反射部材、反射部材の製造方法、発光装置、照明装置
【課題】
光などの波成分を効率よく反射させることができ、かつ反射特性の劣化が抑制された反射部材、それを用いた発光装置および照明装置を提供する。
【解決手段】
本発明は、反射部材(7)に関するものである。この反射部材(7)は、無機材料によ
り多孔質に形成された反射層61(7)を有している。反射層61(7)は、気孔率が1
5〜43%となるように形成するのが好ましい。このような反射層61(7)は、複数の
無機粒子をそれらの一部において一体化させることにより形成されている。
光などの波成分を効率よく反射させることができ、かつ反射特性の劣化が抑制された反射部材、それを用いた発光装置および照明装置を提供する。
【解決手段】
本発明は、反射部材(7)に関するものである。この反射部材(7)は、無機材料によ
り多孔質に形成された反射層61(7)を有している。反射層61(7)は、気孔率が1
5〜43%となるように形成するのが好ましい。このような反射層61(7)は、複数の
無機粒子をそれらの一部において一体化させることにより形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波発生要素からの電磁波を所望の方向に効率よく反射させるための反射部材、それを用いた発光装置および照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、反射部材としては、図14に示したものがある。同図に示した反射部材90は、たとえば照明器具用の反射板として使用されるものであり、金属基材91の表面に反射塗膜92を形成したものである。反射塗膜92は、透明樹脂母材93にエアロシリカゲルなどの粒子94を分散させたものであり、透明樹脂母材93と粒子94の屈折率差に起因する全反射を利用して、反射率を向上させるように構成されている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
反射部材90は、屈折率差に起因する全反射を利用するものであるため、透明樹脂母材93に使用する樹脂材料の光吸収がない波長帯域では非常に高い反射率を示す。そのため、一般照明用の蛍光灯具などの光利用率を向上させることができる。その一方で、反射部材90は、透明樹脂母材93に樹脂を用いるために、透明樹脂母材93の樹脂が吸収するような波長帯域を含む光を照射させた場合、透明樹脂母材93が劣化し着色するという問題を有している。
【0004】
一方、反射部材としては、樹脂粉末を圧縮成型した反射材料(スペクトラロン)を利用したものもある(たとえば特許文献2参照)。このような反射材料は、加工性に優れており、標準反射板あるいは積分球に利用されている。この反射材料もまた、樹脂を使用しているため、樹脂が吸収するような波長帯域を含む光を照射させた場合に劣化し着色するという問題を有している。
【0005】
このように、反射に寄与する部分の主成分として樹脂を使用する場合、使用されている樹脂が吸収するような波長帯域の光を照射すると、樹脂が劣化して着色する。その結果、樹脂を用いた反射部材では、樹脂の劣化に起因して反射率が低下するという問題がある。
【0006】
また、表示装置や照明装置においては、点灯回路などにおいても熱が発生するため、その熱によって樹脂の劣化・着色が促進され、反射率の低下を助長するという問題点があった。したがって、表示装置や照明装置などのように、光源から光出射頻度が高い装置においては、反射部材の材料として樹脂を使用するのは好ましくない。とくに、光源として、波長の短い光(たとえば、紫外光、近紫外光、または青色光)を出射するLEDやLDを使用する装置においては、光源から出射される光のエネルギが大きいために、樹脂における光吸収に起因した反射部材の劣化、すなわち反射率の低下が生じやすい。
【0007】
その一方で、無機粒子を焼結させたセラミックスを利用した反射部材も提案されている(たとえば特許文献3)。無機物は、一般的に有機物より結合エネルギが大きいため、耐光性や耐熱性に優れている。そのため、セラミックスを利用した反射部材は、有機物である樹脂を使用する場合に比べて、光吸収に起因する劣化が少ないという利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−29745号公報
【特許文献2】米国特許第4912720号明細書
【特許文献3】特開2004−207678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図15に示したように、セラミックス製の反射部材95は、反射に寄与するセラミックス部分96が、無機粒子を焼結させることによって、無機粒子を相互に一体化させた形態を有するため、空隙97がほとんどなく、気孔率が0〜1%程度である。そのため、反射部材95では、入射光の多くは表面98において効率良く反射される一方で、入射光の一部が反射部材95の内部に進入する。このような内部への進入光は、セラミックス部分96の内部に閉じ込められ、最終的にはセラミックス部分96で吸収される。その結果、反射部材95では、内部に進入した光が反射できないため、光エネルギが減衰して光損失となり、反射効率が比較的に低いという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、光などの波成分を効率よく反射させることができ、かつ反射特性の劣化が抑制された反射部材、それを用いた発光装置および照明装置を提供することを課題としている。
【0011】
本発明の第1の側面においては、無機材料により多孔質に形成された反射層を有している、反射部材が提供される。
【0012】
前記反射層は、たとえば抗折強度が1〜300MPaとされる。前記反射層は、たとえば仮焼成などにより、複数の無機粒子を互いに一部分で一体化させ、前記複数の無機粒子の間に空隙を設けることにより多孔質に形成される。前記空隙は、たとえば気体により、または前記無機粒子よりも屈折率の低い透明材料により満たされている。
【0013】
本発明の反射部材は、前記反射層のみからなる構成であってもよいが、基材上に前記反射層を形成した構成であってもよい。
【0014】
前記無機粒子としては、アルミナ、イットリア、ジルコニアおよびチタニアからなる選択される少なくとも一種を含むものを使用するのが好ましい。
【0015】
本発明の第2の側面においては、無機材料により多孔質に形成された反射層を有する反射部材の製造方法であって、複数の無機粒子を含む無機粒子層または無機成型体を形成する工程と、仮焼成することにより、前記無機粒子層または無機粒子成型体を多孔質化する工程と、を含んでいる、反射部材の製造方法が提供される。
【0016】
本発明の第3の側面においては、無機材料により多孔質に形成された反射層を有する反射部材の製造方法であって、複数の無機粒子およびバインダを含む被着材料を、基材の表面に吹き付けて前記基材の表面に多孔質層を形成する被着工程を含んでいる、反射部材の製造方法が提供される。
【0017】
この製造方法ではさらに、加熱により、前記多孔質層における複数の無機粒子を一体化させるとともに、前記バインダを除去する加熱工程をさらに含んでいてもよい。
【0018】
本発明の第4の側面においては、1または複数の発光要素と、前記発光要素から出射された光を反射させるための反射部材と、を備えた発光装置であって、前記反射部材として、本発明の第1の側面に係るものを使用する、発光装置が提供される。
【0019】
本発明の発光装置においては、反射部材として、発光要素のピーク波長に対する反射率が95%以上のものが使用される。
【0020】
前記発光要素としては、たとえばLEDチップまたはLDチップが使用される。前記発光要素としては、紫外光、近紫外光、または青色光を出射するように構成されたものを使用することもできる。
【0021】
本発明の第5の側面においては、1または複数の発光装置を備えた照明装置であって、前記発光装置として、本発明の第4の側面に係るものを使用する、照明装置が提供される。
【0022】
本発明に係る照明装置としては、例えば、室内や室外で用いられる、一般照明用器具、シャンデリア用照明器具、住宅用照明器具、オフィス用照明器具、店装,展示用照明器具、街路用照明器具、誘導灯器具及び信号装置、舞台及びスタジオ用の照明器具、広告灯、照明用ポール、水中照明用ライト、ストロボ用ライト、スポットライト、電柱等に埋め込む防犯用照明、非常用照明器具、懐中電灯、電光掲示板等や、調光器、自動点滅器、ディスプレイ等のバックライト、動画装置、装飾品、照光式スイッチ、光センサ、医療用ライト、車載ライト等が挙げられる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の反射部材は、たとえば複数の無機粒子を互いに一部分で一体化させて無機粒子間に空隙を設けて多孔質に形成された反射層を有していることから、光などの波成分を反射部材の表面で反射させるばかりでなく、反射部材(反射層)の内部に進入した波成分を、孔の内面と空隙との界面において全反射させることが可能となる。すなわち、空気など気体や無機粒子よりも屈折率の低い透明材料を空隙に充填させることにより、孔の内面と空隙の充填物との間の屈折率差によって、それらの界面(反射面)において入射した波成分を全反射させることができる。また、反射層を適度な気孔率の多孔質に形成することによって、反射層の内部に適度な空隙(孔)が形成され、反射部材の内部における反射面を多く確保することが可能となる。これにより、本発明の反射部材では、反射部材の内部に進入した波成分を効率よく反射させることができるようになる。その結果、反射部材の内部に光などの波成分が閉じ込められるのを有効に防止し、極めて高い反射効率を達成することができる。
【0024】
また、反射層を無機物によって形成した反射部材では、有機物を主成分とする反射層を有する反射部材に比べて、耐光性および耐熱性が高くなる。そのため、本発明の反射部材では、材料劣化による反射効率の低下を有効に抑制することができる。
【0025】
さらに、無機粒子を互いに一体化することで反射層を形成すれば、無機粒子が剥がれ落ちることのない十分な強度を有する反射部材(反射層)を得ることができる。
【0026】
また、反射層における気孔率を15〜43%とすれば、空隙(孔)が不当に多く存在することもないために反射層(反射部材)の強度を十分に確保できるとともに、孔の内面と空隙と界面(反射面)の面積が不当に小さくなってしまうこともない。その結果、本発明の反射部材は、強度および反射効率の高いものとなる。
【0027】
そして、本発明の製造方法では、適度な空隙(孔)を有する反射率の高い反射層(反射部材)を形成でき、また無機粒子が一部分において相互に一体化した十分な強度を有する反射層(反射部材)を形成することができる。
【0028】
本発明の発光装置および照明装置は、先に説明した反射部材を備えていることから、発光素子からの出射光をきわめて高い効率で所望の方向に反射させることができる。そのため、本発明の発光装置および照明装置では、出射光強度を非常に高くすることができるとともに、長期にわたり安定した出射光強度を維持することが可能となる。
【0029】
また、発光装置が無機材料により形成されて耐光性の高いものとされていることから、発光要素として紫外光、近紫外光、または青色光といった高エネルギの光を出射するものLEDチップやLDチップを使用する場合であっても、反射部材が劣化しにくく、長期にわたって安定した出力を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る照明装置の一例を示す全体斜視図である。
【図2】図1に示した照明装置における発光装置の平面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図1および図2に示した発光装置の要部(反射層)を拡大して示した断面図である。
【図5】実施例1において、無機粒子としてアルミナを使用したときの結果を示すグラフである。
【図6】実施例1において、無機粒子としてイットリアを使用したときの気孔率と反射率の測定結果を示すグラフである。
【図7】実施例1において、無機粒子としてジルコニアを使用したときの気孔率と反射率の測定結果を示すグラフである。
【図8】実施例1において、無機粒子としてチタニアを使用したときの気孔率と反射率の測定結果を示すグラフである。
【図9】実施例2における気孔率と反射率の測定を示すグラフであり、図9Aは測定波長が400nm、図9Bは測定波長が600nmのときの結果を示すものである。
【図10】実施例3における本発明の反射部材のSEM写真を示すものであり、図10Aは表面性状、図10Bは断面性状を撮影したものである。
【図11】実施例3における比較例の反射部材のSEM写真を示すものであり、図11Aは表面性状、図11Bは断面性状を撮影したものである。
【図12】実施例4の結果を示すグラフである。
【図13】実施例4の結果を示すグラフである。
【図14】従来の反射部材の一例を示す断面図である。
【図15】従来の反射部材の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下においては、本発明に係る照明装置、発光装置および反射部材について、図1ないし図4を参照して説明する。
【0032】
図1に示した照明装置1は、基板10上に複数の発光装置2がマトリックス状に配置されたものであり、複数の発光装置2を同時に点灯させることにより、面状に光を照射可能に構成されている。
【0033】
基板10には、配線11(図3参照)がパターン形成されており、この配線11が後述する発光装置2の下面導体部35(図3参照)に導通接続されている。これにより、各発光装置2は、外部からの電力供給が可能とされており、点灯状態と消灯状態とが選択可能とされている。
【0034】
図2および図3に示したように、発光装置2は、基体3、発光素子4、透光部50、波長変換層51、第1および第2反射部材6,7を備えている。
【0035】
基体3は、発光素子4および後述する第1反射部材6の枠体60を支持するためのものであり、絶縁体として形成されている。この基体3は、たとえば酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、ガラスセラミックス等のセラミックスにより形成されている。
【0036】
この基体3には、基板10の配線11および後述する発光素子4の電極41に導通接続された、配線導体30が形成されている。この配線導体30は、発光素子4に駆動するための電力を供給するものであり、互いに導通した上面導体部31、ビア導体32、層間導体部33、ビア導体34、および下面導体部35を有している。
【0037】
このような配線導体30が形成された基体3は、たとえば基体3となる複数のグリーンシートに、配線導体30となるW、Mo、Mn、Cu等の金属ペーストを印刷し、基体3を焼成すると同時に金属ペーストをも焼成することにより形成することができる。
【0038】
もちろん、基体3は、エポキシ樹脂等の樹脂によって形成してもよく、配線導体30は、めっき法、薄膜形成法などの周知の方法で基体3の表面あるいは内部に形成してもよい。配線導体30はまた、露出する表面(上面導体部31および下面導体部35の表面)に厚さ0.5〜9μmのNi層や厚さ0.5〜5μmのAu層等の耐食性に優れる金属層を被着させておくのが好ましい。そうすれば、配線導体30の表面が酸化により腐食するのを有効に防止できるため、上面導体部31と後述する発光素子4の電極41との間、および下面導体部35と基板10の配線11との間を半田等の導電性接合材80,81を用いて接合する場合に、それらの間の接合を強固なものとすることができる。
【0039】
発光素子4は、目的とする波長範囲の光を出射するものであり、フェイスダウン方式で基体3に実装されている。この発光素子4は、主面40に回路素子(図示略)が造り込まれたものであり、この回路素子(図示略)に導通する電極41を有している。電極41は、配線導体30の上面導体部31に導電性接合材80を介して導通接続されている。
【0040】
導電性接合材80としては、たとえばロウ材、半田、導体バンプ、導電性接着材を使用することができる。ロウ材および半田としては、スズ系のもの、たとえばAu−Sn、Sn−Ag、Sn−Ag−CuあるいはSn−Pbを使用することができ、金属バンプとしては、たとえばAuあるいはAgにより形成されたものを使用することができ、導電性接着材としては、たとえばエポキシなどの樹脂成分中に導体ボールを分散させたものを使用することができる。また、発光素子4は、電極41や光出射領域の形成位置によっては、電極41と配線導体30とをワイヤボンディングにより電気的導通を図ってもよい。
【0041】
発光素子4は、たとえば紫外線域から赤外線域までの間のいずれかにピーク波長を有する光、あるいは先の波長域の特定範囲においてブロード特性を有する光を出射するものである。発光素子4は、発光装置2において出射すべき光の色(波長)に応じてその種類(出射光の波長特性)が選択される。たとえば発光装置2において、波長変換層51を使用して白色光を視感性よく出射させるためには、発光素子4としては、300〜500nmの近紫外系から青色系の短波長の光、とくに紫外光または近紫外光を発する素子を使用するのが好ましい。これは、以下の理由によるものである。
【0042】
すなわち、発光素子4として可視光を出射するものを使用する場合には、その出射光の一部を蛍光体(波長変換層51)によって補色関係にある色に変換し、出射光と蛍光体の光とを混色して白色とされるが、この場合、作動による温度上昇などにより発光素子4からの出射光の波長が変化しやすく、出射光と蛍光体の光との混色のバランスがくずれ、安定した白色光を得ることが困難となる。また、光源からの光は中心部から外側ほど強度が弱くなっており、そのような強度ばらつきに対して蛍光体で色の調整をするのは不可能である。
【0043】
これに対し、紫外光や近紫外光は、エネルギが大きいために、出射光のほとんどすべてを蛍光体で波長変換できるため、蛍光体から発せられる光の混色のバランスのみ考慮すればよく、出射光と蛍光体の光とのバランスを考慮する必要がなくなる。したがって、発光装置2において白色光を視感性よく出射させるためには、発光素子4としては、紫外光や近紫外光を出射するものを使用するのが好ましい。
【0044】
このような紫外光や近紫外光を出射する発光素子4としては、たとえばサファイア基板上にGa−N、Al−Ga−N、In−GaN等から構成されるバッファ層、N型層、発光層、P型層を順次積層した窒化ガリウム系化合物半導体やシリコンカーバイト系化合物半導体などのLEDやLDを用いるのが好ましい。
【0045】
透光部50は、発光素子4が外気中の水分などによって曝露されるのを抑制するためのものであり、発光素子4を封止するようにして、後述する第1反射部材6における枠体60の内部に設けられている。この透光部50はさらに、発光素子4とその周囲との屈折率の差を小さくし、発光素子4の内部に光が閉じ込められるのを抑制して発光素子4の発光強度を高める役割を果たしている。
【0046】
透光部50は、たとえば発光素子4との屈折率差が小さく、発光素子4からの出射光に対して透過率の高い材料により形成されている。これらの条件を満たす材料としては、たとえばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂等の透明樹脂、低融点ガラス、ゾル−ゲルガラス等の透明ガラス等が挙げられる。
【0047】
このような透光部50は、たとえば未硬化状態あるいは溶融状態の材料を、ディスペンサー等を用いて枠体60の内部に充填した後に、材料を固化させることにより形成することができる。
【0048】
波長変換層51は、発光素子4から出射される光の波長(色)を変換するためのものであり、透光部50を覆うように、発光素子4の直上に位置させられている。この波長変換層51は、変換すべき波長に応じた蛍光体を含有させたものである。
【0049】
蛍光体としては、たとえばアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体、希土類元素から選択された少なくとも一種の元素で付活された、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体が挙げられる。
【0050】
このような波長変換層51は、発光素子4における光出射面を覆うように設けてもよく、また発光素子4の光を波長変換せずにそのまま利用する場合には省略される。
【0051】
第1および第2反射部材6,7は、発光素子4から出射された光を反射させてから発光装置2の外部に出射するためのものであり、発光素子4を囲むように形成されている。
【0052】
第1反射部材6は、枠体60および反射層61を有するものであり、接合材を介して基体3に接合されている。接合材としては、半田やロウ材、あるいは樹脂接着剤を使用することができる。半田およびロウ材としては、スズ系のもの、たとえばAg−Cu、Pb−Sn、Au−Sn、Au−Si、Sn−Ag−Cuを使用することができ、樹脂接着材としては、たとえばシリコーン系やエポキシ系のものを使用することができる。ただし、基体3と枠体60との接合に高信頼性を必要とされる場合には、接合材として半田や金属ロウ材を用いるのが好ましい。
【0053】
枠体60は、反射層61を支持するためのものであり、円形断面を有する内部空間62を有している。すなわち、枠体60は、内部空間62を規定する内面63に反射層61が密着形成されている。内部空間62には、発光素子4が収容された状態で透光部50が設けられる。
【0054】
この枠体60は、たとえばアルミニウム等の金属、セラミックス、あるいは樹脂により形成されている。だだし、枠体60は、基体3との間に作用する熱応力の影響を抑制するために、基体3と熱膨張係数の差の小さい材料により形成するのが好ましい。たとえば、基体3がセラミックにより形成されている場合には、枠体60もセラミックにより形成するのが好ましい。この場合には、グリーンシート法により、基体3と枠体60とを同時に形成することもできる。
【0055】
反射層61は、発光素子4から出射された光を、図の上方に向けて発光装置2から出射させるためのものである。この反射層61は、枠体60の内面63に密着して設けられたものであり、発光素子4の側面42を囲っている。
【0056】
一方、第2反射部材7は、基体3の上面36に密着して設けられたものであり、発光素子4の直下において平面方向に広がっている。この第2反射部材7は、全体が反射層として機能するものである。
【0057】
反射層61および第2反射部材7は、図4に示したように無機材料により多孔質に形成されている。より具体的には、反射層61および第2反射部材7は、複数の無機粒子を互いに一部分で一体化させることで多数の孔64(70)を有する多孔質に形成されている。孔64(70)は、気体(たとえば空気)により満たされている。
【0058】
このように多孔質化された反射層61および第2反射部材7において、屈折率の低い空気から屈折率の高い無機粒子に入射され光は、表面65(71)を透過して、反射層61および第2反射部材7の内部に進入する。この透過光は、無機粒子の表面67(73)と、それよりも屈折率の低い孔64(70)内の気体との界面で、一部は屈折率差によって全反射され、他の一部は透過される。すなわち、無機粒子の表面67(73)と孔64(70)内の気体との界面が光入射角度に対して全反射する角度で存在する場合、入射した光は100%近く反射される。一方、無機粒子の表面67(73)と孔64(70)内の気体との界面が光入射角度に対して全反射する角度で存在しない場合には入射光は透過する。この透過した光の光路の先には、上述と同様に無機粒子の表面67(73)と孔64(70)内の気体との界面が幾つも存在し、それらの界面の中には、光入射角度に対して全反射する角度で存在する界面が高確率で存在する。その結果、反射層61および第2反射部材7の内部に進入した透過光は、いずれかの界面において100%近く反射される。この様な現象が連続的に生じることによって、反射層61および第2反射部材7の内部に進入した透過光は、効果的に反射され、反射層61および第2反射部材7の外部に出射される。すなわち、反射層61および第2反射部材7の表面65(71)から内部に光が伝搬する過程において、反射層61および第2反射部材7の表面からふたたび空気に出射される光は100%に近づき、反射層61および第2反射部材7を透過する光は0%に近づく。)
【0059】
上述の作用から理解できるように、入射光を効率良く反射させる観点から、無機粒子としては、屈折率が高くて全反射臨界角を大きく確保できるものを使用するのが好ましい。また、反射層61および第2反射部材7における光減衰を少なくする観点からは、反射すべき光に対する吸収が少ない(たとえば光吸収率が5%以下の)材料を使用するのが好ましい。また、第1反射部材6の反射層61、第2反射部材7を層状に形成する場合には、その厚みは0.03mm以上であるのがよい。厚みが0.03mm未満では、光が透過する確率が高くなるからである。
【0060】
これらの反射層61および第2反射部材7は、反射層61および第2反射部材7の内部に進入した透過光を、高確率で反射・出射させるために、気孔率が15〜43%となるように形成するのが好ましい。これは、気孔率が不当に小さい場合には、孔64(70)が少なくなるために、光反射に寄与する反射面の数が少なくなって(内表面積が小さくなって)、反射率が低下するからであり、気孔率が不当に大きい場合には、反射層61および第2反射部材7の強度が低下するからである。
【0061】
ここで、気孔率は、幾何学法により測定した全気孔率を示しており、下記数式1により定義されるものである。
【0062】
【数1】
【0063】
数式1における嵩密度はアルキメデス法により、真密度は気相置換法(ピクノメータ法)により測定することができる。また、反射層が薄い場合、反射層の断面を顕微鏡により観察し、その断面における気孔の面積率(気孔の面積の総和を総面積で割ることにより求められる)を求め、この気孔の面積率を3/2乗することにより気孔率を求めることができる。
【0064】
このような反射層61および第2反射部材7は、枠体60の内面63あるいは基体3の上面36に複数の無機粒子を含む無機粒子層を形成した後に、この無機粒子層を仮焼成することにより形成することができる。
【0065】
なお、仮焼成とは、無機粒子を間に空隙がほとんど存在しない状態(気孔率が0.001〜1%程度)の焼結体(セラミック)とは異なり、適度な気孔率を有する多孔質体を形成するための不完全な焼成を意味している。
【0066】
無機粒子層は、たとえば無機粒子とバインダ樹脂とを混合した材料をスプレーコートすることにより形成することができる。
【0067】
バインダ樹脂としては、たとえばアクリル樹脂、パラフィン樹脂、あるいはポリエチレン樹脂を使用することができる。
【0068】
一方、無機粒子としては、上述のように、反射すべき光に対する吸収が少なく(たとえば光吸収率が5%以下)、屈折率が高くて全反射臨界角を大きく確保できるものを使用するのが好ましく、典型的には、アルミナ、イットリア、ジルコニア、チタニア、ダイヤモンド、酸化カルシウム、および硫酸バリウムを使用することができる。好ましくは、無機粒子は非金属無機粒子であるのがよい。金属であれば無機粒子中を光が透過しにくいので、光が孔64(70)の中に閉じ込められて損失が大きくなりやすい。
【0069】
これらの無機材料のうち、屈折率の観点からは、全反射臨界角を大きく確保できるもの、たとえばチタニア(ルチル;n=2.8)、ジルコニア(n=2.1)あるいはダイヤモンド(n=2.4)が特に好ましい。
【0070】
また、無機材料は、光吸収(透過率)の観点からは反射すべき光の波長に応じて選択することができる。たとえばチタニアは屈折率の観点からは好ましいが、光の波長350nm前後の近紫外領域で光を吸収する特性を有する。そのため、反射層61および第2反射部材7を波長が350nm前後の近紫外光を反射するように構成するためには、近紫外光を吸収しにくいアルミナを使用するのが好ましい。
【0071】
無機粒子としては、粒径が入射する光の波長の1/4より大きく、かつできるだけ小さいものを使用するのが好ましい。これは、無機粒子の粒径が光の波長の1/4より小さい場合には、光に対する見かけ上の屈折率差が小さくなり、光が反射しにくくなるためであり、無機粒子の粒径が大きすぎる場合には、孔64(70)における内面積、すなわち反射面積が少なくなるからである。さらに、入射した光を全反射する確率を上げる観点からは、無機粒子としては、球形状よりも板形状や柱形状などの不定形なものを使用するのが好ましい。
【0072】
無機粒子層の仮焼成は、使用する無機材料、達成すべき気孔率および抗折強度によって異なるが、通常、1000〜1400℃において1〜5時間行なわれる。仮焼成においては、焼結温度を下げるための助剤を添加してもよい。この場合に使用する助剤としては、たとえばカルシアやマグネシアが挙げられ、その添加量は1〜10wt%とされる。
【0073】
このような仮焼成を行なうことにより、無機粒子が相互に一体化され、適度な気孔率および抗折強度、たとえば気孔率が15〜43%、抗折強度が1〜300MPaである多孔質体を得ることができる。そして、無機粒子層にバインダ樹脂を含ませておいた場合には、バインダ樹脂は、仮焼成の加熱によって、蒸散あるいは燃焼させることで除去される。
【0074】
反射層61および第2反射部材7は、無機粒子が接着剤により相互に結合した多孔質体として形成することもできる。このような多孔質体は、無機粒子、接着剤および溶剤を含む材料を、枠体60の内面63および基体3の上面36に塗布した後に、溶剤を揮発させることにより形成することもできる。この場合に使用する接着剤は、多孔質体に残存するため、接着剤における光吸収に起因した反射率の低下を抑制するために、接着剤としては透光性を有するものを使用するのが好ましい。このような接着剤としては、たとえばエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂、メタクリル樹脂およびポリカーボネート樹脂などの樹脂系接着剤、あるいは低融点ガラス、ゾル−ゲルガラスおよびSi−Mg−Al−O系などのガラス系接着剤を使用することができる。
【0075】
また、反射層61および第2反射部材7は、枠体60の内面63や基体3の上面36に造り込むことなく、別途形成しておいた多孔質体を、枠体60の内面63や基体3の上面36に貼り付けることにより設けることもできる。第1反射部材6はまた、無機材料を用いて全体を多孔質に形成してもよい。その場合には、多孔質体のみにより第1反射部材6が構成され、枠体60は省略されるが、光が照射される表面は良好な反射面として作用すると同時に、多孔質体たる第1反射部材6が断熱材としても作用し発光装置の外表面における高温化を有効に防止できる。このような多孔質体は、たとえば次のようにして形成することができる。
【0076】
まず、無機粒子とバインダ樹脂との混合物を目的とする形状の成型体を得る。無機粒子およびバインダ樹脂は、先に説明したのと同様なものを使用することができる。一方、成型体は、金型を用いたプレスにより行なうことができる。また、成型体は、その形状を膜状とする場合には、先の混合物に、α−テルピネオールを添加してさらにトルエンなどの溶剤を加えてスラリーとし、このスラリーを、ドクターブレードを用いてテープ上に成型した後に、溶剤を揮発させることによって形成してもよい。
【0077】
また、基体3の全体を多孔質の反射部材で構成してもよい。その場合には、光が照射される表面は良好な反射面として作用すると同時に、枠体60や基体3が断熱材としても作用し発光装置の外表面における高温化を有効に防止できる。
【0078】
次いで、成型体の仮焼成を行なう。仮焼成の条件は、先に説明したのと同様である。この仮焼成により、バインダ樹脂が蒸散あるいは燃焼により除去され、適度な気孔率を有する多孔質体が形成される。
【0079】
発光装置2では、第1反射部材6(反射層61)および第2反射部材7が多孔質化されている。そのため、発光素子4において出射された光は、第1および第2反射部材6(7)の内部に進入し、無機粒子と孔64(70)内の気体との界面において全反射させられる。すなわち、無機粒子よりも屈折率の低い空気などの気体を孔64(70)に存在させることにより、無機粒子と孔64(70)内の気体との間の屈折率差によって、それらの界面(反射面)において、入射した一部の光を全反射させることができる。また、第1反射部材6の反射層61および第2反射部材7を多孔質化することで、それらの内部に多くの孔64(70)を存在させることができる。その結果、第1反射部材6(反射層61)および第2反射部材7の内部に、内部への進入光を有効に反射させることができる界面(反射面)を多く存在させ、第1および第2反射部材6,7の内部に進入した光を効率よく反射させることができるようになる。すなわち、第1および第2反射部材6(7)の表面65(71)から内部に光が伝搬する過程において、第1および第2反射部材6(7)の表面65(71)からふたたび空気に出射される光は100%に近づき、第1および第2反射部材6(7)を透過する光は0%に近づく。)
【0080】
また、第1反射部材6(反射層61)および第2反射部材7を無機物によって形成することで、有機物を主成分とする反射層を有する反射部材に比べて、耐光性および耐熱性を向上させることができるため、材料劣化による反射効率の低下を有効に抑制することができる。これにより、発光装置2においては、長期にわたって安定反射効率を維持でき、安定した光出力を維持することが可能となる。このような効果は、発光要素として紫外光、近紫外光、または青色光といった高エネルギの光を出射するLEDチップやLDチップを使用する場合であっても享受することができる。すなわち、本発明の反射部材6,7を採用することにより、発光素子4として高エネルギの光を出射するものを採用した発光装置2のおいても、反射部材6,7の劣化に起因する反射効率の低下ないし出力の低下を有効に抑制することが可能となる。
【0081】
本発明は、上述した実施の形態には限定されず、種々に変更可能である。たとえば第1反射部材6における反射層61および第2反射部材7は、これらを構成する無機材料よりも屈折率の小さい透明材料により、孔64,70を満たした構成としてよい。ただし、第1反射部材6における反射層61および第2反射部材7が無機粒子を接着剤により結合させた多孔質体として構成される場合には、孔64(70)を満たすべき透明材料としては、多孔質体を構成する無機材料ばかりでなく、接着剤よりも屈折率の小さいものが使用される。
【0082】
また、先の実施の形態では、発光装置に反射部材を適用した例について説明したが、本発明の反射部材は、光に限らず、たとえば熱(赤外線)、X線その他の電磁波を反射させるための目的に使用することもできる。
【0083】
さらに、先に説明した発光装置2は、第1反射部材6および第2反射部材7を備えたものであったが、これらの反射部材6,7のうちの一方は省略してもよい。
【0084】
先の実施の形態では、複数の発光装置がマトリックス状に配列された照明装置について説明したが、複数の発光装置をライン状に配列して照明装置を構成してもよく、また1つの発光装置を照明装置として使用することもできる。さらに、本発明に係る発光装置および反射部材は、表示装置に対して適用することもできる。
【0085】
また、本発明の反射部材は、基板上にシリコンなどの半導体層を形成して成る太陽電池用の基板(特開2001−203373号公報参照)として用いることができる。
【0086】
このような太陽電池の場合、太陽電池の表面から半導体層を透過して反射部材に到達した光が、反射部材のポーラス状の表面にて低損失で拡散反射されることにより、光が半導体層の表面と基板表面との間で反射を繰り返して何度も半導体層を通過し、その度に光が半導体層に吸収されて発電できることから、太陽電池の発電効率が向上する。
【0087】
さらにこの反射部材をセラミックスで形成すると、反射部材とシリコンとの熱膨張係数差を小さくできることから、反射部材上に品質よくシリコンから成る半導体層を形成できる。
【0088】
また、本発明の反射部材は、内面が拡散反射状に形成され、半導体レーザからの光を内部に導入する開口部を有するとともに、半導体レーザの光により励起される活性媒質を含むNd:YAG等の固体素子が内部に配置された、固体素子からレーザ光を取り出す集光器として使用することにより、固体レーザ装置を構成することもできる(特開2004−7012号公報参照)。
【0089】
このような本発明の反射部材を用いた集光器は、半導体レーザからの光を内部で低損失に拡散反射させるとともに、拡散反射された光を集光器の内部で均一に近い光強度で伝搬させる。その結果、固体レーザ装置は、固体素子の発振効率を損なうことなく、さらにビーム品質を損なうことなく、固体素子を励起することができる。
【実施例1】
【0090】
本実施例においては、種々の無機材料からなる無機粒子を用いて作成した反射部材について、気孔率と反射率の関係について検討した。
【0091】
(反射部材の作成)
反射部材においては、まず無機粒子としてアルミナ粒子、ジルコニア粒子、イットリア粒子、チタニア粒子を準備し、それぞれの無機粒子を、カルシア粒子、シリカ粒子およびマグネシア粒子と、重量比で9.2:0.2:0.5:0.1の割合で秤量・混合し、混合物を調製した。
【0092】
次いで、先の混合物に対して、重量比で10%となるようにアクリル樹脂を混合し、トルエンとアルミナボールと共にボールミルに投入し24時間混合してスラリーを調製した。さらに、スラリーをスプレードライで乾燥させて粉体とした。
【0093】
次いで、得られた粉体を1g秤量し、ハンドプレス装置にて圧力1tでプレス、直径20mmのタブレットに成型した。
【0094】
さらに、タブレットを下記表1に示す条件により焼結することにより、本実施例で使用する反射部材を得た。
【0095】
【表1】
【0096】
ここで、気孔率は、幾何学法により測定した全気孔率(前記数式1参照)であり、嵩密度はアルキメデス法により、真密度は気相置換法(ピクノメータ法)により測定した。
【0097】
(反射率の測定)
反射率は、分光測色計(ミノルタ製CM−3700D)により測定した。得られたサンプルにキセノンランプの光を入射してサンプル表面で反射させ、その反射光の強度を測定し入射光と反射光の強度比を反射率とした。なお、測定波長は、400nmまたは600nmとした。
【0098】
反射率の測定結果については、横軸を気孔率とするグラフとして、図5〜図8に示した。なお、図5はアルミナについての測定結果を、図6はジルコニアについての測定結果を、図7はイットリアについての測定結果を、図8はチタニアについての測定結果を、それぞれ示している。
【0099】
図5〜図8から分かるように、今回測定した気孔率の範囲では、気孔率が大きいほど、反射率が大きくなる傾向にある。とくに、気孔率が10〜50%の範囲においては、気孔率が0%(セラミック)に比べて、反射率が著しく大きくなっている。したがって、無機粒子を用いて反射部材を形成する場合には、適度に空隙を形成して多孔質化するのが好ましいと言える。
【実施例2】
【0100】
本実施例では、アルミナ粒子を用いて反射部材を形成した場合について、気孔率と反射率の関係をより詳細に検討した。また、本実施例においては、比較例として、ラブスフェア社製の標準反射板(商品名「スペクトラロン」)についても反射率を測定した。
【0101】
なお、反射部材の作成方法、気孔率の測定方法および反射率の測定方法は、基本的に実施例1と同様である。また、気孔率は、焼結条件を変えることにより調整した。焼結条件、気孔率および反射率の測定結果については下記表2に示した。気孔率と反射率の測定結果についてはさらに、横軸を気孔率、縦軸を反射率として、測定波長が400nmの場合については図9Aに、測定波長が600nmの場合については図9Bにそれぞれ示した。
【0102】
【表2】
【0103】
表2、図9Aおよび図9Bから分かるように、アルミナ粒子を使用した反射部材は、測定波長に拘わらず、気孔率が10〜45%の範囲において高い反射率を示している。とくに、気孔率が15〜43%の範囲では、比較例の標準反射板よりも高い反射率を示している。したがって、アルミナを用いて反射部材を形成する場合には、気孔率を15〜43%の範囲に設定するのが好ましいといえる。
【0104】
なお、本実施例では、アルミナ粒子を用いた場合について検討したが、実施例1の結果をも鑑みれば、他の無機粒子を用いる場合にも、アルミナ粒子を用いた場合と同様な気孔率の範囲において、高い反射率を有する反射部材が提供できるものと考えられる。
【実施例3】
【0105】
本実施例では、実施例2で作成した気孔率が37%である反射部材(本発明)について、表面性状および断面性状を観察した。表面性状および断面性状は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて行ない、そのときに撮影した写真を図10Aおよび図10Bに示した。図10Aは本発明の反射部材(反射層)の表面性状を、図10Bは本発明の反射部材(反射層)の断面性状をそれぞれ撮影したものである。
【0106】
なお、参考のために、比較例である気孔率が0%のアルミナセラミックスの表面および断面性状を撮影したものを、図11Aおよび図11Bに示した。図11Aは比較例の標準反射板の表面性状を、図11Bは比較例の標準反射板の断面性状をそれぞれ撮影したものである。
【0107】
図10Aおよび図10Bから分かるように、本発明の反射部材は、アルミナ粒子どうしが一部分において一体化して多孔質化されている。すなわち、本発明では、反射部材の内部における反射面積が大きく確保されているために、光入射角度に対し全反射する角度で存在する界面が高確率で存在し、その界面において効果的に反射して、反射部材の内部に進入した光が効率的に出射されるものと考えられる。
【実施例4】
【0108】
本実施例では、本発明の発光装置を以下のようにして評価した。先ず、図3に示すように、タングステンメタライズからなる配線導体30を有するアルミナ質焼結体からなる基体3を形成した(主面には図3のような第2反射部材7は形成していない)。
【0109】
次に、種々の材料により枠体60を基体3の上面に接合した。ここで本発明のサンプルにおいては、枠体60全体が、酸化アルミニウム結晶を加熱して気孔率36.6%の多孔質体としたものから成り、枠体60が反射部材としての機能を有する。また、比較用のサンプルとして、枠体全体をアルミニウムで構成したものと、枠体全体をアルミナ質焼結体(気孔率0%)で構成したものとを用意した。
【0110】
そして、ピーク波長が異なる種々のLED素子を基体3に実装し、枠体の内側をシリコーン樹脂で充填することにより、評価用の発光装置を作製した。
【0111】
これらの各種LED素子のピーク波長に対する枠体の反射率を表3に示す。そして、これらの各種LED素子を用いた発光装置の光強度を図12および図13に示す。
【0112】
【表3】
【0113】
表3、図12および図13に示す結果より、本発明の発光装置は、反射部材の反射率を
95%以上とすることにより、光出力の高い優れたものになることがわかった。
【符号の説明】
【0114】
1 照明装置
2 発光装置
4 (発光装置の)発光素子
6 第1反射部材
61 (第1反射部材の)反射層
64 (第1反射部材の)孔
7 第2反射部材
70 (第2反射部材の)孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波発生要素からの電磁波を所望の方向に効率よく反射させるための反射部材、それを用いた発光装置および照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、反射部材としては、図14に示したものがある。同図に示した反射部材90は、たとえば照明器具用の反射板として使用されるものであり、金属基材91の表面に反射塗膜92を形成したものである。反射塗膜92は、透明樹脂母材93にエアロシリカゲルなどの粒子94を分散させたものであり、透明樹脂母材93と粒子94の屈折率差に起因する全反射を利用して、反射率を向上させるように構成されている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
反射部材90は、屈折率差に起因する全反射を利用するものであるため、透明樹脂母材93に使用する樹脂材料の光吸収がない波長帯域では非常に高い反射率を示す。そのため、一般照明用の蛍光灯具などの光利用率を向上させることができる。その一方で、反射部材90は、透明樹脂母材93に樹脂を用いるために、透明樹脂母材93の樹脂が吸収するような波長帯域を含む光を照射させた場合、透明樹脂母材93が劣化し着色するという問題を有している。
【0004】
一方、反射部材としては、樹脂粉末を圧縮成型した反射材料(スペクトラロン)を利用したものもある(たとえば特許文献2参照)。このような反射材料は、加工性に優れており、標準反射板あるいは積分球に利用されている。この反射材料もまた、樹脂を使用しているため、樹脂が吸収するような波長帯域を含む光を照射させた場合に劣化し着色するという問題を有している。
【0005】
このように、反射に寄与する部分の主成分として樹脂を使用する場合、使用されている樹脂が吸収するような波長帯域の光を照射すると、樹脂が劣化して着色する。その結果、樹脂を用いた反射部材では、樹脂の劣化に起因して反射率が低下するという問題がある。
【0006】
また、表示装置や照明装置においては、点灯回路などにおいても熱が発生するため、その熱によって樹脂の劣化・着色が促進され、反射率の低下を助長するという問題点があった。したがって、表示装置や照明装置などのように、光源から光出射頻度が高い装置においては、反射部材の材料として樹脂を使用するのは好ましくない。とくに、光源として、波長の短い光(たとえば、紫外光、近紫外光、または青色光)を出射するLEDやLDを使用する装置においては、光源から出射される光のエネルギが大きいために、樹脂における光吸収に起因した反射部材の劣化、すなわち反射率の低下が生じやすい。
【0007】
その一方で、無機粒子を焼結させたセラミックスを利用した反射部材も提案されている(たとえば特許文献3)。無機物は、一般的に有機物より結合エネルギが大きいため、耐光性や耐熱性に優れている。そのため、セラミックスを利用した反射部材は、有機物である樹脂を使用する場合に比べて、光吸収に起因する劣化が少ないという利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−29745号公報
【特許文献2】米国特許第4912720号明細書
【特許文献3】特開2004−207678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図15に示したように、セラミックス製の反射部材95は、反射に寄与するセラミックス部分96が、無機粒子を焼結させることによって、無機粒子を相互に一体化させた形態を有するため、空隙97がほとんどなく、気孔率が0〜1%程度である。そのため、反射部材95では、入射光の多くは表面98において効率良く反射される一方で、入射光の一部が反射部材95の内部に進入する。このような内部への進入光は、セラミックス部分96の内部に閉じ込められ、最終的にはセラミックス部分96で吸収される。その結果、反射部材95では、内部に進入した光が反射できないため、光エネルギが減衰して光損失となり、反射効率が比較的に低いという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、光などの波成分を効率よく反射させることができ、かつ反射特性の劣化が抑制された反射部材、それを用いた発光装置および照明装置を提供することを課題としている。
【0011】
本発明の第1の側面においては、無機材料により多孔質に形成された反射層を有している、反射部材が提供される。
【0012】
前記反射層は、たとえば抗折強度が1〜300MPaとされる。前記反射層は、たとえば仮焼成などにより、複数の無機粒子を互いに一部分で一体化させ、前記複数の無機粒子の間に空隙を設けることにより多孔質に形成される。前記空隙は、たとえば気体により、または前記無機粒子よりも屈折率の低い透明材料により満たされている。
【0013】
本発明の反射部材は、前記反射層のみからなる構成であってもよいが、基材上に前記反射層を形成した構成であってもよい。
【0014】
前記無機粒子としては、アルミナ、イットリア、ジルコニアおよびチタニアからなる選択される少なくとも一種を含むものを使用するのが好ましい。
【0015】
本発明の第2の側面においては、無機材料により多孔質に形成された反射層を有する反射部材の製造方法であって、複数の無機粒子を含む無機粒子層または無機成型体を形成する工程と、仮焼成することにより、前記無機粒子層または無機粒子成型体を多孔質化する工程と、を含んでいる、反射部材の製造方法が提供される。
【0016】
本発明の第3の側面においては、無機材料により多孔質に形成された反射層を有する反射部材の製造方法であって、複数の無機粒子およびバインダを含む被着材料を、基材の表面に吹き付けて前記基材の表面に多孔質層を形成する被着工程を含んでいる、反射部材の製造方法が提供される。
【0017】
この製造方法ではさらに、加熱により、前記多孔質層における複数の無機粒子を一体化させるとともに、前記バインダを除去する加熱工程をさらに含んでいてもよい。
【0018】
本発明の第4の側面においては、1または複数の発光要素と、前記発光要素から出射された光を反射させるための反射部材と、を備えた発光装置であって、前記反射部材として、本発明の第1の側面に係るものを使用する、発光装置が提供される。
【0019】
本発明の発光装置においては、反射部材として、発光要素のピーク波長に対する反射率が95%以上のものが使用される。
【0020】
前記発光要素としては、たとえばLEDチップまたはLDチップが使用される。前記発光要素としては、紫外光、近紫外光、または青色光を出射するように構成されたものを使用することもできる。
【0021】
本発明の第5の側面においては、1または複数の発光装置を備えた照明装置であって、前記発光装置として、本発明の第4の側面に係るものを使用する、照明装置が提供される。
【0022】
本発明に係る照明装置としては、例えば、室内や室外で用いられる、一般照明用器具、シャンデリア用照明器具、住宅用照明器具、オフィス用照明器具、店装,展示用照明器具、街路用照明器具、誘導灯器具及び信号装置、舞台及びスタジオ用の照明器具、広告灯、照明用ポール、水中照明用ライト、ストロボ用ライト、スポットライト、電柱等に埋め込む防犯用照明、非常用照明器具、懐中電灯、電光掲示板等や、調光器、自動点滅器、ディスプレイ等のバックライト、動画装置、装飾品、照光式スイッチ、光センサ、医療用ライト、車載ライト等が挙げられる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の反射部材は、たとえば複数の無機粒子を互いに一部分で一体化させて無機粒子間に空隙を設けて多孔質に形成された反射層を有していることから、光などの波成分を反射部材の表面で反射させるばかりでなく、反射部材(反射層)の内部に進入した波成分を、孔の内面と空隙との界面において全反射させることが可能となる。すなわち、空気など気体や無機粒子よりも屈折率の低い透明材料を空隙に充填させることにより、孔の内面と空隙の充填物との間の屈折率差によって、それらの界面(反射面)において入射した波成分を全反射させることができる。また、反射層を適度な気孔率の多孔質に形成することによって、反射層の内部に適度な空隙(孔)が形成され、反射部材の内部における反射面を多く確保することが可能となる。これにより、本発明の反射部材では、反射部材の内部に進入した波成分を効率よく反射させることができるようになる。その結果、反射部材の内部に光などの波成分が閉じ込められるのを有効に防止し、極めて高い反射効率を達成することができる。
【0024】
また、反射層を無機物によって形成した反射部材では、有機物を主成分とする反射層を有する反射部材に比べて、耐光性および耐熱性が高くなる。そのため、本発明の反射部材では、材料劣化による反射効率の低下を有効に抑制することができる。
【0025】
さらに、無機粒子を互いに一体化することで反射層を形成すれば、無機粒子が剥がれ落ちることのない十分な強度を有する反射部材(反射層)を得ることができる。
【0026】
また、反射層における気孔率を15〜43%とすれば、空隙(孔)が不当に多く存在することもないために反射層(反射部材)の強度を十分に確保できるとともに、孔の内面と空隙と界面(反射面)の面積が不当に小さくなってしまうこともない。その結果、本発明の反射部材は、強度および反射効率の高いものとなる。
【0027】
そして、本発明の製造方法では、適度な空隙(孔)を有する反射率の高い反射層(反射部材)を形成でき、また無機粒子が一部分において相互に一体化した十分な強度を有する反射層(反射部材)を形成することができる。
【0028】
本発明の発光装置および照明装置は、先に説明した反射部材を備えていることから、発光素子からの出射光をきわめて高い効率で所望の方向に反射させることができる。そのため、本発明の発光装置および照明装置では、出射光強度を非常に高くすることができるとともに、長期にわたり安定した出射光強度を維持することが可能となる。
【0029】
また、発光装置が無機材料により形成されて耐光性の高いものとされていることから、発光要素として紫外光、近紫外光、または青色光といった高エネルギの光を出射するものLEDチップやLDチップを使用する場合であっても、反射部材が劣化しにくく、長期にわたって安定した出力を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る照明装置の一例を示す全体斜視図である。
【図2】図1に示した照明装置における発光装置の平面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図1および図2に示した発光装置の要部(反射層)を拡大して示した断面図である。
【図5】実施例1において、無機粒子としてアルミナを使用したときの結果を示すグラフである。
【図6】実施例1において、無機粒子としてイットリアを使用したときの気孔率と反射率の測定結果を示すグラフである。
【図7】実施例1において、無機粒子としてジルコニアを使用したときの気孔率と反射率の測定結果を示すグラフである。
【図8】実施例1において、無機粒子としてチタニアを使用したときの気孔率と反射率の測定結果を示すグラフである。
【図9】実施例2における気孔率と反射率の測定を示すグラフであり、図9Aは測定波長が400nm、図9Bは測定波長が600nmのときの結果を示すものである。
【図10】実施例3における本発明の反射部材のSEM写真を示すものであり、図10Aは表面性状、図10Bは断面性状を撮影したものである。
【図11】実施例3における比較例の反射部材のSEM写真を示すものであり、図11Aは表面性状、図11Bは断面性状を撮影したものである。
【図12】実施例4の結果を示すグラフである。
【図13】実施例4の結果を示すグラフである。
【図14】従来の反射部材の一例を示す断面図である。
【図15】従来の反射部材の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下においては、本発明に係る照明装置、発光装置および反射部材について、図1ないし図4を参照して説明する。
【0032】
図1に示した照明装置1は、基板10上に複数の発光装置2がマトリックス状に配置されたものであり、複数の発光装置2を同時に点灯させることにより、面状に光を照射可能に構成されている。
【0033】
基板10には、配線11(図3参照)がパターン形成されており、この配線11が後述する発光装置2の下面導体部35(図3参照)に導通接続されている。これにより、各発光装置2は、外部からの電力供給が可能とされており、点灯状態と消灯状態とが選択可能とされている。
【0034】
図2および図3に示したように、発光装置2は、基体3、発光素子4、透光部50、波長変換層51、第1および第2反射部材6,7を備えている。
【0035】
基体3は、発光素子4および後述する第1反射部材6の枠体60を支持するためのものであり、絶縁体として形成されている。この基体3は、たとえば酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、ガラスセラミックス等のセラミックスにより形成されている。
【0036】
この基体3には、基板10の配線11および後述する発光素子4の電極41に導通接続された、配線導体30が形成されている。この配線導体30は、発光素子4に駆動するための電力を供給するものであり、互いに導通した上面導体部31、ビア導体32、層間導体部33、ビア導体34、および下面導体部35を有している。
【0037】
このような配線導体30が形成された基体3は、たとえば基体3となる複数のグリーンシートに、配線導体30となるW、Mo、Mn、Cu等の金属ペーストを印刷し、基体3を焼成すると同時に金属ペーストをも焼成することにより形成することができる。
【0038】
もちろん、基体3は、エポキシ樹脂等の樹脂によって形成してもよく、配線導体30は、めっき法、薄膜形成法などの周知の方法で基体3の表面あるいは内部に形成してもよい。配線導体30はまた、露出する表面(上面導体部31および下面導体部35の表面)に厚さ0.5〜9μmのNi層や厚さ0.5〜5μmのAu層等の耐食性に優れる金属層を被着させておくのが好ましい。そうすれば、配線導体30の表面が酸化により腐食するのを有効に防止できるため、上面導体部31と後述する発光素子4の電極41との間、および下面導体部35と基板10の配線11との間を半田等の導電性接合材80,81を用いて接合する場合に、それらの間の接合を強固なものとすることができる。
【0039】
発光素子4は、目的とする波長範囲の光を出射するものであり、フェイスダウン方式で基体3に実装されている。この発光素子4は、主面40に回路素子(図示略)が造り込まれたものであり、この回路素子(図示略)に導通する電極41を有している。電極41は、配線導体30の上面導体部31に導電性接合材80を介して導通接続されている。
【0040】
導電性接合材80としては、たとえばロウ材、半田、導体バンプ、導電性接着材を使用することができる。ロウ材および半田としては、スズ系のもの、たとえばAu−Sn、Sn−Ag、Sn−Ag−CuあるいはSn−Pbを使用することができ、金属バンプとしては、たとえばAuあるいはAgにより形成されたものを使用することができ、導電性接着材としては、たとえばエポキシなどの樹脂成分中に導体ボールを分散させたものを使用することができる。また、発光素子4は、電極41や光出射領域の形成位置によっては、電極41と配線導体30とをワイヤボンディングにより電気的導通を図ってもよい。
【0041】
発光素子4は、たとえば紫外線域から赤外線域までの間のいずれかにピーク波長を有する光、あるいは先の波長域の特定範囲においてブロード特性を有する光を出射するものである。発光素子4は、発光装置2において出射すべき光の色(波長)に応じてその種類(出射光の波長特性)が選択される。たとえば発光装置2において、波長変換層51を使用して白色光を視感性よく出射させるためには、発光素子4としては、300〜500nmの近紫外系から青色系の短波長の光、とくに紫外光または近紫外光を発する素子を使用するのが好ましい。これは、以下の理由によるものである。
【0042】
すなわち、発光素子4として可視光を出射するものを使用する場合には、その出射光の一部を蛍光体(波長変換層51)によって補色関係にある色に変換し、出射光と蛍光体の光とを混色して白色とされるが、この場合、作動による温度上昇などにより発光素子4からの出射光の波長が変化しやすく、出射光と蛍光体の光との混色のバランスがくずれ、安定した白色光を得ることが困難となる。また、光源からの光は中心部から外側ほど強度が弱くなっており、そのような強度ばらつきに対して蛍光体で色の調整をするのは不可能である。
【0043】
これに対し、紫外光や近紫外光は、エネルギが大きいために、出射光のほとんどすべてを蛍光体で波長変換できるため、蛍光体から発せられる光の混色のバランスのみ考慮すればよく、出射光と蛍光体の光とのバランスを考慮する必要がなくなる。したがって、発光装置2において白色光を視感性よく出射させるためには、発光素子4としては、紫外光や近紫外光を出射するものを使用するのが好ましい。
【0044】
このような紫外光や近紫外光を出射する発光素子4としては、たとえばサファイア基板上にGa−N、Al−Ga−N、In−GaN等から構成されるバッファ層、N型層、発光層、P型層を順次積層した窒化ガリウム系化合物半導体やシリコンカーバイト系化合物半導体などのLEDやLDを用いるのが好ましい。
【0045】
透光部50は、発光素子4が外気中の水分などによって曝露されるのを抑制するためのものであり、発光素子4を封止するようにして、後述する第1反射部材6における枠体60の内部に設けられている。この透光部50はさらに、発光素子4とその周囲との屈折率の差を小さくし、発光素子4の内部に光が閉じ込められるのを抑制して発光素子4の発光強度を高める役割を果たしている。
【0046】
透光部50は、たとえば発光素子4との屈折率差が小さく、発光素子4からの出射光に対して透過率の高い材料により形成されている。これらの条件を満たす材料としては、たとえばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂等の透明樹脂、低融点ガラス、ゾル−ゲルガラス等の透明ガラス等が挙げられる。
【0047】
このような透光部50は、たとえば未硬化状態あるいは溶融状態の材料を、ディスペンサー等を用いて枠体60の内部に充填した後に、材料を固化させることにより形成することができる。
【0048】
波長変換層51は、発光素子4から出射される光の波長(色)を変換するためのものであり、透光部50を覆うように、発光素子4の直上に位置させられている。この波長変換層51は、変換すべき波長に応じた蛍光体を含有させたものである。
【0049】
蛍光体としては、たとえばアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体、希土類元素から選択された少なくとも一種の元素で付活された、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体が挙げられる。
【0050】
このような波長変換層51は、発光素子4における光出射面を覆うように設けてもよく、また発光素子4の光を波長変換せずにそのまま利用する場合には省略される。
【0051】
第1および第2反射部材6,7は、発光素子4から出射された光を反射させてから発光装置2の外部に出射するためのものであり、発光素子4を囲むように形成されている。
【0052】
第1反射部材6は、枠体60および反射層61を有するものであり、接合材を介して基体3に接合されている。接合材としては、半田やロウ材、あるいは樹脂接着剤を使用することができる。半田およびロウ材としては、スズ系のもの、たとえばAg−Cu、Pb−Sn、Au−Sn、Au−Si、Sn−Ag−Cuを使用することができ、樹脂接着材としては、たとえばシリコーン系やエポキシ系のものを使用することができる。ただし、基体3と枠体60との接合に高信頼性を必要とされる場合には、接合材として半田や金属ロウ材を用いるのが好ましい。
【0053】
枠体60は、反射層61を支持するためのものであり、円形断面を有する内部空間62を有している。すなわち、枠体60は、内部空間62を規定する内面63に反射層61が密着形成されている。内部空間62には、発光素子4が収容された状態で透光部50が設けられる。
【0054】
この枠体60は、たとえばアルミニウム等の金属、セラミックス、あるいは樹脂により形成されている。だだし、枠体60は、基体3との間に作用する熱応力の影響を抑制するために、基体3と熱膨張係数の差の小さい材料により形成するのが好ましい。たとえば、基体3がセラミックにより形成されている場合には、枠体60もセラミックにより形成するのが好ましい。この場合には、グリーンシート法により、基体3と枠体60とを同時に形成することもできる。
【0055】
反射層61は、発光素子4から出射された光を、図の上方に向けて発光装置2から出射させるためのものである。この反射層61は、枠体60の内面63に密着して設けられたものであり、発光素子4の側面42を囲っている。
【0056】
一方、第2反射部材7は、基体3の上面36に密着して設けられたものであり、発光素子4の直下において平面方向に広がっている。この第2反射部材7は、全体が反射層として機能するものである。
【0057】
反射層61および第2反射部材7は、図4に示したように無機材料により多孔質に形成されている。より具体的には、反射層61および第2反射部材7は、複数の無機粒子を互いに一部分で一体化させることで多数の孔64(70)を有する多孔質に形成されている。孔64(70)は、気体(たとえば空気)により満たされている。
【0058】
このように多孔質化された反射層61および第2反射部材7において、屈折率の低い空気から屈折率の高い無機粒子に入射され光は、表面65(71)を透過して、反射層61および第2反射部材7の内部に進入する。この透過光は、無機粒子の表面67(73)と、それよりも屈折率の低い孔64(70)内の気体との界面で、一部は屈折率差によって全反射され、他の一部は透過される。すなわち、無機粒子の表面67(73)と孔64(70)内の気体との界面が光入射角度に対して全反射する角度で存在する場合、入射した光は100%近く反射される。一方、無機粒子の表面67(73)と孔64(70)内の気体との界面が光入射角度に対して全反射する角度で存在しない場合には入射光は透過する。この透過した光の光路の先には、上述と同様に無機粒子の表面67(73)と孔64(70)内の気体との界面が幾つも存在し、それらの界面の中には、光入射角度に対して全反射する角度で存在する界面が高確率で存在する。その結果、反射層61および第2反射部材7の内部に進入した透過光は、いずれかの界面において100%近く反射される。この様な現象が連続的に生じることによって、反射層61および第2反射部材7の内部に進入した透過光は、効果的に反射され、反射層61および第2反射部材7の外部に出射される。すなわち、反射層61および第2反射部材7の表面65(71)から内部に光が伝搬する過程において、反射層61および第2反射部材7の表面からふたたび空気に出射される光は100%に近づき、反射層61および第2反射部材7を透過する光は0%に近づく。)
【0059】
上述の作用から理解できるように、入射光を効率良く反射させる観点から、無機粒子としては、屈折率が高くて全反射臨界角を大きく確保できるものを使用するのが好ましい。また、反射層61および第2反射部材7における光減衰を少なくする観点からは、反射すべき光に対する吸収が少ない(たとえば光吸収率が5%以下の)材料を使用するのが好ましい。また、第1反射部材6の反射層61、第2反射部材7を層状に形成する場合には、その厚みは0.03mm以上であるのがよい。厚みが0.03mm未満では、光が透過する確率が高くなるからである。
【0060】
これらの反射層61および第2反射部材7は、反射層61および第2反射部材7の内部に進入した透過光を、高確率で反射・出射させるために、気孔率が15〜43%となるように形成するのが好ましい。これは、気孔率が不当に小さい場合には、孔64(70)が少なくなるために、光反射に寄与する反射面の数が少なくなって(内表面積が小さくなって)、反射率が低下するからであり、気孔率が不当に大きい場合には、反射層61および第2反射部材7の強度が低下するからである。
【0061】
ここで、気孔率は、幾何学法により測定した全気孔率を示しており、下記数式1により定義されるものである。
【0062】
【数1】
【0063】
数式1における嵩密度はアルキメデス法により、真密度は気相置換法(ピクノメータ法)により測定することができる。また、反射層が薄い場合、反射層の断面を顕微鏡により観察し、その断面における気孔の面積率(気孔の面積の総和を総面積で割ることにより求められる)を求め、この気孔の面積率を3/2乗することにより気孔率を求めることができる。
【0064】
このような反射層61および第2反射部材7は、枠体60の内面63あるいは基体3の上面36に複数の無機粒子を含む無機粒子層を形成した後に、この無機粒子層を仮焼成することにより形成することができる。
【0065】
なお、仮焼成とは、無機粒子を間に空隙がほとんど存在しない状態(気孔率が0.001〜1%程度)の焼結体(セラミック)とは異なり、適度な気孔率を有する多孔質体を形成するための不完全な焼成を意味している。
【0066】
無機粒子層は、たとえば無機粒子とバインダ樹脂とを混合した材料をスプレーコートすることにより形成することができる。
【0067】
バインダ樹脂としては、たとえばアクリル樹脂、パラフィン樹脂、あるいはポリエチレン樹脂を使用することができる。
【0068】
一方、無機粒子としては、上述のように、反射すべき光に対する吸収が少なく(たとえば光吸収率が5%以下)、屈折率が高くて全反射臨界角を大きく確保できるものを使用するのが好ましく、典型的には、アルミナ、イットリア、ジルコニア、チタニア、ダイヤモンド、酸化カルシウム、および硫酸バリウムを使用することができる。好ましくは、無機粒子は非金属無機粒子であるのがよい。金属であれば無機粒子中を光が透過しにくいので、光が孔64(70)の中に閉じ込められて損失が大きくなりやすい。
【0069】
これらの無機材料のうち、屈折率の観点からは、全反射臨界角を大きく確保できるもの、たとえばチタニア(ルチル;n=2.8)、ジルコニア(n=2.1)あるいはダイヤモンド(n=2.4)が特に好ましい。
【0070】
また、無機材料は、光吸収(透過率)の観点からは反射すべき光の波長に応じて選択することができる。たとえばチタニアは屈折率の観点からは好ましいが、光の波長350nm前後の近紫外領域で光を吸収する特性を有する。そのため、反射層61および第2反射部材7を波長が350nm前後の近紫外光を反射するように構成するためには、近紫外光を吸収しにくいアルミナを使用するのが好ましい。
【0071】
無機粒子としては、粒径が入射する光の波長の1/4より大きく、かつできるだけ小さいものを使用するのが好ましい。これは、無機粒子の粒径が光の波長の1/4より小さい場合には、光に対する見かけ上の屈折率差が小さくなり、光が反射しにくくなるためであり、無機粒子の粒径が大きすぎる場合には、孔64(70)における内面積、すなわち反射面積が少なくなるからである。さらに、入射した光を全反射する確率を上げる観点からは、無機粒子としては、球形状よりも板形状や柱形状などの不定形なものを使用するのが好ましい。
【0072】
無機粒子層の仮焼成は、使用する無機材料、達成すべき気孔率および抗折強度によって異なるが、通常、1000〜1400℃において1〜5時間行なわれる。仮焼成においては、焼結温度を下げるための助剤を添加してもよい。この場合に使用する助剤としては、たとえばカルシアやマグネシアが挙げられ、その添加量は1〜10wt%とされる。
【0073】
このような仮焼成を行なうことにより、無機粒子が相互に一体化され、適度な気孔率および抗折強度、たとえば気孔率が15〜43%、抗折強度が1〜300MPaである多孔質体を得ることができる。そして、無機粒子層にバインダ樹脂を含ませておいた場合には、バインダ樹脂は、仮焼成の加熱によって、蒸散あるいは燃焼させることで除去される。
【0074】
反射層61および第2反射部材7は、無機粒子が接着剤により相互に結合した多孔質体として形成することもできる。このような多孔質体は、無機粒子、接着剤および溶剤を含む材料を、枠体60の内面63および基体3の上面36に塗布した後に、溶剤を揮発させることにより形成することもできる。この場合に使用する接着剤は、多孔質体に残存するため、接着剤における光吸収に起因した反射率の低下を抑制するために、接着剤としては透光性を有するものを使用するのが好ましい。このような接着剤としては、たとえばエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂、メタクリル樹脂およびポリカーボネート樹脂などの樹脂系接着剤、あるいは低融点ガラス、ゾル−ゲルガラスおよびSi−Mg−Al−O系などのガラス系接着剤を使用することができる。
【0075】
また、反射層61および第2反射部材7は、枠体60の内面63や基体3の上面36に造り込むことなく、別途形成しておいた多孔質体を、枠体60の内面63や基体3の上面36に貼り付けることにより設けることもできる。第1反射部材6はまた、無機材料を用いて全体を多孔質に形成してもよい。その場合には、多孔質体のみにより第1反射部材6が構成され、枠体60は省略されるが、光が照射される表面は良好な反射面として作用すると同時に、多孔質体たる第1反射部材6が断熱材としても作用し発光装置の外表面における高温化を有効に防止できる。このような多孔質体は、たとえば次のようにして形成することができる。
【0076】
まず、無機粒子とバインダ樹脂との混合物を目的とする形状の成型体を得る。無機粒子およびバインダ樹脂は、先に説明したのと同様なものを使用することができる。一方、成型体は、金型を用いたプレスにより行なうことができる。また、成型体は、その形状を膜状とする場合には、先の混合物に、α−テルピネオールを添加してさらにトルエンなどの溶剤を加えてスラリーとし、このスラリーを、ドクターブレードを用いてテープ上に成型した後に、溶剤を揮発させることによって形成してもよい。
【0077】
また、基体3の全体を多孔質の反射部材で構成してもよい。その場合には、光が照射される表面は良好な反射面として作用すると同時に、枠体60や基体3が断熱材としても作用し発光装置の外表面における高温化を有効に防止できる。
【0078】
次いで、成型体の仮焼成を行なう。仮焼成の条件は、先に説明したのと同様である。この仮焼成により、バインダ樹脂が蒸散あるいは燃焼により除去され、適度な気孔率を有する多孔質体が形成される。
【0079】
発光装置2では、第1反射部材6(反射層61)および第2反射部材7が多孔質化されている。そのため、発光素子4において出射された光は、第1および第2反射部材6(7)の内部に進入し、無機粒子と孔64(70)内の気体との界面において全反射させられる。すなわち、無機粒子よりも屈折率の低い空気などの気体を孔64(70)に存在させることにより、無機粒子と孔64(70)内の気体との間の屈折率差によって、それらの界面(反射面)において、入射した一部の光を全反射させることができる。また、第1反射部材6の反射層61および第2反射部材7を多孔質化することで、それらの内部に多くの孔64(70)を存在させることができる。その結果、第1反射部材6(反射層61)および第2反射部材7の内部に、内部への進入光を有効に反射させることができる界面(反射面)を多く存在させ、第1および第2反射部材6,7の内部に進入した光を効率よく反射させることができるようになる。すなわち、第1および第2反射部材6(7)の表面65(71)から内部に光が伝搬する過程において、第1および第2反射部材6(7)の表面65(71)からふたたび空気に出射される光は100%に近づき、第1および第2反射部材6(7)を透過する光は0%に近づく。)
【0080】
また、第1反射部材6(反射層61)および第2反射部材7を無機物によって形成することで、有機物を主成分とする反射層を有する反射部材に比べて、耐光性および耐熱性を向上させることができるため、材料劣化による反射効率の低下を有効に抑制することができる。これにより、発光装置2においては、長期にわたって安定反射効率を維持でき、安定した光出力を維持することが可能となる。このような効果は、発光要素として紫外光、近紫外光、または青色光といった高エネルギの光を出射するLEDチップやLDチップを使用する場合であっても享受することができる。すなわち、本発明の反射部材6,7を採用することにより、発光素子4として高エネルギの光を出射するものを採用した発光装置2のおいても、反射部材6,7の劣化に起因する反射効率の低下ないし出力の低下を有効に抑制することが可能となる。
【0081】
本発明は、上述した実施の形態には限定されず、種々に変更可能である。たとえば第1反射部材6における反射層61および第2反射部材7は、これらを構成する無機材料よりも屈折率の小さい透明材料により、孔64,70を満たした構成としてよい。ただし、第1反射部材6における反射層61および第2反射部材7が無機粒子を接着剤により結合させた多孔質体として構成される場合には、孔64(70)を満たすべき透明材料としては、多孔質体を構成する無機材料ばかりでなく、接着剤よりも屈折率の小さいものが使用される。
【0082】
また、先の実施の形態では、発光装置に反射部材を適用した例について説明したが、本発明の反射部材は、光に限らず、たとえば熱(赤外線)、X線その他の電磁波を反射させるための目的に使用することもできる。
【0083】
さらに、先に説明した発光装置2は、第1反射部材6および第2反射部材7を備えたものであったが、これらの反射部材6,7のうちの一方は省略してもよい。
【0084】
先の実施の形態では、複数の発光装置がマトリックス状に配列された照明装置について説明したが、複数の発光装置をライン状に配列して照明装置を構成してもよく、また1つの発光装置を照明装置として使用することもできる。さらに、本発明に係る発光装置および反射部材は、表示装置に対して適用することもできる。
【0085】
また、本発明の反射部材は、基板上にシリコンなどの半導体層を形成して成る太陽電池用の基板(特開2001−203373号公報参照)として用いることができる。
【0086】
このような太陽電池の場合、太陽電池の表面から半導体層を透過して反射部材に到達した光が、反射部材のポーラス状の表面にて低損失で拡散反射されることにより、光が半導体層の表面と基板表面との間で反射を繰り返して何度も半導体層を通過し、その度に光が半導体層に吸収されて発電できることから、太陽電池の発電効率が向上する。
【0087】
さらにこの反射部材をセラミックスで形成すると、反射部材とシリコンとの熱膨張係数差を小さくできることから、反射部材上に品質よくシリコンから成る半導体層を形成できる。
【0088】
また、本発明の反射部材は、内面が拡散反射状に形成され、半導体レーザからの光を内部に導入する開口部を有するとともに、半導体レーザの光により励起される活性媒質を含むNd:YAG等の固体素子が内部に配置された、固体素子からレーザ光を取り出す集光器として使用することにより、固体レーザ装置を構成することもできる(特開2004−7012号公報参照)。
【0089】
このような本発明の反射部材を用いた集光器は、半導体レーザからの光を内部で低損失に拡散反射させるとともに、拡散反射された光を集光器の内部で均一に近い光強度で伝搬させる。その結果、固体レーザ装置は、固体素子の発振効率を損なうことなく、さらにビーム品質を損なうことなく、固体素子を励起することができる。
【実施例1】
【0090】
本実施例においては、種々の無機材料からなる無機粒子を用いて作成した反射部材について、気孔率と反射率の関係について検討した。
【0091】
(反射部材の作成)
反射部材においては、まず無機粒子としてアルミナ粒子、ジルコニア粒子、イットリア粒子、チタニア粒子を準備し、それぞれの無機粒子を、カルシア粒子、シリカ粒子およびマグネシア粒子と、重量比で9.2:0.2:0.5:0.1の割合で秤量・混合し、混合物を調製した。
【0092】
次いで、先の混合物に対して、重量比で10%となるようにアクリル樹脂を混合し、トルエンとアルミナボールと共にボールミルに投入し24時間混合してスラリーを調製した。さらに、スラリーをスプレードライで乾燥させて粉体とした。
【0093】
次いで、得られた粉体を1g秤量し、ハンドプレス装置にて圧力1tでプレス、直径20mmのタブレットに成型した。
【0094】
さらに、タブレットを下記表1に示す条件により焼結することにより、本実施例で使用する反射部材を得た。
【0095】
【表1】
【0096】
ここで、気孔率は、幾何学法により測定した全気孔率(前記数式1参照)であり、嵩密度はアルキメデス法により、真密度は気相置換法(ピクノメータ法)により測定した。
【0097】
(反射率の測定)
反射率は、分光測色計(ミノルタ製CM−3700D)により測定した。得られたサンプルにキセノンランプの光を入射してサンプル表面で反射させ、その反射光の強度を測定し入射光と反射光の強度比を反射率とした。なお、測定波長は、400nmまたは600nmとした。
【0098】
反射率の測定結果については、横軸を気孔率とするグラフとして、図5〜図8に示した。なお、図5はアルミナについての測定結果を、図6はジルコニアについての測定結果を、図7はイットリアについての測定結果を、図8はチタニアについての測定結果を、それぞれ示している。
【0099】
図5〜図8から分かるように、今回測定した気孔率の範囲では、気孔率が大きいほど、反射率が大きくなる傾向にある。とくに、気孔率が10〜50%の範囲においては、気孔率が0%(セラミック)に比べて、反射率が著しく大きくなっている。したがって、無機粒子を用いて反射部材を形成する場合には、適度に空隙を形成して多孔質化するのが好ましいと言える。
【実施例2】
【0100】
本実施例では、アルミナ粒子を用いて反射部材を形成した場合について、気孔率と反射率の関係をより詳細に検討した。また、本実施例においては、比較例として、ラブスフェア社製の標準反射板(商品名「スペクトラロン」)についても反射率を測定した。
【0101】
なお、反射部材の作成方法、気孔率の測定方法および反射率の測定方法は、基本的に実施例1と同様である。また、気孔率は、焼結条件を変えることにより調整した。焼結条件、気孔率および反射率の測定結果については下記表2に示した。気孔率と反射率の測定結果についてはさらに、横軸を気孔率、縦軸を反射率として、測定波長が400nmの場合については図9Aに、測定波長が600nmの場合については図9Bにそれぞれ示した。
【0102】
【表2】
【0103】
表2、図9Aおよび図9Bから分かるように、アルミナ粒子を使用した反射部材は、測定波長に拘わらず、気孔率が10〜45%の範囲において高い反射率を示している。とくに、気孔率が15〜43%の範囲では、比較例の標準反射板よりも高い反射率を示している。したがって、アルミナを用いて反射部材を形成する場合には、気孔率を15〜43%の範囲に設定するのが好ましいといえる。
【0104】
なお、本実施例では、アルミナ粒子を用いた場合について検討したが、実施例1の結果をも鑑みれば、他の無機粒子を用いる場合にも、アルミナ粒子を用いた場合と同様な気孔率の範囲において、高い反射率を有する反射部材が提供できるものと考えられる。
【実施例3】
【0105】
本実施例では、実施例2で作成した気孔率が37%である反射部材(本発明)について、表面性状および断面性状を観察した。表面性状および断面性状は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて行ない、そのときに撮影した写真を図10Aおよび図10Bに示した。図10Aは本発明の反射部材(反射層)の表面性状を、図10Bは本発明の反射部材(反射層)の断面性状をそれぞれ撮影したものである。
【0106】
なお、参考のために、比較例である気孔率が0%のアルミナセラミックスの表面および断面性状を撮影したものを、図11Aおよび図11Bに示した。図11Aは比較例の標準反射板の表面性状を、図11Bは比較例の標準反射板の断面性状をそれぞれ撮影したものである。
【0107】
図10Aおよび図10Bから分かるように、本発明の反射部材は、アルミナ粒子どうしが一部分において一体化して多孔質化されている。すなわち、本発明では、反射部材の内部における反射面積が大きく確保されているために、光入射角度に対し全反射する角度で存在する界面が高確率で存在し、その界面において効果的に反射して、反射部材の内部に進入した光が効率的に出射されるものと考えられる。
【実施例4】
【0108】
本実施例では、本発明の発光装置を以下のようにして評価した。先ず、図3に示すように、タングステンメタライズからなる配線導体30を有するアルミナ質焼結体からなる基体3を形成した(主面には図3のような第2反射部材7は形成していない)。
【0109】
次に、種々の材料により枠体60を基体3の上面に接合した。ここで本発明のサンプルにおいては、枠体60全体が、酸化アルミニウム結晶を加熱して気孔率36.6%の多孔質体としたものから成り、枠体60が反射部材としての機能を有する。また、比較用のサンプルとして、枠体全体をアルミニウムで構成したものと、枠体全体をアルミナ質焼結体(気孔率0%)で構成したものとを用意した。
【0110】
そして、ピーク波長が異なる種々のLED素子を基体3に実装し、枠体の内側をシリコーン樹脂で充填することにより、評価用の発光装置を作製した。
【0111】
これらの各種LED素子のピーク波長に対する枠体の反射率を表3に示す。そして、これらの各種LED素子を用いた発光装置の光強度を図12および図13に示す。
【0112】
【表3】
【0113】
表3、図12および図13に示す結果より、本発明の発光装置は、反射部材の反射率を
95%以上とすることにより、光出力の高い優れたものになることがわかった。
【符号の説明】
【0114】
1 照明装置
2 発光装置
4 (発光装置の)発光素子
6 第1反射部材
61 (第1反射部材の)反射層
64 (第1反射部材の)孔
7 第2反射部材
70 (第2反射部材の)孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機材料により多孔質に形成された反射層を有しており、
前記反射層は、複数の無機粒子を互いに一部分で一体化させて前記複数の無機粒子の間に空隙を設けることにより、抗折強度が1〜300MPaの多孔質に形成されている、反射部材。
【請求項2】
前記空隙は、気体により、または前記無機粒子よりも屈折率の低い透明材料により満たされている、請求項1に記載の反射部材。
【請求項3】
前記複数の無機粒子は、仮焼成することにより互いに一部分で一体化されている、請求項1に記載の反射部材。
【請求項4】
前記無機粒子は、アルミナ、イットリア、ジルコニアおよびチタニアからなる選択される少なくとも一種を含んでいる、請求項1に記載の反射部材。
【請求項5】
無機材料により多孔質に形成された、抗折強度が1〜300MPaの反射層を有する反射部材の製造方法であって、
複数の無機粒子を含む無機粒子層または無機粒子成型体を形成する工程と、
仮焼成することにより、前記無機粒子層または無機粒子成型体を多孔質化する工程と、
を含んでいる、反射部材の製造方法。
【請求項6】
無機材料により多孔質に形成された、抗折強度が1〜300MPaの反射層を有する反射部材の製造方法であって、
複数の無機粒子およびバインダを含む被着材料を、基材の表面に吹き付けて前記基材の表面に多孔質層を形成する被着工程と、
前記多孔質層における複数の無機粒子を、仮焼成することにより互いに一部分で一体化する加熱工程とを含んでいる、反射部材の製造方法。
【請求項7】
前記加熱工程には、前記バインダを除去する工程を含んでいる、請求項6に記載の反射部材の製造方法。
【請求項8】
1または複数の発光要素と、前記発光要素から出射された光を反射させるための反射部材と、を備えた発光装置であって、
前記反射部材は、無機材料により多孔質に形成され、複数の無機粒子を互いに一部分で一体化させて前記複数の無機粒子の間に空隙を設けることにより抗折強度が1〜300MPaの多孔質に形成されている、発光装置。
【請求項9】
前記空隙は、気体により、または前記無機粒子よりも屈折率の低い透明材料により満たされている、請求項8に記載の発光装置。
【請求項10】
前記複数の無機粒子は、仮焼成することにより互いに一部分で一体化されている、請求項8に記載の発光装置。
【請求項11】
前記無機粒子は、アルミナ、イットリア、ジルコニアおよびチタニアからなる選択される少なくとも一種を含んでいる、請求項8に記載の発光装置。
【請求項12】
前記発光要素のピーク波長に対する前記反射部材の反射率が95%以上である、請求項8に記載の発光装置。
【請求項13】
前記発光要素は、LEDチップまたはLDチップである、請求項8に記載の発光装置。
【請求項14】
前記発光要素は、紫外光、近紫外光、または青色光を出射するように構成されている、請求項8に記載の発光装置。
【請求項15】
前記反射部材は、全体が多孔質に構成された基体または枠体のうち少なくとも一方である、請求項8に記載の発光装置。
【請求項16】
1または複数の発光装置を備えた照明装置であって、
前記発光装置として、1または複数の発光要素と、前記発光要素から出射された光を反射させるためのものであり、かつ無機材料により多孔質に形成された、抗折強度が1〜300MPaの反射層を有する反射部材と、を備え、
前記反射層は、複数の無機粒子を互いに一部分で一体化させて前記複数の無機粒子の間に空隙を設けることにより多孔質に形成されている、照明装置。
【請求項17】
前記空隙は、気体により、または前記無機粒子よりも屈折率の低い透明材料により満たされている、請求項16に記載の照明装置。
【請求項18】
前記複数の無機粒子は、仮焼成することにより互いに一部分で一体化されている、請求項16に記載の照明装置。
【請求項19】
前記無機粒子は、アルミナ、イットリア、ジルコニアおよびチタニアからなる選択される少なくとも一種を含んでいる、請求項16に記載の照明装置。
【請求項20】
前記発光要素のピーク波長に対する前記反射部材の反射率が95%以上である、請求項16に記載の照明装置。
【請求項21】
前記発光要素は、LEDチップまたはLDチップである、請求項16に記載の照明装置。
【請求項22】
前記発光要素は、紫外光、近紫外光、または青色光を出射するように構成されている、請求項16に記載の照明装置。
【請求項1】
無機材料により多孔質に形成された反射層を有しており、
前記反射層は、複数の無機粒子を互いに一部分で一体化させて前記複数の無機粒子の間に空隙を設けることにより、抗折強度が1〜300MPaの多孔質に形成されている、反射部材。
【請求項2】
前記空隙は、気体により、または前記無機粒子よりも屈折率の低い透明材料により満たされている、請求項1に記載の反射部材。
【請求項3】
前記複数の無機粒子は、仮焼成することにより互いに一部分で一体化されている、請求項1に記載の反射部材。
【請求項4】
前記無機粒子は、アルミナ、イットリア、ジルコニアおよびチタニアからなる選択される少なくとも一種を含んでいる、請求項1に記載の反射部材。
【請求項5】
無機材料により多孔質に形成された、抗折強度が1〜300MPaの反射層を有する反射部材の製造方法であって、
複数の無機粒子を含む無機粒子層または無機粒子成型体を形成する工程と、
仮焼成することにより、前記無機粒子層または無機粒子成型体を多孔質化する工程と、
を含んでいる、反射部材の製造方法。
【請求項6】
無機材料により多孔質に形成された、抗折強度が1〜300MPaの反射層を有する反射部材の製造方法であって、
複数の無機粒子およびバインダを含む被着材料を、基材の表面に吹き付けて前記基材の表面に多孔質層を形成する被着工程と、
前記多孔質層における複数の無機粒子を、仮焼成することにより互いに一部分で一体化する加熱工程とを含んでいる、反射部材の製造方法。
【請求項7】
前記加熱工程には、前記バインダを除去する工程を含んでいる、請求項6に記載の反射部材の製造方法。
【請求項8】
1または複数の発光要素と、前記発光要素から出射された光を反射させるための反射部材と、を備えた発光装置であって、
前記反射部材は、無機材料により多孔質に形成され、複数の無機粒子を互いに一部分で一体化させて前記複数の無機粒子の間に空隙を設けることにより抗折強度が1〜300MPaの多孔質に形成されている、発光装置。
【請求項9】
前記空隙は、気体により、または前記無機粒子よりも屈折率の低い透明材料により満たされている、請求項8に記載の発光装置。
【請求項10】
前記複数の無機粒子は、仮焼成することにより互いに一部分で一体化されている、請求項8に記載の発光装置。
【請求項11】
前記無機粒子は、アルミナ、イットリア、ジルコニアおよびチタニアからなる選択される少なくとも一種を含んでいる、請求項8に記載の発光装置。
【請求項12】
前記発光要素のピーク波長に対する前記反射部材の反射率が95%以上である、請求項8に記載の発光装置。
【請求項13】
前記発光要素は、LEDチップまたはLDチップである、請求項8に記載の発光装置。
【請求項14】
前記発光要素は、紫外光、近紫外光、または青色光を出射するように構成されている、請求項8に記載の発光装置。
【請求項15】
前記反射部材は、全体が多孔質に構成された基体または枠体のうち少なくとも一方である、請求項8に記載の発光装置。
【請求項16】
1または複数の発光装置を備えた照明装置であって、
前記発光装置として、1または複数の発光要素と、前記発光要素から出射された光を反射させるためのものであり、かつ無機材料により多孔質に形成された、抗折強度が1〜300MPaの反射層を有する反射部材と、を備え、
前記反射層は、複数の無機粒子を互いに一部分で一体化させて前記複数の無機粒子の間に空隙を設けることにより多孔質に形成されている、照明装置。
【請求項17】
前記空隙は、気体により、または前記無機粒子よりも屈折率の低い透明材料により満たされている、請求項16に記載の照明装置。
【請求項18】
前記複数の無機粒子は、仮焼成することにより互いに一部分で一体化されている、請求項16に記載の照明装置。
【請求項19】
前記無機粒子は、アルミナ、イットリア、ジルコニアおよびチタニアからなる選択される少なくとも一種を含んでいる、請求項16に記載の照明装置。
【請求項20】
前記発光要素のピーク波長に対する前記反射部材の反射率が95%以上である、請求項16に記載の照明装置。
【請求項21】
前記発光要素は、LEDチップまたはLDチップである、請求項16に記載の照明装置。
【請求項22】
前記発光要素は、紫外光、近紫外光、または青色光を出射するように構成されている、請求項16に記載の照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−180618(P2011−180618A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130584(P2011−130584)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【分割の表示】特願2007−510464(P2007−510464)の分割
【原出願日】平成18年3月25日(2006.3.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【分割の表示】特願2007−510464(P2007−510464)の分割
【原出願日】平成18年3月25日(2006.3.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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