説明

反射型カラー液晶ディスプレイ

【課題】 通常の使用環境で充分コントラストがあり、色彩を感じられる反射型のフルカラーディスプレイの実現。
【解決手段】 白と黒とカラーを独立した層で実現している。 黒は光吸収層、白はディスプレイの最前面に高分子分散型液晶層の反射機能で実現し、各R、G、Bは上記反射型液晶層の下にコレステリック液晶層を配し、その選択反射で実現している。 コレステリック層の高分子分散型液晶に電圧を印加して、その層を透明化すると、その下のコレステリック層の選択反射よる色彩が外部に反射されて色彩が実現できる。この色彩は反射をさえぎるものがないのでクリアーな色彩である。R、G、B それぞれを画素ごとに塗り分けている。黒は、高分子分散型液晶層と、選択反射のコレステリック液晶層の両方に電圧を印加して両方を透明化すると基板に形成されている光吸収層で光が吸収され黒色となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶を用いた、反射型カラーディスプレイに関する。
さらには、コレステリック液晶と高分子分散型液晶の両方を用いてフルカラーを実現する反射型カラー液晶ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで発表されて来た反射型カラー液晶ディスプレイの方式は限られている。
それらはアクティブ駆動であろうとパッシブ駆動であろうと、基本的にはカラーフィルターでカラーを実現するか、コレステリック液晶のような色選択反射機能を持つ液晶を用いているかである。
図2は従来のSTNタイプの反射型カラー液晶ディスプレイで、ネマチック液晶6の偏光光学特性と偏光板1を利用し、偏向効果を用いて黒白を実現する。
各色R、G、Bをカラーフィルター3a、3b、3c用いて、透過する色を選択して実現している。
この方式はこれまでの透過型LCD技術の利用であり、技術的な完成度は高いが、肝腎の明るさとカラーの純度レベルは低い。
非常に強い外光が得られる屋外なら、必要なカラーイメージを得られるが、屋内等の一般的な外光環境では十分なカラーを得られない。
特に白色と黒色がクリアーに分離出来ず、白色がグレーになってしまっている。
また従来のコレステリック液晶を用いた反射型カラー液晶ディスプレイは白色をR、G、Bの混色で形成しているため、強い外光のある場所以外で白色は得られず、STNタイプと同様に白色はグレーである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図2のような従来の方式の欠陥は黒、白、各色を独立して実現できない構造であることによる。白をR,G,Bの混合で実現しようとするか、黒をY.M.Cの吸収光の総和で実現しようとするかである。従来のすべての反射型カラーディスプレイがこの欠点を克服出来ていない。
紙をベースにする印刷では、黒色と白色は確実に保証されている。その上で、それぞれの色の色調をそれぞれのインクで実現している。白は背景の紙そのものの高率な散乱反射によって実現している。黒はY,M,Cの混色でなく、独立の黒インクで実現している。このため、白色も,黒色も明度良く、コントラストの高い表示を実現している。
そしてその白色の上に各色を形成している。
【0004】
液晶ディスプレイも印刷のように白色、黒色を独立して表示しないと、十分な白色と黒色を得られない。その混合が各色の色調の低下を招く。
図2の従来のR、G、Bカラー方式の反射型液晶ディスプレイでは、白色をR,G,Bの加法混色で実現しよとしている。しかし、この方法では十分な外光のあるところ以外では白色でなくグレーになる。しかも各色出力の外部側に偏光板1があり、せっかくの反射光の出力を1/2にしてしまうのでますます暗くグレーになる。
いかに効率の高い反射層7を内部に設けても、相当の強度の外光環境でない限りR、G、B の混色はグレーである。
本発明はR、G、Bのカラー方式でありながら、白色をその混色でなく、独立した白色方式で実現し、さらに黒色も独立した構造で実現し、かつクリアーな各色も得られる構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
図1は本発明の断面概略図である。
本発明では、白色を最も上部に形成された高分子分散型液晶(以下PDLC)9の散乱反射で実現する。
黒色は下基板2b上にBlack層12を設けて実現する。
各色はコレステリック液晶(以下ChLC)の選択反射特性でR、G、Bを実現する。
ChLCはカイラル特性を調整し、電界をON、OFFすることで、それぞれR,G,Bを選択反射するか、光を透過するかの選択性を実現する。
上記ChLC層10a、10b、10cは前記PDLC9の下に積層形成する。
前記ChLC10a、10b、10cとPDLC9を上基板2aと下基板2bの間に積層形成し、上部透明電極(以下ITO)4と下部透明電極(以下ITO)8の間に挿入し、前記両ITO間に電圧を印可して駆動する。
またこの方式では偏光板1を用いないので、明るいディスプレイが実現できる。
【0006】
本発明において、一番上に散乱反射を担うPDLC9の層を設け、外光18を反射させ白色を担う。従来のカラー反射型液晶ではこの位置に偏光板、その下にカラーフィルターがあり、弱い外光の環境では、充分な反射を得られず、白色よりもグレーな色調を呈していた。本方式では、弱い外光の環境下でも反射光が前面で発生する為、その白色をクリアーに認識することが出来る。黒色、各色を表示するときは、この層を透明状態にする。
この下の層が各色を選択反射するChLCの層である。
赤に対応するサブ画素には赤に対応するChLC10aが充填されていて、それを駆動して入力光のうち、赤の光を選択反射し赤を表示する。その他の緑色、青色も同様にChLC10b、ChLC10cを選択反射させて対応をする。
各色の階調はそれぞれの対応する画素の電圧をコントロールすることで階調表示が実現できる。
黒色はPDLC9の層と、ChLCの層を両方とも透過状態にすることで、もっとも下部に形成されているBlack層12で外部からの入力光を吸光し、黒を表示する。
【0007】
この特性を実現するには、セル内部の最上部のPDLCと、色選択反射ようのChLCの印可電圧−反射特性が図3のような特性を示す必要がある。
両方の液晶が高抵抗材料である為、材料の特性をモディファイすることで、白領域、黒領域、階調カラー領域を外部からの印可電圧の分割印可で選択制御できる。
また、この方式はメモリー機能も有しており、選択反射状態を電圧を印可することなく維持できるため、実際の消費電力を少なくすることが出来る。
【発明の効果】
【0008】
上記のように本発明は、白と黒の実現をR,G,Bの色とは独立に実現している。R、G、B の加色混合による白色ではなく、充分な外光のない、屋内環境でも、白は他の液晶方式のような灰色にならず、白を実現し、また黒は光吸収層を用いた黒で実現し、また各色は外光の選択反射のため、クリアーな色を実現し、液晶を用いた反射型のカラーディスプレイとしては、初めて十分なカラー機能を実現したもので、本格的な低消費電力の反射型フルカラー液晶ディスプレイを実現し、今後展開されるE−Book、E−Paper時代のディスプレイとしてその社会的、産業的意義は非常に大きい。
またその製造方法から大型ディスプレイも容易であり、電子新聞や宣伝用ポスターなどにも展開できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図5(a)−(f)は本発明の製造プロセスの概説図である。(a)のように、ガラスやプラスティックによる下基板2b上にカーボンなどを成分とする樹脂ブラックを外光を吸収するBlack層12としてコーティングする。
数um程度の厚みを形成する。
この塗布は下基板全面、または画素電極部だけでもどちらでも良い。
前記ブラック層12の上に下部ITO8をコーティングする。
さらに上記ITOの表面には使用するChLCにあわせた配向剤を薄く塗布することもある。
【0010】
次に(b)のように 各R、G、B色に対応させるサブ画素を分離形成するためのRib11を形成する。
RibはPIなどの高分子絶縁材料をスピンコート等で塗布し、フォトリソなどでパターン形成する。できれば黒いレジンが良い。
高さはディスプレイの最終的な駆動電圧に大きく作用するので、20um以下にする。
外光の散乱反射で良い白を得るにはこの内部に形成する高分子分散型液晶層が厚いほうが良いが、駆動電圧が高くなる。また選択反射カラーもコレステリック層が厚いほうが良いが、この場合も厚くなると駆動電圧が高くなる。
そのためそれぞれをせいぜい10um以内に収める。
【0011】
次に(C)のように、R、G、B をそれぞれ担うコレステリック液晶 ChLC10a,ChLC10b、ChLC10cをそれぞれのサブ画素エリアに独立して充填する。それらが混入すると良好な色彩が得られなくなる。
この場合各Rib11で囲まれたエリアへ正確にInk Jet装置14やディスペンサーを用いて適量充填する。量が多すぎてRibを越えてはならないし、また、その上の層のPDLC層9を充填するためのスペースも確保しなければならない。
【0012】
次に(d)のように各エリアに充填された選択反射を担うコレステリック液晶がそれぞれの色に対応して機能するように、波長選択性を確定するようにUV照射13して各サブ画素の対応する色に固定化する。
またこの処理により、次のステップで塗布されるPDLCが前記コレステリック液晶と混合されることなく、コレステリック液晶層の上に均一に層形成出来る。
つぎに(e)のようにPDLC9をInkJet装置15やディスペンサーでそれぞれのRib11内にほぼあふれるぐらいの量を充填する。
インクジェット装置はChLCとPDLCの混入を避ける為それぞれ別のを使用するほうが良い。
このPDLCの充填塗布は、次のラミネートコートの時に、同時に注入しても良い。
PDLC層は高分子ネットワーク型液晶層でも良い。
また、必ずしも高分子散乱型液晶でなくても、光散乱と透過を電圧印可で選択的に実現できるように工夫されたネマティックやスメティック等の他の液晶でも良い。
【0013】
次に(f)のように上部ITO4が形成されている上基板2aを前記構造体の上にラミネートする。この場合上基板2aはプラスティックのような柔軟性のある基板が扱いやすい。勿論ガラス基板でもリブに弾力性を持たせておけば上方向から押し付けることでセルを完成することが出来る。
また。Rib11の上面には接着材17が予め塗布されていて、上基板のラミネーション時に同時にUV硬化か加熱硬化で上基板2aと下基板2bを一体化する。
接着剤17はその表面が液晶で濡れても硬化処理の出来る特性のものを選ぶ。
【実施例】
【0014】
外部からPDLC、ChLCを購入し、独自にそれぞれの電圧特性を調整して、上記の手順で作成して本発明を実施した。
図6(a)−(e)は本発明の機能説明図である
(a)は白色表示の場合の各要素の機能説明図である。
この場合、PDLC層9は図3の中で示すような、透明状態を示すスレッショールド電圧V1以下の電圧が該部分に分割電圧が印可されるように電極電圧V30が印可されている。そのため外光18は散乱反射され、外部からは白色に見える。
そのときその下の10a、10b、10cのコレステリック液晶層への印可電圧はこれらが透明化するスレッショールド電圧V2以下に設定されている。
そのため、この層は選択反射状態である。各R、G、Bに対応する画素が全て選択反射状態なので、上部のPDLC層で散乱反射せず通過した光も各色に対応する光がここで反射され、白色としての光量を増加させる。
この効果はかなり有効であり、これにより反射光量は増え、明るいディスプレイとなる。
勿論この部分を透過状態にしておいても良い。
【0015】
図6(b)は黒色を表示する場合の各要素の機能を説明図である。
PDLC9と各色を選択反射する10a、10b、10cがともに光透過状態である。
これは上記両層にそれぞれ図3のV2からV3の間の電圧が印可されるように電極電圧V30を設定して対応する。
外光18は上記両光透過層を通過して、下基板2b上に設けられているBlack層12に達し、ここで吸収される。
そのため外部からは黒と認識される。
【0016】
図6(c)は赤を表示する場合の各要素の機能説明図である。
PDLC9は光透過性を示す電圧V1以上に印可されている。
赤を選択反射するChLC10aのみが選択反射の状態を示す電圧V3以上に設定され、他のChLC10b、10cは光透過性の状態を示す電圧V2以下に設定されるような電極電圧を設する。
外光18は赤を選択反射するエリアだけで選択反射され赤の光を反射出力する。そのほかのエリアへ入射された外光18は各層を透過して、Black層12へ達し吸収される。
このためディスプレイ全体は外光は赤色だけが外部に反射されて赤を表示する。
このとき赤を表示する画素電極には図3のV1+V3以上の電圧を印可する。
また階調はV3からV4のあいだの電圧がChLCに印可できるように電極電圧を適切に選択する。
【0017】
緑の表示、青の表示も赤の表示と同じように行う。
上記のように電圧設定を制御することで、明るく色調の優れたフルカラーの反射型液晶ディスプレイが実現できた。
また各色の階調は電圧制御でなく、パルス幅制御方式で実現して良い。
【0018】
またコレステリック液晶はメモリー機能をも備えているので、各色と階調に応じた電圧を各画素に供給しそれをリセットしなければメモリー効果が発揮でき、低消費電力の表示が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は現在漸く始まりかけたE−Book やE−Paperの表示方式として本格的なフルカラー方式の反射型表示装置を提供する。
反射型であるため、低消費電力であり、エネルギーセーブの社会的な要請にも適している。
またその基板をプラスティック基板にすることで、大変軽く壊れにくいディスプレイが実現できる。勿論ディスプレイサイズは小型から大型まで可能である。
その利用分野は学校の教科書から、各種テキスト、家庭の新聞代わりから、オフィスの文書の代替など非常に広範囲に社会的に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【符号の説明】
【0021】
1:偏光板
2a: 上基板
2b: 下基板
3a: Rカラーフィルター
3b: Gカラーフイルター
3c: Bカラーフィルター
4:上部透明電極(ITO)
5:配向膜
6:液晶
7:反射層
8:下部透明電極(ITO)
9:高分子分散型液晶(PDLC)
10a:R ChLC
10b:G ChLC
10c:B ChLC
11:Rib
12:ブラック層
13:UV光
14:インクジェット装置
15:インクジェット装置
16:ローラー
17:接着剤
18:外光
19: 散乱光り
19a:R反射光
19b:G反射光
19c:B反射光
21:PDLCのV−反射曲線
22:ChLCのV−反射曲線
23:PDLCの閾値電圧V1
24:PDLCの飽和電圧V2
25:ChLCの閾値電圧V3
26:ChLCの飽和電圧V4
27:白領域
28:黒領域
29:カラー領域
30:電極電圧V
31:PDLC印可電圧 Va
31:ChLC印可電圧 Vb
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【図6】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素をマトリックス状に配し、さらにR(赤),G(緑),B(青)用のサブ画素をそれらの画素に設けて、カラー表示を実現するディスプレイにおいて、
ガラス等の上下の基板内に形成された上部透明電極、下部透明電極間に高分子分散型液晶層とコレステリック液晶層を積層し、
さらに前記下部透明電極と下基板の間に光吸収層を設け、
R、G、Bの各色を透明、色選択反射を電気的に制御できる上記コレステリック液晶を用いて実現し、
白色を光散乱反射、透過選択を電気的に制御できる機能を有する上記高分子分散型の液晶で実現し、
黒色を上記光吸収層で実現し、
さらに上記コレステリック層はR、G、B色を担う各サブ画素に対応するようにR,G,B用に設計された各コレステリック液晶を配し、
上記上部透明電極と下部透明電極の間に電圧を印可して、フルカラーを表示する反射型カラーディスプレイ。

【公開番号】特開2008−96939(P2008−96939A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−303349(P2006−303349)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(500199538)
【Fターム(参考)】