説明

印字装置及び印字方法

【課題】印字エリアの近くで予備吐出ができるようにし、印字ヘッドのインク吐出を安定させて良好な印紙結果が得られるようにする。
【解決手段】ヘッド部6をプラテン12上の印字媒体に対して主走査方向に往復移動させ、印字媒体4をプラテン上で副走査方向に移動させ、印字ヘッド10からインクを吐出して印字を行うとともに、所定のタイミングで印字ヘッドによる印字媒体への印字前に予備吐出を行う。この予備吐出は、プラテンを除いた、印字ヘッドによる印字領域の近傍位置に行われる。この印字領域の近傍位置は、印字媒体の非印字領域であり、また、印字媒体をスライド自在に押さえる押さえ部材の上であり、また、印字媒体を支持し該印字媒体と連動して副走査方向に搬送される搬送補助部材の上に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字媒体に対してインクを吐出することにより印字を行う印字装置及び印字方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタでは、インク吐出型印字ヘッドのノズルのインク吐出動作を安定させるため、印字を開始する前に、テスト的なインクの吐出即ち予備吐出(予備吐出)を行っている。従来、予備吐出位置をプラテンの左右に設けたインクジェットプロッタが知られている(例えば特許文献1参照)。また、予備吐出位置を用紙の大きさの全域に亘って設けたものが知られている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−226151号公報
【特許文献2】特開平6−115097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
予備吐出位置即ち予備吐出位置がプラテンの両サイドに設けてある場合、例えばプラテンの幅全体を使う用紙であれば問題はないが、プラテンの片側に幅の狭い用紙を配置した場合には、用紙の片側は予備吐出位置に近いが、もう一方が非常に遠くなる。また、プラテンの中央に用紙を配置した場合には、どちらからも中途半端に遠くなってしまう。その場合、予備吐出した位置からヘッド部がしばらく移動した後に印字が始まるので、インクの吐出の安定ということでは、近くで予備吐出を行っている場合に比べると、最初の吐出の安定性が落ちてしまい、良好な印字結果が得られない。また、インクを皿や溝のような構造で機械的に受ける構造において、予備吐出位置が印字領域外にある場合は、予備吐出位置が汚れても、搬送されてくる印字媒体に対して影響が出ないので問題はないが、印字媒体が搬送されるエリアに設けられていると、その皿や溝の周囲が汚れてしまった場合などには、次の印字媒体を汚してしまうという可能性があり、特定の用紙だけを使う場合には問題がないが、用紙の幅が違うものを使っていく場合には問題になる。
本発明は上記問題点を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明は、インク吐出型印字ヘッドを搭載したヘッド部を印字媒体に対して主走査方向に往復移動させ、前記印字媒体を副走査方向に前記ヘッド部に対して相対移動させ、前記インク吐出型印字ヘッドからインクを吐出し、前記印字媒体に印字を行う印字装置であって、所定のタイミングで行う前記インク吐出型印字ヘッドのノズルからのインクの予備吐出を、前記印字媒体の非印字領域に設定した予備吐出位置に行うようにしたものである。
また本発明は、インク吐出型印字ヘッドを搭載したヘッド部を印字媒体に対して主走査方向に往復移動させ、前記印字媒体を副走査方向に前記ヘッド部に対して相対移動させ、前記インク吐出型印字ヘッドからインクを吐出し、前記印字媒体に印字を行う印字装置であって、所定のタイミングで行う前記インク吐出型印字ヘッドのノズルからのインクの予備吐出を、前記印字媒体をスライド可能に押さえる押さえ部材の上に設定した予備吐出位置に行うようにしたものである。
また本発明は、インク吐出型印字ヘッドを搭載したヘッド部を印字媒体に対して主走査方向に往復移動させ、前記印字媒体を副走査方向に前記ヘッド部に対して相対移動させ、前記インク吐出型印字ヘッドからインクを吐出し、前記印字媒体に印字を行う印字装置であって、所定のタイミングで行う前記インク吐出型印字ヘッドのノズルからのインクの予備吐出を、前記印字媒体を支持し該印字媒体と連動して副走査方向に搬送される搬送補助部材上に設定した予備吐出位置に行うようにしたものである。
また本発明は、インク吐出型印字ヘッドを搭載したヘッド部をプラテン上の印字媒体に対して主走査方向に往復移動させ、前記印字媒体を前記プラテン上で副走査方向に移動させ、前記印字ヘッドからインクを吐出して印字を行うとともに、所定のタイミングで前記印字ヘッドによる印字媒体への印字前に予備吐出を行う印字方法であって、前記予備吐出を前記プラテンを除いた、前記印字ヘッドによる印字領域の近傍位置に行うようにしたものである。
また本発明は、前記印字領域の近傍位置が、前記印字媒体の非印字領域であることを特徴とする。
また本発明は、前記印字領域の近傍位置が、前記印字媒体をスライド自在に押さえる押さえ部材の上であることを特徴とする。
また本発明は、前記印字領域の近傍位置が、前記印字媒体を支持し該印字媒体と連動して副走査方向に搬送される搬送補助部材の上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、印字媒体の近くで予備吐出ができるので、ノズルからのインク吐出が安定し、印字領域外で行う場合に比べて良好な印字結果が得られ、またプラテンなどを汚すこともないので、搬送されてくる媒体を汚すことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に本発明の構成を添付した図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態を示している。インクジェットプリンタ2の機体(図示省略)には、コントローラが内蔵され、該コントローラは、コネクタを介してコンピュータに接続されている。プリンタのコントローラ又はこれに接続するコンピュータには、図5のフローチャートに示す動作をプリンタに行わせるためのプログラムが格納されている。
【0007】
プリンタ2は、紙送りモータによってロール紙やカット紙などの印字媒体からなる搬送媒体4を搬送する副走査送り機構と、Y軸モータによってヘッド部6を、Y軸レール8に沿って往復動させる主走査送り機構とを有している。ここで副走査送り機構による搬送媒体4の紙面垂直方向の送り方向を副走査方向といい、主走査送り機構によるヘッド部6のY軸レール8に沿った移動方向を主走査方向という。尚、印字という用語は、単なる文字を書くという狭い意味ではなく、文字、画像、記号等を描画するという広い概念で使用している。
【0008】
ヘッド部6には、複数個のインク吐出型印字ヘッド10が搭載され、ヘッド部6の下面には、各印字ヘッド10のノズルが印字面に対向するように開口配置されている。前記搬送媒体4は、図示省略した駆動ローラとピンチローラとによって副走査方向に駆動され、プラテン12上を摺動する。前記ヘッド部6には、プラテン12上の搬送媒体4を検出する物体検出センサ(図示省略)が取り付けられ、コントローラがプラテン12上の搬送媒体4の縁部の座標位置を認識できるように構成されている。
【0009】
前記プラテン12の両側の印字領域外には、インク受け部14,16と、ヘッド部6のノズルを塞ぎ、インクの乾燥を防止したりインクをノズルから吸い出すためのキャップ機構18,20が設けられている。上記インク受け部14,16とキャップ機構18,20は、公知の機構であり、特許文献1にも開示されているのでその構造の詳細な説明を省略する。
【0010】
上記した構成において、印字動作がスタートすると、コントローラの制御により、ヘッド部6は、Y軸レール8に沿って主走査方向に往復駆動され、ヘッド部6に搭載された印字ヘッド10のノズルからインク滴が吐出され、搬送媒体4上の所定位置に印字が行われる。ヘッド部6が主走査方向の末端に達すると、コントローラは、搬送媒体4を副走査方向に所定ピッチだけ移動させて、次の主走査方向の印字動作を実行する。
【0011】
次に、上記印字動作を図5に示すフローチャートを参照して詳細に説明する。
操作者は、プリンタに印字動作をスタートさせると、操作パネルにより、インクの予備吐出位置(予備吐出位置)を選択しその選択情報をコントローラに入力する(ステップ1)。第1の実施形態では、予備吐出位置として、搬送媒体(印字媒体)即ち用紙4の不必要な非印字部分(a)(b)を選択している。
【0012】
次にコントローラは、印字を開始し(ステップ2)、ヘッド部6を主走査方向に移動して、検出センサにより、用紙4を走査し、物体検出センサからの信号に基づいて、用紙4の両側端点を検出し、用紙4の幅を認識する。次に、コントローラは予備吐出位置の指定が、用紙上であるか、印字領域外のインク受け部14,16上の所定の吐出位置であるか判断し(ステップ4)、用紙上であると判断すると、用紙幅に対する予備吐出位置のデータテーブルを参照し、このデータテーブルから、予備吐出位置を読み取る(ステップ5)。
【0013】
このデータテーブルの数値は予め設定され、コントローラのメモリに格納されている。次に、コントローラは、印字動作に入りヘッド部6を用紙4に向けて移動させ(ステップ7)、用紙4上の端部の不必要な非印字部分(a)又は(b)の、データテーブルによって指定された、予備吐出位置にてノズルからインク滴を吐出して予備吐出を実施してから(ステップ7)、用紙4上に印字を実行する(ステップ8)。予備吐出のタイミングは、ヘッド部6の走査動作ごとに行うのが良い。
【0014】
また、予備吐出の印字位置もヘッド数が多くなると印字がべたつく可能性もあるので、印字ヘッド(色)ごとに変えても良い。次に、コントローラは印字データが終了したか判断し(ステップ9)、肯定を判断すると、印字を終了する。ステップ9で否定を判断すると、印字用紙端部近傍でヘッド部6の移動方向を変更し(ステップ10)、ステップ7に移行する。印字用紙4に、画像A,B,Cを印字するに際し、用紙4の不必要な非印字部分(a)(b)に予備吐出が行われるため、予備吐出位置の近傍から始まる正印字に対して非常に安定した吐出がなされ、良好な印字結果が得られる。なお走査毎に予備吐出を行うと、画像の幅分だけ非印字部分に線が形成される。
【0015】
上記不必要な非印字部分(a)(b)は、印字後、カットされ、捨てられる部分である。用紙4に予備吐出位置を設定する場合、図1の実施形態では、印字用紙4の不必要な非印字部分(a)(b)に直接インクを吐出しているが、図2に示すように、印字用紙4の両側が必要な場合には非印字部分(a)(b)に予備吐出位置を設定し、その部分に予備吐出用紙18,20,22,24を貼付し、その上に予備吐出を行うようにしても良い。また、図3に示すように、印字用紙4の両側部を紙押さえ部材26,28でスライド自在に押さえる場合は、その紙押さえ部材26,28の上に、用紙、インク吸収パッドなどの予備印字用部材30,32を置いて、予備吐出位置を構成するようにしても良い。
【0016】
また、図4に示すように、プラテン12上に、板状の搬送補助部材34を載置し、この搬送補助部材34の上に印字媒体36をセットし、該搬送補助部材34をプラテン12上で副走査方向に搬送するプリンタにおいては、搬送補助部材34にインク吐出用溝38,40を設け、この溝38,40を予備吐出位置とするようにしても良い。
【0017】
図5において、ステップ4で印字領域外の吐出位置が指定されていると判断すると、コントローラはヘッド部6を移動し(ステップ11)、印字領域外の吐出位置、即ちインク受け部14又は16に予備吐出を実施し(ステップ12)、続いて印字を実行する(ステップ13)。次に、コントローラは、印字データが終了したか否か判断し(ステップ14)、肯定を判断すると、印字を終了する。ステップ14で否定を判断した場合は、吐出位置でヘッド部6の移動方向を変更し(ステップ15)、ステップ13に移行する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の説明図である。
【図2】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図3】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図4】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図5】本発明の動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0019】
2 プリンタ
4 搬送媒体
6 ヘッド部
8 Y軸レール
10 印字ヘッド
12 プラテン
14 インク受け部
16 インク受け部
18 用紙
20 用紙
22 用紙
24 用紙
26 紙押さえ部材
28 紙押さえ部材
30 予備印字用部材
32 予備印字用部材
34 搬送補助部材
36 印字媒体
38 溝
40 溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク吐出型印字ヘッドを搭載したヘッド部を印字媒体に対して主走査方向に往復移動させ、前記印字媒体を副走査方向に前記ヘッド部に対して相対移動させ、前記インク吐出型印字ヘッドからインクを吐出し、前記印字媒体に印字を行う印字装置であって、所定のタイミングで行う前記インク吐出型印字ヘッドのノズルからのインクの予備吐出を、前記印字媒体の非印字領域に設定した予備吐出位置に行うようにしたことを特徴とする印字装置。
【請求項2】
インク吐出型印字ヘッドを搭載したヘッド部を印字媒体に対して主走査方向に往復移動させ、前記印字媒体を副走査方向に前記ヘッド部に対して相対移動させ、前記インク吐出型印字ヘッドからインクを吐出し、前記印字媒体に印字を行う印字装置であって、所定のタイミングで行う前記インク吐出型印字ヘッドのノズルからのインクの予備吐出を、前記印字媒体をスライド可能に押さえる押さえ部材の上に設定した予備吐出位置に行うようにしたことを特徴とする印字装置。
【請求項3】
インク吐出型印字ヘッドを搭載したヘッド部を印字媒体に対して主走査方向に往復移動させ、前記印字媒体を副走査方向に前記ヘッド部に対して相対移動させ、前記インク吐出型印字ヘッドからインクを吐出し、前記印字媒体に印字を行う印字装置であって、所定のタイミングで行う前記インク吐出型印字ヘッドのノズルからのインクの予備吐出を、前記印字媒体を支持し該印字媒体と連動して副走査方向に搬送される搬送補助部材上に設定した予備吐出位置に行うようにしたことを特徴とする印字装置。
【請求項4】
インク吐出型印字ヘッドを搭載したヘッド部をプラテン上の印字媒体に対して主走査方向に往復移動させ、前記印字媒体を前記プラテン上で副走査方向に移動させ、前記印字ヘッドからインクを吐出して印字を行うとともに、所定のタイミングで前記印字ヘッドによる印字媒体への印字前に予備吐出を行う印字方法であって、前記予備吐出を前記プラテンを除いた、前記印字ヘッドによる印字領域の近傍位置に行うようにしたことを特徴とする印字方法。
【請求項5】
前記印字領域の近傍位置が、前記印字媒体の非印字領域であることを特徴とする請求項4に記載の印字方法。
【請求項6】
前記印字領域の近傍位置が、前記印字媒体をスライド自在に押さえる押さえ部材の上であることを特徴とする請求項4に記載の印字方法。
【請求項7】
前記印字領域の近傍位置が、前記印字媒体を支持し該印字媒体と連動して副走査方向に搬送される搬送補助部材の上であることを特徴とする請求項4に記載の印字方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−268826(P2007−268826A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−96308(P2006−96308)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000238566)MUTOHホールディングス株式会社 (29)
【Fターム(参考)】