説明

反共振導波路センサを用いた試料の分析

【課題】例えば、微生物の検出及び同定のために、試料を分析する方法及びシステムを提供する。
【解決手段】試料を分析するためのシステム100は、ターゲット検体を含む、第1屈折率を有する試料116と、第2屈折率を有する上部層136及び第3屈折率を有する基板116とを備え、第2屈折率及び第3屈折率は前記第1屈折率より大きくされ、更に、光を試料内に指向させて試料内に反共振誘導光学モードを生成するための光源104と、試料内に伝搬する光とターゲット検体との相互作用(干渉)を検出するための分析システム140、144と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反共振導波路センサを用いた試料の分析方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療及び安全保障システムのために、微生物を検出することの重要性が増している。現代の医療システム及び安全保障システムは、空気、食物、水、血液、又は他の標本中の、病原体又は毒素を含む微生物の検出及び同定に依存している。
【0003】
従来の検出は、通常、実験室内で行われる。実験室の試験は、一般的に、時間のかかるプロセスにおいて熟練した人を必要とする。携帯型の実験室用PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)が開発されたが、これらの装置は、かさばり、費用効果が高くないものである。
【0004】
微生物を検出し、同定するための光学システムは、化学的分析技術及び他の分析技術に優る多数の利点がもたらす。例えば、光学システムは、元素を検出するために、現地調査者が化学反応を使用する必要性を減らすか又はなくすことができる。光学システムは、分析される試料に対して非破壊的であることも多いので、好ましい。
【0005】
ほとんどの光学バイオセンサ設計は、試料の特徴についての情報を提供するのに、光と生体試料との間の相互作用(反応又は干渉)に依存している。しかしながら、光と試料内の生体要素との間の相互作用は、一般的には弱いものである。したがって、相互作用の増幅がなければ、大量の検体を必要とする。こうした大きな試料サイズを獲得するのは、多くの用途において実際的なことではない。
【0006】
試料において光と生体要素との間の相互作用を増すために、光導波路は、光の強さを試料に集中させることができる。1つの使用法では、試料内の微生物は、導波路表面にすぐ隣接した液体中に存在する。導波路からのエバネセント波は、生体要素の分子と相互作用する。しかしながら、エバネセント波と生体要素との間の相互作用は、依然として要求されるより弱い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、微生物の検出及び同定のための改善されたシステムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本書には、試料の分析方法及びシステムが記述される。試料は、特定のターゲット検体(例えば、毒素、バクテリア、又はそれらの胞子、ウイルス、哺乳類又は昆虫の細胞、寄生虫、卵母細胞、或いは特定の化学物質など)を運ぶ媒体(例えば、気体、エアロゾル、又は液体)を含む。本発明に係る方法は、分析される試料を第1の層/媒体と第2の層/媒体との間に配置する。試料は、第1層及び第2層の媒体の屈折率よりも小さい屈折率を有する。光ビームが、反共振誘導光導波(ARGOW)モードで試料を通って伝搬する角度で入射する。反共振導波路は、光と検体との間の相互作用(反応又は干渉)を大きく強化することを可能にする。このことは、多くの異なる特徴の方法に有用である。試料内の特徴を判断するために、反共振モード内の光子と試料内のターゲット検体(例えば、生体分子)との間の相互作用が監視される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
光と試料内のターゲット検体との間の相互作用を強化する改善されたセンサが説明される。光源からの光は、試料で満たされた微小流体チャネルのような、センサ・チャンバ内に結合される。センサ・チャンバへの光の入射角を調節することによって、試料内に反共振モードが生じる。反共振モードにより、試料自体が、光学導波路として働くことが可能になり、ターゲット分子と光との間の相互作用が増大される。
【0010】
図1は、光感知システム100の、一実施形態の側面図を表す。図1において、光源104及び/又はレンズ・システム108は、光ビーム112を試料116に指向させる。行われる試験によって、光ビーム112の光は、コヒーレント光であっても非コヒーレント光であってもよい。コヒーレント光を用いるときには、光源104は、通常レーザーである。他の場合には、白色光又は発光ダイオードを用いることができる。
【0011】
光ビーム112は、入射角120で試料116に入射する。ここで使用される「光」、「光ビーム」及び「光学」という用語への言及は、紫外線、可視光、赤外線、及び遠赤外線、並びにテラヘルツ放射を含む、広範囲の周波数を含むものとして広く解釈すべきである。ここで用いられる入射角とは、表面128の垂線124に対する角度である。入射角120(φ)は、反共振誘導光波(ARGOW)又は光のモードを試料116内にもたらすことができるように、注意深く選択される。
【0012】
試料116は、一般的には、分析されるターゲット検体(例えば、生体分子)を支持する液体の薄膜である。試料116は、分析される検体を運ぶ気体又はエアロゾルとすることもできる。試料が気体又はエアロゾルである場合には、試料を含有するチャンバの周囲のシーリング材が、該気体を基板132と被覆層136との間に保持する。試料116の厚さは、通常、該試料を分析するのに用いられる光の波長よりも大きくなるように保持される。
【0013】
基板(又は基体又は基層)132及び被覆層136は、試料116の両側の境界となっている。基板132及び被覆層136は、一般的に、ガラスのような光透過性の材料で作られる。一実施形態においては、基板132及び被覆層116のためにガラス・スライドが用いられる。基板及び被覆層の屈折率は、該試料116内の反共振波の生成を容易にするように、試料116の屈折率よりわずかに大きくなっている。後に説明されるように他の広範囲の屈折率も可能であるが、基板132及び被覆層116の屈折率の例は、1.4から1.8までの間であり、液体試料116の屈折率は、1.2から1.4までの間である。
【0014】
屈折率が大きい2つの材料間に挟まれた試料を通して伝搬する反共振誘導光波(ARGOW)の生成に用いられる実際の条件は、スラブ型導波路構造に沿って伝搬する平面波についてのヘルムホルツ方程式の固有解を計算することによって見出される。電界Eについての一般的なヘルムホルツ方程式が、

によって与えられる。
【0015】
スラブ型導波路構造内でX方向に沿って伝搬する平面波を仮定し、該波をZ配向に対して閉じ込めることにより、ヘルムホルツ方程式に対する以下の解、すなわち

がもたらされる。
ここでEは電界を示し、

はそのZ依存性を示し、kxは波ベクトルのx成分を示し、

は光真空波ベクトルであり、nは材料の屈折率である。
【0016】
この場合、ヘルムホルツ方程式は、

に減少する。
【0017】
固有解

は、kxによって、或いは便宜上

として定義されるいわゆる有効屈折率neffによって特徴付けることができる。
【0018】
前述のスラブ型屈折率の誘導導波路構造において、上記の方程式を数値的に解き、大量の固有解

をもたらすことができる。これらの固有解は、光学モードと呼ばれる。方程式3及び方程式4もまた、それぞれの屈折率のNeff及びこれらのモードのモード閉じ込め係数Γの計算を可能にする。
【0019】
図6は、光学モードの例を示す。図6において、反共振強度パターン612、616、620が、ガラス板602、604間に配置された液体試料600の断面を横切ってプロットされている。試料を横切る典型的な屈折率が、y軸606に沿って与えられる。試料600に沿った距離が、x軸608上に与えられる。例示的な第1の光学モードが、正規化された強度パターン612で示され、第2の光学モードが、正規化された強度パターン616で示され、第3の光学モードが、正規化された強度パターン620で示される。
【0020】
閉じ込め係数Γは、導波路コア内に閉じ込められる光の強度の一部に対応する。試料内のターゲット分子とび光ビームとの間の相互作用を最大にするために、試料又は検体自体が、導波路コアとして働く。コアは、クラッドで囲まれ、一般的に、媒体の一部が試料にすぐ隣接している。後のクラッドについての言及において、「クラッド層」は、試料の両側に接している媒体の一部を指す。クラッド層の厚さは、広範囲に選択することができるが、典型的な厚さは、媒体内を伝搬する幾つかの光の波長である。
【0021】
ここでは、コアがクラッド層より低い屈折率をもつ導波路として定義される「反共振」導波路の場合には、90%まで及び90%を超える適度に大きい閉じ込め係数をもつ多数の光学モードを見出すことができる。これらのモード(すなわち固有解)は、コア層材料の屈折率nに近い(一般的にはわずかに小さい)有効屈折率neffによって特徴付けられる。コアの厚さが、伝搬する光の波長と比べて大きいとき、これらの関心あるモードの、neffは、コアの屈折率nに近づく。
すなわち、

である。
【0022】
導波路における光のビームを特定の入射角で指向させることによって、各々の固有モードを励起することができる。入射角は、有効屈折率neffに対応する。図2は、検体204の屈折率がnであり、基板208及び被覆層212の屈折率がn´であり、周囲216の屈折率がn´´である、スラブ型導波路200の1つの幾何学形状を示す。図2の構造についての最適入射角γ(neff)220は、次の、

のように導くことができる。
【0023】
検体204の厚さ220(典型的には、導波路コアの直径

)が、入射光の波長(λ=0.3μ・・・2μm)と比べて大きいとき、(数式5)の近似値が許容可能である。方程式4の近似値を使用することにより、有効屈折率neffに検体の屈折率nを代入することが可能になる。代入は、検体、コア層、及び外部の屈折率にのみ依存する入射角をもたらす。

【0024】
一般的な屈折率の組の例は、n=1.34を有する水の検体、n´=1.5を有するガラス・クラッド層、及びn´´=1を有する空気又は真空環境とすることができる。例えば、空気環境においてガラス・クラッドを用いるとき、図3の表は、適切な入射角γ´´を列挙し、試料又は検体の屈折率に基づいたARGOWモードを生成する。
【0025】
図4は、図3に示されるデータをプロットする。図4の曲線404に示されるように、入射角は、試料の屈折率が減少するにつれて増大する。1.15(n<1.15)より小さい試料の屈折率において、光を導波路ファセット内に結合させ、所望の反共振モードを生成することは非常に困難である。n>1.15である場合でさえも、反共振モードを生成するための最適角度は、大量の光を試料内に結合させるのに適した角度より依然として大きい。これらの大きい角度が、大きい角度でファセットに当たるように小さな直径のビームの使用を強いるため、大きい角度は困難をもたらす。さらに、大きい角度を用いること、本質的に反射損失を増大させる。
【0026】
図5は、大きい入射角に起因する損失を最小限にする、図2の代替的構造を示す。図5において、入口ファセット504は傾斜している。入射ビーム508が入口ファセット504に垂直に入射するときに、ファセットにおける反射が最小にされる。ビームがファセット504に垂直に入射し、反共振モードを生成するのに適切な角度φ´でクラッドと試料の境界面506に依然として当たるように、傾斜角γ´を調整することによって、所望の反共振モードを依然として生成しながら、ファセットからの反射を最小にすることができる。
【0027】
表3は、様々な検体の屈折率に対応する図5の構造についての傾斜角γ´を示す。入口ファセット504を傾斜させることによって、n=1に至るまでの範囲に及ぶ屈折率をもつ検体において反共振モードの光波を生成することが可能になる。低い屈折率の試料内で反共振光波を生成することにより、気体及びエアロゾルの試料の使用が可能になる。この場合、適切な漏れ損失で、より高い反共振導波路モードを導くために、媒体の屈折率nより小さい周囲媒体の反射率n´´を選択することができることに留意されたい。
【0028】
2つの幾何学的形状及びファセットの設計が図2及び図5に与えられたが、これらの幾何学的形状は、例示としてのみ与えられる。光を反共振伝搬波に結合させるために、他の幾何学的形状及びファセット設計を用いることも可能である。他の幾何学的形状の例としては、記載された角度のある端ファセット及びスラブ型構造以外に、湾曲した端ファセット及び円筒形の試料形状が含まれる。試料内に反共振波を生成するように、光をこれらの他の幾何学的形状内に結合させる方法は、これらの幾何学的形状についての一般的なヘルムホルツ方程式を数学的又は数値的に解くことによって求められる。こうした計算は、当業者には周知のものである。このように、本発明の範囲は、ここで分析される特定の例に制限すべきではない。
【0029】
図7は、励起光の角度を試料内に結合させる関数としての、試料からの実際の蛍光強度出力のプロットである。記載されるように、実験的に生成された図7の結果は、様々な光入射角度における理論上予想される結合効率と緊密に合致する。
【0030】
図7のグラフを形成するために、高出力の単一の青色LEDからの励起光が、様々な角度で、2つのガラス・スライド間に配置された液体膜の側部に結合される。励起光は、液体膜内のフルオレセイン色素を励起し、膜面積全体(25×75mm2の面積)全体にわたって蛍光をもたらした。次に、結果として生じた蛍光が測定された
【0031】
測定において、単位面積毎に測定された蛍光の強さは、LEDからの励起力全体を(上部から)試料内の小さな点(例えば、3×3mm2)の上に垂直に合焦させることによって得られたものに類似していた。改善された蛍光により、光をARGOW内に結合させること、特に、光をガラス・スライドの間に導くことによる、さらに効率的な励起光の使用により生じる。このことは、励起光が試料面と垂直に入射するときの通常の蛍光検出に比べて遜色なく、光の大部分を透過させる。反共振導波路励起を使用して、試料自体が、ガラス・スライド間の励起光を導き、光と蛍光分子との間に長期間の相互作用をもたらす。図7は、励起光の結合角度の関数としての蛍光の強さをプロットする。最適な結合効率のための実験値は、理論的に予測される値とみごとに一致する。
【0032】
図6は、屈折率のプロファイル及びガラス/水/ガラスの反共振導波路をもつ3つの反共振モードの正規化されたモードの強さを示す。480nm波長光及び2つのガラス・スライド間にある15μmの厚さの液体膜を仮定して、反共振モードが計算される。液体膜内のこれらのモードについての予測される閉じ込め係数は、きわめて大きいものになる。それぞれ、Γ=0.9;0.8;及び0.55の最初の3つのモードの閉じ込め係数が得られた。
【0033】
入射角φ(図1の角度120)を調節することによって、各モードを特に励起させることができる。最も大きい閉じ込め係数を有する反共振モードは、視射角φ=46.5°で励起させることができる。ガラスの厚さは伝搬する光の波長と比べて大きいので(たとえ赤外線光を用いたとしても)、ガラス・クラッドの厚さのばらつきは、通常、この角度に影響を及ぼさない。液体膜の厚さの変化によって最適入射角が変わることもあるが、計算は、その効果がきわめて小さいことを示している。液体膜の厚さを15μmから5μmに減らすことによって、最適視射角φは、約46.5°から約46.6°までにだけ変わる。約0.5度の窓の範囲内で、適度に大きい閉じ込め係数をもつ多数のモードが利用可能であるため、最適な視射角内のわずかな変化は、実際のシステムに困難をもたらさない。
【0034】
光の波長の変化も、最適入射角をわずかに変化させる。例えば、青色光(480nmまで)への赤外線光(1500nmまで)の代入には、最適入射角を1.8度だけ変えるだけである。入射角に対してわずかな影響しかない異なる波長についての異なる閉じ込め条件と比べて、ガラス及び水の分散の違いは、大きな影響を有する。
【0035】
光周波数及び試料の厚さの変化を適合させるシステム全体の能力は、並行分析技術に用いるのに理想的なものである。これらは、種々のターゲット検体の組成又は存在を求めるために、幾つかの異なる試験が並行して行われる高度なシステムにおいて特に有用である。図8は、一度に幾つかの光の周波数804、808、812を受け取る試料800の平面図を示す。光の周波数の各々は、試料上で行われるべき、種々の試験に対応する。
【0036】
前の説明においては、図9に示されるもののようなステップ型の屈折率プロファイルで分析が行われた。図9において、クラッド領域908は試料領域904を囲んでいる。しかしながら、ARGOWの生成は、こうした屈折率プロファイルに制限されるべきではない。図9〜図14は、クラッド及び試料を通る屈折率が縦軸に沿ってプロットされ、クラッド及び試料の断面に沿った距離が水平方向軸に沿ってプロットされた、他の屈折率プロファイルを示す。前に説明されたように、クラッド層の厚さは重要ではなく、広範囲に選択することができる。クラッドを形成する用途及び方法によって、1つの例示的な実施形態におけるクラッドの厚さは、ほぼ1mmである(例えば、ガラス・スライドを使用する場合)。他の場合には、3つ又は4つの波長の伝搬光より多くなく、きわめて薄いものとなるように、クラッドを選択することができる。
【0037】
図10は、クラッド領域1004が試料領域1008を囲んでいる2つの段階関数を示す。クラッド領域1004は、2つの屈折率の段階を含む。検体又試料の他の部分が試料チャンバ又は媒体壁にくっつくのを防止するために被覆を用いるシステムは、こうした屈折率プロファイルを示す。例えば、ガラス媒体を被覆するためのクラッド領域1004に使用されるテフロン(登録商標)被覆が、典型的な例である。テフロン(登録商標)は、ガラス媒体1012の屈折率(約1.44)と水ベースの試料の屈折率との間の1.38の屈折率を有する。
【0038】
図11は、試料自体が、一定の屈折率を有する必要がないことを示す。図11は、媒体を通って異なる速度で流れる(例えば、混合物の相分離を引き起こす)液体試料によって示すことができる、放物線状の屈折率プロファイルを示す。単調増加する他の屈折率(クラッド層を通して試料の縁部から単調増加する)が、図12乃至図14に示される。クラッド領域を通って単調増加する屈折率は、クラッド層から生じ得る反射を最小にする。
【0039】
図1に戻ると、ARGOW伝搬波が試料内で生成されると、結果として生じる光と試料内容物との相互作用が分析されて情報を得る。一実施形態において、図1の検出器140が、試料を通して伝搬する光を検出する。代替的な実施形態において、図1の検出器144は、試料によって散乱又は屈折される光を検出する。検出されるターゲット(例えば、病原体)及び用いられる特定の検出技術によって、検出器140、144は、格子、プリズム、ブラッグ反射器又は共振器のような波長感受性素子を含むことができる。
【0040】
波長感受性素子は、シグネチャ及び特定の生物剤又は化学剤の同定を可能にする。検出器140、144は、ミラー及びレンズを含む従来の光学系又はマイクロ光学部品を有する波長感受性素子も統合する。幾つかの実施形態において、検出器は、光信号を電気信号に変換するための手段を含むことができる。こうした変換は、電荷結合素子(CCD)、光センサ、又は種々の変換装置のいずれかを用いて達成することができる。電気信号に変換されると、検出器140、144の出力は、マイクロプロセッサ(図示せず)のような電気プロセッサを用いて分析することができる。
【0041】
図1の検出器140は、試料116によって伝えられた光を検出する。一実施形態において、試料116によって伝えられた光は、試料116における化学分子、環境分子、又は生体分子の存在又は不在を判断するために、検出器に結合されたプロセッサによって分析される。検出器140の出力を用いて、試料116における分子の特性を分析することもできる。試料によって伝えられた光を検出するための検出器及び検出器の出力を分析するためのプロセッサを用いる例が、Church他による「Biosensor」という名称の米国特許6,603,548号によって与えられる。
【0042】
代替的な実施形態において、伝えられた光を検出する代わりに、検出器アレイ144のような第2の検出システムが、試料116により散乱されるか、他の方法で出力された光を検出する。試料116内の分子による光の反射又は屈折によって、散乱光を生じさせることもできる。例示としての散乱技術は、Paras・N・Prasadによるバイオフォトニクス概論(ISBN0−471−28770−9、Wiley−Interscience社、2003年)に記載されるように、弾力性のある及び弾力性のない光散乱分光法を含む。
【0043】
更に別の実施形態において、試料内の化学元素を生体材料に結合することから得られる蛍光が、試料116からの光出力を引き起こし得る。この結合は、試料内を伝搬する反共振光のような励起源が存在するときに、蛍光をもたらす。Lockhartによる、「Cell Design for Optical Sensors」という名称の米国特許6,577,780号は、エバネセント・フィールドの存在下で蛍光を発する構造体においてもたらされる抗体に取り付ける抗原の使用について記載する。エバネセント・フィールドの代わりに試料を通して伝搬する反共振波を用いることによって、システムの感度を改善することができる。
【0044】
与えられた例の他に、センサ140及び144と共に他の多くの光学検出技術及び感知技術を用いることができる。これらの技術は、これらに限られるものではないが、単一の又は多色の光誘導固有蛍光、又はタグ付けされた分子からの蛍光、及び蛍光寿命結像顕微鏡(FLIM)、蛍光共振エネルギー伝達(FRET)、蛍光相関分光法(FCS)等、光散乱又は振動分光法(Raman、IR)、又は特に円偏光二色性のようなキラル媒体の光学活性を用いる分光用途のような、蛍光光の操作から得られる用途を含む。光子の相互作用を用いる種々の検出技術のより詳細な説明が、Paras N.Prasadによる「バイオフォトニクス概論」(ISBN0−471−28770−9、Wailey−Interscience社、2003年)の第4章に提供されている。
【0045】
光学検出技術について説明したが、強化された光とターゲットの相互作用を検出する他の方法を用いてもよい。例えば、熱検出技術を使用することができる。所定の光波長は、温度を変化させる特定の発熱化学反応又は吸熱化学反応を開始することができる。検出される温度変化は、反応の存在、よって反応を起こすのに必要な化合物の存在を示す。他の例示的な検出技術は、これらに限られるわけではないが、ARGOW誘導光イオン化又は光分別を含む。光オン化又は光分別は、コールター・カウンタのような周知の手段によって検出できる荷電粒子を生成する。
【0046】
試料の分析の速度を上げるために、試料の並行処理を行うことができる。したがって、説明された技術は、相互排他的なものではなく、試料内の分子を迅速かつ詳細に分析するために、協働して又は並行して用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】分析システムの側断面図の概観を示す。
【図2】コアとしてターゲット含有試料を有する入射光ビームを受け取る、導波路の拡大側断面図である。
【図3】ガラス・クラッドで囲まれる、種々の検体についての例示的な入射角を示す表である。
【図4】試料の屈折率の関数として、図2の導波路構造への入射角をプロットしたグラフである。
【図5】コアとしての生体試料と傾斜した入口ファセットとを有する導波路の側断面図を示す。
【図6】種々の反共振モードの強度プロファイルを例示的な検体の断面で示す図である。
【図7】励起光の結合角の関数として、蛍光強度を示すグラフである。
【図8】ターゲット検体の存在を求めるために、異なる試験を試料上で並行処理するためのシステムの平面図を示す。
【図9】試料及び該試料にすぐ隣接したクラッドの試料屈折率プロファイルを示す図である。
【図10】試料及び該試料にすぐ隣接したクラッドの試料屈折率プロファイルを示す図である。
【図11】試料及び該試料にすぐ隣接したクラッドの試料屈折率プロファイルを示す図である。
【図12】試料及び該試料にすぐ隣接したクラッドの試料屈折率プロファイルを示す図である。
【図13】試料及び該試料にすぐ隣接したクラッドの試料屈折率プロファイルを示す図である。
【図14】試料及び該試料にすぐ隣接したクラッドの試料屈折率プロファイルを示す図である。
【符号の説明】
【0048】
100 光感知システム
104 光源
108 レンズ・システム
112 光ビーム
116 試料
120 入射角
128 表面
132 基板
136 被覆層
140、144 検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット検体を含有する試料の分析方法であって、
第1媒体の屈折率より小さく、第2媒体の屈折率よりも小さい屈折率を有する試料を、前記第1媒体と前記第2媒体の間に配置し、
光ビームを、反共振誘導光波(ARGOW)が前記試料を通って伝搬する角度で、該試料内に指向させ、
前記反共振誘導光波内の光と前記試料内の前記ターゲット検体との相互作用(干渉)を検出する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記第1媒体が前記試料にすぐ隣接する第1クラッド領域を含み、前記第2媒体が前記試料にすぐ隣接する第2クラッド領域を含み、前記第1クラッド領域は変動する屈折率を有し、前記第1クラッド領域は、前記試料と前記第1媒体の界面からの2つの波長の距離に対して、その距離と共に単調に増加する屈折率を有する、ことを特徴とする方法。
【請求項3】
試料を分析するためのシステムであって、
ターゲット検体を含む、第1屈折率を有する試料と、
第2屈折率を有する上部層及び第3屈折率を有する前記試料を囲む基板とを備え、前記第2屈折率及び前記第3屈折率は前記第1屈折率より大きくされており、
更に、光を前記試料内に指向させて該試料内に反共振誘導光学モードを生成するための光源と、
前記試料内に伝搬する光と前記ターゲット検体との相互作用(干渉)を検出するための分析システムと、を備えている
ことを特徴とするシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−126187(P2006−126187A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306837(P2005−306837)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(504407000)パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド (65)
【Fターム(参考)】