説明

印刷装置及び印刷方法

【課題】印刷時の動作シーケンスに異常が生じたことを検出することにより、動作シーケンスの異常に起因する印刷不良を防止することができる。
【解決手段】画像データ整形部21によって画像データから整形された印刷データに基づいて、シーケンス情報生成部23が印刷時の動作を表すシーケンス情報を生成する。印刷データとシーケンス情報に対して、これらから得られるデータ保証情報をデータ保証情報付加部25が付加する。読み出し部29により読み出されたデータ保証情報とシーケンス情報とに基づいて、情報検査部31が印刷情報の適否を検査する。したがって、印刷時の動作のシーケンスに異常が生じたことを検出できるので、印刷データによる印刷を継続することなく、動作シーケンスの異常に起因する印刷不良を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像や文字等を印刷するための印刷データを印刷ヘッドに伝送し、その印刷データに基づいて画像等を印刷するための印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、画像データに基づく検査情報を付加して送信する送信部と、送信部からの画像データを、伝送路を介して受信する受信部と、受信部が受信した画像データに基づいて印刷を行う画像補正部と、を備えた印刷装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
受信部は、受信した画像データについて検査情報に基づいてエラーの検出を行う。そして、受信部がエラーを検出した場合には、画像補正部でエラーを補正して、その補正された画像データに基づいて印刷を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−288014号公報(図1,図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の装置は、画像データが伝送路中におけるノイズ等の影響によってデータが化けた場合にはエラー検出やエラー訂正等を行うことができる。しかしながら、印刷装置の印刷時における各部の動作を表したシーケンスに異常があっても検出することができない。そのため、印刷装置におけるシーケンスに異常があっても画像データによる印刷を継続してしまうので、印刷不良を生じる恐れがあるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、印刷時の動作シーケンスに異常が生じたことを検出することにより、動作シーケンスの異常に起因する印刷不良を防止することができる印刷装置及び印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、画像データを受信するとともに、印刷を行うための印刷ヘッドとの間に介在するヘッド制御部により印刷を行う印刷装置において、前記ヘッド制御部は、前記印刷ヘッドに応じた印刷データに画像データを整形する画像データ整形部と、前記印刷データに基づいて、前記印刷ヘッドによる印刷時の動作を表すシーケンス情報を生成するシーケンス情報生成部と、前記印刷データ及び前記シーケンス情報に対して、前記印刷データ及び前記シーケンス情報に基づくエラー検出のためのデータ保証情報を付加するデータ保証情報付加部と、前記印刷データと、前記シーケンス情報と、前記データ保証情報とを含む印刷情報を読み出す読み出し部と、前記読み出し部により読み出されたデータ保証情報とシーケンス情報とに基づいて、前記印刷情報の適否を検査する情報検査部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、画像データ整形部によって画像データから整形された印刷データに基づいて、シーケンス情報生成部が印刷時の動作を表すシーケンス情報を生成する。印刷データとシーケンス情報に対して、これらから得られるデータ保証情報をデータ保証情報付加部が付加する。読み出し部により読み出されたデータ保証情報とシーケンス情報とに基づいて、情報検査部が印刷情報の適否を検査する。したがって、印刷時の動作のシーケンスに異常が生じたことを検出できるので、印刷データによる印刷を継続することなく、動作シーケンスの異常に起因する印刷不良を防止できる。
【0009】
また、本発明において、前記印刷ヘッドは、インクジェット式の複数個のヘッドで構成され、印刷用紙との相対的な移動方向に相当する副走査方向と直交する主走査方向に複数個のノズルが配列されたヘッドを備え、前記ヘッドを主走査方向に複数個並設して構成され、前記シーケンス情報は、印刷用紙の頁を表すシートIDと、副走査方向における前記印刷データのライン番号を表すラインIDと、前記複数個のヘッドの番号を表すヘッドIDと、前記印刷ヘッドにおける各ノズルの配列方向におけるノズルの列番号を表すノズルIDとを含むことが好ましい(請求項2)。
【0010】
印刷ヘッドは、インクジェット式の複数個のヘッドで構成されており、主走査方向に複数個のノズルが配列されたヘッドを備えており、そのヘッドが主走査方向に複数個並設されている。このような構成の印刷ヘッドを備えている場合、シートIDは、印刷用紙の頁ごとに増分されものであり、ラインIDは、印刷データによる印刷が副走査方向に進行するのに応じて増分されてゆくものである。したがって、印刷の進行にしたがって増分されてゆくのを検査するだけで、異常の有無を判断できる。また、ヘッドID及びノズルIDは、印刷データによる印刷が進行するのに応じて変わってゆくものである。したがって、予め整形データに応じて割り当てられているヘッドIDとノズルIDとの不一致があるか否かで異常の有無を判断できる。その結果、これらのIDを含むシーケンス情報により、動作シーケンスに異常があるか否かを検査できる。
【0011】
また、本発明において、前記情報検査部は、前記データ保証情報にエラーがなく、かつ、前記シーケンス情報にエラーがない場合にのみ、印刷データを前記印字ヘッドに送信し、前記シーケンス情報にエラーがある場合には、エラーを報知することが好ましい(請求項3)。
【0012】
情報検査部は、データ保証情報とシーケンス情報にエラーがない場合にのみ、印字ヘッドに印刷データを出力して印刷を行わせる。一方、シーケンス情報にエラーがある場合には、エラーを報知するので、装置にシーケンスに問題が生じたことをオペレータが知ることができ、装置を停止させる等の対処を行うことができる。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、画像データを受信するとともに、印刷を行うための印刷ヘッドとの間に介在するヘッド制御部により印刷を行う印刷方法において、印刷ヘッドに応じた印刷データに画像データを整形する整形過程と、印刷データに基づいて、印刷ヘッドによる印刷時の動作を表すシーケンス情報を生成するシーケンス情報生成過程と、前記印刷データ及び前記シーケンス情報に対して、前記印刷データ及び前記シーケンス情報に基づくエラー検出のためのデータ保証情報を付加するデータ保証情報付加過程と、前記印刷データと、前記シーケンス情報と、前記データ保証情報とを含む印刷情報を読み出す読み出し過程と、読み出されたデータ保証情報とシーケンス情報とに基づいて、前記印刷情報の適否を検査する情報検査過程と、を備えているものである。
【0014】
[作用・効果]請求項4に記載の発明によれば、整形過程では、画像データを印刷ヘッドに応じた印刷データに整形し、シーケンス情報生成過程では、その印刷データに基づき印刷時の動作を表すシーケンス情報を生成する。データ保証情報付加過程では、印刷データとシーケンス情報とに基づいて、データ保証情報を印刷データとシーケンス情報に対して付加する。情報検査過程では、読み出し部により読み出されたデータ保証情報とシーケンス情報とに基づいて、印刷情報の適否を検査する。したがって、印刷時の動作のシーケンスに異常が生じたことを検出できるので、印刷データによる印刷を継続することなく、動作異常に起因する印刷不良を防止できる。
【0015】
また、本発明において、前記情報検査過程の後、前記データ保証情報にエラーがなく、かつ、前記シーケンス情報にエラーがない場合にのみ、印刷データを前記印字ヘッドに送信する印刷データ送信過程と、前記シーケンス情報にエラーがある場合には、エラーを報知するエラー報知過程とを実施することが好ましい(請求項5)。
【0016】
情報検査過程の後に、データ保証情報とシーケンス情報にエラーがない場合にのみ、印刷データ送信過程において、印字ヘッドに印刷データを出力して印刷を行わせる。一方、シーケンス情報にエラーがある場合には、エラー報知過程においてエラーを報知するので、装置にシーケンスに問題が生じたことをオペレータが知ることができ、装置を停止させる等の対処を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る印刷装置によれば、画像データ整形部によって画像データから整形された印刷データに基づいて、シーケンス情報生成部が印刷時の動作を表すシーケンス情報を生成する。印刷データとシーケンス情報に対して、これらから得られるデータ保証情報をデータ保証情報付加部が付加する。読み出し部により読み出されたデータ保証情報とシーケンス情報とに基づいて、情報検査部が印刷情報の適否を検査する。したがって、印刷時の動作のシーケンスに異常が生じたことを検出できるので、印刷データによる印刷を継続することなく、動作シーケンスの異常に起因する印刷不良を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例に係る印刷装置の概略構成図である。
【図2】印刷部の要部を示すブロック図である。
【図3】ノズルの構造を示す底面図である。
【図4】印刷ヘッドの構造を示す底面図である。
【図5】印刷ノズルと形成画像との関係を示す模式図である。
【図6】印刷ノズルと印刷データとの関係を示す模式図である。
【図7】データ保証情報の算出についての説明図である。
【図8】印刷情報を示す模式図である。
【図9】バッファ部へのバンク管理による書き込みを示す模式図である。
【図10】バッファ部へのロール管理による書き込みを示す模式図である。
【図11】印刷装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。
図1は、実施例に係る印刷装置の概略構成図であり、図2は、印刷部の要部を示すブロック図である。
【0020】
印刷装置1は、給紙部3と、印刷部5と、排紙部7とを備えている。給紙部3は、例えば、ロール状の連続紙WP(印刷用紙)を供給する。印刷部5は、供給される連続紙WPに対して画像や文字等の印刷を行う。排紙部7は、印刷を終えた連続紙WPをロール状に巻き取る。なお、以下の説明では、印刷部5と連続紙WPが相対的に移動する方向を副走査方向とし、図1における紙面に直交する方向を主走査方向とする。
【0021】
本実施例では、印刷部5がインクジェット式で構成されているとして説明する。この印刷部5は、連続紙WPの上面に近接して印刷ユニット9が配置されている。印刷ユニット9は、連続紙WPの下流側(排紙部7側)から順に、例えば、イエロー(Y)用の印刷ヘッド11、マゼンタ(M)用の印刷ヘッド12、シアン(C)用の印刷ヘッド13、ブラック(K)用の印刷ヘッド14が配置されている。
【0022】
各印刷ヘッド11〜14には、ヘッド制御部17が接続されている。ヘッド制御部17には、印刷画像生成部19が接続されている。印刷画像生成部19は、例えば、コンピュータなどで構成され、印刷すべき画像データを生成して、ヘッド制御部17に対して出力する。ヘッド制御部17は、詳細を後述するが、印刷画像生成部19から入力された画像データを整形するとともに、エラーチェック用の情報等を生成して印刷情報を作成する。作成された印刷情報は、印刷ユニット9に出力されて印刷情報に応じた印刷が連続紙WPに対して行われる。
【0023】
ヘッド制御部17は、図2に示すように、画像データ整形部21と、シーケンス情報生成部23と、データ保証情報付加部25と、バッファ部27と、読み出し部29と、情報検査部31とを備えている。
【0024】
上記の各構成の詳細を説明する前に、印刷ヘッド11〜14について図3〜5を参照して説明する。なお、図3は、ノズルの構造を示す底面図であり、図4は、印刷ヘッドの構造を示す底面図であり、図5は、印刷ノズルと形成画像との関係を示す模式図である。印刷ヘッド11〜14は、吐出するインク滴の色が異なるだけであり、構造自体は同じであるので、以下の説明においては印刷ヘッド11を例に採って説明する。
【0025】
印刷ヘッド11は、ヘッド33を備えている。このヘッド33は、インク滴を吐出するためのノズル35を複数個備えている。その配置は、例えば、主走査方向に直線状に一定間隔で配置された第1のノズル列と、副走査方向に所定の間隔をおき、第1のノズル列の各ノズル35間に各ノズル35が位置するように一定間隔で配置された第2のノズル列との二列構成とされている。例えば、第1のノズル列における各ノズル35の間隔が300dpiであって、第2のノズル列における各ノズル35の間隔が同様に300dpiである場合について説明する。この場合、第1のノズル列と第2のノズル列の打滴タイミングをずらして、連続紙WPの同じライン上にインク滴を吐出させる。すると、形成画像に示すように、第1のノズル列及び第2のノズル列の間隔の半分の間隔で打滴することができる。つまり、この場合には、形成画像の解像度を各ノズル列の2倍にあたる600dpiにすることができる。
【0026】
さらに、本実施例では、図4に示すように印刷ヘッド11が構成されている。つまり、印刷ヘッド11は、上述したヘッド33を主走査方向に端部を重複させるようにして並設されている。このように構成することにより、一つのヘッド33が連続紙WPの印刷幅より小さくても、連続紙WPの所定の印刷幅に形成画像を打滴することができる。
【0027】
上述した構成の印刷ヘッド11による画像形成について、図5を参照して具体的に説明する。なお、図5は、印刷ノズルと形成画像との関係を示す模式図である。
【0028】
印刷ヘッド11は、上述したように複数個のヘッド33を並設して構成されている。例えば、画像データとしてアルファベットの「A」を受信した場合には、図5に示すように、印刷ヘッド11及び各ヘッド33の各ノズル35がアルファベットの「A」との位置関係をとる。印刷画像「A」は、連続紙WP上において、副走査方向に向かいライン1、ライン2、ライン3、……と順にラインを構成するものとする。
【0029】
ここで、図6を参照して、印刷データについて説明する。なお、図6は、印刷ノズルと印刷データとの関係を示す模式図である。
【0030】
印刷ノズルと印刷画像とが図5のような位置関係となる場合には、印刷画像を打滴するために、画像データ整形部21が、受信した画像データを例えば次のように印刷データに整形する。
【0031】
まず、画像データを図6に示すように分離・分割処理する。分離・分割処理は、例えば、印刷ヘッド11のうち、最も左側に位置するヘッド33の第1のノズル列が印刷画像「A」のライン1に打滴し、その第2のノズル列が印刷画像「A」のライン1に打滴するように整形する。同様に、各ヘッド33の各ノズル列について画像データを整形する。また、同様にして、印刷画像「A」の各ラインについて、対応する各ヘッド33の各ノズル列が打滴するように画像データを印刷データに整形する。
【0032】
次に、印刷画像「A」に対応する画像データの印刷データから、シーケンス情報生成部23が各部の動作を規定するシーケンス情報を生成する。シーケンス情報としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
【0033】
シートID:連続用紙WPの頁を表す。
ラインID:副走査方向における印刷データのライン番号を表す。
ヘッドID:各印刷ヘッド11〜14を構成する複数個のヘッド33の番号を表す。
ノズルID:各ヘッド33のノズルの列番号を表す。
ウェイトID:連続用紙WPの非印刷エリアを表す。
【0034】
上記のように画像データをヘッド33のノズル列ごとに印刷データに整形してシーケンス情報を生成した後、印刷データとシーケンス情報に基づいてデータ保証情報付加部25がデータ保証情報をノズル列ごとに付加する。これを模式的に表したのが図7である。なお、図7は、データ保証情報の算出についての説明図である。データ保証情報DIは、符号演算によって算出するが、符号演算としては各種の演算を適用できる。符号演算としては、例えば、ハミング符号が挙げられる。このハミング符号は、データの誤りを検出・訂正することができる誤り訂正符号の一つであり、1ビットの誤り訂正と2ビット以上のエラー検出を行うことができる。このようにして求められた印刷データPD、シーケンス情報SI、データ保証情報を各ヘッド33のノズル列ごとに印刷情報PIとして求める。
【0035】
なお、符号演算には、上記のハミング符号の他に、パリティ、チェックサム、巡回冗長検査 (Cyclic Redundancy Check)を用いてもよい。但し、本実施例のように、印刷ヘッド11〜14が連続紙WPと相対移動する際に一回で全色を打滴するシングルパス印刷(ワンパス印刷とも呼ばれる)では、高速に印刷情報を印刷ユニット9に送る必要があるので、複雑な符号演算は避けるのが好ましい。
【0036】
上記の印刷情報は、詳細には、図8に示すようなものとなる。なお、図8は、印刷情報を示す模式図である。
【0037】
すなわち、印刷情報PIは、ヘッド33ごとであって、ヘッド33のノズル列ごとに、連続紙WPのラインごと生成される。
【0038】
このようにして生成されたヘッド33のノズル列ごとに生成された印刷情報PIは、バッファ部27を介して読み出し部29によって順次に読み出される。その際のバッファ部27への印刷情報PIの保存の方式としては、「バンク管理」と「ロール管理」とがある。ここで、図9及び図10を参照して、印刷情報のバッファ部27への保存の方式について説明する。なお、図9は、バッファ部へのバンク管理による書き込みを示す模式図であり、図10は、バッファ部へのロール管理による書き込みを示す模式図である。
【0039】
図9に示す「バンク管理」方式は、主走査及び副走査を二次元的に仮想配置してバッファ部27への書き込みを管理する。図9中の符号は、印刷ヘッド11における左側のヘッド33から順に、H1(第1のヘッド33)、H2(第2のヘッド33)、H3(第3のヘッド33)、……としている。また、第1のヘッド33における第1のノズル列をH1−1と表記し、第1のヘッド33における第2のノズル列をH1−2と表記している。また、第1のヘッド33における第1のノズル列によるライン1に対する打滴をH1−1_L1と表記し、同ノズル列によるライン2に対する打滴をH1−1_L2と表記している。
【0040】
このバンク管理方式では、ノズル列ごとに打滴タイミングが異なるので、バッファ部27から読み出し部29への読み出しの遅延制御を行う必要がある。
【0041】
図10に示す「ロール管理」方式は、二列に配置されたノズル列の遅延を考慮して、各印刷情報の書き込み位置をずらしてバッファ部27への書き込みを管理する。図10中の符号は、上述した図9におけるものと同じ意味である。
【0042】
このロール管理方式では、ノズル列ごとの打滴タイミングを考慮してあるので、読み出し部29による読み出しは、そのまま順に読み出すようにすればよい。
【0043】
上述したようにしてバッファ部27へ書き込まれた印刷情報PIは、印刷制御信号に応じて読み出し部29によって読み出され、情報検査部31による検査を経て印刷ユニット9へ与えられる。その際には、データ保証情報DIによる印刷情報PIの誤り検出と、シーケンス情報SIによるシーケンスの誤り検出とが行われ、両方ともにエラーがない場合にのみ印刷データPDが印刷ユニット9へ与えられる。なお、画像データから印刷データPDへの整形が行われる際に、連続紙WPのどの頁のどのラインに、どのヘッドにあるどの列のどのノズルによって打滴され、非印刷エリアがどのタイミングで現れるかは予めわかる。それらの情報は、印刷シーケンス情報として予め記憶されており、印刷情報PDのシーケンス情報SIは、印刷が進行するのに応じて、情報検査部31で印刷シーケンス情報と逐次的に比較されて、誤りがあるかの適否が検出される。
【0044】
次に、上述したように構成されている印刷装置による動作について、図11を参照して説明する。なお、図11は、印刷装置の動作を示すフローチャートである。
【0045】
ステップS1
印刷部5は、印刷画像生成部19から画像データを受信する。そして、画像データ整形部21は、印刷ヘッド11〜14の各ヘッド33のノズル列ごとに画像データを印刷データPDに整形する。
【0046】
ステップS2
シーケンス情報生成部23は、画像データ整形部21からの印刷データPDに基づいて、シーケンス情報SIを生成する。
【0047】
ステップS3
データ保証情報付加部25は、印刷データPDとシーケンス情報SIとに基づいて符号演算を行い、データ保証情報DIを生成する。そして、ノズル列ごとの印刷データPDとシーケンス情報SIとにデータ保証情報DIを付加して、ノズル列ごとに印刷情報PIを生成する。
【0048】
ステップS4
読み出し部29は、印刷ヘッド11〜14の各ヘッド33におけるノズル列ごとの印刷情報PIをバッファ部27を介して読み出す。
【0049】
ステップS5,S6
情報検査部31は、読み出された印刷情報PIごとにデータ保証情報DIについて適否を判断し、判断に応じて処理を分岐する。例えば、エラー訂正に1ビットハミング符号を採用した場合ならば、エラーが2ビット以上ある場合には、ステップS11に移行し、エラーが1ビットである場合には、ステップS7に移行して1ビットのエラーを訂正した後にステップS8へ移行する。
【0050】
ステップS8,S9
情報検査部31は、データ保証情報DIにエラーがない場合には、次にシーケンス情報SIについて適否を判断し、その判断に応じて処理を分岐する。具体的には次のようにシーケンス情報SIをチェックする。
【0051】
シートIDは、連続紙WPの頁ごとに増分されてゆくものであるので、印刷が副走査方向に進行するに応じてシートIDが増加しているか否かを確認する。シートIDが変化しなかったり、減少したり、2以上の増加が生じたりした場合には、構成上の問題により動作シーケンスに異常が生じたことを示す。また、ラインIDは、印刷が副走査方向に進行するにつれて増分されてゆくものである。したがって、印刷が副走査方向に進行するのに応じてラインIDが増加しているか否かを確認する。また、ヘッドID及びノズルIDは、印刷シーケンス情報により、どの時点でどの印刷ヘッド11〜14のどのヘッド33でどのノズル35から打滴されるかが予め分かる。したがって、印刷の進行に応じて、印刷シーケンス情報との比較により、現時点で印刷ユニット9から打滴される箇所が動作シーケンス上において適切であるか否かを判断することができる。ウェイトIDは、連続紙WPの非印刷エリアを表すので、印刷シーケンス情報に基づいてそのエリアへの印刷が行われる場合には、動作シーケンス上に問題が生じていると判断できる。
【0052】
ステップS10
データ保証情報DIと、シーケンス情報SIに異常がない場合にのみ、印刷ユニット9へ印刷データPDが出力され、連続紙WPへの印刷が行われる。
【0053】
ステップS11
シーケンス情報SIにエラーがある場合や、データ保証情報DIに2ビット以上のエラーがある場合には、エラー表示が行われる。具体的には、印刷装置の図示しない表示部にエラー発生の表示を行ったり、アラーム音を発生させたりして異常発生の報知を行う。これにより印刷装置のオペレータは、ノイズ等による印刷情報PIにデータ化けが生じたことや、動作シーケンス上の問題が生じたことを知ることができる。したがって、オペレータは印刷装置を停止させる等の対処を行うことができるので、印刷不良を防止することができる。
【0054】
なお、上述したステップS1が本発明における「整形過程」に相当し、ステップS2が本発明における「シーケンス情報生成過程」に相当し、ステップS3が本発明における「データ保証情報付加過程」に相当し、ステップS4が本発明における「読み出し過程」に相当し、ステップS6,S9が本発明における「情報検査過程」に相当する。また、上述したステップS10が本発明における「印刷データ送信過程」に相当し、ステップS11が本発明における「エラー報知過程」に相当する。
【0055】
このように、本実施例装置によると、画像データ整形部21によって画像データから整形された印刷データPDに基づいて、シーケンス情報生成部23が印刷時の動作を表すシーケンス情報SIを生成する。印刷データPDとシーケンス情報SIに対して、これらから得られるデータ保証情報DIをデータ保証情報付加部25が付加する。読み出し部29により読み出されたデータ保証情報DIとシーケンス情報SIとに基づいて、情報検査部31が印刷情報PIの適否を検査する。したがって、印刷時の動作のシーケンスに異常が生じたことを検出できるので、印刷データPDによる印刷を継続することなく、動作シーケンスの異常に起因する印刷不良を防止できる。
【0056】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0057】
(1)上述した実施例では、シーケンス情報としてシートID、ラインID、ヘッドID、ノズル列ID、ウェイトIDを備えている。しかしながら、動作シーケンスの適否を確認することができる情報であれば、これらの情報に限定されるものではなく、適宜のもので代用することができる。
【0058】
(2)上述した実施例では、インクジェット式の印刷装置を例に採って説明したが、本発明はこの方式に限定されるものではなく、他の方式の印刷装置であっても適用することができる。
【0059】
(3)上述した実施例では、いわゆるシングルパス印刷を採用した印刷装置を例示したが、マルチパス印刷を採用した印刷装置であっても本発明を適用することができる。
【0060】
(4)上述した実施例では、ステップS6において2ビット以上のエラーがある場合には、ステップS11のエラー表示に移行したが、再送要求を行うようにしてもよい。これにより、断続的に発生したノイズによる影響であった場合には、エラーの発生を回避することができる。
【0061】
(5)上述した実施例において、さらに冗長情報を増やし、訂正能力がより高い訂正回路を採用してもよい。
【0062】
(6)上述した実施例では、印刷用紙として連続紙WPを扱っているが、本発明はその印刷用紙に限定されるものではなく、印刷用紙が単票であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 … 印刷装置
3 … 給紙部
5 … 印刷部
7 … 排紙部
WP … 連続紙
9 … 印刷ユニット
11〜14 … 印刷ヘッド
17 … ヘッド制御部
19 … 印刷画像生成部
21 … 画像データ整形部
23 … シーケンス情報生成部
25 … データ保証情報付加部
27 … バッファ部
29 … 読み出し部
31 … 情報検査部
33 … ヘッド
35 … ノズル
PI … 印刷情報
PD … 印刷データ
SI … シーケンス情報
DI … データ保証情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを受信するとともに、印刷を行うための印刷ヘッドとの間に介在するヘッド制御部により印刷を行う印刷装置において、
前記ヘッド制御部は、
前記印刷ヘッドに応じた印刷データに画像データを整形する画像データ整形部と、
前記印刷データに基づいて、前記印刷ヘッドによる印刷時の動作を表すシーケンス情報を生成するシーケンス情報生成部と、
前記印刷データ及び前記シーケンス情報に対して、前記印刷データ及び前記シーケンス情報に基づくエラー検出のためのデータ保証情報を付加するデータ保証情報付加部と、
前記印刷データと、前記シーケンス情報と、前記データ保証情報とを含む印刷情報を読み出す読み出し部と、
前記読み出し部により読み出されたデータ保証情報とシーケンス情報とに基づいて、前記印刷情報の適否を検査する情報検査部と、
を備えていることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記印刷ヘッドは、インクジェット式の複数個のヘッドで構成され、印刷用紙との相対的な移動方向に相当する副走査方向と直交する主走査方向に複数個のノズルが配列されたヘッドを備え、前記ヘッドを主走査方向に複数個並設して構成され、
前記シーケンス情報は、印刷用紙の頁を表すシートIDと、副走査方向における前記印刷データのライン番号を表すラインIDと、前記複数個のヘッドの番号を表すヘッドIDと、前記印刷ヘッドにおける各ノズルの配列方向におけるノズルの列番号を表すノズルIDとを含むことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の印刷装置において、
前記情報検査部は、前記データ保証情報にエラーがなく、かつ、前記シーケンス情報にエラーがない場合にのみ、印刷データを前記印字ヘッドに送信し、前記シーケンス情報にエラーがある場合には、エラーを報知することを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
画像データを受信するとともに、印刷を行うための印刷ヘッドとの間に介在するヘッド制御部により印刷を行う印刷方法において、
印刷ヘッドに応じた印刷データに画像データを整形する整形過程と、
印刷データに基づいて、印刷ヘッドによる印刷時の動作を表すシーケンス情報を生成するシーケンス情報生成過程と、
前記印刷データ及び前記シーケンス情報に対して、前記印刷データ及び前記シーケンス情報に基づくエラー検出のためのデータ保証情報を付加するデータ保証情報付加過程と、
前記印刷データと、前記シーケンス情報と、前記データ保証情報とを含む印刷情報を読み出す読み出し過程と、
読み出されたデータ保証情報とシーケンス情報とに基づいて、前記印刷情報の適否を検査する情報検査過程と、
を備えていることを特徴とする印刷方法。
【請求項5】
請求項4に記載の印刷方法において、
前記情報検査過程の後、前記データ保証情報にエラーがなく、かつ、前記シーケンス情報にエラーがない場合にのみ、印刷データを前記印字ヘッドに送信する印刷データ送信過程と、前記シーケンス情報にエラーがある場合には、エラーを報知するエラー報知過程とを実施することを特徴とする印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−52537(P2013−52537A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190627(P2011−190627)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】