説明

印刷装置

【課題】ジャム検知機構を新たに設けることなく連続用紙の搬送不良を検知できるようにする。
【解決手段】キャリッジに印字ヘッドを有し、そのキャリッジを用紙の送り方向に対して略直交する方向に往復移動しながら印字を行う印刷装置において、前記キャリッジに配置され、用紙に印字された文字の濃淡を検出する濃度検出部と、前記濃度検出部の出力を監視して用紙の搬送不良を検出する処理部とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続した用紙を印刷する印刷装置に関し、特に連続した用紙の搬送不良を検知する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のワイヤドットプリンタとして知られているシリアルインパクトドットマトリクスプリンタなどの印刷装置は、連続した印刷用紙(以下、「連続用紙」という。)に印刷する場合、用紙を搬送するトラクタに印刷用紙のスプロケット孔を合わせて搬送が行われ、A4サイズ等の所定の大きさにカットされた用紙と異なり、ユーザが一旦、印刷用紙をトラクタにセットすることで印刷用紙がなくなるまで連続して印刷することができるようになっている。
【0003】
このような印刷装置は、何らかの理由により印刷用紙の搬送不良が発生することもあるため、トラクタ部の用紙搬送機構にリンクしてコロを可動させ、そのコロの通過を透過センサ等で検知して用紙の搬送状態を検知する手段や連続用紙のスプロケット孔の通過をセンサで検知して用紙の搬送状態を検知する手段等の印刷用紙が搬送不良の状態に陥ったことを検知するジャム検知機構を備えるようにしている。
【0004】
一方、所定の大きさにカットされた用紙に印刷する印刷装置では、紙幅を検知するための紙幅センサを利用して印刷用紙の端部が所定の位置に達しないことを検知して印刷用紙毎にその印刷用紙が搬送不良の状態に陥ったことを検知するようにしているものもある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−58012号公報(段落「0017」〜段落「0024」、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようにジャム検知機構を備えた印刷装置は、印刷用紙の搬送不良を検知することが可能であるが、コスト重視の低価格の印刷装置では、ジャム検知機構を備えていないものも多く存在する。
しかしながら、上述した従来の技術においては、ジャム検知機構を備えていない印刷装置で印刷用紙の搬送不良が発生した場合、印刷用紙の搬送不良の状態で印刷を継続してしまい送ることができない印刷用紙の同一箇所に印刷し続け、やがて印刷用紙が破れプラテンへ直接印刷してしまい、印字ヘッドのピン折れやプラテンの損傷につながってしまう。このため、印刷用紙が搬送不良の状態に陥ったことを検知する必要があり、この場合ジャム検知機構を備える必要があるという問題がある。
【0006】
また、上述の特許文献1に記載されているようにジャム検知機構を備えることなく、紙幅センサを利用して印刷用紙に端部が所定の位置に達しないことを検知して印刷用紙毎にその印刷用紙が搬送不良の状態に陥ったことを検知する場合、所定の大きさにカットされた用紙の搬送不良を検知することはできても連続用紙の搬送不良を検知することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決することを課題とし、ジャム検知機構を新たに設けることなく連続用紙の搬送不良を検知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのため、本発明は、キャリッジに印字ヘッドを有し、そのキャリッジを用紙の送り方向に対して略直交する方向に往復移動しながら印字を行う印刷装置において、前記キャリッジに配置され、用紙に印字された文字の濃淡を検出する濃度検出部と、前記濃度検出部の出力を監視して用紙の搬送不良を検出する処理部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このようにした本発明は、ジャム検知機構を新たに設けることなく連続用紙の搬送不良を検知することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明による印刷装置の実施例を説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は第1の実施例における印刷装置の構成を示す要部平面図、図2は第1の実施例における印刷装置の構成を示す側断面図である。
図1および図2において、印刷装置100は、連続用紙1を印刷するプリンタである。
トラクタ2は、図示しないモータ等の駆動手段で回転するベルトの外側に突出したピンが設けられ、そのピンに連続用紙1の両側部に設けられたスプロケット孔が嵌め合わせられるものである。このトラクタ2は、図示しない搬送モータ等の駆動手段で回転するように構成され、回転することにより連続用紙1を送り出すことができるようになっている。
【0012】
プラテン3は、印字ヘッド7によって与えられるワイヤーピンの衝撃を受けるものであり、図示しない搬送モータ等の駆動手段でトラクタ2とともに回転するように構成され、トラクタ2により送り出された連続用紙1を搬送する。
ペーパーエンドセンサ4は、トラクタ2とプラテン3との間に設けられ、搬送された連続用紙1がプラテン3に入り込む前段の連続用紙1の有無を検知するためのセンサである。なお、本実施例では、ペーパーエンドセンサ4は連続用紙1を検知するための検出用のレバーを備え、そのレバーにより光透過型センサの光軸を遮断することで連続用紙1の有無を検知するものとする。
【0013】
キャリッジ6は、図1に示すようにキャリッジシャフト10に貫通され、連続用紙1が搬送される方向に対して略直交する方向(図1の矢印Aが示す方向)に摺動可能に構成されている。このキャリッジ6は、ワイヤーピンを突出させてインクリボン11を連続用紙1に突き当てる印字ヘッド7、その印字ヘッド7の近傍に、連続用紙1に光を照射してその反射光を入力する光反射型センサであるキャリッジセンサ8、およびインクリボン11を案内するリボンプロテクタ9を備えている。したがって、キャリッジ6を連続用紙1が搬送される方向に対して略直交する方向に往復移動させて連続用紙1に印字することができるようになっている。
【0014】
プルアップローラアセンブリ13は、キャリッジ6の上方に配置され、連続用紙1を引き上げるプルアップローラ14を備え、図示しない搬送モータ等の駆動手段により回転駆動されたプルアップローラ14で引き上げられシートガイド5で案内された連続用紙1を装置の上部に配置されたシートステージ15へ案内して搬送する(図2の矢印Bが示す方向)。
【0015】
図3は第1の実施例における印刷装置の構成を示すブロック図である。
図3において、上位装置20は、印刷装置100に印刷を指示する印刷データを出力するホストコンピュータである。
印刷装置100は、データ受信部21、データ解析部22、印字データ生成出力部23、操作パネル部24、表示部25、スペース制御部26、用紙搬送制御部28、用紙検出回路部30、記憶部31、およびこれらを制御する主制御部32で構成されている。
【0016】
データ受信部21は、上位装置20から印刷データを受信し、データ解析部22は、データ受信部21が受信した印刷データを解析する。印刷データ生成出力部23は、データ解析部22で解析された結果に基づいてビットマップデータに展開した印字データを生成し、その印字データに基づいて印字ヘッド7で連続用紙1に印字する。
操作パネル部24は、操作ボタン等の入力手段により操作者の操作を受付け、表示部25は印刷装置100の状態等を表示するランプやディスプレイ等である。
【0017】
スペース制御部26は、スペースモータ27を回転駆動させてそのスペースモータ27に接続されたベルトを駆動させることでキャリッジ6を連続用紙1が搬送される方向に対して略直交する方向に摺動させる。したがって、スペース制御部26は、スペースモータ27を駆動することにより、キャリッジ6に設けられた印字ヘッド7およびキャリッジセンサ8を連続用紙1の搬送方向に略直交する幅方向に往復移動させることができるようになっている。
【0018】
用紙搬送制御部28は、搬送モータ29を回転駆動させてトラクタ2およびプラテン3を回転させ、連続用紙1の給紙、排出、および改行等の送り動作を行う。
用紙検出回路部30は、キャリッジセンサ8とで濃度検出部としての非反射部検出手段を構成し、連続用紙1に向けて発光した光の反射光を受光して反射状態(淡:白色部)または非反射状態(濃:黒色部)を検出するものである。
【0019】
この用紙検出回路部30は、連続用紙1に向けて発光した光の反射光を受光して反射状態または非反射状態を検出してその連続用紙1の紙幅を検出することができ、また連続用紙1に印字された文字の濃淡を検出することができるようになっている。
この用紙検出回路部30は、例えば図4に示すように、抵抗R1およびR2が接続されたキャリッジセンサ8としての発光ダイオードLED1、受光トランジスタTR1、受光トランジスタTR1のエミッタ出力が比較器Q1の“―”端子に接続され、一方、“+”端子に抵抗R4およびR5によって5Vを分圧した電圧がスライスレベルとして接続されたものである。また、比較器Q1の出力は抵抗R3でプルアップされており、主制御部32の入力ポートに接続されている。
【0020】
記憶部31は、印刷装置100全体を制御するための制御プログラムや装置の状態等を記憶するメモリで構成されたものである。
主制御部32は、演算手段および制御手段としてのCPU等で構成され、記憶部31に記憶された制御プログラムに基づいて印刷装置100全体を制御し、上位装置20から受信した印字データに基づいて1行(ライン)毎にキャリッジ6を移動させて印字ヘッド7により連続用紙1に印字を行う。
【0021】
上述した構成の作用を図5の第1の実施例における印字動作を示すフローチャートの図中Sで表すステップに従って説明する。
まず、印字動作に入る前の動作を説明する。
印刷装置100に連続用紙1がセットされていない場合、ユーザにより連続用紙1のスプロケット孔とトラクタ2のピンとを合わせて連続用紙1をセットする。連続用紙1がトラクタ2にセットされた後、印刷装置100のデータ受信部21が上位装置20から印字データを受信、またはユーザの操作を受付けた操作パネル部24から給紙命令を受信すると用紙搬送制御部28により搬送モータ29を駆動し、ギアを介してトラクタ2およびプラテン3を回転させ、連続用紙1をプラテン3とキャリッジ6の間まで搬送する給紙動作を行う。
【0022】
次に、スペース制御部26は、連続用紙1の幅を検出するためにスペースモータ27を駆動してキャリッジ6を摺動させるスペーシング動作を行い、そのキャリッジ6の可動範囲を移動させてキャリッジセンサ8により連続用紙1のエッジの位置、すなわち連続用紙1の紙幅を検出し、検出した紙幅を記憶部31に用紙幅情報として格納する。
なお、連続用紙1の紙幅を検出する動作は、連続用紙1の給紙動作時および印刷装置100の電源投入時に行うものとする。
【0023】
S1:連続用紙1の紙幅を検出する動作を終了した後、印刷装置100のデータ受信部21が上位装置20から印字データを受信すると受信した印字データに基づいてスペース制御部26および印字データ生成出力部23により、キャリッジ6のスペーシング動作とインクリボン11を介して印字ヘッド7のピンを連続用紙1にインパクトさせる印字動作を開始し、1ライン(行)の印字動作を行う。
【0024】
S2:キャリッジ6のスペーシング動作において、キャリッジ6に設けられたキャリッジセンサ8の出力としての用紙検出回路30の出力を主制御部32の入力ポートへ入力し、主制御部32は入力されたキャリッジセンサ8の出力に基づいて連続用紙1上をスペーシング動作する間、非反射部である黒色部の有無を判別することが可能になる。
ここで、1ラインの印字データを印字する場合、これから印字するラインには未だ印字されていないので、キャリッジセンサ8が連続用紙1の端部を越えるまではキャリッジセンサ8の出力は反射状態を示す。そのため、印字データによる印字範囲が連続用紙1からはみ出ない場合、黒色部を検出することはなく、処理をS3へ移行する(S2:NO)。
【0025】
S3:スペース制御部26は、スペーシング動作を終了し、1ラインの印字動作を終了する。
S4:1ラインの印字が終了すると用紙搬送制御部28は、印字データに基づいてトラクタ2およびプラテン3を駆動させ、連続用紙1を必要量搬送する改行動作を行う。
このように通常はS1〜S4の動作を繰り返して印字動作を行う。
【0026】
一方、S2において、非反射部を検出した場合(S2:YES)、処理をS5へ移行する。
S5:S2において、非反射部を検出した場合であっても、連続用紙1の端部付近を印字するなどスペーシング動作の範囲が連続用紙1の端部を越える場合、キャリッジセンサ8が連続用紙1から離れ、キャリッジセンサ8はプラテン3により非反射状態を検出し、その出力は非反射状態を示す。このため、主制御部32は、記憶部31に格納された用紙幅情報に基づき、キャリッジセンサ8が連続用紙1の端部を越えて非反射状態を検出したか否かを判別する。
【0027】
主制御部32は、キャリッジ6のスペーシング動作による移動量と記憶部31に格納された用紙幅情報とを比較し、キャリッジ6が連続用紙1の幅を超えたと判別すると処理をS6へ移行し(YES)、連続用紙1の幅を超えていないと判別すると処理をS7へ移行する(NO)。
S6:キャリッジ6が連続用紙1の幅を超えたと判別した場合、継続して印字動作を行うと連続用紙1が存在しない位置、すなわちプラテン3に直接印字してしまうため、主制御部32は、同一のラインに残りの印字データが存在すれば、その印字データを受け捨てる処理を行い、処理をS3へ移行して1ラインの印字動作を終了する。
【0028】
このようにして印刷装置100は、1ラインの印字動作を行うが、何らかの理由により連続用紙1の搬送が不能になるジャム状態に至るとトラクタ2およびプラテン3を回転させても連続用紙1を搬送することができない状態に陥る。
例えば、図6に示すように印字された連続用紙1がシートステージ15を超えて印刷装置100の背面に垂れ下がった状態が続いた場合、給紙される連続用紙1が配置される位置によって印字済みの連続用紙1が給紙される連続用紙1に載りかかることにより、負荷が増加して給紙する連続用紙1を引き上げることができない状態になってしまう。
【0029】
このような状態に至るとトラクタ2は連続用紙1を搬送するために回転しているが連続用紙1を引き上げられず、孔ガレを起こしてトラクタ2で連続用紙1を搬送できない状態になる。また、プラテン3も同様に回転しているため、そのプラテン3は多少の搬送力を有するがプルアップローラ14と同様に負荷が増加した連続用紙1を引き上げるほどのフィード力はないため、連続用紙1はスリップしてしまう。
【0030】
このように連続用紙1がトラクタ2から外れ、スリップしてしまう状態に陥った場合、プラテン3の前段に配置されたペーパーエンドセンサ4は用紙有りを検知したままであるため、図7に示すように同一のライン付近に印字する動作を継続して行ってしまう。
上記の例のように連続用紙1の搬送不良の状態でありながらペーパーエンドセンサ4で用紙有りを検知している場合、S4において連続用紙1の搬送を行ってもその連続用紙1は移動することなく、次ラインの印字動作を開始したときS2において重ね印字が行われた部分を非反射部である黒色部として検出する。
【0031】
ここで、図7に示す連続用紙1の搬送不良の状態で印字動作を継続した場合におけるキャリッジセンサ8の出力の例に基づいて連続用紙1のジャム状態を検出する処理を説明する。
正常な連続用紙1の搬送状態においては、印字がされていないライン(白色部)に印字動作を行うためキャリッジセンサ8の出力は、反射状態を示す。なお、往復移動するキャリッジ6で双方向の印字を行う場合、印字直後の文字をキャリッジセンサ8で読取ることになるため、未印字エリアの検出が可能な順方向(図1の矢印Cが示す方向)のスペーシング動作時にのみ、非反射部の検出動作を行う。また、用紙検出回路30にはスライスレベルが設定されており、そのスライスレベルを超えたとき比較器Q1の出力が非反射状態を示す”H”となる。
【0032】
しかし、連続用紙1の搬送不良が発生することにより、改行動作が行われず同一のライン付近に印字を繰り返すことで図7に示すような印刷状態になる。
このとき、連続用紙1の搬送不良により重ね印字が多く行われた箇所(黒色部)はキャリッジセンサ8の出力レベルが比較器Q1の基準電圧を下回り、用紙検出回路部30の比較器Q1は非反射状態を示す”H”を出力する。
【0033】
連続用紙1の搬送不良を検出する処理部としての主制御部32は、用紙検出回路部30の出力信号が反射状態を示す”L”から非反射状態を示す”H”に変化する位置を検知し、その位置をキャリッジ6の移動量から算出し、算出された位置情報と記憶部31に格納された紙幅情報とを比較して反射状態を示す”L”から非反射状態を示す”H”に変化する位置が連続用紙1の幅の範囲内にあるか否か、すなわち重ね印字が行われたか否かを判別する。
【0034】
図5の説明に戻り、
S5:反射状態を示す”L”から非反射状態を示す”H”に変化する位置が連続用紙1の幅の範囲内に存在する、すなわち重ね印字が行われたと判別すると主制御部32は、連続用紙1の搬送不良が発生したものと判断し、処理をS7へ移行する(NO)。
S7:スペース制御部26は、スペーシング動作を停止し、印字ヘッド7のインパクト動作を停止させる。
【0035】
S8:主制御部32は、連続用紙1のジャムが発生した旨のアラームを表示部25に表示する。
このようにキャリッジセンサ8ならびに用紙検出回路部30、および連続用紙1の搬送不良を検出する処理部としての主制御部32により連続用紙1の搬送不良を検出することができるようになる。
【0036】
以上説明したように、第1の実施例では、トラクタ等にジャム検出機構を設けることなく、既存の用紙幅検出センサを利用して黒色部としての非反射部を検出するようにしたことにより、連続用紙の搬送不良を検出することができるようになり、大量印字データの印字動作途中で連続用紙の搬送不良が発生した場合、その搬送不良を検知して印字動作を停止することができるという効果が得られる。
【0037】
また、連続用紙の搬送不良に起因して発生するプラテンへの直接印字によるプラテンやヘッドピンの損傷を未然に防止することができるという効果が得られる。
【実施例2】
【0038】
第2の実施例の構成は、第1の実施例の構成における記憶部に幅カウンタ、黒カウンタ、およびLFカウンタを設けている。その第2の実施例の構成を図8の第2の実施例における印刷装置の構成を示すブロック図に基づいて説明する。なお、上述した第1の実施例と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
図8において、印刷装置100は、第1の実施例の構成と同様にデータ受信部21、データ解析部22、印字データ生成出力部23、操作パネル部24、表示部25、スペース制御部26、用紙搬送制御部28、用紙検出回路部30、記憶部31、およびこれらを制御する主制御部32で構成されている。
【0039】
スペース制御部26は、スペースモータ27を回転駆動させてそのスペースモータ27に接続されたベルトを駆動させることでキャリッジ6を連続用紙1が搬送される方向に対して略直交する方向に摺動させる。したがって、スペース制御部26は、スペースモータ27を駆動することにより、キャリッジ6に設けられた印字ヘッド7およびキャリッジセンサ8を連続用紙1の搬送方向に略直交する幅方向に往復移動させることができるようになっている。
【0040】
また、スペース制御部26は、順次励磁相を切り替えてスペースモータ27を回転駆動させてスペーシング動作を行い、また主制御部32はそのスペースモータ27の励磁相の切替えタイミングでキャリッジセンサ8による用紙検出回路30の出力信号を読取ることができるようになっている。
用紙搬送制御部28は、搬送モータ29を回転駆動させてトラクタ2およびプラテン3を回転させ、連続用紙1の給紙、排出、および送り動作を行う。
【0041】
なお、キャリッジセンサ8により連続用紙1に向けて発光した光の反射光を受光して反射状態または非反射状態、すなわち白または黒を検出する用紙検出回路部30の構成は、第1の実施例で説明した図4に示す構成と同様である。
記憶部31は、印刷装置100全体を制御するための制御プログラムや装置の状態等を記憶するメモリで構成されているのは第1の実施例と同様であるが、第2の実施例では幅カウンタ311、黒カウンタ312、およびLFカウンタ313も備えている。
【0042】
幅カウンタ311は、スペーシング動作のスペースモータ27の励磁相の切替えタイミングで用紙検出回路30の出力信号が非反射状態(黒色部)を示す”H”として連続する回数を格納するものである。
主制御部32は、図9に示すようにスペース制御部26がスペースモータ27の励磁相切替処理を行ったタイミングでキャリッジセンサ8による用紙検出回路30の比較器Q1の出力信号を読取り、その出力信号が非反射状態(黒色部)を示す”H”として連続する回数をこの幅カウンタ311に格納する。
【0043】
図9は主制御部32がキャリッジセンサ8による用紙検出回路30の比較器Q1の出力信号を読取るタイミングを示しており、励磁相切替毎に用紙検出回路30の比較器Q1の出力信号を読取る。例えば図9では、n回目、n+2回目、およびn+4回目の比較器Q1の出力信号の読取りで黒を検出、n+1回目、n+3回目、n+5回目、およびn+6回目の比較器Q1の出力信号の読取りで黒なしを検出していることを示している。
【0044】
黒カウンタ312は、1ラインのスペーシング動作内に幅カウンタ311に格納された回数が閾値Xを超えたことを検知したか否かを格納するものである。
主制御部32は、非反射状態(黒色部)を示す”H”の用紙検出回路30の比較器Q1の出力信号を読取ると幅カウンタ311に格納された回数と閾値Xとを比較し、幅カウンタ311が閾値Xを超えていると判定したとき、幅カウンタ311が閾値Xを超えたことをこの黒カウンタ312に格納する。
【0045】
LFカウンタ313は、幅カウンタ311に格納された回数が閾値Xを超えたことを検知したラインが連続した回数(ライン数)を格納するものである。
主制御部32は、1ラインのスペーシング動作終了時に、幅カウンタ311が閾値Xを超えたことが格納された黒カウンタ312が連続するライン数をこのLFカウンタ313に格納し、LFカウンタ313に格納されたライン数が閾値Yを超えたことを検知したとき、重ね印字が行われたと判別し、連続用紙1の搬送不良が発生したものと判断する。
【0046】
上述した構成の作用を図10の第2の実施例における印字動作を示すフローチャートの図中Sで表すステップに従って説明する。
印字動作に入る前の給紙動作は第1の実施例と同様なのでその説明を省略し、連続用紙1が給紙されてその連続用紙1の紙幅が検出され、印字データを受信した後の動作を説明する。
【0047】
なお、印刷装置100に電源が投入されたとき、主制御部32は記憶部31の幅カウンタ311を“0”、黒カウンタ312を“0:1ラインのスペーシング動作内に幅カウンタ311に格納された回数が閾値Xを超えていない”、LFカウンタ313を“0”に初期化するものとする。
S21:主制御部32は、1ラインの印字動作毎に幅カウンタ311を“0”に初期化する。
【0048】
S22:上位装置20から受信した印字データに基づいてスペース制御部26および印字データ生成出力部23により、キャリッジ6のスペーシング動作とインクリボン11を介して印字ヘッド7のピンを連続用紙1にインパクトさせる印字動作を開始し、スペース制御部26は、スペースモータ27の励磁相の切替処理を行う。
S23:主制御部32は、スペース制御部26が行う励磁相の切替処理のタイミングに同期してキャリッジ6に設けられたキャリッジセンサ8の出力としての用紙検出回路30の出力を読み出す。
【0049】
S24:主制御部32は、入力されたキャリッジセンサ8の出力に基づいて連続用紙1上をスペーシング動作する間、非反射部である黒色部の有無を判別することが可能になる。なお、ジャム検出手段としての主制御部32が非反射部である黒色部の有無を判別する方法は第1の実施例と同様である。
非反射部(黒色部)を検出しない場合(NO)、処理をS29へ移行し、一方非反射部(黒色部)を検出した場合(YES)、処理をS25へ移行する。
【0050】
S25:非反射部(黒色部)を検出した場合、主制御部32は、幅カウンタ311に“1”を加算する。
S26:主制御部32は、幅カウンタ311に“1”を加算するとその幅カウンタ311が閾値Xを超えたか否かを判定し、超えたと判定した場合(YES)、処理をS27へ移行し、超えていないと判定した場合(NO)、処理をS30へ移行する。
【0051】
S27:幅カウンタ311が閾値Xを超えたと判定すると主制御部32は、記憶部31に格納された用紙幅情報に基づき、キャリッジセンサ8が連続用紙1の端部(印字エリア)を越えて非反射状態を検出したか否かを判別する。
主制御部32は、キャリッジ6のスペーシング動作による移動量と記憶部31に格納された用紙幅情報とを比較し、キャリッジ6が連続用紙1の幅を超えたと判別すると処理をS29へ移行し(NO)、連続用紙1の幅を超えていないと判別すると処理をS28へ移行する(YES)。
【0052】
S28:スペース制御部26が行う励磁相の切替処理のタイミング毎にキャリッジセンサ8の出力としての用紙検出回路30の出力を繰り返して読み出し、幅カウンタ311が閾値Xを超える黒色部を印字エリア内で検出した主制御部32は、黒カウンタ312に“1”を格納し、1ラインの印字動作中に連続用紙1の印字エリア内で非反射状態(黒色部)を検出したことを記憶部31に記憶して処理をS30へ移行する。
【0053】
S29:S24において非反射部(黒色部)を検出しない場合(S24:NO)、主制御部32は幅カウンタ311を“0”に初期化する。このように非反射部(黒色部)を連続して検出しない場合に幅カウンタ311を初期化することにより、検出する非反射部(黒色部)の幅を閾値Xで変えることができる。
また、S27においてキャリッジ6が連続用紙1の幅を超えたと判別した場合も主制御部32は幅カウンタ311を“0”に初期化する。
【0054】
S30:スペース制御部26は、1ラインのスペースモータを駆動するスペーシング動作を終了するまでS2〜S29の処理を繰返し(NO)、1ラインのスペーシング動作を終了すると処理をS31へ移行する(YES)。
S31:1ラインのスペーシング動作を終了すると主制御部32は、1ラインの印字動作中に連続用紙1の印字エリア内で非反射状態(黒色部)を検出したか否か、すなわち黒カウンタ312が“1”であるか否かを判定し、非反射状態(黒色部)を検出した(黒カウンタ312が“1”)と判定すると処理をS32へ移行し、非反射状態(黒色部)を検出していない(黒カウンタ312が“0”)と判定すると処理をS34へ移行する。
【0055】
S32:非反射状態(黒色部)を検出した(黒カウンタ312が“1”)と判定すると主制御部32は、LFカウンタ313に“1”を加算する。
S33:また、主制御部32は、黒カウンタ312を“0”に初期化し、処理をS35へ移行する。
S34:S31において非反射状態(黒色部)を検出していない(黒カウンタ312が“0”)と判定すると主制御部32は、LFカウンタ313を“0”に初期化し、処理をS35へ移行する。
【0056】
S35:主制御部32は、次行の印字データが存在するか否かを判定し、存在すると判定すると処理をS36へ移行し、存在しないと判定すると印字動作を終了する。
S36:次行の印字データが存在すると判定すると主制御部32は、非反射状態(黒色部)を連続して検出したラインが閾値Yを超えているか否か、すなわちLFカウンタ313が閾値Yを超えているか否かを判定し、超えていると判定すると処理をS38へ移行する。一方、超えていないと判定すると処理をS37へ移行する。
【0057】
S37:非反射状態(黒色部)を連続して検出したラインが閾値Yを超えていないと判定すると用紙搬送制御部28は、印字データに基づいてトラクタ2およびプラテン3を駆動させ、連続用紙1を必要量搬送する改行動作を行い、処理をS21へ移行して次行の印字動作を行う。
S38:非反射状態(黒色部)を連続して検出したラインが閾値Yを超えていると判定すると主制御部32は、重ね印字による黒色部が存在すると認識し、残りの印字データの印字処理を停止し、連続用紙1のジャムが発生した旨のアラームを表示部25に表示する。
【0058】
このようにS31からS36までの処理を行い、重ね印字による非反射状態(黒色部)を検出したライン(行)が連続し、かつ検出したライン数が閾値Yを超えることを判定して連続用紙1の搬送不良の発生を検知する。
なお、閾値Yを“0”とし、重ね印字による非反射状態(黒色部)を検出したライン(行)が1ラインでも存在した場合、連続用紙1の搬送不良の発生を検知するようにしてもよい。
【0059】
本実施例では、例えば図11に示す予め罫線が印刷されたプレフォーマットの連続用紙1に印字を行う場合において、正常状態111で黒色の罫線部110aをキャリッジ6が通過するとき、幅カウンタ311が励磁相の切替タイミング毎に黒色部を検出して増加するが、その罫線部110aの幅、すなわち幅カウンタ311が閾値X、に達しない場合、黒カウンタ312に黒色部を検出したことが格納されないため、連続用紙1の搬送不良の誤検出は発生しない。
【0060】
また、横方向(キャリッジ6のスペーシング動作方向)の罫線部110bによる黒色部を検出した場合でも、連続して黒色部を検出したライン数が閾値Yを超えないときは連続用紙1の搬送不良の発生と判定することなくLFカウンタ313を初期化して連続用紙1を搬送する改行動作を行う。
しかし、ジャム状態112では、重ね印字が進み、黒色部が拡大することにより、幅カウンタ311が閾値Xを超え、黒カウンタ312には黒色部を検出したこと(“1”)が格納され、LFカウンタ313も改行毎に増加し、閾値Yを超えることで連続用紙1の搬送不良を検出することができる。
【0061】
このように主制御部32は、スペースモータ27の励磁相の切替処理のタイミング毎にキャリッジセンサ8の出力としての用紙検出回路30の出力を読み出し、その出力に基づいて黒色部の幅、場所、頻度を検出するようにしたことにより、プレフォーマットの連続用紙1の罫線による連続用紙1の搬送不良の誤検出を防止することができる。
以上説明したように、第2の実施例では、第1の実施例の効果に加え、スペースモータの励磁相切替のタイミング毎に用紙幅検出センサとしてのキャリッジセンサの出力を読み出し、その出力に基づいて黒色部の幅、およびその黒色部が存在するラインの連続数を検出するようにしたことにより、プレフォーマットの連続用紙の罫線による連続用紙の搬送不良の誤検出を防止することができるという効果が得られる。
【0062】
なお、第1の実施例および第2の実施例では、連続用紙の搬送不良を検知する手段を備えた印刷装置を汎用型プリンタとして説明したが、それに限られることなく水平式プリンタ、カットされた用紙に印字するプリンタ、またはインクジェットプリンタとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1の実施例における印刷装置の構成を示す要部平面図
【図2】第1の実施例における印刷装置の構成を示す側断面図
【図3】第1の実施例における印刷装置の構成を示すブロック図
【図4】第1の実施例における用紙検出回路の構成を示す説明図
【図5】第1の実施例における印字動作を示すフローチャート
【図6】第1の実施例における用紙搬送不良の発生原因の説明図
【図7】第1の実施例における用紙検出回路の出力信号の説明図
【図8】第2の実施例における印刷装置の構成を示すブロック図
【図9】第2の実施例におけるセンサリードタイミングを示すタイムチャート
【図10】第2の実施例における印字動作を示すフローチャート
【図11】第2の実施例における用紙検出回路の出力信号の説明図
【符号の説明】
【0064】
1 連続用紙
2 トラクタ
3 プラテン
4 ペーパーエンドセンサ
5 シートガイド
6 キャリッジ
7 印字ヘッド
8 キャリッジセンサ
9 リボンプロテクタ
10 キャリッジシャフト
11 インクリボン
13 プルアップローラアセンブリ
14 プルアップローラ
15 シートステージ
100 印刷装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリッジに印字ヘッドを有し、そのキャリッジを用紙の送り方向に対して略直交する方向に往復移動しながら印字を行う印刷装置において、
前記キャリッジに配置され、用紙に印字された文字の濃淡を検出する濃度検出部と、
前記濃度検出部の出力を監視して用紙の搬送不良を検出する処理部とを有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1の印刷装置において、
前記処理部は、前記濃度検出部の出力に基づいて濃部を検出したとき、用紙の搬送不良と判定することを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項2の印刷装置において、
前記濃度検出部の出力に基づいて濃部を検出した回数を格納する記憶部を設け、
前記処理部は、キャリッジを移動させるモータの励磁相切替毎に前記濃度検出部の出力を読出し、その出力に基づいて用紙に濃部を検出した回数を前記記憶部に記憶させ、その回数が閾値を超えたとき用紙の搬送不良と判定することを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項2の印刷装置において、
前記濃度検出部の出力に基づいて濃部を検出した回数および前記回数が第1の閾値を超えた行数を格納する記憶部を設け、
前記処理部は、キャリッジを移動させるモータの励磁相切替毎に前記濃度検出部の出力を読出し、その出力に基づいて濃部を検出した回数を前記記憶部に記憶させておき、改行動作毎に前記記憶部に記憶させた回数が第1の閾値を超えた行数を前記記憶部に記憶させ、その行数が第2の閾値を超えたとき用紙の搬送不良と判定することを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項4の印刷装置において、
前記記憶部に記憶させる回数を、前記濃度検出部の出力に基づいて連続して濃部を検出した回数としたことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5の印刷装置において、
前記記憶部に記憶させる行数を、前記濃度検出部の出力に基づいて連続して濃部を検出した行数としたことを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項の印刷装置において、
前記濃度検出部を、用紙に向けて発光した光の反射光を受光して反射状態または非反射状態を検出して用紙の紙幅を検知するセンサとしたことを特徴とする印刷装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−132417(P2010−132417A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310445(P2008−310445)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【出願人】(594202361)株式会社沖データシステムズ (259)
【Fターム(参考)】