説明

印字ヘッドダイに設けられるスロット用リブ

開示した方法および装置において、印字ヘッドダイはスロットとスロットにわたって設けられるリブとを含む。リブはダイの側部の一方もしくは両方に対して凹を成すよう設けられる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
印字ヘッドダイは印字ヘッドの流体噴射部材を支持し、流体容器から流体噴射部材までの流体通路を提供する。ダイを貫通する流体通路の密度を高くすることにより、ダイの強度が低下する可能性がある。ダイを強化するための今日の取り組みにおいては、印刷品質が低下する可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0002】
【図1】図1は、一実施形態によるプリンタの正面図である。
【図2】図2は、一実施形態による図1のプリンタのプリントカートリッジの分解底面斜視図である。
【図3】図3は、一実施形態による図2のカートリッジの線3−3に沿った断面図である。
【図4】図4は、一実施形態による図2のプリントカートリッジの印字ヘッドダイの上面図である。
【図5】図5は、一実施形態による図4の印字ヘッドダイの線5−5に沿った断面図である。
【図6】図6は、一実施形態による図4の印字ヘッドダイを形成する方法を示す部分上面斜視図である。
【図7】図7は、一実施形態による図4の印字ヘッドダイを形成する方法を示す部分上面斜視図である。
【図8】図8は、一実施形態による図4の印字ヘッドダイを形成する方法を示す部分上面斜視図である。
【図9】図9は、一実施形態による図4の印字ヘッドダイを形成する方法を示す部分上面斜視図である。
【図10】図10は、一実施形態による図4の印字ヘッドダイを形成する方法を示す部分上面斜視図である。
【図11】図11は、一実施形態による図4の印字ヘッドダイを形成する他の方法を示す部分上面斜視図である。
【図12】図12は、一実施形態による図4の印字ヘッドダイを形成する他の方法を示す部分上面斜視図である。
【図13】図13は、一実施形態による図4の印字ヘッドダイを形成する他の方法を示す部分上面斜視図である。
【図14】図14は、一実施形態による図4の印字ヘッドダイを形成する他の方法を示す部分上面斜視図である。
【図15】図15は、一実施形態による図4の印字ヘッドダイを形成する他の方法を示す部分上面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0003】
図1は、一実施形態による印刷装置10の一実施例を示す。印刷装置10は、紙又はその他の材料等の印刷媒体12上に、インク又はその他の流体を、印刷すなわち溶着する。印刷装置10は、媒体供給装置14および少なくとも1個のプリントカートリッジ16を含む。媒体供給装置14は、媒体上にインク又は流体を噴射するカートリッジ16に対して媒体12を送る又は移動する。図示の例においては、印刷の際、カートリッジ16は媒体12上を横方向に移動すなわち走査する。その他の実施形態において、カートリッジ16は固定されていてもよく、媒体12の横方向幅にわたって略伸長していてもよい。以下に説明するように、プリントカートリッジ16は、比較的高密度の流体通路、ビア、又はスロットを有し、かつ強度が向上され、比較的高い印刷品質を可能にする印字ヘッドダイを含む。
【0004】
図2は、カートリッジ16のうちの1個をより詳細に示す。図2に示すように、カートリッジ16は流体容器18およびヘッド機構20を含む。流体容器18は、流体又はインクをヘッド機構20に供給する少なくとも1個の構造体を備える。一実施形態において、流体容器18は本体22および蓋24を含み、本体22および蓋24はインク等の流体を収容する少なくとも1個の内部流体チャンバを形成し、流体はスロット又は開口部を介してヘッド機構20に排出される。一実施形態において、少なくとも1個の内部流体チャンバは、印刷流体に毛細管力を負荷して印刷流体の漏れ可能性を低下させる毛細管状の媒体(図示せず)を更に含んでいてもよい。一実施形態において、流体容器18の内部チャンバの各々は、内部スタンドパイプ(図示せず)および内部スタンドパイプにわたるフィルタを更に含んでいてもよい。更に他の実施形態において、流体容器18はその他の構成を有していてもよい。例えば、図示の流体容器18は少なくとも1種類の流体もしくはインクを内蔵して供給するが、その他の実施形態において、流体容器18は少なくとも1個の導管もしくは管を介して、流体供給の軸外から流体又はインクの供給を受けるように構成されていても良い。
【0005】
ヘッド機構20は、流体又はインクを媒体上に選択的に噴射する容器18を含むために結合される機構を備える。本開示において、「結合される」という用語は、2個の部材を直接的又は間接的に相互に連結することを意味するものとする。前述のような連結は本質的に固定でもよく、もしくは本質的に可動であってもよい。前述のような連結は、2個の部材若しくは1つの単一体として相互に一体形成される2個の部材および更なる中間部材によって実現してもよいし、又は2個の部材若しくは互いに取り付けられるこのような2個の部材及び更なる中間部材によって実現してもよい。前述のような連結は本質的に恒久的であってもよいし、任意で本質的に取り外し又は解放可能であってもよい。「動作可能に結合される」という用語は、2個の部材が直接的又は間接的に連結されることを意味し、このことによって、動作が一方の部材から他方の部材へ直接的もしくは中間部材を介して伝達される。
【0006】
図示の実施形態において、ヘッド機構20はドロップ・オン・デマンド式インクジェットヘッド機構を備える。一実施形態において、ヘッド機構20は熱抵抗性ヘッド機構を備える。その他の実施形態において、ヘッド機構20は印刷流体を媒体上に選択的に供給すなわち噴射するその他の装置を備えていてもよい。
【0007】
図示した特定の実施形態において、ヘッド機構20はタブヘッド機構(THA)を備え、タブヘッド機構はフレキシブル回路28、印字ヘッドダイ30、噴射抵抗器32、封入体34およびオリフィス板36を含む。フレキシブル回路28は、少なくとも1個の重合体等の柔軟で折曲可能な材料からなるバンド、パネル、又はその他の構造を備え、また、電気接点38を終点としてダイ30上の噴射回路又は抵抗器32に電気接続する電線、ワイヤすなわち配線を支持又は含む。電気接点38は一般的にダイ30に対して直角に伸長し、カートリッジ16が使用される印刷装置における対応する電気接点と電気接続するパッドを備える。図2に示すように、フレキシブル回路28は流体容器18の本体22を覆う。その他の実施形態において、フレキシブル回路28は省略してもよく、又は、抵抗器32および関連するアドレス回路若しくは噴射回路への電気的接続をその他の方法により実現するその他の構成を有していてもよい。
【0008】
(印字ヘッド基板もしくはチップとしても知られる)印字ヘッドダイ30は、容器18の内部流体チャンバと抵抗器32との間に結合される少なくとも1個の構造体を備える。印字ヘッドダイ30は流体を抵抗器32に供給する。図示した特定の実施形態において、印字ヘッドダイ30は更に抵抗器32を支持する。印字ヘッドダイ30はスロット40および(図3に示す)リブ41を含む。スロット40は、流体を抵抗器32に供給する流体通路又は流体ビアを備える。スロット40は、流体を各抵抗器32および関連するノズルに供給するために十分な長さを有する。一実施形態において、スロット40は約225マイクロメートル以下、参考までに約200マイクロメートルの幅を有する。図示の、チップ又はダイ30上に直接、又はチップ若しくはダイ30の一部として噴射回路もしくは抵抗器アドレス回路が提供される実施形態において、スロット40の中心線間のピッチは約0.8mmである。チップ又はダイ30上に噴射回路又はアドレス回路を備えない実施形態において、スロット40の中心線間ピッチは約0.5mmであってもよい。その他の実施形態において、スロット40はその他の寸法およびその他の相対的な間隔を有していてもよい。
【0009】
(横張りとしても知られる)リブ41は、印字ヘッドダイ30の連続するスロット40(バー部分64)間の部分を強化し、その剛性を高める補強用構造体を備える。リブ41は一般に、各スロット40がそれに沿って伸長する主軸に対して直角に、各スロット40にわたって伸長する。一実施形態において、リブ41およびリブ41の中心点は、印字ヘッドダイ30のスロット40に対向する側の部分の大部分と1個の単一体の一部として一体形成される。以下により詳細に説明するように、リブ41はダイ30を強化し、これにより、印刷性能もしくは品質を実質的に低下させることなくダイ30上にわたってスロット40をより高密度に配置することが可能となる。
【0010】
抵抗器は印字ヘッドダイ30に結合される抵抗素子又は噴射回路を備え、抵抗素子又は噴射回路は印刷流体の一部を気化させて印刷流体のドロップがオリフィス板36のオリフィスを介して強制的に放出されるよう熱を発生させる。別の実施形態においては、噴射回路はその他の構成を有していてもよい。
【0011】
封入体34は、ダイ30に関連する導電性の配線又は線を、電気接点38に接続されるフレキシブル回路28の導電性の線又は配線に相互接続する電気的相互接続を封入する少なくとも1個の材料を備える。その他の実施形態において、封入体34はその他の構成を有していてもよく、省略してもよい。
【0012】
オリフィス板36は板又はパネルを備え、この板又はパネルは印刷流体が噴射されるノズル開口部を規定する多数のオリフィスを有する。オリフィス板36は、スロット40および関連する噴射回路又は抵抗器32に対向して接続も又は固定される。一実施形態において、オリフィス板36はニッケル基板を備える。図2に示すように、オリフィス板36は複数のオリフィス又はノズル42を含み、この複数のオリフィス又はノズル42を介して、抵抗器32により加熱されたインク又は流体が噴射されて印刷媒体上に印刷される。その他の実施形態において、前述のようなオリフィス又はノズルが他の方法で設けられている場合、オリフィス板36は省略してもよい。
【0013】
図示のカートリッジ16はプリンタ10に、又プリンタ10の内部に着脱可能に接続されるが、その他の実施形態において、流体容器18は、プリンタ10の一部として実質的に常置され、着脱不可の少なくとも1個の構造体を備えていてもよい。図示のプリンタ10は前面挿入式および前面排出式のデスクトッププリンタであるが、その他の実施形態において、プリンタ10はその他の構成を有していてもよく、また、プリンタ10が流体による制御パターン、画像又はレイアウト等を表面上に印刷又は噴射するためのその他の印刷装置を備えていてもよい。前述のようなその他の印刷装置の例はファクシミリ装置、コピー機、多機能機器、又は流体を印刷若しくは噴射するその他の装置を含むが、これらに限定されるものではない。
【0014】
図3は、ヘッド機構20を詳細に示す断面図である。詳細には、図3は容器18の本体22の下部とオリフィス板36との間に結合される印字ヘッドダイ30を示す。図3に例示したように、印字ヘッドダイ30は、障壁層46によりオリフィス板36に連結される下側又は前側部44を有する。障壁層46の少なくとも一部は、抵抗器32とオリフィス板36のノズル42との間に噴射チャンバ47を形成する。一実施形態において、障壁層46はフォトレジスト重合体基板を備えていてもよい。一実施形態において、障壁層46はオリフィス板36の材料と同一の材料からなっていてもよい。更に他の実施形態において、障壁層46によりオリフィス又はノズル42を形成してオリフィス板36を省略してもよい。実施形態によっては、障壁層46を省略してもよい。
【0015】
図3に示すように、抵抗器32はスロット40に対向する側の台上で支持され、一般に噴射チャンバ47においてノズル42に対向する。抵抗器32は、ダイ30により支持される導電性の線又は配線(図示せず)により、(図2に示す)導体パッド38に電気接続される。抵抗器32に供給される電気エネルギはスロット40を介して供給される流体を気化させ、周囲もしくは近傍の流体をノズル42を介して押し出す、又は噴射する気泡を形成する。一実施形態において、抵抗器32は噴射回路又はアドレス回路に更に接続され、また、ダイ30上に配置される。他の実施形態において、抵抗器32は、その他の場所に配置されて噴射回路もしくはアドレス回路に接続されてもよい。
【0016】
図3において更に示すように、容器18の本体22はインターポーザ又は突部48を含む。突部48は、ダイ30に接続されて、容器18の少なくとも1個のチャンバをダイ30の第2の側部50まで流体的に封止する本体22の構造もしくは部分を備える。図示の例において、突部48は、3個の異なる流体収容チャンバ51の各々をダイ30の3個のスロット40の各々に接続する。例えば一実施形態において、容器18は、流体を3個のスロット40の各々に供給する3個の異なる立て管を含んでいてもよい。一実施形態において、3個の異なるチャンバの各々は異なる色の流体もしくはインク等、異なる種類の流体を含んでいてもよい。その他の実施形態において、容器18の本体22は、容器18の異なるチャンバから異なる流体を受けるダイ30のスロット40の数に合わせて、異なる数の突部48を含んでいてもよい。
【0017】
図示の例において、ダイ30の側部50は接着剤52により本体22に接着接合される。一実施形態において、接着剤52は糊又はその他の流体接着剤を含む。その他の実施形態において、容器18の突部48はその他の方法により封止およびダイ30に連結されてもよい。
【0018】
図4および図5は、印字ヘッドダイ30のスロット40およびリブ60を詳細に示す。図4は、印字ヘッドダイ30を側部50から見た平面図である。図5は、図4に示す線5−5に沿った印字ヘッドダイ38の断面図である。図5に示すように、ダイ30の側部50に隣接する部分54は各リブ41の上方で皿穴状又は陥凹状に、かつ各スロット40に沿って軸方向に設けられる。その結果、各リブ41もまた、ダイ30の最も外側もしくは上側部50に対して凹、又は皿穴状をなすよう設けられる。更に、側部50に隣接し、各スロット40の軸端に配置される部分56は皿穴状又は陥凹状に設けられる。以下に説明するように、皿穴状又は陥凹状に設けられる部分54および56は、少なくとも1つの材料除去技術又は処理のいずれかで形成され、ここでは、材料が除去されて部分54、56を形成する。部分54および56は、また、少なくとも1つの材料付加技術又は処理により形成され、ここでは、少なくとも1個の材料の少なくとも1つの層が部分54および56に隣接して付加され、これにより、部分54および56は最上部に付加された層の表面に対して凹をなす。例えば、図5において破線で示すように、皿穴部分54および56は、リブ41の上方で伸長し、かつスロット40の側部60の上方で突出する隆起部分57により囲まれる。隆起部分57は、ダイ30に材料を付加することにより、又はダイ30から材料を除去することにより形成してもよい。
【0019】
ダイ30は、スロット40の軸端において(リブ41の上方で)各スロット40に沿った、陥凹状又は皿穴状の領域若しくは部分54、56を含むため、流体又は粘体の状態で塗布されて突部48を印字ヘッドダイ30に結合する(図3に示す)接着剤材料52がウィッキング又は他の様態でスロット40に流入する可能性はほとんどない。詳細には、陥凹部分54、56は、面又は側部50およびスロット40に沿った角部58の数および面積を減少させる。代わりに、リブ41と隣接するスロット40の側部60との間の角部58は凹をなすよう設けられ、側部50に隣接又は同一平面上となるよう伸長することはない。陥凹又は皿穴部分は、流入する接着剤がインク供給口又はスロット40に到達するのを防止する「毛細管状の遮断部材」を形成する。その結果、接着剤材料52がスロット40に流入する可能性はほとんどない。したがって、スロット40は、スロット40の側部60に沿って広がり、スロット40により形成される流体通路内に侵入する接着剤により詰まったり、部分的に遮断されたりする可能性はほとんどない。その結果、印字ヘッドダイ30は流体もしくはインクの流れを改善し、印刷品質を向上する。
【0020】
一実施形態によれば、皿穴部分54、56は、約10μ(ミクロンもしくはマイクロメートル)から約50μ、参考までに約15マイクロメートルの深さもしくは高さH(図5に示す)を有する。前述のような高さにより接着剤材料52のウィッキング現象が抑制されることが分かっているが、その他の実施形態において、皿穴部分54、56はその他の高さHを有していてもよい。更に他の実施形態において、皿穴部分54、56は相互に独立していてもよい。例えば、一実施形態において、皿穴部分56を省略してもよい。その他の実施形態において、皿穴部分54を省略しても、記載した利点はある程度保持される。図示の皿穴部分54および56は同一の高さHを有するが、その他の実施形態において、皿穴部分54および56は側部50に対して異なる高さH又は深さを有していてもよい。
【0021】
図3において破線で示すように、更に他の実施形態において、ダイ30は皿穴部分62を更に含んでいてもよい。皿穴部分62は、側部50に隣接し、スロット40の横方向の側部に沿って、スロット40に沿って軸方向に伸長する陥凹もしくは間隙を備える。皿穴部分62は、スロット40の横方向の側部60に沿って軸方向に伸長するノッチを備える。皿穴部分54および56と同様に、皿穴部分62は、材料除去処理又は技術、若しくは材料付加処理若しくは技術により形成してもよい。図示の皿穴部分62は皿穴部分54に隣接して伸長し、皿穴部分54と略同一の高さHを有するが、その他の実施形態において、皿穴部分62は側部50に対して異なる高さHもしくは深さを有していてもよい。図示の皿穴部分62はリブ41の横方向の側部および皿穴部分54に対向して隣接して伸長しているが、その他の実施形態において、皿穴部分62はリブ41の横方向の側部および皿穴部分54のうち、両方ではなく一方に沿って伸長していてもよい。
【0022】
図5において更に示すように、リブ41はダイ30の側部44に対して凹をなすよう形成される。一実施形態によれば、リブ41は側部44に対して少なくとも100マイクロメートル、参考までに約175マイクロメートルの距離Dだけ凹をなすよう、又は離して配置される。リブ41が側部44から少なくとも100マイクロメートルだけ凹をなすよう設けられるため、印刷品質が向上する。詳細には、リブ41の材料は(図3に示す)抵抗器32が発生させた熱により適時加熱される。加熱されたリブは近傍のインク又は流体に熱を伝達し、これにより流体又はインクの蒸気圧および気泡特性が影響を受ける。その結果、各噴射に、噴射される流体滴の大きさ又は重量を小さく、若しくはその他の状態に変化させる可能性がある。その結果、印刷画像においてリブと対向する位置に黒い帯状のものが印刷される場合がある。しかしながら、リブ41は側部44に対して少なくとも約100マイクロメートルの距離Dだけ凹をなすよう、又は離して配置されるため、リブ41は表面44、抵抗器32、およびノズル42に対して更に離して配置される。その結果、リブにより流体又はインクに伝達される熱量のうち印字ヘッド全体に拡散する熱量が減少し、リブ61に直接対向するインク又は流体と、連続するリブとの間の領域に直接対向するインク又は流体との間の温度差が縮小する。温度差が縮小することにより流体滴の重量差も縮小し、これにより、より一定の高品質印刷を得られる。
【0023】
印字ダイ30の強度(連続するスロット40間のバー部分64の剛性)を保持しつつ印刷品質を更に向上させるため、リブ41は相対的に小さい幅および相対的に小さいピッチを有する。一実施形態によれば、リブ41は約50マイクロメートルから約100マイクロメートルの幅W2を有する。リブ41は、約200μから約500μ、参考までに約350マイクロメートルの中心間ピッチP2を有する。リブ41を相対的に小さい幅および相対的に小さいピッチで設けることにより、ダイ30の領域にわたる流体又はインクへの熱伝導がより均一となり、印刷画像におけるバンディングの可能性を更に低下させる。同時に、リブ41の幅はバー部分64を適切に硬化および強化するのに十分である。気泡閉込め、および流体流の閉塞の可能性を低下させるため、リブ41のピッチは十分に大きく、リブ41の幅は十分に狭くなっている。
【0024】
一実施形態によれば、ダイ30は約500マイクロメートルの厚さを有する。スロット40は約200マイクロメートルの幅Wおよび約0.8mmのピッチを有する。同様に、リブ41は約200μの長さを有する。リブ41は約50マイクロメートルから約100マイクロメートルの幅W2および約350マイクロメートルのピッチを有する。リブ41は約450マイクロメートルから490マイクロメートルの間の高さを有する。リブ41は面もしくは側部50に対して10マイクロメートルから50マイクロメートルだけ凹をなすよう設けられ、側部44に対して175マイクロメートルだけ離して配置もしくは凹をなすよう設けられる。前述のような実施形態において、ダイ30はシリコンから形成される。その他の実施形態において、ダイ30はその他の外形寸法を有していてもよく、また、その他の材料から形成されてもよい。
【0025】
図6から図10は、ダイ30のスロット40およびリブ41を形成する工程又は方法100の一実施例を示す。図6に示すように、基板104に溝102を形成する。溝102は(図4に示す)スロット40の幅Wに略対応する。一実施形態によれば、溝102は約200マイクロメートルの幅Wを有する。その他の実施形態において、溝102はその他の寸法を有していてもよい。溝102の軸長は、スロット40の任意の長さおよび(図4に示す)スロット40の端部における皿穴部分56の軸長の全長にわたって伸長する。すなわち、溝102はスロット40の最後のビア又は端部が位置する場所を通って伸長する。溝102は約10マイクロメートルから約100マイクロメートルの深さを有する。一実施形態によれば、溝102は、レーザアブレーションの後に水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)ウェットエッチング等のウェットエッチングを実行してレーザ処理による粉塵を除去することにより形成してもよい。その他の実施形態において、溝102はその他の方法で形成してもよい。
【0026】
図7に示すように、続いてリブ41を形成するための硬質マスク108を形成する。硬質マスク108は形成される(図4および図5に示す)リブ41の長さおよび幅に対応する長さおよび幅を有する。したがって、一実施形態において、硬質マスク108は約200マイクロメートルの長さ、および約50マイクロメートルから100マイクロメートルの幅を有する。その他の実施形態において、硬質マスク108はその他の寸法を有していてもよい。
【0027】
一実施形態によれば、硬質マスク108は、基板104の一部を除去して硬質マスク108周辺の溝102を更に深くするためのドライエッチャントに耐性を有し、かつレーザアブレーション可能な少なくとも1個の材料を溝102の底部110上に配置することにより形成する。一実施形態によれば、硬質マスク108は、約600ÅのTiおよび6000Åの長さを有するAlCu又はAlからなる層を配置することにより形成する。配置層は、溝102の110まで、又は溝102の110を貫通してレーザアブレーション又はレーザパターニング処理され、これにより、基板104の隆起部分112間において溝102の上にかかり、かつ112上に残留する硬質マスク108が形成される。その他の実施形態において、硬質マスク108はその他の材料により形成してもよく、その他の寸法を有していてもよく、その他の方法で形成してもよい。
【0028】
図8に示すように、更に、基板104の硬質マスク108の両側の材料又は部分を溝102を深くするために除去し、溝102は閉空間形状又は底部116、側部118および端面120(リブ41の側部)を有するバスタブ形状に形成される。図8において更に示すとおり、硬質マスク108も溝102を深くする処理が終わると除去される。一実施形態によれば、SF6およびC48等のドライエッチャントを、基板104において硬質マスク108により保護されていない底部110の下方の部分をエッチングするために塗布する。ドライエッチング処理は基板104を完全に貫通せずに底部116を形成するよう制御される。その後、NH4OH、H22、およびH20等のウェットエッチャントを塗布して硬質マスク108を除去する。その他の実施形態において、硬質マスク108は残してもよい。その他の実施形態において、溝102はその他の材料除去処理により深くしてもよい。図8に示すように、得られる構造体は、基板104の側部50に対して凹をなすよう設けられるリブ41を形成する。一実施形態によれば、リブ41は側部50に対して約10マイクロメートルから約50マイクロメートルだけ凹をなすよう設けられる。
【0029】
図9および図10は、底部116から更に材料を除去して基板104を貫通する流体通路を形成して完成させたスロット40を示す。また、図9および図10に示す処理により、(最終的にダイ30を形成する)基板104の側部44に対して凹をなすよう、又は離して配置されるリブ41が得られる。図9に示すとおり、少なくとも1個の誘電マスク層122をリブ41上に形成する。図示の例において、レーザアブレーション可能な誘電マスク層122は、リブ41の最上部および側部、基板104の底部116、側部118、および隆起部分112上にわたって形成もしくは配置される。その後、誘電マスク層の一部を底部116から除去し、ドライエッチングに耐性を有し、レーザアブレーション可能な少なくとも1つの層を底部116上に形成する。その後、ドライエッチングに耐性を有し、レーザアブレーション可能な層の一部を除去し、それによって、溝102を更に深くしてスロット40を完成させる時には除去される、基板104の更に下層の領域を規定する。ドライエッチングに耐性を有し、レーザアブレーション可能な層により保護されていない、基板104の底部116に沿って残存する部分を除去して下部流体ビア130を形成し、スロット40を完成させる。
【0030】
一実施形態によれば、誘電マスク層122は、1マイクロメートルから2マイクロメートルのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)をリブ41の最上部および側部、および基板104の底部116、側部118、および隆起部分112にわたって配置することにより形成する。その他の実施形態において、TEOSの代わりに電子層蒸着酸化ハフニウム、SiN、SiC、Ta等のその他の材料を用いてもよく、又は更なるTEOS層とALDHfO2の層等の組合せを用いてもよい。層122の基板104の底部116上に配置される部分はレーザアブレーションにより除去する。ウェットエッチングを更に施してレーザ処理による粉塵を除去する。その後、約1マイクロメートルの厚さを有するAlCu又はAlの層を底部116上に配置する。AlCu又はAl層の(図10に示す)下部流体ビア130に対応する部分はレーザアブレーションもしくはレーザパターニングにより除去する。一実施形態において、AlCu又はAl層の60マイクロメートルから90マイクロメートルの幅を有する領域を基板104の底部116から除去する。その後、SF6およびC48等のドライエッチャントを塗布して底部116および基板104をエッチングして貫通させる。図10に示すように、AlCu又はAlをNH4OH、H22、およびH2O等のウェットエッチャントにより除去し、また、TMAH等のウェットエッチャントを塗布してスロット40の下部ビア130の幅を広げ、完成させる。その結果、リブ41は表面44に対して図5に示す距離Dだけ離して配置される。その他の実施形態において、スロット40はその他の材料除去工程もしくは処理により完成させてもよい。例えば、その他のマスク材料および除去化学物質を用いてもよい。
【0031】
上述の方法100によれば、相対的に狭いスロット幅、相対的に小さいスロットピッチ、および相対的に小さいピッチを有し、ダイの対向する面に対して凹をなすよう設けられる相対的に薄いリブを有する(図3から図5に図示および、これらの図について上に説明した)印字ヘッドダイ30を容易に形成できる。方法100によれば、より少ない工程数を有し、高価な製造工程を少なくし、コスト及び複雑さを減らす印字ヘッドダイ30を製造可能となる。
【0032】
図11から図15は、印字ヘッドダイ30を形成する他の方法200を示す。詳細には、図11から図15に示す方法200においては、(図5に示す)印字ヘッドダイ30の隆起部分57は材料削除又は除去処理ではなく、材料付加処理により形成する。図11から図15はそれぞれ、図6から図10に示す処理に対応する処理を示す。しかしながら、方法100とは対称的に、方法200は材料を付加することにより隆起部分57を形成する。例えば、隆起部分57は基板に付加される少なくとも1個の層を備えていてもよい。図11から図15に示すように、付加層はダイ30を形成する際における、任意の少なくとも1個の段階において基板104に付加して隆起部分57を形成してもよい。例えば図11に示すように、少なくとも1個の層204を、基板104に沿って相互に離れて配置されるよう付加して溝102を形成してもよい。例えば、少なくとも1個の層204は、様々なマスキング技術およびフォトリソグラフィ技術により付加してもよい。又は、図12から図15に示すように、隆起部分57は、スロット40およびリブ41を形成する際のその他の時点で付加してもよい。詳細には、隆起部分57が多数の層を含む実施形態において、この多数の層はダイ30を製造する際に異なるタイミングで付加してもよい。
【0033】
本開示は実施例を参照して説明されているが、当業者は、本特許請求の精神および範囲から逸脱することなく形状および詳細を変更してもよいことを理解しているものとする。例えば、異なる実施例について、少なくとも1個の利点を有する少なくとも1個の特徴を含むものとしてそれぞれ説明したが、説明した特徴は相互に置換えてもよく、もしくは説明した実施例もしくはその他の実施形態において相互に組合せてもよいと考えられる。ここに開示した技術は相対的に複雑であるため、対象技術に対する全ての変更を予測することは不可能である。実施例を参照して説明し、以下の特許請求の範囲において定義した本開示は最大限に広義であることを意図していることは明白である。例えば、特に他に定義されていない限り、特定の要素1個を列挙する請求項はまた、その特定の要素を複数含むものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体容器に面する第1の側部および第2の対向する側部を有する印字ヘッドダイを備え、
前記ダイは
前記ダイを貫通する流体供給スロットと、
前記スロットにわたって伸長するリブとを備え、
前記リブは前記ダイの前記第2の側部に対して凹をなすよう設けられることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記リブは前記ダイの前記第1の側部に対して凹をなすよう設けられることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ダイは前記スロットの対向する軸端において皿穴部分を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ダイは前記リブの端部において前記リブの上方で隆起する隆起部分を含み、
前記隆起部分は1個の単一体として各リブの中心部と一体形成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記ダイは、
前記リブの端部において、1個の単一体として前記リブの中心部と一体形成される主要部分と、
前記主要部分上で、前記リブの端部において前記リブの上方で隆起する隆起部分を形成する少なくとも1個の層とを備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記主要部分は前記リブの表面と略同一面をなす表面を有することを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記リブ上にオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)層を更に備えることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項8】
前記リブは前記第1の側部に対して少なくとも約100μだけ凹をなすよう設けられることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項9】
前記ダイの前記第1の側部上で前記ダイに接着接合される流体容器を更に備えることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項10】
前記ダイの第2の対向する側部上で前記ダイに結合されるオリフィス板を更に備えることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記リブは約400μ以下の中心間ピッチを有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項12】
各リブは約100μ以下の幅を有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記ダイは前記スロット横方向の側部に沿って伸長する皿穴部分を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項14】
流体容器に結合される第1の側部を有する印字ヘッドダイを備え、
前記ダイは、
前記ダイを貫通する流体供給スロットと、
前記スロットにわたって伸長するリブとを備え、
前記リブは前記第1の側部に対して凹をなすよう設けられることを特徴とする装置。
【請求項15】
ダイにスロットを形成し、
前記スロットにわたってリブを形成することを含み、
前記リブは前記ダイの少なくとも一方の側部に対して凹をなすよう設けられることを特徴とする方法。
【請求項16】
前記リブを、前記スロットの流体容器に結合される第1の側部に対して凹をなすよう設けることを含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記リブを凹をなすよう形成することは、前記リブ上方で材料を前記ダイの前記第1の側部から除去して前記リブを凹を成すように形成することを含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記リブを凹をなすよう形成することは、前記ダイの前記リブに隣接する部分に材料を付加して前記リブを凹を成すように形成することを含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記スロットを形成することは、
前記リブ上に誘電マスク層を形成し、
前記ダイをエッチングして貫通させて前記スロットを形成することを含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記スロットおよび前記リブを形成することは、
前記ダイの第1の側部に溝を形成し、
前記溝上にレーザアブレーション可能な層を形成し、
前記レーザアブレーション可能な層の第1の部分をレーザーアブレーションし、前記レーザアブレーション可能な層の第2の部分が前記リブをマスクし、
前記ダイを部分的に貫通させて前記基板をエッチングして底部を形成し、
前記リブ上に誘電層を形成し、
前記底部をエッチングして貫通させてスロットを形成することを特徴とする請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2011−500360(P2011−500360A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529151(P2010−529151)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/079943
【国際公開番号】WO2009/052147
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】