説明

原発癌および転移癌に対する治療(A2)温熱療法と腫瘍溶解の同時治療(A3)

本発明は、少なくとも1つの腫瘍部位を有する対象において腫瘍細胞を除去するための組成物および方法に関する。より具体的には、この方法は、溶解条件下で、少なくとも1つの腫瘍中の腫瘍細胞をin vivoで溶解因子と接触させて、処置された腫瘍を形成するステップ;およびこの処置された腫瘍に充分なin vivo刺激を適用して、刺激された腫瘍を形成するステップを含む。対象における局所的腫瘍もしくは遠位転移腫瘍またはそれら両方を収縮させるための組成物および方法が含まれる。好ましい実施形態において、対象において腫瘍を収縮させるための方法は、刺激された腫瘍細胞をin vivoで溶解因子と接触させるステップを含む。腫瘍細胞に対する刺激は、腫瘍細胞中のシャペロン・タンパク質のレベルを増大させ得る。溶解因子と腫瘍細胞刺激との組み合わせは、直接処置された腫瘍の収縮を引き起こし、ここでこの刺激は、同時にかまたは連続的にかのいずれかで適用される。さらに、直接処置されていない遠位腫瘍すなわち転移腫瘍もまた、第1の腫瘍(「処置された腫瘍」または「局所的腫瘍」)中の刺激された腫瘍細胞中に溶解因子を導入することによって減少される。溶解因子の導入および腫瘍細胞の刺激を含む好ましい方法ステップは、腫瘍収縮効果を最大化するために反復される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その全内容が本明細書により参照として援用される、2003年1月28日出願の米国仮特許出願第60/443095号、表題「Treatment for Metastatic Cancer」に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
本発明の一態様は、転移腫瘍の処置のための免疫療法に関する。本発明の免疫療法の作用剤および方法は、同時または逐次のいずれかでの生理学的ストレス(例えば熱)および遺伝子操作された腫瘍溶解性ウイルスの処置領域への投与に関し、これは、その後局所的および遠位の両方での腫瘍退縮を生じる。
【0003】
癌は、ヒトまたは動物の身体の任意の場所の悪性新生物として規定され得る。局所的に広がる癌または身体の遠位部分に広がる癌は、転移と呼ばれる。転移の例は、血流またはリンパ液による悪性腫瘍からの細胞の移動である。身体組織または代謝を破壊する細胞の制御されない増殖によって特徴付けられる種々の癌(例えば、肝臓癌、乳癌、白血病など)が存在し、これらの癌において、増殖は隣接組織を破壊し、最終的に脈管および器官の物理的遮断によって身体の死を引き起こす(HanahanおよびWeinberg(2000).The hallmark of cancer.Cell 100.57−70)。したがって、癌細胞の2つの主要な特徴は、それらの不死性および転移を形成する能力である。
【0004】
I.癌に対する利用可能な処置。癌は数千年間にわたって知られてきたが、現代の技術的な専門知識が癌の可能な処置を考慮するようになったのはごく最近である。さらに、これらの多様な疾患についての作用機構は、直接的な分子介入が可能であるという点まで理解されてきている。現時点で、癌についての臨床的に利用可能な処置は、手術、放射線療法、温熱療法、化学療法、遺伝子治療、免疫療法およびその他である。
【0005】
手術。現在、癌の最も有効な治療はなお、放射線療法、化学療法、免疫療法、温熱療法などと組み合わせた手術である。癌が早期に診断された場合、外科的処置後の5年生存率は、種々のタイプの癌患者について80%ほどの高さであり得る。不運にも、ほとんどの場合には、患者が診断されるときにはこの疾患はすでに後期段階(ステージIIIまたはVI)にまで発達している。後期段階の癌細胞は典型的に、血管またはリンパ管を介して身体中の離れた位置にすでに移動しており、外科的処置は、この疾患の制御において実用的でも有効でもない。外科的処置の別の欠点は、広がった麻疹様転移癌には手術が適用できないことである。外科的処置に対するさらなる欠点は、手術後の患者における身体的合併症および癌転移のリスクの増大である。
【0006】
放射線療法:放射線療法は、手術によっては安全または完全に除去できない孤立性癌を収縮または破壊するために使用される処置である。これはまた、化学療法によって影響を受けない癌を処置するためにも使用される。放射線療法は、胸部x線を実施するために使用される量よりも数千倍高いレベルで放射線を利用する。この強烈な放射線は、細胞が分裂および増殖する能力を破壊する。正常な細胞および癌細胞の両方が影響を受けるが、この放射線処置は、腫瘍殺滅効果を最大化し、正常組織殺滅効果を最小化するように設計される。腫瘍殺滅効果を最大化することが、放射線療法が1回の処置ではなく一連の処置で与えられる1つの理由である。癌細胞に加えて、いくつかの正常細胞もまた放射線によって殺滅される。いくつかの副作用が、これらの正常細胞が殺滅されることに起因して見られ得る。通常、これらの副作用は一時的であり、癌細胞を殺滅する利点のほうが勝る。しかし、放射線療法は放射された領域中の癌細胞を殺滅するだけであるが、放射された領域から離れた癌細胞には影響を与えないことに注目すべきである。さらに、癌細胞のいくつかの特定の生物学的特徴(例えば、放射線に対する抵抗性、腫瘍のサイズ、癌中の無酸素細胞の割合)は、特定の癌を放射線療法に対する感受性が低いものにし得る。
【0007】
温熱療法:温熱療法または熱療法は、当該分野で公知の種々の手段によって全身または局所的領域の温度を上昇させる。局所的領域の温度を上昇させる温熱技術は主に、異なるエネルギー範囲(例えば、超音波、マイクロ波、無線周波数など)での放射である。癌の処置のための温熱療法の機構は完全に理解されていないものの、温熱単独または他の処置(例えば、放射線療法および化学療法)と組み合わせた温熱は、抗癌効果を有することが実証されている(FalkおよびIssels(2001)Hyperthermia in oncology.Int.J.Hyperthermid 7:1−18)。理論によって束縛されることを望まないが、温熱は、癌細胞の微小環境を変化させ、変質および壊死/アポトーシスを引き起こす。現在、温熱の条件を最適化することはなお困難である。例えば、温熱処置は、深部にある悪性腫瘍については困難であり、腫瘍および直ぐ隣接する組織中の実際の温度分布の測定は一貫しない可能性がある。さらに、先行技術では、熱が適用される部位から離れた癌を処置するのに温熱が有効であることが実証されていない。
【0008】
化学療法:化学療法は、癌細胞を破壊するための抗癌(細胞傷害性)薬物の使用である。現在、50種を越える異なる化学療法薬物が利用可能である。いくつかの化学療法薬物は単独で投与されるが、いくつかの薬物を組み合わせることも多い(すなわち、併用化学療法)。特定の処置のタイプは、癌のタイプ、癌がその起源からどれだけ遠くに広がっているかを含む、多数のことに依存する。化学療法は、速く分裂する癌細胞ならびに速く分裂する正常細胞(例えば、血球、皮膚細胞および胃腸細胞)を殺滅する。したがって、癌を処置するための化学薬物の適用には、重篤な副作用が伴う。化学療法は、転移癌を処置するのにあまり有効でないこともまた見出されている。アポトーシス抵抗性癌細胞は、高い用量でさえ化学薬物に対して感受性でない。なぜなら、ほとんどの化学薬物の機構は、癌細胞のアポトーシスを誘導することだからである。
【0009】
遺伝子治療:遺伝子治療は、癌に対する新たなタイプの処置として迅速に開発された。癌細胞を特異的に標的化する治療的遺伝子を送達するための多数のタイプのベクターが存在する。これらのベクターには、アデノウイルス・ベクター、アデノ随伴ウイルスおよびリポソームが含まれる(Anderson(1998)Human gene therapy.Nature 392:25−30)。しかし、これらのベクターの種々の種類の副作用および低い送達効率は未だ克服されていない。したがって、遺伝子治療の臨床的適用は限定されている。癌を処置するために腫瘍溶解性ウイルスを使用する概念は、10年前に明らかにされた(BarkerおよびBerk(1987)Adenovirus proteins from E1B reading frames are required for transformation of rodent cells by viral infection and DNA transfection.Virology 156:107−21)。以降、腫瘍溶解性ウイルスの臨床的適用は大きく進歩し、約12種の異なる腫瘍溶解性ウイルスが臨床試験に入っている(Kirnら(2001).Replication−selective virus therapy for cancer:Biological principle,risk management and future directions.Nature 7:781−787)。これらの腫瘍溶解性ウイルスの中で、アデノウイルスdl1520が最もよく研究されている。野生型アデノウイルスとは対照的に、dl1520は、E1b領域中の827bpのフラグメントが欠失した改変体アデノウイルスであり、その結果、dl1520はE1b−55kDaタンパク質を発現しない。改変体アデノウイルスdl1520は正常細胞中で複製しないが、腫瘍サプレッサー遺伝子p53が機能不全である癌細胞中で選択的に複製し、最終的に癌細胞を溶解させる。臨床試験により、以下のことが実証されている:(1)腫瘍溶解性ウイルスが患者および環境に対して安全であること;(2)改変体アデノウイルスdl1520が腫瘍増殖を抑制する効力が予測したほど良好ではないこと;(3)化学抗癌薬物と腫瘍溶解性ウイルスdl1520との併用処置が、癌をある程度まで処置するのに有効であること(RiesおよびKirn(2002)ONYX−015:mechanisms of action and clinical potential of a replication−selective adenovirus.British Journal of cancer 86:5−11)。ウイルスに基づく治療によって新生物状態を処置するための方法および組成物は、米国特許第5677178号(「McCormickの178号特許」)、表題「Cytopathic Viruses for Therapy and Prophylaxis of Neplasia」(これは、1997年10月14日に発行され、発明者としてMcCormickらが列挙されている)中に開示されている。McCormickの178号特許において、ウイルスに基づく治療によって新生物状態を処置するための方法および組成物が提供されている。p53またはRBに結合し、かつ/またはこれらを不活化するウイルス性タンパク質を欠く変異体ウイルスが、p53機能および/またはRB機能を欠く細胞を含む新生物を有する患者に投与される。この変異体ウイルスは、新生物細胞において複製表現型を実質的に生じ得るが、本質的に正常なp53機能および/またはRB機能を有する非複製性の非新生物細胞においては複製表現型を実質的に生じることができない。新生物細胞における複製表現型の優先的な発生は、直接的にかまたはウイルス複製表現型を発現する細胞における細胞傷害性遺伝子の発現によってかのいずれかで、新生物細胞の優先的な殺滅を生じる。しかし、遺伝子操作された腫瘍溶解性ウイルスが、ウイルスが投与される部位から離れた腫瘍を処置するのに有効であることを実証する先行技術の報告はこれまで存在しない。
【0010】
免疫療法:約90%の癌患者が転移によって死亡し、癌転移に対して有効な処置は事実上存在しない。免疫療法は古典的に、アレルゲンに対する感受性を低下させる目的のために、漸増する量のアレルゲンにアレルギー患者を曝露するプロセスである。癌処置のための免疫療法の概念は、免疫系が癌に対して身体を保護することおよびすでに発達した癌と闘うことにおいて中心的な役割を果すことを明らかにした同様の研究に基づく。この後者の役割は充分に理解されていないものの、腫瘍の増殖および広がりを遅延させる免疫系の役割を支持するゆるやかな証拠が存在する。化学療法は、速く分裂する癌細胞ならびに速く分裂する正常細胞を殺滅するが、これは、癌の転移をある程度まで阻害することができる。しかし、化学療法の重度な毒性は、ほとんどの患者にとって不耐性である。患者自身の免疫防御系が、癌の転移と闘う最良の方法であると長い間考えられてきた。現時点で、最も一般に使用される免疫療法は、以下の3つのカテゴリーに分割され得る:(1)サイトカイン(例えば、インターロイキン、インターフェロンなど)の投与を介した免疫操作;(2)1つまたはいくつかの癌関連抗原(「CRA」)に対して特異的なモノクローナル抗体を用いた免疫治療;および(3)CRAを用いたワクチン接種(Yingら(2001)Innovative cancer vaccine strategies based on the identification of tumor−associated antigen.BioDrugs 15:819−31)。
【0011】
免疫操作。インターフェロンは、サイトカインとして公知のタンパク質の群に属する。インターフェロンは、感染、炎症または刺激に応答して、身体中(または実験室中)で白血球によって天然に産生される。インターフェロン−αは、抗腫瘍効果を示す第1のサイトカインの1つであり、腫瘍の増殖を直接遅延させ、免疫系を活性化することを助け得る。インターフェロン−αはFADによって承認されており、多数の癌(多発性骨髄腫、慢性骨髄性白血病、ヘアリー・セル白血病および悪性黒色腫を含む)の処置のために現在一般に使用されている。インターフェロン−βおよびインターフェロン−γは、調査された他のタイプのインターフェロンである。抗腫瘍活性を有する他のサイトカインには、インターロイキン(例えば、IL−2)および腫瘍壊死因子が含まれる。IL−2は、腎臓癌および黒色腫を処置するために頻繁に使用される。サイトカインは、免疫系を癌と特異的に闘うように直接操作するのではなく、特定の免疫応答のカスケードを調節するので、癌を処置するためにサイトカインが使用される場合、所望されない副作用が一般に観察される。これらのサイトカイン(多数のインターフェロンおよびインターロイキンを含む)での問題点のいくつかは、それらの副作用(不定愁訴およびインフルエンザ様症候群を含む)である。高い用量で与えられる場合、これらの副作用は大きく強められ得る。
【0012】
モノクローナル抗体。別の重要な生物学的治療剤には、癌細胞または癌関連標的に対する抗体が含まれる。モノクローナル抗体は、特定の標的(「抗原」)に対する人工抗体であり、実験室で産生される。最初の方法は、抗体産生の工場として作用するハイブリドーマ細胞(2つの異なるタイプの細胞の融合物)を含んでいた。この分野における主な進歩は、元来マウス・ハイブリドーマ細胞から作製されたこれらの抗体を、本発明者らの天然抗体とより密接に類似した「ヒト化」抗体へと変換する能力であった。なおより新しい技術が、ヒト抗体遺伝子を含む遺伝子操作されたマウスまたは細菌からヒト抗体を生成するために使用され得る。モノクローナル抗体は、癌の科学的研究ならびに癌診断において広く使用されてきた。癌に対する治療剤として、モノクローナル抗体は、癌細胞を探し出すために患者に注射されて、癌細胞活性の破壊または癌に対する免疫応答の増強を潜在的に導き得る。このストラテジーは、1970年代のモノクローナル抗体の最初の発明以来、大きな興味を持たれてきた。長年にわたる臨床試験の後、研究者らは、改良されたモノクローナル抗体が特定の癌の処置を補助するために有効に使用され得ることを示している。rituximab(「Rituxan」)と称される抗体は、非ホジキン・リンパ腫の処置において有用であり得るが、trastuzumab(「Herceptin」)は特定の乳癌に対して有用である。他の新たなモノクローナル抗体の試験が活発に行われている。しかし、特定のタイプの癌関連抗原(「CRA」)に対するモノクローナル抗体を使用することの欠点の1つは、CRAのタイプおよび各タイプのCRAの量が、患者によって異なる可能性があることである。同じ患者についてさえ、異なる発達段階におけるCRAのタイプおよび各タイプのCRAの量は異なり得る。したがって、モノクローナル抗体を用いて癌を処置するには、少なくとも2つの欠点が存在する。第一に、ほんの数種のCRAだけがモノクローナル抗体で標的化される場合、効力が損なわれる。ほとんどの癌には複数の遺伝子が関係すると考えられているので、これは特に欠点である。第二に、異なる患者は異なるCRAを有し、特異的モノクローナル抗体のうち1種または1群が、限定数の癌患者にとって有効なだけである。
【0013】
癌ワクチン。インターフェロンおよびモノクローナル抗体のような免疫療法剤は標準的な癌処置の一部になっているが、他の多数のタイプの免疫療法剤(例えば、癌ワクチン)は実験的なままである。一般に、ワクチンは多数の重要な感染症(ポリオ、天然痘およびジフテリアを含む)の発症を予防することによって公衆衛生に大変革をもたらした。しかし、癌を予防するためまたは癌を有する患者を処置するために有効なワクチンを開発することは、かなりより困難であった。何十年もの実験作業にもかかわらず、癌ワクチンを開発するための試みは、首尾よい結果を出していない。これにもかかわらず、以前に利用可能であったものよりも洗練された有望なワクチン・ストラテジーを導いた免疫学または癌生物学の領域における最近の進歩によって、興味の顕著な増大が生じている。現時点で、癌ワクチンを作製するための以下の3つの基本的ストラテジーが存在する:(1)癌関連抗原(「CRA」)のうち1種または1群を用いたワクチン接種;(2)同じ患者の癌組織溶解物でパルスした樹状細胞(「DC」)を用いて患者にワクチン接種すること;(3)同じ患者から単離したヒート・ショック・タンパク質(「HSP」)とCRAとの複合体を用いて患者にワクチン接種すること。
【0014】
(1)CRAを用いたワクチン接種。癌ワクチンは、癌関連抗原(「CRA」)に対する免疫応答をさらに刺激する他の成分と共に、CRAの供給源から典型的になる。挑戦は、よりよいCRAを見出すこと、ならびにCRAを有する癌細胞と闘うように患者の免疫系を増強するような方法で抗原をパッケージングすることであった。ますます、癌ワクチンは、特定の抗原に対する免疫応答を改善し得ることが示されている。この免疫学的効果の結果は、癌の進行を逆転するのに常に充分であるわけではない。しかし、癌ワクチンは一般に充分許容されており、いくつかの状況において有用な抗癌効果を提供し得る。例えば、悪性リンパ腫において、多数の実験室の研究により、「イディオタイプ」と称されるリンパ腫関連タンパク質を使用したワクチン接種が、リンパ腫の発症をマウスが耐えるのを補助するのに充分にマウスの免疫系を刺激し得ることが示されている。臨床試験において、イディオタイプ・ワクチンは試験され続けており、幾人かのリンパ腫患者において臨床的利益の指標と関連している。悪性黒色腫において、広範な種々のワクチン・ストラテジーが臨床試験に導入されており、いくつかは、癌に対する免疫応答を刺激することが見出されている。
【0015】
種または1群のCRAを用いて患者にワクチン接種することの不利益は、癌を処置するためにモノクローナル抗体を使用する場合と同じである:(1)ほんの数種のCRAだけが標的化される場合、効力が損なわれること;および(2)異なる患者が異なるCRAを有すること、および(3)得られたワクチンが、限定数の癌患者にとって有効なだけであること。
【0016】
(2)癌組織溶解物でパルスした樹状細胞(「DC」)を用いたワクチン接種。ワクチン構築および免疫刺激のための多数の新たなストラテジーは、臨床的に有用な癌ワクチンの出現を導き得る。黒色腫および他の癌において試験されている1つの刺激的な新たなアプローチの例は、樹状細胞ワクチンの使用である。樹状細胞(「DC」)は、免疫応答の「スイッチを入れる」のを補助する。樹状細胞は、ナイーブT細胞を活性化するその強力な能力によって特徴付けられる抗原提示細胞(「APC))の1つのタイプである(Banchereau,J.ら(2000)Immunobiology of dendritic cells.Annu.Rev.Immunol.18:767−81)。実験動物におけるCRAでパルスしたDCでの投与により、これらの動物の癌は減じられた(FongおよびEngleman(2000)Dendritic cells in cancer immunotherapy.Annu.Rev.Immunol.18:245−273)。同様の結果が、ヒト患者について実証されている(Nestleら(1998)Vaccination of melanoma patients with peptide− or tumor lysate−pulsed dendritic cells.Nat.Med.4:328−332)。DCはまた癌細胞へと融合され得、CRAがDC中にパルスされる(Gongら(1997)Induction of anti−tumor activity by immunization with fusion of dendritic and carcinoma cells.Nat.Med.3:558−561)。CRAでパルスしたDCは転移癌を抑制する能力を有することが示されている(Kugler(2000)ら、Regression of human metastatic renal cell carcinoma after vaccination with tumor cell−dendritic cell.Nat.Med.6:332−336)。ワクチン接種技術は、以下の4ステップのプロセスである:(1)患者からのDCの単離および単離されたDCのex vivoでの増殖;(2)DC成熟状態のex vivo操作;(3)同じ患者由来のCRAとのDCのex vivoインキュベーション;(4)CRAでパルスしたDCを同じ患者に戻し注入すること。したがって、同じ患者由来の癌組織溶解物でパルスしたDCを用いたワクチン接種は、局所的癌ならびに転移癌を処置するのに非常に有効であり、有害な毒性のリスクが低い可能性が高い。各個々の患者のCRAの全セットが同じ患者の免疫系に対して提示されるので、このようなワクチンは、「個別ワクチン」と呼ばれている。しかし、個別ワクチンの不利益は以下である:(1)高いコスト、(2)時間がかかること、(3)汚染によってしばしば妨害される、ex vivo調製の洗練された冗長なプロトコル、および(4)各個々の患者のためにワクチンをカスタマイズする必要があること(すなわち、これらの個別ワクチンの概念に基づいた薬物を開発できないこと)(SrivastavaおよびJaikaria(2001)Methods of purification of heat shock protein−peptide complexes for use as vaccines against cancers and infectious diseases.Methods Mol.Biol.156:175−186)。
【0017】
(3)ヒート・ショック・タンパク質(「HSP」)と複合体化したCRAを用いたワクチン接種。ヒート・ショック・タンパク質(「HSP」)の1群または任意の環境刺激(物理的刺激、化学的刺激および生物学的刺激を含む)によるストレス・タンパク質の上昇した発現は、ヒート・ショック応答またはストレス応答として規定される。Srivastavaらは以下を見出した:(1)ヒート・ショック・タンパク質(特にHSP70)は、癌特異的タンパク質のエピトープ・ペプチドを結合して複合体を形成し得、これらの複合体は、ex vivoで精製され得る;(2)これらの精製された複合体の注入は、エピトープ・ペプチドが、HSPと複合体化したCRAとしてin vivoでDCに移動するという結果を生じる;(3)DCはこれらのCRAを免疫系に提示し、癌に対する免疫を誘導する(BasuおよびSrivastava(2000)Heat shock proteins:the fountainhead of innate and adaptive immune responses.Cell Stress & Chaperones 5:443−451)。
【0018】
Havivらは、HSP70が、培養された癌細胞を殺滅する腫瘍溶解性ウイルスの能力を増強し得ることを報告した(Havivら(2001)Heat shock and Heat shock protein 70i enhance the oncolytic effect of replicative Adenovirus.Cancer Research 61:8361−8365)。しかし、彼らのin vitro試験は、HAP70が、動物またはヒトの正常な生物学的機能に損傷を与えることなく癌を処置する腫瘍溶解性ウイルスの効力を増強し得るか否かを決定し得ない。さらに、彼らは培養された癌細胞(肺癌系統A549、H460およびH157)に対する実験しか行っていないので、高いレベルのHSP70を含む癌細胞のウイルス性腫瘍溶解が癌に対する全身免疫応答を誘導することを実証できておらず、結果として局所的癌および転移癌を処置できなかった。
【0019】
全ての癌患者のCRAの完全セットのその癌患者自身の免疫系への提示を導き得、したがって癌に対する免疫を誘導し得る単一の因子を開発することに興味が持たれている。最近、ChenおよびHuは、ほとんど全ての癌患者のCRAの完全セットをその癌患者自身の免疫系に提示し得、その患者自身の癌に対する免疫応答を誘導し得るウイルス性因子を開発した(中国特許出願第01141696.3号およびPct/cn01/01616号)。動物試験は、このウイルス性因子が処置された腫瘍の増殖を阻害するのに有効であることを実証した。このウイルス性因子は、外因性HSP70遺伝子を保有する腫瘍溶解性アデノウイルスである。理論によって束縛されることを望まないが、この腫瘍溶解性ウイルスは癌細胞を溶解させ得、このウイルスによって発現されたHSP70はCRAを捕捉し得る。腫瘍溶解性ウイルスが感染した癌細胞の溶解の後に、HSP70と複合体化したCRAがDCに対して提示され、引き続いて、癌細胞に対する免疫応答を惹起する。理論によって束縛されることを望まないが、このヒート・ショック応答は複雑な多工程のプロセスであり、このプロセスにおいて、HSP70は、複合体化CRA−HSPの適切な提示を担う経路における1つの重要なタンパク質であるにすぎない可能性がある。結果として、処置された組織中のヒート・ショック・タンパク質(例えば、HSP60、HSP70、HSP90、HSP110など)の全セットを誘導して、転移癌を首尾よく処置するのに適切な免疫応答を得ることが必要であり得る。
【0020】
II.内因性HSPの発現を上昇させるために現在利用可能な技術:理論によって束縛されることを望まないが、HSPの内因性発現を増大させるためにヒート・ショック・カスケードを誘導し得るいくつかの既知の環境刺激が存在する。これらの刺激には、温熱、アルコール、エネルギー代謝のインヒビター、重金属、酸化ストレス、炎症などが含まれる(Zyliczら(2001)HSP70 interactions with the p53 tumor suppressor protein.The EMBO Journal 20:4634−4638)。熱病感染と癌からの同時の寛解との間の相関が観察されており、最近の刊行物は、この相関をHSPの発現に帰している(Hobohm(2001)Fever and cancer in perspective.Cancer Immunol Immunother.50:391−396)。他の非毒性化学物質(例えば、グルタミンおよびアミノ酸アナログ)もまた、HSPの発現レベルを上昇させ得る(Wischmeyer(2002)Glutamine and Heat Shock Protein expression.Nutrition 18:225−228;van Rijnら(2000)Heat shock responses by cells treated with azetidine−2−carboxylic acid.Int J Hyperthermia 16:305−318)。さらに、アルベンダゾールのようなミトコンドリア非結合因子は体温を上昇させ、したがって、HSPの発現を増大させる(Wallenら(1997)Oxidants differentially regulate the heat shock response.Int J Hyperthermia 13:517−24)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
まとめると、先行技術は、種々の技術および処置を利用する限定された能力で癌状態を処置することが可能であるが、これらの処置の多くはいくつかの有意な欠点を有することを示している。本明細書中に記載される本発明の一態様は、悪性腫瘍に適用される適切にタイミングを合わせた温熱に関し、この態様において、遺伝子操作された腫瘍溶解性ウイルスもまた投与されており、熱とウイルスとの組み合わせが癌に対する免疫応答を惹起する。結果として、温熱とウイルス性腫瘍溶解との組み合わせは、局所的に処置された腫瘍ならびに遠位の処置されていない転移を抑制するのに有効である。本発明の別の態様は、ウイルス性腫瘍溶解と組み合わせたHSPの内因性発現を上昇させる他の刺激(例えば、物理的刺激、化学的刺激または生物学的刺激)に関し、ここで、局所的処置は、局所的腫瘍および遠位腫瘍を減少させる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
広く言うと、本発明は、少なくとも1つの腫瘍部位を有する対象において腫瘍細胞を除去するための組成物および方法に関する。より具体的には、この方法は、溶解条件下で、少なくとも1つの腫瘍中の腫瘍細胞をin vivoで溶解因子と接触させて、処置された腫瘍を形成するステップ;およびこの処置された腫瘍に充分なin vivo刺激を適用して、刺激された腫瘍を形成するステップを含む。
【0023】
本発明の一態様は、対象において腫瘍を収縮させるための方法であって、この方法は、腫瘍中に溶解因子を導入するステップを含み、一旦溶解の最大プロセスが生じると、次いで刺激が第1の時間にわたってこの腫瘍に適用される。腫瘍に適用される刺激は通常、この腫瘍中のヒート・ショック・タンパク質(「HSP」)のレベルを上昇させ得る。この第1の時間は、一般に約15分間〜90分間である。好ましい実施形態において、腫瘍を収縮させるための方法は、以下の方法ステップを含む:(1)第1の回数(例えば、約1回〜10回)にわたって腫瘍中に溶解因子を導入するステップ;(2)第2の回数(例えば、約1回〜20回)にわたって毎日反復され得る刺激を、溶解因子の第1の導入の2日後から開始して、第1の時間(例えば、約15分間〜90分間)にわたってこの腫瘍に適用するステップ。
【0024】
本明細書中に記載される方法は、特定のタイプの腫瘍に適用され得る。理論によって束縛されることを望まないが、欠損した腫瘍サプレッサー遺伝子(例えば、欠損したp53)、活性化されたオンコジーン(例えば、rasまたはmyc)からなる腫瘍は、この治療方法にとっての良好な候補である。本明細書中に記載される発明は、鼻咽頭癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、悪性肝腫、食道の癌、肺癌、直腸癌、胃癌、卵巣癌、腹水症または黒色腫によって例示されるがこれらに限定されない腫瘍について有用である。特定の実施形態において、この溶解因子は、腫瘍溶解性ウイルス(例えば、アデノウイルス、単純疱疹ウイルス、レオウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ポリオウイルス、麻疹ウイルスもしくは水胞性口炎ウイルス)または腫瘍溶解性細菌(例えば、Salmonella、Bifidobacterium、Shigella、Listeria、YersiniaもしくはClostridium)、または任意のタイプの腫瘍溶解性因子のいずれかを含む。この腫瘍溶解性ウイルス/腫瘍溶解性細菌は、野生型または遺伝子操作された形態のいずれかであり得る。さらに、この溶解因子は、治療的遺伝子(例えば、アポトーシス遺伝子、腫瘍壊死についての遺伝子、腫瘍細胞を餓死させるための遺伝子、細胞溶解遺伝子、陰性I−κ−β、カスパーゼ、γグロブリン、hα−1アンチトリプシンまたはアデノウイルスのE1a)を含み得る。
【0025】
腫瘍を刺激する方法ステップには以下が含まれる:局所的温熱;全身的温熱;高周波数電磁パルス;無線周波数ジアテルミー;超音波ジアテルミー;無酸素、放射線、アルコール、グルタミン、感染または任意の種類の物理的刺激、化学的刺激もしくは生物学的刺激。特定の実施形態において、局所的温熱は、対象の正常体温を約1℃から約7℃上回る範囲内である。一般に、この刺激は、刺激された腫瘍中でヒート・ショック・タンパク質(例えば、Hsp30、Hsp60、Hsp70、Hsp90、Hsp94、Hsp96またはHsp110)を上昇させる。本発明の方法に従うことによって、対象における腫瘍の収縮が達成され得る。
【0026】
本発明の別の態様は、対象において「処置されていない腫瘍」(すなわち転移)を収縮させるための方法であって、この方法は、腫瘍(「処置された腫瘍」)中に溶解因子を導入するステップを含む。一旦溶解のプロセスが生じると、次いで刺激がこの処置された腫瘍に適用される。処置された腫瘍に適用される刺激は、この処置された腫瘍中のヒート・ショック・タンパク質(「HSP」)のレベルを上昇させ得る。好ましい実施形態において、処置されていない腫瘍を収縮させるための方法は、以下の方法ステップを含む:(1)第1の回数(例えば、約1回〜10回)にわたって腫瘍(処置された腫瘍)中に溶解因子を導入するステップ;(2)第2の回数(例えば、約1回〜20回)にわたって毎日反復され得る刺激を、溶解因子の第1の導入の2日後から開始して、第1の時間(例えば、約15分間〜90分間)にわたってこの処置された腫瘍に適用するステップ。理論によって束縛されることを望まないが、溶解因子を導入するステップと刺激を適用するステップとの同期によって惹起された特異的免疫は、処置されていない腫瘍を収縮させる。本明細書中に記載される方法は、特定のタイプの遠位腫瘍に適用されることが本発明者らによって企図されている。理論によって束縛されることを望まないが、欠損したp53腫瘍サプレッサー遺伝子(例えば、欠損したp53)、活性化されたオンコジーン(例えば、rasまたはmyc)からなる処置された腫瘍または処置されていない腫瘍は、この治療方法にとっての良好な候補である。本明細書中に記載される発明は、鼻咽頭癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、悪性肝腫、食道の癌、肺癌、直腸癌、胃癌、卵巣癌、腹水症または黒色腫によって例示されるがこれらに限定されない腫瘍について有用である。特定の実施形態において、この溶解因子は、腫瘍溶解性ウイルス(例えば、アデノウイルス、単純疱疹ウイルス、レオウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ポリオウイルス、麻疹ウイルスもしくは水胞性口炎ウイルス)または腫瘍溶解性細菌(例えば、Salmonella、Bifidobacterium、Shigella、Listeria、YersiniaもしくはClostridium)、または任意のタイプの腫瘍溶解性因子のいずれかを含む。この腫瘍溶解性ウイルス/腫瘍溶解性細菌は、野生型または遺伝子操作された形態のいずれかであり得る。さらに、この溶解因子は、治療的遺伝子(例えば、アポトーシス遺伝子、腫瘍壊死についての遺伝子、腫瘍細胞を餓死させるための遺伝子、細胞溶解遺伝子、陰性I−κ−β、カスパーゼ、γグロブリン、hα−1アンチトリプシンまたはアデノウイルスのE1a)を含み得る。
【0027】
第1の腫瘍を刺激する方法ステップは、本発明者らによって以下を含むことが企図された:局所的温熱;全身的温熱;高周波数電磁パルス;無線周波数ジアテルミー;超音波ジアテルミー;無酸素、放射線、アルコール、グルタミン、感染または任意のタイプの刺激。特定の実施形態において、局所的温熱は、対象の正常体温を約1℃から約7℃上回る範囲内である。一般に、この刺激は、刺激された腫瘍中でヒート・ショック・タンパク質(例えば、Hsp30、Hsp60、Hsp70、Hsp90、Hsp94、Hsp96またはHsp110)を上昇させる。本発明の方法に従うことによって、対象における処置されていない腫瘍の収縮が達成され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本明細書中で使用される全ての用語は、科学界によって一般に同意される定義をいう。本明細書中で使用される用語が誤って解釈されないことを確実にするために、これらの用語の定義を以下のように与える:
用語「アジュバント」とは、本明細書中で使用する場合、抗原と一緒に使用され得る物質またはそれ自体免疫を惹起するための抗原として使用され得る物質をいう。
【0029】
用語「抗原」とは、本明細書中で使用する場合、免疫応答(抗体産生、特定の免疫学的細胞の活性化またはこれら2つの組み合わせを含む)を惹起するある種の物質をいう。抗原は、生物学的高分子、生物学的高分子の一部、生物の破片などであり得る。
【0030】
用語「抗原提示細胞」とは、本明細書中で使用する場合、その機能が抗原をプロセシングし、T細胞およびB細胞に対して抗原を提示することであるある種の細胞をいう。このタイプの細胞には、樹状細胞、マクロファージ細胞およびB細胞が含まれる。
【0031】
用語「癌」とは、本明細書中で使用する場合、不死的に転移および増殖する悪性腫瘍をいう。癌は罹患した組織によって分類される1群の疾患であり、これには、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、悪性肝腫、食道の癌、肺癌、直腸癌、鼻咽頭癌、胃癌、胸膜滲出、卵巣癌、腹水症および黒色腫が含まれるがこれらに限定されない。
【0032】
用語「癌遺伝子治療」とは、本明細書中で使用する場合、治療的遺伝子を保有するベクターが癌細胞に感染して癌細胞を破壊することをいう。これらの治療的遺伝子には、細胞のアポトーシス、細胞の溶解、細胞の自殺などに関連する遺伝子が含まれる。これらの治療的遺伝子にはまた、陰性i−κ−β遺伝子、カスパーゼ遺伝子、γ−グロブリン遺伝子またはα−1アンチトリプシン遺伝子、腫瘍溶解性アデノウイルスについてのE1a遺伝子などが含まれる。
【0033】
用語「癌関連抗原」とは、本明細書中で使用する場合、癌細胞の独自の特徴を示す抗原をいう。癌関連抗原はCRAと略される。
【0034】
用語「癌ワクチン」とは、本明細書中で使用する場合、CRAまたはCRAと遭遇した免疫学的細胞をいう。CRAは、癌細胞の独自の特徴を示す分子またはこのタイプの分子のエピトープであり得る。適切に操作された組成物において、癌ワクチンは、癌に対する患者の免疫を惹起し得る。
【0035】
用語「シャペロン」とは、本明細書中で使用する場合、正確な折り畳み、アセンブリ、修復、膜を横切る転位および他のタンパク質の分解を媒介し、かつ同時にそれらの機能的成分ではない、無関係のタンパク質の1群をいう。一実施形態は、シャペロンの1つのタイプとして「Hsp70」多遺伝子ファミリーを記載する。特定のタイプのシャペロンに対する利点は本発明の特定の実施形態において特徴付けられるが、これらの実施形態は限定することを意図しない。
【0036】
用語「外因性遺伝子」または「トランス遺伝子」とは、本明細書中で使用する場合、特定の位置で遺伝子治療のベクター中に挿入された目的のタンパク質をコードするDNA配列をいう。外因性遺伝子は、ベクター自体に由来し得るが、このベクターのゲノム上で再編成されている。しかし、外因性遺伝子はよりしばしば、別の生物のゲノム由来のDNAフラグメントである。外因性遺伝子の配列は、化学的合成/生化学的合成によって、天然供給源からの精製によって、クローニングによって、または任意の他の方法によって調製され得る。
【0037】
用語「ヒート・ショック・タンパク質」とは、本明細書中で使用する場合、細菌からヒトまでのほとんど全ての種類の生物において普遍的に発現されるタンパク質のファミリーをいう。これらは「ストレス・タンパク質」とも称され、HSPと略される。HSPの発現は、環境刺激および発達上の影響(例えば、温熱、無酸素、アルコール、グルコース飢餓(HSPのサブグループでもあるグルコース調節タンパク質(すなわちGRP)について)、組織損傷、感染など)によって調節される。HSPは、タンパク質の折り畳みおよびタンパク質代謝において重要な役割を果す。これらは、細胞膜上にHSPに対するレセプターを有するDC細胞に免疫原を輸送し得る。温熱処置後に個々にかまたは組み合わせてかのいずれかで上昇した発現レベルを有するヒート・ショック・タンパク質には、Hsp30、Hsp60、Hsp70、Hsp90、Hsp94、Hsp96およびHsp110が含まれるがこれらに限定されない。
【0038】
用語「Hsp70」とは、本明細書中で使用する場合、シャペロンの多遺伝子ファミリーをいうが、全てのメンバーが以下の4つの共通した特徴を有する:高度に保存された配列、約70kDaの分子量、ATPase活性ならびに折り畳まれていないポリペプチド鎖の疎水性セグメントを結合および放出する能力。
【0039】
用語「溶解因子」とは、本明細書中で使用する場合、腫瘍細胞を破裂させ得る組成物をいう。
【0040】
用語「天然に存在する」とは、対象について適用する場合に本明細書中で使用する場合、対象が自然界に見出され得るという事実をいう。例えば、自然界の供給源から単離され得、実験室中で人為的に故意に改変されていない、生物(ウイルスを含む)中に存在するポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列は、天然に存在する。本明細書中で使用する場合、用語「組換え体」とは、ポリヌクレオチド構築物(および、例えばアデノウイルス・ゲノム)が人為的な故意の改変によって一部生成されていることを示す。
【0041】
用語「処置されていない腫瘍」とは、本明細書中で使用する場合、それが原発腫瘍であるか転移腫瘍であるかに関わらず、腫瘍溶解性因子およびHSPの発現を上昇させる環境刺激が直接的に適用されていない腫瘍をいう。処置されていない腫瘍は、腫瘍溶解性因子およびHSPの発現を上昇させる環境刺激の適用の部位から離れていてもよい。用語「遠位腫瘍」もまた、相互交換可能に利用され得る。
【0042】
用語「腫瘍溶解性細菌」とは、本明細書中で使用する場合、癌細胞中で不死的に複製してこれらの癌細胞を殺滅し得る遺伝子操作された細菌をいう。Salmonella typhimurium YS72、Bifidobacterium、Shigella、Listeria、Yersinia、Clostridiumがその例であり、他の例は、本明細書中でその全内容が参考として援用される、Bermudesらによる論文(Bermudesら(2002)Live bacteria as anticancer agents and tumor−selective protein delivery vectors.Curr Opin Drug Discov Devel.5(2):194−9)中に記載されている。
【0043】
用語「腫瘍溶解技術」とは、本明細書中で使用する場合、アポトーシスおよび壊死を含む腫瘍細胞の溶解または死を誘導し得る全ての種類の有効なプロトコルをいう。これらのプロトコルには、腫瘍溶解性ウイルス、腫瘍溶解性細菌および癌細胞の溶解または死を引き起こす任意の他の因子の適用が含まれる。
【0044】
用語「腫瘍溶解性ウイルス」とは、本明細書中で使用する場合、癌細胞中で不死的に複製してこれらの癌細胞を殺滅し得る、遺伝子操作されたウイルスをいう。アデノウイルスdl1520は、腫瘍溶解性ウイルスの一例である。
【0045】
用語「p53機能」とは、本明細書中で使用する場合、本質的に正常なレベルのp53遺伝子によってコードされるポリペプチド(すなわち、同じ組織学的タイプの非新生物細胞と比較して)を有する特性をいい、ここで、このp53ポリペプチドは、野生型アデノウイルスのE1b p55タンパク質を結合し得る。例えば、p53機能は、p53の不活性(すなわち変異体)形態の産生によってか、またはp53ポリペプチドの発現の実質的な減少もしくは全体的な喪失によって失われ得る。また、p53機能は、野生型p53タンパク質をコードするp53対立遺伝子を含む新生物細胞において実質的に存在しない可能性がある。例えば、p53遺伝子座の遺伝的変更の外観(例えば、p53の異常な細胞内でのプロセシングまたは局在化を生じる変異(例えば、核以外の細胞質中のp53の局在化を優勢に生じる変異))が、p53機能の喪失を生じ得る。
【0046】
用語「配列同一性の百分率」は、本明細書中で使用する場合、比較ウインドウにわたって適切に整列された2つの配列を比較し、ここで、この比較ウインドウ中の配列の部分は、比較されている2つの配列の最適なアラインメントのために、参照配列と比較して付加または欠失(すなわち、「ギャップ」)を含み得る。百分率同一性は、同一の残基が両方の配列中に存在する位置の数を決定して一致した位置の数を得、一致した位置の数をウインドウ中の位置の総数によって除算し、そしてその結果に100を乗算して配列同一性の百分率を得ることによって計算される。次いで、総同一性が、完全問い合わせ配列をカバーするウインドウの全てにわたる平均同一性として決定される。理論によって束縛されることを望まないが、GAP、BESTFIT、BLASTA、FASTAおよびTFASTAのようなコンピュータ・ソフトウェア・パッケージもまた、配列同一性を決定するために利用され得る。
【0047】
用語「RB機能」とは、本明細書中で使用する場合、本質的に正常なレベルのRB遺伝子によってコードされるポリペプチド(すなわち、同じ組織学的タイプの非新生物細胞と比較して)を有する特性をいい、ここで、このRBポリペプチドは、野生型アデノウイルスのE1aタンパク質を結合し得る。例えば、RB機能は、RBの不活性(すなわち変異体)形態の産生によってか、またはRBポリペプチドの発現の実質的な減少もしくは全体的な喪失によって失われ得る。また、RB機能は、野生型RBタンパク質をコードするRB対立遺伝子を含む新生物細胞において実質的に存在しない可能性がある。例えば、RB遺伝子座の遺伝的変更の外観(例えば、RBの異常な細胞内でのプロセシングまたは局在化を生じる変異)が、RB機能の喪失を生じ得る。
【0048】
用語「複製欠損ウイルス」とは、本明細書中で使用する場合、ウイルス複製表現型の発現を支持する所定の細胞集団(例えば、p53機能および/またはRB機能を実質的に欠く細胞)において、優先的に細胞増殖を阻害するかまたはアポトーシスを誘導し、かつ非複製性の非形質転換細胞に特徴的な正常なp53機能およびRB機能のレベルを含む細胞において、細胞増殖を阻害することもアポトーシスを誘導することも複製表現型を発現することも実質的にできないウイルスをいう。典型的に、複製欠損ウイルスは、正常なRB機能および/またはp53機能を含む細胞に対して、プラーク形成効率の実質的な低下を示す。
【0049】
用語「複製表現型」とは、本明細書中で使用する場合、複製欠損アデノウイルスのようなウイルスが感染した細胞の、以下の表現型特徴のうち1つまたは複数をいう:(1)ウイルス後期遺伝子プロモーターから開始される後期遺伝子産物(例えば、カプシド・タンパク質(例えば、アデノウイルス・ペントン・ベース・ポリペプチド))またはRNA転写物の実質的な発現、(2)ウイルス・ゲノムの複製または複製中間体の形成、(3)ウイルス・カプシドまたはパッケージングされたビリオン粒子のアセンブリ、(4)感染細胞における細胞変性効果(CPE)の出現、(5)ウイルス溶菌サイクルの完了、および(6)機能的オンコプロテインをコードする野生型の複製能のあるDNAウイルスが感染した非新生物細胞におけるp53機能またはRB機能の排除の際に典型的に起こり得る他の表現型変更。複製表現型は、列挙された表現型特徴のうち少なくとも1つ、好ましくはこれらの表現型特徴のうち1つより多くを含む。
【0050】
用語「S−98」と「H101」とは、相互交換可能に使用され得る。
【0051】
用語「刺激」とは、本明細書中で使用する場合、生物、器官、細胞またはそれらの一部において活性を引き起こすかまたは活性を変化させる任意の作用または因子をいう。一般に、特定の実施形態において記載される刺激は、腫瘍細胞への溶解因子の導入から生じる任意の変化または衝撃に「加えた」ものである。本明細書中に記載される一実施形態は、刺激として外部温熱を利用する。本明細書中に記載される別の実施形態は、刺激として全身的温熱を利用する。なお別の実施形態において、利用される刺激は、腫瘍細胞中のシャペロン・タンパク質のレベルを増大させる。特定のタイプの刺激に対する利点は、本発明の特定の実施形態において特徴付けられるが、これらの実施形態は限定することを意図しない。
【0052】
用語「処置された腫瘍」とは、本明細書中で使用する場合、それが原発腫瘍であるか転移腫瘍であるかに関わらず、腫瘍溶解性因子およびHSPの発現を上昇させる環境刺激が直接適用される指定された腫瘍をいう。いくつかの実施形態において、「第1の腫瘍」は処置された腫瘍と同義である。
【0053】
用語「Tリンパ球」とは、本明細書中で使用する場合、胸腺由来の細胞の1種をいい、一連の免疫応答に関与し得る。
【0054】
本発明は、少なくとも1つの腫瘍部位を有する対象において腫瘍細胞を除去するための組成物および方法に一般に関する。より具体的には、この方法は、溶解条件下で、少なくとも1つの腫瘍中の腫瘍細胞をin vivoで溶解因子と接触させて、処置された腫瘍を形成するステップ;およびこの処置された腫瘍に充分なin vivo刺激を適用して、刺激された腫瘍を形成するステップを含む。理論によって束縛されることを望まないが、この刺激された腫瘍は、刺激を適用するステップの前の腫瘍のレベルと比較して上昇したレベルで少なくとも1種のシャペロン・タンパク質を発現する。このシャペロン・タンパク質は、溶解された腫瘍細胞由来のCRAを結合して対象の免疫系にCRAを提示し、それによって増殖する腫瘍の存在に対して対象の免疫系を変更させるヒート・ショック・タンパク質(「HSP」)を含み得る。
【0055】
本発明は、異なる種類の腫瘍溶解とHSPの発現を上昇させる異なる技術との間の同期に関する。より具体的には、本発明は以下に関する:(1)指定された癌でのウイルス、細菌または任意の種類の因子による腫瘍溶解;(2)その結果充分なHSPが充分なCRAを捕捉してHSP−CRA複合体を形成する、腫瘍溶解性因子が投与された腫瘍への、任意の種類の物理的刺激、化学的刺激または生物学的刺激(例えば、温熱、HSPの発現を上昇させるグルタミン)のタイミングのよい適用;(3)HSPの上昇した発現と腫瘍溶解との同期はHSP−CRAの充分な放出を生じ、放出されたCRAは、患者のCRAの完全セットを正確に示す;(4)次いで、充分量のHSP−CRAがDC細胞に内因的に提示され、最終的に免疫系に提示される;(5)免疫系に提示されたHSP−CRAのシグナルが、癌に対する免疫応答を惹起するのに充分に免疫原性である;(6)癌に対するこの免疫学的処置は、それが原発腫瘍であるか転移腫瘍であるかに関わらず、処置された腫瘍および処置されていない腫瘍の両方に対して使用され得る。
【0056】
腫瘍溶解技術。正常組織に対する限定された毒性を有する、癌細胞に対して選択的な新規癌治療の開発は、腫瘍学の研究者にとって挑戦である。腫瘍細胞または腫瘍の微小環境に対する選択性を有する微生物(例えばウイルス)は、数十年にわたって可能性のある兵器庫として調査されてきた。遺伝的に改変された非病原性細菌が、直接的な殺腫瘍効果を提供するかまたは殺腫瘍分子を送達するかのいずれかのための、可能性のある抗腫瘍因子として出現し始めている。弱毒化したSalmonella、ClostridiumおよびBifidobacteriumは、腫瘍において選択的に増大して腫瘍の増殖を阻害し得、癌処置についての新たなアプローチを示す。腫瘍組織に対するそれらの選択性に起因して、これらの細菌は、治療的タンパク質を腫瘍に送達するための理想的なベクターでもある。Escherichia coliシトシン・デアミナーゼ(CD)を発現するVNP20009(Salmonella typhimuriumの弱毒化株)およびその誘導体TAPET−CDは特に有望であり、現在癌患者における第I期臨床試験を受けている(Bermudesら(2002)Live bacteria as anticancer agents and tumor−selective protein delivery vectors.Curr Opin Drug Discov Devel.5(2):194−9)。腫瘍溶解性細菌の他の例は、Salmonella、Bifidobacterium、Shigella、Listeria、YersiniaおよびClostridiumによって例示され得るがこれらに限定されない。
【0057】
癌細胞中で選択的に複製し得る任意のウイルス、細菌または他の因子が、腫瘍溶解の目的のために使用され得る。本発明において言及される腫瘍溶解性ウイルスは、単純疱疹ウイルス(HSV−1)、アデノウイルス、ニューカッスル病ウイルス(「NDV」)、ポリオウイルス、麻疹ウイルス、水胞性口炎ウイルス(「VSV」)などであり得る。
【0058】
理論によって束縛されることを望まないが、先行する報告は、p53遺伝子の変異が、癌患者について最も一般的な遺伝子変異の1つであることを実証している。P53遺伝子の変異は、癌の症例の半分より多くにおいて存在する。この遺伝子上に変異を有する癌を標的化する腫瘍溶解技術の1つは、タンパク質E1b−55KDをコードするE1b領域中に変更を有するヒトAd5アデノウイルスから改変された腫瘍溶解性ウイルスである。この腫瘍溶解性アデノウイルスは、p53遺伝子変異を有する癌細胞中で選択的に複製し、したがって、癌細胞を高い特異性で溶解させる。タンパク質E1b−55kdをコードするE1b領域中に変更を有する2つの改変体Ad5ウイルスS98−001(配列番号1)およびS98−002(配列番号2)が、本発明において例として使用される。
【0059】
さらに、適切なベクターによって癌細胞に選択的に送達される場合、多数の治療的遺伝子(アポトーシスについての遺伝子、細胞溶解についての遺伝子、腫瘍壊死についての遺伝子、腫瘍細胞を餓死させるための遺伝子、陰性I−κ−β遺伝子、カスパーゼ遺伝子、γグロブリン遺伝子、hα−1アンチトリプシン遺伝子、アデノウイルスのE1a遺伝子などによって例示されるがこれらに限定されない)が、腫瘍溶解の目的のために使用され得る。
【0060】
HSPの発現を上昇させる技術。理論によって束縛されることを望まないが、局所的温熱および全身的温熱が、ヒトおよび動物においてHSPの発現を上昇させ得ることが実証されている(Liら(1995)Heat shock proteins,thermotolerance,and their relevance to clinical hyperthermia.Int.J.Hyperthermia 11(4):459−488)。したがって、5分間〜90分間にわたる局所的温熱(温度範囲:38℃〜45℃)および全身的温熱(体温42℃未満)を、局所的腫瘍および転移腫瘍を処置するために腫瘍溶解と同期して使用した。
【0061】
高周波数電磁放射線(例えば、無線周波数(0.1MHz〜100MHz)ジアテルミーおよびマイクロ波(100MHz〜2,450MHz)ジアテルミー)は、その高い効率、深い透過性、容易に制御される投薬量および操作の単純さに起因して、局所的温熱のために最も頻繁に使用される。無線周波数ジアテルミーは深部にある腫瘍に適切であり、マイクロ波ジアテルミーは表層の腫瘍に適する。さらに、超音波ジアテルミーは、表層の腫瘍および深部にある腫瘍の両方に対して使用され得るが、骨またはガスで満たされた腔(例えば、腸もしくは肺)の後ろを含むほとんどの腫瘍については適切でない。本発明について、温熱が、局所および遠位の癌細胞を直接的に殺滅するためには使用されないが、HSPのより高い発現を誘導するために使用されることに注目すべきである。したがって、本発明において選択される温熱技術は、腫瘍溶解性微生物(例えば、腫瘍溶解性ウイルス、腫瘍溶解性細菌および遺伝子治療のための他のベクター)の腫瘍溶解効率に対して障害を有するべきではない。
【0062】
理論によって束縛されることを望まないが、HSPの発現を増大させる他の代替法は、無酸素、放射線、アルコール、エネルギー代謝の特定のインヒビター、グルタミンおよび局所温度または全身温度を上昇させ得かつヒトにとって安全である任意の他の因子によって例示されるがこれらに限定されない。HSPの発現をアップレギュレートし得る任意の生物学的手段(例えば、ヒート・ショック転写因子、感染など)もまた、癌に対する免疫を惹起するために、腫瘍溶解と同期して使用され得る可能性がある。
【0063】
腫瘍溶解とHSPの上昇した発現との同期。本発明の実施プロトコルは、上記2つの技術の任意の同期であり得る。1つまたは複数の腫瘍溶解技術と同期されたHSPの発現を上昇させる技術の1つは、原発癌および転移癌を処置するために癌細胞に対する免疫応答を惹起する。
【0064】
原発癌および転移癌に対する最適化された処置の一態様は、温熱とE1b−55KD変更を有する改変体アデノウイルスによる腫瘍溶解との同期を含む。温熱はHSPの発現を増大させ、E1b−55KD変更を有する改変体アデノウイルスは、癌細胞を選択的に溶解させる。腫瘍溶解性アデノウイルスが高いレベルで癌細胞を溶解させる場合、機能的HSPの量もまた高いレベルであるべきである。これら2つの「高いレベル」が同期される場合にのみ、充分なHSP−CRAは、癌に対する免疫応答を惹起するために免疫系に充分な免疫原性シグナルを提示する。
【0065】
理論によって束縛されることを望まないが、以下が実証されている:(1)HSPの発現を増大させる最適な条件は、38℃〜45℃の温度範囲内および15分間〜90分間の時間範囲内であること(LiおよびMak(1985)Induction of heat shock protein synthesis in murine tumors during the development of thermotolerance.Cancer Res.45(8):3816−3824);(2)HSPの上昇した発現は、温熱処置の終了後数分で開始し、HSPの上昇したレベルは、24時間〜48時間持続し得ること(Li(1984)Thermal biology and physiology in clinical hyperthermia:current status and further needs.Cancer Res.(補遺)44(8):48865−48935);(3)本発明の発明者らは、腫瘍溶解性アデノウイルスの最大の腫瘍溶解効果がウイルス注射の後4日〜10日で生じることを決定していること。したがって、本発明者らは、ウイルス性の腫瘍溶解とHSPの上昇した発現とを最大限に同期するためのプロトコルを企図している。簡潔なプロトコルは、以下に概説したプロトコルを含む:5日間にわたって1日1回、腫瘍に腫瘍溶解性アデノウイルスを注射すること;および次いで38℃〜45℃の温度範囲内で15分間〜90分間にわたって、ウイルス注射の腫瘍に温熱を適用すること。温熱処置は、第1のウイルス注射の2日後から開始し、8日間〜16日間にわたって持続する。
【0066】
本発明中の一態様は、癌患者の腫瘍中に注射されるE1b−55KD変更を有する腫瘍溶解性アデノウイルスS98−001(配列番号1)を含み、無線周波数ジアテルミー(波長範囲4μm〜24μm、透過範囲4mm〜5mm)がまた、38℃〜45℃の温度範囲内で15分間〜90分間同じ腫瘍に供され、処置された腫瘍の増殖および処置されていない腫瘍の増殖を制御した。
【0067】
腫瘍溶解性因子またはHSPの発現を上昇させる因子を送達するために、種々の経路(例えば、腫瘍内注射、非経口投与(筋内注射、静脈内注射および皮下注射を含む)、経口投与ならびに経皮投与、鼻腔内投与および坐剤を介した投与を含む他の全身投与)が使用され得る。これらの組成物は、錠剤、丸剤、カプセル剤、半固体、粉末、徐放性調製物、溶液、懸濁物、エアロゾルまたは任意の他の適切な形態であり得る。癌に対する免疫は、腫瘍溶解のための因子およびHSPの発現を増大させる因子の両方を含む組成物または医薬製剤(例えば、腫瘍溶解性ウイルスおよびグルタミンの投薬形態)によって惹起され得る。これらの組成物において使用される賦形剤は、任意の固体、液体、半固体またはエアロゾルの存在下の気体であり得る。
実施例
【0068】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含められる。以下の実施例において開示される技術は、本発明の実施において充分機能するように本発明者らによって示され、したがって、その実施のために好ましい様式を構成するとみなされ得ることが、当業者によって理解されるはずである。しかし、当業者は、本発明の開示に照らして、多数の変化が開示された特定の実施形態においてなされ得、本発明の精神および範囲から逸脱することなく同様の結果または類似の結果をなお得ることを理解するはずである。
【実施例1】
【0069】
一般に、アデノウイルスは、ヒトまたは動物において呼吸器、腸および眼の感染を引き起こす、二本鎖DNAゲノムを有するウイルスのクラスに属する。風邪を引き起こすウイルスはアデノウイルスである。本発明の腫瘍溶解性ウイルスは、遺伝子操作されたアデノウイルスAd5改変体を含む。Ad5ウイルスの特定の操作された改変体が本発明のために使用され、この改変体は、S98−001(配列番号1)またはS98−002(配列番号2)を含む。理論によって束縛されることを望まないが、野生型Ad5によるヒト身体の感染は、内因的に治癒可能であることが知られている。さらに、Ad5アデノウイルスは、遺伝子治療のためのベクターとして慣用的に使用されている。なぜなら、Ad5ゲノムのDNAフラグメントが、ヒト細胞のゲノム中に組み込まれ得るという報告が存在しないからである。したがって、特定の腫瘍溶解性ウイルスを注射することと注射部位の癌およびウイルス注射部位から離れた癌を阻害するための温熱との同期が、本発明において利用される。腫瘍溶解性Ad5改変体が特定の例として使用されるが、他の溶解因子は、腫瘍溶解性ウイルス(例えば、アデノウイルス、単純疱疹ウイルス、レオウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ポリオウイルス、麻疹ウイルスもしくは水胞性口炎ウイルス)または腫瘍溶解性細菌(例えば、Salmonella、Bifidobacterium、Shigella、Listeria、YersiniaもしくはClostridium)または任意のタイプの腫瘍溶解性因子のいずれかを含む。この腫瘍溶解性ウイルス/腫瘍溶解性細菌は、野生型または遺伝子操作された形態のいずれかであり得る。さらに、溶解因子は、治療的遺伝子(例えば、アポトーシス遺伝子、腫瘍壊死についての遺伝子、腫瘍細胞を餓死させるための遺伝子、細胞溶解遺伝子、陰性I−κ−β、カスパーゼ、γグロブリン、hα−1アンチトリプシンまたはアデノウイルスのE1a)を含み得る。
【0070】
遺伝子操作されたアデノウイルス改変体S98−001(配列番号1)およびS98−002(配列番号2)。野生型Ad5のゲノム(配列番号3)は、約35,935bpからなる。癌細胞中で選択的に複製し得る、S98−001(配列番号1)およびS98−002(配列番号2)と少なくとも95%の相同性を有する遺伝子操作されたAd5の変異および改変体を、本発明について例として考慮する(図1)。野生型Ad5(配列番号3)を改変体S98−001(配列番号1)と比較する場合の1つの相違点は、この改変体のE1b領域中にある位置2025での余分なTGA終止コドンである。S98−001(配列番号1)はまた、以下の2つの欠失を保有する:一方は位置2,501と位置3,328との間のE1b領域中であり;他方は、全E3領域を含む位置27,865と位置30,995との間である。55KDのタンパク質が、E1b領域中のDNA配列によってコードされる。このタンパク質をE1b−55KDと命名する。正常細胞において、E1b−55KDは、腫瘍サプレッサー遺伝子p53によってコードされるタンパク質を結合して不活化し、ウイルス複製を開始する。S98−001(配列番号1)において、E1b領域におけるこれら2つの変更は、改変体E1b−55KDタンパク質の発現を引き起こす。この改変体E1b−55KDタンパク質は、p53タンパク質との非常に低い結合親和性を有する。したがって、S98−001(配列番号1)は、正常細胞中で複製できない。しかし、S98−001(配列番号1)は、p53タンパク質が機能不全である癌細胞において迅速に複製する。E3領域の機能は、アデノウイルスが免疫系の監視から逃れる能力に関する。S98−001(配列番号1)におけるE3領域の完全な欠失は、免疫系がこのウイルスを識別および排除するのをより容易にする。したがって、S98−001(配列番号1)は、E1b−55KD領域中に変更を有するだけの改変体Ad5ウイルスと比較すると、感染する可能性および正常細胞を溶解させる可能性が低い。癌細胞と正常細胞との間の細胞溶解の比率は、S98−001(配列番号1)について約100:1〜約1,000:1の範囲内であることが実証されている。S98−001(配列番号1)は癌細胞のみを溶解させるので、これは腫瘍溶解性ウイルスである。
【0071】
S98−002(配列番号2)は、別の遺伝子改変された改変体Ad5である。S98−002(配列番号2)は以下の2つの欠失を有する:一方は、位置2501と位置3328との間のE1b−55KDをコードする領域中であり;そして他方は、全E3領域を含む位置27,865と位置30,995との間である。Ad5改変体S98−002(配列番号2)を調製する目的は、腫瘍溶解性アデノウイルスの別の実施形態が生成され得ることを実証することである。Ad5の改変体DNA配列はヒト・ゲノム中に組み込まれ得ないが、Ad5改変体S98−001(配列番号1)およびS98−002(配列番号2)は、癌細胞中で選択的に複製する。したがって、S98−001(配列番号1)およびS98−002(配列番号2)は、ヒトおよび動物における使用について安全である。
【0072】
腫瘍溶解性Ad5改変体の調製。(1)S98ウイルスの構築。pXC−1およびpBHG11をMicrobix Biosystemから購入した。pXC−1は、5型アデノウイルス(Ad5)配列(bp22〜5,790)を含む。pBHG11は、以下の2つの欠失を有するAd5配列を含む:ウイルス・カプシド・タンパク質のパッケージング・シグナルをコードするE1領域中のbp188〜1339;およびE3領域の欠失(bp27,865〜30,995)。pBHG11は感染性ではない。しかし、pXC−1とpBHG11との同時トランスフェクションは、相同組換えに基づいて感染性ウイルスを生じる。
【0073】
pXC−1上のbp1,338〜2,501のAd5 DNAフラグメントをPCR法によって増幅するために、以下の2つのオリゴヌクレオチド・プライマーを使用した:
HZ1(配列番号4)(5’−CTATCCTGAGACGCCCGAC−3’)および、
HZ2(配列番号5)(5’−GATCGGATCCAGGTCTCCAGTAAGTGGTAGCTGC−3’;BglII部位に下線を付した)。
【0074】
次いで、合成されたDNA配列をベクターpGEM−T(Promega)中にクローニングして、プラスミドHZ102を得た。HZ103を、HZ102のXba1/BglII消化フラグメントをpXC−1のXba1/BglII消化フラグメントに連結することによって構築した。bp2025でpXC−1上に終止コドンを生成するために、プラスミドHZ104を、Quick Change Site Directed Mutagenesis(Strategene)を用いて生成した。このステップにおいて使用した2つのプライマーは以下であった:
HZ3(配列番号6)(5’−AAAGGATAAATGGAGTAAAGAAACC−3’)および、
HZ4(配列番号7)(5’−CAGATGGGTTTGTTCATTTATCC−3’)。
【0075】
HZ104の変化された配列は、DNA配列決定によって確認されている。HZ104のXba1/BglII消化フラグメントをpXC−1のXba1/BglII消化フラグメントに連結してHZ105を生成した。
【0076】
S98ウイルスを、相同組換えによって2つの重複するプラスミドを使用して生成し、次いで、プラークをつつき、HYH細胞中で増幅させた。HYHはE1Aタンパク質およびE1Bタンパク質の両方を通常発現するので、全てのS98ウイルスは、HYH細胞において有効にプラークを形成し得る。ウイルスDNAを、QIAamp DNA Bloodキット(Qiagen)を使用して精製し、PCRおよびサザン・ブロットによって分析した。
【0077】
pBHG11およびHZ105による細胞系統293の同時トランスフェクションにより、S98−001(配列番号1)を生成した。pBHG11およびHZ103による同時トランスフェクションによりS98−002(配列番号2)を生成し、pBHG11およびpXC−1による同時トランスフェクションによりS98−100を生成した。
【0078】
S98−100はE1b領域中に変更を有さず、その結果、これはE1b−55KDを正常に発現するが、そのE3領域は欠失されている。結果的に、S98−100は野生型アデノウイルスと同様に複製する。すなわち、S98−100は癌細胞中だけでなく正常細胞中でも複製する。したがって、S98−100は野生型S98とみなすべきである。S98−100を陽性対照として使用して、S98ウイルスについて腫瘍溶解特異性を決定した。
【0079】
E1b領域中の2つの変更(位置2025における余分なTGA終止コドンおよび位置2501と位置3328との間の欠失)は、タンパク質495R(タンパク質E1b−55KD)をコードするDNA配列ならびにタンパク質495R合成関連mRNA−13S、14Sおよび14.5SをコードするDNA配列の一部を欠くS98−001(配列番号1)を作製する。その一方で、位置2501と位置3328との間のE1b領域における欠失は、タンパク質495R(タンパク質E1b−55KD)をコードするDNA配列の一部を欠くS98−002(配列番号2)を作製する。したがって、S98−001(配列番号1)およびS98−002(配列番号2)は共に、腫瘍サプレッサー遺伝子p53が機能不全である癌細胞中で選択的に複製する。
【0080】
in vitroプラーク形成試験。in vitroプラーク形成試験を使用して、p53欠損細胞におけるS98ウイルスの増殖能を決定した。この一連の試験において使用した細胞系統は以下であった:OVCAR−3(卵巣のう腫細胞系統、p53欠損)、Hep3B(肝腫細胞系統、p53欠損)、U373(神経膠腫細胞系統、p53欠損)、SW620(結腸癌細胞系統、p53欠損)、RKO(結腸癌細胞系統、野生型p53)、HBL−100(正常胸部細胞系統、野生型p53)。
【0081】
S98−100を陽性対照として使用して、S98ウイルスについて腫瘍溶解特異性を決定した。S98−100は、癌細胞中および正常細胞中で正常に複製するからである。同様に、HYHを、試験した細胞系統についての陽性対照として使用した。全てのS98ウイルスはHYH細胞において有効にプラークを形成するからである。S98ウイルスの複製の程度を定量的に比較するために、HYH細胞培養物において形成されたS98−100ウイルスのプラークを、任意に100と規定した。任意の他のタイプの細胞系統(「Z」)における他のS98ウイルス(「S98−XXXウイルス」)についてのプラーク数を、細胞系統「Z」中のS98−XXXウイルスから形成されたプラーク数の、HYH細胞中のS98−100のプラーク数に対する百分率として表した。この百分率を以下のように表す:
【0082】
【数1】


【0083】
したがって、定義により、より多数のウイルス・プラークは、より速いウイルス複製を示す。表1は、p53欠損を有するヒト癌細胞における遺伝子操作されたS98アデノウイルスの選択的複製が、プラーク形成試験によって測定され得ることを示す。例えば、表1中に示されるように、S98−001(配列番号1)およびS98−002(配列番号2)は、p53欠損を有さない細胞系統中よりも、p53欠損を有する細胞系統において優勢に速く複製する。例えば、S98−001(配列番号1)およびS98−002(配列番号2)は、RKO(結腸癌細胞系統、野生型p53)細胞系統およびHBL−100(正常胸部細胞系統、野生型p53)細胞系統と比較して、OVCAR−3(卵巣のう腫細胞系統、p53欠損)細胞系統、Hep3B(肝腫細胞系統、p53欠損)細胞系統、U373(神経膠腫細胞系統、p53欠損)細胞系統およびSW620(結腸癌細胞系統、p53欠損)細胞系統においてかなりより迅速に複製する。理論によって束縛されることを望まないが、正常なp53を有する細胞において形成されたプラークは、S98−100と比較して、S98−001(配列番号1)およびS98−002(配列番号2)についてかなり非常に限定されている。例えば、RKO細胞(結腸癌細胞系統、野生型p53)におけるS98−001(配列番号1)およびS98−002(配列番号2)のプラーク数は、S98−100のプラーク数のそれぞれ470分の1および250分の1にすぎない。同様に、HBL−100細胞(正常胸部細胞系統、野生型p53)におけるS98−001(配列番号1)およびS98−002(配列番号2)のプラーク数は、S98−100のプラーク数のそれぞれ3000分の1および1000分の1にすぎない。
【0084】
【表1】


【0085】
これらのプラーク形成試験の結果は以下であることを示す:(1)S98−001(配列番号1)およびS98−002(配列番号2)は、p53欠損を有する癌細胞において選択的に複製する;(2)機能的p53を有する細胞において、S98−001(配列番号1)およびS98−002(配列番号2)の複製速度は、野生型アデノウイルスと類似の複製速度を有するS98−100とは対照的に、非常に低い。
【0086】
in vitro毒性試験。この一連の試験の目的は、正常細胞に対するS98−001(配列番号1)およびS98−002(配列番号2)の毒性を決定することである。ヒト微小血管内皮細胞(hMVEC)をこれらの試験のために選択した。hMVECはヒト肺組織に起源し、再生しない初代細胞の1種である。漸増する感染多重度(「MOI」)で細胞にS98ウイルスを感染させ、細胞培養物の病理学的状態を連続的に追跡した。野生型アデノウイルスは、0.01のMOIでのウイルス感染の後10日で、培養hMVECの単層を完全に溶解させることが実証された。対照的に、病理学的変化は、0.01、0.1、1.0および10のMOIでのS98−001(配列番号1)またはS98−002(配列番号2)での感染の10日後ほど遅くても観察されなかった。したがって、正常細胞に対するS98−001(配列番号1)およびS98−002(配列番号2)の毒性は、野生型アデノウイルスよりもかなり低かった。
【実施例2】
【0087】
本発明の組成物および方法を用いて処置されるべき動物(例えば、ヒトを含む)についての有効な投薬プロトコルを決定するために、5つの用量レベルをH101(配列番号1)について使用した。組換えアデノウイルスを、進行した固形腫瘍を有する患者への腫瘍内注射によって投与した。1つの目的は、H101(配列番号1)の腫瘍内注射の最大耐用量(「MTD」)および安全性を決定することであった。使用したH101(配列番号1)の5つのレベルを表2に示し、投薬量上昇曲線を図3に示す。5つの別個の用量レベルの各々について3人の患者を含んだ。MTDは、2人の患者がDLTを経験した用量であるとし、ここで、DLTは、H101(配列番号1)に起因するインフルエンザ様症候群についてのグレード4の毒性、H101(配列番号1)注射部位での局所的反応についてのグレード4の毒性またはH101(配列番号1)に起因するグレード3の重症度の任意の他の毒性を含む。3人の患者のうち1人がDLTを有した場合、その集団について合計6人の患者を処置した。
【0088】
【表2】


【0089】
図4は、種々のタイプの腫瘍を有する15人の患者を登録したことを示す。効力評価腫瘍査定を、H101(配列番号1)を注射した腫瘍でのみ実施した。なぜならこれは、非従来的な測定を使用した、1.5×1012(ウイルス粒子)のレベルでの1の部分的応答(「PR」);5.0×1011(ウイルス粒子)のレベルで1の最小応答(「MR」)を有する局所的注射のための産物であるからである。
【0090】
H101(配列番号1)の投与後の免疫反応および排泄されたH101の環境影響汚染もまた決定した。H101の投与後に採取した全てのサンプル(口腔咽頭のスワブ、尿を含む)は陰性であった。H101投与の4日後に採取した血漿サンプルは陰性であった。理論によって束縛されることを望まないが、これらのデータは、H101(配列番号1)が、循環中にも尿中にも持続しなかったことを示唆する。
【実施例3】
【0091】
温熱と同期して腫瘍溶解性ウイルスS98−001(配列番号1)を使用した癌患者の処置。この患者の生年月日は1943年6月10日であった。この男性患者は、1990年に「鼻咽頭癌」と診断された。放射線療法による処置期間の後に、原発腫瘍の進行は臨床的に制御された。しかし、右頚部および上部鎖骨の領域中の2つの腫瘍は、これらの年月の間にゆっくりと進行していた。2001年後期に、これら2つの腫瘍を、温熱と組み合わせて放射線療法(コバルト60、DT 34 Gy/17F/24d)によって処置した。不運にも、これら2つの腫瘍の進行は、これらの処置によって抑制されなかった。この患者は2002年2月初旬に入院し、この患者についての身体検査を、温熱と同期した腫瘍溶解性ウイルスS98−001(配列番号1)の投与によって処置する前に実施した。この患者の全般的な身体的状態は良好であったが、その鼻咽頭組織は、結核により厚くなっており、僅かに充血していた。これら2つの腫瘍の表面は粗く、厚くなり硬化していた。これら2つの腫瘍はそれぞれ、47×26×22mmおよび33×25×6mmの寸法を有しており、腫瘍1および腫瘍2と示された。臨床検査をこの患者に対して実施し、これらの試験の結果は以下のとおりである:血液Rt−正常;尿Rt−正常;排泄Rt−正常;肝臓および腎臓の機能−正常(GLO 24.2、ALT 45以外);細胞免疫学−正常(CD3 60、CD4 39以外);胸部X線−正常;超音波−正常(脾臓の僅かな腫大以外);ECG−右脚の完全な遮断;CT−右頚部および上部鎖骨の2つの大きい腫瘍、境界は不明瞭。
【0092】
この患者は、右肩および右頚部に転移を有する進行した鼻咽頭癌と診断された。患者の同意を得て、この患者を、温熱と同期したS98−001(配列番号1)の腫瘍内投与によって処置した。処置過程において、患者の腫瘍1に、この過程の1日目から開始して連続する5日間にわたって、1.0×1012ウイルス粒子のS98−001(配列番号1)を腫瘍内注射した。対照的に、腫瘍2にはS98−001(配列番号1)を投与しなかった。次いで、腫瘍1を、この過程の2日目から開始して連続する13日間にわたって、41℃〜44℃で90分間局所的に加熱した。4μm〜42μmの波長および4mm〜5mmの透過性を有するスペクトル・ジェネレータを温熱のために使用した。腫瘍1を加熱する一方で、腫瘍2を、この腫瘍に温熱処置が適用されていないことを確実にするために遮蔽した。この過程の22日目に、この患者の身体的状態を再度調べた。S98−001(配列番号1)の注射および局所的温熱を含む処置は腫瘍1のみに適用したが、腫瘍1(処置された腫瘍)および腫瘍2(処置されていない腫瘍)の両方が可視的に退縮したことが見出された。さらなる測定により、腫瘍1のサイズが、47×26×22mmから44×18×10mmへと退縮したことが明らかとなった(70.5%の減少)。より顕著なことに、腫瘍2(処置されていない腫瘍)もまた、33×25×6mmから23×17×5mmへと退縮した(52.6%の減少)。
【0093】
理論によって束縛されることを望まないが、本発明の利点は、以下のようにまとめられる:(1)温熱によって誘導されるHSPへの患者のCRAの完全な曝露、ならびにその後の、腫瘍溶解性ウイルスによる癌細胞の溶解の際にHSPおよびDCによって媒介される免疫系へのCRAの完全セットの提示;(2)癌に対する免疫応答を惹起するための、HSPの発現と、免疫系に提示されるCRAの充分なシグナルを確実にする腫瘍溶解性ウイルスによる癌細胞の溶解との同期;(3)以前に議論した個別ワクチン接種の2つの技術の冗長な手順を回避する全くのin vivoプロセス;(4)全ての腫瘍患者について個々の腫瘍のCRAの完全セットに対する免疫を惹起するために温熱と同期した単一の因子(腫瘍溶解性ウイルス);(5)この免疫学的治療は、原発腫瘍ならびに転移腫瘍について有効である。
【0094】
この症例は、温熱と同期した腫瘍溶解が、この処置が直接適用される処置された腫瘍について有効であることを実証している。さらに、この方法は、第1の腫瘍が「処置されて」いるが、処置されていない腫瘍すなわち遠位腫瘍にS98−001(配列番号1)の注射も温熱も適用されていない場合、遠位腫瘍についても有効である。
【実施例4】
【0095】
軟骨肉腫。この女性患者は1982年に誕生した。2001年4月に、この患者の左腰部に腫瘍が見出され、手術後、この患者は「難組織肉腫」と診断された。2001年10月に、この腫瘍は再発し、サイズが増大した。2002年2月に、この腫瘍のサイズは、身体検査によって決定したとき21cm×35cmであった。腫瘍生検の病理学により、これが悪性腫瘍であり、おそらく脱分化軟骨肉腫であることが示された。CTにより、腫瘍寸法が15cm×11cmであり、いくつかの近傍の肋骨が糜爛していたことが示された。さらに、右肺の上葉上に、0.6cm×0.8cmの寸法を有する2つの転移病変が検出された。放射線療法による処置の後、2002年3月のCTにより、腫瘍寸法が13cm×11cmであり、近傍の肋骨が糜爛していたことが示され、右肺の上葉上に、1.0cm×1.0cmの寸法を有する2つの転移病変が検出された。2002年3月に、この患者は、IFO 2g d1〜3+E−ADM 40mg d1〜3+DTIC 200mg d1〜5のようなレジメンで化学療法により処置された。副作用は患者が耐えられないほど重篤であった。患者の同意を得て、この患者を、2002年7月から、温熱と同期したS98−001の腫瘍内投与によって処置した。処置サイクルにおいて、左腰部の腫瘍に、このサイクルの1日目から開始して連続する5日間にわたって5.0×1011ウイルス粒子でS98−001を腫瘍内注射した。約5MHz〜約15MHzの範囲内の周波数で作動する無線周波数温熱システムを使用して、注射された病変を次いで、このサイクルの6日目から開始して連続する7日間にわたって41℃〜44℃で70分間にわたって局所的に加熱した。2002年12月のCTにより、腫瘍のサイズが8.0cm×6.0cmであり(すなわち、66%の減少)、いくつかの近傍の肋骨が糜爛していたことが示された。右肺の上葉上に、1.0cm×1.0cmの寸法を有する2つの転移病変が検出された。2003年7月のCTにより、右肺の上葉上の2つの転移病変が消失したことが示された。この症例は、温熱と同期した腫瘍溶解が、この処置が原発腫瘍に直接適用される場合に処置された腫瘍について有効であることを実証する。さらに、この実施例は、本発明の組成物および方法が遠位腫瘍(転移)についても有効であることを実証し、ここで、この遠位腫瘍にはS98−001が直接注射されておらず、温熱が適用されていない。
【実施例5】
【0096】
非小細胞肺癌。この男性患者は1933年に誕生した。この患者は、2002年12月に、病理学的試験の後に「右肺の腺癌」と診断された。病期は、60のKPSスコアを有するT3N1M1/IVであった。CTスキャンにより、寸法(3cm×2cm)を有する肺の上葉中の腫瘍塊および寸法(1cm×1cm)を有する左肺の下葉中の転移病変が検出された。患者の同意を得て、この患者を、2003年1月から、温熱と同期したS98−001の腫瘍内投与によって処置した。処置サイクルにおいて、右肺上の腫瘍に、このサイクルの1日目および8日目に、1.5×1012ウイルス粒子でS98−001を腫瘍内注射した。約5MHz〜約15MHzの範囲内の周波数で作動する無線周波数温熱システムを使用して、注射された病変を次いで、注射後連続する2日間にわたって41℃〜44℃で局所的に加熱した。2サイクルの処置の後、CTスキャンにより、左肺の下葉中の転移病変が消失し、注射された病変が安定なままであったことが示された。2003年10月の来院時のCTにより、左肺の下葉中の転移病変が消失して完全な応答(「CR」)を示したことが示され、ここで、(3cm×1cm、50%のサイズの減少)の寸法を有する注射された病変の客観的応答は部分的応答(「PR」)であった。この症例は、温熱と同期した腫瘍溶解が、処置が腫瘍に直接適用される場合に処置された腫瘍について有効であることを実証する。さらに、この方法は遠位腫瘍についても有効である。
【実施例6】
【0097】
結腸癌。この男性患者は1983年に誕生した。この患者は、2001年4月の根治手術の後に、「結腸(S字)、小腸および骨盤腔侵襲の癌、デュークDならびに中等度分化腺腫」と診断された。手術後、2001年7月から2002年4月まで、この患者を化学療法によって処置し、ここで、5−FU、CDDP、MMCを、レバミゾール、カペシタビン、CPT−11、Taxus chinensis化合物およびCoix lachrymajobi油と共に使用した。2002年10月に、不完全な腸閉塞の症状と共に、この患者の腹壁上に、3.5cm×5.0cmのサイズを有する転移病変が見出された。患者の同意の下に、この患者を、2002年の11月12日から11月18日まで、温熱と同期したS98−001の腫瘍内投与によって処置した。処置サイクルにおいて、この原発腫瘍に、1.5×1012ウイルス粒子でS98−001を腫瘍内注射した。次いで、注射された病変を、注射後連続する2日間にわたって、41℃〜44℃で70分間にわたって局所的に加熱した。2002年11月21日から、低投薬量の化学療法を、4サイクルにわたって5−FU 0.3 24h d1〜5+DDP 5mg d1〜5+CPT−11 0.1 d1,8のレジメンで使用した。1サイクル中に3週間を含めた。2002年10月28日のCTにより、寸法3.5cm×5.0cmを有する腹壁病変、直腸領域腫瘍1.2cm×1.0cm(処置前)が示された。2002年12月30日に、腹壁病変が3.7cm×2.0cmまで減少し、直腸領域腫瘍が寸法1.2cm×1.0cmを有することが示された。2003年2月11日のCTにより、腹壁病変が2cm×2.5cmまで減少し、直腸領域腫瘍が1.2cm×1.4cmまで減少したことが示された。2003年1月20日のCTおよび2003年2月21日のこの領域の微細針生検により、腹壁病変および直腸領域腫瘍の両方が肉芽組織の増殖にすぎず、癌細胞が見出されなかったことが示された。この患者の症状は緩和され、この患者は通常の食餌に移行した。この症例は、温熱と同期した腫瘍溶解が、処置が直接適用される場合に処置された腫瘍について有効であることを実証する。さらに、この方法は遠位腫瘍についても有効である。
【0098】
理論によって束縛されることを望まないが、本発明の組成物および方法の利点は以下のようにまとめられる:(1)温熱によって誘導されるHSPへの患者のCRAの完全な曝露、ならびに腫瘍溶解性ウイルスによる癌細胞の溶解の際にHSPおよびDCによって媒介される免疫系へのCRAの完全セットの引き続く提示;(2)癌に対する免疫応答を惹起するための、HSPの発現と、免疫系に提示されるCRAの充分なシグナルを確実にする腫瘍溶解性ウイルスによる癌細胞の溶解との同期;(3)以前に議論した個別ワクチン接種の2つの技術の冗長な手順を回避する全くのin vivoプロセス;(4)全ての腫瘍患者について個々の腫瘍のCRAの完全セットに対する免疫を惹起するために温熱と同期した単一の因子(腫瘍溶解性ウイルス);(5)この免疫学的治療は、原発腫瘍ならびに転移腫瘍について有効である。
【0099】
引用文献
以下の米国特許文献および刊行物が、本明細書中で参考として援用される。
【0100】
米国特許文献
米国特許第5677178号、1997年10月発行、McCormickらが発明者として列挙される。
【0101】
米国特許第5750119号、1998年5月発行、Srivastavaらが発明者として列挙される。
【0102】
米国特許第5788963号、1998年8月発行、Murphyらが発明者として列挙される。
【0103】
米国特許第6017540号、2000年1月発行、Srivastavaらが発明者として列挙される。
【0104】
他の刊行物
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【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】遺伝的に改変されたS98アデノウイルスの図解を示す図である。
【図2】正常細胞における遺伝的に改変されたS98アデノウイルスの複製を示す図であり、図中、MOIは感染多重度の略号である。
【図3】H101(配列番号1)について使用した5つの用量レベルについての、腫瘍内注射投薬量上昇曲線を示す図である。
【図4】投薬量上昇曲線を決定するための研究に登録した腫瘍患者の数およびタイプを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの腫瘍部位を有する対象において腫瘍細胞を除去するための方法であって、
(a)溶解条件下で、少なくとも1つの腫瘍中の前記腫瘍細胞をin vivoで溶解因子と接触させて、処置された腫瘍を形成するステップ;および
(b)前記処置された腫瘍に充分なin vivo刺激を適用して、刺激された腫瘍を形成するステップ、
を含む方法。
【請求項2】
前記腫瘍細胞を溶解因子と接触させるステップが、前記in vivo刺激を適用するステップの前に行われるか、または前記腫瘍に前記in vivo刺激を適用するステップが、前記腫瘍細胞を溶解因子と接触させるステップの前に行われるか、または前記腫瘍細胞を溶解因子と接触させるステップおよび前記in vivo刺激を適用するステップが同時に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの腫瘍中の前記腫瘍細胞をin vivoで溶解因子と接触させるステップの後であるが、前記in vivo刺激を適用するステップの前に、第1の時間待機するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
以下の方法ステップ:
(a)前記処置された腫瘍中の前記腫瘍細胞をin vivoで前記溶解因子と接触させるステップ;
一定の時間待機するステップ;および
(b)前記処置された腫瘍にin vivo刺激を適用するステップ、
を第1の回数反復するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の回数が1回から約5回の範囲内である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の時間が約1日間から約10日間である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記処置された腫瘍にin vivo刺激を第2の回数適用するステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の回数が約1回から約16回の範囲内である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記刺激を適用するステップが、約15分間から約90分間にわたる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記腫瘍が、鼻咽頭癌、軟骨肉腫、結腸癌、デュークDおよび非小細胞肺癌を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記腫瘍細胞が、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、悪性肝腫、食道の癌、小細胞肺癌、肺癌、直腸癌、胃癌、卵巣癌、腹水症または黒色腫の細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記溶解因子が、前記腫瘍細胞中で複製しかつ非腫瘍細胞中で複製から阻害されている単離された腫瘍溶解性ウイルスを含み;前記溶解条件が感染条件を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記単離された腫瘍溶解性ウイルスが、機能的ウイルス性オンコプロテインを有さないアデノウイルスを含み;前記腫瘍細胞が、機能的p53遺伝子産物または機能的RB遺伝子産物を欠く、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記機能的ウイルス性オンコプロテインが、p53結合タンパク質またはRB結合タンパク質を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記溶解因子が、配列番号1と少なくとも95%同一の配列または配列番号2と少なくとも95%同一の配列を有する単離された腫瘍溶解性ウイルスを含み;前記溶解条件が感染条件を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記単離された腫瘍溶解性ウイルスが、単離された単純疱疹ウイルス、単離されたレオウイルス、単離されたニューカッスル・ウイルス、単離されたポリオウイルス、単離された麻疹ウイルスまたは単離された水胞性口炎ウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記溶解因子が腫瘍溶解性細菌を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記腫瘍溶解性細菌が、Salmonella、Bifidobacterium、Shigella、Listeria、YersiniaまたはClostridiumである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記溶解因子が、アポトーシス遺伝子、細胞溶解遺伝子、腫瘍壊死因子遺伝子、陰性I−κ−β遺伝子、カスパーゼ遺伝子、γ−グロブリン遺伝子またはhα−1アンチトリプシンを含む遺伝子をコードする単離された核酸発現構築物を含み、前記コードされた遺伝子が腫瘍溶解の目的のために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記in vivo刺激が、前記対象についての正常体温を約1℃から約7℃上回る範囲内の局所的温熱を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記in vivo刺激が高周波数電磁パルスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記in vivo刺激が無線周波数ジアテルミーを含み、前記無線周波数が0.1MHzから100MHzの範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記in vivo刺激がマイクロ波ジアテルミーを含み、前記マイクロ波が100MHzから2,450MHzの範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記刺激が超音波ジアテルミーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記in vivo刺激が全身的温熱を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記刺激が、無酸素処置、放射線処置、アルコール処置もしくはグルタミン処置、または感染である、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記刺激された腫瘍が、前記刺激を適用するステップの前の前記腫瘍のレベルと比較して上昇したレベルで少なくとも1種のシャペロン・タンパク質を発現し、前記シャペロン・タンパク質がヒート・ショック・タンパク質(「HSP」)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記ヒート・ショック・タンパク質が、HSP70、Hsp30、Hsp60、Hsp90、Hsp94、Hsp96またはHsp110である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
少なくとも第1の腫瘍および遠位腫瘍を有する対象において腫瘍細胞を除去するための方法であって、前記方法は、
(a)溶解条件下で、前記第1の腫瘍中の前記腫瘍細胞をin vivoで溶解因子と接触させて、処置された第1の腫瘍を形成するステップであって、前記遠位腫瘍は前記溶解因子と接触させないステップ;および
(b)前記処置された第1の腫瘍にin vivo刺激を適用して、刺激された第1の腫瘍を形成するステップであって、前記遠位腫瘍は刺激されないステップ、
を含む方法。
【請求項30】
前記第1の腫瘍の前記腫瘍細胞を溶解因子と接触させるステップが、前記in vivo刺激を適用するステップの前に行われるか、または前記腫瘍に前記in vivo刺激を適用するステップが、前記腫瘍細胞を溶解因子と接触させるステップの前に行われるか、または前記腫瘍細胞を溶解因子と接触させるステップおよび前記in vivo刺激を適用するステップが同時に行われる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも1つの腫瘍中の前記腫瘍細胞をin vivoで溶解因子と接触させるステップの後であるが、前記in vivo刺激を適用するステップの前に、第1の時間待機するステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
以下の方法ステップ:
(a)前記第1の腫瘍中の前記腫瘍細胞をin vivoで前記溶解因子と接触させるステップ;
一定の時間待機するステップ;および
(b)前記処置された第1の腫瘍に前記in vivo刺激を適用するステップ、
を第1の回数反復するステップをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記第1の回数が1回から約5回の範囲内である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記第1の時間が約1日間から約10日間である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記処置された第1の腫瘍にin vivo刺激を第2の回数適用するステップを反復するステップをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記第2の回数が約1回から約16回の範囲内である、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記刺激を適用するステップが、約15分間から約90分間にわたる、請求項29に記載の方法。
【請求項38】
前記第1の腫瘍が、鼻咽頭癌、軟骨肉腫、結腸癌、デュークDまたは非小細胞肺癌であり、前記遠位腫瘍がそれらの転移を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項39】
前記第1の腫瘍の前記腫瘍細胞が、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、悪性肝腫、食道の癌、小細胞肺癌、肺癌、直腸癌、胃癌、卵巣癌、腹水症または黒色腫の細胞であり、前記遠位腫瘍がそれらの転移を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項40】
前記溶解因子が、前記腫瘍細胞中で複製しかつ非腫瘍細胞中で複製から阻害されている単離された腫瘍溶解性ウイルスを含み;前記溶解条件が感染条件を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項41】
前記単離された腫瘍溶解性ウイルスが、機能的ウイルス性オンコプロテインを有さないアデノウイルスを含み;前記腫瘍細胞が、機能的p53遺伝子産物または機能的RB遺伝子産物を欠く、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記機能的ウイルス性オンコプロテインが、p53結合タンパク質またはRB結合タンパク質を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記溶解因子が、配列番号1と少なくとも95%同一の配列または配列番号2と少なくとも95%同一の配列を有する単離された腫瘍溶解性ウイルスを含み;前記溶解条件が感染条件を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項44】
前記単離された腫瘍溶解性ウイルスが、単離された単純疱疹ウイルス、単離されたレオウイルス、単離されたニューカッスル・ウイルス、単離されたポリオウイルス、単離された麻疹ウイルスまたは単離された水胞性口炎ウイルスである、請求項29に記載の方法。
【請求項45】
前記溶解因子が腫瘍溶解性細菌を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項46】
前記腫瘍溶解性細菌が、Salmonella、Bifidobacterium、Shigella、Listeria、YersiniaまたはClostridiumである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記溶解因子が、アポトーシス遺伝子、細胞溶解遺伝子、腫瘍壊死因子遺伝子、陰性I−κ−β遺伝子、カスパーゼ遺伝子、γ−グロブリン遺伝子またはhα−1アンチトリプシンを含む遺伝子をコードする単離された核酸発現構築物を含み、前記コードされた遺伝子が腫瘍溶解の目的のために使用される、請求項29に記載の方法。
【請求項48】
前記in vivo刺激が、前記対象についての正常体温を約1℃から約7℃上回る範囲内の局所的温熱を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項49】
前記in vivo刺激が高周波数電磁パルスを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項50】
前記in vivo刺激が無線周波数ジアテルミーを含み、前記無線周波数が0.1MHzから100MHzの範囲内である、請求項29に記載の方法。
【請求項51】
前記in vivo刺激がマイクロ波ジアテルミーを含み、前記マイクロ波が100MHzから2,450MHzの範囲内である、請求項29に記載の方法。
【請求項52】
前記刺激が超音波ジアテルミーを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項53】
前記in vivo刺激が全身的温熱を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項54】
前記刺激が、無酸素処置、放射線処置、アルコール処置もしくはグルタミン処置、または感染である、請求項29に記載の方法。
【請求項55】
前記刺激された第1の腫瘍が、前記刺激を適用するステップの前の前記腫瘍のレベルと比較して上昇したレベルで少なくとも1種のシャペロン・タンパク質を発現し、前記シャペロン・タンパク質がヒート・ショック・タンパク質(「HSP」)を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項56】
前記ヒート・ショック・タンパク質が、HSP70、Hsp30、Hsp60、Hsp90、Hsp94、Hsp96またはHsp110である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
遠位鼻咽頭癌および第1の鼻咽頭癌を有する対象において前記遠位鼻咽頭癌を収縮させるための方法であって、
(a)前記第1の鼻咽頭癌を単離された腫瘍溶解性アデノウイルスと接触させて、処置された癌を形成するステップ;
(b)第1の時間待機するステップ;
(c)前記処置された癌に第2の時間にわたって刺激を適用するステップであって、前記刺激が、前記対象の正常体温を約1℃から約7℃上回る範囲内で、前記処置された癌の局所温度を上昇させるステップ;
(d)ステップ(a)、ステップ(b)およびステップ(c)を第1の回数反復するステップ;ならびに
(e)ステップ(c)を第2の回数反復するステップを含み、
前記第1の時間が約1日間から約10日間の範囲内であり、前記第2の時間が約15分間から約90分間であり、前記第1の回数が1回から約5回の範囲内であり、前記第2の回数が約1回から約16回の範囲内である方法。
【請求項58】
前記単離された腫瘍溶解性アデノウイルスが配列番号1または配列番号2を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記刺激が前記処置された癌に限局され、前記刺激が、高周波数電磁パルス、0.1Mhzから100Mhzの範囲内の無線周波数、100Mhzから2,450Mhzの範囲内のマイクロ波ジアテルミーまたは超音波ジアテルミーからなる群から選択され、前記刺激が前記第1の腫瘍中のシャペロン・タンパク質のレベルを増大させ、前記シャペロン・タンパク質がHsp70、Hsp30、Hsp60、Hsp90、Hsp94、Hsp96またはHsp110である、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
配列番号1と少なくとも95%同一の配列または配列番号1の縮重改変体を含む、単離された核酸。
【請求項61】
配列番号2と少なくとも95%同一の配列または配列番号2の縮重改変体を含む、単離された核酸。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの腫瘍部位を有する対象において腫瘍細胞を除去するための方法であって、
(a)溶解条件下で、少なくとも1つの腫瘍中の前記腫瘍細胞をin vivoで溶解因子と接触させて、処置された腫瘍を形成するステップ;および
(b)前記処置された腫瘍に充分なin vivo刺激を適用して、刺激された腫瘍を形成するステップ、
を含み、前記対象がヒトまたは動物である方法。
【請求項2】
前記腫瘍細胞を溶解因子と接触させるステップが、前記in vivo刺激を適用するステップの前に行われるか、または前記腫瘍に前記in vivo刺激を適用するステップが、前記腫瘍細胞を溶解因子と接触させるステップの前に行われるか、または前記腫瘍細胞を溶解因子と接触させるステップおよび前記in vivo刺激を適用するステップが同時に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの腫瘍中の前記腫瘍細胞をin vivoで溶解因子と接触させるステップの後であるが、前記in vivo刺激を適用するステップの前に、第1の時間待機するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
以下の方法ステップ:
(a)前記処置された腫瘍中の前記腫瘍細胞をin vivoで前記溶解因子と接触させるステップ;
一定の時間待機するステップ;および
(b)前記処置された腫瘍にin vivo刺激を適用するステップ、
を第1の回数反復するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の回数が1回から約5回の範囲内である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の時間が約1日間から約10日間である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記処置された腫瘍にin vivo刺激を第2の回数適用するステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の回数が約1回から約16回の範囲内である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記刺激を適用するステップが、約15分間から約90分間にわたる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記腫瘍が、鼻咽頭癌、軟骨肉腫、結腸癌、デュークDおよび非小細胞肺癌を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記腫瘍細胞が、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、悪性肝腫、食道の癌、小細胞肺癌、肺癌、直腸癌、胃癌、卵巣癌、腹水症または黒色腫の細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記溶解因子が、前記腫瘍細胞中で複製しかつ非腫瘍細胞中で複製から阻害されている単離された腫瘍溶解性ウイルスを含み;前記溶解条件が感染条件を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記単離された腫瘍溶解性ウイルスが、機能的ウイルス性オンコプロテインを有さないアデノウイルスを含み;前記腫瘍細胞が、機能的p53遺伝子産物または機能的RB遺伝子産物を欠く、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記機能的ウイルス性オンコプロテインが、p53結合タンパク質またはRB結合タンパク質を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記溶解因子が、配列番号1と少なくとも95%同一の配列または配列番号2と少なくとも95%同一の配列を有する単離された腫瘍溶解性ウイルスを含み;前記溶解条件が感染条件を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記単離された腫瘍溶解性ウイルスが、単離された単純疱疹ウイルス、単離されたレオウイルス、単離されたニューカッスル・ウイルス、単離されたポリオウイルス、単離された麻疹ウイルスまたは単離された水胞性口炎ウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記溶解因子が腫瘍溶解性細菌を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記腫瘍溶解性細菌が、Salmonella、Bifidobacterium、Shigella、Listeria、YersiniaまたはClostridiumである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記溶解因子が、アポトーシス遺伝子、細胞溶解遺伝子、腫瘍壊死因子遺伝子、陰性I−κ−β遺伝子、カスパーゼ遺伝子、γ−グロブリン遺伝子またはhα−1アンチトリプシンを含む遺伝子をコードする単離された核酸発現構築物を含み、前記コードされた遺伝子が腫瘍溶解の目的のために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記in vivo刺激が、前記対象についての正常体温を約1℃から約7℃上回る範囲内の局所的温熱を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記in vivo刺激が高周波数電磁パルスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記in vivo刺激が無線周波数ジアテルミーを含み、前記無線周波数が0.1MHzから100MHzの範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記in vivo刺激がマイクロ波ジアテルミーを含み、前記マイクロ波が100MHzから2,450MHzの範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記刺激が超音波ジアテルミーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記in vivo刺激が全身的温熱を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記刺激が、無酸素処置、放射線処置、アルコール処置もしくはグルタミン処置、または感染である、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記刺激された腫瘍が、前記刺激を適用するステップの前の前記腫瘍のレベルと比較して上昇したレベルで少なくとも1種のシャペロン・タンパク質を発現し、前記シャペロン・タンパク質がヒート・ショック・タンパク質(「HSP」)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記ヒート・ショック・タンパク質が、HSP70、Hsp30、Hsp60、Hsp90、Hsp94、Hsp96またはHsp110である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
少なくとも第1の腫瘍および遠位腫瘍を有する対象において腫瘍細胞を除去するための方法であって、
(a)溶解条件下で、前記第1の腫瘍中の前記腫瘍細胞をin vivoで溶解因子と接触させて、処置された第1の腫瘍を形成するステップであって、前記遠位腫瘍は前記溶解因子と接触させないステップ;および
(b)前記処置された第1の腫瘍にin vivo刺激を適用して、刺激された第1の腫瘍を形成するステップであって、前記遠位腫瘍は刺激されないステップ、
を含み、前記対象がヒトまたは動物である方法。
【請求項30】
前記第1の腫瘍の前記腫瘍細胞を溶解因子と接触させるステップが、前記in vivo刺激を適用するステップの前に行われるか、または前記腫瘍に前記in vivo刺激を適用するステップが、前記腫瘍細胞を溶解因子と接触させるステップの前に行われるか、または前記腫瘍細胞を溶解因子と接触させるステップおよび前記in vivo刺激を適用するステップが同時に行われる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも1つの腫瘍中の前記腫瘍細胞をin vivoで溶解因子と接触させるステップの後であるが、前記in vivo刺激を適用するステップの前に、第1の時間待機するステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
以下の方法ステップ:
(a)前記第1の腫瘍中の前記腫瘍細胞をin vivoで前記溶解因子と接触させるステップ;
一定の時間待機するステップ;および
(b)前記処置された第1の腫瘍に前記in vivo刺激を適用するステップ、
を第1の回数反復するステップをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記第1の回数が1回から約5回の範囲内である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記第1の時間が約1日間から約10日間である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記処置された第1の腫瘍にin vivo刺激を第2の回数適用するステップを反復するステップをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記第2の回数が約1回から約16回の範囲内である、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記刺激を適用するステップが、約15分間から約90分間にわたる、請求項29に記載の方法。
【請求項38】
前記第1の腫瘍が、鼻咽頭癌、軟骨肉腫、結腸癌、デュークDまたは非小細胞肺癌であり、前記遠位腫瘍がそれらの転移を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項39】
前記第1の腫瘍の前記腫瘍細胞が、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、悪性肝腫、食道の癌、小細胞肺癌、肺癌、直腸癌、胃癌、卵巣癌、腹水症または黒色腫の細胞であり、前記遠位腫瘍がそれらの転移を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項40】
前記溶解因子が、前記腫瘍細胞中で複製しかつ非腫瘍細胞中で複製から阻害されている単離された腫瘍溶解性ウイルスを含み;前記溶解条件が感染条件を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項41】
前記単離された腫瘍溶解性ウイルスが、機能的ウイルス性オンコプロテインを有さないアデノウイルスを含み;前記腫瘍細胞が、機能的p53遺伝子産物または機能的RB遺伝子産物を欠く、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記機能的ウイルス性オンコプロテインが、p53結合タンパク質またはRB結合タンパク質を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記溶解因子が、配列番号1と少なくとも95%同一の配列または配列番号2と少なくとも95%同一の配列を有する単離された腫瘍溶解性ウイルスを含み;前記溶解条件が感染条件を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項44】
前記単離された腫瘍溶解性ウイルスが、単離された単純疱疹ウイルス、単離されたレオウイルス、単離されたニューカッスル・ウイルス、単離されたポリオウイルス、単離された麻疹ウイルスまたは単離された水胞性口炎ウイルスである、請求項29に記載の方法。
【請求項45】
前記溶解因子が腫瘍溶解性細菌を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項46】
前記腫瘍溶解性細菌が、Salmonella、Bifidobacterium、Shigella、Listeria、YersiniaまたはClostridiumである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記溶解因子が、アポトーシス遺伝子、細胞溶解遺伝子、腫瘍壊死因子遺伝子、陰性I−κ−β遺伝子、カスパーゼ遺伝子、γ−グロブリン遺伝子またはhα−1アンチトリプシンを含む遺伝子をコードする単離された核酸発現構築物を含み、前記コードされた遺伝子が腫瘍溶解の目的のために使用される、請求項29に記載の方法。
【請求項48】
前記in vivo刺激が、前記対象についての正常体温を約1℃から約7℃上回る範囲内の局所的温熱を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項49】
前記in vivo刺激が高周波数電磁パルスを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項50】
前記in vivo刺激が無線周波数ジアテルミーを含み、前記無線周波数が0.1MHzから100MHzの範囲内である、請求項29に記載の方法。
【請求項51】
前記in vivo刺激がマイクロ波ジアテルミーを含み、前記マイクロ波が100MHzから2,450MHzの範囲内である、請求項29に記載の方法。
【請求項52】
前記刺激が超音波ジアテルミーを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項53】
前記in vivo刺激が全身的温熱を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項54】
前記刺激が、無酸素処置、放射線処置、アルコール処置もしくはグルタミン処置、または感染である、請求項29に記載の方法。
【請求項55】
前記刺激された第1の腫瘍が、前記刺激を適用するステップの前の前記腫瘍のレベルと比較して上昇したレベルで少なくとも1種のシャペロン・タンパク質を発現し、前記シャペロン・タンパク質がヒート・ショック・タンパク質(「HSP」)を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項56】
前記ヒート・ショック・タンパク質が、HSP70、Hsp30、Hsp60、Hsp90、Hsp94、Hsp96またはHsp110である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
遠位鼻咽頭癌および第1の鼻咽頭癌を有する対象において前記遠位鼻咽頭癌を収縮させるための方法であって、
(a)前記第1の鼻咽頭癌を単離された腫瘍溶解性アデノウイルスと接触させて、処置された癌を形成するステップ;
(b)第1の時間待機するステップ;
(c)前記処置された癌に第2の時間にわたって刺激を適用するステップであって、前記刺激が、前記対象の正常体温を約1℃から約7℃上回る範囲内で、前記処置された癌の局所温度を上昇させるステップ;
(d)ステップ(a)、ステップ(b)およびステップ(c)を第1の回数反復するステップ;ならびに
(e)ステップ(c)を第2の回数反復するステップを含み、
前記第1の時間が約1日間から約10日間の範囲内であり、前記第2の時間が約15分間から約90分間であり、前記第1の回数が1回から約5回の範囲内であり、前記第2の回数が約1回から約16回の範囲内である方法。
【請求項58】
前記単離された腫瘍溶解性アデノウイルスが配列番号1または配列番号2を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記刺激が前記処置された癌に限局され、前記刺激が、高周波数電磁パルス、0.1Mhzから100Mhzの範囲内の無線周波数、100Mhzから2,450Mhzの範囲内のマイクロ波ジアテルミーまたは超音波ジアテルミーからなる群から選択され、前記刺激が前記第1の腫瘍中のシャペロン・タンパク質のレベルを増大させ、前記シャペロン・タンパク質がHsp70、Hsp30、Hsp60、Hsp90、Hsp94、Hsp96またはHsp110である、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
配列番号1と少なくとも95%同一の配列または配列番号1の縮重改変体を含む、単離された核酸。
【請求項61】
配列番号2と少なくとも95%同一の配列または配列番号2の縮重改変体を含む、単離された核酸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−519784(P2006−519784A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503095(P2006−503095)
【出願日】平成16年1月28日(2004.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/002330
【国際公開番号】WO2004/066947
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(505281894)シャンハイ、サンウエイ、バイアテク、カムパニ、リミティド (1)
【Fターム(参考)】