御部510に送られる。画像データを読取った後、記録材は、検品装置制御部510による検品結果に応じてそのまま排紙トレイ部600に送り込まれるか、NGトレイ520へ送り込まれる。詳細には、検品装置制御部510は、検品結果がOKの場合、記録材を排紙トレイ部600に送り込み、一方、検品結果がNGの場合、記録材をNGトレイ520に送り込むように制御する。
【0026】
〔コントローラ部構成〕
図2は、コントローラ部400の内部構成を示すブロック図である。
コントローラ部400は、画像形成デバイスであるプリンタ部300、操作部200、LANなどの外部I/Fと接続され、画像情報やデバイス情報を処理し、制御する。
CPU4301は、後述する制御処理ルーチンなどの各種プログラムを実行する。ROM4302には、CPU4301が動作するための起動プログラムなどがコンピュータ読取可能に記録(記憶)されている。RAM4303は、CPU4301が各種プログラムを実行する際に、ワークエリアや画像データの一時的な記憶場所である画像メモリなどとして用いられる。NVRAM4304は、各種制御用パラメータを記憶する不揮発性のRAMである。
【0027】
Network部4305は、LAN700に接続され、電子メールの送受信やホストからのPDL(Page Description Language)データの入出力など各種ネットワーク制御を行う。また、Network部4305には、NVRAM(不図示)が接続されており、MACアドレスなどNetwork部4305に関する各種パラメータを保持している。
【0028】
操作部I/F4306は、操作部200との通信を行うI/Fである。プリンタ通信I/F4307は、プリンタ部300のCPU(不図示)と通信を行うためのI/F部である。電源制御I/F4308は、CPU4301からの命令により、電源制御部4500に対し、各種電源の停止を指示する。
【0029】
タイマ4309は、内部にて現在時刻を保持したり、設定された時間が経過したかどうかを監視したりする。ACC I/F4317は、検査部500と通信を行うためのI/Fである。HDD I/F4318は、磁気記憶装置(HDD4100)と通信を行うためのI/Fである。以上のデバイスがシステムバス4319上に配置される。
【0030】
Image Bus I/F4310は、システムバス4319と画像信号を転送する画像バス4311を接続するブリッジである。画像バス4311には、画像圧縮部4312、画像回転部4313、ラスタイメージプロセッサ(RIP)部4314、プリンタI/F部4316が配置される。
【0031】
画像圧縮部4312は、JPEG、JBIG、MMR、MHの圧縮伸張処理を行う。画像回転部4313は、画像データの回転処理を行う。ラスタイメージプロセッサ(RIP)部4314は、PDLコードをビットマップのラスタイメージに展開する。プリンタI/F部4316は、プリント出力用画像データに対し、プリンタの補正、解像度変換など、プリンタ用の画像処理を行い、プリンタ部300に、印刷データを転送する。
【0032】
〔検査部構成〕
図3は、検査部500の内部構成を示すブロック図である。
図3に示すように、検査部500は、検査装置制御部510、プリンタ部300から排出される記録材の読取装置である読取部A5051a及び読取部B5051b、及び、HDD5011を有する。検査装置制御部510は、画像情報の処理や検査部内の各デバイスを制御を行う部分である。
【0033】
検査装置制御部510において、CPU5001は、検査部の制御に関して後述する制御処理ルーチンなどの各種プログラムを実行される。ROM5002は、CPU5001が動作するための起動プログラムなどがコンピュータ読取可能に記録(記憶)されている。RAM5003は、CPU5001が各種プログラムを実行する際に、ワークエリアや画像データの一時的な記憶場所である画像メモリなどとして用いられる。
【0034】
HDD I/F5004は、磁気記憶装置(HDD5011)と通信を行うためのI/Fである。読取I/F_A5052a及び読取I/F_B5052bは、記録材の搬送路上に設けられた読取部A5051a及び読取部B5051bを制御して、記録材を読み取らせ、該読み取られた画像データを受け取る。なお、読取部A5051a及び読取部B5051bは、センサアレイで構成され、搬送される記録材の全領域が読み取り可能なように、図4に示すように記録材の搬送路上に配置されている。
【0035】
図4は、検査部500内の読取部の配置を示すイメージ図である。
読取画像処理部5008は、読取I/F_A5052a及び読取I/F_B5052bより送られてくる画像データに対し、変倍処理、ガンマ補正処理などを行い、処理結果をRAM5003に転送する。
【0036】
モータ制御部5009は、検査部500内にある各種モータを制御する。センサ制御部5010は、検査部500内にある各種センサの状態を検知し、CPU5001に通知する。例えば、センサ制御部5010は、センサ530によりプリンタ部300から送り込まれ記録材を検知したことを、CPU5001に通知する。
【0037】
HOST I/F5007は、コントローラ部400内ACC I/F4317と接続され、印刷設定情報や画像データなどの送受信を行う。
画像処理部5006は、磁気記憶装置(HDD5011)に格納された画像データ(以下、期待画像データ)と読取部A5051a及び読取部B5051bにより読み取られRAM5003に格納された画像データ(以下、検査画像データ)を読み出す。そして、画像処理部5006は、これらの画像データに、位置補正処理を実施した後、これらの画像データの比較処理を行う。以上のデバイスがシステムバス5005上に配置される。
【0038】
なお、読取部A5051a及び読取部B5051bは、白色LEDとRGBフィルタの付いたCCDセンサにより構成される。読取部A5051a及び読取部B5051bは、搬送される記録材上に光を照射し、その反射光を、フィルタによりRGB3色の色成分に分解し、読取データとして検査装置制御部510に送出する。
【0039】
上記のような構成において、本発明の制御フローについて、以下に説明する。
なお、印刷システム100は、印刷用の画像データをジョブとして、Network部4305より受信する。そして、印刷システム100は、受信した印刷データに基づき、濃度測定領域抽出制御(図5)、印刷制御(図8)、濃度測定制御(図10)、調整制御(図14)の順で制御を実行する。以下、それぞれの制御について、フローチャートを用いて説明する。
【0040】
〔濃度測定領域抽出制御〕
まず、図5を用いて、検査部500における濃度測定領域抽出制御について説明する。
図5は、検査部500における濃度測定領域抽出制御の一例を示すフローチャートである。なお、このフローチャートの制御は、検査部500のCPU5001(以下、検査部CPU5001)がROM5002にコンピュータ読取可能に記録されたプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0041】
検査部CPU5001は、HOST I/F5007を介してコントローラ部400より印刷データを受信すると(S101)、該受信した印刷ジョブデータをHDD5011内に保存し、S102に処理を進める。なお、この印刷ジョブデータは、後述する図8のS201でコントローラ部400から転送されるものである。また、本実施例の説明では、検査部500が受信する印刷データは、PDLデータであるとして説明するが、本発明はこれに限定されるものでない。本発明を実施するに当たって、印刷データがPDLデータである必要はない。
【0042】
S102では、検査部CPU5001は、上記S101で受信した印刷データから1つの描画命令を取得する。
そして、検査部CPU5001は、上記S102で取得した描画命令が塗りつぶしを伴う命令であるか判定する(S103)。そして、上記S102で取得した描画命令が塗りつぶしの命令でないと判定した場合(S103でNo)、検査部CPU5001は、S108へ処理を遷移させる。
【0043】
一方、上記S102で取得した描画命令が塗りつぶしの命令であると判定した場合(S103でYes)、検査部CPU5001は、S104へ処理を進める。
S104では、検査部CPU5001は、上記S102で取得した描画命令で塗りつぶされる領域(以下、塗りつぶし領域)の面積を算出する。次に、検査部CPU5001は、上記S104で算出した塗りつぶし領域の面積と予め保有する閾値とを比較し、上記塗りつぶし領域の面積が上記閾値を超えるか否かにより、上記塗りつぶし領域の面積が濃度測定に十分な面積であるか否かを判定する(S105)。なお、上記閾値(即ち、濃度測定に十分な面積)については、解像度など読取部505の精度によって予め決定され、ROM5002やHDD5011に格納されているものとする。
【0044】
ここで、図6を用いて、上記S105の比較判定処理について説明する。
図6は、塗りつぶし領域と測定領域の関係を示すイメージ図である。
塗りつぶし領域の境界部分は、印刷部300及び読取部505にて周囲画素の影響を受けるため正確な濃度測定に適さないため、図6に示すように、実際に測定領域とするサイズより大きなサイズの塗りつぶし領域が必要となる。本実施例では、測定領域を32画素×32画素、非測定部を32画素分とし、上記閾値を96(=32+32+32)画素×96画素とする。よって、上記S105では、塗りつぶし領域の面積が96画素×96画素より大きいか否かを確認する。
【0045】
上記S105にて、上記塗りつぶし領域の面積が閾値を超えないと判定した場合(S105でNo)、検査部CPU5001は、S108へ処理を遷移させる。
一方、上記S105にて、上記塗りつぶし領域の面積が閾値より大きいと判定した場合(S105でYes)、S106へ処理を遷移させる。
S106では、検査部CPU5001は、上記S102で取得した描画命令で指定された塗りつぶし属性のRGB空間の各成分の濃度情報(以下、塗りつぶし濃度)に対して、RGBからCMYKへの色空間変換を実施する(S106)。即ち、RGB空間の濃度情報である塗りつぶし濃度をプリンタ部300が用いる印刷剤色(CMYK)を色成分とする色空間の濃度情報に変換する。ここで、色空間変換に使用するテーブルは、コントローラ部400が印刷時に使用するテーブルを使用する。印刷システム100が起動し初期化をする際に、検査部CPU5001は予め前記テーブルをコントローラ部400から受信してRAM5003又はHDD5011に格納しておく。
【0046】
続いて、検査部CPU5001は、上記S102で取得した描画命令での塗りつぶし領域に関する情報を濃度測定領域としてHDD5011に登録する(S107)。ここでは、図7のようなテーブル(濃度測定領域管理テーブル)を作成し、期待濃度、出現ページ、開始位置として、HDD5011に保存する。
【0047】
詳細には、検査部CPU5001は、上記S102で取得した描画命令での塗りつぶし領域から測定領域(図6)の開始位置を算出する。非測定部を32画素分とする場合、塗りつぶし領域の開始位置(x,y)に(32,32)を加算した位置(x+32,y+32)を測定領域として算出する。さらに、検査部CPU5001は、上記S106のCMYK変換後の塗りつぶし濃度、上記描画命令の出現ページ、及び上記算出した測定領域の開始位置を、期待濃度、出現ページ、及び開始位置として、濃度測定領域管理テーブル(図7)に保存する。
【0048】
図7は、本実施例の濃度測定領域管理テーブルの一例を示すイメージ図である。
例えば、算出された測定領域の開始位置(X,Y)が(764,311)、描画命令の出現ページが「1」ページ、CMYK変換後の塗りつぶし濃度(C,M,Y,K)が(0,255,255,0)の場合、濃度測定領域として、図7の601のように登録される。
【0049】
そして、上記S107の濃度測定領域登録処理が終了すると、検査部CPU5001は、S108に処理を進める。
S108では、検査部CPU5001は、上記S101で受信したデータ内の全ての描画命令について上記S102〜S107の処理を行った(描画命令終了)か否か判定する。そして、まだ上記処理を行っていない描画命令がある(描画命令が終了でない)と判定した場合(S108でNo)、検査部CPU5001は、上記S102に処理を戻し、次の描画命令に処理を遷移させる。
一方、上記処理を全ての描画命令について終了した(描画命令終了)と判定した場合(S108でYes)、検査部CPU5001は、本濃度測定領域抽出制御を終了する。
【0050】
〔印刷制御〕
次に、図8を用いて、コントローラ部400における印刷制御について説明する。
図8は、コントローラ部400における印刷制御の一例を示すフローチャートである。なお、このフローチャートの制御は、コントローラ部400のCPU4301(以下、コントローラ部CPU4301)がROM4302にコンピュータ読取可能に記録されたプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0051】
コントローラ部CPU4301は、Network部4305を介して印刷ジョブデータを受信すると(S201)、S102に処理を進める。
S202では、コントローラ部CPU4301は、上記S201で受信した印刷ジョブデータをACC I/F4317を介して検査部500に転送する。この印刷ジョブデータが図5のS101で受信される。
【0052】
次に、コントローラ部CPU4301は、上記S201で受信した印刷ジョブデータから1ページ分の印刷ジョブデータを取り出す。そして、コントローラ部CPU4301は、該印刷ジョブデータを印刷するために、該取り出した1ページ分の印刷ジョブデータをRIP部4314にてビットマップデータに展開処理する(印刷データ作成)(S203)。
【0053】
次に、コントローラ部CPU4301は、調整動作が必要(調整タイミング)かどうかを判定する(S204)。詳細には、コントローラ部CPU4301は、検査部500が後述する図10のS314にて調整要求を出しているか、及び、予め設定されHDD4100等に格納されているタイミングに到達したかどうかを判定する。なお、予め設定されHDD4100等に格納されているタイミングとは、例えば1000枚に一度のタイミング又は1ヶ月に1度のタイミング等(特定の周期)を示す。そして、上記いずれかに該当するタイミングであると判定した場合に、調整タイミングであると判定する。
【0054】
そして、調整動作が必要(調整タイミング)であると判定した場合(S204でYes)、コントローラ部CPU4301は、調整動作を実行する(S205)。調整制御の詳細については図14にて後述する。そして、上記S205の調整動作が終了すると、コントローラ部CPU4301は、S206に処理を進める。
一方、調整動作が必要(調整タイミング)でないと判定した場合(S204でNo)、コントローラ部CPU4301は、そのままS206に処理を進める。
【0055】
S206では、コントローラ部CPU4301は、プリンタ部300及び検査部500が準備完了状態かどうかを確認し、印刷が開始できる状態になるまで待つ(S206)。
そして、プリンタ部300及び検査部500が準備完了状態となると(S206でYes)、コントローラ部CPU4301は、印刷処理を実行する(S207)。具体的には、コントローラ部CPU4301は、上記S203にてビットマップデータに展開された印刷データ(ビットマップデータ)をプリンタI/F部4316を介して、プリンタ部300に送出する。なお、プリンタI/F部4316内の不揮発性メモリには、図9に示すような濃度変換テーブル(以後、ガンマ(γ)テーブル)がCMYKの色ごとに記憶されている。プリンタI/F部4316は、このガンマテーブルを用いて、プリンタ部300が理想的な濃度特性となるように、濃度データ(印刷データ)を補正して((C,M,Y,K)→(C',M',Y',K'))、プリンタ部300に送る。
【0056】
図9は、本実施例に係るガンマ補正を示すイメージ図である。
例えば、プリンタI/F部4316が、図9(a)のガンマ補正前の濃度データに対して、図9(b)のガンマテーブルを用いたガンマ補正を施した場合、ガンマ補正結果は、図9(c)のガンマ補正後の濃度データのようになる。このガンマテーブルはCMYKの色ごとにプリンタI/F部4316内の不揮発性メモリに記憶されている。
以下、図8のフローチャートの説明に戻る。
【0057】
そして、上記S207の印刷処理が終了すると、コントローラ部CPU4301は、S208に処理を進める。
S208では、コントローラ部CPU4301は、上記S201で受信した印刷ジョブデータ内のページで上記S203〜S207の処理を行っていないページがあるか(次ページがあるか)否か判定する。そして、まだ上記処理を行っていないページがある(次ページがある)と判定した場合(S208で「あり」)、コントローラ部CPU4301は、上記S203に処理を戻し、次のページに処理を遷移させる。
一方、上記処理を全てのページについて終了した(次ページなし)と判定した場合(S208で「なし」)、コントローラ部CPU4301は、本印刷制御を終了する。
【0058】
〔濃度測定制御〕
まず、図10を用いて、検査部500における濃度測定制御について説明する。
図10は、検査部500における濃度測定制御の一例を示すフローチャートである。なお、このフローチャートの制御は、検査部CPU5001がROM5002にコンピュータ読取可能に記録されたプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0059】
検査部CPU5001は、センサ制御部5010を介してプリンタ部300から記録材が搬送されてきたことを検知すると(S301)、不図示のステップにて、RAM4303内に保持されている濃度調整要求フラグをOFFに初期化し、S302に処理を進める。なお、検査部CPU5001は、プリンタ部300から搬送される記録材の枚数をカウントし、RAM5003に格納する。これにより、検査部CPU5001は、搬送される記録材に対応するページ番号を認識可能となる。
【0060】
S302では、検査部CPU5001は、読取I/F_A5052a及び読取I/F_B5052bから読取部A5051a及び読取部B5051bを制御して、記録材を読み取らせ、記録材の読取画像データを取得する。なお、読取I/F_A5052a及び読取I/F_B5052bより取得される画像データは、読取画像処理部5008において変倍処理、ガンマ補正処理などの読取補正を行った後、RAM5003に格納される。
【0061】
次に、画像処理部5006は、読取画像データと期待画像データを比較するため、画像処理部5006にズレ量の検知を行う(S303)。プリンタ部300の定着熱による記録材の収縮や検査部500内の読取部5051と記録材とのズレなどがあるため、読取画像データと期待画像データの位置を合わせる必要がある。ズレ量の検知の方法としては、検知用に予め決まったパターンを印刷する方法や、期待画像データを用いて、読取データと比較し、最も差分の小さな点を算出するなどの方法が一般的に知られている。本発明では、ズレ量の検知の方法を限定するものではなく、どのような方法を用いてもよい。
【0062】
さらに、画像処理部5006は、上記S303にて検知されたズレ量を元に、読取画像データにアフィン変換を用いた位置補正を実施し、ズレが補正された読取画像データを得る(S304)。なお、上記S303及びS304の処理は、検査部CPU5001からの指示により、画像処理部5006が実行するものとする。
【0063】
次に、検査部CPU5001は、HDD5011に保存していた濃度測定領域テーブル(図7)を参照し、上記S301で検知した記録材に対応するページに測定領域があるかを判定する(S305)。例えば、上記S301で検知した記録材(両面印刷)に対応するページが1ページ及び2ページの場合、図7の例では、1ページ目に601〜603に対応する測定領域、2ページ目に604に対応する測定領域があると判定される。なお、検査部500には、図5のS101で受信した印刷ジョブデータから、記録材が片面印刷であるか両面印刷であるか判断する。
【0064】
そして、上記S301で検知した記録材に対応するページに前記測定領域がないと判定した場合(S305でNo)、検査部CPU5001は、そのまま本濃度測定制御を終了する。
【0065】
一方、上記S301で検知した記録材に対応するページに前記測定領域があると判定した場合(S305でYes)、検査部CPU5001は、S306に処理を進める。
S306では、検査部CPU5001は、上記ページ内にある測定領域から1つの測定領域を選択し、上記位置補正後の読取画像データから上記測定領域に該当する領域を抽出する。ここでは、濃度測定領域テーブル(図7)に登録されている開始点から32×32画素分抽出することとする。
【0066】
次に、S307において、検査部CPU5001は、上記S306で抽出した領域における各画素ごとの濃度(実測濃度)の平均値を算出する(実測濃度算出処理)。なお、抽出した領域では、図11に示すようにRGB各色の画素ごとに濃度が測定されるため、RGBの各色ごとに領域内の各画素の平均値を算出する。
【0067】
図11は、本実施例に係る濃度測定領域における平均値算出処理を説明するためのイメージ図である。なお、図11では、RGB各色ごとに、測定領域内の各画素の測定濃度を、16進数で示してある。
【0068】
次に、S308において、検査部CPU5001は、上記S307にて算出した平均値に対し、図5の濃度測定領域制御のS106と同様に、RGBからCMYKへの色空間変換を実施し、実測濃度を算出する(濃度差算出処理)。
【0069】
次に、検査部CPU5001は、上記S308で算出した実測濃度と図7のテーブルに保存されている期待濃度とのCMYK各色の濃度差を算出する(S309)。
次に、検査部CPU5001は、上記S309で算出されたCMYKの各色の濃度差と、予め設定されて検査部500のHDD5011等に保持さてる閾値とを比較し、CMYKのいずれかの色の濃度差が閾値を越えているかどうか判定する(S310)。なお、上記期待濃度、上記S309で算出した濃度差、上記S310での判定結果は、図12に示すようなテーブルの色(CMYK)ごとの濃度欄、濃度差欄、判定欄にそれぞれ記録され、RAM5003に保存される。
【0070】
図12は、本実施例に係る濃度測定結果テーブルを示すイメージ図である。
図13は、本実施例に係る濃度差の推移を示すイメージ図である。
そして、上記S309で算出されたCMYKのいずれかの色の濃度差が上記閾値を超えていると判定した場合(S310でYes)、検査部CPU5001は、S311に処理を進める。
【0071】
S311では、検査部CPU5001は、濃度調整動作(プリンタ部300の印刷濃度を調整する調整動作)が必要と判断し、濃度調整要求フラグをONにセットし(S311)、S312に処理を進める。
【0072】
一方、上記S309で算出されたCMYKのいずれの色の濃度差も上記閾値を超えていないと判定した場合(S310でNo)、検査部CPU5001は、そのままS312に処理を進める。
【0073】
S312では、検査部CPU5001は、上記S305で存在すると判定された全ての測定領域でまだ上記S306〜S311の処理を行っていない領域がある(次の領域がある)か否か判定する。そして、まだ上記処理を行っていない測定領域がある(次の領域がある)と判定した場合(S312でYes)、検査部CPU5001は、上記S306に処理を戻し、次の測定領域に処理を遷移させる。
【0074】
一方、上記処理を全ての測定領域について終了した(次の領域がない)と判定した場合(S312でNo)、検査部CPU5001は、S313に処理を進める。
S313では、検査部CPU5001は、濃度調整要求フラグがONか否かを判定する。そして、濃度調整要求フラグがONであると判定した場合(S313でYes)、検査部CPU5001は、コントローラ部400に調整動作を要求する(S314)。この要求は、図8のS204で判定される。そして、本濃度測定制御を終了する。
【0075】
一方、濃度調整要求フラグがOFFであると判定した場合(S313でNo)、検査部CPU5001は、そのまま本濃度測定制御を終了する。
〔調整制御〕
次に、図14を用いて、コントローラ部400における調整制御(図8のS305)について説明する。
【0076】
図14は、コントローラ部400における調整制御(図8のS305)の一例を示すフローチャートである。なお、このフローチャートの制御は、コントローラ部CPU4301がROM4302にコンピュータ読取可能に記録されたプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0077】
コントローラ部CPU4301は、調整動作を行う際に、検査部500が接続されているかどうかを確認する(S401)。そして、検査部500が接続されていないと判定した場合(S401でNo)、S402に処理を進める。
【0078】
S402では、コントローラ部CPU4301は、機器の定期調整(例えば、印刷枚数1000枚に1回)のタイミングと判断する。そして、コントローラ部CPU4301は、HDD4100から図15のような調整パターンのパターンデータをCMYKの各色について取得し、図15のようなCMYK全色の調整パターンの印刷準備を行う。そして、S408に処理を進める。
【0079】
図15は、本実施例に係る調整パターンの一例を示すイメージ図である。
図15に示す例では、CMYK各色ごとに、濃度0xD0(208)、0xB0(176)、0x90(144)、0x70(112)、0x50(80)、0x40(64)、0x30(48)、0x20(32)、0x10(16)のパターンを有する。なお、"0x"は16進数表記を示し、カッコ内は10進数表記を示す。
以下、図14のフローチャートの説明に戻る。
【0080】
S408では、コントローラ部CPU4301は、プリンタ部300に対し準備完了状態であるかを確認し、準備完了状態となるまで待つ。そして、プリンタ部300が準備完了状態となったら(S408でYes)、コントローラ部CPU4301は、上記調整パターン(図15)のパターンデータをプリンタ部300に送信して印刷処理する(S409)。この際、本実施例では、記録材を搬送せず、図1に示す中間転写体306に形成される調整パターンのトナー画像を、中間転写体306の途中に予め設置されている濃度センサ310を用いて読み取ることで、調整のための濃度データを測定するものとする。そして、上記S409の印刷処理が完了すると、コントローラ部CPU4301は、S410に処理を進める。
【0081】
S410では、コントローラ部CPU4301は、上記S409の印刷処理内でサンプルした濃度データ(測定結果)と上記調整パターンのパターンデータとを比較して所定の濃度特性が得られるように、プリンタI/F部4316のガンマテーブルを修正する。そして、上記S410のガンマテーブル修正処理が完了すると、コントローラ部CPU4301は、本調整制御を終了する。
【0082】
また、上記S401にて、コントローラ部CPU4301が、検査部500が接続されていると判定した場合(S401でYes)、S403に処理を進める。
S403では、コントローラ部CPU4301は、ACC I/F4317を介して検査部500に濃度測定結果テーブル(図12)を要求して取得(受信)する。なお、検査部CPU5001は、コントローラ部400からの要求に応じてHDD5011に格納される濃度測定結果テーブル(図12)をコントローラ部400に送信する。
【0083】
S404では、コントローラ部CPU4301は、調整制御の要因が定期調整によるものか検査部500の要求によるものかを確認する。そして、調整制御の要因が定期調整ではなく検査部500による要求であると判定した場合(S404でNo)、コントローラ部CPU4301は、S405に処理を進める。
【0084】
S405では、コントローラ部CPU4301は、HDD4100に記憶されている調整パターンのパターンデータから、検査部500から取得した濃度測定結果テーブルで濃度差が大きい色(判定結果がNG「×」の色(以下、特定色))に関してのみのパターンデータを生成し、特定色調整パターンの印刷準備を行う。図12に示す例では、シアンCの濃度「119」で判定結果がNG「×」となっているので、図16に示すような、シアンCに関してのみの調整パターン(特定色調整パターン)のパターンデータを生成する。
【0085】
図16は、特定色調整パターンの一例を示すイメージ図である。
そして、S408に処理を進める。なお、S408以降の処理は同様であるので説明を省略する。
上記S405のように特定色調整パターンを準備することで、検査部500で検査されてOKとなっている色成分に対応するパターンを省略し、無駄な調整動作を省き、迅速に調整動作を実行して、プリンタ部300の印刷動作に対する影響を抑えることができる。
【0086】
また、上記S404にて、コントローラ部CPU4301が、調整制御の要因が定期調整によるものと判定した場合(S404でYes)、コントローラ部CPU4301は、S406に処理を進める。
【0087】
S406では、コントローラ部CPU4301は、HDD4100から全色の調整パターンのパターンデータを取得する。さらに、コントローラ部CPU4301は、濃度測定結果テーブルに格納された検査部500での測定濃度が全ての調整パターンのパターンデータの濃度と一致し、且つ、前記パターンデータの濃度に対応する濃度の濃度差が小さい(判定結果がOK「○」)となるか否かを判定する。
【0088】
そして、検査部500での測定濃度が全ての調整パターンのパターンデータの濃度と一致し、且つ、前記パターンデータの濃度に対応する濃度の濃度差が小さい(判定結果がOK「○」)と判定した場合(S406でYes)、コントローラ部CPU4301は、本調整制御を終了する。これにより、無駄な調整動作の実行を防止し、プリンタ部300の印刷動作に対する影響を防ぐことができる。
【0089】
一方、検査部500での測定濃度が全ての調整パターンのパターンデータの濃度と一致しない、又は、前記パターンデータの濃度に対応する濃度の濃度差が大きい(判定結果がNG「○」)と判定した場合(S406でNo)、コントローラ部CPU4301は、S407に処理を進める。即ち、検査部500での測定パターンが少なく不十分であった場合や、濃度差が大きい場合等は、S407に処理を進める。
【0090】
S407では、コントローラ部CPU4301は、濃度測定結果テーブルに格納された検査部500での濃度測定結果を元に、濃度測定結果テーブルとの差分の調整パターンを準備する。ここでは、全ての調整パターンのパターンデータから、濃度測定結果テーブル内で判定結果がOK「○」の期待濃度と同一色同一濃度のパターンを省略した調整パターンのパターンデータ(差分パターンデータ)を生成し、差分調整パターンの印刷準備を行う。図12に示した例では、シアンCの濃度32(0x20)、イエローYの濃度32(0x20)、ブラックKの濃度32(0x20)はそれぞれ判定結果がOK「○」であり、これらは図15に示した調整パターンに含まれる。よって、図17に示すように、シアンCの濃度「0x20」、イエローYの濃度「0x20」、及びブラックKの濃度「0x20」のパターンを省略した差分調整パターンのパターンデータを生成する。
【0091】
図17は、差分調整パターンの一例を示すイメージ図である。
そして、S407の差分パターン準備処理が終了すると、コントローラ部CPU4301は、S408に処理を進める。なお、S408以降の処理は同様であるので説明を省略する。
【0092】
上記S407のように差分調整パターンを準備することにより、検査部500で検査されてOKとなっている濃度に対応するパターンを省略し、無駄な調整動作を省き、迅速に調整動作を実行して、プリンタ部300の印刷動作に対する影響を抑えることができる。
【0093】
なお、本実施例では、上述したように、中間転写体306に調整パターン画像を形成し、中間転写体306上のトナー像を濃度センサ310により読み取る形で濃度測定を実施している。しかし、記録材を給紙し、実際に記録材に前記調整パターン画像を印刷し、検査部500内の読取部5051を用いて、調整のための濃度データを測定する構成でもよい。
【0094】
以上に説明したように、本実施例によれば、特殊なパターンを印刷物に付与することなく、プリンタ部300の印刷動作に対して影響を与えることなく濃度調整動作を行うタイミングを判定し、適確なタイミングで装置の濃度調整動作が可能となる。
【実施例2】
【0095】
以下、本発明の実施例2について説明する。なお、実施例1と同一の構成の説明に関しては省略する。
実施例2の印刷システム100は、印刷用の画像データをジョブとして、Network部4305より受信する。そして、印刷システム100は、受信した印刷データに基づき、検査部初期化制御(後述する図18)、印刷制御(図8)、濃度測定制御(図10)、調整制御(図14)の順で制御を実行する。印刷制御、濃度測定制御、調整制御に関しては、実施例1の制御と同様であるため、ここでは、検査部初期化制御に関して、図18に示すフローチャートを用いて説明する。
【0096】
〔検査部初期化制御〕
図18は、検査部500における検査部初期化制御の一例を示すフローチャートである。なお、このフローチャートの制御は、検査部CPU5001がROM5002にコンピュータ読取可能に記録されたプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0097】
検査部CPU5001は、HOST I/F5007を介してコントローラ部400より印刷データを受信すると(S501)、該受信した印刷ジョブデータをHDD5011内に保存し、S502に処理を進める。本実施例では、S501で検査部CPU5001が受信する印刷データ内には、検査設定情報が含まれている(付加されている)ものとする。検査設定情報の内容は、印刷ジョブを生成する装置、例えばパーソナルコンピュータ(PC)にインストールされている印刷装置ドライバ(プリンタドライバ)の図19に示すようなユーザインタフェースから、ユーザが設定可能である。そして、PCで印刷ジョブを生成する際に、印刷装置ドライバにより印刷ジョブデータに格納され、該印刷ジョブデータがPCから印刷システム100に送信される。さらに、この印刷ジョブデータは、図8のS201でコントローラ部400から検査部500に転送され、上記S501で受信される。
【0098】
図19は、本実施例に係る検査設定メニューを示すイメージ図である。
図19において、1701は文字品位検査レベル設定欄である。例えば、文字品位検査レベルとして、「厳しい」、「普通」、「甘い」、「検査なし」が設定可能である。この文字品位検査レベル設定欄1701で設定された文字品位検査レベルに応じて、検査装置制御部510により、記録材に印刷が適正に行われたか検査(検品)され、検品結果に応じて記録材が排紙トレイ部600又はNGトレイ520に搬送される。
【0099】
1702は濃度ムラ検査レベル設定欄である。例えば、濃度ムラ検査レベルとして、「厳しい」、「普通」、「甘い」、「検査なし」が設定可能である。この濃度ムラ検査レベル設定欄1702で設定された濃度ムラ検査レベルに応じて、図18の検査部初期化制御が実行される。
【0100】
なお、S502〜S508は、図5の濃度測定領域抽出制御のS102〜S108の処理と同一の処理であるので、説明を省略する。
検査部CPU5001は、上記S501で受信したデータ内の全ての描画命令について上記S502〜S507の処理を終了した(描画命令終了)と判定した場合(S508でYes)、S509に処理を進める。
【0101】
S509では、検査部CPU5001は、上記S501にて受信した印刷データに含まれる検査設定情報の内容を確認する。
次に、検査部CPU5001は、上記S509で確認した検査設定内の濃度ムラ検査レベルに応じて、検査部500のHDD5011等に保持さてる閾値を変更する(S510)、本検査部初期化制御を終了する。
【0102】
例えば、検査設定の濃度ムラ検査レベルが「厳しい」の場合は閾値を「10」に変更し、「普通」の場合は閾値を「20」に変更し、「甘い」の場合は閾値を「30」に変更し、「検査なし」の場合は閾値を「40」に変更する。このように、本実施例では、印刷ジョブに設定された検査レベルに応じて、濃度測定制御(図10のS310)で用いられる閾値を変更するように構成する。これにより、検査設定に応じて濃度調整の閾値が変更されるため、ユーザの要求レベルに応じて調整タイミングを変更することが可能となる。
【0103】
なお、図19に示したような検査設定メニューを、操作部200の表示部に表示して、操作部200から、検査設定を受け付けるように構成してもよい。この場合、コントローラ部CPU4301は、操作部200から設定された検査設定情報をHDD4100等に保持し、該検査設定情報を、図8のS202で印刷ジョブに付加して検査部500に転送してもよい。
【0104】
また、操作部200から設定された検査設定情報をコントローラ部CPU4301が検査部500に転送し、検査部500のHDD5011等で保持し、図18のS510の濃度閾値変更処理で用いるようにしてもよい。
【0105】
以上に説明したように、本実施例によれば、濃度調整動作を行うタイミングを判定する閾値(図10のS310で濃度差を判定する際の判定レベル)を、ユーザ設定により適確に変更して、適切なタイミングで装置の濃度調整動作を可能とする。例えば、ユーザは、高品質な画像が要求される印刷物を印刷する際、濃度ムラ検査レベルを上げて設定し(例えば"厳しい"に設定し)、印刷することで、濃度差が大きくなる前に濃度調整が実行され、結果として高品質な印刷物を得ることが可能となる。また、高品質な画像が要求されていない印刷物を印刷する際、濃度ムラ検査レベルを下げて設定し(例えば"甘い"に設定し)、印刷することで、濃度差が極端に大きくなるまでは濃度調整が実行されず、中断を最小限に抑えて印刷を行うことができる。
【0106】
なお、上述した各種データの構成及びその内容はこれに限定されるものではなく、用途や目的に応じて、様々な構成や内容で構成されることは言うまでもない。
以上、一実施形態について示したが、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラムもしくは記憶媒体等としての実施態様をとることが可能である。具体的には、複数の機器から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用しても良い。
また、上記各実施例を組み合わせた構成も全て本発明に含まれるものである。
【0107】
(他の実施例)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等のプロセッサ)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【0108】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても、1つの機器からなる装置に適用してもよい。
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形(各実施例の有機的な組合せを含む)が可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。即ち、上述した各実施例及びその変形例を組み合わせた構成も全て本発明に含まれるものである。
【0109】
以上に説明したように、本発明によれば、特殊なパターンを印刷物に付与することなく、装置の印刷動作に対して影響を与えることなく濃度調整動作を行うタイミングを判定し、適確なタイミングで装置の濃度調整動作が可能となる。
【符号の説明】
【0110】
200 操作部
300 プリンタ部
400 コントローラ部
500 検品部
510 検品制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷データに基づいて印刷媒体に印刷処理を行う印刷手段と、
前記印刷手段が印刷する印刷データから濃度測定を行う領域を示す濃度測定領域を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された前記濃度測定領域において印刷されることが期待される濃度を示す期待濃度を決定する決定手段と、
前記印刷手段により印刷処理された印刷媒体の印刷面から画像データを読み取る読取手段と、
前記読取手段により読み取られた画像データにおける前記濃度測定領域に対応する領域の実測濃度を算出する実測濃度算出手段と、
前記濃度測定領域に対応する領域の前記期待濃度と前記濃度測定領域に対応する領域の前記実測濃度との濃度差を算出する濃度差算出手段と、
前記濃度差算出手段により算出された濃度差に基づき、前記印刷手段の印刷濃度を調整する調整動作を実行するか否かを判定する判定手段と、
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記濃度差算出手段により算出された濃度差と閾値とを比較し、前記濃度差が前記閾値を超える場合に、前記調整動作を実行すると判定することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷データに付加されている濃度差の判定レベルに応じて、前記閾値を変更する変更手段を有することを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
濃度差の判定レベルを設定する設定手段と、
前記設定手段により設定された判定レベルに応じて、前記閾値を変更する変更手段と、
を有することを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記抽出手段は、前記印刷データに特定の面積を超える面積の塗りつぶし命令が含まれている場合に、該塗りつぶし命令で指定されている塗りつぶし領域内の領域を前記濃度測定を行う領域として抽出するものであり、
前記決定手段は、前記抽出手段により抽出された領域に対応する前記塗りつぶし命令で指定されている塗りつぶし濃度から前記期待濃度を決定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記調整動作を実行する調整手段を有し、
前記調整動作は、前記印刷手段により印刷媒体又は印刷媒体に画像を転写するための転写体の上に前記印刷手段が用いる印刷剤色で複数の濃度のパターンを形成し、該パターンを測定手段により測定し、該測定手段の測定結果に基づいて前記印刷手段の印刷濃度を調整するものであり、
前記期待濃度、及び前記実測濃度は、前記印刷手段が用いる各印刷剤色を成分とする色空間の濃度情報であり、
前記濃度差は、前記印刷剤色ごとに算出されるものであり、
前記調整手段は、前記判定手段により前記調整動作を実行すると判定されて前記調整動作を実行する場合には、前記閾値を超える前記濃度差が存在する印刷剤色に限定して前記パターンを形成することを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記調整手段は、
前記判定手段により前記調整動作を実行すると判定された場合、及び、特定の周期で、前記調整動作を実行するものであり、
前記特定の周期で前記調整動作を実行する場合には、前記印刷剤色の複数の濃度のパターンから、前記実測濃度との濃度差が前記閾値を超えない期待濃度と同一色同一濃度のパターンを省略したパターンを形成することを特徴とする請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記調整手段は、前記抽出手段、前記決定手段、前記読取手段、前記実測濃度算出手段、前記濃度差算出手段、及び、前記判定手段が存在しない場合には、前記印刷手段が用いる全ての印刷剤色で前記複数の濃度のパターンを形成することを特徴とする請求項6又は7に記載の印刷装置。
【請求項9】
印刷装置の制御方法であって、
印刷手段が、印刷データに基づいて印刷媒体に印刷処理を行う印刷ステップと、
抽出手段が、前記印刷ステップで印刷する印刷データから濃度測定を行う領域を示す濃度測定領域を抽出する抽出ステップと、
決定手段が、前記抽出ステップで抽出された前記濃度測定領域において印刷されることが期待される濃度を示す期待濃度を決定する決定ステップと、
読取手段が、前記印刷ステップで印刷処理された印刷媒体の印刷面から画像データを読み取る読取ステップと、
実測濃度算出手段が、前記読取ステップで読み取られた画像データにおける前記濃度測定領域に対応する領域の実測濃度を算出する実測濃度算出ステップと、
濃度差算出手段が、前記濃度測定領域に対応する領域の前記期待濃度と前記濃度測定領域に対応する領域の前記実測濃度との濃度差を算出する濃度差算出ステップと
判定手段が、前記濃度差算出ステップで算出された濃度差に基づき、前記印刷手段の印刷濃度を調整する調整動作を実行するか否かを判定する判定ステップと、
を有することを特徴とする印刷装置の制御方法。
【請求項10】
印刷装置に設けられたプロセッサを、請求項1乃至8のいずれか1項に記載された印刷装置の手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−51272(P2012−51272A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196507(P2010−196507)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】