説明

反射防止フィルム

【課題】干渉ムラを抑えて表示画像の鮮明性を向上でき、かつ生産性を向上できる反射防止フィルムを提供すること。
【解決手段】少なくとも一方の面に凹凸構造が形成された基材フィルムと、この基材フィルムにおける前記凹凸構造が形成された面に設けられるハードコート層と、このハードコート層における前記基材フィルムとは反対側の面に設けられる反射防止層と、を備える反射防止フィルムであって、前記基材フィルムにおける前記凹凸構造側の面は、算術平均粗さRa(μm)と平均周期Sm(μm)とが下記の関係(1),(2)を満たす反射防止フィルム。(1) 20 ≦ Sm ≦180 (2) −3×10−6 ×(Sm)+0.0012×(Sm)+0.0872 ≦ Ra ≦ −1×10−5 ×(Sm)+0.0038×(Sm)+0.038

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置の表示画面に貼付して用いられる反射防止フィルムに関し、特に、干渉ムラを抑えて表示画像の鮮明性を向上でき、かつ生産性を向上できる反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の表示画面には、使用者が手で触れたりする機会が多く、その表面が汚れたり、傷が付いたりすることがあり、表示画像が見にくくなることがある。また、表示装置の表示画面には、外光の映り込みによる反射像によって表示画像の視認性が低下することがある。これらの問題を解消すべく、表示装置の表示画面に所定の機能性フィルムを貼付することが試みられている。例えば特許文献1には、複数の層を含むフィルム本体と、フィルム本体の最も離れた層の表面に設けられた所定寸法の光拡散手段とを有し、さらに、フィルム本体における光拡散手段側の面にハードコート層と、反射防止層とをこの順に有する光学機能性フィルムが提案されている。このような光学機能性フィルムによれば、機械的強度と反射防止機能とを共に奏することができる旨開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−272095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような、所定の光拡散手段を有するフィルム本体と、ハードコート層と、反射防止層とを有する光学機能性フィルムでは、フィルム本体の表面に光拡散手段が設けられており、ハードコート層をハードコート材料の塗布、乾燥、硬化により形成する場合には、各工程の条件によっては厚みムラが生じ生産性が低下する場合がある。また、反射防止層にも同様の厚みムラが生じる場合がある。このため、各層の厚みムラに起因して、フィルム本体とハードコート層の界面、もしくはハードコート層と反射防止層との界面で干渉による色ムラ(干渉ムラ)が生じ、表示画像の鮮明性が必ずしも十分ではない場合がある。また、反射防止フィルム自体の生産性の向上も求められている。
【0005】
本発明の目的は、干渉ムラを抑えて表示画像の鮮明性を向上でき、かつ生産性を向上できる反射防止フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意検討した結果、凹凸構造が形成された基材フィルムと、ハードコート層と、反射防止層とをこの順に備える反射防止フィルムにおいて、基材フィルムに形成された凹凸構造を所定の関係を満たすような外形とした場合に、干渉ムラをより一層抑えて表示画像の鮮明性を向上でき、かつ生産性を向上できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明には、以下のものが含まれる。
<1>少なくとも一方の面に凹凸構造が形成された基材フィルムと、この基材フィルムにおける前記凹凸構造が形成された面に設けられるハードコート層と、このハードコート層における前記基材フィルムとは反対側の面に設けられる反射防止層と、を備える反射防止フィルムであって、前記基材フィルムにおける前記凹凸構造側の面は、算術平均粗さRa(μm)と平均周期Sm(μm)とが下記の関係(1),(2)を満たす反射防止フィルム。
(1) 20 ≦ Sm ≦180
(2) −3×10−6 ×(Sm)+0.0012×(Sm)+0.0872 ≦ Ra ≦ −1×10−5 ×(Sm)+0.0038×(Sm)+0.038
【0008】
<2>算術平均粗さ(Ra)と平均周期(Sm)とが下記の関係(3)をさらに満たす前記反射防止フィルム。
(3) Ra ≦ −7×10−6×(Sm)+0.0025×(Sm)+0.0628
【0009】
<3>前記ハードコート層は、主成分であるハードコート材料と、数平均粒経が20〜100nmである密着性付与剤とを含む組成物により構成されている前記反射防止フィルム。
【0010】
<4>前記密着性付与剤は、二酸化ケイ素からなる粒子である前記反射防止フィルム。
【0011】
<5>前記基材フィルムは、熱可塑性アクリル樹脂と数平均粒径2.0μm以下の弾性体粒子と含む組成物からなる第1の樹脂層と、前記弾性体粒子を含まない熱可塑性樹脂からなる第2の樹脂層とを備え、共押出法により形成される平均厚さ100μm未満の多層フィルムである前記反射防止フィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明の反射防止フィルムによれば、十分な機械的強度と反射防止機能とを有し、かつ、基材フィルムに形成された凹凸構造を所定の外形とすることにより、干渉ムラを抑えて表示画像の鮮明性を向上でき、かつ生産性を向上できるという効果がある。また、このような反射防止フィルムは、液晶表示装置や、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ装置、タッチパネル等の表示装置に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の反射防止フィルムについて、図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る反射防止フィルムの構成を示す模式図である。図1に示すように、反射防止フィルム1は、少なくとも一方の面に凹凸構造が形成された基材フィルム10と、基材フィルム10における凹凸構造が形成された面に設けられるハードコート層20と、ハードコート層20における基材フィルム10とは反対側の面に設けられる反射防止層30とを備えている。
【0014】
<基材フィルム>
本発明に用いる基材フィルムは、少なくとも一方の面に凹凸構造12が形成された、透明な樹脂フィルムである。本実施形態では、基材フィルム10の一方の面のみに凹凸構造12が形成されている。ただし、本発明は、本実施の形態の構成には限定されず、基材フィルムの両面に凹凸構造を形成してもよく、この場合には、両表面における算術平均表面粗さ(Ra)および平均周期(Sm)は同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0015】
基材フィルム10を構成する材料としては、1mm厚で全光線透過率が80%以上となる透明樹脂を用いることができる。透明樹脂としては、例えば、脂環式構造を有する樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、および熱可塑性アクリル樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、本発明の基材フィルムに用いる透明樹脂としては、ハードコート層との密着性等の観点から、熱可塑性アクリル樹脂が好ましい。
【0016】
熱可塑性アクリル樹脂には、原料主成分として(メタ)アクリル酸エステルが用いられるが、(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜15のアルカノール及びシクロアルカノールから誘導される構造のものが好ましい。より好ましくは、炭素数1〜8のアルカノールから誘導される構造のものである。炭素数が多すぎる場合は、得られる脆質フィルムの破断時の伸びが大きくなりすぎる。なお、(メタ)アクリル酸エステルとは、メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルのことである。
【0017】
熱可塑性アクリル樹脂としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体;アルキル基の水素がOH基、COOH基もしくはNH基などの官能基によって置換された(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体;または(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、スチレン、酢酸ビニル、α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、無水マレイン酸などの不飽和結合を有するビニル系モノマーとの共重合体を挙げることができる。熱可塑性アクリル樹脂としては、これらのうち1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。熱可塑性アクリル樹脂は、メタクリル酸メチル単位およびメタクリル酸ブチル単位が単量体単位として含まれているものがより好ましい。
【0018】
基材フィルムを構成する透明樹脂には、顔料や染料等の着色剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、溶剤などの、後述する弾性体粒子以外の配合剤が適宜配合されたものを用いることができる。これらの配合剤を含有させる方法としては、配合剤を予め透明樹脂中に配合する方法;溶融押出成形時に直接供給する方法などが挙げられ、いずれの方法が採用されてもよい。
【0019】
また、基材フィルムは、前述した熱可塑性アクリル樹脂と、当該フィルムの厚さ方向で偏在する数平均粒径2.0μm以下の弾性体粒子とを含む組成物により構成されることが好ましい。弾性体粒子とは、ゴム状弾性体からなる粒子である。ゴム状弾性体としては、アクリル酸エステル系ゴム状重合体、ブタジエンを主原料成分とするゴム状重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。アクリル酸エステル系ゴム状重合体としてはブチルアクリレ−ト、2−エチルヘキシルアクリレ−ト等を原料主成分とするものがある。これらのうち、ブチルアクリレ−トを原料主成分としたアクリル酸エステル系重合体及びブタジエンを主原料成分とするゴム状重合体が好ましい。弾性体粒子は、二種の重合体が層状になったものであってもよく、その代表例としては、ブチルアクリレ−ト等のアルキルアクリレ−トとスチレンのグラフト化ゴム弾性成分と、ポリメチルメタクリレ−ト及び/又はメチルメタクリレ−トとアルキルアクリレ−トの共重合体からなる硬質樹脂層とがコア−シェル構造で層を形成している弾性体粒子を挙げることができる。
【0020】
前記弾性体粒子としては、熱可塑性アクリル樹脂中に分散した状態における二次粒子の数平均粒径が2.0μm以下、好ましくは0.1〜1.0μm、より好ましくは0.1〜0.5μmである。弾性体粒子の一次粒子径が小さくても、凝集などによって形成される二次粒子の数平均粒径が大きいと、基材フィルムのヘイズ(曇り度)が高くなりすぎ、光線透過率が低くなる。また、数平均粒径が小さくなりすぎると可撓性が低下する傾向にある。
【0021】
本発明において、弾性体粒子の波長380nm〜780nmにおける屈折率n(λ)は、マトリックスとなる熱可塑性アクリル樹脂の波長380nm〜780nmにおける屈折率n(λ)との間に、|n(λ)−n(λ)| ≦ 0.05の関係を満たすことが好ましい。特に、|n(λ)−n(λ)| ≦ 0.045であることがより好ましい。なお、n(λ)及びn(λ)は、波長λにおける主屈折率の平均値である。|n(λ)−n(λ)|の値が上記値を超える場合には、界面での屈折率差によって生じる界面反射により、透明性を損なうおそれがある。
【0022】
前述したように、前記弾性体粒子は、熱可塑性アクリル樹脂を主成分としてなる基材フィルムの厚さ方向で偏在していることが好ましい。偏在している場所は、厚さ方向の中央部であっても良いし、表面部であっても良い。中央部に弾性体粒子が偏在する場合は、基材フィルム表面付近には弾性体粒子が少なく、基材フィルムの厚さ方向中央部に弾性体粒子が多く分布している。表面部に弾性体粒子が偏在する場合は、基材フィルム中央部に弾性体粒子が少なく、少なくとも一方の表面部分には弾性体粒子が多く分布している。弾性体粒子の分布は、表面から中央に向ってなだらかに増加又は減少するものであってもよいし、段階的に増加又は減少するものであってもよい。弾性体粒子が層の厚さ方向で偏在することによって、フィルムの表面の硬度を十分に確保しつつ、偏光板の可撓性を向上できる。 特に、反射防止フィルムを偏光板や表示装置等に貼り合わせると、偏光子等との密着性が高まることから、少なくともハードコート層が積層される側とは反対側の基材フィルム表面に弾性体粒子が多く分布するのが好ましい。
【0023】
このような基材フィルムは、熱可塑性アクリル樹脂と数平均粒径2.0μm以下の弾性体粒子とからなる組成物と、当該弾性体粒子を含まない熱可塑性樹脂とを共押出成形する方法;熱可塑性樹脂と数平均粒径2.0μm以下の弾性体粒子とからなる組成物と、当該弾性体粒子を含まない熱可塑性アクリル樹脂とを共押出成形する方法が挙げられる。好ましくは、熱可塑性アクリル樹脂と数平均粒径2.0μm以下の弾性体粒子とからなる組成物と、当該弾性体粒子を含まない熱可塑性樹脂とを共押出成形する方法(共押出法)が採用される。共押出法としては、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等が挙げられ、中でも、共押出Tダイ法が好ましい。共押出Tダイ法にはフィードブロック方式、マルチマニホールド方式が挙げられるが、弾性体粒子を含む層の厚さのばらつきを少なくできる点でマルチマニホールド方式がさらに好ましい。
【0024】
基材フィルムは、その厚さ(平均厚さ)が好ましくは100μm未満、より好ましくは80μm以下、特に好ましくは40μm以上80μm以下である。
基材フィルムが、熱可塑性アクリル樹脂と数平均粒径2.0μm以下の弾性体粒子とからなる組成物を用いて形成される多層の樹脂層からなる場合、熱可塑性アクリル樹脂と数平均粒径2.0μm以下の弾性体粒子とからなる層の厚みの合計は60μm以下であることが好ましく、20μm以上60μm以下であることが好ましい。また、弾性体粒子を含まない熱可塑性アクリル樹脂層の厚みの合計は20μm以上であることが好ましく、20μm以上60μm以下であることが好ましい。 弾性体粒子を含まない熱可塑性アクリル樹脂層の厚みの合計が20μm未満であると耐熱性及び強度が不足し、熱可塑性アクリル樹脂と数平均粒径2.0μm以下の弾性体粒子からなる層の厚みの合計が20μm未満であると可撓性が不十分となる。
【0025】
基材フィルムは、その残留溶剤含有量が0.01質量%以下であることが好ましい。残留溶剤量が上記範囲であることにより、例えば、高温・高湿度環境下において基材フィルムが変形するのを防止できるとともに、光学性能が劣化するのを防止できる。残留溶剤量が上記範囲となる基材フィルムは、例えば、複数の樹脂を共押出成形することによって得ることができる。共押出成形の場合には、複雑な工程(例えば、乾燥工程や塗工工程)を経なくてもよいため、ゴミなどの外部異物の混入が少なく、優れた光学性能を発揮できる。残留溶剤含有量は、表面に吸着していた水分や有機物を完全に除去した内径4mmのガラスチューブの試料容器に基材フィルム50mgを入れ、その容器を温度200℃で30分間加熱し、容器から出てきた気体を連続的に捕集し、捕集した気体を熱脱着ガスクロマトグラフィー質量分析計(TDS−GC−MS)で分析した値である。
【0026】
基材フィルムは、その透湿度が10g・m−2day−1以上、200g・m−2day−1以下であることが好ましい。基材フィルムの透湿度を上記好適な範囲とすることにより、基材フィルムに積層する層との密着性を向上できる。透湿度は、40℃、90%RHの環境下で、24時間放置する試験条件で、JIS Z 0208に記載のカップ法により測定できる。
【0027】
<凹凸構造を有する基材フィルム>
基材フィルムの表面には、凹凸構造が形成されている。基材フィルムの表面に凹凸構造を付与する方法としては、凹凸の無い基材フィルムに対して、凹凸を有する賦型ロールを用いたニップ成形法や、凹凸を有するフィルムを用いたサンドイッチラミネート法、ブラスト法などを適用できる。これらの中でも凹凸を有する賦型ロールを用いたニップ形成法が好ましく、鏡面ロールと凹凸を有する賦型ロールを用いて、基材フィルムを挟圧することが好ましい。それぞれのロールの表面材質は、金属、ゴム、樹脂などを挙げることができる。賦型ロールの硬さは、賦型の転写状況から選ばれるが、鏡面ロールの硬さ以上であることが好ましい。また、前記条件を満たすために、例えば、鏡面ロール上に別系統のウェブを導入し、鏡面ロールと同等の表面性を持つ賦型ロールより軟らかい樹脂フィルムなどを介して狭圧させても良い。
【0028】
上記鏡面ロールと凹凸を有する賦型ロールは、それぞれに温度調節ができるものであるのが好ましい。鏡面ロールの温度は、40℃以上150℃以下で、かつ、凹凸を有する賦型ロールの温度は、80℃以上200℃以下となっていることが好ましい。鏡面ロールの温度は、60℃以上110℃以下がより好ましく、凹凸を有する賦型ロールの温度は、80℃以上180℃以下がより好ましい。 賦型ロールの表面形状は、凹凸がランダムに並んでいることが好ましく、表面の算術平均粗さ(Ra)と凹凸の平均周期(Sm)とは、後述するフィルムの凹凸構造が付与できる態様で形成されている。
【0029】
凹凸構造が形成された基材フィルムにおいて、その凹凸構造側の面は、算術平均表面粗さRa(μm)と凹凸構造の平均周期Sm(μm)とが下記関係(1),(2)を満たしている。このような関係を満たすことにより、写像鮮明性を低下させることなく、かつ干渉ムラを抑えることができるという利点がある。なお、本発明においてロール及びフィルムの算術平均表面粗さと平均周期は、JIS B 0601:2001の規定に従い測定される値である。
(1) 20 ≦ Sm ≦180
(2) −3×10−6 ×(Sm)+0.0012×(Sm)+0.0872 ≦ Ra ≦ −1×10−5 ×(Sm)+0.0038×(Sm)+0.038
【0030】
また、凹凸構造が形成された基材フィルムは、下記関係(3)を満たすことが好ましい。このような関係(3)を満たすことにより、より一層干渉ムラを抑えることができる利点がある。
(3) Ra ≦ −7×10−6×(Sm)+0.0025×(Sm)+0.0628
【0031】
さらに、凹凸構造が形成された基材フィルムにおいて、前記凹凸構造側の面の算術平均表面粗さ(Ra)は0.11μm〜0.40μmが好ましく、前記凹凸構造側の面の平均周期(Sm)は20μm〜170μmが好ましい。このような好適な範囲であることにより、より一層干渉ムラを抑えることができる利点がある。
【0032】
表面に凹凸構造が形成された基材フィルムは、ヘイズが1%以上50%未満であることが好ましく、3%以上40%未満であることがより好ましく、ヘイズが20%未満であることがさらに好ましく、ヘイズが10%未満であることが特に好ましい。
【0033】
前述したように、凹凸構造を形成させる前のフィルムには、その表面に不規則に生じる線状凹部や線状凸部が実質的に形成されてなく、かつその表面が平坦な面であることが好ましい。実質的に形成されないとは、仮に、線状凹部や線状凸部が形成されたとしても、深さが50nm未満もしくは幅が500nmより大きい線状凹部、および高さが50nm未満もしくは幅が500nmより大きい線状凸部であることである。より好ましくは、深さが30nm未満、または、幅が700nmより大きい線状凹部であり、高さが30nm未満、または、幅が700nmより大きい線状凸部である。このような構成とすることにより、線状凹部や線状凸部での光の屈折等に基づく、光の干渉や光漏れの発生を防止でき、光学性能を向上できる。なお、不規則に生じるとは、意図しない位置に意図しない寸法、形状等で形成されるということである。
【0034】
<ハードコート層>
ハードコート層は、本発明の反射防止フィルムの表面硬度を高める機能を有する層であり、JIS K5600−5−4で示す鉛筆硬度試験(試験板はガラス板を用いる)でHまたはそれより硬い硬度を示すことが好ましい。このようなハードコート層が設けられた反射防止フィルムは、その鉛筆硬度が4Hまたはそれより硬い硬度になることが好ましい。ハードコート層の平均厚みは、通常0.3〜20μm、好ましくは0.8〜10μmであり、より好ましくは1.0〜5.0μmである。
【0035】
ハードコート層は、後述するハードコート材料を主成分として構成されている。このハードコート材料としては、熱や光で硬化する材料であることが好ましく、例えば、有機シリコーン系、メラミン系、エポキシ系、アクリル系、ウレタンアクリレート系などの有機ハードコート材料などを挙げることができる。これらの中でも、接着力が良好であり、生産性に優れる観点から、ウレタンアクリレート系および多官能アクリレート系のハードコート材料が好ましい。
【0036】
また、前記ハードコート材料には、必要に応じて、数平均粒経が20〜100nmである密着性付与剤が含まれていてもよい。密着性付与剤とは、ハードコート層とこの層の上に設けられる反射防止層との密着性を向上させる粒子である。このような密着性付与剤を含むことにより、ハードコート層と反射防止層との密着性を向上でき、これにより反射防止フィルム表面の耐擦傷性を向上できる。密着性付与剤としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化スズ、アクリル樹脂、シリコン樹脂等により形成された粒子を用いることができ、これらの中でも、より密着性を向上できる観点から、二酸化ケイ素を好適に用いることができる。密着性付与剤は、前記ハードコート材料100重量部に対して、10〜80重量部含むことが好ましく、10〜50重量部含むことがより好ましい。
【0037】
ハードコート層としては、基材フィルムにおける凹凸構造が形成された層の屈折率よりも高い屈折率を有する層であることが好ましく、この際、ハードコート層の屈折率は1.60〜1.70であることが好ましい。ハードコート層の屈折率が上記範囲となる場合には、ハードコート層の上に反射防止層を設けた場合に、外光の反射を抑制し、映り込みを防止することができる。ハードコート層の屈折率調整には、例えば、金属酸化物微粒子を添加して行うことができる。添加する金属酸化物微粒子の材質としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化タングステン等を挙げることができる。これらの金属酸化物微粒子は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。 屈折率は、例えば、公知の分光エリプソメータを用いて測定して求めることができる。
【0038】
ハードコート層は、その数平均粒径が200nm以下、好ましくは15〜50nmの導電性微粒子を含むことが好ましい。導電性微粒子を含むことにより、ハードコート層としての機能だけでなく、帯電防止層としての機能を付与できる。なお、数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)等により得られる二次電子放出のイメージ写真からの目視やイメージ写真を画像処理することにより、又は動的光散乱法、静的光散乱法等を利用する粒度分布計等により計測することができる。ここで、導電性微粒子とは、粉体の比抵抗値が10 Ω・cm以下であるものをいう。比抵抗値は、導電性微粒子を含む粉末を100kg/cmで圧縮成形後、LCRメーター(例えば、横河ヒューレットパッカード社製)を用いて、電気抵抗値を測定し、それを以下の式により比抵抗値に換算することにより求められる。
比抵抗値(Ω・cm)= 電気抵抗値(Ω)×{ 試料の断面積(cm)/試料の厚さ(cm)}
【0039】
導電性微粒子は、導電性を有する微粒子であれば特に制約はないが、透明性に優れることから、金属酸化物の微粒子が好ましい。金属酸化物としては、例えば、五酸化アンチモン、酸化スズ、リンがドープされた酸化スズ(PTO)、アンチモンがドープされた酸化スズ(ATO)、スズがドープされた酸化インジウム(ITO)、亜鉛がドープされた酸化インジウム(IZO)、アルミニウムがドープされた酸化亜鉛(AZO)、フッ素がドープされた酸化スズ(FTO)、酸化亜鉛/酸化アルミニウム、アンチモン酸亜鉛等が挙げることができる。これらの金属酸化物微粒子は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、透明性に優れること等から、五酸化アンチモン微粒子及びリンがドープされた酸化スズ微粒子から選ばれる少なくとも一種が好ましい。さらに、これらの導電性微粒子は、その表面をシランカップリング剤により処理してもよく、このような処理により、後述する反射防止層との密着性を向上できる利点がある。この場合には、前述した密着性付与剤を添加してもよいし、添加しなくてもよい。
【0040】
また、導電性の金属酸化物の微粒子としては、導電性を持たない金属酸化物微粒子に、導電性金属酸化物を被覆することによって、導電性が付与された微粒子も使用することもできる。例えば、屈折率は高いが導電性を有しない酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム等の微粒子の表面に、前記導電性金属酸化物を被覆して導電性を付与して用いることができる。
【0041】
ハードコート層における導電性微粒子の含有量は、30体積%以上であることが好ましく、40〜60体積%であることがより好ましい。本発明において、ハードコート層は、前述のハードコート材料を含む組成物を必要に応じて溶媒で希釈し、基材フィルムの前記凹凸構造が形成された面に直接又は他の層を介して塗布し、得られた塗膜に必要に応じて熱及び/又は電離放射線を照射することで形成できる。
【0042】
ハードコート層を構成する前記組成物には、前記密着性付与剤や、前記導電性微粒子の他に、所望により、屈折率の調整、曲げ弾性率の向上、体積収縮率の安定化、並びに耐熱性、および防眩性などの向上を図る目的で、各種フィラーを含有できる。また、前記組成物には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、レベリング剤、および消泡剤などの添加剤を含有できる。
【0043】
ハードコート層は、ハードコート材料を含む組成物を塗布して塗膜を形成した後、その塗膜を乾燥・硬化させて得ることができる。この際、塗膜の乾燥条件としては、例えば、以下の2つの条件を挙げることができる。第1の乾燥条件(厳しい条件)は、得られた塗膜を乾燥炉内にて10m/s以上の熱風により60℃で1分間乾燥・硬化させるものである。また、第2の乾燥条件(比較的穏やかな条件)は、得られた塗膜を乾燥炉内にて10m/s未満の熱風により60℃で1分間乾燥・硬化させるものである。これらの乾燥条件のうち、第1の乾燥条件により塗膜を乾燥・硬化させることができれば、本発明の反射防止フィルムの生産性を向上できる。このため、本発明では、凹凸構造の構成を適宜検討することにより、第1の乾燥条件でもハードコート層を高精度に作成できるようにしている。
【0044】
<反射防止層>
反射防止層は、外光の移りこみを防止するための層であり、反射防止フィルムの表面(外部に露出する面)に直接または間接的に積層される層である。
【0045】
反射防止層の厚さは、0.01〜1μmが好ましく、0.02〜0.5μmがより好ましい。反射防止層としては、当該反射防止層の下地となる層(例えばハードコート層)の屈折率よりも小さい屈折率、具体的には1.30〜1.45の屈折率を有する低屈折率層からなるもの;無機化合物からなる薄膜の低屈折率層と無機化合物からなる薄膜の高屈折率層とを交互に複数積層したもの、などを挙げることができる。
【0046】
反射防止層を低屈折率層からなる層とした場合、低屈折率層を形成する材料としては、屈折率の低いものであれば特に制限されず、例えば、紫外線硬化型アクリル樹脂等の樹脂材料、樹脂中にコロイダルシリカ等の無機微粒子を分散させたハイブリッド材料、テトラエトキシシラン等の金属アルコキシドを用いたゾル−ゲル材料等を挙げることができる。これらの低屈折率層を形成する材料は、ポリマーであってもよいし、前駆体となるモノマーやオリゴマーであってもよい。また、それぞれの材料は、防汚染性を付与するために、フッ素基を含有する化合物またはジメチルシリコーンを含むことが好ましい。
【0047】
前記のゾル−ゲル材料としては、フッ素基を含有するゾル−ゲル材料が好適に用いることができる。フッ素基を含有するゾル−ゲル材料としては、フルオロアルキルアルコキシシランを例示できる。フルオロアルキルアルコキシシランは、たとえば、CF(CFCHCHSi(OR)(式中、Rは、炭素数1〜5個のアルキル基を示し、nは0〜12の整数を示す)で表される化合物である。具体的には、フルオロアルキルアルコキシシランとしては、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルロオクチルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、およびヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン等を挙げることができる。この中でも、前記nが2〜6の化合物が好ましい。
【0048】
低屈折率層は、熱硬化性含フッ素化合物または電離放射線硬化型含フッ素化合物またはジメチルシリコーンの硬化物からなるものとすることができる。前記硬化物は、その動摩擦係数が0.03〜0.15であることが好ましく、水に対する接触角が90〜120度であることが好ましい。硬化性含フッ素化合物としては、パーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラデシル)トリエトキシシラン)等の他、架橋性官能基を有する含フッ素重合体を挙げることができる。
【0049】
架橋性官能基を有する含フッ素重合体はフッ素含有モノマーと架橋性官能基を有するモノマーとを共重合することによって、又はフッ素含有モノマーと官能基を有するモノマーとを共重合し次いで重合体中の官能基に架橋性官能基を有する化合物を付加させることによって得ることができる。
【0050】
含フッ素モノマーとしては、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等のフルオロオレフィン類;「ビスコート6FM」(大阪有機化学社製)、「M−2020」(ダイキン社製)等の(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられる。
【0051】
架橋性官能基を有するモノマー又は架橋性官能基を有する化合物としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのグリシジル基を有するモノマー;アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基を有するモノマー;ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレートなどのヒドロキシル基を有するモノマー;メチロールアクリレート、メチロールメタクリレート;アリルアクリレート、アリルメタクリレートなどのビニル基を有するモノマー;アミノ基を有するモノマー;スルホン酸基を有するモノマー;等を挙げることができる。
【0052】
低屈折率層を形成するための材料としては、耐擦傷性を向上できる点で、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン(チタニア)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、フッ化マグネシウム等の微粒子をアルコール溶媒に分散したゾルを含むものを用いることができる。前記微粒子は、反射防止性の観点から、屈折率が低いものほど好ましい。このような微粒子は、空隙を有するものであってもよく、特にシリカ中空微粒子が好ましい。中空微粒子の平均粒径は、5〜200nmが好ましく、20〜100nmがより好ましい。ここで、平均粒径は、透過型電子顕微鏡観察によって求められる数平均粒径である。
【0053】
本発明において、反射防止層の表面には、上述した以外に、防眩層、ガスバリア層、透明帯電防止層、プライマー層、電磁波遮蔽層、下塗り層、防汚層等の各種機能層を設けることもできる。
【0054】
<反射防止フィルム>
本発明の反射防止フィルムを得る方法に格別な限定はなく、各層の形成に一般的な例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法などの方法を挙げることができる。
【0055】
反射防止フィルム(前記機能層を有する場合にはその機能層を含む)面での算術平均表面粗さ(Ra)は0.1μm以下であることが好ましく、0.06μm以下がより好ましい。反射防止フィルム(前記機能層を有する場合にはその機能層を含む)は、ヘイズが20%以下となっていることが好ましく、10%以下がより好ましい。さらに、反射防止フィルム(前記機能層を有する場合にはその機能層を含む)は、通常、その最小反射率が1.8%以下であり、好ましくは1.5%以下である。
【0056】
<反射防止フィルムの利用>
本発明の光学フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、電子ペーパー,タッチパネルなどの表示装置の表面保護フィルムとして、直接に貼合することにより、または偏光板保護フィルム、前面板など表示装置に組み込まれる表面部材と置き換えることにより用いることができる。
【実施例】
【0057】
実施例および比較例を示し、本発明をより詳細に説明する。なお、部及び%は特に断りが無い限り質量基準である。
<フィルムの膜厚>
各フィルムをエポキシ樹脂に包埋したのち、ミクロトーム(大和工業社製、製品名「RUB−2100」)を用いてスライスし、走査電子顕微鏡を用いて断面を観察し、測定した。
<基材フィルムの屈折率>
凹凸構造を設けていない基材フィルムを用意し、このフィルムをプリズムカプラー(Metricon社製、製品名「model2010」)を用いて、波長633nm,温度20℃±2℃、湿度60±5%の条件下で測定した。
<ハードコート層および反射防止層の屈折率>
高速分光エリプソメトリ(J.A.Woollam社製、製品名「M−2000U」)を用い,入射角度をそれぞれ55,60,65度、温度20℃±2℃、湿度60±5%の条件下で測定した場合の、波長領域400〜1000nmのスペクトルから算出した。
<ヘイズ>
濁度計(日本電色社製、製品名「NDM 2000」)を用いて測定した。反射防止フィルムのヘイズは10%超の場合には、画像が白っぽく濁って見えるため、ヘイズは20%以下であると良好である。
<最小反射率>
分光光度計(日本分光社製、製品名「V−550」)を用いて、波長430〜700nmにおける入射角5度での反射率を測定し(測定波長間隔は1nm)、前記波長域における最小反射率を算出した。最小反射率は、1.8%以下である場合に良好である。
<Ra、Sm測定>
表面粗さ計(ミツトヨ社製、製品名「SJ400」)を用い、JIS B 0601:1994に基づき測定を行った。Sm(凹凸の平均間隔)とは、測定される断面曲線から、カットオフ値λcの高域フィルタによって長波長成分を遮断して得られた輪郭曲線(粗さ曲線)を求め、粗さ曲線の平均線に対して基準長さ(L)を抜き取り、基準長さ上の隣り合う山と谷の長さ(Xsi)の平均値のことである。Ra(算術平均粗さ)とは、前記したような方法で粗さ曲線を求め、その曲線の基準長さにおける高さ(平均線から測定曲線までの距離)の絶対値の平均値のことである。
<干渉ムラ>
反射防止フィルムの裏面に黒ビニールテープ(日東電工社製、No.21)を貼り、暗室内で3波長の光源下に置き、反射防止フィルムの法線方向から方位角30〜60°の範囲で観察し、干渉ムラの有り無しを目視検査する。
【0058】
<製造例1:基材フィルムS1の作製>
2種3層の多層共押出装置を使用して、両表面層を構成する、弾性体を含むポリメチルメタクリレート樹脂(住友化学社製、商品名「スミペックスHT20Y」)、中間層を構成し、弾性体を含まない耐熱性の高いポリメチルメタクリレート樹脂(住友化学社製、商品名「スミペックスMH」)をそれぞれ、20kg/hr、10kg/hrの押出量でT型ダイスより吐出させ、これを直後に線圧12kN/m、ロール速度20m/minで、表面温度90℃に加熱したSmが30μm、Raが0.125μmの凹凸を有する賦形ロールと、表面温度90℃に加熱した鏡面ロールでニップし、凹凸をフィルムに転写したのち、冷却を行い、3層構成の基材フィルムS1を得た。
【0059】
基材フィルムS1を構成する各層の厚みは、凹凸構造が形成された側の表面層(表面層1)の厚みが20μm、中間層が40μm、凹凸が形成されていない側の表面層(表面層2)が20μmであり、透明フィルム1の総厚は80μmであった。基材フィルムS1の凹凸構造が形成された面のRaは0.125μm、Smは30μmであり、表面層の屈折率は1.49であった。
【0060】
<製造例2:基材フィルムS2の作製>
Smが59μm、Raが0.18μmの凹凸を有する賦形ロールを用いた他は、製造例1と同様にして基材フィルムS2を作成した。基材フィルムS2の凹凸構造が形成された面のRaは0.18μm、Smは59μmであった。
【0061】
<製造例3:基材フィルムS3の作製>
Smが65μm、Raが0.16μmの凹凸を有する賦形ロールを用いた他は、製造例1と同様にして基材フィルムS3を作成した。基材フィルムS3の凹凸構造が形成された面のRaは0.16μm、Smは65μmであった。
【0062】
<製造例4:基材フィルムS4の作製>
Smが107μm、Raが0.24μmの凹凸を有する賦形ロールを用いた他は、製造例1と同様にして基材フィルムS4を作成した。基材フィルムS4の凹凸構造が形成された面のRaは0.24μm、Smは107μmであった。
【0063】
<製造例5:基材フィルムS5の作製>
Smが121μm、Raが0.195μmの凹凸を有する賦形ロールを用いた他は、製造例1と同様にして基材フィルムS5を作成した。基材フィルムS5の凹凸構造が形成された面のRaは0.195μm、Smは121μmであった。
【0064】
<製造例6:基材フィルムS6の作製>
Smが155μm、Raが0.27μmの凹凸を有する賦形ロールを用いた他は、製造例1と同様にして基材フィルムS6を作成した。基材フィルムS6の凹凸構造が形成された面のRaは0.27μm、Smは155μmであった。
【0065】
<製造例7:基材フィルムS7の作製>
Smが162μm、Raが0.21μmの凹凸を有する賦形ロールを用いた他は、製造例1と同様にして基材フィルムS7を作成した。基材フィルムS7の凹凸構造が形成された面のRaは0.21μm、Smは162μmであった。
【0066】
<製造例8:基材フィルムS8の作製>
Smが72μm、Raが0.23μmの凹凸を有する賦形ロールを用いた他は、製造例1と同様にして基材フィルムS8を作成した。基材フィルムS8の凹凸構造が形成された面のRaは0.23μm、Smは72μmであった。
【0067】
<製造例9:基材フィルムS9の作製>
Smが167μm、Raが0.35μmの凹凸を有する賦形ロールを用いた他は、製造例1と同様にして基材フィルムS9を作成した。基材フィルムS9の凹凸構造が形成された面のRaは0.35μm、Smは167μmであった。
【0068】
<製造例10:基材フィルムSAの作製>
Smが70μm、Raが0.145μmの凹凸を有する賦形ロールを用いた他は、製造例1と同様にして基材フィルムSAを作成した。基材フィルムSAの凹凸構造が形成された面のRaは0.145μm、Smは70μmであった。
【0069】
<製造例11:基材フィルムSBの作製>
Smが148μm、Raが0.135μmの凹凸を有する賦形ロールを用いた他は、製造例1と同様にして基材フィルムSBを作成した。基材フィルムSBの凹凸構造が形成された面のRaは0.135μm、Smは148μmであった。
【0070】
<製造例12:基材フィルムSCの作製>
Smが74μm、Raが0.4μmの凹凸を有する賦形ロールを用いた他は、製造例1と同様にして基材フィルムSCを作成した。基材フィルムSCの凹凸構造が形成された面のRaは0.4μm、Smは74μmであった。
【0071】
<製造例13:基材フィルムSDの作製>
Smが122μm、Raが0.45μmの凹凸を有する賦形ロールを用いた他は、製造例1と同様にして基材フィルムSDを作成した。基材フィルムSDの凹凸構造が形成された面のRaは0.45μm、Smは122μmであった。
【0072】
<製造例14:ハードコート層形成用組成物H1の調製>
アクリロイル基を含有するオリゴマー(日本合成化学工業社製、商品名「UV−1700B」)の100部に、導電性微粒子であるSb粒子(触媒化成工業社製、数平均粒径30nm)250部と、密着性付与剤であるSiO粒子(日本アエロジル社製、数平均粒径30nm)15部と、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGACURE184」)2部とを加え、メタクリル変性ジメチルシリコーンオイル(信越化学工業社製、商品名「X−22−164A」)を1部加え、攪拌機にて2000rpmで5分間攪拌することにより、ハードコート層形成用組成物H1を得た。
【0073】
<製造例15:反射防止層形成用組成物L1の調製>
還流管を備えつけた4つ口反応フラスコにエタノール200部を投入し、撹拌下にこのエタノールに蓚酸120部を少量ずつ添加することにより、蓚酸のエタノール溶液を調製した。次いでこの溶液をその還流温度まで加熱し、還流下のこの溶液中にテトラエトキシシラン20部とトリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製、商品名「TSL8257」)4部の混合物を滴下した。滴下終了後も、還流下に加熱を5時間続けた後冷却し、メタノールにて固形分が1重量%になるように希釈することにより液1を調製した。次に、中空シリカ微粒子(数平均粒子径30nm、屈折率1.29)を前記液1の固形分に対し80重量%になるように添加し、低屈折率層形成用組成物L1を調製した。
【0074】
<実施例1:反射防止フィルム1の作成>
製造例1で得られた透明フィルムS1の凹凸構造が形成された面に、製造例14で得られたハードコート層形成用組成物H1をバーコーターで塗布した後、紫外線照射機を用いて波長300〜390nmの範囲において積算光量200mJ/cmとなるように紫外線照射を行い硬化させ、厚み3μmのハードコート層を形成させて、透明フィルム/ハードコート層となる積層体を得た。ハードコート層の屈折率は1.62であった。次に、ハードコート層の上に、製造例15で得られた反射防止層形成用組成物L1をバーコーターで塗布して塗膜を作成した。次に、以下の2つの乾燥条件にて前記塗膜を乾燥させて、反射防止層の厚みが100nmである反射防止フィルム1をそれぞれ得た。第1の乾燥条件(厳しい条件)は、得られた塗膜を乾燥炉内にて10m/s以上の熱風により60℃で1分間乾燥・硬化させるものである。第2の乾燥条件(比較的穏やかな条件)は、得られた塗膜を乾燥炉内にて10m/s未満の熱風により60℃で1分間乾燥・硬化させるものである。このようにして得られた反射防止フィルム1について、干渉ムラの有無(両乾燥条件に対応)、ヘイズ(%)、および最小反射率(%)を評価した。反射防止フィルム1の評価結果を表1に示す。なお、以下の反射防止フィルムも同様の項目を評価し、その結果を表1に示す。
【0075】
<実施例2:反射防止フィルム2の作成>
基材フィルムS1を基材フィルムS2に変えた以外は、実施例1と同様に実施して反射防止フィルム2を得た。反射防止フィルム2の評価結果を表1に示す。
【0076】
<実施例3:反射防止フィルム3の作成>
基材フィルムS1を基材フィルムS3に変えた以外は、実施例1と同様に実施して反射防止フィルム3を得た。反射防止フィルム3の評価結果を表1に示す。
【0077】
<実施例4:反射防止フィルム4の作成>
基材フィルムS1を基材フィルムS4に変えた以外は、実施例1と同様に実施して反射防止フィルム4を得た。反射防止フィルム4の評価結果を表1に示す。
【0078】
<実施例5:反射防止フィルム5の作成>
基材フィルムS1を基材フィルムS5に変えた以外は、実施例1と同様に実施して反射防止フィルム5を得た。反射防止フィルム5の評価結果を表1に示す。
【0079】
<実施例6:反射防止フィルム6の作成>
基材フィルムS1を基材フィルムS6に変えた以外は、実施例1と同様に実施して反射防止フィルム6を得た。反射防止フィルム6の評価結果を表1に示す。
【0080】
<実施例7:反射防止フィルム7の作成>
基材フィルムS1を基材フィルムS7に変えた以外は、実施例1と同様に実施して反射防止フィルム7を得た。反射防止フィルム7の評価結果を表1に示す。
【0081】
<実施例8:反射防止フィルム8の作成>
基材フィルムS1を基材フィルムS8に変えた以外は、実施例1と同様に実施して反射防止フィルム8を得た。反射防止フィルム8の評価結果を表1に示す。
【0082】
<実施例9:反射防止フィルム9の作成>
基材フィルムS1を基材フィルムS9に変えた以外は、実施例1と同様に実施して反射防止フィルム9を得た。反射防止フィルム9の評価結果を表1に示す。
【0083】
<比較例1:反射防止フィルム11の作成>
基材フィルムS1を基材フィルムSAに変えた以外は、実施例1と同様に実施して反射防止フィルム11を得た。反射防止フィルム11の評価結果を表1に示す。
【0084】
<比較例2:反射防止フィルム12の作成>
基材フィルムS1を基材フィルムSBに変えた以外は、実施例1と同様に実施して反射防止フィルム12を得た。反射防止フィルム12の評価結果を表1に示す。
【0085】
<比較例3:反射防止フィルム13の作成>
基材フィルムS1を基材フィルムSCに変えた以外は、実施例1と同様に実施して反射防止フィルム13を得た。反射防止フィルム13の評価結果を表1に示す。
【0086】
<比較例4:反射防止フィルム14の作成>
基材フィルムS1を基材フィルムSDに変えた以外は、実施例1と同様に実施して反射防止フィルム14を得た。反射防止フィルム14の評価結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
また、算術平均粗さRa(μm)と平均周期Sm(μm)との関係について、縦軸をSm、横軸をRaとしたグラフを用いて調べたところ、図2に示すグラフが得られた。なお、実施例1〜7を●印で、実施例8および9を▲印で、比較例1〜4を×印で示している。
図2に示すように、実施例1〜9では、RaとSmとの間に、−3×10−6 ×(Sm)+0.0012×(Sm)+0.0872≦ Ra ≦ −1×10−5 ×(Sm)+0.0038×(Sm)+0.038の二次曲線の関係式を満足しており、実施例1〜7では、RaとSmとの間に、−3×10−6 ×(Sm)+0.0012×(Sm)+0.0872≦ Ra ≦ −7×10−6×(Sm)+0.0025×(Sm)+0.0628の二次曲線の関係式を満足している。このため、当該二次曲線が臨界的な意義を有しているということができる。
したがって、図2,表1に示すように、−3×10−6 ×(Sm)+0.0012×(Sm)+0.0872≦ Ra ≦ −1×10−5 ×(Sm)+0.0038×(Sm)+0.038となる場合(場合A)、好ましくは、Ra ≦ −7×10−6×(Sm)+0.0025×(Sm)+0.0628となる場合(場合B)には、両乾燥条件においても干渉ムラがなく、かつ最小反射率やヘイズに優れるため写像鮮明性が優れることがわかる。また、乾燥条件を厳しくしても干渉ムラが生じないため、反射防止フィルムの生産性を向上できる利点がある。
【0089】
これに対して、比較例1に示すように、上記関係式(場合A,場合B)を満たさない場合には、第1の乾燥条件では干渉ムラが生じ、写像鮮明性に劣ることがわかる。また、比較例2に示すように、上記関係式(場合A,場合B)を満たさない場合には、第1の乾燥条件に加え、第2の乾燥条件でも干渉ムラが生じ、写像鮮明性に劣ることがわかる。また、比較例3,4に示すように、上記関係式(場合A,場合B)を満たさない場合には、ヘイズが20(%)を超えることがわかり、このため写像鮮明性に劣ることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明に係る反射防止フィルムの構成を示す模式図である。
【図2】算術平均粗さRaと平均周期Smとの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0091】
1 反射防止フィルム
10 基材フィルム
12 凹凸構造
20 ハードコート層
30 反射防止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の面に凹凸構造が形成された基材フィルムと、この基材フィルムにおける前記凹凸構造が形成された面に設けられるハードコート層と、このハードコート層における前記基材フィルムとは反対側の面に設けられる反射防止層と、を備える反射防止フィルムであって、
前記基材フィルムにおける前記凹凸構造側の面は、算術平均粗さRa(μm)と平均周期Sm(μm)とが下記の関係(1),(2)を満たす反射防止フィルム。
(1) 20 ≦ Sm ≦180
(2) −3×10−6 ×(Sm)+0.0012×(Sm)+0.0872 ≦ Ra ≦ −1×10−5 ×(Sm)+0.0038×(Sm)+0.038
【請求項2】
請求項1に記載の反射防止フィルムにおいて、
算術平均粗さ(Ra)と平均周期(Sm)とが下記の関係(3)をさらに満たす反射防止フィルム。
(3) Ra ≦ −7×10−6×(Sm)+0.0025×(Sm)+0.0628
【請求項3】
請求項1または2に記載の反射防止フィルムにおいて、
前記ハードコート層は、主成分であるハードコート材料と、数平均粒経が20〜100nmである密着性付与剤とを含む組成物により構成されている反射防止フィルム。
【請求項4】
請求項3に記載の反射防止フィルムにおいて、
前記密着性付与剤は、二酸化ケイ素からなる粒子である反射防止フィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の反射防止フィルムにおいて、
前記基材フィルムは、熱可塑性アクリル樹脂と数平均粒径2.0μm以下の弾性体粒子と含む組成物からなる第1の樹脂層と、前記弾性体粒子を含まない熱可塑性樹脂からなる第2の樹脂層とを備え、共押出法により形成される平均厚さ100μm未満の多層フィルムである反射防止フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−2600(P2010−2600A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160544(P2008−160544)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】