説明

反射型侵入監視装置

【課題】電子機器から発生するスイッチングノイズ等の影響を受けることなく、侵入者を確実に検知することができる反射型侵入監視装置を提供する。
【解決手段】送信部10は送信アンテナ21からマイクロ波を検知エリア20へ送信する。受信部30は検知エリア20に侵入した対象物22からの反射波を受信アンテナ23で受信し、周波数変換回路40にて受信信号frをローカル信号flo、ftと混合して中間周波数fifに変換する。周波数検波回路50は、中間周波数fifを中間周波信号IF2に変換して周波数検波する。AFC電圧生成回路54は、反転直流増幅器61で増幅された検波電圧bと予め設定したしきい値と比較し、検波電圧bがしきい値を超えない範囲では周波数検波部51内の周波数変換部の周波数制御を行い、検波電圧bがしきい値を超えると上記周波数変換部の周波数制御を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警備システムに用いられる、侵入者を検知する侵入監視装置に関し、特にマイクロ波帯の無線電波を利用した反射型侵入監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、デパ−トや工場等では、夜間の強盗や侵入者の警備に多数の警備員を配置する代わりに、無人の複数の出入口、門、フェンスなど侵入される恐れのある個所に侵入監視装置を配置し、該侵入監視装置からの侵入警報を監視する警備システムが種々実用化されている。
【0003】
上述のような警備システムに用いられる侵入監視装置の一つとして、検知エリアに対してマイクロ波帯の電波を常時送出し、検知エリアに侵入した人や車両等の反射波を受信することにより、該反射波周波数の乱れを検出して侵入警報を送出するようにした反射型ドップラーセンサによる侵入監視装置がある。
【0004】
従来のマイクロ波を使用した反射型ドップラーセンサによる侵入監視装置は、侵入者を検知した場合に発生させるビート信号周波数が直流〜数kHzと非常に低く、このため自然界に存在する外来ノイズや電子機器から発生するスイッチングノイズが多数重畳している約2MHzの周波数帯域内に埋もれて検出することが困難であった。マイクロ波を使用した侵入者監視に関する技術は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−101263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のマイクロ波を使用した反射型ドップラーセンサによる侵入監視装置は、上記したように検知する周波数が低く、自然界に存在するノイズや電子機器から発生するスイッチングノイズ等の区別が困難である等の問題があった。
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、自然界に存在するノイズや電子機器から発生するスイッチングノイズ等の影響を受けることなく、侵入者を確実に検知することができる反射型侵入監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る反射型侵入監視装置は、マイクロ波を発生して送信する送信部と、該送信部からの信号を検知エリアへ送出する送信アンテナ部と、前記検知エリアにおける対象物からの反射波を受信する受信アンテナ部と、前記受信アンテナ部により受信された反射波信号をドップラー信号を含む中間周波信号に変換する周波数変換部と、前記周波数変換部により変換された中間周波信号を周波数検波し、前記ドップラー信号に対する周波数検波電圧を出力する周波数検波部と、前記周波数検波部から出力される周波数検波電圧に基づいて侵入警報を出力する出力部と、前記周波数検波部から出力される周波数検波電圧に基づいて前記周波数変換部の周波数制御を行う周波数制御手段とを具備し、前記周波数制御手段は、前記周波数検波電圧が予め設定したしきい値を超えない範囲では前記周波数変換部の周波数制御を行い、前記周波数検波電圧が予め設定したしきい値を超えると前記周波数変換部の周波数制御を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、受信部は受信アンテナで受信した検知エリアからの反射波信号を中間周波数帯の信号に変換して侵入者の有無を検知することにより、電子機器から発生するスイッチングノイズや自然界に存在するノイズなど低い周波数帯で発生するノイズの影響を抑制して侵入者の有無を確実に検知することができる。
【0009】
また、周波数変換部に周波数制御手段を設け、周波数検波電圧が予め設定したしきい値を超えない範囲、すなわち検知エリアへの対象物の侵入を検知していない状態では周波数変換部の周波数制御を行うことにより、周辺環境ノイズによる周波数変換部の周波数変動を抑制して安定な警戒状態を維持することができる。また、ドップラー周波数が急激に変化して周波数検波電圧が予め設定したしきい値を超えた場合に周波数変換部の周波数制御を停止することにより、侵入者によるドップラー周波数の変化にリニアに追従した動作を確保して検知エリアへの侵入者を確実に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1に係る反射型侵入監視装置の回路構成を示すブロック図である。
【図2】同実施例1における周波数検波回路の詳細な回路構成図である。
【図3】同実施例1における周波数検波回路の周波数検波特性を示す図である。
【図4】同実施例1における各部の信号波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の実施例1に係る反射型ドップラーセンサを用いた反射型侵入監視装置の回路構成を示すブロック図である。
上記反射型侵入監視装置は、図1に示すようにマイクロ波を発生する送信部10、この送信部10から出力されるマイクロ波を検知エリア20へ送信する送信アンテナ21、上記検知エリア20における例えば人や車両等の対象物22からの反射波を受信する受信アンテナ23及び受信部30を備えている。上記送信アンテナ21は、マイクロ波を検知エリア20へ送信し、受信アンテナ23は検知エリア20に侵入した対象物22により反射してドップラーシフトされた反射波信号を受信する。このとき受信信号の周波数frと送信信号の周波数ftとの差の周波数「fr−ft」がビート周波数(ドップラー周波数)fbとなる。ドップラー周波数fbは、数Hz〜数十kHzの周波数成分を持ち、検知エリア20の周囲環境の影響を受けて変動する。
【0013】
上記送信部10は、周波数ftが例えば24.15GHzの高周波信号を発生する高周波発振器11、高周波増幅器12、2分配器13及び高周波増幅器14により構成される。上記高周波発振器11から出力される高周波信号は、高周波増幅器12で増幅された後、2分配器13で2分配される。この2分配器13で2分配された一方の高周波信号は、高周波増幅器14で増幅された後、送信アンテナ21へ送られ、この送信アンテナ21からマイクロ波ビームとして検知エリア20へ送信される。また、上記2分配器13で2分配された他方の高周波信号は、詳細を後述する受信部30の周波数変換回路40へローカル信号として送られる。
【0014】
上記受信部30は、周波数変換回路40、周波数検波回路50及び警報出力回路60により構成される。
周波数変換回路40は、低雑音増幅器41、混合器42、中間周波増幅器43、及びローカル発振器44により構成される。低雑音増幅器41は、例えば3段の増幅器により構成され、受信アンテナ23により受信された周波数frの信号を増幅して混合器42へ出力する。この混合器42は、2つのローカル信号入力端子を備え、一方のローカル信号入力端子にはローカル発振器44から出力される周波数floのローカル信号が入力され、他方のローカル信号入力端子には送信部10の2分配器13から送られてくる周波数ftの信号が入力される。
【0015】
混合器42は、低雑音増幅器41で増幅された受信信号(周波数fr)と2つのローカル信号(周波数flo、ft)とを混合し、ドップラー信号(周波数fb)を含む「fif±fb」の中間周波信号に変換する。上記中間周波数fifは、電子機器から発生するスイッチングノイズや自然界に存在する周辺環境ノイズ等が多数重畳している約2MHzの帯域より高い周波数、例えば14MHzに設定される。この場合、高周波発振器11の発振周波数ftを24.15GHzとすると、ローカル発振器44の発振周波数floは、
flo=24.15GHz−14MHz
に設定する。
【0016】
上記混合器42から出力される中間周波信号は、中間周波増幅器43に入力される。中間周波増幅器43は、2つの増幅器43a、43c間にfif±fbの中間周波信号を通過させるバンドパスフィルタ(BPF)43bを設けた構成となっており、混合器42から出力される中間周波信号を増幅して周波数検波回路50へ出力する。
【0017】
周波数検波回路50は、周波数検波部51、該周波数検波部51で周波数検波された信号を増幅する直流増幅器52、電圧制御発振器53、電圧制御発振器53の発振周波数を制御するためのAFC(自動周波数制御)電圧を生成するAFC電圧生成回路54により構成される。上記AFC電圧生成回路54は、直流増幅器52から出力される周波数検波電圧a及び警報出力回路60からフィードバックされる信号に基づいてAFC電圧gを生成し、電圧制御発振器53の発振周波数を制御する。
【0018】
上記周波数検波回路50は、詳細を後述するようにPLLを用いた周波数検波回路であり、周波数検波部51において、周波数変換回路40の出力信号と電圧制御発振器53から出力されるローカル信号を混合して例えば455kHzの第2中間周波信号IF2を生成し、この第2中間周波信号IF2を周波数検波して検波電圧を作成し、直流増幅器52により所要電圧まで増幅し、周波数検波電圧aとして出力する。
【0019】
警報出力回路60は、反転直流増幅器61、比較器62、リレー回路63、リレー接点64により構成される。反転直流増幅器61は、周波数検波回路50の直流増幅器52から出力される周波数検波電圧aを反転増幅し、周波数検波電圧bとして比較器62の(+)端子に入力すると共に周波数検波回路50のAFC電圧生成回路54にフィードバックする。上記比較器62の(−)端子には、検知基準電圧E0が与えられる。比較器62は、(+)端子に入力される検波電圧bと(−)端子に入力される検知基準電圧E0と比較し、検知エリア20への人や車両等の侵入者の有無に応じて変化する検波電圧bの変化に対応した比較結果をリレー回路63へ出力する。リレー回路63は、比較器62の出力に従ってリレー接点64を切替え、監視ライン71に送出する侵入警報出力をオン/オフする。
【0020】
次に、上記周波数検波回路50の詳細について図2を参照して説明する。周波数検波回路50の周波数検波部51は、周波数変換部を構成する混合器511、周波数検波器512、−180°の移相器513からなり、混合器511の一方の入力端子に周波数変換回路40から出力される「fif±fb」の信号が入力され、他方の入力端子に電圧制御発振器53の出力信号がローカル信号として入力される。この電圧制御発振器53は、「fif−455kHz」のローカル信号を発生するもので、AFC電圧生成回路54から与えられるAFC電圧gによって発振周波数が制御される。上記電圧制御発振器53は、通常は中間周波数fifに同期している。
【0021】
上記混合器511は、周波数変換回路40から出力される「fif±fb」の中間周波信号と電圧制御発振器53から与えられる周波数「fif−455kHz」のローカル信号(Lo)とを混合し、第2中間周波信号IF2「455kHz±fb」に変換する。上記混合器511から出力される第2中間周波信号IF2は、周波数検波器512に入力されると共に移相器513を介して周波数検波器512に入力される。
【0022】
また、AFC電圧生成回路54は、基準電圧E1を出力する基準電圧源540、パルス発生器541、比較器542、アナログスイッチ543、積分回路544及び直流増幅器545からなり、直流増幅器52から出力される周波数検波電圧aがアナログスイッチ543を介して積分回路544に入力され、警報出力回路60の反転直流増幅器61で増幅された周波数検波電圧bが比較器542の(+)端子に入力される。この比較器542の(−)端子にはパルス発生器541で発生したパルス信号が基準電圧源540から与えられる基準電圧E1に重畳して入力される。上記パルス発生器541で発生するパルス信号の周波数は、例えば1kHz〜20kHzの範囲で設定される。このパルス発生器541で発生するパルス信号の周波数・デューティサイクルと積分回路544の時定数は互いに相関があり、検知速度に対応して決められる。通常時、AFC電圧生成回路54によるAFCは“制御”状態となっており、積分回路544の時定数は、比較器542から出力される短期間のAFC制御パルスdの繰り返し周期と等しくなる。
【0023】
上記比較器542から出力されるAFC制御パルスdは、アナログスイッチ543の制御端子に入力され、アナログスイッチ543をオン/オフ制御する。積分回路544は、抵抗R及びコンデンサCからなり、直流増幅器52からアナログスイッチ543を介して入力される検波電圧aを積分する。積分回路544で積分された信号は、直流増幅器545で増幅され、AFC電圧gとして電圧制御発振器53の制御端子に入力される。
【0024】
次に、上記のように構成された反射型侵入監視装置の動作を説明する。
送信部10は、高周波発振器11で発生した周波数ft例えば24.15GHzの高周波信号を高周波増幅器12で増幅し、2分配器13で2分配した一方の信号を高周波増幅器14で増幅した後、送信アンテナ21へ出力し、この送信アンテナ21から周波数ftのマイクロ波を検知エリア20へ送信する。
【0025】
検知エリア20に侵入者がいない通常状態では、反射波によるドップラー周波数偏移は、周囲環境変動による緩やかなものである。検知エリア20に対象物22が侵入した場合には、対象物22からの反射波によるドップラー周波数偏移が急激で且つ大きくなる。
【0026】
上記検知エリア20において生じる対象物22からの反射波は、受信アンテナ23で受信され、受信部30へ送られて周波数変換回路40に入力される。周波数変換回路40に入力された反射波は、低雑音増幅器41で増幅された後、混合器42に入力される。混合器42は、低雑音増幅器41で増幅された受信信号(fr)とローカル発振器44からのローカル信号(flo)及び送信部10の2分配器13から送られてくるローカル信号(ft)とを混合し、例えば14MHzの中間周波信号(fif)に変換する。この場合、混合器42は、受信信号(fr)とローカル信号(flo)との混合によりfmix1を得ると共に、受信信号(fr)とローカル信号(ft)との混合によりfmix2を得、下式に示す
fr−flo=fmix1
fr−ft=fmix2
fmix1±fmix2=fif
の処理により、中間周波信号(fif)を得ている。
【0027】
上記混合器42から出力される中間周波信号は、中間周波増幅器43で増幅され、中間周波信号「fif±fb」として取り出され、周波数検波回路50へ送られる。
上記周波数検波回路50は、上記中間周波信号「fif±fb」を電圧制御発振器53で生成したローカル信号「fif−455kHz」と混合し、455kHzの第2中間周波信号IF2に変換して周波数検波し、その検波電圧を直流増幅器52で増幅して周波数検波電圧aとして警報出力回路60へ出力する。
【0028】
警報出力回路60は、周波数検波回路50から出力される周波数検波電圧aを反転増幅して周波数検波電圧bとし、周波数検波回路50のAFC電圧生成回路54へ制御信号として出力すると共に、比較器62にて検知基準電圧E0と比較し、その比較結果をリレー回路63へ出力してリレー接点64を切替え、監視ライン71に送出する侵入警報出力をオン/オフする。
【0029】
上記周波数検波回路50のAFC電圧生成回路54は、警報出力回路60の反転直流増幅器61から出力されるに周波数検波電圧bよって動作が制御されるもので、検知エリア20に侵入者がいない通常状態では、直流増幅器52から出力される周波数検波電圧aに対応したAFC電圧gを出力して電圧制御発振器53の発振周波数を制御し、混合器511から出力される第2中間周波信号IF2が常に455kHzに保たれるように制御する。また、AFC電圧生成回路54は、検知エリア20に対象物22が侵入した場合には、アナログスイッチ543をオフしてAFC電圧gを一定値、すなわち反転直流増幅器61から出力される周波数検波電圧bが最も大きく変化するような値に固定し、電圧制御発振器53の周波数制御は行わない。
【0030】
図3は周波数検波部51の周波数検波特性であり、横軸に周波数(kHz)をとり、縦軸に検波電圧(V)をとって示した。図中、実線で示す特性Aが周波数検波器512の周波数検波特性である。通常時、すなわち検知エリア20に対象物22が侵入していない状態では、混合器511から455kHzの信号が出力されて周波数検波器512に入力され、該周波数検波器512からV0の電圧が出力されている。対象物22が検知エリア20を通過すると、ドップラー周波数fbによって混合器511から「455kHz±fb」の信号、すなわち「455kHz±ΔF」が出力される。対象物22が検知エリア20に侵入した際、ドップラー周波数fbが高い方向に変化し、混合器511から出力される第2中間周波信号IF2が「455kHz+ΔF」になったとすると、周波数検波器512から出力される検波電圧は、図3における一点鎖線の囲みB内の破線C1に示すように周波数検波特性に応じてV0電圧からV1電圧に上昇する。
【0031】
そして、検知エリア20に侵入した対象物22が検知エリア20から抜けるときは、ドップラー周波数fbが低い方向に変化し、周波数検波器512から出力される検波電圧は、一点鎖線の囲みB内の破線C2に示すように上記V1電圧から順次低下する。この実施例1では、周波数検波器512から出力される検波電圧は、上記V0〜V1間の電圧変化を対象物22の侵入検出に使用する。
【0032】
図4は、警報出力回路60の比較器62及び図2に詳細を示すAFC電圧生成回路54の各部の信号波形図である。
図4(a)は反転直流増幅器61から出力される周波数検波電圧bと比較器542の(−)端子に入力される基準信号cとの関係を示している。比較器542に入力する基準信号cは、基準電圧(直流電圧)E1にパルス発生器541から出力されるパルス信号を重畳させた信号であり、該パルスの下限値をしきい値とするものである。
【0033】
図4(b)は警報出力回路60の比較器62の出力波形、同図(c)は比較器542から出力されるAFC制御パルスdの波形を示している。
検知エリア20への侵入者がない通常時のAFC制御パルスdは、比較器542で周波数検波電圧bと基準信号cのしきい値と比較されて図4(c)に示すような信号波形となる。このAFC制御パルスdはアナログスイッチ543の制御信号であり、アナログスイッチ543はAFC制御パルスdに従ってオン/オフを繰り返す。その結果、アナログスイッチ543を介して出力される周波数検波電圧aはパルス状となって積分回路544に入力され、直流増幅器545で増幅され、周波数検波電圧aの変動分に従ってAFC電圧gが出力される。従って、パルス周期が一定であれば、周波数検波電圧aの増減によってAFC電圧gも増減し、電圧制御発振器53の周波数調整が行われる。
【0034】
図4(d)はAFC電圧生成回路54で生成されたAFC電圧gの波形を示している。
検知エリア20に対象物22が入ると、侵入者によるドップラー周波数fbが発生し、周波数検波回路50から出力される周波数検波電圧aが大きくなり、警報出力回路60の反転直流増幅器61から出力される周波数検波電圧bの電圧が図4(a)に示すように急激に低下する。
【0035】
そして、比較器542への入力である周波数検波電圧bの電圧が、比較器542の下限しきい値より低い電圧となった時、AFC制御パルスdも一定値“Low”となってパルスは消滅しアナログスイッチ543はオフとなる。この結果、AFCが“非制御”状態になり、積分回路544のコンデンサCに充電された電圧が保持されて一定電圧となり、直流増幅器545から出力されるAFC電圧gも周波数検波電圧bの電圧が最も大きく変化するような所定値に固定され、電圧制御発振器53の周波数制御は行われない。上記AFCが“非制御”の状態は、反転直流増幅器61から比較器542の(+)端子に入力された周波数検波電圧bが比較器542の(−)端子に与えられている基準信号c(しきい値)下回っている時刻t1〜t2間において継続される。
【0036】
上記のようにAFC電圧生成回路54におけるAFC“非制御”によって周波数制御が行われなくなった受信部30は、検知エリア20における反射波の周波数の変動に直接追従して周波数検波電圧bが変化するようになる。従って、侵入者による急激な受信入力の変化が警報出力回路60の比較器62に入力されることになり、確実に侵入警報を行うことができる。
【0037】
上記警報出力回路60の比較器62は、反転直流増幅器61から出力される周波数検波電圧bと検知基準電圧E0と比較し、図4(b)に示すように周波数検波電圧bが検知基準電圧E0より低くなると出力が“Low”レベルとなり、リレー回路63によりリレー接点64が切替えられて監視ライン71から侵入警報が出力される。
【0038】
また、侵入者が検知エリア20に極めてゆっくり入った場合でも、侵入者によって生じる反射波は、周囲環境変動などに比べ急激な周波数の変動を引き起こすので、反転直流増幅器61からAFC電圧生成回路54の比較器542へ入力される周波数検波電圧bの変化も周囲環境変動に比べ急激である。更に、侵入者に起因する反射波の周波数変動は、周囲環境変動によるものと比べて大きく周波数検波電圧bの電圧も急激に低くなる。このため、侵入者“あり”の時は、周波数検波電圧bの電圧変動がパルス発生器541が発生するパルス周期より早い急激な変動となるので、比較器542から出力されるAFC制御パルスdは図4(c)に示すように“Low”レベルを維持し、周波数検波電圧aが積分回路544に出力されず、周波数制御も行われなくなる。
【0039】
一方、ゆっくりした周囲環境変動の場合は、警報出力回路60の反転直流増幅器61から出力される周波数検波電圧bが、AFC電圧生成回路54のパルス発生器541が発生するパルス周期より遅い変動で、該変動による電圧変化がパルスの下限電圧値を下回ることがないため、周波数検波回路50の直流増幅器52から出力される周波数検波電圧aが、そのままAFC制御パルスdに従って積分回路544に送出され、電圧制御発振器53の周波数制御が行われる。例え雨滴の大きい豪雨、あるいは吹雪などの急激な周囲環境変動が起こったとしても、これらに起因した検知エリア20における反射波の周波数の変動は一過性であるから、極めて一時的に周波数制御が行われなくなっても、周波数検波電圧bが比較器62の検知基準電圧E0を下回るまでは周波数制御が行われるので、誤って侵入警報が出力されることはない。
【0040】
上記実施例で示したように受信部30に周波数変換回路40を設け、受信アンテナ23で受信した検知エリア20からの反射波を電子機器から発生するスイッチングノイズや外来ノイズが多数重畳している約2MHzの帯域よりも高い周波数帯域に変換して侵入者の有無を検知することにより、電子機器から発生するスイッチングノイズや自然界に存在する周辺環境ノイズなど低い周波数帯で発生するノイズの影響を抑制して侵入者の有無を確実に検知することができる。
【0041】
また、周波数検波回路50にAFC電圧生成回路54を設け、周囲温度や周辺環境の変動による侵入監視装置の周波数温度変化、検知エリア20の降雪、降雨、霧などによる極めて緩やかな周波数変動等も含めた検知エリア20への侵入者“なし”に対応したドップラー周波数fbの変動に対しては、AFC電圧生成回路54によって生成したAFC電圧gにより電圧制御発振器53の発振周波数を可変制御してAFCを“制御”状態とすることにより、周波数変換部である混合器511を中間周波信号(fif)に同期させることができ、周辺環境ノイズ等による周波数変動を抑制して安定な警戒状態を維持することができる。
【0042】
また、侵入者によるマイクロ波ビームの反射・吸収等急激な周波数の変動も含めた検知エリア20への侵入者“あり”に対応したドップラー周波数fbの変動に対しては、AFC制御パルスdを停止してAFCを“非制御”状態とし、AFC電圧gを一定として電圧制御発振器53の周波数制御は行わずに、周波数検波回路50から出力されるドップラー周波数fbに対する周波数検波電圧aを検知エリア20の電界変動に直線的に追従して変動させることにより、検知エリア20への侵入者を確実に検知して侵入警報を出力することができる。
【0043】
なお、本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
【符号の説明】
【0044】
10…送信部、11…高周波発振器、12…高周波増幅器、13…2分配器、14…高周波増幅器、20…検知エリア、21…送信アンテナ、22…対象物、23…受信アンテナ、30…受信部、40…周波数変換回路、41…低雑音増幅器、42…混合器、43…中間周波増幅器、43a、43c…増幅器、43b…バンドパスフィルタ、44…ローカル発振器、544…積分回路、50…周波数検波回路、51…周波数検波部、511…混合器、512…周波数検波器、513…移相器、52…直流増幅器、53…電圧制御発振器、54…AFC電圧生成回路、540…基準電圧源、541…パルス発生器、542…比較器、543…アナログスイッチ、544…積分回路、545…直流増幅器、60…警報出力回路、61…反転直流増幅器、62…比較器、63…リレー回路、64…リレー接点、71…監視ライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を発生して送信する送信部と、該送信部からの信号を検知エリアへ送出する送信アンテナ部と、前記検知エリアにおける対象物からの反射波を受信する受信アンテナ部と、前記受信アンテナ部により受信された反射波信号をドップラー信号を含む中間周波信号に変換する周波数変換部と、前記周波数変換部により変換された中間周波信号を周波数検波し、前記ドップラー信号に対する周波数検波電圧を出力する周波数検波部と、前記周波数検波部から出力される周波数検波電圧に基づいて侵入警報を出力する出力部と、前記周波数検波部から出力される周波数検波電圧に基づいて前記周波数変換部の周波数制御を行う周波数制御手段とを具備し、
前記周波数制御手段は、前記周波数検波電圧が予め設定したしきい値を超えない範囲では前記周波数変換部の周波数制御を行い、前記周波数検波電圧が予め設定したしきい値を超えると前記周波数変換部の周波数制御を停止することを特徴とする反射型侵入監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−180718(P2011−180718A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42648(P2010−42648)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000166650)株式会社日立国際電気エンジニアリング (100)
【Fターム(参考)】