説明

厨芥処理装置及びポンプ

【課題】残渣の除去が容易な厨芥処理装置を提供する。残渣の除去が容易なポンプを提供する。
【解決手段】一方端から投入された厨芥に水を加えて破砕してスラリーを生成し、他方端から前記スラリーを排出するディスポーザー4と、ディスポーザー4の前記他方端に接続されて、前記他方端から排出される前記スラリーを吸引する吸引室、下流側の装置に向けて前記スラリーを吐出する吐出室、及び前記スラリーを前記吸引室から前記吐出室に送出する送出手段を有するポンプ5を備える厨芥処理装置1において、ポンプ5に、前記送出手段より下方にあって、前記吸引室と前記吐出室を連絡する循環管路7と、循環管路7を開閉する電動開閉弁8を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリー輸送用のポンプを備える厨芥処理装置に関する。また、スラリー輸送用のポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
本願の出願人は、ディスポーザーとポンプを備える厨芥処理装置についての発明を特許出願していて、該特許出願は既に公開されている(特許文献1)。
【0003】
ディスポーザーは厨房用シンク等の下方に備えられて、厨芥に水を加えて破砕してスラリーを生成する装置である。一般家庭用のディスポーザーから排出されたスラリーは、そのまま公共下水道等に排出されるが、給食用調理施設等の大量のスラリーが発生する施設においては、例えば浄化槽や固液分離装置のような排水処理装置を備えて、ディスポーザーから排出されたスラリーを処理することが行われている。また、衛生上の理由などのために、排水処理装置は調理施設から離れた場所、つまりディスポーザーから離れた場所に配置される。
【0004】
しかしながら、ディスポーザーから排出されたスラリーを、排水管の勾配、つまり重力だけで、遠方に配置された排水処理装置まで輸送することは難しい。そこで、特許文献1で開示されているように、ディスポーザーの下流側にスラリー輸送用のポンプを備えることが行われている。
【0005】
図4に、このスラリー輸送用のポンプを一部断面図示して、該ポンプの構成を示す。図4に示すように、ポンプ21は、隔壁22を介して隣接する吸込室23と吐出室24を有し、吸込室23と吐出室24の間に送出手段25を備えている。吸込室23は吸込フランジ26を介して図示しないディスポーザーの排出口に接続されて、ディスポーザーから排出されるスラリーが流入する。吸込室23に流入したスラリーは、送出手段25で加圧されて吐出室24に流入する。吐出室24は吐出フランジ27を介して図示しない吐出管に接続され、吐出室24に流入したスラリーは該吐出管を通って、図示しない排水処理装置に流れる(非特許文献1)。
【0006】
なお、送出手段25は、一般にルーツポンプと呼ばれる周知のポンプであり(例えば、特許文献2,3,4)、ケーシング28と、図示しない電動機とギア装置に接続されてケーシング28の中で互いに逆方向に回転する2個の繭型ロータ29から構成される。また、繭型ロータ29は図示しない電動機で回転駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−132078号公報
【特許文献2】特開2006−283665号公報
【特許文献3】特開2000−179482号公報
【特許文献4】特開平08−303355号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「アンレットルーツ型ポンプ」(株式会社アンレット 製品カタログ K−009−93.6DS)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ポンプ21は、機械的信頼性や耐久性が高いので、スラリーの輸送に適しているが、吸込室23及び吐出室24にスラリー中の固形物の一部(以下、「残渣」という)、例えば、野菜等に付着していた砂粒や、貝殻を粉砕した粉などの比較的に比重の大きい成分が沈殿すると言う問題がある。そのため、ポンプ21は、定期的に、ドレンキャップ30、31を取り外して、吸込室23と吐出室24の底に沈殿した残渣32を除去する必要があった。
【0010】
しかしながら、ポンプ21が設置されるシンクの下方の空間は狭隘であり、作業者が手を入れてドレンキャップ30、31を着脱することは困難で煩わしかった。ドレンキャップ30、11を取り外して、残渣を除去する際は、残渣を含む水を受ける容器をポンプ21の下方に差し入れる必要があるが、かかる容器の設置や撤去は困難で煩わしかった。また、残渣を含む水が厨房の床に流れて、床を汚すと言う問題もあった。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、残渣の除去が容易な厨芥処理装置を提供することを目的とする。また、残渣の除去が容易なポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の厨芥処理装置は、一方端から投入された厨芥に水を加えて破砕してスラリーを生成し、他方端から前記スラリーを排出するディスポーザーと、前記ディスポーザーの前記他方端に接続されて、前記他方端から排出される前記スラリーを吸引する吸引室、下流側の装置に向けて前記スラリーを吐出する吐出室、及び前記スラリーを前記吸引室から前記吐出室に送出する送出手段を有するポンプを備える厨芥処理装置において、前記ポンプは、前記送出手段より下方にあって、前記吸引室と前記吐出室を連絡する連絡流路と、前記連絡流路を開閉する開閉弁を備えることを特徴とする。
【0013】
前記連絡流路は、前記吸引室と前記吐出室を区画する隔壁に開口された開口であっても良い。
【0014】
前記連絡流路は、前記吸引室及び前記吐出室の外部に配置された管路であって、前記開閉弁を前記管路の中途に配置するようにしても良い。
【0015】
本発明のポンプは、液状物質を吸引する吸引室、前記液状物質を吐出する吐出室、及び前記液状物質を前記吸引室から前記吐出室に送出する送出手段を有するポンプにおいて、前記送出手段より下方にあって、前記吸引室と前記吐出室を連絡する連絡流路と、前記連絡流路を開閉する開閉弁を備えることを特徴とする。
【0016】
前記連絡流路は、前記吸引室と前記吐出室を区画する隔壁に開口された開口であっても良い。
【0017】
前記連絡流路は、前記吸引室及び前記吐出室の外部に配置された管路であって、前記開閉弁を前記管路の中途に配置しても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、連絡流路を開放することによって誘起されて、吸引室と吐出室の間を循環する循環流によって、吸引室と吐出室に沈殿した固形物を攪拌して、該固形物を排出除去することができる。
【0019】
また、吸引室と吐出室を区画する隔壁に開口された開口を連絡流路とすれば、ポンプ及び厨芥処理装置をコンパクトに纏めることができる。
【0020】
また、吸引室及び吐出室の外部に配置された管路を連絡流路とすれば、従来のポンプの改造を最小限に止めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す厨芥処理装置の全体構成図である。
【図2】厨芥処理装置を構成するポンプの構成図である。
【図3】ポンプの別の例を示す構成図である。
【図4】従来技術の例を示すポンプの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、適宜、図面を参照しながら説明する。
【0023】
厨芥処理装置1は、本発明の実施形態の1例であり、図1に示すように、厨房用シンク台2のシンク3の下方に配置される。
【0024】
厨芥処理装置1は、ディスポーザー4とポンプ5で構成される。
【0025】
ディスポーザー4は、シンク3の直下に配置されて、シンク3から投入された厨芥に水を加えて破砕して、破砕された厨芥と水の混合物、つまりスラリーを生成して、排出する装置である。なお、厨芥とともにディスポーザー4に投入される水は、給水管6からシンク3に供給される。
【0026】
ポンプ5は、ディスポーザー4の下流に配置されて、ディスポーザー4から排出されるスラリーを加圧して、図示しない前記排水処理装置に送出する装置である。また、ポンプ5の外部には、循環管路7が取り付けられ、循環管路7の途中には電動開閉弁8を設けている。なお、循環管路7と電動開閉弁8の作用については後述する。また、ポンプ5は電動機9によって駆動される。
【0027】
図2は、ポンプ5を一部断面図示して、ポンプ5の構成を示した図である。図2から明らかなように、ポンプ5の基本的な構成はポンプ21と共通している。すなわち、ポンプ5は、隔壁22を介して隣接する吸込室23と吐出室24を有し、吸込室23と吐出室24の間に送出手段25を備えている。吸込室23は吸込フランジ26を介してディスポーザー4(図1参照)の排出口に接続されて、ディスポーザー4から排出されるスラリーが流入する。吸込室23に流入したスラリーは、送出手段25で加圧されて吐出室24に流入する。吐出室24は吐出フランジ27を介して図示しない吐出管に接続され、吐出室24に流入したスラリーは該吐出管を通って、図示しない排水処理装置に流れる。
【0028】
しかしながら、循環管路7を介して吸込室23と吐出室24を連絡している点が、ポンプ21と異なる。また、循環管路7は吸込室23と吐出室24の下方の、ポンプ21においてドレンキャップ30、31(図4参照)が取付けられた位置で、吸込室23と吐出室24に接続されている。また、循環管路7の途中には電動開閉弁8が装置されている。
【0029】
厨芥処理装置1を使って厨芥を処理する場合は、電動開閉弁8を閉弁して使用する。この場合、ポンプ5の作用はポンプ21と同一である。すなわち、ディスポーザー4(図1参照)から吸込フランジ26を介して吸込室23に流入したスラリーは、送出手段25で加圧されて吐出室24に流入する。吐出室24は吐出フランジ27を介して図示しない吐出管に接続され、吐出室24に流入したスラリーは該吐出管を通って、図示しない排水処理装置に流れる。また、ポンプ5を通過するスラリーに含まれる固形物の一部は吸込室23及び吐出室24の下部に沈殿して残渣32になる。
【0030】
さて、残渣32の除去は、電動開閉弁8を開弁して行う。さらに詳しく言えば、下記の手順を実施する。
(1)ディスポーザー4の運転を停止する。あるいはディスポーザー4への厨芥の投入を停止する。
(2)給水管6からシンク3に水を流し、(厨芥を含まない)水をディスポーザー4からポンプ5に流す。
(3)ポンプ5を運転する。
(4)電動開閉弁8を開弁する。
【0031】
この時、吐出室24内の圧力は吸込室23内の圧力より高いから、吐出室24内の水の一部は循環管路7を通って吸込室23に流れる。そのため、吸込室23から送出手段25を通って吐出室24に送出された水の一部が循環管路7を通って吸込室23に戻る循環流が発生する。吸込室23及び吐出室24の下部に沈殿していた残渣32はこの循環流に巻き上げられて、循環流に乗る。循環流に乗った残渣32は、吐出室24から吐出フランジ27を通って図示しない吐出管に流れて排出される。
【0032】
なお、正確に言えば、循環流に乗った残渣32の一部は、吐出フランジ27を通って図示しない吐出管に流れないで、循環管路7を通って吸込室23に戻る。しかしながら、吸込室23と吐出室24の間の循環を繰り返す内に、吸込室23に戻る残渣32は徐々に減少し、最終的には、実質的に全ての残渣32が吐出管に排出される。
【0033】
以上、ポンプ5の外側に連絡流路(循環管路7)と開閉弁(電動開閉弁8)を設けた例を示したが、ポンプ5の内側に連絡流路と開閉弁を設けることもできる。すなわち図3に示すように、ポンプ5の隔壁22の送出手段25の下方部に開口10と開閉弁11を備えるようにしても良い。なお、ポンプ5の外側にはレバー12があって、レバー12を操作することによって、開閉弁11を開閉することができる。
【0034】
図3に示したポンプ5も、通常の運転時には開閉弁11を閉弁して使用される。また、吸込室23及び吐出室24の下部に沈殿した残渣32を除去する場合は、開閉弁11を開弁してポンプ5を運転して、吸込室23から送出手段25を通って吐出室24に送出された水の一部が開口10を通って吸込室23に戻る循環流を発生させて、循環流で残渣32を巻き上げる。
【0035】
以上、説明したように本発明によれば、吸引室と吐出室の間に循環流を誘起して、該循環流で吸引室と吐出室の間に沈殿した残渣を巻き上げて、吐出室から排出するので、残渣を容易に除去できる。
【0036】
なお、上記の実施形態は、本発明の具体的実施態様の一例を示すものであって、本発明の技術的範囲を画すものではない。本発明は特許請求の範囲に記述された技術的思想の限りにおいて、自由に変形、応用あるいは改良して実施することができる。
【0037】
例えば、厨芥処理装置1に、制御用のコンピュータを備えて、該コンピュータの指令で、前述の固形物除去の手順を自動的に実施することもできる。
【0038】
また、上記実施形態では、送出手段の具体例として、繭型ロータ29を備えるルーツポンプを例示したが、本発明の技術的範囲は、このようなルーツポンプを備えるものには限定されない。ロータの形状は繭型には限られないし、ルーツポンプ以外の送出手段を選ぶこともできる。目的、用途に応じて、各種の送出手段を選択して本発明を実施することができる。
【0039】
また、上記実施形態では、開閉弁の具体例として、電動開閉弁8と、手動操作される開閉弁11を例示したが、本発明の技術的範囲は、このようなものには限定されない。開閉弁は、連絡流路を任意に開閉する機能を有していれば十分であり、形状、形式は限定されない。また、駆動手段や制御手段の有無も問われない。
【0040】
また、上記実施形態では、厨芥処理装置1を排水処理装置に接続する例を例示し、排水処理装置の具体例として浄化槽や固液分離装置を挙げているが、本発明の技術的範囲は、浄化槽や固液分離装置に接続される厨芥処理装置には限定されない。本発明の技術的範囲には、例えば、スラリーを公共下水道に直接排出する厨芥処理装置も含まれる。
【0041】
また、上記実施形態では、厨芥処理装置1を構成するポンプ5を例示したが、本発明に係るポンプの技術的範囲は、厨芥処理装置に組み込まれて厨芥スラリーを輸送するポンプには限定されない。本発明は、厨芥スラリー以外の各種スラリー、例えば、もろみ、海苔、陶土、釉薬、汚泥などを輸送するポンプに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 厨芥処理装置
2 厨房用シンク台
3 シンク
4 ディスポーザー
5 ポンプ
6 給水管
7 循環管路
8 電動開閉弁
9 電動機
10 開口
11 開閉弁
12 レバー
21 ポンプ
22 隔壁
23 吸込室
24 吐出室
25 送出手段
26 吸込フランジ
27 吐出フランジ
28 ケーシング
29 繭型ロータ
30 ドレンキャップ
31 ドレンキャップ
32 残渣

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方端から投入された厨芥に水を加えて破砕してスラリーを生成し、他方端から前記スラリーを排出するディスポーザーと、
前記ディスポーザーの前記他方端に接続されて、前記他方端から排出される前記スラリーを吸引する吸引室、下流側の装置に向けて前記スラリーを吐出する吐出室、及び前記スラリーを前記吸引室から前記吐出室に送出する送出手段を有するポンプを備える厨芥処理装置において、
前記ポンプは、
前記送出手段より下方にあって、前記吸引室と前記吐出室を連絡する連絡流路と、
前記連絡流路を開閉する開閉弁を備える
ことを特徴とする厨芥処理装置。
【請求項2】
前記連絡流路は、前記吸引室と前記吐出室を区画する隔壁に開口された開口である
ことを特徴とする請求項1に記載の厨芥処理装置。
【請求項3】
前記連絡流路は、前記吸引室及び前記吐出室の外部に配置された管路であり、
前記開閉弁は前記管路の中途にある
ことを特徴とする請求項1に記載の厨芥処理装置。
【請求項4】
液状物質を吸引する吸引室、前記液状物質を吐出する吐出室、及び前記液状物質を前記吸引室から前記吐出室に送出する送出手段を有するポンプにおいて、
前記送出手段より下方にあって、前記吸引室と前記吐出室を連絡する連絡流路と、
前記連絡流路を開閉する開閉弁を備える
ことを特徴とするポンプ。
【請求項5】
前記連絡流路は、前記吸引室と前記吐出室を区画する隔壁に開口された開口である
ことを特徴とする請求項4に記載のポンプ。
【請求項6】
前記連絡流路は、前記吸引室及び前記吐出室の外部に配置された管路であり、
前記開閉弁は前記管路の中途にある
ことを特徴とする請求項4に記載のポンプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−185204(P2011−185204A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53211(P2010−53211)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(593047552)株式会社フロム工業 (27)
【Fターム(参考)】