印刷装置
【課題】多様な形状、高さ、大きさをもつ各種の印刷媒体の印刷に適用できる上に、その各種の印刷媒体にかかわらず印刷時にインクヘッドにインクを安定供給できる印刷装置の提供。
【解決手段】本発明は、多関節ロボット1と、インクジェットヘッド2と、インク収容部インクタンク3と、昇降機4と、インク供給チューブ5とを備えている。インクジェットヘッド2が印刷媒体に印刷する際に、インクジェットヘッド2の移動に追随して昇降機4が昇降制御されてインクタンク3が昇降され、インクタンク3の高さが調整される。これにより、インクジェットヘッド2のノズル面とインクタンク3のインク面との水頭差を所定値に維持できる。
【解決手段】本発明は、多関節ロボット1と、インクジェットヘッド2と、インク収容部インクタンク3と、昇降機4と、インク供給チューブ5とを備えている。インクジェットヘッド2が印刷媒体に印刷する際に、インクジェットヘッド2の移動に追随して昇降機4が昇降制御されてインクタンク3が昇降され、インクタンク3の高さが調整される。これにより、インクジェットヘッド2のノズル面とインクタンク3のインク面との水頭差を所定値に維持できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多関節ロボットを用いた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置として例えばインクジェット装置があり、これには以下のようなタイプが知られている。
(1)直動軸に印刷用のインクジェットヘッドを搭載し、そのヘッドを往復動させて印刷媒体(メディア)に印刷するタイプ
(2)印刷用のインクジェットヘッドをインク吐出面が下向きの状態で固定し、そのヘッドの下方に配置する印刷媒体に印刷するタイプ
(3)印刷用のインクジェットヘッドをインク吐出面が横向きの状態で固定し、立体形状からなる印刷媒体の側面を印刷するタイプ
しかし、従来の印刷装置では、多様な形状、高さ、大きさをもつ印刷媒体に対して印刷する場合に、それぞれ用途に応じてカスタマイズされた印刷装置を開発する必要があった。
【0003】
ところで、インクジェット法を用いて曲面を有する立体物に印刷する装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1の印刷装置は、曲面を有する立体物に印刷するには適しているが、多様な形状、高さ、大きさをもつ印刷媒体に印刷する場合には必ずしも適していない。
【特許文献1】特開2007−106048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、多様な形状、高さ、大きさをもつ各種の印刷媒体の印刷に適用できる上に、その各種の印刷媒体にかかわらず印刷時にインクヘッドにインクを安定供給できるようにした印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決し本発明の目的を達成するために、各発明は、以下のような構成からなる。
第1の発明は、多関節ロボットと、前記多関節ロボットのアームの先端部に搭載され、印刷媒体に対してインクを用いて印刷を行うインクヘッドと、前記インクヘッドに供給するインクを収容するインク収容部と、前記インクヘッドと前記インクタンクとの水頭差を調整する水頭差調整手段と、を備える。
【0006】
第2の発明は、第1の発明において、前記水頭差調整手段は、前記インクヘッドの印刷に際し、前記インクヘッドの移動に追従して前記インクタンクの設置位置を調整し、前記インクヘッドと前記インクタンクとの水頭差を所定状態に維持する。
第3の発明は、第1の発明において、前記水頭差調整手段は、前記インクヘッドの印刷に際し、前記インク収容部内の圧力を調整し、前記インクヘッドと前記インクタンクとの水頭差を所定状態に維持する。
【0007】
第4の発明は、第1〜第3のうちのいずれかの発明において、前記インクヘッドは、直線移動機構によって往復動作するようになっている。
第5の発明は、第1〜第4のうちのいずれかの発明において、前記インクは紫外線硬化型インクを使用し、かつ、前記インクヘッドは紫外線光源を含む。
第6の発明は、第1〜第5のうちのいずれかの発明において、前記多関節ロボットの座標系と前記インクヘッドが印刷する座標系とが一致している。
【0008】
第7の発明は、第1〜第6のうちのいずれかの発明において、前記多関節ロボットの座標系と前記インクヘッドが印刷する座標系とを一致させるために、印刷に先立って前記両座標間のアライメントを実施する。
このような構成からなる本発明によれば、多様な形状、高さ、大きさをもつ各種の印刷媒体の印刷に適用できる上に、その各種の印刷媒体にかかわらず印刷時にインクヘッドにインクを安定供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の印刷装置の第1実施形態の全体の構成を示す図である。
この第1実施形態に係る印刷装置は、図1に示すように、多関節ロボット1と、インクヘッドであるインクジェットヘッド2と、インク収容部であるインクタンク3と、昇降機4と、インク供給チューブ5と、を備えている。
【0010】
多関節ロボット1は、例えば水平多関節ロボット(4軸スカラロボット)からなり、ベース(土台)およびロボットアームなどを有している。インクジェットヘッド2は、多関節ロボット1のアームの先端に搭載され、印刷媒体(記録媒体)に対してインク滴の吐出によって印刷を行う。インクジェットヘッド2は、この例ではインク滴の吐出する面(インクノズル面)が下向きでロボットアームの先端に搭載しているが、インク滴の吐出する面が上向きまたは横向きにロボットアームの先端に搭載するようにしても良い。
インクジェットヘッド2が使用する印刷用のインクは、紫外線硬化型インクなどが使用される。印刷媒体は、普通紙、光沢紙などの各種紙、または樹脂、金属、ガラスなどの材質からなる各種の物品であって、その大きさや形状(平面形状、立体形状)などは問わない。
【0011】
インクタンク3は、インクジェットヘッド2に供給するインクを収容(貯留)する。昇降機4は、インクタンク3を昇降させるものであって、インクタンク3がガイドレールに案内されて昇降できるようになっている。インク供給チューブ5は、インクジェットヘッド2による印刷動作時に、インクタンク3内のインクをインクジェットヘッド2に供給する。インク供給チューブ5は、インクジェットヘッド2とインクタンク3とを接続するとともに、インクジェットヘッド2の移動に伴って移動自在に構成される。
なお、この例では、インクジェットヘッド2はその左右に紫外線光源6、7を含んでいる。これは、インクジェットヘッド2が紫外線硬化型インクを使用する場合に、印刷媒体に吐出されて付着したインクを硬化させるためである。紫外線光源6、7は必ずしも必要ではなく、その一方だけでも良くあるいは両方を省略しても良い。
【0012】
図2は、第1実施形態に係る印刷装置の制御系のブロック図である。
この第1実施形態に係る印刷装置は、図2に示すように、ロボットコントローラ100と、インクジェットコントローラ200と、を備えている。
ロボットコントローラ100は、多関節ロボット1のアームの先端に搭載されたインクジェットヘッド2が印刷媒体に対して印刷を行うときに、そのロボットアームを制御することにより、インクジェットヘッド2を目的位置まで移動させるとともに、目的位置でその姿勢を制御する。
【0013】
インクジェットコントローラ200は、インクジェットヘッド2の印刷時に、ロボットコントローラ100からのインクジェットヘッド2の位置および姿勢に係る情報に基づいて以下の制御を行う。
すなわち、インクジェットコントローラ200は、印刷に際して、インクジェットヘッド2のノズル面の水頭とインクタンク3のインク面の水頭との差(水頭差)を所定値に維持するために、インクジェットヘッド2の移動に追随して昇降機4を昇降制御してインクタンク3を昇降させ、インクタンク3の高さを調整する。また、インクジェットコントローラ200は、その水頭差が所定値(所定状態)の下で、インクジェットヘッド2が印刷媒体に向けてインク滴の吐出を行うように、その吐出制御を行う。
【0014】
次に、第1実施形態の印刷動作例について、図面を参照して説明する。
この動作例では、図示しない印刷媒体が所定位置に配置または固定されているものとする。また、多関節ロボット1の座標系とインクジェットヘッド2が印刷する際の座標系とを一致させるために、公知の方法により、印刷に先立って両座標間のアライメントが実施されているものとする。
【0015】
この状態で、ロボットコントローラ100は、インクジェットヘッド2がその印刷媒体の印刷部分に印刷するために、多関節ロボット1のアームを制御することにより、所定位置までインクジェットヘッド2を移動させる。インクジェットヘッド2は、所定位置まで到達すると、その所定位置で停止して所定の姿勢に制御される。
このとき、インクジェットコントローラ200は、インクジェットヘッド2のノズル面とインクタンク3のインク面の水頭差を所定値に維持するために、インクジェットヘッド2の移動に追随して昇降機4を昇降制御してインクタンク3を昇降させ、インクタンク3の高さ(位置)を調整する。
【0016】
そして、上記の水頭差が所定値の条件の下で、インクジェットコントローラ200は、インクジェットヘッド2が印刷媒体の印刷部分に向けてインク滴の吐出を行うように、インクジェットヘッド2のインクの吐出制御を行う。これにより、印刷時には、インクジェットヘッド2は安定したインク滴の吐出ができ、かつ、印刷媒体の印刷部分に所望の印刷が行われる。
ここで、上記の印刷媒体において、上記の印刷部分に比べて高い位置に他の印刷部分がある場合には、その他の印刷部分のために、ロボットコントローラ100は、インクジェットヘッド2がその他の印刷部分に印刷ができるように、所定位置までインクジェットヘッド2を移動させる。インクジェットヘッド2がその所定位置まで到達すると、その所定位置でインクジェットヘッド2が停止して所定の姿勢制御がされる。
【0017】
このとき、インクジェットコントローラ200は、インクジェットヘッド2のノズル面とインクタンク3のインク面の水頭差を所定値に維持するために、インクジェットヘッド2の移動に追随して昇降機4を制御してインクタンク3を上昇させる。
例えば、インクジェットヘッド2のノズル面の位置を図1から図3の位置まで上昇させる場合には、その上昇に追随して昇降機4がインクタンク3のインク面を図1から図3の位置まで上昇させ、インクジェットヘッド2のノズル面とインクタンク3のインク面との水頭差を所定値にする。
【0018】
その後、水頭差が所定値の条件の下で、インクジェットヘッド2は印刷媒体の他の印字部分に向けてインク滴の吐出を行う。
ここで、インクジェットヘッド2から吐出されるインクが紫外線硬化型インクの場合には、紫外線光源6、7の一方を所定位置まで移動させ、印刷媒体に吐出されて付着したインクに対して紫外線を照射してインクを硬化させるのが好ましい。
以上のように、第1実施形態によれば、印刷媒体の印刷部分に高さの違いがある場合、または印刷媒体そのものに高さの違いがある場合のように、印刷媒体の高さが多様であっても所望の印刷ができ、かつ、印刷時にインクジェットヘッド2は安定してインクの吐出ができる。
【0019】
なお、第1実施形態では、多関節ロボットとして4軸の多関節ロボット1としたが、多関節ロボット1に代えて図4に示すような6軸の多関節ロボット1aに置き換えるようにしても良い。
このようにすると、多関節ロボット1aのアーム先端に搭載されるインクジェットヘッド2は、印刷媒体が平面、斜面などを有していても、その各面に印刷することが可能となる。
【0020】
(第2実施形態)
図5は、本発明の印刷装置の第2実施形態の全体の構成を示す図である。
この第2実施形態に係る印刷装置は、図1に示す第1実施形態に係る印刷装置の構成を基本としたものであり、図5に示すように、多関節ロボット1と、直線移動機構8と、インクジェットヘッド2と、インクタンク3と、昇降機4と、インク供給チューブ5と、を備えている。また、インクジェットヘッド2は、紫外線光源6、7を含んでいる。
この第2実施形態の構成が第1実施形態の構成と異なる主な点は、以下に述べる通りである。
【0021】
第1の異なる点は、多関節ロボット1のアームの先端に直線移動機構8を搭載し、その直線移動機構8によってインクジェットヘッド2および紫外線光源6、7を直線的に移動(スキャン)させるようにした点である。
また、第2の異なる点は、インクジェットヘッド2などを直線移動機構8によって移動させるようにしたので、多関節ロボット1の座標系とインクジェットヘッド2が印刷する際の座標系とを一致するために、印刷に先立って両座標間のアライメントを実施する機能を持たせるようにした点である。その機能を実現するために、直線移動機構8の一部に下方に向けてカメラ9が配置され、そのカメラ9によってインクジェットヘッド2の印刷領域が撮影できるようになっている。
【0022】
なお、第2実施形態は、上記の異なる点を除けば、第1実施形態の構成と共通するので、その共通する構成要素には同一符号を付してその説明を省略する。
図6は、第2実施形態に係る印刷装置の制御系のブロック図である。
この第2実施形態に係る印刷装置は、図6に示すように、ロボットコントローラ100aと、インクジェットコントローラ200aと、を備えている。
ロボットコントローラ100aは、インクジェットヘッド2が印刷媒体に対して印刷を行うときに、多関節ロボット1のアームを制御し、直動移動機構8およびインクジェットヘッド2を目的位置まで移動させるとともに、目的位置でそれらの姿勢を制御する。また、その目的位置において、直動移動機構8を制御することにより、インクジェットヘッド2を往復動作させる。
【0023】
さらに、ロボットコントローラ100aは、後述のように、多関節ロボット1の座標系とインクジェットヘッド2の印刷座標系とを一致するために、印刷または使用に先立って両座標間のアライメントを実施する際に各部を制御する。
インクジェットコントローラ200aは、インクジェットヘッド2の印刷時に、ロボットコントローラ100aからのインクジェットヘッド2の位置および姿勢に係る情報に基づいて以下の制御を行う。
【0024】
すなわち、インクジェットコントローラ200aは、印刷に際して、インクジェットヘッド2のノズル面とインクタンク3のインク面との水頭差を所定値に維持するために、インクジェットヘッド2の移動に追随して昇降機4を昇降制御してインクタンク3を昇降させ、インクタンク3の高さを調整する。
また、インクジェットコントローラ200aは、その水頭差が所定値の下で、直線移動機構8によってインクジェットヘッド2が移動する際に、インクジェットヘッド2が所定のタイミングで印刷媒体に向けてインク滴の吐出を行うように、その吐出制御を行う。
【0025】
次に、第2実施形態の印刷動作例について、図面を参照して説明する。
この動作例では、図示しない印刷媒体が所定位置に配置または固定されているものとする。また、後述のように、多関節ロボット1の座標系とインクジェットヘッド2が印刷する際の座標系とを一致するために、印刷に先立って事前に両座標間のアライメントが実施されているものとする。
【0026】
この状態で、ロボットコントローラ100aは、インクジェットヘッド2が印刷媒体の印刷部分に対して印刷を行うときに、多関節ロボット1のアームを制御し、直動移動機構8およびインクジェットヘッド2を目的位置まで移動させるとともに、目的位置でそれらの姿勢を制御する。
このとき、インクジェットコントローラ200aは、インクジェットヘッド2のノズル面とインクタンク3のインク面の水頭差を所定値に維持するために、インクジェットヘッド2の移動に追随して昇降機4を昇降制御してインクタンク3を昇降させ、インクタンク3の高さを調整する。
【0027】
そして、ロボットコントローラ100aは、その水頭差が所定値の下で直線移動機構8を制御し、インクジェットヘッド2を直線移動機構8の移動方向(スキャン方向)に往復動させる。さらに、インクジェットコントローラ200aは、インクジェットヘッド2の往復動の際に、所定のタイミングでインクジェットヘッド2が印刷媒体に向けてインク滴の吐出を行うように、その吐出制御を行う。このとき、紫外線光源6、7は、印刷媒体に吐出されて付着した紫外線硬化型インクに向けて紫外線を照射するので、インクが硬化する。
【0028】
次いで、多関節ロボット1のアームの制御により、インクジェットヘッド2を次の目的位置まで移動させ、次の目的位置まで移動すると、そこで直線移動機構8はインクジェットヘッド2を再び往復動させる。インクジェットヘッド2の往復動の際に、インクジェットヘッド2は所定のタイミングで印刷媒体に向けてインク滴の吐出を行う。
これらの動作を繰り返すことにより、印刷時には、インクジェットヘッド2から安定したインク滴の吐出が行われ、かつ、印刷媒体の印刷部分に所望の印刷が行われる。
【0029】
なお、第2実施形態では、多関節ロボットとして4軸の多関節ロボット1としたが、多関節ロボット1に代えて図4に示すような6軸の多関節ロボット1aに置き換えるようにしても良い。
このようにすると、多関節ロボット1aのアーム先端に搭載されるインクジェットヘッド2は、印刷媒体が平面、斜面などを有していても、その各面に印刷することが可能となる。
【0030】
次に、多関節ロボット1の座標とインクジェットヘッドの印刷座標(印刷領域)とを一致させるためのアライメント方法の一例について、図7〜図17を参照して説明する。
インクジェットヘッド2の印刷領域を把握するために、多関節ロボット1のロボット座標とキャリブレーションされているカメラが必要となり、このカメラ9が例えば図5に示すように直線移動機構8の一部に設置されている。
カメラ9の設置場所は多関節ロボット1や直線移動機構8に直接装着しても、多関節ロボット1以外の箇所に備えても良く、印刷領域を観測できれば良い。また、ロボット座標とカメラ9間の座標を一致させる作業は、既存の方法で構わない。以下では、直線移動機構8にインクジェットヘッド2が搭載(紫外線光源6、7は省略)されている場合のアライメント方法について説明する。
【0031】
図7は、図5に示すように多関節ロボット1のアームのZ軸に直線移動機構8およびインクジェットヘッド2を搭載し、図5の多関節ロボット1の上方から見た図(平面図)である。この図7は、インクジェットヘッド2と直線移動機構8を多関接ロボット2のアームに単に取り付け場合、多関節ロボット1の座標に対してインクジェットヘッド2と直線移動機構8がそれぞれ傾いてしまうことを示す。この状態では、インクジェットヘッド2が狙った位置に印刷することができない。
そこで、まず図8に示すようなアライメントパターンを印刷できるように準備する。このアライメントパターンのPおよびNは既知の距離であり、Pは直線移動機構8に設けられているエンコーダのパルス数によって、Nはインクジェットヘッド2のノズル間隔および使用するノズル数で決まる。
【0032】
図中において、縦方向のドットは、インクジェットヘッド2のノズル列と直線移動機構8のスキャン方向とが垂直になるように調整するためのパターンである。横方向のドットは、直線移動機構8のスキャン方向(直線移動機構8がインクジェットヘッド2を直線的に移動させる方向)とロボット座標のX軸が平行になるよう調整するためのパターンである。ただし、インクジェットヘッド2の傾きやスキャン方向の傾きが検知できる様なパターンであれば、図示のパターンに限る必要はない。
【0033】
以下に、アライメント手順について、以下に順に説明する。
(1)直線移動機構8のスキャン方向の補正
最初に、多関節ロボット1に取り付けられた直線移動機構8のスキャン方向がロボット座標のX軸と平行になるための角度を調べる。
図9のように、直線移動機構8とロボット座標がある程度平行な状態で、アライメントパターンを印刷エリアに対して印刷する。このとき、直線移動機構8のスキャン方向が多関節ロボット1のX軸に対して傾いているので、図示のようにアライメントパターンも当然傾いた状態で印刷される。そのパターンをカメラ9によって撮影する。
【0034】
図10は、アライメントパターンを多関節ロボット1がX軸に移動しながら撮影しているものである。
多関節ロボット1は、自らが持っている座標に従ってX軸方向に移動する。その際に、カメラ9で撮像できるドットはX軸から徐々にずれていく。このとき、多関節ロボット1のX軸への移動量と、カメラ9の画面内でずれていくドットの距離がわかれば、多関節ロボット1のX軸に対する直線移動機構8のスキャン方向の傾きθを算出できる(図11参照)。
【0035】
あらかじめカメラ9と多関節ロボット1の座標系がキャリブレーションにより一致しているので、カメラ9で撮影された画像の1ピクセル(1画素)が何mmに相当するかは既知である。また、キャリブレーションが取られていない場合であっても、アライメントパターンのNおよびPは既知であるので、その距離から角度を算出することが可能である。また、アライメントパターンの長さが長いほど、カメラ9の倍率が高いほど正確な傾きθを検出することが可能である。
図11のように直線移動機構8のスキャン方向と多関節ロボット1のX軸との傾きθを算出した後、図12のようにθ軸によって角度補正を行う事で直線移動機構8のスキャン方向と多関節ロボット1のX軸座標を平行に調整する。
【0036】
(2)インクジェットヘッド2の直線移動機構8に対する取り付け傾きの補正
この補正は、図13のように、直線移動機構8のスキャン方向と多関節ロボット1のX軸が平行になっている上で、再度アライメントパターンを印刷する。
印刷によって得られたアライメントパターンに対して、図14に示すようにロボット座標でのY軸方向にカメラ9を移動させながら、縦のドットを撮像していく。
直線移動機構8のスキャン方向を測定した方法と同様に、縦方向のドットの傾きを算出することで、多関節ロボット1のX軸、強いては直線移動機構8のスキャン方向に対してインクジェットヘッド2のノズル列がどの程度傾いているかが算出できる。加えて縦ドットも、横方向のドット測定と同様に長ければ長いほど正確な傾きが算出できるので、インクジェットヘッド2が持っているノズルを可能な限り使用することが好ましい。また、カメラ9の倍率もインク滴が数個撮像できる程度の倍率であることが好ましい。
【0037】
以上の方法で図15の様に多関節ロボット1の座標系に対してインクジェットヘッド2の傾きθhを算出した後に、インクジェットヘッド2を傾きθh分補正することによって図16に示すようにインクジェットヘッド2および直線移動機構8のスキャン方向の調整が終了する。インクジェットヘッド2の角度調整においては、ロータリーアクチュエータや機械的機構による手動調整のどちらでも構わない。
【0038】
(3)インクジェットヘッド2の印刷領域の中心値の把握
最後に、インクジェットヘッド2の印刷領域と多関節ロボット1の座標がどの程度離れているかを検出しておくことで、任意の箇所に多関節ロボット1がインクジェットヘッド2を移動させ、インクジェットヘッド2が印刷を実現できるようになる。
その方法は、直線移動機構8およびインクジェットヘッド2のロボット座標に対する傾きを補正した後に(1)(2)と同様のアライメントパターンを印刷する。印刷したアライメントパターンの中心をカメラ9で撮像し、図17のように多関節ロボット1のZ軸中心に対してどの程度外れているかを測定する事で、印刷領域の中心が把握される。
また、印字開始位置と印字終了位置を測定すれば、ロボット座標における印刷領域を全て把握することが出来る。その領域を多関節ロボット1のX−Y座標と対応させることで、印刷領域の座標と多関節ロボット1が持つ座標が一致する。
【0039】
(変形例)
なお、上記の各実施形態では、印刷に際して、インクジェットヘッド2のノズル面とインクタンク3のインク面の水頭差を所定値に維持するために、インクジェットヘッド2の移動に追随して昇降機4を昇降制御してインクタンク3を昇降させ、インクタンク3の高さを調整するようにした。
しかし、上記の水頭差を所定値にするために、インクタンク3の昇降制御に代えてインクジェットヘッド2の移動に追随してインクタンク3内の圧力を調整(加圧または減圧)するようにしても良い。このためには、例えば、圧力調整弁などが使用される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の印刷装置の第1実施形態の全体構成を示す図である。
【図2】第1実施形態の制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態の動作例を説明する図である。
【図4】第1実施形態の動作例の変形例を説明する図である。
【図5】本発明の印刷装置の第2実施形態の全体構成を示す図である。
【図6】第2実施形態の制御系の構成を示すブロック図である。
【図7】図5の多関節ロボットのアーム先端付近の平面図である。
【図8】アライメントパターンの一例を示す図である。
【図9】直線移動機構の角度を調整するためのアライメントパターンの印刷例を示す図である。
【図10】多関節ロボットがX軸方向に移動しながらアライメントパターンをカメラで撮影する状態を示す図である。
【図11】直線移動機構のスキャン方向とロボットのX座標との傾きθを説明する図である。
【図12】その傾きθの調整を説明する図である。
【図13】インクジェットヘッドの角度を補正するためのアライメントパターンの印刷例を示す図である。
【図14】多関節ロボットがY軸方向に移動しながらアライメントパターンをカメラで撮影する状態を示す図である。
【図15】インクジェットヘッドの傾きθhを説明する図である。
【図16】その傾きθhの調整後の図である。
【図17】印刷領域とロボット座標の一致を説明する図である。
【符号の説明】
【0041】
1・・・多関節ロボット、2・・・インクジェットヘッド、3・・・インクタンク、4・・・昇降機、6、7・・・紫外線光源、8・・・直線移動機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、多関節ロボットを用いた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置として例えばインクジェット装置があり、これには以下のようなタイプが知られている。
(1)直動軸に印刷用のインクジェットヘッドを搭載し、そのヘッドを往復動させて印刷媒体(メディア)に印刷するタイプ
(2)印刷用のインクジェットヘッドをインク吐出面が下向きの状態で固定し、そのヘッドの下方に配置する印刷媒体に印刷するタイプ
(3)印刷用のインクジェットヘッドをインク吐出面が横向きの状態で固定し、立体形状からなる印刷媒体の側面を印刷するタイプ
しかし、従来の印刷装置では、多様な形状、高さ、大きさをもつ印刷媒体に対して印刷する場合に、それぞれ用途に応じてカスタマイズされた印刷装置を開発する必要があった。
【0003】
ところで、インクジェット法を用いて曲面を有する立体物に印刷する装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1の印刷装置は、曲面を有する立体物に印刷するには適しているが、多様な形状、高さ、大きさをもつ印刷媒体に印刷する場合には必ずしも適していない。
【特許文献1】特開2007−106048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、多様な形状、高さ、大きさをもつ各種の印刷媒体の印刷に適用できる上に、その各種の印刷媒体にかかわらず印刷時にインクヘッドにインクを安定供給できるようにした印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決し本発明の目的を達成するために、各発明は、以下のような構成からなる。
第1の発明は、多関節ロボットと、前記多関節ロボットのアームの先端部に搭載され、印刷媒体に対してインクを用いて印刷を行うインクヘッドと、前記インクヘッドに供給するインクを収容するインク収容部と、前記インクヘッドと前記インクタンクとの水頭差を調整する水頭差調整手段と、を備える。
【0006】
第2の発明は、第1の発明において、前記水頭差調整手段は、前記インクヘッドの印刷に際し、前記インクヘッドの移動に追従して前記インクタンクの設置位置を調整し、前記インクヘッドと前記インクタンクとの水頭差を所定状態に維持する。
第3の発明は、第1の発明において、前記水頭差調整手段は、前記インクヘッドの印刷に際し、前記インク収容部内の圧力を調整し、前記インクヘッドと前記インクタンクとの水頭差を所定状態に維持する。
【0007】
第4の発明は、第1〜第3のうちのいずれかの発明において、前記インクヘッドは、直線移動機構によって往復動作するようになっている。
第5の発明は、第1〜第4のうちのいずれかの発明において、前記インクは紫外線硬化型インクを使用し、かつ、前記インクヘッドは紫外線光源を含む。
第6の発明は、第1〜第5のうちのいずれかの発明において、前記多関節ロボットの座標系と前記インクヘッドが印刷する座標系とが一致している。
【0008】
第7の発明は、第1〜第6のうちのいずれかの発明において、前記多関節ロボットの座標系と前記インクヘッドが印刷する座標系とを一致させるために、印刷に先立って前記両座標間のアライメントを実施する。
このような構成からなる本発明によれば、多様な形状、高さ、大きさをもつ各種の印刷媒体の印刷に適用できる上に、その各種の印刷媒体にかかわらず印刷時にインクヘッドにインクを安定供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の印刷装置の第1実施形態の全体の構成を示す図である。
この第1実施形態に係る印刷装置は、図1に示すように、多関節ロボット1と、インクヘッドであるインクジェットヘッド2と、インク収容部であるインクタンク3と、昇降機4と、インク供給チューブ5と、を備えている。
【0010】
多関節ロボット1は、例えば水平多関節ロボット(4軸スカラロボット)からなり、ベース(土台)およびロボットアームなどを有している。インクジェットヘッド2は、多関節ロボット1のアームの先端に搭載され、印刷媒体(記録媒体)に対してインク滴の吐出によって印刷を行う。インクジェットヘッド2は、この例ではインク滴の吐出する面(インクノズル面)が下向きでロボットアームの先端に搭載しているが、インク滴の吐出する面が上向きまたは横向きにロボットアームの先端に搭載するようにしても良い。
インクジェットヘッド2が使用する印刷用のインクは、紫外線硬化型インクなどが使用される。印刷媒体は、普通紙、光沢紙などの各種紙、または樹脂、金属、ガラスなどの材質からなる各種の物品であって、その大きさや形状(平面形状、立体形状)などは問わない。
【0011】
インクタンク3は、インクジェットヘッド2に供給するインクを収容(貯留)する。昇降機4は、インクタンク3を昇降させるものであって、インクタンク3がガイドレールに案内されて昇降できるようになっている。インク供給チューブ5は、インクジェットヘッド2による印刷動作時に、インクタンク3内のインクをインクジェットヘッド2に供給する。インク供給チューブ5は、インクジェットヘッド2とインクタンク3とを接続するとともに、インクジェットヘッド2の移動に伴って移動自在に構成される。
なお、この例では、インクジェットヘッド2はその左右に紫外線光源6、7を含んでいる。これは、インクジェットヘッド2が紫外線硬化型インクを使用する場合に、印刷媒体に吐出されて付着したインクを硬化させるためである。紫外線光源6、7は必ずしも必要ではなく、その一方だけでも良くあるいは両方を省略しても良い。
【0012】
図2は、第1実施形態に係る印刷装置の制御系のブロック図である。
この第1実施形態に係る印刷装置は、図2に示すように、ロボットコントローラ100と、インクジェットコントローラ200と、を備えている。
ロボットコントローラ100は、多関節ロボット1のアームの先端に搭載されたインクジェットヘッド2が印刷媒体に対して印刷を行うときに、そのロボットアームを制御することにより、インクジェットヘッド2を目的位置まで移動させるとともに、目的位置でその姿勢を制御する。
【0013】
インクジェットコントローラ200は、インクジェットヘッド2の印刷時に、ロボットコントローラ100からのインクジェットヘッド2の位置および姿勢に係る情報に基づいて以下の制御を行う。
すなわち、インクジェットコントローラ200は、印刷に際して、インクジェットヘッド2のノズル面の水頭とインクタンク3のインク面の水頭との差(水頭差)を所定値に維持するために、インクジェットヘッド2の移動に追随して昇降機4を昇降制御してインクタンク3を昇降させ、インクタンク3の高さを調整する。また、インクジェットコントローラ200は、その水頭差が所定値(所定状態)の下で、インクジェットヘッド2が印刷媒体に向けてインク滴の吐出を行うように、その吐出制御を行う。
【0014】
次に、第1実施形態の印刷動作例について、図面を参照して説明する。
この動作例では、図示しない印刷媒体が所定位置に配置または固定されているものとする。また、多関節ロボット1の座標系とインクジェットヘッド2が印刷する際の座標系とを一致させるために、公知の方法により、印刷に先立って両座標間のアライメントが実施されているものとする。
【0015】
この状態で、ロボットコントローラ100は、インクジェットヘッド2がその印刷媒体の印刷部分に印刷するために、多関節ロボット1のアームを制御することにより、所定位置までインクジェットヘッド2を移動させる。インクジェットヘッド2は、所定位置まで到達すると、その所定位置で停止して所定の姿勢に制御される。
このとき、インクジェットコントローラ200は、インクジェットヘッド2のノズル面とインクタンク3のインク面の水頭差を所定値に維持するために、インクジェットヘッド2の移動に追随して昇降機4を昇降制御してインクタンク3を昇降させ、インクタンク3の高さ(位置)を調整する。
【0016】
そして、上記の水頭差が所定値の条件の下で、インクジェットコントローラ200は、インクジェットヘッド2が印刷媒体の印刷部分に向けてインク滴の吐出を行うように、インクジェットヘッド2のインクの吐出制御を行う。これにより、印刷時には、インクジェットヘッド2は安定したインク滴の吐出ができ、かつ、印刷媒体の印刷部分に所望の印刷が行われる。
ここで、上記の印刷媒体において、上記の印刷部分に比べて高い位置に他の印刷部分がある場合には、その他の印刷部分のために、ロボットコントローラ100は、インクジェットヘッド2がその他の印刷部分に印刷ができるように、所定位置までインクジェットヘッド2を移動させる。インクジェットヘッド2がその所定位置まで到達すると、その所定位置でインクジェットヘッド2が停止して所定の姿勢制御がされる。
【0017】
このとき、インクジェットコントローラ200は、インクジェットヘッド2のノズル面とインクタンク3のインク面の水頭差を所定値に維持するために、インクジェットヘッド2の移動に追随して昇降機4を制御してインクタンク3を上昇させる。
例えば、インクジェットヘッド2のノズル面の位置を図1から図3の位置まで上昇させる場合には、その上昇に追随して昇降機4がインクタンク3のインク面を図1から図3の位置まで上昇させ、インクジェットヘッド2のノズル面とインクタンク3のインク面との水頭差を所定値にする。
【0018】
その後、水頭差が所定値の条件の下で、インクジェットヘッド2は印刷媒体の他の印字部分に向けてインク滴の吐出を行う。
ここで、インクジェットヘッド2から吐出されるインクが紫外線硬化型インクの場合には、紫外線光源6、7の一方を所定位置まで移動させ、印刷媒体に吐出されて付着したインクに対して紫外線を照射してインクを硬化させるのが好ましい。
以上のように、第1実施形態によれば、印刷媒体の印刷部分に高さの違いがある場合、または印刷媒体そのものに高さの違いがある場合のように、印刷媒体の高さが多様であっても所望の印刷ができ、かつ、印刷時にインクジェットヘッド2は安定してインクの吐出ができる。
【0019】
なお、第1実施形態では、多関節ロボットとして4軸の多関節ロボット1としたが、多関節ロボット1に代えて図4に示すような6軸の多関節ロボット1aに置き換えるようにしても良い。
このようにすると、多関節ロボット1aのアーム先端に搭載されるインクジェットヘッド2は、印刷媒体が平面、斜面などを有していても、その各面に印刷することが可能となる。
【0020】
(第2実施形態)
図5は、本発明の印刷装置の第2実施形態の全体の構成を示す図である。
この第2実施形態に係る印刷装置は、図1に示す第1実施形態に係る印刷装置の構成を基本としたものであり、図5に示すように、多関節ロボット1と、直線移動機構8と、インクジェットヘッド2と、インクタンク3と、昇降機4と、インク供給チューブ5と、を備えている。また、インクジェットヘッド2は、紫外線光源6、7を含んでいる。
この第2実施形態の構成が第1実施形態の構成と異なる主な点は、以下に述べる通りである。
【0021】
第1の異なる点は、多関節ロボット1のアームの先端に直線移動機構8を搭載し、その直線移動機構8によってインクジェットヘッド2および紫外線光源6、7を直線的に移動(スキャン)させるようにした点である。
また、第2の異なる点は、インクジェットヘッド2などを直線移動機構8によって移動させるようにしたので、多関節ロボット1の座標系とインクジェットヘッド2が印刷する際の座標系とを一致するために、印刷に先立って両座標間のアライメントを実施する機能を持たせるようにした点である。その機能を実現するために、直線移動機構8の一部に下方に向けてカメラ9が配置され、そのカメラ9によってインクジェットヘッド2の印刷領域が撮影できるようになっている。
【0022】
なお、第2実施形態は、上記の異なる点を除けば、第1実施形態の構成と共通するので、その共通する構成要素には同一符号を付してその説明を省略する。
図6は、第2実施形態に係る印刷装置の制御系のブロック図である。
この第2実施形態に係る印刷装置は、図6に示すように、ロボットコントローラ100aと、インクジェットコントローラ200aと、を備えている。
ロボットコントローラ100aは、インクジェットヘッド2が印刷媒体に対して印刷を行うときに、多関節ロボット1のアームを制御し、直動移動機構8およびインクジェットヘッド2を目的位置まで移動させるとともに、目的位置でそれらの姿勢を制御する。また、その目的位置において、直動移動機構8を制御することにより、インクジェットヘッド2を往復動作させる。
【0023】
さらに、ロボットコントローラ100aは、後述のように、多関節ロボット1の座標系とインクジェットヘッド2の印刷座標系とを一致するために、印刷または使用に先立って両座標間のアライメントを実施する際に各部を制御する。
インクジェットコントローラ200aは、インクジェットヘッド2の印刷時に、ロボットコントローラ100aからのインクジェットヘッド2の位置および姿勢に係る情報に基づいて以下の制御を行う。
【0024】
すなわち、インクジェットコントローラ200aは、印刷に際して、インクジェットヘッド2のノズル面とインクタンク3のインク面との水頭差を所定値に維持するために、インクジェットヘッド2の移動に追随して昇降機4を昇降制御してインクタンク3を昇降させ、インクタンク3の高さを調整する。
また、インクジェットコントローラ200aは、その水頭差が所定値の下で、直線移動機構8によってインクジェットヘッド2が移動する際に、インクジェットヘッド2が所定のタイミングで印刷媒体に向けてインク滴の吐出を行うように、その吐出制御を行う。
【0025】
次に、第2実施形態の印刷動作例について、図面を参照して説明する。
この動作例では、図示しない印刷媒体が所定位置に配置または固定されているものとする。また、後述のように、多関節ロボット1の座標系とインクジェットヘッド2が印刷する際の座標系とを一致するために、印刷に先立って事前に両座標間のアライメントが実施されているものとする。
【0026】
この状態で、ロボットコントローラ100aは、インクジェットヘッド2が印刷媒体の印刷部分に対して印刷を行うときに、多関節ロボット1のアームを制御し、直動移動機構8およびインクジェットヘッド2を目的位置まで移動させるとともに、目的位置でそれらの姿勢を制御する。
このとき、インクジェットコントローラ200aは、インクジェットヘッド2のノズル面とインクタンク3のインク面の水頭差を所定値に維持するために、インクジェットヘッド2の移動に追随して昇降機4を昇降制御してインクタンク3を昇降させ、インクタンク3の高さを調整する。
【0027】
そして、ロボットコントローラ100aは、その水頭差が所定値の下で直線移動機構8を制御し、インクジェットヘッド2を直線移動機構8の移動方向(スキャン方向)に往復動させる。さらに、インクジェットコントローラ200aは、インクジェットヘッド2の往復動の際に、所定のタイミングでインクジェットヘッド2が印刷媒体に向けてインク滴の吐出を行うように、その吐出制御を行う。このとき、紫外線光源6、7は、印刷媒体に吐出されて付着した紫外線硬化型インクに向けて紫外線を照射するので、インクが硬化する。
【0028】
次いで、多関節ロボット1のアームの制御により、インクジェットヘッド2を次の目的位置まで移動させ、次の目的位置まで移動すると、そこで直線移動機構8はインクジェットヘッド2を再び往復動させる。インクジェットヘッド2の往復動の際に、インクジェットヘッド2は所定のタイミングで印刷媒体に向けてインク滴の吐出を行う。
これらの動作を繰り返すことにより、印刷時には、インクジェットヘッド2から安定したインク滴の吐出が行われ、かつ、印刷媒体の印刷部分に所望の印刷が行われる。
【0029】
なお、第2実施形態では、多関節ロボットとして4軸の多関節ロボット1としたが、多関節ロボット1に代えて図4に示すような6軸の多関節ロボット1aに置き換えるようにしても良い。
このようにすると、多関節ロボット1aのアーム先端に搭載されるインクジェットヘッド2は、印刷媒体が平面、斜面などを有していても、その各面に印刷することが可能となる。
【0030】
次に、多関節ロボット1の座標とインクジェットヘッドの印刷座標(印刷領域)とを一致させるためのアライメント方法の一例について、図7〜図17を参照して説明する。
インクジェットヘッド2の印刷領域を把握するために、多関節ロボット1のロボット座標とキャリブレーションされているカメラが必要となり、このカメラ9が例えば図5に示すように直線移動機構8の一部に設置されている。
カメラ9の設置場所は多関節ロボット1や直線移動機構8に直接装着しても、多関節ロボット1以外の箇所に備えても良く、印刷領域を観測できれば良い。また、ロボット座標とカメラ9間の座標を一致させる作業は、既存の方法で構わない。以下では、直線移動機構8にインクジェットヘッド2が搭載(紫外線光源6、7は省略)されている場合のアライメント方法について説明する。
【0031】
図7は、図5に示すように多関節ロボット1のアームのZ軸に直線移動機構8およびインクジェットヘッド2を搭載し、図5の多関節ロボット1の上方から見た図(平面図)である。この図7は、インクジェットヘッド2と直線移動機構8を多関接ロボット2のアームに単に取り付け場合、多関節ロボット1の座標に対してインクジェットヘッド2と直線移動機構8がそれぞれ傾いてしまうことを示す。この状態では、インクジェットヘッド2が狙った位置に印刷することができない。
そこで、まず図8に示すようなアライメントパターンを印刷できるように準備する。このアライメントパターンのPおよびNは既知の距離であり、Pは直線移動機構8に設けられているエンコーダのパルス数によって、Nはインクジェットヘッド2のノズル間隔および使用するノズル数で決まる。
【0032】
図中において、縦方向のドットは、インクジェットヘッド2のノズル列と直線移動機構8のスキャン方向とが垂直になるように調整するためのパターンである。横方向のドットは、直線移動機構8のスキャン方向(直線移動機構8がインクジェットヘッド2を直線的に移動させる方向)とロボット座標のX軸が平行になるよう調整するためのパターンである。ただし、インクジェットヘッド2の傾きやスキャン方向の傾きが検知できる様なパターンであれば、図示のパターンに限る必要はない。
【0033】
以下に、アライメント手順について、以下に順に説明する。
(1)直線移動機構8のスキャン方向の補正
最初に、多関節ロボット1に取り付けられた直線移動機構8のスキャン方向がロボット座標のX軸と平行になるための角度を調べる。
図9のように、直線移動機構8とロボット座標がある程度平行な状態で、アライメントパターンを印刷エリアに対して印刷する。このとき、直線移動機構8のスキャン方向が多関節ロボット1のX軸に対して傾いているので、図示のようにアライメントパターンも当然傾いた状態で印刷される。そのパターンをカメラ9によって撮影する。
【0034】
図10は、アライメントパターンを多関節ロボット1がX軸に移動しながら撮影しているものである。
多関節ロボット1は、自らが持っている座標に従ってX軸方向に移動する。その際に、カメラ9で撮像できるドットはX軸から徐々にずれていく。このとき、多関節ロボット1のX軸への移動量と、カメラ9の画面内でずれていくドットの距離がわかれば、多関節ロボット1のX軸に対する直線移動機構8のスキャン方向の傾きθを算出できる(図11参照)。
【0035】
あらかじめカメラ9と多関節ロボット1の座標系がキャリブレーションにより一致しているので、カメラ9で撮影された画像の1ピクセル(1画素)が何mmに相当するかは既知である。また、キャリブレーションが取られていない場合であっても、アライメントパターンのNおよびPは既知であるので、その距離から角度を算出することが可能である。また、アライメントパターンの長さが長いほど、カメラ9の倍率が高いほど正確な傾きθを検出することが可能である。
図11のように直線移動機構8のスキャン方向と多関節ロボット1のX軸との傾きθを算出した後、図12のようにθ軸によって角度補正を行う事で直線移動機構8のスキャン方向と多関節ロボット1のX軸座標を平行に調整する。
【0036】
(2)インクジェットヘッド2の直線移動機構8に対する取り付け傾きの補正
この補正は、図13のように、直線移動機構8のスキャン方向と多関節ロボット1のX軸が平行になっている上で、再度アライメントパターンを印刷する。
印刷によって得られたアライメントパターンに対して、図14に示すようにロボット座標でのY軸方向にカメラ9を移動させながら、縦のドットを撮像していく。
直線移動機構8のスキャン方向を測定した方法と同様に、縦方向のドットの傾きを算出することで、多関節ロボット1のX軸、強いては直線移動機構8のスキャン方向に対してインクジェットヘッド2のノズル列がどの程度傾いているかが算出できる。加えて縦ドットも、横方向のドット測定と同様に長ければ長いほど正確な傾きが算出できるので、インクジェットヘッド2が持っているノズルを可能な限り使用することが好ましい。また、カメラ9の倍率もインク滴が数個撮像できる程度の倍率であることが好ましい。
【0037】
以上の方法で図15の様に多関節ロボット1の座標系に対してインクジェットヘッド2の傾きθhを算出した後に、インクジェットヘッド2を傾きθh分補正することによって図16に示すようにインクジェットヘッド2および直線移動機構8のスキャン方向の調整が終了する。インクジェットヘッド2の角度調整においては、ロータリーアクチュエータや機械的機構による手動調整のどちらでも構わない。
【0038】
(3)インクジェットヘッド2の印刷領域の中心値の把握
最後に、インクジェットヘッド2の印刷領域と多関節ロボット1の座標がどの程度離れているかを検出しておくことで、任意の箇所に多関節ロボット1がインクジェットヘッド2を移動させ、インクジェットヘッド2が印刷を実現できるようになる。
その方法は、直線移動機構8およびインクジェットヘッド2のロボット座標に対する傾きを補正した後に(1)(2)と同様のアライメントパターンを印刷する。印刷したアライメントパターンの中心をカメラ9で撮像し、図17のように多関節ロボット1のZ軸中心に対してどの程度外れているかを測定する事で、印刷領域の中心が把握される。
また、印字開始位置と印字終了位置を測定すれば、ロボット座標における印刷領域を全て把握することが出来る。その領域を多関節ロボット1のX−Y座標と対応させることで、印刷領域の座標と多関節ロボット1が持つ座標が一致する。
【0039】
(変形例)
なお、上記の各実施形態では、印刷に際して、インクジェットヘッド2のノズル面とインクタンク3のインク面の水頭差を所定値に維持するために、インクジェットヘッド2の移動に追随して昇降機4を昇降制御してインクタンク3を昇降させ、インクタンク3の高さを調整するようにした。
しかし、上記の水頭差を所定値にするために、インクタンク3の昇降制御に代えてインクジェットヘッド2の移動に追随してインクタンク3内の圧力を調整(加圧または減圧)するようにしても良い。このためには、例えば、圧力調整弁などが使用される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の印刷装置の第1実施形態の全体構成を示す図である。
【図2】第1実施形態の制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態の動作例を説明する図である。
【図4】第1実施形態の動作例の変形例を説明する図である。
【図5】本発明の印刷装置の第2実施形態の全体構成を示す図である。
【図6】第2実施形態の制御系の構成を示すブロック図である。
【図7】図5の多関節ロボットのアーム先端付近の平面図である。
【図8】アライメントパターンの一例を示す図である。
【図9】直線移動機構の角度を調整するためのアライメントパターンの印刷例を示す図である。
【図10】多関節ロボットがX軸方向に移動しながらアライメントパターンをカメラで撮影する状態を示す図である。
【図11】直線移動機構のスキャン方向とロボットのX座標との傾きθを説明する図である。
【図12】その傾きθの調整を説明する図である。
【図13】インクジェットヘッドの角度を補正するためのアライメントパターンの印刷例を示す図である。
【図14】多関節ロボットがY軸方向に移動しながらアライメントパターンをカメラで撮影する状態を示す図である。
【図15】インクジェットヘッドの傾きθhを説明する図である。
【図16】その傾きθhの調整後の図である。
【図17】印刷領域とロボット座標の一致を説明する図である。
【符号の説明】
【0041】
1・・・多関節ロボット、2・・・インクジェットヘッド、3・・・インクタンク、4・・・昇降機、6、7・・・紫外線光源、8・・・直線移動機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多関節ロボットと、
前記多関節ロボットのアームの先端部に搭載され、印刷媒体に対してインクを用いて印刷を行うインクヘッドと、
前記インクヘッドに供給するインクを収容するインク収容部と、
前記インクヘッドと前記インクタンクとの水頭差を調整する水頭差調整手段と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記水頭差調整手段は、前記インクヘッドの印刷に際し、前記インクヘッドの移動に追従して前記インクタンクの設置位置を調整し、前記インクヘッドと前記インクタンクとの水頭差を所定状態に維持することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記水頭差調整手段は、前記インクヘッドの印刷に際し、前記インク収容部内の圧力を調整し、前記インクヘッドと前記インクタンクとの水頭差を所定状態に維持することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記インクヘッドは、直線移動機構によって往復動作するようになっていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちの何れかに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記インクは紫外線硬化型インクを使用し、かつ、前記インクヘッドは紫外線光源を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちの何れかに記載の印刷装置。
【請求項6】
前記多関節ロボットの座標系と前記インクヘッドが印刷する座標系とが一致していることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちの何れかに記載の印刷装置。
【請求項7】
前記多関節ロボットの座標系と前記インクヘッドが印刷する座標系とを一致させるために、印刷に先立って前記両座標間のアライメントを実施することを特徴とする請求項1乃至請求項6のうちの何れかに記載の印刷装置。
【請求項1】
多関節ロボットと、
前記多関節ロボットのアームの先端部に搭載され、印刷媒体に対してインクを用いて印刷を行うインクヘッドと、
前記インクヘッドに供給するインクを収容するインク収容部と、
前記インクヘッドと前記インクタンクとの水頭差を調整する水頭差調整手段と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記水頭差調整手段は、前記インクヘッドの印刷に際し、前記インクヘッドの移動に追従して前記インクタンクの設置位置を調整し、前記インクヘッドと前記インクタンクとの水頭差を所定状態に維持することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記水頭差調整手段は、前記インクヘッドの印刷に際し、前記インク収容部内の圧力を調整し、前記インクヘッドと前記インクタンクとの水頭差を所定状態に維持することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記インクヘッドは、直線移動機構によって往復動作するようになっていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちの何れかに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記インクは紫外線硬化型インクを使用し、かつ、前記インクヘッドは紫外線光源を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちの何れかに記載の印刷装置。
【請求項6】
前記多関節ロボットの座標系と前記インクヘッドが印刷する座標系とが一致していることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちの何れかに記載の印刷装置。
【請求項7】
前記多関節ロボットの座標系と前記インクヘッドが印刷する座標系とを一致させるために、印刷に先立って前記両座標間のアライメントを実施することを特徴とする請求項1乃至請求項6のうちの何れかに記載の印刷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−214040(P2009−214040A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61158(P2008−61158)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]