原点検出装置、シート搬送装置、及び画像記録装置
【課題】装置の大型化及びコストアップを伴わずに回転体の原点位置を検出することができる原点検出装置、この原点検出装置を備えるシート搬送装置、及び乱れのない綺麗な画像をシートに記録することができる画像記録装置の提供。
【解決手段】搬送ローラ60がLFモータ85によって回転制御され、給紙ローラ25,35がASFモータ84によって回転制御される。ASFモータ84の軸87の回転量がエンコーダ82によって検出される。ASFモータ84が駆動されていない状態でLFモータ85が駆動されると、搬送ローラ60が1回転する毎に、搬送ローラ60の回転が駆動伝達機構90を介して軸87に伝達される。このため、搬送ローラ60の回転がエンコーダ82によって検出される。搬送ローラ60の回転位相とエンコーダ82の検出結果とに基づいて、搬送ローラ60の回転位相の原点位置が検出される。
【解決手段】搬送ローラ60がLFモータ85によって回転制御され、給紙ローラ25,35がASFモータ84によって回転制御される。ASFモータ84の軸87の回転量がエンコーダ82によって検出される。ASFモータ84が駆動されていない状態でLFモータ85が駆動されると、搬送ローラ60が1回転する毎に、搬送ローラ60の回転が駆動伝達機構90を介して軸87に伝達される。このため、搬送ローラ60の回転がエンコーダ82によって検出される。搬送ローラ60の回転位相とエンコーダ82の検出結果とに基づいて、搬送ローラ60の回転位相の原点位置が検出される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置の大型化及びコストアップを伴わずに回転体の回転位相の原点位置を検出することができる原点検出装置、この原点検出装置を備えるシート搬送装置、及び乱れのない綺麗な画像をシートに記録することができる画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタやスキャナは、記録用紙や原稿などのシートを搬送するシート搬送装置を備えている。シート搬送装置は、シートに当接された状態で回転駆動されるローラを備えている。シートは、このローラの回転力を受けて搬送される。乱れのない綺麗な画像を記録用紙に記録したり、高画質な原稿の画像読取を実現するためには、シートの搬送量を正確に制御する必要がある。しかしながら、シート搬送装置では、ローラの回転量を検出するためのセンサの取り付け誤差、ローラに対するギヤの組み付け誤差などが原因で、ローラの回転量を正確に制御できないことがある。また、ローラの回転量が正確に制御されていたとしても、ローラの加工誤差が原因でシートの搬送が一様にならないことがある。このため、シート搬送装置では、これらの誤差が原因でシートの搬送量が周期的に変動する。従来のシート搬送装置には、このシートの搬送量の周期的変動を検出してシートの搬送量を補正する手段が設けられている(例えば特許文献1〜4参照。)。
【0003】
特許文献3に記載のインクジェット記録装置は、ロータリーエンコーダによるローラの回転量の検出結果に対してローラの回転量を補正しつつシートに画像を記録する。ローラの回転量が好適に補正されている場合には、濃度変化の小さいパターンがシートに記録される。逆に、ローラの回転量が適切に補正されていない場合には、濃度変化が大きいパターンがシートに記録される。インクジェット記録装置では、ローラの回転量の補正量を変更しながら複数のパターンがシートに記録され、これらのパターンの中で濃度むらが最小となるときのローラの回転量の補正値が取得されて当該補正値がメモリに記憶される。そして、この補正値に基づいてローラの回転量が補正される。
【0004】
特許文献1には、ロータリーエンコーダによって検出されたローラの回転速度からエンコーダディスクの偏心の影響を除くための手段が開示されている。この文献に記載されている回転速度検出装置は、位相検出用回転円板及び光センサを備えている。位相検出用回転円板は、1個の光検出領域が設けられた円盤状のものであり、エンコーダディスクとともにローラの回転軸に固定されている。光センサは、この位相検出用回転円板の周縁を挟むように、発光素子及び受光素子が所定の間隔を隔てて対向して配置されたものである。ローラが1回転する毎に、光センサから1個のパルス信号が出力され、このパルス信号に基づいてローラの回転軸の原点位置が特定される。この原点位置に基づいてローラ1周分を1周期として発生するシートの搬送量の周期的変動が把握され、その周期的変動を相殺するようにローラの回転が制御される。
【0005】
特許文献2に記載の回転制御装置は、ロータリーエンコーダの回転を検出する3つの回転センサを備えている。回転センサは、発光素子及び受光素子が所定の空間を隔てて対向して配置されたものである。モータの出力軸には、ロータリーエンコーダのエンコーダディスクが固定されている。各回転センサは、上記空間内にエンコーダディスクの周縁が位置し、且つエンコーダディスクの周方向に互いに90°の角度で並ぶように配置されている。回転制御装置では、各回転センサからの出力信号に対して所定の演算処理を行うことによってモータの出力軸の回転速度が算出される。そして、この回転速度が目標回転速度と一致するようにモータの回転が制御される。
【0006】
特許文献4に記載の用紙搬送装置では、演算によって得られた補正値に基づいて搬送ローラの目標回転量が補正されることによって搬送ローラの回転量の周期的なズレが相殺される。また、この用紙搬送装置では、搬送ローラの定速回転が終了したときの当該搬送ローラの位置を基準位置として、搬送ローラの現在の回転位相が決定される。そして、搬送ローラが回転されると、上記基準位置に対する搬送ローラの回転量に応じて、搬送ローラの現在の回転位相が更新される。
【0007】
【特許文献1】特開平10−38902号公報
【特許文献2】特開2005−168280号公報
【特許文献3】特開2006−224380号公報
【特許文献4】特開2007−197186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献3に記載の装置では、装置の電源が切られるとローラの回転位相の原点位置が分からなくなるので、電源を入れ直す毎にシートにパターンを記録して補正値を取得する必要がある。これに対して、特許文献1に記載の装置は、電源を入れ直した際に光センサから出力されるパルス信号に基づいてローラの回転位相の原点位置を容易に検出でき、特許文献2に記載の装置は、原点位置を検出する必要がないため、特許文献3に記載の装置で行われるような面倒な処理が不要である。しかしながら、特許文献1に記載の装置は、原点位置を検出するための位相検出用回転円板及び光センサが必要であり、特許文献2に記載の装置は、3つの回転センサが必要であるため、装置が大型化するとともにコストが嵩むといった別の問題がある。また、特許文献2に記載の装置は、モータの出力軸の回転速度からロータリーエンコーダの中心位置のズレの影響を除くことはできるが、モータの出力軸の偏心などその他の偏心については、原理的に補正することができない。
【0009】
これに対して、特許文献4に記載の装置は、搬送ローラの現在の回転位相が演算によって取得されるので、搬送ローラの回転位相の原点位置を検出するための機構を有している必要がなく、装置を安価に構成することができる。しかしながら、搬送ローラの現在の回転位相が演算によって取得されるので、シートに綺麗な画像を記録するにはシートの搬送精度が十分であるとは言えなかった。
【0010】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、装置の大型化及びコストアップを伴わずに回転体の原点位置を検出することができる原点検出装置、この原点検出装置を備えるシート搬送装置、及び乱れのない綺麗な画像をシートに記録することができる画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1) 本発明に係る原点検出装置は、第1モータと、第2モータと、第1検出手段と、駆動伝達機構と、第2検出手段と、を備える。第1モータは、第1回転体を回転制御しつつ回転させる。第2モータは、第2回転体を回転制御しつつ回転させる。第1検出手段は、上記第2モータと同期して回転する同期軸の回転量を検出する。駆動伝達機構は、上記第1回転体の整数回の回転を1周期として所定の回転位相において上記第1回転体の回転を上記同期軸に伝達する。第2検出手段は、上記第1回転体の回転位相と上記第1検出手段の検出結果とに基づいて、上記第1回転体の回転位相の原点位置を検出する。
【0012】
第1モータは、例えばDCモータやステッピングモータである。第2モータは、例えばDCモータである。本発明の原点検出装置では、第2モータが駆動されていない状態で第1モータが駆動される。第1モータが駆動されると、第1回転体が回転する。第1回転体の回転は、駆動伝達機構を介して上記同期軸に伝達される。この同期軸は、第2回転体の軸であってもよいし、第2回転体と同期回転する軸であってもよい。第1回転体が1周期に相当する回転数だけ回転される毎に、第1回転体の回転が同期軸に伝達される。このため、第1回転体が1周期分に相当する回転数だけ回転される毎に同期軸が回転し、その回転が第1検出手段によって検出される。そして、第1検出手段によって同期軸の回転が検出されたときの第1回転体の回転位相が、原点位置として第2検出手段によって検出される。なお、第1検出手段としては、例えば、同期軸に固定されたエンコーダディスクと、エンコーダディスクの周縁が配置される間隔を隔てて発光素子及び受光素子が対向して配置された光学センサと、を備えるものが挙げられる。
【0013】
このように、第2回転体の回転を検出するための第1検出手段を転用して第1回転体の回転位相の原点位置が検出されるので、原点位置を検出するためのセンサ等を新たに設ける必要がない。すなわち、本発明の原点検出装置によれば、装置の大型化及びコストアップを伴わずに第1回転体の原点位置を検出することが可能となる。
【0014】
なお、本明細書においては別段の定めがない限り、「方向」とは、例えば+,−のように相対する向きを有する直線で表されるものであり、「向き」とは、方向のうち例えば+又は−のように1個のアローヘッドを有する矢印で表されるものである。
【0015】
(2) 上記駆動伝達機構は、上記第1回転体の回転軸と上記同期軸との間に介在された欠歯ギヤを含んでいてもよい。
【0016】
欠歯ギヤは、ギヤ歯が形成された部分と、ギヤ歯が形成されていない部分と、を有している。例えば、欠歯ギヤと上記同期軸との間には、外周面に一様にギヤ歯が形成された伝達ギヤが設けられている。欠歯ギヤのギヤ歯が形成されていない部分と、伝達ギヤのギヤ歯とが対向した状態では、欠歯ギヤと伝達ギヤとが噛合していないので、第1回転体の回転は同期軸に伝達されない。欠歯ギヤのギヤ歯が形成されている部分と、伝達ギヤのギヤ歯とが対向した状態では、欠歯ギヤと伝達ギヤとが噛合するので、第1回転体の回転が同期軸に伝達される。したがって、第1回転体が1周期回転すると、同期軸の回転には同じ周期で回転と停止とが現れる。このように欠歯ギヤを利用することで、本発明の駆動伝達機構が簡単に実現される。
【0017】
(3) 上記駆動伝達機構は、上記第1回転体の回転を上記同期軸に伝達するか否かを選択的に切り換え可能である。
【0018】
第1回転体の回転位相の原点位置を検出する際には、駆動伝達機構によって第1回転体と同期軸とが連結されるので、第1回転体の回転力が同期軸に伝達される。一方、第2モータを駆動させる際には、駆動伝達機構によって、例えば、第1回転体と同期軸との連結が解除され、第2モータと第2回転体とが駆動伝達可能に連結される。このため、第1回転体の回転位相の原点位置を検出する処理によって、第2モータの駆動が妨げられることはない。
【0019】
(4) また、本発明に係るシート搬送装置は、前述の原点検出装置と、シートが載置される載置部と、を備え、上記第2回転体は、上記載置部から搬送路へシートを供給する供給ローラであり、上記第1回転体は、上記搬送路に沿ってシートを間欠搬送する搬送ローラである。
【0020】
搬送ローラ及び供給ローラ並びに第1モータ及び第2モータは、例えば、インクジェットプリンタに代表される画像記録装置や、ADF(Auto Document Feeder:自動原稿搬送装置)を備えるスキャナ等に組み込まれ、シートを搬送する手段として使用される。このシート搬送装置では、供給ローラの回転を検出するための第1検出手段を転用して搬送ローラの回転位相の原点位置が検出される。このため、シート搬送装置の大型化及びコストアップを伴わずに搬送ローラの回転位相の原点位置を検出することが可能となる。
【0021】
(5) 上記搬送ローラの回転位相と、当該搬送ローラの目標回転量の補正値との対応関係を記憶する記憶手段と、上記第1モータの駆動を制御して上記搬送ローラの回転量を補正する補正手段と、を備え、上記補正手段は、上記第2検出手段によって検出された原点位置と、上記記憶手段に記憶されている上記対応関係とに基づいて、上記第1モータの駆動を制御するものでもよい。
【0022】
記録用紙が一定の改行幅で間欠搬送されるように、搬送ローラの目標回転量が予め決められている。第2検出手段によって検出された原点位置に基づいて、原点位置に対する搬送ローラの現在の回転位相が判断される。記憶手段に記憶されている対応関係に基づいて、現在の回転位相に対する補正値が取得される。この補正値によって上記目標搬送量が補正され、シートが当該目標搬送量だけ搬送されるように第1モータの駆動が制御される。これにより、シートの搬送量の周期的変動が抑制される。
【0023】
(6) また、本発明に係る画像記録装置は、前述のシート搬送装置と、上記搬送ローラよりも上記シートの搬送向きの下流側に配置され、上記搬送ローラが間欠する毎に上記シートに対して画像を記録する記録手段と、を備える。
【0024】
シートがほぼ一定の改行幅で間欠搬送されるので、乱れのない綺麗な画像がシートに記録される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、第2回転体の回転を検出するための第1検出手段を転用して第1回転体の回転位相の原点位置が検出されるので、原点位置を検出するためのセンサ等を新たに設ける必要がない。したがって、装置の大型化及びコストアップを伴わずに第1回転体の原点位置を検出することができる。
【0026】
また、本発明によれば、供給ローラの回転を検出するための第1検出手段を転用して搬送ローラの回転位相の原点位置が検出されるので、シート搬送装置の大型化及びコストアップを伴わずに搬送ローラの回転位相の原点位置を検出することができる。
【0027】
また、本発明によれば、センサ等を追加することなく搬送ローラの原点位置を検出することができ、その原点位置を利用してシートの搬送量の周期的変動を抑制して乱れのない綺麗な画像をシートに記録することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更され得る。
【0029】
[図面の説明]
図1は、本発明の一実施形態に係る複合機10の外観構成を示す斜視図である。図2は、プリンタ部11の内部構造を示す模式図である。図3は、プリンタ部11の内部構成を示す部分拡大斜視図である。図4及び図5は、駆動伝達機構90の外観構成を示す斜視図である。図6は、駆動伝達機構90の拡大斜視図であり、入力レバー53の入力部54が第1位置に配置された状態を示す。図7は、駆動伝達機構90の拡大斜視図であり、入力レバー53の入力部54が第2位置に配置された状態を示す。図8は、駆動伝達機構90の拡大斜視図であり、入力レバー53の入力部54が第3位置に配置された状態を示す。図9は、制御部100の構成例を示すブロック図である。図10は、記録用紙50の搬送量の周期的変動について説明するための図であり、(A)は第1エンコーダディスク71と光学センサ55の模式図であり、(B)は第1ロータリーエンコーダ81から出力されるパルス信号あたりの記録用紙50の搬送量を例示するグラフである。図11及び図12は、補正値関数A(θ)を取得する処理について説明するための図である。図13は、複合機10の電源が投入された際に複合機10で行われる処理の手順を例示するフローチャートである。図14は、搬送ローラ60の回転が駆動伝達機構90を介してASFモータ84の軸87へ伝達されたときの軸87の回転数の変化を示すグラフである。図15は、記録開始命令があったときに複合機10で行われる処理の手順を例示するフローチャートである。なお、図2に記載の給紙カセット21や給紙カセット22は、実際の形状を概念的に簡略化して記載したものであり、実際の形状とは異なっている。また、図2では、第1エンコーダディスク71及び光学センサ55が省略されている。
【0030】
[複合機10の概略構成]
図1に示されるように、複合機10は、プリンタ部11とスキャナ部12とを一体的に備えており、プリント機能、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。プリンタ部11が本発明に係る画像記録装置に相当する。なお、複合機10は、必ずしもスキャナ部12を有している必要はなく、スキャナ機能やコピー機能を有しない単機能のプリンタとして本発明に係る画像記録装置が実施されてもよい。
【0031】
複合機10は、高さ方向122よりも幅方向121及び奥行き方向123に長い幅広薄型の概ね直方体形状に構成されている。複合機10の上部にスキャナ部12が設けられている。スキャナ部12は、原稿台20及び原稿カバー15を備えている。原稿台20は、いわゆるフラットベッドスキャナとして機能するものである。原稿カバー15は、原稿台20に対して開閉可能に構成されており、複合機10の天板として機能するものである。原稿台20の上面には、コンタクトガラス(不図示)が設けられており、原稿台20の内部には奥行き方向123へ延出されたラインセンサが幅方向121へ移動可能に配置されている。コンタクトガラスに載置された原稿は、このラインセンサによって画像が読み取られる。
【0032】
原稿カバー15には、ADF(Auto Document Feeder:自動原稿搬送装置)29が設けられている。ADF29は、原稿トレイ30に載置された原稿を搬送路(不図示)を経て原稿排出トレイ31へ搬送するものである。原稿は、ADF29によって搬送される過程において、所定の読取位置に静止状態で配置された上記ラインセンサによってその画像が読み取られる。
【0033】
複合機10の下部にプリンタ部11が設けられている。プリンタ部11の正面側に開口13が形成されている。プリンタ部11には、開口13を通じて給紙カセット21(本発明の載置部の一例)及び給紙カセット22(本発明の載置部の一例)が装着される。給紙カセット21,22には、定形の矩形の記録用紙50(本発明のシートの一例、図2参照)が載置される。プリンタ部11では、給紙カセット21又は給紙カセット22からプリンタ部11内へ記録用紙50が選択的に供給される。この記録用紙50は、記録部40(本発明の記録手段の一例、図2参照)によって画像が記録された後に給紙カセット22の上面23に排出される。すなわち、上面23は、いわゆる排紙トレイとして機能するものである。
【0034】
複合機10は、主にコンピュータなどの外部情報機器(不図示)と接続された状態で使用される。プリンタ部11は、外部情報機器から受信した印刷データやスキャナ部12で読み取られた原稿の画像データに基づいて、記録用紙50に画像を記録する。
【0035】
複合機10の正面上部に操作パネル14が設けられている。操作パネル14には、各種情報を表示するディスプレイや情報の入力を受け付ける入力キーが設けられている。複合機10は、操作パネル14から入力された指示情報、又は外部情報機器からプリンタドライバやスキャナドライバなどを通じて送信される指示情報に基づいて動作する。
【0036】
[プリンタ部11]
以下、図2〜図8を参照しつつ、プリンタ部11の構成について説明する。プリンタ部11は、大別して、給紙カセット21,22、第1供給部28、第2供給部38、記録部40、ASFモータ84(本発明の第2モータの一例)、搬送ローラ対59、排出ローラ対64、LFモータ85(本発明の第1モータの一例)、第2ロータリーエンコーダ82(本発明の第1検出手段の一例)、第1ロータリーエンコーダ81、及び駆動伝達機構90(本発明の駆動伝達機構の一例)を備えている。本発明に係る原点検出装置、及びシート搬送装置は、本実施形態では、第1供給部28、第2供給部38、ASF(Auto Sheet Feed)モータ84、搬送ローラ対59、排出ローラ対64、LF(Line Feed)モータ85、第2ロータリーエンコーダ82、第1ロータリーエンコーダ81、駆動伝達機構90、及び後述する制御部100によって構成されている。
【0037】
給紙カセット22は、複合機10の背面側(図2における右側)の一部が開口された容器形状のものであり、その内部空間に記録用紙50が積層状態で載置される。給紙カセット22には、例えば、A3サイズ以下のA4サイズ、B5サイズ、はがきサイズ等の各種サイズの記録用紙50が収容可能である。給紙カセット22の上面23は、複合機10の正面側(図2における左側)に設けられている。
【0038】
給紙カセット21は、複合機10の背面側の一部が開口された容器形状のものであり、その内部空間に記録用紙50が積層状態で載置される。給紙カセット21には、例えば、A3サイズ以下のA4サイズ、B5サイズ、はがきサイズ等の各種サイズの記録用紙50が収容可能である。給紙カセット22に収容されている記録用紙50とサイズや種類が異なる記録用紙50が給紙カセット21に収容されることにより、記録用紙50を入れ換えることなく、2種類の記録用紙50を使用することができる。
【0039】
[第1供給部28]
給紙カセット22の傾斜板24の上側には、湾曲状に形成された搬送路18が設けられている。プリンタ部11に給紙カセット22が装着されると、傾斜板24が搬送路18の下方に配置され、且つ、給紙カセット22の上側に第1供給部28が配置される。第1供給部28は、給紙ローラ25(本発明の第2回転体の一例、本発明の供給ローラに相当)、アーム26、及び軸27を有している。給紙ローラ25は、アーム26の先端側に回転可能に設けられている。アーム26は、プリンタ部11の筐体に支持された軸27に回動可能に設けられている。アーム26は、自重によって或いはバネ等による弾性力を受けて給紙カセット22側へ回動付勢されている。
【0040】
[第2供給部38]
給紙カセット21の傾斜板34の上側には、湾曲状に形成された搬送路17が設けられている。プリンタ部11に給紙カセット21が装着されると、傾斜板34が搬送路17の下方に配置され、且つ、給紙カセット21の上側に第2供給部38が配置される。第2供給部38は、給紙ローラ35(本発明の第2回転体の一例、本発明の供給ローラに相当)、アーム36、及び軸37を有している。給紙ローラ35は、アーム36の先端側に回転可能に設けられている。アーム36は、プリンタ部11の筐体に支持された軸37に回動可能に設けられている。アーム36は、自重によって或いはバネ等による弾性力を受けて給紙カセット21側へ回動付勢されている。
【0041】
[ASFモータ84]
プリンタ部11は、給紙ローラ25及び給紙ローラ35を回転制御しつつ回転させるASFモータ84を備えている(図4及び図5参照)。ASFモータ84としては、例えばDCモータが挙げられる。ASFモータ84の駆動力は、後述する駆動伝達機構90(図4及び図5参照)によって給紙ローラ25及び給紙ローラ35に選択的に伝達される。
【0042】
プリンタ部11の内部には、搬送路18及び搬送路17と連続する搬送路19(本発明の搬送路の一例)が設けられている。搬送路19は、搬送路18又は搬送路17に沿って搬送された記録用紙50が搬送される経路であり、搬送路18と搬送路17とが合流する位置から複合機10の正面側へ向けて給紙カセット22の上面23の上方まで延出されている。
【0043】
給紙トレイ22から搬送路18,19へ記録用紙50を供給する場合、ASFモータ84の駆動力が後述する駆動伝達機構90、軸27、及びアーム26に設けられた動力伝達機構(不図示)を介して給紙ローラ25へ伝達される。これにより、給紙ローラ25が回転する。給紙トレイ22内の最上位置の記録用紙50は、給紙ローラ25の回転力を受けて傾斜板24に沿って搬送路18へ送りされる。
【0044】
給紙トレイ21から搬送路17,19へ記録用紙50を供給する場合、ASFモータ84の駆動力が駆動伝達機構90、軸37、及びアーム36に設けられた動力伝達機構(不図示)を介して給紙ローラ35へ伝達される。これにより、給紙ローラ35が回転する。給紙トレイ21内の最上位置の記録用紙50は、給紙ローラ35の回転力を受けて傾斜板34に沿って搬送路17へ送り出される。このように、ASFモータ84の駆動力が給紙ローラ25又は給紙ローラ35に伝達されることにより、給紙カセット22又は給紙カセット21から搬送路19へ記録用紙50が選択的に供給される。
【0045】
搬送路19にプラテン43(図2及び図3参照)が設けられている。プラテン43は、搬送路19に沿って搬送される記録用紙50を下から支持するものである。このプラテン43の上側に記録部40が配置されている。この記録部40については後述する。
【0046】
[搬送ローラ対59]
プラテン43よりも記録用紙50の搬送向き124の上流側に搬送ローラ対59が設けられている。搬送ローラ対59は、搬送ローラ60(本発明の第1回転体の一例、本発明の搬送ローラに相当)及びピンチローラ61からなる。搬送ローラ60は、搬送路19の上側に配置されており、LFモータ85(図4及び図5参照)からの駆動力を受けて回転する。ピンチローラ61は、搬送路19を挟んで搬送ローラ60の下側に回転自在に配置されており、搬送ローラ60へ向けてバネによって付勢されている。
【0047】
[排出ローラ対64]
プラテン43よりも記録用紙50の搬送向き124の下流側に排出ローラ対64が設けられている。排出ローラ対64は、排紙ローラ62及び拍車63からなる。排紙ローラ62は、搬送路19の下側に配置されており、LFモータ85からの駆動力を受けて回転する。拍車63は、搬送路19を挟んで排紙ローラ62の上側に回転自在に配置されており、排紙ローラ62へ向けてバネによって付勢されている。
【0048】
[LFモータ85]
プリンタ部11には、LFモータ85(図4及び図5参照)が設けられている。LFモータ85は、搬送ローラ60及び排紙ローラ62を回転制御しつつ回転させるものである。LFモータ85としては、例えばDCモータが挙げられる。LFモータ85の軸77は、不図示のギヤやプーリを介して搬送ローラ60の軸76(本発明の回転軸の一例)及び排紙ローラ62の軸78と連結されている。このため、LFモータ85の駆動力は、軸76及び軸78の両方に伝達される。これにより、搬送ローラ60及び排紙ローラ62が同期回転する。このため、排紙ローラ62及び拍車63は、搬送ローラ60及びピンチローラ61と同時に回転する。搬送ローラ60及び排紙ローラ62は、記録部40による画像記録が行われる際には、LFモータ85によって間欠駆動される。間欠駆動とは、所定の目標搬送量に相当する回転量だけ搬送ローラ60及び排紙ローラ62が回転するまでLFモータ85が連続して駆動され、目標搬送量に到達すると所定時間だけLFモータ85が停止され、これらを交互に繰り返す駆動方式である。
【0049】
搬送路19に供給された記録用紙50が搬送ローラ60及びピンチローラ61の間に到達すると、その記録用紙50は、搬送ローラ60とピンチローラ61とに挟持された状態で、搬送ローラ60の回転力を受けてプラテン43上へ送り出される。この記録用紙50が排紙ローラ62及び拍車63の間に到達すると、その記録用紙50は、排紙ローラ62と拍車63とに挟持された状態で、排紙ローラ62の回転力を受けて給紙カセット22の上方へ送り出される。
【0050】
このように、記録用紙50は、搬送ローラ60及び排紙ローラ62の少なくとも一方の回転力を受けてプラテン43上を搬送される。その際、搬送ローラ60及び排紙ローラ62が間欠駆動されているので、記録用紙50は、搬送路19に沿って間欠搬送される。すなわち、記録用紙50を目標搬送量だけ搬送する第1処理と、記録用紙50を所定時間だけ静止させる第2処理とが交互に繰り返される。この第2処理が行われる間に、記録部40による画像記録が行われる。
【0051】
なお、記録部40による画像記録が行われていない間は、搬送ローラ60及び排紙ローラ62が間欠駆動される必要はない。したがって、記録ヘッド42による記録動作の開始前や記録動作が完了した後は、搬送ローラ60及び排紙ローラ62が連続して回転される。
【0052】
[記録部40]
記録部40は、プラテン43の上側にプラテン43と所定間隔を隔てて対向して配置されている。すなわち、記録部40は、搬送ローラ対59よりも搬送向き124の下流側に配置されている。記録部40は、インクジェット記録方式の記録ヘッド42と、キャリッジ41とを備えている。キャリッジ41は、幅方向121(図2の紙面に垂直な方向)へ移動可能に構成されている。記録ヘッド42は、このキャリッジ41に搭載されている。
【0053】
図3に示されるように、搬送路19の上側において、搬送向き124に所定の間隔を隔てて、一対のガイドフレーム44,45が設けられている。ガイドフレーム44,45は、幅方向121へ延設されている。ガイドフレーム44は、ガイドフレーム45よりも搬送向き124の上流側に設けられている。キャリッジ41は、ガイドフレーム44,45を跨ぐようにしてガイドフレーム44,45に載置されている。これにより、キャリッジ41は、搬送路19を挟んでプラテン43と対向して配置されている(図2参照)。なお、図2では、ガイドフレーム44,45は省略されている。
【0054】
キャリッジ41の搬送向き124の上流側の端部は、ガイドフレーム44の上面に摺動自在に支持されている。キャリッジ41の搬送向き124の下流側の端部は、ガイドレーム45の上面に摺動自在に支持されている。ガイドフレーム45の端部39は、ガイドフレーム45が上方へ向かって略直角に曲折されたものであり、幅方向121へ延出されている。キャリッジ41は、この端部39を不図示のローラ等によって挟持している。これにより、キャリッジ41は、端部39を基準として幅方向121への移動が可能である。
【0055】
図3に示されるように、キャリッジ41の搬送向き124の上流側端部には、搬送向き124の上流側へ水平に突出する当接片33が設けられている。当接片33は、キャリッジ41が幅方向121へ移動されることによってキャリッジ41と同じ向きに移動する。後述するが、ガイドフレーム44の開口部52(図3参照)には、ガイドフレーム44の上側に突出するように入力レバー53(図5参照)が配置されている。この当接片33は、キャリッジ41の第2向き112への移動に伴って入力レバー53と当接する。これにより、入力レバー53の幅方向121の位置が変更される。この入力レバー53の幅方向121の位置が変更されることによる作用効果は、後に詳述する。
【0056】
ガイドフレーム45の上面にベルト駆動機構46が設けられている。ベルト駆動機構46は、駆動プーリ47、従動プーリ48、及び駆動ベルト49を有している。駆動プーリ47及び従動プーリ48は、幅方向121の両端付近にそれぞれ設けられている。駆動ベルト49は、内側に歯が設けられた無端環状のものであり、駆動プーリ47と従動プーリ48との間に架け渡されている。
【0057】
駆動プーリ47の軸にCRモータ83(図9参照)が接続されている。駆動プーリ47は、CRモータ83の駆動力を受けて回転する。この駆動プーリ47の回転力によって駆動ベルト49が周運動する。キャリッジ41は、この駆動ベルト49に固定されているので、駆動ベルト49が周運動することによって幅方向121へ移動する。
【0058】
ガイドフレーム45には、エンコーダストリップ51が設けられている。エンコーダストリップ51は、縁部39にわたって架設されている。エンコーダストリップ51は、透明な樹脂からなる帯状のものである。エンコーダストリップ51には、光を遮る遮光部と、光を透過させる透光部とが等ピッチで交互に並んだパターンが記されている。キャリッジ41には、このエンコーダストリップ51のパターンを検出するためのフォトインタラプタ(不図示)が搭載されている。
【0059】
記録ヘッド42は、そのノズルがキャリッジ41の裏面から露出されている(図2参照)。ノズルは、幅方向121及び奥行き方向123に多数並べられている。この記録ヘッド42には、プリンタ部11の内部に配置されたインクカートリッジ(不図示)からインクが供給される。キャリッジ41が走査方向(幅方向121)へ移動される間に、記録ヘッド42のノズルから微小なインク滴がプラテン43へ向けて選択的に噴出される。この一連の処理は、前述の第2処理において行われる。すなわち、記録ヘッド42は、搬送ローラ60及び排紙ローラ62が間欠する(停止する)毎に、記録用紙50に対して画像を記録する。このため、搬送ローラ対59及び排出ローラ対64による第1処理と第2処理とが交互に繰り返されることによって、記録用紙50に連続的な画像が記録される。
【0060】
[第1エンコーダディスク71、光学センサ55]
搬送ローラ60の軸76には、第1エンコーダディスク71が設けられている。第1エンコーダディスク71は、透明な円盤状のものであり、光を遮るマークが周方向に所定ピッチで記されている。この第1エンコーダディスク71は、図3〜図5に示されるように、搬送ローラ60の軸76に固定されており、搬送ローラ60と共に回転する。光学センサ55は、発光素子及び受光素子が幅方向121に所定の間隔を隔てて対向して配置されたものである。光学センサ55は、発光素子と受光素子との間の空間に第1エンコーダディスク71の周縁が位置するように設けられている。光学センサ55の受光素子で光が受光されると、受光した光の輝度に応じたレベルの電気信号が光学センサ55で生成される。発光素子と受光素子との間にマークが位置している状態では、LOWレベルの電気信号が生成される。発光素子と受光素子との間にマークが位置していない状態では、HIレベルの電気信号が生成される。すなわち、光学センサ55によって第1エンコーダディスク71のマークが検出される毎にパルス信号が生成される。このパルス信号は、制御部100へと出力される。
【0061】
[第2エンコーダディスク72、光学センサ56]
ASFモータ84の軸87(本発明の同期軸の一例、図6参照)には、第2エンコーダディスク72(図4参照)が設けられている。第2エンコーダディスク72は、透明な円盤状のものであり、光を遮るマークが周方向に所定ピッチで記されている。この第2エンコーダディスク72は、本実施形態ではASFモータ84の軸87に固定されている。すなわち、第2エンコーダディスク72は、軸87と共に、ASFモータ84に同期して回転する。光学センサ56は、発光素子及び受光素子が幅方向121に所定の間隔を隔てて対向して配置されたものである。光学センサ56は、発光素子と受光素子との間の空間に第2エンコーダディスク72の周縁が位置するように設けられている。光学センサ56の受光素子で光が受光されると、受光した光の輝度に応じたレベルの電気信号が光学センサ56で生成される。発光素子と受光素子との間にマークが位置している状態では、LOWレベルの電気信号が生成される。発光素子と受光素子との間にマークが位置していない状態では、HIレベルの電気信号が生成される。すなわち、光学センサ56によって第2エンコーダディスク72のマークが検出される毎にパルス信号が生成される。このパルス信号は、制御部100へと出力される。
【0062】
なお、第2エンコーダディスク72は、ASFモータ84の軸87とは異なる軸に固定されていてもよい。すなわち、ASFモータ84と同期して回転する軸であれば、第2エンコーダディスク72は、例えば、後述する第1伝達ギヤ91に固定されていてもよい。
【0063】
[駆動伝達機構90]
以下、駆動伝達機構90について説明する。駆動伝達機構90は、ASFモータ84の駆動力を給紙ローラ25又は給紙ローラ35へ選択的に伝達し、搬送ローラ60の回転をASFモータ84の軸87へ伝達するものである。駆動伝達機構90は、ガイドフレーム44,45などにより構成されるフレームに設けられている。なお、図2及び図3では、この駆動伝達機構90が省略されている。
【0064】
図5に示されるように、駆動伝達機構90は、モータギヤ89、第1伝達ギヤ91、第2伝達ギヤ92、連結ギヤ95、入力レバー53、第3伝達ギヤ93、第4伝達ギヤ94、及び欠歯ギヤ96(本発明の欠歯ギヤの一例)を有している。なお、モータギヤ89、第1伝達ギヤ91の大径部106と小径部107、第2伝達ギヤ92、連結ギヤ95、第3伝達ギヤ93、及び第4伝達ギヤ94にはそれぞれギヤ歯が形成されているが、図には示されていない。
【0065】
モータギヤ89は、ASFモータ84の軸87に固定されており、軸87及び第2エンコーダディスク72と共に幅方向121を軸方向として一体的に回転する。モータギヤ89と近接する位置に、第1伝達ギヤ91が設けられている。第1伝達ギヤ91は、幅方向121を軸方向として回転可能に構成されている。第1伝達ギヤ91は、外径寸法が相異なる大径部106及び小径部107を有している。第1伝達ギヤ91の大径部106は、モータギヤ89と噛合されている。第1伝達ギヤ91と近接する位置に第2伝達ギヤ92が設けられている。第1伝達ギヤ91の小径部107は、第2伝達ギヤ92と噛合されている。第2伝達ギヤ92は、モータギヤ89及び第1伝達ギヤ91と同様に、幅方向121を軸方向として回転可能に構成されている。この第2伝達ギヤ92は、第1伝達ギヤ91及び連結ギヤ95と噛合されている。
【0066】
搬送ローラ60の下方には、第3伝達ギヤ93及び第4伝達ギヤ94が設けられている。第3伝達ギヤ93及び第4伝達ギヤ94は、幅方向121を軸方向として個別に回転可能に構成されている。図には示されていないが、第3伝達ギヤ93は、第1供給部28の軸27(図2参照)へ駆動伝達可能に軸27に連結されている。第4伝達ギヤ94は、第2供給部38の軸37(図2参照)へ駆動伝達可能に軸37に連結されている。
【0067】
搬送ローラ60の軸76に欠歯ギヤ96が設けられている。欠歯ギヤ96は、軸76の外周面に1個のギヤ歯98が設けられることによって構成されている。このように、欠歯ギヤ96は、搬送ローラ60の軸76とASFモータ84の軸87との間に介在されている。この欠歯ギヤ96、第3伝達ギヤ93、及び第4伝達ギヤ94は、ギヤ歯の幅方向121の位置が相異なるように配置されている。本実施形態では、幅方向121の内側から外側へ向けて、第3伝達ギヤ93のギヤ歯、第4伝達ギヤ94のギヤ歯、欠歯ギヤ96のギヤ歯98の順でギヤ歯が並ぶように、各ギヤ93,94,96が配置されている。
【0068】
第2伝達ギヤ92とギヤ93,94,96との間に、連結ギヤ95が配置されている。連結ギヤ95は、入力レバー53とともに1本の支軸66に回転可能、且つ幅方向121へスライド可能に支持されている。支軸66は、幅方向121を軸方向としてプリンタ部11のフレームに固定されている。このため、連結ギヤ95及び入力レバー53は、キャリッジ41の移動方向(幅方向121)と同方向への移動が可能である。なお、第2伝達ギヤ92の幅方向121の幅は、連結ギヤ95の移動範囲よりも広くなるように設定されている。このため、連結ギヤ95は、幅方向121の位置にかかわらず第2伝達ギヤ92と常時噛合している。連結ギヤ95は、第2伝達ギヤ92と噛合した状態で、第3伝達ギヤ93、第4伝達ギヤ94、又は欠歯ギヤ96と噛合可能である。
【0069】
入力レバー53は、連結ギヤ95よりも幅方向121の外側に配置されている。入力レバー53は、支軸66に外嵌される筒状の円筒部57と、円筒部57から径方向に突出するように設けられた入力部54とを有する。円筒部57は、支軸66に外嵌されており、支軸66に対して幅方向121へスライド自在且つ回転自在である。円筒部57がスライドされると、入力部54は、円筒部57と同じ向きへスライドする。円筒部57が回転すると、入力部54は、円筒部57と同じ向きに回転する。
【0070】
図5に示されるように、入力レバー53の上方には、支持フレーム68が設けられている。この支持フレーム68は、ガイドフレーム44の開口部52(図3参照)に嵌め込まれることによってガイドフレーム44に固定されている。この支持フレーム68には、入力レバー53の入力部54が挿通される開口69が形成されている。
【0071】
図には示されていないが、連結ギヤ95は、第1コイルバネ(不図示)によって入力レバー53側(第2向き112)へ付勢されている。また、入力レバー53は、第2コイルバネ(不図示)によって連結ギヤ95側(第1向き111)へ付勢されている。すなわち、連結ギヤ95及び入力レバー53は、相反する方向へ付勢されている。第2コイルバネの付勢力は、第1コイルバネの付勢力よりも大きく設定されている。このため、入力レバー53に外力が加えられていない状態では、第2コイルバネの付勢力によって第1コイルバネが圧縮され、連結ギヤ95及び入力レバー53が第1向き111へスライドされる。そして、入力レバー53の入力部54が支持フレーム68の開口69の端部に当接すると、連結ギヤ95及び入力レバー53の第1向き111への移動が規制される(図6参照)。これにより、入力レバー53の入力部54が第1位置に配置される。図6に示されるように、入力部54が第1位置に配置された状態では、連結ギヤ95が第3伝達ギヤ93と噛合している。この状態でASFモータ84が駆動されると、ASFモータ84の駆動力がモータギヤ89、第1伝達ギヤ91の大径部106及び小径部107、第2伝達ギヤ92、連結ギヤ95、第3伝達ギヤ93の順に伝達される。この第3伝達ギヤ93は給紙ローラ25と連結されているので、給紙ローラ25が回転する。
【0072】
キャリッジ41が第2向き112へ移動されて当接片33(図3参照)が入力レバー53の入力部54に当接すると、入力部54は、当接片33からの押圧力を受けて第1位置から第2位置(図7参照)へ移動する。これに伴い、連結ギヤ95は、第1コイルバネの弾性力によって第2向き112へ移動する。その結果、連結ギヤ95が第4伝達ギヤ94と噛合した状態となる。この状態でASFモータ84が駆動されると、ASFモータ84の駆動力がモータギヤ89、第1伝達ギヤ91の大径部106及び小径部107、第2伝達ギヤ92、連結ギヤ95、第4伝達ギヤ94の順に伝達される。この第4伝達ギヤ94は給紙ローラ35と連結されているので、給紙ローラ35が回転する。
【0073】
キャリッジ41が第2向き112へ更に移動されると、入力レバー53の入力部54は、当接片33からの押圧力によって第2位置から第3位置(図8参照)へと移動される。これに伴い、連結ギヤ95は、第1コイルバネの弾性力によって第2向き112へ移動する。その結果、連結ギヤ95が欠歯ギヤ96と噛合可能な位置に配置される。この状態でLFモータ85が駆動されると、搬送ローラ60が回転する。搬送ローラ60の軸76には欠歯ギヤ96が設けられているので、欠歯ギヤ96のギヤ歯98と連結ギヤ95のギヤ歯とが噛合したときに、搬送ローラ60の回転が連結ギヤ95に伝達される。この連結ギヤ95の回転力は、第2伝達ギヤ92、第1伝達ギヤ91の小径部107及び大径部106、モータギヤ89、ASFモータ84の軸87へと順に伝達される。これにより、ASFモータ84の軸87が回転する。すなわち、第2エンコーダディスク72が回転する。なお、欠歯ギヤ96のギヤ歯98は、搬送ローラ60の軸76の外周面に1つだけ設けられているので、搬送ローラ60の1回転を1周期として、所定の回転位相において搬送ローラ60の回転がASFモータ84の軸87に伝達される。すなわち、搬送ローラ60が1周期回転すると、軸87の回転には同じ周期で回転と停止とが現れる。
【0074】
このように、入力レバー53の入力部54の位置を変更することによって、搬送ローラ60の回転をASFモータ84の軸87に伝達するか否かを選択的に切り換えることができる。
【0075】
[制御部100]
制御部100(図9参照)は、プリンタ部11のみならず、複合機10の全体動作を統括的に制御するものである。図9に示されるように、制御部100は、CPU101、ROM102、RAM103、EEPROM104、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)109を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。この制御部100が本発明の第2検出手段、補正手段として機能する。なお、図9では、各モータ83,84,85からの駆動力の伝達経路が破線で示されている。
【0076】
ROM102には、CPU101がモータ83,84,85や複合機10を制御するためのプログラムなどが格納されている。RAM103は、CPU101が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記憶する記憶領域又はデータ処理などの作業領域として使用される。このRAM103には、搬送ローラ60の現在の回転位相(以下、「現在位相θ」という。)が格納されている。この現在位相θは、搬送ローラ60が回転される毎に適宜更新される。EEPROM104は、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等を記憶する。このEEPROM104には、後述する補正値関数A(θ)が格納されている。補正値関数A(θ)は、搬送ローラ60の回転位相と、搬送ローラ60の回転位相あたりの記録用紙50の搬送量の補正値との対応関係を規定した関数である。すなわち、本実施形態では、EEPROM104が本発明の記憶手段として機能する。
【0077】
ASIC109には、駆動回路74、第2ロータリーエンコーダ82、駆動回路73、リニアエンコーダ80、駆動回路75、及び第1ロータリーエンコーダ81が接続されている。なお、制御部100には、スキャナ部12や操作パネル14などが接続されているが、これらは本発明の趣旨には直接関係しないので、ここでは説明が省略される。
【0078】
駆動回路74は、ASFモータ84を駆動させるものである。ASFモータ84は、駆動伝達機構90を介して、給紙ローラ25又は給紙ローラ35と連結される。駆動回路74は、ASIC109からの出力信号を受けてASFモータ84の軸87を正回転させる。入力レバー53の入力部54が第1位置に配置された状態でASFモータ84が正回転される。これにより、ASFモータ84の駆動力が給紙ローラ25に伝達され、給紙ローラ25が回転する。給紙カセット22内の最上位置の記録用紙50は、この給紙ローラ25の回転力を受けて搬送路18,19へ供給される。入力レバー53の入力部54が第2位置に配置された状態でASFモータ84の軸87が正回転される。これにより、ASFモータ84の駆動力が給紙ローラ35に伝達され、給紙ローラ35が回転する。給紙カセット21内の最上位置の記録用紙50は、この給紙ローラ35の回転力を受けて搬送路17,19へ供給される。
【0079】
第2ロータリーエンコーダ82は、第2エンコーダディスク72及び光学センサ56を有している(図2参照)。第2ロータリーエンコーダ82は、光学センサ56によって第2エンコーダディスク72のスリットが検出される毎にパルス信号を出力する。制御部100は、このパルス信号をカウントすることによってASFモータ84の回転量を判断し、ASFモータ84の駆動を制御する。
【0080】
後述するが、入力レバー53が第3位置に配置された状態でLFモータ85が駆動されると、搬送ローラ60の回転が駆動伝達機構90を介してASFモータ84の軸87に伝達される。駆動伝達機構90には欠歯ギヤ96が設けられているので、搬送ローラ60の回転中に、ASFモータ84の軸87の回転量が一時的に変化する。制御部100は、この第2ロータリーエンコーダ82によって検出されたASFモータ84の軸87の回転量の変化に基づいて、搬送ローラ60の回転位相の原点位置を検出する。すなわち、制御部100が本発明の第2検出手段として機能する。
【0081】
ところで、ASFモータ84は、駆動伝達機構90及び不図示のワンウェイ機構を介して給紙ローラ25,35と連結される。このため、ASFモータ84を逆回転させたときには給紙ローラ25,35は回転せず、給紙カセット21,22から記録用紙50が供給されることはない。搬送ローラ60の回転位相の原点位置を検出する処理は、LFモータ85の駆動力によってASFモータ84の軸87を逆回転させながら行われる。したがって、原点位置を検出する処理を行う際に給紙カセット21,22から記録用紙50が無駄に供給されることはない。なお、搬送ローラ60の回転位相の原点位置を検出する処理については、図13のフローチャートに基づいて後に詳述する。
【0082】
駆動回路73は、ASIC109からの出力信号を受けてCRモータ83を駆動させる。CRモータ83の駆動力は、ベルト駆動機構46を介してキャリッジ41に伝達される。これにより、キャリッジ41が幅方向121へ移動する。
【0083】
リニアエンコーダ80は、エンコーダストリップ51を、キャリッジ41に搭載されたフォトインタラプタにより検出するものである。制御部100は、このリニアエンコーダ80の検出信号に基づいて、CRモータ83の駆動を制御する。キャリッジ41の移動が制御部100によって制御されることにより、入力レバー53の入力部54が第1位置(図6参照)、第2位置(図7参照)、又は第3位置(図8参照)に配置される。これにより、駆動伝達機構90による駆動伝達が切り換えられる。
【0084】
駆動回路75は、LFモータ85を駆動させるものである。LFモータ85には、不図示のギヤなどを介して搬送ローラ60の軸76及び排紙ローラ62の軸78が連結されている。駆動回路75は、ASIC109からの出力信号を受けてLFモータ85を駆動させる。LFモータ85の駆動力は軸76,78に伝達され、搬送ローラ60と排紙ローラ62とが同時に回転する。搬送路19に供給された記録用紙50は、搬送ローラ60又は排紙ローラ62の回転力を受けて搬送路19に沿って搬送された後、給紙カセット22の上面23に排出される。
【0085】
第1ロータリーエンコーダ81は、第1エンコーダディスク71及び光学センサ55を有している(図4参照)。第1ロータリーエンコーダ81は、光学センサ55によって第1エンコーダディスク71のスリットが検出される毎にパルス信号を出力する。制御部100は、このパルス信号をカウントすることによって搬送ローラ60の回転量を判断し、LFモータ85の駆動を制御する。
【0086】
ところで、記録用紙50を高精度に搬送するためには、第1ロータリーエンコーダ81によって検出される搬送ローラ60の回転量と、搬送ローラ60の実際の回転量との間に線形性が成り立っていることが好ましい。図10(A)には、搬送ローラ60の軸76に偏心した第1エンコーダディスク71が取り付けられた状態が示されている。このような第1エンコーダディスク71の偏心、搬送ローラ60の反りやコーティングの厚みムラ、搬送ローラ60の軸76に噛合されたギヤの偏心などが原因で、第1ロータリーエンコーダ81によって検出される回転位相あたりの搬送ローラ60の回転量は、搬送ローラ60の1周分を1周期として、周期的に変動する(図10(B)参照)。図10に示される例では、第1エンコーダディスク71のBの位置が検出されている状態で第1ロータリーエンコーダ81から出力されるパルス信号あたりの記録用紙50の搬送量が多い。逆に、第1エンコーダディスク71のDの位置が検出されている状態で第1ロータリーエンコーダ81から出力されるパルス信号あたりの記録用紙50の搬送量が少ない。このように、搬送ローラ60による記録用紙50の搬送量が周期的に変動する。
【0087】
このため、制御部100は、搬送ローラ60の搬送量の周期的変動を抑制するために、LFモータ85の駆動を制御して搬送ローラ60の回転量が一様となるように補正する。EEPROM104には、この回転量の補正処理に使用される補正値関数A(θ)が記憶されている。以下、この補正値関数A(θ)を取得する処理について説明する。なお、この補正値関数A(θ)は、複合機10の工場出荷前に取得されてEEPROM104に予め書き込まれる。ただし、補正値関数A(θ)は、ユーザが複合機10の使用開始時に、説明書や操作パネル14に表示される指示に従って所定操作を行うことによってEEPROM104に書き込まれてもよい。
【0088】
[補正値関数A(θ)の取得]
本実施形態では、第2エンコーダディスク72が1周したときに記録用紙50が搬送ローラ60によって1.2インチ送られるように、搬送ローラ60が構成されている。また、記録ヘッド42のノズルの搬送向き124の密度は150dpiであり、第1エンコーダディスク71が1回転すると、第1ロータリーエンコーダ81から8640個のパルス信号が出力されるものとする。
【0089】
制御部100は、ASFモータ84の駆動を制御して給紙カセット21又は給紙カセット22から記録用紙50を搬送路19に供給する。そして、制御部100は、記録部40の動作を制御して、記録用紙50の先端側に幅方向121に長い1本の線を引く(図11(A)参照)。具体的には、制御部100は、キャリッジ41を幅方向121の一端側から他端側へ第1距離だけ移動させつつ、記録ヘッド42の搬送向き124の最上流側のノズル(第1ノズル)からインクを噴出させる。このようにして記録用紙50の先端側に1本の長線が引かれると、制御部100は、LFモータ85の駆動を制御して、0.57インチに相当するパルス信号分だけ記録用紙50を搬送させる。具体的には、制御部100は、第1ロータリーエンコーダ81から4104(=8640×0.57/1.2)個のパルス信号が出力されるまでLFモータ85を駆動させて、搬送ローラ60に記録用紙50を搬送させる。LFモータ85は、第1ロータリーエンコーダ81から出力されたパルス信号数が4104個に到達した後に停止される。
【0090】
次に、幅方向121に短い1本の短線を引く(図11(B)参照)。具体的には、制御部100は、キャリッジ41を幅方向121の一端側から他端側へ第1距離よりも短い第2距離だけ移動させつつ、記録ヘッド42の搬送向き124の最上流側のノズルから91番目のノズル(第91ノズル)からインクを噴出させる。記録ヘッド42の搬送向き124の密度が150dpiであるため、第1ノズルと第91ノズルとの搬送向き124の離間距離は、0.6(=(91−1)/150)インチである。このため、第91ノズルと上記長線とは、理想的には、搬送向き124に0.03(=0.6−0.57)インチ離間されている。
【0091】
制御部100は、記録部40に短線を引かせる動作と、LFモータ85に0.01インチに相当するパルス信号分(8640×0.01/1.2)だけ記録用紙50を搬送させる動作とを交互に繰り返す。これにより、記録用紙50に7本の短線が記録される。なお、これらの7本の短線の幅方向121の位置が異なるように、記録ヘッド42による記録動作は、キャリッジ41の幅方向121の位置が変更されながら行われる。
【0092】
そして、0.1インチ進んだ位置に長線が記録され、その長線に対して7本の短線を記録する処理が繰り返される。これにより、合計12個のパターンが記録用紙50に記録される。
【0093】
続いて、長線に最もよく重なる短線が何本目の短線であるかを判断する。具体的には、記録用紙50をスキャナ部12のコンタクトガラス上に載置して記録用紙50の画像読取をスキャナ部12に実行させる。そして、何本目の短線が長線に最もよく重なるかを制御部100に判断させる。この判断処理は、各長線についてそれぞれ行われる。図12に示される記録用紙50であれば、上の長線から順に、3,2.5,2,3,4,4,5,6,6.5,6,4,3.5と判断することができる。
【0094】
第1ノズルと第91ノズルとは、搬送向き124に0.6インチだけ離れている。このため、上記数値が4である場合には、0.6インチの目標搬送量に対して、実際に記録用紙50が0.6(=0.57+0.01×(4−1))インチ送られたことを示している。上記数値が3である場合には、0.59(=0.57+0.01×(3−1))インチの目標搬送量に対して、実際には記録用紙50が0.6インチ搬送されたことを示している。これは、図10(A)におけるB側の搬送ローラ60の周面によって記録用紙50が搬送されたことを表している。上記数値が5である場合には、0.61(=0.57+0.01×(5−1))インチの目標搬送量に対して、実際には記録用紙50が0.6インチ搬送されたことを示している。これは、図10(A)におけるD側の搬送ローラ60の周面によって記録用紙50が搬送されたことを表している。
【0095】
横軸に1/12周(720パルス)刻みでパルス数を割り当て、縦軸にパルス数当たりの搬送量を目標搬送量に対する割合で表せば、図10(A)に相当するグラフを得ることができる(図12(B)参照)。すなわち、搬送ローラ60が1周する間に、記録用紙50の搬送量が目標搬送量に対してどのようにずれるかを把握することができる。
【0096】
図12(A)に示されるパターンを記録用紙50に記録したときの最初の長線を記録したときの第1エンコーダディスク71の回転位相に対して、現在の第1エンコーダディスク71がどれだけ回転したかは、第1ロータリーエンコーダ81によって搬送ローラ60の回転を検出している限り把握することができる。したがって、記録用紙50の搬送命令が入力されたときに、前述のグラフから、現在の位置から搬送完了後の位置までの搬送ローラ60の搬送量の平均ズレを算出し、予めその影響を考慮して目標搬送量を補正すれば、記録用紙50の搬送量の周期的変動を抑制することができる。
【0097】
本実施形態では、図12(B)に示されるグラフに基づいて記録用紙50の目標搬送量を補正するための補正値関数A(θ)が生成され、EEPROM104に記憶されている。このため、複合機10の電源が切られてから再投入された場合でも、搬送ローラ60の回転位相の物理的な原点を検出することにより、搬送ローラ60の回転量を適切に補正することが可能である。
【0098】
[原点位置の取得]
以下、複合機10の電源が投入された際にプリンタ部11において行われる処理の手順について、図13のフローチャートに基づいて説明する。なお、以下のフローチャートに基づいて説明する各処理は、ROM102に記憶されているプログラムに基づいて制御部100が発行する命令に従って行われる。
【0099】
制御部100は、操作パネル14の所定の入力キーの操作の有無に基づいて、複合機10の電源が投入されたか否かを判断する(S1)。複合機10の電源が投入されていないと制御部100が判断した場合(S1:NO)、待機状態となる。制御部100は、複合機10の電源が投入されたと判断した場合(S1:YES)、駆動回路73を制御してCRモータ83を駆動させる(S2)。これにより、キャリッジ41が幅方向121へ移動される。制御部100は、リニアエンコーダ80の検出結果に基づいて、入力レバー53の入力部54が第3位置(図8参照)に配置されたか否かを判断する(S3)。入力部54が第3位置に配置されていないと制御部100が判断した場合(S3:NO)、処理がステップS2へ戻される。すなわち、入力部54が第3位置に配置されるまでCRモータ83が駆動される。
【0100】
制御部100は、入力レバー53の入力部54が第3位置に配置されたと判断した場合(S3:YES)、CRモータ83を停止させる(S4)。制御部100は、ASFモータ84が駆動されていない状態でLFモータ85を駆動させる(S5)。LFモータ85が駆動されると、搬送ローラ60及び排紙ローラ62とともに、搬送ローラ60の軸76に設けられている欠歯ギヤ96が回転する。入力レバー53の入力部54が第3位置に配置されているので、欠歯ギヤ96のギヤ歯98と連結ギヤ95のギヤ歯とが噛合することによって、搬送ローラ60の回転力が欠歯ギヤ96、連結ギヤ95、第2伝達ギヤ92、第1伝達ギヤ91の小径部107及び大径部106、モータギヤ89を介してASFモータ84の軸87に伝達され、軸87に固定されている第2エンコーダディスク72(図4参照)が回転する。
【0101】
制御部100は、LFモータ85が駆動されている間、第2エンコーダディスク72の回転数の変化を記録する(S6)。具体的には、制御部100は、第2ロータリーエンコーダ82から出力されるパルス信号の変化を監視してその情報をRAM103に一時的に格納する。この情報は、図14に示されるように、搬送ローラ60の回転位相と、第2エンコーダディスク72の回転量とが対応付けられたものである。そして、制御部100は、第1ロータリーエンコーダ81の検出結果に基づいて、搬送ローラ60が1周したか否かを判断する(S7)。具体的には、制御部100は、第1ロータリーエンコーダ81から出力されたパルス信号数が8640個に達したか否かを判断する。搬送ローラ60が1周していないと制御部100が判断した場合(S7:NO)、処理がステップS5へ戻される。すなわち、ステップS5及びステップS6の処理は、搬送ローラ60が1周するまで継続される。
【0102】
ところで、欠歯ギヤ96のギヤ歯98が形成されてない部分と、連結ギヤ95のギヤ歯とが対向した状態では、欠歯ギヤ96と連結ギヤとが噛合していないので、搬送ローラ60の回転はASFモータ84の軸87に伝達されない。搬送ローラ60が回転されて欠歯ギヤ96のギヤ歯98と連結ギヤのギヤ歯とが噛合すると、搬送ローラ60の回転がASFモータ84の軸87に伝達される。このため、搬送ローラ60が1周期に相当する回転数(本実施形態では1回転)だけ回転される毎に、搬送ローラ60の回転がASFモータ84の軸87に伝達される。このため、搬送ローラ60が1回転する毎にASFモータ84の軸87(第2エンコーダディスク72)が回転し、その回転が第2ロータリーエンコーダ82によって検出される。そして、第2ロータリーエンコーダ82によって第2エンコーダディスク72の回転が検出されたときの搬送ローラ60の回転位相θ0(図14参照)が、原点位置として制御部100によって検出される。
【0103】
制御部100は、搬送ローラ60が1周したと判断した場合(S7:YES)、LFモータ85を停止させる(S8)。そして、制御部100は、搬送ローラ60の回転位相の原点位置を検出する(S9)。具体的には、制御部100は、ステップS6の処理でRAM103に格納された情報に基づいて、ASFモータ84の軸87(第2エンコーダディスク72)の回転量の絶対値が最大となったときの搬送ローラ60の回転位相θ0を原点位置として検出する。この原点位置を示す情報は、RAM103に格納される。
【0104】
続いて、制御部100は、LFモータ85を駆動させる(S10)。そして、制御部100は、第1ロータリーエンコーダ81の検出結果と、RAM103に格納されている原点位置を示す情報とに基づいて、搬送ローラ60の現在の回転位相が原点位置となったか否かを判断する(S11)。搬送ローラ60の回転位相が原点位置となっていないと制御部100が判断した場合(S11:NO)、処理がステップS10へ戻される。すなわち、搬送ローラ60の回転位相が原点位置となるまで、LFモータ85が駆動される。制御部100は、搬送ローラ60の回転位相が原点位置になったと判断した場合(S11:YES)、LFモータ85を停止させる(S12)。
【0105】
[記録用紙50の搬送動作]
次に、複合機10に対して記録開始命令が入力された場合に、プリンタ部11において行われる処理の手順について、図15のフローチャートに基づいて説明する。
【0106】
制御部100は、記録開始命令があったか否かを判断する(S21)。具体的には、制御部100は、外部情報機器から記録開始を指示するコマンド及び印刷データを受信したか否か、或いは、操作パネル14において記録開始を指示する操作入力が行われたか否かを判断する。記録開始命令がないと制御部100が判断した場合(S21:NO)、待機状態となる。
【0107】
制御部100は、記録開始命令があったと判断した場合(S21:YES)、EEPROM104から補正値関数A(θ)を読み出す(S22)。制御部100は、RAM103から搬送ローラ60の現在位相θを読み出す(S23)。この現在位相θは、搬送ローラ60の回転向きの角度を示すものである。次に、制御部100は、記録用紙50を目標位置まで搬送させる間に第1ロータリーエンコーダ81から出力されるパルス信号数である目標回転量Xmを取得する(S24)。そして、制御部100は、ステップS22で読み出した補正値関数A(θ)に現在位相θを代入して、パルス信号数を表す補正値Cを演算する(S25)。
【0108】
制御部100は、ステップS24の処理で取得した目標回転量Xmに補正値Cを加えて、目標回転量Xmを補正する(S26)。そして、制御部100は、補正された目標回転量Xmに基づいて、現在位相θを更新する(S27)。なお、現在位相θは搬送ローラ60の回転向きの角度であるから、その値が2πを超えた場合には、その値から2πが減算される。これにより、現在位相θが常に0≦θ≦2πの関係を満たすように、現在位相θの値が調整される。
【0109】
次に、制御部100は、LFモータ85を駆動させる(S28)。そして、制御部100は、第1ロータリーエンコーダ81によって検出された搬送ローラ60の回転量が、ステップS26の処理によって補正された目標回転量Xmに達したか否かを判断する(S29)。具体的には、制御部100は、第1ロータリーエンコーダ81から出力されるパルス信号数が目標回転量Xmに達したか否かを判断する。搬送ローラ60の回転量が目標回転量Xmに達していないと制御部100が判断した場合(S29:NO)、処理がステップS28へ戻される。すなわち、搬送ローラ60の回転量が目標回転量Xmに達するまでLFモータ85が駆動される。
【0110】
搬送ローラ60が回転している間、第1ロータリーエンコーダ81によって検出される搬送ローラ60の回転量と、実際の搬送ローラ60の回転量との間には、搬送ローラ60の1周分を1周期とする周期的なズレが発生する。本実施形態では、複合機10の電源投入後に取得された搬送ローラ60の原点位置に基づいて搬送ローラ60の現在位相が判断され、現在位相に対応する補正値Cによって目標回転量Xmが補正されている。搬送ローラ60の回転量がこの補正後の目標回転量Xmに沿うようにLFモータ85の駆動が制御されるので、搬送ローラ60の回転量の周期的なズレが相殺され、記録用紙50は、目標とする位置まで精度良く搬送される。
【0111】
制御部100は、搬送ローラ60の回転量が目標回転量Xmに達したと判断した場合(S29:YES)、LFモータ85を停止させる(S30)。そして、制御部100は、記録部40に画像記録を実行させる(S31)。具体的には、制御部100は、キャリッジ41を幅方向121の一端側から他端側へ移動させつつ、記録ヘッド42からインクを噴出させる。
【0112】
制御部100は、記録用紙50の搬送動作が完了したか否かを判断する(S32)。記録用紙50の搬送動作が完了していないと制御部100が判断した場合(S32:NO)、処理がステップS24へ戻される。すなわち、ステップS24〜ステップ29の処理が繰り返される。これにより、搬送ローラ60を目標回転量Xmだけ回転させる第1処理と、記録用紙50に画像を記録する第2処理とが交互に繰り返されるので、記録用紙50に連続的な画像が記録される。記録用紙50の搬送動作が完了したと制御部100が判断した場合(S32:YES)、一連の処理が完了する。
【0113】
[本実施形態の作用効果]
以上説明したように、プリンタ部11では、給紙ローラ25,35の回転を検出するための第2ロータリーエンコーダ82を転用して搬送ローラ60の回転位相の原点位置が検出される。このため、搬送ローラ60の回転位相の原点位置を検出するためのセンサ等を新たに設ける必要がない。したがって、装置の大型化及びコストアップを伴わずに搬送ローラ60の回転位相の原点位置を検出することができる。
【0114】
また、本実施形態では、LFモータ85の回転をASFモータ84の軸87に伝達するか否かを、駆動伝達機構90によって切り換えることができる。すなわち、LFモータ85の回転を軸87に伝達する際には、入力レバー53の入力部54が第3位置に配置されることによって搬送ローラ60と軸87とが連結され、搬送ローラ60の回転力が軸87に伝達される。一方、ASFモータ84を駆動させる際には、駆動伝達機構90によって、搬送ローラ60と軸87との連結が解除され、ASFモータ84と給紙ローラ25(又は給紙ローラ35)とが駆動伝達可能に連結される。このため、搬送ローラ60の回転位相の原点位置を検出する処理によって、ASFモータ84の駆動が妨げられることはない。
【0115】
また、本実施形態では、制御部100によって検出された搬送ローラ60の回転位相の原点位置と、EEPROM104に記憶されている補正値関数A(θ)とに基づいて、搬送ローラ60の現在の回転位相に対応する補正値Cが取得される。この補正値Cによって目標回転量Xmが補正される。この補正後の目標回転量Xmだけ搬送ローラ60が回転される事によって記録用紙50の搬送量の周期的変動が抑制される。その結果、記録用紙50がほぼ一定の改行幅で間欠搬送されるので、乱れのない綺麗な画像を記録用紙50に記録することができる。
【0116】
なお、本実施形態では、第1ロータリーエンコーダ81によって搬送ローラ60の回転量を検出する形態について説明したが、第1ロータリーエンコーダ81に代えて例えば磁気センサを用いて搬送ローラ60の回転量を検出するようにしてもよい。
【0117】
また、本実施形態では、LFモータ85がDCモータである形態について説明したが、LFモータ85はステッピングモータであってもよい。この場合、第1ロータリーエンコーダ81は不要である。
【0118】
また、本実施形態では、本発明に係る原点検出装置及びシート搬送装置がプリンタ部11に適用された場合について説明したが、原点検出装置及びシート搬送装置は、スキャナ部12に組み込まれて、原稿を搬送する手段(ADF29)として使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る複合機10の外観構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、プリンタ部11の内部構造を示す模式図である。
【図3】図3は、プリンタ部11の内部構成を示す部分拡大斜視図である。
【図4】図4は、駆動伝達機構90の外観構成を示す斜視図である。
【図5】図5は、駆動伝達機構90の外観構成を示す斜視図である。
【図6】図6は、駆動伝達機構90の拡大斜視図であり、入力レバー53の入力部54が第1位置に配置された状態を示す。
【図7】図7は、駆動伝達機構90の拡大斜視図であり、入力レバー53の入力部54が第2位置に配置された状態を示す。
【図8】図8は、駆動伝達機構90の拡大斜視図であり、入力レバー53の入力部54が第3位置に配置された状態を示す。
【図9】図9は、制御部100の構成例を示すブロック図である。
【図10】図10は、記録用紙50の搬送量の周期的変動について説明するための図であり、(A)は第1エンコーダディスク71と光学センサ55の模式図であり、(B)は第1ロータリーエンコーダ81から出力されるパルス信号あたりの記録用紙50の搬送量を例示するグラフである。
【図11】図11は、補正値関数A(θ)を取得する処理について説明するための図である。
【図12】図12は、補正値関数A(θ)を取得する処理について説明するための図である。
【図13】図13は、複合機10の電源が投入された際に複合機10で行われる処理の手順を例示するフローチャートである。
【図14】図14は、搬送ローラ60の回転が駆動伝達機構90を介してASFモータ84の軸87へ伝達されたときの軸87の回転数の変化を示すグラフである。
【図15】図15は、記録開始命令があったときに複合機10で行われる処理の手順を例示するフローチャートである。
【符号の説明】
【0120】
11・・・プリンタ部(本発明の画像記録装置の一例)
17,18,19・・・搬送路
21・・・給紙カセット(本発明の載置部の一例)
22・・・給紙カセット(本発明の載置部の一例)
25,35・・・給紙ローラ(本発明の第2回転体の一例、本発明の供給ローラに相当)
40・・・記録部(本発明の記録手段の一例)
50・・・記録用紙(本発明のシートの一例)
60・・・搬送ローラ(本発明の第1回転体の一例、本発明の搬送ローラに相当)
76・・・軸(本発明の回転軸の一例)
82・・・第2ロータリーエンコーダ(本発明の第1検出手段の一例)
84・・・ASFモータ(本発明の第2モータの一例)
85・・・LFモータ(本発明の第1モータの一例)
87・・・軸(本発明の同期軸の一例)
90・・・駆動伝達機構
96・・・欠歯ギヤ
100・・・制御部(本発明の第2検出手段、補正手段の一例)
104・・・EEPROM(本発明の記憶手段の一例)
124・・・搬送向き
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置の大型化及びコストアップを伴わずに回転体の回転位相の原点位置を検出することができる原点検出装置、この原点検出装置を備えるシート搬送装置、及び乱れのない綺麗な画像をシートに記録することができる画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタやスキャナは、記録用紙や原稿などのシートを搬送するシート搬送装置を備えている。シート搬送装置は、シートに当接された状態で回転駆動されるローラを備えている。シートは、このローラの回転力を受けて搬送される。乱れのない綺麗な画像を記録用紙に記録したり、高画質な原稿の画像読取を実現するためには、シートの搬送量を正確に制御する必要がある。しかしながら、シート搬送装置では、ローラの回転量を検出するためのセンサの取り付け誤差、ローラに対するギヤの組み付け誤差などが原因で、ローラの回転量を正確に制御できないことがある。また、ローラの回転量が正確に制御されていたとしても、ローラの加工誤差が原因でシートの搬送が一様にならないことがある。このため、シート搬送装置では、これらの誤差が原因でシートの搬送量が周期的に変動する。従来のシート搬送装置には、このシートの搬送量の周期的変動を検出してシートの搬送量を補正する手段が設けられている(例えば特許文献1〜4参照。)。
【0003】
特許文献3に記載のインクジェット記録装置は、ロータリーエンコーダによるローラの回転量の検出結果に対してローラの回転量を補正しつつシートに画像を記録する。ローラの回転量が好適に補正されている場合には、濃度変化の小さいパターンがシートに記録される。逆に、ローラの回転量が適切に補正されていない場合には、濃度変化が大きいパターンがシートに記録される。インクジェット記録装置では、ローラの回転量の補正量を変更しながら複数のパターンがシートに記録され、これらのパターンの中で濃度むらが最小となるときのローラの回転量の補正値が取得されて当該補正値がメモリに記憶される。そして、この補正値に基づいてローラの回転量が補正される。
【0004】
特許文献1には、ロータリーエンコーダによって検出されたローラの回転速度からエンコーダディスクの偏心の影響を除くための手段が開示されている。この文献に記載されている回転速度検出装置は、位相検出用回転円板及び光センサを備えている。位相検出用回転円板は、1個の光検出領域が設けられた円盤状のものであり、エンコーダディスクとともにローラの回転軸に固定されている。光センサは、この位相検出用回転円板の周縁を挟むように、発光素子及び受光素子が所定の間隔を隔てて対向して配置されたものである。ローラが1回転する毎に、光センサから1個のパルス信号が出力され、このパルス信号に基づいてローラの回転軸の原点位置が特定される。この原点位置に基づいてローラ1周分を1周期として発生するシートの搬送量の周期的変動が把握され、その周期的変動を相殺するようにローラの回転が制御される。
【0005】
特許文献2に記載の回転制御装置は、ロータリーエンコーダの回転を検出する3つの回転センサを備えている。回転センサは、発光素子及び受光素子が所定の空間を隔てて対向して配置されたものである。モータの出力軸には、ロータリーエンコーダのエンコーダディスクが固定されている。各回転センサは、上記空間内にエンコーダディスクの周縁が位置し、且つエンコーダディスクの周方向に互いに90°の角度で並ぶように配置されている。回転制御装置では、各回転センサからの出力信号に対して所定の演算処理を行うことによってモータの出力軸の回転速度が算出される。そして、この回転速度が目標回転速度と一致するようにモータの回転が制御される。
【0006】
特許文献4に記載の用紙搬送装置では、演算によって得られた補正値に基づいて搬送ローラの目標回転量が補正されることによって搬送ローラの回転量の周期的なズレが相殺される。また、この用紙搬送装置では、搬送ローラの定速回転が終了したときの当該搬送ローラの位置を基準位置として、搬送ローラの現在の回転位相が決定される。そして、搬送ローラが回転されると、上記基準位置に対する搬送ローラの回転量に応じて、搬送ローラの現在の回転位相が更新される。
【0007】
【特許文献1】特開平10−38902号公報
【特許文献2】特開2005−168280号公報
【特許文献3】特開2006−224380号公報
【特許文献4】特開2007−197186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献3に記載の装置では、装置の電源が切られるとローラの回転位相の原点位置が分からなくなるので、電源を入れ直す毎にシートにパターンを記録して補正値を取得する必要がある。これに対して、特許文献1に記載の装置は、電源を入れ直した際に光センサから出力されるパルス信号に基づいてローラの回転位相の原点位置を容易に検出でき、特許文献2に記載の装置は、原点位置を検出する必要がないため、特許文献3に記載の装置で行われるような面倒な処理が不要である。しかしながら、特許文献1に記載の装置は、原点位置を検出するための位相検出用回転円板及び光センサが必要であり、特許文献2に記載の装置は、3つの回転センサが必要であるため、装置が大型化するとともにコストが嵩むといった別の問題がある。また、特許文献2に記載の装置は、モータの出力軸の回転速度からロータリーエンコーダの中心位置のズレの影響を除くことはできるが、モータの出力軸の偏心などその他の偏心については、原理的に補正することができない。
【0009】
これに対して、特許文献4に記載の装置は、搬送ローラの現在の回転位相が演算によって取得されるので、搬送ローラの回転位相の原点位置を検出するための機構を有している必要がなく、装置を安価に構成することができる。しかしながら、搬送ローラの現在の回転位相が演算によって取得されるので、シートに綺麗な画像を記録するにはシートの搬送精度が十分であるとは言えなかった。
【0010】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、装置の大型化及びコストアップを伴わずに回転体の原点位置を検出することができる原点検出装置、この原点検出装置を備えるシート搬送装置、及び乱れのない綺麗な画像をシートに記録することができる画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1) 本発明に係る原点検出装置は、第1モータと、第2モータと、第1検出手段と、駆動伝達機構と、第2検出手段と、を備える。第1モータは、第1回転体を回転制御しつつ回転させる。第2モータは、第2回転体を回転制御しつつ回転させる。第1検出手段は、上記第2モータと同期して回転する同期軸の回転量を検出する。駆動伝達機構は、上記第1回転体の整数回の回転を1周期として所定の回転位相において上記第1回転体の回転を上記同期軸に伝達する。第2検出手段は、上記第1回転体の回転位相と上記第1検出手段の検出結果とに基づいて、上記第1回転体の回転位相の原点位置を検出する。
【0012】
第1モータは、例えばDCモータやステッピングモータである。第2モータは、例えばDCモータである。本発明の原点検出装置では、第2モータが駆動されていない状態で第1モータが駆動される。第1モータが駆動されると、第1回転体が回転する。第1回転体の回転は、駆動伝達機構を介して上記同期軸に伝達される。この同期軸は、第2回転体の軸であってもよいし、第2回転体と同期回転する軸であってもよい。第1回転体が1周期に相当する回転数だけ回転される毎に、第1回転体の回転が同期軸に伝達される。このため、第1回転体が1周期分に相当する回転数だけ回転される毎に同期軸が回転し、その回転が第1検出手段によって検出される。そして、第1検出手段によって同期軸の回転が検出されたときの第1回転体の回転位相が、原点位置として第2検出手段によって検出される。なお、第1検出手段としては、例えば、同期軸に固定されたエンコーダディスクと、エンコーダディスクの周縁が配置される間隔を隔てて発光素子及び受光素子が対向して配置された光学センサと、を備えるものが挙げられる。
【0013】
このように、第2回転体の回転を検出するための第1検出手段を転用して第1回転体の回転位相の原点位置が検出されるので、原点位置を検出するためのセンサ等を新たに設ける必要がない。すなわち、本発明の原点検出装置によれば、装置の大型化及びコストアップを伴わずに第1回転体の原点位置を検出することが可能となる。
【0014】
なお、本明細書においては別段の定めがない限り、「方向」とは、例えば+,−のように相対する向きを有する直線で表されるものであり、「向き」とは、方向のうち例えば+又は−のように1個のアローヘッドを有する矢印で表されるものである。
【0015】
(2) 上記駆動伝達機構は、上記第1回転体の回転軸と上記同期軸との間に介在された欠歯ギヤを含んでいてもよい。
【0016】
欠歯ギヤは、ギヤ歯が形成された部分と、ギヤ歯が形成されていない部分と、を有している。例えば、欠歯ギヤと上記同期軸との間には、外周面に一様にギヤ歯が形成された伝達ギヤが設けられている。欠歯ギヤのギヤ歯が形成されていない部分と、伝達ギヤのギヤ歯とが対向した状態では、欠歯ギヤと伝達ギヤとが噛合していないので、第1回転体の回転は同期軸に伝達されない。欠歯ギヤのギヤ歯が形成されている部分と、伝達ギヤのギヤ歯とが対向した状態では、欠歯ギヤと伝達ギヤとが噛合するので、第1回転体の回転が同期軸に伝達される。したがって、第1回転体が1周期回転すると、同期軸の回転には同じ周期で回転と停止とが現れる。このように欠歯ギヤを利用することで、本発明の駆動伝達機構が簡単に実現される。
【0017】
(3) 上記駆動伝達機構は、上記第1回転体の回転を上記同期軸に伝達するか否かを選択的に切り換え可能である。
【0018】
第1回転体の回転位相の原点位置を検出する際には、駆動伝達機構によって第1回転体と同期軸とが連結されるので、第1回転体の回転力が同期軸に伝達される。一方、第2モータを駆動させる際には、駆動伝達機構によって、例えば、第1回転体と同期軸との連結が解除され、第2モータと第2回転体とが駆動伝達可能に連結される。このため、第1回転体の回転位相の原点位置を検出する処理によって、第2モータの駆動が妨げられることはない。
【0019】
(4) また、本発明に係るシート搬送装置は、前述の原点検出装置と、シートが載置される載置部と、を備え、上記第2回転体は、上記載置部から搬送路へシートを供給する供給ローラであり、上記第1回転体は、上記搬送路に沿ってシートを間欠搬送する搬送ローラである。
【0020】
搬送ローラ及び供給ローラ並びに第1モータ及び第2モータは、例えば、インクジェットプリンタに代表される画像記録装置や、ADF(Auto Document Feeder:自動原稿搬送装置)を備えるスキャナ等に組み込まれ、シートを搬送する手段として使用される。このシート搬送装置では、供給ローラの回転を検出するための第1検出手段を転用して搬送ローラの回転位相の原点位置が検出される。このため、シート搬送装置の大型化及びコストアップを伴わずに搬送ローラの回転位相の原点位置を検出することが可能となる。
【0021】
(5) 上記搬送ローラの回転位相と、当該搬送ローラの目標回転量の補正値との対応関係を記憶する記憶手段と、上記第1モータの駆動を制御して上記搬送ローラの回転量を補正する補正手段と、を備え、上記補正手段は、上記第2検出手段によって検出された原点位置と、上記記憶手段に記憶されている上記対応関係とに基づいて、上記第1モータの駆動を制御するものでもよい。
【0022】
記録用紙が一定の改行幅で間欠搬送されるように、搬送ローラの目標回転量が予め決められている。第2検出手段によって検出された原点位置に基づいて、原点位置に対する搬送ローラの現在の回転位相が判断される。記憶手段に記憶されている対応関係に基づいて、現在の回転位相に対する補正値が取得される。この補正値によって上記目標搬送量が補正され、シートが当該目標搬送量だけ搬送されるように第1モータの駆動が制御される。これにより、シートの搬送量の周期的変動が抑制される。
【0023】
(6) また、本発明に係る画像記録装置は、前述のシート搬送装置と、上記搬送ローラよりも上記シートの搬送向きの下流側に配置され、上記搬送ローラが間欠する毎に上記シートに対して画像を記録する記録手段と、を備える。
【0024】
シートがほぼ一定の改行幅で間欠搬送されるので、乱れのない綺麗な画像がシートに記録される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、第2回転体の回転を検出するための第1検出手段を転用して第1回転体の回転位相の原点位置が検出されるので、原点位置を検出するためのセンサ等を新たに設ける必要がない。したがって、装置の大型化及びコストアップを伴わずに第1回転体の原点位置を検出することができる。
【0026】
また、本発明によれば、供給ローラの回転を検出するための第1検出手段を転用して搬送ローラの回転位相の原点位置が検出されるので、シート搬送装置の大型化及びコストアップを伴わずに搬送ローラの回転位相の原点位置を検出することができる。
【0027】
また、本発明によれば、センサ等を追加することなく搬送ローラの原点位置を検出することができ、その原点位置を利用してシートの搬送量の周期的変動を抑制して乱れのない綺麗な画像をシートに記録することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更され得る。
【0029】
[図面の説明]
図1は、本発明の一実施形態に係る複合機10の外観構成を示す斜視図である。図2は、プリンタ部11の内部構造を示す模式図である。図3は、プリンタ部11の内部構成を示す部分拡大斜視図である。図4及び図5は、駆動伝達機構90の外観構成を示す斜視図である。図6は、駆動伝達機構90の拡大斜視図であり、入力レバー53の入力部54が第1位置に配置された状態を示す。図7は、駆動伝達機構90の拡大斜視図であり、入力レバー53の入力部54が第2位置に配置された状態を示す。図8は、駆動伝達機構90の拡大斜視図であり、入力レバー53の入力部54が第3位置に配置された状態を示す。図9は、制御部100の構成例を示すブロック図である。図10は、記録用紙50の搬送量の周期的変動について説明するための図であり、(A)は第1エンコーダディスク71と光学センサ55の模式図であり、(B)は第1ロータリーエンコーダ81から出力されるパルス信号あたりの記録用紙50の搬送量を例示するグラフである。図11及び図12は、補正値関数A(θ)を取得する処理について説明するための図である。図13は、複合機10の電源が投入された際に複合機10で行われる処理の手順を例示するフローチャートである。図14は、搬送ローラ60の回転が駆動伝達機構90を介してASFモータ84の軸87へ伝達されたときの軸87の回転数の変化を示すグラフである。図15は、記録開始命令があったときに複合機10で行われる処理の手順を例示するフローチャートである。なお、図2に記載の給紙カセット21や給紙カセット22は、実際の形状を概念的に簡略化して記載したものであり、実際の形状とは異なっている。また、図2では、第1エンコーダディスク71及び光学センサ55が省略されている。
【0030】
[複合機10の概略構成]
図1に示されるように、複合機10は、プリンタ部11とスキャナ部12とを一体的に備えており、プリント機能、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。プリンタ部11が本発明に係る画像記録装置に相当する。なお、複合機10は、必ずしもスキャナ部12を有している必要はなく、スキャナ機能やコピー機能を有しない単機能のプリンタとして本発明に係る画像記録装置が実施されてもよい。
【0031】
複合機10は、高さ方向122よりも幅方向121及び奥行き方向123に長い幅広薄型の概ね直方体形状に構成されている。複合機10の上部にスキャナ部12が設けられている。スキャナ部12は、原稿台20及び原稿カバー15を備えている。原稿台20は、いわゆるフラットベッドスキャナとして機能するものである。原稿カバー15は、原稿台20に対して開閉可能に構成されており、複合機10の天板として機能するものである。原稿台20の上面には、コンタクトガラス(不図示)が設けられており、原稿台20の内部には奥行き方向123へ延出されたラインセンサが幅方向121へ移動可能に配置されている。コンタクトガラスに載置された原稿は、このラインセンサによって画像が読み取られる。
【0032】
原稿カバー15には、ADF(Auto Document Feeder:自動原稿搬送装置)29が設けられている。ADF29は、原稿トレイ30に載置された原稿を搬送路(不図示)を経て原稿排出トレイ31へ搬送するものである。原稿は、ADF29によって搬送される過程において、所定の読取位置に静止状態で配置された上記ラインセンサによってその画像が読み取られる。
【0033】
複合機10の下部にプリンタ部11が設けられている。プリンタ部11の正面側に開口13が形成されている。プリンタ部11には、開口13を通じて給紙カセット21(本発明の載置部の一例)及び給紙カセット22(本発明の載置部の一例)が装着される。給紙カセット21,22には、定形の矩形の記録用紙50(本発明のシートの一例、図2参照)が載置される。プリンタ部11では、給紙カセット21又は給紙カセット22からプリンタ部11内へ記録用紙50が選択的に供給される。この記録用紙50は、記録部40(本発明の記録手段の一例、図2参照)によって画像が記録された後に給紙カセット22の上面23に排出される。すなわち、上面23は、いわゆる排紙トレイとして機能するものである。
【0034】
複合機10は、主にコンピュータなどの外部情報機器(不図示)と接続された状態で使用される。プリンタ部11は、外部情報機器から受信した印刷データやスキャナ部12で読み取られた原稿の画像データに基づいて、記録用紙50に画像を記録する。
【0035】
複合機10の正面上部に操作パネル14が設けられている。操作パネル14には、各種情報を表示するディスプレイや情報の入力を受け付ける入力キーが設けられている。複合機10は、操作パネル14から入力された指示情報、又は外部情報機器からプリンタドライバやスキャナドライバなどを通じて送信される指示情報に基づいて動作する。
【0036】
[プリンタ部11]
以下、図2〜図8を参照しつつ、プリンタ部11の構成について説明する。プリンタ部11は、大別して、給紙カセット21,22、第1供給部28、第2供給部38、記録部40、ASFモータ84(本発明の第2モータの一例)、搬送ローラ対59、排出ローラ対64、LFモータ85(本発明の第1モータの一例)、第2ロータリーエンコーダ82(本発明の第1検出手段の一例)、第1ロータリーエンコーダ81、及び駆動伝達機構90(本発明の駆動伝達機構の一例)を備えている。本発明に係る原点検出装置、及びシート搬送装置は、本実施形態では、第1供給部28、第2供給部38、ASF(Auto Sheet Feed)モータ84、搬送ローラ対59、排出ローラ対64、LF(Line Feed)モータ85、第2ロータリーエンコーダ82、第1ロータリーエンコーダ81、駆動伝達機構90、及び後述する制御部100によって構成されている。
【0037】
給紙カセット22は、複合機10の背面側(図2における右側)の一部が開口された容器形状のものであり、その内部空間に記録用紙50が積層状態で載置される。給紙カセット22には、例えば、A3サイズ以下のA4サイズ、B5サイズ、はがきサイズ等の各種サイズの記録用紙50が収容可能である。給紙カセット22の上面23は、複合機10の正面側(図2における左側)に設けられている。
【0038】
給紙カセット21は、複合機10の背面側の一部が開口された容器形状のものであり、その内部空間に記録用紙50が積層状態で載置される。給紙カセット21には、例えば、A3サイズ以下のA4サイズ、B5サイズ、はがきサイズ等の各種サイズの記録用紙50が収容可能である。給紙カセット22に収容されている記録用紙50とサイズや種類が異なる記録用紙50が給紙カセット21に収容されることにより、記録用紙50を入れ換えることなく、2種類の記録用紙50を使用することができる。
【0039】
[第1供給部28]
給紙カセット22の傾斜板24の上側には、湾曲状に形成された搬送路18が設けられている。プリンタ部11に給紙カセット22が装着されると、傾斜板24が搬送路18の下方に配置され、且つ、給紙カセット22の上側に第1供給部28が配置される。第1供給部28は、給紙ローラ25(本発明の第2回転体の一例、本発明の供給ローラに相当)、アーム26、及び軸27を有している。給紙ローラ25は、アーム26の先端側に回転可能に設けられている。アーム26は、プリンタ部11の筐体に支持された軸27に回動可能に設けられている。アーム26は、自重によって或いはバネ等による弾性力を受けて給紙カセット22側へ回動付勢されている。
【0040】
[第2供給部38]
給紙カセット21の傾斜板34の上側には、湾曲状に形成された搬送路17が設けられている。プリンタ部11に給紙カセット21が装着されると、傾斜板34が搬送路17の下方に配置され、且つ、給紙カセット21の上側に第2供給部38が配置される。第2供給部38は、給紙ローラ35(本発明の第2回転体の一例、本発明の供給ローラに相当)、アーム36、及び軸37を有している。給紙ローラ35は、アーム36の先端側に回転可能に設けられている。アーム36は、プリンタ部11の筐体に支持された軸37に回動可能に設けられている。アーム36は、自重によって或いはバネ等による弾性力を受けて給紙カセット21側へ回動付勢されている。
【0041】
[ASFモータ84]
プリンタ部11は、給紙ローラ25及び給紙ローラ35を回転制御しつつ回転させるASFモータ84を備えている(図4及び図5参照)。ASFモータ84としては、例えばDCモータが挙げられる。ASFモータ84の駆動力は、後述する駆動伝達機構90(図4及び図5参照)によって給紙ローラ25及び給紙ローラ35に選択的に伝達される。
【0042】
プリンタ部11の内部には、搬送路18及び搬送路17と連続する搬送路19(本発明の搬送路の一例)が設けられている。搬送路19は、搬送路18又は搬送路17に沿って搬送された記録用紙50が搬送される経路であり、搬送路18と搬送路17とが合流する位置から複合機10の正面側へ向けて給紙カセット22の上面23の上方まで延出されている。
【0043】
給紙トレイ22から搬送路18,19へ記録用紙50を供給する場合、ASFモータ84の駆動力が後述する駆動伝達機構90、軸27、及びアーム26に設けられた動力伝達機構(不図示)を介して給紙ローラ25へ伝達される。これにより、給紙ローラ25が回転する。給紙トレイ22内の最上位置の記録用紙50は、給紙ローラ25の回転力を受けて傾斜板24に沿って搬送路18へ送りされる。
【0044】
給紙トレイ21から搬送路17,19へ記録用紙50を供給する場合、ASFモータ84の駆動力が駆動伝達機構90、軸37、及びアーム36に設けられた動力伝達機構(不図示)を介して給紙ローラ35へ伝達される。これにより、給紙ローラ35が回転する。給紙トレイ21内の最上位置の記録用紙50は、給紙ローラ35の回転力を受けて傾斜板34に沿って搬送路17へ送り出される。このように、ASFモータ84の駆動力が給紙ローラ25又は給紙ローラ35に伝達されることにより、給紙カセット22又は給紙カセット21から搬送路19へ記録用紙50が選択的に供給される。
【0045】
搬送路19にプラテン43(図2及び図3参照)が設けられている。プラテン43は、搬送路19に沿って搬送される記録用紙50を下から支持するものである。このプラテン43の上側に記録部40が配置されている。この記録部40については後述する。
【0046】
[搬送ローラ対59]
プラテン43よりも記録用紙50の搬送向き124の上流側に搬送ローラ対59が設けられている。搬送ローラ対59は、搬送ローラ60(本発明の第1回転体の一例、本発明の搬送ローラに相当)及びピンチローラ61からなる。搬送ローラ60は、搬送路19の上側に配置されており、LFモータ85(図4及び図5参照)からの駆動力を受けて回転する。ピンチローラ61は、搬送路19を挟んで搬送ローラ60の下側に回転自在に配置されており、搬送ローラ60へ向けてバネによって付勢されている。
【0047】
[排出ローラ対64]
プラテン43よりも記録用紙50の搬送向き124の下流側に排出ローラ対64が設けられている。排出ローラ対64は、排紙ローラ62及び拍車63からなる。排紙ローラ62は、搬送路19の下側に配置されており、LFモータ85からの駆動力を受けて回転する。拍車63は、搬送路19を挟んで排紙ローラ62の上側に回転自在に配置されており、排紙ローラ62へ向けてバネによって付勢されている。
【0048】
[LFモータ85]
プリンタ部11には、LFモータ85(図4及び図5参照)が設けられている。LFモータ85は、搬送ローラ60及び排紙ローラ62を回転制御しつつ回転させるものである。LFモータ85としては、例えばDCモータが挙げられる。LFモータ85の軸77は、不図示のギヤやプーリを介して搬送ローラ60の軸76(本発明の回転軸の一例)及び排紙ローラ62の軸78と連結されている。このため、LFモータ85の駆動力は、軸76及び軸78の両方に伝達される。これにより、搬送ローラ60及び排紙ローラ62が同期回転する。このため、排紙ローラ62及び拍車63は、搬送ローラ60及びピンチローラ61と同時に回転する。搬送ローラ60及び排紙ローラ62は、記録部40による画像記録が行われる際には、LFモータ85によって間欠駆動される。間欠駆動とは、所定の目標搬送量に相当する回転量だけ搬送ローラ60及び排紙ローラ62が回転するまでLFモータ85が連続して駆動され、目標搬送量に到達すると所定時間だけLFモータ85が停止され、これらを交互に繰り返す駆動方式である。
【0049】
搬送路19に供給された記録用紙50が搬送ローラ60及びピンチローラ61の間に到達すると、その記録用紙50は、搬送ローラ60とピンチローラ61とに挟持された状態で、搬送ローラ60の回転力を受けてプラテン43上へ送り出される。この記録用紙50が排紙ローラ62及び拍車63の間に到達すると、その記録用紙50は、排紙ローラ62と拍車63とに挟持された状態で、排紙ローラ62の回転力を受けて給紙カセット22の上方へ送り出される。
【0050】
このように、記録用紙50は、搬送ローラ60及び排紙ローラ62の少なくとも一方の回転力を受けてプラテン43上を搬送される。その際、搬送ローラ60及び排紙ローラ62が間欠駆動されているので、記録用紙50は、搬送路19に沿って間欠搬送される。すなわち、記録用紙50を目標搬送量だけ搬送する第1処理と、記録用紙50を所定時間だけ静止させる第2処理とが交互に繰り返される。この第2処理が行われる間に、記録部40による画像記録が行われる。
【0051】
なお、記録部40による画像記録が行われていない間は、搬送ローラ60及び排紙ローラ62が間欠駆動される必要はない。したがって、記録ヘッド42による記録動作の開始前や記録動作が完了した後は、搬送ローラ60及び排紙ローラ62が連続して回転される。
【0052】
[記録部40]
記録部40は、プラテン43の上側にプラテン43と所定間隔を隔てて対向して配置されている。すなわち、記録部40は、搬送ローラ対59よりも搬送向き124の下流側に配置されている。記録部40は、インクジェット記録方式の記録ヘッド42と、キャリッジ41とを備えている。キャリッジ41は、幅方向121(図2の紙面に垂直な方向)へ移動可能に構成されている。記録ヘッド42は、このキャリッジ41に搭載されている。
【0053】
図3に示されるように、搬送路19の上側において、搬送向き124に所定の間隔を隔てて、一対のガイドフレーム44,45が設けられている。ガイドフレーム44,45は、幅方向121へ延設されている。ガイドフレーム44は、ガイドフレーム45よりも搬送向き124の上流側に設けられている。キャリッジ41は、ガイドフレーム44,45を跨ぐようにしてガイドフレーム44,45に載置されている。これにより、キャリッジ41は、搬送路19を挟んでプラテン43と対向して配置されている(図2参照)。なお、図2では、ガイドフレーム44,45は省略されている。
【0054】
キャリッジ41の搬送向き124の上流側の端部は、ガイドフレーム44の上面に摺動自在に支持されている。キャリッジ41の搬送向き124の下流側の端部は、ガイドレーム45の上面に摺動自在に支持されている。ガイドフレーム45の端部39は、ガイドフレーム45が上方へ向かって略直角に曲折されたものであり、幅方向121へ延出されている。キャリッジ41は、この端部39を不図示のローラ等によって挟持している。これにより、キャリッジ41は、端部39を基準として幅方向121への移動が可能である。
【0055】
図3に示されるように、キャリッジ41の搬送向き124の上流側端部には、搬送向き124の上流側へ水平に突出する当接片33が設けられている。当接片33は、キャリッジ41が幅方向121へ移動されることによってキャリッジ41と同じ向きに移動する。後述するが、ガイドフレーム44の開口部52(図3参照)には、ガイドフレーム44の上側に突出するように入力レバー53(図5参照)が配置されている。この当接片33は、キャリッジ41の第2向き112への移動に伴って入力レバー53と当接する。これにより、入力レバー53の幅方向121の位置が変更される。この入力レバー53の幅方向121の位置が変更されることによる作用効果は、後に詳述する。
【0056】
ガイドフレーム45の上面にベルト駆動機構46が設けられている。ベルト駆動機構46は、駆動プーリ47、従動プーリ48、及び駆動ベルト49を有している。駆動プーリ47及び従動プーリ48は、幅方向121の両端付近にそれぞれ設けられている。駆動ベルト49は、内側に歯が設けられた無端環状のものであり、駆動プーリ47と従動プーリ48との間に架け渡されている。
【0057】
駆動プーリ47の軸にCRモータ83(図9参照)が接続されている。駆動プーリ47は、CRモータ83の駆動力を受けて回転する。この駆動プーリ47の回転力によって駆動ベルト49が周運動する。キャリッジ41は、この駆動ベルト49に固定されているので、駆動ベルト49が周運動することによって幅方向121へ移動する。
【0058】
ガイドフレーム45には、エンコーダストリップ51が設けられている。エンコーダストリップ51は、縁部39にわたって架設されている。エンコーダストリップ51は、透明な樹脂からなる帯状のものである。エンコーダストリップ51には、光を遮る遮光部と、光を透過させる透光部とが等ピッチで交互に並んだパターンが記されている。キャリッジ41には、このエンコーダストリップ51のパターンを検出するためのフォトインタラプタ(不図示)が搭載されている。
【0059】
記録ヘッド42は、そのノズルがキャリッジ41の裏面から露出されている(図2参照)。ノズルは、幅方向121及び奥行き方向123に多数並べられている。この記録ヘッド42には、プリンタ部11の内部に配置されたインクカートリッジ(不図示)からインクが供給される。キャリッジ41が走査方向(幅方向121)へ移動される間に、記録ヘッド42のノズルから微小なインク滴がプラテン43へ向けて選択的に噴出される。この一連の処理は、前述の第2処理において行われる。すなわち、記録ヘッド42は、搬送ローラ60及び排紙ローラ62が間欠する(停止する)毎に、記録用紙50に対して画像を記録する。このため、搬送ローラ対59及び排出ローラ対64による第1処理と第2処理とが交互に繰り返されることによって、記録用紙50に連続的な画像が記録される。
【0060】
[第1エンコーダディスク71、光学センサ55]
搬送ローラ60の軸76には、第1エンコーダディスク71が設けられている。第1エンコーダディスク71は、透明な円盤状のものであり、光を遮るマークが周方向に所定ピッチで記されている。この第1エンコーダディスク71は、図3〜図5に示されるように、搬送ローラ60の軸76に固定されており、搬送ローラ60と共に回転する。光学センサ55は、発光素子及び受光素子が幅方向121に所定の間隔を隔てて対向して配置されたものである。光学センサ55は、発光素子と受光素子との間の空間に第1エンコーダディスク71の周縁が位置するように設けられている。光学センサ55の受光素子で光が受光されると、受光した光の輝度に応じたレベルの電気信号が光学センサ55で生成される。発光素子と受光素子との間にマークが位置している状態では、LOWレベルの電気信号が生成される。発光素子と受光素子との間にマークが位置していない状態では、HIレベルの電気信号が生成される。すなわち、光学センサ55によって第1エンコーダディスク71のマークが検出される毎にパルス信号が生成される。このパルス信号は、制御部100へと出力される。
【0061】
[第2エンコーダディスク72、光学センサ56]
ASFモータ84の軸87(本発明の同期軸の一例、図6参照)には、第2エンコーダディスク72(図4参照)が設けられている。第2エンコーダディスク72は、透明な円盤状のものであり、光を遮るマークが周方向に所定ピッチで記されている。この第2エンコーダディスク72は、本実施形態ではASFモータ84の軸87に固定されている。すなわち、第2エンコーダディスク72は、軸87と共に、ASFモータ84に同期して回転する。光学センサ56は、発光素子及び受光素子が幅方向121に所定の間隔を隔てて対向して配置されたものである。光学センサ56は、発光素子と受光素子との間の空間に第2エンコーダディスク72の周縁が位置するように設けられている。光学センサ56の受光素子で光が受光されると、受光した光の輝度に応じたレベルの電気信号が光学センサ56で生成される。発光素子と受光素子との間にマークが位置している状態では、LOWレベルの電気信号が生成される。発光素子と受光素子との間にマークが位置していない状態では、HIレベルの電気信号が生成される。すなわち、光学センサ56によって第2エンコーダディスク72のマークが検出される毎にパルス信号が生成される。このパルス信号は、制御部100へと出力される。
【0062】
なお、第2エンコーダディスク72は、ASFモータ84の軸87とは異なる軸に固定されていてもよい。すなわち、ASFモータ84と同期して回転する軸であれば、第2エンコーダディスク72は、例えば、後述する第1伝達ギヤ91に固定されていてもよい。
【0063】
[駆動伝達機構90]
以下、駆動伝達機構90について説明する。駆動伝達機構90は、ASFモータ84の駆動力を給紙ローラ25又は給紙ローラ35へ選択的に伝達し、搬送ローラ60の回転をASFモータ84の軸87へ伝達するものである。駆動伝達機構90は、ガイドフレーム44,45などにより構成されるフレームに設けられている。なお、図2及び図3では、この駆動伝達機構90が省略されている。
【0064】
図5に示されるように、駆動伝達機構90は、モータギヤ89、第1伝達ギヤ91、第2伝達ギヤ92、連結ギヤ95、入力レバー53、第3伝達ギヤ93、第4伝達ギヤ94、及び欠歯ギヤ96(本発明の欠歯ギヤの一例)を有している。なお、モータギヤ89、第1伝達ギヤ91の大径部106と小径部107、第2伝達ギヤ92、連結ギヤ95、第3伝達ギヤ93、及び第4伝達ギヤ94にはそれぞれギヤ歯が形成されているが、図には示されていない。
【0065】
モータギヤ89は、ASFモータ84の軸87に固定されており、軸87及び第2エンコーダディスク72と共に幅方向121を軸方向として一体的に回転する。モータギヤ89と近接する位置に、第1伝達ギヤ91が設けられている。第1伝達ギヤ91は、幅方向121を軸方向として回転可能に構成されている。第1伝達ギヤ91は、外径寸法が相異なる大径部106及び小径部107を有している。第1伝達ギヤ91の大径部106は、モータギヤ89と噛合されている。第1伝達ギヤ91と近接する位置に第2伝達ギヤ92が設けられている。第1伝達ギヤ91の小径部107は、第2伝達ギヤ92と噛合されている。第2伝達ギヤ92は、モータギヤ89及び第1伝達ギヤ91と同様に、幅方向121を軸方向として回転可能に構成されている。この第2伝達ギヤ92は、第1伝達ギヤ91及び連結ギヤ95と噛合されている。
【0066】
搬送ローラ60の下方には、第3伝達ギヤ93及び第4伝達ギヤ94が設けられている。第3伝達ギヤ93及び第4伝達ギヤ94は、幅方向121を軸方向として個別に回転可能に構成されている。図には示されていないが、第3伝達ギヤ93は、第1供給部28の軸27(図2参照)へ駆動伝達可能に軸27に連結されている。第4伝達ギヤ94は、第2供給部38の軸37(図2参照)へ駆動伝達可能に軸37に連結されている。
【0067】
搬送ローラ60の軸76に欠歯ギヤ96が設けられている。欠歯ギヤ96は、軸76の外周面に1個のギヤ歯98が設けられることによって構成されている。このように、欠歯ギヤ96は、搬送ローラ60の軸76とASFモータ84の軸87との間に介在されている。この欠歯ギヤ96、第3伝達ギヤ93、及び第4伝達ギヤ94は、ギヤ歯の幅方向121の位置が相異なるように配置されている。本実施形態では、幅方向121の内側から外側へ向けて、第3伝達ギヤ93のギヤ歯、第4伝達ギヤ94のギヤ歯、欠歯ギヤ96のギヤ歯98の順でギヤ歯が並ぶように、各ギヤ93,94,96が配置されている。
【0068】
第2伝達ギヤ92とギヤ93,94,96との間に、連結ギヤ95が配置されている。連結ギヤ95は、入力レバー53とともに1本の支軸66に回転可能、且つ幅方向121へスライド可能に支持されている。支軸66は、幅方向121を軸方向としてプリンタ部11のフレームに固定されている。このため、連結ギヤ95及び入力レバー53は、キャリッジ41の移動方向(幅方向121)と同方向への移動が可能である。なお、第2伝達ギヤ92の幅方向121の幅は、連結ギヤ95の移動範囲よりも広くなるように設定されている。このため、連結ギヤ95は、幅方向121の位置にかかわらず第2伝達ギヤ92と常時噛合している。連結ギヤ95は、第2伝達ギヤ92と噛合した状態で、第3伝達ギヤ93、第4伝達ギヤ94、又は欠歯ギヤ96と噛合可能である。
【0069】
入力レバー53は、連結ギヤ95よりも幅方向121の外側に配置されている。入力レバー53は、支軸66に外嵌される筒状の円筒部57と、円筒部57から径方向に突出するように設けられた入力部54とを有する。円筒部57は、支軸66に外嵌されており、支軸66に対して幅方向121へスライド自在且つ回転自在である。円筒部57がスライドされると、入力部54は、円筒部57と同じ向きへスライドする。円筒部57が回転すると、入力部54は、円筒部57と同じ向きに回転する。
【0070】
図5に示されるように、入力レバー53の上方には、支持フレーム68が設けられている。この支持フレーム68は、ガイドフレーム44の開口部52(図3参照)に嵌め込まれることによってガイドフレーム44に固定されている。この支持フレーム68には、入力レバー53の入力部54が挿通される開口69が形成されている。
【0071】
図には示されていないが、連結ギヤ95は、第1コイルバネ(不図示)によって入力レバー53側(第2向き112)へ付勢されている。また、入力レバー53は、第2コイルバネ(不図示)によって連結ギヤ95側(第1向き111)へ付勢されている。すなわち、連結ギヤ95及び入力レバー53は、相反する方向へ付勢されている。第2コイルバネの付勢力は、第1コイルバネの付勢力よりも大きく設定されている。このため、入力レバー53に外力が加えられていない状態では、第2コイルバネの付勢力によって第1コイルバネが圧縮され、連結ギヤ95及び入力レバー53が第1向き111へスライドされる。そして、入力レバー53の入力部54が支持フレーム68の開口69の端部に当接すると、連結ギヤ95及び入力レバー53の第1向き111への移動が規制される(図6参照)。これにより、入力レバー53の入力部54が第1位置に配置される。図6に示されるように、入力部54が第1位置に配置された状態では、連結ギヤ95が第3伝達ギヤ93と噛合している。この状態でASFモータ84が駆動されると、ASFモータ84の駆動力がモータギヤ89、第1伝達ギヤ91の大径部106及び小径部107、第2伝達ギヤ92、連結ギヤ95、第3伝達ギヤ93の順に伝達される。この第3伝達ギヤ93は給紙ローラ25と連結されているので、給紙ローラ25が回転する。
【0072】
キャリッジ41が第2向き112へ移動されて当接片33(図3参照)が入力レバー53の入力部54に当接すると、入力部54は、当接片33からの押圧力を受けて第1位置から第2位置(図7参照)へ移動する。これに伴い、連結ギヤ95は、第1コイルバネの弾性力によって第2向き112へ移動する。その結果、連結ギヤ95が第4伝達ギヤ94と噛合した状態となる。この状態でASFモータ84が駆動されると、ASFモータ84の駆動力がモータギヤ89、第1伝達ギヤ91の大径部106及び小径部107、第2伝達ギヤ92、連結ギヤ95、第4伝達ギヤ94の順に伝達される。この第4伝達ギヤ94は給紙ローラ35と連結されているので、給紙ローラ35が回転する。
【0073】
キャリッジ41が第2向き112へ更に移動されると、入力レバー53の入力部54は、当接片33からの押圧力によって第2位置から第3位置(図8参照)へと移動される。これに伴い、連結ギヤ95は、第1コイルバネの弾性力によって第2向き112へ移動する。その結果、連結ギヤ95が欠歯ギヤ96と噛合可能な位置に配置される。この状態でLFモータ85が駆動されると、搬送ローラ60が回転する。搬送ローラ60の軸76には欠歯ギヤ96が設けられているので、欠歯ギヤ96のギヤ歯98と連結ギヤ95のギヤ歯とが噛合したときに、搬送ローラ60の回転が連結ギヤ95に伝達される。この連結ギヤ95の回転力は、第2伝達ギヤ92、第1伝達ギヤ91の小径部107及び大径部106、モータギヤ89、ASFモータ84の軸87へと順に伝達される。これにより、ASFモータ84の軸87が回転する。すなわち、第2エンコーダディスク72が回転する。なお、欠歯ギヤ96のギヤ歯98は、搬送ローラ60の軸76の外周面に1つだけ設けられているので、搬送ローラ60の1回転を1周期として、所定の回転位相において搬送ローラ60の回転がASFモータ84の軸87に伝達される。すなわち、搬送ローラ60が1周期回転すると、軸87の回転には同じ周期で回転と停止とが現れる。
【0074】
このように、入力レバー53の入力部54の位置を変更することによって、搬送ローラ60の回転をASFモータ84の軸87に伝達するか否かを選択的に切り換えることができる。
【0075】
[制御部100]
制御部100(図9参照)は、プリンタ部11のみならず、複合機10の全体動作を統括的に制御するものである。図9に示されるように、制御部100は、CPU101、ROM102、RAM103、EEPROM104、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)109を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。この制御部100が本発明の第2検出手段、補正手段として機能する。なお、図9では、各モータ83,84,85からの駆動力の伝達経路が破線で示されている。
【0076】
ROM102には、CPU101がモータ83,84,85や複合機10を制御するためのプログラムなどが格納されている。RAM103は、CPU101が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記憶する記憶領域又はデータ処理などの作業領域として使用される。このRAM103には、搬送ローラ60の現在の回転位相(以下、「現在位相θ」という。)が格納されている。この現在位相θは、搬送ローラ60が回転される毎に適宜更新される。EEPROM104は、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等を記憶する。このEEPROM104には、後述する補正値関数A(θ)が格納されている。補正値関数A(θ)は、搬送ローラ60の回転位相と、搬送ローラ60の回転位相あたりの記録用紙50の搬送量の補正値との対応関係を規定した関数である。すなわち、本実施形態では、EEPROM104が本発明の記憶手段として機能する。
【0077】
ASIC109には、駆動回路74、第2ロータリーエンコーダ82、駆動回路73、リニアエンコーダ80、駆動回路75、及び第1ロータリーエンコーダ81が接続されている。なお、制御部100には、スキャナ部12や操作パネル14などが接続されているが、これらは本発明の趣旨には直接関係しないので、ここでは説明が省略される。
【0078】
駆動回路74は、ASFモータ84を駆動させるものである。ASFモータ84は、駆動伝達機構90を介して、給紙ローラ25又は給紙ローラ35と連結される。駆動回路74は、ASIC109からの出力信号を受けてASFモータ84の軸87を正回転させる。入力レバー53の入力部54が第1位置に配置された状態でASFモータ84が正回転される。これにより、ASFモータ84の駆動力が給紙ローラ25に伝達され、給紙ローラ25が回転する。給紙カセット22内の最上位置の記録用紙50は、この給紙ローラ25の回転力を受けて搬送路18,19へ供給される。入力レバー53の入力部54が第2位置に配置された状態でASFモータ84の軸87が正回転される。これにより、ASFモータ84の駆動力が給紙ローラ35に伝達され、給紙ローラ35が回転する。給紙カセット21内の最上位置の記録用紙50は、この給紙ローラ35の回転力を受けて搬送路17,19へ供給される。
【0079】
第2ロータリーエンコーダ82は、第2エンコーダディスク72及び光学センサ56を有している(図2参照)。第2ロータリーエンコーダ82は、光学センサ56によって第2エンコーダディスク72のスリットが検出される毎にパルス信号を出力する。制御部100は、このパルス信号をカウントすることによってASFモータ84の回転量を判断し、ASFモータ84の駆動を制御する。
【0080】
後述するが、入力レバー53が第3位置に配置された状態でLFモータ85が駆動されると、搬送ローラ60の回転が駆動伝達機構90を介してASFモータ84の軸87に伝達される。駆動伝達機構90には欠歯ギヤ96が設けられているので、搬送ローラ60の回転中に、ASFモータ84の軸87の回転量が一時的に変化する。制御部100は、この第2ロータリーエンコーダ82によって検出されたASFモータ84の軸87の回転量の変化に基づいて、搬送ローラ60の回転位相の原点位置を検出する。すなわち、制御部100が本発明の第2検出手段として機能する。
【0081】
ところで、ASFモータ84は、駆動伝達機構90及び不図示のワンウェイ機構を介して給紙ローラ25,35と連結される。このため、ASFモータ84を逆回転させたときには給紙ローラ25,35は回転せず、給紙カセット21,22から記録用紙50が供給されることはない。搬送ローラ60の回転位相の原点位置を検出する処理は、LFモータ85の駆動力によってASFモータ84の軸87を逆回転させながら行われる。したがって、原点位置を検出する処理を行う際に給紙カセット21,22から記録用紙50が無駄に供給されることはない。なお、搬送ローラ60の回転位相の原点位置を検出する処理については、図13のフローチャートに基づいて後に詳述する。
【0082】
駆動回路73は、ASIC109からの出力信号を受けてCRモータ83を駆動させる。CRモータ83の駆動力は、ベルト駆動機構46を介してキャリッジ41に伝達される。これにより、キャリッジ41が幅方向121へ移動する。
【0083】
リニアエンコーダ80は、エンコーダストリップ51を、キャリッジ41に搭載されたフォトインタラプタにより検出するものである。制御部100は、このリニアエンコーダ80の検出信号に基づいて、CRモータ83の駆動を制御する。キャリッジ41の移動が制御部100によって制御されることにより、入力レバー53の入力部54が第1位置(図6参照)、第2位置(図7参照)、又は第3位置(図8参照)に配置される。これにより、駆動伝達機構90による駆動伝達が切り換えられる。
【0084】
駆動回路75は、LFモータ85を駆動させるものである。LFモータ85には、不図示のギヤなどを介して搬送ローラ60の軸76及び排紙ローラ62の軸78が連結されている。駆動回路75は、ASIC109からの出力信号を受けてLFモータ85を駆動させる。LFモータ85の駆動力は軸76,78に伝達され、搬送ローラ60と排紙ローラ62とが同時に回転する。搬送路19に供給された記録用紙50は、搬送ローラ60又は排紙ローラ62の回転力を受けて搬送路19に沿って搬送された後、給紙カセット22の上面23に排出される。
【0085】
第1ロータリーエンコーダ81は、第1エンコーダディスク71及び光学センサ55を有している(図4参照)。第1ロータリーエンコーダ81は、光学センサ55によって第1エンコーダディスク71のスリットが検出される毎にパルス信号を出力する。制御部100は、このパルス信号をカウントすることによって搬送ローラ60の回転量を判断し、LFモータ85の駆動を制御する。
【0086】
ところで、記録用紙50を高精度に搬送するためには、第1ロータリーエンコーダ81によって検出される搬送ローラ60の回転量と、搬送ローラ60の実際の回転量との間に線形性が成り立っていることが好ましい。図10(A)には、搬送ローラ60の軸76に偏心した第1エンコーダディスク71が取り付けられた状態が示されている。このような第1エンコーダディスク71の偏心、搬送ローラ60の反りやコーティングの厚みムラ、搬送ローラ60の軸76に噛合されたギヤの偏心などが原因で、第1ロータリーエンコーダ81によって検出される回転位相あたりの搬送ローラ60の回転量は、搬送ローラ60の1周分を1周期として、周期的に変動する(図10(B)参照)。図10に示される例では、第1エンコーダディスク71のBの位置が検出されている状態で第1ロータリーエンコーダ81から出力されるパルス信号あたりの記録用紙50の搬送量が多い。逆に、第1エンコーダディスク71のDの位置が検出されている状態で第1ロータリーエンコーダ81から出力されるパルス信号あたりの記録用紙50の搬送量が少ない。このように、搬送ローラ60による記録用紙50の搬送量が周期的に変動する。
【0087】
このため、制御部100は、搬送ローラ60の搬送量の周期的変動を抑制するために、LFモータ85の駆動を制御して搬送ローラ60の回転量が一様となるように補正する。EEPROM104には、この回転量の補正処理に使用される補正値関数A(θ)が記憶されている。以下、この補正値関数A(θ)を取得する処理について説明する。なお、この補正値関数A(θ)は、複合機10の工場出荷前に取得されてEEPROM104に予め書き込まれる。ただし、補正値関数A(θ)は、ユーザが複合機10の使用開始時に、説明書や操作パネル14に表示される指示に従って所定操作を行うことによってEEPROM104に書き込まれてもよい。
【0088】
[補正値関数A(θ)の取得]
本実施形態では、第2エンコーダディスク72が1周したときに記録用紙50が搬送ローラ60によって1.2インチ送られるように、搬送ローラ60が構成されている。また、記録ヘッド42のノズルの搬送向き124の密度は150dpiであり、第1エンコーダディスク71が1回転すると、第1ロータリーエンコーダ81から8640個のパルス信号が出力されるものとする。
【0089】
制御部100は、ASFモータ84の駆動を制御して給紙カセット21又は給紙カセット22から記録用紙50を搬送路19に供給する。そして、制御部100は、記録部40の動作を制御して、記録用紙50の先端側に幅方向121に長い1本の線を引く(図11(A)参照)。具体的には、制御部100は、キャリッジ41を幅方向121の一端側から他端側へ第1距離だけ移動させつつ、記録ヘッド42の搬送向き124の最上流側のノズル(第1ノズル)からインクを噴出させる。このようにして記録用紙50の先端側に1本の長線が引かれると、制御部100は、LFモータ85の駆動を制御して、0.57インチに相当するパルス信号分だけ記録用紙50を搬送させる。具体的には、制御部100は、第1ロータリーエンコーダ81から4104(=8640×0.57/1.2)個のパルス信号が出力されるまでLFモータ85を駆動させて、搬送ローラ60に記録用紙50を搬送させる。LFモータ85は、第1ロータリーエンコーダ81から出力されたパルス信号数が4104個に到達した後に停止される。
【0090】
次に、幅方向121に短い1本の短線を引く(図11(B)参照)。具体的には、制御部100は、キャリッジ41を幅方向121の一端側から他端側へ第1距離よりも短い第2距離だけ移動させつつ、記録ヘッド42の搬送向き124の最上流側のノズルから91番目のノズル(第91ノズル)からインクを噴出させる。記録ヘッド42の搬送向き124の密度が150dpiであるため、第1ノズルと第91ノズルとの搬送向き124の離間距離は、0.6(=(91−1)/150)インチである。このため、第91ノズルと上記長線とは、理想的には、搬送向き124に0.03(=0.6−0.57)インチ離間されている。
【0091】
制御部100は、記録部40に短線を引かせる動作と、LFモータ85に0.01インチに相当するパルス信号分(8640×0.01/1.2)だけ記録用紙50を搬送させる動作とを交互に繰り返す。これにより、記録用紙50に7本の短線が記録される。なお、これらの7本の短線の幅方向121の位置が異なるように、記録ヘッド42による記録動作は、キャリッジ41の幅方向121の位置が変更されながら行われる。
【0092】
そして、0.1インチ進んだ位置に長線が記録され、その長線に対して7本の短線を記録する処理が繰り返される。これにより、合計12個のパターンが記録用紙50に記録される。
【0093】
続いて、長線に最もよく重なる短線が何本目の短線であるかを判断する。具体的には、記録用紙50をスキャナ部12のコンタクトガラス上に載置して記録用紙50の画像読取をスキャナ部12に実行させる。そして、何本目の短線が長線に最もよく重なるかを制御部100に判断させる。この判断処理は、各長線についてそれぞれ行われる。図12に示される記録用紙50であれば、上の長線から順に、3,2.5,2,3,4,4,5,6,6.5,6,4,3.5と判断することができる。
【0094】
第1ノズルと第91ノズルとは、搬送向き124に0.6インチだけ離れている。このため、上記数値が4である場合には、0.6インチの目標搬送量に対して、実際に記録用紙50が0.6(=0.57+0.01×(4−1))インチ送られたことを示している。上記数値が3である場合には、0.59(=0.57+0.01×(3−1))インチの目標搬送量に対して、実際には記録用紙50が0.6インチ搬送されたことを示している。これは、図10(A)におけるB側の搬送ローラ60の周面によって記録用紙50が搬送されたことを表している。上記数値が5である場合には、0.61(=0.57+0.01×(5−1))インチの目標搬送量に対して、実際には記録用紙50が0.6インチ搬送されたことを示している。これは、図10(A)におけるD側の搬送ローラ60の周面によって記録用紙50が搬送されたことを表している。
【0095】
横軸に1/12周(720パルス)刻みでパルス数を割り当て、縦軸にパルス数当たりの搬送量を目標搬送量に対する割合で表せば、図10(A)に相当するグラフを得ることができる(図12(B)参照)。すなわち、搬送ローラ60が1周する間に、記録用紙50の搬送量が目標搬送量に対してどのようにずれるかを把握することができる。
【0096】
図12(A)に示されるパターンを記録用紙50に記録したときの最初の長線を記録したときの第1エンコーダディスク71の回転位相に対して、現在の第1エンコーダディスク71がどれだけ回転したかは、第1ロータリーエンコーダ81によって搬送ローラ60の回転を検出している限り把握することができる。したがって、記録用紙50の搬送命令が入力されたときに、前述のグラフから、現在の位置から搬送完了後の位置までの搬送ローラ60の搬送量の平均ズレを算出し、予めその影響を考慮して目標搬送量を補正すれば、記録用紙50の搬送量の周期的変動を抑制することができる。
【0097】
本実施形態では、図12(B)に示されるグラフに基づいて記録用紙50の目標搬送量を補正するための補正値関数A(θ)が生成され、EEPROM104に記憶されている。このため、複合機10の電源が切られてから再投入された場合でも、搬送ローラ60の回転位相の物理的な原点を検出することにより、搬送ローラ60の回転量を適切に補正することが可能である。
【0098】
[原点位置の取得]
以下、複合機10の電源が投入された際にプリンタ部11において行われる処理の手順について、図13のフローチャートに基づいて説明する。なお、以下のフローチャートに基づいて説明する各処理は、ROM102に記憶されているプログラムに基づいて制御部100が発行する命令に従って行われる。
【0099】
制御部100は、操作パネル14の所定の入力キーの操作の有無に基づいて、複合機10の電源が投入されたか否かを判断する(S1)。複合機10の電源が投入されていないと制御部100が判断した場合(S1:NO)、待機状態となる。制御部100は、複合機10の電源が投入されたと判断した場合(S1:YES)、駆動回路73を制御してCRモータ83を駆動させる(S2)。これにより、キャリッジ41が幅方向121へ移動される。制御部100は、リニアエンコーダ80の検出結果に基づいて、入力レバー53の入力部54が第3位置(図8参照)に配置されたか否かを判断する(S3)。入力部54が第3位置に配置されていないと制御部100が判断した場合(S3:NO)、処理がステップS2へ戻される。すなわち、入力部54が第3位置に配置されるまでCRモータ83が駆動される。
【0100】
制御部100は、入力レバー53の入力部54が第3位置に配置されたと判断した場合(S3:YES)、CRモータ83を停止させる(S4)。制御部100は、ASFモータ84が駆動されていない状態でLFモータ85を駆動させる(S5)。LFモータ85が駆動されると、搬送ローラ60及び排紙ローラ62とともに、搬送ローラ60の軸76に設けられている欠歯ギヤ96が回転する。入力レバー53の入力部54が第3位置に配置されているので、欠歯ギヤ96のギヤ歯98と連結ギヤ95のギヤ歯とが噛合することによって、搬送ローラ60の回転力が欠歯ギヤ96、連結ギヤ95、第2伝達ギヤ92、第1伝達ギヤ91の小径部107及び大径部106、モータギヤ89を介してASFモータ84の軸87に伝達され、軸87に固定されている第2エンコーダディスク72(図4参照)が回転する。
【0101】
制御部100は、LFモータ85が駆動されている間、第2エンコーダディスク72の回転数の変化を記録する(S6)。具体的には、制御部100は、第2ロータリーエンコーダ82から出力されるパルス信号の変化を監視してその情報をRAM103に一時的に格納する。この情報は、図14に示されるように、搬送ローラ60の回転位相と、第2エンコーダディスク72の回転量とが対応付けられたものである。そして、制御部100は、第1ロータリーエンコーダ81の検出結果に基づいて、搬送ローラ60が1周したか否かを判断する(S7)。具体的には、制御部100は、第1ロータリーエンコーダ81から出力されたパルス信号数が8640個に達したか否かを判断する。搬送ローラ60が1周していないと制御部100が判断した場合(S7:NO)、処理がステップS5へ戻される。すなわち、ステップS5及びステップS6の処理は、搬送ローラ60が1周するまで継続される。
【0102】
ところで、欠歯ギヤ96のギヤ歯98が形成されてない部分と、連結ギヤ95のギヤ歯とが対向した状態では、欠歯ギヤ96と連結ギヤとが噛合していないので、搬送ローラ60の回転はASFモータ84の軸87に伝達されない。搬送ローラ60が回転されて欠歯ギヤ96のギヤ歯98と連結ギヤのギヤ歯とが噛合すると、搬送ローラ60の回転がASFモータ84の軸87に伝達される。このため、搬送ローラ60が1周期に相当する回転数(本実施形態では1回転)だけ回転される毎に、搬送ローラ60の回転がASFモータ84の軸87に伝達される。このため、搬送ローラ60が1回転する毎にASFモータ84の軸87(第2エンコーダディスク72)が回転し、その回転が第2ロータリーエンコーダ82によって検出される。そして、第2ロータリーエンコーダ82によって第2エンコーダディスク72の回転が検出されたときの搬送ローラ60の回転位相θ0(図14参照)が、原点位置として制御部100によって検出される。
【0103】
制御部100は、搬送ローラ60が1周したと判断した場合(S7:YES)、LFモータ85を停止させる(S8)。そして、制御部100は、搬送ローラ60の回転位相の原点位置を検出する(S9)。具体的には、制御部100は、ステップS6の処理でRAM103に格納された情報に基づいて、ASFモータ84の軸87(第2エンコーダディスク72)の回転量の絶対値が最大となったときの搬送ローラ60の回転位相θ0を原点位置として検出する。この原点位置を示す情報は、RAM103に格納される。
【0104】
続いて、制御部100は、LFモータ85を駆動させる(S10)。そして、制御部100は、第1ロータリーエンコーダ81の検出結果と、RAM103に格納されている原点位置を示す情報とに基づいて、搬送ローラ60の現在の回転位相が原点位置となったか否かを判断する(S11)。搬送ローラ60の回転位相が原点位置となっていないと制御部100が判断した場合(S11:NO)、処理がステップS10へ戻される。すなわち、搬送ローラ60の回転位相が原点位置となるまで、LFモータ85が駆動される。制御部100は、搬送ローラ60の回転位相が原点位置になったと判断した場合(S11:YES)、LFモータ85を停止させる(S12)。
【0105】
[記録用紙50の搬送動作]
次に、複合機10に対して記録開始命令が入力された場合に、プリンタ部11において行われる処理の手順について、図15のフローチャートに基づいて説明する。
【0106】
制御部100は、記録開始命令があったか否かを判断する(S21)。具体的には、制御部100は、外部情報機器から記録開始を指示するコマンド及び印刷データを受信したか否か、或いは、操作パネル14において記録開始を指示する操作入力が行われたか否かを判断する。記録開始命令がないと制御部100が判断した場合(S21:NO)、待機状態となる。
【0107】
制御部100は、記録開始命令があったと判断した場合(S21:YES)、EEPROM104から補正値関数A(θ)を読み出す(S22)。制御部100は、RAM103から搬送ローラ60の現在位相θを読み出す(S23)。この現在位相θは、搬送ローラ60の回転向きの角度を示すものである。次に、制御部100は、記録用紙50を目標位置まで搬送させる間に第1ロータリーエンコーダ81から出力されるパルス信号数である目標回転量Xmを取得する(S24)。そして、制御部100は、ステップS22で読み出した補正値関数A(θ)に現在位相θを代入して、パルス信号数を表す補正値Cを演算する(S25)。
【0108】
制御部100は、ステップS24の処理で取得した目標回転量Xmに補正値Cを加えて、目標回転量Xmを補正する(S26)。そして、制御部100は、補正された目標回転量Xmに基づいて、現在位相θを更新する(S27)。なお、現在位相θは搬送ローラ60の回転向きの角度であるから、その値が2πを超えた場合には、その値から2πが減算される。これにより、現在位相θが常に0≦θ≦2πの関係を満たすように、現在位相θの値が調整される。
【0109】
次に、制御部100は、LFモータ85を駆動させる(S28)。そして、制御部100は、第1ロータリーエンコーダ81によって検出された搬送ローラ60の回転量が、ステップS26の処理によって補正された目標回転量Xmに達したか否かを判断する(S29)。具体的には、制御部100は、第1ロータリーエンコーダ81から出力されるパルス信号数が目標回転量Xmに達したか否かを判断する。搬送ローラ60の回転量が目標回転量Xmに達していないと制御部100が判断した場合(S29:NO)、処理がステップS28へ戻される。すなわち、搬送ローラ60の回転量が目標回転量Xmに達するまでLFモータ85が駆動される。
【0110】
搬送ローラ60が回転している間、第1ロータリーエンコーダ81によって検出される搬送ローラ60の回転量と、実際の搬送ローラ60の回転量との間には、搬送ローラ60の1周分を1周期とする周期的なズレが発生する。本実施形態では、複合機10の電源投入後に取得された搬送ローラ60の原点位置に基づいて搬送ローラ60の現在位相が判断され、現在位相に対応する補正値Cによって目標回転量Xmが補正されている。搬送ローラ60の回転量がこの補正後の目標回転量Xmに沿うようにLFモータ85の駆動が制御されるので、搬送ローラ60の回転量の周期的なズレが相殺され、記録用紙50は、目標とする位置まで精度良く搬送される。
【0111】
制御部100は、搬送ローラ60の回転量が目標回転量Xmに達したと判断した場合(S29:YES)、LFモータ85を停止させる(S30)。そして、制御部100は、記録部40に画像記録を実行させる(S31)。具体的には、制御部100は、キャリッジ41を幅方向121の一端側から他端側へ移動させつつ、記録ヘッド42からインクを噴出させる。
【0112】
制御部100は、記録用紙50の搬送動作が完了したか否かを判断する(S32)。記録用紙50の搬送動作が完了していないと制御部100が判断した場合(S32:NO)、処理がステップS24へ戻される。すなわち、ステップS24〜ステップ29の処理が繰り返される。これにより、搬送ローラ60を目標回転量Xmだけ回転させる第1処理と、記録用紙50に画像を記録する第2処理とが交互に繰り返されるので、記録用紙50に連続的な画像が記録される。記録用紙50の搬送動作が完了したと制御部100が判断した場合(S32:YES)、一連の処理が完了する。
【0113】
[本実施形態の作用効果]
以上説明したように、プリンタ部11では、給紙ローラ25,35の回転を検出するための第2ロータリーエンコーダ82を転用して搬送ローラ60の回転位相の原点位置が検出される。このため、搬送ローラ60の回転位相の原点位置を検出するためのセンサ等を新たに設ける必要がない。したがって、装置の大型化及びコストアップを伴わずに搬送ローラ60の回転位相の原点位置を検出することができる。
【0114】
また、本実施形態では、LFモータ85の回転をASFモータ84の軸87に伝達するか否かを、駆動伝達機構90によって切り換えることができる。すなわち、LFモータ85の回転を軸87に伝達する際には、入力レバー53の入力部54が第3位置に配置されることによって搬送ローラ60と軸87とが連結され、搬送ローラ60の回転力が軸87に伝達される。一方、ASFモータ84を駆動させる際には、駆動伝達機構90によって、搬送ローラ60と軸87との連結が解除され、ASFモータ84と給紙ローラ25(又は給紙ローラ35)とが駆動伝達可能に連結される。このため、搬送ローラ60の回転位相の原点位置を検出する処理によって、ASFモータ84の駆動が妨げられることはない。
【0115】
また、本実施形態では、制御部100によって検出された搬送ローラ60の回転位相の原点位置と、EEPROM104に記憶されている補正値関数A(θ)とに基づいて、搬送ローラ60の現在の回転位相に対応する補正値Cが取得される。この補正値Cによって目標回転量Xmが補正される。この補正後の目標回転量Xmだけ搬送ローラ60が回転される事によって記録用紙50の搬送量の周期的変動が抑制される。その結果、記録用紙50がほぼ一定の改行幅で間欠搬送されるので、乱れのない綺麗な画像を記録用紙50に記録することができる。
【0116】
なお、本実施形態では、第1ロータリーエンコーダ81によって搬送ローラ60の回転量を検出する形態について説明したが、第1ロータリーエンコーダ81に代えて例えば磁気センサを用いて搬送ローラ60の回転量を検出するようにしてもよい。
【0117】
また、本実施形態では、LFモータ85がDCモータである形態について説明したが、LFモータ85はステッピングモータであってもよい。この場合、第1ロータリーエンコーダ81は不要である。
【0118】
また、本実施形態では、本発明に係る原点検出装置及びシート搬送装置がプリンタ部11に適用された場合について説明したが、原点検出装置及びシート搬送装置は、スキャナ部12に組み込まれて、原稿を搬送する手段(ADF29)として使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る複合機10の外観構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、プリンタ部11の内部構造を示す模式図である。
【図3】図3は、プリンタ部11の内部構成を示す部分拡大斜視図である。
【図4】図4は、駆動伝達機構90の外観構成を示す斜視図である。
【図5】図5は、駆動伝達機構90の外観構成を示す斜視図である。
【図6】図6は、駆動伝達機構90の拡大斜視図であり、入力レバー53の入力部54が第1位置に配置された状態を示す。
【図7】図7は、駆動伝達機構90の拡大斜視図であり、入力レバー53の入力部54が第2位置に配置された状態を示す。
【図8】図8は、駆動伝達機構90の拡大斜視図であり、入力レバー53の入力部54が第3位置に配置された状態を示す。
【図9】図9は、制御部100の構成例を示すブロック図である。
【図10】図10は、記録用紙50の搬送量の周期的変動について説明するための図であり、(A)は第1エンコーダディスク71と光学センサ55の模式図であり、(B)は第1ロータリーエンコーダ81から出力されるパルス信号あたりの記録用紙50の搬送量を例示するグラフである。
【図11】図11は、補正値関数A(θ)を取得する処理について説明するための図である。
【図12】図12は、補正値関数A(θ)を取得する処理について説明するための図である。
【図13】図13は、複合機10の電源が投入された際に複合機10で行われる処理の手順を例示するフローチャートである。
【図14】図14は、搬送ローラ60の回転が駆動伝達機構90を介してASFモータ84の軸87へ伝達されたときの軸87の回転数の変化を示すグラフである。
【図15】図15は、記録開始命令があったときに複合機10で行われる処理の手順を例示するフローチャートである。
【符号の説明】
【0120】
11・・・プリンタ部(本発明の画像記録装置の一例)
17,18,19・・・搬送路
21・・・給紙カセット(本発明の載置部の一例)
22・・・給紙カセット(本発明の載置部の一例)
25,35・・・給紙ローラ(本発明の第2回転体の一例、本発明の供給ローラに相当)
40・・・記録部(本発明の記録手段の一例)
50・・・記録用紙(本発明のシートの一例)
60・・・搬送ローラ(本発明の第1回転体の一例、本発明の搬送ローラに相当)
76・・・軸(本発明の回転軸の一例)
82・・・第2ロータリーエンコーダ(本発明の第1検出手段の一例)
84・・・ASFモータ(本発明の第2モータの一例)
85・・・LFモータ(本発明の第1モータの一例)
87・・・軸(本発明の同期軸の一例)
90・・・駆動伝達機構
96・・・欠歯ギヤ
100・・・制御部(本発明の第2検出手段、補正手段の一例)
104・・・EEPROM(本発明の記憶手段の一例)
124・・・搬送向き
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転体を回転制御しつつ回転させる第1モータと、
第2回転体を回転制御しつつ回転させる第2モータと、
上記第2モータと同期して回転する同期軸の回転量を検出する第1検出手段と、
上記第1回転体の整数回の回転を1周期として所定の回転位相において上記第1回転体の回転を上記同期軸に伝達する駆動伝達機構と、
上記第1回転体の回転位相と上記第1検出手段の検出結果とに基づいて、上記第1回転
体の回転位相の原点位置を検出する第2検出手段と、を備える原点検出装置。
【請求項2】
上記駆動伝達機構は、上記第1回転体の回転軸と上記同期軸との間に介在された欠歯ギヤを含む請求項1に記載の原点検出装置。
【請求項3】
上記駆動伝達機構は、上記第1回転体の回転を上記同期軸に伝達するか否かを選択的に切り換え可能である請求項1又は2に記載の原点検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の原点検出装置と、
シートが載置される載置部と、を備え、
上記第2回転体は、上記載置部から搬送路へシートを供給する供給ローラであり、
上記第1回転体は、上記搬送路に沿ってシートを間欠搬送する搬送ローラであるシート搬送装置。
【請求項5】
上記搬送ローラの回転位相と、当該搬送ローラの目標回転量の補正値との対応関係を記憶する記憶手段と、
上記第1モータの駆動を制御して上記搬送ローラの回転量を補正する補正手段と、を備え、
上記補正手段は、上記第2検出手段によって検出された原点位置と、上記記憶手段に記憶されている上記対応関係とに基づいて、上記第1モータの駆動を制御する請求項4に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
請求項5に記載のシート搬送装置と、
上記搬送ローラよりも上記シートの搬送向きの下流側に配置され、上記搬送ローラが間欠する毎に上記シートに対して画像を記録する記録手段と、を備える画像記録装置。
【請求項1】
第1回転体を回転制御しつつ回転させる第1モータと、
第2回転体を回転制御しつつ回転させる第2モータと、
上記第2モータと同期して回転する同期軸の回転量を検出する第1検出手段と、
上記第1回転体の整数回の回転を1周期として所定の回転位相において上記第1回転体の回転を上記同期軸に伝達する駆動伝達機構と、
上記第1回転体の回転位相と上記第1検出手段の検出結果とに基づいて、上記第1回転
体の回転位相の原点位置を検出する第2検出手段と、を備える原点検出装置。
【請求項2】
上記駆動伝達機構は、上記第1回転体の回転軸と上記同期軸との間に介在された欠歯ギヤを含む請求項1に記載の原点検出装置。
【請求項3】
上記駆動伝達機構は、上記第1回転体の回転を上記同期軸に伝達するか否かを選択的に切り換え可能である請求項1又は2に記載の原点検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の原点検出装置と、
シートが載置される載置部と、を備え、
上記第2回転体は、上記載置部から搬送路へシートを供給する供給ローラであり、
上記第1回転体は、上記搬送路に沿ってシートを間欠搬送する搬送ローラであるシート搬送装置。
【請求項5】
上記搬送ローラの回転位相と、当該搬送ローラの目標回転量の補正値との対応関係を記憶する記憶手段と、
上記第1モータの駆動を制御して上記搬送ローラの回転量を補正する補正手段と、を備え、
上記補正手段は、上記第2検出手段によって検出された原点位置と、上記記憶手段に記憶されている上記対応関係とに基づいて、上記第1モータの駆動を制御する請求項4に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
請求項5に記載のシート搬送装置と、
上記搬送ローラよりも上記シートの搬送向きの下流側に配置され、上記搬送ローラが間欠する毎に上記シートに対して画像を記録する記録手段と、を備える画像記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−64290(P2010−64290A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230513(P2008−230513)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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