原子力施設の漏洩監視システム及びその漏洩監視方法
【課題】漏洩箇所を短時間により精度良く検出できる原子力施設の漏洩監視システムを提供する。
【解決手段】原子炉格納容器1内で蒸気系及び原子炉冷却水系の近くに配置された複数のサンプリング口13は、セレクターバルブを介して管路23に接続される。Ge検出器を有する放射能測定部30Aが管路23に設けられる。Ge検出器は、各サンプリング口からサンプリングされたガス中の放射性核種(N−13,N−16,Mn−54,Co−60)のγ線を検出する。波高分析器34Aはγ線検出信号を用いて核種分析を行う。データ処理装置36は、核種分析情報を入力し、N−13,Mn−54等の放射能量に基づいて漏洩が蒸気系か原子炉冷却水系かを判定する。蒸気系の漏洩の場合、データ処理装置36はN−13/N−16比を用いて蒸気系における漏洩箇所を特定する。その漏洩箇所の情報は表示装置37Bに表示される。
【解決手段】原子炉格納容器1内で蒸気系及び原子炉冷却水系の近くに配置された複数のサンプリング口13は、セレクターバルブを介して管路23に接続される。Ge検出器を有する放射能測定部30Aが管路23に設けられる。Ge検出器は、各サンプリング口からサンプリングされたガス中の放射性核種(N−13,N−16,Mn−54,Co−60)のγ線を検出する。波高分析器34Aはγ線検出信号を用いて核種分析を行う。データ処理装置36は、核種分析情報を入力し、N−13,Mn−54等の放射能量に基づいて漏洩が蒸気系か原子炉冷却水系かを判定する。蒸気系の漏洩の場合、データ処理装置36はN−13/N−16比を用いて蒸気系における漏洩箇所を特定する。その漏洩箇所の情報は表示装置37Bに表示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力施設の漏洩監視システム及びその漏洩監視方法に係り、特に、沸騰水型原子力発電プラントの建屋に適用するのに好適な原子力施設の漏洩監視システム及びその漏洩監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現行原子力プランとの漏洩水監視システムとしては、原子炉格納容器内における漏洩水監視システム(Leak Detecting System、以下、LDSという)が用いられている。沸騰水型原子力発電プラントは、原子炉建屋内に設置された原子炉格納容器内に、炉心を内蔵する原子炉圧力容器(RPV)を設置している。この沸騰水型原子力発電プラントは、原子炉圧力容器に接続されて炉心に冷却水を供給する再循環系を有し、タ−ビン建屋内に、タ−ビン、復水器及び給水ポンプを設置している。再循環系は、再循環ポンプが設けられた再循環配管を有する。炉心で発生した蒸気は、主蒸気配管を介してタ−ビンに送られ、復水器で凝縮されて水に戻される。この水は給水ポンプで昇圧されて原子炉圧力容器内に戻される。
【0003】
従来のLDSでは、原子炉格納容器内に設けられた複数のサンプリング口から原子炉格納容器内のガスをブロアの駆動によって捕集し、原子炉格納容器外の放射能測定部でその捕集ガスの放射能を計測する。この放射能の計測は、複数のサンプリング口からの捕集ガスをロ−ル状フィルタに導いて捕集ガスに含まれたダストをそのフィルタで捕集する。補足されたダストに含まれる固体状の放射性物質及び補修ガスに含まれる放射性ガスの放射能量がシンチレーション検出器で計測される。このようにして原子炉格納容器内の放射能量が連続的に計測され、原子炉格納容器内での漏洩水の有無が監視される。
【0004】
沸騰水型原子力発電プラントのタ−ビン建屋内の漏洩監視は、タービン建屋内の複数の各部屋にガスサンプリング口を設け、これらのサンプリング口から順次選択的にガスを採集し、採集したガスの放射能量を計測することによって行われる。
【0005】
沸騰水型原子力発電プラント等の原子力施設では、配管等にき裂が生じて設定量以上の冷却水が気体及び液体の少なくとも一方の状態で漏洩した場合には、プラントの安全を確保するために原子炉の運転を停止する。さらに、原子炉の運転停止後、漏洩箇所の特定及び必要な対策を講ずる必要がある。漏洩箇所の特定する方法として、漏洩が原子炉の冷却水系及び蒸気系のどちらで生じているかを判定する方法が既に提案されている。
【0006】
その判定方法は、特開昭59−150388号公報、特開平2−159599号公報及び特開平5−249278号公報に記載されている。特開昭59−150388号公報は、沸騰水型原子力発電プラントにおいて、原子炉格納容器内の雰囲気中の水素ガス濃度及び放射性核種の放射能濃度、及び原子炉格納容器内の漏洩水中の放射能濃度を測定し、これらの測定値を用いて漏洩箇所が蒸気系にあるか炉水系あるかを判定している。放射性核種の放射能濃度として、I−131及びNa−24の放射能濃度を測定している。特開平2−159599号公報は、沸騰水型原子力発電プラントの原子炉格納容器内で漏洩が発生したとき、蒸気系か炉水系かを判定している。この判定は、原子炉格納容器内の雰囲気中における放射性核種の濃度及び組成を測定し、この測定結果を炉水及び主蒸気にそれぞれ含まれる放射性核種の濃度比とを比較して行われる。放射性核種の濃度比として、N−13/F−18濃度比またはI−131/I−133濃度比を用いている。特開平5−249278号公報に記載された漏洩監視方法は、原子炉格納容器内の雰囲気中の水素濃度を測定し、原子炉格納容器内除湿系からの凝縮水ドレン発生量または原子炉格納容器内サンプの排水量に対する計測された水素濃度の比率に基づいて、漏洩箇所が蒸気系であるか炉水系であるかを判定している。
【0007】
【特許文献1】特開昭59−150388号公報
【特許文献2】特開平2−159599号公報
【特許文献3】特開平5−249278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の特開昭59−150388号公報、特開平2−159599号公報及び特開平5−249278号公報に記載されたそれぞれ原子力施設の漏洩監視方法は、以下に示す課題を有する。特開昭59−150388号公報は、漏洩箇所が蒸気系であるか炉水系であるかの判定に放射性核種であるI−131及びNa−24の放射能濃度を用いている。しかしながら、I−131は、核分裂生成物であり、原子炉の炉心内に装荷されている燃料棒に破損が生じていなければ感度良く検出できない。また、Na−24は、復水器の伝熱管に海水リークが発生し、Naが炉心に流入することによって発生する。炉心内での燃料棒破損及び復水器の伝熱管での海水リークの発生確率は現在の原子炉では極めて小さく、それらの事故はほとんど発生し得ない。このため、I−131及びNa−24の放射能濃度に基づいて漏洩箇所を判定することは困難である。
【0009】
特開平2−159599号公報は、原子炉格納容器内に放出された放射性核種の放射能量の減衰曲線を第2図に示している。この第2図によれば、N−13の放射能量の減衰曲線は曲線aで表され、F−18の放射能量の減衰曲線は曲線bで表されている。また、漏洩箇所が炉水系である場合、サンプルの減衰曲線は曲線cとなり、漏洩箇所が蒸気系である場合、サンプルの減衰曲線は曲線cとなっている。これらのサンプルの減衰曲線は、曲線aと曲線bの合成曲線であり、N−13とF−18の濃度比に依存している。しかしながら、第2図から明らかであるように、N−13及びF−18による漏洩箇所の特定は、漏洩事故発生後、それらの放射能濃度を30分から1時間測定しないと判定することはできず、判定までの応答性が悪い。また、I−131及びI−133は、核分裂生成物のため、特開昭59−150388号公報と同様に、漏洩箇所の判定の指標として用いることは適切ではない。特開平5−249278号公報も、漏洩事故発生後、水素濃度を長時間にわたって測定する必要があり、判定までの応答性が悪い。
【0010】
以上のように、従来の漏洩監視システムには、漏洩が蒸気系か炉水系かの判定が困難であり、またはその判定に長時間を要し、漏洩水事故の伝播判断及び漏洩修復作業の着手を遅延させる課題があることが分かった。
【0011】
本発明の目的は、漏洩箇所を短時間により精度良く検出することができる原子力施設の漏洩監視システム及びその漏洩監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、蒸気系配管及び原子炉冷却水系配管を備える原子力施設内からサンプリングされたガスに含まれる放射性核種からの放射線を検出し、この検出で得られた放射線検出信号を用いて核種分析を行い、その核種分析で得られた核種分析情報に含まれた、放射性窒素及び放射性炭素の少なくとも一方の放射能量及び腐食生成物の放射能量に基づいて、漏洩箇所が蒸気系配管にあるか及び原子炉冷却水系配管にあるかを判定することにある。
【0013】
本発明は、核種分析で得られた、放射性窒素及び放射性炭素の少なくとも一方の放射能量及び腐食生成物の放射能量に基づいて漏洩箇所の位置を判定しているので、蒸気系配管及び原子炉冷却水系配管のいずれで漏洩が発生しているかを精度良く短時間に求めることができる。
【0014】
好ましくは、上記核種分析情報に含まれている、半減期が異なるN−13,N−16及びC−15のうちから選択された第1放射性核種の放射能量とそれらのうちから選択された第2放射性核種の放射能量の比に基づいて、蒸気系配管で生じている漏洩箇所の位置を特定することが望ましい。
【0015】
この蒸気系配管で生じている漏洩箇所の位置の特定は、以下に述べる発明者らが見出した新たな知見に基づいて成されたのである。発明者らは、種々の検討を行った結果、N−16の放射能量に対するN−13の放射能量の比、すなわち(N−13の放射能量)/(N−16の放射能量)(以下、N−13/N−16比という)を参照すれば、蒸気系における漏洩箇所を精度良く推定できるという新たな知見を見出した。この新たな知見を具体的に説明する。
【0016】
原子炉冷却水系の冷却水に含まれる放射性核種のγ線エネルギーは、Mn−54が834KeVで、Co−60が1.25MeVである。蒸気系の蒸気に含まれる放射性核種のエネルギーは、N−13が511keVであり、N−16が6.1MeVである。これらの放射性核種は、高エネルギーのγ線まで検出可能な半導体放射線検出器を用いることによって、核種分析が可能になる。また、N−13及びN−16の各半減期は、前者が10分、後者が7.1秒であり、大きく異なっている。原子炉内でのN−13/N−16比は、原子炉の定常運転状態では一定である。N−13/N−16比は、原子炉に接続される主蒸気配管経由で主蒸気配管に接続される各種の計装用配管の想定漏洩箇所(例えば、フランジ及び継ぎ手類)までの時間差によって、所定の割合で変化する。つまり、漏洩ガスの各主成分とこれらの主成分の放射能量を求めることによって、蒸気系における漏洩箇所の位置を精度良く推定することができる。
【0017】
N−13/N−16比の替りに、C−15の放射能量に対するN−16の放射能量の比、すなわち(N−16の放射能量)/(C−15の放射能量)(以下、N−16/C−15比という)またはC−15の放射能量に対するN−13の放射能量の比、すなわち(N−13の放射能量)/(C−15の放射能量)(以下、N−13/C−15比という)を用いても、蒸気系における漏洩箇所を精度良く推定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、蒸気系配管及び原子炉冷却水系配管のいずれで漏洩が発生しているかを精度良く短時間に求めることができる。このため、漏洩箇所を迅速に知ることができ、原子力発電プラントの保全監視及び修復作業の準備を早く行うことができる。原子力施設の安全性が著しく向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施例を、図面を用いて以下に説明する。
【実施例1】
【0020】
本発明の好適な一実施例である実施例1の原子力施設の漏洩監視システム(Leak Detecting System、以下、LDSという)を説明する前に、LDSが適用される原子力施設、例えば、沸騰水型原子力発電プラントの概要を、図1により説明する。沸騰水型原子力発電プラントは、原子炉建屋(図示せず)内に設置された原子炉格納容器1を有し、炉心3を内蔵する原子炉圧力容器(以下、RPVという)4が原子炉格納容器1内に設置される。再循環系が、RPV4に接続された再循環配管5、及び再循環配管6に取り付けられた再循環ポンプ6を有する。この再循環系も原子炉格納容器1内に設置される。沸騰水型原子力発電プラントは、タービン建屋2を有し、タービン建屋2内にタービン7及び復水器8を設置している。タービン7は主蒸気配管10によってRPV4に接続される。復水器8は給水配管11によってRPV4に接続される。給水ポンプ9が給水配管11に設けられる。
【0021】
再循環ポンプ6で昇圧された冷却水は、再循環配管5を通ってRPV4内に設置されたジェットポンプ(図示せず)に供給される。このジェットポンプから吐出された冷却水は、炉心3に供給され、炉心3内で加熱される。加熱された冷却水は一部が蒸気となる。この蒸気は、主蒸気配管10を通ってタービン7に供給され、タービン7を駆動する。タービン7に連結された発電機(図示せず)が回転し、電力が発生する。タービン7から排出された蒸気は、復水器7で冷却水配管53で供給される海水との熱交換により凝縮されて水となる。この水は、給水として、給水ポンプ9等により昇圧されて給水配管11によりRPV4に供給される。
【0022】
本実施例のLDS20を、図1及び図2を以下に用いて説明する。LDS20は、原子炉格納容器1内で所定の位置に配置された複数のサンプリング口13、タービン建屋2内に配置された複数のサンプリング口21a,21b,21c,21d,21e、……、放射能測定部30A,30B、波高分析器(核種分析装置)34A,34B、データ処理装置(漏洩箇所特定装置)36、記憶装置35、操作盤37及びブロア12を設置した管路23を備えている。原子炉格納容器1内の所定の位置にそれぞれ配置された複数のサンプリング口13、すなわち、サンプリング口13a,13b,13c,13d,13e、……(図2参照)を個々に有する各サンプリング配管49は、セレクターバルブ14Aを介して管路23に接続される。サンプリング口13a,13b,13c,13d,13e、……は、原子炉格納容器1内に位置する蒸気系(例えば、主蒸気配管10、及び主蒸気配管10に接続された枝管である圧力検出配管等の計装用配管)及び炉水系である原子炉冷却水系(例えば、再循環系、原子炉浄化系、残留熱除去系、給水配管、及びこれらの枝管である各計装用配管等)の近くにそれぞれ配置される。管路23は、大部分が原子炉格納容器1外に配置され、両端部が原子炉格納容器1内に配置されている。ブロア12が管路23に設けられる。放射能測定部30Aが、原子炉格納容器1の外部で管路23に設けられる。原子炉格納容器1内のドライウェルの底部にドレン水受け部17が形成されており、ドレン水量計38がドレン水受け部17に設置される。露点計18及び水素濃度計(図示せず)が、原子炉格納容器1内に設置される。タービン建屋2内の所定の位置(例えば、タービン建屋2内の各部屋)にそれぞれ配置されたサンプリング口21a,21b,21c,21d,21e、……を個々に有する各サンプリング配管52は、セレクターバルブ14Bを介して管路28に接続される。サンプリング口21a,21b,21c,21d,21e、……は、タービン建屋2内に位置する蒸気系(例えば、主蒸気配管10、及び主蒸気配管10に接続された枝管である圧力検出配管等の計装用配管)及び炉水系である原子炉冷却水系(例えば、給水配管、及びこれの枝管である各計装用配管等)の近くにそれぞれ配置される。管路28は、タービン建屋2内に配置され、大部分がタービン建屋2内の所定の部屋(例えばモニタ室等)に配置され、両端部がタービン建屋2内の各部屋に配置される。放射能測定部30Bが、タービン建屋2内の所定の部屋で管路28に設けられる。ブロア29が管路28に設けられる。放射能測定部30Bはタービン建屋2の外に配置することも可能である。
【0023】
放射能測定部30Aの詳細構造を、図2により説明する。放射能測定部30Aは、ロール状フィルタ(フィルタ装置)15A、半導体放射線検出器であるGe放射線検出器(以下、Ge検出器という)16A及び測定チャンバー24Aを有する。測定チャンバー24Aは管路23に取り付けられる。ロール状フィルタ15A及びGe検出器16Aは、測定チャンバー24Aに取り付けられている。Ge検出器16A及び後述のGe検出器16Bには、高エネルギーのγ線が容易に検出できる相対効率40%以上のGe検出器を用いる。増幅器33AがGe検出器16Aに接続される。ロール状フィルタ15Aは、回転体である一対のローラ25,26及び帯状フィルタ27を有する。帯状フィルタ27は、ローラ25,26にそれぞれ巻き付けられている。一方のローラ、例えば、ローラ26を所定時間間隔で断続的に回転させることにより、帯状フィルタ27は他方のローラ25からローラ26に巻き取られる。放射能測定部30Bも、放射能測定部30Aと同じ構成を有する。ただし、放射能測定部30Bに設けられたロール状フィルタ、Ge検出器、増幅器及び測定チャンバーは、ロール状フィルタ15B、Ge検出器16B、増幅器33B及び測定チャンバー24Bで表す。半導体放射線検出器としては、Ge検出器の替りにCdTe及びCZTを別々に用いた各半導体放射線検出器を用いてもよい。
【0024】
操作盤37は、演算装置37A、表示装置37B及び制御装置37Cを有する。表示装置37Bは演算装置37Aに接続される。制御装置37Cはセレクターバルブ14A,14Bに接続される。
【0025】
放射能測定部30Aの増幅器33Aは配線54により波高分析器34Aに接続される。放射能測定部30Bの増幅器33Bは配線38により波高分析器34Bに接続される。波高分析器34A,34Bはデータ処理装置36に接続される。記憶装置35がデータ処理装置36に接続される。データ処理装置36は演算装置37Aに接続されている。露点計18は配線47によって演算装置37Aに接続される。ドレン水量計38は配線39によって演算装置37Aに接続される。原子炉格納容器1内に設置された水素濃度計(図示せず)も演算装置37Aに接続される。
【0026】
発明者らが新たに見出した、前述のN−13/N−16比を用いた蒸気系における漏洩箇所の位置の推定の基本概念を、以下に、具体的に説明する。半導体放射線検出器(例えば、Ge検出器16A)から出力された放射線検出信号は、波高分析器に入力されて核種分析される。この核種分析によって得られた核種分析測定スペクトル(核種分析情報)の一例を、図3に示す。なお、測定対象核種の最大エネルギーがN−16の6.1MeVであるので、半導体放射線検出器は最大で8MeV程度の測定エネルギー範囲が必要となる。また、N−13は511KeV、Co−60は1.25MeVであるので、半導体放射線検出器は0KeV以上の測定エネルギー範囲が必要となる。
【0027】
図3に示すN−13(半減期:10分)及びN−16(半減期:7秒)の減衰曲線を図4に示す。原子力発電プラントの定常運転時にRPV4内に存在するN−13及びN−16の各放射能量は、核反応による生成及びRPV4から主蒸気配管10に排出される蒸気への移行損失によりバランスしており、ある値に保たれている。その定常運転時におけるRPV4内に存在するN−13及びN−16の各放射能量は、施設管理のル−チン分析作業で測定される。これらの放射能量は必要に応じて収集できる。N−13及びN−16のそれぞれの生成核反応は、O−16(p,2n)N−13、及びO−16(n,p)N−16である。N−13及びN−16がRPV4内で液相領域(炉水)から気相領域(炉心3で発生した蒸気)に移行したばかりの時点では、蒸気のN−13/N−16比はある値に保持される。しかしながら、放射能量比であるN−13/N−16比は、N−13及びN−16の蒸気への移行後の経過時間に応じて変化する(図4参照)。この比は両放射性核種の半減期のみに依存する。半減期の短いN−16の放射能量の減衰度合いは、N−13のそれよりも著しく大きい。
【0028】
発明者らは、N−13/N−16比の種々の値に対して、これらの値がN−13及びN−16の蒸気への移行後の経過時間に対応してどのように変化するかを検討した。図5は、その検討結果を示し、N−13及びN−16がRPV4内で液相領域から気相領域に移行したばかりの時点でのN−13/N−16比の値(Fで示す)をパラメータにして、その経過時間に対するN−13/N−16比の変化を示している。Fとしては1000,100,10及び1の4通りを用いた。初期値であるFの値が変わっても、その経過時間に対するN−13/N−16比の減少の傾きは同じである。発明者らは、図5に示す結果に基づけば、N−13及びN−16が、RPV4から蒸気漏洩の可能性のある場所(例えば、機器及び部品等の設置場所)までに到達するのに要する時間(到達時間)が分かれば、蒸気漏洩の可能性のある場所でのN−13/N−16比が分かるという新たな知見を見出した。到達時間は、上記経過時間に該当する。この知見によれば、逆に到達時間が分かれば、核種分析で得たN−13及びN−16の各放射能量を用いて算出したN−13/N−16比を用いて蒸気系における漏洩箇所の位置を推定することができる。
【0029】
炉心において放射性核種であるC−15がO−16の核反応によって生成される。このC−15も、N−13及びN−16と同様に、蒸気系における漏洩箇所の位置の推定に用いることができる。核種分析で得られたC−15の放射能量を用いて求めたN−16/C−15比またはN−13/C−15比も、傾きは異なるが、図5に示すN−13/N−16比と同様な特性を得ることができる。このため、N−16/C−15比またはN−13/C−15比を用いても、蒸気系の漏洩箇所の位置を推定することができる。
【0030】
主蒸気配管10に接続された枝管50及びこの枝管50に接続された計装用配管51を図6に模式的に示した。計装用配管51は例えば蒸気の圧力測定用の計装用配管である。PF−1は枝管50の接続用のフランジ、PT−1は計器用の継ぎ手、PT−2からPT−6は計器用配管51の配管継ぎ手を示している。PV−1は計器用配管51に設けられたバルブである。枝管50及び計装用配管51に設けられた各コンポ−ネント(フランジ、継ぎ手、バルブ等)の設置場所は設計図書より予め把握することが可能であり、枝管50及び計装用配管51の設計流量も予め把握することができる。N−13及びN−16の、炉心から各コンポ−ネントまでの到達時間も設計図書から把握することが可能である。これらの情報に基づいて、各コンポ−ネントまでのN−13及びN−16の到達時間とN−13/N−16比を把握することができる。
【0031】
上記した設計図書等の情報に基づいて各コンポ−ネント設置場所(漏洩が生じる可能性のある場所)及びN−13/N−16比の情報を関係付けたデ−タベ−スを作成した。このデータベース情報の一例を図7に示す。図7には到達時間が示されているが、作成したデータベース情報は、到達時間を含んでいない。このデータベース情報は、記憶装置35に予め記憶されている。N−16/C−15比またはN−13/C−15比、各コンポ−ネント設置場所及び到達時間を用いて、N−13/N−16比と同様なデータベース情報を作成し、記憶装置35に記憶させてもよい。
【0032】
LDS20を用いた漏洩監視について具体的に説明する。操作盤37に設けられた制御装置37Cは、セレクターバルブ14Aを制御してサンプリング口13a,13b,13c,13d,13e、……を管路23に順次接続する。ブロア12が駆動されているので、原子炉格納容器1内の所定位置でそれぞれ各サンプリング口からサンプリングされたガスが、該当するサンプリング管49を経て、順次、管路23に供給される。このガスは、管路23を通って測定チャンバー24A内に導かれる。Ge検出器16Aは、測定チャンバー24A内に到達したガスに含まれた放射性核種(例えば、N−13,N−16,C−15,Mn−54,Co−60)から放出されるγ線を検出する。Ge検出器16Aはγ線検出信号を出力し、このγ線検出信号は増幅器33Aによって増幅される。原子炉格納容器1内でRPV4に接続された蒸気系(例えば、主蒸気配管10、及び主蒸気配管10に接続された枝管である圧力検出配管等の計装用配管)及び炉水系である原子炉冷却水系(例えば、再循環系、原子炉浄化系、残留熱除去系、給水配管、及びこれらの枝管である各計装用配管等)から蒸気または冷却水の漏洩が生じていない場合には、Ge検出器16Aは0Vのγ線検出信号を出力する。もし、原子炉格納容器1内で主蒸気配管10に発生したき裂が貫通して、主蒸気配管10から原子炉格納容器1内に蒸気が漏洩したとする。このとき、測定チャンバー24A内に導かれるガスは、放射性核種(例えば、N−13,N−16,C−15)を含んでいる。Ge検出器16Aは、この放射性核種等から放出されるγ線を検出する。もし、RPV4に接続される原子炉浄化系の配管に発生したき裂が貫通して、原子炉浄化系の配管から原子炉格納容器1内に冷却水が蒸気化して漏洩したとする。このとき、測定チャンバー24A内に導かれるガスは固体状の放射性核種(例えば、Mn−54,Co−60)を含んでおり、Ge検出器16Aは固体状の放射性核種等から放出されるγ線を検出する。固体状の放射性核種(例えば、Mn−54,Co−60)は、ガスが測定チャンバー24A内で帯状フィルタ27を通過する際に、その帯状フィルタ27で捕捉される。Ge検出器16Aは帯状フィルタ27に捕捉された固体状の放射性核種からのγ線を検出する。帯状フィルタ27は測定チャンバー24A内を前述のように断続的に移動される。
【0033】
増幅器33Aから出力されたγ線検出信号は、波高分析器34Aに伝えられる。波高分析器34Aは、入力したγ線検出信号に基づいてオンラインの核種分析を行う。核種分析で得られた情報(図3参照)がデータ処理装置36に入力される。増幅器33Aは入力したγ線検出信号に基づいた単位時間当たりの総カウント値(以下、放射能測定値という)の情報もデータ処理装置36に出力する。データ処理装置36は、入力した核種分析情報、及び予め作成されて記憶装置35に記憶されている前述のデータベースの情報を用い、図8に示す処理手順に従って、処理を実行する。
【0034】
まず、入力した核種分析情報を用い、放射性核種ごとに放射能量が増加しているかを判定する(ステップ61)。放射能量が増加している放射性核種がある場合には、ステップ61の判定は「Yes」となる。その核種が存在しない場合には、「No」の判定となる。「Yes」の場合には、放射能量が基準値を超えているかを判定する(ステップ62)。ステップ62の判定は、該当する放射性核種の放射能量が基準値を超えている場合には「Yes」、基準値を超えていない場合には「No」となる。ステップ61または62の判定が「No」である場合には、「漏洩なし」のメッセージ情報を作成し(ステップ67)、ステップ61の処理が実行される。ステップ67では、例えば、「原子炉冷却水系及び蒸気系では漏洩なし」のメッセージ情報が作成される。ステップ62の判定が「Yes」である場合、放射能量が基準値を超えている放射性核種が、一次冷却水(炉水)に含まれる主成分(CP)か、ガス成分かを判定する(ステップ63)。一次冷却水に含まれる放射性核種(Co−60等)の放射能量が基準値を超えている場合には、一次冷却水の漏洩であると判定する(ステップ65)。この場合には、「原子炉冷却系で漏洩発生」というメッセージ情報を作成する。また、ステップ63で、ガス成分の放射性核種が基準値を超えている場合には、蒸気の漏洩であると判定すると共に、蒸気系での漏洩箇所の位置を推定する(ステップ64)。ステップ64では、核種分析情報に基づいてN−13/N−16比を算出する。得られたN−13/N−16比を用いて、記憶装置35に記憶されているデータベースの情報(例えば、図7参照)から該当する漏洩箇所の位置(例えば、PF−1,PT−2等のコンポーネント)を推定する。蒸気系において推定された漏洩箇所の位置を示す情報を作成する(ステップ66)。ステップ66では、例えば、「蒸気系のPT−2で漏洩発生」という蒸気系の漏洩に係るメッセージ情報を作成する。スッテプ64においてN−13/N−16比の替りにN−16/C−15比またはN−13/C−15比を用いても、蒸気系での漏洩箇所の位置を推定することができる。
【0035】
データ処理装置36は、図8の処理手順で作成した情報、及び波高分析器33Aから入力した核種分析情報及び放射能測定値等の情報を操作盤37の演算装置37Aに出力する。露点計18、ドレン水量計38及び水素濃度計の各計測値も、演算装置37Aに入力される。
【0036】
原子炉格納容器1内で漏洩が生じたとき、配管等からの漏洩水は、ドレン水受け部17に流入する。主蒸気配管10等の配管から漏洩した蒸気も、原子炉格納容器1のドライウェル内で凝縮して水になった場合にはドレン受け部17に集められる。ドレン受け部17に設けられたドレン水量計38によってドレン水量が測定される。ドレン水量、すなわち漏洩水量が例えば1G/min(3.8L/min)以上になった場合には、スクラムによって原子炉が停止される。しかし、ドレン水量の計測だけでは、漏洩水が放射性であるか非放射性であるかの判定を行うことができない。原子炉格納容器1内に設置された水素濃度計及び露点計18も、原子炉格納容器1内への一次冷却水(炉水)及び蒸気の漏洩監視の補助デ−タを得るものである。
【0037】
演算装置37Aは、「原子炉冷却水系及び蒸気系では漏洩なし」のメッセージ情報を入力した状態で、露点計18及びドレン水量計38の計測値が上昇する場合には、蒸気系及び原子炉冷却水系以外の補機冷却水系(例えば、原子炉浄化系の熱交換器に冷却水を供給する系統)において漏洩が発生していると判定する。演算装置37Aは、この判定情報(「補機冷却系で漏洩発生」というメッセージ情報)と共に、露点計18及びドレン水量計38の計測値を含む画像情報を作成し、この画像情報を表示装置37Bに出力する。この画像情報は表示装置37Bに表示される。その画像情報は核種分析情報も含んでいる。演算装置37Aは、「原子炉冷却系で漏洩発生」、「蒸気系で漏洩発生」または「補機冷却系で漏洩発生」のメッセージ情報を表示装置37Bに出力する際には、運転員に警報を発するためにブザー(図示せず)を鳴らす。
【0038】
原子炉格納容器1内の蒸気系で漏洩が発生したときに、表示装置37Bに表示される情報の一例を、図9に示す。露点温度測定値、放射能測定値、放射性窒素成分(N−13,N−16)の核種分析値、腐食性生物成分(Mn−54,Co−60)の核種分析値、ドレン水量の測定値及び水素濃度の測定値(図示せず)がそれぞれ表示されている。図9に示す表示情報は、演算装置37Aで作成される。N−13及びN−16の核種分析値が上昇し、Mn−54及びCo−60の核種分析値がほとんど変化しないので、この表示情報は蒸気系で漏洩が生じていることを示している。表示装置には「蒸気系で漏洩発生」のメッセージ情報も併せて表示される。運転員は、表示装置に表示されたそれらの情報を見ることによって、蒸気系で漏洩が生じていることを知ることができる。
【0039】
一般的に、RPV4から復水器までの蒸気の到達に要する時間は1分程度である。RPV4内のN−13/N−16比の値にもよるが、漏洩発生後、速やかに核種分析及びデータ処理装置36での解析を行って漏洩のメッセージ情報を表示することができる。波高分析器34Aで得られた各情報を記憶装置35に記憶させることによって、データ処理装置36での処理を円滑に行うことができる。
【0040】
原子炉格納容器1内で漏洩監視について説明したが、LDS20を用いたタービン建屋2内の漏洩監視について説明する。制御装置36cはセレクターバルブ14Bの切り替え操作を順次行う。ブロア29の駆動により、サンプリング口21a,21b,21c,21d,21e、……から該当するサンプリング配管52を経て順次サンプリングされたガスは、管路28を通して測定チャンバー24Bに送られ、Ge検出器16Bによってγ線が検出される。Ge検出器16Bから出力されたγ線検出信号は、増幅器33Bで増幅され、波高分析器34Bに入力される。波高分析器34Bは、波高分析器34Aと同様な処理を行い、得られた情報をデータ処理装置36に出力する。データ処理装置36は、図8に示す処理を前述したように実行し、タービン建屋2内での蒸気系(例えば、主蒸気配管10、及び主蒸気配管10に接続された計装用配管)の漏洩のメッセージ情報、または原子炉冷却水系(例えば、給水配管11及び給水配管11に接続された計装用配管)の漏洩のメッセージ情報を作成する。これらのメッセージ情報は表示装置37bに表示される。給水配管11内を流れる給水には極微量のMn−54、Co−60を含んでいる。これらは、主蒸気配管11に排出される蒸気中に含まれており、復水器8での蒸気の凝縮により、タービンからの給水加熱器(図示せず)に抽気された蒸気の凝縮水の復水器8への導入により、給水に入り込む。このため、原子炉格納容器1内での漏洩と同様な処理がデータ処理装置36で行うことができる。N−13/N−16比を用いた、蒸気系における漏洩箇所の位置の推定も同様に行われる。
【0041】
本実施例は、γ線検出信号の核種分析で得られた、核反応で生成された放射性窒素(例えば、N−13,N−16)または放射性炭素(例えば、C−15)の放射能量及びRPV4内で冷却水中に生成される腐食生成物(例えば、Mn−54,Co−58,Co−60)の放射能量を監視しているため、原子炉格納容器1(またはタービン建屋2)内の蒸気系及び原子炉冷却水系のいずれで漏洩が発生しているかを精度良く短時間に求めることができる。このため、運転員が漏洩発生箇所を迅速に知ることができ、遅滞なく原子力発電プラントの保全監視及び修復作業の準備を行うことができる。原子力発電プラントの安全性が著しく向上する。
【0042】
本実施例は、蒸気系で漏洩が発生した場合に、核種分析で得られた情報を基に求められた半減期が異なる2つの放射性核種の放射能量の比、例えば、N−13/N−16比(またはN−16/C−15比またはN−13/C−15比)を用いて漏洩箇所を推定しているので、蒸気系において漏洩箇所の位置をより精度良く特定することができる。このため、運転員は、速やかな事故伝播判断を行うことができ、修復作業の準備をより適切に行うことができる。記憶装置35がN−13/N−16比(またはN−16/C−15比またはN−13/C−15比)と漏洩箇所とを関連付けた情報を記憶しているので、N−13/N−16比等を用いた、蒸気系における漏洩箇所の特定を容易に行うことができる。
【0043】
「原子炉冷却系で漏洩発生」と判定された場合には、原子炉冷却系のどの系統、すなわち、再循環系、原子炉浄化系、残留熱除去系、給水配管及びこれらの1つに接続された各計装用配管のうちどの系統で漏洩が発生しているかを運転員は把握する必要がある。本実施例は、セレクターバルブ14A(またはセレクターバルブ14B)の切り替え操作によって、再循環系、原子炉浄化系、残留熱除去系、給水配管、及びこれらの枝管である各計装用配管等の近くにサンプリング口を、それぞれ、配置し、各サンプリング口からサンプリングしたガスを、順次、測定チャンバー24A(または測定チャンバー24B)に供給している。このため、Ge検出器16A(またはGe検出器16B)で検出した放射能量に基づいて、原子炉冷却水系のうちで漏洩が生じている系統(例えば、計装用配管)を特定することができる。すなわち、最も高い放射能量が検出されたガスをサンプリングしたサンプリング口の近くの系統が、漏洩を生じている。演算装置37Aは原子炉冷却水系の漏洩が生じている系統の系統名の情報を作成し、表示のために表示装置37Bに出力する。
【0044】
なお、原子炉冷却水系の漏洩は、Ge検出器でCo−58のγ線を測定することによっても検出することができる。また、原子炉冷却水系における漏洩箇所の特定は、半減期の異なる2つの腐食生成物(例えば、Mn−54,Co−60)を利用して図7と同様なデ−タベ−ス情報を作成することによって、蒸気系と同様に行うことができる。
【実施例2】
【0045】
本発明の他の実施例である実施例2の原子力施設のLDSを、図10を用いて説明する。本実施例のLDS20Aは、実施例1のLDS20の放射能測定部30A、30Bをそれぞれ放射能測定部30Cに替えた構成を有し、他の構成はLDS20と同じである。原子炉格納容器1用の放射能測定部30Cは管路23に設けられ、タービン建屋2用の放射能測定部30Cは管路28に設けられる。放射能測定部30Cは、Ge検出器16A、増幅器33A及び測定チャンバー24Cを有する。測定チャンバー24Cは管路23、28にそれぞれ設置される。増幅器33Aに接続されたGe検出器16Aは測定チャンバー24Cの近くに設置される。原子炉格納容器1用の放射能測定部30Cの増幅器33Aは波高分析器34Aに接続され、タービン建屋2用の放射能測定部30Cの増幅器33Aは波高分析器34Bに接続される。
【0046】
LDS20Aも、LDS20と同様に漏洩監視を行い、LDS20で生じる効果を得ることができる。
【実施例3】
【0047】
本発明の他の実施例である実施例3の原子力施設のLDSを、図12を用いて説明する。その前に、核種分析測定スペクトルの例を、図11を用いて説明する。γ線の低エネルギー領域から高エネルギー領域までをカバーできるGe検出器16Aから出力されたγ線検出信号を核種分析した結果の核種分析測定スペクトルの一例を、前述したように図3に示している。Ge検出器16Aは、0MeVから8MeVまでの広範囲のエネルギー領域のγ線を検出することができる。しかしながら、高エネルギーの測定範囲で低エネルギー領域のγ線を検出する場合、測定領域が縮小するため相対的に核種分析の精度が低下する。図11(A)は低エネルギー領域の核種分析測定スペクトルを示し、図11(B)は高エネルギー領域の核種分析測定スペクトルを示している。このように、高エネルギー領域のγ線及び低エネルギー領域のγ線を分けて検出することによって、それぞれの領域でより精度の高い核種分析測定スペクトルを得ることができる。
【0048】
図12に示す本実施例のLDS20Bは、実施例1のLDS20の放射能測定部30A,30Bをそれぞれ放射能測定部30Dに替えた構成を有し、他の構成はLDS20と同じである。放射能測定部30Dは、測定チャンバー24Dに2つのGe検出器16C,16Dを設けている。Ge検出器16Cは低エネルギー領域(0〜2 MeV)用の放射線検出器であり、Ge検出器16Dは高エネルギー領域(4〜8 MeV)用の放射線検出器である。高エネルギー領域用のGe検出器16Dは有感体積の大きいものを、低エネルギー領域用のGe検出器16Cは有感体積の小さいものを使用する。放射能測定部30Dは、放射能測定部30Aと同様に、ロール状フィルタ15Aを測定チャンバー24Dに備えている。原子炉格納容器1用の放射能測定部30Dでは、Ge検出器16Cが増幅器33Cを介して波高分析器34Aに、Ge検出器16Dが増幅器33Dを介して波高分析器34Aにそれぞれ接続される。タービン建屋2用の放射能測定部30Dでは、Ge検出器16Cが増幅器33Cを介して波高分析器34Bに、Ge検出器16Dが増幅器33Dを介して波高分析器34Bにそれぞれ接続される。
【0049】
本実施例は、Ge検出器16C,16Dを有する放射能測定部30Dを備えているので、低エネルギー領域及び高エネルギー領域のγ線をそれらの領域に適合するそれぞれのGe検出器で検出するので、低エネルギー領域及び高エネルギー領域に対する核種分析結果の精度は、実施例1でのその分析結果よりも向上する。このため、蒸気系及び原子炉冷却水系での漏洩をより高い精度で検出することができる。また、本実施例は、N−13/N−16比等を用いた蒸気系での漏洩箇所の特定を実施例1よりも精度良く行うことができる。
【実施例4】
【0050】
本発明の他の実施例である実施例4の原子力施設のLDSを、図13を用いて説明する。本実施例のLDS20Cは、実施例2のGe検出器16Aを実施例3で述べたGe検出器16C,16Dに替えた構成を有し、他の構成は実施例2のLDS20Aと同じである。本実施例も、Ge検出器16C,16Dを備えているので、実施例3で生じる効果を得ることができる。
【実施例5】
【0051】
本発明の他の実施例である実施例5の原子力施設のLDSを、図14を用いて説明する。
本実施例のLDS20Dは、実施例1のLDS20の放射能測定部30A、30Bをそれぞれ放射能測定部30Eに替え、波高分析器34A,34Bをそれぞれマルチ波高分析器45に替えた構成を有し、他の構成はLDS20と同一である。図14では、測定チャンバーが省略されている。
【0052】
放射能測定部30Eは、Ge検出器16A、前置増幅器42、増幅器43,44を備えている。増幅器43,44は、Ge検出器16Aに接続された前置増幅器42に接続され、さらにマルチ波高分析器45に接続される。増幅器43,44は、それぞれ、低エネルギー領域及び高エネルギー領域に合った利得を有する増幅器である。Ge検出器16Aから出力されたγ線検出信号は、前置増幅器42で増幅された後、増幅器43,44にそれぞれ入力される。増幅器43,44でそれぞれ増幅されて出力された各γ線検出信号は、マルチ波高分析器45に入力されて同時に核種分析される。
【0053】
本実施例も、Ge検出器16C,16Dを備えた実施例3のLDS20Bで生じる効果を得ることができる。さらに、実施例3に比べてGe検出器が1個で済むので、LDS20BよりもLDSの構成を単純化することができる。
【実施例6】
【0054】
本発明の他の実施例である実施例6の原子力施設のLDSを、図15を用いて説明する。
本実施例のLDS20Eは、実施例5のLDS20Dの放射能測定部30Eを放射能測定部30Fに替えた構成を有し、他の構成はLDS20Dと同一である。図15では、測定チャンバーが省略されている。
【0055】
放射能測定部30Fは、Ge検出器16A、前置増幅器42、バイアス増幅器46、増幅器48を備えている。前置増幅器42はGe検出器16Aに接続される。バイアス増幅器46及び増幅器48は、それぞれ、前置増幅器42に接続され、さらにマルチ波高分析器45に接続される。増幅器48は、低エネルギー領域(0〜2MeV)用の利得増幅器である。バイアス増幅器46は高エネルギー領域(4〜8MeV)に合った利得を有する増幅器である。Ge検出器16Aから出力されたγ線検出信号は、前置増幅器42で増幅されてバイアス増幅器46及び増幅器48にそれぞれ入力される。バイアス増幅器46及び増幅器48でそれぞれ増幅されて出力された各γ線検出信号は、マルチ波高分析器45に入力されて同時に核種分析される。
【0056】
本実施例も、Ge検出器16C,16Dを備えた実施例3のLDS20Bで生じる効果を得ることができる。さらに、実施例3に比べてGe検出器が1個で済むので、LDS20BよりもLDSの構成を単純化することができる。本実施例は低エネルギー領域及び高エネルギー領域を同等のエネルギー解像度で核種分析を行うことができる。
【0057】
上記した各実施例のLDSは、沸騰水型原子力発電プラントだけでなく、他の原子力施設である加圧水型原子力発電プラント、再処理施設、高レベル廃棄物取り扱い施設等に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の原子力施設の漏洩監視システムの構成図である。
【図2】図1に示す各放射能測定部の詳細構成図である。
【図3】図1に示す波高分析器で行った核種分析の結果の一例を示す説明図である。
【図4】N−13及びN−16のそれぞれの減衰曲線を示す説明図である。
【図5】N−13/N−16比の経過時間に伴う減衰を示す説明図である。
【図6】主蒸気配管における枝管と計器用配管の接続状態を示す模式的な構成図である。
【図7】各コンポ−ネント設置場所とN−13/N−16比の関係を示すデ−タベ−ス情報の一例を示す説明図である。
【図8】図1に示すデータ処理装置で実行される処理手順のフロ−チャ−トである。
【図9】図1に示す表示装置に表示される画像情報の一例を示す説明図である。
【図10】本発明の他の実施例である実施例2の原子力施設の漏洩監視システムにおける放射能測定部の構成図である。
【図11】核種分析の一例を示し、(A)は低エネルギー領域での核種分析の例を示す説明図、(B)は高エネルギー領域での核種分析の例を示す説明図である。
【図12】本発明の他の実施例である実施例3の原子力施設の漏洩監視システムにおける放射能測定部の構成図である。
【図13】本発明の他の実施例である実施例4の原子力施設の漏洩監視システムにおける放射能測定部の構成図である。
【図14】本発明の他の実施例である実施例5の原子力施設の漏洩監視システムにおける放射能測定部の構成図である。
【図15】本発明の他の実施例である実施例6の原子力施設の漏洩監視システムにおける放射能測定部の構成図である。
【符号の説明】
【0059】
1…原子炉格納容器、2…タ−ビン建屋、3…炉心、4…原子炉圧力容器、5…再循環配管、7…タ−ビン、8…復水器、9…給水ポンプ、10…主蒸気配管、11…給水配管、13,13a,13b,13c,13d,13e,21a,21b,21c,21d,21e…サンプリング口、14A,14B…セレクターバルブ、15A,15B…ロ−ル状フィルタ−、16A,16B,16C,16D…Ge検出器、18…露点計、20,20A,20B,20C,20D,20E…漏洩監視システム、24A,24B,24C,24D…測定チェンバ−、25,26…ロ−ル、27…帯状フィルタ、30A,30B,30C,30D,30E,30F…放射能測定部、34A,34B…波高分析器、35…記憶装置、36…デ−タ処理装置、37…操作盤、37A…演算装置、37B…表示装置、37C…制御装置、38…ドレン水量計、42…前置増幅器、43,44,48…増幅器、45…マルチ波高分析器、46…バイアス増幅器、49,52…サンプリング配管。
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力施設の漏洩監視システム及びその漏洩監視方法に係り、特に、沸騰水型原子力発電プラントの建屋に適用するのに好適な原子力施設の漏洩監視システム及びその漏洩監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現行原子力プランとの漏洩水監視システムとしては、原子炉格納容器内における漏洩水監視システム(Leak Detecting System、以下、LDSという)が用いられている。沸騰水型原子力発電プラントは、原子炉建屋内に設置された原子炉格納容器内に、炉心を内蔵する原子炉圧力容器(RPV)を設置している。この沸騰水型原子力発電プラントは、原子炉圧力容器に接続されて炉心に冷却水を供給する再循環系を有し、タ−ビン建屋内に、タ−ビン、復水器及び給水ポンプを設置している。再循環系は、再循環ポンプが設けられた再循環配管を有する。炉心で発生した蒸気は、主蒸気配管を介してタ−ビンに送られ、復水器で凝縮されて水に戻される。この水は給水ポンプで昇圧されて原子炉圧力容器内に戻される。
【0003】
従来のLDSでは、原子炉格納容器内に設けられた複数のサンプリング口から原子炉格納容器内のガスをブロアの駆動によって捕集し、原子炉格納容器外の放射能測定部でその捕集ガスの放射能を計測する。この放射能の計測は、複数のサンプリング口からの捕集ガスをロ−ル状フィルタに導いて捕集ガスに含まれたダストをそのフィルタで捕集する。補足されたダストに含まれる固体状の放射性物質及び補修ガスに含まれる放射性ガスの放射能量がシンチレーション検出器で計測される。このようにして原子炉格納容器内の放射能量が連続的に計測され、原子炉格納容器内での漏洩水の有無が監視される。
【0004】
沸騰水型原子力発電プラントのタ−ビン建屋内の漏洩監視は、タービン建屋内の複数の各部屋にガスサンプリング口を設け、これらのサンプリング口から順次選択的にガスを採集し、採集したガスの放射能量を計測することによって行われる。
【0005】
沸騰水型原子力発電プラント等の原子力施設では、配管等にき裂が生じて設定量以上の冷却水が気体及び液体の少なくとも一方の状態で漏洩した場合には、プラントの安全を確保するために原子炉の運転を停止する。さらに、原子炉の運転停止後、漏洩箇所の特定及び必要な対策を講ずる必要がある。漏洩箇所の特定する方法として、漏洩が原子炉の冷却水系及び蒸気系のどちらで生じているかを判定する方法が既に提案されている。
【0006】
その判定方法は、特開昭59−150388号公報、特開平2−159599号公報及び特開平5−249278号公報に記載されている。特開昭59−150388号公報は、沸騰水型原子力発電プラントにおいて、原子炉格納容器内の雰囲気中の水素ガス濃度及び放射性核種の放射能濃度、及び原子炉格納容器内の漏洩水中の放射能濃度を測定し、これらの測定値を用いて漏洩箇所が蒸気系にあるか炉水系あるかを判定している。放射性核種の放射能濃度として、I−131及びNa−24の放射能濃度を測定している。特開平2−159599号公報は、沸騰水型原子力発電プラントの原子炉格納容器内で漏洩が発生したとき、蒸気系か炉水系かを判定している。この判定は、原子炉格納容器内の雰囲気中における放射性核種の濃度及び組成を測定し、この測定結果を炉水及び主蒸気にそれぞれ含まれる放射性核種の濃度比とを比較して行われる。放射性核種の濃度比として、N−13/F−18濃度比またはI−131/I−133濃度比を用いている。特開平5−249278号公報に記載された漏洩監視方法は、原子炉格納容器内の雰囲気中の水素濃度を測定し、原子炉格納容器内除湿系からの凝縮水ドレン発生量または原子炉格納容器内サンプの排水量に対する計測された水素濃度の比率に基づいて、漏洩箇所が蒸気系であるか炉水系であるかを判定している。
【0007】
【特許文献1】特開昭59−150388号公報
【特許文献2】特開平2−159599号公報
【特許文献3】特開平5−249278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の特開昭59−150388号公報、特開平2−159599号公報及び特開平5−249278号公報に記載されたそれぞれ原子力施設の漏洩監視方法は、以下に示す課題を有する。特開昭59−150388号公報は、漏洩箇所が蒸気系であるか炉水系であるかの判定に放射性核種であるI−131及びNa−24の放射能濃度を用いている。しかしながら、I−131は、核分裂生成物であり、原子炉の炉心内に装荷されている燃料棒に破損が生じていなければ感度良く検出できない。また、Na−24は、復水器の伝熱管に海水リークが発生し、Naが炉心に流入することによって発生する。炉心内での燃料棒破損及び復水器の伝熱管での海水リークの発生確率は現在の原子炉では極めて小さく、それらの事故はほとんど発生し得ない。このため、I−131及びNa−24の放射能濃度に基づいて漏洩箇所を判定することは困難である。
【0009】
特開平2−159599号公報は、原子炉格納容器内に放出された放射性核種の放射能量の減衰曲線を第2図に示している。この第2図によれば、N−13の放射能量の減衰曲線は曲線aで表され、F−18の放射能量の減衰曲線は曲線bで表されている。また、漏洩箇所が炉水系である場合、サンプルの減衰曲線は曲線cとなり、漏洩箇所が蒸気系である場合、サンプルの減衰曲線は曲線cとなっている。これらのサンプルの減衰曲線は、曲線aと曲線bの合成曲線であり、N−13とF−18の濃度比に依存している。しかしながら、第2図から明らかであるように、N−13及びF−18による漏洩箇所の特定は、漏洩事故発生後、それらの放射能濃度を30分から1時間測定しないと判定することはできず、判定までの応答性が悪い。また、I−131及びI−133は、核分裂生成物のため、特開昭59−150388号公報と同様に、漏洩箇所の判定の指標として用いることは適切ではない。特開平5−249278号公報も、漏洩事故発生後、水素濃度を長時間にわたって測定する必要があり、判定までの応答性が悪い。
【0010】
以上のように、従来の漏洩監視システムには、漏洩が蒸気系か炉水系かの判定が困難であり、またはその判定に長時間を要し、漏洩水事故の伝播判断及び漏洩修復作業の着手を遅延させる課題があることが分かった。
【0011】
本発明の目的は、漏洩箇所を短時間により精度良く検出することができる原子力施設の漏洩監視システム及びその漏洩監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、蒸気系配管及び原子炉冷却水系配管を備える原子力施設内からサンプリングされたガスに含まれる放射性核種からの放射線を検出し、この検出で得られた放射線検出信号を用いて核種分析を行い、その核種分析で得られた核種分析情報に含まれた、放射性窒素及び放射性炭素の少なくとも一方の放射能量及び腐食生成物の放射能量に基づいて、漏洩箇所が蒸気系配管にあるか及び原子炉冷却水系配管にあるかを判定することにある。
【0013】
本発明は、核種分析で得られた、放射性窒素及び放射性炭素の少なくとも一方の放射能量及び腐食生成物の放射能量に基づいて漏洩箇所の位置を判定しているので、蒸気系配管及び原子炉冷却水系配管のいずれで漏洩が発生しているかを精度良く短時間に求めることができる。
【0014】
好ましくは、上記核種分析情報に含まれている、半減期が異なるN−13,N−16及びC−15のうちから選択された第1放射性核種の放射能量とそれらのうちから選択された第2放射性核種の放射能量の比に基づいて、蒸気系配管で生じている漏洩箇所の位置を特定することが望ましい。
【0015】
この蒸気系配管で生じている漏洩箇所の位置の特定は、以下に述べる発明者らが見出した新たな知見に基づいて成されたのである。発明者らは、種々の検討を行った結果、N−16の放射能量に対するN−13の放射能量の比、すなわち(N−13の放射能量)/(N−16の放射能量)(以下、N−13/N−16比という)を参照すれば、蒸気系における漏洩箇所を精度良く推定できるという新たな知見を見出した。この新たな知見を具体的に説明する。
【0016】
原子炉冷却水系の冷却水に含まれる放射性核種のγ線エネルギーは、Mn−54が834KeVで、Co−60が1.25MeVである。蒸気系の蒸気に含まれる放射性核種のエネルギーは、N−13が511keVであり、N−16が6.1MeVである。これらの放射性核種は、高エネルギーのγ線まで検出可能な半導体放射線検出器を用いることによって、核種分析が可能になる。また、N−13及びN−16の各半減期は、前者が10分、後者が7.1秒であり、大きく異なっている。原子炉内でのN−13/N−16比は、原子炉の定常運転状態では一定である。N−13/N−16比は、原子炉に接続される主蒸気配管経由で主蒸気配管に接続される各種の計装用配管の想定漏洩箇所(例えば、フランジ及び継ぎ手類)までの時間差によって、所定の割合で変化する。つまり、漏洩ガスの各主成分とこれらの主成分の放射能量を求めることによって、蒸気系における漏洩箇所の位置を精度良く推定することができる。
【0017】
N−13/N−16比の替りに、C−15の放射能量に対するN−16の放射能量の比、すなわち(N−16の放射能量)/(C−15の放射能量)(以下、N−16/C−15比という)またはC−15の放射能量に対するN−13の放射能量の比、すなわち(N−13の放射能量)/(C−15の放射能量)(以下、N−13/C−15比という)を用いても、蒸気系における漏洩箇所を精度良く推定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、蒸気系配管及び原子炉冷却水系配管のいずれで漏洩が発生しているかを精度良く短時間に求めることができる。このため、漏洩箇所を迅速に知ることができ、原子力発電プラントの保全監視及び修復作業の準備を早く行うことができる。原子力施設の安全性が著しく向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施例を、図面を用いて以下に説明する。
【実施例1】
【0020】
本発明の好適な一実施例である実施例1の原子力施設の漏洩監視システム(Leak Detecting System、以下、LDSという)を説明する前に、LDSが適用される原子力施設、例えば、沸騰水型原子力発電プラントの概要を、図1により説明する。沸騰水型原子力発電プラントは、原子炉建屋(図示せず)内に設置された原子炉格納容器1を有し、炉心3を内蔵する原子炉圧力容器(以下、RPVという)4が原子炉格納容器1内に設置される。再循環系が、RPV4に接続された再循環配管5、及び再循環配管6に取り付けられた再循環ポンプ6を有する。この再循環系も原子炉格納容器1内に設置される。沸騰水型原子力発電プラントは、タービン建屋2を有し、タービン建屋2内にタービン7及び復水器8を設置している。タービン7は主蒸気配管10によってRPV4に接続される。復水器8は給水配管11によってRPV4に接続される。給水ポンプ9が給水配管11に設けられる。
【0021】
再循環ポンプ6で昇圧された冷却水は、再循環配管5を通ってRPV4内に設置されたジェットポンプ(図示せず)に供給される。このジェットポンプから吐出された冷却水は、炉心3に供給され、炉心3内で加熱される。加熱された冷却水は一部が蒸気となる。この蒸気は、主蒸気配管10を通ってタービン7に供給され、タービン7を駆動する。タービン7に連結された発電機(図示せず)が回転し、電力が発生する。タービン7から排出された蒸気は、復水器7で冷却水配管53で供給される海水との熱交換により凝縮されて水となる。この水は、給水として、給水ポンプ9等により昇圧されて給水配管11によりRPV4に供給される。
【0022】
本実施例のLDS20を、図1及び図2を以下に用いて説明する。LDS20は、原子炉格納容器1内で所定の位置に配置された複数のサンプリング口13、タービン建屋2内に配置された複数のサンプリング口21a,21b,21c,21d,21e、……、放射能測定部30A,30B、波高分析器(核種分析装置)34A,34B、データ処理装置(漏洩箇所特定装置)36、記憶装置35、操作盤37及びブロア12を設置した管路23を備えている。原子炉格納容器1内の所定の位置にそれぞれ配置された複数のサンプリング口13、すなわち、サンプリング口13a,13b,13c,13d,13e、……(図2参照)を個々に有する各サンプリング配管49は、セレクターバルブ14Aを介して管路23に接続される。サンプリング口13a,13b,13c,13d,13e、……は、原子炉格納容器1内に位置する蒸気系(例えば、主蒸気配管10、及び主蒸気配管10に接続された枝管である圧力検出配管等の計装用配管)及び炉水系である原子炉冷却水系(例えば、再循環系、原子炉浄化系、残留熱除去系、給水配管、及びこれらの枝管である各計装用配管等)の近くにそれぞれ配置される。管路23は、大部分が原子炉格納容器1外に配置され、両端部が原子炉格納容器1内に配置されている。ブロア12が管路23に設けられる。放射能測定部30Aが、原子炉格納容器1の外部で管路23に設けられる。原子炉格納容器1内のドライウェルの底部にドレン水受け部17が形成されており、ドレン水量計38がドレン水受け部17に設置される。露点計18及び水素濃度計(図示せず)が、原子炉格納容器1内に設置される。タービン建屋2内の所定の位置(例えば、タービン建屋2内の各部屋)にそれぞれ配置されたサンプリング口21a,21b,21c,21d,21e、……を個々に有する各サンプリング配管52は、セレクターバルブ14Bを介して管路28に接続される。サンプリング口21a,21b,21c,21d,21e、……は、タービン建屋2内に位置する蒸気系(例えば、主蒸気配管10、及び主蒸気配管10に接続された枝管である圧力検出配管等の計装用配管)及び炉水系である原子炉冷却水系(例えば、給水配管、及びこれの枝管である各計装用配管等)の近くにそれぞれ配置される。管路28は、タービン建屋2内に配置され、大部分がタービン建屋2内の所定の部屋(例えばモニタ室等)に配置され、両端部がタービン建屋2内の各部屋に配置される。放射能測定部30Bが、タービン建屋2内の所定の部屋で管路28に設けられる。ブロア29が管路28に設けられる。放射能測定部30Bはタービン建屋2の外に配置することも可能である。
【0023】
放射能測定部30Aの詳細構造を、図2により説明する。放射能測定部30Aは、ロール状フィルタ(フィルタ装置)15A、半導体放射線検出器であるGe放射線検出器(以下、Ge検出器という)16A及び測定チャンバー24Aを有する。測定チャンバー24Aは管路23に取り付けられる。ロール状フィルタ15A及びGe検出器16Aは、測定チャンバー24Aに取り付けられている。Ge検出器16A及び後述のGe検出器16Bには、高エネルギーのγ線が容易に検出できる相対効率40%以上のGe検出器を用いる。増幅器33AがGe検出器16Aに接続される。ロール状フィルタ15Aは、回転体である一対のローラ25,26及び帯状フィルタ27を有する。帯状フィルタ27は、ローラ25,26にそれぞれ巻き付けられている。一方のローラ、例えば、ローラ26を所定時間間隔で断続的に回転させることにより、帯状フィルタ27は他方のローラ25からローラ26に巻き取られる。放射能測定部30Bも、放射能測定部30Aと同じ構成を有する。ただし、放射能測定部30Bに設けられたロール状フィルタ、Ge検出器、増幅器及び測定チャンバーは、ロール状フィルタ15B、Ge検出器16B、増幅器33B及び測定チャンバー24Bで表す。半導体放射線検出器としては、Ge検出器の替りにCdTe及びCZTを別々に用いた各半導体放射線検出器を用いてもよい。
【0024】
操作盤37は、演算装置37A、表示装置37B及び制御装置37Cを有する。表示装置37Bは演算装置37Aに接続される。制御装置37Cはセレクターバルブ14A,14Bに接続される。
【0025】
放射能測定部30Aの増幅器33Aは配線54により波高分析器34Aに接続される。放射能測定部30Bの増幅器33Bは配線38により波高分析器34Bに接続される。波高分析器34A,34Bはデータ処理装置36に接続される。記憶装置35がデータ処理装置36に接続される。データ処理装置36は演算装置37Aに接続されている。露点計18は配線47によって演算装置37Aに接続される。ドレン水量計38は配線39によって演算装置37Aに接続される。原子炉格納容器1内に設置された水素濃度計(図示せず)も演算装置37Aに接続される。
【0026】
発明者らが新たに見出した、前述のN−13/N−16比を用いた蒸気系における漏洩箇所の位置の推定の基本概念を、以下に、具体的に説明する。半導体放射線検出器(例えば、Ge検出器16A)から出力された放射線検出信号は、波高分析器に入力されて核種分析される。この核種分析によって得られた核種分析測定スペクトル(核種分析情報)の一例を、図3に示す。なお、測定対象核種の最大エネルギーがN−16の6.1MeVであるので、半導体放射線検出器は最大で8MeV程度の測定エネルギー範囲が必要となる。また、N−13は511KeV、Co−60は1.25MeVであるので、半導体放射線検出器は0KeV以上の測定エネルギー範囲が必要となる。
【0027】
図3に示すN−13(半減期:10分)及びN−16(半減期:7秒)の減衰曲線を図4に示す。原子力発電プラントの定常運転時にRPV4内に存在するN−13及びN−16の各放射能量は、核反応による生成及びRPV4から主蒸気配管10に排出される蒸気への移行損失によりバランスしており、ある値に保たれている。その定常運転時におけるRPV4内に存在するN−13及びN−16の各放射能量は、施設管理のル−チン分析作業で測定される。これらの放射能量は必要に応じて収集できる。N−13及びN−16のそれぞれの生成核反応は、O−16(p,2n)N−13、及びO−16(n,p)N−16である。N−13及びN−16がRPV4内で液相領域(炉水)から気相領域(炉心3で発生した蒸気)に移行したばかりの時点では、蒸気のN−13/N−16比はある値に保持される。しかしながら、放射能量比であるN−13/N−16比は、N−13及びN−16の蒸気への移行後の経過時間に応じて変化する(図4参照)。この比は両放射性核種の半減期のみに依存する。半減期の短いN−16の放射能量の減衰度合いは、N−13のそれよりも著しく大きい。
【0028】
発明者らは、N−13/N−16比の種々の値に対して、これらの値がN−13及びN−16の蒸気への移行後の経過時間に対応してどのように変化するかを検討した。図5は、その検討結果を示し、N−13及びN−16がRPV4内で液相領域から気相領域に移行したばかりの時点でのN−13/N−16比の値(Fで示す)をパラメータにして、その経過時間に対するN−13/N−16比の変化を示している。Fとしては1000,100,10及び1の4通りを用いた。初期値であるFの値が変わっても、その経過時間に対するN−13/N−16比の減少の傾きは同じである。発明者らは、図5に示す結果に基づけば、N−13及びN−16が、RPV4から蒸気漏洩の可能性のある場所(例えば、機器及び部品等の設置場所)までに到達するのに要する時間(到達時間)が分かれば、蒸気漏洩の可能性のある場所でのN−13/N−16比が分かるという新たな知見を見出した。到達時間は、上記経過時間に該当する。この知見によれば、逆に到達時間が分かれば、核種分析で得たN−13及びN−16の各放射能量を用いて算出したN−13/N−16比を用いて蒸気系における漏洩箇所の位置を推定することができる。
【0029】
炉心において放射性核種であるC−15がO−16の核反応によって生成される。このC−15も、N−13及びN−16と同様に、蒸気系における漏洩箇所の位置の推定に用いることができる。核種分析で得られたC−15の放射能量を用いて求めたN−16/C−15比またはN−13/C−15比も、傾きは異なるが、図5に示すN−13/N−16比と同様な特性を得ることができる。このため、N−16/C−15比またはN−13/C−15比を用いても、蒸気系の漏洩箇所の位置を推定することができる。
【0030】
主蒸気配管10に接続された枝管50及びこの枝管50に接続された計装用配管51を図6に模式的に示した。計装用配管51は例えば蒸気の圧力測定用の計装用配管である。PF−1は枝管50の接続用のフランジ、PT−1は計器用の継ぎ手、PT−2からPT−6は計器用配管51の配管継ぎ手を示している。PV−1は計器用配管51に設けられたバルブである。枝管50及び計装用配管51に設けられた各コンポ−ネント(フランジ、継ぎ手、バルブ等)の設置場所は設計図書より予め把握することが可能であり、枝管50及び計装用配管51の設計流量も予め把握することができる。N−13及びN−16の、炉心から各コンポ−ネントまでの到達時間も設計図書から把握することが可能である。これらの情報に基づいて、各コンポ−ネントまでのN−13及びN−16の到達時間とN−13/N−16比を把握することができる。
【0031】
上記した設計図書等の情報に基づいて各コンポ−ネント設置場所(漏洩が生じる可能性のある場所)及びN−13/N−16比の情報を関係付けたデ−タベ−スを作成した。このデータベース情報の一例を図7に示す。図7には到達時間が示されているが、作成したデータベース情報は、到達時間を含んでいない。このデータベース情報は、記憶装置35に予め記憶されている。N−16/C−15比またはN−13/C−15比、各コンポ−ネント設置場所及び到達時間を用いて、N−13/N−16比と同様なデータベース情報を作成し、記憶装置35に記憶させてもよい。
【0032】
LDS20を用いた漏洩監視について具体的に説明する。操作盤37に設けられた制御装置37Cは、セレクターバルブ14Aを制御してサンプリング口13a,13b,13c,13d,13e、……を管路23に順次接続する。ブロア12が駆動されているので、原子炉格納容器1内の所定位置でそれぞれ各サンプリング口からサンプリングされたガスが、該当するサンプリング管49を経て、順次、管路23に供給される。このガスは、管路23を通って測定チャンバー24A内に導かれる。Ge検出器16Aは、測定チャンバー24A内に到達したガスに含まれた放射性核種(例えば、N−13,N−16,C−15,Mn−54,Co−60)から放出されるγ線を検出する。Ge検出器16Aはγ線検出信号を出力し、このγ線検出信号は増幅器33Aによって増幅される。原子炉格納容器1内でRPV4に接続された蒸気系(例えば、主蒸気配管10、及び主蒸気配管10に接続された枝管である圧力検出配管等の計装用配管)及び炉水系である原子炉冷却水系(例えば、再循環系、原子炉浄化系、残留熱除去系、給水配管、及びこれらの枝管である各計装用配管等)から蒸気または冷却水の漏洩が生じていない場合には、Ge検出器16Aは0Vのγ線検出信号を出力する。もし、原子炉格納容器1内で主蒸気配管10に発生したき裂が貫通して、主蒸気配管10から原子炉格納容器1内に蒸気が漏洩したとする。このとき、測定チャンバー24A内に導かれるガスは、放射性核種(例えば、N−13,N−16,C−15)を含んでいる。Ge検出器16Aは、この放射性核種等から放出されるγ線を検出する。もし、RPV4に接続される原子炉浄化系の配管に発生したき裂が貫通して、原子炉浄化系の配管から原子炉格納容器1内に冷却水が蒸気化して漏洩したとする。このとき、測定チャンバー24A内に導かれるガスは固体状の放射性核種(例えば、Mn−54,Co−60)を含んでおり、Ge検出器16Aは固体状の放射性核種等から放出されるγ線を検出する。固体状の放射性核種(例えば、Mn−54,Co−60)は、ガスが測定チャンバー24A内で帯状フィルタ27を通過する際に、その帯状フィルタ27で捕捉される。Ge検出器16Aは帯状フィルタ27に捕捉された固体状の放射性核種からのγ線を検出する。帯状フィルタ27は測定チャンバー24A内を前述のように断続的に移動される。
【0033】
増幅器33Aから出力されたγ線検出信号は、波高分析器34Aに伝えられる。波高分析器34Aは、入力したγ線検出信号に基づいてオンラインの核種分析を行う。核種分析で得られた情報(図3参照)がデータ処理装置36に入力される。増幅器33Aは入力したγ線検出信号に基づいた単位時間当たりの総カウント値(以下、放射能測定値という)の情報もデータ処理装置36に出力する。データ処理装置36は、入力した核種分析情報、及び予め作成されて記憶装置35に記憶されている前述のデータベースの情報を用い、図8に示す処理手順に従って、処理を実行する。
【0034】
まず、入力した核種分析情報を用い、放射性核種ごとに放射能量が増加しているかを判定する(ステップ61)。放射能量が増加している放射性核種がある場合には、ステップ61の判定は「Yes」となる。その核種が存在しない場合には、「No」の判定となる。「Yes」の場合には、放射能量が基準値を超えているかを判定する(ステップ62)。ステップ62の判定は、該当する放射性核種の放射能量が基準値を超えている場合には「Yes」、基準値を超えていない場合には「No」となる。ステップ61または62の判定が「No」である場合には、「漏洩なし」のメッセージ情報を作成し(ステップ67)、ステップ61の処理が実行される。ステップ67では、例えば、「原子炉冷却水系及び蒸気系では漏洩なし」のメッセージ情報が作成される。ステップ62の判定が「Yes」である場合、放射能量が基準値を超えている放射性核種が、一次冷却水(炉水)に含まれる主成分(CP)か、ガス成分かを判定する(ステップ63)。一次冷却水に含まれる放射性核種(Co−60等)の放射能量が基準値を超えている場合には、一次冷却水の漏洩であると判定する(ステップ65)。この場合には、「原子炉冷却系で漏洩発生」というメッセージ情報を作成する。また、ステップ63で、ガス成分の放射性核種が基準値を超えている場合には、蒸気の漏洩であると判定すると共に、蒸気系での漏洩箇所の位置を推定する(ステップ64)。ステップ64では、核種分析情報に基づいてN−13/N−16比を算出する。得られたN−13/N−16比を用いて、記憶装置35に記憶されているデータベースの情報(例えば、図7参照)から該当する漏洩箇所の位置(例えば、PF−1,PT−2等のコンポーネント)を推定する。蒸気系において推定された漏洩箇所の位置を示す情報を作成する(ステップ66)。ステップ66では、例えば、「蒸気系のPT−2で漏洩発生」という蒸気系の漏洩に係るメッセージ情報を作成する。スッテプ64においてN−13/N−16比の替りにN−16/C−15比またはN−13/C−15比を用いても、蒸気系での漏洩箇所の位置を推定することができる。
【0035】
データ処理装置36は、図8の処理手順で作成した情報、及び波高分析器33Aから入力した核種分析情報及び放射能測定値等の情報を操作盤37の演算装置37Aに出力する。露点計18、ドレン水量計38及び水素濃度計の各計測値も、演算装置37Aに入力される。
【0036】
原子炉格納容器1内で漏洩が生じたとき、配管等からの漏洩水は、ドレン水受け部17に流入する。主蒸気配管10等の配管から漏洩した蒸気も、原子炉格納容器1のドライウェル内で凝縮して水になった場合にはドレン受け部17に集められる。ドレン受け部17に設けられたドレン水量計38によってドレン水量が測定される。ドレン水量、すなわち漏洩水量が例えば1G/min(3.8L/min)以上になった場合には、スクラムによって原子炉が停止される。しかし、ドレン水量の計測だけでは、漏洩水が放射性であるか非放射性であるかの判定を行うことができない。原子炉格納容器1内に設置された水素濃度計及び露点計18も、原子炉格納容器1内への一次冷却水(炉水)及び蒸気の漏洩監視の補助デ−タを得るものである。
【0037】
演算装置37Aは、「原子炉冷却水系及び蒸気系では漏洩なし」のメッセージ情報を入力した状態で、露点計18及びドレン水量計38の計測値が上昇する場合には、蒸気系及び原子炉冷却水系以外の補機冷却水系(例えば、原子炉浄化系の熱交換器に冷却水を供給する系統)において漏洩が発生していると判定する。演算装置37Aは、この判定情報(「補機冷却系で漏洩発生」というメッセージ情報)と共に、露点計18及びドレン水量計38の計測値を含む画像情報を作成し、この画像情報を表示装置37Bに出力する。この画像情報は表示装置37Bに表示される。その画像情報は核種分析情報も含んでいる。演算装置37Aは、「原子炉冷却系で漏洩発生」、「蒸気系で漏洩発生」または「補機冷却系で漏洩発生」のメッセージ情報を表示装置37Bに出力する際には、運転員に警報を発するためにブザー(図示せず)を鳴らす。
【0038】
原子炉格納容器1内の蒸気系で漏洩が発生したときに、表示装置37Bに表示される情報の一例を、図9に示す。露点温度測定値、放射能測定値、放射性窒素成分(N−13,N−16)の核種分析値、腐食性生物成分(Mn−54,Co−60)の核種分析値、ドレン水量の測定値及び水素濃度の測定値(図示せず)がそれぞれ表示されている。図9に示す表示情報は、演算装置37Aで作成される。N−13及びN−16の核種分析値が上昇し、Mn−54及びCo−60の核種分析値がほとんど変化しないので、この表示情報は蒸気系で漏洩が生じていることを示している。表示装置には「蒸気系で漏洩発生」のメッセージ情報も併せて表示される。運転員は、表示装置に表示されたそれらの情報を見ることによって、蒸気系で漏洩が生じていることを知ることができる。
【0039】
一般的に、RPV4から復水器までの蒸気の到達に要する時間は1分程度である。RPV4内のN−13/N−16比の値にもよるが、漏洩発生後、速やかに核種分析及びデータ処理装置36での解析を行って漏洩のメッセージ情報を表示することができる。波高分析器34Aで得られた各情報を記憶装置35に記憶させることによって、データ処理装置36での処理を円滑に行うことができる。
【0040】
原子炉格納容器1内で漏洩監視について説明したが、LDS20を用いたタービン建屋2内の漏洩監視について説明する。制御装置36cはセレクターバルブ14Bの切り替え操作を順次行う。ブロア29の駆動により、サンプリング口21a,21b,21c,21d,21e、……から該当するサンプリング配管52を経て順次サンプリングされたガスは、管路28を通して測定チャンバー24Bに送られ、Ge検出器16Bによってγ線が検出される。Ge検出器16Bから出力されたγ線検出信号は、増幅器33Bで増幅され、波高分析器34Bに入力される。波高分析器34Bは、波高分析器34Aと同様な処理を行い、得られた情報をデータ処理装置36に出力する。データ処理装置36は、図8に示す処理を前述したように実行し、タービン建屋2内での蒸気系(例えば、主蒸気配管10、及び主蒸気配管10に接続された計装用配管)の漏洩のメッセージ情報、または原子炉冷却水系(例えば、給水配管11及び給水配管11に接続された計装用配管)の漏洩のメッセージ情報を作成する。これらのメッセージ情報は表示装置37bに表示される。給水配管11内を流れる給水には極微量のMn−54、Co−60を含んでいる。これらは、主蒸気配管11に排出される蒸気中に含まれており、復水器8での蒸気の凝縮により、タービンからの給水加熱器(図示せず)に抽気された蒸気の凝縮水の復水器8への導入により、給水に入り込む。このため、原子炉格納容器1内での漏洩と同様な処理がデータ処理装置36で行うことができる。N−13/N−16比を用いた、蒸気系における漏洩箇所の位置の推定も同様に行われる。
【0041】
本実施例は、γ線検出信号の核種分析で得られた、核反応で生成された放射性窒素(例えば、N−13,N−16)または放射性炭素(例えば、C−15)の放射能量及びRPV4内で冷却水中に生成される腐食生成物(例えば、Mn−54,Co−58,Co−60)の放射能量を監視しているため、原子炉格納容器1(またはタービン建屋2)内の蒸気系及び原子炉冷却水系のいずれで漏洩が発生しているかを精度良く短時間に求めることができる。このため、運転員が漏洩発生箇所を迅速に知ることができ、遅滞なく原子力発電プラントの保全監視及び修復作業の準備を行うことができる。原子力発電プラントの安全性が著しく向上する。
【0042】
本実施例は、蒸気系で漏洩が発生した場合に、核種分析で得られた情報を基に求められた半減期が異なる2つの放射性核種の放射能量の比、例えば、N−13/N−16比(またはN−16/C−15比またはN−13/C−15比)を用いて漏洩箇所を推定しているので、蒸気系において漏洩箇所の位置をより精度良く特定することができる。このため、運転員は、速やかな事故伝播判断を行うことができ、修復作業の準備をより適切に行うことができる。記憶装置35がN−13/N−16比(またはN−16/C−15比またはN−13/C−15比)と漏洩箇所とを関連付けた情報を記憶しているので、N−13/N−16比等を用いた、蒸気系における漏洩箇所の特定を容易に行うことができる。
【0043】
「原子炉冷却系で漏洩発生」と判定された場合には、原子炉冷却系のどの系統、すなわち、再循環系、原子炉浄化系、残留熱除去系、給水配管及びこれらの1つに接続された各計装用配管のうちどの系統で漏洩が発生しているかを運転員は把握する必要がある。本実施例は、セレクターバルブ14A(またはセレクターバルブ14B)の切り替え操作によって、再循環系、原子炉浄化系、残留熱除去系、給水配管、及びこれらの枝管である各計装用配管等の近くにサンプリング口を、それぞれ、配置し、各サンプリング口からサンプリングしたガスを、順次、測定チャンバー24A(または測定チャンバー24B)に供給している。このため、Ge検出器16A(またはGe検出器16B)で検出した放射能量に基づいて、原子炉冷却水系のうちで漏洩が生じている系統(例えば、計装用配管)を特定することができる。すなわち、最も高い放射能量が検出されたガスをサンプリングしたサンプリング口の近くの系統が、漏洩を生じている。演算装置37Aは原子炉冷却水系の漏洩が生じている系統の系統名の情報を作成し、表示のために表示装置37Bに出力する。
【0044】
なお、原子炉冷却水系の漏洩は、Ge検出器でCo−58のγ線を測定することによっても検出することができる。また、原子炉冷却水系における漏洩箇所の特定は、半減期の異なる2つの腐食生成物(例えば、Mn−54,Co−60)を利用して図7と同様なデ−タベ−ス情報を作成することによって、蒸気系と同様に行うことができる。
【実施例2】
【0045】
本発明の他の実施例である実施例2の原子力施設のLDSを、図10を用いて説明する。本実施例のLDS20Aは、実施例1のLDS20の放射能測定部30A、30Bをそれぞれ放射能測定部30Cに替えた構成を有し、他の構成はLDS20と同じである。原子炉格納容器1用の放射能測定部30Cは管路23に設けられ、タービン建屋2用の放射能測定部30Cは管路28に設けられる。放射能測定部30Cは、Ge検出器16A、増幅器33A及び測定チャンバー24Cを有する。測定チャンバー24Cは管路23、28にそれぞれ設置される。増幅器33Aに接続されたGe検出器16Aは測定チャンバー24Cの近くに設置される。原子炉格納容器1用の放射能測定部30Cの増幅器33Aは波高分析器34Aに接続され、タービン建屋2用の放射能測定部30Cの増幅器33Aは波高分析器34Bに接続される。
【0046】
LDS20Aも、LDS20と同様に漏洩監視を行い、LDS20で生じる効果を得ることができる。
【実施例3】
【0047】
本発明の他の実施例である実施例3の原子力施設のLDSを、図12を用いて説明する。その前に、核種分析測定スペクトルの例を、図11を用いて説明する。γ線の低エネルギー領域から高エネルギー領域までをカバーできるGe検出器16Aから出力されたγ線検出信号を核種分析した結果の核種分析測定スペクトルの一例を、前述したように図3に示している。Ge検出器16Aは、0MeVから8MeVまでの広範囲のエネルギー領域のγ線を検出することができる。しかしながら、高エネルギーの測定範囲で低エネルギー領域のγ線を検出する場合、測定領域が縮小するため相対的に核種分析の精度が低下する。図11(A)は低エネルギー領域の核種分析測定スペクトルを示し、図11(B)は高エネルギー領域の核種分析測定スペクトルを示している。このように、高エネルギー領域のγ線及び低エネルギー領域のγ線を分けて検出することによって、それぞれの領域でより精度の高い核種分析測定スペクトルを得ることができる。
【0048】
図12に示す本実施例のLDS20Bは、実施例1のLDS20の放射能測定部30A,30Bをそれぞれ放射能測定部30Dに替えた構成を有し、他の構成はLDS20と同じである。放射能測定部30Dは、測定チャンバー24Dに2つのGe検出器16C,16Dを設けている。Ge検出器16Cは低エネルギー領域(0〜2 MeV)用の放射線検出器であり、Ge検出器16Dは高エネルギー領域(4〜8 MeV)用の放射線検出器である。高エネルギー領域用のGe検出器16Dは有感体積の大きいものを、低エネルギー領域用のGe検出器16Cは有感体積の小さいものを使用する。放射能測定部30Dは、放射能測定部30Aと同様に、ロール状フィルタ15Aを測定チャンバー24Dに備えている。原子炉格納容器1用の放射能測定部30Dでは、Ge検出器16Cが増幅器33Cを介して波高分析器34Aに、Ge検出器16Dが増幅器33Dを介して波高分析器34Aにそれぞれ接続される。タービン建屋2用の放射能測定部30Dでは、Ge検出器16Cが増幅器33Cを介して波高分析器34Bに、Ge検出器16Dが増幅器33Dを介して波高分析器34Bにそれぞれ接続される。
【0049】
本実施例は、Ge検出器16C,16Dを有する放射能測定部30Dを備えているので、低エネルギー領域及び高エネルギー領域のγ線をそれらの領域に適合するそれぞれのGe検出器で検出するので、低エネルギー領域及び高エネルギー領域に対する核種分析結果の精度は、実施例1でのその分析結果よりも向上する。このため、蒸気系及び原子炉冷却水系での漏洩をより高い精度で検出することができる。また、本実施例は、N−13/N−16比等を用いた蒸気系での漏洩箇所の特定を実施例1よりも精度良く行うことができる。
【実施例4】
【0050】
本発明の他の実施例である実施例4の原子力施設のLDSを、図13を用いて説明する。本実施例のLDS20Cは、実施例2のGe検出器16Aを実施例3で述べたGe検出器16C,16Dに替えた構成を有し、他の構成は実施例2のLDS20Aと同じである。本実施例も、Ge検出器16C,16Dを備えているので、実施例3で生じる効果を得ることができる。
【実施例5】
【0051】
本発明の他の実施例である実施例5の原子力施設のLDSを、図14を用いて説明する。
本実施例のLDS20Dは、実施例1のLDS20の放射能測定部30A、30Bをそれぞれ放射能測定部30Eに替え、波高分析器34A,34Bをそれぞれマルチ波高分析器45に替えた構成を有し、他の構成はLDS20と同一である。図14では、測定チャンバーが省略されている。
【0052】
放射能測定部30Eは、Ge検出器16A、前置増幅器42、増幅器43,44を備えている。増幅器43,44は、Ge検出器16Aに接続された前置増幅器42に接続され、さらにマルチ波高分析器45に接続される。増幅器43,44は、それぞれ、低エネルギー領域及び高エネルギー領域に合った利得を有する増幅器である。Ge検出器16Aから出力されたγ線検出信号は、前置増幅器42で増幅された後、増幅器43,44にそれぞれ入力される。増幅器43,44でそれぞれ増幅されて出力された各γ線検出信号は、マルチ波高分析器45に入力されて同時に核種分析される。
【0053】
本実施例も、Ge検出器16C,16Dを備えた実施例3のLDS20Bで生じる効果を得ることができる。さらに、実施例3に比べてGe検出器が1個で済むので、LDS20BよりもLDSの構成を単純化することができる。
【実施例6】
【0054】
本発明の他の実施例である実施例6の原子力施設のLDSを、図15を用いて説明する。
本実施例のLDS20Eは、実施例5のLDS20Dの放射能測定部30Eを放射能測定部30Fに替えた構成を有し、他の構成はLDS20Dと同一である。図15では、測定チャンバーが省略されている。
【0055】
放射能測定部30Fは、Ge検出器16A、前置増幅器42、バイアス増幅器46、増幅器48を備えている。前置増幅器42はGe検出器16Aに接続される。バイアス増幅器46及び増幅器48は、それぞれ、前置増幅器42に接続され、さらにマルチ波高分析器45に接続される。増幅器48は、低エネルギー領域(0〜2MeV)用の利得増幅器である。バイアス増幅器46は高エネルギー領域(4〜8MeV)に合った利得を有する増幅器である。Ge検出器16Aから出力されたγ線検出信号は、前置増幅器42で増幅されてバイアス増幅器46及び増幅器48にそれぞれ入力される。バイアス増幅器46及び増幅器48でそれぞれ増幅されて出力された各γ線検出信号は、マルチ波高分析器45に入力されて同時に核種分析される。
【0056】
本実施例も、Ge検出器16C,16Dを備えた実施例3のLDS20Bで生じる効果を得ることができる。さらに、実施例3に比べてGe検出器が1個で済むので、LDS20BよりもLDSの構成を単純化することができる。本実施例は低エネルギー領域及び高エネルギー領域を同等のエネルギー解像度で核種分析を行うことができる。
【0057】
上記した各実施例のLDSは、沸騰水型原子力発電プラントだけでなく、他の原子力施設である加圧水型原子力発電プラント、再処理施設、高レベル廃棄物取り扱い施設等に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の原子力施設の漏洩監視システムの構成図である。
【図2】図1に示す各放射能測定部の詳細構成図である。
【図3】図1に示す波高分析器で行った核種分析の結果の一例を示す説明図である。
【図4】N−13及びN−16のそれぞれの減衰曲線を示す説明図である。
【図5】N−13/N−16比の経過時間に伴う減衰を示す説明図である。
【図6】主蒸気配管における枝管と計器用配管の接続状態を示す模式的な構成図である。
【図7】各コンポ−ネント設置場所とN−13/N−16比の関係を示すデ−タベ−ス情報の一例を示す説明図である。
【図8】図1に示すデータ処理装置で実行される処理手順のフロ−チャ−トである。
【図9】図1に示す表示装置に表示される画像情報の一例を示す説明図である。
【図10】本発明の他の実施例である実施例2の原子力施設の漏洩監視システムにおける放射能測定部の構成図である。
【図11】核種分析の一例を示し、(A)は低エネルギー領域での核種分析の例を示す説明図、(B)は高エネルギー領域での核種分析の例を示す説明図である。
【図12】本発明の他の実施例である実施例3の原子力施設の漏洩監視システムにおける放射能測定部の構成図である。
【図13】本発明の他の実施例である実施例4の原子力施設の漏洩監視システムにおける放射能測定部の構成図である。
【図14】本発明の他の実施例である実施例5の原子力施設の漏洩監視システムにおける放射能測定部の構成図である。
【図15】本発明の他の実施例である実施例6の原子力施設の漏洩監視システムにおける放射能測定部の構成図である。
【符号の説明】
【0059】
1…原子炉格納容器、2…タ−ビン建屋、3…炉心、4…原子炉圧力容器、5…再循環配管、7…タ−ビン、8…復水器、9…給水ポンプ、10…主蒸気配管、11…給水配管、13,13a,13b,13c,13d,13e,21a,21b,21c,21d,21e…サンプリング口、14A,14B…セレクターバルブ、15A,15B…ロ−ル状フィルタ−、16A,16B,16C,16D…Ge検出器、18…露点計、20,20A,20B,20C,20D,20E…漏洩監視システム、24A,24B,24C,24D…測定チェンバ−、25,26…ロ−ル、27…帯状フィルタ、30A,30B,30C,30D,30E,30F…放射能測定部、34A,34B…波高分析器、35…記憶装置、36…デ−タ処理装置、37…操作盤、37A…演算装置、37B…表示装置、37C…制御装置、38…ドレン水量計、42…前置増幅器、43,44,48…増幅器、45…マルチ波高分析器、46…バイアス増幅器、49,52…サンプリング配管。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気系配管及び原子炉冷却水系配管を備える原子力施設内で複数箇所に配置されたサンプリング口をそれぞれ有する複数のサンプリング配管によって導かれるガスに含まれる放射性核種からの放射線を検出する半導体放射線検出器と、前記半導体放射線検出器から出力される放射線検出信号を用いて核種分析を行う核種分析装置と、前記核種分析装置からの核種分析情報を入力し、この核種分析情報に含まれた、放射性窒素及び放射性炭素の少なくとも一方の放射能量及び腐食生成物の放射能量に基づいて、漏洩箇所が前記蒸気系配管にあるか及び前記原子炉冷却水系配管にあるかを判定する漏洩箇所特定装置とを備えたことを特徴とする原子力施設の漏洩監視システム。
【請求項2】
蒸気系配管及び原子炉冷却水系配管を備える原子力施設内で複数箇所に配置されたサンプリング口をそれぞれ有する複数のサンプリング配管と、それぞれの前記サンプリング配管によって導かれるガスに含まれる放射性核種からの放射線を検出する半導体放射線検出器と、前記半導体放射線検出器から出力される放射線検出信号を用いて核種分析を行う核種分析装置と、前記核種分析装置からの核種分析情報を入力し、この核種分析情報に含まれた、放射性窒素及び放射性炭素の少なくとも一方の放射能量及び腐食生成物の放射能量に基づいて、漏洩箇所が前記蒸気系配管にあるか及び前記原子炉冷却水系配管にあるかを判定する漏洩箇所特定装置とを備えたことを特徴とする原子力施設の漏洩監視システム。
【請求項3】
前記複数のサンプリング配管が、前記蒸気系配管及び前記原子炉冷却水系配管を内部に有する、前記原子力施設の原子炉格納容器内に配置されている請求項2記載の原子力施設の漏洩監視システム。
【請求項4】
前記複数のサンプリング配管が、前記蒸気系配管及び前記原子炉冷却水系配管を内部に有する、前記原子力施設のタービン建屋内に配置されている請求項2記載の原子力施設の漏洩監視システム。
【請求項5】
前記漏洩箇所特定装置は、前記核種分析情報に含まれている、半減期が異なるN−13,N−16及びC−15のうちから選択された第1放射性核種の放射能量とそれらのうちから選択された第2放射性核種の放射能量の比に基づいて、前記蒸気系配管での前記漏洩箇所の位置を特定する請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の原子力施設の漏洩監視システム。
【請求項6】
第1放射性核種の放射能量と第2放射性核種の放射能量の比が、N−16の放射能量に対するN−13の放射能量の比、N−16の放射能量に対するC−15の放射能量の比及びN−13の放射能量に対するC−15の放射能量の比のうちから選択された1つである請求項5に記載の原子力施設の漏洩監視システム。
【請求項7】
前記半導体放射線検出器として、第1エネルギー領域の放射線を検出する第1半導体放射線検出器、及び前記第1エネルギー領域よりも高いエネルギーの第2エネルギー領域の放射線を検出する第2半導体放射線検出器を用いている請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の原子力施設の漏洩監視システム。
【請求項8】
前記半導体放射線検出器から出力された放射線検出信号を入力し、第1エネルギー領域の前記放射線検出信号を増幅する第1増幅装置と、前記半導体放射線検出器から出力された放射線検出信号を入力し、第1エネルギー領域よりも高いエネルギーの第2エネルギー領域の前記放射線検出信号を増幅する第2増幅装置とを備え、
前記核種分析装置が、前記第1増幅装置及び前記第2増幅装置のそれぞれの出力信号を入力して核種分析を行う請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の原子力施設の漏洩監視システム。
【請求項9】
前記半導体放射線検出器が設けられて前記ガスが導入される測定チャンバーと、前記複数のサンプリング配管と前記測定チャンバーとの接続を切り替えるセレクターバルブとを備えた請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の原子力施設の漏洩監視システム。
【請求項10】
前記放射性核種を捕捉するフィルタ装置が前記測定チャンバーに設けられている請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の原子力施設の漏洩監視システム。
【請求項11】
前記漏洩箇所特定装置で特定された前記漏洩箇所の位置情報を表示する表示装置を備えた請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の原子力施設の漏洩監視システム。
【請求項12】
前記原子力施設内に設置される水素濃度計、露点計及びドレン水量計と、これらの計測装置で計測された各計測情報、及び前記核種分析情報を含む画像情報を作成する画像情報作成装置と、この画像情報を表示する表示装置とを備えた請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の原子力施設の漏洩監視システム。
【請求項13】
蒸気系配管及び原子炉冷却水系配管を備える原子力施設内からサンプリングされたガスに含まれる放射性核種からの放射線を検出し、この検出で得られた放射線検出信号を用いて核種分析を行い、前記核種分析で得られた核種分析情報に含まれた、放射性窒素及び放射性炭素の少なくとも一方の放射能量及び腐食生成物の放射能量に基づいて、漏洩箇所が前記蒸気系配管にあるか及び前記原子炉冷却水系配管にあるかを判定することを特徴とする原子力施設の漏洩監視方法。
【請求項14】
サンプリングされた前記ガスが前記原子力施設の原子炉格納容器内でサンプリングされたガスである請求項13に記載の原子力施設の漏洩監視方法。
【請求項15】
サンプリングされた前記ガスが前記原子力施設のタービン建屋内でサンプリングされたガスである請求項13に記載の原子力施設の漏洩監視方法。
【請求項16】
前記核種分析情報に含まれている、半減期が異なるN−13,N−16及びC−15のうちから選択された第1放射性核種の放射能量とそれらのうちから選択された第2放射性核種の放射能量の比に基づいて、前記蒸気系配管で生じている前記漏洩箇所の位置を特定する請求項13ないし請求項15のいずれか1項に記載の原子力施設の漏洩監視方法。
【請求項17】
前記放射線の検出が半導体放射線検出器によって行われる請求項13ないし請求項16のいずれか1項に記載の原子力施設の漏洩監視方法。
【請求項1】
蒸気系配管及び原子炉冷却水系配管を備える原子力施設内で複数箇所に配置されたサンプリング口をそれぞれ有する複数のサンプリング配管によって導かれるガスに含まれる放射性核種からの放射線を検出する半導体放射線検出器と、前記半導体放射線検出器から出力される放射線検出信号を用いて核種分析を行う核種分析装置と、前記核種分析装置からの核種分析情報を入力し、この核種分析情報に含まれた、放射性窒素及び放射性炭素の少なくとも一方の放射能量及び腐食生成物の放射能量に基づいて、漏洩箇所が前記蒸気系配管にあるか及び前記原子炉冷却水系配管にあるかを判定する漏洩箇所特定装置とを備えたことを特徴とする原子力施設の漏洩監視システム。
【請求項2】
蒸気系配管及び原子炉冷却水系配管を備える原子力施設内で複数箇所に配置されたサンプリング口をそれぞれ有する複数のサンプリング配管と、それぞれの前記サンプリング配管によって導かれるガスに含まれる放射性核種からの放射線を検出する半導体放射線検出器と、前記半導体放射線検出器から出力される放射線検出信号を用いて核種分析を行う核種分析装置と、前記核種分析装置からの核種分析情報を入力し、この核種分析情報に含まれた、放射性窒素及び放射性炭素の少なくとも一方の放射能量及び腐食生成物の放射能量に基づいて、漏洩箇所が前記蒸気系配管にあるか及び前記原子炉冷却水系配管にあるかを判定する漏洩箇所特定装置とを備えたことを特徴とする原子力施設の漏洩監視システム。
【請求項3】
前記複数のサンプリング配管が、前記蒸気系配管及び前記原子炉冷却水系配管を内部に有する、前記原子力施設の原子炉格納容器内に配置されている請求項2記載の原子力施設の漏洩監視システム。
【請求項4】
前記複数のサンプリング配管が、前記蒸気系配管及び前記原子炉冷却水系配管を内部に有する、前記原子力施設のタービン建屋内に配置されている請求項2記載の原子力施設の漏洩監視システム。
【請求項5】
前記漏洩箇所特定装置は、前記核種分析情報に含まれている、半減期が異なるN−13,N−16及びC−15のうちから選択された第1放射性核種の放射能量とそれらのうちから選択された第2放射性核種の放射能量の比に基づいて、前記蒸気系配管での前記漏洩箇所の位置を特定する請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の原子力施設の漏洩監視システム。
【請求項6】
第1放射性核種の放射能量と第2放射性核種の放射能量の比が、N−16の放射能量に対するN−13の放射能量の比、N−16の放射能量に対するC−15の放射能量の比及びN−13の放射能量に対するC−15の放射能量の比のうちから選択された1つである請求項5に記載の原子力施設の漏洩監視システム。
【請求項7】
前記半導体放射線検出器として、第1エネルギー領域の放射線を検出する第1半導体放射線検出器、及び前記第1エネルギー領域よりも高いエネルギーの第2エネルギー領域の放射線を検出する第2半導体放射線検出器を用いている請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の原子力施設の漏洩監視システム。
【請求項8】
前記半導体放射線検出器から出力された放射線検出信号を入力し、第1エネルギー領域の前記放射線検出信号を増幅する第1増幅装置と、前記半導体放射線検出器から出力された放射線検出信号を入力し、第1エネルギー領域よりも高いエネルギーの第2エネルギー領域の前記放射線検出信号を増幅する第2増幅装置とを備え、
前記核種分析装置が、前記第1増幅装置及び前記第2増幅装置のそれぞれの出力信号を入力して核種分析を行う請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の原子力施設の漏洩監視システム。
【請求項9】
前記半導体放射線検出器が設けられて前記ガスが導入される測定チャンバーと、前記複数のサンプリング配管と前記測定チャンバーとの接続を切り替えるセレクターバルブとを備えた請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の原子力施設の漏洩監視システム。
【請求項10】
前記放射性核種を捕捉するフィルタ装置が前記測定チャンバーに設けられている請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の原子力施設の漏洩監視システム。
【請求項11】
前記漏洩箇所特定装置で特定された前記漏洩箇所の位置情報を表示する表示装置を備えた請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の原子力施設の漏洩監視システム。
【請求項12】
前記原子力施設内に設置される水素濃度計、露点計及びドレン水量計と、これらの計測装置で計測された各計測情報、及び前記核種分析情報を含む画像情報を作成する画像情報作成装置と、この画像情報を表示する表示装置とを備えた請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の原子力施設の漏洩監視システム。
【請求項13】
蒸気系配管及び原子炉冷却水系配管を備える原子力施設内からサンプリングされたガスに含まれる放射性核種からの放射線を検出し、この検出で得られた放射線検出信号を用いて核種分析を行い、前記核種分析で得られた核種分析情報に含まれた、放射性窒素及び放射性炭素の少なくとも一方の放射能量及び腐食生成物の放射能量に基づいて、漏洩箇所が前記蒸気系配管にあるか及び前記原子炉冷却水系配管にあるかを判定することを特徴とする原子力施設の漏洩監視方法。
【請求項14】
サンプリングされた前記ガスが前記原子力施設の原子炉格納容器内でサンプリングされたガスである請求項13に記載の原子力施設の漏洩監視方法。
【請求項15】
サンプリングされた前記ガスが前記原子力施設のタービン建屋内でサンプリングされたガスである請求項13に記載の原子力施設の漏洩監視方法。
【請求項16】
前記核種分析情報に含まれている、半減期が異なるN−13,N−16及びC−15のうちから選択された第1放射性核種の放射能量とそれらのうちから選択された第2放射性核種の放射能量の比に基づいて、前記蒸気系配管で生じている前記漏洩箇所の位置を特定する請求項13ないし請求項15のいずれか1項に記載の原子力施設の漏洩監視方法。
【請求項17】
前記放射線の検出が半導体放射線検出器によって行われる請求項13ないし請求項16のいずれか1項に記載の原子力施設の漏洩監視方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−96345(P2008−96345A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279955(P2006−279955)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]