説明

反射型スクリーンとその成形方法

【課題】 外来光及び背景光の反射を極力抑制することにより、画像自体の視認性を飛躍的に向上させながらも、不使用時に巻き取り収納が可能となるようにすることにある。
【解決手段】 プロジェクター等の画像を投影させる反射型スクリーンであって、透明板に遮光壁3をストライプ状に形成した視野角制限パネル1の前面に、紫外線硬化樹脂により光透過可能な梨子地粗面となったアンチグレア層5を形成すると共に、後面に、ナイロン樹脂、ウレタン樹脂等による反射層2を形成したことを特徴とする構成で、視野角制限パネル1の前面に、紫外線硬化樹脂を塗布し、表面を梨子地粗面とした透明板材7を圧着させて紫外線硬化樹脂を押し広げながら紫外線を照射して硬化させ、アンチグレア層5を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクター等の画像を投影させる反射型スクリーンとその成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクター等の画像を投影させるスクリーンの最もシンプルな形態は、白布に反射コーティングを施した布幕である(例えば特許文献1)。しかしながら、プロジェクターの如く使用する周囲の環境が明るい場合には、投影光以外の自然光・室内光等の外来光もスクリーンに入射してしまうため、投影像が不鮮明で見にくい問題があった。コントラストが低下し、画像や文字が視認しにくいのである。
【0003】
この点に関し、投影光以外の外来光をできるだけ遮断して投影像を鮮明にする手段として、スクリーンに視野角を制限することのできるルーバーパネルを用いることが考えられる。このルーバーパネルは、例えば特許文献2に開示されているような手段で成形される構成である。即ち、透明板素材の片面に非光透過性の印刷を施して、この透明板素材の多数をブロック状に積層し、ブロックを各素材面と直交する方向(積層方向に沿った方向)にスライスすることにより、パネル形状とする。
【0004】
このルーバーパネルは、スライス成形した結果、非光透過性の印刷層により遮光壁がストライプ状に形成されることになるので、この遮光壁が投影光以外の外来光をできるだけ遮断することになる。
【0005】
詳述するならば、塩化ビニール、アクリル、ウレタン、シリコン、ポリアセテート等の樹脂製の例えば約100μmの肉厚の透明板素材の片面に非光透過性の印刷を施し、この透明板素材を多数積層して熱圧縮してブロック状とし、このブロックを上記した形態でスライスすることにより、例えば200μmの肉薄な板状に成形する。
【0006】
図1で示したスライス成形された200μmの薄い板状の透明なルーバーパネルである視野角制限パネル1には、非光透過性の印刷層によって遮光壁2がストライプ状に形成されることになり、視野角制限パネル1の肉厚dが約200μmであるのに対し、遮光壁2の間隔d’は透明板素材の肉厚d’である約100μmとなる。そして図1、図2は反射型スクリーンとして利用する場合の代表的な構成で、視野角制限パネル1に於ける観察者A、プロジェクターPとは反対側の面である後面に、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂等による約100μmの反射層3を施す。
【0007】
ここでは、仮想法線aに対し30度の角度即ち計60度の角度まで入射するプロジェクターPからの投影光bは、反射層3に達し、ここで反射して観察者Aが視認することができる。しかしながら仮想法線aに対し30度を越える角度から入射する外来光cは遮光壁2に遮られて吸収されてしまうので反射層3に達することはなく、観察者A方向に反射することはない。従って観察者Aは外来光cに影響されることなく映像を鮮明に視認することができることになる。
【0008】
処で、視認性を更に向上させるためには、視野角制限パネル1の観察者A側の面を、微細な凹凸により所謂梨子地粗面を光透過性を確保しながらも形成して、反射光を乱反射させる方式(アンチグレア方式、AG方式)で構成する必要がある。このアンチグレア層は、背景光を乱反射して拡散させ、映り込んだ観察者Aの背景の画像の輪郭をぼやけさせて画像を視認し易くするのであり、約200μmのポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂の層の表面に紫外線硬化樹脂を付着させて形成する。しかしながらこの構成では、視野角制限パネル1の肉厚dの約200μm、反射層3の肉厚約100μmにアンチグレア層の肉厚約200μmを加えると、スクリーン全体の厚みが約500μmの剛性な板状となってしまい、不使用時の取り扱いに不便なものになる。
【特許文献1】特開2003−207852号公報
【特許文献2】特公昭58−47681号公報
【特許文献3】特開平8−50332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1で開示された発明のように布幕製のものであれば不使用時には巻き取り収納しておくことが可能であるが、特許文献2で開示された発明はパネル形態であるから巻き取り収納は不可能である。また、特許文献3では多層構造の反射型スクリーンの発明が開示されており、巻き取り収納が可能である旨の記載があるが、視野角を広くとるための構成であるため、特許文献2で開示された発明のパネルのように観察者Aは外来光cに影響されることなく映像を鮮明に視認することができるかどうか疑問である。
【0010】
よって本発明は、上記従来の欠点不都合を解消するべく開発されたものであって、外来光及び背景光の反射を極力抑制することにより、画像自体の視認性を飛躍的に向上させながらも、不使用時に巻き取り収納が可能となるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の反射型スクリーンは、プロジェクター等の画像を投影させる反射型スクリーンであって、透明板に遮光壁をストライプ状に形成した視野角制限パネルの前面に、紫外線硬化樹脂により光透過可能な梨子地粗面となったアンチグレア層を形成すると共に、後面に、ナイロン樹脂、ウレタン樹脂等による反射層を形成したことを特徴とする構成である。
【0012】
また、請求項1に記載の反射型スクリーンにあって、透明板に遮光壁をストライプ状に形成した視野角制限パネルの前面に、紫外線硬化樹脂を塗布し、表面を梨子地粗面とした透明板材を圧着させて紫外線硬化樹脂を押し広げながら紫外線を照射して硬化させ、アンチグレア層を形成することを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0013】
上記した請求項1に記載の発明によれば、ストライプ状に形成した遮光壁によって外来光の入反射が抑制されるので観察者は映像を極めて明瞭に視認することができる。
【0014】
そして背景光を乱反射して拡散させ、映り込んだ背景画像の輪郭をぼやけさせて画像を視認し易くするためのアンチグレア層は、紫外線硬化樹脂により薄くすることができ、また、反射層はナイロン樹脂、ウレタン樹脂等によって形成されているため同様に薄くすることができるので、スクリーンパネルとしても極めて薄いものにすることができ、巻回しても永久変形や折れ曲がってしまうことはなく、不使用時の巻き取り収納が可能なものになる。特に反射層を形成するナイロン樹脂或いはウレタン樹脂等は、軟質であって、耐摩耗性、耐擦傷性に優れ、繰り返しての巻回によっても製品として劣化してしまうことはない。
【0015】
また、請求項2に記載の成形方法によれば、透明板材の梨子地粗面を、紫外線硬化樹脂を介在させて視野角制限パネルの前面に圧着させるので、その梨子地粗面を転写させる形態で視野角制限パネルの前面に紫外線硬化樹脂をアンチグレア層として極めて容易に、しかも充分に薄くハードコートとして形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図2にあって、視野角制限パネル1は、塩化ビニール、アクリル、シリコン、ポリアセテート等の樹脂製で、200μm(d間隔)の肉薄な板状であり、非光透過性の印刷層によって100μm(d’間隔)の幅でストライプ状に遮光壁2が形成されている。そしてこの視野角制限パネル1の後面に、反射層3を白色或いは銀色のナイロン樹脂、ウレタン樹脂等による約50乃至100μmのフィルムを貼着することにより施す。この反射層3となるフィルムを貼着するには、例えば紫外線硬化樹脂による接着層4で達成する。また、視野角制限パネル1の前面には、紫外線硬化樹脂により光透過可能な梨子地粗面となった約10μmのアンチグレア層5を形成する。従って、本発明のスクリーンは、概ね300μm弱の肉薄のものに成形できるため、繰り返しての巻回収納に充分耐えることができる。
【実施例1】
【0017】
図3は、視野角制限パネル1の前面にアンチグレア層5を形成するための装置の一例を示すものにして、所定のベースプレート6上に視野角制限パネル1を載置し、視野角制限パネル1の前面に紫外線硬化樹脂を線状に且つほぼ等間隔に塗布し(図示省略)、更に上面にガラス板による透明板材7を配置する。この場合、視野角制限パネル1の前面に対向する透明板材7の面は梨子地粗面とする(図示省略)。
【0018】
上記したように視野角制限パネル1をベースプレート6と透明板材7とにより挟持した状態で、圧延ローラー8により視野角制限パネル1の前面に透明板材7を圧着させて紫外線硬化樹脂を視野角制限パネル1の前面に引き延ばし、紫外線照射装置9により紫外線を透明板材7を透過して照射することにより硬化させる。透明板材7の梨子地粗面は視野角制限パネル1の前面に対向しているので、押し広げられ、引き延ばされて硬化した樹脂も梨子地粗面となってアンチグレア層5を得ることになる。アンチグレア層5の厚みは、圧延ローラー8の圧延度合い、紫外線硬化樹脂の塗布量によって調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来技術の説明図である。
【図2】本発明の説明図である。
【図3】アンチグレア層の形成装置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1 視野角制限パネル
2 遮光壁
3 反射層
4 接着層
5 アンチグレア層
6 ベースプレート
7 透明板材
8 圧延ローラー
9 紫外線照射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロジェクター等の画像を投影させる反射型スクリーンであって、透明板に遮光壁(3)をストライプ状に形成した視野角制限パネル(1)の前面に、紫外線硬化樹脂により光透過可能な梨子地粗面となったアンチグレア層(5)を形成すると共に、後面に、ナイロン樹脂、ウレタン樹脂等による反射層(2)を形成したことを特徴とする反射型スクリーン。
【請求項2】
請求項1に記載の反射型スクリーンにあって、透明板に遮光壁(3)をストライプ状に形成した視野角制限パネル(1)の前面に、紫外線硬化樹脂を塗布し、表面を梨子地粗面とした透明板材(7)を圧着させて紫外線硬化樹脂を押し広げながら紫外線を照射して硬化させ、アンチグレア層(5)を形成することを特徴とする反射型スクリーンの成形方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−57635(P2007−57635A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240651(P2005−240651)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(594162537)株式会社ハイテック (6)
【出願人】(505317584)京テック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】