説明

原料供給装置および蒸着装置

【課題】蒸着装置に用いる原料供給装置であって、蒸着装置の成膜速度の安定性が良好となる原料供給装置、および当該原料供給装置を有する蒸着装置を提供する。
【解決手段】蒸着装置の処理容器に、原料を蒸発あるいは昇華させて供給する原料供給装置であって、内部に前記原料を保持する原料容器と、前記原料容器の内部にキャリアガスを供給するガス導入口と、前記キャリアガスと共に蒸発あるいは昇華した前記原料を、前記処理容器に供給するために排出するガス排出口と、を有し、前記原料容器の内部に前記キャリアガスの流れを制御するガス流制御部を設けたことを特徴とする原料供給装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着装置および当該蒸着装置に用いる原料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば被処理基板の表面に薄膜などを形成する方法の一例としては、蒸着法がある。蒸着法とは、例えば蒸発あるいは昇華された蒸着原料を、被処理基板上に蒸着させることで薄膜を形成する方法である。
【0003】
例えば、蒸着法によって形成される薄膜としては、有機エレクトロミネッサンス(以下ELと表記する)素子に用いられる薄膜がある。有機EL素子を用いた表示装置は、小型化が容易であって、消費電力が小さく、面発光が可能であり、液晶ディスプレイと比較して印加電圧を大幅に低減できるため、フラットディスプレイ等の各種表示装置での利用が注目されている。
【0004】
例えば、有機EL素子は、陽極と陰極の間に発光層が形成された構造を有している。当該発光層は、電子と正孔との再結合により発光する層であり、発光層には、例えば、多環芳香族炭化水素、ヘテロ芳香族化合物、有機金属錯体化合物等の材料を用いることが可能であり、上記の材料は蒸着法により、形成することが可能である。また、必要に応じて陽極と発光層の間、または陰極と発光層の間に、例えば正孔輸送層、または電子輸送層など発光効率を良好とするための薄膜を形成することも可能であり、これらの層も蒸着法により、形成することが可能である。
【0005】
この場合、上記の薄膜の形成に用いる蒸着装置は、例えば内部を減圧状態に保持可能な処理容器と、当該処理容器内に設置された、蒸着原料を気化または蒸発あるいは昇華させる蒸着源とを備えた構造を有しており、蒸着源から気化または蒸発あるいは昇華された蒸着原料が被処理基板に蒸着されるように構成されている。
【特許文献1】特表2003−502494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、蒸着装置により薄膜を形成する場合、蒸着源より蒸発あるいは昇華する蒸着原料の量を制御することが困難であるという問題が生じていた。
【0007】
これは、蒸着源より蒸発あるいは昇華する、単位時間当たりの蒸着原料の量が、例えば、時間経過や、蒸着源に保持される蒸着原料の量、または蒸着源の温度の僅かな変化に応じて変化してしまうために生じると考えられる。このため、蒸着膜の成膜速度を安定させることが困難となり、成膜速度が変化して膜厚にばらつきが生じる場合があった。
【0008】
また、上記の特許文献1(特表2003−502494号公報)には、蒸着源の容器内にバッフル板(多孔板)を設置することで蒸着原料の蒸発あるいは昇華量を安定させる発明が記載されている。しかし、上記の構造では、蒸発あるいは昇華した原料を供給するためのキャリアガスを用いておらず、キャリアガスの流れが考慮されていない。そのため、上記のバッフル板を用いた場合には蒸着装置に供給される原料の量が少なく、成膜速度が著しく低下するため、現実的な構造ではない。
【0009】
そこで、本発明では上記の問題を解決した、新規で有用な蒸着装置を提供することを目的としている。
【0010】
本発明の具体的な課題は、蒸着装置に用いる原料供給装置であって、蒸着装置の成膜速度の安定性が良好となる原料供給装置、および当該原料供給装置を有する蒸着装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を、請求項1に記載したように、
蒸着装置の処理容器に、原料を蒸発あるいは昇華させて供給する原料供給装置であって、
内部に前記原料を保持する原料容器と、
前記原料容器の内部にキャリアガスを供給するガス導入口と、
前記キャリアガスと共に蒸発あるいは昇華した前記原料を、前記処理容器に供給するガス排出口と、を有し、
前記原料容器の内部に前記キャリアガスの流れを制御するガス流制御部を設けたことを特徴とする原料供給装置により、また、
請求項2に記載したように、
前記ガス流制御部は、前記原料容器の内部に形成された突起部を含むことを特徴とする請求項1記載の原料供給装置により、また、
請求項3に記載したように、
前記突起部が複数形成されていることを特徴とする請求項2記載の原料供給装置により、また、
請求項4に記載したように、
前記原料が、前記突起部と対向するように前記原料容器内に保持されるよう構成されていることを特徴とする請求項2または3記載の原料供給装置により、また、
請求項5に記載したように、
前記ガス導入口は前記原料容器の第1の側に、前記ガス排出口は前記原料容器の前記第1の側の反対側の第2の側に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のうち、いずれか1項記載の原料供給装置により、また、
請求項6に記載したように、
前記ガス流制御部は前記第1の側と前記第2の側の間に形成されていることを特徴とする請求項5記載の原料供給装置により、また、
請求項7に記載したように、
被処理基板を内部に保持する処理容器と、前記処理容器に原料を蒸発あるいは昇華させて供給する原料供給装置とを有し、前記被処理基板に蒸発あるいは昇華された前記原料を蒸着させる蒸着装置であって、
前記原料供給装置は、
内部に前記原料を保持する原料容器と、
前記原料容器の内部にキャリアガスを供給するガス導入口と、
前記キャリアガスと共に蒸発あるいは昇華した前記原料を、前記処理容器に供給するガス排出口と、を有し、
前記原料容器の内部に前記キャリアガスの流れを制御するガス流制御部を設けたことを特徴とする蒸着装置により、また、
請求項8に記載したように、
前記ガス流制御部は、前記原料容器の内部に形成された突起部を含むことを特徴とする請求項7記載の蒸着装置により、また、
請求項9に記載したように、
前記突起部が複数形成されていることを特徴とする請求項8記載の蒸着装置により、また、
請求項10に記載したように、
前記原料が、前記突起部と対向するように前記原料容器内に保持されるよう構成されていることを特徴とする請求項8または9記載の蒸着装置により、また、
請求項11に記さしたように、
前記ガス導入口は前記原料容器の第1の側に、前記ガス排出口は前記原料容器の前記第1の側の反対側の第2の側に形成されていることを特徴とする請求項7乃至10のうち、いずれか1項記載の蒸着装置により、また、
請求項12に記載したように、
前記ガス流制御部は前記第1の側と前記第2の側の間に形成されていることを特徴とする請求項11記載の蒸着装置により、また、
請求項13に記載したように、
前記原料供給装置が複数設置されていることを特徴とする請求項7乃至12のうち、いずれか1項記載の蒸着装置により、また、
請求項14に記載したように、
複数の前記原料供給装置から供給される、蒸発あるいは昇華した原料を混合する混合室を有することを特徴とする請求項13記載の蒸着装置により、また、
請求項15に記載したように、
前記混合室を複数有することを特徴とする請求項14記載の蒸着装置により、また、
請求項16に記載したように、
前記原料供給装置は前記処理容器の外側に設置され、当該原料供給装置が当該処理容器から装脱着可能に構成されていることを特徴とする請求項7乃至15のうち、いずれか1項記載の蒸着装置により、解決する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蒸着装置に用いる原料供給装置であって、蒸着装置の成膜速度の安定性が良好となる原料供給装置、および当該原料供給装置を有する蒸着装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態に関して図面に基づき、以下に説明する。
【実施例1】
【0014】
まず、実施例1による原料供給装置について説明する。当該原料供給装置は、原料を蒸発あるいは昇華させて蒸着装置(構成例は後述)の処理容器に供給する装置である。蒸着装置は、被処理基板を保持する処理容器を有しており、本実施例による原料供給装置は、当該処理容器に蒸発あるいは昇華した原料を供給する。
【0015】
図1は、本発明の実施例1による原料供給装置を模式的に示した断面図である。
【0016】
図1を参照するに、本実施例による原料供給装置100は、円筒容器101と蓋部102が組み合わせられることで、原料容器103が形成され、該原料容器103の内部に内部空間103Aが画成される構造となっている。前記内部空間103Aには、常温・常圧で固体(例えば粉末状)である、原料100Aが保持される。前記原料容器103の外側にはヒータ113が設置され、前記原料100Aは該ヒータ113により加熱されることで蒸発あるいは昇華する。
【0017】
前記円筒容器101は、一端が開口した略円筒形状を有しており、当該円筒形状の開口した側には、前記蓋部102を取り付けるためのフランジが形成されている。前記蓋部102は、前記円筒容器101の開口部を塞ぐように該円筒容器101に取り付けられ、該蓋部102と該円筒容器101の間には、シール材112が挿入され、前記内部空間103Aの気密性が保持される。
【0018】
また、前記蓋部102には、前記内部空間103Aに延伸する、ガス流制御部102Aが設置されているが、該ガス流制御部102Aの詳細については後述する。
【0019】
前記蓋部102には、キャリアガスを前記内部空間103Aに導入するための、ガス導入ライン110が接続されている。前記ガス導入ライン110から導入されたキャリアガスは、前記蓋部102に形成されたガス導入路107、および前記円筒容器101に形成されたガス導入路105を介して、前記円筒容器101の、前記蓋部102が取り付けられた側の反対側(前記原料容器103の第1の側)に形成された、ガス導入口104より、前記内部空間103Aに導入される。
【0020】
前記ガス導入口104より前記内部空間103Aに導入されたキャリアガスは、蒸発あるいは昇華された前記原料100A(以下気体原料)とともに、前記蓋部102(前記第1の側の反対側の第2の側)に形成されたガス排出口106より、排出される。
【0021】
前記内部空間103Aより排出されたキャリアガスと気体原料は、前記蓋部102に形成されたガス排出路108を介して、前記蓋部102に接続されたガス排出ライン111に排出される。前記ガス排出ライン111は、後述する蒸着装置の処理容器に接続され、該排出ライン111を介して当該処理容器にキャリアガスと共に気体原料が供給される構造になっている。
【0022】
本実施例による原料供給装置では、前記内部空間103に、キャリアガスの流れを制御する前記ガス流制御部102Aが形成されていることが特徴である。前記原料100Aは、前記ガス流制御部102Aと対向するように、前記原料容器103内に保持されている。この場合、キャリアガスは、前記ガス流制御部102Aと、前記原料100Aの間を流れることになる。
【0023】
前記ガス流制御部102Aは、前記内部空間103Aに供給されるキャリアガスの流れを制御し、例えばキャリアガスの流れのレイノルズ数を1000以上とすることで、キャリアガスの流れを乱流とすることができる。
【0024】
このため、前記原料100Aの蒸発あるいは昇華が促進され、前記内部空間103Aの前記排出口106近傍では、前記原料100Aの蒸発あるいは昇華が飽和した状態、いわゆる飽和蒸気圧とすることができる。
【0025】
例えば、飽和蒸気圧以下で気体原料を供給しようとする場合、様々な要因の僅かな変化に応じて蒸発あるいは昇華する量が大きく変動し、このために被処理基板に成膜される成膜速度が大きく変化してしまう問題が生じる場合がある。例えば、蒸着が進行して時間が経過した場合、様々な条件変化や、保持される原料の量の変化などに伴う現象を完全に抑制することは非常に困難であり、これらが成膜速度に与える影響は無視できない程度となる場合がある。
【0026】
一方、本実施例による原料供給装置では、飽和蒸気圧で気体原料が排出されるため、安定に気体原料を蒸着装置の処理容器に供給することが可能となっている。
【0027】
前記ガス流制御部102Aは、前記ガス導入口104から前記ガス排出口106(前記第1の側から第2の側)の方向に、延伸するように形成されている。すなわち、前記ガス流制御部102Aは、キャリアガスの流れに沿って延伸するように形成されている。このため、キャリアガスの流れを効率よく制御することができる。
【0028】
また、前記ガス流量制御部102Aは、前記第1の側から第2の側に延伸する平板状の支持部102aと、前記第1の側から第2の側にかけて該支持部102aに複数形成された突起部102bより構成されている。前記導入口104から導入されるキャリアガスは、前記突起部102bにより流れが制御され、レイノルズ数が増大されて乱流とされている。このため、前記ガス流制御部102Aは、キャリアガスの流れを制御するために十分な長さで形成されていることが好ましい。
【0029】
また、前記ガス排出路108には、粉末状の前記原料100Aが処理容器側に飛散することを防止するために、フィルタ109が形成されていることが好ましい。
【0030】
また、前記ガス導入ライン110と、前記ガス排出ライン111には、それぞれバルブ110A,111Aが設置されている。さらに、前記ガス導入ライン110と、前記ガス排出ライン111には、それぞれ、例えば配管継手などよりなる接続部110B,111Bが接続されている。このため、前記バルブ110A、111Aを閉じた状態で、前記接続部110B、111Bの配管継手をはずすことで、前記原料供給装置100を蒸着装置(処理容器)から取り外すことが容易な構造になっている。
【0031】
すなわち、前記原料供給装置100に原料を補充する場合や、前記原料供給装置100のメンテナンスを行う場合、蒸着装置より当該原料供給装置100を容易に装脱着することが可能に構成されている。
【実施例2】
【0032】
また、ガス流制御部の構造は、実施例1に示した構造に限定されるものではなく、様々に変形・変更することが可能である。
【0033】
例えば、図2は、本発明の実施例2による原料供給装置100Aを模式的に示す断面図である。ただし図中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。また、特に説明しない部分は、実施例1の構造と同様とする。
【0034】
図2を参照するに、本実施例の場合、突起部102cが実施例1の場合の突起部102bと比べて長く(大きく)、先端部が前記原料100Aにまで到達している。本実施例の場合、キャリアガスが前記原料100Aの内部を通るため、より飽和蒸気圧に到達しやすい特徴がある。
【実施例3】
【0035】
また、図3は、本発明の実施例3による原料供給装置100Aを模式的に示す断面図である。ただし図中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。また、特に説明しない部分は、実施例1の構造と同様とする。
【0036】
図2を参照するに、本実施例の場合、突起部102dの断面形状が実施例1の場合と異なっており、実施例1の場合は断面形状が四角形であったのに対して、本実施例の場合は三角形となっており、先端部が尖っている。このように、突起部の形状は、キャリアガスの流れの制御の条件(例えば流量)や、原料の違い(例えば蒸気圧の違い)に応じて様々に変形・変更しても良い。
【実施例4】
【0037】
次に、先に説明した原料供給装置100を用いた蒸着装置の構成の一例を、図4に基づき、説明する。図4は、本発明の実施例4による蒸着装置の構成の一例を模式的に示した図である。
【0038】
図4を参照するに、本実施例による蒸着装置200は、内部に内部空間201Aが画成される、処理容器201と、該処理容器201に接続される処理容器202とを有している。前記内部空間201Aには、被処理基板204を保持する保持台203が設置されている。前記保持台203は、ESC(静電吸着チャック)を有し、前記被処理基板は、その表面が、原料が供給される方向に向くようにして保持される。また、前記保持台203は、移動レール205に対して移動可能に接続され、前記被処理基板204に対して平行な方向に移動することが可能に構成されている。
【0039】
また、前記処理容器201に、前記被処理基板204が搬入される場合は、当該処理容器201に設置されたゲートバルブ211が開放されて、例えば真空搬送室(図示せず)に設置された搬送ロボット300により、搬入される。搬入された被処理基板は、アライメント装置207によってアライメントが行われた後、前記保持台203に保持される。
【0040】
また、前記内部空間201Aは、前記処理容器201に接続された、例えばターボ分子ポンプよりなる排気手段208により排気され、減圧状態とされる。前記排気手段208には排気ライン208Aが接続され、該排気ライン208Aは、例えばドライポンプなどの排気手段(図示を省略)に接続されている。
【0041】
また、前記処理容器201の底面の開口部には、前記保持台203と対向するように、前記内部空間201Aに気体原料を供給する、原料供給部209が設置されている。前記被処理基板204に成膜(蒸着)を行う場合には、前記原料供給部209から供給される気体原料が被処理基板に到達することにより、行われる。
【0042】
また、前記処理容器202は、前記処理容器201の底面の外側に露出した、前記排気手段208、前記原料供給部209、および前記アライメント装置を覆うようにして当該処理容器201の底面側に接続されている。
【0043】
前記原料供給部209は、複数の気体原料が混合される混合室を複数有している。例えば、前記原料供給部209は、原料混合室209A、209B、209C、および209Dが、前記被処理基板204の移動方向に沿って平行に配列された構造を有している。前記原料混合室209A、209B、209C、および209Dには、それぞれ原料供給ノズル210が設置されており、それぞれの原料混合室で混合された気体原料は、該原料供給ノズル210から前記内部空間201Aに供給され、前記被処理基板204に蒸着されて成膜が行われる。
【0044】
前記原料混合室209A、209B、209C、および209Dには、それぞれガスライン212A、212B、212C、および212Dが接続されており、さらに、該ガスライン212A、212B、212C、および212Dには、図1で先に説明した原料供給装置100が接続されている。
【0045】
例えば、前記ガスライン212Aを例にとって説明すると、該ガスライン212Aは、前記混合室209Aに接続され、前記処理容器202の外側にまで延伸するように形成されて、該処理容器202の外側で複数の前記原料供給装置100と接続されている。
【0046】
この場合、前記ガスライン212Aは、バルブ213A、213B、213Cを介して、3つの前記原料供給装置100の前記ガス排出ライン111に、それぞれ接続されている。すなわち、前記原料混合室209Aには、前記ガスライン212Aを介して、3つの原料供給装置が接続され、3種類の気体原料が供給されて混合されることになる。当該原料混合室209Aで混合された気体原料は、前記ガス供給ノズル210から、前記内部空間201Aに供給される。
【0047】
また、当該3つの原料供給装置100の、それぞれの前記ガス導入ライン110は、それぞれバルブ214A、214B、および214Cと、さらに、MFC(質量流量コントローラ)217A、217B、および217Cを介して、キャリアガス供給源218に接続され、例えばArなどのキャリアガスが供給される構造になっている。なお、本図においては、図1に示した前記原料供給装置100の詳細(例えば内部構造など)については図示を省略している。
【0048】
同様に、前記ガスライン212Dは、前記混合室209Dに接続され、前記処理容器202の外側にまで延伸するように形成されて、該処理容器202の外側で複数の前記原料供給装置100と接続されている。
【0049】
この場合、前記ガスライン212Dは、バルブ215A、215Bを介して、2つの前記原料供給装置100の前記ガス排出ライン111に、それぞれ接続されている。すなわち、前記原料混合室209Dには、前記ガスライン212Dを介して、2つの原料供給装置が接続され、2種類の気体原料が供給されて混合されることになる。当該原料混合室209Dで混合された気体原料は、前記ガス供給ノズル210から、前記内部空間201Aに供給される。
【0050】
また、当該2つの原料供給装置100の、それぞれの前記ガス導入ライン110は、それぞれバルブ216A、216Bを介して、前記キャリアガス供給源218に接続されるが、本図ではこの接続ラインの図示は省略している。
【0051】
また、前記ガスライン212B、212Cにも、先に説明したガスライン212A、212Dと同様に、複数の原料供給装置100が接続され(図示を省略)、それぞれ前記原料混合室209B、209Cにおいても複数の気体原料が混合され、前記内部空間201Aに供給される。
【0052】
また、前記処理容器201の底面には、前記ガス供給ノズル210が露出する穴部206Aを有する排気カバー206が設置されてもよい。前記排気カバーは、前記排気手段208とともに前記原料供給部209を覆うように設置され、複数の原料混合室から供給される気体原料が、被処理基板に到達する前に混合することを抑制している。
【0053】
上記に示すように、本実施例による蒸着装置200では、実施例1に記載した原料供給装置100を用いることで、安定に気体原料を蒸着して成膜を行うことが可能であり、成膜速度が安定である特徴を有している。
【0054】
さらに、上記の成膜装置では、複数の原料を有する膜を形成することが可能である。さらに、成膜の際に、前記保持台203を移動させることによって、複数の原料を含む膜を、さらに積層して複雑な構造の成膜を行うことが可能である。このため、例えば有機EL素子などの発光素子を形成する場合に好適である。
【0055】
例えば、上記の成膜装置200を用いて、正孔輸送層と発光層、さらに電子輸送層が積層された、有機EL素子を形成することができる。この場合、例えば発光層のホスト材にはアルミノキノリノール錯体(Alq3)、ドーピング材にはルブレンを用いることができる。
【0056】
また、上記の蒸着装置では、有機EL素子に限定されず、他にも様々な用途の蒸着膜を形成することが可能である。
【0057】
以上、本発明を好ましい実施例について説明したが、本発明は上記の特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨内において様々な変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、蒸着装置に用いる原料供給装置であって、蒸着装置の成膜速度の安定性が良好となる原料供給装置、および当該原料供給装置を有する蒸着装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施例1による原料供給装置の断面図である。
【図2】実施例2による原料供給装置の断面図である。
【図3】実施例3による原料供給装置の断面図である。
【図4】実施例4による蒸着装置を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
100 原料供給装置
101 円筒容器
102 蓋部
103 原料容器
102A ガス流制御部
102a 支持部
102b,102c,102d 突起部
103A 内部空間
104 ガス導入口
105 ガス導入路
106 ガス排出口
107 ガス導入路
108 ガス排出路
109 フィルタ
110 ガス導入ライン
110A バルブ
110B 接続部
111 ガス排出ライン
111A バルブ
111B 接続部
112 シール材
113 ヒータ
200 蒸着装置
201,202 処理容器
203 保持台
204 被処理基板
205 移動レール
206 排気カバー
206A 穴部
207 アライメント装置
208 排気手段
208A 排気ライン
209 原料混合部
209A,209B,209C,209D 原料混合室
210 原料供給ノズル
211 ゲートバルブ
212A,212B,212C,212D ガスライン
213A,213B,213C,214A,214B,214C,215A,215B,216A,216B バルブ
217A,217B,217C MFC
218 キャリアガス供給源
300 搬送ロボット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着装置の処理容器に、原料を蒸発あるいは昇華させて供給する原料供給装置であって、
内部に前記原料を保持する原料容器と、
前記原料容器の内部にキャリアガスを供給するガス導入口と、
前記キャリアガスと共に蒸発あるいは昇華した前記原料を、前記処理容器に供給するガス排出口と、を有し、
前記原料容器の内部に前記キャリアガスの流れを制御するガス流制御部を設けたことを特徴とする原料供給装置。
【請求項2】
前記ガス流制御部は、前記原料容器の内部に形成された突起部を含むことを特徴とする請求項1記載の原料供給装置。
【請求項3】
前記突起部が複数形成されていることを特徴とする請求項2記載の原料供給装置。
【請求項4】
前記原料が、前記突起部と対向するように前記原料容器内に保持されるよう構成されていることを特徴とする請求項2または3記載の原料供給装置。
【請求項5】
前記ガス導入口は前記原料容器の第1の側に、前記ガス排出口は前記原料容器の前記第1の側の反対側の第2の側に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のうち、いずれか1項記載の原料供給装置。
【請求項6】
前記ガス流制御部は前記第1の側と前記第2の側の間に形成されていることを特徴とする請求項5記載の原料供給装置。
【請求項7】
被処理基板を内部に保持する処理容器と、前記処理容器に原料を蒸発あるいは昇華させて供給する原料供給装置とを有し、前記被処理基板に蒸発あるいは昇華された前記原料を蒸着させる蒸着装置であって、
前記原料供給装置は、
内部に前記原料を保持する原料容器と、
前記原料容器の内部にキャリアガスを供給するガス導入口と、
前記キャリアガスと共に蒸発あるいは昇華した前記原料を、前記処理容器に供給するガス排出口と、を有し、
前記原料容器の内部に前記キャリアガスの流れを制御するガス流制御部を設けたことを特徴とする蒸着装置。
【請求項8】
前記ガス流制御部は、前記原料容器の内部に形成された突起部を含むことを特徴とする請求項7記載の蒸着装置。
【請求項9】
前記突起部が複数形成されていることを特徴とする請求項8記載の蒸着装置。
【請求項10】
前記原料が、前記突起部と対向するように前記原料容器内に保持されるよう構成されていることを特徴とする請求項8または9記載の蒸着装置。
【請求項11】
前記ガス導入口は前記原料容器の第1の側に、前記ガス排出口は前記原料容器の前記第1の側の反対側の第2の側に形成されていることを特徴とする請求項7乃至10のうち、いずれか1項記載の蒸着装置。
【請求項12】
前記ガス流制御部は前記第1の側と前記第2の側の間に形成されていることを特徴とする請求項11記載の蒸着装置。
【請求項13】
前記原料供給装置が複数設置されていることを特徴とする請求項7乃至12のうち、いずれか1項記載の蒸着装置。
【請求項14】
複数の前記原料供給装置から供給される、蒸発あるいは昇華した原料を混合する混合室を有することを特徴とする請求項13記載の蒸着装置。
【請求項15】
前記混合室を複数有することを特徴とする請求項14記載の蒸着装置。
【請求項16】
前記原料供給装置は前記処理容器の外側に設置され、当該原料供給装置が当該処理容器から装脱着可能に構成されていることを特徴とする請求項7乃至15のうち、いずれか1項記載の蒸着装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−169728(P2007−169728A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369898(P2005−369898)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】