説明

反射防止ポリマー膜コーティングにおいて使用するための低屈折率コーティング組成物および製造方法

シリコーン改質フルオロポリマーは、有機溶媒の中にフルオロポリマー(このフルオロポリマーは、ヘキサフルオロプロピレンモノマー単位に結合したフッ化ビニリデンの少なくとも1個のモノマーを有する)をまず溶解させ、次いで、その混合物をアミノシランカップリング剤と反応させてアミノシラン改質フルオロポリマーを形成することによって形成される。次いでそのアミノシランフルオロポリマーを加熱し、アルコキシシランのようなシラン化合物のオリゴマーを用いて部分的に縮合させる。得られる組成物は、光学基材上の反射防止コーティング中の低屈折率層として使用するのに好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング組成物に関し、さらに詳しくは、反射防止ポリマー膜のための低屈折率組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止ポリマー膜(「AR膜」)またはARコーティングは、ディスプレイ産業においてますます重要となってきている。コンピューター、テレビ、家電製品、携帯電話、航空機および自動車産業において使用される物品に適用される、低反射膜およびその他のARコーティングのための新規な用途が開発されている。
【0003】
AR膜は、典型的には、反射される光の量を最小限にするために、高屈折率ポリマーと低屈折率ポリマーの層を交互にして構成する。物品の基材の上に使用するためのAR膜における望ましい特性は、反射光のパーセントが低いこと(たとえば、1.5%以下)および引っ掻きや摩耗に対する耐久性が高いことが、組み合わさっていることである。一方ではポリマー層の間の強い接着性を維持しながらも、ポリマー層の間のデルタRIを最大化することによって、それらの特性がAR構成物の中に得られる。
【0004】
周知のことであるが、AR膜に使用される低屈折率ポリマー層は通常、約1.3〜1.4の範囲の屈折率を有する、フッ素含有ポリマー(「フルオロポリマー」または「フルオロ化ポリマー」)から誘導される。フルオロポリマーは、慣用される炭化水素系の物質に比較してユニークな利点を与えるが、そのような利点としては、化学的な不活性さ(酸、塩基抵抗性に関連)、よごれおよび染み抵抗性(低表面エネルギーが理由)、低吸湿性、および屋外暴露および光条件下での抵抗性などが挙げられる。
【0005】
フルオロ化ポリマーコーティング層の屈折率は、層の中に含まれるフッ素の容積パーセントに依存する。フッ素含量が高くなる程、コーティング層の屈折率が低下する。
【0006】
しかしながら、フッ素含量が高くなるとそのコーティング層の表面エネルギーも低下し、その結果、そのフルオロポリマー層の、その層が結合されている他のポリマーまたは基材層に対する界面接着力が低下する。
【0007】
低屈折率層に使用するために検討されてきた他の物質としては、シリコーン含有ポリマー材料がある。シリコーン含有ポリマー材料は一般に、低屈折率である。さらに、シリコーン含有ポリマーコーティング層は一般に、フルオロポリマー系の層よりも表面エネルギーが高く、そのため、シリコーン含有ポリマー層は、他の層たとえば高屈折率層、または基材へのより容易に接着できる。このように接着力が上がるために、多層反射防止コーティングにおける引っ掻き抵抗性が改良される。しかしながら、シリコーン含有ポリマー材料は、フッ素含有物質に比較すると、より高い屈折率を有している。さらに、シリコーン含有ポリマー材料は、より低い粘度を有しているために、極めて薄いコーティング(約100ナノメートル未満)においては、欠陥が生じやすくなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、同伴される層または基材に対する界面接着力を改良しながらも、高いフッ素含量(従って低い屈折率)を有する反射防止膜のための低屈折率層が形成されれば、極めて望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、反射防止コーティングにおける低屈折率層として有用な組成物およびその組成物を形成させるための方法を提供する。
【0010】
本発明は、フルオロポリマーのユニークな耐久性および耐汚性に、シリコーン含有高分子量ポリマーの接着性の利点を組み合わせて、単一の低屈折率組成物とする。
【0011】
本発明は、シリコーン改質フルオロポリマーを提供するが、そのポリマーは、ヘキサフルオロプロピレンモノマー単位と組み合わせた少なくとも1種のフッ化ビニリデンのモノマーを有するフルオロポリマーを有機溶媒中に溶解させる第一の工程、およびそれに続けての、その混合物をアミノシランカップリング剤と反応させてアミノシラン改質フルオロポリマーを形成する工程により形成される。次いでそのアミノシランフルオロポリマーを加熱し、アルコキシシランのようなシラン化合物のオリゴマーを用いて部分的に縮合させる。そうして得られる組成物は、AR膜における低屈折率層としては理想的に適しているが、その理由は、その物質が、その上または下にある物質および基材に対する良好な濡れ性を示し、さらに充分な粘度性能を有しているからである。その物質は耐久性があり、また比較的容易に製造することができる。この物質は、転写可能な(transferable)AR膜における低屈折率層としても適している。転写可能な物質を(たとえば、光学的)基材に適用する一つの方法は、たとえばインモールド法または加熱プレス法のような、熱的適用技術の手段によるものである。
【0012】
本発明のその他の目的および利点は、以下の詳細な説明および添付の特許請求項を考慮し、添付の図面を参照することにより、明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に定義される用語に関しては、それらの定義は、別な定義が与えられない限り、本明細書の特許請求項および各所において適用される。
【0014】
「ポリマー」という用語には、ポリマー、コポリマー(たとえば、2種以上の異なったモノマーを使用したポリマー)、オリゴマー、およびそれらの組合せ、さらには混和性ブレンド物を形成しうるポリマー、オリゴマー、またはコポリマーが含まれると理解されたい。
【0015】
「低屈折率」という用語は、本発明の目的においては、基材に対する層として適用したときに、約1.45未満の屈折率を有するコーティング層を形成する、組成物または物質の性質を指す。
【0016】
「高屈折率」という用語は、本発明の目的においては、基材に対する層として適用したときに、約1.6を超える屈折率を有するコーティング層を形成する、組成物または物質の性質を指す。
【0017】
低屈折率層と高屈折率層との間の屈折率の差は、少なくとも約0.2である。
【0018】
しかしながら、一般論としては、高屈折率層よりも低い屈折率を有する低屈折率層を形成させることが、必要なことのすべてである。したがって、約1.42よりも少し高い屈折率を有する低屈折率層を、約1.6よりも少し低い屈折率を有する高屈折率層と結合させたときに、そこでその低屈折率層の屈折率がその高屈折率層の屈折率よりも低くなるようなコーティング層もまた、本発明で特に考慮の対象としているものである。
【0019】
終点で数値範囲を示している場合、その範囲の中に包含されるすべての数が含まれる(たとえば、1〜10の範囲には、1、1.5、3.33、10が含まれる)。
【0020】
本明細書および添付の特許請求項において使用する場合、「a」、「an」および「the」の単数形には、(その内容が明らかに他の事柄を指している場合以外は)、複数物も含まれる。したがって、たとえば、「一つの化合物(a compound)」を含む組成物と言ったときには、2種以上の化合物の混合物も含まれる。本明細書および添付の特許請求項において使用する場合、「または(or)」という用語は、(その内容が明らかに他の事柄を指している場合以外は)、「および/または」を含めた感覚で一般に使用されている。
【0021】
特に断らない限り、本明細書および特許請求項において使用される、成分の量、性質たとえば接触角の測定値などは、すべての場合において、「約(about)」の用語で修飾されているものと理解されたい。したがって、逆なことが指示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求項において言及される数値パラメーターは「おおよそ」であって、本発明の技術を使用して当業者が求めている、所望の性質に依存して変化させることができる。最低限でも、そして特許請求項の範囲に等価なものの原理の適用に限定する意図を有するものではないが、それぞれの数値パラメーターは、報告された有効桁数に照らし、通常の丸め方法を適用して、考慮すべきである。本発明の広汎な範囲において言及される数値範囲およびパラメーターは概略値ではあるものの、具体的な例において言及される数値は可能な限り正確に報告されている。しかしながら、いかなる数値も、それぞれの試験方法において見出される標準偏差から必然的にもたらされる、ある種の誤差を本質的に含んでいる。
【0022】
本明細書で使用するとき、「重量比」という用語は、特に断らない限り、コーティング組成物またはその反応生成物を基準にして、複数の成分の、相互に関して相対的な重量を指している。さらに、「重量パーセント(「percent by weight」または「weight percent」)」という用語は、特に断らない限り、コーティング組成物またはその反応生成物を基準にした、固形分重量パーセントを指す。
【0023】
一つの実施態様において、本発明は、光学基材に使用するのに好適な(たとえば、転写可能な)反射防止物質に関する。光学基材は、各種広い範囲の非ポリマー材料たとえばガラス、または各種の熱可塑性および架橋ポリマー材料たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、(たとえば、ビスフェノールA)ポリカーボネート、セルロースアセテート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリオレフィンたとえば各種のオプティカルデバイスに一般的に使用される、2軸配向ポリプロピレンなどを含むか、それらからなっていてよい。基材はさらに、ポリアミド、ポリイミド、フェノール樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、エポキシなどを含むか、それらからなっていてもよい。典型的には、基材は、ある程度は、目的とする用途のために望ましい光学的および機械的性質を基準に選択する。そのような機械的性質としては、典型的には、可撓性、寸法安定性および耐衝撃性が挙げられる。基材の厚みもまた、典型的には、目的とする用途に依存する。ほとんどの用途においては、基材の厚みが約0.5mm未満であるのが好ましく、より好ましくは約0.02〜約0.2mmである。自立性のポリマー膜が好ましい。ポリマー材料は、慣用される膜製造技術たとえば、押出し法や、場合によってはその押出した膜を1軸または2軸配向させる方法を用いて、膜に成形することができる。基材とハードコート層との間の接着性を改良する目的で、基材を、たとえば、化学処理、コロナ処理たとえば空気または窒素コロナ、プラズマ、火炎、または化学線照射などで処理することもできる。所望により、任意要素のタイ層またはプライマーを、基材および/またはハードコート層に適用して、層間接着力を向上させることもできる。
【0024】
ディスプレイパネルの場合においては、その基材は光透過性であるが、これは、光がその基材を通過して、そのディスプレイを見ることが可能である、ということを意味している。各種の光透過性光学膜が公知であって、たとえば、以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:多層光学膜、微細構造化膜たとえば再帰反射性シートおよび輝度増強膜、(たとえば、反射性または吸収性)偏光膜、拡散膜、さらには米国特許出願公開第2004/0184150号明細書(出願日:2004年1月29日)に記載されているような、(たとえば、2軸)抑制膜(retarder film)および補償膜(compensator film)。
【0025】
米国特許出願公開第2003/0217806号明細書には、多層光学膜、すなわち、異なった屈折率のミクロ層を配列することによって少なくとも部分的には、所望の透過性および/または反射性を与える膜が記載されている。それらのミクロ層は異なった屈折率特性を有していて、そのために、いくつかの光は隣接するミクロ層の間の界面で反射される。それらのミクロ層は充分に薄いので、複数の界面で反射された光が増加的干渉または相殺的干渉を受けて、その膜本体に所望の反射的性質または透過的性質を与える。紫外、可視、または近赤外の波長の光を反射するように設計された光学膜では、それぞれのミクロ層は一般に、約1μm未満の光学的厚み(すなわち、物理的な厚みと屈折率を掛け合わせたもの)を有する。しかしながら、より厚い層が含まれていてもよいが、そのような層としてはたとえば、膜の外側表面でのスキン層、あるいは膜の内部に配されていてミクロ層のパケットを分離する、保護境界層などが挙げられる。多層光学膜本体にはさらに、積層物中の多層光学膜の2枚以上のシートを接合させるための、1層または複数の厚い接着剤層が含まれていてもよい。
【0026】
多層光学膜本体の反射性および透過性は、それぞれのミクロ層の屈折率の関数である。それぞれのミクロ層は、少なくとも膜の局所的な位置においては、面内屈折率のnx、ny、ならびに膜の厚み軸に関連する屈折率nzによって、その特性を表すことができる。これらの指数は、相互に直交するx−、y−、およびz−軸の方向に偏光された光に対する主題物質の屈折率を示している。実際には、屈折率は、適切な材料の選択と加工条件によって調節される。膜は、2種のポリマーA、Bを交互に、典型的には数十層または数百層の共押出しをし、それに続けて場合によっては、その多層押出し物を一つまたは複数の増倍ダイ(multiplication die)を通し、次いで、その押出し物を延伸させるかまたは他の方法で配向させて、最終的な膜を形成することによって製造することが可能である。得られた膜は、典型的には、数十層または数百層の個々のミクロ層からなるが、それらの厚みおよび屈折率を調節することによって、たとえば可視または近赤外におけるスペクトルの所望の領域に、一つまたは複数の反射バンドを与えることができる。かなりの数の層を用いて高い反射率を達成するためには、隣接するミクロ層で、x−軸の方向における偏光の屈折率の差(δnx)が少なくとも0.05を示すのが好ましい。二つの直交偏光で高い反射率を望む場合には、隣接するミクロ層がさらに、y−軸の方向における偏光の屈折率の差(δny)も少なくとも0.05を示すのが好ましい。別な方法としては、一つの偏光状態の直角入射光を反射し、直交する偏光状態の直角入射光を透過するような多層スタックを作って、屈折率の差を0.05未満、好ましくは約0とすることも可能である。所望により、z−軸の方向における偏光の、隣接するミクロ層の間の屈折率の差(δnz)を調節して、斜め入射光のp−偏光成分について、所望の反射性を達成することも可能である。
【0027】
ポリマー多層光学膜を組み立てるのに使用することが可能な物質の例は、国際公開第99/36248号パンフレット(ニービン(Neavin)ら)に見出すことができる。それらの物質の内の少なくとも一つは、大きな絶対値を有する応力光学係数を持つポリマーであるのが望ましい。別の言い方をすれば、そのポリマーが、延伸させたときに、大きな複屈折(少なくとも約0.05、より好ましくは少なくとも約0.1、さらには0.2)を示すのが好ましい。その多層膜の用途に応じて、膜の面の二つの直交方向の間、一つまたは複数の面内方向の間および膜面に垂直な方向、あるいはそれらの組合せで、複屈折を起こさせてもよい。未延伸ポリマー層の間の等方性屈折率が広く分離しているような特別なケースでは、ポリマーの少なくとも一つにおける大きな複屈折が好ましいという条件は緩和することが可能であるが、それでも複屈折が望ましいことが多い。そのような特別なケースは、2軸プロセスを使用し、膜を二つの直交する面内方向に延伸させて形成させた、ミラー膜のため、および偏光子膜のためのポリマーの選択において起きる可能性がある。さらに、そのポリマーは、延伸をさせた後でも複屈折を維持することが可能で、それによって、仕上がりの膜にも所望の光学的性質が付与されるのが望ましい。多層膜の他の層に第二のポリマーを選択し、それによって、仕上がりの膜においても、その第二のポリマーの屈折率が、少なくとも一つの方向においては、それと同じ方向における第一のポリマーの屈折率とは顕著に異なっているようにすることも可能である。利便性のためには、2種だけの異なったポリマー物質を使用し押出しプロセスの間にそれらの物質を交互に重ねて、A、B、A、Bのような交互の層を形成させることにより、膜を組立てることも可能である。しかしながら、2種だけの異なったポリマー物質を交互に重ねることは、必須条件ではない。それに代えて、多層光学膜のそれぞれの層が、膜のどこにも存在しない一つだけの物質またはブレンド物からなっていてもよい。共押出しされるポリマーが、同一または類似の溶融温度を有しているのが好ましい。
【0028】
充分な屈折率の差および充分な層間接着力の両方を与える2種のポリマーの組合せの例を以下に挙げる:
(1)主として1軸延伸を用いたプロセスで製造される偏光多層光学膜のためには:PEN/coPEN、PET/coPET、PEN/sPS、PET/sPS、PEN/イースター(Eastar,登録商標)およびPET/イースター(Eastar,登録商標)であるが、ここで「PEN」はポリエチレンナフタレートを指し、「coPEN」はナフタレンジカルボン酸をベースとしたコポリマーまたはブレンド物を指し、「PET」はポリエチレンテレフタレートを指し、「coPET」はテレフタル酸をベースとしたコポリマーまたはブレンド物を指し、「sPS」はシンジオタクチックポリスチレンおよびその誘導体を指し、そしてイースター(Eastar,登録商標)は、イーストマン・ケミカル・カンパニー(Eastman Chemical Co.)から市販されているポリエステルまたはコポリエステル(シクロヘキサンジメチレンジオール単位と、テレフタレート単位とを含んでいると考えられる)を指す;
(2)2軸延伸プロセスのプロセス条件を操作することにより製造される偏光多層光学膜のためには:PEN/coPEN、PEN/PET、PEN/PBT、PEN/PETG、およびPEN/PETcoPBTであるが、ここで、「PBT」はポリブチレンテレフタレートを指し、「PETG」は第二のグリコール(通常はシクロヘキサンジメタノール)を用いたPETのコポリマーを指し、そして「PETcoPBT」は、テレフタル酸またはそのエステルと、エチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールの混合物とからのコポリエステルを指す;
(3)ミラー膜(着色ミラー膜を含む)のためには:、PEN/PMMA、coPEN/PMMA、PET/PMMA、PEN/エクデル(Ecdel,登録商標)、PET/エクデル(Ecdel,登録商標)、PEN/sPS、PET/sPS、PEN/coPET、PEN/PETG、およびPEN/ティー・エッチ・ブイ(THV,登録商標)であるが、ここで「PMMA」はポリメチルメタクリレートを指し、エクデル(Ecdel,登録商標)は、イーストマン・ケミカル・カンパニー(Eastman Chemical Co.)から市販されている熱可塑性ポリエステルまたはコポリエステル(シクロヘキサンジカルボキシレート単位、ポリテトラメチレンエーテルグリコール単位、およびシクロヘキサンジメタノール単位を含むと考えられる)であり、そしてティー・エッチ・ブイ(THV,登録商標)は、スリー・エム・カンパニー(3M Company)から市販されているフルオロポリマーである。
【0029】
好適な多層光学膜および関連の構成についてのさらなる詳細は、米国特許第5,882,774号明細書(ジョンザ(Jonza)ら)、ならびに国際公開第95/17303号パンフレット(オウダーキルク(Ouderkirk)ら)および国際公開第99/39224号パンフレット(オウダーキルク(Ouderkirk)ら)にも見出すことができる。ポリマー多層光学膜および膜本体には、それらの光学的、機械的、および/または化学的性質のために選択された追加の層およびコーティングが含まれていてもよい。米国特許第6,368,699号明細書(ギルバート(Gilbert)ら)を参照されたい。それらのポリマー膜および膜本体にはさらに、無機層、たとえば金属または金属酸化物コーティングまたは層が含まれていてもよい。
【0030】
表面エネルギーは、接触角や撥インキ性など各種の方法によって、特性表記することが可能であるが、それらの試験方法については実施例の項において述べる。記載されている表面層および物品は、少なくとも70度の水との静的接触角を示すのが好ましい。より好ましくは、接触角が少なくとも80度、さらに好ましくは少なくとも90度である。それに代わるか、または追加の考え方として、ヘキサデカンとの前進接触角が少なくとも50度、少なくとも60度であればより好ましい。表面エネルギーが低いということは、抗汚れ性があること、さらには露出されている表面を容易にクリーンにすることが可能であるということを示唆している。
【0031】
表面エネルギーが低いことの他の指標は、露出されている表面に適用したときにビーズを形成する、ペンまたはマーカーからのインキの量に関するものである。ティッシューまたは紙タオルを用いて露出された表面をぬぐうことによって、ペンおよびマーカーからのインキを容易に除去することが可能であるような場合には、その表面層および物品が「撥インキ性」を示しているとされるが、そのようなティッシューは、たとえば、ジョージア州ロズウェル(Roswell,GA)のキンバリー・クラーク・コーポレーション(Kimberly Clark Corporation)から、商品名「サーパス・フェイシャル・ティッシュー(SURPASS FACIAL TISSUE)」として市販されている。
【0032】
「光学ディスプレイ」または「ディスプレイパネル」という用語には、各種の照光式および非照光式ディスプレイパネルが含まれる。そのようなディスプレイとしては、マルチキャラクターおよび特にマルチキャラクター・マルチラインディスプレイたとえば液晶ディスプレイ(「LCD」)、プラズマディスプレイ、フロントおよびリアプロジェクションディスプレイ、ブラウン管(「CRT」)、標識、さらにはシングルキャラクターまたはバイナリーディスプレイたとえば発光管(「LED」)、信号ランプ、ならびにスイッチなどが挙げられる。そのようなディスプレイパネルの光透過性(すなわち、露出表面)基材は、「レンズ」と呼ばれることもある。本発明は、損傷を受けやすい表示面を有するディスプレイには特に有用である。
【0033】
本発明のコーティング組成物、その反応生成物、さらには保護物品は、各種の可搬性または非可搬性の情報表示デバイスに使用することが可能であって、そのようなデバイスとしては、以下のものが挙げられる:PDA、携帯電話(PDA/携帯電話複合タイプを含む)、タッチスクリーン、腕時計、カーナビゲーションシステム、全地球測位システム、測深機、計算器、電子ブック、CDおよびDVDプレーヤー、プロジェクションテレビスクリーン、コンピューターモニター、ノートパソコンディスプレイ、機器用計器、機器パネルカバー、グラフィックディスプレイのような標識など。それらのデバイスは、平面的な表示面を有していても、あるいは非平面的、たとえば少し曲面となった表示面を有していてもよい。
【0034】
本発明のコーティング組成物、その反応生成物、さらには保護物品は、各種のその他の物品に使用することも可能であり、そのような物品としては、以下のものが挙げられる:たとえば、カメラレンズ、眼鏡レンズ、双眼鏡レンズ、再帰反射性シート、自動車用窓、建築物用窓、列車用窓、航空機用窓、車両用前照灯および尾灯など。可能性のある用途として上に列記したものが、本発明を不当に限定すると考えてはならない。
【0035】
ここで図1を参照すると、ある物品、ここではコンピューターモニター10の斜視図が、ハウジング14の中に組み込まれた光学ディスプレイ12を有するものとして示されている。その光学ディスプレイ12は実質的に透明な材料であって、光学的増強性能を有し、それによって、使用者はテキスト、グラフィックスまたはその他の表示情報を読むことができる。
【0036】
図2に最適な状態で示してあるが、光学ディスプレイ12には、光学的基材16に接合された(コーティングされた)反射防止膜18が含まれている。その反射防止膜18には、互いに接合された少なくとも1層の高屈折率層22と低屈折率層20とが含まれていて、低屈折率層20が大気に露出されているのに対して、高屈折率層22は基材16と低屈折率層20との間に存在するようになっている。
【0037】
高屈折率層22は、単官能および多官能アクリレート架橋系を有する、慣用される炭素系のポリマー組成物である。本発明において高屈折率層22を形成させるのに使用できる高屈折率組成物の例としては、米国特許第5,932,626号明細書(フォン(Fong)ら、ミネソタ州セント・ポール(St.Paul,Minnesota)のミネソタ・マイニング・アンド・マニュファクチャリング・カンパニー(Minnesota Mining and Manufacturing Company)に譲渡);および米国特許第6,391,433号明細書(ジアン(Jiang)ら、日本国東京(Tokyo,Japan)のHOYA株式会社(Hoya Corporation)に譲渡)に記載のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0038】
低屈折率層20は、高屈折率層22とは併存できるように設計され、部分的にアミノシラン改質フルオロポリマーと縮合されたシリコーンアルコキシ樹脂のオリゴマーとの反応生成物から形成される。低屈折率層20を形成させるための方法については、後にさらに詳しく説明する。
【0039】
本発明を使用することが可能な物品としては、たとえば、レンズ、ブラウン管、フラットまたは曲面パネルディスプレイ、窓用膜、およびフロントガラスなどが挙げられる。言うまでもないことであるが、本発明はそのような物品に限定される訳ではなく、当業者の技能の範囲内の各種物品に使用することが可能であることは理解されたい。
【0040】
図示してはいないが、他の層を基材16に加えることも可能であって、そのようなものとしては、他のハードコーティング層、接着剤層などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。それらの層は、反射防止材料18の上に存在させる層と併存できるように設計された、慣用される炭化水素系組成物を用いて形成されす。
【0041】
さらに、反射防止材料18は、基材16に直接適用してもよいし、あるいは、別な方法として、転写可能な反射防止膜の剥離層に適用し、次いで加熱プレスまたは光放射適用技術を用いて、その剥離層から基材へと転写させてもよい。
【0042】
図3は、本発明の好ましい方法に従って、図1の低屈折率コーティング層20に使用される低屈折率コーティング組成物を形成させるための論理流れ図を示している。
【0043】
反射防止コーティング組成物を形成させるためには、ステップ100に示したように、まずフルオロポリマーを、相溶性のある有機溶媒の中に溶解させる。その溶液は、約10重量%のフルオロポリマーと90重量%の有機溶媒になるようにするのが好ましい。
【0044】
好適なフルオロポリマーは、(ポリ)テトラフルオロエチレン(「TFE」または「PTFE」)、ヘキサフルオロプロピレン(「HFP」)、および(ポリ)フッ化ビニリデン(「VdF」、「V2F」、または「PVdF」)として知られる構成モノマーから形成されるコポリマーである。TFE(1)、VdF(2)、およびHFP(3)のモノマー構造を以下に示す:
CF2=CF2 (1)
CH2=CF2 (2)
CF2=CF−CF3 (3)
【0045】
そのフルオロポリマーのコポリマーは、各種のモル量とした、構成モノマー(HFPおよびVdF)の少なくとも2種、より好ましくは3種すべての構成モノマーからなる。本発明の目的のためには、3種すべてのフルオロポリマーのコポリマーを以後はTHVと呼ぶこととし、それに対して、HFPとVdFとからなるコポリマーを以後はFKM(別名、ヘキサフルオロプロピレンビニリデンフルオリド)と呼ぶこととする。FKM(4)およびTHV(5)の化学式を以下に示す:
【化1】

【0046】
本発明において使用することが考えられるTHVの市販されている形態の一つが、ダイネオン(Dyneon,登録商標)フルオロサーモプラスチック(Fluorothermoplastic)THV220であるが、これは、ミネソタ州セント・ポール(Saint Paul,Minnesota)のスリー・エム(3M)で製造されている混合物である。FKMの市販されている一つの形態が、デュポン(DuPont)のダウ・エラストマー・バイトン(Dow Elastomer Viton,登録商標)A−201Cである。有用なフルオロポリマーとしてはさらに、以下のようなものが市販されている:たとえば、ミネソタ州セント・ポール(Saint Paul,Minn.)のダイネオン・LLC(Dyneon LLC)からの商品名THV230、THV500、THV530、フルオレル(Fluorel,登録商標)(HFP/VDF)、フルオレル−II(Fluorel−II,登録商標)(TFE/PP/VDF)、およびケル−エフ(Kel−F,登録商標)KF−800、フルオロエラストマー;エルフ・アトケム・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド(Elf Atochem North America Inc.)からの商品名カイナール(Kynar,登録商標)740、2800、9301;呉羽化学工業(Kureha Chemical Co.)からの商品名KFポリマー(KF polymer);ダイキン・アメリカ・インコーポレーテッド(Daikin America Inc.)からの、商品名ネオフルオロン(NEOFLUORON)VDF;セントラル硝子(Central Glass)からの商品名セフラール・ソフト(Cefral Soft,登録商標)G−150;旭硝子(株)(Asahi Glass Co.,Ltd.)からの商品名アフラス(AFLAS,登録商標)200;およびデュポン(DuPont)からの商品名ダウ・エラストマー・バイトン(Dow Elastomer Viton,登録商標)A−201C。
【0047】
本発明の好ましい実施態様において使用される、相溶性のある有機溶媒は、メチルエチルケトン(「MEK」)である。しかしながら、他の有機溶媒、さらには相溶性の有機溶媒の混合物を使用してもよく、そのようなものも本発明の範囲の中に入る。たとえば、考えられる他の有機溶媒としては、メチルイソブチルケトン(「MIBK」)、メチルアミルケトン(「MAK」)、テトラヒドロフラン(「THF」)、イソプロピルアルコール(「IPA」)、およびそれらの混合物などが挙げられる。
【0048】
得られる低屈折率層20の機械的な耐久性は、その低屈折率組成物に表面改質無機粒子を組み入れることによって、増強することができる。
【0049】
無機粒子は、実質的に単分散の粒径分布を有しているか、または2種以上の実質的に単分散分布のものをブレンドすることによって得られるポリモーダル分布であるのが好ましい。無機酸化物粒子は、典型的には凝集していない(実質的に散在している)が、それは、凝集が起きると、無機酸化物粒子の沈殿や、ハードコートのゲル化が生じるからである。それらの無機酸化物粒子は典型的には、粒径がコロイド状であって、5ナノメートル〜100ナノメートルの平均粒子直径を有している。これらの粒径とすることによって、バインダー樹脂の中への無機酸化物粒子の分散が容易となり、所望の表面性質と光学的透明度を有するセラマーが得られる。無機酸化物粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡法を使用して、所定の直径を有する無機酸化物粒子の数を数えることにより、測定することができる。無機酸化物粒子としては以下のものが挙げられる:コロイドシリカ、コロイドチタニア、コロイドアルミナ、コロイドジルコニア、コロイドバナジア、コロイドクロミア、コロイド酸化鉄、コロイド酸化アンチモン、コロイド酸化スズ、およびそれらの混合物。その粒子が二酸化ケイ素(SiO2)から形成されているのが最も好ましい。
【0050】
表面粒子を、フルオロポリマー相のフルオロポリマー成分に対する反応的官能基が得られるように設計されたポリマーコーティングを用いて改質する。そのような官能基としては、メルカプタン、ビニル、アクリレート、および、無機粒子と低屈折率フルオロポリマーとの間の相互作用を増強すると考えられるもの、特にブロモまたはヨード硬化部位モノマーなどが挙げられる。表面改質することによって、ポリマーネットワーク内部の粒子がさらに架橋され、またフルオロポリマーマトリックスの中で粒子が充分に分散できるようになる。
【0051】
次いで、ステップ110においては、アミノシランカップリング剤の溶液をそのフルオロポリマー溶液に添加する。好ましいアミノシランカップリング剤の一つが、3−アミノプロピルメトキシシランである:
2N−(CH23−Si(OMe)3 (6)
【0052】
その混合物を充分な時間静置させておくと、混合物が完全に反応して、アミノ−シラン改質フルオロポリマーが形成される。本発明の好ましい実施態様においては、その混合物は、室温で約10日間反応させておいた。
【0053】
アミノシラン改質フルオロポリマーを形成させるための反応メカニズムは、THVまたはFKM分子の中のHFP基の隣に位置するフッ化ビニリデン基のところで、好適かつ実質的に起きる。その反応メカニズムは、VdF基の脱フッ化水素反応と、それに続くマイケル付加反応であって、化学的には次式のように表される(説明の目的で、アミノシランカップリング剤として3−アミノプロピルメトキシシランを使用している):
【化2】

【0054】
この反応は、フルオロポリマーに含まれるHFP基に結合するVdF基の数による制限がある。その結果、溶液の中の過剰のアミノシランカップリング剤は、(たとえ、あったとしても)わずかな追加の化学的効果しか有さない。アミノシランカップリング剤は、全混合物の約5〜10重量パーセントの範囲で添加する。
【0055】
ステップ120においては、アミノシラン改質フルオロポリマー溶液を容器に入れ、次の化学式を有するシラン化合物のオリゴマーと反応させる:
Si−(OR1)mR2n (8)
ここでR1およびR2はアルキル基であり、mは1〜4の整数であり、nは0〜3の整数であり、ここでmとnの和が4である。それらの基準を満たす好適な二つのオリゴマーは、有機アルコキシシランおよびテトラアルコキシシランである。それらに代わる好適なシランコンパウンディングオリゴマーでは、R1アルキルの部分がアセチル基で置換されていてもよい。
【0056】
シラン化合物のオリゴマーが、有機アルコキシシランとテトラアルコキシシランとの混合物であるのが好ましく、得られる組成物中におけるテトラアルコキシシラン対有機アルコキシシランの重量比は、約2:1〜3:1であるのが好ましい。混合物中の固形分は、反応を停止させる、相溶性のある有機溶媒を用いて約2〜10重量パーセントに調節するのが理想的であるが、より望ましくは約8〜10重量パーセントである。反応を停止させ、ゲル化を防止するのに適した一つの溶媒は、THFである。しかしながら、THFは低い沸点を有しているので、沸点がより高い溶媒、たとえばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(「PMA」)を、溶媒パッケージの一部に加えるのが好ましい。
【0057】
その混合物を加えた容器を加熱した水浴の中にいれて、60〜80℃で約1〜4時間の間加熱して、アミノ−シラン改質フルオロポリマー溶液のペンダントしたシリコーンメトキシ基を、縮合反応を介して、有機アルコキシシランまたはテトラアルコキシシランのアルコキシシラン部分と反応させる。テトラメトキシシラン(テトラアルコキシシランオリゴマー)およびアルキル−トリメトキシシラン(有機アルコキシシランオリゴマー)と共に混合して、最終的な生成物であるシリコーン改質フルオロポリマーを第一に形成させるための反応メカニズムを次に示す:
【化3】

ここでFPは、フルオロポリマー主鎖の残りの部分を示している。
【0058】
その混合物の中に残っている過剰のテトラアルコキシシランオリゴマーおよび有機シランオリゴマーは、次式の反応メカニズムに従ってさらに反応して、三次元架橋ネットワークを形成する:
【化4】

【0059】
ステップ130においては、得られた生成物のシリコーン改質フルオロポリマーを水浴から取り出し、有機溶媒を用いて、固形分約10重量パーセント未満、より好ましくは約2重量パーセントにまで薄める。溶媒を添加することによって、本質的には反応を停止させることになって、それにより、さらに反応が進行して生成物がゲル化してしまうのを防いでいる。THFは、得られる生成物の反応停止のための好ましい溶媒であるが、薄膜コーティングに使用するには乾燥速度があまりにも速すぎる。したがって、THFと、他の相溶性のある高沸点溶媒たとえばシクロヘキサノンやMIBKとの混合物を使用するのが好ましく、その混合の量は、適用するコーティングにおいて所望される速度に合わせる。
【0060】
さらに、溶液の安定性を向上させる目的で、たとえばジブチルスズジラウレートのような安定剤を、その最終混合物にさらに添加する。この安定剤は、得られた生成物の中に残っているアルコキシシランのいくつかとの間で錯体を形成する。安定剤は典型的には、希釈溶液の約1〜3重量パーセントになるように添加する。
【0061】
そうして得られる組成物は、低屈折率層としては理想的に適しているが、その理由は、その物質が、その上または下にある物質および基材に対する良好な濡れ性を示し、さらに充分な粘度性能を有しているからである。この物質は、その合成手順が比較的単純であるので、容易に製造することができる。
【0062】
成形後に、各種の方法により、転写可能な反射防止材料をその基材に適用することができる。一つの方法においては、転写可能な反射防止材料を放射線硬化法を用いて適用するが、それについては米国特許出願第11/027655号(出願日:2004年12月30日)に記載がある。代わりの方法としては、加熱適用技術たとえば加熱トランスファー法やインモールドトランスファープロセスがあるが、それらについては、以下の図4〜6のところで説明する。
【0063】
図4および5には、加熱適用技術により光学ディスプレイを成形するための二つの方法を示している。いずれの技術におけるプロセスにおいても、まず、転写可能な反射防止膜30を準備する。それら二つのプロセスにおける違いは、続いての、光学基材42への転写可能な膜の適用にある。
【0064】
転写可能な反射防止膜30を形成させるためには、剥離層32として知られる仮の転写性物質に、反射防止コーティング層34を1層ずつまず適用する。
【0065】
剥離層32は好ましくは、貯蔵または輸送のために、それに適用された各種コーティング層に粘着することが可能な材料である。さらに剥離層32は、後に続く適用工程の際に、反射防止材料34を基材42に安定に転写させる性能も有している。そのような要件を満たす好適な剥離層の一つが、約25−75ミクロンの厚みを有する、ポリエチレンテレフタレート膜すなわちPET膜である。
【0066】
次いで、マイヤーバー(Mayer bar)または類似の機器を用いて、濡れた低屈折率36の層をその剥離層32に適用する。次いでその濡れた層36をオーブンの中で乾燥させて、約75〜100ナノメートルの好ましい乾燥時厚みとする。
【0067】
低屈折率反射層36は、先に述べた、良好な耐久性と低屈折率を有するシリコーン改質フルオロポリマー物質であるのが好ましい。層16もまた、剥離層32に対する適切な粘着性と、後で適用される高屈折率層38に対する充分な粘着性とを有している。
【0068】
次いで、マイヤーバーまたは類似の機器を用いて、乾燥させた低屈折率層36に高屈折率材料の濡れた層を適用する。その高屈折率材料をオーブンの中で乾燥させ、PET膜32の側から紫外線光源を用いて照射して、約100〜125ナノメートルの厚みを有する高屈折率層38を形成させる。
【0069】
高屈折率マトリックス樹脂の主成分は、1個または複数の紫外光線(「UV」)硬化可能な二重結合を有するモノマーまたはオリゴマーであって、それにより、成形されて得られる層38が(高架橋密度によって)充分な凝集力を有するようにする。反応速度の面から、高屈折率マトリックス樹脂として使用するのに望ましいのは、アクリル系のモノマーまたはオリゴマーである。
【0070】
層38の中における架橋密度を上げるために、マトリックス樹脂の一部として、多官能性モノマーまたはオリゴマーも使用される。使用される2種の好ましい多官能性アクリレートは、ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(DPHA)およびペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート(PETA)である。
【0071】
さらに、引っ掻き抵抗性能を改良するために、マトリックス樹脂の一部として多官能性エポキシアクリレートを使用するのも望ましい。使用可能な2種の好適な多官能エポキシアクリレートは、ビスフェノールAエポキシアクリレートおよびクレゾールノボラックエポキシアクリレートである。
【0072】
二酸化ジルコニウム(「ZrO2」)および二酸化チタン(「TiO2」)は、高屈折率層38において使用するのに望ましい粒子である。高屈折率無機粒子の粒径は、充分な透過性であるためには、約50nm未満であるのが好ましい。導電性が必要とされる場合には、インジウムスズ酸化物(「ITO」)およびアンチモンスズ酸化物(「ATO」)を使用するのが望ましい。
【0073】
それらの高屈折率粒子は、一般的なオルガノゾル調製方法を用いて、有機溶媒とまず混合する。一例としては、水中ゾルを調製し、次いでその水を有機溶媒に、徐々に置き換える。他の例としては、有機溶媒の中に乾燥させた粒子をまず分散させる。一つの実施態様においては、乾燥させたルチル型微細TiO2粒子を分散剤と共に、サンドミルを用いて有機溶媒の中に分散させる。次いでそれらの粒子をマトリックス樹脂に導入して、層38のための高屈折率組成物を形成させる。
【0074】
高屈折率層38の低屈折率層16に対する接着力を上げるためには、高屈折率層38の組成にアルコキシシリル基が含まれているのが望ましい。このことを達成するには、高屈折率層の成分にシランカップリング剤が含まれているのが望ましい。好ましくは高屈折率層がアクリレート結合物質であるので、アクリル系官能基を有するシランカップリング剤を使用するのが好ましい。
【0075】
アミノシラン改質フルオロポリマーを形成させるための反応メカニズムは、THVまたはFKM分子の中のHFP基の隣に位置するフッ化ビニリデン基のところで、好適かつ実質的に起きる。その反応メカニズムは、VdF基の脱フッ化水素反応とそれに続くマイケル付加反応である。
【0076】
上述の低屈折率層36にもアルコキシシリル基が含まれているので、高屈折率層38を硬化させたときに、層の界面においてシロキサン結合が生じる。それらのシロキサン結合によって、基材42に適用した後の転写可能な材料30の引っ掻き抵抗性が改良されると考えられる。
【0077】
高屈折率層38のUV硬化プロセスの際には、低屈折率層36のPET剥離層32に対する接着力が望ましくないレベルまで上がってしまって、その後の剥離層32の剥離性能に悪影響を与えるようなことがないように、300nmよりも長いUV照射を使用すべきである。この理由から、同様に、高屈折率層38のUV暴露は、PET側32から実施して、短いUV光範囲をフィルター除去するのが好ましい。この高屈折率層38は典型的には約100nmと極めて薄いので、不活性ガス雰囲気下で層の照射をして、起こりうる酸素フリーラジカルによる妨害を実質的に防ぐのも望ましい。
【0078】
高屈折率層38溶液の溶媒としては、低屈折率層36の溶解性も考慮に入れると、アルコール溶媒が望ましい。イソプロピルアルコール(「IPA」)が最適であると考えられる。高マトリックス樹脂38の溶解を助け、高屈折率層38の乾燥速度を調節するために、他の有機溶媒たとえばメチルエチルケトン(「MEK」)およびブチルセロソルブを使用することも可能である。
【0079】
次いで、マイヤーバーまたは類似の機器を用いてハードコーティング物質の濡れた層、たとえば層40を高屈折率層38に適用する。そのハードコーティング膜をオーブンの中で乾燥させ、PET膜12の側から紫外線光源に暴露させる。これにより、約5ミクロンの厚みを有するハードコーティング層が形成される。次いで、場合によっては、そして好ましくは、そのハードコート層40の暴露された表面にコロナ放電処理を適用する。
【0080】
ハードコーティング層40の目的は、引っ掻き傷の防止である。層の引っ掻き抵抗性は、ハードコーティング層40の架橋密度に依存する。さらに、ハードコート層40の高屈折率層38に対する接着力は、部分的には、ハードコーティング層40の高屈折率層38に対する相溶性に依存する。
【0081】
したがって、本発明において使用するのに望ましいハードコーティング組成物は、上に存在するアクリル系高屈折率層38に対する界面接着力を上げる、アクリル系のUV硬化可能な系である。さらに、多官能アクリル系モノマーおよび多官能ポリウレタンアクリレートを使用するのが望ましい。可撓性を改良することが目的ならば、3またはそれ以上の官能性のアクリレート樹脂よりは、2官能アクリレート樹脂の方が好ましい。
【0082】
次いで、マイヤーバーまたは類似の機器を用いて、接着剤材料41、たとえば層41をハードコーティング層40に適用し、オーブンの中で乾燥させて、接着剤層を形成させる。予めハードコーティング層40に適用したコロナ放電処理が効果を発揮して、ハードコーティング層40と接着剤層41との間の界面接着力が上昇する。接着剤層41が約2マイクロメートルの厚みを有しているのが好ましい。接着剤層41は、それが適用される基材材料22およびハードコーティング層40との親和性を基準にして選択する。ポリ塩化ビニル/ポリ酢酸ビニルのコポリマーならびにアクリル系ポリマーをこの目的で使用するのが好ましい。
【0083】
このようにして、図2および3の転写可能な反射防止層30が完全に形成され、必要となるまで保存される。
【0084】
転写可能な反射防止材料を熱的に接合させる一つの方法には、下部取付板と上部取付板とを有する型を備える工程;光学基材および前記転写可能な反射防止材料を導入して、前記接着剤層が光学基材に密着するようにする工程;上部および下部取付板を加熱する工程;型を閉じ、それにより接着剤層を光学基材に接着させる工程;型を開く工程;および型からオプティカルデバイスを取り出す工程;が含まれる。
【0085】
さらに図2に見られるように、転写可能な反射防止層30および光学基材42を加熱型46の中に置き、接着剤層41を基材42に密着させる。次いで、型46を閉じる。接着剤層41を基材42に接着させるのに充分な予め決められた時間、加熱された上側プレート48を第一の圧力で剥離層42の上に押しつけると共に、加熱した下側プレート50を基材42の上に逆方向に押しつける。次いで型46を開いて、転写可能な層30と結合された光学基材を取り出し、冷却する。次いで、剥離層32を低屈折率層36から剥がす。このようにして、光学基材42に適用された転写可能な反射防止膜30が得られる。
【0086】
別な方法として、図3に示すように、下記の図3〜5で説明するように、インモールドトランスファープロセスによって光学基材を成形しながら、転写可能な反射防止膜30を光学基材42に適用することができる。
【0087】
そのような方法には、成形ダイのインナーキャビティの中に転写可能な反射防止材料を導入する工程;成形ダイを閉じる工程;そのインナーキャビティを実質的に充満する量の溶融ポリマー材料を射出する工程;溶融ポリマー材料を冷却する工程;成形ダイから適用された転写可能な反射防止材料を有する光学基材を取り出す工程;およびその低屈折率層から剥離層を剥がす工程;が含まれる。
【0088】
図3を参照すると、まず転写可能な反射防止膜30を、第一部材75と第二部材77との間の射出用型73の中に置く。剥離層32は、第二部材77の近くに置き、第一部材75からは離す。
【0089】
図4に見られるように、型73を閉じ、転写可能な膜30がそれぞれ第一部材75および第二部材77の内側表面79、81によって画定されるキャビティ71の中にあるようにする。ある量の溶融させた光学基材ポリマー材料83を、第一部材75の中の開口部85を通して、予め定められた温度と圧力で導入(すなわち、射出)する。その溶融された材料83がキャビティ71を充満させ、転写可能な膜10を第二部材77の内側表面81に押しつける。次いで、その溶融物質79を冷却して光学基材42を成形する。接着剤層41と冷却された基材42との間の相互作用によって、転写可能な反射防止膜30を成形された基材と結合させる接着力が生じる。
【0090】
最終的には、図5に示したように、型73を開き、光学基材および転写可能な膜30を、キャビティ71から取り出す。次いで剥離層32を低屈折率層36から剥がすと、成形された光学ディスプレイが残る。
【0091】
本発明の転写可能な反射防止材料はいくつもの利点を与える。第一には、その材料がPET膜に対して強い接着力を有していないので、追加の剥離層がなくても、安定した転写が達成される。第二には、デウェットの問題を起こすことなく、低屈折率層の上に高屈折率層が安定的に構成される。第三には、低屈折率層が、シロキサン結合を形成する多くの官能基を含んでいるために、得られた材料が高い耐久性を達成する。第四には、低屈折率層が充分に多孔質であるために、適用したときに高屈折率層がその中に部分的に浸透することが可能となり、層の間の接着力が改良され、その結果コーティング層全体において引っ掻き抵抗性が改良される。
【実施例】
【0092】
実施例:
以下に示す方法により、シリコーン材料改質フルオロポリマーを含む、3種の組成物を調製した。
【0093】
実施例1
フルオロプラスチック/シリコーンアルコキシオリゴマー系(「L−1」)の調製
(a)フルオロプラスチックの改質
4gのTHV220(ダイネオン(Dyneon))をMEKに溶解させ、40gの10重量パーセント溶液を調製した。その溶液に、255gの酢酸エチルおよび0.74gのオリゴマー化アミノシランカップリング剤(LJ−292130、住友スリーエム(Sumitomo 3M))の60重量%溶液を添加し、混合した。その溶液を気密容器に入れ、周囲条件下で10日間静置した。10日後に、その溶液(変性ポリマー溶液と呼ぶ)は、わずかに黄色であった。その固形分パーセントは約1.5重量パーセントであり、THV220のオリゴマー化アミノシランカップリング剤に対する重量比は90/10であった。
【0094】
(b)シリコーンアルコキシオリゴマーとの縮合
10gの変性ポリマー溶液、0.65gの有機アルコキシシランオリゴマー(SIオリゴマー2、ジーイー東芝シリコーン(GE Toshiba silicone))、0.33gのオリゴテトラメトキシシラン(X40−2308、信越化学(Shinetsu chemcial))、4.9gのメチルアミルケトン、および9.11gの酢酸エチルを容器の中で混合した。マイヤーバーを用いて、その混合物をPET基材物質に適用すると、得られたコーティング層は、極めて曇りの強い外観を示した。
【0095】
次いで、これと同一の混合物を80℃の水浴に4時間漬けた。その加熱した混合物を、マイヤーバーを用いてPET基材物質に適用した。この場合、得られたコーティング層は曇りのない透明な外観を示したが、このことは反応が起きたことを示唆している。加熱した混合物の固形分パーセントを測定すると2重量パーセントであり、その加熱した混合物の中のフルオロポリマー/有機シリコーンオリゴマー/オリゴメトキシシランの重量比は23.7/23.7/52.6であった。
【0096】
実施例2
フルオロプラスチック/シリコーンアルコキシオリゴマー系(「L−2」)の調製
(a)フルオロプラスチックの改質
4gのTHV220(ダイネオン(Dyneon))をMEKに溶解させ、40グラムの10重量パーセント溶液を調製した。その溶液に、240.5gのTHFおよび0.21gのアミノシランカップリング剤(KBM−903、信越化学(Shinetsu chemcial))を添加して混合した。次いで、その溶液を気密容器に入れ、周囲条件下で10日間静置した。10日後では、その溶液はわずかに黄色であった。混合物の固形分パーセント測定値は約1.5重量パーセントであり、THV220/KBM−903の重量比は95/5と測定された。
【0097】
(b)シリコーンアルコキシオリゴマーとの縮合
10gの変性ポリマー溶液、0.9gの有機アルコキシシランオリゴマー(SIオリゴマー2、ジーイー東芝シリコーン(GE Toshiba silicone))、0.63gのオリゴテトラメトキシシラン(X40−2308、信越化学(Shinetsu chemcial))、および7.23gのTHFを容器の中で混合した。次いで、マイヤーバーを用いて、その混合物をPET基材物質にコーティングすると、得られたコーティングは、極めて曇りの強い外観を示した。
【0098】
次いで、これと同一の混合物を80℃の水浴に2時間漬けた。その加熱した混合物を、マイヤーバーを用いてPET基材物質に適用した。この場合、得られたコーティングは曇りのない透明な外観を示した。その加熱した混合物の固形分パーセント測定値は4重量パーセントであり、混合物中のF−ポリマー/有機シリコーンオリゴマー/オリゴメトキシシランの重量比を測定すると、15/22.5/62.5であった。
【0099】
反応が完結した直後に、上述の反応生成物8gを、11.23のTHFおよび2.1gのシクロヘキサノンにより希釈した。
【0100】
実施例3
フルオロエラストマー/シリコーンアルコキシオリゴマー系(「L−3」)の調製
(a)フルオロエラストマーの改質
40gのFT−2430(ダイネオン(Dyneon))をMEKに溶解させ、400グラムの10重量パーセント溶液を調製した。その溶液に、1001.4gのTHFおよび2.11gのアミノシランカップリング剤(KBM−903、信越化学(Shinetsu chemcial))を添加して混合した。この溶液を気密容器に入れ、周囲条件下で10日間静置した。10日後では、その溶液はわずかに黄色であった。その固形分パーセントを測定すると約3.0重量パーセントであり、FT−2430/KBM−903の重量比を求めると95/5であった。
【0101】
(b)シリコーンアルコキシオリゴマーとの縮合
400gの変性ポリマー溶液、72gの有機アルコキシシランオリゴマー(SIオリゴマー2、ジーイー東芝シリコーン(GE Toshiba silicone))、50gのオリゴテトラメトキシシラン(X40−2308、信越化学(Shinetsu chemcial))、24gのTHF、および54gのPMAを容器の中で混合した。次いで、マイヤーバーを用いて、その混合物をPET基材物質にコーティングすると、得られたコーティングは、極めて曇りの強い外観を示した。
【0102】
次いで、これと同一の混合物を80℃の水浴に1.5時間漬けた。その加熱した混合物を、マイヤーバーを用いてPET基材物質に適用した。この場合、得られたコーティングは曇りのない透明な外観を示した。固形分パーセントの測定値は10重量パーセントであり、F−ポリマー/有機シリコーンオリゴマー/オリゴメトキシシランの重量比を求めると、15/22.5/62.5であった。
【0103】
反応が完結した直後に、上述の反応生成物290gを、448.2gのTHF、502.5gのMEK、335gのMIBK、および172.7gのシクロヘキサノンを用いて希釈した。さらに、そうして得られた混合物に、D−ブチルスズジラウレートのMEK中10%溶液を8.7g添加した。
【0104】
結果の比較
マイヤーバーを用いて、L−1、L−2、およびL−3を75umのPET膜基材物質の上にコーティングし、乾燥させた(目標厚み:約110nm)。比較の目的で、市販されている材料の4種のサンプルもまた調製し、同じ程度の厚み(95〜110nm)で75umのPET膜基材物質の上に適用して、L−1、L−2およびL−3に対する比較評価をした。それらの市販物質は、THV220の酢酸エチル中1.5%溶液(「C−1」)、MIBK中TMO11(JSR)(「C−2」)、オリゴオルガノシラン物質の市販溶液である、IPA中希釈SIオリゴマー2(ジーイー東芝シリコーン(GE Toshiba silicone))(「C−3」)、および市販のオリゴオルガノシラン物質のIPA中希釈KR−400(信越化学(Shinetsu chemcial))(「C−4」)であった。
【0105】
次いで、それらのサンプルを、スペクトル反射率および表面品質(均質な平滑表面または不均質な平滑表面の点で)について比較した。スペクトル反射率の測定のために、低屈折率側の反対側のコーティングシートの上に黒色のアクリル板を取り付けた。550nmにおけるスペクトル反射率を、分光計F−20(フィルメトリックス(Filmetrics))により測定した。
【0106】
【表1】

【0107】
表Iから判るように、本発明の原理を具体化したサンプル(L−1、L−2、およびL−3)は、対照サンプルと比較して、改良されたスペクトル反射性能を有していた。さらに、L−1、L−2およびL−3の表面外観もまた、対照サンプルの表面品質と同程度か、あるいは多くの場合、それより良好であった。
【0108】
加熱適用技術を用いて適用した転写可能な反射防止材料例
1.低屈折率層のための溶液の調製
Lt−1の調製(フルオロ−エラストマーの改質):
まず、40gのFT−2430(ダイネオン(Dyneon))をMEKに溶解させ、400gの10重量パーセント溶液を調製した。その溶液に、1001.4gのTHFおよび2.11gのアミノシランカップリング剤(KBM−903、信越化学(Shinetsu Chemcial))を添加して混合した。得られた溶液を気密容器に入れ、周囲条件下で10日間静置した。10日後には、得られた溶液は少し黄色であった。その固形分パーセントは3.0重量パーセントであり、FT−2430/KBM−903の重量比は約95/5であった。
【0109】
Lt−1の調製(シリコーンアルコキシオリゴマーとの縮合):
400gの変性ポリマー溶液、72の有機アルコキシシランオリゴマー(SIオリゴマー2、ジーイー東芝シリコーン(GE Toshiba Silicone))、50gのオリゴテトラメトキシシラン(X40−2308、信越化学(Shinetsu Chemcial))、24gのTHF、および54gのPMAを混合した。マイヤーバーを用いてコーティングすると、得られたコーティングの外観は曇っていた。
【0110】
次いで、この混合物を80℃の水浴の中に1.5時間保った。マイヤーバーを用いてコーティングすると、得られたコーティングは曇りのない透明な外観を示した。固形分パーセントは10重量パーセントであり、F−ポリマー/有機シリコーンオリゴマー/オリゴメトキシシランの比は15/22.5/62.5に維持されていた。
【0111】
反応が完結した直後に、上述の反応生成物290gを、448.2gのTHF、502.5gのMEK、335gのMIBK、および172.7gのシクロヘキサノンを用いて希釈する。さらに、そうして得られた混合物に、ジブチルスズジラウレートのMEK中10%溶液を8.7g添加し、L−1と名付けた。
【0112】
Lt−2の調製:
テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、およびフッ化ビニリデン(VdF)のコポリマー(製品名:THV220、ダイネオン(Dyneon))をメチルエチルケトン(MEK)中に溶解させて、10重量パーセント溶液を形成させた。3gの10%THV溶液を、1.5gの酢酸エチルおよび0.5gのN−メチルピロリジノンを用いてさらに希釈した。この溶液をL−2と名付けたが、その固形分パーセントは1.5重量パーセントに維持した。
【0113】
Lt−3の調製:
溶液Lt−3は、メチルイソブチルケトン(MIBK)を用いてUV硬化可能なフッ素化アクリル系化合物(製品名:TM011、JSR)を希釈して1.5重量パーセント固形分とした、市販の溶液であった。
【0114】
Lt−4の調製:
溶液Lt−4は、市販のオリゴオルガノシラン物質(製品名:SIオリゴマー2、ジーイー東芝シリコーン(GE Toshiba Silicone))IPA中に2.0重量パーセント固形分になるように希釈したものであった。
【0115】
2.低屈折率層のための溶液の調製
TiO2分散体の調製:
500gのルチル構造を有するTiO2粒子(製品名:TTO−V−3、イシハラ(Ishihara))、250gの分散剤(製品名:ディスパービック(Disperbyk)2000、ビー・ワイ・ケー・ヘミー(BYK Chemie))、1040gのIPA、および210gのブチルセロソルブを充分に混合して、TiO2分散体を得た。その分散体の固形分パーセントを調節して、22.1重量パーセントとした。
【0116】
シランカップリング剤のオリゴマー(5103Hv)の調製:
被覆ガラスビン(covered glass bottle)の中で、5gのアクリルオキシプロピルメトキシシラン(製品名:KBM5103、信越化学(Shinetsu Chemical))、3.62gの脱イオン水、0.22gの0.1N塩酸水溶液および6gのIPAを互いに混合した。この混合物を80℃のオーブンに12時間保持した。最終的な固形分パーセントが23.5重量パーセントになるように調節した。
【0117】
高屈折率層のための溶液(H−1)の調製:
1gの上述のTiO2分散体を、ガラスビンの中で、13.92gのIPA、1.4gのMEK、0.87gのブチルセロソルブと混合し、その混合物を超音波混合で5分間処理した。この混合物に、1.22gのノボラックエポキシアクリレート(製品名:NKオリゴEA−7420、新中村化学(ShinNakamura Chemical))、1.22gのペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート(製品名:NKエステルA−TMM−3、新中村化学(ShinNakamura Chemical))、0.26gの上述の5103Hy、0.18gの光重合開始剤の5重量パーセントMEK中溶液(製品名:イルガキュア(Irgacure)369、チバ・スペシャルティ・ケミカル(Ciba Specialty Chemical))、および0.18gのジブチルスズジラウレートの5重量パーセントMEK中溶液、を添加した。得られた混合物を撹拌し、その固形分パーセントが約2.6重量パーセントとなるように調節した。
【0118】
高屈折率層のための溶液(H−2)の調製:
1gの上述のTiO2分散体を、ガラスビンの中で、14.12gのIPA、0.85gのMEK、0.87gのブチルセロソルブと混合し、その混合物を超音波混合で5分間処理した。この混合物に、1.53gのノボラックエポキシアクリレート(製品名:NKオリゴEA−7420、新中村化学(ShinNakamura chemical))、1.53gのペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート(製品名:NKエステルA−TMM−3、新中村化学(ShinNakamura chemical))、0.18gの光重合開始剤の5重量パーセントMEK中溶液(製品名:イルガキュア(Irgacure)369、チバ・スペシャルティ・ケミカル(Ciba specialty chemical))、および0.18gのジブチルスズジラウレートの5重量パーセントMEK中溶液、を添加した。得られた混合物を撹拌し、その固形分パーセントが2.6重量パーセントとなるように調節した。
【0119】
高屈折率層のための溶液(H−3)の調製:
1gの上述のTiO2分散体を、ガラスビンの中で、13.92gのIPA、1.4gのMEK、0.87gのブチルセロソルブと混合し、その混合物を超音波混合で5分間処理した。この混合物に、2.44gのペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート(製品名:NKエステルA−TMM−3、新中村化学(ShinNakamura chemical))、0.26gの上述の5103Hy、0.18gの光重合開始剤の5重量パーセントMEK中溶液(製品名:イルガキュア(Irgacure)369、チバ・スペシャルティ・ケミカル(Ciba specialty chemical))、および0.18gのジブチルスズジラウレートの5重量パーセントMEK中溶液、を添加した。得られた混合物を撹拌し、その固形分が2.6重量パーセントとなるように調節した。
【0120】
高屈折率層のための溶液(H−4)の調製:
1gの上述のTiO2分散体を、ガラスビンの中で、13.92gのIPA、1.4gのMEK、0.87gのブチルセロソルブと混合し、その混合物を超音波混合で5分間処理した。この混合物に、2.44gのノボラックエポキシアクリレート(製品名:NKオリゴEA−7420、新中村化学(ShinNakamura Chemical))、0.26gの上述の5103Hy、0.18gの光重合開始剤の5重量パーセントMEK中溶液(製品名:イルガキュア(Irgacure)369、チバ・スペシャルティ・ケミカル(Ciba Specialty Chemical))、および0.18gのジブチルスズジラウレートの5重量パーセントMEK中溶液、を添加した。得られた混合物を撹拌し、その固形分パーセントが2.6重量パーセントとなるように調節した。
【0121】
3.ハードコーティングのための溶液(HC−1)の調製:
ガラスビンの中で、3gのポリウレタンアクリレートのトルエン中50重量パーセント溶液(製品名:U−15HA、新中村化学(ShinNakamura chemical))、1.5gのペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート(製品名:NKエステルA−TMM−3、新中村化学(ShinNakamura chemical))、1.29gの1.6−ヘキサンジオールジアクリレート(製品名:NKエステルA−HD−N、新中村化学(ShinNakamura chemical))、2.14gの光重合開始剤の10重量パーセントのトルエン中溶液(製品名:イルガキュア(Irgacure)184、チバ・スペシャルティ・ケミカル(Ciba specialty chemical))、および3.32gのトルエンを混合、撹拌した。その固形分パーセントを調節して、40重量パーセントとした。
【0122】
4.接着剤層のための溶液(Adh−1)の調製:
ガラスビンの中で、10gのアクリルポリマーのMEK中20重量パーセント溶液(製品名:パラロイド(Paraloid)B−44、ローム・アンド・ハース(Rohm&Haas))、2.2gのMEK、および1.13gのシクロヘキサノンを混合し、充分に撹拌した。その固形分パーセントを調節して、15重量パーセントとした。
【0123】
実施例1:
75umのPET(製品名:O−75、帝人(Teijin))の上に、マイヤーバー#6を用いて上述のL−1をコーティングし、80℃のオーブンで30秒間乾燥させてから、120℃のオーブンに20秒間入れて、約90nmの厚みを有する低屈折率層を作った。その低屈折率層の上に、マイヤーバー#8を用いてH−1をコーティングし、80℃のオーブンで30秒間乾燥させてから、120℃のオーブンに20秒間入れた。そのH−1コーティングした膜を、窒素ガス雰囲気下で120Wフュージョン(Fusion)ランプ(Dバルブ)を用いて、PET剥離層側から8秒間UV露光させて、約130nmの厚みを有する高屈折率層を作った。その高屈折率層の上に、マイヤーバー#10を用いてHC−1をコーティングし、80℃のオーブンで60秒間乾燥させた。そのコーティングした膜を、N2雰囲気下で120Wフュージョン(Fusion)ランプ(Dバルブ)を用いて、PET剥離層側から8秒間UV露光させて、約5umの厚みのハードコーティング層を作った。されに、そのハードコーティング層の上に、マイヤーバー#9を用いてAdh−1をコーティングし、80℃のオーブンで60秒間乾燥させて、約2umの厚みの接着剤層を作ることで、転写可能なAR材料(TAR−1と名付けた)が完成した。
【0124】
次の工程において、TAR−1と、7cm平方で厚み2mmの市販のアクリル板とを組み合わせて、2枚の金属プレートを有する加熱プレス機の中に挿入し、30MPaの圧力で40秒間加熱プレスした。プレートの温度は、膜/アクリルの側が180℃、反対側が50℃であった。プレス処理した材料を取り出し、冷却してからPET膜を剥がした。その結果、反射防止層が満足のいくレベルでアクリル表面に転写した。
【0125】
実施例2:
実施例1におけるTAR−1を成形ダイの中に挿入し、PMMAを、射出温度240℃で射出成形した。プレス処理した材料を取り出し、冷却してからPET膜を剥がした。その結果、反射防止層が満足のいくレベルで成形品表面に転写した。
【0126】
実施例3:
TAR−2の製造と同じ手順をとったが、ただし実施例1のH−3を使用した。
【0127】
次の工程において、TAR−2と、7cm平方で厚み2mmの市販のアクリル板とを組み合わせて、2枚の金属プレートを有する加熱プレス機の中に挿入し、30MPaの圧力で40秒間加熱プレスした。プレートの温度は、膜/アクリルの側が180℃、反対側が50℃であった。プレス処理した材料を取り出し、冷却してからPET膜を剥がした。その結果、反射防止層が満足のいくレベルでアクリル表面に転写した。
【0128】
実施例4:
TAR−3の製造と同じ手順をとったが、ただし実施例1におけるH−1に代えてH−4を使用した。
【0129】
次の工程において、TAR−3と、7cm平方で厚み2mmの市販のアクリル板とを組み合わせて、2枚の金属プレートを有する加熱プレス機の中に挿入し、30MPaの圧力で40秒間加熱プレスした。プレートの温度は、膜/アクリルの側が180℃、反対側が50℃であった。プレス処理した材料を取り出し、冷却してからPET膜を剥がした。その結果、反射防止層が満足のいくレベルでアクリル表面に転写した。
【0130】
比較例T−1:
実施例1と同じ手順を用いたが、ただしLt−1に代えてLt−2を使用した。
【0131】
次の工程において、この転写可能なAR材料と、7cm平方で厚み2mmの市販のアクリルシートとを組み合わせて、2枚の金属プレートを有する加熱プレス機の中に挿入し、30MPaの圧力で40秒間加熱プレスした。プレートの温度は、膜/アクリルの側が180℃、反対側が50℃であった。プレス処理した材料を取り出し、冷却してからPET膜を剥がした。その結果、破断部分が低屈折率層と高屈折率層との界面となって、反射防止材料の転写には失敗した。この失敗の原因は、PET剥離層に対する低屈折率層の接着力が強すぎたためである。
【0132】
比較例T−2:
実施例1と同じ手順を用いたが、ただしLt−1に代えてLt−4を使用した。
【0133】
次の工程において、この転写可能なAR材料と、7cm平方で厚み2mmの市販のアクリルシートとを組み合わせて、2枚の金属プレートを有する加熱プレス機の中に挿入し、30MPaの圧力で40秒間加熱プレスした。プレートの温度は、膜/アクリルの側が180℃、反対側が50℃であった。プレス処理した材料を取り出し、冷却してからPET膜を剥がした。その結果、破断部分が低屈折率層と高屈折率層との界面となって、反射防止材料の転写には失敗した。この失敗の原因は、PET剥離層に対する低屈折率層の接着力が強すぎたためである。
【0134】
比較例T−3:
75umのPET(製品名:O−75、帝人(Teijin))の上に、マイヤーバー#6を用いて上述のLt−3をコーティングし、80℃のオーブンで30秒間乾燥させてから、120℃のオーブンに20秒間入れて、約90nmの厚みを有する低屈折率層を作った。その低屈折率層の上に、マイヤーバー#8を用いてH−1をコーティングし、80℃のオーブンで30秒間乾燥させたが、その乾燥中に、高屈折率層の中の有機溶媒が低屈折率層を熔解させてしまった。その結果、高屈折率層の上にいくつかの表面欠陥(模様)が観察されたので、実験を中断した。
【0135】
比較例T−4:
75umのPET(製品名:O−75、帝人(Teijin))の上に、マイヤーバー#6を用いて上述のLt−3をコーティングし、80℃のオーブンで30秒間乾燥させてから、120℃のオーブンに20秒間入れた。このコーティングされた膜を、窒素ガス雰囲気下で120Wフュージョン(Fusion)ランプ(Dバルブ)を用いて、PETの側から8秒間UV露光させて、約90nmの厚みを有する低屈折率層を作った。しかしながら、高屈折率層溶液をその低屈折率層の上にコーティングしたときに、激しいデウェット現象が認められ、高屈折率層を満足のいくレベルで作ることができなかった。
【0136】
比較例T−5:
実施例1と同様の手順を用いたが、ただしH−1に代えてH−2を使用した。
【0137】
次の工程において、この転写可能なAR材料と、7cm平方で厚み2mmの市販のアクリル板とを組み合わせて、2枚の金属プレートを有する加熱プレス機の中に挿入し、30MPaの圧力で40秒間加熱プレスした。プレートの温度は、膜/アクリルの側が180℃、反対側が50℃であった。プレス処理した材料を取り出し、冷却してからPET膜を剥がした。その結果、反射防止層が満足のいくレベルでアクリル表面に転写した。
【0138】
比較例T−6:
2mmの厚みを有する市販のアクリルシートを、何の処理も加えることなく使用した。
【0139】
実施例および比較例について、以下の性質を評価した:
【0140】
スペクトル評価:PSAによる反射防止処理したのとは反対側の上に黒色のPVCシートを置き、580nmにおけるスペクトル反射率を分光計、F−20(フィルメトリックス(Filmetrics))により測定した。この測定においては、580nmで反射が最小となる測定位置を選択して使用した。(比較例6における黒色アクリルシートでは、580nmにおける反射率を測定した。)
【0141】
引っ掻き抵抗性:極めて細いスチールウール(#0000スチールウール)を使用して、反射防止膜のサンプルの試験を行った。400gf/cm2の加重で、10サイクルのラビングをすることにより、サンプルを試験した。肉眼による観察によりサンプルを評価し、観察された引っ掻き傷の数を求めた。0引っ掻き傷は理想的な性能を示すが、ごく少量の目に見える引っ掻き傷がある表面では、一般的に受容可能な性能が示されたとする。
【0142】
転写性:肉眼による観察により、転写性を評価した。
【0143】
結果は以下の通りである:
【0144】
【表2】

【0145】
表IIから、転写可能な反射防止材料に使用した低屈折率組成物(L−1)が、他のサンプルに比較して、良好な反射率、引っ掻き抵抗性および転写性能を示したことが判る。表1はさらに、良好な結果を得るための、高屈折率組成物における好ましい因子も示している。したがって、表1は、転写可能な反射防止コーティングにおいて使用することが可能な好適な低屈折率および高屈折率組成物を示している。
【0146】
好ましい実施態様に即して本発明を説明してきたが、言うまでもないことではあるが、特に上述の教示を考慮すれば、当業者にとっては修正が可能であるので、本発明がそれらに限定される訳ではないということは理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】光学ディスプレイを有する物品の斜視図である。
【図2】本発明の好ましい実施態様に従って形成された低屈折率層を有する反射防止膜を示す、図1の物品を線2−2で切断した断面図である。
【図3】本発明の好ましい実施態様に従って低屈折率組成物を形成させるための、論理流れ図である。
【図4−6】本発明のまた別な好ましい実施態様に従って、転写可能な反射防止材料を形成し、光学基材に適用する方法の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低屈折率反射防止コーティング層として有用なシリコーン改質フルオロポリマー組成物であって、前記組成物が、
フッ化ビニリデンモノマー単位に結合された少なくとも1個のヘキサフルオロプロピレンモノマー単位を有するフルオロポリマー、
前記少なくとも1個のフッ化ビニリデンモノマー単位の前記1個と反応したアミノシランカップリング剤、および
前記アミノシランカップリング剤と部分的に縮合されたシリコーンアルコキシ樹脂のオリゴマー、
の反応生成物を含み、ここで前記シリコーンアルコキシ樹脂の前記オリゴマーが、
Si−(OR1)mR2n
[式中、mは1〜4の整数であり、nは0〜3の整数であるが、m+n=4であり、そして
R1およびR2はアルキル基である]を含む、組成物。
【請求項2】
R1の一部がアセチル基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記フルオロポリマーが、THVおよびFKMからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記アミノシランカップリング剤が、アミノアルコキシシランカップリング剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記アミノアルコキシシランカップリング剤が3−アミノプロピルメトキシシランを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記シリコーンアルコキシ樹脂のオリゴマーが、有機アルコキシシラン樹脂およびテトラアルコキシシラン樹脂の混合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記混合物における前記テトラアルコキシシラン樹脂対前記有機アルコキシ樹脂の重量比が、約2:1〜3:1である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記有機アルコキシシラン樹脂が、アルキル−トリメトキシシラン樹脂およびアリール−トリメトキシシラン樹脂からなる群より選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記アルキル−トリメトキシシラン樹脂がフルオロアルキル−トリメトキシシラン樹脂を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
安定剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記安定剤がジブチルスズジラウレートを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
約5〜100ナノメートルの平均粒径を有する複数の無機粒子をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記複数の無機粒子が、約5〜100ナノメートルの平均粒径を有する複数の表面改質無機粒子を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
光学ディスプレイを有する物品であって、前記光学ディスプレイが、
(a)光学基材、および
(b)前記光学基材に結合された反射防止コーティングを含み、前記反射防止コーティングが高屈折率層および低屈折率層を含み、前記低屈折率層が請求項1に記載の反応生成物を含む物品。
【請求項15】
加熱転写可能な反射防止材料であって、
除去可能な剥離層、
前記除去可能な剥離層に結合された低屈折率層(ここで前記低屈折率層の組成物には請求項1に記載の組成物の反応生成物が含まれる)、
前記低屈折率層に結合された高屈折率層、
前記高屈折率層に結合されたハードコート層、および
前記ハードコート層に結合された接着剤層、
を含む反射防止材料。
【請求項16】
前記高屈折率層が、高屈折率無機粒子およびマトリックス樹脂の混合物を含む、請求項15に記載の反射防止材料。
【請求項17】
前記高屈折率無機粒子が、二酸化ジルコニウム粒子および二酸化チタン粒子からなる群より選択される、請求項16に記載の反射防止材料。
【請求項18】
前記マトリックス樹脂が、多官能アクリレート樹脂および多官能エポキシアクリレート樹脂の混合物を含む、請求項16に記載の反射防止材料。
【請求項19】
前記多官能アクリレート樹脂が、DPHAおよびPETAからなる群より選択される、請求項18に記載の反射防止材料。
【請求項20】
前記多官能エポキシアクリレート樹脂が、ビスフェノールAエポキシアクリレート樹脂およびノボラックエポキシアクリレート樹脂からなる群より選択される、請求項18に記載の反射防止材料。
【請求項21】
前記マトリックス樹脂が、アクリロイル基を有するシランカップリング剤を含む、請求項16に記載の反射防止材料。
【請求項22】
前記ハードコート層が、UV硬化可能な多官能ポリウレタンアクリレート樹脂、UV硬化可能な多官能アクリル系モノマー樹脂、UV硬化可能な2官能ポリウレタンアクリレート樹脂、およびUV硬化可能な2官能アクリル系モノマー樹脂、からなる群より選択される、請求項15に記載の反射防止材料。
【請求項23】
前記接着剤材料が、ポリ塩化ビニルおよびポリ酢酸ビニルのコポリマー、またはアクリル系ポリマーを含む、請求項15に記載の反射防止材料。
【請求項24】
抑制されたぎらつきならびに改良された耐久性および防汚性を有するオプティカルデバイスを形成するための方法であって、前記方法が、
(a)光学基材を有するオプティカルデバイスを準備する工程、
(b)請求項15に記載の前記転写可能な反射防止材料を前記オプティカルデバイスに熱的に接合させて、それにより前記接着剤層を前記光学基材に接合させる工程、および
(c)前記剥離層を前記低屈折率層から除去する工程、
を含む方法。
【請求項25】
低屈折率コーティング層として使用するのに適した組成物を形成するための方法であって、前記方法が、
相溶性のある有機溶媒の中に溶解させたフルオロポリマーを含むフルオロポリマー溶液を準備する工程であって、前記フルオロポリマーが、フッ化ビニリデンモノマー単位に結合された少なくとも1個のヘキサフルオロプロピレンモノマー単位を有するコポリマーを含む、工程、
アミノシランカップリング剤を用いて前記フルオロポリマーを改質して、アミノシラン改質フルオロポリマーを形成する工程、および
前記改質フルオロポリマーをシリコーンアルコキシ樹脂のオリゴマーと共に加熱して部分的に縮合させる工程であって、ここで前記シリコーンアルコキシ樹脂のオリゴマーが次式
Si−(OR1)mR2n
[式中、mは1〜4の整数であり、nは0〜3の整数であるが、m+n=4であり、そして
R1およびR2はアルキル基である]を含む工程、
を含む方法。
【請求項26】
相溶性のある有機溶媒の中に溶解させたフルオロポリマーを含むフルオロポリマー溶液を準備する工程が、
前記フルオロポリマー溶液が、約10重量%の前記フルオロポリマーと約90重量%の前記相溶性のある有機溶媒である、相溶性のある有機溶媒の中に溶解させたフルオロポリマーを含むフルオロポリマー溶液を準備する工程を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
アミノシランカップリング剤を用いて前記フルオロポリマーを改質して、アミノシラン改質フルオロポリマーを形成する工程が、
アミノアルコキシシランカップリング剤を用いて前記フルオロポリマーを改質して、アミノシラン改質フルオロポリマーを形成する工程を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
オリゴマー化アミノシランカップリング剤を用いて前記フルオロポリマーを改質して、アミノシラン改質フルオロポリマーを形成する工程が、
アミノシランカップリング剤を前記フルオロポリマー溶液に導入して混合物を形成する工程、および
前記アミノシランカップリング剤のアミン成分が前記フッ化ビニリデンモノマー単位と反応してアミノシラン改質フルオロポリマーを形成するのに充分な時間、前記混合物を室温に維持する工程、
を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記改質フルオロポリマーをシリコーンアルコキシ樹脂のオリゴマーと共に加熱して部分的に縮合させる工程が、
シリコーンアルコキシ樹脂のオリゴマーを前記アミノシラン改質フルオロポリマーに導入して混合物を形成する工程であって、前記シリコーンアルコキシ樹脂が式(Si−(OR1)mR2n)[式中、R1およびR2はアルキル基であり、mは1〜4の整数であり、nは0〜3の整数であり、m+n=4である]を有する工程、
前記混合物を、前記アミノシラン改質フルオロポリマー上の前記ペンダントシリコーンメトキシ基の少なくとも1個が、前記シリコーンアルコキシ樹脂の前記オリゴマーのアルコキシシラン部分と縮合するのに充分な予め決められた時間の間、高温に加熱する工程、
を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
シリコーンアルコキシ樹脂のオリゴマーを前記アミノシラン改質フルオロポリマーに導入して混合物を形成する工程が、
シリコーンアルコキシ樹脂のオリゴマーを前記アミノシラン改質フルオロポリマーに導入して混合物を形成する工程を含み、前記シリコーンアルコキシ樹脂の前記オリゴマーが、第一の量の有機アルコキシシラン樹脂および第二の量のテトラアルコキシシラン樹脂を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
シリコーンアルコキシ樹脂のオリゴマーを前記アミノシラン改質フルオロポリマーに導入して混合物を形成する工程が、
シリコーンアルコキシ樹脂のオリゴマーを前記アミノシラン改質フルオロポリマーに導入して混合物を形成する工程を含み、前記シリコーンアルコキシ樹脂の前記オリゴマーが、第一の量の有機アルコキシシラン樹脂と、第二の量のテトラアルコキシシラン樹脂とを含み、ここで、前記混合物中の前記テトラアルコキシシラン樹脂対前記有機アルコキシ樹脂の重量比が、約2:1〜3:1である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記混合物にクエンチング溶媒を導入することによって、前記組成物の固形分含量を約10パーセント未満の固形分に減少させることをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
安定剤を前記混合物に導入することをさらに含む、請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−527076(P2008−527076A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549398(P2007−549398)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/044114
【国際公開番号】WO2007/053158
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】