説明

印刷装置及び印刷方法

【課題】材料上の印刷位置の調整(見当合わせ)を容易に行い、調整時間を短縮する。
【解決手段】印刷ユニット用制御装置31−1,31−2,31−3の版胴制御部33−1,33−2,33−3は、共通の基準速度指令及び基準位置指令に基づいて、M1,M3,M5速度指令を生成し、版胴13−1,13−2,13−3を一定速度で回転制御する。フィード制御部34−1,34−2,34−3は、所定位置で印刷(1)(2)(3)を行うために、マーク検出信号の入力タイミングに基づいて、すなわち、マークセンサ16−1,16−2,16−3の設置位置に基づいて、M2,M4,M6速度指令を生成し、材料6を走行制御する。これにより、版胴13−1,13−2,13−2を一定速度で回転させながら、材料6上の所定位置に印刷位置を合わせて、多色印刷を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、版が設けられた版胴を回転させ、走行する材料に対して製品毎に印刷を順次行う印刷装置及び印刷方法に関し、特に、製品上の所定位置に印刷位置を合わせる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、連続して走行するシート状の材料に対し、製品毎に一定間隔で印刷を連続して行うフレキソ印刷機が知られている。フレキソ印刷機は、印刷面となる版が設けられた版胴を回転させ、その版にインクを供給することにより材料に対して印刷を行う輪転式の印刷機である。フレキソ印刷機には、センタードラム方式、スタック方式及びインライン方式がある。特に、インライン方式のフレキソ印刷機は、版胴と圧胴とを組にした印刷ユニットにより構成され、印刷ユニットを追加すれば印刷色を増やすことができるから、比較的簡単に印刷色を増やし多色刷りを行うことができる点で他の方式よりも有用である。
【0003】
このようなインライン方式のフレキソ印刷機にはロータリー式のものがあり、例えば、版胴の周長(以下、版胴周長という。)を固定にし、印刷物である材料の製品長に応じて版胴の回転を加減速制御することにより、印刷を行うフレキソ印刷機が知られている(特許文献1を参照)。具体的には、このフレキソ印刷機は、材料を一定速度で走行させ、印刷が終了してから次の製品の印刷が開始するまでの間に、版胴の回転を加減速制御することにより、版胴周長と製品長との間の差を吸収する。これにより、回転する版胴に設けられた版を、走行する材料における製品毎の印刷位置に合わせることができる。
【0004】
また、版胴周長を固定にし、印刷物である材料の製品長に応じて圧胴の回転(材料の走行)を加減速制御することにより、印刷を行うフレキソ印刷機も知られている(特許文献2を参照)。具体的には、このフレキソ印刷機は、版胴を一定速度で回転させ、印刷が終了してから次の製品の印刷が開始するまでの間に、圧胴の回転(材料の走行)を加減速制御することにより、版胴周長と製品長との間の差を吸収する。これにより、回転する版胴に設けられた版を、走行する材料における製品毎の印刷位置に合わせることができる。
【0005】
ところで、走行する材料に対し多色刷りを行うには、製品上の所定位置に印刷位置を合わせるための処理を、印刷ユニット毎に行う必要がある。インライン方式のフレキソ印刷機では、ドライブシャフト方式の場合、1軸のモータで材料を走行制御するから、コンペンセータを用いた機械的な機構により、印刷ユニット毎に材料の位置を送り方向にずらし、製品上の所定位置に印刷位置を合わせていた(特許文献3を参照)。具体的には、コンペンセータ(コンペンローラ)の位置をコンペンモータの駆動により変化させ、材料のテンションを調整する(特許文献3、段落31を参照)。これにより、版胴へ送られる材料の送り方向の見当合わせが行われるから、材料の位置を送り方向にずらすことができ、製品上の所定位置に印刷位置を合わせることができる。一方、セクショナルドライブ方式の場合は、コンペンセータを用いた機械的な機構は不要であり、印刷ユニット毎に個別に制御される版胴の位相をずらすことにより、製品上の所定位置に印刷位置を合わせていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−197084号公報
【特許文献2】特開2008−265010号公報
【特許文献3】特開2006−256233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ドライブシャフト方式によるフレキソ印刷機では、前述のとおり、コンペンセータを用いた機械的な機構により材料の印刷位置をずらしているため、機械的精度が影響して印刷位置が正しく設定されず、不良品が生産される場合があるという問題があった。また、コンペンセータの位置調整は、コンペンモータを駆動させその位置を徐々に変化させることにより行われ、しかも、コンペンセータの位置調整は印刷ユニット毎(印刷色毎)になされるから、印刷の見当合わせのための調整に時間を要するという問題もあった。また、生産品を変更する毎にコンペンセータの位置の調整を行う必要があるから、生産品を変更するオーダー替えの度に、時間を要するという問題もあった。
【0008】
一方、セクショナルドライブ方式によるフレキソ印刷機では、前述のとおり、版胴用モータの駆動により版胴の位相を徐々にずらし、製品上の所定位置に印刷位置を合わせ、しかも、これを印刷ユニット毎に行う必要があるから、印刷の見当合わせのための調整に時間を要するという問題があった。同様に、生産品を変更するオーダー替えの度に、時間を要するという問題もあった。
【0009】
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、回転する版胴によって、走行する材料に印刷を順次行う際に、材料上の印刷位置の調整(見当合わせ)を容易に行い、調整時間を短縮することが可能な印刷装置及び印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明による印刷装置は、材料が所定の製品長で分割された製品毎の所定位置にマークが付され、マークセンサにより検出されたマークの信号をマーク検出信号として入力し、版が設けられた版胴を回転させ、走行している前記材料の製品毎の所定位置を前記版に合わせることにより、印刷を順次行う印刷装置において、予め設定された基準速度指示に基づいて、前記版胴の回転速度を定める基準速度指令を生成し、前記版胴の回転位置を定める基準位置指令を生成する印刷基準部と、前記印刷基準部により生成された基準位置指令に応じた位相で、かつ、前記印刷基準部により生成された基準速度指示の速度で、前記版胴を回転させるための版胴速度指令を生成し、前記版胴速度指令により前記版胴を回転制御する版胴制御部と、前記材料に対する印刷の開始から終了までの期間について、前記版胴速度指令と同一の速度で走行させると共に、前記印刷の終了から次の印刷の開始までの期間について、前記材料の走行を加減速させて次の製品の所定位置を前記版に合わせ、さらに、前記マークセンサの設置位置を変更することに伴うマーク検出信号の入力タイミングの変化に応じて、前記印刷開始のタイミングをずらした材料速度指令を生成し、前記材料速度指令により前記材料を走行させるためのフィードを制御するフィード制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明による印刷装置は、前記フィード制御部が、前記マークセンサからマーク検出信号を入力し、前記マーク検出信号を入力したタイミングに基づいて実製品長を算出する実製品長算出部と、前記版胴の回転位置を示す版胴位置の変化に基づいて基準速度指令(VA)を生成し、予め設定された版胴周長と前記実製品長算出部により算出された実製品長との間の差を算出し、前記差の値をカウンターにプリセットし、前記カウンターにより、前記版胴の回転及び前記材料の走行に伴って前記プリセット値から減算した結果をカウント値とし、前記カウント値に応じた指令であって、前記版胴周長と実製品長との間の差の値に応じて印刷開始のタイミングをずらした材料偏差速度指令(VC)を生成し、前記基準速度指令(VA)から前記材料偏差速度指令(VC)を減算し同調速度指令(VA−VC)を生成する同調速度指令(VA−VC)生成部と、前記実製品長算出部により算出された実製品長と、予め設定された印刷長とに基づいて停止距離を算出し、前記算出した停止距離をカウンターにプリセットし、前記カウンターにより、前記材料の走行に伴って前記プリセット値から減算した結果をカウント値とし、前記カウント値に応じた停止速度指令(VB)を生成する停止速度指令(VB)生成部と、前記同調速度指令(VA−VC)生成部により生成された同調速度指令(VA−VC)と、前記停止速度指令(VB)生成部により生成された停止速度指令(VB)とを切り替えて選択し、前記材料速度指令を出力するセレクタと、を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明による印刷装置は、前記版胴制御部が、前記印刷基準部により生成された基準位置指令の示す位置と、前記版胴の回転位置を示す版胴位置との間の差を算出し、版位置偏差を出力する減算器と、予め設定されたゲインを、前記減算器により出力された版位置偏差に乗算し、版位置偏差速度指令を出力する乗算器と、前記印刷基準部により生成された基準速度指令に、前記乗算器により出力された版位置偏差速度指令を加算し、前記版胴速度指令を出力する加算器と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明による印刷装置は、多色印刷を行うために、色毎に印刷ユニット用制御装置をそれぞれ備え、前記色毎の複数の印刷ユニット用制御装置のうち、1つの印刷ユニット用制御装置が、前記印刷基準部、前記版胴制御部及び前記フィード制御部を備え、前記色毎の複数の印刷ユニット用制御装置のうち、他の印刷ユニット用制御装置が、前記版胴制御部及び前記フィード制御部を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明による印刷装置は、前記版胴制御部が、前記減算器、前記乗算器及び前記加算器に加え、さらに、予め設定された起動位置補正量を、前記版胴の回転位置を示す版胴位置に加算し、補正後の版胴位置を出力する第2の加算器を備え、前記減算器が、前記印刷基準部により生成された基準位置指令の示す位置と、前記加算器により出力された補正後の版胴位置との間の差を算出し、版位置偏差を出力する、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明による印刷装置は、多色印刷を行うために、色毎に印刷ユニット用制御装置をそれぞれ備え、前記印刷ユニット用制御装置が、前記印刷基準部、前記版胴制御部、前記フィード制御部、及び、予め設定された選択信号に応じて、前記印刷基準部により生成された基準速度指令及び基準位置指令を入力し、前記版胴制御部に出力するか、または、他の印刷ユニット用制御装置に備えた印刷基準部により生成された基準速度指令及び基準位置指令を入力し、前記版胴制御部に出力するスイッチを備え、前記色毎の複数の印刷ユニット用制御装置のうち、1つの印刷ユニット用制御装置に備えたスイッチが、前記選択信号により、前記印刷基準部により生成された基準速度指令及び基準位置指令を入力し、前記版胴制御部に出力するように前記選択信号が設定されており、前記色毎の複数の印刷ユニット用制御装置のうち、他の印刷ユニット用制御装置に備えたスイッチが、前記1つの印刷ユニット用制御装置に備えた印刷基準部により生成された基準速度指令及び基準位置指令を入力し、前記版胴制御部に出力するように、前記選択信号が設定されている、ことを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明による印刷方法は、材料が所定の製品長で分割された製品毎の所定位置にマークが付され、マークセンサにより検出されたマークの信号をマーク検出信号として入力し、版が設けられた版胴を回転させ、走行している前記材料の製品毎の所定位置を前記版に合わせることにより、印刷を順次行う印刷方法において、予め設定された基準速度指示に基づいて、前記版胴の回転速度を定める基準速度指令を生成し、前記版胴の回転位置を定める基準位置指令を生成するステップと、前記基準位置指令に応じた位相で、かつ前記基準速度指示の速度で、前記版胴を回転させるための版胴速度指令を生成し、前記版胴速度指令により前記版胴を回転制御するステップと、前記材料に対する印刷の開始から終了までの期間について、前記版胴速度指令と同一の速度で走行させると共に、前記印刷の終了から次の印刷の開始までの期間について、前記材料の走行を加減速させて次の製品の所定位置を前記版に合わせ、さらに、前記マークセンサの設置位置を変更することに伴うマーク検出信号の入力タイミングの変化に応じて、前記印刷開始のタイミングをずらした材料速度指令を生成し、前記材料速度指令により前記材料を走行させるためのフィードを制御するステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、基準速度指令及び基準位置指令に基づいて、版胴を回転させるための版胴速度指令を生成し、版胴を回転制御するようにした。また、版胴の回転速度と同一の速度、及び印刷の終了から次の印刷開始までの間の加減速による速度パターンからなる指令であって、製品毎に付されたマークを検出するタイミングに応じて製品上の印刷開始位置をずらし、製品上の所定位置に印刷位置を合わせるように材料速度指令を生成し、材料を走行制御するようにした。これにより、材料上の印刷位置の調整(見当合わせ)のために、コンペンセータによる機械的な機構を用いる必要がなく、版胴の位相を調整する必要もないから、そのための仕組み及び処理が不要になる。したがって、見当合わせを容易に行うことができ、調整時間を短縮することができる。また、機械的な精度が影響して不良品が生産されることがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態による印刷装置を含むフレキソ印刷機の全体構成の概略を説明する図である。
【図2】M2,M4,M6速度指令のパターン、材料への印刷手順、及び材料の動きを説明する図である。
【図3】1色目の印刷制御を行う印刷ユニット用制御装置の構成を示すブロック図である。
【図4】2色目の印刷制御を行う印刷ユニット用制御装置の構成を示すブロック図である。
【図5】印刷基準部の構成を示すブロック図である。
【図6】版胴制御部の構成を示すブロック図である。
【図7】フィード制御部の構成を示すブロック図である。
【図8】セレクタの構成を示すブロック図である。
【図9】印刷ユニット間で共通化した印刷ユニット用制御装置の構成を示すブロック図である。
【図10】印刷基準部の処理を説明するフローチャートである。
【図11】版胴制御部の処理を説明するフローチャートである。
【図12】実製品長算出部の処理を説明するフローチャートである。
【図13】VA−VC生成部の処理を説明するフローチャートである。
【図14】VB生成部の処理を説明するフローチャートである。
【図15】セレクタの処理を説明するフローチャートである。
【図16】基準位置変換器の処理を説明する図である。
【図17】M2速度指令のパターンと材料及び版胴のサイズとの関係を説明する図である。
【図18】一定速度で回転する版胴に対する材料の動きを説明する図である。
【図19】印刷ユニット1の基本動作を説明するタイムチャートである。
【図20】印刷ユニット1の基本動作を説明する図である。
【図21】印刷ユニット1の基本動作中に、マークセンサ16−1の設置位置を変更した場合の動作を説明するタイムチャートである。
【図22】印刷ユニット1の基本動作中に、マークセンサ16−1の設置位置を変更した場合の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
本発明の特徴は、印刷ユニット毎に、版胴用モータにより版胴を、全ての印刷ユニットにおいて共通の一定速度で回転制御し、製品毎に付されたマークを検出するタイミングに応じて印刷開始タイミングをずらし、フィード用モータにより材料を加減速及び一定速度で走行制御することにより、製品上の所定位置に印刷位置を合わせることにある。これにより、コンペンセータによる機械的な機構を用いることなく、材料上の印刷位置の調整(見当合わせ)を行うことができる。
【0020】
〔フレキソ印刷機〕
まず、フレキソ印刷機について説明する。図1は、本発明の実施形態による印刷装置を含むフレキソ印刷機の全体構成の概略を説明する図である。このフレキソ印刷機10は、3台の印刷ユニット1,2,3、ダンサー11−4、巻出機4、巻取機5及び印刷装置30を備えて構成される。材料6は、巻出機4から印刷ユニット1,2,3及びダンサー11−4を介して巻取機5へ走行し、所定長(製品長)の製品毎に、第1の印刷ユニット1により1色目が印刷され、第2の印刷ユニット2により2色目が印刷され、第3の印刷ユニット3により3色目が印刷される。
【0021】
3色刷りの印刷制御は、印刷ユニット用制御装置31−1,31−2,31−3を備えた印刷装置30により行われる。印刷ユニット用制御装置31−1は、1色目の印刷を行う印刷ユニット1に備えた版胴13−1の回転速度及び材料6の走行速度を制御する。同様に、印刷ユニット用制御装置31−2は、2色目の印刷を行う印刷ユニット2に備えた版胴13−2の回転速度及び材料6の走行速度を制御し、印刷ユニット用制御装置31−3は、3色目の印刷を行う印刷ユニット3に備えた版胴13−3の回転速度及び材料6の走行速度を制御する。そして、印刷ユニット用制御装置31−1は、製品上の所定位置に印刷位置を合わせて1色目の印刷を行うための制御を行う。同様に、印刷ユニット用制御装置31−2は、製品上の所定位置に印刷位置を合わせて2色目の印刷を行うための制御を行い、印刷ユニット用制御装置31−3は、製品上の所定位置に印刷位置を合わせて3色目の印刷制御を行うための制御を行う。
【0022】
巻出機4は、材料6の巻き出しを行い、巻取機5は、印刷ユニット1,2,3により3色刷りの印刷が行われた材料6の巻き取りを行う。ダンサー11−4は、印刷ユニット3に備えた後述するフィード15−3と巻取機5との間に設けられ、巻取機5による材料6の巻き取りが行われる際に、一定量の材料6の溜め込みを行う。一定量の溜め込みを行うのは、フィード15−3が材料6を走行させて巻取機5が材料6を巻き取るときに、フィード15−3が巻取機5の負荷にならないようにするためである。また、ダンサー11−4が設けられていない場合は、巻取機5が、フィード15−3による材料6への張力の影響を受けてしまい、材料6を巻き取ることができなくなり、材料6が伸びてしまうからである。
【0023】
印刷ユニット1は、ダンサー11−1、圧胴12−1、版胴13−1、アニロックスロール14−1、フィード15−1、マークセンサ16−1、乾燥機17−1、版胴用モータ(M1)18−1、版胴用エンコーダ19−1、フィード用モータ(M2)20−1及びフィード用エンコーダ21−1を備えている。
【0024】
ダンサー11−1は、巻出機4とフィード15−1との間に設けられ、フィード15−1が材料6を走行させるときに、巻出機4がフィード15−1の負荷にならないようにするため、一定量の材料6の溜め込みを行う。これは、ダンサー11−1が設けられていない場合、フィード15−1が、巻出機4による材料6への張力の影響を受けてしまい、材料6を適切な速度で走行させることができなくなり、材料6が伸びてしまうからである。
【0025】
圧胴12−1及び版胴13−1は、走行する材料6を挟挿し、版胴13−1に設けられた版22−1により、材料6における製品上の所定位置に印刷を行う。アニロックスロール14−1は、印刷のためのインキを、版胴13−1に設けられた版22−1に転移する。版胴用モータ18−1は、印刷ユニット用制御装置31−1からのM1速度指令に従って駆動し、版胴13−1及びアニロックスロール14−1を回転させる。版胴用エンコーダ19−1は、版胴用モータ18−1の駆動に伴い、版胴13−1の回転位置(版胴位置)及び回転速度等を検出するためのパルス信号(版胴エンコーダ信号)を印刷ユニット用制御装置31−1に出力する。
【0026】
フィード15−1は、回転によって材料6を走行させる。フィード用モータ20−1は、印刷ユニット用制御装置31−1からのM2速度指令に従って駆動し、フィード15−1を回転させ材料6を走行させる。フィード用エンコーダ21−1は、フィード用モータ20−1の駆動に伴い、材料6の走行位置及び走行速度等を検出するためのパルス信号(フィードエンコーダ信号)を印刷ユニット用制御装置31−1に出力する。
【0027】
マークセンサ16−1は、材料6上において製品毎の所定位置に付されたマークを検出し、マーク検出信号を印刷ユニット用制御装置31−1に出力する。このマークセンサ16−1の設置位置は、製品上の所定位置に印刷位置を合わせるために調整される。マークセンサ16−1の設置位置が変更されることにより、マークを検出するタイミングが異なるようになり、マークセンサ16−1によってマーク検出信号が出力される間隔も異なるようになる。このマーク検出信号の時間的な出力間隔の違いに応じて、印刷開始のタイミングをずらすことができ、製品上の所定位置に印刷位置を合わせることができる。詳細については後述する。マーク乾燥機17−1は、圧胴12−1及び版胴13−1により挟挿され印刷された材料6を乾燥する。
【0028】
印刷ユニット2は、印刷ユニット1と同様の構成をしており、ダンサー11−2、圧胴12−2、版胴13−2、アニロックスロール14−2、フィード15−2、マークセンサ16−2、乾燥機17−2、版胴用モータ(M3)18−2、版胴用エンコーダ19−2、フィード用モータ(M4)20−2及びフィード用エンコーダ21−2を備えている。版胴13−2には版22−2が設けられている。
【0029】
ダンサー11−2は、印刷ユニット1のフィード15−1とフィード15−2との間に設けられ、フィード15−2が材料6を走行させるときに、フィード15−1がフィード15−2の負荷にならないようにするため、一定量の材料6の溜め込みを行う。これは、フィード15−2が、印刷ユニット1のフィード15−1とは独立して、材料6の走行制御を行うためである。また、ダンサー11−2が設けられていない場合、フィード15−2が、フィード15−1による材料6への張力の影響を受けてしまい、フィード15−1とは関係なく材料6を適切な速度で走行させることができなくなり、材料6が伸びてしまうからである。これにより、2色目の印刷を行う印刷ユニット2は、1色目の印刷を行う印刷ユニット1とは独立して、材料6を独自に走行制御することにより、製品上の所定位置に印刷位置を合わせることができる。
【0030】
圧胴12−2、版胴13−2等については、印刷ユニット1と同様であるから、ここでは説明を省略する。
【0031】
印刷ユニット3は、印刷ユニット1,2と同様の構成をしており、ダンサー11−3、圧胴12−3、版胴13−3、アニロックスロール14−3、フィード15−3、マークセンサ16−3、乾燥機17−3、版胴用モータ(M5)18−3、版胴用エンコーダ19−3、フィード用モータ(M6)20−3及びフィード用エンコーダ21−3を備えている。版胴13−3には版22−3が設けられている。
【0032】
ダンサー11−3は、印刷ユニット2のフィード15−2とフィード15−3との間に設けられ、フィード15−3が材料6を走行させるときに、フィード15−2がフィード15−3の負荷にならないようにするため、一定量の材料6の溜め込みを行う。これは、フィード15−3が、印刷ユニット2のフィード15−2及び印刷ユニット1のフィード15−1とは独立して、材料6の走行制御を行うためである。また、ダンサー11−3が設けられていない場合、フィード15−3が、フィード15−2による材料6への張力の影響を受けてしまい、フィード15−2とは関係なく材料6を適切な速度で走行させることができなくなり、材料6が伸びてしまうからである。これにより、3色目の印刷を行う印刷ユニット3は、2色目の印刷を行う印刷ユニット2及び1色目の印刷を行う印刷ユニット1とは独立して、材料6を独自に走行制御することにより、製品上の所定位置に印刷位置を合わせることができる。
【0033】
圧胴12−3、版胴13−3等については、印刷ユニット1,2と同様であるから、ここでは説明を省略する。
【0034】
印刷装置30の印刷ユニット用制御装置31−1は、予め設定された基準速度指示に基づいて基準速度指令及び基準位置指令を生成し、基準速度指令及び基準位置指令を印刷ユニット用制御装置31−2,31−3に出力する。また、印刷ユニット用制御装置31−1は、版胴用エンコーダ19−1から版胴エンコーダ信号を入力して版胴位置を算出し、版胴位置、基準位置指令及び基準速度指令に基づいてM1速度指令を生成し、M1速度指令を版胴用モータ18−1へ出力する。また、印刷ユニット用制御装置31−1は、マークセンサ16−1からマーク検出信号を入力すると共に、フィード用エンコーダ21−1からフィードエンコーダ信号を入力し、マーク検出信号の入力タイミング、フィードエンコーダ信号から得られる材料6の走行位置及び走行速度等、版胴位置、版胴周長B0並びに製品長Lに基づいて、材料6の走行パターンを生成し、M2速度指令としてフィード用モータ20−1へ出力する。
【0035】
このように、印刷ユニット用制御装置31−1は、M1速度指令により版胴13−1を一定速度で回転させた状態で、M2速度指令によりフィード15−1を制御し、材料6の走行を加速、一定速、減速及び停止させる。この場合、版胴13−1の回転に追従するように、印刷時には材料6を一定速度に走行制御し、マーク検出信号の入力タイミングに基づいて、すなわち、マークセンサ16−1の設置位置に基づいて、版胴13−1に設けられた版22−1による印刷位置を、製品上の所定位置に合わせる。これにより、印刷ユニット1において1色目の印刷が行われる。
【0036】
ここで、予め設定された基準速度指示は、全ての印刷ユニット1,2,3において、印刷時の版胴13−1,13−2,13−3の回転速度、及び材料6の走行速度を定める共通の指示である。基準速度指示に基づいて生成された基準速度指令及び基準位置指令も同様に、全ての印刷ユニット1,2,3において共通の指示である。また、予め設定された版胴周長B0及び製品長Lも同様に、全ての印刷ユニット1,2,3において共通に用いられるデータである。
【0037】
印刷ユニット用制御装置31−2は、印刷ユニット用制御装置31−1から基準速度指令及び基準位置指令を入力すると共に、版胴用エンコーダ19−2から版胴エンコーダ信号を入力して版胴位置を算出し、版胴位置、基準位置指令及び基準速度指令に基づいてM3速度指令を生成し、M3速度指令を版胴用モータ18−2へ出力する。また、印刷ユニット用制御装置31−2は、印刷ユニット用制御装置31−1と同様に、マークセンサ16−2からマーク検出信号を入力すると共に、フィード用エンコーダ21−2からフィードエンコーダ信号を入力し、マーク検出信号の入力タイミング、フィードエンコーダ信号から得られる材料6の走行位置及び走行速度等、版胴位置、版胴周長B0並びに製品長Lに基づいて、材料6の走行パターンを生成し、M4速度指令としてフィード用モータ20−2へ出力する。
【0038】
このように、印刷ユニット用制御装置31−2は、M3速度指令により版胴13−2を一定速度で回転させた状態で、M4速度指令によりフィード15−2を制御し、材料6の走行を加速、一定速、減速及び停止させる。この場合、版胴13−2の回転に追従するように、印刷時には材料6を一定速度に走行制御し、マーク検出信号の入力タイミングに基づいて、すなわち、マークセンサ16−2の設置位置に基づいて、版胴13−2に設けられた版22−2による印刷位置を、製品上の所定位置に合わせる。これにより、印刷ユニット2において2色目の印刷が行われる。
【0039】
印刷ユニット用制御装置31−3は、印刷ユニット用制御装置31−2と同様である。このように、印刷ユニット用制御装置31−3は、M5速度指令により版胴13−3を一定速度で回転させた状態で、M6速度指令によりフィード15−3を制御し、材料6の走行を加速、一定速、減速及び停止させる。この場合、版胴13−3の回転に追従するように、印刷時には材料6を一定速度に走行制御し、マーク検出信号の入力タイミングに基づいて、すなわち、マークセンサ16−3の設置位置に基づいて、版胴13−3に設けられた版22−3による印刷位置を、製品上の所定位置に合わせる。これにより、印刷ユニット3において3色目の印刷が行われる。
【0040】
図2は、印刷ユニット1,2,3におけるフィード15−1,15−2,15−3の速度指令であるM2,M4,M6速度指令のパターン(材料6の走行パターン)、材料6への印刷手順、及び材料6の動きを説明する図である。図2に示すように、M2速度指令は、材料6の製品毎の所定位置に印刷(1)を行うための指令であり、加速(u〜v)及び一定速(v〜w)の速度遷移VA−VCと、減速(w〜x)及び停止(x〜y)の速度遷移VBとからなる速度パターンが繰り返された指令である。具体的には、M2速度指令は、製品の開始端が版胴13−1の挟挿位置にあるところから加速を開始し(u)、版胴13−1に設けられた版22−1が挟挿位置にある期間の間一定速度となり(v〜w)、その後減速し、製品の終了端が版胴13−1の挟挿位置にあるところで停止する(x)軌道をとるパターンである。ここで、速度遷移VA−VCのうちの一定速(v〜w)は、一定速度で回転する版胴13−1の回転速度と同一である。図1に示した印刷装置30の印刷ユニット用制御装置31−1は、このような速度パターンを生成し、M2速度指令としてフィード用モータ20−1へ出力する。これにより、材料6は、この速度パターンで走行することになる。
【0041】
印刷ユニット2におけるフィード15−2のM4速度指令、及び、印刷ユニット3におけるフィード15−3のM6速度指令も、材料6の製品毎の所定位置に印刷(2)(3)をそれぞれ行うための指令である。図1に示した印刷装置30の印刷ユニット用制御装置31−2,31−3は、このような速度パターンを生成し、M4,M6速度指令としてフィード用モータ20−2,20−3へ出力する。これにより、材料6は、この速度パターンで走行することになる。
【0042】
また、図2に示すように、材料6には、製品長Lの製品毎に印刷(1)(2)(3)が形成されることにより、複数の連続した製品が生産される。材料6には、製品毎に製品長L間隔のマークが予め付されている。
【0043】
印刷(1)は、材料6が版胴13−1と同一の速度で走行しているときに(v〜w)、版胴13−1及び圧胴12−1により所定位置になされる。同様に、印刷(2)は、材料6が版胴13−2と同一の速度で走行しているときに、版胴13−2及び圧胴12−2により所定位置になされ、印刷(3)は、材料6が版胴13−3と同一の速度で走行しているときに、版胴13−3及び圧胴12−3により所定位置になされる。
【0044】
印刷(1)(2)(3)の開始位置は、マーク検出信号の入力タイミングの変化、すなわち、マークセンサ16−1,16−2,16−3の設置位置に基づいたM2,M4,M6速度指令によって材料6を走行制御することで、製品上の所定位置に合わせられる。印刷(1)では、ズレ量k1=0であるからk1の記載を省略してある。M2,M4,M6速度指令を構成する台形の面積はいずれも製品長Lであり、台形の横幅(時間)は製品長Lに対応している。ズレ量k2,k3は、マークセンサ16−2,16−3の設置位置を変更することにより決定される。
【0045】
尚、図2に示したM2速度指令は、版胴13−2の周長(版胴周長B0)が製品長Lよりも長い場合を示しており、材料6が加速、一定速(印刷時の速度)、減速及び停止のパターンで構成されている。これに対し、版胴周長B0が製品長Lよりも短い場合も、図1に示した印刷装置30により制御することができ、この場合のM2速度指令は、材料6が減速、一定速(印刷時の速度)、加速及び一定速(次の製品の印刷開始位置を版の位置に合わせるための、版胴の回転速度よりも速い速度)のパターンで構成される。また、M2速度指令は、材料6が加速、一定速(印刷時の速度)及び減速のみのパターンで構成される場合もあり、減速、一定速(印刷時の速度)及び加速のみのパターンで構成される場合もある。以下に示す実施形態は、版胴周長B0が製品長Lよりも長い場合について説明する。M4速度指令及びM6速度指令についても同様である。尚、版胴周長B0は、材料6に印刷される印刷長の最大値よりも長いものとする。
【0046】
このように、図1に示したフレキソ印刷機10によれば、材料6は、印刷ユニット1,2,3を走行することにより、所定長(製品長L)の製品毎に、印刷ユニット1により1色目が所定位置に印刷され(図2の印刷(1))、印刷ユニット2により2色目が所定位置に印刷され(印刷(2))、印刷ユニット3により3色目が所定位置に印刷され(印刷(3))、3色刷りの印刷が行われる。
【0047】
〔印刷装置/印刷ユニット用制御装置〕
次に、図1に示した印刷装置30の印刷ユニット用制御装置31−1,31−2,31−3について説明する。図3は、印刷ユニット1に対し1色目の印刷制御を行う印刷ユニット用制御装置31−1の構成を示すブロック図である。この印刷ユニット用制御装置31−1は、印刷基準部32、版胴制御部33−1及びフィード制御部34−1を備えている。
【0048】
印刷基準部32は、予め設定された基準速度指示に基づいて基準速度指令を生成し、基準速度指令に基づいて基準位置指令を生成し、基準速度指令及び基準位置指令を版胴制御部33−1及び印刷ユニット用制御装置31−2,31−3へ出力する。印刷基準部32の詳細については後述する。
【0049】
版胴制御部33−1は、印刷基準部32から基準位置指令及び基準速度指令を入力すると共に、版胴用エンコーダ19−1から版胴エンコーダ信号を入力し、版胴エンコーダ信号から版胴位置を算出し、版胴位置、基準位置指令及び基準速度指令に基づいたフィードフォワード制御によりM1速度指令を生成し、M1速度指令を版胴用モータ18−1へ出力する。これにより、版胴13−1は、M1速度指令が示す一定速度で回転する。また、版胴制御部33−1は、版胴位置をフィード制御部34−1に出力する。版胴制御部33−1の詳細については後述する。
【0050】
フィード制御部34−1は、版胴制御部33−1から版胴位置を入力すると共に、マークセンサ16−1からマーク検出信号を、フィード用エンコーダ21−1からフィードエンコーダ信号を入力する。そして、フィード制御部34−1は、版胴位置、マーク検出信号の入力タイミング、フィードエンコーダ信号から得られる材料6の走行位置等、並びに、予め設定された版胴周長B0及び製品長Lに基づいて、材料6の走行パターンを生成し、M2速度指令としてフィード用モータ20−1へ出力する。フィード制御部34−1の詳細については後述する。
【0051】
このように、印刷ユニット用制御装置31−1は、M1速度指令により版胴13−1を一定速度で回転させた状態で、M2速度指令によりフィード15−1を制御し、材料6の走行を加速、一定速、減速及び停止させ、印刷時には材料6を一定速度に走行制御し、印刷位置を製品上の所定位置に合わせる。これにより、印刷ユニット1において1色目の印刷が行われる。
【0052】
図4は、印刷ユニット2に対し2色目の印刷制御を行う印刷ユニット用制御装置31−2の構成を示すブロック図である。この印刷ユニット用制御装置31−2は、版胴制御部33−2及びフィード制御部34−2を備えている。
【0053】
図3に示した印刷ユニット用制御装置31−1と図4に示す印刷ユニット用制御装置31−2とを比較すると、印刷ユニット用制御装置31−1,31−2は共に、版胴制御部33−1,33−2及びフィード制御部34−1,34−2を備えている点で共通する。一方、印刷ユニット用制御装置31−1は、印刷基準部32を備えているのに対し、印刷ユニット用制御装置31−2は、印刷基準部32を備えていない点で相違する。
【0054】
印刷ユニット用制御装置31−2の版胴制御部33−2は、印刷ユニット用制御装置31−1から基準速度指令及び基準位置指令を入力すると共に、版胴用エンコーダ19−2から版胴エンコーダ信号を入力し、版胴制御部33−1と同様に、版胴位置、基準位置指令及び基準速度指令に基づいたフィードフォワード制御によりM3速度指令を生成し、M3速度指令を版胴用モータ18−2へ出力する。これにより、版胴13−2は、M3速度指令が示す一定速度で回転する。また、版胴制御部33−2は、版胴位置をフィード制御部34−2に出力する。版胴制御部33−2の詳細については後述する。
【0055】
フィード制御部34−2は、版胴制御部33−2から版胴位置を入力すると共に、マークセンサ16−2からマーク検出信号を、フィード用エンコーダ21−2からフィードエンコーダ信号を入力する。そして、フィード制御部34−2は、版胴位置、マーク検出信号の入力タイミング、フィードエンコーダ信号から得られる材料6の走行位置等、並びに、予め設定された版胴周長B0及び製品長Lに基づいて、材料6の走行パターンを生成し、M4速度指令としてフィード用モータ20−2へ出力する。フィード制御部34−2の詳細については後述する。
【0056】
このように、印刷ユニット用制御装置31−2は、M3速度指令により版胴13−2を一定速度で回転させた状態で、M4速度指令によりフィード15−2を制御し、材料6の走行を加速、一定速、減速及び停止させ、印刷時には材料6を一定速度に走行制御し、印刷位置を製品上の所定位置に合わせる。これにより、印刷ユニット2において2色目の印刷が行われる。
【0057】
尚、印刷ユニット3に対し3色目の印刷制御を行う印刷ユニット用制御装置31−3の構成については、印刷ユニット用制御装置31−2と同様であるから、ここでは説明を省略する。
【0058】
また、印刷ユニット用制御装置31−1,31−2,31−3により生成される材料6の走行パターンであるM2,M4,M6速度指令は、印刷位置及び印刷長に応じて異なるパターンとなる。このパターンの違いに伴って材料6の走行も印刷ユニット1,2,3毎に異なるものとなるが、この走行の違いは、ダンサー11−1,11−2,11−3,11−4によって吸収することができる。
【0059】
〔印刷基準部〕
次に、図3に示した印刷ユニット用制御装置31−1の印刷基準部32について説明する。図5は、印刷基準部32の構成を示すブロック図である。また、図10は、印刷基準部32の処理を説明するフローチャートである。印刷基準部32は、ランプ回路101及び基準位置変換器102を備えている。
【0060】
ランプ回路101は、予め設定された基準速度指示を入力し、基準速度指示に変化があった場合、急峻な変化を緩和してランプ状の変化になるように、入力した基準速度指示を演算して基準速度指令を生成する(ステップS1001)。そして、ランプ回路101は、基準速度指令を基準位置変換器102、版胴制御部33−1及び印刷ユニット用制御装置31−2,31−3へ出力する(ステップS1002)。
【0061】
基準位置変換器102は、ランプ回路101から基準速度指令を入力し、基準速度指令の値に反比例した周期にて、0の位置から所定の最大値までを繰り返す位置指令に変換し、基準位置指令を生成する(ステップS1003)。そして、基準位置変換器102は、基準位置指令を版胴制御部33−1及び印刷ユニット用制御装置31−2,31−3へ出力する(ステップS1004)。
【0062】
図16は、基準位置変換器102の処理を説明する図である。基準位置変換器102により出力される基準位置指令は、版胴13−1,13−2,13−3を一回転させたときの回転位置を示す指令であり、基準速度指令の値に反比例した周期にて、例えば、0から最大値Hまで漸増する値をとる。(1)は、基準速度指令の値が(2)よりも大きい場合を示しており、そのときの周期は(2)よりも短くなる。一方、(2)は、基準速度指令の値が(1)よりも小さい場合を示しており、そのときの周期は(1)よりも長くなる。つまり、周期t1<t2となる。
【0063】
このように、印刷基準部32は、基準速度指示に基づいて基準速度指令及び基準位置指令を生成する。基準速度指令は、印刷ユニット1,2,3の版胴13−1,13−2,13−3を一定速度で回転させるための指令であり、基準位置指令は、印刷ユニット1,2,3の版胴13−1,13−2,13−3が一定速度で回転する際に、回転位置を合わせて位置同期させるための指令である。
【0064】
〔版胴制御部〕
次に、図3に示した印刷ユニット用制御装置31−1の版胴制御部33−1について説明する。図6は、版胴制御部33−1の構成を示すブロック図である。また、図11は、版胴制御部33−1の処理を説明するフローチャートである。版胴制御部33−1は、位置検出器111、加算器112、減算器113、乗算器114及び加算器115を備えている。
【0065】
位置検出器111は、版胴用エンコーダ19−1から、版胴13−1の原点を示す信号を含む版胴エンコーダ信号を入力し、原点を基準にした版胴位置(版胴13−1の回転位置(角度)を示す信号)を検出し、加算器112及びフィード制御部34−1へ出力する(ステップS1101)。例えば、位置検出器111は、原点を0として、0°の位置から360°の位置まで変化するデータ(版胴13−1が1回転したときの回転位置データ)を版胴位置として検出する。版胴13−1の原点を示す信号は、回転する版胴13−1が所定位置にあることを示す信号である。すなわち、位置検出器111は、この原点を基準にした回転位置(角度)を算出し、算出した回転位置を版胴位置として検出する。
【0066】
尚、位置検出器111により出力される版胴位置は、版胴13−1に設けられた版22−1により材料6に対して印刷が開始するタイミングの回転位置(版22−1の始点位置)、及び版22−1により材料6に対して印刷が完了するタイミングの回転位置(版22−1の終点位置)を認識することができるデータになっている。これらの印刷開始及び印刷完了のときの版胴位置を示す回転位置設定値は、印刷ユニット用制御装置31−1に予め格納されている。
【0067】
加算器112は、位置検出器111から版胴位置を入力すると共に、予め設定された起動位置補正量OFを入力し、版胴位置に起動位置補正量OFを加算し、補正後の版胴位置を減算器113に出力する(ステップS1102)。減算器113は、加算器112から補正後の版胴位置を入力すると共に、印刷基準部32から基準位置指令を入力し、基準位置指令から補正後の版胴位置を減算して版位置偏差を求め、乗算器114に出力する(ステップS1103)。この起動位置補正量OFは、版胴13−1の位相を決定するためのデータである。詳細については後述する。
【0068】
乗算器114は、減算器113から版位置偏差を入力し、ゲインKを乗算して版位置偏差速度指令を求め、加算器115に出力する(ステップS1104)。加算器115は、乗算器114から版位置偏差速度指令を入力すると共に、印刷基準部32から基準速度指令を入力し、基準速度指令に版位置偏差速度指令を加算してM1速度指令を生成する(ステップS1105)。そして、加算器115は、M1速度指令を版胴用モータ18−1へ出力する(ステップS1106)。
【0069】
尚、版胴制御部33−1が安定して動作しているときは、減算器113により出力される版位置偏差が0であり、加算器115は、基準速度指令をM1速度指令として出力する。これに対し、版胴13−1が基準位置指令の示す位置で回転していないときは、その位置で回転するように、減算器113及び乗算器114によって版位置偏差速度指令が生成され、加算器115は、その版位置偏差速度指令を加算してM1速度指令を生成し、出力する。そして、版胴13−1が基準位置指令の示す位置で回転するようになると、版位置偏差が0になり、版胴制御部33−1は安定して動作するようになる。すなわち、版胴13−1は、M1速度指令により一定速度で回転する。
【0070】
このように、版胴制御部33−1は、M1速度指令により、予め設定された基準速度指示から得た基準速度指令の一定速度で版胴13−1を回転させることができる。また、版胴制御部33−1は、位置検出器111、加算器112、減算器113及び乗算器114によるフィードフォワード制御にて、基準位置指令が示す位置と版胴位置とを同期制御することにより、基準位置指令が示す位置に版胴位置を合わせながら版胴13−1を回転させることができる。例えば、版胴13−1のロールスリップ等が原因して版胴位置にズレが発生した場合であっても、そのズレが蓄積されることなく、基準位置指令が示す位置に版胴位置を合わせることができる。この場合、基準位置指令は印刷ユニット1,2,3間で共通の指令であるから、印刷ユニット1,2,3において、基準位置指令が示す共通の位置に版胴13−1,13−2,13−3の版胴位置をそれぞれ合わせながら、版胴13−1,13−2,13−3を回転させることができる。版胴13−1,13−2,13−3の位相は、後述するように、各印刷ユニット1,2,3の加算器112に入力される起動位置補正量OFにより設定することができる。
【0071】
尚、図4に示した印刷ユニット用制御装置31−2の版胴制御部33−2及び印刷ユニット用制御装置31−3の版胴制御部33−3については、印刷ユニット用制御装置31−1の版胴制御部33−1と同様であるから、ここでは説明を省略する。
【0072】
〔フィード制御部〕
次に、図3に示した印刷ユニット用制御装置31−1のフィード制御部34−1について説明する。図7は、フィード制御部34−1の構成を示すブロック図である。フィード制御部34−1は、実製品長算出部210、VA−VC生成部(同調速度指令生成部)220、VB生成部(停止速度指令生成部)230及びセレクタ240を備えている。
【0073】
実製品長算出部210は、版胴制御部33−1から版胴位置を入力すると共に、マークセンサ16−1からマーク検出信号を、フィード用エンコーダ21−1からフィードエンコーダ信号を入力する。そして、実製品長算出部210は、予め設定された製品長Lを入力し、マーク検出信号の入力タイミングにより実製品長RLを算出し、実製品長RLをVA−VC生成部220及びVB生成部230に出力する。ここで、実製品長RLは、マークセンサ16−1の設置位置が変更されることに伴って変わる値、言い換えると、マークセンサ信号の入力タイミングが変化することに伴って変わる値である。実製品長RLが変わると、材料偏差速度指令VCの加速開始点が移動し、印刷位置が変わる。すなわち、マークセンサ16−1の設置位置が変更されることにより、マークセンサ信号の入力タイミングが変化して実製品長RLが変わり、材料偏差速度指令VCの加速開始点が移動し、印刷位置を変えることができる。
【0074】
VA−VC生成部220は、版胴制御部33−1から版胴位置を、フィード用エンコーダ21−1からフィードエンコーダ信号を入力すると共に、実製品長算出部210から実製品長RLを入力する。そして、VA−VC生成部220は、版胴位置の変化量に基づいて、版胴13−1の回転速度である基準速度指令VAを算出し、VB生成部230に出力する。また、VA−VC生成部220は、入力した版胴位置と、印刷完了のときの版胴位置を示す予め設定された回転位置設定値(印刷(2)の終了位置に対応する版胴位置)とに基づいて、印刷完了を生成し、VB生成部230及びセレクタ240に出力する。また、VA−VC生成部220は、予め設定された版胴周長B0から実製品長RLを減算し、その減算結果と、その後の版胴位置と、フィードエンコーダ信号の示す材料6の走行位置等とに基づいて材料偏差速度指令VCを算出する。また、VA−VC生成部220は、基準速度指令VA−材料偏差速度指令VCである同調速度指令をセレクタ240に出力すると共に、基準速度指令VAに基づいてレートRを算出し、VB生成部230に出力する。
【0075】
VB生成部230は、実製品長算出部210から実製品長RLを、フィード用エンコーダ21−1からフィードエンコーダ信号を入力すると共に、VA−VC生成部220から印刷完了、レートR及び基準速度指令VAを入力する。そして、VB生成部230は、実製品長RLと、その後のフィードエンコーダ信号の示す材料6の走行位置等とに基づいて停止速度指令VBを算出し、セレクタ240に出力する。
【0076】
セレクタ240は、VA−VC生成部220から印刷完了及びVA−VCを、VB生成部230からVBを入力し、VA−VCまたはVBをM2速度指令として、フィード用モータ20−1へ出力する。
【0077】
図17は、M2速度指令のパターンと材料6及び版胴13−1のサイズとの関係を説明する図である。フィード制御部34−1により生成されるM2速度指令のパターンは、VA−VC生成部220により生成される加速及び一定速の速度遷移VA−VCと、VB生成部230により生成される減速及び停止の速度遷移VBとからなる。
【0078】
材料6には、製品毎の所定箇所に、製品長Lの間隔で、製品の始端からmの距離にマークが付されている。製品の始端から版胴13−1による印刷(1)の印刷開始位置までの間の距離をc、印刷長をa、印刷終了位置から製品の終端までの間の距離をbとすると、M2速度指令を構成するVA−VCの加速により走行する距離(M2速度指令のパターンにおける加速部分の面積)はcである。また、VA−VCの一定速により走行する距離(一定速度部分の面積)はaであり、VBの減速による走行する距離(減速部分の面積)、すなわち停止距離はbである。この場合、時刻t0から時刻t3までの加速、一定速及び減速による材料6の走行距離はc+a+bであり、この距離は製品長L=a+b+cである。
【0079】
また、図17には、版胴13−1を直線状に伸ばしたときの模式図が示されている。版胴周長B0と製品長Lとの間の差はB0−Lであり、版胴周長B0は製品長LよりもB0−Lだけ長い。版胴13−1がこの差に相当する距離B0−L分回転している間、材料6は停止していることになる。
【0080】
ここで、版胴周長B0=製品長Lの場合、フィード制御部34−1は、常に一定速度で回転している版胴13−1と同じ一定速度のM2速度指令を生成すればよい。これにより、材料6は、加減速されることなく、常に版胴13−1と同じ一定速度(VA)で走行することになる。一方、版胴周長B0≠製品長Lの場合、フィード制御部34−1は、これらの差分であるB0−Lに相当する時間において、次の製品の印刷(1)の印刷開始位置を一定速度で回転する版胴13−1の版の位置に合わせるため、停止期間を含むM2速度指令を生成する必要がある。この場合、時刻t3から時刻t4までの間、版胴13−1はB0−Lの距離分回転するが、材料6は停止する。
【0081】
一方、フィード制御部34−2により生成されるM4速度指令のパターンは、M2速度指令のパターンと同様に、加速及び一定速の速度遷移VA−VCと、減速及び停止の速度遷移VBとからなる。
【0082】
図18は、印刷ユニット1において、一定速度で回転する版胴13−1に対する材料6の動きを説明する図である。フィード制御部34−1は、材料6が図18に示す(1)〜(4)の順序で動作するように、図17に示したM2速度指令を生成する。図18において、(1)は、材料6が加速走行を終了して一定速走行を開始する時刻t1(図17を参照)の状態を示している。製品の始端から距離cにある印刷開始位置をa1とすると、この時刻t1では、一定速度で回転する版胴13−1に設けられた版22−1の始点が印刷開始位置a1上にある。すなわち、材料6が挟挿される版胴13−1と圧胴12−1との間の挟挿位置には、材料6の印刷開始位置a1が存在し、版22−1の始点が存在している。ここから印刷が開始し、材料6の走行速度と版胴13−1の回転速度とが同一になる。
【0083】
(2)は、材料6が一定速走行を終了して減速走行を開始する時刻t2の状態を示している。製品の印刷終了位置をa2とすると、この時刻t2では、一定速度で回転する版胴13−1に設けられた版22−1の終点が印刷終了位置a2上にあり、ここで印刷が終了する。すなわち、版胴13−1の挟挿位置には、材料6の印刷終了位置a2が存在し、版22−1の終点が存在している。
【0084】
(3)は、材料6が減速走行を終了して停止する時刻t3の状態を示している。この時刻t3では、一定速度で回転する版胴13−1に設けられた版22−1の終点を所定距離過ぎた位置で、材料6は停止する。この場合、版胴13−1の挟挿位置には、製品の終端(次の製品の始端)が存在する。
【0085】
(4)は、材料6が停止を終了して加速走行を開始する時刻t4の状態を示している。この時刻t4では、一定速度で回転する版胴13−1に設けられた版22−1の始点から所定距離前の位置で、材料6が走行を開始する。この場合、版胴13−1の挟挿位置には、製品の終端(次の製品の始端)が存在する。
【0086】
〔実製品長算出部〕
次に、図7に示したフィード制御部34−1の実製品長算出部210について説明する。前述のとおり、実製品長算出部210は、版胴位置、マーク検出信号及びフィードエンコーダ信号を入力し、予め設定された製品長Lを用いて、マーク検出信号の入力タイミングにより実製品長RLを算出し、実製品長RLをVA−VC生成部220及びVB生成部230に出力する。図7を参照して、実製品長算出部210は、マークディテクター211及びマスク処理部212を備えている。
【0087】
図12は、実製品長算出部210の処理を説明するフローチャートである。実製品長算出部210のマークディテクター211は、マークセンサ16−1からマーク検出信号を入力すると、マーク検出信号をマスク処理部212に出力する(ステップS1201)。マスク処理部212は、マークディテクター211からマーク検出信号を入力すると共に、フィード用エンコーダ21−1からフィードエンコーダ信号を入力し、フィードエンコーダ信号に基づいて、材料6の走行が停止している時間及び材料6が走行している時間を算出し、これらの時間に基づいてマスク時間を設定し、マーク検出信号を入力してからマスク時間が経過するまでの間、マスク信号をマークディテクター211に出力する。
【0088】
マークディテクター211は、マスク処理部212からマスク信号を入力し、マスク信号を入力している間、マーク検出信号の入力を無視する(ステップS1202)。また、マークディテクター211は、版胴制御部33−1から版胴位置を入力し、マスク信号を入力していないときのマーク検出信号を入力したタイミングにおける版胴位置と次にマーク検出信号を入力したタイミングにおける版胴位置との間の差、及び、製品長Lを版胴位置に換算したときの予め設定された値とを用いて、実製品長RLを算出する(ステップS1203)。そして、マークディテクター211は、実製品長RLをVA−VC生成部220及びVB生成部230に出力する(ステップS1204)。
【0089】
尚、マークディテクター211は、入力した版胴位置と、予め設定された印刷完了のときの版胴位置を示す回転位置設定値とを比較し、一致したときに印刷完了を判定し、その印刷完了のタイミングで実製品長RLの算出及び出力処理を行う。つまり、マークディテクター211により出力される実製品長RLは、印刷完了のタイミングで更新される。
【0090】
このように、実製品長算出部210によれば、マークセンサ信号の入力タイミング及び製品長L等に基づいて、実製品長RLを算出するようにした。これにより、VA−VC生成部220及びVB生成部230は、材料6の伸縮に伴う実製品長RLを用いてM2速度指令を生成することができる。したがって、材料6の材質等による伸縮が生じたとしても、材料6の走行速度はそれに影響を受けることがないから、材料6上の印刷位置がずれることなく、所定箇所に正確に印刷を行うことができる。
【0091】
また、実製品長算出部210によれば、印刷完了のタイミングで、実製品長RLを算出し、実製品長RLをVA−VC生成部220及びVB生成部230に出力するようにした。これにより、VA−VC生成部220及びVB生成部230は、印刷が行われていないときに、最新の実製品長RLに基づいたカウンターのプリセット等を行い、次の製品の印刷に対するM2速度指令を生成することができる。したがって、材料6上の予め設定された印刷開始位置から精度高く印刷を行うことができる。
【0092】
〔VA−VC生成部〕
次に、図7に示したフィード制御部34−1のVA−VC生成部220について説明する。前述のとおり、VA−VC生成部220は、版胴位置、フィードエンコーダ信号及び実製品長RL等を入力し、版胴13−1の回転速度である基準速度指令VAを算出し、版胴位置から印刷完了を生成し、予め設定された版胴周長B0から実製品長RLを減算し、その減算結果と、その後の版胴位置と、フィードエンコーダ信号の示す材料6の走行位置等とに基づいて材料偏差速度指令VCを算出する。また、VA−VC生成部220は、印刷完了をVB生成部230に出力し、基準速度指令VA−材料偏差速度指令VCをセレクタ240に出力すると共に、基準速度指令VAに基づいてレートRを算出し、VB生成部230に出力する。
【0093】
図7を参照して、VA−VC生成部220は、バリカム221、F/Vフィルター222、減算器223、加減算器224、同調側カウンター225、レート可変器226、加速度計算器227、乗算器228及び減算器229を備えている。
【0094】
図13は、VA−VC生成部220の処理を説明するフローチャートである。VA−VC生成部220のF/Vフィルター222は、版胴制御部33−1から版胴位置を入力し、周波数を電圧に変換するコンバータ及び所定の周波数の信号を除去するフィルターにより(ステップS1301)、版胴13−1の回転速度である基準速度指令VAを生成し、減算器229、レート可変器226及びVB生成部230に出力する(ステップS1302)。
【0095】
バリカム221は、版胴制御部33−1から版胴位置を入力し、版胴位置と、印刷完了のときの版胴位置を示す予め設定された回転位置設定値とを比較し、一致したときに印刷完了を判定し(ステップS1303)、印刷完了を同調側カウンター225、VB生成部230及びセレクタ240に出力する。
【0096】
減算器223は、実製品長算出部210から実製品長RLを入力し、予め設定された版胴周長B0から実製品長RLを減算し、その減算結果(B0−RL)を加減算器224に出力する。加減算器224は、減算器223から減算結果(B0−RL)を、フィード用エンコーダ21−1からフィードエンコーダ信号を、版胴制御部33−1から版胴位置をそれぞれ入力し、減算結果(B0−RL)とフィードエンコーダ信号との加算値から版胴位置を減算し、その加減算結果を同調側カウンター225に出力する。
【0097】
同調側カウンター225は、加減算器224から加減算結果を入力すると共に、バリカム221から印刷完了を入力する。そして、同調側カウンター225は、印刷完了を入力したタイミングにおいて、入力した加減算結果(B0−RL)をカウント値としてプリセットする(ステップS1304)。その後、同調側カウンター225は、版胴13−1の回転による版胴位置の入力に伴ってカウント値を減算し(ステップS1305)、材料6の走行によるフィードエンコーダ信号の入力に伴ってカウント値を加算し(ステップS1306)、加減算した結果のカウント値を材料偏差速度指令カウント値VC’として乗算器228に出力する。すなわち、同調側カウンター225は、印刷完了を入力したタイミングにおいてB0−RLをカウント値としてプリセットし、その後の版胴位置の入力に伴ってカウント値を減算し、フィードエンコーダ信号の入力に伴ってカウント値を加算する。
【0098】
加速度計算器227は、実製品長算出部210から実製品長RLを入力し、予め設定された製品長L、製品の開始端から印刷開始位置までの間の予め設定された距離c、予め設定された印刷長a及び実製品長RLにより加速度を算出し、乗算器228に出力する。例えば、製品長Lと実製品長RLとの関係及び予め設定された印刷長aから実印刷長を算出し、加速距離P0=(実製品長RL−実印刷長)/2を算出し、距離cに対する実距離(加速距離P0)及び印刷時の一定速度の値を用いて加速度を算出する。これにより、材料6が伸縮した場合であっても、その伸縮量に応じた加速度を算出することができる。
【0099】
レート可変器226は、F/Vフィルター222から基準速度指令VAを入力し、加速度計算器227により計算された加速度を補正するためのレートRを、入力した基準速度指令VAの値に応じて設定し、乗算器228及びVB生成部230に出力する。具体的には、レート可変器226は、基準速度指令VAが版胴13−1の回転速度として最高値のときにはレートRを1に設定し、基準速度指令VAが最高値以下のときには、基準速度指令VAの値に比例するように、0〜1の範囲でレートRを設定する。
【0100】
乗算器228は、同調側カウンター225から材料偏差速度指令カウント値VC’を入力すると共に、加速度計算器227から加速度を、レート可変器226からレートRをそれぞれ入力する。そして、乗算器228は、入力した加速度に、予め計算された加速度にするためのゲインを乗算し、印刷速度に応じたレートRを乗算し、その結果を材料偏差速度指令カウント値VC’に乗算し、その結果である材料偏差速度指令VCを減算器229に出力する(ステップS1307)。例えば、版胴13−1の印刷時の一定速度におけるフィード用モータ20−1(M2)の最高周波数をF0とすると、ゲインは、加速距離P0−(P0−Z/2)に設定される。ここで、Z=√((P0−4−F0)/(4×π×応答周波数))である。
【0101】
図19は、印刷ユニット1の基本動作を説明するタイムチャートである。(1)は基準速度指令VA、(2)は材料偏差速度指令VC、(3)はVA−VC、(4)は停止速度指令VB、(5)はM2速度指令、(6)は印刷完了、横軸は時間をそれぞれ示している。
【0102】
(1)において、F/Vフィルター222により出力される基準速度指令VAは、版胴13−1の回転速度であり、時間軸に対して一定速度のVAを維持している。(2)において、材料偏差速度指令VCは、同調側カウンター225により出力される材料偏差速度指令カウント値VC’に対して乗算器228がゲイン等を乗算して得られる指令である。したがって、材料偏差速度指令カウント値VC’も、この材料偏差速度指令VCと同様のパターンとなる。材料偏差速度指令カウント値VC’は、印刷完了のタイミングでB0−RLであり、その後徐々に小さくなってゼロになる。材料偏差速度指令VCは、印刷完了のタイミングでB0−RLに相当する値(乗算器228においてゲイン等を乗算した値)であり、その後徐々に小さくなってゼロになる。
【0103】
版胴位置は、版胴13−1が一定速度で回転していることから、時間の経過に伴って一定の割合で大きくなる。また、フィードエンコーダ信号による走行位置のデータは、材料6が印刷完了後は減速して停止することから、印刷完了後時間の経過に伴って小さくなり、材料6が停止すると一定値を維持する。したがって、印刷完了後の材料偏差速度指令カウント値VC’は、B0−RLを頂点として徐々に小さくなって0になり、次の印刷完了が入力されるまで、ゼロを維持する。同様に、材料偏差速度指令VCは、図19(2)に示したように、徐々に小さくなり、次の印刷完了が入力されるまでゼロを維持する。
【0104】
図13に戻って、減算器229は、F/Vフィルター222から基準速度指令VAを入力すると共に、乗算器228から材料偏差速度指令VCを入力し、基準速度指令VAから材料偏差速度指令VCを減算し、減算結果VA−VCをセレクタ240に出力する(ステップS1308)。減算器229により出力される減算結果VA−VCは、図19(3)のパターンとなる。ここで、図19(3)において、時刻t0から時刻t1までの間の三角形の面積は、図17に示した距離cとなり、時刻t1からt2までの間の四角形の面積は、図17に示した距離aとなる。
【0105】
このように、印刷ユニット1において、VA−VC生成部220によれば、印刷完了のタイミングでB0−RLをカウント値にプリセットし、版胴13−1の回転及び材料6の走行に伴ってカウント値を減少させてゼロを維持させる同調側カウンター225、及び、カウント値にゲイン等を乗算する乗算器228を用いて、図19(3)に示したVA−VCを生成するようにした。これにより、加速及び一定速部分のM2速度指令を生成することができる。
【0106】
図20は、図19に示した印刷ユニット1における基本動作について、製品上の印刷(1)位置を説明する図である。図20において、マークセンサ16−1から入力されるマークセンサ信号は、一定の時間間隔mt1で入力される。M2速度指令は、マークセンサ信号の入力タイミングに従って、版22−1の位置に対応して実製品長RLが反映されて生成される。ここで、マークセンサ信号の入力タイミングを示す時間間隔mt1が同じである限り、算出される実製品長RLは同じ値であり、送りイメージとしての送りピッチはRLであって変化することがない。また、図19(2)においてB0−RLも同じ値であり、VCも同一周期にて同じタイミング及び同じ大きさのパターンになり、結果として、M2速度指令も同一周期にて同じタイミング及び同じ大きさのパターンとなる。したがって、図19(3)においてt0(加速開始時点)のタイミングが各パターンにおいて同じであるから、印刷(1)は、材料6における製品ピッチである実製品長RL内で、同じ位置になされることになる。
【0107】
次に、印刷ユニット1において、図19及び図20に示した基本動作中に、マークセンサ16−1の設置位置をずらして変更した場合の動作、すなわち、印刷位置の調整を行う場合の動作について説明する。図21及び図22は、その動作を説明する図である。いま、マークセンサ信号の入力タイミングを時間間隔mt1とする基本動作中に、マークセンサ16−1の設置位置をずらして変更し、マークセンサ信号の時間間隔がmt1からmt1’に短くなったものとする。そうすると、実製品長として、基本動作中のRLよりも短いRL’が算出される。
【0108】
図21及び図22において、マークセンサ16−1から入力されるマークセンサ信号の時間間隔が、一定のmt1からmt1’に変わる。M2速度指令は、マークセンサ信号の入力タイミングに従って、版22−1の位置に対応して実製品長RL,RL’が反映されて生成される。ここで、マークセンサ信号の入力タイミングを示す時間間隔がmt1からmt1’に短くなるから、算出される実製品長もRLからRL’に短くなり、図21(2)においてB0−RL’は基本動作中のB0−RLよりも大きくなる。VCの頂点はB0−RL’であり、B0−RLよりも上の位置になるから、図21(3)においてVA−VCは、頂点が高くなった分、右へずれる(遅れる)パターンに変わる(図21(3)においてΔt’>Δt)。一方、M2速度指令の台形の面積は実製品長であり、印刷長は版22−1が同じであるから変わらない。したがって、図7に示した加速度計算器227、及び後述する停止距離計算器231並びに減速度計算器233は、入力する実製品長RL’に応じて、実製品長RLのときよりも大きな加速度、短い停止距離及び大きな減速度をそれぞれ算出する。これにより、台形の面積がRL’になるように、M2速度指令のパターンが生成される(図21(5)、図22におけるM2速度指令のパターンP1を参照)。つまり、送りイメージとしての送りピッチはRLからRL’に変わり、短くなる。
【0109】
したがって、図22において材料6の箇所に示すように、印刷(1’)は、材料6における同じ製品ピッチ内で、印刷(1)が右側にずれた位置になされることになる。この印刷(1’)位置は、M2速度指令のパターンP1により決定されるから、そのパターンを決定するための実製品長RL’、すなわちマークセンサ信号の入力タイミングである時間間隔mt1’によって決定することができる。すなわち、印刷位置は、マークセンサ16−1の設置位置を変更することによって調整することができる。これにより、製品上の印刷位置を所定位置に合わせることができる。
【0110】
尚、マークセンサの入力タイミングを示す時間間隔は、mt1からmt1’に変わった後に、元の時間間隔mt1に戻る。これは、マークセンサ16−1の設置位置が変更された後、固定されたままだからである。したがって、実製品長はRLに戻るから、その後の印刷は、実製品長がRL’のときと同じ印刷位置(印刷(1’))になされることになる。
【0111】
〔VB生成部〕
次に、図7に示したフィード制御部34−1のVB生成部230について説明する。前述のとおり、VB生成部230は、実製品長RL、フィードエンコーダ信号、印刷完了及びレートR等を入力し、印刷完了のときに、実製品長RLと、その後のフィードエンコーダ信号の示す材料6の走行位置等とに基づいて停止速度指令VBを算出し、セレクタ240に出力する。図7を参照して、VB生成部230は、停止距離計算器231、停止側カウンター232、減速度計算器233、乗算器234及び速度リミッター235を備えている。
【0112】
図14は、VB生成部230の処理を説明するフローチャートである。停止距離計算器231は、実製品長算出部210から実製品長RLを入力し、予め設定された製品長L、製品の印刷終了位置から材料6が停止する位置までの間の予め設定された距離b、予め設定された印刷長a及び実製品長RLにより、実際の停止距離を算出し、停止側カウンター232に出力する。例えば、停止距離計算器231は、製品長Lと実製品長RLとの関係及び予め設定された印刷長aから実印刷長を算出し、停止距離=(実製品長RL−実印刷長)/2を算出するようにしてもよい。これにより、材料6が伸縮した場合であっても、その伸縮量に応じた停止距離を算出することができる。
【0113】
停止側カウンター232は、停止距離計算器231から停止距離を、フィード用エンコーダ21−1から材料6の走行位置を示すフィードエンコーダ信号をそれぞれ入力すると共に、VA−VC生成部220から印刷完了を入力する(ステップS1401)。そして、停止側カウンター232は、印刷完了を入力したタイミングにおいて、停止距離をカウント値にプリセットし(ステップS1402)、材料6の走行に伴うフィードエンコーダ信号の入力によりカウント値を減算し(ステップS1403)、減算結果のカウント値を停止速度指令カウント値VB’として乗算器234に出力する。
【0114】
図19(4)において、停止速度指令VBは、停止側カウンター232により出力される停止速度指令カウント値VB’に対し、乗算器234がゲインを乗算し、速度リミッター235が速度制限を施すことにより得られる指令である。したがって、停止速度指令カウント値VB’も、この停止速度指令VBと同様なパターンになる。停止速度指令カウント値VB’は、印刷完了のタイミングにおいて停止距離に応じた値であり、その後徐々に小さくなってゼロになる。同様に、停止速度指令VBは、印刷完了のタイミングで停止距離に応じた値(乗算器234及び速度リミッター235においてゲイン及び制限を施した値、結果としてVAになる。)であり、その後徐々に小さくなってゼロになる。
【0115】
図7に戻って、減速度計算器233は、実製品長算出部210から実製品長RLを入力し、予め設定された製品長L、材料6の走行が開始する位置(製品の開始端)から印刷開始位置までの間の予め設定された距離c、予め設定された印刷長a、製品の印刷終了位置から材料6が停止する位置(製品の終了端)までの間の予め設定された距離b、及び実製品長RLにより減速度を算出し、乗算器234に出力する。例えば、製品長Lと実製品長RLとの関係から実印刷長を算出し、減速距離=(実製品長RL−実印刷長)/2を算出し、距離bに対する実距離(減速距離)及び印刷時の一定速度の値を用いて減速度を算出する。これにより、材料6が伸縮した場合であっても、その伸縮量に応じた減速度を算出することができる。
【0116】
乗算器234は、停止側カウンター232から停止速度指令カウント値VB’を入力すると共に、減速度計算器233から減速度を、VA−VC生成部220からレートRをそれぞれ入力する。そして、乗算器234は、入力した減速度に、予め計算された減速度にするためのゲインを乗算し、印刷速度に応じたレートRを乗算し、その結果を停止速度指令カウント値VB’に乗算し、その結果である停止速度指令VBを速度リミッター235に出力する。
【0117】
図14に戻って、速度リミッター235は、乗算器234から乗算後の停止速度指令VBを入力すると共に、VA−VC生成部220から基準速度指令VAを入力し、停止速度指令VBが基準速度指令VAよりも大きくならないように、停止速度指令VBに速度制限を施し、速度制限処理後の停止速度指令VBをセレクタ240に出力する(ステップS1404)。これにより、停止速度指令VBを基準速度指令VA以下の指令に制限することができるから、印刷完了のタイミングにおいて、材料6の走行速度が急変することを防止できる。したがって、材料6が急に加速することがなく余分な負荷がかからないから、材料6を円滑に走行させることができる。
【0118】
このように、印刷ユニット1において、VB生成部230によれば、印刷完了のタイミングで製品の印刷終了位置から材料6が停止する位置(製品の終了端)までの間の停止距離をカウント値にプリセットし、材料6の走行に伴ってカウント値を減少させてゼロを維持させる停止側カウンター232、カウント値にゲイン等を乗算する乗算器234、及び、停止速度指令VBが基準速度指令VAよりも大きくならないように速度制限を施す速度リミッター235を用いて、図19(4)に示した停止速度指令VBを生成するようにした。これにより、減速及び停止部分のM4速度指令を生成することができる。
【0119】
〔セレクタ〕
次に、図7に示したフィード制御部34−1のセレクタ240について説明する。前述のとおり、セレクタ240は、印刷完了、VA−VC及びVBを入力し、VA−VCまたはVBをM2速度指令として、フィード用モータ20−1へ出力する。
【0120】
図8は、セレクタ240の構成を示すブロック図である。また、図15は、セレクタ240の処理を説明するフローチャートである。このセレクタ240は、比較器241、ラッチ回路242及び切替器243を備えている。セレクタ240は、VA−VCが正の値のときにVA−VCをM2速度指令として出力し、VA−VCが0または負の値のときにVBをM2速度指令として出力する。
【0121】
比較器241は、VA−VC生成部220からVA−VCを入力し、VA−VC>0のときにONの制御信号を出力し、VA−VC≦0のときにOFFの制御信号を出力する。ラッチ回路242は、比較器241から制御信号を入力すると共に、VA−VC生成部220から印刷完了を入力し、切替制御信号を切替器243に出力する。具体的には、ラッチ回路242は、比較器241からONの制御信号を入力すると、出力をセットしてONの切替制御信号を出力する。また、ラッチ回路242は、ONの切替制御信号を出力しているときに印刷完了を入力すると、出力をリセットしてOFFの切替制御信号を出力する。
【0122】
切替器243は、VA−VC生成部220からVA−VCを、VB生成部230からVBを入力すると共に、ラッチ回路242から切替制御信号を入力する。印刷完了を入力しておらず(ステップS1501)、VA−VC>0のときに(ステップS1503)、切替制御信号がONになる。切替器243は、切替制御信号がONのときにVA−VCをM2速度指令として出力する(ステップS1504)。また、印刷完了を入力すると切替制御信号がOFFになり、切替器243は、切替制御信号がOFFのときにVBをM2速度指令として出力する(ステップS1502)。
【0123】
図19(5)において、M2速度指令は、(3)のVA−VC及び(4)VBが合成された指令である。具体的には、M2速度指令は、図19(3)(4)(5)に示すように、VA−VC>0のときのVA−VC、及び、印刷完了のときにVA−VC≦0となってその後にVA−VC>0になるまでの間のVBが合成された指令である。つまり、図8に示したセレクタ240は、図19(3)のVA−VC、(4)のVB及び(6)の印刷完了を入力し、前述した処理を行うことにより、(5)のM2速度指令を出力する。
【0124】
このように、印刷ユニット1において、セレクタ240によれば、VA−VC>0のときにVA−VCをM2速度指令として出力するようにした。これにより、材料6の走行は、停止状態から加速して版胴13−1と同じ一定速度になり、製品の印刷開始位置から印刷が開始される。そして、セレクタ240は、印刷完了のときにVA−VC<0となるから、その後にVA−VC>0になるまでの間、VBをM2速度指令として出力するようにした。これにより、材料6の走行は、製品の印刷が完了して版胴13−1と同じ一定速度から減速して停止状態になる。そして、VA−VC>0になると停止状態から加速して一定速度になる。
【0125】
以上のように、本発明の実施形態による印刷装置30によれば、印刷ユニット1,2,3毎の印刷ユニット用制御装置31−1,31−2,31−3において、版胴制御部33−1,33−2,33−3は、印刷基準部32により生成された共通の基準速度指令及び基準位置指令に基づいて、M1,M3,M5速度指令を生成し、版胴用モータ18−1,18−2,18−3により版胴13−1,13−2,13−3を一定速度で回転制御するようにした。また、フィード制御部34−1,34−2,34−3は、印刷(1)(2)(3)を行う際に、マーク検出信号の入力タイミングに基づいて、すなわち、マークセンサ16−1,16−2,16−3の設置位置に基づいて、所定位置から印刷(1)(2)(3)ができるように、M2,M4,M6速度指令を生成し、フィード用モータ20−1,20−2,20−3により材料6を加減速及び一定速度で走行制御するようにした。これにより、版胴13−1,13−2,13−2を一定速度で回転させながら、材料6における製品上の所定位置に印刷位置を合わせて、印刷(1)(2)(3)を行うことができる。したがって、材料6における製品上の印刷位置の調整(見当合わせ)のために、コンペンセータによる機械的な機構を用いる必要がなく、版胴13−1,13−2,13−3の位相を調整する必要もないから、そのための仕組み及び処理が不要になる。したがって、見当合わせを容易に行うことができ、見当合わせの調整時間を短縮することができる。また、機械的な精度が影響して不良品が生産されることがない。
【0126】
〔印刷ユニット用制御装置の共通化〕
次に、印刷ユニット1,2,3毎に設けられた印刷装置30の印刷ユニット用制御装置31−1,31−2,31−3について、共通化した場合の構成例を説明する。図9は、印刷ユニット1〜3間で共通化した印刷ユニット用制御装置の構成を示すブロック図である。この印刷ユニット用制御装置31は、印刷基準部32、版胴制御部33、フィード制御部34及びスイッチ35を備えている。
【0127】
印刷基準部32、版胴制御部33及びフィード制御部34は、図3及び図4に示した印刷基準部32、版胴制御部33−1,33−2及びフィード制御部34−1,34−2と同様であるから、ここでは説明を省略する。
【0128】
スイッチ35は、印刷基準部32から基準速度指令及び基準位置指令を入力するか、または、他の印刷ユニット制御装置から基準速度指令及び基準位置指令を入力し、予め設定された選択信号に従って、印刷基準部32側または他の印刷ユニット制御装置側のいずれか一方の指令を選択し、選択した基準速度指令及び基準位置指令を版胴制御部33に出力する。
【0129】
図1に示したフレキソ印刷機10の例では、印刷ユニット用制御装置31−1が印刷基準部32を備え、印刷ユニット用制御装置31−2,31−3が印刷基準部32を備えていない。したがって、印刷ユニット用制御装置31−1として用いられる印刷ユニット用制御装置31は、選択信号により、印刷基準部32から入力した基準速度指令及び基準位置指令を版胴制御部33に出力する。これは、図3に示した構成と同様である。一方、印刷ユニット用制御装置31−2,31−3として用いられる印刷ユニット用制御装置31は、選択信号により、他の印刷ユニット用制御装置(印刷ユニット用制御装置31−1)から入力した基準速度指令及び基準位置指令を版胴制御部33に出力する。これは、図4に示した構成と同様である。つまり、選択信号は、印刷基準部32により出力される基準速度指令及び基準位置指令を使用するか否かにより、予め設定される。
【0130】
このように、図9に示した印刷ユニット用制御装置31によれば、この印刷ユニット用制御装置31を印刷ユニット用制御装置31−1,31−2,31−3として用い、印刷ユニット用制御装置31−1においては、印刷基準部32からの指令を版胴制御部33に出力するように選択信号を設定し、印刷ユニット用制御装置31−2,31−3においては、他の印刷ユニット用制御装置31−1からの指令を版胴制御部33に出力するように選択信号を設定するようにした。これにより、印刷ユニット用制御装置31−1,31−2,31−3の共通化を図ることができるから、印刷色の数が増える毎に共通の印刷ユニット用制御装置31を用いればよく、印刷色の数の増加に容易に対応することができる。
【0131】
〔版胴の位相設定〕
次に、版胴13−1,13−2,13−3を所定の位相及び一定速度で回転制御する処理について説明する。図6に示したように、印刷ユニット用制御装置31−1の版胴制御部33−1は、基準位置指令が示す位置に版胴位置を合わせるように、一定速度のM1速度指令を生成し、版胴13−1を一定速度で回転制御する。また、加算器112が、予め設定された起動位置補正量OFを入力し、版胴位置を補正することにより、版胴制御部33−1は、起動位置補正量OF分ずらした位相で、版胴13−1を回転制御する。つまり、起動位置補正量OFにより、版胴13−1を、所定の位相で回転させることができる。
【0132】
そこで、版胴13−1,13−2,13−3を所定の位相で回転させるために、オペレータは、運転調整の際に、印刷ユニット1,2,3の起動位置補正量OFをそれぞれ設定する。このような起動位置補正量OFが設定されることにより、例えば、印刷ユニット1,2,3において同じタイミングで印刷が行われるようになる。
【0133】
また、起動位置補正量OFが設定されない場合は、印刷ユニット1,2,3にてそれぞれ独立したタイミングで印刷が行われるから、材料6の緩み、張り及びスリップの影響が異なるタイミングでダンサー11−1,11−2,11−3,11−4に反映されてしまい、ダンサー11−1,11−2,11−3,11−4の位置は個々に変動する。これに対し、前述のように起動位置補正量OFを設定することにより、材料6の緩み等の影響はダンサー11−1,11−2,11−3,11−4に同時に反映されるから、これらの影響は全体として吸収されることになる。つまり、ダンサー11−1,11−2,11−3,11−4の位置変動を最小限に抑えることができる。
【0134】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、前記実施形態では、3色刷りを行う印刷ユニット1,2,3を備えたフレキソ印刷機10の例を示したが、本発明は、印刷色の数及び印刷ユニットの数に限定されることない。例えば、4色刷りを行う場合は、4台の印刷ユニットを備えたフレキソ印刷機10であればよい。この場合も、4台の印刷ユニットのそれぞれに対して印刷ユニット用制御装置31が設けられ、印刷基準部32は共通して1箇所に備えていればよい。
【符号の説明】
【0135】
1,2,3 印刷ユニット
4 巻出機
5 巻取機
6 材料
10 フレキソ印刷機
11 ダンサー
12 圧胴
13 版胴
14 アニロックスロール
15 フィード
16 マークセンサ
17 乾燥機
18 版胴用モータ
19 版胴用エンコーダ
20 フィード用モータ
21 フィード用エンコーダ
22 版
30 印刷装置
31 印刷ユニット用制御装置
32 印刷基準部
33 版胴制御部
34 フィード制御部
35 スイッチ
101 ランプ回路
102 基準位置変換器
111 位置検出器
112 加算器
113 減算器
114 乗算器
115 加算器
210 実製品長算出部
211 マークディテクター
212 マスク処理部
220 VA−VC生成部
221 バリカム
222 F/Vフィルター
223 減算器
224 加減算器
225 同調側カウンター
226 レート可変器
227 加速度計算器
228 乗算器
229 減算器
230 VB生成部
231 停止距離計算器
232 停止側カウンター
233 減速度計算器
234 乗算器
235 速度リミッター
240 セレクタ
241 比較器
242 ラッチ回路
243 切替器
VA 基準速度指令
VB 停止速度指令
VC 材料偏差速度指令
VB’ 停止速度指令カウント値
VC’ 材料偏差速度指令カウント値
B0 版胴周長
L 製品長
RL 実製品長
k1,k2,k3 ズレ量
OF 起動位置補正量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料が所定の製品長で分割された製品毎の所定位置にマークが付され、マークセンサにより検出されたマークの信号をマーク検出信号として入力し、版が設けられた版胴を回転させ、走行している前記材料の製品毎の所定位置を前記版に合わせることにより、印刷を順次行う印刷装置において、
予め設定された基準速度指示に基づいて、前記版胴の回転速度を定める基準速度指令を生成し、前記版胴の回転位置を定める基準位置指令を生成する印刷基準部と、
前記印刷基準部により生成された基準位置指令に応じた位相で、かつ、前記印刷基準部により生成された基準速度指示の速度で、前記版胴を回転させるための版胴速度指令を生成し、前記版胴速度指令により前記版胴を回転制御する版胴制御部と、
前記材料に対する印刷の開始から終了までの期間について、前記版胴速度指令と同一の速度で走行させると共に、前記印刷の終了から次の印刷の開始までの期間について、前記材料の走行を加減速させて次の製品の所定位置を前記版に合わせ、さらに、前記マークセンサの設置位置を変更することに伴うマーク検出信号の入力タイミングの変化に応じて、前記印刷開始のタイミングをずらした材料速度指令を生成し、前記材料速度指令により前記材料を走行させるためのフィードを制御するフィード制御部と、を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記フィード制御部は、
前記マークセンサからマーク検出信号を入力し、前記マーク検出信号を入力したタイミングに基づいて実製品長を算出する実製品長算出部と、
前記版胴の回転位置を示す版胴位置の変化に基づいて基準速度指令(VA)を生成し、予め設定された版胴周長と前記実製品長算出部により算出された実製品長との間の差を算出し、前記差の値をカウンターにプリセットし、前記カウンターにより、前記版胴の回転及び前記材料の走行に伴って前記プリセット値から減算した結果をカウント値とし、前記カウント値に応じた指令であって、前記版胴周長と実製品長との間の差の値に応じて印刷開始のタイミングをずらした材料偏差速度指令(VC)を生成し、前記基準速度指令(VA)から前記材料偏差速度指令(VC)を減算し同調速度指令(VA−VC)を生成する同調速度指令(VA−VC)生成部と、
前記実製品長算出部により算出された実製品長と、予め設定された印刷長とに基づいて停止距離を算出し、前記算出した停止距離をカウンターにプリセットし、前記カウンターにより、前記材料の走行に伴って前記プリセット値から減算した結果をカウント値とし、前記カウント値に応じた停止速度指令(VB)を生成する停止速度指令(VB)生成部と、
前記同調速度指令(VA−VC)生成部により生成された同調速度指令(VA−VC)と、前記停止速度指令(VB)生成部により生成された停止速度指令(VB)とを切り替えて選択し、前記材料速度指令を出力するセレクタと、を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷装置において、
前記版胴制御部は、
前記印刷基準部により生成された基準位置指令の示す位置と、前記版胴の回転位置を示す版胴位置との間の差を算出し、版位置偏差を出力する減算器と、
予め設定されたゲインを、前記減算器により出力された版位置偏差に乗算し、版位置偏差速度指令を出力する乗算器と、
前記印刷基準部により生成された基準速度指令に、前記乗算器により出力された版位置偏差速度指令を加算し、前記版胴速度指令を出力する加算器と、を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷装置において、
多色印刷を行うために、色毎に印刷ユニット用制御装置をそれぞれ備え、
前記色毎の複数の印刷ユニット用制御装置のうち、1つの印刷ユニット用制御装置は、前記印刷基準部、前記版胴制御部及び前記フィード制御部を備え、
前記色毎の複数の印刷ユニット用制御装置のうち、他の印刷ユニット用制御装置は、前記版胴制御部及び前記フィード制御部を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項4に記載の印刷装置において、
前記版胴制御部は、前記減算器、前記乗算器及び前記加算器に加え、さらに、
予め設定された起動位置補正量を、前記版胴の回転位置を示す版胴位置に加算し、補正後の版胴位置を出力する第2の加算器を備え、
前記減算器は、前記印刷基準部により生成された基準位置指令の示す位置と、前記加算器により出力された補正後の版胴位置との間の差を算出し、版位置偏差を出力する、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項3に記載の印刷装置において、
多色印刷を行うために、色毎に印刷ユニット用制御装置をそれぞれ備え、
前記印刷ユニット用制御装置は、
前記印刷基準部、前記版胴制御部、前記フィード制御部、及び、
予め設定された選択信号に応じて、前記印刷基準部により生成された基準速度指令及び基準位置指令を入力し、前記版胴制御部に出力するか、または、他の印刷ユニット用制御装置に備えた印刷基準部により生成された基準速度指令及び基準位置指令を入力し、前記版胴制御部に出力するスイッチを備え、
前記色毎の複数の印刷ユニット用制御装置のうち、1つの印刷ユニット用制御装置に備えたスイッチは、前記選択信号により、前記印刷基準部により生成された基準速度指令及び基準位置指令を入力し、前記版胴制御部に出力するように前記選択信号が設定されており、
前記色毎の複数の印刷ユニット用制御装置のうち、他の印刷ユニット用制御装置に備えたスイッチは、前記1つの印刷ユニット用制御装置に備えた印刷基準部により生成された基準速度指令及び基準位置指令を入力し、前記版胴制御部に出力するように、前記選択信号が設定されている、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
材料が所定の製品長で分割された製品毎の所定位置にマークが付され、マークセンサにより検出されたマークの信号をマーク検出信号として入力し、版が設けられた版胴を回転させ、走行している前記材料の製品毎の所定位置を前記版に合わせることにより、印刷を順次行う印刷方法において、
予め設定された基準速度指示に基づいて、前記版胴の回転速度を定める基準速度指令を生成し、前記版胴の回転位置を定める基準位置指令を生成するステップと、
前記基準位置指令に応じた位相で、かつ前記基準速度指示の速度で、前記版胴を回転させるための版胴速度指令を生成し、前記版胴速度指令により前記版胴を回転制御するステップと、
前記材料に対する印刷の開始から終了までの期間について、前記版胴速度指令と同一の速度で走行させると共に、前記印刷の終了から次の印刷の開始までの期間について、前記材料の走行を加減速させて次の製品の所定位置を前記版に合わせ、さらに、前記マークセンサの設置位置を変更することに伴うマーク検出信号の入力タイミングの変化に応じて、前記印刷開始のタイミングをずらした材料速度指令を生成し、前記材料速度指令により前記材料を走行させるためのフィードを制御するステップと、を有することを特徴とする印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−126146(P2011−126146A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287265(P2009−287265)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(390014384)日本リライアンス株式会社 (58)
【出願人】(508368851)ウツオ化工株式会社 (2)
【Fターム(参考)】