反射防止光触媒組成物及びこれを用いたガラス基材
【課題】本発明は、二酸化チタン系光触媒、バインダー、水及びアルコールを含む反射防止光触媒組成物、及びこれを用いたガラス基材を提供する。
【解決手段】本発明の組成物は、太陽光電池に使用されるガラス反射防止膜、ガラス照明器具などのガラス基材に適用することによって、光触媒の固有特性である有害ガス分解及び自己洗浄効果だけでなく、入射光エネルギーの散乱を防止し、光の透過率を向上させることができる。
【解決手段】本発明の組成物は、太陽光電池に使用されるガラス反射防止膜、ガラス照明器具などのガラス基材に適用することによって、光触媒の固有特性である有害ガス分解及び自己洗浄効果だけでなく、入射光エネルギーの散乱を防止し、光の透過率を向上させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光電池に使用されるガラス反射防止膜、ガラス照明器具などのようなガラス基材において、光の透過が効率良く起こり、光触媒によって汚染物質の浄化効果のある反射防止光触媒組成物、及びこれを用いたガラス基材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガラス照明器具の場合、透過率を向上させるためには、原材質(ガラス、アクリル、ポリカーボネートなど)の透明性を極大化し、光の透過率を増加させたり、ガラス反射防止膜の場合、SiO2の多孔層を利用し、透過率を向上させようとする研究が進行されている。しかし、原材質の透明性の極大化は、既にその限界に達しており、多孔層を利用した透過率の向上は、その効果が僅かである。
【0003】
従って、原材料に対する改善を通した透過率の増加に関する研究と共に、別途の表面コーティング層を設けて、ガラス製品の透過度を増加させようとする研究がなされている。従来の反射防止コーティングは、一般に、高低の屈折率を有する誘電体に基づいた層が、交互に積層される干渉薄層スタック(stack of interferential thin layer)で構成される。透明基板に蒸着される際、このようなコーティングの機能は、光反射係数を減少させることによって、光透過係数を増加させるのである。そのため、このように、コーティングされた基板は、より高い透光/反射光比を有し、これは、基板の後方に位置した物体の可視性を改善する。
【0004】
韓国特許登録第183429号(特許文献1)の“ガラス表面処理液とその製造方法”では、シリコンアルコキシドと水、アルコール及び触媒からなるTVブラウン管ガラスの表面処理液において、アルコールと水及び酸触媒が混合されたシリコンアルコキシドの部分ガス分解混合溶液に、ガラス粉末0.01〜5重量%と導電性金属粒子1〜20重量%とが含まれていることを特徴とするガラスの表面処理液を提示した。前記ガラス表面処理液をガラス表面にコーティングする場合、透明導電膜を形成し、低反射性能及び帯電防止効果に優れるようにした表面処理液と、その製造方法に関する。
【0005】
韓国特許登録第474585号(特許文献2)の“反射防止コーティングを有する窓ガラス”では、ガラス基板の一方の外部面にあり、本質的に、高屈折率と低屈折率とを交互に有する物質層スタック(stack)で構成される“A”反射防止コーティングとして、前記スタックの層の中、一部又は全部は、熱分解層(pyrolysed layers)である、前記“A”反射防止コーティングを有するガラス基板を備えるグレージング(窓ガラス、glazing game)であって、前記ガラス基板の他方の外部面の上には、本質的に、高屈折率と低屈折率とを 交互に有する物質層スタックで構成される、前記“A”反射防止コーティングと同じ類型の“A'”反射防止コーティングを備え、ここで、前記反射防止スタックにある前記低屈折率層(3、6、8、10)は、1.35と1.70との間の屈折率を有し、前記高屈折率層(2、5、7、9)は、1.85と2.60との間の屈折率を有し、そして、前記“A”及び“A'”反射防止スタックの層の光学的厚さは、光反射率(RL)を1.5%よりさらに小さい値に減少させるように選択されることを特徴とするグレージング(窓ガラス)を提示した。
【0006】
韓国特許登録第653585号(特許文献3)の“反射防止膜、反射防止膜の製造方法、及び反射防止ガラス”では、二つのタイプのシリコン化合物と、その他の化合物からなる反射防止コーティング膜に関して提示した。
【0007】
【特許文献1】韓国特許登録第183429号
【特許文献2】韓国特許登録第474585号
【特許文献3】韓国特許登録第653585号
【特許文献4】韓国特許登録第578044号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、光触媒コーティングを通じて、初期に照明器具や太陽電池のガラス反射膜の透過率向上を奏し、光触媒の固有特性により、有害ガス分解、及び超親水現状という二重効果による汚染防止結果として、コーティング膜の透過率を、時間の経過によっても、高く維持できる反射防止光触媒組成物、及びこれを用いたガラス基材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、二酸化チタン系光触媒、バインダー、水及びアルコールを含む反射防止光触媒組成物を提供する。
【0010】
又、前記二酸化チタン系光触媒1重量部に対し、バインダー10〜40重量部、水300〜500重量部、アルコール1000〜2000重量部を含むことが好ましい。
【0011】
又、前記二酸化チタン系光触媒として、二酸化チタンを単独、又は二酸化チタンとWO3、ZnO、SnO2、CdS、ZrO2との複合触媒、又は二酸化チタンに、窒素がドープされたTiO(2-x)Nxであることが好ましい。
【0012】
又、前記バインダーは、アルコキシシラン系バインダー、又は無機シラン系バインダーであることが好ましい。
【0013】
又、前記アルコキシシラン系バインダーとして、テトラプロピルオルトシリケート[Si(OPr)4]、テトラエチルオルトシリケート[Si(OEt)4]、テトラメチルオルトシリケート[Si(OMe)4]、及びアミノシラン系のうちから選択されるいずれか一つであることが好ましい。
【0014】
又、本発明は、前記反射防止光触媒組成物が表面にコーティングされたガラス基材を提供する。
【0015】
特に、前記ガラス基材は、太陽光反射防止膜、又はガラス照明器具であることが好ましい。
【0016】
特に、前記高硬度ガラス用光触媒組成物は、スプレーコーティング、含浸、ロールコーティング、布、又はスポンジでコーティングする方法のうちのいずれか一つにより、ガラス基材の表面に塗布されることが好ましい。
【0017】
特に、前記高硬度ガラス用光触媒組成物は、ガラス基材の表面に塗布された後、80〜150℃で熱硬化することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の反射防止光触媒組成物は、入射光エネルギーの散乱を防止し、光の透過率を向上させることはもちろん、二酸化チタン光触媒の固有特性である有害ガス分解、及び自己洗浄効果という二重作用で電気を利用した照明器具、及び太陽光電池材料に、汚染物質が付着しないように分解すると共に、光の効率を増大させることによって、経済的効果を極大化することが可能である。又、本発明の光触媒組成物は、高硬度を維持するので、キズや外部環境などによって剥げやすくないという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、太陽光電池に使用されるガラス反射防止膜、ガラス照明器具などに用いられる反射防止光触媒組成物に関し、より詳しくは、光触媒組成物の中には光触媒として作用する二酸化チタン、基材表面のコーティング膜の強度及び初期接着コーティングに優れたバインダーとして、アルコキシシラン系バインダー、又は無機シラン系バインダーを使用し、溶媒として、水とアルコールとを使用して有害ガス分解が可能であり、反射防止効果に優れた反射防止光触媒組成物を提供する。
【0020】
本発明では、二酸化チタン系光触媒として、二酸化チタン(TiO2)を単独、又は二酸化チタンとWO3、ZnO、SnO2、CdS、ZrO2との複合触媒、又は二酸化チタンに、窒素がドープされたTiO(2-x)Nxを使用することが好ましい。
【0021】
例えば、二酸化チタンとWO3との複合触媒TiO2-WO3の製造方法は、本出願人の登録特許である韓国特許登録第578044号(特許文献4)に記載された方法を用いることができる。前記登録特許では、(i) 直径が1.0〜1000nmのWOxナノ粒子、又は直径が1.0〜100nmのWOxナノチューブ(nanotube)を合成するステップ(ここで、xの範囲は2.0〜3.0であり、ナノチューブは、長さが直径の10倍以上であることを意味する。)、(ii) 前記WOxナノ粒子、又はナノチューブを、TiO2ナノ粒子と共に、水溶液に分散させたり、又はゾルゲル法(Sol-gel process)によって製造されたTiO2溶液に分散させて、十分撹拌するステップ、(iii) 前記混合溶液において溶媒を乾燥し、100〜800℃温度で熱処理するステップを通じて、二酸化チタンとタングステン酸化物とが複合化された可視光光触媒の製造方法を提示している。
本発明では、ガラス基材との密着のために、ガラスとの相溶性がの良いバインダーが使用され、例えば、アルコキシシラン系バインダー、又は無機シラン系バインダーを使用することができる。特に、前記アルコキシシラン系バインダーとして、テトラプロピルオルトシリケート[Si(OPr)4]、テトラエチルオルトシリケート[Si(OEt)4]、テトラメチルオルトシリケート[Si(OMe)4]、及びアミノシラン系のうちから選択されるいずれか一つであることが好ましい。
【0022】
以下、実施例に基づき、本発明について詳しく説明する。
【0023】
下記実施例は、本発明を具体的に説明するために例示するものであって、本発明の権利範囲がこれらの実施例によって限定されるものではない。
[実施例1:反射防止光触媒組成物]
本出願人の登録特許である、韓国特許登録第578044号(特許文献4)に明示されている実験方法にてWO3-TiO2光触媒粉末を製造し、光触媒の1次粒径は平均20nmの寸法を有し、2次粒径の寸法は約120nmであった。こうして作られた光触媒粉末を1%水溶液で作り、このように作られた光触媒を、ガラス基材の上に固定化するためには、光触媒溶液とガラスとの相溶性に優れたバインダーが必要である。無機バインダーの製造は、室温でエタノールとイソプロピルアルコールとから構成された溶媒に、テトラエチルオルトシリケート及びシリケートを添加した後に、50℃まで昇温しながら合成して、5%バインダー溶液を製造した。それぞれの光触媒及びバインダーを超純粋水とアルコールとを使用し、製造された溶液の体積を基準として、光触媒:バインダー:水:エタノールを1:4:3:9の割合で混合した後に、撹拌して、ガラス用高硬度有害ガスの分解、及び超親水性光触媒溶液を製造した。
【0024】
[実施例2〜4:光触媒組成物がコーティングされたガラス試験片]
市販されているガラス材料を用いて、2種類の大きさ(100mm×100mm×5mmの大きさのものを3個、50mm×50mm×3mmの大きさのものを9個)として準備した。大きいガラス試験片(実験例2で使用)の場合、試験片の半分部分を、小さい試験片の場合には、全体部分を、実施例1から合成した光触媒溶液を注入した、孔の直径の0.8mmの自動スプレー機器(銃)を用いて、単位面積(m2)当たり各々40、80、120mlを塗布した後に、80〜150℃乾燥オーブンで5分間硬化し、実施例2、3及び4の反射防止光触媒組成物がコーティングされたガラス試験片を製造して、物性を測定した。
【0025】
[実験例1:UV-Vis Spectrophotometer実験]
UV-Vis Spectrophotometer(Cintra社製、商品名10e)を用いて、コーティングされないガラス(図1でnatureと表記された曲線)と、前記実施例2(40ml/m2)、実施例3(80ml/m2)、及び実施例4(120ml/m2)のガラス試験片に対し、350nm〜900nmの波長範囲で透過率を測定した。
【0026】
以下、実験例1及び実験例2で、光透過率は下記式1によって計算した。
【0027】
(式1)
光透過率(%) = (基材を通過した光の強さ/初期光源の光の強さ)×100
又、光触媒コーティング面と、光触媒がコーティングされないコーティング面との光透過率の差は、下記式2によって計算した。
【0028】
(式2)
光透過率の差 = (光触媒面−ガラス面)の透過率
又、光透過向上率は、下記式3を用いて計算した。
【0029】
(式3)
光透過向上率(% ) = (透過率の差/ガラス面の透過率)×100
図1のように、実施例2のガラス試験片(塗布量40ml/m2)においては、400nm以下の波長範囲では、透過率が減少したが、400nm以上では、透過率が向上し、実施例3(80ml/m2)の場合、400nm以下の波長では、透過率が減少したが、460nm以上では、透過率が向上する結果を示した。しかし、実施例4(120ml/m2)の場合、光触媒の絶対量が増加することによって、680nm以下では、透過率が減少し、それ以上の波長では、透過率が向上した。
【0030】
図1を参考すると、600nm波長帯で、実施例2(40ml/m2)の場合、透過率が1.6%向上、実施例3(80ml/m2)の場合、透過率が1.0%向上、実施例4(120ml/m2)の場合、透過率が0.3%減少したことが分かる。
【0031】
[実験例2:光透過率実験]
光触媒による光透過率(反射防止膜形成)に対する実験は、光源及び周囲からの光の散乱及び反射効果を最小化するために、無光の黒色ペイントで塗った暗箱の中で実施した。上部に設けられた2種の光源、すなわち、CMH(ceramic Metal Halogen)ランプと3波長ランプとを光源として使用し、CMHの場合、光の強さが非常に強く、1次反射させた反射光を用いて、透過率を測定した。先ず、初期電球から出てくる光の照度を測定し(光の強さ(Lx)、TES社製、商品名1330)、次に、光触媒が塗布されないガラス試験片面、光触媒がコーティングされた試験片面を通過してくる光の照度を測定し、初期光の強さで割って、透過率を決定した。CMHランプを使用し、実施例2〜4(大きいガラス試験片を使用、各塗布量40、80、120ml/m2)のサンプルに対し、光透過率を測定した結果をそれぞれ図2〜4で示し、3波長ランプを光源として、実施例2〜4のサンプルに対し、光透過率を測定した結果をそれぞれ図5〜図7で示した。
【0032】
添付の図2〜4は、実施例2のガラス試験片〜実施例4のガラス試験片に対し、CMH光源を用いた照射において、光触媒がコーティングされたガラス面と、光触媒がコーティングされないガラス面との光透過率の差を示したグラフである。図2の結果を参照すると、実施例2のサンプルのように、ガラス試験片に、40mlの光触媒を塗布した際、最も優れた結果を示し、約2〜3%の光透過率の改善効果を示し、図3における実施例3のサンプルの場合、約1%の光透過率の改善効果を示し、図4における実施例4のサンプルの場合、約1.2%の光透過率の改善効果を示した。
【0033】
特に、反射光を用いた低照度において、より一層向上した透過率結果を示した。光触媒ナノ物質の構成は、二酸化チタンとシリケートとの屈折率の差による入射光の光透過率を向上させるものと理解される。又、図3における実施例3のサンプルに対する実験結果に比べて、図4における実施例4のサンプルに対する実験結果が改善された透過率を示すことから、塗布量に応じて透過率が変化するものであって、光触媒によるヘイズ(Haze)により、光の遮断効果が起きるという一般的な予測とは相違した結果を示した。
要するに、前記実施例2〜4のガラス試験片に対し、光透過率を実験するために、CMHランプを用いて、大きいガラス試験片の透過率を測定した結果、各実施例における大きいガラス試験片で、本発明の光触媒組成物をコーティングしない部分に比べて、本発明の光触媒組成物をコーティングした部分での平均光透過向上率が、実施例2のガラス試験片では2.79%、実施例3のガラス試験片では0.96%、実施例4のガラス試験片では1.23%ずづ増加した。
【0034】
又、3波長ランプを用いた場合、実施例2では、平均光透過向上率が2.08%(図5を参照)、実施例3では0.25%(図6を参照)、実施例4では0.42%(図7を参照)ずづ増加した。
【0035】
このような実験例2の結果と、前述の実験例1のUV-Vis Spectrophotometerの実験結果とを通じて、本発明の光触媒組成物をコーティングしたガラス試験片で、透過率が向上することを確認することができた。
特に、CMHランプや3波長ランプから出てくる光の波長の場合、紫外線の強度は、無視できる程の小さい量が出てくるので、主に可視光線の影響を受け、これは、陽光の場合にも紫外線が5%未満であり、主に可視光線の影響を受けるので、前記実験例1及び実験例2の実験結果は、陽光を対象として実験しても同様の結果を得ると予想される。
【0036】
[実験例3:光触媒コーティング膜の物理的強度]
実施例2〜4から作られたガラス試験片の光触媒コーティング膜の強度を測定するために、鉛筆硬度計(荷重1kg、鉛筆傾斜45°)で測定し、位相差顕微鏡を用いて、400倍の倍率で表面損傷を観察した。全ての試験片の場合、7H以上の膜強度を示し、表面を水で濡らした状態で、ウェットワイプスで50回以上こすった時にも、光触媒の表面離脱が観察されなかった。
【0037】
[実験例4:光触媒によるオレイン酸の光分解に伴う超親水性実験]
実施例2及び実施例4のガラス試験片のオレイン酸の光分解による超親水性の評価は、JIS R1703-1の試験方法にて、オレイン酸(95%以上)をヘプタン(98%以上)に溶かして、0.5%体積含有量を有するように作った溶液に、ディップコーティング(dip-coating)法(引張速度60cm/分)で試験片を作製し、70℃乾燥オーブンで15分間乾燥した後、12時間以上暗室で保管した。親水性を測定するために、対水接触角測定器(ドイツKRUSS社製、商品名DSA-100)を使用して、蒸溜水1μlを表面に落下させた際に、形成された基材と水滴とがなす対水接触角を測定した。紫外線の照射前に初期水接触角を測定した後に、紫外線の照射(BLB Lamp(UV-A)、1mW/cm2)時間に応じる水接触角の変化を、それぞれのガラス試験片で位置を変えながら、5回測定した。ディップコーティング(dip-coating)法による塗膜の差によって、オレイン酸の光分解が部分的に差が生じることが分かった。ガラスと水滴との間を12時間紫外線照射した後の水接触角を測定した光学写真の結果は、図8のようである。図8のように時間の経過により、水滴の広がり現象が大きくなることが分かる。このような現象は、オレイン酸が塗布されたガラスにおいて光触媒作用により、有機物の分解が起きると共に、ガラス表面に塗布された光触媒が光によって活性化し、空気中の水分と反応することにより、水素結合が容易となり親水化が起きるといえる。実施例2に対し、3回測定した結果の場合、図9のように、初期水接触角が約40°を示したが(図面で、実施例2-1、実施例2-2、実施例2-3は、実施例2に対する3回の実験結果を意味する。)、紫外線照射を48時間実施した後には、5°以下の超親水性特性を示すことに対し、実施例4の場合には、図10のように、初期水接触角が約6〜7°程度を示し(図面で、実施例4-1、実施例4-2、実施例4-3は、実施例4に対する3回の実験結果を意味する。)、紫外線照射によって3〜5時間の間に、5°未満の超親水性を示した。光触媒塗布量によりオレイン酸の光分解が加速化されることが分かる。
【0038】
[実験例5:光触媒膜の有機ガス分解試験]
実施例4から製造された小さいガラス試験片を用いて、有害ガス分解に対する光触媒活性を下記のように測定した。
【0039】
2-プロパノールが250ppm濃度で満たされた反応器に、前記サンプルを入れた。7W Xeランプで照射させながら、光触媒反応によって、2-プロパノールを分解した。2-プロパノールが光分解される間生成される中間体であるアセトン及び最終生成物である二酸化炭素の濃度を気体クロマトグラフィーで測定した。図11は、時間に応じる2-プロパノールの光分解による濃度の減少、図12は、二酸化炭素の濃度の増加、図13は、アセトンの濃度の増加を示す。
実験例5の結果のように、透明性に優れたガラス用高硬度光触媒溶液の特性を考慮する際、分解能力に非常に優れたことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施例2〜実施例4のガラス試験片を対象としたUV-Vis Spectrophotometerの実験結果である。
【図2】実施例2のサンプルに対し、CMHを用いた照射において、光触媒がコーティングされたガラス面と、コーティングされないガラス面との光透過率の変化を示した結果である。
【図3】実施例3のサンプルに対し、上同の実験をした結果である。
【図4】実施例4のサンプルに対し、上同の実験をした結果である。
【図5】実施例2のサンプルに対し、3波長ランプを用いた照射において、光触媒がコーティングされたガラス面と、コーティングされないガラス面との光透過率の変化を示した結果である。
【図6】実施例3のサンプルに対し、上同の実験をした結果である。
【図7】実施例4のサンプルに対し、上同の実験をした結果である。
【図8】本発明の光触媒のオレイン酸が塗布された光触媒ガラス試験片に紫外線照射の12時間経過による水接触角の変化を測定した結果である。
【図9】本発明の実施例2のサンプルのオレイン酸の光分解による水接触角の変化を示したグラフである。
【図10】本発明の実施例の4サンプルのオレイン酸の光分解による水接触角の変化を示したグラフである。
【図11】本発明の実施例4のサンプルの光分解効果による2-プロパノールの時間に応じる濃度の減少を示す。
【図12】二酸化炭素の生成増加を示すグラフである。
【図13】アセトンの生成増加を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光電池に使用されるガラス反射防止膜、ガラス照明器具などのようなガラス基材において、光の透過が効率良く起こり、光触媒によって汚染物質の浄化効果のある反射防止光触媒組成物、及びこれを用いたガラス基材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガラス照明器具の場合、透過率を向上させるためには、原材質(ガラス、アクリル、ポリカーボネートなど)の透明性を極大化し、光の透過率を増加させたり、ガラス反射防止膜の場合、SiO2の多孔層を利用し、透過率を向上させようとする研究が進行されている。しかし、原材質の透明性の極大化は、既にその限界に達しており、多孔層を利用した透過率の向上は、その効果が僅かである。
【0003】
従って、原材料に対する改善を通した透過率の増加に関する研究と共に、別途の表面コーティング層を設けて、ガラス製品の透過度を増加させようとする研究がなされている。従来の反射防止コーティングは、一般に、高低の屈折率を有する誘電体に基づいた層が、交互に積層される干渉薄層スタック(stack of interferential thin layer)で構成される。透明基板に蒸着される際、このようなコーティングの機能は、光反射係数を減少させることによって、光透過係数を増加させるのである。そのため、このように、コーティングされた基板は、より高い透光/反射光比を有し、これは、基板の後方に位置した物体の可視性を改善する。
【0004】
韓国特許登録第183429号(特許文献1)の“ガラス表面処理液とその製造方法”では、シリコンアルコキシドと水、アルコール及び触媒からなるTVブラウン管ガラスの表面処理液において、アルコールと水及び酸触媒が混合されたシリコンアルコキシドの部分ガス分解混合溶液に、ガラス粉末0.01〜5重量%と導電性金属粒子1〜20重量%とが含まれていることを特徴とするガラスの表面処理液を提示した。前記ガラス表面処理液をガラス表面にコーティングする場合、透明導電膜を形成し、低反射性能及び帯電防止効果に優れるようにした表面処理液と、その製造方法に関する。
【0005】
韓国特許登録第474585号(特許文献2)の“反射防止コーティングを有する窓ガラス”では、ガラス基板の一方の外部面にあり、本質的に、高屈折率と低屈折率とを交互に有する物質層スタック(stack)で構成される“A”反射防止コーティングとして、前記スタックの層の中、一部又は全部は、熱分解層(pyrolysed layers)である、前記“A”反射防止コーティングを有するガラス基板を備えるグレージング(窓ガラス、glazing game)であって、前記ガラス基板の他方の外部面の上には、本質的に、高屈折率と低屈折率とを 交互に有する物質層スタックで構成される、前記“A”反射防止コーティングと同じ類型の“A'”反射防止コーティングを備え、ここで、前記反射防止スタックにある前記低屈折率層(3、6、8、10)は、1.35と1.70との間の屈折率を有し、前記高屈折率層(2、5、7、9)は、1.85と2.60との間の屈折率を有し、そして、前記“A”及び“A'”反射防止スタックの層の光学的厚さは、光反射率(RL)を1.5%よりさらに小さい値に減少させるように選択されることを特徴とするグレージング(窓ガラス)を提示した。
【0006】
韓国特許登録第653585号(特許文献3)の“反射防止膜、反射防止膜の製造方法、及び反射防止ガラス”では、二つのタイプのシリコン化合物と、その他の化合物からなる反射防止コーティング膜に関して提示した。
【0007】
【特許文献1】韓国特許登録第183429号
【特許文献2】韓国特許登録第474585号
【特許文献3】韓国特許登録第653585号
【特許文献4】韓国特許登録第578044号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、光触媒コーティングを通じて、初期に照明器具や太陽電池のガラス反射膜の透過率向上を奏し、光触媒の固有特性により、有害ガス分解、及び超親水現状という二重効果による汚染防止結果として、コーティング膜の透過率を、時間の経過によっても、高く維持できる反射防止光触媒組成物、及びこれを用いたガラス基材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、二酸化チタン系光触媒、バインダー、水及びアルコールを含む反射防止光触媒組成物を提供する。
【0010】
又、前記二酸化チタン系光触媒1重量部に対し、バインダー10〜40重量部、水300〜500重量部、アルコール1000〜2000重量部を含むことが好ましい。
【0011】
又、前記二酸化チタン系光触媒として、二酸化チタンを単独、又は二酸化チタンとWO3、ZnO、SnO2、CdS、ZrO2との複合触媒、又は二酸化チタンに、窒素がドープされたTiO(2-x)Nxであることが好ましい。
【0012】
又、前記バインダーは、アルコキシシラン系バインダー、又は無機シラン系バインダーであることが好ましい。
【0013】
又、前記アルコキシシラン系バインダーとして、テトラプロピルオルトシリケート[Si(OPr)4]、テトラエチルオルトシリケート[Si(OEt)4]、テトラメチルオルトシリケート[Si(OMe)4]、及びアミノシラン系のうちから選択されるいずれか一つであることが好ましい。
【0014】
又、本発明は、前記反射防止光触媒組成物が表面にコーティングされたガラス基材を提供する。
【0015】
特に、前記ガラス基材は、太陽光反射防止膜、又はガラス照明器具であることが好ましい。
【0016】
特に、前記高硬度ガラス用光触媒組成物は、スプレーコーティング、含浸、ロールコーティング、布、又はスポンジでコーティングする方法のうちのいずれか一つにより、ガラス基材の表面に塗布されることが好ましい。
【0017】
特に、前記高硬度ガラス用光触媒組成物は、ガラス基材の表面に塗布された後、80〜150℃で熱硬化することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の反射防止光触媒組成物は、入射光エネルギーの散乱を防止し、光の透過率を向上させることはもちろん、二酸化チタン光触媒の固有特性である有害ガス分解、及び自己洗浄効果という二重作用で電気を利用した照明器具、及び太陽光電池材料に、汚染物質が付着しないように分解すると共に、光の効率を増大させることによって、経済的効果を極大化することが可能である。又、本発明の光触媒組成物は、高硬度を維持するので、キズや外部環境などによって剥げやすくないという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、太陽光電池に使用されるガラス反射防止膜、ガラス照明器具などに用いられる反射防止光触媒組成物に関し、より詳しくは、光触媒組成物の中には光触媒として作用する二酸化チタン、基材表面のコーティング膜の強度及び初期接着コーティングに優れたバインダーとして、アルコキシシラン系バインダー、又は無機シラン系バインダーを使用し、溶媒として、水とアルコールとを使用して有害ガス分解が可能であり、反射防止効果に優れた反射防止光触媒組成物を提供する。
【0020】
本発明では、二酸化チタン系光触媒として、二酸化チタン(TiO2)を単独、又は二酸化チタンとWO3、ZnO、SnO2、CdS、ZrO2との複合触媒、又は二酸化チタンに、窒素がドープされたTiO(2-x)Nxを使用することが好ましい。
【0021】
例えば、二酸化チタンとWO3との複合触媒TiO2-WO3の製造方法は、本出願人の登録特許である韓国特許登録第578044号(特許文献4)に記載された方法を用いることができる。前記登録特許では、(i) 直径が1.0〜1000nmのWOxナノ粒子、又は直径が1.0〜100nmのWOxナノチューブ(nanotube)を合成するステップ(ここで、xの範囲は2.0〜3.0であり、ナノチューブは、長さが直径の10倍以上であることを意味する。)、(ii) 前記WOxナノ粒子、又はナノチューブを、TiO2ナノ粒子と共に、水溶液に分散させたり、又はゾルゲル法(Sol-gel process)によって製造されたTiO2溶液に分散させて、十分撹拌するステップ、(iii) 前記混合溶液において溶媒を乾燥し、100〜800℃温度で熱処理するステップを通じて、二酸化チタンとタングステン酸化物とが複合化された可視光光触媒の製造方法を提示している。
本発明では、ガラス基材との密着のために、ガラスとの相溶性がの良いバインダーが使用され、例えば、アルコキシシラン系バインダー、又は無機シラン系バインダーを使用することができる。特に、前記アルコキシシラン系バインダーとして、テトラプロピルオルトシリケート[Si(OPr)4]、テトラエチルオルトシリケート[Si(OEt)4]、テトラメチルオルトシリケート[Si(OMe)4]、及びアミノシラン系のうちから選択されるいずれか一つであることが好ましい。
【0022】
以下、実施例に基づき、本発明について詳しく説明する。
【0023】
下記実施例は、本発明を具体的に説明するために例示するものであって、本発明の権利範囲がこれらの実施例によって限定されるものではない。
[実施例1:反射防止光触媒組成物]
本出願人の登録特許である、韓国特許登録第578044号(特許文献4)に明示されている実験方法にてWO3-TiO2光触媒粉末を製造し、光触媒の1次粒径は平均20nmの寸法を有し、2次粒径の寸法は約120nmであった。こうして作られた光触媒粉末を1%水溶液で作り、このように作られた光触媒を、ガラス基材の上に固定化するためには、光触媒溶液とガラスとの相溶性に優れたバインダーが必要である。無機バインダーの製造は、室温でエタノールとイソプロピルアルコールとから構成された溶媒に、テトラエチルオルトシリケート及びシリケートを添加した後に、50℃まで昇温しながら合成して、5%バインダー溶液を製造した。それぞれの光触媒及びバインダーを超純粋水とアルコールとを使用し、製造された溶液の体積を基準として、光触媒:バインダー:水:エタノールを1:4:3:9の割合で混合した後に、撹拌して、ガラス用高硬度有害ガスの分解、及び超親水性光触媒溶液を製造した。
【0024】
[実施例2〜4:光触媒組成物がコーティングされたガラス試験片]
市販されているガラス材料を用いて、2種類の大きさ(100mm×100mm×5mmの大きさのものを3個、50mm×50mm×3mmの大きさのものを9個)として準備した。大きいガラス試験片(実験例2で使用)の場合、試験片の半分部分を、小さい試験片の場合には、全体部分を、実施例1から合成した光触媒溶液を注入した、孔の直径の0.8mmの自動スプレー機器(銃)を用いて、単位面積(m2)当たり各々40、80、120mlを塗布した後に、80〜150℃乾燥オーブンで5分間硬化し、実施例2、3及び4の反射防止光触媒組成物がコーティングされたガラス試験片を製造して、物性を測定した。
【0025】
[実験例1:UV-Vis Spectrophotometer実験]
UV-Vis Spectrophotometer(Cintra社製、商品名10e)を用いて、コーティングされないガラス(図1でnatureと表記された曲線)と、前記実施例2(40ml/m2)、実施例3(80ml/m2)、及び実施例4(120ml/m2)のガラス試験片に対し、350nm〜900nmの波長範囲で透過率を測定した。
【0026】
以下、実験例1及び実験例2で、光透過率は下記式1によって計算した。
【0027】
(式1)
光透過率(%) = (基材を通過した光の強さ/初期光源の光の強さ)×100
又、光触媒コーティング面と、光触媒がコーティングされないコーティング面との光透過率の差は、下記式2によって計算した。
【0028】
(式2)
光透過率の差 = (光触媒面−ガラス面)の透過率
又、光透過向上率は、下記式3を用いて計算した。
【0029】
(式3)
光透過向上率(% ) = (透過率の差/ガラス面の透過率)×100
図1のように、実施例2のガラス試験片(塗布量40ml/m2)においては、400nm以下の波長範囲では、透過率が減少したが、400nm以上では、透過率が向上し、実施例3(80ml/m2)の場合、400nm以下の波長では、透過率が減少したが、460nm以上では、透過率が向上する結果を示した。しかし、実施例4(120ml/m2)の場合、光触媒の絶対量が増加することによって、680nm以下では、透過率が減少し、それ以上の波長では、透過率が向上した。
【0030】
図1を参考すると、600nm波長帯で、実施例2(40ml/m2)の場合、透過率が1.6%向上、実施例3(80ml/m2)の場合、透過率が1.0%向上、実施例4(120ml/m2)の場合、透過率が0.3%減少したことが分かる。
【0031】
[実験例2:光透過率実験]
光触媒による光透過率(反射防止膜形成)に対する実験は、光源及び周囲からの光の散乱及び反射効果を最小化するために、無光の黒色ペイントで塗った暗箱の中で実施した。上部に設けられた2種の光源、すなわち、CMH(ceramic Metal Halogen)ランプと3波長ランプとを光源として使用し、CMHの場合、光の強さが非常に強く、1次反射させた反射光を用いて、透過率を測定した。先ず、初期電球から出てくる光の照度を測定し(光の強さ(Lx)、TES社製、商品名1330)、次に、光触媒が塗布されないガラス試験片面、光触媒がコーティングされた試験片面を通過してくる光の照度を測定し、初期光の強さで割って、透過率を決定した。CMHランプを使用し、実施例2〜4(大きいガラス試験片を使用、各塗布量40、80、120ml/m2)のサンプルに対し、光透過率を測定した結果をそれぞれ図2〜4で示し、3波長ランプを光源として、実施例2〜4のサンプルに対し、光透過率を測定した結果をそれぞれ図5〜図7で示した。
【0032】
添付の図2〜4は、実施例2のガラス試験片〜実施例4のガラス試験片に対し、CMH光源を用いた照射において、光触媒がコーティングされたガラス面と、光触媒がコーティングされないガラス面との光透過率の差を示したグラフである。図2の結果を参照すると、実施例2のサンプルのように、ガラス試験片に、40mlの光触媒を塗布した際、最も優れた結果を示し、約2〜3%の光透過率の改善効果を示し、図3における実施例3のサンプルの場合、約1%の光透過率の改善効果を示し、図4における実施例4のサンプルの場合、約1.2%の光透過率の改善効果を示した。
【0033】
特に、反射光を用いた低照度において、より一層向上した透過率結果を示した。光触媒ナノ物質の構成は、二酸化チタンとシリケートとの屈折率の差による入射光の光透過率を向上させるものと理解される。又、図3における実施例3のサンプルに対する実験結果に比べて、図4における実施例4のサンプルに対する実験結果が改善された透過率を示すことから、塗布量に応じて透過率が変化するものであって、光触媒によるヘイズ(Haze)により、光の遮断効果が起きるという一般的な予測とは相違した結果を示した。
要するに、前記実施例2〜4のガラス試験片に対し、光透過率を実験するために、CMHランプを用いて、大きいガラス試験片の透過率を測定した結果、各実施例における大きいガラス試験片で、本発明の光触媒組成物をコーティングしない部分に比べて、本発明の光触媒組成物をコーティングした部分での平均光透過向上率が、実施例2のガラス試験片では2.79%、実施例3のガラス試験片では0.96%、実施例4のガラス試験片では1.23%ずづ増加した。
【0034】
又、3波長ランプを用いた場合、実施例2では、平均光透過向上率が2.08%(図5を参照)、実施例3では0.25%(図6を参照)、実施例4では0.42%(図7を参照)ずづ増加した。
【0035】
このような実験例2の結果と、前述の実験例1のUV-Vis Spectrophotometerの実験結果とを通じて、本発明の光触媒組成物をコーティングしたガラス試験片で、透過率が向上することを確認することができた。
特に、CMHランプや3波長ランプから出てくる光の波長の場合、紫外線の強度は、無視できる程の小さい量が出てくるので、主に可視光線の影響を受け、これは、陽光の場合にも紫外線が5%未満であり、主に可視光線の影響を受けるので、前記実験例1及び実験例2の実験結果は、陽光を対象として実験しても同様の結果を得ると予想される。
【0036】
[実験例3:光触媒コーティング膜の物理的強度]
実施例2〜4から作られたガラス試験片の光触媒コーティング膜の強度を測定するために、鉛筆硬度計(荷重1kg、鉛筆傾斜45°)で測定し、位相差顕微鏡を用いて、400倍の倍率で表面損傷を観察した。全ての試験片の場合、7H以上の膜強度を示し、表面を水で濡らした状態で、ウェットワイプスで50回以上こすった時にも、光触媒の表面離脱が観察されなかった。
【0037】
[実験例4:光触媒によるオレイン酸の光分解に伴う超親水性実験]
実施例2及び実施例4のガラス試験片のオレイン酸の光分解による超親水性の評価は、JIS R1703-1の試験方法にて、オレイン酸(95%以上)をヘプタン(98%以上)に溶かして、0.5%体積含有量を有するように作った溶液に、ディップコーティング(dip-coating)法(引張速度60cm/分)で試験片を作製し、70℃乾燥オーブンで15分間乾燥した後、12時間以上暗室で保管した。親水性を測定するために、対水接触角測定器(ドイツKRUSS社製、商品名DSA-100)を使用して、蒸溜水1μlを表面に落下させた際に、形成された基材と水滴とがなす対水接触角を測定した。紫外線の照射前に初期水接触角を測定した後に、紫外線の照射(BLB Lamp(UV-A)、1mW/cm2)時間に応じる水接触角の変化を、それぞれのガラス試験片で位置を変えながら、5回測定した。ディップコーティング(dip-coating)法による塗膜の差によって、オレイン酸の光分解が部分的に差が生じることが分かった。ガラスと水滴との間を12時間紫外線照射した後の水接触角を測定した光学写真の結果は、図8のようである。図8のように時間の経過により、水滴の広がり現象が大きくなることが分かる。このような現象は、オレイン酸が塗布されたガラスにおいて光触媒作用により、有機物の分解が起きると共に、ガラス表面に塗布された光触媒が光によって活性化し、空気中の水分と反応することにより、水素結合が容易となり親水化が起きるといえる。実施例2に対し、3回測定した結果の場合、図9のように、初期水接触角が約40°を示したが(図面で、実施例2-1、実施例2-2、実施例2-3は、実施例2に対する3回の実験結果を意味する。)、紫外線照射を48時間実施した後には、5°以下の超親水性特性を示すことに対し、実施例4の場合には、図10のように、初期水接触角が約6〜7°程度を示し(図面で、実施例4-1、実施例4-2、実施例4-3は、実施例4に対する3回の実験結果を意味する。)、紫外線照射によって3〜5時間の間に、5°未満の超親水性を示した。光触媒塗布量によりオレイン酸の光分解が加速化されることが分かる。
【0038】
[実験例5:光触媒膜の有機ガス分解試験]
実施例4から製造された小さいガラス試験片を用いて、有害ガス分解に対する光触媒活性を下記のように測定した。
【0039】
2-プロパノールが250ppm濃度で満たされた反応器に、前記サンプルを入れた。7W Xeランプで照射させながら、光触媒反応によって、2-プロパノールを分解した。2-プロパノールが光分解される間生成される中間体であるアセトン及び最終生成物である二酸化炭素の濃度を気体クロマトグラフィーで測定した。図11は、時間に応じる2-プロパノールの光分解による濃度の減少、図12は、二酸化炭素の濃度の増加、図13は、アセトンの濃度の増加を示す。
実験例5の結果のように、透明性に優れたガラス用高硬度光触媒溶液の特性を考慮する際、分解能力に非常に優れたことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施例2〜実施例4のガラス試験片を対象としたUV-Vis Spectrophotometerの実験結果である。
【図2】実施例2のサンプルに対し、CMHを用いた照射において、光触媒がコーティングされたガラス面と、コーティングされないガラス面との光透過率の変化を示した結果である。
【図3】実施例3のサンプルに対し、上同の実験をした結果である。
【図4】実施例4のサンプルに対し、上同の実験をした結果である。
【図5】実施例2のサンプルに対し、3波長ランプを用いた照射において、光触媒がコーティングされたガラス面と、コーティングされないガラス面との光透過率の変化を示した結果である。
【図6】実施例3のサンプルに対し、上同の実験をした結果である。
【図7】実施例4のサンプルに対し、上同の実験をした結果である。
【図8】本発明の光触媒のオレイン酸が塗布された光触媒ガラス試験片に紫外線照射の12時間経過による水接触角の変化を測定した結果である。
【図9】本発明の実施例2のサンプルのオレイン酸の光分解による水接触角の変化を示したグラフである。
【図10】本発明の実施例の4サンプルのオレイン酸の光分解による水接触角の変化を示したグラフである。
【図11】本発明の実施例4のサンプルの光分解効果による2-プロパノールの時間に応じる濃度の減少を示す。
【図12】二酸化炭素の生成増加を示すグラフである。
【図13】アセトンの生成増加を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化チタン系光触媒、バインダー、水及びアルコールを含む反射防止光触媒組成物。
【請求項2】
前記二酸化チタン系光触媒1重量部に対し、バインダー10〜40重量部、水300〜500重量部、アルコール1000〜2000重量部を含むことを特徴とする請求項1に記載の反射防止光触媒組成物。
【請求項3】
前記二酸化チタン系光触媒として、二酸化チタンを単独、又は二酸化チタンとWO3、ZnO、SnO2、CdS、ZrO2との複合触媒、又は二酸化チタンに、窒素がドープされたTiO(2-x)Nxであることを特徴とする請求項1に記載の反射防止光触媒組成物。
【請求項4】
前記二酸化チタン系光触媒は、TiO2とWO3との複合触媒であることを特徴とする請求項3に記載の反射防止光触媒組成物。
【請求項5】
前記バインダーは、アルコキシシラン系、又は無機シラン系バインダーであることを特徴とする請求項1に記載の反射防止光触媒組成物。
【請求項6】
前記アルコキシシラン系バインダーとして、テトラプロピルオルトシリケート[Si(OPr)4]、テトラエチルオルトシリケート[Si(OEt)4]、テトラメチルオルトシリケート[Si(OMe)4]、及びアミノシラン系のうちから選択されるいずれか一つであることを特徴とする請求項5に記載の反射防止光触媒組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の反射防止光触媒組成物が表面にコーティングされたガラス基材。
【請求項8】
前記ガラス基材は、太陽光反射防止膜、又はガラス照明器具であることを特徴とする請求項7に記載のガラス基材。
【請求項9】
前記反射防止光触媒組成物は、スプレーコーティング、含浸、ロールコーティング、布、又はスポンジでコーティングする方法のうちのいずれか一つにより、ガラス基材の表面に塗布されることを特徴とする請求項7に記載のガラス基材。
【請求項10】
前記反射防止光触媒組成物は、ガラス基材の表面に塗布された後、80〜150℃で熱硬化することを特徴とする請求項7に記載のガラス基材。
【請求項1】
二酸化チタン系光触媒、バインダー、水及びアルコールを含む反射防止光触媒組成物。
【請求項2】
前記二酸化チタン系光触媒1重量部に対し、バインダー10〜40重量部、水300〜500重量部、アルコール1000〜2000重量部を含むことを特徴とする請求項1に記載の反射防止光触媒組成物。
【請求項3】
前記二酸化チタン系光触媒として、二酸化チタンを単独、又は二酸化チタンとWO3、ZnO、SnO2、CdS、ZrO2との複合触媒、又は二酸化チタンに、窒素がドープされたTiO(2-x)Nxであることを特徴とする請求項1に記載の反射防止光触媒組成物。
【請求項4】
前記二酸化チタン系光触媒は、TiO2とWO3との複合触媒であることを特徴とする請求項3に記載の反射防止光触媒組成物。
【請求項5】
前記バインダーは、アルコキシシラン系、又は無機シラン系バインダーであることを特徴とする請求項1に記載の反射防止光触媒組成物。
【請求項6】
前記アルコキシシラン系バインダーとして、テトラプロピルオルトシリケート[Si(OPr)4]、テトラエチルオルトシリケート[Si(OEt)4]、テトラメチルオルトシリケート[Si(OMe)4]、及びアミノシラン系のうちから選択されるいずれか一つであることを特徴とする請求項5に記載の反射防止光触媒組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の反射防止光触媒組成物が表面にコーティングされたガラス基材。
【請求項8】
前記ガラス基材は、太陽光反射防止膜、又はガラス照明器具であることを特徴とする請求項7に記載のガラス基材。
【請求項9】
前記反射防止光触媒組成物は、スプレーコーティング、含浸、ロールコーティング、布、又はスポンジでコーティングする方法のうちのいずれか一つにより、ガラス基材の表面に塗布されることを特徴とする請求項7に記載のガラス基材。
【請求項10】
前記反射防止光触媒組成物は、ガラス基材の表面に塗布された後、80〜150℃で熱硬化することを特徴とする請求項7に記載のガラス基材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−72753(P2009−72753A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320668(P2007−320668)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(507406655)チェムウェル テック カンパニー リミティッド (1)
【出願人】(507406666)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(507406655)チェムウェル テック カンパニー リミティッド (1)
【出願人】(507406666)
【Fターム(参考)】
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